JP2022144002A - 航空機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】多数の推力発生装置を搭載する航空機や、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備える航空機であっても、機体を目標軌道に追従するように制御できる制御装置を提供する。【解決手段】複数の推力発生装置を有する航空機において、機体を目標軌道に追従させるために、航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクと、推力発生装置が発生する推力によって機体重心に作用する力及びトルクを運動学から求めた結果との偏差から、それぞれの推力発生装置について発生する推力の修正量を計算する。【選択図】図1
Description
本発明は、複数の推力発生装置を有する航空機の制御装置に関する。
近年、大量の旅客を輸送する旅客機ではなく、個人又は小規模な積み荷の運搬などを目的とする小型飛行モビリティに注目が集まっている。有人機では、自動車に代わるエアタクシーが移動手段に利用されることで、将来的には都市部の渋滞緩和に貢献することが期待されている。一方、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)では、既に農薬散布や空撮などの利用が広がっている。今後も、UAVは、災害監視や警備、インフラの点検、物流など様々な分野での利用の拡大が期待されている。
非特許文献1及び特許文献1には、このようなUAVの制御方法について開示されている。また、特許文献2には、プロペラが生み出す推力の向きをジンバル機構によって変更可能なUAVが開示されている。
上記のようなUAVに関して、例えば、図7に示すように、機体の右側前方にプロペラP1が設けられ、機体の左側前方にプロペラP2が設けられ、機体の右側後方にプロペラP3が設けられ、機体の左側後方にプロペラP4が設けられたマルチコプターでは、全てのプロペラを同じ回転速度で回転させることにより、機体を傾けることなく上昇させることができる。なお、この場合、図7に示すように、プロペラP2及びプロペラP3が上方から見て時計回りの方向に回転し、プロペラP1及びプロペラP4が上方から見て反時計回りの方向に回転するため、ヨー運動を回避できる。また、図8に示すように、プロペラP2及びプロペラP4のみを回転させることにより、左側を上昇させるように機体を傾けるロール運動が可能である。そして、図9に示すように、プロペラP3及びプロペラP4のみを回転させることにより、機体を前傾姿勢とするピッチ運動が可能である。更に、図10に示すように、プロペラP2及びプロペラP3のみを回転させることにより、機体を上方から見て時計回りに回転させるヨー運動が可能である。
そのため、機体に備え付けられたプロペラの基数が4つ程度のUAVであれば、非特許文献1や特許文献1に開示されているような簡易なモデリングと制御則で、機体の位置や姿勢や速度を制御するために各プロペラが出力すべき推力を求めることができる。
野波健蔵「小型無人航空機の厳密・簡易なモデリングとモデルベース制御」計測と制御Vol.56,No.1,p.3-9,2017
近年、UAVの運動性能を高めるために、4つより多数のプロペラを取り付けた機体や、特許文献2に開示されているように、プロペラが生み出す推力の向きをジンバル機構によって変更可能な機体も登場している。しかし、これらの機体では、各プロペラの推力と、機体重心に作用する力及びトルクとの関係が複雑であるため、機体の位置、姿勢及び速度の現在値と目標値との偏差から、機体を目標軌道に追従させるために要求される各プロペラの推力やその方向の修正量を求めることは容易ではない。特にプロペラの推力の向きをジンバル機構によって変更可能な機体では、ジンバル機構によってプロペラの推力の方向が時々刻々と変化するため、機体を目標軌道に追従させるために各プロペラに要求される推力やその方向を求めることは容易ではない。
そこで、本発明は、多数の推力発生装置を搭載する航空機や、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備える航空機であっても、機体を目標軌道に追従するように制御できる制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る航空機の制御装置は、複数の推力発生装置を有する航空機において、機体を目標軌道に追従させるために、前記航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクと、前記推力発生装置が発生する推力によって前記機体重心に作用する力及びトルクを運動学から求めた結果との偏差から、それぞれの前記推力発生装置について発生する推力の修正量を計算することを特徴とする。
本発明は、航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクと、運動学から求めた機体重心に作用する力及びトルクとの偏差から、各推力発生装置の推力の修正量を計算することにより、多数の推力発生装置を搭載する航空機や、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備える航空機であっても、機体の動特性を考慮した上で、機体を目標軌道に追従させるために要求される各推力発生装置の推力の修正量を容易に求めることが可能になるため、機体を目標軌道に追従するように制御することができる。
本発明に係る航空機の制御装置の一態様において、前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量を、前記推力発生装置が発生する推力と前記運動学から求めた前記機体重心に作用する力及びトルクとの関係を表すヤコビ行列と、前記ヤコビ行列の疑似逆行列とを用いて計算してもよい。
この態様によれば、ヤコビ行列と疑似逆行列を用いることによって、各推力発生装置の推力の修正量を容易に求めることが可能になる。
本発明に係る航空機の制御装置の一態様において、前記航空機の運動方程式から求めた前記機体重心に作用する力及びトルクの値が更新される度に、前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量のノルムが所定の定数よりも小さくなるまで、前記推力発生装置が発生する推力によって前記機体重心に作用する力及びトルクを前記運動学から求める計算と、前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量の計算とを繰り返し行ってもよい。
この態様によれば、推力発生装置について発生する推力が一定の値に収束するまで、推力発生装置が発生する推力の修正量の計算を繰り返し行うことによって、更に正確に機体を目標軌道に追従させることができる。
本発明に係る航空機の制御装置の一態様において、前記機体を目標軌道に追従させるという第1の目的の他に、全ての前記推力発生装置の消費エネルギーの合計の最小化、風などの外乱に対する前記機体の姿勢の安定性の最大化、又は特定の前記推力発生装置の推力の大きさや方向を予め指定することを第2の目的として、それぞれの前記推力発生装置が発生する推力について、前記第1の目的及び前記第2の目的の両方とも達成可能な前記修正量を計算してもよい。
この態様によれば、機体を目標軌道に追従させるという第1の目的を達成しつつ、消費エネルギーの合計の最小化、機体の姿勢の安定性の最大化、又は特定の前記推力発生装置の推力の大きさや方向を予め指定することを第2の目的として達成することができる。
本発明に係る航空機の制御装置の一態様において、前記航空機が、前記推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備え、前記推力発生装置が発生する推力の大きさと方向の両方とも前記修正量として計算してもよい。
この態様によれば、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備えた航空機において、各推力発生装置が発生する推力の大きさと方向の両方とも修正量として計算することにより、機体を目標軌道に追従するように制御することができる。
本発明に係る航空機の制御装置の一態様において、前記推力発生装置は電気モータ及びプロペラを備え、前記電気モータが前記プロペラを回転させることにより推力を発生させてもよい。
この態様によれば、電気モータがプロペラを回転させることにより推力を発生させる推力発生装置を搭載した航空機について、機体を目標軌道に追従するように制御することができる。
本発明は、多数の推力発生装置を搭載する航空機や、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備える航空機であっても、機体を目標軌道に追従するように制御できる制御装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態の航空機の制御装置について説明する。本実施形態の航空機の制御装置は、複数の推力発生装置を有する航空機に搭載され、演算処理部であるCPUと、RAM、ROM等の記憶部を有し、RAMの一次記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、航空機を制御する。図1及び図2は、いずれも本実施形態の航空機の制御装置の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図1又は図2に示す制御ルーチンのプログラムは、航空機の制御装置のROMに保持されており、例えば1msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
航空機の制御装置の制御周期を1msecとした場合、1msec毎に航空機の操縦者又は管制官により航空機の制御装置へ与えられる機体の位置、姿勢、速度及び角速度などの目標値が更新される。同時に、機体に設けられたセンサ又は機体とは離れた位置に設けられたセンサから取得した情報により、機体の現在の位置、姿勢、速度及び角速度などの情報も更新される。航空機の制御装置は、これらの情報に基づき、航空機の運動方程式から、機体重心に作用する力及びトルクを求める。航空機の運動方程式は、一般に以下の式1~式6で表される。
上記の式1~式6において、X,Y及びZは、いずれも航空機の機体重心に作用する力を表し、L,M及びNは、いずれも航空機の機体重心に作用するトルクを表す。そして、U,V及びWは、いずれも機体の速度を表し、P,Q及びRは、いずれも機体の角速度を表し、・は時間微分を表す。また、θ及びφは機体の姿勢を表すオイラー角であり、mは機体の重量であり、gは重力加速度である。Ixxはx軸の慣性モーメントを表し、Iyyはy軸の慣性モーメントを表し、Izzはz軸の慣性モーメントを表し、Ixzはxz面の慣性乗積を表す。
航空機が目標軌道から逸脱している場合に修正する制御則を以下に述べる。式1内の機体重心に作用するx軸方向の力XをXdynとして以下の式7~9で求める。
式7において、式8は機体の速度依存項及び重力項を補償する入力であり、式9は機体の速度を目標値Udに修正する力を表している。そして、以下の式10に示すようにeをおくと、式1及び式7~9により、以下の式11を得る。
式11は、減衰振動する系の式となっているため、制御フィードバックゲインのKp及びKIに適切な値を選ぶことで、eはゼロに収束し、機体を目標軌道に追従させることが可能となる。式1だけでなく式2~6についても同様にして求めた機体重心に作用する力及びトルクをFdynとすると、以下の式12で表される。なお、式12における右上添え字Tは転置を表す。
本実施形態の航空機の制御装置は、このように航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクFdynと、推力発生装置が発生する推力によって機体重心に作用する力及びトルクを運動学から求めた結果との偏差から、それぞれの推力発生装置について発生する推力の修正量を計算する。
航空機の運動方程式から機体重心に作用する力及びトルクFdynを求める方法については、既に説明したので、次に、推力発生装置が発生する推力によって機体重心に作用する力及びトルクを運動学から求める方法について図3を用いて説明する。図3に示すように、互いに直交するx軸、y軸及びz軸の交点に機体重心Cが配置され、機体重心Cからx軸方向に距離Lxだけ離れた位置Pで推力fがz軸のマイナス方向に生じた場合、機体重心Cに作用する力及びトルクFは、推力fの関数として、以下の式13で表される。なお、式13は、式を簡略化するため、推力発生装置が作り出すトルクTは、推力fを用いて線形近似できると仮定しており、推力fとトルクTの変換関数をKftで表している。
ここで、機体にn基の推力発生装置が取り付けられており、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構が推力発生装置ごとに設けられていると仮定する。この場合、推力発生装置が生み出す推力fthと機体重心に作用する力及びトルクFkinの関係は、以下の式14~16の形で表現することができる。
式16におけるfnとθnは、n番目の推力発生装置が発生する推力とその方向を表す。なお、式16では、推力の方向を表す変数を各推力発生装置に対して1つずつの例を示しているが、推力の方向を変更できる機構を航空機が備えていない場合は、推力の方向を表す変数は必要なくなる。逆に、ジンバル機構など推力の方向を3次元的に変更可能な機構を推力発生装置ごとに設けられている場合は、1つの推力発生装置に対して、推力の方向を表す変数が3つずつ必要となる。
航空機を目標軌道に追従させるためには、式12に示すFdynと式14~16に示すFkinが一致する必要がある。そこで、両者の偏差から、推力発生装置が生み出す推力fthを修正する方法を以下に述べる。式14を推力発生装置が生み出す推力fthで偏微分すると、以下の式17を得る。
ここで、以下の式18に示すJをヤコビ行列と呼ぶ。そして、推力発生装置が生み出す推力の大きさと方向を表すfthの次数が7以上の場合、式17を満たすΔfthは、以下の式19で表される。
式19中のJ+はヤコビ行列Jの疑似逆行列であり、Eは単位行列を表し、kは任意のベクトルを表す。式19中のΔFkinの部分に、FdynとFkinとの偏差を代入した後、式19全体に学習ゲインKlrnを掛けることで、以下の式20に示すように、機体を目標軌道に追従させるために各推力発生装置が出力すべき推力fthの修正量Δfthが求まる。更に、現在の推力fthと修正量Δfthから、以下の式21に示すように、修正後の推力fth´が求まる。
修正後の推力fth´が求められた後は、fth´を新たなfthとして、式14によりFkinを更新する。この流れを、FdynとFkinの偏差のノルム||Fdyn-Fkin||が所定の定数εよりも小さくなるまで、又は、修正量Δfthのノルム||Δfth||が所定の定数εよりも小さくなってfthが収束するまで繰り返し行うことで、機体を目標軌道に追従させるための各推力発生装置が生み出す推力fthを求めることができる。
式19及び式20の中の任意のベクトルkは、機体の冗長性を表している。ベクトルkを適切に選ぶことにより、機体を目標軌道に追従させる第1の目的を達成しつつ、第2の目的を達成することが可能となる。第2の目的としては、航空機10に搭載される全ての推力発生装置の消費エネルギーの合計の最小化や、風などの外乱に対する機体の姿勢の安定性の最大化や、特定の推力発生装置の推力の大きさや方向を予め指定することなどを挙げることができる。航空機の操縦者又は管制官は、これらの目的の中から第2の目的を選択し、その選択に基づいて航空機の制御装置はベクトルkを決定する。
以上に説明した数式等に基づき、図1に示す制御ルーチンについて以下に説明する。図1に示す制御ルーチンのプログラムが航空機の制御装置のROMに保持されている場合、本実施形態の航空機の制御装置は、航空機が着陸して全ての推力発生装置が停止した状態から、推力発生装置の動作開始と同時に図1に示す制御ルーチンを開始し、航空機が着陸して全ての推力発生装置が動作を停止するまで繰り返し実行する。
この制御ルーチンでは、まずステップS1において、航空機の制御装置は、推力fthの初期値を決定する。航空機の制御装置は、機体に設けられたセンサから各推力発生装置が発生する推力fthの値を読み込んで、その値を推力fthの初期値とする。航空機が、推力発生装置が生み出す推力の方向を変更できる機構を備える場合は、航空機の制御装置は、推力fthの大きさのみならず方向の値も読み込んで、大きさと方向の両方の値を推力fthの初期値とする。
次に、ステップS2へ進み、航空機の制御装置は、機体の位置、姿勢、速度及び角速度などの目標値を決定する。航空機の制御装置は、これらの目標値を航空機の操縦者又は管制官から与えられ、そのまま目標値として決定する。
次に、ステップS3へ進み、航空機の制御装置はベクトルkを決定する。ベクトルkは、航空機の操縦者又は管制官が選択した第2の目的により定まる。航空機の操縦者又は管制官は、航空機が飛行中でも、第2の目的の選択を変更できる。
次に、ステップS4へ進み、航空機の制御装置は、式12に基づき、航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクFdynを計算する。
次に、ステップS5へ進み、航空機の制御装置は、式15に基づき、推力発生装置が発生する推力によって機体重心に作用する力及びトルクFkinを計算する。
次に、ステップS6へ進み、航空機の制御装置は、式20に基づき、各推力発生装置が生み出す推力の修正量Δfthを計算する。
次に、ステップS7へ進み、航空機の制御装置は、式21に基づき、各推力発生装置が発生する推力fthを更新する。
次に、ステップS8へ進み、航空機の制御装置は、FdynとFkinの偏差のノルム||Fdyn-Fkin||が所定の定数εよりも小さいか判定する。そして、ノルム||Fdyn-Fkin||が定数ε以上の場合は、ステップS5に戻り、航空機の制御装置は、ノルム||Fdyn-Fkin||が定数εより小さくなるまで、ステップS5からステップS8までの計算を繰り返す。航空機の制御装置は、このようにノルム||Fdyn-Fkin||が定数εより小さくなるまで繰り返し学習計算を行い、ノルム||Fdyn-Fkin||が定数εより小さくなると、図1に示す制御ルーチンは終了となり、次の制御周期でステップS1から図1に示す制御ルーチンを再び開始する。
航空機の制御装置の制御周期を1msecとした場合、1msec毎に、航空機の操縦者又は管制官により制御装置へ与えられる機体の位置、姿勢、速度及び各速度などの目標値が更新されると共に、センサから取得した情報により、機体の現在の位置、姿勢、速度及び各速度などの情報も更新されて、ステップS1~S4が実行される。その後、ステップS5~S8の繰り返し学習計算のループに突入し、ノルム||Fdyn-Fkin||が定数εより小さくなるまで、推力fthの学習計算が繰り返される。仮に繰り返し学習計算の終了条件を満たすまでに、推力fthの修正及び更新が毎回10回必要だとすると、航空機の運用中は、推力fthを10回修正する計算が、1msec毎に行われることになる。なお、ノルム||Fdyn-Fkin||が定数εより小さくなるということは、修正量Δfthのノルム||Δfth||が所定の定数εよりも小さくなることを意味する。そのため、ステップS5~S8の繰り返し学習計算のループは、ノルム||Δfth||が定数εよりも小さくなるように、繰り返し学習計算を行っているものと評価することができる。
次に、図2に示す制御ルーチンについて以下に説明する。図2に示す制御ルーチンは、ステップS1からステップS6までは図1に示す制御ルーチンと共通するため、ステップS1からステップS6までの説明を省略する。
図2に示す制御ルーチンでは、ステップS6の次にステップS9へ進む。そして、ステップS9では、航空機の制御装置は、修正量Δfthのノルム||Δfth||が所定の定数εよりも小さいか判定する。そして、ノルム||Δfth||が定数ε以上の場合は、ステップS9からステップS10へ進んで、ステップS10で式21に基づき推力fthを更新し、ステップS5へ戻る。そして、航空機の制御装置は、ノルム||Δfth||が定数εより小さくなるまで、ステップS5からステップS10までの計算を繰り返す。航空機の制御装置は、このようにノルム||Δfth||が定数εより小さくなるまで繰り返し学習計算を行い、ノルム||Δfth||が定数εより小さくなると、図2に示す制御ルーチンは終了となり、次の制御周期でステップS1から図2に示す制御ルーチンを再び開始する。
以上に説明した図1又は図2に示す制御ルーチンにおける繰り返し学習計算を実行することによって、図4に示す航空機10に搭載された各推力発生装置の推力等が、どのように変動するのかシミュレーションした結果について以下に説明する。図4に示す航空機10は、推力発生装置として、第1電気モータ11と第1プロペラ12の組み合わせと、第2電気モータ21と第2プロペラ22の組み合わせとを備える。また、航空機10は2つのジンバル機構30を備え、ジンバル機構30によって、第1プロペラ12が推力の発生する方向と第2プロペラ22が推力の発生する方向をそれぞれ個別に変更することができる。
航空機10の質量をmとして重力加速度をgとすると、図4に示すように、航空機10の機体には、第1プロペラ12が生み出す推力f1と第2プロペラ22が生み出す推力f2の他に、機体重心Cに重力mgが作用している。図4において、X軸方向は鉛直方向上向きであり、Z軸方向は水平方向である。また、推力f1の方向に向かう直線と鉛直方向上向きの直線とのなす角の角度をθ1として、推力f2の方向に向かう直線と鉛直方向上向きの直線とのなす角の角度をθ2とする。なお、角度θ1及び角度θ2は、鉛直方向上向きの直線よりもZ軸のプラス方向に傾く角度をプラスの角度として、Z軸のマイナス方向に傾く角度をマイナスの角度とする。
ここで、航空機10を+Z軸方向に移動させるための推力f1及び角度θ1と推力f2及び角度θ2とを求めることにする。その際、航空機10のX軸方向の速度と、機体重心Cにおける機体のM方向の角速度は、いずれもゼロとする。また、冗長性を活用するためのベクトルkに関しては、各変数からの初期値(f10,θ10,f20,θ20)との差の絶対値から以下の式22を与えた。これは、各変数が可能な限り初期状態を維持することを狙いとしている。
図1又は図2の制御ルーチンにおける繰り返し学習計算を実行することによって、どのように図4に示す航空機10の各推力発生装置の推力等が変動するのかシミュレーションした結果を図5及び図6に示す。図5は、第1プロペラ12及び第2プロペラ22が生み出す推力によって機体重心Cに作用する力及びトルクの変動を示している。図5の上段のグラフがX軸方向の力の変動を示し、中段のグラフがZ軸方向の力の変動を示し、下段のグラフがM方向の角速度の変動を示している。図6は、上から順番に、推力f1、角度θ1、推力f2及び角度θ2の変動をそれぞれ示している。図5及び図6のグラフの横軸は、推力f1、角度θ1、推力f2及び角度θ2の修正の繰り返し回数を示している。
図5及び図6に示すように、繰り返し学習計算によって、角度θ1及び角度θ2が両方ともマイナスとなる方向へ、第1プロペラ12と第2プロペラ22が傾くことによって、機体重心Cに+Z軸方向へ向かう推力が得られている。また、機体重心Cへ作用する+X軸方向の推力に関しては、初期値とほぼ同じ値に収束しており、これは重力mgに釣り合った状態を維持していることを意味している。
本実施形態の航空機の制御装置は、以上に説明したように、多数の推力発生装置を搭載する航空機や、推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備える航空機など、各推力発生装置の推力の機体重心への作用が非常に複雑な航空機であっても、機体の動特性を考慮した上で、機体を目標軌道に追従させるために要求される各推力発生装置の推力の修正量を容易に求めることが可能になるため、機体を目標軌道に追従するように制御することができる。
また、本実施形態の航空機の制御装置は、式19及び式20におけるベクトルkを適切に選ぶことにより、機体を目標軌道に追従させるという第1の目的を達成しつつ、消費エネルギーの合計の最小化、機体の姿勢の安定性の最大化、又は特定の前記推力発生装置の推力の大きさや方向を予め指定することを第2の目的として達成することができる。
<実施形態の補足>
本開示の航空機の制御装置は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、本開示の制御装置を搭載する航空機は、推力発生装置の推力の方向を変更できるジンバル機構を備えていなくてもよい。また、制御装置を搭載する航空機の推力発生装置は、電気モータがプロペラを回転させるタイプに限らず、内燃機関でプロペラを回転させる推力発生装置やジェットエンジン、ウォータジェット推進装置、電磁石による浮上装置などであってもよい。
本開示の航空機の制御装置は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、本開示の制御装置を搭載する航空機は、推力発生装置の推力の方向を変更できるジンバル機構を備えていなくてもよい。また、制御装置を搭載する航空機の推力発生装置は、電気モータがプロペラを回転させるタイプに限らず、内燃機関でプロペラを回転させる推力発生装置やジェットエンジン、ウォータジェット推進装置、電磁石による浮上装置などであってもよい。
10 航空機、11 第1電気モータ、12 第1プロペラ、21 第2電気モータ、22 第2プロペラ、30 ジンバル機構。
Claims (6)
- 複数の推力発生装置を有する航空機において、
機体を目標軌道に追従させるために、
前記航空機の運動方程式から求めた機体重心に作用する力及びトルクと、前記推力発生装置が発生する推力によって前記機体重心に作用する力及びトルクを運動学から求めた結果との偏差から、それぞれの前記推力発生装置について発生する推力の修正量を計算することを特徴とする航空機の制御装置。 - 請求項1に記載の航空機の制御装置であって、
前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量を、
前記推力発生装置が発生する推力と前記運動学から求めた前記機体重心に作用する力及びトルクとの関係を表すヤコビ行列と、前記ヤコビ行列の疑似逆行列とを用いて計算することを特徴とする航空機の制御装置。 - 請求項2に記載の航空機の制御装置であって、
前記航空機の運動方程式から求めた前記機体重心に作用する力及びトルクの値が更新される度に、
前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量のノルムが所定の定数よりも小さくなるまで、
前記推力発生装置が発生する推力によって前記機体重心に作用する力及びトルクを前記運動学から求める計算と、前記推力発生装置が発生する推力の前記修正量の計算とを繰り返し行うことを特徴とする航空機の制御装置。 - 請求項2又は3に記載の航空機の制御装置であって、
前記機体を目標軌道に追従させるという第1の目的の他に、
全ての前記推力発生装置の消費エネルギーの合計の最小化、風などの外乱に対する前記機体の姿勢の安定性の最大化、又は特定の前記推力発生装置の推力の大きさや方向を予め指定することを第2の目的として、
それぞれの前記推力発生装置が発生する推力について、前記第1の目的及び前記第2の目的の両方とも達成可能な前記修正量を計算することを特徴とする航空機の制御装置。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の航空機の制御装置であって、
前記航空機が、前記推力発生装置が発生する推力の方向を変更できる機構を備え、
前記推力発生装置が発生する推力の大きさと方向の両方とも前記修正量として計算することを特徴とする航空機の制御装置。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載の航空機の制御装置であって、
前記推力発生装置は電気モータ及びプロペラを備え、前記電気モータが前記プロペラを回転させることにより推力を発生させることを特徴とする航空機の制御装置。
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JP2021044828A JP2022144002A (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 航空機の制御装置 |
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JP2021044828A JP2022144002A (ja) | 2021-03-18 | 2021-03-18 | 航空機の制御装置 |
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Cited By (2)
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JP2022171778A (ja) * | 2021-03-19 | 2022-11-11 | 株式会社三洋物産 | 遊技機 |
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