JP2022179090A - 治療剤 - Google Patents

治療剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2022179090A
JP2022179090A JP2021086342A JP2021086342A JP2022179090A JP 2022179090 A JP2022179090 A JP 2022179090A JP 2021086342 A JP2021086342 A JP 2021086342A JP 2021086342 A JP2021086342 A JP 2021086342A JP 2022179090 A JP2022179090 A JP 2022179090A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gene
lncrna
therapeutic agent
nucleotide sequence
rna
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021086342A
Other languages
English (en)
Inventor
雄一 尾池
Yuichi Oike
迪夫 佐藤
Michio Sato
毅 門松
Takeshi Kadomatsu
敬士 宮田
Takashi Miyata
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kumamoto University NUC
Original Assignee
Kumamoto University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kumamoto University NUC filed Critical Kumamoto University NUC
Priority to JP2021086342A priority Critical patent/JP2022179090A/ja
Publication of JP2022179090A publication Critical patent/JP2022179090A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供する。【解決手段】1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とHigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを所定のヌクレオチド配列を有する核酸に基づいて導入又は発現させる、前記核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤とした。【選択図】図11

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年5月5日、ウェブサイトによる学術論文の公開 〔刊行物等〕 令和3年5月6日、ウェブサイトによるプレスリリース
本発明は、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤に関する。
医学・医療技術の目覚ましい進歩にもかかわらず、心不全は未だ予後不良の疾患である。心不全患者数は今後も世界規模で増加することが予想されており、超高齢社会を迎えた本邦においては特に高齢者の心不全患者数の増加が問題となっている。
特に、現在の心不全治療は対症療法が中心であることから、効果的な新規治療戦略の開発が望まれている。
一方、哺乳動物を対象として行われたトランスクリプトームの大規模分析によれば、ゲノムの転写により生成する多くのRNA分子のうち、タンパク質合成の鋳型として機能する分子はごく一部であることが明らかになっている。
特に、幾つかの研究によれば、タンパク質をコードしないncRNA(noncoding RNA)は重要な生物学的機能を有することが示されており、ncRNAの発現または機能の変化が、心血管疾患、例えば心肥大および線維症、冠動脈障害、および心筋梗塞をもたらすことを示唆している。
そこで近年、ncRNAが有する機能に着目し、これを利用した心肥大抑制のための医薬組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2020-007332号公報
しかしながら、心不全は単一の原因によって発症するものではなく、より複雑なメカニズムを経て発症するものであり、異なるアプローチでより多くの治療手段が提供されるのが望ましい。
また、心臓では、心不全の発症につながる加齢や高血圧などの圧負荷によるストレスへの暴露によって心筋細胞におけるミトコンドリアが機能不全に陥り、その結果心ポンプ機能の維持に必須のエネルギー産生が減少し、心不全の発症・進展につながるものと考えられている。
それゆえ、心不全をミトコンドリアの機能不全の観点から考えるなら、ミトコンドリアの機能改善は心不全の他に同様の機序で生じる他の疾患についても、治療の途を提供することが可能となる。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供する。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る治療剤の態様の1つは、(1)1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを次の(a)~(d)、すなわち(a)前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するRNAヌクレオチド配列、(b)(a)と少なくとも90%の相同性を有するRNAヌクレオチド配列、(c)(a)又は(b)に相補的なRNAヌクレオチド配列、(d)(a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているDNAヌクレオチド配列、のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸に基づいて導入又は発現させる、前記核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤とした。
また、本発明に係る治療剤の選択的な態様として、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記生物はヒトであって、前記lncRNA遺伝子は4番染色体のSAP30 (Sin3A associated protein 30)遺伝子とHMGB2 (High-mobility group box 2)遺伝子との間に存在するSAP30-DT遺伝子であること。
(3)前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有すること。
(4)前記生物はマウスであって、前記lncRNA遺伝子は8番染色体のSap30遺伝子とHmgb2遺伝子との間に存在する2500002B13Rik遺伝子であること。
(5)前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号2に示すヌクレオチド配列を有すること。
(6)前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを部位選択的に発現可能に前記(a)~(d)のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸をベクターに組み込んでなること。
(7)前記選択的に発現可能な部位は非分裂性細胞であること。
(8)前記非分裂性細胞は心筋細胞であること。
また、本発明に係る治療剤の他の態様は、(9)1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物のための、前記lncRNA遺伝子の転写産物の発現促進成分を有効成分として含有するミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤とした。
また、本発明に係る治療剤の選択的な態様として、(10)前記ミトコンドリア機能不全に由来する疾患は心不全であることにも特徴を有する。
また、本発明の他の態様は、(11)1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物における前記lncRNA遺伝子の転写産物を、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の有効成分として使用されるRNA又は同RNAの発現の鋳型となるDNAの設計のためにヌクレオチド配列探索源として使用することとした。
本発明によれば、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを次の(a)~(d)、すなわち(a)前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するRNAヌクレオチド配列、(b)(a)と少なくとも90%の相同性を有するRNAヌクレオチド配列、(c)(a)又は(b)に相補的なRNAヌクレオチド配列、(d)(a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているDNAヌクレオチド配列、のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸に基づいて導入又は発現させる、前記核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤としたため、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供することができる。
また、前記生物はヒトであって、前記lncRNA遺伝子は4番染色体のSAP30遺伝子とHMGB2遺伝子との間に存在するSAP30-DT遺伝子であることとすれば、ミトコンドリアの機能低下の改善と、DNA損傷に対する応答抑制との両者をより堅実に発揮可能な治療剤とすることができる。
また、前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有することとすれば、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を更に堅実に提供することができる。
また、前記生物はマウスであって、前記lncRNA遺伝子は8番染色体のSap30遺伝子とHmgb2遺伝子との間に存在する2500002B13Rik遺伝子であることとすれば、ミトコンドリアの機能低下の改善と、DNA損傷に対する応答抑制との両者をより堅実に発揮できる治療剤とすることができる。
また、前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号2に示すヌクレオチド配列を有することとすれば、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を更に堅実に提供することができる。
また、前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを部位選択的に発現可能に前記(a)~(d)のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸をベクターに組み込んでなることとすれば、標的とする細胞や組織にて選択的にミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することができる。
また、前記選択的に発現可能な部位は非分裂性細胞であることとすれば、DNA損傷に対する応答抑制が不都合に働く可能性のある分裂性の細胞での発現を回避することができ、より安全な治療薬とすることができる。
また、前記非分裂性細胞は心筋細胞であることとすれば、分裂性の細胞におけるがん化等を回避しつつ、心筋細胞においてミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤とすることができる。
また、本発明によれば、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物のための、前記lncRNA遺伝子の転写産物の発現促進成分を有効成分として含有するミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤としたため、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供することができる。
また、前記ミトコンドリア機能不全に由来する疾患は心不全であることとすれば、ミトコンドリアの機能不全に由来する心不全の憎悪を抑制し治療することのできる心不全の治療剤とすることができる。
また、本発明によれば、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物における前記lncRNA遺伝子の転写産物を、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の有効成分として使用されるRNA又は同RNAの発現の鋳型となるDNAの設計のためにヌクレオチド配列探索源として使用することとしたため、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤の開発をより効率的に行うことができる。
Caren (Cardiomyocyte-enriched noncoding transcript)の発現部位を示す説明図である。 Carenの発現量は、圧負荷ストレスで減少することを示した説明図である。 横行大動脈の縮紮手術TAC (transverse aortic constriction)の概要を示した説明図である。 Carenのノックアウトマウスは、心不全病態の憎悪を招くことを示す説明図である。 Caren Tg(transgenic)マウスは、心不全病態の進行に対し抵抗することを示す説明図である。 Carenは、ミトコンドリア生合成を活性化することを示す説明図である。 心筋細胞では圧負荷ストレスによりHint1(histidine triad nucleotide-binding protein 1) タンパク質が増加しATM(ataxia telangiectasia mutated)の活性化を促進することを示す説明図である。 CarenはHint1の翻訳を抑制することでDNA損傷応答活性化を抑制することを示す説明図である。 Hint1タンパク質の増加はミトコンドリア機能不全を引き起こすことを示す説明図である。 本実施形態に係る治療剤Aを投与し、心筋細胞でマウスCarenを部位選択的に補充し治療を行った場合の影響に関する説明図である。 Carenの補充はATMの活性化を抑制し、ミトコンドリア生合成の促進を引き起こすことを示す説明図である。 ヒトCaren候補の転写産物及びその発現状態を示す説明図である。 トランスクリプト1の作用を示す説明図である。 ヒトCaren Tgマウスの心不全に対する影響を示す説明図である。
本発明は、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤に関するものであり、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供するものである。
特に本実施形態に係る治療剤では、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と比較的高い相同性、例えば少なくとも90%以上の相同性を備えたRNA(以下、本剤RNAともいう。)を導入又は発現させる治療剤である。なお本明細書においてlncRNAには、遺伝子間領域に独立した転写ユニットをもつlincRNA(long intergenic/intervening non-coding RNA,長鎖遺伝子間非コードRNA)も含まれる。
ここで、本剤RNAの由来となる生物は特に限定されるものではない。ただし、本発明者らの研究によれば、生体内の所定の細胞にて元々発現しており、本剤RNAと同様にミトコンドリアの機能低下の改善作用(以下、ミトコンドリア改善作用ともいう。)と、DNA損傷に対する応答の抑制作用(以下、損傷応答抑制作用ともいう。)との両方を発揮するlncRNAは、その遺伝子が種を超えて染色体上の所定の構造に特徴付けられる座に存在する可能性が高く、このような座を有する生物を由来とするのが望ましい。なお、上記両作用を発揮するlncRNAは、生体内に存在する数多くのRNAのうち本剤RNAの設計基盤(モチーフ)として採用可能な配列を有する特別なRNAであるため、以下の説明において当該lncRNAを有作用lncRNAともいう。
また、このような有作用lncRNAの遺伝子が存在する座を特徴づける所定の構造は、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造である。以下、当該構造を有作用lncRNA遺伝子座構造ともいう。
ここで、Sin3A associated protein 30遺伝子は、これと同様の機能を発揮するタンパク質をコードした遺伝子も概念的に含んでいる。Sin3A associated protein 30遺伝子は、例えば由来となる生物がヒトであれば4番染色体のSAP30遺伝子であり、マウスであれば8番染色体のSap30遺伝子を挙げることができる。
また、high-mobility group box 2遺伝子についても、これと同様の機能を発揮するタンパク質をコードした遺伝子も概念的に含む。High-mobility group box 2遺伝子は、例えば由来となる生物がヒトであれば4番染色体のHMGB2遺伝子であり、マウスであれば8番染色体のHmgb2遺伝子を挙げることができる。
また、有作用lncRNA遺伝子座構造において、Sin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子との間には、1以上のlncRNA遺伝子が存在する。この1以上のlncRNA遺伝子は、少なくとも1つが有作用lncRNA遺伝子であり、同有作用lncRNA遺伝子の転写産物である有作用lncRNAの生体内における作用が保存されている。付言すれば、有作用lncRNA遺伝子やその転写産物は、先述のミトコンドリア改善作用や損傷応答抑制作用は良く保存しているが、ヌクレオチド配列自体が種を超えてよく保存されていることを必ずしも意味しない。
また、有作用lncRNA遺伝子からは、選択的スプライシングによって複数のlncRNAが発現しても良い。この場合、本実施形態に係る治療剤が投与される生体や組織、細胞等(以下、単に生体等ともいう。)においてミトコンドリア改善作用と損傷応答抑制作用の両者を発揮できるlncRNAが有作用lncRNAである。
そして、本実施形態に係るミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の特徴として、有作用lncRNAと少なくとも90%以上のヌクレオチド配列の相同性を備えた本剤RNAを生体等に導入又は発現させるような所定のヌクレオチド配列を有する核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤とした点が挙げられる。
ここで、有作用lncRNAと本剤RNAとの関係において90%以上の相同性とは、いずれもミトコンドリア改善作用と損傷応答抑制作用とを有する状態(以下、有作用状態ともいう。)での相同性を意味しており、主にスプライシングを終えたRNAであり、また、修飾等の有無にかかわらない。
すなわち、スプライシングや修飾を経て成熟した有作用状態の有作用lncRNAに対し、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤として生体等に投与するRNAが、投与後に生体内でスプライシングや修飾を受けたならば有作用lncRNAと少なくとも90%以上のヌクレオチド配列の相同性を有し有作用状態となる未成熟のRNAならば、投与前の状態において有作用lncRNAとの相同性が90%未満であったとしても、更には未成熟RNAの状態でミトコンドリア改善作用や損傷応答抑制作用のいずれか又は両方が発揮されなくとも、当該RNAは本剤RNAと理解すべきである。
また逆に、スプライシングや修飾の全部を経ておらずとも有作用状態であるような未成熟のlncRNAを有作用lncRNAとした場合、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤として生体等に投与するRNAが、スプライシングや修飾を受けてなお有作用状態が維持される成熟した有作用lncRNAと少なくとも90%以上のヌクレオチド配列の相同性を有するRNAならば、有作用lncRNAとの相同性が90%未満であったとしても、当該RNAは本剤RNAと理解すべきである。
また更に言及するならば、要は有作用lncRNAと本剤RNAのいずれにおいても、そのプロセッシングの過程にかかわらず、投与された生体等内においてミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤として実質的に機能する程度のミトコンドリア改善作用と損傷応答抑制作用の両者が発揮されるRNAであって、有作用lncRNA遺伝子の転写産物としてプロセッシングの過程又は結果で出現するミトコンドリア改善作用と損傷応答抑制作用の両者を発揮可能なヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えるRNAならば、当該RNAは本剤RNAと理解すべきである。
90%以上の相同性を備えたRNAを生体等に導入するケースとしては、本発明の理解に供すべく敢えて一例に言及するならば、投与対象である生体等外にて大量に生成させた本剤RNAを、固体脂質ナノ粒子の如き所定のドラッグデリバリーシステムを採用して前記生体等に投与する場合が挙げられる。
また、90%以上の相同性を備えたRNAを生体等に発現させるケースとしては、例えば、所定の発現ベクター等を用いて本剤RNAを発現可能とし、これを前記生体等に投与して、生体等の中で本剤RNAを発現させる場合が挙げられる。
本剤RNAは、所定のヌクレオチド配列を有する核酸、すなわち、DNAやRNAに基づいて生体等内に導入又は発現される。
特に本実施形態においてこのような所定のヌクレオチド配列は、(a) 有作用lncRNA遺伝子の転写産物が有するRNAヌクレオチド配列、(b) (a)と少なくとも90%の相同性を有するRNAヌクレオチド配列、(c) (a)又は(b)に相補的なRNAヌクレオチド配列、(d) (a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているDNAヌクレオチド配列、が挙げられる。
(a)は、有作用lncRNAと少なくとも90%以上の相同性を備えた本剤RNAを生体等の中に導入又は発現させるにあたり、有作用lncRNAと同じヌクレオチド配列を有する核酸(RNA)に基づいてこれを実現するものである。より端的には、有作用lncRNAと同じ配列の本剤RNAを生体等の中に導入又は発現させるにあたり、有作用lncRNAと同じ配列のRNAに基づいてこれを実現するものである。
このような例としては、有作用lncRNAと同じ配列で有作用状態のRNA(前述の如くスプライシング等により該配列該状態になり得る前駆体も含む。)を、例えば、部位選択的に発現する未知又は既知のRNAウイルスベクターにクローニングし、これを生体等の内部で発現させたり、また、先述したように固体脂質ナノ粒子の如き所定のドラッグデリバリーシステムを採用して生体等に投与する態様が挙げられる。前者は導入した核酸により本剤RNAが誘導される例であり、後者は導入した核酸自体が本剤RNAとして機能する例である。なおRNAは、使用するベクターやドラッグデリバリーシステムと整合する態様であれば良く、一本鎖、二本鎖を問わない。
(b)は、有作用lncRNAと少なくとも90%以上の相同性を備えた本剤RNAを生体等の中に導入又は発現させるにあたり、有作用lncRNAと少なくとも90%の相同性を有する核酸(RNA)に基づいてこれを実現するものである。
このような例としては、例えば、生体等内での安定化など種々の理由により有作用lncRNAの一部の配列を人為的に改変したケースが考えられる。すなわち、有作用lncRNAと少なくとも90%の相同性を備えた有作用状態のRNA(前述の如くスプライシング等により該配列該状態になり得る前駆体も含む。)を、例えば、部位選択的に発現する未知又は既知のRNAウイルスベクターにクローニングし、これを生体等の内部で発現させたり、また、先述したように固体脂質ナノ粒子の如き所定のドラッグデリバリーシステムを採用して生体等に投与する態様が挙げられる。
(c)は、上述の(a)や(b)と同様の趣旨によるものであるが、これらのRNAが有する配列をセンス配列とするならば、これと相補的なアンチセンス配列を有するRNAからも、既知又は未知の方法により相補対の形成や逆転写を経るなどすれば理論的には本剤RNAを生体等の内部にて発現することも可能である。
(d)は、有作用lncRNAと少なくとも90%以上の相同性を備えた本剤RNAを生体等の中に導入又は発現させるにあたり、(a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているヌクレオチド配列を備えた核酸(DNA)に基づいてこれを実現するものである。
このような例としては、例えば、有作用lncRNAと少なくとも90%の相同性を備えた有作用状態のRNA(前述の如くスプライシング等により該配列該状態になり得る前駆体も含む。)の生成のための転写の鋳型となるDNAを例えば、部位選択的に発現する未知又は既知のDNAウイルスベクターにクローニングし、これを生体等の内部で発現させたり、同様にプラスミドベクターやエピソーマルベクターにクローニングし、所定のドラッグデリバリーシステムを採用して生体等に投与し発現させる態様が挙げられる。なおDNAは、使用するベクターやドラッグデリバリーシステムと整合する態様であれば良く、一本鎖、二本鎖を問わない。
そして、本実施形態に係る治療剤によれば、感染や所定のドラッグデリバリーシステムを介して投与される核酸として、本剤RNA自体や本剤RNAの前駆体、またこれらの鋳型となるDNAを導入又は発現可能な態様にて含むこととしたため、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤、より詳細には、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供することができる。
また、本実施形態に係る治療剤において、有作用lncRNAの由来となる生物はヒトであって、有作用lncRNA遺伝子は4番染色体のSAP30遺伝子とHMGB2遺伝子との間に存在するSAP30-DT遺伝子であることとしても良い。このような構成とすれば、ミトコンドリアの機能低下の改善と、DNA損傷に対する応答抑制との両者をより堅実に発揮可能な治療剤とすることができる。
また、本実施形態に係る治療剤では、有作用lncRNA遺伝子、例えばSAP30-DT遺伝子の転写産物は、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有することとしても良い。このようなヌクレオチド配列を有する転写産物を有作用lncRNAとし設計基盤(モチーフ)として採用して本剤RNAを設計すれば、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を更に堅実に提供することができる。なお、本発明者らの鋭意研究により、このヒト由来の配列番号1に示すヌクレオチド配列を備えたRNA分子は心筋細胞において多く発現しており、先述のミトコンドリア改善作用及び損傷応答抑制作用を発揮していることが明らかとなっている(後述)。そこで以下の説明では、この配列番号1に示すヌクレオチド配列を備えた有作用lncRNAと同じ又は少なくとも90%の相同性を有する配列で有作用状態のRNA(スプライシング等により該配列該状態になり得る前駆体も含む。)について、それが生体等の内部で自然に存在しているものか、人為的に発現させたものかを問わず、ヒトCaren(Cardiomyocyte-enriched noncoding transcript)と総称する場合がある。また、このようなヒトCarenを発現できる遺伝子をヒトCaren遺伝子とも称する。
また、本実施形態に係る治療剤において、有作用lncRNAの由来となる生物はマウスであって、有作用lncRNA遺伝子は8番染色体のSap30遺伝子とHmgb2遺伝子との間に存在する2500002B13Rik遺伝子であることとしても良い。このような構成とすれば、ミトコンドリアの機能低下の改善と、DNA損傷に対する応答抑制との両者をより堅実に発揮できる治療剤とすることができる。
また、本実施形態に係る治療剤では、有作用lncRNA遺伝子、例えば2500002B13Rik遺伝子の転写産物は、配列番号2に示すヌクレオチド配列を有することとしても良い。このようなヌクレオチド配列を有する転写産物を有作用lncRNAとし設計基盤(モチーフ)として採用して本剤RNAを設計すれば、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を更に堅実に提供することができる。なお、先述のヒトCarenやその遺伝子と同様に、本発明者らの鋭意研究により、このマウス由来の配列番号2に示すヌクレオチド配列を備えたRNA分子は心筋細胞において多く発現しており、先述のミトコンドリア改善作用及び損傷応答抑制作用を発揮していることが明らかとなっている(後述)。そこで以下の説明では、この配列番号2に示すヌクレオチド配列を備えた有作用lncRNAと同じ又は少なくとも90%の相同性を有する配列で有作用状態のRNA(スプライシング等により該配列該状態になり得る前駆体も含む。)について、それが生体等の内部で自然に存在しているものか、人為的に発現させたものかを問わず、マウスCaren(Cardiomyocyte-enriched noncoding transcript)と総称する場合がある。また、このようなマウスCarenを発現できる遺伝子をマウスCaren遺伝子とも称する。
また、本実施形態に係る治療剤では、先述した一態様の如く、有作用lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えた本剤RNAを部位選択的に発現可能に前述の(a)~(d)のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸をベクターに組み込んでなることとしても良い。このような構成によれば、標的とする細胞や組織にて選択的にミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することができる。
また、本剤RNAを選択的に発現可能とする部位は非分裂性細胞としても良い。このような構成とすれば、DNA損傷に対する応答抑制が不都合に働く可能性、例えばがん化の可能性のある分裂性の細胞での発現を回避することができ、より安全な治療薬とすることができる。
また、前記非分裂性細胞は心筋細胞であることとしても良い。このような構成とすれば、分裂性の細胞におけるがん化等を回避しつつ、心筋細胞においてミトコンドリアの機能不全に由来する疾患、例えば心不全の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤とすることができる。
また本願では、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物のための、前記lncRNA遺伝子の転写産物の発現促進成分を有効成分として含有するミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤についても提供する。
すなわち、有作用lncRNA遺伝子座構造を備えたゲノムを有する生物のミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤であって、その有効成分として有作用lncRNA遺伝子の転写産物の発現を促進する成分を含有する治療剤である。
ここで、当該有効成分は、同有効成分を含有する治療剤の使用によるメリットがデメリットを上回る成分であれば特に限定されるものではなく、あらゆる成分を採用することができる。
そして、このような構成を備える治療剤によっても、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することができる。
また本願では、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とhigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物における前記lncRNA遺伝子の転写産物を、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の有効成分として使用されるRNA又は同RNAの発現の鋳型となるDNAの設計のためにヌクレオチド配列探索源として使用することについても提供する。
このような使用方法とすることで、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪をミトコンドリア改善作用と損傷応答抑制作用の両者の発揮によって抑制したり治療する治療剤について、その開発をより効率的に行うことができる。
以下、本実施形態に係る治療剤について、図面や実際の実験結果等を参照しながら更に説明する。なお以下では、有作用lncRNAやその遺伝子、本剤RNA、治療剤に含まれる所定の核酸等に関し、マウスCarenやヒトCarenをその代表例として説明するが、これに限定されるものではない。先述の如く本願の要部は、有作用lncRNA遺伝子座構造の有作用lncRNA遺伝子より発現する有作用lncRNAと同一又はこれに似た有作用状態の本剤RNAを生体内に存在させてミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療を行う治療剤とすることにあり、当該技術思想を逸脱しない範囲であれば、これを実現するあらゆる手段は本発明の概念に含まれることに留意すべきである。
〔1.マウスCarenの発現観察〕
まず、ジーントラップ法により心臓にて選択的に発現するlncRNAの同定を行った。レポータ遺伝子(β-geo)を有するトラップベクターを染色体上に挿入した1051のマウスES細胞クローンのうち、機能が特定されていないlncRNAに挿入変異が生じたもの(13クローン)についてマウス系統を生成した。
ついで、X-gal染色によるβ-geoレポーターの発現検出に基づいて、受胎後12日目(dpc)のヘテロ接合胚の発現ベースの解析を実施したところ、図1に示すように、そのうちの1つの系統(T167)で、心臓に限定して豊富に発現するlncRNAが観察された。また、ゲノム解析により、当該lncRNAは2500002B13Rik遺伝子(配列番号3)より発現するものであり、同2500002B13Rik遺伝子にトラップベクターが挿入されていることが明らかとなった。
〔2.圧負荷ストレスによるマウスCaren発現量への影響〕
次に、同じくマウスに関し、心不全の発症の原因となる加齢や高血圧による圧負荷ストレスが、心臓におけるマウスCarenの発現量にどのような影響を与えるかにいて検討した。
その結果、図2左図に示すように、老齢(24ヶ月齢)のマウスの心臓におけるマウスCarenの転写レベルは、若い(2ヶ月齢)マウスよりも有意に低いことが示された。
また、アンギオテンシンIIの注入による高血圧マウスモデルの肥大化した心臓では、図2の中図に示すように、ビークル投与群の心臓と比較してマウスCarenの転写レベルが有意に低いことが確認された。
また、心不全マウスモデルにおけるマウスCarenの発現量についても確認を行った。具体的には、図3に示すように横行大動脈を縮紮(TAC;transverse aortic constriction)を行って圧負荷誘導心不全モデルマウス(以下、TACマウスともいう。)を作成し、縮紮以外は同じ手技を施す模擬手術マウス(以下、シャムマウスともいう)群との比較を行ったところ、図2の右図に示すように、TACマウスにおけるマウスCarenの転写レベルはシャムマウス群と比較して有意に低いことが確認された。
これらのことから、Carenの欠失は、心不全モデルマウスの心機能障害を加速させることが示された。
〔3.マウスCaren遺伝子のノックアウトによる心不全病態への影響〕
次に、マウスCaren遺伝子がノックアウトされたマウス(Carenβ-geo/β-geo)は、野生型のマウス(WT)と比較して、心不全の病態にどのような影響を与えるかについて確認を行った。図4左図において、左半分の2カラムはシャムマウス群であってそれぞれ野生型及びCarenノックアウト型(以下、Caren KO型ともいう。)マウスの左室におけるM-mode心エコー像、心臓外観、心臓断面及び肺外観を示している。また右半分の2カラムはTACマウス群であってそれぞれ野生型及びCaren KO型の手術4週間後の左室におけるM-mode心エコー像、心臓外観、心臓断面及び肺外観を示している。
図4左図及び右上図からもわかるように、野生型マウスは、シャムマウス群とTACマウス群とで比較すると、中等度の左心室拡張を伴う適応性心臓肥大の発症が認められた。またこれに対し、Caren KO型マウスは、TACマウス群において顕著な左心室拡張を発症し、左心室内径短縮率が大幅に減少し、肺うっ血を伴う心不全の発症が認められた。
また図4右下図に示すように、TACマウス群のうちCaren KO型マウスの70%以上が140日後までに死亡したのに対し、野生型マウスの死亡率は20%にとどまった。
これらの結果から、Carenの欠失は心臓への圧負荷に対する脆弱性を高め、心機能障害と心不全関連死を悪化させることを示唆している。
〔4.マウスCarenの過剰発現による心不全発症への影響〕
次に、野生型のマウスに対し、CAGプロモーター下でマウスCarenを過剰発現するよう改変されたマウス(以下、CAG-Caren Tgマウスともいう。)では、心不全の発症においてどのような違いが生じるかについて確認を行った。
CAG-Caren Tgマウスは、追加の挿入変異誘発を回避すべく、マウスCaren遺伝子のノックアウトのために挿入されたトラッピングベクターが有するCre/mutant lox/loxP 組換えシステムを使用し、ヘテロ接合T167マウス(Caren + /β-geo)の8番染色体の内因性Caren遺伝子座にCAGプロモーター制御下でCaren発現が誘導されるマウスCaren cDNAを挿入することで作成した。作成したCAG-Caren Tgマウスの心臓におけるCarenの発現量は、野生型同腹仔の発現量と比較して40倍多い量であった。なお付言すれば、有作用lncRNAであり本剤RNAでもあるマウスCarenを発現可能な所定のヌクレオチド配列を有するマウスCaren cDNAは、本実施形態に係る治療剤の構成要素としての核酸、すなわち、有作用lncRNAと高い相同性を有する本剤RNAを導入又は発現可能な所定のヌクレオチド配列を有する核酸の一態様と解することができる。
図5左図は、図4左図と同様に、シャムマウス群及びTACマウス群の野生型及びCAG-Caren Tgマウスにおける左室M-mode心エコー像、心臓外観、心臓断面及び肺外観を示している。なお、TACマウス群の各図はTAC手術から6週間経過後のものである。図5左図及び右図からわかるように、TACマウス群の野生型はシャムマウス群の野生型と比較すると、左心室拡張を発症しており、左心室内径短縮率が低下し、心不全の発症につながった。
これに対し、CAG-Caren Tgマウスでは適応性心肥大を示したものの心室拡張は伴っておらず、左心室内径短縮率の低下は軽度であった。
これらの結果から、心不全の発生は、マウスCarenの過剰発現により抑制されることが示された。
〔5.マウスCarenの過剰発現によるミトコンドリア活性への影響〕
次に、マウスCarenの過剰発現がミトコンドリア活性に与える影響について検討した。
Carenβ-geo/β-geo、CAG-Caren Tg、および対応する野生型同腹仔のマウスから得られた心室の全組織溶解物を使用して本発明者らが行ったプロテオミクス分析及びGOエンリッチメント解析の結果によれば、炭素代謝、トリカルボン酸(TCA)回路、および酸化的リン酸化(OXPHOS)などのGOタームがリストアップされた。
また、RT-PCR分析によれば、野生型同腹仔と比較してCAG-Caren Tgマウスの心臓におけるミトコンドリア生合成および酸化的リン酸化で機能する遺伝子(Nrf2、Tfam、Cytc、Cox4、およびAtp5a1など)の発現の有意な増加が確認された。
また図6左上及び左下に示すように、CAG-Caren Tgマウスは、野生型同腹仔と比較して心臓組織でTFAMタンパク質の発現レベルの有意な増加が確認された。このTFAMは上記Tfam遺伝子から発現するタンパク質であり、ミトコンドリア転写因子A(mitochondrial transcription factor A)として知られる。TFAMはミトコンドリアDNAの維持に必須のタンパク質として知られ、発現量の増大は活性酸素の産生を抑制し、ミトコンドリアゲノムコピー数を維持し、ミトコンドリアの機能低下が抑制される。なお、Hsc70はローディングコントロールである。
さらに、図6右上に示すように、CAG-Caren Tgマウスの心臓組織は、野生型同腹仔マウスと比較して、ミトコンドリアの数が多いことが電子顕微鏡分析により明らかとなった。
併せて、図6右下に示すように、CAG-Caren Tgマウスの心臓組織におけるミトコンドリアDNAの含有量は、野生型の心臓組織における含有量と比較して有意に高いことが示された。
これらの結果から、マウスCarenは心臓のミトコンドリア活性を促進することが示唆された。
〔6.圧負荷ストレスがDNA損傷応答の活性化に与える影響〕
次に、圧負荷ストレスがDNA損傷応答の活性化に与える影響について説明する。まず図7の左図に示すように、DNAが放射線や活性酸素種等によって損傷を受けると、これを修復するためにDNA損傷応答が惹起される。より詳細には、DNAが損傷を受けるとHint1(histidine triad nucleotide-binding protein 1)の発現が誘導され、これに伴いATM(ataxia telangiectasia mutated)タンパク質が発現する。ATMは、DNA損傷チェックポイントの活性化を開始する重要なタンパク質をリン酸化し、DNA修復や細胞周期の停止、アポトーシスを引き起こす。
そこで本発明者らは、TAC手術を施した野生型マウスの心臓組織におけるHINT1タンパク質の量の経時変化を確認した。その結果、図7の中央上図及び左上図にて示すように、TACマウス群のHINT1タンパク質の発現量はシャムマウス群に比して多く、また、TAC手術後2週、4週、8週と時間の経過に伴って徐々にその量が増加することが確認された。
また、ATMとATMの活性化型であるリン酸化ATM(pATM)の発現について比較したところ、図7の中央下図及び左下図にて示すように、TACマウス群ではシャムマウス群に比してATMの活性化が促進されていることが確認された。
これらのことから、圧負荷ストレスはHint1タンパク質を増加させ、またこれに伴いDNA損傷応答の活性化の鍵因子であるATMの活性化を促進することが示された。
〔7.マウスCarenがDNA損傷応答の活性化に与える影響〕
次に、マウスCarenがDNA損傷応答の活性化に与える影響について検討を行った。本発明者らが行ったCAG-Caren Tg及びCaren KO型マウスに関するプロテオミクス分析により、図8左上のボルケーノプロットにて黒丸で示すように、心臓において最大の有意な変化を示すタンパク質はHint1であった。
また、図8左下に示すように、CAG-Caren Tgマウス群の心臓におけるHint1タンパク質レベルは、野生型マウス群と比較して有意に減少した。
また、図8右に示すように、TAC手術を施した野生型マウス群とCAG-Caren Tgマウス群について、心臓組織におけるATMの活性化の度合いを比較すると、CAG-Caren Tgマウス群は野生型マウス群に比してATMの活性化が抑制されていることが示された。
これらのことから、マウスCarenはHint1の翻訳を抑制することで、DNA損傷応答の活性化(ATMの活性化)を抑制することが示された。
〔8.Hint1タンパク質の増加がミトコンドリアに与える影響〕
Hint1がミトコンドリア機能の調節に関連するか否かについて判断すべく、ミトコンドリアのエネルギーを評価するために、ラットH9c2心筋細胞を用い、HAタグ付きマウスHint1(H9c2- Hint1)を過剰発現する細胞株(以下、H9c2-Hint1細胞ともいう。)を確立した。
次に、染色強度がミトコンドリア膜電位(MOMP)に依存する色素(Tetramethylrhodamine Methyl Ester Perchlorate : TMRM)を用いてH9c2-Hint1細胞のミトコンドリア膜電位を調べたところ、図9の左図にて示すように、H9c2-Hint1細胞の膜電位は対照細胞(H9c2-mock細胞)と比較して有意に減少していることが確認された。
次に、Hint1を過剰発現している心筋細胞のミトコンドリア呼吸能力を分析するために、SeahorseXF細胞外フラックスアナライザーを使用して、細胞ミトストレステストを行った。
その結果、図9の右上及び右下の各グラフに示すようにH9c2-Hint1細胞のミトコンドリアでは、H9c2-mock細胞と比較して基礎呼吸量、最大呼吸量、エネルギー産生機能(ATP産生)及び予備呼吸量の減少が観察された。
これらのことから、心筋細胞におけるHint1タンパク質の増加は、ミトコンドリアの機能不全を引き起こし、心機能障害を加速する(心不全を憎悪させる)ことが示された。
〔9.本実施形態に係る治療剤の調製〕
次に、野生型マウスに対するTAC手術により機能不全が誘発された心筋細胞においてマウスCarenの発現が与える影響を調べるべく、本実施形態に係る治療剤の調製を行った。
ここでは、配列番号2に示したヌクレオチド配列を有するマウスCarenを心臓(心筋細胞)にて部位選択的に発現させる血清型6のアデノ随伴ウイルス(Adeno Associated Virus: AAV)ベクターを作成し、このウイルスベクター含有液を本実施形態に係る治療剤とした。付言すれば、有作用lncRNAであり本剤RNAでもあるマウスCarenを発現可能であり、配列番号2に示すマウスCarenのcDNAと同じヌクレオチド配列を備えたDNAを含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤を調製した。
具体的には、まずAAVプラスミドを構築するために、マウスCarenまたはGFP(コントロール)をコードするcDNAをpAAV-CMVベクター(Takara BioInc)にそれぞれクローニングした。
次に、AAV pro Purification Kit(Takara Bio Inc)を使用し、同キットの通常の取り扱い手順に従って組換えAAV6ベクターを得た。
得られたマウスCaren組換えAAV6ベクターは、1匹のマウスに対し静脈内注射を行うにあたって適切な量(例えば、100~200μL)の所定の溶媒(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)あたり3×1010vg~1×1012vg、より好ましくは1×1011vg~1×1012vgとなる濃度に調整し、本実施形態に係る治療剤Aとした。また同様に、GFP組換えAAV6ベクターについても溶液を調製し、比較用注射剤とした。なお、前述したように本実施形態に係る治療剤は、Carenの起源となる生物種や治療剤の投与対象である生物種は限定されない。したがって、本実施形態に係る治療剤に含まれる核酸(例えば、ここでは組換えAAV6ベクターにパッケージングされたマウスCaren cDNA。)の量やコピー数であったり、治療剤の投与量は、採用したCarenの由来や期待する効果、目的等に応じて適宜調整することができる。
また付言すれば、本願の要部は先述の如きであり、治療剤に含まれる核酸の濃度や剤形はいかようにも変更可能である。ただし、出願人が本願を権利化するにあたりこれらの点について発明を限定することも妨げない。これらのことは、後述のヒトCarenやそれ以外の生物に由来する未知のCarenも同様である。
〔10.本実施形態に係る治療剤の投与〕
次に、TAC手術により心機能不全が誘発された野生型マウスの心筋細胞において、本実施形態に係る治療剤Aを投与し、心筋細胞でマウスCarenを部位選択的に補充し治療を行った場合の影響を調べた。
まず、TAC手術前とTAC手術1週間経過後との左室内径短縮率(%FS)を比較から、TAC手術を施した野生型のマウスに心機能の低下が確認された。
次に、TAC手術が施された野生型マウスを3つのグループに分け、本実施形態に係る治療剤A(マウスあたり3×1010vg~1×1012vg)、比較用注射剤(マウスあたり3×1010vg~1×1012vg)、静脈注射のコントロールとして同等の用量のPBS、を各グループにそれぞれ静脈注射した(図10上図参照)。
その結果、図10の右下のグラフに示すように、比較用注射剤やPBSを投与したグループ(Carenの量に影響しないウイルスを投与した群、PBSを投与した群)では、左室内径短縮率が低下し左心室拡張が見られた。
一方、本実施形態に係る治療剤Aを投与したグループ(Carenを補充できるウイルスを投与した群)では、左室内径短縮率の大きな低下は抑制され、左心室拡張の発生の減弱が見られた。
これらのことから、本実施形態に係る治療剤Aは、心筋細胞でマウスCarenを部位選択的に補充し、心不全の憎悪を抑制できることが示された。
〔11.本実施形態に係る治療剤の投与に伴うDNA損傷に対する応答の抑制作用とミトコンドリアの機能低下の改善作用への影響〕
次に、本実施形態に係る治療剤Aを投与した際のDNA損傷に対する応答の抑制作用とミトコンドリアの機能低下の改善作用について検討を行った。
まず図11の左上、ウエスタンブロットの結果とグラフにて示すように、本実施形態に係る治療剤Aを投与(マウスCaren組換えAAV6ベクターを注射)したマウスは、比較用注射剤(AAV6-GFP)を注射したマウスと比較して、Hint1タンパク質レベルの有意な低下が認められた。
また、図11の右上、ウエスタンブロットの結果とグラフにて示すように、TAC手術によるATM活性化は、比較用注射剤(AAV6-GFP)を注射したTACマウスと比較して、本実施形態に係る治療剤A(マウスCaren組換えAAV6ベクター)を注射したTACマウスの心臓でも有意に減少した。
また、ミトコンドリアの機能低下の改善作用に関し、図11の左下及び右下に示すように、心臓組織におけるミトコンドリア生合成とOXPHOSで機能するいくつかの遺伝子の発現の増加を示した
これらのことから、本実施形態に係る治療剤Aは、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤であることが示された。
〔12.ヒトCarenの探索〕
次に、本発明に係る治療剤の他の実施形態として、ヒトCarenを発現する治療剤Bの調製を行った。
ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の有効成分として使用されるRNA又は同RNAの発現の鋳型となるDNAの設計のためのヌクレオチド配列探索源として、ヒトの4番染色体のSAP30遺伝子とHMGB2遺伝子との間の領域をターゲットとし、当該領域からSAP30-DT遺伝子(配列番号4)に着目した(図12の上図及び中図参照)。
また、図12の左下図に示すように、SAP30-DT遺伝子より転写される6つの転写産物をヒトCaren候補転写産物とし、これらについてヒトiPS由来心筋細胞における発現量を確認したところ、図12の右下図に示すように、そのうちの配列番号1にて表される転写産物(AC097534.2、以下、トランスクリプト1ともいう。)とTCONS_00006646で表される転写産物(以下、トランスクリプト3ともいう。)が発現していることが確認された。
次に、これら2つの転写産物のうちトランスクリプト1に着目し、ヒト心不全患者の心臓組織におけるトランスクリプト1と左心室機能障害のマーカー(心不全マーカー)であるNPPBの発現量との関係について調べたところ、図13の左図に示すように、トランスクリプト1の発現は心不全病態と逆相関することが示された。
また、ヒトiPSC-CM(ヒトiPS細胞由来心筋細胞)に対しイソプロテレノール(Iso)で処理することでストレスに暴露させた際のトランスクリプト1の発現を調べたところ、図13の中図に示すように、暴露しなかったコントロール細胞と比較して転写量が大幅に低下していることが明らかとなった。
また、トランスクリプト1に特異的な2つのsiRNA(siLincRT1-AおよびsiLincRT1-B)またはネガティブコントロールsiRNA(siScramble)のいずれかをヒトiPSC-CMに形質導入し、SeahorseXF細胞外フラックスアナライザーを使用して細胞ミトストレステストによりミトコンドリア呼吸能を分析した。
その結果、トランスクリプト1がノックダウンされたiPSC-CMの基礎呼吸レベル(図13の右図に示す)および最大呼吸レベルとATP産生は、対照細胞で見られる値と比較して有意に減少した。
このように、心不全病態と逆相関し、その発現低下はミトコンドリア機能低下をもたらすトランスクリプト1は、ヒトCarenといえる。なお、図示は割愛するが、本発明者らの研究により、トランスクリプト1は、ミトコンドリア改善作用や損傷応答抑制作用も有していることが明らかとなっており、この点からもトランスクリプト1はヒトCarenであるといえる。
〔13.ヒトCarenを発現する治療剤Bの調製〕
次に、前述の〔9.本実施形態に係る治療剤の調製〕と同様の手法により、本実施形態に係る治療剤Bの調製を行った。
すなわち、配列番号1に示したヌクレオチド配列を有するヒトCarenを心臓(心筋細胞)にて部位選択的に発現させる血清型6のアデノ随伴ウイルス(Adeno Associated Virus: AAV)ベクターを作成し、このウイルスベクター含有液を本実施形態に係る治療剤Bとした。
得られたヒトCaren組換えAAV6ベクターは、1匹のマウスに対し静脈内注射を行うにあたって適切な量(例えば、100~200μL)の所定の溶媒(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)あたり3×1010vg~1×1012vg、より好ましくは1×1011vg~1×1012vgとなる濃度に調整し、本実施形態に係る治療剤Bとした。その結果、図示は割愛するが、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療できることが示された。
〔14.本実施形態に係る治療剤Bの投与に伴う心臓や肺への影響〕
次に、野生型のマウスに対し、ヒトCarenを発現するよう改変されたマウス(以下、ヒトCaren Tgマウスともいう。)では、TAC手術後の心不全の発症においてどのような違いが生じるかについて確認を行った。
その結果、図14に示すように、TAC手術後のヒトCaren Tgマウスにおける左室拡張末期径(LVDd)及び収縮末期径(LVDs)は野生型に比して低下し、左室内径短縮率(%FS)は野生型に比して上昇し、体重は野生型と変わらず、心重量と体重の比及び肺重量と体重の比は、野生型に比して低下した。
このように、ヒトCarenがマウスにおいて心不全に対する抵抗性を示すのは極めて興味深く、ある種に由来するCarenは種を超えて機能する可能性も大いにあり得ることが示された。
上述してきたように、本実施形態に係る治療剤では、1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とHigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを次の(a)~(d)、すなわち(a)前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するRNAヌクレオチド配列、(b)(a)と少なくとも90%の相同性を有するRNAヌクレオチド配列、(c)(a)又は(b)に相補的なRNAヌクレオチド配列、(d)(a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているDNAヌクレオチド配列、のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸に基づいて導入又は発現させる、前記核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤としたため、ミトコンドリアの機能低下を改善しつつ、併せてDNA損傷に対する応答を抑制することにより、ミトコンドリアの機能不全に由来する疾患の憎悪を抑制し治療することのできる治療剤を提供することができる。
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
例えば、上述してきた本実施形態に係る治療剤は、有作用lncRNAと高い相同性を有する本剤RNAを導入又は発現可能な所定のヌクレオチド配列を有する核酸を含む治療剤について主に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、生体内において有作用lncRNAの転写量を増大できるような成分、発現促進成分を有効成分として含有する治療剤とすることもできるのは勿論である。

Claims (11)

  1. 1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とHigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物由来の前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを下記(a)~(d)のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸に基づいて導入又は発現させる、前記核酸を含むミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤。
    (a) 前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するRNAヌクレオチド配列
    (b) (a)と少なくとも90%の相同性を有するRNAヌクレオチド配列
    (c) (a)又は(b)に相補的なRNAヌクレオチド配列
    (d) (a)~(c)のいずれかにおいてUがTにより置き換えられているDNAヌクレオチド配列
  2. 前記生物はヒトであって、前記lncRNA遺伝子は4番染色体のSAP30遺伝子とHMGB2遺伝子との間に存在するSAP30-DT遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の治療剤。
  3. 前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号1に示すヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の治療剤。
  4. 前記生物はマウスであって、前記lncRNA遺伝子は8番染色体のSap30遺伝子とHmgb2遺伝子との間に存在する2500002B13Rik遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の治療剤。
  5. 前記lncRNA遺伝子の転写産物は、配列番号2に示すヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の治療剤。
  6. 前記lncRNA遺伝子の転写産物が有するヌクレオチド配列と少なくとも90%以上の相同性を備えたRNAを部位選択的に発現可能に前記(a)~(d)のいずれかのヌクレオチド配列を有する核酸をベクターに組み込んでなる請求項1~5いずれか1項に記載の治療剤。
  7. 前記選択的に発現可能な部位は非分裂性細胞であることを特徴とする請求項6に記載の治療剤。
  8. 前記非分裂性細胞は心筋細胞であることを特徴とする請求項7に記載の治療剤。
  9. 1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とHigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物のための、前記lncRNA遺伝子の転写産物の発現促進成分を有効成分として含有するミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤。
  10. 前記ミトコンドリア機能不全に由来する疾患は心不全であることを特徴とする請求項1~9に記載の治療剤。
  11. 1以上のlncRNA遺伝子を介してSin3A associated protein 30遺伝子とHigh-mobility group box 2遺伝子とがコーディング領域を備えた遺伝子として隣り合う構造を備えたゲノムを有する生物における前記lncRNA遺伝子の転写産物の、ミトコンドリア機能不全に由来する疾患の治療剤の有効成分として使用されるRNA又は同RNAの発現の鋳型となるDNAの設計のためのヌクレオチド配列探索源としての使用。
JP2021086342A 2021-05-21 2021-05-21 治療剤 Pending JP2022179090A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021086342A JP2022179090A (ja) 2021-05-21 2021-05-21 治療剤

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021086342A JP2022179090A (ja) 2021-05-21 2021-05-21 治療剤

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022179090A true JP2022179090A (ja) 2022-12-02

Family

ID=84239477

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021086342A Pending JP2022179090A (ja) 2021-05-21 2021-05-21 治療剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022179090A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Xing et al. miR-26a-5p protects against myocardial ischemia/reperfusion injury by regulating the PTEN/PI3K/AKT signaling pathway
Mao et al. AAV delivery of wild-type rhodopsin preserves retinal function in a mouse model of autosomal dominant retinitis pigmentosa
Mearini et al. Mybpc3 gene therapy for neonatal cardiomyopathy enables long-term disease prevention in mice
Bongianino et al. Gene therapy to treat cardiac arrhythmias
DK2694652T3 (en) MEDICINE FOR LIVER REGENERATION AND FOR THE TREATMENT OF LIVER FAILURE
Cai et al. Induction of SENP1 in myocardium contributes to abnormities of mitochondria and cardiomyopathy
EP3378484B1 (en) Ccn5 protein for treatment of a heart disease associated with duchenne muscular dystrophy
US20200308582A1 (en) Kcnk3-based gene therapy of cardiac arrhythmia
Abdullah et al. Targeted deletion of T‐cell S1P receptor 1 ameliorates cardiac fibrosis in streptozotocin‐induced diabetic mice
JP2015503924A (ja) 遺伝子導入のための方法及び組成物
Zhu et al. miR-340-5p mediates cardiomyocyte oxidative stress in diabetes-induced cardiac dysfunction by targeting Mcl-1
Hui et al. FBXW5 acts as a negative regulator of pathological cardiac hypertrophy by decreasing the TAK1 signaling to pro-hypertrophic members of the MAPK signaling pathway
Pan et al. Zinc-finger protein 418 overexpression protects against cardiac hypertrophy and fibrosis
Liu et al. RNAi-mediated gene silencing of mutant myotilin improves myopathy in LGMD1A mice
JP2022179090A (ja) 治療剤
Zhong et al. Ciliary neurotrophic factor overexpression protects the heart against pathological remodelling in angiotensin II-infused mice
ES2432082T3 (es) Uso de la variante de corte y empalme MGF del factor de crecimiento I similar a la insulina para la prevención del daño miocárdico
Scimia et al. Gene therapy for heart disease: molecular targets, vectors and modes of delivery to myocardium
Xiang et al. LITAF acts as a novel regulator for pathological cardiac hypertrophy
KR20170001021A (ko) 근감소증 (Sarcopenia) 동물 모델과 그 제조 방법 및 이를 이용한 근감소증 치료제의 스크리닝 방법
US11235073B2 (en) Method for treating or preventing heart failure
US10272135B2 (en) Apolipoprotein O and fragments thereof for inducing apoptosis in a cancerous cell
WO2021095809A1 (ja) 心不全に応答するエンハンサーポリヌクレオチド、及び前記エンハンサーポリヌクレオチドを含む発現ベクター
CN114569724B (zh) Zfp36基因在制备抗高血压药物中的应用
WO2023131345A1 (zh) 用于x染色体连锁肾上腺脑白质营养不良的基因治疗药物和方法

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20210614

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240510