JP2023001927A - エレクトロフルオロクロミックシート、エレクトロフルオロクロミックデバイス、及び、メタロ超分子ポリマー - Google Patents

エレクトロフルオロクロミックシート、エレクトロフルオロクロミックデバイス、及び、メタロ超分子ポリマー Download PDF

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Abstract

【課題】メタロ超分子ポリマーを含む、新規なエレクトロフルオロクロミックシートの提供。【解決手段】金属元素、又は、ランタノイド元素から選択される元素Aのカチオンと、有機配位子とが、配位結合、及び、有機金属結合からなる群より選択される少なくとも1種を含む結合形態によって交互に連なって形成されるメタロ超分子ポリマーを含み、有機配位子は、カチオンとの間で、結合形態により金属錯体、及び、有機金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種の発光性錯体を形成する配位部位を1分子中に2個以上有し、電位の印加によって酸化還元反応を起こすレドックス応答部位を1個以上有し、レドックス応答部位は、少なくとも1個以上の窒素原子を有し、有機配位子において、配位部位とレドックス応答部位とは、直接結合しているか、又は、スペーサ部位を介して結合している、エレクトロフルオロクロミックシート。【選択図】図9

Description

本発明は、エレクトロフルオロクロミックシート、エレクトロフルオロクロミックデバイス、及び、メタロ超分子ポリマーに関する。
蛍光強度の可逆的な変化を電気的に引き起こすことができるエレクロトフルオロクロミック特性を有する材料が知られている。このような材料は、蛍光スイッチング材料として、光メモリデバイス、ロジックゲート、生体イメージング、センサー、及び、ディスプレイ等への応用が期待されており、開発が進められている。
このようなエレクトロフルオロクロミック特性を有する材料として、非特許文献1には、シアノアリールアミンを含む高分子化合物が記載されている。
Chemical Communications、2013、49、9797-9799ページ
本発明者らは、有機配位子と(金属)カチオンとが交互に連なって形成されるメタロ超分子ポリマーを用いたエレクトロクロミックシート、及び、これを含むエレクトロクロミック素子の開発を続けてきた。しかしながら、メタロ超分子ポリマーを用いたエレクトロフルオロクロミックシートの完成には未だ至っていなかった。
そこで、本発明は、メタロ超分子ポリマーを含む、新規なエレクトロフルオロクロミックシートを提供することを課題とする。また、本発明は、このエレクトロフルオロクロミックシートを含むエレクトロフルオロクロミック素子、及び、メタロ超分子ポリマーを提供することも課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 7族~12族の金属元素、及び、ランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素Aのカチオンと、有機配位子とが、配位結合、及び、有機金属結合からなる群より選択される少なくとも1種を含む結合形態によって交互に連なって形成されるメタロ超分子ポリマーを含む、エレクトロフルオロクロミックシートであって、上記有機配位子は、上記カチオンとの間で、上記結合形態により金属錯体、及び、有機金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種の発光性錯体を形成する配位部位を1分子中に2個以上有し、電位の印加によって酸化還元反応を起こすレドックス応答部位を1個以上有し、上記レドックス応答部位は、少なくとも1個以上の窒素原子を有し、上記有機配位子において、上記配位部位と上記レドックス応答部位とは、直接結合しているか、又は、スペーサ部位を介して結合している、エレクトロフルオロクロミックシート。
[2] 上記金属元素が、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、及び、カドミウムからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[3] 上記ランタノイド元素が、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、及び、テルビウムからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[4] 上記配位部位が、含窒素複素環、及び、金属-炭素結合を形成可能な芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[5] 上記レドックス応答部位が後述する式2A~2Cで表される構造から選択される少なくとも1種の構造からなる[1]~[4]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[6] 上記レドックス応答部位が、上記式2Aで表される構造、及び、上記式2Bで表される構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、[5]に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[7] 上記スペーサ部位が、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数6~20個のアリーレン基を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[8] 上記メタロ超分子ポリマーが、後述する式5AP、式5BP、式6AP、式6BP、式7AP、式7BP、式8AP、及び、式8BPからなる群より選択される繰り返し単位のうち、いずれか1種、又は、2種以上を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[9] 上記スペーサ部位が、炭素数2~20個のアルキニレン基、炭素数6~20個のアリーレン基、炭素数6~20個のヘテロアリーレン基、及び、これらを組み合わせた基からなる群より選択される少なくとも1種の2価の基である、[1]~[8]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[10] 上記メタロ超分子ポリマーが、式5CP、6CP、7CP、8CP、及び、9CPからなる群より選択される少なくとも1種の3官能分岐点のいずれか1種、又は、2種以上を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
[11] 一対の電極と、上記電極に挟持された[1]~[10]のいずれかに記載のエレクトロフルオロクロミックシートを含む、エレクトロフルオロクロミックデバイス。
[12] 後述する式5AP、式5BP、式6AP、式6BP、式7AP、式7BP、式8AP、式8BP、式9AP、及び、式9BPからなる群より選択される少なくとも1種の繰り返し単位のうち、いずれか1種、又は、2種以上を含む、メタロ超分子ポリマー。
[13] 更に、後述する式5CP、式6CP、式7CP、式8CP、及び、式9CPからなる群より選択される少なくとも1種の3官能分岐点のいずれか1種、又は、2種以上を含む、[12]に記載のメタロ超分子ポリマー。
本発明によれば、メタロ超分子ポリマーを含む、新規なエレクトロフルオロクロミックシートが提供できる。また、本発明によれば、このエレクトロフルオロクロミックシートを含むエレクトロフルオロクロミック素子、及び、メタロ超分子ポリマーも提供できる。
本発明の実施形態に係るエレクトロフルオロクロミックデバイスの構成を表す断面模式図である。 有機配位子(LTPA)を含むCHCl溶液(c=1×10-5mol/L)にZn(BF溶液(MeOH、c=5×10-4mol/L)を添加したときの紫外可視吸収スペクトルの変化を表す図である。 金属/有機配位子のモル比率に対する431nmの吸光度の変化を表す図である。 ITO(酸化インジウムスズ)ガラス基板上のpolyZn-EFC膜(本発明に係るエレクトロフルオロクロミックシートの具体的な一形態)の吸収スペクトルである。 425nmで励起したITOガラス基板上のpolyZn-EFC膜の発光スペクトルである。 polyZn-EFC膜のX線光電子分光法(XPS)測定結果である。 polyZn-EFC膜のサイックリックボルタモグラムである。 本発明の具体的な一形態に係るエレクトロフルオロクロミックデバイスの作用電極に0~1.6Vの電位を印加した際の発光強度の変化(励起光=425nm)を表す図である。 上記エレクトロフルオロクロミックデバイスの作用電極に1.6Vを印加した際の消光状態を表す画像(下)と、電位が印加されていない状態(0V)の際の発光状態を表す画像(上)の比較図である。 電位の印加によって、蛍光のON/OFFを繰り返し、その際の波長650nmの発光強度を測定した図である。 polyZn-EFCのH NMR(Nuclear Magnetic Resonance、CDOD)の測定結果である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「C」の後に数字を添えて表した、例えば、「C10」等の表記は、炭素数が添え字の個数であることを表す。「C10」であれば、炭素数が10個であることを表す。この表記は、「C10アルキル基」の様に用い、「炭素数が10個のアルキル基」と同義である。
[エレクトロフルオロクロミックデバイス]
図1は、本発明の実施形態に係るエレクトロフルオロクロミック(以下「EFC」ともいう。)デバイスの構成を表す断面模式図である。
EFCデバイス10は、一対の電極15と、その間に挟まれたEFCシート13と、固体電解質12と、を有する。
一対の電極15は、第1電極11と、第2電極14とを有しており、第1電極11は固体電解質12と、第2電極14はEFCシート13と互いに接触している。また、固体電解質12とEFCシート13とは互いに接触している。
EFCデバイス10は一対の電極15を有しているので、この一対の電極15間に電位を印加することにより、EFCシート13に含まれるメタロ超分子ポリマーのレドックス応答部位(詳細は後述する)が酸化還元反応を起こし、エレクトロフルオロクロミック特性を発現させる。
一対の電極15の材質としては特に制限されないが、本EFCデバイスをディスプレイ等に応用しやすい観点では、透光性であることが好ましい。
このような材質としては、例えば、SnO膜、In膜、又は、ITO(Indium Tin Oxide)膜等が挙げられる。
なお、第1電極11の固体電解質12側の表面には、活物質層が更に配置されていてもよい。活物質層を有するEFCデバイス10は、より小さな電力で蛍光ON/OFF切り換えを行うことができる。
活物質としては、例えば、リン酸鉄ナトリウム、ナトリウムコバルト酸化物、ナトリウムマンガン青銅、ヘキサシアノ鉄酸銅、及び、ヘキサシアノ鉄酸ニッケル等が挙げられる。
固体電解質12の材質としては特に制限されないが、典型的には、高分子化合物と、支持塩と、可塑剤とを含む複合体が好ましい。
高分子化合物としては、特に制限されないが、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニリデンフルオライド-co-ヘキサフルオロイソプロピル)(PVdF-co-PHFP)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリカーボネート、及び、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
複合体中における高分子化合物の含有量としては特に制限されないが、複合体の全質量を100質量%としたとき、18~80質量%が好ましい。
支持塩としては、特に制限されないが、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、リチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(LiTFSI)、LiCHCOO、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、KCl、NaClO、NaCl、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、及び、Mg(BF等が挙げられる。
複合体中における支持塩の含有量としては特に制限されないが、複合体の全質量を100質量%としたとき、1~15質量%が好ましい。
また、可塑剤としては、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチレン、γ-ブチロラクトン、スクシノニトリル、及び、イオン液体等が挙げられる。
複合体中における可塑剤の含有量としては特に制限されないが、複合体の全質量を100質量%としたとき、18~80質量%が好ましい。
固体電解質12の調製方法としては特に制限されないが、各成分を混合した後、必要に応じて加温すればよい。加温の際の温度としては特に制限されないが、室温~100℃が挙げられる。
なお、本EFCデバイス10は固体電解質12を有しているが、本発明のEFCデバイスは、固体電解質12を有していなくてもよい。
本発明のEFCデバイスの製造方法としては特に制限されないが、第1電極11(又は、第2電極14)上に、各層を順に積層していけばよい。
EFCシートは、後述するメタロ超分子ポリマーを含み、一対の電極15による電位の印加によって、蛍光強度が可逆的に変化する薄板状の部材である。
EFCシートは、後述するメタロ超分子ポリマーを含んでいればよく、他の成分を含んでいてもよい。EFCシート中におけるメタロ超分子ポリマーの含有量としては特に制限されないが、EFCシートの全質量を100質量%としたとき60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。一形態としては、EFCシートは、メタロ超分子ポリマーからなることが好ましい。
EFCシートの厚みは、EFCデバイスの用途に応じて適宜調整されればよいが、例えば、ディスプレイや調光パネルとして用いる場合、一般に、10nm~10000μmが好ましい。
本EFCデバイスは、第2電極14に電位を印加しない状態では、所定の励起波長の光を照射して励起すると、メタロ超分子ポリマーの構造(後述する発光性錯体の構造が大きく寄与する)に応じた波長(色)に発光する。一方、第2電極14に正電位を印加すると、その電位の大きさに応じて発光強度が小さくなり、所定の電位以上の電位を印加すると、消光される。また、第2電極の電位を0に近づけると、再び、発光強度が上がり、これを繰り返すことができる。
この際、一対の電極15の間に印加する電位としては特に制限されないが、一般に、0~4.0Vが好ましい。
(メタロ超分子ポリマー)
次に、EFCシートに含まれるメタロ超分子ポリマーについて詳述する。
メタロ超分子ポリマーは、7族~12族の金属元素、及び、ランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素(以下、「元素A」ともいう。)のカチオンと、有機配位子とが、配位結合、及び、有機金属結合からなる群より選択される少なくとも1種を含む結合形態によって交互に連なって形成され、上記有機配位子は、上記カチオンとの間で、上記結合形態により金属錯体、及び、有機金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種の発光性錯体を形成する配位部位を1分子中に2個以上有し、電位の印加によって酸化還元反応を起こすレドックス応答部位を1個以上有し、上記レドックス応答部位は、少なくとも1個以上の窒素原子を有し、上記有機配位子において、上記配位部位と上記レドックス応答部位とは、直接結合しているか、又は、スペーサ部位を介して結合している。
上記メタロ超分子ポリマーが、エレクトロフルオロクロミック特性を発現する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおりその理由を推測している。なお、以下の機序はあくまでも推測であり、本発明の作用機序を限定的に説明したものではない。
上記メタロ超分子ポリマーがエレクトロフルオロクロミック特性を発現するのは、以下の3つの要因が関連しているものと本発明者らは推測している。
(1)電位の印加によって起こる酸化還元反応によって、レドックス応答部位に生ずるラジカルカチオンが発光をクエンチする。
(2)有機配位子のn-π*遷移に起因する吸収が、ラジカルカチオンの発生によって減少~消失する。これにより、メタロ超分子ポリマーが励起状態とならず、発光が起こりにくくなる。
(3)レドックス応答部位にラジカルカチオンが発生することで新たな吸収が発生し、エネルギー移動によって発光が失活する。
上記メタロ超分子ポリマーは、有機配位子と元素Aのカチオンとの組合せによって形成される。有機配位子は、2個以上の配位部位と、1個以上のレドックス応答部位を有しているため、配位部位とカチオンとの結合が繰り返されることによって、ポリマーが形成されている。
配位部位とカチオンとの組合せによって形成される発光性錯体は、スペーサ部位を介して、又は、介さずに、レドックス応答部位と結合しているため、上記(1)~(3)の条件をいずれも満たすことができ、所望のエレクトロフルオロクロミック特性が得られたものと推測される。
以下では、まず、メタロ超分子ポリマーの繰り返し単位を構成するカチオン、及び、有機配位子についてそれぞれ説明し、これにより形成されるメタロ超分子ポリマーの構造について詳述する。
(カチオン)
メタロ超分子ポリマーを構成するカチオンは、7族~12族の金属元素、及び、ランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素Aのカチオンである。
7~12族の金属元素としては、後述する有機配位子の配位部位との組み合わせにより発光性錯体が形成されるものであれば、特に制限されず、公知の金属元素が使用できる。金属元素としては、例えば、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、及び、Cd等が挙げられ、Ru、Ir、Pt、Zn、及び、Cdからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、Ir、Pt、Zn、及び、Cdからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
なお、本明細書において、「発光性錯体」という用語は、メタロ超分子ポリマーの全体のように独立した1個の化合物を意味するものではなく、複数の配位部位と、1個の元素Aのカチオンとが配位結合(coordination bonding)、又は、有機金属結合(organometallic bonding)して形成され、メタロ超分子ポリマーの一部として組み込まれた状態の「金属錯体」(metal complex)、又は、「有機金属錯体」(organometallic complex)を意味する。本明細書における「発光性錯体」は、典型的には、一般的な発光性錯体から水素原子の2つを除いた、2価の基であることが好ましい。
メタロ超分子ポリマー内における「発光性錯体」の選択は、一般的な意味での錯体が発光機能を有するか否かによって判断できる。すなわち、本メタロ超分子ポリマーの一部として組み込まれる「発光性錯体」は、その化合物自体が発光性を有するものであることが好ましく、そのような化合物は当業者によって公知である。
また、ランタノイド元素としては、上記の金属元素と同様に、後述する有機配位子の配位部位とにより発光性錯体が形成できれば、特に制限されない。そのようなランタノイド元素としては、例えば、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、及び、テルビウム等が挙げられ、ユーロピウム、及び/又は、テルビウムがより好ましい。
(有機配位子)
有機配位子は、カチオンに配位結合して発光性錯体を形成するための配位部位を1分子中に2個以上有し、電位の印加によって酸化還元反応を起こすレドックス応答部位を1個以上有する。配位部位とレドックス応答部位とは、直接結合しているか、又は、スペーサ部位を介して結合している。
有機配位子とカチオンとの結合形態は、カチオンと窒素(N)、酸素(O)、及び、硫黄(S)等とが結合する配位結合(coordination bonding)、及び、カチオンと炭素が結合する有機金属結合(organometallic bonding)が挙げられる。
本明細書において、配位結合によって形成される錯体は金属錯体(metal complex)といい、有機金属結合によって形成される錯体は有機金属錯体(organometallic complex)という。
このような結合形態によって形成される発光性錯体としては、例えば、以下の式Z1~式Z4で表される発光性錯体が挙げられる。下記式において、*はスペーサ部位、又は、レドックス応答部位との結合位置を表す。
Figure 2023001927000002
発光性錯体は、式Z1、及び、式Z2で表されるような、カチオンと配位部位との結合形態が、配位結合、又は、有機金属結合のいずれか一方で構成されるものであってもよい。また、式Z3で表されるような、配位結合、及び、有機金属結合の両方からなる結合形態によって構成されていてもよい。また、式Z4で表されるような、配位結合、及び/又は、有機金属結合(以下、「配位結合等」ともいう。)と、他の結合とを有する形態であってもよい。
特に式Z4で表される発光性錯体では、中心のカチオンがテルビウムを含むランタノイド元素である場合により安定的で好ましい。式Z4で表される発光性錯体における4つのカルボキシ基は、中心のEu(ユーロピウム)カチオンとの塩を形成しており、このような基としては、上記以外にヒドロキシ基が挙げられる。
メタロ超分子ポリマーは、カチオンと上記有機配位子とが配位結合等によって交互に連なって形成されるポリマーである。有機配位子は配位部位を分子内に2個以上有しているため、この配位部位とカチオンとの結合によって単位構造が繰り返され、高分子化合物が形成される。
メタロ超分子ポリマーの分子鎖の分岐の形態は、後述する有機配位子の配位部位の数に加え、カチオンと配位部位との結合形態によっても影響を受ける。カチオンに対して、配位部位が3個以上配位する場合は、3官能以上の分岐点が形成される。
この点、メタロ超分子ポリマーの溶媒溶解性を制御しやすい観点では、カチオンと配位部位とが、モル比で1:2で配位結合する形態が好ましい。このような形態としては、例えば、カチオンの配位数が配位部位の配位座の数の2倍であればよい。以下では、カチオンと配位部位とが、モル比で1:2で配位結合する形態について説明する。
Figure 2023001927000003
上記式1は、メタロ超分子ポリマーにおける、カチオンと配位部位との好ましい結合形態の一例である。式1中、Mは、カチオンであり、Ligは配位部位であり、Lは、単結合、又は、-Sp-を表し、Spは後述するスペーサ部位であり、*は後述するレドックス応答部位との結合位置を表す。上記式1中、LigはMと配位結合等によって結合しており、Ligは、レドックス応答部位、又は、Spと共有結合している。なお、2つあるLigはそれぞれ同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましく、Spが2つある場合についても同様である。
配位部位は、カチオンとの関係で、発光性錯体を形成可能なものであれば特に制限されないが、例えば、含窒素複素環、及び、金属-炭素結合を形成可能な芳香環(例えば、ベンゼン環等)を有する基が好ましい。
含窒素複素環を有する基としては特に制限されないが、窒素原子を有する3~7員環の単環、及び、これらの縮環(上記をまとめて「含窒素配位部位」ともいう。)が有する水素原子を1個除いた1価の基が挙げられる。なお、環中の炭素原子は1個又は2個以上であればよい。
含窒素配位部位としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,3,4-チアジアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4,5-テトラジン、アゼピン、アゾニン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナンスリジン、インドール、イソインドール、カルバゾール、ベンズイミダゾール、1,8-ナフチリジン、プリン、プテリジン、ベンゾトリアゾール、キノキサリン、キナゾリン、ペリミジン、シンノリン、フタラジン、1,10-フェナンスロリン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン、8-ヒドロキシキノリン、8-メルカプトキノリン、2,2′-ビピリジン、2,2′-ジピリジルアミン、ジ(2-ピコリルアミン)、2,2′,2″-ターピリジン、ポルフィリン、フタロシアニン、及び、これらの誘導体から、水素原子の1個を除いた1価の基が挙げられる。
なお、得られるメタロ超分子ポリマーがより優れた本発明の効果を有する点で、含窒素配位部位としては、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、及び、これらの誘導体から水素原子の1個を除いた1価の基が好ましい。
以下に、含窒素配位部位の具体的構造を示す。含窒素配位部位は、これらの化合物が有する任意の水素原子の1つを除いた1価の基である。また、任意の置換基が結合されていてもよい。なお、以下の式中、pは2以上の整数を表し、特に制限されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。
Figure 2023001927000004
Figure 2023001927000005
含窒素配位部位を形成するための前駆体化合物は、市販品を購入して使用してもよいし、公知の方法(C.H.Weidl,A.A.Precup,C.Eschbaumer,U.S.Schubert,PolymericMaterials:ScienceandEngineering,84,649(2001).等)を用いて合成してもよい。
また配位部位としては、上記以外にも、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシ-カルボニル基、アセチルアセトナト基、ベンジリデンアセチルアセトナト基、シクロアルカジエニル基(シクロペンタジエニル基、及び、シクロオクタジエニル基等)、ベンジリデン基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、ホスフィノ基、及び、これらを組み合わせた基等を有する基を用いることもできる。
有機配位子は、その1分子内に配位部位を2個以上有し、上限は特に制限されないが、4個以下が好ましく、3個以下がより好ましい。
2個以上ある配位部位はそれぞれ同一でも異なってもよいが、同一であることが好ましい。
(スペーサ部位)
スペーサ部位は、配位部位と、後述するレドックス応答部位とを連結してメタロ超分子ポリマーの主鎖を形成する部位である。
配位部位とレドックス応答部位との間の結合形態は特に制限されないが、共有結合で両者を連結することが好ましい。
スペーサ部位の構造としては、特に制限されないが、レドックス応答部位と隣接する部分、すなわち、レドックス応答部位と直接結合する部分に、C~C20アリーレン基、又は、C~C20ヘテロアリーレン基を有することが好ましい。
後述するとおり、レドックス応答部位には窒素原子が含まれ、(正)電位の印加によってラジカルカチオンを生ずる。このとき、レドックス応答部位と隣接する部分に、C~C20アリーレン基、又は、C~C20ヘテロアリーレン基等の2価の芳香族炭化水素基を有するスペーサ部位が配置する場合、電位の印加によって生ずるラジカルカチオンが安定化されやすい。
エレクトロフルオロクロミックシートにおいては、電位の印加により惹起された蛍光OFF状態がより安定していることが好ましい。また、あわせて、ON/OFFを繰り返し行えることも重要な特性の一つとなる。
その点においては、スペーサ部位がアリーレン基、及び/又は、ヘテロアリーレン基を有し、かつ、それがレドックス応答部位と直接結合している場合、得られるメタロ超分子ポリマーは、電位の印加によって生ずるラジカルカチオンをより安定化しやすく、エレクトロフルオロクロミック材料の応用において求められる、より優れた特性を有しやすい。
スペーサ部位は、配位部位とレドックス応答部位とを連結する機能のほか、有機配位子内における電子移動の機能を有することが好ましい。このようなスペーサ部位としては、例えば、スペーサ部位がその全部、又は、一部において、共役していることが好ましい。
このようなスペーサ部位としては例えば、直鎖状、分枝鎖状、又は、環状のC~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基;C~C20アリーレン基;C~C20ヘテロアリーレン基;これらを組み合わせた基:等が好ましい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有するエレクトロフルオロクロミック材料が得られる点で、スペーサ部位は、C~C20アルキニレン基、C~C20アリーレン基、C~C20ヘテロアリーレン基、及び、これらを組み合わせた基からなる群より選択される少なくとも1種の2価の基が好ましい。
スペーサ部位の例としては、例えば、以下の式3AAで表される基が挙げられる。なお、式3AA中、*はレドックス応答部位、及び、配位部位との結合位置をそれぞれ表す。
Figure 2023001927000006
(レドックス応答部位)
レドックス応答部位は、電位の印加によって酸化還元反応を起こす原子団を意味する。有機配位子は、1分子中にレドックス応答部位を少なくとも1個以上有し、上限は特に制限されないが、一般に3個以下が好ましい。酸化還元反応によって、ラジカルカチオンの発生/消失が起こってもよい。
レドックス応答部位は、少なくとも1個以上の窒素原子を含む。窒素原子は非共有電子対を有し、(正)電位の印加によってラジカルカチオンを生じる。
すでに説明したとおり、有機配位子の分子の内部に安定的なラジカルカチオンが可逆的に生成、消失することが、蛍光ON/OFFスイッチングの達成に寄与するものと推測される。
レドックス応答部位は、より優れた本発明の効果を有するメタロ超分子ポリマーが得られる観点で、下記式2A~2Cで表される構造から選択される少なくとも1種の構造であることが好ましい。
Figure 2023001927000007
式2A中、R21 及び、R22は、それぞれ独立に、水素原子、又は、C~C20炭化水素基を表し、Lは、2価のC~C20炭化水素基を表し、*はスペーサ部位との結合位置を表す。
式2Aで表される基は、メタロ超分子ポリマーの主鎖を構成するスペーサ部位に結合した側枝であり、ペンダント基(側基、pendant group)である。
21、及び、R22のC~C20炭化水素基としては、ヘテロ原子を有していていてもよいC~C20アルキル基、C~C20アルケニル基、及び、C~C20アルキニル基等が挙げられ、いずれも、直鎖状、分枝鎖状、又は、環状であってよい。
また、R21、及び、R22のC~C20炭化水素基の他の例としては、C~C20アリール基、及び、C20ヘテロアリール基であってもよく、これらと、直鎖状、分枝鎖状、又は、環状の、アルキル基、アルケニル基、及び、アルキニル基との組合せであってもよい。
なかでも、酸化還元反応によって生ずるラジカルカチオンをより安定化することができる点では、R21、及び、R22は、C~C20アリール基、及び、C20ヘテロアリール基を含むことが好ましい。
なお、R21、及び、R22はそれぞれ同一でも異なってもよい。
の2価のC~C20炭化水素基としては、スペーサ部位の具体例として説明した2価の基が挙げられ、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000008
式2B中、R23は水素原子、又は、C~C20炭化水素基を表し、式2B、及び、式2Cにおける*は、配位部位、又は、スペーサ部位との結合位置を表す。
式2Bで表される2価の基は、2個の配位部位、2個のスペーサ部位、又は、配位部位及びスペーサ部位と結合し、メタロ超分子ポリマーの主鎖に組み込まれている。なお、式2B中、R23は、R21と同義であり、好適形態も同様である。
式2Cで表される3価の基は、配位部位、及び、スペーサ部位からなる群より選択される3個の部位と結合し、3官能分岐点を形成する。
レドックス応答部位が、式2A又は式2Bで表される構造のみからなる場合、レドックス応答部位からは通常は分岐点は生じない。また、上述したカチオン:配位部位がモル比で1:2で配位結合等する形態では、発光性錯体部分からも通常は分岐点は生じにくいため、結果として得られるメタロ超分子ポリマーは直鎖状となりやすい。
なお、直鎖状と「なりやすい」としているのは、メタロ超分子ポリマーの重合の過程で、立体障害が生じて配位結合等の形成が妨げられることがあり、1:2の配位結合等に乱れが生じて(特開2018-145244号公報に記載される「構造規則性」が低下し)、カチオン1個に対して、本来2個結合すべき配位部位が3個結合する場合等があり、意図せず分岐点が生ずることがあるからである。
とはいえ、レドックス応答部位が、式2A又は式2Bで表される構造を含む場合であって、カチオン:配位部位が原則としてモル比で1:2で配位結合等する場合、典型的には、式3A、又は、式3Bであらわされる繰り返し単位を有するメタロ超分子ポリマーが得られる。
このような繰り返し単位を含むメタロ超分子ポリマーは、溶媒に対する溶解性が高くなりやすく、成膜しやすいという優れた特徴を有する。
Figure 2023001927000009
式3A中、Ligは、配位部位を表し、Spはスペーサ部位を表し、Mは元素Aのカチオンを表し、CAは電荷を補償する対アニオンを表し、その他(L、R21、及び、R22)は、式2A中の各記号と同義である。
また、式3B中、Ligは、配位部位を表し、Lは単結合、又は、-Sp-を表し、Spはスペーサ部位を表し、Mは元素Aのカチオンを表し、CAは電荷を補償する対アニオンを表し、R23は、式2Bの中の同記号と同義である。
一方、レドックス応答部位が、上記式2Cで表される構造を含む場合、レドックス応答部位において、3官能分岐点が形成される。このような構造を有するメタロ超分子ポリマーは優れた機械的強度を有する。
このような3官能分岐点としては、カチオン:配位部位が原則としてモル比で1:2で配位結合等する場合、以下の式3Cで表される構造が挙げられる。
式3C中、Ligは、配位部位を表し、Lは単結合、又は、-Sp-を表し、Spはスペーサ部位を表し、Mは元素Aのカチオンを表す。また、式中*は他の有機配位子のLigとの配位結合等の位置を表す。
Figure 2023001927000010
(有機配位子の好適形態)
次に、有機配位子の好適形態について説明する。
有機配位子の好適形態として、式4A、式4B、及び、式4Cで表される化合物が挙げられる。
Figure 2023001927000011
上記式4A~4C中において、Ligは配位部位を表し、Lは単結合、又は、-Sp-を表し、Spはスペーサ部位を表し、R21、R22、及び、R23は、式2A~2C中における各記号と同義であり、好適形態も同様である。
なかでも、より優れた本発明の効果を有するエレクトロフルオロクロミックシートが得られる観点では、有機配位子は、4Bで表される化合物を含むことが好ましい。
有機配位子が、以下の式5A~5C、式6A~6C、式7A~7C、式8A~8C、及び、式9A~9Cで表される化合物を含む場合、得られるエレクトロフルオロクロミックシートはより優れた本発明の効果を有する。
なかでも、有機配位子が、式5A~5C、式6A~6C、式7A~7C、式8A~8Cで表される化合物の1種、又は、2種以上を含む場合、エレクトロフルオロクロミックシートは更に優れた本発明の効果を有する。
有機配位子が、5B、6B、7B、8B、及び、9Bで表される化合物を含む場合、エレクトロフルオロクロミックシートはより優れた本発明の効果を有し、5B、6B、7B、及び、8Bで表される化合物を含む場合、更に優れた本発明の効果を有する。
Figure 2023001927000012
式5A~5C中、R51、R52、及び、R53は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の原子又は基を表し、複数あるR51、R52、及び、R53はそれぞれ同一でも異なってもよい。また、Lは、単結合又は、-Sp-を表し、Spは、スペーサ部位を表す。また、R21、R22、及び、R23は、式2A~2Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
51、R52、及び、R53のアルキル基としては、特に制限されないが、直鎖状、又は、分枝鎖状のC~C20のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、C~C20アリール基が挙げられる。
より具体的には、R51としては、例えば、メチル基、エチル基、n-ブチル基、t-ブチル基、フェニル基、及び、トルイル基等が挙げられる。
なお、これらのアリール基、及び、アルキル基は、さらに置換基を有していて
もよい。このような置換基として、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;塩素、及び、臭素等のハロゲン基;等が挙げられる。
Figure 2023001927000013
式6A~6C中、R61、R62、及び、R63は、水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、複数あるR61、R62、及び、R63は同一でも異なってもよく、好適形態は、R51と同様である。
また、Lは、単結合又は、-Sp-を表し、Spは、スペーサ部位を表す。
また、R21、R22、及び、R23は、式2A~2Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000014
式7A~7C中、Spは、スペーサ部位を表し、R71、R72、及び、R73は、水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、複数あるR71、R72、及び、R73は同一でも異なってもよく、好適形態は、R51と同様である。
また、Lは、単結合又は、-Sp-を表し、Spは、スペーサ部位を表す。
また、R21、R22、及び、R23は、式2A~2Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000015
式8A~8C中、Spは、スペーサ部位を表し、R81、R82、及び、R83は、水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、複数あるR81、R82、及び、R83は同一でも異なってもよく、好適形態は、R51と同様である。
また、Lは、単結合又は、-Sp-を表し、Spは、スペーサ部位を表す。
また、R21、R22、及び、R23は、式2A~2Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000016
式9A~9C中、Spは、スペーサ部位を表し、R91、R92、及び、R93は、水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種を表し、複数あるR91、R92、及び、R93は同一でも異なってもよく、好適形態は、R51と同様である。
また、Lは、単結合又は、-Sp-を表し、Spは、スペーサ部位を表す。
また、R21、R22、及び、R23は、式2A~2Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
上記有機配位子は、公知の方法によって合成できる。例えば、ACS Appl.Mater.Interfaces2020,12,58277-58286、及び、ACS Appl. Mater. Interfaces 2014,6,9118-9125には、配位部位の前駆体化合物、レドックス応答部位の前駆体化合物をクロスカップリング(鈴木カップリング)させ、有機配位子を得る方法が記載されている。
また、特開2012-017265号公報の0014~0085段落に記載の方法を用いることもできる。
Figure 2023001927000017
上記式中、Pd(PPhは、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムである。
Figure 2023001927000018
上記式中、Pd(PPhCl)は、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを表す。なお、上記は、有機配位子の合成方法の一例であり、上記に制限されず、当業者にとって公知の方法を適宜使用できる。
(メタロ超分子ポリマーの好適形態)
本発明の実施形態に係るメタロ超分子ポリマーは所定のカチオンと有機配位子とが配位結合等によって交互に連なって形成されるポリマーであり、例えば、以下の繰り返し単位を含むことが好ましい。
なお以下の繰り返し単位は、有機配位子とカチオンとがモル比で1:1で配位結合して形成される繰り返し単位(配位部位:カチオン=2:1)であり、これらの繰り返し単位のみからなるメタロ超分子ポリマーは直鎖状となり、これらの繰り返し単位を含むメタロ超分子ポリマーは直鎖状構造を含む。
Figure 2023001927000019
式5AP、及び、式5BP中の各記号は式5A、及び、式5Bにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
また、Mは、すでに説明した元素Aのカチオンを表し、以下の式についても同様である。
なお、メタロ超分子ポリマーは対アニオンを含んでもよく、メタロ超分子ポリマーの全体として、電荷が補償されていることが好ましい。
対アニオンとしては、例えば酢酸イオン、リン酸イオン、塩素イオン、六フッ化リンイオン、四フッ化ホウ素イオン、過塩素酸イオン、トリフラートイオン、ポリオキソメタレート、及び、これらのイオンの混合物等が挙げられる。
Figure 2023001927000020
式6AP、及び、式6BP中の各記号は式6A、及び、式6Bにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000021
式7AP、及び、式7BP中の各記号は式7A、及び、式7Bにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000022
式8AP、及び、式8BP中における各記号は式8A、及び、式8Bにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
Figure 2023001927000023
式9AP、及び、式9BP中における各記号は式9A、及び、式9Bにおける下記記号と同義であり、好適形態も同様である。
また、メタロ超分子ポリマーは、有機配位子の構造に由来する分岐点を有していてもよく、分岐点としては、3官能分岐点が好ましい。このような3官能分岐点としては、例えば、以下の式5CP~9CPで表される構造が挙げられる。
Figure 2023001927000024
式5CP~9CP中、Mは所定の元素のカチオンを表し、波線は以降の構造を省略することを表し、典型的には、スペーサ部位との結合位置を表す。その他の記号は、式5C~9Cにおける各記号と同義であり、好適形態も同様である。
・メタロ超分子ポリマーの合成方法
メタロ超分子ポリマーの合成方法としては特に制限されないが、有機配位子と、元素Aの塩と、を含む混合物を調製し、加熱する方法が挙げられる。なお、混合物は、溶媒を更に含んでもよい。
元素Aの塩としては、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩、四フッ化ホウ酸塩、六フッ化リン酸塩、及び、塩化物等が挙げられる。
混合物中における有機配位子と塩との含有量比としては特に制限されないが、反応がより進行しやすい観点では、混合物中における有機配位子の含有量に対する元素Aの含有量のモル基準の含有量比(元素A/有機配位子)が0.5~1.5が好ましく、0.75~1.25がより好ましい。
なお、混合物中には、式4Aで表される有機配位子(「4A配位子」)、式4Bで表される有機配位子(「4B配位子」)、及び、式4Cで表される有機配位子(「4C配位子」)からなる群より選択される少なくとも1種の有機配位子が含まれることが好ましい。
混合物中における4A配位子、4B配位子、及び、4C配位子の含有量比としては特に制限されないが、得られるメタロ超分子ポリマーが、より優れた溶媒への溶解性と、より優れた機械的強度を有する観点から、混合液中における、式4A配位子のモル基準の含有量、4B配位子のモル基準の含有量、及び、4C配位子のモル基準の含有量の合計に対する、4C配位子のモル含有量の含有量比(4C/4A+4B+4C)が、0.01~0.2であることが好ましい。
なお、上記有機配位子の比率は、メタロ超分子ポリマーに求められる特性に応じて適宜変更される。例えば、溶媒溶解性が高く、エレクトロフルオロクロミックシートを形成しやすい観点では、メタロ超分子ポリマーは溶媒に対して優れた溶解性を有することが好ましく、この場合、上記混合物中に含まれる有機配位子は、4A配位子、及び/又は、4B配位子のみが好ましい。
一方、機械的強度に優れたエレクトロフルオロクロミックシートが得られる観点では、4C配位子を含むことが好ましい。なお、この場合にシートを形成する方法としては、例えば、液相界面において合成すればよい。すなわち、有機配位子を含む溶媒(水と混和しないもの)と、カチオンを含む水溶液との境界で重合反応を起こさせることによって、液相界面において、エレクトロフルオロクロミックシートが得られる。
上記のように、有機配位子の分岐構造は、メタロ超分子ポリマーに要求される特性に応じて、適宜変更することができる。
混合物が含む溶媒としては特に制限されないが、水、有機溶媒、及び、これらの混合物等が挙げられる。
有機溶媒としては特に制限されないが、エチレングリコール、エタノール、メタノール、クロロホルム、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、及び、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
混合物中における溶媒の含有量は特に制限されないが、一般に、混合物中における固形分が、0.0001~30質量%が好ましい。
反応温度としては特に制限されないが、60~140℃が好ましい。
反応時間としては特に制限されないが12~36時間が好ましい。
なお、混合物を加熱する方法としては、特に制限されないが、特開2018-145244号公報に記載のマイクロ波加熱を用いてもよい。マイクロ波加熱を用いると、メタロ超分子ポリマーはより優れた構造規則性を有する。
・エレクトロフルオロクロミックシートの製造方法
エレクトロフルオロクロミックシートは、メタロ超分子ポリマー溶液を調製し、得られた溶液を基材(例えば電極)上に塗布して、溶液層を形成し、溶媒を除去することで製造できる。
このような方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、及び、インクジェットプリント法等の各種のコーティング方法が適用可能である。
また、エレクトロフルオロクロミックシートを仮支持体上に形成させ、これを電極に転写する方法によっても製造可能である。
上記溶液が含む溶媒としては特に制限されないが、メタロ超分子ポリマーの合成の際に使用できる有機溶媒としてすでに説明したものと同様の溶媒を使用できる。
エレクトロフルオロクロミックシートの厚みとしては特に制限されず、用途に応じて適宜調整されればよいが、一般に、10nm~1000μmが好ましい。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[有機配位子(LTPA)の合成]
まず、有機配位子である[4,4-ビス(2,2:6,2-テルピリジニル)ベンゼン]トリフェニルアミン(LTPA)を以下の手順に沿って合成した。
DMSO(20ml)に4,4′-DBTPA(465mg、1.15mmol)、テルピリジンボロン酸エステル(870mg、2mmol)、Pd(PPh(115mg、~10mol%)、KCO(1.38g、10mmol)を入れ、110℃で48時間加熱還流させた。
得られた反応混合物を常温に冷却した後、生成物をCHCl/HO混合液で抽出した。淡黄色の粗生成物をカラムクロマトグラフィー(塩基性アルミナ、CHCl/MeOH 95:5)で精製し、Rf=0.85で1.15g(収率~70%)のLTPAを得た。
TPAの構造は、核磁気共鳴(H-NMR、13C-NMR)とエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)のスペクトルによって決定した。
H-NMR:(400MHz、CD2Cl2)δ(ppm):8.81(s、4H)、8.72-8.67(m、8H)、7.98(d、J=8.7Hz、4H)、7.90(td、J=7.5、1.7Hz、4H)、7.77(d、J=17.6Hz、4H)、7.62(d、J=8.2Hz、4H)、7.38-7.30(m、6H)、7.20(t、J=7.5Hz、6H)、7.09(t、J=7.3Hz、1H).
13C-NMR:(CD2Cl2)δ:156.0、155.9、149.6、149.1、147.4、141.3、137.0、136.8、134.4、129.5、128.9、127.8、127.7、127.1、125.0、124.2、124.0、123.6、121.2、118.5.
ESI-TOF-MS(CHCl3/MeOH、1:1v/v)m/z:found 860.3(100%)、861.3(65%)、862.3(20%) for [M+H](calculated M:859.3 for C60H41N7).
Figure 2023001927000025
[メタロ超分子ポリマーの合成]
メタロ超分子ポリマーは、配位子(LTPA)とZn2+イオンを1:1で複合化して合成した。以下では、合成されたメタロ超分子ポリマーを「polyZn-EFC」という。
まず、2口丸底フラスコにLTPA(200mg、0.23mmol)と酢酸亜鉛(42.7mg、0.23mmol)を入れ、エチレングリコールで24時間還流させた。鮮やかな橙黄色の反応混合物を室温まで冷却し、減圧下でエチレングリコールを完全に除去した。その後、ジクロロメタンで3~4回洗浄し、未反応の配位子と赤色固体を除いた。最後に真空中で一晩乾燥させることで、目的物を淡黄色の固体として得た(収率~95%)。図11は、polyZn-EFCのH NMR(Nuclear Magnetic Resonance、CDOD)の測定結果である。
Figure 2023001927000026
[メタロ超分子ポリマーシートの作製]
メタロ超分子ポリマーのフィルムは以下の手順により作製した。
まず、固形ポリマー粉末をメタノールに溶解して、polyZn-EFC溶液(濃度10mg/ml)を調製し、その溶液をマイクロシリンジフィルター(0.45μm、ポリフッ化ビニリデン)で濾過して不溶性粒子を除去した。最後に、黄色に着色した溶液をITOガラス基板上に塗布し、スピンコート法で成膜した。得られた膜を、真空オーブン(50℃)で乾燥させた。
[エレクトロフルオロクロミックデバイスの作製]
polyZn-EFCがコーティングされたITOガラスを作用電極、固体高分子ゲルを電解質層、NiHCF(ヘキサシアノ鉄酸ニッケル)がコーティングされたITOガラスを対電極とするサンドイッチ構造でエレクトロフルオロクロミックデバイスを作製した。
電解質層は、以下の手順により合成した。
まず、TBAP(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)、PC(プロピレンカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート、重量平均分子量~350000(GPC))を8/46/46(w/w)の割合で混合して、透明な薄い電解質ゲル膜を作製し、2枚のガラス基板の間で95℃、40%の相対湿度で加温した。
次に、ITO-ガラス基板上にコーティングされたpolyZn-EFCを0.1M TBAP/CHCl溶液で洗浄し、ポリマーの低分子量部分を除去し、作用電極とした。対極にはNiHCFを塗布したITOガラス基板をスピンコート法で作製したものを使用した。
上記のようにして得られた作用電極と対電極とを透明な電解質ゲル膜で挟んだサンドイッチ構造にした。
[結果]
polyZn-EFCにおいて、Zn2+イオンは、LTPAの2つのターピリジン活性部位(配位部位)と準八面体構造で結合し、対応する2つのカウンターアセテートイオン(OAc)がポリマー骨格の電荷をバランスさせている。
図2は、LTPAを含むCHCl溶液(c=1×10-5mol/L)にZn(BF溶液(MeOH、c=5×10-4mol/L)を添加したときの紫外可視吸収スペクトルの変化を表す図である。実線は、LTPAのスペクトルであり、白抜きの二重線は、LTPA/Zn2+イオンがモル比で1:1となったときの吸収スペクトルを表す。また、その間を埋める複数のスペクトルは、Zn(BFのメタノール溶液の添加に伴って変化するスペクトルを表す。
実線のLTPAのCHCl溶液のスペクトルによれば、π-π遷移、及び、n-π遷移のそれぞれに対応して、279nm、及び、368nmに2つの吸収ピークが観察された。溶液は無色であった。
ここに、Zn(BFのメタノール溶液を添加すると、両ピークの強度が徐々に減少し、同時にλmax=326nmと431nmの2つのピークが新たに発生した。このピークは、LTPAのπ-π遷移、及び、n-π遷移のピークと比較すると高波長側にシフトしており、配位部位(ターピリジン)が金属カチオンに配位結合していることを示している。この新しいピークの強度は、LTPAに等モルのZn2+イオンを加えたときに飽和した(図3)。
この結果は、LTPAとZn2+イオンが1:1(モル比)で錯形成している、すなわち、モル比1:1でメタロ超分子ポリマーを形成していることを示唆している。
図4は、ITOガラス基板上のpolyZn-EFC膜の吸収スペクトルであり、図5は、425nmで励起したITOガラス基板上のpolyZn-EFC膜の発光スペクトルである。
図4に示されたとおり、polyZn-EFC膜の吸収スペクトルには、π-π遷移とn-π遷移にそれぞれ対応する波長326nmと430nmの2つの吸収ピークが観測された。このとき、polyZn-EFC膜は黄色だった。
次に、図5に示されたとおり、425nmで励起すると、波長587nmの強い発光ピークが観測され,明るいオレンジ色の蛍光が得られた。
図6は、polyZn-EFC膜のX線光電子分光法(XPS)測定結果である。ワイドスキャン法により、束縛エネルギー285、400、534、981eVにそれぞれC1s、N1s、O1s、Zn2pに対応するピークが観測され、これらがポリマー骨格中に含まれることが示唆される。
N1sとZn2pの曲線下面積(AUC)を考慮して定性的に確認したN(LTPAに由来する)とZn(金属中心)の原子割合は7.8:1であり、理想値(N/Zn=7:1)に非常に近い値であった。また、N1sとZn2pの曲線下面積は7.8:1であり、理想値(N/Zn=7:1)に非常に近いことが確認された。
また、結果は図示しないがTGA(熱重量測定)で評価したポリマーの熱安定性は、550℃までの範囲で良好だった。
polyZn-EFCの電気化学的特性は、非水系(0.1M TBAP/MeCN)電解質システムにおいて、スキャンスピード20mV/sの3電極サイクリックボルタンメトリー(CV)試験によってテストされた。図7は、サイクリックボルタモグラムである。
CV試験からは、E°1/2=0.605V(vs.Ag/Ag)というpolyZn-EFCの優れた酸化還元挙動が明確に示された。
この酸化還元特性は、前方酸化ピークが0.69V(vs.Ag/Ag)、後方還元ピークが0.52V(vs.Ag/Ag)となっており、トリフェニルアミン(TPA)とそのラジカルカチオン(TPA・+)との間の可逆的な変化を示唆している。
Figure 2023001927000027
一対のITO-ガラス基板間に、polyZn-EFCシートと、透明イオンゲルを電解質層とを挟んでEFCデバイスを作製した。作製したデバイスは,通常の状態では紫外光で励起されて赤橙色の蛍光(λmax=680nm)を鮮やかに発した。
図8は、印加電圧の発光強度(425nmで励起)への影響を表す図である。図8中、白抜きの二重線は、印加電圧が0Vのときの発光強度を示しており、実線は、印加電位が1.6Vのときの発光強度を示している。これらの2つの線の間の線は、印加電位を変化させた場合の発光強度を示している。
図8に記載されているとおり、polyZn-EFCシートに接する電極に正電位(1.6V)を印加すると、蛍光は徐々に減衰し、オフ状態になる。図9は、それに対応するON/OFFの様子を示す画像である。図10は、スイッチON/OFF(0.0Vと1.6Vの印加)の繰り返しにおける650nmにおける発光強度を表す図である。図10によれば、ON/OFF動作は数サイクルにわたって持続しており、良好な安定性を示している。
レドックス活性(redox-active)なダイトピック配位子(ditopic ligand)であるLTPAとZn(II)イオンを1:1のモル比で錯形成させることにより、polyZn-EFCの合成に成功した。このメタロ超分子ポリマーの構造は、様々な分光法や顕微鏡観察で確認することができた。紫外可視吸収スペクトル測定を用いた滴定実験では、Zn(II)イオンとLTPAの錯形成におけるモル比が1:1と見積もられた。この結果は、三座(tridentate)のターピリジン部位を2つ有するLTPAが、六配位構造のZn(II)イオンに対して配位することでZn(II)イオンとLTPAが交互につながり高分子化していることを示している。polyZn-EFCは優れた加工性を有し、ポリマーのメタノール溶液を導電性ガラス基板(ITOガラス)にスピンコートすることにより滑らかで均一なポリマー薄膜を得た。本ポリマー膜は、肉眼では黄色(吸収~325nm)を呈し、紫外光下では明るいオレンジ色の発光(発光~580nm)を示した。また、サイクリックボルタンメトリー測定でpolyZn-EFC膜の酸化還元挙動を調べたところ、トリフェニルアミンとラジカルカチオンのトリフェニルアミン(TPA⇔TPA・+)の間での酸化還元がE°1/2=0.6V(Ag/Ag)で生じることを確認した。
polyZn-EFCを塗布したITOガラスを作用電極に、NiHCFを塗布したITOガラスを対極に用い、固体高分子イオンゲル膜とのサンドイッチ構成で固体エレクトロフルオロクロミックデバイス(EFCデバイス)を作製した。作製したEFCデバイスは、通常の段階では強い橙赤色の発光(発光~650nm)を示した。正の電位(~1.6V)を印加すると、蛍光は急激に消退し、0.0Vで再び発光した。このような発光のON/OFFは、適切なバイアスをかけることで生じるTPAとTPA・+の間の酸化還元に関連している。アミンの酸化還元により金属錯体発光が可逆に変化するメタロ超分子ポリマーはディスプレイ用のEFC材料の開発につながるものである。
10 :EFCデバイス
11 :第1電極
12 :固体電解質
13 :EFCシート
14 :第2電極
15 :電極

Claims (13)

  1. 7族~12族の金属元素、及び、ランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素のカチオンと、有機配位子とが、
    配位結合、及び、有機金属結合からなる群より選択される少なくとも1種を含む結合形態によって交互に連なって形成されるメタロ超分子ポリマーを含む、エレクトロフルオロクロミックシートであって、
    前記有機配位子は、前記カチオンとの間で、前記結合形態により金属錯体、及び、有機金属錯体からなる群より選択される少なくとも1種の発光性錯体を形成する配位部位を1分子中に2個以上有し、
    電位の印加によって酸化還元反応を起こすレドックス応答部位を1個以上有し、
    前記レドックス応答部位は、少なくとも1個以上の窒素原子を有し、
    前記有機配位子において、前記配位部位と前記レドックス応答部位とは、直接結合しているか、又は、スペーサ部位を介して結合している、エレクトロフルオロクロミックシート。
  2. 前記金属元素が、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、及び、カドミウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  3. 前記ランタノイド元素が、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、及び、テルビウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  4. 前記配位部位が、含窒素複素環、及び、金属-炭素結合を形成可能な芳香環からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  5. 前記レドックス応答部位が下記式2A~2Cで表される構造から選択される少なくとも1種の構造からなる請求項1~4のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
    Figure 2023001927000028

    (式1中、R21 及び、R22は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~20個の1価の炭化水素基を表し、Lは、炭素数1~20の2価の炭化水素基を表し、*は、前記スペーサ部位との結合位置を表す。)
    Figure 2023001927000029

    (式2B中、R23は水素原子、又は、炭素数1~20個の1価の炭化水素基を表し、式2B、及び、式2Cにおける*はそれぞれ前記配位部位、又は、前記スペーサ部位との結合位置を表す。)
  6. 前記レドックス応答部位が、前記式2Aで表される構造、及び、前記式2Bで表される構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含む、請求項5に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  7. 前記スペーサ部位が、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数6~20個のアリーレン基を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  8. 前記メタロ超分子ポリマーが、以下の式で表される繰り返し単位のうち、いずれか1種、又は、2種以上を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
    Figure 2023001927000030
    Figure 2023001927000031
    Figure 2023001927000032
    Figure 2023001927000033

    (各式中、R51、R52、R61、R62、R71、R72、R81、及び、R82はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の原子又は基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、L炭素数1~20の2価の炭化水素基を表し、R21 22、及び、R23は水素原子、又は、炭素数1~20個の1価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、Lは、単結合、又は、-Sp-を表し、Spは前記スペーサ部位を表し、Mは前記カチオンを表す)
  9. 前記スペーサ部位が、炭素数2~20個のアルキニレン基、炭素数6~20個のアリーレン基、炭素数6~20個のヘテロアリーレン基、及び、これらを組み合わせた基からなる群より選択される少なくとも1種の2価の基である、請求項1~8のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
  10. 前記メタロ超分子ポリマーが、以下の式で表される3官能分岐点のいずれか1種、又は、2種以上を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシート。
    Figure 2023001927000034

    (各式中、R53、R63、R73、及び、R83はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の原子又は基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、Lは、単結合、又は、-Sp-を表し、Spは前記スペーサ部位を表し、*は、前記スペーサ部位、又は、前記配位部位との結合位置を表し、Mは前記カチオンを表す)
  11. 一対の電極と、前記電極に挟持された請求項1~10のいずれか1項に記載のエレクトロフルオロクロミックシートを含む、エレクトロフルオロクロミックデバイス。
  12. 以下の式で表される繰り返し単位のうち、いずれか1種、又は、2種以上を含む、メタロ超分子ポリマー。
    Figure 2023001927000035
    Figure 2023001927000036
    Figure 2023001927000037
    Figure 2023001927000038
    Figure 2023001927000039

    (各式中、R51、R52、R61、R62、R71、R72、R81、R82、R91、及び、R92はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の原子又は基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、Lは炭素数1~20の2価の炭化水素基を表し、R21 22、及び、R23は水素原子、又は、炭素数1~20個の1価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、Lは、単結合、又は、-Sp-を表し、Spはスペーサ部位を表し、前記スペーサ部位は炭素数1~20個の2価の炭化水素基であり、Mは7族~12族の金属元素、及び、Ruを除くランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素のカチオンを表す)
  13. 更に、以下の式で表される3官能分岐点のいずれか1種、又は、2種以上を含む、請求項12に記載のメタロ超分子ポリマー。
    Figure 2023001927000040

    (各式中、R53、R63、R73、R83、及び、R93はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、及び、アリール基からなる群より選択される少なくとも1種の原子又は基を表し、それぞれ同一でも異なってもよく、Mは7族~12族の金属元素、及び、Ruを除くランタノイド元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素のカチオンを表し、Lは、単結合、又は、-Sp-を表し、Spはスペーサ部位を表し、前記スペーサ部位は、炭素数1~20個の2価の炭化水素基を表し、*は結合位置を表す)

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