JP2022179342A - 光電変換素子及び光電変換素子の製造方法、光電変換モジュール、並びに電子機器 - Google Patents

光電変換素子及び光電変換素子の製造方法、光電変換モジュール、並びに電子機器 Download PDF

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裕二 田中
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Abstract

【課題】低照度の光に対しても高い出力が得られ、かつ温度が異なる環境においても出力の持続性及び光耐久性に優れる光電変換素子の提供。【解決手段】第1の電極と、光電変換層と、第2の電極とを有する光電変換素子であって、前記光電変換層が、ホール輸送層を有し、前記ホール輸送層が、非対称構造を有するリチウム塩を含有し、溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm3以下である光電変換素子である。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換素子及び光電変換素子の製造方法、光電変換モジュール、並びに電子機器に関する。
近年、低照度の光でも効率よく発電できる光電変換素子を有する太陽電池が多くの注目を集めており、設置場所を問わないことを活かした用途などに加えて、電池交換や電源配線等が不要な自立型電源としても幅広い応用が期待されている。
例えば、屋内向けの太陽電池としては、アモルファスシリコン、有機系太陽電池などが知られている。有機系太陽電池の一例である色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池は、電荷発生機能と電荷輸送機能とが分離された層によって実現されていることで、高出力化が可能になり、かつ容易に製造することができる。
従来、色素増感太陽電池は、電解液を内包しているために電解液の揮発や漏れといった問題があったが、近年、p型半導体材料を用いた固体型の色素増感太陽電池も開発され、製造工程の簡略化がより一層進んでいる。また、有機と無機のハイブリッドのペロブスカイト型太陽電池は、従来のシリコン系太陽電池に匹敵する高い変換効率を有し、かつ容易に製造できることから、多くの注目を集めている。
太陽電池などに用いることができる光電変換素子については、高温環境下や微弱な室内光の環境下において、高出力が得られる光電変換素子を提供することを目的として、例えば、第1の電極と、光増感化合物を含む電子輸送層と、ホール輸送層と、第2の電極と、を有する光電変換素子であって、ホール輸送層は、ピリジン化合物Aと、イオン性化合物Bと、を含む光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、低照度の光に対しても高い出力が得られ、かつ温度が異なる環境においても出力の持続性及び光耐久性に優れる光電変換素子を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段としての本発明の光電変換素子は、
第1の電極と、光電変換層と、第2の電極とを有する光電変換素子であって、
前記光電変換層が、ホール輸送層を有し、
前記ホール輸送層が、非対称構造を有するリチウム塩を含有し、溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下である。
本発明によると、低照度の光に対しても高い出力が得られ、かつ温度が異なる環境においても出力の持続性及び光耐久性に優れる光電変換素子を提供することができる。
図1は、第1実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。 図2は、第2実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。 図3は、第3実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。 図4は、第4実施形態の光電変換モジュールの一例を示す概略図である。 図5は、第5実施形態の光電変換モジュールの一例を示す概略図である。 図6は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。 図7は、図6に示したマウスの一例を示す概略外観図である。 図8は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。 図9は、図8に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。 図10は、図8に示したキーボードの他の一例を示す概略外観図である。 図11は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。 図12は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。 図13は、本発明の電子機器の一例を示すブロック図である。 図14は、図13に示した電子機器に電源ICを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。 図15は、図14に示した電子機器に蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。 図16は、本発明の電源モジュールの一例を示すブロック図である。 図17は、図16に示した電源モジュールに蓄電デバイスを更に組み込んだ一例を示すブロック図である。 図18は、実施例1の光電変換モジュールを用いて測定したX線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの一例を示す図である。
(光電変換素子)
本発明の光電変換素子は、第1の電極と、ホール輸送層を有する光電変換層と、第2の電極とを有し、さらに必要に応じてその他の層を有する。
本発明の光電変換素子においては、前記ホール輸送層が、非対称構造を有するリチウム塩を含有し、溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下である
本発明者らは、光電変換素子のホール輸送層の形成に用いる溶媒が製造後の光電変換素子に、ある一定量以上残留すると光耐久性の低下を引き起こすことを見出した。
なお、本願明細書において、「光電変換素子」とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子、又は電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を意味し、具体的には、太陽電池又はフォトダイオードなどが挙げられる。
なお、本発明において、前記層とは、複数の膜が重なった構造だけでなく、単一の膜である場合(単層)を含む。
また、積層方向とは、光電変換素子における各層の面方向に対して垂直な方向を意味する。また、接続とは、物理的な接触だけでなく、本発明の効果を奏することができる程度の電気的なつながりを意味する。
本発明の光電変換素子は、第1の電極と、光電変換層と、第2の電極とを有し、光電変換層が、少なくともホール輸送層を有し、更に必要に応じて、第1の基板、第2の基板、ホールブロッキング層、封止部材などのその他の部材を有する。
<第1の基板>
前記第1の基板としては、その形状、構造、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の基板の材質としては、透光性及び絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する基板が好ましい。また、第1の基板としては、可とう性を有するものがより好ましい。
前記基板は、前記光電変換素子の第1の電極側の最外部、及び第2の電極側の最外部のどちらか一方、又は両方に設けてもよい。
以下、第1の電極側の最外部に設けられる基板を第1の基板、第2の電極側の最外部に設けられる基板を第2の基板と称する。
<第1の電極>
前記第1の電極としては、その形状、大きさについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記第1の電極の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
前記第1の電極の材質としては、可視光に対する透明性及び導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
前記透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物などが挙げられる。
前記カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTOがより好ましい。
前記第1の電極の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、第1の電極の材質がカーボンや金属の場合には、第1の電極の平均厚みとしては、透光性を得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
前記第1の電極は、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などにより形成することができる。
また、前記第1の電極は、前記第1の基板上に形成されることが好ましく、予め前記第1の基板上に前記第1の電極が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
一体化された前記市販品としては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。他の一体化された前記市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、又はメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合又は積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
前記金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
前記金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設けることにより併用することができる。
<光電変換層>
前記光電変換層は、ホール輸送層を有し、さらに必要に応じて電子輸送層を有する。
前記光電変換層は単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
<<ホール輸送層>>
前記ホール輸送層はホール(正孔)を輸送する機能する層である。
前記ホール輸送層の形態としては、ホールを輸送する機能を有していれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料などが挙げられる。これらの中でも、固体電解質が好ましく、有機ホール輸送材料がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ホール輸送層は、リチウム塩を含有することが好ましく、リチウム塩におけるアニオンが非対称の構造を有する。非対称の構造とは、リチウムイオンを中心としたときにアニオンの左右の分子構造が異なることをいう。非対称の構造を有するリチウム塩としては、下記一般式(1)で表されるリチウム塩が好ましい。
Figure 2022179342000002
ただし、前記一般式(1)中、A及びBは、F、CF、C、C、及びCのいずれかの置換基を表し、Aの置換基とBの置換基は互いに異なる。
本発明者らは、特に、ホール輸送層に非対称構造を有するリチウム塩を含有することにより、光耐久性を大きく向上できることを見出した。その理由としては、リチウム塩が非対称構造を有することによって溶媒への溶解性が高まり、ホール輸送層中の相分離の影響を低減できたことによると考えられる。
対称構造を有するリチウム塩は、ホール輸送層を形成した後溶媒が蒸発する過程でアニオンリッチの海島構造が形成され、相分離している様子が観察された。リチウム塩は、水溶性を有し、ホール輸送層を形成する他の材料との相溶性が低いため、ホール輸送層においてアニオンの分布状態に偏りが生じやすかったものと考えられる。また、溶媒への溶解性が低いために、リチウム塩の添加量が制限されていたことも耐久性が優れなかった理由として考えられる。
本発明の非対称構造を有するリチウム塩は、溶媒との相溶性が向上し、ホール輸送層内で相分離の影響を低減したことで、ホール輸送層内において輸送性が低い領域が少なくなり、ホール輸送性の安定化が実現されたものと考えられる。さらに、リチウム塩の溶解性が向上されて添加量を増加させることが可能となったことで、高出力化とともに高耐久化をも実現する相乗効果が得られたものと考えられる。
前記一般式(1)で表されるリチウム塩は、電荷の移動に関与しており、このリチウム塩を含有することによって良好な光電変換特性を得ることができる。
前記一般式(1)で表されるリチウム塩としては、例えば、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-FPFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(Li-FNFSI)、リチウム(ノナフルオロブタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-NFTFSI)、リチウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-PFTFSI)などが挙げられ、これらの中でも、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Li-FTFSI)が特に好ましい。
上記のリチウム塩の具体例の構造式は、以下の通りである。
Figure 2022179342000003
ここで、例えば、前記リチウム塩を含有したホール輸送層形成用塗布液を用いて塗布した場合、形成した膜においては、上記のリチウム塩は、アニオンとカチオンが結合した塩の状態で含有している必要はなく、リチウムカチオンとアニオンに分離した状態であってもよい。具体的には、前記リチウム塩は、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に含有した状態でホール輸送層を形成すると、リチウムカチオンは電子輸送層にマイグレートし、ホール輸送層よりも電子輸送層に多く含有されることを本発明者らは知見した。一方、アニオンについては、例えば、電子輸送層に一部マイグレートされるものの、電子輸送層よりもホール輸送層に多く含有されることを本発明者らは知見した。
本発明においては、リチウム塩のカチオンとアニオンが分離し、それぞれが異なる分布状態を形成することが好ましく、これらが光電変換層内に含有されていることで、様々な温度環境においても、低照度の光に対して高い出力が得られ、かつ出力の持続性に優れるという効果を更に向上させることができる。
前記光電変換層におけるホール輸送層には、上記一般式(1)で表されるリチウム塩に加えて、別の構造を有するリチウム塩を含有させることもできる。これらのリチウム塩としては、前述のリチウム塩の他に、アニオン種が対称のものでもよく、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-BETI)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等が挙げられる。また、リチウム(シクロヘキサフルオロプロパン)(ジスルホン)イミドのような環状イミドも挙げられる。
ただし、これらのリチウム塩は、アニオンが対称型であるため相溶性が低く、添加量を増加することが難しくなるため、添加するとしても少量が好ましい。
前記リチウム塩の含有量としては、ホール輸送材料に対して、5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、20モル%以上35モル%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、低照度光に対する出力が高く、かつ出力の維持率が向上し、高耐久化との両立が可能になる。
前記ホール輸送層に含有する有機溶媒としては、含有するリチウム塩や後述するホール輸送材料等の各種材料を溶解することができれば、従来公知の溶媒を使用することが可能であり、目的に応じて適宜選択することができる。
前記有機溶媒としては、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、安息香酸メチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、アニソール、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、エトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記ニトリル溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒が好ましい。
前記有機溶媒の沸点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上150℃以下が好ましい。沸点が上記範囲の有機溶媒を用いると、多孔質状の電子輸送層にホール輸送層が充填されやすく、かつ過度に溶媒が残存することも回避できる。ホール輸送層を塗布した後、加熱乾燥することによって溶媒量を減少させることは可能であるが、過度に高温もしくは長時間加熱乾燥すると、溶媒量を低減できたとしても、高い出力が得られなくなったり、耐久性が大幅に低下したりする場合がある。そのため、溶媒の選択も重要である。本発明においては、これらの溶媒の中でもクロロベンゼン、又はクロロベンゼンを含む混合溶媒を用いることが好ましい。
前記ホール輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多孔質状の電子輸送層の細孔に入り込んだ構造を有することが好ましく、電子輸送層上に0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下が更に好ましい。
前記ホール輸送層は、光増感化合物が吸着された後述する電子輸送層の上に直接形成することができる。
前記ホール輸送層の作製方法としては、光電変換素子を形成後の溶媒量(残存量)が30μg/mm以下となるようにすることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、真空蒸着法等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、特に湿式製膜法が好ましく、電子輸送層上に塗布する方法が好ましい。
前記湿式製膜法を用いた場合、塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、ダイコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
また、超臨界流体又は臨界点より低い温度及び圧力の亜臨界流体中で製膜してもよい。前記超臨界流体は、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
前記超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。
前記ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
前記亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
前記超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
更に、前記超臨界流体及び前記亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒及びエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記ホール輸送層の作製方法としては、前記ホール輸送層を形成する材料を含有するホール輸送層形成材料を光増感化合物が吸着した電子輸送層上に付与した後、かつ第2の電極を形成する前に、乾燥させて制御することが好ましく、特に加熱乾燥することが好ましい。
前記加熱乾燥の条件における圧力としては、特に制限はないが、常圧下で行うことが好ましい。
前記加熱乾燥の条件における温度としては、30℃以上130℃以下が好ましく、50℃以上100℃以下がより好ましい。
前記加熱乾燥の条件における処理時間としては、10分間以上24時間以下が好ましく、30分間以上2時間以下がより好ましい。
また、光増感化合物を吸着させた電子輸送層上に、ホール輸送材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。プレス処理を施すことによって、ホール輸送材料がより多孔質電極である電子輸送層と密着するため、効率が改善できる場合がある。
前記プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラ等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
前記圧力としては、10kgf/cm以上が好ましく、30kgf/cm以上がより好ましい。
前記プレス処理する時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
前記離型剤としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記プレス処理工程を行った後、第2の電極を設ける前に、ホール輸送材料と第2の電極との間に金属酸化物を設けてもよい。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
前記金属酸化物をホール輸送層上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。
前記湿式製膜法としては、金属酸化物の粉末又はゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層上に塗布する方法が好ましい。湿式製膜法を用いた場合の塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、ダイコート法、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等の様々な方法を用いることができる。
塗布された前記金属酸化物の平均厚みとしては、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
本発明の光電変換素子において、前記溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下であり、25μg/mm以下が好ましく、20μg/mm以下がより好ましい。前記溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下であると、ホール輸送層の光耐久性を向上させることができる。
対称構造を有するリチウム塩を用いた場合には、相溶性を維持するために多くの溶媒が必要になり、溶媒量を低減させると相分離を引き起こして、耐久性の向上は実現できていなかった。一方、本発明の非対称構造を有するリチウム塩を用いた場合には、それ自体が高い相溶性を有しているため、溶媒量をより低減させることが可能となり、これらの非対称構造を有するリチウム塩との相乗効果により、更なる高耐久化の実現が達成できたものと考えられる。
記ホール輸送層の単位体積に対する前記溶媒量の測定は以下のようにして行う。
[溶媒量の測定方法]
封止されている光電変換素子を液体窒素に浸漬させた後、ハンマーで細かく粉砕し、バイアル瓶に移す。
150℃に加熱したホットプレートで1時間加熱し、気体を収集する。収集した気体のうち100μLをガスクロマトグラフ質量分析法により分析する。
ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)法は、以下の条件で行う。
-装置-
・BRUKER社製 SION-TQ(GCMS)
・MARKES社製 UNITY2(TD)
-測定条件-
・カラム:SGE GC column
SOLGEL-WAX
L=30.0m
ID=0.25mmID
Film=0.25μm
・カラム昇温:40℃(保持 5min)→<20℃/min>→260℃(保持 5min)
・キャリアガス:He
・Injector:200℃
・Column Flow:1.00mL/min(一定)
・イオン化法:EI法(70eV)
・注入モード:スプリット 1:10
・測定モード:トータルイオンクロマトグラム(TIC)(m/z=33~600)
・注入量:100μL(ガス)
同一の試料を3点測定(N=3)し、その平均値を測定値とする。各成分の面積値は特異的なMSスペクトルから算出する。例えば、溶媒にクロロベンゼンを用いた場合は、m/z=112として、以下のようにして求める。
GCMSによって得られた測定値を上記の検量線より検量線上の定量値を求め、さらに下式によってホール輸送層の体積で換算することにより、ホール輸送層の単位体積あたりのクロロベンゼンの定量値を算出する。なお、上記ホール輸送層とは層として独立している部分の膜厚を示し、電子輸送層の多孔質層に充填されている領域は含まない。
・定量値(μg/mm)=検量線上の定量値(μg)/ホール輸送層の面積×膜厚(mm)
なお、検量線を作成するために用いた検量線作成用溶液は以下のようにして調整する。
-検量線作成用溶液の調製及び検量線の作成-
標準品クロロベンゼンをメタノールに希釈する。
得られた溶液1μLをバイアル瓶に入れ、150℃のホットプレートにかけ、ガス100μLを上記GCMS装置に導入し、上述した方法と同様の方法でクロロベンゼンの量を測定する。
前記ホール輸送層は、p型半導体材料、ピリジン化合物、及び酸化剤を含有することが好ましい。
前記ホール輸送層は、ホールを輸送する機能を得るため、p型半導体材料を含有する。
-p型半導体材料-
前記p型半導体材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機p型半導体材料、有機p型半導体材料などが挙げられる。
前記無機p型半導体材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CuSCN、CuI、CuBr、NiO、V、酸化グラフェンなどが挙げられる。これらの中でも、有機p型半導体材料が好ましい。
前記有機p型半導体材料などとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機p型半導体材料を用いることができる。
公知の前記有機p型半導体材料としては、例えば、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、オキサジアゾール化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロ型化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スピロ型化合物が好ましい。
スピロ型化合物としては、下記一般式(10)を含む化合物が好ましい。
Figure 2022179342000004
ただし、前記一般式(10)中、R31~R34は、それぞれ独立して、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチル-4-トリルアミノ基等の置換アミノ基を表す。
スピロ型化合物の具体例としては、以下に示す(D-1)~(D-20)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000005
Figure 2022179342000006
Figure 2022179342000007
Figure 2022179342000008
Figure 2022179342000009
Figure 2022179342000010
Figure 2022179342000011
また、ホール輸送材料としてのスピロ型化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物を特に好適に用いることができる。
Figure 2022179342000012
ただし、前記一般式(4)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
例えば、上記の(D-1)~(D-20)の内、上記一般式(4)で表されるものは、(D-7)及び(D-10)である。
これらのスピロ型化合物は、高いホール移動度を有している他に、2つのベンジジン骨格分子が捻れて結合しているため、球状に近い電子雲を形成しており、分子間におけるホッピング伝導性が良好であることにより優れた光電変換特性を示す。また溶解性も高いため各種有機溶媒に溶解し、アモルファス(結晶構造をもたない無定形物質)であるため、多孔質状の電子輸送層に密に充填されやすい。更に、450nm以上の光吸収特性を有さないために、光増感化合物に効率的に光吸収をさせることができ、固体型色素増感型太陽電池にとって特に好ましい。
前記ホール輸送層における前記リチウム塩のモル量をXとし、前記ホール輸送層における前記有機p型半導体材料のモル量をYとしたとき、前記リチウム塩と前記有機p型半導体材料のモル比であるX/Yが0.35以上0.65以下であることが好ましく、0.5以上0.6以下がより好ましい。前記リチウム塩と前記有機p型半導体材料のモル比であるX/Yが0.35以上0.65以下であると、光耐久性を向上させることができる。
前記ホール輸送層は、単一材料からなる単層構造でもよく、複数の化合物を含む積層構造であってもよい。前記ホール輸送層が積層構造の場合には、後述する第2の電極に近いホール輸送層に高分子材料を用いることが好ましい。製膜性に優れる高分子材料を用いると、多孔質状の電子輸送層の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上させることができる点で有利である。また、前記高分子材料は、多孔質状の電子輸送層内部へ浸透しにくいことから、多孔質状の電子輸送層表面の被覆性に優れ、電極を設ける際の短絡防止にも効果が得られる場合がある。
前記ホール輸送層に用いられる前記高分子材料としては、特に制限はなく、公知のホール輸送性高分子材料などが挙げられる。
前記ホール輸送性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
前記ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9’-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3’’’-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)などが挙げられる。
前記ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4’-ビフェニレン-ビニレン)]などが挙げられる。
前記ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9’-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4’-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]などが挙げられる。
前記ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]などが挙げられる。
前記ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ジフェニル)-N,N’-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N’-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N’-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]などが挙げられる。
前記ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1’,3)チアジアゾール)などが挙げられる。
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルの観点から、ポリチオフェン化合物及びポリアリールアミン化合物が好ましい。
-ピリジン化合物-
前記ピリジン化合物は、電子輸送層近傍の界面に存在すると考えられ、電子輸送層からの逆電子移動(即ち、電子輸送層からホール輸送層への電子移動)を抑制していると考えられる。
前記ピリジン化合物としては、下記一般式(A)又は一般式(B)からなるピリジン化合物が好ましく、下記一般式(A1)、及び一般式(B1)で示される3級アミン化合物が更に好ましい。ホール輸送層に下記一般式(A)又は一般式(B)のピリジン化合物を含有すると、高い開放電圧が得られ、高い光電変換特性が得られる点で有利である。更に、ホール輸送層が一般式(A1)、及び一般式(B1)で示される3級アミン化合物の少なくともいずれかを有することにより、低照度光においても、高い光電変換性と、経時安定性とを両立することができる。
Figure 2022179342000013
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、アルキル基又は芳香族炭化水素基を表し、同一又は異なる基を表すか、若しくは、R、Rは互いに結合し、窒素原子を含む複素環基を表す。)
Figure 2022179342000014
(式中、R、Rは、それぞれ独立に、アルキル基又は芳香族炭化水素基を表し、同一又は異なる基を表すか、若しくは、R、Rは互いに結合し、窒素原子を含む複素環基を表す。)
Figure 2022179342000015
Figure 2022179342000016
ただし、前記一般式(A1)、及び前記一般式(B1)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表し、前記Ar及び前記Arは、同一でも異なっていてもよく、互いに結合してもよい。
以下に、前記一般式(A)、及び前記一般式(B)のピリジン化合物の具体的な例示化合物を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000017
Figure 2022179342000018
次に、上記一般式(A1)、及び一般式(B1)で示される3級アミン化合物の具体例としては、例えば、以下に示す例示化合物C-1からC-20などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
Figure 2022179342000019
Figure 2022179342000020
Figure 2022179342000021
Figure 2022179342000022
前記ホール輸送層における上記のピリジン化合物の含有量としては、ホール輸送材料に対して、20モル%以上65モル%以下が好ましく、35モル%以上50モル%以下がより好ましい。ピリジン化合物の含有量が好ましい範囲であることにより、高い開放電圧を維持でき、高い出力が得られ、かつ様々な環境(特に低温環境)で長期使用しても高い安定性と耐久性が得られる。
また、前記光電変換層におけるピリジン化合物のモル量をaとし、前記光電変換層における前記リチウム塩のモル量をbとしたとき、前記光電変換層における、ピリジン化合物とリチウム塩のモル比であるa/bは、2.0以下であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましい。
前記モル比a/bが2.0以下であると、低温環境で低照度光を照射したときの高い出力を更に長期間維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性を更に向上できるという利点がある。
前記ピリジン化合物の分子量としては、140g/mol以上が好ましい。前記ピリジン化合物の分子量が140g/mol以上であると、電子輸送層近傍の界面にピリジン化合物が存在することにより、電子輸送層とホール輸送層の物理的、電気的な接触を抑制し、逆電子移動をより低減することができるため、低照度光においても高い光電変換特性を示すことができる。
-酸化剤-
前記ホール輸送層は、酸化剤を含有することが好ましい。前記ホール輸送層が前記酸化剤を含有することにより、有機ホール輸送材料の一部がラジカルカチオンになることで、導電性が向上し、出力特性の耐久性や安定性を高めることができる。
前記酸化剤により有機ホール輸送材料が酸化されることにより、良好なホール伝導性を示すとともに、光電変換層の周囲環境の影響による酸化状態の解除(還元)を抑制することができることで良好な経時安定性を示す。
前記酸化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、金属錯体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、金属錯体が好ましい。
前記金属錯体としては、例えば、金属カチオン、配位子、アニオンから構成される構成などが挙げられる。
前記金属カチオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロム、マンガン、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、バナジウム、金、白金などのカチオンなどが挙げられる。これらの中でも、マンガン、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、銀、バナジウムのカチオンが好ましく、コバルト錯体がより好ましい。
前記配位子としては、少なくとも一つの窒素を含有する5及び/又は6員複素環を含むものが好ましく、置換基を有していてもよい。具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000023
Figure 2022179342000024
Figure 2022179342000025
前記アニオンとしては、例えば、水素化物イオン(H)、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、水酸化物イオン(OH)、シアン化物イオン(CN)、硝酸イオン(NO )、亜硝酸イオン(NO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )、塩素酸イオン(ClO )、過塩素酸イオン(ClO )、過マンガン酸イオン(MnO )、酢酸イオン(CHCOO)、炭酸水素イオン(HCO )、リン酸二水素イオン(HPO )、硫酸水素イオン(HSO )、硫化水素イオン(HS)、チオシアン酸イオン(SCN)、テトラフロオロホウ素酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、テトラシアノホウ素酸イオン(B(CN) )、ジシアノアミンイオン(N(CN) )、p-トルエンスルホン酸イオン(TsO)、トリフルオロメチルスルホン酸イオン(CFSO2-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン(N(SOCF )、テトラヒドロキソアルミン酸イオン([Al(OH)、あるいは[Al(OH)(HO))、ジシアノ銀(I)酸イオン([Ag(CN))、テトラヒドロキソクロム(III)酸イオン([Cr(OH))、テトラクロロ金(III)酸イオン([AuCl)、酸化物イオン(O-)、硫化物イオン(S )、過酸化物イオン(O 2-)、硫酸イオン(SO 2-)、亜硫酸イオン(SO 2-)、チオ硫酸イオン(S 2-)、炭酸イオン(CO 2-)、クロム酸イオン(CrO 2-)、二クロム酸イオン(Cr 2-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Z(OH)2-)、テトラシアノ亜鉛(II)酸イオン([Zn(CN)2-)、テトラクロロ銅(II)酸イオン([CuCl2-)、リン酸イオン(PO 3-)、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン([Fe(CN)3-)、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオン([Ag(S3-)、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン([Fe(CN)4-)などが挙げられる。これらの中でも、テトラフロオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラシアノホウ素酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン、過塩素酸イオンが好ましい。
前記金属錯体としては、3価のコバルト錯体を添加することが特に好ましい。酸化剤として3価のコバルト錯体を添加すると、ホール輸送材料を酸化させ、安定化することが可能になり、ホール輸送性を高めることができる。
本発明においては、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に添加するコバルト錯体には3価を用いることが好ましいが、前記ホール輸送層形成用塗布液を用いて得られた光電変換素子のホール輸送層には2価のコバルト錯体が含有されていることが好ましい。これは、3価のコバルト錯体がホール輸送材料と混合することで、ホール輸送材料が酸化され、コバルト錯体が2価になるためである。言い換えると、本発明においては、光電変換層が、2価のコバルト錯体を更に含むことが好ましい。
特に、光電変換素子のホール輸送層には3価のコバルト錯体は殆ど残存せず、ほぼすべてのコバルト錯体が2価になっていることが特に好ましい。これにより、ホール輸送性が向上し、かつ安定化し、高出力化並びにその持続性が向上できるだけでなく、異なる温度環境でもその効果を更に発揮することが可能になる。
前記ホール輸送層に含有されるコバルト錯体の価数については、例えば、XAFS分析を行うことにより明確化できる。XAFS分析は、X-ray Absorption Fine Structureの略であり、X線吸収微細構造解析と称される。例えば、試料にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、XAFSスペクトルを得ることができる。
XAFSスペクトル中、吸収端近傍構造はXANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)、吸収端より約100eV以上高エネルギー側に現れる広域X線吸収微細構造はEXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)と称されるが、着目する原子の価数や構造に関する情報は、主として前者のXANESより得ることができる。この場合、例えば、2価及び3価のコバルト錯体粉末のXAFSスペクトルを別途測定し、ホール輸送層に含有するコバルト錯体のXAFSスペクトルと比較することによって、ホール輸送層に含有されるコバルト錯体の価数を明らかにすることができる。
図18には、本発明の光電変換素子の一例を用いた光電変換モジュール(実施例3の光電変換モジュール)について、上記の通りにXAFSスペクトルを取得した結果を示す。図18に示すように、本発明の光電変換素子の一例を用いた光電変換モジュールのホール輸送層に含有されるコバルト錯体は、2価のコバルト錯体粉末とよく一致しており、3価のコバルト錯体粉末と一致する部分がないため、含有するコバルト錯体のほぼすべてが2価であると判断することができる。
ホール輸送層形成用塗布液に添加する3価のコバルト錯体は、下記構造式(4)及び(5)で示されるコバルト錯体が好ましく用いることができる。
Figure 2022179342000026
Figure 2022179342000027
ただし、前記構造式(4)及び(5)中、RからR10は、水素原子、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。Xは、下記構造式(6)から(9)のいずれかを示す。
Figure 2022179342000028
Xについては、前記構造式(6)から(9)の中でも、構造式(8)がより好ましい。構造式(8)を用いることにより、ホール輸送材料が酸化された状態で安定に維持できる点で有効である。
これらのコバルト錯体の具体例としては、以下に示す(F-1)~(F-24)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000029
Figure 2022179342000030
Figure 2022179342000031
前記酸化剤の含有量は、ホール輸送材料100質量部に対して、0.5質量部以上50質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましい。酸化剤の添加によって、すべてのホール輸送材料が酸化される必要はなく、一部のみが酸化されていれば有効である。
また、上記一般式(1)で表されるリチウム塩におけるリチウムカチオンは電子輸送層にマイグレートした状態であってもよく、例えば、リチウムカチオンの半分以上が後述する電子輸送層に含まれる状態であってもよい。
なお、本発明におけるホール輸送層は、後述する電子輸送層の内部に充填されることで出力がさらに向上できることからより好ましい。この場合、電子輸送層内に充填されたホール輸送層もホール輸送層として扱われる。
<<電子輸送層>>
前記光電変換素子は、光増感化合物を有する前記電子輸送層を有する。
前記電子輸送層は、前記第一の電極と光増感化合物との間に配されていることが好ましい。
前記電子輸送層は、光増感化合物で生成された電子を第1の電極あるいはホールブロッキング層まで輸送する目的で形成される。このため、電子輸送層は、第1の電極あるいはホールブロッキング層に隣接して配置されることが好ましい。
前記電子輸送層の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、電子輸送層どうしが互いに延設されていてもよいが、延設されていない方が好ましい。また、電子輸送層の構造としては、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
前記電子輸送層は、電子輸送性材料を含み、必要に応じてその他の材料を含む。
前記電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
前記半導体材料は、微粒子状の形状を有し、これらが接合することによって、多孔質状の膜に形成されることが好ましい。多孔質状の電子輸送層を構成する半導体微粒子の表面に、光増感化合物が化学的あるいは物理的に吸着される。
前記半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
前記単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
前記化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物半導体;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物半導体;カドミウム、鉛等のセレン化物半導体;カドミウム等のテルル化物半導体などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物半導体、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物半導体、銅-インジウム-硫化物半導体などが挙げられる。
前記ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブがより好ましい。前記電子輸送層の前記電子輸送性材料が酸化チタンであると、伝導帯準位が高いため、高い開放電圧を得られ、高い光電変換特性を得ることができる点で有利である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
前記半導体材料の一次粒子の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。また、より大きい半導体材料を混合あるいは積層させてもよく、入射光を散乱させる効果により、変換効率を向上できる場合がある。この場合の平均粒径は、50nm以上500nm以下が好ましい。
前記電子輸送層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上100μm以下が好ましく、100nm以上50μm以下がより好ましく、120nm以上10μm以下が更に好ましい。前記電子輸送層の平均厚みが好ましい範囲内であると、単位投影面積当たりの光増感化合物の量を十分に確保でき、光の捕獲率を高く維持できるとともに、注入された電子の拡散距離も増加しにくく、電荷の再結合によるロスを少なくできる点で有利である。
前記電子輸送層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング法等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法、湿式印刷方法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストの観点から、湿式製膜法が好ましく、前記半導体材料の粉末あるいはゾルを分散したペースト(半導体材料の分散液)を調製し、電子集電電極基板としての第1の電極の上、あるいはホールブロッキング層の上に塗布する方法がより好ましい。
前記湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、ダイコート法などが挙げられる。
前記湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの様々な方法を用いることができる。
前記半導体材料の分散液を作製する方法としては、例えば、公知のミリング装置等を用いて機械的に粉砕する方法が挙げられる。この方法により、粒子状の半導体材料を単独で、あるいは半導体材料と樹脂の混合物を、水又は溶媒に分散することにより半導体材料の分散液を作製できる。
前記樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
前記アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α-テルピネオールなどが挙げられる。
前記ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
前記エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
前記エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
前記アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
前記ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
前記炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記半導体材料を含む分散液、あるいはゾル-ゲル法等によって得られた半導体材料を含むペーストには、粒子の再凝集を防ぐため、酸、界面活性剤、キレート化剤などを添加してもよい。
前記酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
前記キレート化剤としては、例えば、アセチルアセトン、2-アミノエタノール、エチレンジアミンなどが挙げられる。
また、製膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加することも有効な手段である。
前記増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが挙げられる。
前記半導体材料を塗布した後に、前記半導体材料の粒子間を電子的に接触させ、膜強度や基板との密着性を向上させるために焼成したり、マイクロ波や電子線を照射したり、又はレーザー光を照射することができる。これらの処理は、1種単独で行ってもよく、2種類以上組み合わせて行ってもよい。
前記半導体材料から形成された電子輸送層を焼成する場合には、焼成温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度が高すぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融したりすることがあることから、30℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上600℃以下がより好ましい。また、焼成時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上10時間以下が好ましい。
前記半導体材料から形成された前記電子輸送層をマイクロ波照射する場合には、照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。この場合、電子輸送層が形成されている面側から照射してもよく、電子輸送層が形成されていない面側から照射してもよい。
前記半導体材料からなる電子輸送層を焼成した後、前記電子輸送層の表面積の増大や、後述する光増感化合物から半導体材料への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
直径が数十nmの半導体材料を焼結し得られた膜は、多孔質状を形成することができる。このようなナノ多孔質構造は、非常に高い表面積を有し、その表面積はラフネスファクターを用いて表すことができる。ラフネスファクターは、第1の基板に塗布した半導体粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。したがって、ラフネスファクターとしては、大きいほど好ましいが、電子輸送層の平均厚みとの関係から、20以上が好ましい。
また、前記電子輸送層と前記ホール輸送層の間には光増感化合物を有していてもよい。
<<光増感化合物>>
本発明においては、変換効率の更なる向上のため、光増感化合物を前記電子輸送層の電子輸送性半導体の表面に吸着させることが好ましい。
前記光増感化合物は、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物;特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物;特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物;特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物;J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物;特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素;特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号等に記載メロシアニン色素;特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号等に記載の9-アリールキサンテン化合物;特開平10-93118号公報、特開2003-31273号等に記載のトリアリールメタン化合物;特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物が好ましく、例えば、三菱製紙株式会社製の下記構造式(1)、下記構造式(2)、下記構造式(3)の化合物が好ましく用いられる。
Figure 2022179342000032
Figure 2022179342000033
Figure 2022179342000034
更に好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(5)を含む化合物が挙げられる。
Figure 2022179342000035
上記一般式(5)式中、X11、及びX12は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、又はセレン原子を表す。
11は置換基を有していてもよいメチン基を表す。その置換基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、チエニル基、フリル基などのヘテロ環が挙げられる。
12は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、2-プロピル基、2-エチルヘキシル基等、アリール基及びヘテロ環基としては前述のものが挙げられる。
13はカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、フェノール類などの酸性基を表す。R13は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
、及びZは、それぞれ独立して、環状構造を形成する置換基を表し、Zは、ベンゼン環、ナフタレン環などの縮合炭化水素系化合物、チオフェン環、フラン環などのヘテロ環が挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては前述のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、2-イソプロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。Zはそれぞれ下記に示す(A-1)~(A-22)が挙げられる。
なお、mは0から2の整数を表す。
Figure 2022179342000036
上記化合物の中でも、下記一般式(6)で表される化合物が、より好ましく用いられる。
Figure 2022179342000037
ただし、前記一般式(6)中、nは0又は1の整数を表す。Rは、置換基を有していてもよいアリール基、又は次の3つの構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
Figure 2022179342000038
上記一般式(5)及び一般式(6)を含む光増感化合物の具体例としては、以下に示す(B-1)~(B-41)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000039
Figure 2022179342000040
Figure 2022179342000041
Figure 2022179342000042
Figure 2022179342000043
Figure 2022179342000044
更に、好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(7)を含む化合物も挙げられる。
Figure 2022179342000045
ただし、前記一般式(7)中、Ar及びArは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。R及びRは、炭素数4~10の直鎖又は分岐状のアルキル基を表す。Xは、次の構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
Figure 2022179342000046
上記一般式(7)で表される光増感化合物の中でも、下記一般式(8)で表される化合物は、より好ましく用いられる。
Figure 2022179342000047
ただし、前記一般式(7)中、Ar及びArは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいナフチル基を表す。Arは、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいチオフェン基を表す。
以下に、上記一般式(7)及び上記一般式(8)で示される光増感化合物の具体的な例示化合物を示すが、本発明における光増感化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2022179342000048
Figure 2022179342000049
Figure 2022179342000050
Figure 2022179342000051
Figure 2022179342000052
これらの光増感化合物は、1種を含有してもよいし、2種以上含有してもよい。LED光源は暖色、寒色、白色などの色味が異なるものが用いられ、色味によってスペクトルが異なる。例えば、色温度が3,000Kは相対的に600nmの領域が強くなり、赤味を帯びた電球色に、色温度が5,000Kは全体的にバランスが取れた昼白色に、色温度が6,500Kを超えると450nmの領域が相対的に強くなり、青みがかった昼光色になる。そのため、使用するLEDの色温度が異なっても高い出力を維持できることが好ましい。この場合、異なる光増感化合物を混合することにより、色温度による出力差を低減することができる場合があり有効である。
電子輸送層の半導体材料の表面に、光増感化合物を吸着させる方法としては、光増感化合物の溶液中、又は光増感化合物の分散液中に、半導体材料を含む電子輸送層を浸漬する方法、光増感化合物の溶液、又は光増感化合物の分散液を電子輸送層に塗布して吸着させる方法などを用いることができる。光増感化合物の溶液中、又は光増感化合物の分散液中に、半導体材料を形成した電子輸送層を浸漬する方法の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などを用いることができる。
光増感化合物の溶液、又は光増感化合物の分散液を、電子輸送層に塗布して吸着させる方法の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法などを用いることができる。また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させることも可能である。
光増感化合物を半導体材料に吸着させる際には、縮合剤を併用してもよい。
縮合剤としては、半導体材料の表面に物理的もしくは化学的に、光増感化合物を結合させるような触媒的作用をするもの、又は化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもののいずれであってもよい。更に、縮合助剤として、チオールやヒドロキシ化合物などを添加してもよい。
光増感化合物を溶解、又は分散する溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光増感化合物は、その種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、凝集解離剤を併用してもよい。凝集解離剤としては、コール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸又は長鎖アルキルホスホン酸が挙げられる。
凝集解離剤の含有量としては、光増感化合物1モル部に対して0.5モル部以上100モル部以下が好ましく、10モル部以上50モル部以下がより好ましい。
電子輸送層を構成する半導体材料の表面に、光増感化合物、又は、光増感化合物及び凝集解離剤を吸着させる際の温度としては、-50℃以上200℃以下が好ましい。吸着時間としては、5秒間以上1,000時間以下が好ましく、10秒間以上500時間以下がより好ましく、1分間以上150時間以下が更に好ましい。吸着させる工程は、暗所で行うことが好ましい。また、吸着させる工程は、静置して行ってもよく、撹拌しながら行ってもよい。
撹拌する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、超音波分散等を用いた方法などが挙げられる。
また、本発明においては、ペロブスカイト層を設けることも可能であり、有効である。ペロブスカイト層とは、ペロブスカイト化合物を含み、光を吸収して電子輸送層を増感する層を意味する。そのため、ペロブスカイト層は、電子輸送層に隣接して配置されることが好ましい。
ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(9)で表わされる。
XαYβMγ ・・・一般式(9)
上記の一般式(9)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、β及びγは1より大きい整数を表す。また、例えば、Xはハロゲンイオン、Yはアルキルアミン化合物イオン、Mは金属イオンなどとすることができる。
上記の一般式(9)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記の一般式(9)におけるYとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオンや、セシウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられる。また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンがClのときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、Brのときは約410nm、Iのときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
上記の一般式(9)におけるMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。
また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。
ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを、溶解又は分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
また、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解又は分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
さらに、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。 加えて、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ハロゲン化金属及びハロゲン化アルキルアミンを溶解又は分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
また、ペロブスカイト層は、光増感化合物を含んでもよい。増感色素としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の光増感化合物が挙げられる。
増感色素を含んだペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペロブスカイト化合物と光増感化合物を混合する方法、ペロブスカイト層を形成した後で、光増感化合物を吸着させる方法などが挙げられる。
<第2の電極>
前記第2の電極は、前記ホール輸送層上に、又はホール輸送層における金属酸化物上に形成することができる。また、第2の電極は、第1の電極と同様のものを用いることができ、強度が十分に保たれる場合には第2の基板は必ずしも必要ではない。
前記第2の電極の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
前記金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
前記炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
前記導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
前記導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記第2の電極の形成については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層上に塗布法、ラミネート法、蒸着法、CVD法、貼り合わせ法などの手法により形成可能である。
本発明の光電変換素子においては、第1の電極と第2の電極の少なくともいずれかは実質的に透明であることが好ましい。第1の電極側が透明であり、入射光を第1の電極側から入射させる方法が好ましい。この場合、第2の電極側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、又は金属薄膜が好ましく用いられる。また、入射光側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
<第2の基板>
前記第2の基板としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。第2の基板と封止部材との接合部は密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
前記凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。
前記第2の基板と封止部材との密着性を上げる手段としては、例えば、表面の有機物を除去してもよく、親水性を向上させてもよい。前記第2の基板の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
<<封止部材>>
本発明の光電変換素子は、少なくとも前記電子輸送層及びホール輸送層を、光電変換素子の外部環境から遮蔽することが可能な封止部材を用いることが可能であり、有効である。言い換えると、本発明においては、光電変換層を光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材を更に有することが好ましい。
前記封止部材としては、外部環境から封止内部への過剰な水分や酸素などの侵入を低減できるものであれば、従来公知の部材を使用可能である。また、前記封止部材は、外部から押圧されることによる機械的な破壊を防止する効果もあり、これを実現可能なものであれば、従来公知の部材を使用可能である。
封止の方式は、光電変換素子の光電変換層で構成される発電領域の周縁部に封止部材を設け、第2の基板と接着する「枠封止」と、前記発電領域全面に封止部材を設け、第2の基板と接着する「面封止」に大別できる。前者の「枠封止」は、封止内部に中空部を形成することができるため、封止内部の水分量や酸素量を適正に調整することが可能であり、また第2の電極が封止部材と接触していないために、電極剥がれの影響を低減できる効果がある。一方、後者の「面封止」は、外部からの過剰な水や酸素の侵入を防止する効果に優れており、また封止部材との接着面積が大きいため、封止強度が高く、特に第1の基板にフレキシブル基板を用いた場合に適している。
前記封止部材の種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、硬化樹脂や低融点ガラス樹脂などが挙げられる。硬化樹脂としては、光や熱によって硬化する樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、中でもアクリル樹脂やエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
前記アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマー又はオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
前記エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマー又はオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられる。これらの中でも熱硬化型及び紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記エポキシ樹脂は、必要に応じて硬化剤や各種添加剤を混合することが好ましい。
前記硬化剤としては、アミン系、酸無水物系、ポリアミド系及びその他の硬化剤に分類され、目的に応じて適宜選択される。
前記アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
前記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラ及びヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
前記その他の硬化剤としては、例えば、イミダゾール類、ポリメルカプタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤としては、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤、重合開始剤、乾燥剤(吸湿剤)が好ましく、充填材及び重合開始剤がより好ましい。
前記充填材は、水分や酸素の浸入を抑制する上で有効であるほか、硬化時の体積収縮の低減、硬化時又は加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御等の効果を得ることができ、様々な環境でも安定した出力を維持する上で非常に有効である。特に、光電変換素子の出力特性やその耐久性は、単に侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時又は加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響を及ぼす。
この場合、封止部材に充填材やギャップ剤、乾燥剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。これは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境に保存した際にも有効である。
前記充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性又は不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材が好ましく用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。添加量が好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性の向上、又は封止部の幅の制御や作業性に対しても有効である。
前記充填材の含有量としては、封止部材全体が100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
前記ギャップ剤とは、ギャップ制御剤又はスペーサー剤とも称され、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1の基板もしくは第1の電極の上に、封止部材を付与し、その上に第2の基板を載せて封止を行う場合、エポキシ樹脂にギャップ剤を混合していることにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
前記ギャップ剤としては、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば、公知の材料を使用できる。エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ギャップ剤の平均粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
前記重合開始剤は、例えば、熱を用いて重合を開始させる熱重合開始剤、光を用いて重合を開始させる光重合開始剤などが挙げられる。
前記熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物で、具体的には2,2’-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物等が用いられる。熱カチオン重合開始剤としてはベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。一方、光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、強酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
前記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。
また、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、例えば、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合開始剤の添加量としては、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体が100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止でき、有効である。
前記乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的又は化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性を更に高めたり、アウトガスの影響を低減できたりする場合もあることから有効である。
前記乾燥剤としては、粒子状であるものが好ましく、例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライトなどの無機吸水材料が挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトや酸化カルシウムが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化促進剤は、硬化触媒とも称され、硬化速度を速めることを目的として用いられ、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
前記硬化促進剤としては、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミン又は三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィン又はホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記カップリング剤は、分子結合力を高める効果を有し、シランカップリング剤が挙げられ、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
更に、前記封止部材は、封止材、シール材又は接着剤として市販されているエポキシ樹脂組成物が知られており、本発明においても有効に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているエポキシ樹脂組成物もあり、本発明において特に有効に使用できる。例えば、TB3118、TB3114、TB3124、TB3125F(スリーボンド社製)、WorldRock5910、WorldRock5920、WorldRock8723(協立化学株式会社製)、WB90US(P)(モレスコ社製)等が挙げられる。
一方、低融点ガラス樹脂は、樹脂塗布後に550℃程度の焼成工程により、樹脂成分を分解させた後、赤外線レーザ等により溶融させながら、ガラス基板と密着させる。この時、低融点ガラス成分は金属酸化物層の内部に拡散し、物理的に接合されることで、高い封止性能を得ることができる。また、樹脂成分が消失していることで、アクリル樹脂やエポキシ樹脂のようなアウトガスが発生しないことで、光電変換素子を劣化させることがないため、有効である。
本発明においては、封止部材としてシート状封止材を用いることもできる。シート状封止材とは、例えば、シート上に予めエポキシ樹脂層を形成したもので、シートはガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられ、本発明における第2の基板に該当する。シート状封止材を、第2の電極上に貼り付け、その後硬化させることにより、封止部材及び第2の基板を一度に形成することができる。シート上に形成するエポキシ樹脂層の形成パターンにより、中空部を設けた構造にすることもでき、有効である。シート上に形成する樹脂層が全面に形成されていれば、「面封止」になるが、樹脂層の形成パターンにより、光電変換素子の内部に中空部を設けるように樹脂層をパターン形成すれば「枠封止」になる。
封止部材の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、凸版、オフセット、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
更に、封止部材と第2の電極との間にパッシベーション層を設けてもよい。パッシベーション層としては、封止部材が第2の電極に接しないように配置されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコンなどが好ましく用いられる。
封止内部の中空部には酸素を含有させることによって、ホール輸送層のホール輸送機能を長期にわたって安定に維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性向上に対して有効な場合がある。本発明において、封止することによって設けられた封止内部の中空部には酸素を含有することが好ましく、その酸素濃度は10.0体積%以上21.0体積%以下がより好ましい。
前記中空部の酸素濃度は、酸素濃度を調整したグローブボックス内で封止を行うことにより制御することができる。酸素濃度の調整は、特定の酸素濃度を有するガスボンベを使用する方法や、窒素ガス発生装置を用いる方法によって行うことができる。グローブボックス内の酸素濃度は、市販されている酸素濃度計又は酸素モニターを用いて測定できる。
封止によって形成された前記中空部内の酸素濃度の測定は、例えば、IVA(Internal Vapor Analysis)によって行うことができる。具体的には、光電変換素子を高真空中に装填し孔あけして発生したガスや水分について質量分析を行う方法である。この方法により、光電変換素子の封止内部に含有する酸素濃度を明らかにすることができる。質量分析計としては、四重極型と飛行時間型があり、後者の方がより高感度の測定が可能である。
封止内部に含有する酸素以外のガスとしては、不活性ガスが好ましく、窒素やアルゴンなどが好ましい。
封止を行う際、グローブボックス内は酸素濃度とともに、露点を制御することが好ましく、出力やその耐久性向上に有効である。露点とは、水蒸気を含む気体を冷却したとき、凝結が開始される温度として定義される。
前記露点としては、特に制限されるものではないが、0℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。下限としては、-50℃以上が好ましい。
<<ホールブロッキング層>>
前記ホールブロッキング層を更に形成することが好ましく、出力の向上並びにその持続性の向上に対し、非常に有効である。前記ホールブロッキング層は、第1の電極と電子輸送層との間に形成される。言い換えると、本発明においては、前記第1の電極と前記光電変換層との間に、前記ホールブロッキング層を更に有することが好ましい。
前記ホールブロッキング層は、例えば、前記光増感化合物で生成され、前記電子輸送層に輸送された電子を前記第1の電極に輸送し、かつ前記ホール輸送層との接触を防ぐことができる。これにより、前記ホールブロッキング層は、前記第1の電極へホールを流入しにくくし、電子とホールの再結合による出力低下を抑制することができる。前記ホール輸送層を設けた固体型の光電変換素子は、電解液を用いた湿式型に比べて、ホール輸送材料中のホールと電極表面の電子の再結合速度が速いことから、前記ホールブロッキング層の形成による効果は非常に大きい。
前記ホールブロッキング層の材質としては、可視光に対して透明であり、かつ電子輸送性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体、金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
前記金属のカルコゲニドとしては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタルの酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物;カドミウム、鉛のセレン化物;カドミウムのテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物などが挙げられる。
前記ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化スズなどがより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、単層としても積層してもよい。また、これらの半導体の結晶型は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でもよいし、多結晶でもよいし、又は非晶質でもよい。
前記ホールブロッキング層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
前記真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
前記湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合・縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
前記ホールブロッキング層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、5nm以上1μm以下が好ましく、湿式製膜では500nm以上700nm以下がより好ましく、乾式製膜では5nm以上30nm以下がより好ましい。
以下、図面を参照しながら、本発明の光電変換素子の一例について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。この図1の第1の実施形態の光電変換素子101は、第1の基板1上に第1の電極2が形成される。第1の電極2上には電子輸送層4が形成され、電子輸送層4を構成する電子輸送性材料の表面に光増感化合物5が吸着されている。電子輸送層4の上部及び内部にはホール輸送層6が形成され、ホール輸送層6の上に第2の電極7が形成されている。第2の電極7の上方には第2の基板9が配置され、第2の基板9は第1の電極2との間で封止部材8によって固定される。この時、封止部材8は第1の電極2ではなく、第1の基板1と接着させることも可能であり、密閉性を高める上で有効な場合がある。
この図1の第1の実施形態の光電変換素子101は、第2の電極7と第2の基板9の間に中空部10を有する。中空部10を有することにより、中空部内の水分量や酸素濃度を制御することが可能になり、これにより発電性能や耐久性を高めることができる。更に、第2の電極7と第2の基板9が接触していないため、第2の電極7の剥離や破壊を防止することができる。中空部内の酸素濃度は、特に制限はなく、自由に制御することが可能であるが、10%以上21%以下が好ましい。
なお、図示を省略しているが、第1の電極2及び第2の電極7は各々電極取出し端子まで導通する経路を有する。
<第2の実施形態>
図2は、第2の実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。この図2の第2の実施形態の光電変換素子101は、第1の基板1と電子輸送層4との間にホールブロッキング層3が形成されている。ホールブロッキング層3を形成することにより、電子とホールの再結合を防止することができ、発電性能の向上に有効である。図2に示される光電変換素子は、図1と同様に第2の電極7と第2の基板9の間に中空部10を有する。
<第3の実施形態>
図3は、第3の実施形態の光電変換素子の一例を示す概略図である。この図3の第3の実施形態の光電変換素子101は、図2に示す中空部10を封止部材8で覆い、全面封止を行ったものである。例えば、封止部材8を第2の電極7上の全面に塗布し、その上に第2の基板9を設ける方法や、前述のシート状封止材を用いる方法により形成できる。この場合、第2の電極7と封止部材8との間にパッシベーション層11を設けることが可能であり、第2の電極の剥離防止に有効な場合がある。このように、ほぼ全面を封止部材で覆うことにより、光電変換素子の機械的強度を高めることが可能になる。
(光電変換素子の製造方法)
本発明の光電変換素子の製造方法は、
第一の電極上にホール輸送層を有する光電変換層を形成する光電変換層形成工程と、
前記ホール輸送層の溶媒量を制御する溶媒量制御工程と、を含み、
溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下に制御することが可能であり、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の光電変換素子の製造方法は、第1の基板上に第1の電極を形成し、第1の電極上に光電変換層を形成し、光電変換層上に第2の電極を形成し、さらに必要に応じて、ホールブロッキング層、及び封止部材などのその他の部材を配する工程を含む。
本発明の光電変換素子の製造方法において、第1の電極、光電変換層、第2の電極、及びその他の部材及び層は、本発明の光電変換素子において説明したものと同様である。
<光電変換層形成工程>
前記光電変換層形成工程は、第一の電極上にホール輸送層を有する光電変換層を形成する工程である。
前記光電変換層形成工程は、本発明の光電変換素子における前記光電変換層の説明したのと同様の方法により光電変換層を形成する工程である。
<溶媒量制御工程>
前記溶媒量制御工程は、作製した光電変換素子内に含有する溶媒量を制御する工程であり、例えばホール輸送層を形成した後乾燥する工程等を含む。
前記溶媒量制御工程を行うことによって、含有する溶媒量を揮発させ、作製された光電変換素子に含まれる溶媒量を前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下とすることができる。
前記溶媒量制御工程においては、層を形成した後に加熱乾燥する方法、常温環境で自然乾燥する方法、エアーを吹き付ける方法など、乾燥に用いられる従来公知の方法をいずれも用いることが可能である。その中でも、短時間で溶媒量の制御が可能な加熱乾燥が好ましく用いられる。
前記溶媒量制御工程における、乾燥の条件としては、常圧下において20℃以上130℃以下、10分間以上24時間以下であること好ましく、常圧下において50℃以上100℃以下、30分間以上2時間以下であることがより好ましい。
前記加熱乾燥を行う方法としては、上述した加熱乾燥の条件を達成することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の方法が挙げられる。オーブン、乾燥器、恒温槽、ホットプレート等、加熱することによってホール輸送層中の溶媒を揮発させることができる方法であれば、従来公知のいずれの方法をも使用することができる。
(光電変換モジュール)
本発明の光電変換モジュールにおいては、本発明の光電変換素子を複数有し、互いに隣接する前記光電変換素子が、直列又は並列に電気的に接続されている。
本発明の光電変換モジュールは、例えば、複数の光電変換素子が隣接して配置され、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を有し、前記複数の光電変換素子が、第1の電極と第2の電極との間に、電子輸送層及びホール輸送層を含む光電変換層が形成される。
本発明の光電変換モジュールは、前記光電変換素子を、複数有する構成とすることができる。また、前記複数の光電変換素子は、直列及び/又は並列で接続されていてもよいし、接続されておらず独立した光電変換素子を含んでいてもよい。
本発明の光電変換モジュールの各層の構成としては、前記光電変換素子と同様の構成とすることができる。
本発明の光電変換モジュールの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1の電極、電子輸送層、第2の電極は、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、分割されていることが好ましく、これによりショートのリスクを低減することができる。一方、ホール輸送層は、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子において、分割されていてもよいし、前記ホール輸送層どうしが互いに延設された連続層の形態であってもよい。
また、本発明の光電変換モジュールは、互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されていることが好ましい。
また、本発明の光電変換モジュールは、一対の基板を有し、かつ直列又は並列に接続された光電変換素子配置領域を前記一対の基板の間に有し、前記封止部材が前記一対の基板に挟持された構成とすることができる。特に、本発明の光電変換モジュールは、前記光電変換モジュールにおける複数の前記光電変換素子の前記光電変換層を、前記光電変換モジュールの外部環境から遮蔽する封止部材を有することが好ましい。
以下に、本発明の光電変換素子モジュールの一例について、図面を用いて説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。
<第4の実施形態>
図4は、本発明の光電変換素子モジュールの一例を示す概略図であり、複数の光電変換素子を含み、それらが直列に接続された光電変換素子モジュールのある一部の断面を示す一例である。
図4は、ホール輸送層6を形成した後、貫通部12を形成し、その後、第2の電極7を形成することによって、貫通部12の内部に第2の電極材料が導入され、隣接するセルの第1の電極2bと導通させることができる。なお、図4には図示しないが、第1の電極2a及び第2の電極7bは、更に隣接する光電変換素子の電極、又は出力取出し端子まで導通する経路を有する。
貫通部12は、第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで達していてもよいし、第1の電極2の内部で加工をやめ、第1の基板1にまで達していなくてもよい。
貫通部12の形状を第1の電極2を貫通し、第1の基板1まで到達する微細孔とする場合、貫通部12の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1の電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、光電変換効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、前記貫通部12の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率としては、5/100以上60/100以下が好ましい。
貫通部12の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。これらの中でも、レーザー加工法が好ましい。これにより、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、また、清浄に再現性よく加工することが可能となる。また、貫通部12を形成する場合に、ホールブロッキング層3、電子輸送層4、ホール輸送層6、第2の電極7のうち少なくとも一つをレーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、除去と微細な貫通部12の形成を一度に簡易的に行うことができる。
<第5の実施形態>
図5は、本発明の光電変換素子モジュールの一例を示す概略図であり、図4と異なり、ホール輸送層6が隣接する光電変換素子と分割されており、それぞれが独立した層構成となっている。これにより、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下し、耐久性が更に向上する場合があり有効である。
(電子機器)
本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子、及び本発明の光電変換モジュールのいずれかと、前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
また、本発明の電子機器は、本発明の光電変換素子、及び本発明の光電変換モジュールのいずれかと、前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、前記畜電池に蓄電された前記電力によって動作する装置とを有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
(電源モジュール)
本発明の電源モジュールは、本発明の光電変換モジュールと、電源回路(IC;Integrated Circuit)とを有し、更に必要に応じてその他の装置を有する。
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
図6は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用マウスのブロック図である。
図6に示すように、光電変換モジュールと電源IC、更に蓄電デバイスとを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図7は、図6に示したマウスの一例を示す概略外観図である。
図7に示すように、光電変換モジュール及び電源IC、蓄電デバイスはマウス内部に実装されるが、光電変換モジュールの光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能であり、好ましい場合がある。
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子機器の一例としてのパソコン用キーボードのブロック図である。
図8に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となり、有効である。
図9は、図8に示したキーボードの一例を示す概略外観図である。
図9に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子及び電源IC、蓄電デバイスはキーボード内部に実装されるが、光電変換素子に光が当たるように光電変換素子の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子の配置はこれに限られるものではない。光電変換素子を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、図10に示すように、キーの一部に小型の光電変換素子を埋め込むことも可能であり、有効である。
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図11は、本発明の電子機器の一例としてのセンサのブロック図である。
図11に示すように、光電変換モジュールの光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をセンサ回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールを構成することが可能となる。センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO、加速度、UV、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用でき、有効である。センサモジュールは、図12に示すように、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどに無線通信で送信する構成になっている。
IoT(Internet of Things)社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。またセンサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。光電変換素子により電力供給できることもメリットは非常に大きい。また、本発明の光電変換モジュールは、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
次に、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
図12は、本発明の電子機器の一例としてのターンテーブルのブロック図である。
図12に示すように、光電変換素子と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をターンテーブル回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
ターンテーブルは、例えば商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本発明の光電変換モジュールを用いることで、そのような不具合を解消でき、有効である。
以上、本発明の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、及び電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本発明の光電変換モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
<用途>
本発明の光電変換モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。本発明の光電変換モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、又は電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。また、乾電池を用いる場合は、その分、電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、又は持ち運びに支障を来すことがあるが、本発明の光電変換モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
このように、本発明の光電変換モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
本発明の光電変換モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、更に薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。更に、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。このように、本発明の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
本発明の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器の基本構成図を図13に示す。これは、光電変換素子に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子は周囲の照度によって出力が変化するため、図13に示す電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、図14に示すように、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子と機器の回路の間に光電変換素子用の電源ICを組み込むことが可能であり、有効である。
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子の欠点でもある。この場合には、図15に示すように、キャパシタ等の蓄電デバイスを電源ICと機器回路の間に搭載することによって、光電変換素子からの余剰電力を蓄電デバイスに充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない場合でも、蓄電デバイスに蓄えられた電力を機器回路に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
このように、本発明の光電変換モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になり、光電変換素子のメリットを最大限に活かすことができる。
一方、本発明の光電変換モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、図16に示すように、本発明の光電変換モジュールと、光電変換素子用の電源ICを接続すると、光電変換モジュールの光電変換素子が光電変換することによって発生した電力を電源ICにて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
更に、図17に示すように、電源ICに蓄電デバイスを追加することにより、光電変換モジュールの光電変換素子が発生させた電力を蓄電デバイスに充電することが可能になり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
図16及び図17に示した本発明の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<光電変換モジュールの作製>
第1の基板としてのガラス基板上に、第1の電極としてのインジウムドープ酸化錫(ITO)とニオブドープ酸化錫(NTO)を順次スパッタ製膜した。次いで、ホールブロッキング層として酸化チタンからなる緻密な層(平均厚み20nm)を酸素ガスによる反応性スパッタにより形成した。
次に、酸化チタン(Greatcell Solar Materials社製、18NR-T)ペーストを、ホールブロッキング層上に平均厚みが約1.2μmになるようにスクリーン印刷により塗布した。120℃で乾燥後、空気中、570℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。その後、レーザー加工によって、ITO/NTO層、ホールブロッキング層及び電子輸送層を8つのセルに分割した。
電子輸送層を形成したガラス基板を、上記B-5で表される光増感化合物(0.2mM)にアセトニトリル/t-ブタノール(体積比1:1)混合液を加え撹拌した溶液に浸漬し、1時間暗所で静置して、電子輸送層の表面に光増感化合物を吸着させた。
次に、クロロベンゼン溶液に、リチウム塩bとしてリチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)(キシダ化学株式会社製)86.9mM、上記H-1で表されるピリジン化合物aを143.1mM、上記D-7で表される有機ホール輸送材料(HTM)(SHT-263、メルク株式会社製)159.0mM、及び上記F-11で表されるコバルト錯体(Greatcell solar materials社製)12.7mMを加えて溶解し、ホール輸送層塗布液を調製した。なお、ピリジン化合物aとリチウム塩bのモル比a/bは、1.65であった。
なお、ホール輸送層におけるリチウム塩のモル量をXとし、ホール輸送層における有機p型半導体材料のモル量をYとしたとき、リチウム塩と有機p型半導体材料のモル比であるX/Yは0.55であった。
次に、光増感化合物を吸着させた電子輸送層上に、ホール輸送層塗布液を用い、ダイコートにより約500nmのホール輸送層を塗工した。
ホール輸送層塗布液を光増感化合物が吸着した電子輸送層上に塗工した後、オーブンを用いて常圧下、60℃、60分間加熱乾燥した。
その後、封止部材が設けられるガラス基板の端部及びセル間をレーザー加工によりエッチング処理し、更にレーザー加工により端子取り出し部となるITO/NTO層に接続するための貫通孔を形成し、加えてレーザー加工により、セル間を直列に接続するための貫通孔を形成した。
ガラス基板の端部及びセル間にマスクを装着した後、銀を真空蒸着し、約70nmの第2の電極を形成した。
ガラス基板の端部に、発電領域が取り囲まれるように、紫外線硬化樹脂(WorldRockNo.5910、協立化学産業株式会社製)をディスペンサー(2300N、株式会社サンエイテック製)を用いて塗布した。その後、露点マイナス40℃に調整し、かつ窒素及び酸素混合ガス(酸素濃度:10体積%)を導入したグローブボックス内に移して、紫外線硬化樹脂の上に第2の基板としてのカバーガラスを載せ、紫外線照射により硬化させた後、80℃で60分間加熱した。以上のように、発電領域の封止を行い、最後に、受光面にUVカットフィルムを貼り付け、図5に示したような光電変換モジュール102を作製した。
(実施例2)
実施例1において、ホール輸送層塗布液を電子輸送層上に塗工した後、オーブンを用いて常圧下、90℃、30分間加熱乾燥する条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール2を作製した。
(実施例3)
実施例1において、リチウム塩を95.6mM、ピリジン化合物を141.9mM、有機ホール輸送材料を157.7mM、及びコバルト錯体を12.6mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール3を作製した。
(実施例4)
実施例1において、リチウム塩を84.0mM、ピリジン化合物を138.4mM、有機ホール輸送材料をD-10で表される有機ホール輸送材料153.7mM、及びコバルト錯体を12.3mMに変更し、さらに乾燥条件を60℃、30分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール4を作製した。
(実施例5)
実施例1において、リチウム塩を103.3mM、ピリジン化合物を140.8mM、有機ホール輸送材料を156.5mM、及びコバルト錯体を12.5mMに変更し、さらに乾燥条件を50℃、90分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール5を作製した。
(比較例1)
実施例1において、ホール輸送層塗布液を電子輸送層上に塗工した後、加熱乾燥を行わずにすぐに次の工程に移った以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール6を作製した。
(比較例2)
実施例1において、ホール輸送層塗布液を電子輸送層上に塗工した後、オーブンを用いて常圧下、40℃、15分間加熱乾燥する条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール7を作製した。
(比較例3)
実施例1において、リチウム塩を86.9mM、ピリジン化合物を143.1mM、有機ホール輸送材料を159.0mM、及びコバルト錯体を12.7mMに変更し、さらに乾燥条件を50℃、3分間に変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール8を作製した。
(比較例4)
実施例1において、リチウム塩を添加せず、ピリジン化合物を155.5mM、有機ホール輸送材料を172.8mM、及びコバルト錯体を13.8mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール9を作製した。
(実施例6)
実施例1において、リチウム塩を80.2mM、ピリジン化合物を144.4mM、有機ホール輸送材料を160.4mM、及びコバルト錯体を12.5mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール10を作製した。
(実施例7)
実施例1において、リチウム塩を75.2mM、ピリジン化合物を145.1mM、有機ホール輸送材料を161.2mM、及びコバルト錯体を12.6mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール11を作製した。
(実施例8)
実施例1において、リチウム塩を65.1mM、ピリジン化合物を146.5mM、有機ホール輸送材料を162.8mM、及びコバルト錯体を12.7mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール12を作製した。
(実施例9)
実施例1において、リチウム塩を54.8mM、ピリジン化合物を148.0mM、有機ホール輸送材料を164.4mM、及びコバルト錯体を12.8mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール13を作製した。
(実施例10)
実施例1において、光増感化合物をB-51で表される光増感化合物に変更し、リチウム塩をリチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-FPFSI)86.7mM、ピリジン化合物を142.8mM、有機ホール輸送材料を158.6mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤11.6mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール14を作製した。
(実施例11)
実施例10において、乾燥条件を75℃、45分間に変更した以外は、実施例10と同様にして、光電変換モジュール15を作製した。
(実施例12)
実施例1において、光増感化合物をB-51で表される光増感化合物に変更し、リチウム塩をリチウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-PFTFSI)85.3mM、ピリジン化合物を140.4mM、有機ホール輸送材料を156.0mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤11.4mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール16を作製した。
(実施例13)
実施例12において、乾燥条件を75℃、45分間に変更した以外は、実施例12と同様にして、光電変換モジュール17を作製した。
(実施例14)
実施例1において、光増感化合物をB-51で表される光増感化合物に変更し、リチウム塩を94.3mM、有機ホール輸送材料をD-10で表される有機ホール輸送材料146.6mM、ピリジン化合物をH-3で表されるピリジン化合物141.4mM、酸化剤をF-23で表される酸化剤15.7mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール18を作製した。
(実施例15)
実施例14において、乾燥条件を75℃、45分間に変更した以外は、実施例14と同様にして、光電変換モジュール19を作製した。
(比較例5)
実施例1において、リチウム塩をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)70.1mM、ピリジン化合物を145.7mM、有機ホール輸送材料を161.9mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤11.9mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール20を作製した。
(比較例6)
実施例1において、リチウム塩をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)89.6mM、ピリジン化合物を142.3mM、有機ホール輸送材料を158.1mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤11.6mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール21を作製した。
(比較例7)
実施例1において、リチウム塩をリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)72.1mM、ピリジン化合物を149.7mM、有機ホール輸送材料を166.4mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤12.2mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール22を作製した。
(比較例8)
実施例1において、リチウム塩をリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-BETI)68.3mM、ピリジン化合物を141.8mM、有機ホール輸送材料を157.6mM、及び酸化剤をF-23で表される酸化剤11.6mMに変更した以外は、実施例1と同様にして、光電変換モジュール23を作製した。
次に、作製した各光電変換モジュールについて、以下のようにして、封止酸素濃度、コバルト錯体の価数、クロロベンゼン量の測定、光電変換モジュールの性能(初期の最大出力電力Pmax1、及びPmax維持率)を評価した。結果を表1に示した。
<封止酸素濃度>
封止内部の酸素濃度の測定は、IVAにより、高真空下で試料ある光電変換モジュールの封止部を開封し、出てきた水分やガスなどを飛行時間型の質量分析計(IVA分析:沖エンジニアリング株式会社(OEG)製の半導体内蔵ガス分析装置、検出器:ファイファーバキューム製 四重極質量分析計(QM1422/QMA-125)を用いて質量分析することにより定量化した。
この結果、作製した各光電変換モジュールにおいては、封止内部はほぼ設定どおりの酸素濃度(10体積%)になっていることを確認できた。
<コバルト錯体の価数>
各光電変換モジュールに含有されるコバルト錯体の価数は、X線吸収微細構造解析(XAFS)により、価数分析を行った。光電変換モジュールにおけるコバルト錯体の価数の測定は、光電変換モジュールの封止を開封し、対向電極が形成された状態のままで測定を行った。更に、2価及び3価のコバルト錯体粉末のXAFSスペクトルを別途測定した。
そして、ホール輸送層に含有するコバルト錯体のXAFSスペクトルと比較することによって、ホール輸送層に含有されるコバルト錯体の価数を特定した。実施例1の光電変換モジュールのXAFS分析結果を図18に示す。
図18において、実施例1の光電変換モジュールのスペクトルは、2価のコバルト錯体粉末試料のスペクトルとほぼ一致した。本結果より、本発明の光電変換素子及び光電変換モジュールの作製時には3価のコバルト錯体を添加したが、作製された光電変換素子及び光電変換モジュールに含有されるコバルト錯体は、ほとんどが2価になっていることが確認できた。
<クロロベンゼン量の測定>
作製した光電変換素子を液体窒素に浸漬させた後、ハンマーで細かく粉砕し、バイアル瓶に移した。
150℃に加熱したホットプレートで1時間加熱し、気体を収集した。収集した気体のうち100μLをガスクロマトグラフ質量分析法により分析した。
ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)法は、以下の条件で行った。
-装置-
・BRUKER社製 SION-TQ(GCMS)
・MARKES社製 UNITY2(TD)
-測定条件-
・カラム:SGE GC column
SOLGEL-WAX
L=30.0m
ID=0.25mmID
Film=0.25μm
・カラム昇温:40℃(保持 5min)→<20℃/min>→260℃(保持 5min)
・キャリアガス:He Injector :200℃
・Column Folw :1.00mL/min(一定)
・イオン化法 :EI法(70eV)
・注入モード:スプリット 1:10
・測定モード :トータルイオンクロマトグラム(TIC)(m/z=33~600)
・注入量 :100μL(ガス)
同一の試料を3点測定(N=3)し、その平均値を測定値とした。各成分の面積値は特異的なMSスペクトルから算出した。実施例において、ホール輸送層には溶媒としてクロロベンゼンを使用したため、m/z=112とし以下のようにして求めた。
GCMSによって得られた測定値を上記の検量線より検量線上の定量値を求め、さらに下式によってホール輸送層の体積で換算することにより、ホール輸送層の単位体積あたりのクロロベンゼンの定量値を算出した。なお、上記ホール輸送層とは層として独立している部分の膜厚を示し、電子輸送層の多孔質層に充填されている領域は含まない。
・定量値(μg/mm)=検量線上の定量値(μg)/ホール輸送層の面積×膜厚(mm)
なお、検量線を作成するために用いた検量線作成用溶液は以下のようにして調整した。
-検量線作成用溶液の調製及び検量線の作成-
標準品クロロベンゼンをメタノールに希釈する。
得られた溶液1μLをバイアル瓶に入れ、150℃のホットプレートにかけ、ガス100μLを上記GCMS装置に導入し、上述した方法と同様の方法でクロロベンゼンの量を測定した。
<光電変換モジュールの性能評価>
得られた光電変換モジュールを、天井窓付きの恒温槽に設置し、天井窓から5,000Kの白色LEDを内部に向けて照射し、光電変換モジュールに照射される光の照度が200lxになるように調整した。また、光電変換モジュールの端子に接続した配線は、恒温槽の外にまで伸ばし、光電変換モジュールを恒温槽内に入れた状態でIV特性を測定できるようにした。
その後、恒温槽を60℃に設定し、太陽電池評価システム(As-510-PV03、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製)を用いて、60℃におけるIV特性を測定し、初期の最大出力電力Pmax1(μW)を求めた。その状態で750時間放置した後、再度IV特性を測定し、最大出力電力Pmax2(μW)を測定し、60℃の環境におけるPmax維持率[(Pmax2/Pmax1)×100](%)を求めた。結果を表1に示す。
また、恒温槽を-30℃に設定し、前記60℃環境におけるPmax維持率と同様にして、-30℃の環境におけるPmax維持率[(Pmax2/Pmax1)×100](%)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2022179342000053
本発明の実施例によれば、ホール輸送層に本発明の非対称構造を有するリチウム塩を含有し、光電変換素子内に含まれる溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下に制御することにより、60℃及び-30℃の異なる温度環境においても初期Pmaxが高く、さらに安定に維持することができ、耐久性に優れることが明らかになった。なお、比較例4は初期Pmaxが低かったため耐久性試験は中止とし、また比較例6は調合において材料が溶解せず、光電変換素子を作製できなかったため、試験を中止した。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の電極と、光電変換層と、第2の電極とを有する光電変換素子であって、
前記光電変換層が、ホール輸送層を有し、
前記ホール輸送層が、非対称構造を有するリチウム塩を含有し、
溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下である、ことを特徴とする光電変換素子である。
<2> 前記溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して25μg/mm以下である、前記<1>に記載の光電変換素子である。
<3> 前記非対称構造を有するリチウム塩は、下記一般式(1)で表される、前記<1>から<2>のいずれかに記載の光電変換素子である。
Figure 2022179342000054
ただし、前記一般式(1)中、A及びBは、F、CF、C、C、及びCのいずれかの置換基を表し、Aの置換基とBの置換基は互いに異なる。
<4> 前記リチウム塩がリチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<5> 前記ホール輸送層が、有機p型半導体材料をさらに含有し、前記有機p型半導体材料が下記一般式(4)で表される化合物である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の光電変換素子である。
Figure 2022179342000055
ただし、前記一般式(4)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
<6> 前記ホール輸送層における前記リチウム塩のモル量をXとし、前記ホール輸送層における前記有機p型半導体材料のモル量をYとしたとき、前記リチウム塩と前記有機p型半導体材料のモル比であるX/Yが0.35以上0.65以下である、前記<5>に記載の光電変換素子である。
<7> 前記ホール輸送層がピリジン化合物をさらに含有する、前記<1>から<6>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<8> 前記ピリジン化合物と前記リチウム塩のモル比であるa/bが2.0以下である、前記<7>に記載の光電変換素子。
<9> 前記ホール輸送層が2価のコバルト錯体をさらに含有する、前記<1>から<8>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<10> 前記第1の電極と、前記光電変換層と、前記第2の電極とをこの順で有し、
前記第1の電極と、前記光電変換層と、の間にホールブロッキング層をさらに有する、前記<1>から<9>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<11> 前記光電変換層を前記光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材をさらに有する、前記<1>から<10>のいずれかに記載の光電変換素子である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の光電変換素子を複数有し、
互いに隣接する前記光電変換素子が、直列又は並列に電気的に接続されていることを特徴とする光電変換モジュールである。
<13> 互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、
一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されている、前記<12>に記載の光電変換モジュールである。
<14> 前記光電変換モジュールにおける複数の前記光電変換素子の前記光電変換層を、前記光電変換モジュールの外部環境から遮蔽する封止部材を更に有する、前記<12>から<14>のいずれかに記載の光電変換モジュールである。
<15> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<12>から<14>のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
<16> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の光電変換素子、及び前記<12>から<14>のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、
前記畜電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器である。
<17> 第一の電極上にホール輸送層を有する光電変換層を形成する光電変換層形成工程と、
前記ホール輸送層の溶媒量を制御する溶媒量制御工程と、を含み、
溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下にすることを特徴とする光電変換素子の製造方法である。
前記<1>から<11>のいずれかに記載の光電変換素子、前記<12>から<14>のいずれかに記載の光電変換モジュール、前記<15>から<16>のいずれかに記載の電子機器、及び前記<17>に記載の光電変換素子の製造方法は、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
特開2018-113305号公報
1 第1の基板
2、2a、2b 第1の電極
3 ホールブロッキング層
4 電子輸送層
5 光増感化合物
6 ホール輸送層
7、7a、7b 第2の電極
8 封止部材
9 第2の基板
10 中空部
11 パッシベーション層
12 貫通部(導通部)
101 光電変換素子
102 光電変換モジュール

Claims (17)

  1. 第1の電極と、光電変換層と、第2の電極とを有する光電変換素子であって、
    前記光電変換層が、ホール輸送層を有し、
    前記ホール輸送層が、非対称構造を有するリチウム塩を含有し、
    溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下である、ことを特徴とする光電変換素子。
  2. 前記溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して25μg/mm以下である、請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記非対称構造を有するリチウム塩は、下記一般式(1)で表される、請求項1から2のいずれかに記載の光電変換素子。
    Figure 2022179342000056
    ただし、前記一般式(1)中、A及びBは、F、CF、C、C、及びCのいずれかの置換基を表し、Aの置換基とBの置換基は互いに異なる。
  4. 前記リチウム塩がリチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである、請求項1から3のいずれかに記載の光電変換素子。
  5. 前記ホール輸送層が、有機p型半導体材料をさらに含有し、
    前記有機p型半導体材料が下記一般式(4)で表される化合物である、請求項1から4のいずれかに記載の光電変換素子。
    Figure 2022179342000057
    ただし、前記一般式(4)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表す。
  6. 前記ホール輸送層における前記リチウム塩のモル量をXとし、前記ホール輸送層における前記有機p型半導体材料のモル量をYとしたとき、
    前記リチウム塩と前記有機p型半導体材料のモル比であるX/Yが0.35以上0.65以下である、請求項5に記載の光電変換素子。
  7. 前記ホール輸送層がピリジン化合物をさらに含有する、請求項1から6のいずれかに記載の光電変換素子。
  8. 前記ピリジン化合物と前記リチウム塩のモル比であるa/bが2.0未満である、請求項7に記載の光電変換素子。
  9. 前記ホール輸送層が2価のコバルト錯体をさらに含有する、請求項1から8のいずれかに記載の光電変換素子。
  10. 前記第1の電極と、前記光電変換層と、前記第2の電極とをこの順で有し、
    前記第1の電極と、前記光電変換層と、の間にホールブロッキング層をさらに有する、請求項1から9のいずれかに記載の光電変換素子。
  11. 前記光電変換層を前記光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材をさらに有する、請求項1から10のいずれかに記載の光電変換素子。
  12. 請求項1から11のいずれかに記載の光電変換素子を複数有し、
    互いに隣接する前記光電変換素子が、直列又は並列に電気的に接続されていることを特徴とする光電変換モジュール。
  13. 互いに隣接する少なくとも2つの前記光電変換素子を有する光電変換モジュールにおいて、
    一の前記光電変換素子における前記第1の電極と、他の前記光電変換素子における前記第2の電極とが、前記光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されている、請求項12に記載の光電変換モジュール。
  14. 前記光電変換モジュールにおける複数の前記光電変換素子の前記光電変換層を、前記光電変換モジュールの外部環境から遮蔽する封止部材を更に有する、請求項12から13のいずれかに記載の光電変換モジュール。
  15. 請求項1から11のいずれかに記載の光電変換素子、及び請求項12から14のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
    前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器。
  16. 請求項1から11のいずれかに記載の光電変換素子、及び請求項12から14のいずれかに光電変換モジュールのいずれかと、
    前記光電変換素子又は前記光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、
    前記畜電池に蓄電された前記電力によって動作する装置と、を有することを特徴とする電子機器。
  17. 第一の電極上にホール輸送層を有する光電変換層を形成する光電変換層形成工程と、
    前記ホール輸送層の溶媒量を制御する溶媒量制御工程と、を含み、
    溶媒量が前記ホール輸送層の単位体積に対して30μg/mm以下にすることを特徴とする光電変換素子の製造方法。

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