JP2022132911A - 熱物性測定装置および熱伝導率の測定方法 - Google Patents

熱物性測定装置および熱伝導率の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一般的な熱交換井または孔内水がない浅層の地盤の孔井にも適用できる容易な熱伝導率の測定方法、およびこの測定方法に使用できる熱物性測定装置を提供する。【解決手段】伸縮部位を有するパッカー、上記伸縮部位に流体を注出入する手段、上記伸縮部位に巻回する円筒状熱源、上記円筒状熱源の外周側に配置されている温度センサ、上記円筒状熱源に電力を供給する電源、および上記温度センサで測定される温度を記録する記録手段を含み、上記円筒状熱源はシート状発熱体からなるか、または弾性部材と上記シート状発熱体とからなり、上記パッカーは上記伸縮部位の収縮時は上記円筒状熱源および上記温度センサとともに孔井内を移動可能であり、上記伸縮部位は膨張時に上記シート状発熱体および上記温度センサを孔壁に密着させる、孔井内の原位置で地盤の熱物性を測定するための熱物性測定装置、ならびにこれを用いた熱伝導率の測定方法。【選択図】図1

Description

本発明は、熱物性測定装置および熱伝導率の測定方法に関する。より詳しくは、本発明は地盤の熱物性を孔井内の原位置で測定するための熱物性測定装置および、地盤の熱伝導率の原位置での測定方法に関する。
土壌や地盤の熱伝導率は、地球科学分野や資源分野、環境分野、農業分野、土木建設分野等において重要な物理量である。特に、近年国内外で普及している、再生可能エネルギーのひとつである地中熱エネルギーを利用した地中熱利用システムでは、その設計や施工の際、採熱量を推定するために地盤の熱伝導率を把握することが必要である。
地中熱利用システムの設置の際によく用いられる熱伝導率を求めるための熱応答試験としては温水循環法がある。この方法では、温度センサを取り付けたU字状のパイプ(U字管)を孔井内に挿入し、挿入後に孔壁とそのU字管の間に珪砂等を充填したうえで、U字管の内部に温水を流し、U字管に取り付けた温度センサの時間変化からその深度の熱伝導率を、U字管の出入口の温度の時間変化から深さ方向の平均的な熱伝導率を求める(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)
また、簡便に熱伝導率を測定する方法として電熱ヒータを用いる方法が提案されている。この方式のひとつとして孔内を加熱するために線状の電熱ヒータ(電熱線)を用い、それに温度センサを沿わせ、電熱線を加熱させながら温度の時間変化をモニタリングすることで熱伝導率を測定する方法が開発され、実用化されている(非特許文献2)。
さらに、地中熱利用システムの熱交換井のような大きな孔径の孔井で電熱ヒータを用いた方法を適用するための試みとして、鋼鉄製の容器の内部に巻回された電熱線を入れ、孔内を加熱し熱伝導率を測定する方法が開発されている(特許文献3)。
特開2003-4680号公報 特開2018-173293号公報 特開2007-263957号公報
地中熱利用促進協会,一定加熱・温水循環方式熱応答試験(TRT)技術書 2018年8月版,http://www.geohpaj.org/wp/wp-content/uploads/trt_draft_20180830.pdf ジオシステムホームページ,http://www.geo-system.jp/image/TCP_HCpunf190131.pdf
特許文献1等に記載の方法は、U字管を地中に埋設する必要があり、地上の装置が大がかりとなるという課題がある。また、熱応答試験の実施後にU字管を地中から引き抜くことは実際には困難であるため、このU字管をそのまま地中熱利用システムの熱交換パイプとして用いることが一般的である。したがって、熱応答試験を実施し、採熱量が不足していることが明らかになったとしても熱交換井を深く掘り増しする等の対応をとることが難しい。もし採熱量が不足している場合には、改めて新規の熱交換井を掘削しなおし、採熱量を確保するという対応をとらざるをえない。
非特許文献2に記載の方法は熱源が線状で、その区間内の孔内水全体を温める必要があることから多くの時間と熱量を必要とするとともに、孔内の中心部にセンサを入れることが難しいという課題がある。そのためこの方法が適用できる孔井は小孔径の孔井(概ね孔径100mm程度まで)と言われている。しかし、地中熱利用システムで設置する熱交換井の孔径は、一般的に150mm程度と大きいため、この方法を地中熱利用システムの熱交換井に適用することは難しい。
特許文献3に記載の方法では孔壁により近い場所で孔内を加熱しているものの、実際には孔壁と鋼鉄製の容器の間には、孔内水が挟まれており、対流などの熱的影響を無視することができない。このような熱的な影響を低減するために鋼鉄製容器を孔井の孔径と略同じ外径で設計したとすると、孔曲がり(掘削過程で途中から曲がってしまったもの)がある孔井では物理的に孔井に挿入することすらできない。さらに測定作業を行ううえで孔内に挿入する鋼鉄製の容器とその内容物が重く、吊りおろしや引き揚げの作業は容易ではない。
また、上記の従来の方法はいずれも、孔壁を直接加熱するのではなく、発熱体近傍の孔内水を温め、その孔内水が壁面を加熱するという間接的なものである。したがって、孔内水が存在しない浅層の土壌や地盤には適用することができないという問題があった。
本発明の課題は、上記の従来方法の課題を解決した地盤の熱物性測定装置および熱伝導率の測定方法を提供することである。具体的には、一般的な熱交換井に適用可能であり、従来の方法では測定が困難である孔内水がない浅層の地盤の孔井にも適用することができる容易な熱伝導率の測定方法、および当該測定方法に使用できる熱物性測定装置を提供することである。
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討し、従来から地盤改良のための工法や地盤調査のために用いられているパッカーを活用して地盤の熱物性を測定できることを見出した。そして、この知見に基づきさらに検討を重ねて、本発明を完成させた。
具体的には、本発明は以下のとおりである。
<1>孔井内の原位置で地盤の熱物性を測定するための熱物性測定装置であって、
流体の注出入により収縮および膨張する伸縮部位を有するパッカー、上記伸縮部位に上記流体を注出入する手段、上記伸縮部位に巻回する円筒状熱源、上記円筒状熱源の外周側に配置されている温度センサ、上記円筒状熱源に電力を供給する電源、および上記温度センサで測定される温度を記録する記録手段を含み、
上記円筒状熱源はシート状発熱体からなるか、または弾性部材と上記シート状発熱体とからなり、
上記パッカーは上記伸縮部位の収縮時は上記円筒状熱源および上記温度センサとともに上記孔井内を移動可能であり、
上記伸縮部位は膨張時に上記シート状発熱体および上記温度センサを上記孔井の孔壁に密着させる、熱物性測定装置。
<2>上記シート状発熱体がシリコンラバーヒータである、<1>に記載の熱物性測定装置。
<3>上記伸縮部位と上記シート状発熱体との間に断熱部材を有する、<1>または<2>に記載の熱物性測定装置。
<4>上記流体が空気である、<1>~<3>のいずれかに記載の熱物性測定装置。
<5>上記パッカーがパイプとチューブ状の伸縮部材とを含み、上記伸縮部材が上記パイプの一部に巻回し、上記一部の外周と上記伸縮部材とにより上記伸縮部位が形成されている、<1>~<4>のいずれかに記載の熱物性測定装置。
<6>上記記録手段が上記温度センサで測定される温度の時系列データを記録する、<1>~<5>のいずれかに記載の熱物性測定装置。
<7>地盤の熱伝導率を孔井内の原位置で測定するための熱伝導率測定方法であって、<1>~<6>のいずれかに記載の熱物性測定装置を用いる熱伝導率測定方法。
<8>上記パッカー、上記円筒状熱源および上記温度センサを上記孔井内に配置すること、
上記伸縮部位を膨張させて、上記シート状発熱体および上記温度センサを上記孔井の孔壁に密着させること、
上記シート状発熱体により上記孔壁を加熱すること
上記温度センサで測定される温度の上記加熱に由来する変化の時系列データを上記記録手段により記録すること、および
上記時系列データを理論解または数値解析を用いて作成した基準曲線と比較して熱伝導率を求めることを含む、<7>に記載の熱伝導率測定方法。
本発明により、一般的な熱交換井で使用できる熱物性測定装置が提供される。本発明の熱物性測定装置を用いて、従来の原位置における熱伝導率測定方法では測定が困難であった孔内水がない浅層の土壌や地盤の熱伝導率も測定可能である。また、本発明の熱物性測定装置は孔井内に吊り下ろす部分を軽量化することができるため作業が容易である。
本発明の熱物性測定装置の例の概念図である。 本発明の熱物性測定装置の使用形態を示す図である。 無限長の円筒状熱源による表面温度の理論モデルの概念図である。 理論解を用いた熱伝導率の基準曲線の例を示す図である。 熱容量による温度変化への影響を検証した例を示す図である。 本発明の熱物性測定装置における発熱量と孔壁温度の変化を無限長の円筒状熱源のモデルによって評価した例を示す図である。 本発明の熱物性測定装置で得られる温度データを数値解析による方法で解析する場合の計算グリッドの例である。 本発明の熱物性測定装置で得られる温度データを比較するために、数値解析による方法で求めた熱伝導率の基準曲線の例を示す図である。 本発明に係る実施例として行った試験で得られた温度データと数値解析による方法で求めた熱伝導率の基準曲線を比較した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、地盤とは、地殻であり土壌で構成されるものである。本明細書において、地盤というときは、主に、その中(地中)に孔井が設けられる地盤を意味している。
本明細書において、孔井とは掘削孔である。孔井は特に地盤を掘削して設けられた円筒状の穴であることが好ましい。孔井の例としては、地中熱利用システムの熱交換井等として掘削された穴、地質ボーリング調査孔などがあげられる。なお、熱交換井のボーリング掘削においては、ケーシングを挿入しながら掘削する方式が一般的である。また、地盤が未固結な泥や砂で構成されている場合には、孔井内の地盤が崩れやすいことからケーシングで保護する場合がある。本明細書において、孔井はケーシングを備えるものであってもよい。したがって、本明細書において、孔壁というときは、孔井でのケーシングの有無に応じて、孔井内の地盤の内壁またはケーシングの内壁を意味する。
一般に、地盤の熱物性や熱伝導率を測定する方法は大きく2つに大別される。ひとつは、土壌や地質試料、岩石試料を採集したうえで、地上の実験室内で針状のセンサ(ニードルプローブ)や据え置き型のセンサを試料に貫入または据え置いて測定した値を利用する方法(室内測定法)である。もうひとつは孔井などにセンサ等を挿入し測定対象の深度の原位置で測定した値を利用する方法(原位置測定法)である。
室内測定法の課題として地盤の試料を地中から採集する際に物理的変形が生じたり、試料内部の圧力が地上で開放されることで変形が生じたりすることで、試料の状態が変化することがある。その結果として室内での測定値と原位置で測定値とで差異が生じる場合がある。そのため、地中環境下で存在する状態の熱伝導率を知るためには原位置測定法が適している。
また、一般に数メートル程度の深さの地中は、地下水があり、これが土粒子や岩石の亀裂に間隙水として存在する。このような間隙水の効果も考慮した熱伝導率は特に「有効熱伝導率」といい、さらに地下水が流れている場合にはその移流効果も含む効果を考慮した熱伝導率を「見かけ有効熱伝導率」という。例えば、地中熱利用システムの熱交換井の設計や施工の事前評価には、この「見かけ有効熱伝導率」が必須である。これらの「有効熱伝導率」や「見かけ有効熱伝導率」を測定するためには、地中の状態を保持したまま測定可能な原位置測定法が必要不可欠である。
本発明は原位置測定法による熱伝導率測定方法と該方法に使用することができる熱物性測定装置に関する。
熱物性測定装置
本発明の熱物性測定装置は、流体の注出入により収縮および膨張する伸縮部位を有するパッカー、上記伸縮部位に上記流体を注出入する手段、上記の伸縮部位に巻回する円筒状熱源、上記円筒状熱源の外周側に配置されている温度センサ、上記円筒状熱源に電力を供給する電源、および上記温度センサで測定される温度を記録する記録手段を含む。本発明の熱物性測定装置は孔井内の原位置で地盤の熱物性を測定することができる。
<パッカー>
パッカーは、流体の注出入により収縮および膨張する伸縮部位を含む。パッカーは伸縮部位とともに、流体の注出入によって収縮および膨張しない部位を含んでいてもよい。例えば、パッカーは、伸縮部位を構成する伸縮部材と、この伸縮部材を保持する直線状のパイプを含んで構成される。典型的には、伸縮部材がパイプの一部(例えば一方の端部に近い部分)に巻回する構造があげられる。例えば、パッカーは略円柱状の構造を有し、伸縮部位は円周方向に収縮および膨張する。伸縮部位が収縮および膨張する方位の伸縮部位の形状およびサイズは、測定を行なう孔井に合わせたものとし、収縮時はパッカーが孔井内を移動可能であり、かつ膨張時は伸縮部位が円筒状熱源中のシート状発熱体および温度センサを、シート状発熱体および温度センサを孔井の孔壁に密着させることができるように設計する。すなわち、略円柱状のパッカーの伸縮部位は孔井の孔径と略同じ直径の外周となるサイズとする。パイプに巻回する円筒状である伸縮部位の高さは、円筒状熱源中のシート状発熱体の全面を押圧することができるように、シート状発熱体の高さ以上であることが好ましい。
パッカーの伸縮部位には例えば、天然ゴム、ナイロンなどの樹脂、または布などの伸縮部材が用いられる。パッカーの伸縮部位は伸縮部材のみからなっていてもよいが、伸縮部材と他の部材から構成されていてもよい。例えばチューブ状の伸縮部材(ゴムチューブなど)をパイプの長さ方向の一部の外周に巻回し、この一部の外周と伸縮部材との間に形成される空間に流体の注入および該空間から流体を注出することができる。すなわち、上記の一部の外周と伸縮部材とにより伸縮部位が形成されていてもよい。パイプ内と上記空間との間には流体の注出入口を設けることができる。さらにパイプ内には、この注出入口と流体を注出入する手段とを接続するチューブを設けることができる。または、上記パイプ外において上記空間にチューブの一端を挿入し、他端を流体を注出入する手段と接続してもよい。
パッカーが上記のパイプを含むとき、パイプは、パッカーの伸縮部位と円筒状熱源と温度センサとを、孔井内で移動させる手段としても機能できる。例えば、伸縮部位の長さ(孔井に配置した際の高さ)に対して、十分に長いパイプを使用することにより、上記の機能を有しうる。また、パイプとしてねじ込み式パイプを使用することにより、地上で延長させながら孔井内を下降させる(吊り下ろす)こともできる。この方法により、2メートル以上の深さの孔井内の測定を行なう場合でも測定を容易に行なうことができる。パイプを地上で延長させる場合、流体注出入用チューブはパッカーの伸縮部位の直上でパイプ内部からパイプ外部に出し、パイプに沿って固定してもよい。
パイプとしては、例えば、金属製パイプ、塩ビパイプ(ポリ塩化ビニルを素材とするパイプ)、アクリルパイプなどを用いることができる。上記のようにねじ込み式パイプを用いることも好ましい。
パッカーとしては、例えば、宮下が開発した地下水位測定用の簡易型パッカー(宮下雄次(2009): 可搬型の自噴高測定用パッカーシステムの開発,温地研報告第41巻, 69-72)等を用いることができる。パッカーとして、市販のパッカー(例えば、東陽商事株式会社 WEBカタログ、https://toyoshoji.com/t-38-t-46-t-58/参照)を用いてもよい。
パッカーの伸縮部位に注出入する流体としては、気体、液体、気体および液体の混合物などを用いることができる。流体の例としては、空気、窒素、水などがあげられる。
パッカーの伸縮部位は膨張時に、シート状発熱体および温度センサを孔壁に密着させることができる。このような密着触時にシート状発熱体により孔壁を加熱し温度センサにより該加熱による温度変化を測定することができる。上記の密着は、伸縮部位が膨張してシート状発熱体および温度センサを孔壁の方向に押圧することによって達成されていればよい。また、上記の密着は、シート状発熱体により孔壁を加熱することができ、かつ温度センサにより該加熱による温度変化を測定することができる程度の接触を意味する。パッカーの伸縮部位の収縮時は円筒状熱源および温度センサはパッカーとともに孔井内を移動可能である。したがって、本発明の熱物性測定装置はパッカーの伸縮部位の収縮および膨張を繰り返すことにより孔井内の任意の位置での熱物性を原位置で測定することができる。
<流体を注出入する手段>
パッカーの伸縮部位に流体を注出入する手段としては、ポンプを用いればよい。ポンプは、例えば、チューブを介してパッカーの伸縮部位における流体の注出入口に流体を注出入できるものであればよい。流体が空気の場合は、空気圧縮ポンプを用いることができる。パッカーの伸縮部位に上記流体を注出入する手段はさらに、流体を貯蔵するタンク、流体の量を計測する流量計、流体の注出入を制御する装置、電源などを含んでいてもよい。
<円筒状熱源>
本発明の熱物性測定装置は円筒状熱源を含む。円筒状熱源はシート状発熱体からなるか、またはシート状発熱体と弾性部材とからなる。シート状発熱体は円筒状熱源中の発熱部位となることができる。
シート状発熱体としては、パッカーの伸縮部位の収縮および膨張に追随するか、または追随して移動でき、さらに、孔壁に密着できる程度の柔軟性を有するものを用いる。シート状発熱体は耐水性であることが好ましい。耐水性のシート状発熱体を用いることにより、本発明の熱物性測定装置を使用して地下水面以下の位置での測定も容易となる。また、シート状発熱体は耐熱性および電気絶縁性を有することが好ましい。シート状発熱体の好ましい例としては、シリコンラバーヒータがあげられる。シリコンラバーヒータは、発熱体が両面からシリコーン樹脂シートで挟まれた構造を有する。シリコンラバーヒータとしては耐水性シリコンラバーヒータを用いることが好ましい。
円筒状熱源はパッカーの伸縮部位に巻回しており、円筒状熱源中のシート状発熱体は、パッカーの伸縮部位の収縮および膨張に追随するか、または追随して移動するように構成されていればよい。したがって、シート状発熱体は、パッカーの伸縮部位表面に接着していてもよいが、伸縮部位の収縮および膨張に伴って、その収縮および膨張の方向に移動できるように伸縮部位の表面に近接する位置に配置されているのみでもよい。シート状発熱体と伸縮部位とは、全面で固定させず、面の一部で固定させるほうが膨張および伸縮の機構がスムーズに働きやすい。
円筒状熱源は、シート状発熱体と弾性部材とからなり、弾性部材によりシート状発熱体が、パッカーの伸縮部位の収縮および膨張に追随するように調整されていることが好ましい。弾性部材としては、ゴムシートを用いることができる。シート状発熱体と弾性部材とは、接着剤やステープラー等の固定具、縫合などの方法を用いて円筒型に組み合わされ、円筒状熱源となっていればよい。
円筒状熱源はパッカーの伸縮部位の全面を覆っていても、一部を覆っていてもよい。円筒状熱源の内周全面でパッカーの伸縮部位を覆っていて円筒状熱源の内周の一部でパッカーの伸縮部位を覆っていてもよいが、円筒状熱源の内周全面でパッカーの伸縮部位を覆っていることが好ましい。
シート状発熱体はパッカーの伸縮部位の全面を覆っていても、一部を覆っていてもよい。シート状発熱体は、例えば、孔井の孔径(直径)の2倍~20倍の高さ(好ましくは5倍~20倍の高さ)、かつ、孔井の円周の60°~360°(好ましくは120°~360°)を加熱していればよい。シート状発熱体はこの面積の加熱が可能な面積を有していればよい。シート状発熱体が、孔井の孔径(直径)の10倍以上の高さかつ、孔井の円周の360°を加熱できる熱物性測定装置を使用することにより、地盤の熱伝導率の測定に適用する場合に、理論解を用いた方法を用いることができる。
<電源>
本発明の熱物性測定装置は円筒状熱源に電力を供給する電源を備えている。電源はシート状発熱体のための電源であればよい。シート状発熱体は電源線により電源と接続することができる。電源線は、円筒状熱源を孔井内に挿入し、地上にて電源の操作が可能な長さとすることが好ましい。電源線は、例えば、パッカーを構成するパイプの中(内周側)または外(外周側)に配置すればよい。
<温度センサ>
温度センサは、本発明の熱物性測定装置において、孔壁温度を時系列的に測定するための部材である。温度センサとしては、0.01℃の差異が測定できるものであることが好ましい。例えば、測定対象の温度や必要とする精度などによってサーミスタや白金抵抗測温体等を選択して用いることができる。本発明の熱物性測定装置において、温度センサは、円筒状熱源の外周側に設けられる。このとき、パッカーの伸縮部位、シート状発熱体、温度センサがこの順に配置されるものとする。
温度センサはシート状発熱体における発熱部位が形成する領域の中心に近い部位に配置されることが好ましい。温度センサはシート状発熱体の表面に接着されていてもよいが、接着されていなくてもよい。
本発明の熱物性測定装置において、温度センサは1つであってもよく、2つ以上であってもよい。例えば、測定する地盤の孔井での位置の土壌や地層を考慮し、温度センサを2つ以上設け、最適な位置のデータを採用してもよく、平均値のデータを採用してもよい。また、異なる地点のデータの解析を利用して、例えば、孔井の北側および南側の熱物性データを得ることもできる。
<記録手段>
本発明の熱物性測定装置は温度センサにより測定された温度を記録するための記録手段を備えている。温度センサと記録手段とは信号線で接続することができる。温度センサの信号線は、温度センサを孔井内に挿入し、地上に記録手段を配置することが可能な長さとすることが好ましい。信号線は、例えば、パッカーを構成するパイプの中(内周側)または外(外周側)に配置すればよい。記録手段としては、温度センサにより測定された温度の時系列データを記録することができる記録手段が好ましい。
<断熱部材>
本発明の熱物性測定装置においては、シート状発熱体からのパッカーへの熱の流れを防ぐため、パッカーの伸縮部位とシート状発熱体との間には断熱部材を設けることが好ましい。パッカーの伸縮部位と円筒状熱源との間に断熱部材を設けることがより好ましい。
<熱物性測定装置の例>
図1に本発明の熱物性測定装置の例を示す。
図1の熱物性測定装置は孔井内に挿入する円筒状熱源および温度センサとパッカーとを有し、さらに地上に設置する機器部分を有する。円筒状熱源は耐水性のシリコンラバーヒータ1、断熱シート2、伸縮性ゴムシート4から構成され、さらにその外周に接する部分に温度センサ3を有する。円筒状熱源は、ゴムチューブ5に巻回する円筒型の形状である。パッカーとしては宮下が開発した地下水位測定用の簡易型パッカーを使用しており、ゴムチューブ5および圧縮空気用チューブ6、パイプ7、ゴムチューブ固定ワイヤ8から構成されている。パイプ7には圧縮空気のチューブ内への供給や排出のための圧縮空気出入口9が設けられている。温度センサ3としてはサーミスタセンサが用いられている。
耐水性シリコンラバーヒータ1に対しパッカー側となる面(円筒状熱源の内周)には断熱シート2が貼り付けられている。耐水性シリコンラバーヒータ1には、パッカーの伸縮部位の膨張および収縮に追従させるために、端部に無発熱の伸縮性ゴムシート4が組み合わせて取り付けられ円筒状熱源を構成している。温度センサ3は、耐水性シリコンラバーヒータ1の高さ方向の中心に近い部位であって、伸縮性ゴムシート4からより遠い位置に設けられている。図1に本発明の熱物性測定装置は温度センサ信号線10およびヒータ用電源線11を有し、それらは、パイプ内部またはパイプ外部に沿わせ地上へ配線されている。
機器部分は、空気圧縮ポンプ12、温度記録器13、直流電源14から構成されている。なお耐水性シリコンラバーヒータ1、断熱シート2、温度センサ3、伸縮性ゴムシート4等については市販されている部材を活用することができる。
本発明の熱物性測定装置の使用形態を図2に示す。熱物性測定装置として図1で示した例を使用する例である。
測定対象となる地盤の孔井にパッカーを、伸縮部位を収縮させた状態でパイプ7を用いて測定対象深度まで吊り下ろす。この際、ヒータ用電源線10および温度センサ信号線11は、パイプの外に固定しながらパイプを孔内に挿入する。
その後、地上から圧縮空気用チューブ6を介し圧縮空気を注入してパッカーの伸縮部位を膨張させ、耐水性シリコンラバーヒータ1と温度センサ3を孔壁に密着させる。次に地上の直流電源14によって一定の電力を供給し耐水性シリコンラバーヒータ1を発熱させ孔壁を加熱して測定を行なう。そして測定終了時に電源を切り、加熱を停止する。
加熱停止後、圧縮空気用チューブ6を介してパッカーの伸縮部位の圧縮空気を地上へ排出し、パッカーの伸縮部位およびそれに取り付けられた円筒状熱源を収縮させる。そして、パッカーを地上に回収して測定を終了するか、パッカーを孔井内で次の測定対象深度まで移動(下降が好ましい)し、同様の手順で測定を行なうことができる。測定は、浅い深度から深い深度へ進めることが好ましい。孔内水の擾乱がなく熱的な影響も小さいからである。
熱伝導率の測定方法
本発明の熱物性測定装置は、地盤の熱伝導率の測定に用いることができる。例えば、地中熱利用システム設置のための熱交換井の掘削時の熱伝導率(地下水がある深度では、有効熱伝導率や見かけ有効熱伝導率)の測定に好ましく使用することができる。
地盤の熱伝導率は、本発明の熱物性測定装置の温度センサで測定される温度におけるシート状発熱体の加熱に由来する変化の時系列データを利用して、求めることができる。具体的には、後述する熱伝導率の解析方法に従い、理論解または数値解析を用いて作成した基準曲線と上記時系列データとを比較して熱伝導率を求めることができる。
温度センサで測定される温度の時系列データを記録する測定間隔は、測定対象とする地盤の土壌や地層位置の熱物性や必要とする測定精度、全測定時間に応じて適宜設定することができるが、可能な範囲で短いことが好ましく、例えば1分間隔程度が望ましい。
シート状発熱体および温度センサを孔壁に密着させた後は加熱前の自然状態の温度を60分以上測定することが好ましい。
地盤の熱伝導率の測定を行なう際の、シート状発熱体での加熱のための電力量(または電圧および電流)は、必要な加熱量に沿って適切な値を設定することができる。適切な加熱量は、測定対象とする地盤の土壌や地層位置の熱物性によって異なるため孔井掘削時の地盤情報および円筒状熱源の理論モデルや数値解析の手法を用いて事前検討し適切な加熱量を設定することが好ましい。加熱時間は孔井の孔径や周辺の土壌や地盤の熱伝導率によって異なるが、数時間~数日程度が好ましい。
温度センサで測定される温度のシート状発熱体の加熱に由来する変化はシート状発熱体による加熱の工程の変化であっても、加熱後の温度の回復過程の変化であってもよい。すなわち、加熱過程における孔壁の温度時間変化(温度上昇)から熱伝導率を算出(加熱時法)してもよく、加熱後の温度の回復過程の温度変化も測定し熱伝導率を算出(回復時法)してもよい。回復過程の温度を測定する場合には加熱終了後、数時間~数日にわたって温度記録を継続させることが好ましい。
上述のように、孔井はケーシングを備えるものでもよい。ケーシングとしては通常鋼管などの管材が用いられる。また、管材としては口径150mm程度のものが用いられる。例えば、鋼管は熱抵抗が小さいため、適切な測定時間をとることでケーシングの内壁から周辺の地盤(地層)の熱伝導率を調べることが可能である。後述の数値解析による方法では、このケーシングの肉厚や熱物性も考慮した解析を行うことができ、厚い肉厚のケーシング等でも周辺の土壌や地盤の熱伝導率を求めることができる。本発明の熱物性測定装置は、シート状発熱体の大きさや加熱量等を適切に調整することで、様々な大きさの孔井での測定に用いることができる。もちろん、周辺の地層が岩盤や固結した地層などであって、孔井内の地盤の内壁が崩れにくい状態であれば、ケーシングを介さず裸孔状態で測定することも可能である。
<解析方法>
熱伝導率を求める解析方法としては、理論解を用いる方法と数値解析を用いる方法がある。理論解を用いる方法としては地盤の温度上昇量を規定するKelvinの線源関数や円筒型熱源関数(いずれもIngersoll, L.R., Zobel, O.J. and Ingersoll, AC. (1954) Heat conduction with engineering, geological, and other applications. McGraw-Hill, New York, 325p.)に基づく解析方法が知られている。数値解析を用いる方法としては、有限差分法や有限要素法を用いた数値モデルによる解析方法が知られている。
理論解を用いる方法は、実際の測定の状況(測定装置の形状や孔井の状況等)が、理論解が想定しているモデルに適合する場合に使用することができる。その場合、精度よく計算コストも少なく解析できる。
理論解を用いる方法の一例を以下で説明する。この例で用いる理論解はシート状発熱体を円筒状熱源とみなすことができる場合の一定加熱モデルによるものである。この理論解を用いて解析するためには以下に示す複数の適合条件を満たす必要がある。
(1)円筒状熱源の外径(本明細書において「円筒状熱源の外径」というときは、円筒状熱源の内側にあるパッカーの伸縮部位を膨張させ円筒状熱源を孔壁に密着させたときの円筒状熱源の外径を意味する。)に比べてその長さが十分長く無限長とみなせる場合(長さが外径の5~10倍程度以上)、
(2)ケーシングの熱抵抗が小さくその熱的影響を無視できる場合(具体的にはケーシングの肉厚が薄く、材質の熱伝導率が大きい場合)、
(3)円筒状熱源が外径の全周で発熱できるとみなせる場合(具体的には、円筒状熱源中の弾性部材による無発熱部分の面積が小さく、発熱部分に比べて無発熱部分の影響が無視できる場合)、
(4)円筒状熱源の内側が断熱状態とみなせる場合(本発明の熱物性測定装置においては、シート状発熱体の内側に断熱部材を設けたり、パッカーの伸縮部位に注出入する流体を熱伝導率の小さな空気とすることで断熱状態とみなせる)。以上の適合条件を満たす場合に無限長の円筒状熱源モデルによる理論解を用いることができる。
無限長の円筒状熱源を一定加熱(単位長さあたりの発熱量Ql)した場合に、円筒状熱源から距離rにおける時間tの温度T(r,t)は、以下のような理論解で求められることが知られている。
Figure 2022132911000002

Ti: 初期温度 (K)
Ql: 円筒状熱源の単位長さあたりの発熱量 (W/m)
k: 地層の熱伝導率 (W/m)
r: 円筒状熱源の中心からの距離 (m)
rb : 円筒状熱源の外径 (m)
L : 円筒状熱源の長さ (m)
Cp: 地層の熱容量 (J /K・m3)
J0: 第1種0次ベッセル関数
J1: 第1種1次ベッセル関数
Y0 : 第2種0次ベッセル関数
Y1 : 第2種1次ベッセル関数
x :積分変数
円筒状熱源をボーリング孔壁(鋼管内部で測定する場合には鋼管の内壁)に密着させ、一定加熱した場合の孔壁(鋼管内部で測定する場合には鋼管の内壁)の温度は上式において、r=rbとすることで算出できる(図3)。
Figure 2022132911000003
熱伝導率は地質による差異が大きく、一般的に0.5~4.0W/(m・K)程度の範囲の値をとる。なお、地下水の流れによる移流効果を含む場合には、その影響を考慮する必要がある。地下水の移流効果がある場合には見かけ有効熱伝導率は概ね1.5W/(m・K)以上の大きな値をとる。
解析の事例として、いくつかの熱伝導率の値を想定した場合における円筒状熱源表面の各温度変化を計算した結果を図4に示す。この計算は、外径r0=150mmの無限長の円筒状熱源を用い、単位長さあたりの発熱量Ql=50W/m(一定)で加熱させる場合を想定している。この条件のもとで、理論解を用いて熱伝導率を1.0~2.5W/(K・m)で0.1W/(K・m)ずつ変えた場合の孔壁における温度の時系列変化の予測値を計算した。一般に掘削をする際には、対象深度を掘削する際の削り屑や周辺の地質柱状図情報から深度方向の地質についての事前情報を得ることができる。本事例においては、媒質が砂であるものとし、熱容量は砂の典型的な値3.03MJ/(K・m3)を採用した。
図4から明らかなように、測定対象(地盤)の熱伝導率の違いによって円筒状熱源表面の温度Tの時間変化は異なり、熱伝導率が小さければ温度上昇幅が大きく、熱伝導率が大きければ温度上昇幅は小さい。温度上昇幅は、加熱量によって変わるため、測定対象の熱伝導率や測定時間、円筒状熱源の外径に合わせて加熱量を適宜増減させることで、測定精度を上げることができる。典型的な地層の場合には、本事例で示している発熱量Ql=50W/m(一定)前後が適している。測定時間は、ここでは100時間加熱した場合の計算を行っているが、地中熱利用システムの設計や施工に活用するうえで熱伝導率は一般に小数点以下1桁程度の精度を用いることが多く、その場合には20時間程度の測定時間で十分である。なお、従来の温水循環法における加熱時法では、60時間程度の加熱時間を必要(非特許文献1)とすることから本発明の方法は測定時間を半分以下に短縮可能である。
以上のような評価によって、円筒状熱源によって加熱を行い円筒状熱源表面で温度を測定し、その時間変化から熱伝導率を求めることができる。具体的には、ここで示した手法に従い、事前に予想される熱伝導率の幅において0.1W/(m・K)間隔で計算し、各熱伝導率の基準曲線を作成しておく。そして実測によって得られた温度の時間変化の時系列データと基準曲線とを比較し、傾向の近い基準曲線を選択し、選択された基準曲線の熱伝導率が実測した対象の熱伝導率であると決定するというものである。また、他の解析方法としては、得られた温度の時間変化の時系列データを、上述した無限長の円筒状熱源加熱の理論解を用いて逆解析し未知数である熱伝導率を求めることもできる。
上述の解析において、測定対象(媒質)は砂を仮定し、熱容量を砂の典型的な値3.03MJ/(K・m3)を採用している。熱容量Cpは、掘削時の削り屑や周辺の地質柱状図情報などから対象深度の地質に合わせて典型的な値を利用することが可能である。一般に地層の熱容量はそれぞれの地質間での差異は小さい。例えば、伝熱工学資料改訂第5版(日本機械学会)によれば、各地質に対して熱容量(MJ/K・m3)は以下のとおりである:砂(3.03)、砂礫(3.18)、粘土(3.13)、火山灰(3.05)、泥炭(3.20)、ローム層(3.44)、花崗岩(2.92)。
例えば、砂を想定すると、多くの場合、典型値の±0.1MJ/(K・m3)の熱容量の幅に収まる。この幅によって測定される温度データへの影響を検証した例を図5に示す。その結果によれば、熱容量による違いは上述した熱伝導率の効果に比べると微小であり、熱伝導率を0.1W/(K・m)の精度で解析するうえで、対象深度の地層の典型的な熱容量の値を用いることで支障はないことがわかる。
また、ここでは発熱量を50W/mとして例示しているが、発熱量を30~70W/mとし、それぞれの発熱量に対応する温度変化を計算した例を図6に示す。その結果によると、発熱量が大きければ温度上昇幅は大きくなることが分かる。適切な加熱量の選択は、実測データと比較しやすい基準曲線が得られるように測定する試料の熱物性(熱伝導率や熱容量)や測定時間、必要とする熱伝導率の精度を考慮して、理論解や数値解析の方法を用いて事前に検討する必要がある。
無限長の円筒状熱源の理論モデルの適用が条件を満たさず、理論解を使用することが難しい場合には、数値解析を用いる方法を採用することができる。この方法は、理論解が適用できない測定環境や測定条件の場合にも適用することができる。この手法は、測定環境や測定条件を数値解析に反映させて温度データの解析を行うことができ、好ましい。数値解析を用いる方法では、例えば、シート状発熱体の形状や鋼管(ケーシング)の熱的影響、伸縮性ゴムシートの無発熱部分を考慮した解析を行うことができる。数値解析を用いる方法では物体の3次元的な形状や個々の物性量を反映した解析が行なわれる(図7)。数値解析を用いる方法は、必要とする精度を得るため適切なサイズの計算グリッドを用いる必要があり、解析解を用いる方法に比べると計算時間は一般には長めである。
例として、有限要素法を用いて上記の影響を考慮した熱伝導率の基準曲線を作成する方法の例を以下に示す。なお有限要素法の解析には産業界や研究分野で広く用いられている汎用性の高い有限要素法ソフトウエアを用いることができる。
パッカーの伸縮部位を膨張させ孔壁に密着させた場合の円筒状熱源(耐水性シリコンラバーヒータと伸縮性ゴムを組み合わせたもの)は外径150mm(円筒状熱源の理論モデルで想定したセンサの外径と同様)とする。長さは400mmとし、鋼管(ケーシング)の肉厚は5mmとする。円筒状熱源においては、伸縮性ゴムを考慮して無発熱部分を円筒全面のうちの面積の8.3%とする。温度センサは、無発熱部分の反対側で、耐水性シリコンラバーヒータの長さの中心部に取り付ける。測定環境として周辺の地層は、水を含んだ飽和状態の砂層を仮定した熱物性(熱伝導率や熱容量)とし、加熱量Q=45W/m(面積当たりの発熱量は円筒の全面が発熱源の場合の発熱量50W/mと同等)とする。この条件のもとで、有限要素法による手法を用いて熱伝導率を1.0~2.5W/(K・m)で0.1W/(K・m)の間隔で変えた場合の孔壁における温度の時系列変化の予測値を計算する。図8に各熱伝導率の基準曲線としてまとめた。理論解を用いた場合の熱伝導率の決定方法と同様に、基準曲線と実測した温度の時系列データを比較し、最も傾向が近いものをその熱伝導率とする。
モデル装置を用いて、本発明の熱物性測定装置を用いて熱伝導率が測定できることの確認および本発明の熱物性測定装置がパッカーの伸縮部位の膨張および収縮によって孔井内で動作可能であることの確認を行なった。
熱伝導率測定
アクリルパイプに断熱部材を巻き付けたうえで、その外側に耐水性シリコンラバーヒータを巻き円筒状熱源とした試験機器を作製した。この試験機器のサイズは、一般的な地中熱交換井の孔径の約5分の1(20%)の縮尺に相当する外径32mmで、高さは100mmであった。この試験機器は、パッカーの伸縮部位に該当する構成を有してないモデル装置である。耐水性シリコンラバーヒータは全面加熱とした。耐水性シリコンラバーヒータは直流電源に接続した。耐水性シリコンラバーヒータの中央部外側に温度センサ(サーミスタセンサ)を耐水性フィルムによって取り付け、温度センサは温度記録器に接続した。なお、耐水性フィルムとしては、非常に薄いため熱抵抗が小さく温度測定に影響を及ばさないものを用いた。上記試験装置の測定部分(円筒状熱源および温度センサを含む部分)を、透明なアクリル容器(300mm×300mm×300mm)の中央部に入れ、アクリル容器に円筒状熱源が隠れるまで、寒天を薄い濃度で溶かした水を流し込んだ。自然状態で放置することにより、水と円筒状熱源とを密着させたまま寒天により水を固定した。純水を薄い濃度の寒天で固めた固形状の水試料は、熱物性が既知であり、熱伝導率の標準試料として一般的に用いられる。
水試料の自然状態の温度安定15.51℃のもと、直流電源から電力を供給し、耐水性シリコンラバーヒータを加熱した。電力量および加熱時間の設定は、先述した円筒状熱源の理論モデル(理論解および数値解析結果)を用いて、熱伝導率を0.1W/(m・K)分解能で測定するうえで適切な値として、単位長さあたりの発熱量45W/m、加熱時間は1200秒であることを事前に算出しこれを採用した。
図9にこの加熱過程に実測した時間変化を示す。本実施例においては、数値解析による解析方法を採用し、熱伝導率を0.4~0.7W/(m・K)までの0.1W/(m・K)間隔で、それぞれの熱伝導率に対応する温度変化(基準曲線)を計算した。この図において周辺の試料に十分熱が伝播する800秒以降のデータに着目すると、この固形状の水試料の熱伝導率は0.55W/(m・K)であると評価できる。固形状の水試料の典型的な熱伝導率(16℃)の値は0.59W/(m・K)である。この結果から、本発明の測定装置による測定結果を用いて解析を行なうことにより熱伝導率は0.1W/(m・K)の範囲内で十分測定できることが示された。
動作確認
孔井のモデルとして、熱交換井のケーシングを模したパイプを用意した。このパイプとしては内部を外から確認できる透明なアクリルパイプを採用し、サイズは実際のケーシングの外径の半分程度である外径65mmのものとした。
本発明の熱物性測定装置のモデルとして、パッカー、円筒状熱源および温度センサを含む小型装置を作製した。パッカーの伸縮部位を構成する伸縮部材としては、高さが250mmであるゴムチューブ、パッカーの芯棒には外径34mmのHIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)を用いた。円筒状熱源を取り付けない状態でパッカーの伸縮部位を膨張させた場合には最大外径90mm程度まで膨らませることができた。パッカーの伸縮部位には、高さ120mm、外径55mm、厚さ1.5mmの円筒状熱源を取り付けた。円筒状熱源の発熱部分となる耐水性のシリコンラバーヒータは、円筒状熱源の全周360°のうち320°を占め、無発熱部分の伸縮性ゴムは40°であった。この円筒状熱源は伸縮性ゴムによりパッカーの伸縮部位の膨張に追随できるものであった。円筒状熱源を取り付けた状態で膨らませるとパッカーの伸縮部位は直径75mmまで膨張できた。これはケーシングを模擬した上記のアクリルパイプに内部から十分密着させることができるサイズである。耐水性シリコンラバーヒータの中央部外側には温度センサ(サーミスタ)を耐水性フィルムによって取り付けた。
作製した小型装置を上記のアクリルパイプ内に挿入し、動作を試験した。その結果、パッカーの伸縮部位の膨張時には円筒状熱源と温度センサとが地盤での孔井を模擬したアクリルパイプの内壁に密着することができ、かつパッカーの伸縮部位の収縮時には小型装置が上下方向に移動ができることが確認された。
本発明の熱物性測定装置によって、これまで線状の電熱ヒータを用いた方法では適用困難だった外径150mm以上の比較的太い孔井内でも測定が可能である。また、孔壁を直接加熱することで温水循環方式や従来の電熱ヒータ(電熱線や鋼鉄製容器による方法)を用いた方式に比べて測定時間を短縮することができる。例えば温水循環方式の加熱法においては、標準的に60時間程度の測定時間が必要である(非特許文献1)が、本発明では、その半分以下の20時間程度で測定が可能となる。さらに本発明の熱物性測定装置は、孔井内で吊り下ろす深度を自由に変えることができることから、対象とする地層の熱伝導率(有効熱伝導率や見かけ有効熱伝導率を含む)を特定の深度でピンポイントに測定するために用いることができる。
従来の原位置測定の方法では、発熱体と孔壁との間には隙間があるため加熱によって最初に装置と孔壁との間の地下水を温め、次に、孔壁を間接的に温めるといた。したがって孔内水が存在しない浅層の土壌や地盤の測定は難しいという課題があった。しかし、本発明の熱物性測定装置では孔壁を直接加熱するため、孔内水の有無にかかわらず浅層の地盤の測定が可能であり、浅層の地盤の熱伝導率を原位置で測定するために用いることができる。
測定作業面においては、孔井内に配置する部分が軽量であるため、手動もしくは簡易な吊り下ろし機構によって測定が可能である。産業面での効果として、地中熱利用システムの設置時における熱応答試験のために、本発明の熱物性測定装置を用いることで、従来に比べて簡便に測定が可能であり、かつ測定時間の短縮化を図ることができる。また吊り下ろし、吊り上げの際には、パッカーの伸縮部位の流体を注出することで円筒状熱源の外形を小さくすることができることから、掘削過程で途中から曲がってしまった(孔曲がり)孔井内での測定にも適用が可能である。
1 耐水性シリコンラバーヒータ
2 断熱シート
3 温度センサ
4 伸縮性ゴムシート
5 ゴムチューブ
6 圧縮空気用チューブ
7 パイプ
8 ゴムチューブ固定ワイヤ
9 圧縮空気出入口
10 温度センサ信号線
11 ヒータ用電源線
12 空気圧縮ポンプ
13 温度記録器
14 直流電源
101 パッカー
102 円筒状熱源

Claims (8)

  1. 孔井内の原位置で地盤の熱物性を測定するための熱物性測定装置であって、
    流体の注出入により収縮および膨張する伸縮部位を有するパッカー、前記伸縮部位に前記流体を注出入する手段、前記伸縮部位に巻回する円筒状熱源、前記円筒状熱源の外周側に配置されている温度センサ、前記円筒状熱源に電力を供給する電源、および前記温度センサで測定される温度を記録する記録手段を含み、
    前記円筒状熱源はシート状発熱体からなるか、または弾性部材と前記シート状発熱体とからなり、
    前記パッカーは前記伸縮部位の収縮時は前記円筒状熱源および前記温度センサとともに前記孔井内を移動可能であり、
    前記伸縮部位は膨張時に前記シート状発熱体および前記温度センサを前記孔井の孔壁に密着させる、熱物性測定装置。
  2. 前記シート状発熱体がシリコンラバーヒータである、請求項1に記載の熱物性測定装置。
  3. 前記伸縮部位と前記シート状発熱体との間に断熱部材を有する、請求項1または2に記載の熱物性測定装置。
  4. 前記流体が空気である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱物性測定装置。
  5. 前記パッカーがパイプとチューブ状の伸縮部材とを含み、前記伸縮部材が前記パイプの一部に巻回し、前記一部の外周と前記伸縮部材とにより前記伸縮部位が形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱物性測定装置。
  6. 前記記録手段が前記温度センサで測定される温度の時系列データを記録する、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱物性測定装置。
  7. 地盤の熱伝導率を孔井内の原位置で測定するための熱伝導率測定方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱物性測定装置を用いる熱伝導率測定方法。
  8. 前記パッカー、前記円筒状熱源および前記温度センサを前記孔井内に配置すること、
    前記伸縮部位を膨張させて、前記シート状発熱体および前記温度センサを前記孔井の孔壁に密着させること、
    前記シート状発熱体により前記孔壁を加熱すること
    前記温度センサで測定される温度の前記加熱に由来する変化の時系列データを前記記録手段により記録すること、および
    前記時系列データを理論解または数値解析を用いて作成した基準曲線と比較して熱伝導率を求めることを含む、請求項7に記載の熱伝導率測定方法。
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