JP2022169926A - 大腸癌の診断方法 - Google Patents

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幸博 赤尾
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Abstract

【課題】患者個体の違いに影響され難く、miRNAの発現レベルの経時的な変化をも考慮した、信頼性に優れた大腸癌の診断方法を提供すること。【解決手段】本発明の大腸癌の診断方法は、患者から経時的に採取した血液中における、大腸癌のバイオマーカーとなる少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定する測定工程と、前記miRNAの発現レベルの経時的な変化量を求める変化量算出工程と、前記変化量から大腸癌の悪性度及び/又は予後の診断を行う診断工程とを含むことを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明はmicroRNA(以下「miRNA」と略す)をバイオマーカーとして利用する大腸癌の診断方法に関する。さらに詳しくは、大腸癌のバイオマーカーとなるmiRNAの経時変化を測定することにより、大腸癌の現況及び今後の予測をより的確に診断することができる大腸癌の診断方法である。
日本における大腸癌の罹患者数は癌の中で第1位であり、死亡者数においても第2位である(2017年)。大腸癌に対しては、すでに多剤併用化学療法や分子標的治療薬が開発されている。また、免疫チェックポイント阻害薬の登場により、さらなる予後の改善が今後期待されている。大腸癌における死亡率を低下させるためには病態に応じて迅速かつ効率的に治療レジメンを変更していくことが今後ますます重要になってくると思われる。このため、可能な限り早く正確に癌の再発や進行を診断できるバイオマーカーを用いた診断方法の開発が急務である。
大腸癌の早期再発診断に関しては、患者から採取した血液中のmiRNAをバイオマーカーとして利用する診断法が注目されている(例えば特許文献1及び特許文献2)。この診断方法によれば、非侵襲的に大腸癌の病態を評価することが可能となり、患者にとっての負担が大幅に軽減されるという利点を有している。
特に、miRNAのMIR-21は発癌と悪性腫瘍の進行に関与する非常によく知られた癌関連miRNAの1つである。その発現量は、大腸癌、肺癌、膠芽腫、肝細胞癌、胃癌など、多くの癌種で顕著に高発現していることが知られている。
特表2020‐527047号公報 特許2016‐158525号公報
上記従来の大腸癌の診断方法では、血液中のmiRNAの発現レベルを健常者と癌患者の単なる比較によって診断を行っている。しかし、miRNAの発現レベルは患者個体の違いによって大きく異なるため、基準値の設定が困難であった。また、血液中のmiRNA発現量は1時点のみの測定値をパラメーターとして選択しており、時間の流れに従って追跡調査を行うという、いわゆる「前向き」の研究手法の観点が欠けていた。このため、大腸癌の患者におけるmiRNAの発現レベルの経時的変化が病気の予後とどのように関わるかについて何らの考慮もなされていなかった。このため、大腸癌の再発や増悪についての診断結果の信頼性に問題があった。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、患者個体の違いに影響され難く、血液中のmiRNAの発現レベルの経時的な変化をも考慮した、前向きで信頼性に優れた大腸癌の診断方法を提供することを解決すべき課題としている。
本発明者らは、上記課題を解決するために、大腸癌のバイオマーカーとして用いられている血液中のmiRNAの発現レベルの経時変化に注目した。その結果、miRNAの発現レベルの経時変化と、大腸癌の再発や増悪との間に相関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の大腸癌の診断方法は、患者から経時的に採取した血液中における、大腸癌のバイオマーカーとなる少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定する測定工程と、前記miRNAの発現レベルの経時的な変化量を求める変化量算出工程と、前記変化量から大腸癌の悪性度及び/又は予後の診断を行う診断工程とを含むことを特徴とする。
本発明の大腸癌の診断方法では、患者から経時的に採取した血液中における、大腸癌のバイオマーカーとなる少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定し(測定工程)、miRNAの発現レベルの経時的な変化量を求める(変化量算出工程)。発明者らの試験結果によれば、大腸癌のバイオマーカーとなるmiRNAの発現レベルの経時的な変化量は、大腸癌の悪性度や予後との間に密接な相関関係を有する。この診断方法においては、大腸癌患者自身のバイオマーカーの経時変化から大腸癌の悪性度及び/又は予後の診断を行うため、患者個体の違いに影響され難く、信頼性に優れたものとなる。
なお、大腸癌のバイオマーカーとなるmiRNAの発現レベルの経時的な変化量を求めるために、内部標準となるmiRNA(例えばMIR16)をコントロールとして用い、それとの差を求める方法によって濃度を求めてもよい。こうであれば、miRNAの分解の程度や血漿検体の品質をキャンセルすることができ、真の変化量との誤差を減らすことができるからである。
経時的に測定される血液中のmiRNAはMIR-21及び/又はMIR-29aであることが好ましい。発明者らの試験結果によれば、大腸癌のバイオマーカーとして、これらのmiRNAは、大腸癌の悪性度や予後との間に特に顕著な相関関係を有するからである。
測定工程では大腸癌の手術前及び手術後における血液中のmiRNAの発現レベルを測定することができる。手術前後のmiRNAの発現レベルを測定することにより、手術によって大腸癌の再発の可能性や、予後の転移などの予測を行うことができる。このため、病態に応じて迅速かつ適切に治療レジメンを決めることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明において測定の対象となる大腸癌のバイオマーカーは、miRNAであって、その発現レベルの経時変化と、大腸癌の悪性度や予後とが相関関係を示すものであれば用いることができる。このようなmiRNAとしては、例えばMIR-21やMIR-29aが挙げられる。血漿中循環型のMIR-21は、大腸癌に関して広く研究されているおり、最も代表的なmiRNAバイオマーカーである。またMIR-29aも大腸癌に関してよく知られたmiRNAバイオマーカーである。
本発明の大腸癌の診断方法の一態様では、まず測定工程として被験者から経時的に血液を採取し、血液から血漿(あるいは血清)を分離し、MIR-21やMIR-29a等の大腸癌のバイオマーカーとなる少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定する。miRNAの発現レベルの測定方法については特に限定はされないが、例えばPCR法、マイクロRNAアレーを用いた方法、ノーザンブロット法等を採用することができる。
被験者は特に限定されない。即ち、大腸癌についての診断が必要な者に対して広く本発明を適用することができる。ここでの「大腸癌についての診断が必要な者」には大腸癌の患者とそれ以外の者が含まれる。前者についての診断結果はより適切な治療方針の決定に役立ち、治療効果の向上、患者のQOL(Quality of Life、生活の質)の向上を促す。特に、大腸癌患者が癌組織の除去手術や放射線治療や抗がん剤による治療を行う場合において、治療前及び治療後一定期間を経た時点でmiRNAの測定を行い、その変化量から大腸癌の悪性度及び/又は予後の診断をより的確に行うことができる。
一方、大腸癌の患者以外の者についての判定結果は、大腸癌の予防や早期診断に役立つ。
miRNAの発現レベルの変化量については、(所定時間経過後における測定対象のmiRNA発現量)-(当初における測定対象のmiRNA発現量)で評価をすることができる。例えば手術前後におけるmiRNA発現量の差で評価を行うことにより、手術後の悪性度や予後における病態変化の予測を行うことができ、再手術や抗がん剤治療の必要性等について治療方針を的確に計画することができる。測定間の経過時間については特に限定はされないが、大腸癌の悪性度や予後の診断をより的確にするために1か月以上経過することが好ましく、最も好ましいのは6か月以上経過することである。
本発明の実施に必要な事柄は、細胞工学、生理学、医学、薬学、有機化学、生化学、遺伝子工学等の分野において、従来技術に基づく当業者の設計事項の範囲として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
<実施例1>
(被験者)
被験者は2019年7月から2020年3月に岐阜大学附属病院において登録された103名の大腸癌患者のうち、根治切除術を施行された92名である。本試験において登録された患者は以下の1)~6)の基準をすべて満たす症例とした。
1)癌関連疾患の既往歴を有していない。2)同時性重複癌を有さない。3)切除前に放射線治療や化学療法を受けていない。4)手術によって大腸癌の病理診断が確定している。5)家族性大腸ポリポーシスや遺伝性非ポリポーシス大腸癌ではない。6)炎症性腸疾患ではない。
本試験はヘルシンキ宣言に則って実施され、国立大学法人岐阜大学(現在の国立大学法人東海国立大学機構)の倫理委員会による承認を受けている(承認番号:2019-074)。本研究は前向き観察研究であり、潜在的に特定可能な患者情報を含んでいることから、登録された患者から同意を得て実施された。施設内審査委員会は、本前向き研究に対して倫理的承認を与えた。
(治療と切除後評価)
本試験においては、日本大腸癌研究会の大腸癌治療ガイドラインに準じて原則StageIIIと高リスクStageIIの症例を術後6か月間の補助化学療法の適応とした。高リスクStageII例とは1)腫瘍進達度がpT4(漿膜外浸潤)、2)初期症状が腸管穿孔もしくは閉塞である、3)郭清されたリンパ節の個数が12個未満、4)組織学的診断において高度脈管、リンパ管浸潤陽性である、5)低分化型腺癌である。
根治切除後再発の評価については術後6か月時点で撮影された造影CT検査に基づいて行った。
(検体の取り扱い)
miRNA測定用の末梢血検体は術前(Pre)、術後7日目(POD7)、術後1か月(POM1)、そして術後6か月(POM6)にそれぞれの登録患者から回収した。抗凝固剤であるEDTAにて処理された採血チューブに末梢血4mlを採取し、それを4℃・3,000rpmで遠心分離することで血漿を抽出した。得られた血漿は2.0mlマイクロチューブに分注し、miRNA測定時まで-80℃で凍結保存した。miRNAの分解を最小限に抑えるために、凍結融解したサンプルの使用は1回のみとした。
(血漿検体からのmiRNA抽出)
凍結血漿からのmiRNAは、NucleoSpin(登録商標)microRNA Plasma kit(MACHEREY-NAGEL、Duren、Deuschland)を使用して標準プロトコルに従って抽出した。300 μlの凍結血漿サンプルを解凍し、これを11,000×gで3分間遠心分離することで残留細胞破片の除去を行った。その後抽出キットの試薬を使用して上清中のタンパク質を沈殿させ、遠心分離によって除去した。イソプロパノールで結合条件を調整した後、miRNAをmiRNA回収カラムに結合させた。そして最終的に抽出したmiRNAを30 μlのRNase free水に溶出させた。得られたmiRNAの品質の評価は、血漿中の循環型MIR16の発現量を測定し、これを内部標準とした。MIR16は、細胞中RNAにおけるリボソームRNAと同様に、血漿中に豊富かつ安定して存在することが知られており、MIR16発現量はmiRNAの分解の程度や血漿検体の品質を反映していると考えられている。こうして精製されたmiRNAはPCRの前にRNA分解を防ぐために、直ちに次の逆転写(RT)プロセスに移行した。
(RT-qPCR法によるmiRNAの発現量の測定)
miRNAの発現量を測定するために、miRNA逆転写-定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)を実施した。すべてのRNAは、TaqMan(登録商標)AdvancedmiRNA cDNA Synthesis kit(AppliedBiosystems(登録商標)、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)を使用して逆転写処理を行った。標準プロトコルに従って、RT-qPCRはThermal cycler Dice Real Time System II(TaKaRa、大津、日本)を用いて実施した。RT-qPCRのプライマーとして、TaqMan(登録商標) Advanced miR Assays (Applied Biosystems(登録商標))のうち hsa-MIR-21-5p (Assay ID 478587_mir)とMIR-16 (Assay ID 477860_mir)を用いた。これらのプライマーの配列を以下に記載する。hsa-MIR-21-5p:5'UAGCUUAUCAGACUGAUGUUGA3'(配列番号1)、MIR-16 :5'UAGCAGCACGUAAAUAUUGGCG3’ (配列番号4)。標準的なプロトコル従って、THUNDERBIRD Probe qPCR Mix(東洋紡、大阪、日本)を用いてPCR法による増幅を行った。
閾値サイクル(Ct)は、手動の閾値決定の変動と、サンプルおよび分析におけるバックグラウンド蛍光の違いによるエラーを最小限に抑えるために二次微分最大法(second derivative maximum method)による自動計算によって算出した。Ct値は、増幅曲線の対数線形位相の開始点である蛍光加速度が最大となる時点のサイクルで識別した。MIR16を血漿検体の内在control(内部標準)として選択した。その理由は、われわれの先行研究においてMIR16が血漿中miRNAの標準化においてもっとも適したmiRNAであったためである。従ってMIR-21はMIR16による標準化を行い発現量を測定した上で、-ΔΔ法を用いてその変化量を算出した。以下に計算式を記載する。
Figure 2022169926000002
(臨床病理学的特徴の調査)
性別、年齢、BMI、原発性大腸癌の腫瘍局在、術前後の腫瘍マーカー;CEA(正常上限値:5ng/ml)、CA19-9(正常上限値:37ng/ml)、UICC TNM分類(第8版)、リンパ管浸潤、静脈浸潤など患者情報の収集を行った。すべての組織学的特徴に関する記載はは大腸癌取り扱い規約(英語版第3版)に準じた。
(統計解析)
群間比較については、独立した群間ではMann-Whitney’s U検定を用いた。そして対応のある2群間の比較についてはWilcoxon signed-rank検定を用いた。
血漿中MIR-21変化量と他の臨床パラメーターとの相関関係の多変量解析についてはSpearman’s rank correlation coefficientを用いた。
MIR-21変化量を用いた再発診断能の評価に対してはROC解析におけるAUC値の算出を基に行った。ROC解析における感度・特異度の算出に用いるcut off値に関してはYouden indexを選択した。
多変量解析におけるオッズ比と95%信頼区間の算出においてCOX回帰比例ハザードモデルを使用した。単変量解析をそれぞれの項目について行い、p値<0.10であった項目を選択して多変量解析を行った。p値については0.05未満である場合を有意差ありと判定した。すべての統計解析はJMP (SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を用いて行った。
-結 果-
実施例における試験のフローチャートを図1に示す 。
(患者背景)
根治的切除群における患者と原発性大腸癌の特徴を表1に示す。
Figure 2022169926000003
コホート集団は男性53名、女性40名によって構成されている。年齢は42~86歳で、中央値は70歳であった。原発性大腸癌は45例(48.9%)が結腸癌で、47例(51.1%)が直腸癌であった。病理学的病期はStageIが35例(38.1%)、StageIIが27例(29.3%)、そしてStageIIIが30例(32.6%)であった。2019年の本邦におけるがん統計の結果と比較して、登録患者の性別、年齢、腫瘍局在、そして病理学的病期の分布は概ね合致していた。術後6か月時点における根治切除後は10例(10.9%)にきたした。
(血漿中MIR-21発現量と根治切除後再発の相関関係について)
図2(a)(術後7日における結果)、図2(b)(術後1か月における結果)及び図2(c)(術後6か月における結果)に示すように、根治切除後再発群において、血漿中のMIR-21発現量は術後1か月と術後6か月の時点で術前と比較して有意な増加を認めた(術後7日目: p= 0.22、術後1か月:p= 0.04、術後6か月: p< 0.01)。一方、非再発群においては術前と比較して術後の血漿中MIR-21発現量は有意差を認めなかった(術後7日目: p= 0.54、術後1か月: p= 0.30、術後6か月: p= 0.34)。
これらの結果に基づき、異なる術後3つの時点におけるMIR-21発現の術前からの変化量に注目して解析を行った。その結果、図2(d)、(e)、(f)に示すように、再発群における術後6か月における術前からのMIR-21変化量は非再発群と比較して有意に高値であることを見出した(術後7日目: p= 0.31、術後1か月: p= 0.07、術後6か月: p< 0.01)。
(血漿中MIR-21発現の変化量とその他の臨床パラメーターとの相関関係について)
血漿中miRNA発現量と、それ以外のさまざまな臨床パラメーターとの相関関係を調べるため、血漿中MIR-21の変化量とさまざまなパラメーター、すなわち年齢、BMI、そして血液検査から得られるデータとして血球数(白血球、赤血球)、凝固能(血小板、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間)、腎機能(尿素窒素、クレアチニン)、肝機能(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルブミン)、炎症反応(C反応性タンパク)との相関関係を解析した。血液データから得られる項目については、MIR-21変化量と同様に術前値と術後値の差を相関関係解析の対象として用いた。
その結果、術後BUN変化量のみが血漿中MIR-21変化量と有意な相関関係を示した(術後1か月:p=0.02、術後6か月:p=0.03)。しかしながら相関係数はどちらも小さく(術後1か月、6か月ともにρ=-0.22)、術後BUN変化量が血漿中MIR-21変化量に与える影響は比較的小さく臨床的には大きな問題にならないと考えられた(表2参照)。
Figure 2022169926000004
(血漿中MIR-21変化量の根治切除後再発に対する診断能について)
根治切除後再発に対する診断能を評価するために、血漿中MIR-21変化量と現行の腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)に関してROC解析を行った。
その結果、図3a、bに示すように、術後6か月時点において、血漿中MIR-21変化量とCEA値はそれぞれAUC値0.802、0.736で再発診断が可能であった。血漿中MIR-21変化量はcut off値を+0.54に設定した場合、感度90.0%、特異度68.5%であった。
ROC組み合わせ解析の結果、血漿中MIR-21変化量とCEA値の組み合わせにより、AUC値は0.811とわずかながら増加し、感度90.0%、特異度68.1%であった(図3c参照)。
同様の解析を術後1か月の時点で行った。ROC解析の結果、血漿中MIR-21変化量のみがAUC値0.674で再発診断が可能であった(図4a参照)。cut off値を0.54に設定した場合感度70.0%、特異度64.6%となった。算出されたcut off値は術後6か月と同じ+0.54であったが、AUC値、感度、そして特異度すべてが術後6か月の方が優れているという結果となった。しかしながら、術後1か月時点においては術後6か月時点での解析結果とは異なり、現行の腫瘍マーカーの組み合わせ(CEAとCA19-9)だけでなくMIR-21とCEAの組み合わせもMIR-21単独での診断能をAUC値と感度に関しては上回ることができなかった(図4c、4d参照)。
(根治切除後再発における血漿中MIR-21変化量に対するCOX解析について)
根治切除後再発に対する単変量・多変量解析の結果をそれぞれ表3(術後6か月時点)及び表4(術後1か月時点)に示す。解析した項目は、性別、年齢、腫瘍局在、病理学的腫瘍深達度、病理学的リンパ節転移、組織学的静脈浸潤、組織学的リンパ管浸潤、術後補助化学療法の有無、術後CEA値上昇の有無、術後CA19-9値上昇の有無、そして術後血漿中MIR-21変化量である。術後血漿中MIR-21変化量についてはROC解析によって算出されたcut off値(+0.54)を用いて(上昇/正常)の2群に分類した。
術後6か月、術後1か月時点における単変量解析の結果、どちらも病理学的腫瘍深達度、病理学的リンパ節転移、組織学的脈管浸潤、組織学的リンパ管浸潤、そして血漿中MIR-21変化量は有意差を認めた。しかしながら、多変量解析の結果血漿中MIR-21変化量のみが有意差を示した{術後6か月: p<0.01、 オッズ比(95%信頼区間) =15.09 (2.20-323.04)、 術後1か月: p=0.03、 オッズ比(95%信頼区間) =5.00 (1.16-26.90)}(表3及び表4参照)。
Figure 2022169926000005
Figure 2022169926000006
-結 論-
実施例1の結果から次のことが明らかとなった。
前向きに登録された患者から回収した術前から術後にかけての92組の血漿検体ペアを解析することにより、術前からの血漿中MIR-21の術後における変化量が、根治切除後の再発診断のみならず早期再発予測に有効な非侵襲的バイオマーカーとして利用できることが分かった。
-ΔΔCt法によって計算された血漿中MIR-21発現の変化量をパラメーターとすることにより、腫瘍の再発を予測および診断するためにより正確な結果を与えることが分かった。
さらには、血漿中MIR-21発現の変化量は手術前と手術後の間の他の臨床パラメーターの変化による影響をほとんど受けないという利点があった。
また、血漿中MIR-21発現の変化量は現行の腫瘍マーカーとして推奨されている血中CEA値に劣ることなく再発を診断することが可能であった。CEA値による診断は感度が比較的低く、再発診断の適用性に関しては未だに論争がなされている。治癒的切除後の再発を診断するためのCEA値測定に関するランダム化比較試験によると、70%を超える感度を達成した閾値の設定はできなかったと報告されている。さらに、術後1年時点でのCEA値のAUCはわずか0.623であった。CEAに関するこれらの報告された結果は、実施例1における術後6か月時点での血漿中MIR-21発現の変化量の診断能より劣り(感度:90%、AUC:0.802)、さらに術後1か月時点での診断能にも劣るものであった(感度:70.0%、AUC:0.674)。
CEAをバイオマーカーとした大腸癌の診断方法では、CEA値は閾値を低く設定したとしても、単独で使用するには感度が不十分であると報告されている。このため、再発症例の見逃しを避けるためには、別の診断モダリティとの組み合わせることが不可欠であることを示唆している。上記実施例1の試験結果では、CEAは、CA19-9ではなく血漿中MIR-21との組み合わせにより診断能力の向上を示している。 現行の腫瘍マーカーの診断精度を改善することを目的とした血漿中MIR-21の臨床使用は実現可能であり、大腸癌治療の効率化に寄与すると考えられる。
また、血漿中MIR-21発現の変化量は術後1か月の時点で再発を予測できる結果となっており、この点においては、現在利用されている腫瘍マーカーよりも優れている。このことは、補助化学療法の適応基準の1つとして、根治的切除後の再発率の低下に寄与すると考えられる。
<実施例2及び比較例1>
実施例2では測定するmiRNAとして血漿中のMIR-29aを選択し、実施例1と同様の試験を行った。
比較例1では測定するmiRNAとして血漿中のMIR-92aを選択し、実施例1と同様の試験を行った。
なお、実施例2において用いたプライマー(hsa-hsa-MIR29a-3p-3p)の配列は5’UAGCACCAUCUGAAAUCGGUUA3’(配列番号2)であり、比較例1において用いたプライマー(hsa-hsa-MIR92a-3p-3p)の配列は5’UAUUGCACUUGUCCCGGCCUGU3’(配列番号3)である。
(結 果)
miRNA高発現群(cut off中央値)における術前後の血漿中のmiRNA発現の変化を図5に示す。このグラフから、血漿中のMIR-21(実施例1)MIR-29a(実施例2)の発現量は術後1か月と術後6か月の時点で術前と比較して有意な差が認められた。一方、MIR-92a(比較例1)では術前後においてその発現量において有意差が認められた。以上の結果から、MIR-21と同様MIR-29aの発現量の術前後における差を測定することにより、大腸癌の再発や増悪についての知見が得られることが示唆された。
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
実施例において被験者となった大腸癌患者の症状及び背景及び試験のフローチャートである。 血漿中のMIR-21発現量と根治切除後再発の相関関係を示すグラフである。 術後6か月時点における血漿中MIR-21変化量と腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)とのROC解析のグラフである。 術後1か月時点における血漿中MIR-21変化量と腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)とのROC解析のグラフである。 術前後の血漿中のMIR-21, MIR-29a及びMIR-92aの発現量を示すグラフである。
本発明の大腸癌の診断方法を用いることにより、患者個体の違いに影響され難く、miRNAの発現レベルの経時的な変化をも考慮した、前向きで信頼性に優れた大腸癌の診断を行うことができる。

Claims (3)

  1. 患者から経時的に採取した血液中における、大腸癌のバイオマーカーとなる少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを測定する測定工程と、
    前記miRNAの発現レベルの経時的な変化量を求める変化量算出工程と、
    前記変化量から大腸癌の悪性度及び/又は予後の診断を行う診断工程と、
    を含むことを特徴とする、大腸癌の診断方法。
  2. 前記miRNAはMIR-21及び/又はMIR-29aであることを特徴とする請求項1に記載の大腸癌の診断方法。
  3. 前記測定工程では大腸癌の手術前及び手術後におけるmiRNAの発現レベルを測定する請求項1又は2に記載の大腸癌の診断方法。

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