JP2023017681A - 磁気テープ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気テープを温度および湿度の変化に晒される保管環境に保管した後、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすること。【解決手段】磁気テープ装置。磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、磁気テープの幅方向に対して磁気ヘッドの素子アレイの軸線がなす角度θを変化させる。下記保管を行う前に求められたサーボバンド間隔と、所定の保管を1サイクルとして、サイクル数Nの保管の後に求められたサーボバンド間隔と、の差分の絶対値の最大値をAとして、Nを1、2、3、4または5としてそれぞれ求められたAの値とサイクル数Nの保管の総保管時間Tの対数logeTの値とから導出された、AとTの対数logeTとの一次関数によって算出される媒体ライフが5年以上である。媒体ライフは、Aが式a:A=1.5-B+Cを満たすときのTである。【選択図】なし

Description

本発明は、磁気テープ装置に関する。
磁気記録媒体にはテープ状のものとディスク状のものがあり、各種データストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープが主に用いられている(例えば特許文献1および2参照)。
特開2016-524774号公報 US2019/0164573A1
磁気テープへのデータの記録は、通常、磁気テープ装置内で磁気テープを走行させ、磁気ヘッドを磁気テープのデータバンドに追従させてデータバンド上にデータを記録することにより行われる。これにより、データバンドにデータトラックが形成される。また、記録されたデータの再生時には、磁気テープ装置内で磁気テープを走行させ、磁気ヘッドを磁気テープのデータバンドに追従させてデータバンド上に記録されたデータの読み取りを行う。以上のような記録および/または再生において磁気ヘッドが磁気テープのデータバンドに追従する精度を高めるために、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステム(以下、「サーボシステム」と記載する。)が実用化されている。そして、かかる記録後または再生後、磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジ内にリール(以下、「カートリッジリール」と記載する。)に巻回された状態で、次に記録および/または再生が行われるまで、保管される。
近年、サーボ信号を利用して、走行中の磁気テープの幅方向の寸法情報(収縮、伸長等)を取得し、取得された寸法情報に応じて、磁気ヘッドのモジュールの軸方向を磁気テープの幅方向に対して傾斜させる角度(以下、「ヘッド傾き角度」とも記載する。)を変化させることが提案されている(特許文献1および2、例えば特許文献1の段落0059~0067および段落0084参照)。記録または再生時、磁気テープの幅変形によってデータを記録または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録または再生を行ってしまうと、記録済データの上書き、再生不良等の現象が発生してしまう。他方、近年、データストレージ分野では、アーカイブ(archive)と呼ばれる、データの長期保管に対するニーズが高まっている。しかし、一般に、保管期間が長くなるほど磁気テープの変形は生じ易い傾向がある。したがって、保管後の上記現象の発生を抑制することが今後一層求められると予想される。この点に関し、上記のようにヘッド傾き角度を変化させることは、そのような現象の発生を抑制するための手段の1つと本発明者は考えている。
データが記録された磁気テープを収容した磁気テープカートリッジは、近年、温度および湿度が管理されたデータセンターに保管されることがある。一方、データセンターではコスト低減のために省電力化が求められている。省電力化のためには、データセンターにおける温度および湿度の管理条件を現在より緩和できるか、または管理を不要にできることが望ましい。しかし、温度および湿度の管理条件を緩和し、または管理を行わないと、磁気テープは長期保管中に温度および湿度の変化に晒されることが想定される。一般に、そのような保管環境における期間が長くなるほど磁気テープの変形は生じ易い傾向がある。したがって、かかる保管後の記録済データの上書き、再生不良等の現象の発生を抑制することが今後一層求められると予想される。
以上に鑑み、本発明の一態様は、磁気テープを温度および湿度の変化に晒される保管環境に保管した後、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすることを目的とする。
本発明の一態様は、
磁気テープと、磁気ヘッドと、を含む磁気テープ装置であって、
上記磁気ヘッドは、一対のサーボ信号読み取り素子の間に複数の磁気ヘッド素子を有する素子アレイを含むモジュールを有し、
上記磁気テープ装置は、上記磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、上記磁気テープの幅方向に対して上記素子アレイの軸線がなす角度θを変化させ、
上記磁気テープは、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有し、
上記磁性層は複数のサーボバンドを有し、
下記保管を行う前に求められたサーボバンド間隔と、温度23℃相対湿度50%の環境下での12時間の保管と温度32℃相対湿度55%の環境下での12時間の保管とを1サイクルとして、サイクル数Nの保管の後に求められたサーボバンド間隔と、の差分の絶対値の最大値をAとして、Aの単位はμmであり、Nを1、2、3、4または5としてそれぞれ求められたAの値とサイクル数Nの保管の総保管時間Tの対数logTの値とから導出された、AとTの対数logTとの一次関数によって算出される媒体ライフ(以下、「媒体ライフ(life)」とも記載する。)が5年以上であり、
上記媒体ライフは、Aが下記式a:
(式a)
A=1.5-B+C
を満たすときのTであり、
上記Bは、
下記5環境下:
温度16℃相対湿度20%、
温度16℃相対湿度80%、
温度26℃相対湿度80%、
温度32℃相対湿度20%、
温度32℃相対湿度55%、
でそれぞれ求められたサーボバンド間隔の中の最大値と最小値との差分に1/2を掛け合わせて算出される値であり、単位はμmであり、
上記Cは、
C=L{cos(θinitial-Δθ)-cos(θinitial+Δθ)}
により算出される値であり、単位はμmであり、
上記Lは、上記一対のサーボ信号読み取り素子間の距離であり、単位はμmであり、
上記磁気テープ走行開始時の上記角度θをθinitialとし、
上記磁気テープ走行中の上記角度θの最大値をθmax、最小値をθminとして、
上記Δθは、
Δθmax=θmax-θinitial
Δθmin=θinitial-θmin
により算出される値の中で、より大きな値である、磁気テープ装置、
に関する。
一形態では、上記媒体ライフは、5年以上400年以下であることができる。
一形態では、上記磁気テープ装置は、上記磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、上記磁気テープの幅方向に対して上記素子アレイの軸線がなす角度θを、上記走行中に取得される磁気テープの幅方向の寸法情報に応じて変化させることができる。
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有することができる。
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体の上記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有することができる。
一形態では、上記非磁性支持体は、芳香族ポリエステル支持体であることができる。
一形態では、上記芳香族ポリエステル支持体は、ポリエチレンテレフタレート支持体であることができる。
一形態では、上記芳香族ポリエステル支持体は、ポリエチレンナフタレート支持体であることができる。
一形態では、上記非磁性支持体は、芳香族ポリアミド支持体であることができる。
一形態では、上記磁気テープの垂直方向角型比は、0.60以上であることができる。
本発明の一態様によれば、磁気テープを温度および湿度の変化に晒される保管環境に保管した後、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすることができる。
磁気ヘッドのモジュールの一例を示す概略図である。 磁気テープ装置における磁気テープ走行中のモジュールと磁気テープとの相対的な位置関係の説明図である。 磁気テープ走行中の角度θの変化に関する説明図である。 磁気テープ走行中の角度θの測定方法の説明図である。 磁気テープ装置の一例を示す概略図である。 データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。 LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットテープのサーボパターン配置例を示す。 磁気テープカートリッジの一例の斜視図である。 リールに磁気テープを巻回し始めるときの斜視図である。 リールに磁気テープを巻回し終えたときの斜視図である。
本発明の一態様は、磁気テープと、磁気ヘッドと、を含む磁気テープ装置に関する。
磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジに収容される。データの記録および/または再生のために磁気テープ装置に取り付けられる前の未使用の磁気テープカートリッジでは、磁気テープは、通常、カートリッジリール(以下、単に「リール」とも記載する。)に巻回された状態で収容されている。磁気テープ装置では、カートリッジリール(供給リール)と巻取りリールとの間で磁気テープを走行させて、磁気テープへのデータの記録および/または記録されたデータの再生を行うことができる。そして、データの記録後または再生後、磁気テープは、カートリッジリールに巻返され、次に記録および/または再生が行われるまで、磁気テープカートリッジ内でカートリッジリールに巻回された状態で保管される。
保管中、磁気テープカートリッジに収容された磁気テープにおいて、カートリッジリールに近い部分はテープ厚み方向の圧縮応力によって初期より幅広に変形し、カートリッジリールから遠い部分はテープ長手方向の引っ張り応力によって初期より幅狭に変形するという、位置によって異なる変形が起こると推察される。位置によって大きく異なる変形が起こると、保管後に記録および/または再生が行われる際、磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうことの原因になり得ると考えられる。
上記変形には、保管中に受ける応力に起因して主に発生する変形と、データの記録および/または再生が行われる環境(以下、「使用環境」と記載する。)の温度および湿度に起因して主に発生する変形と、があると本発明者は考えた。本発明者は検討を重ねる中で、上記要因によって発生する変形を総合的に考慮することが、磁気テープカートリッジに収容して保管した後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすることにつながると考えるに至った。そして、本発明者は更に鋭意検討を重ねた結果、上記要因によって発生する変形に関する総合的な指標として媒体ライフを採用するに至り、媒体ライフが5年以上の磁気テープ装置によれば、温度および湿度の変化に晒される環境において磁気テープカートリッジに収容して保管した後、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際、良好に記録および/または再生を行うことができることを新たに見出した。
以下、上記磁気テープ装置について、更に詳細に説明する。以下では、図面を参照して磁気テープカートリッジおよび磁気テープ装置の一形態を説明することがある。ただし、本発明は、図面に示された形態に限定されるものではない。図中の各部の寸法等は例示に過ぎない。また、本発明は、本明細書に記載されている本発明者の推察によって限定されるものではない。
[媒体ライフ]
以下に、先に記載した媒体ライフの測定方法を説明する。
<一次関数の導出手順>
(サーボバンド間隔の測定)
Aを算出するための式aを導出するために、以下の方法によって各種サーボバンド間隔の測定を行う。
保管前のサーボバンド間隔の測定は、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境において行う。測定対象の磁気テープがリールに巻回されて収容されている磁気テープカートリッジを、測定環境に馴染ませるために雰囲気温度23℃相対湿度50%の環境に5日間置く。
その後、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、磁気テープの全長にわたり、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を、1m間隔で測定する。本発明および本明細書に記載の各種値を求めるための測定において、磁気テープの長手方向にかけるテンションの値は、磁気テープ装置において設定される設定値とする。また、本発明および本明細書において、「1m間隔で測定」とは、長さLメートル(m)の測定対象領域について、測定対象領域の一方の末端の位置を0m、他方の末端に向かう方向にある各位置を、1m、2m、3m・・・、とし、他方の末端の位置をLmとすると、最初の測定位置は1mの位置であり、最後の測定位置はLmの位置の1つ手前の位置である。また、サーボバンド間隔が複数存在する場合には全サーボバンド間隔について、同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「保管前のサーボバンド間隔」とする。
以下の磁気テープカートリッジの保管は、磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の保管環境(「保管環境A」とも呼ぶ。)に12時間保管し、次いで雰囲気温度32℃相対湿度55%の保管環境(「保管環境B」とも呼ぶ。)に12時間保管することを1サイクルとして実施する。したがって、1サイクルあたりの総保管時間は24時間である。
上記保管前のサーボバンド間隔を測定した後、1サイクルの保管を実施する。
かかる保管後、上記磁気テープカートリッジを、測定環境に馴染ませるために雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた後、同測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、先に記載した方法と同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「24時間保管後のサーボバンド間隔」とする。
全サーボバンド間隔について、1m間隔で測定された保管前のサーボバンド間隔と保管後のサーボバンド間隔との差分を求める。こうして差分の値が複数求められる。求められた差分の絶対値の最大値を、「24時間保管後のA」とする。Aの単位はμmである。この点は、下記の各種Aについても同様である。
データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔は、例えば、サーボ信号読み取り素子によってサーボパターンを読み取って得られるサーボ信号から求められるPES(Position Error Signal)を用いて求めることができる。詳細については、後述の実施例の記載を参照できる。
保管環境Aにおける12時間保管後、磁気テープカートリッジが配置されている環境の雰囲気温度および相対湿度を60分間以内に保管環境Bの雰囲気温度および相対湿度に変化させた後、保管環境Bにおける12時間保管を実施する。2サイクル以上の保管を実施する場合の保管環境Bから保管環境Aへの環境変化に関しては、保管環境Bにおける12時間保管後、磁気テープカートリッジが配置されている環境の雰囲気温度および相対湿度を60分間以内に保管環境Aの雰囲気温度および相対湿度に変化させた後、保管環境Aにおける12時間保管を実施する。
24時間(1サイクル)保管後のサーボバンド間隔を測定した後の磁気テープカートリッジを、2サイクルの保管に付す。この2サイクルの保管の総保管時間は48時間である。
かかる保管後、上記磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた後、同測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、先に記載した方法と同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「48時間保管後のサーボバンド間隔」とする。
全サーボバンド間隔について、1m間隔で測定された保管前のサーボバンド間隔と保管後のサーボバンド間隔との差分を求める。こうして差分の値が複数求められる。求められた差分の絶対値の最大値を、「48時間保管後のA」とする。
48時間(2サイクル)保管後のサーボバンド間隔を測定した後の磁気テープカートリッジを、3サイクルの保管に付す。この3サイクルの保管の総保管時間は72時間である。
かかる保管後、上記磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた後、同測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、先に記載した方法と同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「72時間保管後のサーボバンド間隔」とする。
全サーボバンド間隔について、1m間隔で測定された保管前のサーボバンド間隔と保管後のサーボバンド間隔との差分を求める。こうして差分の値が複数求められる。求められた差分の絶対値の最大値を、「72時間保管後のA」とする。
72時間(3サイクル)保管後のサーボバンド間隔を測定した後の磁気テープカートリッジを、4サイクルの保管に付す。この4サイクルの保管の総保管時間は96時間である。
かかる保管後、上記磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた後、同測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、先に記載した方法と同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「96時間保管後のサーボバンド間隔」とする。
全サーボバンド間隔について、1m間隔で測定された保管前のサーボバンド間隔と保管後のサーボバンド間隔との差分を求める。こうして差分の値が複数求められる。求められた差分の絶対値の最大値を、「96時間保管後のA」とする。
96時間(4サイクル)保管後のサーボバンド間隔を測定した後の磁気テープカートリッジを、5サイクルの保管に付す。この5サイクルの保管の総保管時間は120時間である。
かかる保管後、上記磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた後、同測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。かかる走行について、先に記載した方法と同様にサーボバンド間隔を測定する。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「120時間保管後のサーボバンド間隔」とする。
全サーボバンド間隔について、1m間隔で測定された保管前のサーボバンド間隔と保管後のサーボバンド間隔との差分を求める。こうして差分の値が複数求められる。求められた差分の絶対値の最大値を、「120時間保管後のA」とする。
本発明者は、上記のように求められるAの値は、温度および湿度の変化に晒される環境において磁気テープが磁気テープカートリッジ内での保管中に受ける応力に起因して主に発生する変形に関する指標となり得る値と考えている。
(一次関数の導出)
上記工程において、5種類の総保管時間TについてAの値が求められる。これらのAの値と総保管時間Tの対数logTの値から、最小二乗法によってAとlogTとの一次関数を導出する。一次関数は、AをYとし、logTをXとして、Y=cX+dで表される。cおよびdは、それぞれ最小二乗法によって決定される係数であり、通常、cおよびdはいずれも正の値である。
<Bの決定手順>
媒体ライフを求めるために用いられるBは、以下の方法によって決定される値である。
Bは、次の5環境下、温度16℃相対湿度20%、温度16℃相対湿度80%、温度26℃相対湿度80%、温度32℃相対湿度20%、温度32℃相対湿度55%、でそれぞれ求められたサーボバンド間隔の中の最大値と最小値との差分に1/2を掛け合わせて算出される値(単位:μm)である。Bは、以下の方法によって求められる。
各測定環境について、測定対象の磁気テープがリールに巻回された収容されている磁気テープカートリッジを、測定環境に馴染ませるために、測定環境に5日間置く。測定環境は、先に記載の5環境(即ち、温度16℃相対湿度20%、温度16℃相対湿度80%、温度26℃相対湿度80%、温度32℃相対湿度20%、温度32℃相対湿度55%)である。
その後、その測定環境下、磁気テープの長手方向にテンションをかけるテンション調整機構を有する磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させる。磁気テープについて、磁気テープカートリッジのリールに巻取られた側の末端を内側末端、その反対側の末端を外側末端と呼び、外側末端を0mとして、0m~100mの長さにわたる領域(以下、「リール外周100m領域」と記載する。)で1m間隔にて、上記走行について、データバンド0(ゼロ)において、1m間隔でサーボバンド間隔を測定する。「データバンド0」は、規格により、データの埋め込み(記録)が最初に行われるデータバンドとして定められているデータバンドである。測定されたサーボバンド間隔の算術平均を、その測定環境におけるサーボバンド間隔とする。
上記のように5環境のそれぞれにおいてサーボバンド間隔を求めた後、求められた値の中の最大値および最小値を用いて、「(最大値-最小値)×1/2」として算出される値を、測定対象の磁気テープカートリッジの「B」とする。本発明者は、こうして求められるBは、使用環境の温度および湿度起因で主に発生する変形の指標になり得る値と考えている。
<媒体ライフの算出>
媒体ライフは、上記で導出したAとTの対数logTとの一次関数によって、Aが、「式a:A=1.5-B+C」を満たすときのTとして算出される値である。本発明者は、こうして算出される媒体ライフが5年以上であること、即ちA+Bが「1.5+C」μmになる時間Tが5年以上であることは、温度および湿度の変化に晒される環境において磁気テープが磁気テープカートリッジ内での保管中に受ける応力に起因して主に発生する変形と使用環境の温度および湿度起因で主に発生する変形の合計の変形量が長期にわたり大きくなり難いことを示していると考えている。また、式a中のCについて、本発明者は、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際に許容されるトラック位置ズレ量の指標になり得ると考えている。Cについて、詳細は後述する。1.5μmおよび5年を閾値として採用した理由は、今後望まれるであろう長期保管および高密度記録化のニーズを考慮したものである。なお、媒体ライフに関して、1年は365日とする。したがって、1年は365×24時間=8760時間である。また、0.5年は6か月とし、1か月は30日とする。したがって、0.5年は、6×30×24時間=4320時間である。なお、上記の各種測定環境は例示であって、上記磁気テープは例示した環境において保管および/または使用されるものに限定されるものではない。
上記の媒体ライフは、磁気テープカートリッジに収容して保管した後、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度を変化させてデータの記録および/または再生を行う際、良好に記録および/または再生を行うことを可能にする観点から、5年以上であり、10年以上であることが好ましく、20年以上、30年以上、40年以上、50年以上、60年以上、70年以上、80年以上、90年以上、100年以上の順により好ましい。上記の媒体ライフは、例えば500年以下、450年以下、400年以下、350年以下または300年以下であることができ、ここに例示した値を超えることもできる。媒体ライフの制御方法については後述する。
上記のBの値は、例えば0.0μm以上、0.0μm超、0.05μm以上もしくは0.1μm以上であることができ、また、例えば2.0μm以下、1.5μm以下もしくは0.5μm以下であることができる。ただし、上記磁気テープ装置について、媒体ライフが5年以上であればよく、Bの値は上記範囲に限定されるものではない。
[磁気ヘッド]
上記磁気テープ装置に含まれる磁気ヘッドは、一対のサーボ信号読み取り素子の間に複数の磁気ヘッド素子を有する素子アレイを含むモジュールを1つ以上有することができ、2つ以上または3つ以上有することができる。かかるモジュールの総数は、例えば5つ以下、4つ以下もしくは3つ以下であることができ、またはここに例示した総数を超える数のモジュールが上記磁気ヘッドに含まれてもよい。複数のモジュールの配置例としては、「記録用モジュール-再生用モジュール」(モジュールの総数:2)、「記録用モジュール-再生用モジュール-記録用モジュール」(モジュールの総数:3)等を挙げることができる。ただし、ここに示した例に限定されるものではない。
各モジュールには、一対のサーボ信号読み取り素子の間に複数の磁気ヘッド素子を有する素子アレイ、即ち素子の配列が含まれる。磁気ヘッド素子として記録素子を有するモジュールは、磁気テープへデータを記録するための記録用モジュールである。磁気ヘッド素子として再生素子を有するモジュールは、磁気テープに記録されたデータを再生するための再生用モジュールである。磁気ヘッドにおいて、複数のモジュールは、例えば、記録再生ヘッドユニットに、それぞれのモジュールの素子アレイの軸線が平行に方向付けられて配置される。かかる「平行」は、必ずしも厳密な意味の平行のみを意味するものではなく、本発明が属する技術分野において通常許容される誤差の範囲を含むものとする。誤差の範囲とは、例えば、厳密な平行±10°未満の範囲を意味することができる。
磁気ヘッドに含まれるモジュールの総数が1つの場合、このモジュールについて、Cを求める。磁気ヘッドに含まれるモジュールの総数が2つ以上の場合、無作為に選択したモジュールについて、Cを求める。Cを求めるモジュールは、記録用モジュールであってもよく、再生用モジュールであってもよい。
再生素子としては、磁気テープに記録された情報を感度よく読み取ることができる磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)素子が好ましい。MR素子としては、公知の各種MR素子(例えば、GMR(Giant Magnetoresistive)素子、TMR(Tunnel Magnetoresistive)素子等)を用いることができる。以下において、データの記録および/または記録されたデータの再生を行う磁気ヘッドを、「記録再生ヘッド」とも呼ぶ。データの記録のための素子(記録素子)とデータの再生のための素子(再生素子)を、「磁気ヘッド素子」と総称する。
再生素子として再生素子幅が狭い再生素子を使用してデータの再生を行うことにより、高密度記録されたデータを高感度に再生することができる。この観点から、再生素子の再生素子幅は、0.8μm以下であることが好ましい。再生素子の再生素子幅は、例えば0.3μm以上であることができる。ただし、この値を下回ることも上記観点からは好ましい。
ここで「再生素子幅」とは、再生素子幅の物理的な寸法をいうものとする。かかる物理的な寸法は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡等により測定が可能である。
各素子アレイにおいて、一対のサーボ信号読み取り素子と複数の磁気ヘッド素子(即ち記録素子または再生素子)は、通常、直線状に離間して配置される。ここで「直線状に配置」とは、一方のサーボ信号読み取り素子の中央部と他方のサーボ信号読み取り素子の中央部とを結ぶ直線上に各磁気ヘッド素子が配置されていることをいうものとする。そして、本発明および本明細書における「素子アレイの軸線」とは、一方のサーボ信号読み取り素子の中央部と他方のサーボ信号読み取り素子の中央部とを結んだ直線をいうものとする。
以下、図面を参照してモジュールの構成等について更に説明する。ただし、図面に示されている形態は例示であって、本発明を限定するものではない。
図1は、磁気ヘッドのモジュールの一例を示す概略図である。図1に示すモジュールは、一対のサーボ信号読み取り素子(サーボ信号読み取り素子1および2)の間に複数の磁気ヘッド素子を有する。磁気ヘッド素子は、「チャンネル(channel)」とも呼ばれる。図中の「Ch」は、Channnelの略称である。図1に示すモジュールは、Ch0~Ch31の合計32個の磁気ヘッド素子を有する。
Cを求めるための「L」は、一対のサーボ信号読み取り素子間の距離、即ち、一方のサーボ信号読み取り素子と他方のサーボ信号読み取り素子との間の距離である。図1に示すモジュールでは、「L」は、サーボ信号読み取り素子1とサーボ信号読み取り素子2との間の距離である。詳しくは、サーボ信号読み取り素子1の中央部とサーボ信号読み取り素子2の中央部との間の距離である。かかる距離は、例えば光学顕微鏡等によって測定することができる。
図2は、磁気テープ装置における磁気テープ走行中のモジュールと磁気テープとの相対的な位置関係の説明図である。図2中、点線Aは、磁気テープの幅方向を示す。点線Bは、素子アレイの軸線を示す。角度θは、ヘッド傾き角度ということができ、点線Aと点線Bとがなす角度である。磁気テープ走行中、角度θが0°の場合、素子アレイの一方のサーボ信号読み取り素子と他方のサーボ信号読み取り素子との間の磁気テープ幅方向における距離(以下、「サーボ信号読み取り素子間実効距離」とも記載する。)は、「L」である。これに対し、サーボ信号読み取り素子間実効距離は、角度θが0°超の場合、「Lcosθ」であり、LcosθはLより小さくなる。即ち、「Lcosθ<L」である。
先に記載したように、記録または再生時、磁気テープの幅変形によってデータを記録または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録または再生を行ってしまうと、記録済データの上書き、再生不良等の現象が発生してしまう。例えば、磁気テープの幅が収縮または伸長すると、狙いのトラック位置で記録または再生を行うべき磁気ヘッド素子が、異なるトラック位置で記録または再生を行ってしまう現象が発生し得る。また、磁気テープの幅が伸長すると、サーボ信号読み取り素子間実効距離が、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔(「サーボバンド間隔」または「サーボバンドの間隔」とも記載する。詳しくは、磁気テープの幅方向における上記2本のサーボバンドの間の距離。)より短くなってしまい、磁気テープのエッジに近い部分でデータの記録または再生が行われない現象が発生し得る。
これに対し、素子アレイを0°超の角度θで傾けると、先に説明したように、サーボ信号読み取り素子間実効距離は、「Lcosθ」となる。θの値が大きいほどLcosθの値は小さくなり、θの値が小さいほどLcosθの値は大きくなる。したがって、磁気テープの幅方向の寸法変化(即ち収縮または伸長)の程度に応じてθの値を変化させれば、サーボ信号読み取り素子間実効距離を、サーボバンドの間隔に近づけるか一致させることが可能になる。これにより、記録または再生時、磁気テープの幅変形によってデータを記録または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録または再生を行ってしまうことによって記録済データの上書き、再生不良等の現象が発生することを防ぐことができるか、またはその発生頻度を下げることができる。
そこで、上記磁気テープ装置では、磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、磁気テープの幅方向に対して素子アレイの軸線がなす角度θを変化させる。例えば、磁気ヘッドの記録再生ヘッドユニットにモジュールの角度を調整する角度調整部を設けることによって、磁気テープ走行中に角度θを可変に調整することができる。かかる角度調整部は、例えばモジュールを回転させる回転機構を含むことができる。角度調整部については、公知技術を適用できる。
図3は、磁気テープ走行中の角度θの変化に関する説明図である。
走行開始時の角度θであるθinitialは、0°以上または0°超に設定することができる。θinitialが大きいほど、角度θの変化量に対するサーボ信号読み取り素子間実効距離の変化量は大きくなるため、磁気テープの幅方向の寸法変化に対応させてサーボ信号読み取り素子間実効距離を調整する調整能力の点から好ましい。この点からは、θinitialは、1.000°以上であることが好ましく、5.000°以上であることがより好ましく、10.000°以上であることが更に好ましい。一方、磁気テープが走行して磁気ヘッドと接触する際に磁性層表面と磁気ヘッドの接触面とがなす角(一般に、「ラップ角」と呼ばれる。)については、テープ幅方向に関する偏差が小さく保つことが、磁気テープ走行中に磁気ヘッドと磁気テープとが接触して生じる摩擦のテープ幅方向における均一性を高めるうえで有効である。また、上記の摩擦のテープ幅方向における均一性を高めることは、磁気ヘッドの位置追随性および走行安定性の観点から望ましい。上記のラップ角のテープ幅方向における偏差を小さくする観点からは、θinitialは、45.000°以下であることが好ましく、40.000°以下であることがより好ましく、35.000°以下であることが更に好ましい。
磁気テープ走行開始時のヘッド傾き角度であるθinitialは、磁気テープ装置の制御装置等によって設定することができる。
図2および図3に示す例では、素子アレイの軸線は、磁気テープ走行方向に向かって傾いている。ただし、本発明は、かかる例に限定されない。上記磁気テープ装置において、素子アレイの軸線が、磁気テープ走行方向と反対の方向に向かって傾く実施形態も本発明に包含される。本発明および本明細書において、磁気テープ走行中、角度θは、0~90°の範囲で変化させるものとする。即ち、磁気テープ走行開始時に素子アレイの軸線が磁気テープ走行方向に向かって傾いていたならば、磁気テープ走行中、素子アレイの軸線が磁気テープ走行開始時の磁気テープ走行方向と反対の方向に向かって傾くように素子アレイを傾けることはないものとする。また、磁気テープ走行開始時に素子アレイの軸線が磁気テープ走行方向と反対の方向に向かって傾いていたならば、磁気テープ走行中、素子アレイの軸線が磁気テープ走行開始時の磁気テープ走行方向に向かって傾くように素子アレイを傾けることはないものとする。
図3中、中央の図が、走行開始時のモジュールの状態を示している、
図3中、右図は、角度θを、θinitialより大きな角度である角度θとしたときのモジュールの状態を示している。サーボ信号読み取り素子間実効距離Lcosθは、磁気テープ走行開始時のLcosθinitialより小さな値となる。磁気テープ走行中に磁気テープの幅が収縮した(contracted)場合、かかる角度調整を行うことが好ましい。
一方、図3中、左図は、角度θを、θinitialより小さな角度である角度θとしたときのモジュールの状態を示している。サーボ信号読み取り素子間実効距離Lcosθは、磁気テープ走行開始時のLcosθinitialより大きな値となる。磁気テープ走行中に磁気テープの幅が伸長した(expanded)場合、かかる角度調整を行うことが好ましい。
図4は、磁気テープ走行中の角度θの測定方法の説明図である。本発明および本明細書において、磁気テープ走行中の角度θは、以下の方法によって求めるものとする。
一対のサーボ信号読み取り素子1および2の再生信号の位相差(即ち時間差)ΔTを計測する。ΔTの計測は、磁気テープ装置に備えられている計測部によって行うことができる。かかる計測部の構成は公知である。サーボ信号読み取り素子1の中央部とサーボ信号読み取り素子2の中央部との間の距離Lは、光学顕微鏡等によって測定することができる。磁気テープの走行速度が速度vのときに、上記2つのサーボ信号読み取り素子の中央部の磁気テープ走行方向における距離は、Lsinθであり、Lsinθ=v×ΔTの関係が成り立つ。したがって、磁気テープ走行中の角度θは、「θ=arcsin(vΔT/L)」の式によって算出できる。なお、図4右図には、素子アレイの軸線が磁気テープ走行方向に向かって傾いている例を示した。この例では、サーボ信号読み取り素子1の再生信号の位相に対するサーボ信号読み取り素子2の再生信号の位相の位相差(即ち時間差)ΔTを計測する。素子アレイの軸線が磁気テープの走行方向と反対方向に向かって傾いている場合には、サーボ信号読み取り素子2の再生信号の位相に対するサーボ信号読み取り素子1の再生信号の位相の位相差(即ち時間差)としてΔTを計測する点以外、上記方法によってθを求めるものとする。
なお、角度θの測定ピッチ、即ち、テープ長手方向に関する角度θの測定間隔は、テープ長手方向に関するテープ幅変形の周波数に応じて適したピッチを選定することができる。一例として、測定ピッチは例えば250μmとすることができ、後述の実施例および比較例について測定ピッチは250μmとした。
<C>
式a中の「C」は、「C=L{cos(θinitial-Δθ)-cos(θinitial+Δθ)}」により算出される値(単位:μm)である。先に記載したように、Cは、磁気テープ走行中にヘッド傾き角度(角度θ)を変化させてデータの記録および/または再生を行う際に許容されるトラック位置ズレ量の指標になり得ると本発明者は考えている
上記式中のLについては、先に記載した通りである。
θinitialは、走行開始時の角度θであり、先に記載した通りである。
Δθは、磁気テープ走行中の角度θの最大値をθmax、最小値をθminとして、以下の式によって算出されるΔθmaxとΔθminとの中で、より大きな値である。
Δθmax=θmax-θinitial
Δθmin=θinitial-θmin
上記Δθは、磁気テープ走行中の角度θの最大変化量ということができる。なお、「max」はmaximumの略称であり、「min」はminimumの略称である。θmaxおよびθminは、先に記載した方法で求められた磁気テープ走行中の角度θの中の最大値および最小値である。一形態では、θinitialがθmaxであることもでき、θinitialがθminであることもできる。即ち、走行中に角度θが走行開始時より小さくなるのみの場合も走行開始時より大きくなるのみの場合もあり得る。Δθは、0.000°超であることができ、磁気テープの幅方向の寸法変化に対応させてサーボ信号読み取り素子間実効距離を調整する調整能力の観点からは0.001°以上であることが好ましく、0.010°以上であることがより好ましい。また、データの記録時および/または再生時、複数の磁気ヘッド素子間で記録データおよび/または再生データの同期を確保する容易性の観点からは、Δθは、1.000°以下であることが好ましく、0.900°以下であることがより好ましく、0.800°以下であることが更に好ましく、0.700°以下であることが一層好ましく、0.600°以下であることがより一層好ましい。
Cに関しては、上記磁気テープ装置は、式aを満たせばよく、Cの値は特に限定されるものではない。一形態では、Cは、例えば、0μm超、0.1μm以上、0.3μm以上もしくは0.5μm以上であることができ、また、例えば、3.0μm以下、2.5μm以下、2.0μm以下もしくは1.5μm以下であることができる。
[磁気テープ装置の構成]
本発明および本明細書において、「磁気テープ装置」とは、磁気テープへのデータの記録および磁気テープに記録されたデータの再生の少なくとも一方を行うことができる装置を意味するものとする。かかる装置は、一般にドライブと呼ばれる。
図5は、磁気テープ装置の一例を示す概略図である。
図5に示す磁気テープ装置10は、制御装置11からの命令により記録再生ヘッドユニット12を制御し、磁気テープMTへのデータの記録および再生を行う。
磁気テープ装置10は、カートリッジリール130と巻取りリール16を回転制御するスピンドルモーター17A、17Bおよびそれらの駆動装置18A、18Bから磁気テープの長手方向にかかるテンションの検出および調整が可能な構成を有している。
磁気テープ装置10は、磁気テープカートリッジ13を装着可能な構成を有している。
磁気テープ装置10は、磁気テープカートリッジ13内のカートリッジメモリ131について読み取りおよび書き込みが可能なカートリッジメモリリードライト装置14を有している。
磁気テープ装置10に装着された磁気テープカートリッジ13からは、磁気テープMTの端部またはリーダーピンが自動のローディング機構または手動により引き出され、磁気テープMTの磁性層表面が記録再生ヘッドユニット12の記録再生ヘッド表面に接する向きでガイドローラー15A、15Bを通して記録再生ヘッド上をパスし、磁気テープMTが巻取りリール16に巻取られる。
制御装置11からの信号によりスピンドルモーター17Aとスピンドルモーター17Bの回転およびトルクが制御され、磁気テープMTが任意の速度とテンションで走行される。テープ速度の制御および角度θの制御には、磁気テープ上に予め形成されたサーボパターンを利用することができる。テンションの検出のために、磁気テープカートリッジ13と巻取りリール16との間にテンション検出機構を設けてもよい。テンションの調整は、スピンドルモーター17Aおよび17Bによる制御の他に、ガイドローラー15Aおよび15Bを用いて行ってもよい。
カートリッジメモリリードライト装置14は、制御装置11からの命令により、カートリッジメモリ131の情報の読み出しと書き込みが可能に構成されている。カートリッジメモリリードライト装置14とカートリッジメモリ131との間の通信方式としては、例えば、ISO(International Organization for Standardization)14443方式を採用できる。
制御装置11は、例えば、制御部、記憶部、通信部等を含む。
記録再生ヘッドユニット12は、例えば、記録再生ヘッド、記録再生ヘッドのトラック幅方向の位置を調整するサーボトラッキングアクチュエータ、記録再生アンプ19、制御装置11と接続するためのコネクタケーブル等から構成される。記録再生ヘッドについては、先に磁気ヘッドについて説明した通りである。
記録再生ヘッドユニット12は、制御装置11からの命令に応じて、磁気テープMTに対してデータを記録することが可能に構成されている。また、制御装置11からの命令に応じて、磁気テープMTに記録されたデータを再生することが可能に構成されている。
制御装置11は、磁気テープMTの走行中にサーボバンドから読み取られるサーボ信号から磁気テープの走行位置を求め、狙いの走行位置(トラック位置)に記録素子および/または再生素子が位置するように、サーボトラッキングアクチュエータを制御する機構を有している。このトラック位置の制御は、例えば、フィードバック制御により行われる。制御装置11は、磁気テープMTの走行中に隣り合う2本のサーボバンドから読み取られるサーボ信号から、サーボバンド間隔を求める機構を有している。制御装置11は、求めたサーボバンド間隔の情報を、制御装置11の内部の記憶部、カートリッジメモリ131、外部の接続機器等に保存することができる。また、制御装置11は、角度θを、走行中の磁気テープの幅方向の寸法情報に応じて変化させる。これにより、サーボ信号読み取り素子間実効距離を、サーボバンドの間隔に近づけるか一致させることができる。上記寸法情報は、磁気テープ上に予め形成されたサーボパターンを利用して取得することができる。角度θの調整は、例えば、フィードバック制御により行うことができる。例えば、角度θの調整は、後述の実施例に記載の方法によって行うことができる。または、特開2016-524774号公報(特許文献1)またはUS2019/0164573A1(特許文献2)に記載の方法によって、角度θの調整を行うこともできる。
例えば上記のように制御装置11を利用する等して、上記磁気テープ装置において、磁気テープの走行中、例えば磁気テープへのデータの記録時および/または磁気テープに記録されたデータの再生時、角度θを可変に調整することができる。
データの記録および/または記録されたデータの再生の際には、まず、サーボ信号を用いたトラッキングを行うことができる。即ち、サーボ信号読み取り素子を所定のサーボトラックに追従させることによって、磁気ヘッド素子が、目的とするデータトラック上を通過するように制御することができる。データトラックの移動は、サーボ信号読み取り素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行われる。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
図6に、データバンドおよびサーボバンドの配置例を示す。図6中、磁気テープMTの磁性層には、複数のサーボバンド1が、ガイドバンド3に挟まれて配置されている。2本のサーボバンドに挟まれた複数の領域2が、データバンドである。サーボパターンは、磁化領域であって、サーボライトヘッドにより磁性層の特定の領域を磁化することによって形成される。サーボライトヘッドにより磁化する領域(サーボパターンを形成する位置)は規格により定められている。例えば業界標準規格であるLTO Ultriumフォーマットテープには、磁気テープ製造時に、図7に示すようにテープ幅方向に対して傾斜した複数のサーボパターンが、サーボバンド上に形成される。詳しくは、図7中、サーボバンド1上のサーボフレームSFは、サーボサブフレーム1(SSF1)およびサーボサブフレーム2(SSF2)から構成される。サーボサブフレーム1は、Aバースト(図7中、符号A)およびBバースト(図7中、符号B)から構成される。AバーストはサーボパターンA1~A5から構成され、BバーストはサーボパターンB1~B5から構成される。一方、サーボサブフレーム2は、Cバースト(図7中、符号C)およびDバースト(図7中、符号D)から構成される。CバーストはサーボパターンC1~C4から構成され、DバーストはサーボパターンD1~D4から構成される。このような18本のサーボパターンが5本と4本のセットで、5、5、4、4、の配列で並べられたサブフレームに配置され、サーボフレームを識別するために用いられる。図7には、説明のために1つのサーボフレームを示した。ただし、実際には、タイミングベースサーボ方式のヘッドトラッキングが行われる磁気テープの磁性層には、各サーボバンドに、複数のサーボフレームが走行方向に配置されている。図7中、矢印は磁気テープ走行方向を示している。例えば、LTO Ultriumフォーマットテープは、通常、磁性層の各サーボバンドに、テープ長1mあたり5000以上のサーボフレームを有する。
[磁気テープカートリッジ]
磁気テープ装置に装着される前および磁気テープ装置から取り出された後の磁気テープカートリッジには、一般に、カートリッジ本体内部に磁気テープがカートリッジリールに巻回されて収容されている。カートリッジリールは、カートリッジ本体内部に回転可能に備えられている。磁気テープカートリッジとしては、カートリッジ本体内部にリールを1つ具備する単リール型の磁気テープカートリッジおよびカートリッジ本体内部にリールを2つ具備する双リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。上記磁気テープカートリッジは、一形態では単リール型の磁気テープカートリッジであることができ、他の一形態では双リール型の磁気テープカートリッジであることができる。双リール型の磁気テープカートリッジについて、カートリッジリールとは、データの記録および/または再生後の磁気テープが保管される際に主に巻取られる側のリールをいうものとし、他方のリールを巻取りリールというものとする。単リール型の磁気テープカートリッジは、磁気テープへのデータの記録および/または再生のために磁気テープ装置に装着されると、磁気テープカートリッジから磁気テープが引き出されて、例えば図5に示されているように、磁気テープ装置の巻取りリールに巻取られる。磁気テープカートリッジから巻取りリールまでの磁気テープ搬送経路には、磁気ヘッドが配置されている。磁気テープカートリッジのカートリッジリール(「供給リール」とも呼ばれる。)と磁気テープ装置の巻取りリールとの間で、磁気テープの送り出しと巻取りが行われることによって、磁気テープが走行する。この間、例えば磁気ヘッドと磁気テープの磁性層表面とが接触し摺動することにより、データの記録および/または再生が行われる。これに対し、双リール型の磁気テープカートリッジには、供給リールと巻取りリールの両リールが、磁気テープカートリッジ内部に具備されている。一形態では、上記磁気テープカートリッジは、データストレージ分野で近年主に採用されている単リール型の磁気テープカートリッジであることが好ましい。
上記磁気テープカートリッジは、一形態では、カートリッジメモリを含むことができる。カートリッジメモリは、例えば不揮発メモリであることができ、角度θ調整情報が既に記録されているか、または角度θ調整情報が記録される。角度θ調整情報は、磁気テープ装置内での磁気テープ走行中、角度θを調整するための情報である。例えば、角度θ調整情報としては、データ記録時の磁気テープの長手方向の各位置におけるサーボバンド間隔の値を記録することができる。例えば、磁気テープに記録されたデータを再生する際、再生時にサーボバンド間隔の値を測定し、カートリッジメモリに記録された同じ長手位置における記録時のサーボバンド間隔との差分の絶対値が0に近づくように、磁気テープ装置の制御装置によって角度θを変化させることができる。
図8は、磁気テープカートリッジの一例の斜視図である。図8には、単リール型の磁気テープカートリッジが示されている。
図8に示されている磁気テープカートリッジ13は、ケース112を有している。ケース112は、矩形の箱状に形成されている。ケース112は、通常、ポリカーボネート等の樹脂製である。ケース112の内部には、リール130が1つだけ回転可能に収容されている。
図9は、リールに磁気テープを巻回し始めるときの斜視図である。図10は、リールに磁気テープを巻回し終えたときの斜視図である。
リール130は、軸心部を構成する円筒状のリールハブ122を有する。
リールハブは、磁気テープカートリッジ内で磁気テープが巻回される軸心部を構成する円筒状部材である。上記磁気テープカートリッジにおいて、リールハブは、単層構成の円筒状部材であることができ、2層以上の多層構成の円筒状部材であることもできる。製造コストおよび製造の容易性の観点からは、リールハブは、単層構成の円筒状部材であることが好ましい。
本発明者は、磁気テープカートリッジ内でリールが巻回されるリールハブの剛性が高いことは、媒体ライフの値を大きくするために好ましいと考えている。これは、以下の理由による。
リールハブは、磁気テープが巻回されることにより、中心方向へ巻締め力を受け、直径が小さくなる方向へ変形する傾向があると考えられ、剛性が低いリールハブほど、変形し易いと考えられる。磁気テープのカートリッジ芯側では、リールハブの変形に対応するように、テープ長が短くなる方向に圧縮応力が発生し、次いで、この圧縮応力に起因する圧縮によって、テープ幅が広がる方向に引張応力が発生すると推察される。こうして発生する応力が大きいほど、磁気テープカートリッジ内での保管中に磁気テープに大きな変形が生じ易いと考えられる。これに対し、リールハブの剛性が高いと、上記の変形の抑制が可能になるため、上記応力の発生の抑制も可能になり、このことが媒体ライフの値を大きくすることに寄与し得ると推察される。この点から、一形態では、リールハブの少なくとも外周側表層部を構成する材料の曲げ弾性率は、5GPa以上であることが好ましく、6GPa以上であることがより好ましく、7GPa以上であることが更に好ましく、8GPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ弾性率は、例えば、20GPa以下、15GPa以下または10GPa以下であることができる。ただし、上記曲げ弾性率が高いことは、リールハブの変形抑制の観点から好ましいため、上記曲げ弾性率は、ここで例示した値を超えてもよい。
上記曲げ弾性率は、リールハブが単層構成の円筒状部材である場合、かかる円筒状部材を構成する材料の曲げ弾性率である。一方、リールハブが2層以上の多層構成の円筒状部材の場合、上記曲げ弾性率は、かかるリールハブの少なくとも外周側表層部を構成する材料の曲げ弾性率である。本発明および本明細書において、「曲げ弾性率」とは、JIS(Japanese Industrial Standards) K 7171:2016にしたがい求められる値である。JIS K 7171:2016は、2010年に第5版として発行されたISO(International Organization for Standardization) 178およびAmendment 1:2013を基に、技術内容を変更することなく作成された日本工業規格である。曲げ弾性率を測定するために使用する試験片は、JIS K 7171:2016の項目6「試験片」にしたがい準備する。
リールハブを構成する材料としては、樹脂、金属等を挙げることができる。金属としては、例えばアルミニウムを挙げることができる。コスト面、生産性等の観点からは、樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、繊維強化樹脂を挙げることができる。繊維強化樹脂としては、例えば、ガラス繊維強化樹脂、炭素繊維強化樹脂等が挙げられる。かかる繊維強化樹脂としては、繊維強化ポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートは調達容易であり、射出成形機等の汎用的な成形機によって高精度かつ安価に成形可能であるためである。また、ガラス繊維強化樹脂において、ガラス繊維の含有率は、15質量%以上であることが好ましい。ガラス繊維の含有率が高いほど、ガラス繊維強化樹脂の曲げ弾性率は高くなる傾向がある。一例として、ガラス繊維強化樹脂のガラス繊維の含有率は、50質量%以下または40質量%以下であることができる。一形態では、リールハブを構成する樹脂としては、ガラス繊維強化ポリカーボネートが好ましい。また、リールハブを構成する樹脂としては、一般にスーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高強度の樹脂等を挙げることもできる。スーパーエンジニアリングプラスチックの一例としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)が挙げられる。
リールハブの厚みは2.0~3.0mmの範囲であることが、リールハブの強度および成形時の寸法精度を両立する観点から好ましい。リールハブの厚みとは、2層以上の多層構成のリールハブについては、かかる多層の総厚をいうものとする。リールハブの外径は、通常、磁気テープ装置の規格により定められており、例えば20~60mmの範囲であることができる。
リールハブ122の両端部には、リールハブ122の下端部および上端部からそれぞれ半径方向外側に張り出すフランジ(下フランジ124および上フランジ126)が設けられている。ここでは、「上」および「下」について、磁気テープカートリッジが磁気テープ装置に装着される際、上方に位置する側を「上」、下方に位置する側を「下」と記載する。下フランジ124および上フランジ126の一方または両方は、リールハブ122の上端部側および/または下端部側を補強する観点から、リールハブ122と一体的に構成されていることが好ましい。一体的に構成されているとは、別部材ではなく、1つの部材として構成されていることをいうものとする。第一の形態では、リールハブ122と上フランジ126とが1つの部材として構成され、この部材が、別部材として構成された下フランジ124と公知の方法で接合される。第二の形態では、リールハブ122と下フランジ124とが1つの部材として構成され、この部材が、別部材として構成された上フランジ126と公知の方法で接合される。上記磁気テープカートリッジのリールは、いずれの形態であってもよい。各部材は、射出成形等の公知の成形方法によって作製することができる。
磁気テープMTは、テープ内側末端Tf(図9参照)を起点として、リールハブ122の外周に巻回される。磁気テープカートリッジの製造時に磁気テープをカートリッジリールのリールハブに巻回する際に磁気テープ長手方向に加わるテンション(以下、「製造時巻取りテンション」とも呼ぶ。)を小さくすることも媒体ライフの値を大きくすることに寄与し得る。この点から、製造時巻取りテンションは、0.40N以下であることが好ましく、例えば0.30N以下であることもできる。製造時巻取りテンションは、例えば0.10N以上もしくは0.20N以上であることができ、またはテンションフリーとすることもできる。製造時巻取りテンションは、一定値であることができ、変化させることもできる。製造時巻取りテンションは、磁気テープカートリッジの製造装置において設定される設定値とする。
ケース112の側壁には、リール130に巻回された磁気テープMTを引き出すための開口114があり、この開口114から引き出される磁気テープMTのテープ外側末端Teには、磁気テープ装置(図示せず)の引出部材(図示せず)によって係止されつつ引き出し操作されるリーダーピン116が固着されている。
また、開口114は、ドア118によって開閉されるようになっている。ドア118は、開口114を閉塞可能な大きさの矩形の板状に形成されており、その開口114を閉塞する方向へ付勢部材(図示せず)により付勢されている。そして、ドア118は、磁気テープカートリッジ13が磁気テープ装置に装着されると、付勢部材の付勢力に抗して開放されるようになっている。
磁気テープカートリッジのその他の詳細については、公知技術を適用することができる。磁気テープカートリッジに収容される磁気テープの全長は、特に限定されず、例えば800m~2500m程度の範囲であることができる。磁気テープカートリッジ1巻に収容されるテープ全長が長いほど、磁気テープカートリッジの高容量化の観点から好ましい。
[磁気テープ]
上記磁気テープ装置は、磁気テープを含む。上記磁気テープ装置は、磁気テープがリールに巻回されて収容されている磁気テープカートリッジを着脱可能に含むことができる。以下、上記磁気テープについて更に詳細に説明する。
<非磁性支持体>
上記磁気テープは、非磁性支持体および強磁性粉末を含む磁性層を有する。非磁性支持体(以下、単に「支持体」とも記載する。)としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。
上記磁気テープの非磁性支持体は、一形態では、芳香族ポリエステル支持体であることができる。本発明および本明細書において、「芳香族ポリエステル」とは、芳香族骨格および複数のエステル結合を含む樹脂を意味し、「芳香族ポリエステル支持体」とは、少なくとも1層の芳香族ポリエステルフィルムを含む支持体を意味する。「芳香族ポリエステルフィルム」とは、このフィルムを構成する成分の中で質量基準で最も多くを占める成分が芳香族ポリエステルであるフィルムをいうものとする。本発明および本明細書における「芳香族ポリエステル支持体」には、この支持体に含まれる樹脂フィルムがすべて芳香族ポリエステルフィルムであるものと、芳香族ポリエステルフィルムと他の樹脂フィルムとを含むものとが包含される。芳香族ポリエステル支持体の具体的形態としては、単層の芳香族ポリエステルフィルム、構成成分が同じ2層以上の芳香族ポリエステルフィルムの積層フィルム、構成成分が異なる2層以上の芳香族ポリエステルフィルムの積層フィルム、1層以上の芳香族ポリエステルフィルムおよび1層以上の芳香族ポリエステル以外の樹脂フィルムを含む積層フィルム等を挙げることができる。積層フィルムにおいて隣り合う2層の間に接着層等が任意に含まれていてもよい。また、芳香族ポリエステル支持体には、一方または両方の表面に蒸着等によって形成された金属膜および/または金属酸化物膜が任意に含まれていてもよい。以上については、本発明および本明細書における「ポリエチレンテレフタレート支持体」および「ポリエチレンナフタレート支持体」についても同様である。
芳香族ポリエステルが有する芳香族骨格に含まれる芳香環は特に限定されるものではない。芳香環の具体例としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、ベンゼン環を含むポリエステルであって、エチレングリコールとテレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルとの重縮合によって得られる樹脂である。本発明および本明細書における「ポリエチレンテレフタレート」には、上記成分に加えて一種以上の他の成分(例えば、共重合成分、末端または側鎖に導入される成分等)を有する構造のものも包含される。
ポリエチレンナフタレート(PEN)は、ナフタレン環を含むポリエステルであって、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化反応を行い、その後にエステル交換反応および重縮合反応を行って得られる樹脂である。本発明および本明細書における「ポリエチレンナフタレート」には、上記成分に加えて一種以上の他の成分(例えば、共重合成分、末端または側鎖に導入される成分等)を有する構造のものも包含される。
また、一形態では、上記磁気テープの非磁性支持体は、芳香族ポリアミド支持体であることができる。本発明および本明細書において、「芳香族ポリアミド」とは、芳香族骨格および複数のアミド結合を含む樹脂を意味する。芳香族ポリアミドが有する芳香族骨格に含まれる芳香環は特に限定されるものではない。芳香環の具体例としては、例えば、ベンゼン環等を挙げることができる。「芳香族ポリアミド支持体」とは、少なくとも1層の芳香族ポリアミドフィルムを含む支持体を意味する。「芳香族ポリアミドフィルム」とは、このフィルムを構成する成分の中で質量基準で最も多くを占める成分が芳香族ポリアミドであるフィルムをいうものとする。本発明および本明細書における「芳香族ポリアミド支持体」には、この支持体に含まれる樹脂フィルムがすべて芳香族ポリアミドフィルムであるものと、芳香族ポリアミドフィルムと他の樹脂フィルムとを含むものとが包含される。芳香族ポリアミド支持体の具体的形態としては、単層の芳香族ポリアミドフィルム、構成成分が同じ2層以上の芳香族ポリアミドフィルムの積層フィルム、構成成分が異なる2層以上の芳香族ポリアミドフィルムの積層フィルム、1層以上の芳香族ポリアミドフィルムおよび1層以上の芳香族ポリアミド以外の樹脂フィルムを含む積層フィルム等を挙げることができる。積層フィルムにおいて隣り合う2層の間に接着層等が任意に含まれていてもよい。また、芳香族ポリアミド支持体には、一方または両方の表面に蒸着等によって形成された金属膜および/または金属酸化物膜が任意に含まれていてもよい。
また、非磁性支持体は、二軸延伸フィルムであることができ、コロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理等が施されたフィルムであってもよい。
非磁性支持体の物性の指標としては、例えば、含水率が挙げられる。本発明および本明細書において、非磁性支持体の含水率は、以下の方法により求められる値である。後述の表に示されている含水率は、以下の方法によって求めた値である。
含水率を測定する対象の非磁性支持体から切り出した試料片(例えば数グラムの質量の試料片)を、温度180℃圧力100Pa(パスカル)以下の真空乾燥器内で恒量になるまで乾燥させる。こうして乾燥させた試料片の質量をW1とする。W1は、上記真空乾燥器から取り出した後に30秒以内に温度23℃相対湿度50%の測定環境において測定される値である。次に、この試料片を温度25℃相対湿度75%の環境下に48時間置いた後の質量をW2とする。W2は、上記環境から取り出した後に30秒以内に温度23℃相対湿度50%の測定環境において測定される値である。含水率は、以下の式により算出される。
含水率(%)=[(W2-W1)/W1]×100
例えば、磁気テープから磁性層等の非磁性支持体以外の部分を公知の方法(例えば有機溶媒を使用した脱膜等)によって除去した後、上記方法によって非磁性支持体の含水率を求めることもできる。
一形態では、上記磁気テープの非磁性支持体は、含水率が2.0%以下であることが好ましく、1.8%以下であることがより好ましく、1.6%以下であることが更に好ましく、1.4%以下であることが一層好ましく、1.2%以下であることがより一層好ましく、1.0%以下であることが更に一層好ましい。また、上記磁気テープの非磁性支持体の含水率は、0%、0%以上、0%超または0.1%以上であることができる。含水率が低い非磁性支持体を使用することは、媒体ライフの値を大きくすることに寄与し得る。これは主に、含水率が低い非磁性支持体を使用することが先に記載した方法によって求められる「B」の値を小さくすることに寄与すると考えられるためである。
非磁性支持体の物性の指標としては、ヤング率も挙げられる。本発明および本明細書において、非磁性支持体のヤング率は、温度23℃相対湿度50%の測定環境において、以下の方法によって測定される値である。後述の表に示されているヤング率は、万能引張試験装置として東洋ボールドウィン社製テンシロンを使用して以下の方法によって求めた値である。
測定対象の非磁性支持体から切り出した試料片を、チャック間距離100mm、引張速度10mm/分およびチャート速度500mm/分の条件で、万能引張試験装置にて引っ張る。万能引張試験装置としては、例えば、東洋ボールドウィン社製テンシロン等の市販の万能引張試験装置または公知の構成の万能引張試験装置を使用することができる。こうして得られた荷重-伸び曲線の立ち上がり部の接線より、上記試料片の長手方向および幅方向のヤング率をそれぞれ算出する。ここで試料片の長手方向および幅方向とは、この試料片が磁気テープに含まれていたときの長手方向および幅方向を意味する。
例えば、磁気テープから磁性層等の非磁性支持体以外の部分を公知の方法(例えば有機溶媒を使用した脱膜等)によって除去した後、上記方法によって非磁性支持体の長手方向および幅方向のヤング率を求めることもできる。
一形態では、上記磁気テープの非磁性支持体は、長手方向のヤング率が3000MPa以上であることが好ましく、4000MPa以上であることがより好ましく、5000MPa以上であることが更に好ましく、6000MPa以上であることが一層好ましい。また、上記磁気テープの非磁性支持体の長手方向のヤング率は、15000MPa以下、13000MPa以下または12000MPa以下であることができる。幅方向については、上記磁気テープの非磁性支持体は、幅方向のヤング率が2000MPa以上であることが好ましく、3000MPa以上であることがより好ましく、4000MPa以上であることが更に好ましく、5000MPa以上であることが一層好ましい。また、上記磁気テープの非磁性支持体の幅方向のヤング率は、12000MPa以下、11000MPa以下または10000MPa以下であることができる。磁気テープの製造時、非磁性支持体は、通常、フィルムのMD方向(Machine direction)を長手方向、TD方向(Transverse diretion)を幅方向として使用される。また、一形態では、長手方向のヤング率が幅方向のヤング率より大きいことが好ましく、差分(長手方向のヤング率-幅方向のヤング率)が800~3000MPaの範囲であることがより好ましい。媒体ライフは、非磁性支持体のヤング率によっても制御することができる。
非磁性支持体の含水率およびヤング率は、支持体を構成する成分の種類および混合比、支持体の製造条件等によって制御することができる。例えば、二軸延伸処理において各方向での延伸倍率を調整することによって、長手方向におけるヤング率と幅方向におけるヤング率をそれぞれ制御することができる。
<磁性層>
(強磁性粉末)
上記磁気テープの磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましく、20nm以下であることがなお一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
六方晶フェライト粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
本発明および本明細書において、「六方晶フェライト粉末」とは、X線回折分析によって、主相として六方晶フェライトの結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。主相とは、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが帰属する構造をいう。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが六方晶フェライトの結晶構造に帰属される場合、六方晶フェライトの結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。X線回折分析によって単一の構造のみが検出された場合には、この検出された構造を主相とする。六方晶フェライトの結晶構造は、構成原子として、少なくとも鉄原子、二価金属原子および酸素原子を含む。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、ストロンチウム原子、バリウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。本発明および本明細書において、六方晶ストロンチウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がストロンチウム原子であるものをいい、六方晶バリウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がバリウム原子であるものをいう。主な二価金属原子とは、この粉末に含まれる二価金属原子の中で、原子%基準で最も多くを占める二価金属原子をいうものとする。ただし、上記の二価金属原子には、希土類原子は包含されないものとする。本発明および本明細書における「希土類原子」は、スカンジウム原子(Sc)、イットリウム原子(Y)、およびランタノイド原子からなる群から選択される。ランタノイド原子は、ランタン原子(La)、セリウム原子(Ce)、プラセオジム原子(Pr)、ネオジム原子(Nd)、プロメチウム原子(Pm)、サマリウム原子(Sm)、ユウロピウム原子(Eu)、ガドリニウム原子(Gd)、テルビウム原子(Tb)、ジスプロシウム原子(Dy)、ホルミウム原子(Ho)、エルビウム原子(Er)、ツリウム原子(Tm)、イッテルビウム原子(Yb)、およびルテチウム原子(Lu)からなる群から選択される。
以下に、六方晶フェライト粉末の一形態である六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、更に詳細に説明する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800~1600nmの範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化された六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800nm以上であり、例えば850nm以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、1500nm以下であることがより好ましく、1400nm以下であることが更に好ましく、1300nm以下であることが一層好ましく、1200nm以下であることがより一層好ましく、1100nm以下であることが更により一層好ましい。六方晶バリウムフェライト粉末の活性化体積についても、同様である。
「活性化体積」とは、磁化反転の単位であって、粒子の磁気的な大きさを示す指標である。本発明および本明細書に記載の活性化体積および後述の異方性定数Kuは、振動試料型磁力計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで測定し(測定温度:23℃±1℃)、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。なお異方性定数Kuの単位に関して、1erg/cc=1.0×10-1J/mである。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、好ましくは1.8×10J/m以上のKuを有することができ、より好ましくは2.0×10J/m以上のKuを有することができる。また、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のKuは、例えば2.5×10J/m以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含んでいてもよく、含まなくてもよい。六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、鉄原子100原子%に対して、0.5~5.0原子%の含有率(バルク含有率)で希土類原子を含むことが好ましい。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、希土類原子表層部偏在性を有することができる。本発明および本明細書における「希土類原子表層部偏在性」とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により部分溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子表層部含有率」または希土類原子に関して単に「表層部含有率」と記載する。)が、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により全溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子バルク含有率」または希土類原子に関して単に「バルク含有率」と記載する。)と、
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶ストロンチウムフェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、希土類原子含有率(バルク含有率)は、鉄原子100原子%に対して0.5~5.0原子%の範囲であることが好ましい。上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることは、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することに寄与すると考えられる。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末が上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることにより、異方性定数Kuを高めることができるためと推察される。異方性定数Kuは、この値が高いほど、いわゆる熱揺らぎと呼ばれる現象の発生を抑制すること(換言すれば熱的安定性を向上させること)ができる。熱揺らぎの発生が抑制されることにより、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の粒子表層部に希土類原子が偏在することが、表層部の結晶格子内の鉄(Fe)のサイトのスピンを安定化することに寄与し、これにより異方性定数Kuが高まるのではないかと推察される。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気テープの走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
上記バルク含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる含有率である。なお本発明および本明細書において、特記しない限り、原子について含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められるバルク含有率をいうものとする。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子として1種の希土類原子のみ含んでもよく、2種以上の希土類原子を含んでもよい。2種以上の希土類原子を含む場合の上記バルク含有率は、2種以上の希土類原子の合計について求められる。この点は、本発明および本明細書における他の成分についても同様である。即ち、特記しない限り、ある成分は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いられる場合の含有量または含有率とは、2種以上の合計についていうものとする。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、含まれる希土類原子は、希土類原子のいずれか1種以上であればよい。繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点から好ましい希土類原子としては、ネオジム原子、サマリウム原子、イットリウム原子およびジスプロシウム原子を挙げることができ、ネオジム原子、サマリウム原子およびイットリウム原子がより好ましく、ネオジム原子が更に好ましい。
希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、偏在の程度は限定されるものではない。例えば、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は1.0超であり、1.5以上であることができる。「表層部含有率/バルク含有率」が1.0より大きいことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。また、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は、例えば、10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、または4.0以下であることができる。ただし、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、上記の「表層部含有率/バルク含有率」は、例示した上限または下限に限定されるものではない。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の部分溶解および全溶解について、以下に説明する。粉末として存在している六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、部分溶解および全溶解する試料粉末は、同一ロットの粉末から採取する。一方、磁気テープの磁性層に含まれている六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、磁性層から取り出した六方晶ストロンチウムフェライト粉末の一部を部分溶解に付し、他の一部を全溶解に付す。磁性層からの六方晶ストロンチウムフェライト粉末の取り出しは、例えば、特開2015-91747号公報の段落0032に記載の方法によって行うことができる。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mLを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、希土類原子を含むものの希土類原子表層部偏在性を持たない六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含まない六方晶ストロンチウムフェライト粉末と比べてσsが大きく低下する傾向が見られた。これに対し、そのようなσsの大きな低下を抑制するうえでも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末は好ましいと考えられる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のσsは、45A・m/kg以上であることができ、47A・m/kg以上であることもできる。一方、σsは、ノイズ低減の観点からは、80A・m/kg以下であることが好ましく、60A・m/kg以下であることがより好ましい。σsは、振動試料型磁力計等の磁気特性を測定可能な公知の測定装置を用いて測定することができる。本発明および本明細書において、特記しない限り、質量磁化σsは、磁場強度15kOeで測定される値とする。1[kOe]=10/4π[A/m]である。
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の構成原子の含有率(バルク含有率)に関して、ストロンチウム原子含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば2.0~15.0原子%の範囲であることができる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、この粉末に含まれる二価金属原子がストロンチウム原子のみであることができる。また他の一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、ストロンチウム原子に加えて1種以上の他の二価金属原子を含むこともできる。例えば、バリウム原子および/またはカルシウム原子を含むことができる。ストロンチウム原子以外の他の二価金属原子が含まれる場合、六方晶ストロンチウムフェライト粉末におけるバリウム原子含有率およびカルシウム原子含有率は、それぞれ、例えば、鉄原子100原子%に対して、0.05~5.0原子%の範囲であることができる。
六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。結晶構造は、X線回折分析によって確認することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によって、単一の結晶構造または2種以上の結晶構造が検出されるものであることができる。例えば一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によってM型の結晶構造のみが検出されるものであることができる。例えば、M型の六方晶フェライトは、AFe1219の組成式で表される。ここでAは二価金属原子を表し、六方晶ストロンチウムフェライト粉末がM型である場合、Aはストロンチウム原子(Sr)のみであるか、またはAとして複数の二価金属原子が含まれる場合には、上記の通り原子%基準で最も多くをストロンチウム原子(Sr)が占める。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の二価金属原子含有率は、通常、六方晶フェライトの結晶構造の種類により定まるものであり、特に限定されるものではない。鉄原子含有率および酸素原子含有率についても、同様である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、少なくとも、鉄原子、ストロンチウム原子および酸素原子を含み、更に希土類原子を含むこともできる。更に、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、これら原子以外の原子を含んでもよく、含まなくてもよい。一例として、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、アルミニウム原子(Al)を含むものであってもよい。アルミニウム原子の含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば0.5~10.0原子%であることができる。繰り返し再生における再生出力低下をより一層抑制する観点からは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子を含み、これら原子以外の原子の含有率が、鉄原子100原子%に対して、10.0原子%以下であることが好ましく、0~5.0原子%の範囲であることがより好ましく、0原子%であってもよい。即ち、一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子以外の原子を含まなくてもよい。上記の原子%で表示される含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる各原子の含有率(単位:質量%)を、各原子の原子量を用いて原子%表示の値に換算して求められる。また、本発明および本明細書において、ある原子について「含まない」とは、全溶解してICP分析装置により測定される含有率が0質量%であることをいう。ICP分析装置の検出限界は、通常、質量基準で0.01ppm(parts per million)以下である。上記の「含まない」とは、ICP分析装置の検出限界未満の量で含まれることを包含する意味で用いるものとする。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、ビスマス原子(Bi)を含まないものであることができる。
金属粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
ε-酸化鉄粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気テープの磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300~1500nmの範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化されたε-酸化鉄粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300nm以上であり、例えば500nm以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、1400nm以下であることがより好ましく、1300nm以下であることが更に好ましく、1200nm以下であることが一層好ましく、1100nm以下であることがより一層好ましい。
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。ε-酸化鉄粉末は、好ましくは3.0×10J/m以上のKuを有することができ、より好ましくは8.0×10J/m以上のKuを有することができる。また、ε-酸化鉄粉末のKuは、例えば3.0×10J/m以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し、好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、一形態では、ε-酸化鉄粉末のσsは、8A・m/kg以上であることができ、12A・m/kg以上であることもできる。一方、ε-酸化鉄粉末のσsは、ノイズ低減の観点からは、40A・m/kg以下であることが好ましく、35A・m/kg以下であることがより好ましい。
本発明および本明細書において、特記しない限り、強磁性粉末等の各種粉末の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、以下の方法により測定される値とする。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントするか、ディスプレイに表示する等して、粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している形態に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している形態も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
粒子サイズ測定のために磁気テープから試料粉末を採取する方法としては、例えば特開2011-048878号公報の段落0015に記載の方法を採用することができる。
本発明および本明細書において、特記しない限り、粉末を構成する粒子のサイズ(粒子サイズ)は、上記の粒子写真において観察される粒子の形状が、
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものをいう。
また、粉末の平均針状比は、上記測定において粒子の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粒子の(長軸長/短軸長)の値を求め、上記500個の粒子について得た値の算術平均を指す。ここで、特記しない限り、短軸長とは、上記粒子サイズの定義で(1)の場合は、粒子を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚みまたは高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
磁性層における強磁性粉末の含有率(充填率)は、磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。磁性層において強磁性粉末の充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
(結合剤)
上記磁気テープは塗布型の磁気テープであることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。結合剤とは、1種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気テープの結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。
以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。結合剤は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば1.0~30.0質量部の量で使用することができる。
(硬化剤)
結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一形態では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一形態では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。この点は、他の層を形成するために用いられる組成物が硬化剤を含む場合に、この組成物を用いて形成される層についても同様である。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011-216149号公報の段落0124~0125を参照できる。硬化剤は、磁性層形成用組成物中に、結合剤100.0質量部に対して例えば0~80.0質量部、磁性層の強度向上の観点からは好ましくは50.0~80.0質量部の量で使用することができる。
(添加剤)
磁性層には、必要に応じて1種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して使用することができる。または、公知の方法で合成された化合物を添加剤として使用することもできる。添加剤は任意の量で使用することができる。添加剤の一例としては、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末(例えば無機粉末、カーボンブラック等)、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。例えば、潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030~0033、0035および0036を参照できる。後述する非磁性層に潤滑剤が含まれていてもよい。非磁性層に含まれ得る潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030、0031、0034、0035および0036を参照できる。分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061および0071を参照できる。また、ポリアルキレンイミン鎖およびビニルポリマー鎖を有する化合物は、強磁性粉末の分散性向上のための分散剤としての働きを示すことができる。更に、上記化合物は、磁性層の強度向上にも寄与し得る。磁性層の強度を高めることは、後述する裏写りの発生を抑制することにつながり得る。このことは、媒体ライフの値を大きくすることに寄与し得る。ポリアルキレンイミン鎖およびビニルポリマー鎖を有する化合物については、特開2019-169225号公報の段落0024~0064および同公報の実施例を参照できる。上記化合物は、磁性層に、強磁性粉末100.0質量部あたり0.5質量部以上含まれることが好ましく、1.0質量部以上含まれることがより好ましく、3.0質量部以上含まれることが更に好ましく、5.0質量部以上含まれることが一層好ましく、10.0質量部以上含まれることがより一層好ましく、15.0質量部以上含まれることが更により一層好ましく、200質量部以上含まれることがなお一層好ましい。また、上記化合物の磁性層における含有量は、強磁性粉末100.0質量部あたり、40.0質量部以下または35.0質量部以下とすることができる。なお、上記化合物等の分散剤の1種以上を非磁性層形成用組成物に添加してもよい。非磁性層形成用組成物に添加し得る分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061も参照できる。また、磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(例えば非磁性コロイド粒子等)等が挙げられる。例えば研磨剤については、特開2004-273070号公報の段落0030~0032を参照できる。突起形成剤としては、コロイド粒子が好ましく、入手容易性の点から無機コロイド粒子が好ましく、無機酸化物コロイド粒子がより好ましく、シリカコロイド粒子(コロイダルシリカ)がより一層好ましい。研磨剤および突起形成剤の平均粒子サイズは、それぞれ好ましくは30~200nmの範囲であり、より好ましくは50~100nmの範囲である。
以上説明した磁性層は、非磁性支持体表面上に直接、または非磁性層を介して間接的に、設けることができる。
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末を含む非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機物質の粉末でも有機物質の粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質の粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010-24113号公報の段落0040および0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有率(充填率)は、非磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。
非磁性層は、結合剤を含むことができ、添加剤を含むこともできる。非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細については、非磁性層に関する公知技術を適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有量、添加剤の種類および含有量等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。
本発明および本明細書において、非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
<バックコート層>
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもでき、有さなくてもよい。バックコート層の非磁性粉末については、非磁性層の非磁性粉末に関する上記記載を参照できる。
磁性層表面の凹みは、磁気テープの製造工程等において、ロール状に巻かれた状態で磁性層表面と裏面とが接触した状態で、裏面の表面形状が磁性層表面に転写されること(いわゆる裏写り)によって形成され得る。上記裏面とは、バックコート層を有する場合にはバックコート層表面であり、有さない場合には支持体表面である。磁性層表面に存在する凹みの数が多いと、および/または、深い凹みが存在すると、保管中および/または使用中に磁気テープの異なる部分間で温度の違いおよび/または含水状態の違いが生じ易いと考えられる。このことは、磁気テープの変形が局所的に大きくなって結果的に媒体ライフの値が小さくなってしまうことにつながると推察される。したがって、媒体ライフの値を大きくするためには、磁性層表面の凹みの発生を抑制することが好ましい。この点から、先に記載したように磁性層にポリアルキレンイミン鎖およびビニルポリマー鎖を有する化合物を含有させることは好ましい。また、磁性層表面の凹みの存在状態の制御方法の一例としては、裏面の表面形状を調整すべく、例えばバックコート層を形成するための組成物に添加する成分の種類を選択することを挙げることができる。この点から、バックコート層の非磁性粉末としては、カーボンブラックとカーボンブラック以外の非磁性粉末を併用するか、またはカーボンブラックを用いる(即ち、バックコート層の非磁性粉末がカーボンブラックからなる)ことが好ましい。カーボンブラック以外の非磁性粉末としては、例えば、非磁性層に含有され得るものとして先に例示した非磁性粉末を挙げることができる。バックコート層の非磁性粉末について、非磁性粉末全量100.0質量部に占めるカーボンブラックの割合が、50.0~100.0質量部の範囲であることが好ましく、70.0~100.0質量部の範囲であることがより好ましく、90.0~100.0質量部の範囲であることが更に好ましい。また、バックコート層の非磁性粉末の全量がカーボンブラックであることも好ましい。バックコート層における非磁性粉末の含有率(充填率)は、バックコート層の全質量に対して、50~90質量%の範囲であることが好ましく、60~90質量%の範囲であることがより好ましい。
磁性層表面の凹みの発生を抑制する観点から、一形態では、バックコート層の非磁性粉末として、平均粒子サイズが50nm以下の非磁性粉末を用いることが好ましい。バックコート層の非磁性粉末として、非磁性粉末を1種のみ用いてもよく、2種以上を用いることもできる。2種以上(例えばカーボンブラックとカーボンブラック以外の非磁性粉末)を用いる場合、それぞれの平均粒子サイズが50nm以下であることが好ましい。非磁性粉末の平均粒子サイズは、より好ましくは10~50nmの範囲であり、更に好ましくは10~30nmの範囲である。一形態では、バックコート層に含まれる非磁性粉末の全量がカーボンブラックであり、その平均粒子サイズが50nm以下であることが好ましい。
磁性層表面の凹みの発生を抑制するためには、バックコート層形成用組成物は、この組成物に含まれる非磁性粉末の分散性を高めることができる成分(分散剤)を含むことが好ましい。バックコート層形成用組成物は、平均粒子サイズが50nm以下の非磁性粉末と、この非磁性粉末の分散性を高めることができる成分を含むことがより好ましく、平均粒子サイズが50nm以下のカーボンブラックと、カーボンブラックの分散性を高めることができる成分を含むことが更に好ましい。
そのような分散剤の一例としては、下記式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物を使用することができる。尚、「アルキルエステルアニオン」は、「アルキルカルボキシラートアニオン」と呼ぶこともできる。
Figure 2023017681000001
式1中、Rは炭素数7以上のアルキル基または炭素数7以上のフッ化アルキル基を表し、Zはアンモニウムカチオンを表す。
また、カーボンブラックの分散性向上の観点から、一形態では、上記塩構造を有する化合物を形成し得る2種以上の成分を、バックコート層形成用組成物の調製時に使用することができる。これにより、バックコート層形成用組成物の調製時、それら成分の少なくとも一部が、上記塩構造を有する化合物を形成し得る。
特記しない限り、以下に記載されている基は置換基を有してもよく無置換であってもよい。また、置換基を有する基について「炭素数」とは、特記しない限り、置換基の炭素数を含まない炭素数を意味するものとする。本発明および本明細書において、置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~6のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば炭素数1~6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシ基、カルボキシ基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等を挙げることができる。
以下、式1について更に詳細に説明する。
式1中、Rは、炭素数7以上のアルキル基または炭素数7以上のフッ化アルキル基を表す。フッ化アルキル基は、アルキル基を構成する水素原子の一部または全部がフッ素原子により置換された構造を有する。Rで表されるアルキル基またはフッ化アルキル基は、直鎖構造であってもよく、分岐を有する構造であってもよく、環状のアルキル基またはフッ化アルキル基でもよく、直鎖構造であることが好ましい。Rで表されるアルキル基またはフッ化アルキル基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよく、無置換であることが好ましい。Rで表されるアルキル基は、例えばC2n+1-で表すことができる。ここでnは7以上の整数を表す。また、Rで表されるフッ化アルキル基は、例えばC2n+1-で表されるアルキル基を構成する水素原子の一部または全部がフッ素原子により置換された構造を有することができる。Rで表されるアルキル基またはフッ化アルキル基の炭素数は、7以上であり、8以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましく、10以上であることが更に好ましく、11以上であることが一層好ましく、12以上であることがより一層好ましく、13以上であることが更に一層好ましい。また、Rで表されるアルキル基またはフッ化アルキル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、19以下であることがより好ましく、18以下であることが更に好ましい。
式1中、Zはアンモニウムカチオンを表す。アンモニウムカチオンは、詳しくは、以下の構造を有する。本発明および本明細書において、化合物の一部を表す式中の「*」は、その一部の構造と隣接する原子との結合位置を表す。
Figure 2023017681000002
アンモニウムカチオンの窒素カチオンNと式1中の酸素アニオンOとが塩架橋基を形成して式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造が形成され得る。式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物がバックコート層に含まれていることは、磁気テープについてX線光電子分光法(ESCA;Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)、赤外分光法(IR;infrared spectroscopy)等により分析を行うことによって確認できる。
一形態では、Zで表されるアンモニウムカチオンは、例えば、含窒素ポリマーの窒素原子がカチオンとなることによってもたらされ得る。含窒素ポリマーとは、窒素原子を含むポリマーを意味する。本発明および本明細書において、「ポリマー」および「重合体」との語は、ホモポリマーとコポリマーとを包含する意味で用いられる。窒素原子は、一形態ではポリマーの主鎖を構成する原子として含まれることができ、また一形態ではポリマーの側鎖を構成する原子として含まれることができる。
含窒素ポリマーの一形態としては、ポリアルキレンイミンを挙げることができる。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンの開環重合体であって、下記式2で表される繰り返し単位を複数有するポリマーである。
Figure 2023017681000003
式2中の主鎖を構成する窒素原子Nが窒素カチオンNとなって式1中のZで表されるアンモニウムカチオンがもたらされ得る。そしてアルキルエステルアニオンと、例えば以下のようにアンモニウム塩構造を形成し得る。
Figure 2023017681000004
以下、式2について更に詳細に説明する。
式2中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、n1は2以上の整数を表す。
またはRで表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を挙げることができ、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。RまたはRで表されるアルキル基は、好ましくは無置換アルキル基である。式2中のRおよびRの組み合わせとしては、一方が水素原子であって他方がアルキル基である形態、両方が水素原子である形態および両方がアルキル基(同一または異なるアルキル基)である形態があり、好ましくは両方が水素原子である形態である。ポリアルキレンイミンをもたらすアルキレンイミンとして、環を構成する炭素数が最少の構造はエチレンイミンであり、エチレンイミンの開環により得られたアルキレンイミン(エチレンイミン)の主鎖の炭素数は2である。したがって、式2中のn1は2以上である。式2中のn1は、例えば10以下、8以下、6以下または4以下であることができる。ポリアルキレンイミンは、式2で表される繰り返し構造として同一構造のみを含むホモポリマーであってもよく、式2で表される繰り返し構造として2種以上の異なる構造を含むコポリマーであってもよい。式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物を形成するために使用可能なポリアルキレンイミンの数平均分子量は、例えば200以上であることができ、300以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。また、上記ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、例えば10,000以下であることができ、5,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましい。
本発明および本明細書において、平均分子量(重量平均分子量および数平均分子量)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)により測定され、標準ポリスチレン換算により求められる値をいうものとする。後述の実施例に示す平均分子量は、特記しない限り、GPCを用いて下記測定条件により測定された値を標準ポリスチレン換算して求めた値(ポリスチレン換算値)である。
GPC装置:HLC-8220(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolumn Super HZM-H
カラム:TSKgel Super HZ 2000、TSKgel Super HZ 4000、TSKgel Super HZ-M(東ソー社製、4.6mm(内径)×15.0cm、3種カラムを直列連結)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、安定剤(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)含有
溶離液流速:0.35mL/分
カラム温度:40℃
インレット温度:40℃
屈折率(RI;Refractive Index)測定温度:40℃
サンプル濃度:0.3質量%
サンプル注入量:10μL
また、含窒素ポリマーの他の一形態としては、ポリアリルアミンを挙げることができる。ポリアリルアミンは、アリルアミンの重合体であって、下記式3で表される繰り返し単位を複数有するポリマーである。
Figure 2023017681000005
式3中の側鎖のアミノ基を構成する窒素原子Nが窒素カチオンNとなって式1中のZで表されるアンモニウムカチオンがもたらされ得る。そしてアルキルエステルアニオンと、例えば以下のようにアンモニウム塩構造を形成し得る。
Figure 2023017681000006
式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物を形成するために使用可能なポリアリルアミンの重量平均分子量は、例えば200以上であることができ、1,000以上であることが好ましく、1,500以上であることがより好ましい。また、上記ポリアリルアミンの重量平均分子量は、例えば15,000以下であることができ、10,000以下であることが好ましく、8,000以下であることがより好ましい。
式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物として、ポリアルキレンイミンまたはポリアリルアミン由来の構造を有する化合物がバックコート層に含まれることは、バックコート層表面を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)等により分析することによって確認できる。
式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物は、含窒素ポリマーと炭素数7以上の脂肪酸および炭素数7以上のフッ化脂肪酸からなる群から選ばれる脂肪酸類の1種以上との塩であることができる。塩を形成する含窒素ポリマーは、1種または2種以上の含窒素ポリマーであることができ、例えばポリアルキレンイミンおよびポリアリルアミンからなる群から選択される含窒素ポリマーであることができる。塩を形成する脂肪酸類は、炭素数7以上の脂肪酸および炭素数7以上のフッ化脂肪酸からなる群から選ばれる脂肪酸類の1種または2種以上であることができる。フッ化脂肪酸は、脂肪酸においてカルボキシ基COOHと結合しているアルキル基を構成する水素原子の一部または全部がフッ素原子に置換された構造を有する。例えば、含窒素ポリマーと上記脂肪酸類とを室温で混合することによって、塩形成反応は容易に進行し得る。室温とは、例えば20~25℃程度である。一形態では、バックコート層形成用組成物の成分として含窒素ポリマーの1種以上と上記脂肪酸類の1種以上を使用し、バックコート層形成用組成物の調製工程においてこれらを混合することによって、塩形成反応を進行させることができる。また、一形態では、バックコート層形成用組成物の調製前に、含窒素ポリマーの1種以上と上記脂肪酸類の1種以上とを混合して塩を形成した後に、この塩をバックコート層形成用組成物の成分として使用してバックコート層形成用組成物を調製することができる。尚、含窒素ポリマーと上記脂肪酸類とを混合して式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩を形成する際、併せて含窒素ポリマーを構成する窒素原子と上記脂肪酸類のカルボキシ基とが反応して下記構造が形成される場合もあり、そのような構造を含む形態も上記化合物に包含される。
Figure 2023017681000007
上記脂肪酸類としては、先に式1中のRとして記載したアルキル基を有する脂肪酸および先に式1中のRとして記載したフッ化アルキル基を有するフッ化脂肪酸を挙げることができる。
式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物を形成するために使用する含窒素ポリマーと上記脂肪酸類との混合比は、含窒素ポリマー:上記脂肪酸類の質量比として、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~85:15であることがより好ましく、30:70~80:20であることが更に好ましい。また、式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を有する化合物は、バックコート層形成用組成物の調製時、カーボンブラック100.0質量部に対して、例えば1.0~20.0質量部使用することができ、1.0~10.0質量部使用することが好ましい。また、例えばバックコート層形成用組成物の調製時、カーボンブラック100.0質量部あたり、0.1~10.0質量部の含窒素ポリマーを使用することができ、0.5~8.0質量部の含窒素ポリマーを使用することが好ましい。上記脂肪酸類は、カーボンブラック100.0質量部あたり、例えば0.05~10.0質量部使用することができ、0.1~5.0質量部使用することが好ましい。
バックコート層に含まれ得る成分について、バックコート層は、結合剤を含むことができ、添加剤を含むこともできる。バックコート層の結合剤および添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
<各種厚み>
磁気テープの厚み(総厚)に関して、近年の情報量の莫大な増大に伴い、磁気テープには記録容量を高めること(高容量化)が求められている。高容量化のための手段としては、磁気テープの厚みを薄くし(以下、「薄型化」とも記載する。)、磁気テープカートリッジ1巻あたりに収容される磁気テープ長を増すことが挙げられる。この点から、上記磁気テープの厚み(総厚)は、5.6μm以下であることが好ましく、5.5μm以下であることがより好ましく、5.4μm以下であることがより好ましく、5.3μm以下であることが更に好ましい。また、ハンドリングの容易性の観点からは、磁気テープの厚みは3.0μm以上であることが好ましく、3.5μm以上であることがより好ましい。
磁気テープの厚み(総厚)は、以下の方法によって測定することができる。
磁気テープの任意の部分からテープサンプル(例えば長さ5~10cm)を10枚切り出し、これらテープサンプルを重ねて厚みを測定する。測定された厚みを10分の1して得られた値(テープサンプル1枚当たりの厚み)を、テープ厚みとする。上記厚み測定は、0.1μmオーダーでの厚み測定が可能な公知の測定器を用いて行うことができる。
非磁性支持体の厚みは、好ましくは3.0~5.0μmである。
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等により最適化することができ、一般には0.01μm~0.15μmであり、高密度記録化の観点から、好ましくは0.02μm~0.12μmであり、更に好ましくは0.03μm~0.1μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
非磁性層の厚みは、例えば0.1~1.5μmであり、0.1~1.0μmであることが好ましい。
バックコート層の厚みは、0.9μm以下であることが好ましく、0.1~0.7μmであることが更に好ましい。
磁性層の厚み等の各種厚みは、以下の方法により求めることができる。
磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビームにより露出させた後、露出した断面において走査型電子顕微鏡による断面観察を行う。断面観察において任意の2箇所において求められた厚みの算術平均として、各種厚みを求めることができる。または、各種厚みは、製造条件等から算出される設計厚みとして求めることもできる。
<製造工程>
(各層形成用組成物の調製)
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物は、先に記載した各種成分とともに、通常、溶媒を含む。溶媒としては、塗布型磁気記録媒体の製造に通常用いられる各種溶媒の1種または2種以上を用いることができる。各層形成用組成物の溶媒含有量は特に限定されるものではない。溶媒については、特開2011-216149号公報の段落0153を参照できる。各層形成用組成物の固形分濃度および溶媒組成は、組成物のハンドリング適性、塗布条件および形成しようとする各層の厚みに対応させて適宜調整すればよい。磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもよい。各層形成用組成物の調製に用いられる各種成分は、どの工程の最初または途中で添加してもよい。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもよい。例えば、結合剤を、混練工程、分散工程および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記磁気テープの製造工程では、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程では、オープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することができる。混練工程の詳細については、特開平1-106338号公報および特開平1-79274号公報に記載されている。分散機としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミルまたはホモミキサー等のせん断力を利用する各種の公知の分散機を使用することができる。分散には、好ましくは分散ビーズを用いることができる。分散ビーズとしては、セラミックビーズ、ガラスビーズ等が挙げられ、ジルコニアビーズが好ましい。2種以上のビーズを組み合わせて使用してもよい。分散ビーズのビーズ径(粒径)およびビーズ充填率は、特に限定されるものではなく、分散対象の粉末に応じて設定すればよい。各層形成用組成物を、塗布工程に付す前に公知の方法によってろ過してもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01~3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
(塗布工程)
磁性層は、磁性層形成用組成物を、非磁性支持体表面上に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次もしくは同時に重層塗布することにより形成することができる。バックコート層は、バックコート層形成用組成物を、非磁性支持体の非磁性層および/または磁性層を有する(または非磁性層および/または磁性層が追って設けられる)表面とは反対側の表面に塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010-231843号公報の段落0066を参照できる。
(その他の工程)
磁気テープの製造のためのその他の各種工程については、公知技術を適用できる。各種工程については、例えば特開2010-231843号公報の段落0067~0070を参照できる。例えば、磁性層形成用組成物の塗布層には、この塗布層が湿潤状態にあるうちに、配向ゾーンにおいて配向処理を行うことができる。配向処理については、特開2010-24113号公報の段落0052の記載をはじめとする各種公知技術を適用することができる。例えば、垂直配向処理は、異極対向磁石を用いる方法等の公知の方法によって行うことができる。配向ゾーンでは、乾燥風の温度、風量および/または配向ゾーンにおける搬送速度によって塗布層の乾燥速度を制御することができる。また、配向ゾーンに搬送する前に塗布層を予備乾燥させてもよい。一例として、垂直配向処理における磁場強度は、0.1~1.5Tとすることができる。
磁気テープについては、各種工程を経ることによって、長尺状の磁気テープ原反を得ることができる。得られた磁気テープ原反は、公知の裁断機によって、通常、磁気テープカートリッジに巻装すべき磁気テープの幅に裁断(スリット)される。上記の幅は規格にしたがい決定され、例えば1/2インチである。1/2インチ=12.65mmである。通常、スリットして得られた磁気テープにサーボパターンが形成される。サーボパターンの形成について、詳細は後述する。
(熱処理)
一形態では、上記磁気テープは、以下のような熱処理を経て製造された磁気テープであることができる。また、他の一形態では、以下のような熱処理を経ずに製造された磁気テープであることができる。以下の熱処理を行うことは、媒体ライフの値を大きくすることに寄与し得る。これは主に、以下の熱処理を行うことが、温度および湿度の変化に晒される環境において磁気テープカートリッジ内での保管中に受ける応力に起因して主に発生する磁気テープの変形を抑制することに寄与すると考えられるためである。
熱処理としては、スリットして規格にしたがい決定された幅に裁断された磁気テープを、芯状部材に巻付け、巻付けた状態で行う熱処理を行うことができる。
一形態では、熱処理用の芯状部材(以下、「熱処理用巻芯」と呼ぶ。)に磁気テープを巻付けた状態で上記熱処理を行い、熱処理後の磁気テープを磁気テープカートリッジのカートリッジリールに巻取り、磁気テープがカートリッジリールに巻回された磁気テープカートリッジを作製することができる。
熱処理用巻芯は、金属製、樹脂製、紙製等であることができる。熱処理用巻芯の材料は、スポーキング等の巻故障の発生を抑制する観点から、剛性が高い材料であることが好ましい。この点から、熱処理用巻芯は、金属製または樹脂製であることが好ましい。また、剛性の指標として、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は0.2GPa以上が好ましく、0.3GPa以上がより好ましい。他方、高剛性の材料は一般に高価であるため、巻故障の発生を抑制できる剛性を超える剛性を有する材料の熱処理用巻芯を用いることはコスト増につながる。以上の点を考慮すると、熱処理用巻芯の材料の曲げ弾性率は250GPa以下が好ましい。また、熱処理用巻芯は中実または中空の芯状部材であることができる。中空状の場合、剛性を維持する観点から、肉厚は2mm以上であることが好ましい。また、熱処理用巻芯は、フランジを有していてもよく、有さなくてもよい。
熱処理用巻芯に巻付ける磁気テープとして最終的に磁気テープカートリッジに収容する長さ(以下、「最終製品長」と呼ぶ。)以上の磁気テープを準備し、この磁気テープを熱処理用巻芯に巻付けた状態で熱処理環境下に置くことにより熱処理を行うことが好ましい。熱処理用巻芯に巻付ける磁気テープ長は最終製品長以上であり、熱処理用巻芯等への巻取りの容易性の観点からは、「最終製品長+α」とすることが好ましい。このαは、上記の巻取りの容易性の観点からは5m以上であることが好ましい。熱処理用巻芯への巻取り時のテンションは、0.10N以上が好ましい。また、製造時に過度な変形が発生することを抑制する観点から、熱処理用巻芯への巻取り時のテンションは1.50N以下が好ましく、1.00N以下がより好ましい。熱処理用巻芯の外径は、巻付けの容易性およびコイリング(長手方向のカール)の抑制の観点から、20mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましい。また、熱処理用巻芯の外径は100mm以下が好ましく、90mm以下がより好ましい。熱処理用巻芯の幅は、この巻芯に巻付ける磁気テープの幅以上であればよい。また、熱処理後、熱処理用巻芯から磁気テープを取り外す際には、取り外す操作中に意図しないテープ変形が生じることを抑制するために、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外すことが好ましい。取り外した磁気テープは、一度別の巻芯(「一時巻取り用巻芯」と呼ぶ。)に巻取り、その後、一時巻取り用巻芯から磁気テープカートリッジのカートリッジリール(一般に外径は40~50mm程度)へ磁気テープを巻取ることが好ましい。これにより、熱処理時の磁気テープの熱処理用巻芯に対する内側と外側との関係を維持して、磁気テープカートリッジのカートリッジリールへ磁気テープを巻取ることができる。一時巻取り用巻芯の詳細およびこの巻芯へ磁気テープを巻取る際のテンションについては、熱処理用巻芯に関する先の記載を参照できる。上記熱処理を「最終製品長+α」の長さの磁気テープに施す形態においては、任意の段階で、「+α」の長さ分を切り取ればよい。例えば、一形態では、一時巻取り用巻芯から磁気テープカートリッジのリールへ最終製品長分の磁気テープを巻取り、残りの「+α」の長さ分を切り取ればよい。切り取って廃棄される部分を少なくする観点からは、上記αは20m以下であることが好ましい。
上記のように芯状部材に巻付けた状態で行われる熱処理の具体的形態について、以下に説明する。
熱処理を行う雰囲気温度(以下、「熱処理温度」と呼ぶ。)は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。一方、過度な変形を抑制する観点からは、熱処理温度は75℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、65℃以下が更に好ましい。
熱処理を行う雰囲気の重量絶対湿度は、0.1g/kg Dry air以上が好ましく、1g/kg Dry air以上がより好ましい。重量絶対湿度が上記範囲の雰囲気は、水分を低減するための特殊な装置を用いずに準備できるため好ましい。一方、重量絶対湿度は、結露が生じて作業性が低下することを抑制する観点からは、70g/kg Dry air以下が好ましく、66g/kg Dry air以下がより好ましい。熱処理時間は、0.3時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましい。また、熱処理時間は、生産効率の観点からは、48時間以下が好ましい。
(サーボパターンの形成)
上記磁気テープは、磁性層に複数のサーボバンドを有する。サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。サーボパターンは、磁気テープ装置における磁気ヘッドのトラッキング制御、磁気テープの走行速度の制御等を可能にすることができる。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。例えば、サーボ信号を利用して走行中の磁気テープの幅方向の寸法情報を取得し、取得された寸法情報に応じて磁気テープの長手方向にかかるテンションを調整して変化させることによって、磁気テープの幅方向の寸法を制御することができる。
以下に、サーボパターンの形成について説明する。
サーボパターンは、磁気テープの長手方向に沿って形成される。サーボ信号を利用する制御(サーボ制御)の方式としては、タイミングベースサーボ(TBS)、アンプリチュードサーボ、周波数サーボ等が挙げられる。
ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319(June 2001)に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボパターンは、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。サーボシステムとは、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステムである。本発明および本明細書において、「タイミングベースサーボパターン」とは、タイミングベースサーボ方式のサーボシステムにおけるヘッドトラッキングを可能とするサーボパターンをいう。上記のように、サーボパターンが互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボパターン上を通過するサーボ信号読み取り素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボ信号読み取り素子がその間隔を読み取ることによって、サーボパターンとサーボ信号読み取り素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボパターン上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。上記磁気テープは、磁性層に複数のサーボバンドを有する。例えば、LTOテープにおいて、その数は5本である。隣接する2本のサーボバンドに挟まれた領域が、データバンドである。データバンドは、複数のデータトラックで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
また、一形態では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(identification)」または「UDIM(Unique DataBand Identification Method)情報」とも呼ばれる)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボ信号読み取り素子で読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に(uniquely)特定することができる。
なお、サーボバンドを一意に特定する方法には、ECMA―319(June 2001)に示されているようなスタッガード方式を用いたものもある。このスタッガード方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(サーボストライプ)の群を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせは、磁気テープ全体においてユニークなものとされているため、2つのサーボ信号読み取り素子によりサーボパターンを読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となっている。
また、各サーボバンドには、ECMA―319(June 2001)に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS(Longitudinal Position)情報」とも呼ばれる)も埋め込まれている。このLPOS情報も、UDIM情報と同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、UDIM情報とは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
上記のUDIM情報およびLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、UDIM情報のようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
サーボパターン形成用ヘッドは、サーボライトヘッドと呼ばれる。サーボライトヘッドは、通常、上記一対の磁気ストライプに対応した一対のギャップを、サーボバンドの数だけ有する。通常、各一対のギャップには、それぞれコアとコイルが接続されており、コイルに電流パルスを供給することによって、コアに発生した磁界が、一対のギャップに漏れ磁界を生じさせることができる。サーボパターンの形成の際には、サーボライトヘッド上に磁気テープを走行させながら電流パルスを入力することによって、一対のギャップに対応した磁気パターンを磁気テープに転写させて、サーボパターンを形成することができる。各ギャップの幅は、形成されるサーボパターンの密度に応じて適宜設定することができる。各ギャップの幅は、例えば、1μm以下、1~10μm、10μm以上等に設定可能である。
磁気テープにサーボパターンを形成する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石または交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンド毎に行ってもよい。
形成されるサーボパターンの磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボパターンの形成は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号の出力を、大きくすることができる。なお、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、双極パルス形状となる。
通常、サーボパターンの形成後、磁気テープはカートリッジリールのリールハブに巻取られて磁気テープカートリッジに収容される。
<垂直方向角型比>
一形態では、上記磁気テープの垂直方向角型比は、例えば0.55以上であることができ、0.60以上であることが好ましい。上記磁気テープの垂直方向角型比が0.60以上であることは、電磁変換特性向上の観点から好ましい。角型比の上限は、原理上、1.00以下である。上記磁気テープの垂直方向角型比は、1.00以下であることができ、0.95以下、0.90以下、0.85以下または0.80以下であることができる。磁気テープの垂直方向角型比の値が大きいことは、電磁変換特性向上の観点から好ましい。磁気テープの垂直方向角型比は、垂直配向処理の実施等の公知の方法によって制御することができる。
本発明および本明細書において、「垂直方向角型比」とは、磁気テープの垂直方向において測定される角型比である。角型比に関して記載する「垂直方向」とは、磁性層表面と直交する方向であり、厚み方向ということもできる。本発明および本明細書において、垂直方向角型比は、以下の方法によって求められる。
測定対象の磁気テープから振動試料型磁力計に導入可能なサイズのサンプル片を切り出す。このサンプル片について、振動試料型磁力計を用いて、最大印加磁界3979kA/m、測定温度296K、磁界掃引速度8.3kA/m/秒にて、サンプル片の垂直方向(磁性層表面と直交する方向)に磁界を印加し、印加した磁界に対するサンプル片の磁化強度を測定する。磁化強度の測定値は、反磁界補正後の値として、かつ振動試料型磁力計のサンプルプローブの磁化をバックグラウンドノイズとして差し引いた値として得るものとする。最大印加磁界における磁化強度をMs、印加磁界ゼロにおける磁化強度をMrとしたとき、角型比SQ(Squareness Ratio)は、SQ=Mr/Msとして算出される値である。測定温度はサンプル片の温度をいい、サンプル片の周囲の雰囲気温度を測定温度にすることにより、温度平衡が成り立つことによってサンプル片の温度を測定温度にすることができる。
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「部」、「%」の表示は、特に断らない限り、「質量部」、「質量%」を示す。「eq」は、当量(equivalent)であり、SI単位に換算不可の単位である。
また、以下の各種工程および操作は、特記しない限り、温度20~25℃および相対湿度40~60%の環境において行った。
[非磁性支持体]
表1中、「PEN」はポリエチレンナフタレート支持体を示し、「PET」はポリエチレンテレフタレート支持体を示し、「PA」は芳香族ポリアミド支持体を示す。表1中の含水率およびヤング率は、先に記載の方法によって測定された値である。
[強磁性粉末]
表1中、強磁性粉末の欄における「BaFe」は、平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末を示す。
表1中、強磁性粉末の欄における「SrFe1」は、以下のように作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末を示す。
SrCOを1707g、HBOを687g、Feを1120g、Al(OH)を45g、BaCOを24g、CaCOを13g、およびNdを235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の平均粒子サイズは18nm、活性化体積は902nm、異方性定数Kuは2.2×10J/m、質量磁化σsは49A・m/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
上記で得られた粉末が六方晶フェライトの結晶構造を示すことは、CuKα線を電圧45kVかつ強度40mAの条件で走査し、下記条件でX線回折パターンを測定すること(X線回折分析)により確認した。上記で得られた粉末は、マグネトプランバイト型(M型)の六方晶フェライトの結晶構造を示した。また、X線回折分析により検出された結晶相は、マグネトプランバイト型の単一相であった。
PANalytical X’Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
表1中、強磁性粉末の欄における「SrFe2」は、以下のように作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末を示す。
SrCOを1725g、HBOを666g、Feを1332g、Al(OH)を52g、CaCOを34g、BaCOを141g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1380℃で溶解し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ロールで圧延急冷して非晶質体を作製した。
得られた非晶質体280gを電気炉に仕込み、645℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持し六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の平均粒子サイズは19nm、活性化体積は1102nm、異方性定数Kuは2.0×10J/m、質量磁化σsは50A・m/kgであった。
表1中、強磁性粉末の欄における「ε-酸化鉄」は、以下のように作製されたε-酸化鉄粉末を示す。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装着し、4時間の熱処理を施した。
熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES;Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε-酸化鉄(ε-Ga0.28Co0.05Ti0.05Fe1.62)であった。また、先に六方晶ストロンチウムフェライト粉末SrFe1に関して記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε-酸化鉄の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε-酸化鉄粉末の平均粒子サイズは12nm、活性化体積は746nm、異方性定数Kuは1.2×10J/m、質量磁化σsは16A・m/kgであった。
上記の六方晶ストロンチウムフェライト粉末およびε-酸化鉄粉末の活性化体積および異方性定数Kuは、各強磁性粉末について、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて、先に記載の方法により求められた値である。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定された値である。
[実施例1]
(1)磁性層形成用組成物の処方
(磁性液)
強磁性粉末(表1参照):100.0部
分散剤:表1参照
SONa基含有ポリウレタン樹脂:14.0部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.4meq/g
シクロヘキサノン:150部
メチルエチルケトン:150部
(研磨剤液A)
アルミナ研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):3.0部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.3部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.3meq/g
シクロヘキサノン:26.7部
(研磨剤液B)
ダイヤモンド研磨剤(平均粒子サイズ:100nm):1.0部
スルホン酸基含有ポリウレタン樹脂:0.1部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.3meq/g
シクロヘキサノン:26.7部
(シリカゾル)
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ:100nm):0.2部
メチルエチルケトン:1.4部
(その他の成分)
ステアリン酸:2.0部
ブチルステアレート:10.0部
ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネート):2.5部
シクロヘキサノン:200.0部
メチルエチルケトン:200.0部
上記分散剤は、特開2019-169225号公報において、実施例1の磁性層形成用組成物の成分として記載されている化合物(ポリアルキレンイミン鎖およびビニルポリマー鎖を有する化合物)である。磁性層形成用組成物の成分として、上記化合物の合成後に得られた反応溶液を使用した。後述の表1に示されている磁性層の分散剤の含有量は、かかる反応溶液中の上記化合物の量である。
(2)非磁性層形成用組成物の処方
非磁性無機粉末(α-酸化鉄):100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):10nm
平均針状比:1.9
BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積:75m/g
カーボンブラック:25.0部
平均粒子サイズ:20nm
SONa基含有ポリウレタン樹脂:18部
重量平均分子量:70,000、SONa基:0.2meq/g
ステアリン酸:1.0部
シクロヘキサノン:300.0部
メチルエチルケトン:300.0部
(3)バックコート層形成用組成物の処方
カーボンブラック:100.0部
キャボット社製BP-800、平均粒子サイズ:17nm
SONa基含有ポリウレタン樹脂(SONa基:70eq/ton):20.0部
OSOK基含有塩化ビニル樹脂(OSOK基:70eq/ton):30.0部
ポリエチレンイミン(日本触媒社製、数平均分子量:600):表1参照
ステアリン酸:表1参照
シクロヘキサノン:140.0部
メチルエチルケトン:170.0部
ブチルステアレート:2.0部
ステアリン酸アミド:0.1部
(4)磁気テープおよび磁気テープカートリッジの作製
磁性液の上記成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散させ、磁性液を調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。
研磨剤液については、研磨剤液Aおよび研磨剤液Bの上記成分をそれぞれバッチ型超音波装置(20kHz、300W)で24時間分散させ、研磨剤液Aおよび研磨剤液Bを得た。
磁性液、研磨剤液Aおよび研磨剤液Bを、上記のシリカゾルおよびその他の成分と混合後、バッチ型超音波装置(20kHz、300W)で30分間分散処理を行った。その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し、磁性層形成用組成物を調製した。
非磁性層形成用組成物については、上記成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて、24時間分散した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.1mmのジルコニアビーズを使用した。得られた分散液を0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し、非磁性層形成用組成物を調製した。
バックコート層形成用組成物については、上記成分を連続ニーダで混練した後、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネート40.0部(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)、メチルエチルケトン1000.0部を添加した後、1μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過し、バックコート層形成用組成物を調製した。
厚み4.1μmの表1に示す支持体の表面上に、乾燥後の厚みが0.7μmとなるように上記で調製した非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を形成した。
次いで、非磁性層上に乾燥後の厚みが0.1μmとなるように上記で調製した磁性層形成用組成物を塗布して塗布層を形成した。
その後、磁性層形成用組成物の塗布層が湿潤状態にあるうちに、磁場強度0.3Tの磁場を塗布層の表面に対し垂直方向に印加して垂直配向処理を行った後、乾燥させ、磁性層を形成した。
その後、支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面に、乾燥後の厚みが0.3μmとなるように上記で調製したバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させてバックコート層を形成した。
その後、長尺状の磁気テープ原反を雰囲気温度70℃の熱処理炉内に保管することにより熱処理を行った(熱処理時間:36時間)。熱処理後、1/2インチ幅にスリットして、磁気テープを得た。得られた磁気テープの磁性層に市販のサーボライターによってサーボ信号を記録することにより、LTO(Linear Tape-Open) Ultriumフォーマットにしたがう配置でデータバンド、サーボバンド、およびガイドバンドを有し、かつサーボバンド上にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を有する磁気テープを得た。こうして形成されたサーボパターンは、JIS(Japanese Industrial Standards) X6175:2006およびStandard ECMA-319(June 2001)の記載にしたがうサーボパターンである。サーボバンドの合計本数は5、データバンドの合計本数は4である。
上記サーボパターン形成後の磁気テープ(長さ970m)を熱処理用巻芯に巻取り、この巻芯に巻付けた状態で熱処理した。熱処理用巻芯としては、曲げ弾性率0.8GPaの樹脂製の中実状の芯状部材(外径:50mm)を使用し、巻取り時のテンションは0.60Nとした。熱処理は、表1に示す熱処理温度で5時間行った。熱処理を行った雰囲気の重量絶対湿度は、10g/kg Dry airであった。
上記熱処理後、磁気テープおよび熱処理用巻芯が十分冷却された後に磁気テープを熱処理用巻芯から取り外し、一時巻取り用巻芯に巻取り、その後、一時巻取り用巻芯から磁気テープカートリッジのリールのリールハブへ最終製品長分(960m)の磁気テープを長手方向に表1の「製造時巻取りテンション」の欄に記載の値のテンションをかけて巻取り、残り10m分は切り取り、切り取り側の末端に、市販のスプライシングテープによって、Standard ECMA(European Computer Manufacturers Association)-319(June 2001) Section 3の項目9にしたがうリーダーテープを接合させた。一時巻取り用巻芯としては、熱処理用巻芯と同じ材料製で同じ外径を有する中実状の芯状部材を使用した。
上記で磁気テープを収容する磁気テープカートリッジとしては、図8に示す構成の単リール型の磁気テープカートリッジを使用した。この磁気テープカートリッジのリールハブは、ガラス繊維強化ポリカーボネートを射出成形した単層構成のリールハブ(厚み:2.5mm、外径:44mm)である。このガラス繊維強化ポリカーボネートのガラス繊維の含有率は、表1に示す値(単位:質量%)である。射出成形用のガラス繊維強化ポリカーボネートの一部を採取し、JIS K 7171:2016の項目6.3.1(成形材料からの作製)にしたがい、同JISの項目6.1.2に記載されている推奨試験片を作製し、同JISにしたがい曲げ弾性率(5つの試験片の算術平均)を求めたところ表1に示す値であった。この後に記載の実施例および比較例についても、リールハブ材料の曲げ弾性率は、上記方法により求めた。上記の熱処理用巻芯の曲げ弾性率も同様に求めた値である。
以上により、長さ960mの磁気テープがリールに巻回された単リール型の磁気テープカートリッジを作製した。
磁気テープのバックコート層にポリエチレンイミンとステアリン酸により形成された、式1で表されるアルキルエステルアニオンのアンモニウム塩構造を含む化合物が含まれることは、以下の方法により確認できる。
磁気テープからサンプルを切り出し、バックコート層表面(測定領域:300μm×700μm)においてESCA装置を用いてX線光電子分光分析を行う。詳しくは、下記測定条件でESCA装置によりワイドスキャン測定を行う。測定結果では、エステルアニオンの結合エネルギーの位置およびアンモニウムカチオンの結合エネルギーの位置にピークが確認される。
装置:島津製作所製AXIS-ULTRA
励起X線源:単色化Al-Kα線
スキャン範囲:0~1200eV
パスエネルギー:160eV
エネルギー分解能:1eV/step
取り込み時間:100ms/step
積算回数:5
また、磁気テープから長さ3cmのサンプル片を切り出し、バックコート層表面のATR-FT-IR(Attenuated total reflection-fourier transform-infrared spectrometer)測定(反射法)を行い、測定結果において、COOの吸収に対応する波数(1540cm-1または1430cm-1)、およびアンモニウムカチオンの吸収に対応する波数(2400cm-1)に吸収が確認される。
磁気テープカートリッジを2つ作製し、一方を以下の媒体ライフおよびテープ厚みの評価に使用し、他方を後述の記録再生性能の評価に使用した。
[評価方法]
<媒体ライフ>
(サーボバンド間隔の測定)
測定対象の磁気テープカートリッジを、測定環境に馴染ませるために、雰囲気温度23℃相対湿度50%の測定環境に5日間置いた。
その後、上記測定環境下、図5に示す磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させた。かかる走行について、磁気テープの全長にわたり、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を、1m間隔で測定した。測定は、全サーボバンド間隔について行った。こうして測定されたサーボバンド間隔を、各測定位置における「保管前のサーボバンド間隔」とした。データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔は、以下のように求めた。
データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めるためには、サーボパターンの寸法が必要である。サーボパターンの寸法の規格は、LTOの世代によって異なる。そこでまず、磁気力顕微鏡等を用いて、AバーストとCバーストの対応する4ストライプ間の平均距離AC、およびサーボパターンのアジマス角αを計測する。
次に、リールテスタと、磁気テープの長手方向と直交する方向に間隔をおいて固定された2つのサーボ信号読み取り素子(以下では、一方を上側、他方を下側と呼ぶ。)を備えたサーボヘッドとを用いて、磁気テープに形成されたサーボパターンをテープ長手方向に沿って順次読み取る。1LPOSワードの長さにわたるAバーストとBバーストに対応する5ストライプ間の平均時間をaと定義する。1mの長さにわたるAバーストとCバーストの対応する4ストライプの平均時間をbと定義する。このとき、AC×(1/2-a/b)/(2×tan(α))で定義される値が、サーボ信号読み取り素子により得られたサーボ信号に基づく幅方向の読み取り位置PESを表す。サーボパターンの読み取りは、上側と下側の2つのサーボ信号読み取り素子により同時に行う。上側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES1、下側のサーボ信号読み取り素子により得られたPESの値をPES2とする。「PES2-PES1」として、データバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔を求めることができる。これは、上側と下側のサーボパターン読み取り素子がサーボヘッドに固定されてその間隔が変わらないからである。
その後、上記磁気テープカートリッジについて、先に記載した方法によって、「24時間保管後のサーボバンド間隔」および「24時間保管後のA」、「48時間保管後のサーボバンド間隔」および「48時間保管後のA」、「72時間保管後のサーボバンド間隔」および「72時間保管後のA」、「96時間保管後のサーボバンド間隔」および「96時間保管後のA」、ならびに「120時間保管後のサーボバンド間隔」および「120時間保管後のA」を求めた。
(一次関数の導出)
上記工程において求められたAの値と保管時間Tの対数logTの値から、最小二乗法によってAとlogTとの一次関数を導出した。一次関数は、AをYとし、logTをXとして、Y=cX+dで表される。cおよびdは、それぞれ最小二乗法によって決定された係数であり、いずれも正の値であった。
(Bの決定)
5環境(温度16℃相対湿度20%、温度16℃相対湿度80%、温度26℃相対湿度80%、温度32℃相対湿度20%、温度32℃相対湿度55%)において、それぞれ以下の方法によって測定を行った。
各測定環境について、測定対象の磁気テープカートリッジを、測定環境に馴染ませるために、測定環境に5日間置いた。
その後、その測定環境下、図5に示す磁気テープ装置において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけた状態で磁気テープを走行させた。リール外周100m領域で1m間隔にて、上記走行について、データバンド0(ゼロ)において、上記方法によってサーボバンド間隔を測定した。先に記載したように、測定されたサーボバンド間隔の算術平均を、その測定環境におけるサーボバンド間隔とした。
上記のように5環境のそれぞれにおいてサーボバンド間隔を求めた後、求められた値の中の最大値および最小値を用いて、「(最大値-最小値)×1/2」として算出される値を、測定対象の磁気テープカートリッジの「B」とした。
(媒体ライフの算出)
上記で導出したAとTの対数logTとの一次関数によって、Aが、「式a:A=1.5-B」を満たすときのTを算出した。Cの算出方法は後述する。
<テープ厚み>
上記評価の後の磁気テープカートリッジを、温度20~25℃および相対湿度40~60%の環境に5日間以上置いて同環境に馴染ませた。その後、引き続き同じ環境において、磁気テープカートリッジから取りだした磁気テープの任意の部分からテープサンプル(長さ5cm)を10枚切り出し、これらテープサンプルを重ねて厚みを測定した。厚みの測定は、MARH社製Millimar 1240コンパクトアンプとMillimar 1301誘導プローブのデジタル厚み計を用いて行った。測定された厚みを10分の1して得られた値(テープサンプル1枚当たりの厚み)を、テープ厚みとした。各磁気テープについて、テープ厚みは5.2μmであった。
<記録再生性能の評価>
記録再生性能の評価を、図5に示した構成の磁気テープ装置を用いて行った。記録再生ヘッドユニットに搭載された記録再生ヘッドに含まれるモジュールの配置順は、「記録用モジュール-再生用モジュール-記録用モジュール」(モジュール総数:3)である。各モジュールにおける磁気ヘッド素子数は32(Ch0~Ch31)であり、これら磁気ヘッド素子が一対のサーボ信号読み取り素子に挟まれて素子アレイが構成されている。再生用モジュールに含まれる再生素子の再生素子幅は、0.8μmである。以下の記録を行う環境は、上記5環境中、Bを求めるための測定において得られたサーボバンド間隔が最大値であった環境とした。以下の再生を行う環境は、上記5環境中、Bを求めるための測定において得られたサーボバンド間隔が最小値であった環境とした。
磁気テープカートリッジを、記録を行う環境に5日間以上置いた。こうして記録を行う環境に馴染ませた後、引き続き同環境において、以下のようにデータの記録を行った。
磁気テープ装置に磁気テープカートリッジをセットし、磁気テープをローディングする。次にサーボトラッキングを行いながら記録再生ヘッドユニットにより磁気テープに特定のデータパターンを有する疑似ランダムデータの記録を行う。その際にテープ長手方向にかけるテンションは0.7Nとする。記録再生ヘッド(磁気ヘッド)について、記録開始時および再生開始時、素子アレイの軸線を磁気テープ走行方向に向けて傾け、角度θは、表1中、「θinitial」の欄に示す角度とする。データの記録では、隣接トラック間の(PES1+PES2)/2の値の差が1.16μmとなるように3往復以上の記録を行う。その際、記録再生ヘッドの再生用モジュールの素子アレイの一方のサーボ信号読み取り素子と他方のサーボ信号読み取り素子とのサーボ信号読み取り素子間実効距離とデータバンドを挟んで隣り合う2本のサーボバンドの間隔に対応する「PES2-PES1」との差分が小さくなるように、磁気テープ装置の制御装置によって角度θを変化させる。データの記録と同時に、テープ全長のサーボバンド間隔の値を長手位置の1m毎に測定し、カートリッジメモリに記録する。
上記のようにデータの記録を行った磁気テープカートリッジを、雰囲気温度23℃相対湿度50%の保管環境に12時間保管し、次いで雰囲気温度32℃相対湿度55%の保管環境に12時間保管することを1サイクルとして合計5サイクルの保管に付した。
その後、磁気テープカートリッジを、再生を行う環境に5日間以上置いた。こうして再生を行う環境に馴染ませた後、引き続き同環境において、以下のようにデータの再生を行った。
磁気テープ装置に磁気テープカートリッジをセットし、磁気テープをローディングする。次にサーボトラッキングを行いながら記録再生ヘッドユニットにより磁気テープに記録されたデータの再生を行う。その際、再生と同時にサーボバンド間隔の値を測定し、カートリッジメモリに記録された情報に基づき、同じ長手位置における記録時のサーボバンド間隔との差分の絶対値が0に近づくように、磁気テープ装置の制御装置によって角度θを変化させる。再生時は、サーボバンド間隔の測定とそれに基づいた角度θの調整がリアルタイムに連続して行われる。
上記再生における再生素子数(チャンネル数)は32チャンネルであり、再生時、32チャンネルすべてのデータが正しく読み取られた場合に記録再生性能「3」と評価し、31~28チャンネルのデータが正しく読み取られた場合に記録再生性能「2」と評価し、それ以外の場合を記録再生性能「1」と評価する。
<Cの算出>
上記の再生について、先に記載した方法によって、再生用モジュールについて角度θを求めた。求められた値からΔθを算出し、「C=L{cos(θinitial-Δθ)-cos(θinitial+Δθ)}」によってCを算出した。上記記録再生ヘッドに含まれる再生用モジュールにおいて、Lは2859μmであった。
[実施例2~32、比較例1~12]
表1中の項目を表1に示されているように変更した点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープカートリッジを作製し、各種評価を行った。
表1中、「熱処理温度」の欄に「なし」と記載されている比較例では、熱処理用巻芯に巻き付けた状態での熱処理を行わずに、最終製品長960mの磁気テープを磁気テープカートリッジに収容した。
表1中、「θinitial」および「Δθ」の欄に「なし」と記載されている比較例については、磁気テープ走行開始時および走行中、角度θ=0°とした。
以上の結果を表1(表1-1~表1-4)に示す。
Figure 2023017681000008
Figure 2023017681000009
Figure 2023017681000010
Figure 2023017681000011
磁気テープ作製時に垂直配向処理を行わなかった点以外、実施例1について先に記載した方法で磁気テープカートリッジを作製した。
上記磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープからサンプル片を切り出した。このサンプル片について、振動試料型磁力計として玉川製作所製TM-TRVSM5050-SMSL型を用いて、先に記載した方法によって垂直方向角型比を求めたところ、0.55であった。
実施例1の磁気テープカートリッジからも磁気テープを取り出し、この磁気テープから切り出したサンプル片について同様に垂直方向角型比を求めたところ、0.60であった。
上記2つの磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープを、それぞれ1/2インチリールテスターに取り付け、以下の方法によって電磁変換特性(SNR;Signal-to-Noise Ratio)を評価した。その結果、実施例1の磁気テープカートリッジから取り出した磁気テープについて、垂直配向処理なしで作製された上記磁気テープと比べて、2dB高いSNRの値が得られた。
温度23℃相対湿度50%の環境において、磁気テープの長手方向に0.70Nのテンションをかけて記録および再生を10パス行った。磁気テープと磁気ヘッドとの相対速度は6m/秒とし、記録は、記録ヘッドとしてMIG(Metal-in-gap)ヘッド(ギャップ長0.15μm、トラック幅1.0μm)を使用し、記録電流を各磁気テープの最適記録電流に設定して行った。再生は、再生ヘッドとしてGMR(Giant-magnetoresistive)ヘッド(素子厚み15nm、シールド間隔0.1μm、再生素子幅0.8μm)を使用して行った。線記録密度300kfciの信号を記録し、再生信号をシバソク社製のスペクトラムアナライザーで測定した。単位kfciとは、線記録密度の単位(SI単位系に換算不可)である。信号としては、磁気テープ走行開始後に信号が十分に安定した部分を使用した。
本発明の一態様は、アーカイブ等の各種データストレージの技術分野において有用である。

Claims (10)

  1. 磁気テープと、磁気ヘッドと、を含む磁気テープ装置であって、
    前記磁気ヘッドは、一対のサーボ信号読み取り素子の間に複数の磁気ヘッド素子を有する素子アレイを含むモジュールを有し、
    前記磁気テープ装置は、前記磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、前記磁気テープの幅方向に対して前記素子アレイの軸線がなす角度θを変化させ、
    前記磁気テープは、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有し、
    前記磁性層は複数のサーボバンドを有し、
    下記保管を行う前に求められたサーボバンド間隔と、温度23℃相対湿度50%の環境下での12時間の保管と温度32℃相対湿度55%の環境下での12時間の保管とを1サイクルとして、サイクル数Nの保管の後に求められたサーボバンド間隔と、の差分の絶対値の最大値をAとして、Aの単位はμmであり、Nを1、2、3、4または5としてそれぞれ求められたAの値とサイクル数Nの保管の総保管時間Tの対数logTの値とから導出された、AとTの対数logTとの一次関数によって算出される媒体ライフが5年以上であり、
    前記媒体ライフは、Aが下記式a:
    (式a)
    A=1.5-B+C
    を満たすときのTであり、
    前記Bは、
    下記5環境下:
    温度16℃相対湿度20%、
    温度16℃相対湿度80%、
    温度26℃相対湿度80%、
    温度32℃相対湿度20%、
    温度32℃相対湿度55%、
    でそれぞれ求められたサーボバンド間隔の中の最大値と最小値との差分に1/2を掛け合わせて算出される値であり、単位はμmであり、
    前記Cは、
    C=L{cos(θinitial-Δθ)-cos(θinitial+Δθ)}
    により算出される値であり、単位はμmであり、
    前記Lは、前記一対のサーボ信号読み取り素子間の距離であり、単位はμmであり、
    前記磁気テープ走行開始時の前記角度θをθinitialとし、
    前記磁気テープ走行中の前記角度θの最大値をθmax、最小値をθminとして、
    前記Δθは、
    Δθmax=θmax-θinitial
    Δθmin=θinitial-θmin
    により算出される値の中で、より大きな値である、
    磁気テープ装置。
  2. 前記媒体ライフが5年以上400年以下である、請求項1に記載の磁気テープ装置。
  3. 前記磁気テープ装置内での磁気テープの走行中、前記磁気テープの幅方向に対して前記素子アレイの軸線がなす角度θを、前記走行中に取得される磁気テープの幅方向の寸法情報に応じて変化させる、請求項1または2に記載の磁気テープ装置。
  4. 前記磁気テープは、前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
  5. 前記磁気テープは、前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
  6. 前記非磁性支持体は、芳香族ポリエステル支持体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
  7. 前記芳香族ポリエステル支持体は、ポリエチレンテレフタレート支持体である、請求項6に記載の磁気テープ装置。
  8. 前記芳香族ポリエステル支持体は、ポリエチレンナフタレート支持体である、請求項6に記載の磁気テープ装置。
  9. 前記非磁性支持体は、芳香族ポリアミド支持体である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
  10. 前記磁気テープの垂直方向角型比は0.60以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の磁気テープ装置。
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