JP2022125154A - リハビリ状態のための評価及び管理システム並びに関係する方法 - Google Patents

リハビリ状態のための評価及び管理システム並びに関係する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リハビリ機関における患者の結果を測定するためのシステム及び方法を開示する。【解決手段】セルフケアに関係する評価を提供し、移動度に関係する評価を提供し、認知に関係する評価を提供し、評価は項目応答理論を使用して予め選択されている。【選択図】図4

Description

関連出願の相互参照
[001] 本願は、参照によりその全体を本明細書に援用する、2017年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/563,960号の優先権の利益を主張する。
技術分野
[002] 本開示は一般にリハビリ技法に関し、より詳細には患者を評価するためのコンピュータ支援方法に関する。
背景
[003] 「結果評価ツール」としても知られる「結果測定」は、患者の変化する医学的状態又は機能状態を明らかにするために使用される一連の項目である。1つの結果測定は、機能状態を測定する方法を提供する機能的自立度評価法(FIM(登録商標):Functional Independence Measure)である。評価は運動的課題(13項目)及び認知的課題(5項目)で構成される18項目を含む。課題は完全介助から完全自立に及ぶ7段階の順序スケールに基づいて臨床家によって評点される。スコアは運動技能で7(最低)から91(最高)に及び、認知技能で7から35に及ぶ。項目は、摂食、整容、入浴、上半身更衣、下半身更衣、トイレ動作、排尿管理、排便管理、ベッドから椅子への移乗動作、トイレ移乗動作、シャワー移乗動作、移動(歩行又は車椅子レベル)、階段、理解、表出、社会的交流、問題解決、及び記憶を含む。
[004] FIM評価法は(完全介助を反映する)1のスコアから(完全自立を反映する)7のスコアに及ぶ採点基準を使用する。7のスコアは患者が完全に自立していることを反映することを意図する。1のスコアは、患者が課題の25%未満しか行えないこと又は2人以上の介助を必要とすることを反映することを意図する。この採点法の結果、独立型の入院リハビリ施設又は病院内の入院リハビリ科において改善が見られる多くの患者は自らのリハビリ中に自身の転帰スコアの向上を必ずしも示さない。例えば脊髄損傷患者はリハビリ中に細かい指の技能の運動技能(患者がコンピュータ又はスマートフォンを使用できるようにする)を著しく改善する場合がある。しかし、この状況でその患者のFIMスコアは改善しない。
[005] 患者の医学的状態又は機能状態の評価をより正確に捕捉する結果測定が求められている。加えて、リハビリ患者等の患者が改善可能な領域をより上手く識別するのを助ける結果測定が求められている。
[006] 「項目」とは、結果測定において使用される質問又は他の種類の評価である。例えばBerg Balance Scaleとして知られている結果測定の或る項目は次のように患者に指示する:「立ち上がって下さい。支えるために手を使わないようにして下さい」。「評点」は項目の評価に応じたスコアの結果又は他の評価である。例えばBerg Balance Scaleの項目に関する評点は次の通りである:患者が手を使わずに立ち上がり、単独で安定できることを反映する4の評点、患者が自分の手を使って単独で立てることを反映する3の評点、患者が自分の手を使って数回の試行後に立てることを反映する2の評点、患者が立つ又は安定するために他者の最低限の介助を必要とすることを反映する1の評点、及び患者が立つために他者の中程度の又は最大限の介助を必要とすることを反映する0の評点。
[007] 古典的テスト理論は、項目の困難度又は受験者の能力等、教育評価及び心理検査の結果を予測する多数の関係する精神測定理論である。古典的テスト理論は、テストに関する人の観測スコア又は獲得スコアは、真のスコア(誤差のないスコア)と誤差スコアとの和であるという考えに基づくテスト理論である。古典的テスト理論は、測定に誤差がない場合に得られる真のスコアTをそれぞれの人が有すると仮定する。人の真のスコアは、独立した無数のテストの実施にわたる期待数-正しいスコアとして定義される。不都合なことに、テストの利用者は人の真のスコアを観測することは決してなく、観測スコアXだけを観測する。観測スコア=真のスコア+幾らかの誤差、つまりX=T+Eだと仮定され、Xは観測スコアであり、Tは真のスコアであり、Eは誤差である。テストの観測スコアXの信頼性、即ち測定の全体的な整合性は、観測スコアの分散に対する真のスコアの分散の比率として定義される。観測スコアの分散は真のスコアの分散と誤差スコアの分散との和に等しく示され得るので、このことは信号対雑音比を公式化し、テストスコアの信頼性はテストスコアの誤差分散の比率が下がるとき上がり、逆の場合に下がる。信頼性は、真のスコアが分かっている場合に説明することができるテストスコアの分散の比率に等しい。信頼性の平方根は、真のスコアと観測スコアとの間の相関である。平行テスト又はクロンバックのα係数として知られている内的整合性の測定等の様々な手段によって信頼性の推定を得ることができる。クロンバックのαは信頼性の下限を提供するように示すことができ、従って或る母集団内のテストスコアの信頼性はその母集団内のクロンバックのαの値よりも常に高い。
概要
[008] 因子分析及び項目応答理論を組み込む結果評価を開発することにより、リハビリ患者の改善を正確に測定する問題を解決する。
[009] 患者に一連の質問を行い、分野固有のスコア及び/又は総合スコアを返すことにより、リハビリ患者の改善を測定する問題を解決する。
[0010] 患者の結果測定の分野固有のスコア及び/又は総合スコアを予測し、分野固有のスコア及び/又は総合スコアが予測スコアを下回る場合に臨床的介入を行うことにより、リハビリ患者のケアを改善する問題を解決する。
図面
[0011] 添付図面は本技法の特徴を詳しく記載するが、これらの技法並びにその目的及び利点は添付図面と共に解釈される以下の詳細な説明から最もよく理解することができる。
[0012]予備結果測定を準備するための特定の例示的方法の流れ図を示す。 [0013]予備結果測定における項目の評点を電子的に収集するための流れ図を示す。 [0014]従来技術で知られているFIM(登録商標)スコアと比較したIRTの例示的な採点法を示す。 [0015]セルフケア分野、認知分野、及び移動度分野における患者のスコアに関する特定のデータの例示的プロットを示す。 [0016]セルフケア分野における項目/課題のそれぞれに関する患者の現在の及び期待される機能状態を更に示す。 [0017]FIM固有の課題ごとに臨床家が目標を選択し及び/又は設定することを可能にする機能を有する「FIMエクスプローラ」セクションである。 [0017]FIM固有の課題ごとに臨床家が目標を選択し及び/又は設定することを可能にする機能を有する「FIMエクスプローラ」セクションである。 [0018]比較チャートを示す。 [0019]患者のFIMスコアと比較したセルフケア分野の様々なプロットを示す。
詳細な説明
[0020] 「双因子モデル」は、項目が特殊因子上にクラスタする一方でそれと同時に一般因子に負荷する構造モデルである。
[0021] 「カテゴリカル」という用語は、明確な又は含意的な順序又は順位付けがない応答選択肢を表すために使用する。
[0022] 「比較適合度指標」(CFI:Comparative Fit Index)は、変数間の関係を仮定しないモデルの性能に対して構築済みの構造モデルの性能を比較する。
[0023] 「複合体構造」は、少なくとも1つの項目が複数の因子に負荷するCFA構造モデルである。
[0024] 「確証的因子分析」(CFA:Confirmatory factor analysis)は、潜在特性及び項目をどのようにグループ化し関連付けるべきかを精神測定学者が理解している場合に利用される因子分析の一種である。構造モデルが策定され、データに適合される。このモデルの目標はデータとの優れた適合を実現することである。
[0025] 「制約」は、数学的安定性又は内容領域理論(content area theory)の適用のためにモデルに課される制限である。例えば、確証的因子分析における2つの因子がそれらの間の関係を一切有さないことが予期される場合、(0.00に等しくなることを要求する)その相関に対する制約をモデルに追加することができる。
[0026] 「連続型」変数は、時間、身長、体重等のカテゴリなしに測定される変数である。
[0027] 「共分散」は、測定上にないが幾らかの説明能力を依然として有し得るモデル内の変数である。例えばリハビリ研究では、年齢、性別、在院日数、診断グループ等に関する共分散を含めることが時として有用であり得る。
[0028] 「二分法」は、2つのカテゴリ(例えば低対高)を有する順序である応答選択肢を示す。或いは、同じく概念的に2つのカテゴリを有する順序応答である正しく得点した項目対間違って得点した項目を指し得る。
[0029] 「特異項目機能」(DIF:Differential item functioning)は、項目応答理論では(異なるサンプル内の)グループごとに又は(或る期間にわたる)観測ごとにパラメータ推定がどのように異なるように振る舞い得るのかについての測定である。
[0030] 「困難度」は、項目応答理論では特定のやり方で応答するのに必要な潜在特性の所要の最低レベルである。二分応答による測定では、単一の困難度(例えば正しく回答する確率を50%以上に上げる潜在特性の最低レベル)がある。多値型応答による測定では、正しい回答又は間違った回答は通常ないので、「困難度」は「厳しさ」としてより適切に表現される。多値型応答による測定では推定される困難度の数がk-1であり、kは応答選択肢の数である。これらの困難度は、次に高いカテゴリを是認するのに必要な潜在特性のレベルを表す。閾値と呼ばれることもある。
[0031] 「次元」は、測定が対処する潜在特性の数を指す。1つの特性を記録する測定は一次元だと言われる一方、複数の特性を記録する測定は多次元だと言われる。
[0032] 「識別力」は、潜在特性の高い能力を有する人と低い能力を有する人とを分けるテストの能力である。同様に、識別力は項目と潜在特性との間の関係の大きさを示す。識別力は、概念的に因子負荷と非常に似ており、数学的に因子負荷に変換することができる。
[0033] 「是認」は、応答選択肢を選択することを意味する。
[0034] 「等式制約」は、項目応答理論及び確証的因子分析では、2つの項目だけが因子に負荷するとき等しくなるように識別力又は因子負荷を制約するための数学的要件である。
[0035] 「等化」は、同じ潜在特性のレベルを記録する様々な測定のスコア間の類似性を得るために項目応答理論を使用することを指す。等化は、同じ測定の代替形式を比較するために使用することもできる。
[0036] 「誤差」は、モデルを取り巻く不確実性の大きさを表すための用語を指す。観測データに非常に近いパラメータ推定を有するモデルは少ない誤差量を有する一方、全く異なるものは大きい誤差量を有する。誤差は、特定のパラメータ推定自体を取り巻く不確実性の大きさも示し得る。
[0037] 「推定」は、データからパラメータ推定を導出する統計的プロセスを指す。これらの手続きは、当技術分野で知られている専用の精神測定ソフトウェアを使用して行うことができる。
[0038] 「探索的因子分析」は、項目をその相関に従ってクラスタ化する因子分析の一種である。探索的因子分析は、何個の因子を抽出すべきかを除き、分析者からの如何なる指示もなしにしばしば行われる。次いでグループ分けを「回転」させる。回転方法は、因子負荷が-1.00、0.00、又は1.00に向けてプッシュされることを確実にすることにより単純構造を示す因子負荷を見つけようと試みる。
[0039] 「因子」は、因子分析において潜在特性を示す。項目応答理論における潜在特性と異なり、因子は自らに関連するスコアを通常は有さない。
[0040] 「因子分析」は、因子と項目との間の関係の強さ及び方向を決定するための統計的方法である。因子分析が基づくデータは項目間の相関である。因子分析は順序データ又は連続データに対応できるが、無順序カテゴリカルには対応できない。因子分析からスコアを計算することは可能だが、IRTスコアの方が信頼できる。探索的又は確証的であり得る。
[0041] 「因子相関」は、2つの因子間の相関を指す。相関性のある因子を有するCFAモデルを「斜交」と呼ぶ。
[0042] 「因子負荷」は、因子分析において項目と因子との間の関係の大きさを表す。相関と数学的に同じではないが、そのスケール及び解釈は同様である。つまり値は(通常)-1.00から1.00に及ぶ。強い負の因子負荷は項目と潜在特性との間の強い逆相関を示すのに対し、強い正の負荷は逆の解釈を有する。0.00の因子負荷は如何なる関係もないことを示す。
[0043] 「適合度統計」又は「適合度指標」は、モデルの性能がどの程度優れているのかを定量化するために使用されるメトリクを指す。人気の適合度メトリク、確証的因子分析、及び構造方程式モデリングは、平均二乗誤差平方根(RMSEA)、比較適合度指標(CFI)、Tucker-Lewis指標(TL1)、及びWRMR/SRMR(weighted root mean-square residual/standardized root mean-square residual)を含む。
[0044] 「一般因子」は、双因子モデルにおいて全ての項目が負荷する因子を指す。
[0045] 「段階応答モデル」(GRM:Graded response model)は、順序応答を可能にする2パラメータロジスティックモデルの拡張である。1つだけの困難度の代わりに、段階応答モデルはk-1個の困難をもたらし、kは応答カテゴリの数である。
[0046] 「階層モデル」は、潜在特性が他の潜在特性に負荷して階層を形成する構造モデルである。
[0047] 「高次/低次因子」は、階層モデルにおいて、高次因子は低次因子が負荷する潜在変数の一種である。
[0048] 「指標」は、適合度指標/統計(例えば比較適合度指標)を指すために又は「測定」の同義語として使用される用語である。
[0049] 「項目」は、応答者又は応答者の代理人(臨床家等)が取り組む測定に関する質問、課題、又は評点を指す。
[0050] 「項目特性曲線(ICC:Item characteristic curve)」は、潜在特性のレベルを所与として様々な応答選択肢を選択する確率をプロットするグラフである。「トレースライン」と呼ばれることもある。
[0051] 「項目応答理論」(IRT:Item response theory)は、構造モデルに従ってスコアを取得し、項目の振る舞いを決定するために使用される統計モデルの集まりである。或る使用形式において、IRTはそれらの項目及びスコアの推定を得るためにサンプル内の全ての人の応答パターンを使用する。IRTは、順序又はカテゴリカルであるデータを使用する。数学的に言えば、項目応答理論は所与の項目に関して人が特定の応答選択肢を選択する確率を予測するために項目及び人の特性を使用する。
[0052] 「IRTスコア」は、標準化スケールで与えられるIRT分析に固有のスコアである。IRTスコアはzスコアと似ている。或るIRT採点法では、0.00のスコアは平均レベルの潜在特性を有することを含意し、大きい負のスコアは低レベルの潜在特性を含意し、大きい正の値は高レベルの潜在特性を含意する。
[0053] 「潜在特性」は、因子分析における因子と似ているが項目応答理論でより頻繁に使用される。潜在特性は、関係する項目セットが測定するとされている内容である。因子、分野、又は次元と区別なく使用することができる。
[0054] 「潜在変数」は、直接測定されない変数のための用語である。潜在変数は潜在特性を含む。
[0055] 「リンク」は、等化と似ているがスコアではなく項目パラメータ推定のためのものである。
[0056] 「負荷」は、項目が因子に対して何を行うのかを記述するために使用される動詞である。例えば:「このモデルでは項目4が局所依存因子並びに一般因子の両方に負荷する」。
[0057] 「局所依存」(LD:Local dependence)は、項目が潜在特性以外の何らかの理由で関係する局所独立仮定の違反である。局所依存がデータにあるように思われる場合、それは項目間の相関をモデリングすることによって又は局所依存因子を作成することによって対処することができる。これは同様の言い回し、ほぼ同一の内容、及び測定上の項目の位置(この最後の例は長い測定の最後の項目で頻繁に生じる)等の多数の理由が原因であり得る。
[0058] 「局所独立」は、項目の振る舞いがモデル内の潜在特性及び項目固有の誤差だけに起因すると述べる精神測定学における仮定を指す。項目がこの仮定に違反すると、それらの項目は局所依存だと言われる。
[0059] 「顕在変数」は、直接測定される変数のための一般名称であり、項目、共分散、及びそのような他の変数を含む。
[0060] 「測定(measure又はmeasurement)」は、何らかの潜在特性のレベルを測定しようと試みる項目の集まりを指す。評価、テスト、質問票、指標、又はスケールと区別なく使用することができる。
[0061] 「モデル」は、精神測定学において応答モデルと構造モデルとの組み合わせである。大まかに言えば、モデルはデータの形式及びモデルの変数内に記録されたデータがどのように関係すべきかの両方を表す。
[0062] 「モデル適合度」は、モデルがどの程度上手くデータを表すのかを示すために使用される用語である。これは、観測データをモデルによって行われる予測と比較すること又は被選択モデルをヌルモデル(どの変数も関係しないモデル)と比較すること等の様々なやり方で行うことができる。モデル適合度を評価するために使用されるメトリクは適合度統計と呼ばれる。
[0063] 「多次元」は、複数の潜在特性を記録する測定を表すために使用される用語である。
[0064] 「多群分析」は、IRTにおいて、異なるグループにサンプルを分けることができるプロセスを指し、各グループに固有のパラメータ推定を推定することができる。
[0065] 「名義モデル」は、順序ではなくカテゴリカルである応答選択肢を有する項目を別にすれば段階応答モデルと似ている。
[0066] 「斜交」は、相関する因子を表すために使用される形容詞である。
[0067] 「順序」は、項目がデータを記録するやり方を表す。例えば項目に対するあり得る応答は、低から高に又は高から低に順序付けされた一連のカテゴリである。
[0068] 「直交」は、ゼロ相関に制限される因子を表す。
[0069] 「パラメータ推定」は、精神測定ソフトウェアによって推定される統計的に導出された値である。項目識別力、因子負荷、又は因子相関等を含み得る一般名称である。
[0070] 「経路図」は、項目、潜在特性、及び共分散間の関係を示すことを意図した図である。経路図では、矩形/正方形は観測された変数(即ち明確に記録された情報がある項目、共分散、又は任意のモデル化された変数)を表し、楕円/円は明確に記録された情報がない潜在特性又は変数を表し、片矢印は(回帰にあるような)単方向の関係を反映し、両矢印はモデル化された変数間の相関/共分散を反映する。
[0071] 「多値型」は、複数の応答選択肢を有する項目のための用語であり、順序又はカテゴリカルであり得る。
[0072] 「擬似双因子モデル」は、全ての項目が特殊因子にクラスタするわけではない双因子モデルである。代わりに一部の項目は一般因子だけに負荷し得る。
[0073] 「精神測定学者」は、測定を専門とする統計学者の一種である。
[0074] 「精神測定」は、測定を作成し又は表現する際に使用される統計を表す。
[0075] 「ラッシュモデル」は、全ての項目識別力が1.00に等しいと仮定する応答モデルである。この仮定が真又はほぼ真でない限り通常は使用されない。この仮定はスコア及び困難度の解釈を容易にし、(相対的に)小さいサンプルサイズに対して項目応答理論を使用できるようにするが、全ての項目識別力が同一に振る舞うことは非常に稀である。これは項目識別力が変化することを可能にする2パラメータロジスティックモデルの単純化された事例である。そのため、ラッシュモデルは1パラメータロジスティックモデル(1PL)と呼ばれることがある。応答が二分法であるとき使用され得る。
[0076] 「応答者」は、測定の項目に回答する人物である。
[0077] 「応答」は、項目に対する応答者の回答である。
[0078] 「応答カテゴリ」は、項目に対する応答として応答者が選択することができる様々な選択肢である。項目が二分法の応答をもたらす場合、データは正(1)又は誤(0)として記録される。
[0079] 「応答モデル」は、項目応答理論において、測定モデルが応答のフォーマットを処理するやり方を指す。人気の応答モデルはラッシュモデル、2パラメータロジスティックモデル、3パラメータロジスティックモデル、段階応答モデル、及び名義モデルを含む。
[0080] 「応答パターン」は、測定の各質問に対する応答者の回答を表す一連の数である。
[0081] 平均二乗誤差平方根(RMSEA)は、適用される精神測定における適合度統計である。観測データに対する期待データ(モデルが生成するデータ)の近さを測定する。RMSEAは0.08未満であることが通常は望ましいが、当業者の中にはRMSEAが0.05未満であることを望む者もいる。
[0082] 「スコア」は、応答者が保持する潜在特性のレベル又は量を表すことを意図する数値である。古典的テスト理論は項目応答の和としてスコアを計算するのに対し、項目応答理論は応答パターン及び項目の質の両方を使用してスコアを推定する。
[0083] 「シグモイド」(文字通り「S字型」である)は形容詞である、2PL項目のTCC又はICCの形状を表すために時として使用される。
[0084] 「単純構造」は、全ての項目が一度に1つの因子に負荷する構造モデルである。
[0085] 「特殊因子」は、双因子モデルにおいて、項目セットが負荷する因子である。
[0086] 「構造方程式モデリング」(SEM:Structural equation modeling)は、潜在特性等の潜在変数間の関係を可能にする確証的因子分析(CFA)の拡張である。モデル内の全ての潜在変数が潜在特性である場合、構造方程式モデリング(SEM)及びCFAが区別なく使用されることが多い。
[0087] 「構造モデル」は、潜在特性と項目との関係に関する仮説の体系を表す数学的記述である。経路図として示される。
[0088] 「合計スコア」は、測定の全ての応答の数値を合計することによって計算されるスコアである。
[0089] 「合計スコア換算」(SSC:Sum score conversion)は、合計スコアとIRTスコアとの関係を示す表である。
[0090] 「テスト特性曲線」(TCC:Test characteristic curve)は、合計スコアとIRTスコアとの関係をプロットする図である。
[0091] 「テストレット」は、全体的な潜在特性の一部の成分を測定する項目の小集合である。潜在特性の定義が事前に明確に定められている場合、テストレットで構成される測定を作成することはより容易に解釈されるスコアをもたらし得る。
[0092] 「閾値」:「困難度」参照。
[0093] 「Tucker-Lewis指標」(TLI):変数間の関係を仮定しないモデルの性能に対して構築済みのモデルの性能を比較する適合度指標である。優良適合モデルは0.95を上回るTLIを通常有する。
[0094] 「3パラメータロジスティックモデル」(3PL):「推測」パラメータも含む2パラメータロジスティックモデルの拡張である。例えば選択肢が4つある多肢選択項目では、無作為に推測しても正しく回答する確率が25%はある。3PLは、正しく回答するこの非ゼロの確率を認める。応答が二分法であるとき使用される。
[0095] 「トレースライン」:「項目特性曲線」参照。
[0096] 「2パラメータロジスティックモデル」(2PL)は、ラッシュモデルと似ているが項目識別力が変化することを可能にする。項目応答が二分法であるとき使用され得る。
[0097] 「一次元」は、1つだけの潜在特性を記録する測定を表すために使用される用語である。
[0098] 「変数」は、単一の事柄を測定する1組の直接記録されるデータ(顕在)又は間接的に記録されるデータ(潜在)を表すために使用される一般名称である。
[0099] WRMR/SRMR(weighted root mean-square residual/standardized root mean-square residual)は、モデルの残差の大きさを測定する適合度統計である。残差とは、観測データとモデルが予測するデータとの差である。推奨される典型的なWRMR値は1.00未満だが、この推奨はサンプルのサイズ又はモデルの複雑度に基づいて変わり得る。WRMRはモデル内に少なくとも1つのカテゴリカル変数がある場合に使用されるのに対し、SRMRは全ての変数が連続的である場合に使用される。
[0100] 図1は、電子医療記録に含めるための予備結果測定100を準備するための特定の例示的方法の流れ図を示す。
[0101] 101で、項目セット200を識別する。一実施形態では、臨床家が自らの訓練、教育、及び経験に基づき、項目セット200に含めるための適切な項目に対する自らの入力を与えるように尋ねられ得る。臨床家の例は、内科医、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、及びPCTを含み得る。項目セット200の項目は、当技術分野で知られている様々な結果測定から生じ得る。
[0102] 102で、治療又は臨床転帰に関連する「分野」と呼ぶ複数の領域の1つ又は複数へと項目セット200の項目をグループ化することができる。臨床家はこれらの分野を識別することができる。一実施形態では、項目セット200の項目を「セルフケア」、「移動度」、及び「認知」と題する3つの分野にグループ化することができる。追加の及び/又は代替的な分野の他のグループ化も可能であることを理解すべきである。
[0103] 103で、関係する分析ステップを行うことができる。例えば、医療機関において患者を評価するために項目セット200内の項目が従来の慣行において使用される頻度を分析することができる。或いは、その項目を行うための機器のコストを評価することができる。臨床文献を検討して、精神測定学的に許容可能であり臨床的に有用な項目セット200内の項目を有する結果測定を識別することができる。例えば項目セット200内の1つ又は複数の項目を有する結果測定の信頼性及び妥当性を検討してそれが精神測定学的に許容可能であることを確実にすることができる。別の例として、各結果測定及び/又は項目を検討してそれが臨床的に有用であることを確実にすることができる。例えば人のバランスをテストするために使用される文献内で入手可能な多くの項目があるが、リハビリの脈略でそれらの全てが患者にとって適切とは限らない。これらの及び同様の要因に基づき、患者、臨床家、及び他の医療従事者の負担を減らすために最初の項目セットを狭めることができる。
[0104] 104で、改訂済みの複数の項目を収集する。それらの複数の項目に対して試験的研究を行うことができる。試験的研究は、各臨床家が改訂済みの項目の全てを使用して各患者を評価するように、標準化されたやり方で改訂済みの項目について臨床家に患者を評価させることによって行うことができる。別の実施形態では、臨床家は患者の特定の臨床的特徴に基づき、どの項目を使用して患者を評価すべきかを選択することができる。特定の項目の選択に関する決定は患者のリハビリ滞在中に、例えば入院患者の入院時の評価で得た情報に基づいて行うことができる。患者の向上を判定するために、項目は患者の入院滞在中に少なくとも2回実施することができる。試験的研究は電子医療記録システムを使用して円滑化することができ、それにより臨床家は電子医療記録内に項目のスコアを入力する。
[0105] 105で、試験的研究の分析を行うことができる。例えば、臨床家が患者に対して行うのに時間がかかりすぎる項目は除去することができる。
[0106] 106で、予備結果測定100のための元の紙ベースの項目を電子医療記録内に実装する。個々の項目レベルの評点を電子的に記録することができる。例えば実装すべき項目は、105における試験的研究の分析の結果である項目であり得る。但し、試験的研究の分析は必須ではない。或いは、予備結果測定100内の項目は電子医療記録の外部のデータベース等の電子システム内に実装することができる。一実施形態では、外部の電子システムは、データベース接続技術等の当技術分野で知られている方法を使用して電子医療記録と通信することができる。107で、予備結果測定100のための項目を既知の方法を使用してEMR内にプログラムし、臨床家が自らの評点を電子医療記録内に入力することを可能にする。一実施形態では、予備結果測定100の特定の項目に対する特定の評点を臨床家が入力することを警告し、リマインドし、及び/又は要求するためのプロンプトをEMRが提供し得る。かかるプロンプトは、EMR内への臨床データ入力の信頼性及び完全性を改善することができる。
[0107] 図1に関する上記の解説は様々な結果測定から特定の項目を選択することに言及したが、結果測定自体の選択に関して同様の方法を行えることを理解すべきである。例えば104で、患者を評価する際にどの項目を使用すべきかを選択する代わりに、結果測定全体を選択し又は無視することができる。
[0108] 図2は、予備結果測定100内の項目の評点を電子的に収集するための流れ図を示す。201で、臨床家が患者に対する評価を行う。一実施形態では、臨床家が予備結果測定100内の全ての項目を使用して評価を行うことができる。別の実施形態では、臨床家は、その臨床家の診療範囲に固有の予備結果測定100内のテスト又は項目を行うことができる。例えば理学療法士は、理学療法に固有の予備結果測定100内のテスト又は項目を行うことができる。更に別の実施形態では、臨床家は患者に最も関連する予備結果測定100内のテストを識別するために自らの教育、訓練、及び経験に基づく自らの臨床判断を用いることができる。患者が極めて重篤であり又は非常に限られた機能を有する場合、臨床家は特定の項目を行わないことが分かる。例えば臨床家は、新たに四肢まひになった患者に対し、歩くことを患者に要求するテストを行うことは求めない。
[0109] 評価は、患者が病院に入院した時点で又はその直後に行われる初期評価であり得る。一実施形態では、1か月間又は1年間等の或る期間の間ケアを受けている各患者を評価する。別の実施形態では、或る期間の間ケアを受けている患者の大部分を評価する。更に別の実施形態では複数の患者を評価する。他の実施形態では、入院患者だけ、外来患者だけ、又はその組み合わせを含めるように患者の母集団を洗練させることができる。
[0110] 様々な実施形態において、予備結果測定100内の特定のテストを入院時に又は入院直後に1回行い、退院時に又は退院直前に再び行うことができる。様々な実施形態において、予備結果測定100内の特定のテストを毎週行うことができる。様々な実施形態において、予備結果測定100内の特定のテストを1週間に2回等、1週間に複数回行うことができる。
[0111] 一実施形態では、評価は評価を行うことに固有の集中化された位置で行われ得る。評価は、自分の具体的役割が評価を行うことである1組の臨床家によって行われ得る。患者の機能状態を客観的に評価するのに適格なスタッフ及び十分な機器がある集中化された位置は、管理された安全な環境内で標準化されたプロセスによって運営され得る。一実施形態では、臨床家が検査技師の評価のための指示を出す。例えば臨床家(理学療法士、療法士、看護師、又は心理学者)は特定のテスト(歩行及びバランスのテスト等)又はテスト群を指示する。テストの指示は評価部門(「AAL」)に電子的に送信され、患者のためにハードコピーが印刷され得る。AALの準備が整うと、患者は必要に応じて介助を伴ってAALに移動することができる。技師等のスタッフが指示されたテストを行う。テストの結果は記録し、電子医療記録内に入力/伝送することができる。必要に応じてケアプランを修正するために、臨床家はテストの結果を検討することができる。このプロセスは、テストをどのように行うのかを臨床家が知るのにかかる時間を短縮することができる。AALの1つの利点は、新たなテストが導入されるたびに様々なテストをどのように行うのかを他の臨床家が学ぶ必要がないことである。臨床家は、テストをどのように行うのかではなくテストの結果をどのように読み取るのかを学ぶだけでよい。適切に訓練された適格な職員がテストを行うことができる。臨床スタッフは評価ではなく治療に集中することができる。結果を改善するために更に多くの治療セッション又は追加の時間を設けることができる。複数のユニットの需要及び保守費用を減らすために、テスト機器は集中的に保たれる。テストは、よく管理された標準化され且つ安全な環境内で行うことができる。技師は標準化された手続きを利用して評価者によって引き起こされる潜在的なバイアス(経時的な改善を示すための高い評点の傾向)を回避し、それによりデータの質を改善することができる。
[0112] 各評価の評点はEMR内に保存することができる。例えば各評価の評点は予備評点データセット150内に保存することができる。202で、予備評点データセット150に対してデータ分析及びクリーンアップを行ってデータの質を改善することができる。例えば予備評点データセット150から範囲外の評点を除去することができる。同じ臨床家からの予備評点データセット150内のデータパターンを検討し、当技術分野で知られている方法を使用してクリーニングすることができる。「依存」から「自立」への大幅な評点の増加を示す患者の予備評点データセット150内の評点も破棄することができる。特定の評価の疑わしいデータも破棄することができる。
[0113] 203で、照会し分析することができる形式にあるデータを得るために、当技術分野で知られている方法を使用して評点データを更に抽出し、クリーニングし、準備することができる。データを品質に関して検討することができ、予備評点データセット150についてデータピボット、データマージ、及びデータ辞書の作成等の様々なデータオプションを行うことができる。予備評点データセット150からのデータは、更なる分析のためにEMR内に又はデータウェアハウス内等の異なる形で記憶することができる。予備評点データセット150内のデータを分析のために構成する多くのやり方が存在することを当業者なら理解されよう。一実施形態では、期間及び患者識別情報等の複数の次元にわたる分析に項目の評点を利用することができるように、予備評点データセット150が構成される。
[0114] 予備評点データセット150が分析のために準備されると、予備評点データセット150に対して精神測定学的評価を行うことができる。精神測定学的評価は、結果測定が測定することを意図する内容を結果測定が実際にどの程度上手く測定するのかを評価する。精神測定学的評価は古典的テスト理論分析、因子分析、及び項目応答理論の組み合わせを含むことができ、信頼性、妥当性、応答性、次元数、項目/テスト情報、特異項目機能、及び等化(スコアクロスウォーク)を含み得る様々な側面について予備評点データセット150を評価する。一実施形態では、予備結果測定100内の項目の信頼性並びに予備結果測定100及び分野がどのように連携するのかを検討するために古典的テスト理論分析を使用することができる。
[0115] 項目削減。項目削減ステップ152は、期待通りに機能しない項目を予備結果測定100から削減することを支援する。因子は信頼性、妥当性、及び応答性(変化に対する敏感さとしても知られる)を含み得る。項目削減ステップ152の目的は、データセットの精神測定特性を犠牲にすることなく、IRT結果測定180内の最低限の項目の部分集合まで予備結果測定100内の項目から潜在的な項目内容の冗長性をなくすことである。項目削減ステップ152はコンピュータ又は他の計算装置を使用して、例えばコンピュータプログラム125を使用して行うことができる。コンピュータプログラム125はRプログラミング言語又は別の適切なプログラミング言語で書かれ得る。コンピュータプログラム125は、所望の項目の数を指定することを可能にするための選択肢(並びに特定の項目を含めるための選択肢)を提供し、それらのユーザ定義制約内の項目のあり得る全ての組み合わせについてクロンバックのα係数の信頼性推定値を計算する。コンピュータプログラム125内でクロンバックのα係数の許容範囲を定めることもできる。加えてコンピュータプログラム125は、項目の削減済みの各部分集合155に対する1因子の確証的因子分析(CFA)モデルの適合度を決定するために、Mplus(Muthen&Muthen, Los Angeles, CA, http://www.statmodel.com)等の統計的モデリングプログラムの構文を構築し実行することができる。
[0116] コンピュータプログラム125は、予備結果測定100(FIST、BBS、FGA、ARAT、及びMASA)内に含まれ、且つクロンバックのα信頼性が0.70から0.95の間にある4項目から8項目の一次元部分集合に関して探索される結果測定の幾つかを分析するために使用され得る。これらの制約を使用し、多くの測定における項目数を大幅に減らすことができる。例えば、優れた精神測定特性を維持しながら測定をその元の長さの少なくとも半分に減らすことができる。結果として生じる項目の部分集合は、確証的因子分析(CFA)の構成要素としての役割を果たす。一実施形態では、FIM(登録商標)の項目等、特定の項目を項目削減プロセスに含めなくてもよい。一実施形態では、項目削減ステップ152を複数回行うことができる。例えば項目削減ステップ152は、予備結果測定100内に含まれる各結果測定に対して行うことができる。
[0117] 項目削減ステップ152では、項目が互いに関係する程度をコンピュータプログラム125が決定する。コンピュータプログラム125は、予備結果測定100内の結果測定の中の項目が互いに関係する程度を決定することができる。一実施形態では、項目は高度に相関する応答を有する場合は結果測定内で互いに関係する。項目の最初のコアセットを提供することによって分析を開始することができ、項目の数は項目ペア間の相関に基づいて臨床家の入力によって決定され得る。例えば、コンピュータプログラム125は項目Aが項目Bにどのように関係するのかを決定することができ、項目A及び項目Bはどちらも同じ結果測定内にある。高い相関がある場合、項目A及び項目Bの両方をコアセット内に含める。次いでコンピュータプログラム125は、新たな項目Cが項目セット{A,B}にどのように相関するのかを決定することができる。高い相関がある場合、項目Cをコアセット内に含める。この方法は追加の項目D、E、F等を用いて繰り返すことができる。上記のように、項目のあり得る全ての部分集合の信頼性(クロンバックのα)をプログラムが評価する。プログラムは、或る項目セットの応答を第2の項目セットの応答と相関させる。クロンバックのαは当技術分野で知られているが、簡潔な例をここで示す。クロンバックのαを計算する際に使用する情報は、項目の部分集合内のあり得る全てのsplit-half間の相関である。例えば3つの項目{A,B,C}を使用し、クロンバックのαはA対BC、B対AC、及びC対ABの相関を平均する。換言すれば、或る組の一意の部分集合の全てのペア間で相関を計算する。相関分析の目的は、項目が基礎を成す同じ構成体を測定していること、及び信頼性を改善していることを確実にするのを助けることである。
[0118] 表1は、サンプルサイズを5項目に等しく設定するBerg Balance Scale(「BBS」)の結果測定に関する項目削減ステップ152の例示的出力を列挙する。「項目」列内の各セル内の数字は、BBS上の質問の数字(1:支持なしの座位保持、2:体位変更-座位から立位、3:体位変更-立位から座位、4:移乗動作、5:支持なしの立位保持、6:閉眼立位保持、7:閉脚立位、8:タンデム立位、9:片足立ち、10:回旋(足固定))を反映する。削減済みの各部分集合155を関連するクロンバックのα値と共に示す。第1の削減済みの部分集合は、削減済みの部分集合の最も高いクロンバックのαを表1内で有する。一実施形態では、以下でより詳細に説明するCFAステップ160のための最初の削減済みの部分集合として最も高いクロンバックのαを有する削減済みの部分集合を使用する。
Figure 2022125154000002
[0119] 確証的因子分析。因子分析は、1組の観測される変数内に含まれる基礎を成す次元の数を決定するために、及び基礎を成す次元のそれぞれに対応する変数の部分集合を識別するために使用される統計的方法である。基礎を成す次元は、連続潜在変数又は因子と呼ぶことができる。観測される変数(項目としても知られる)はインジケータと呼ばれる。確証的因子分析(CFA)は、過去の研究により所与の母集団に関する1組の変数の次元数が既に分かっている状況で使用され得る。CFAは、確立された次元数及び因子負荷パターンが同じ母集団からの新たなサンプルに適合するかどうかを調べるために使用され得る。これが分析の「確証」の側面である。CFAは、確立された次元数及び因子負荷パターンが新たな母集団からのサンプルに適合するかどうかを調べるためにも使用され得る。加えて、因子の分散及び共分散/相関を調べることにより、因子モデルは個人の特性を研究するために使用され得る。因子の分散は因子の不均一性の程度を示す。因子の相関は因子間の関連の強さを示す。
[0120] 確証的因子分析(CFA)は、予め指定された因子構造内の項目構成が統計的にどの程度当てはまるのかを検証するためにMplus又は他の統計ソフトウェアを使用して行うことができる。CFAは因子負荷、因子分散、及び因子共分散/相関に対する制限によって特徴付けられる。CFAは少なくともm^2個の制限を必要とし、mは因子の数である。CFAは、変数に対する軽微な因子の影響を表すのに有用であり得る相関残差を含み得る。CFAの一部として1組の背景変数を含めることができる。
[0121] Mplusは、単一のグループ又は複数のグループについてCFAモデル及び背景変数を有するCFAモデルを推定することができる。CFAモデルの因子インジケータは連続的、打ち切り、二値、順序カテゴリカル(順序)、カウント、又はそれらの変数の種類の組み合わせとすることができる。因子インジケータが全て連続的である場合、Mplusには推定法の7個の選択肢、つまり最大尤度(ML)、ロバスト標準誤差及びカイ二乗を有する最大尤度(MLR、MLF、MLM、MLMV)、一般化最小二乗法(GLS)、及びADFとも呼ばれる重み付き最小二乗法(WLS)がある。少なくとも1つの因子インジケータが二値又は順序カテゴリカルである場合、Mplusには推定法の7個の選択肢、つまり重み付き最小二乗法(WLS)、ロバスト重み付き最小二乗法(WLSM、WLSMV)、最大尤度(ML)、ロバスト標準誤差及びカイ二乗を有する最大尤度(MLR、MLF)、及び重みなし最小二乗法(ULS)がある。少なくとも1つの因子インジケータが打ち切り、無順序カテゴリカル、又はカウントである場合、Mplusには推定法の6個の選択肢、つまり重み付き最小二乗法(WLS)、ロバスト重み付き最小二乗法(WLSM、WLSMV)、最大尤度(ML)、並びにロバスト標準誤差及びカイ二乗を有する最大尤度(MLR、MLF)がある。
[0122] 測定削減ステップからの項目の高信頼の部分集合を使用し、分野内の全ての項目が互いに関係すると仮定するモデルをMplus等の統計ソフトウェア内で定めることができる。モデルは特定の構成体をその分野のプレビューの下で測定することもできる。例えばセルフケア測定から取られる全ての項目の部分集合は、セルフケアを測定するが、それと同時にバランス、上肢機能、及び嚥下のうちの1つも測定するように仮定され得る。このやり方でモデルを構築することは、分野全体(例えばセルフケア)並びにその分野を構成する1組の互いに関係する構成体(例えばセルフケアを構成する構成体であるバランス、UE機能、及び嚥下)の両方を測定できるようにする。データを所与とし、モデルの構造は各項目ペア間の1組の期待される相関を含意する。しかし、それらの(多分)相関はデータから直接計算することができる。それらの相関は、観測される相関である。統計学において「モデル適合度」と呼ばれる構築済みのモデルの妥当性は、観測される相関と期待される相関との差の測定である平均二乗誤差平方根(RMSEA)を使用して決定することができる。好ましい実施形態では、かかる差の値が小さい(例えば0.08未満である)場合はモデルが許容可能な適合度を有する。
[0123] 削減済みの部分集合155に対してCFAステップ160を適用した後、CFAステップ160の出力は一般因子負荷を含む因子負荷を含み得る。一般因子負荷は-1から1とすることができ、0.2~0.7の一般因子負荷の値は関連する項目を因子が上手く評価するのかどうかを示す。CFAステップ160の出力は項目ごとに追加の因子負荷を与え得る。一実施形態では、各項目が下位分野ごとに因子負荷を有し得る。例えば各項目は、バランスの因子負荷値、上肢の因子負荷値、嚥下の因子負荷値、及び他の各下位分野の因子負荷値を有し得る。一実施形態では、項目が下位分野に関連する場合は因子負荷値が非ゼロになる。
[0124] 特定の例では、削減済みの部分集合155にCFAステップ160を適用することが、新たな削減済みの部分集合155の選択を必要とする問題を引き起こし得る。例えば0.7を上回る一般因子負荷値、又は特に1.0に近い値は冗長性を示す。例えばアクションリサーチアームテスト(ARAT)の結果測定に基づいて項目が採点されるやり方は、高過ぎる信頼性を必然的に要求する。最初の(最も困難な)項目で最高スコアを達成した患者は、そのスケール上のその後の全ての項目で3のスコアを得ることが認められる。最初の項目で患者が3未満のスコアを得る場合、第2の項目を評価する。これは最も簡単な項目であり、患者のスコアが0である場合、その患者は残りの項目で0よりも高いスコアを得る可能性は低く、他の項目について0が与えられる。この採点方法は高過ぎる信頼性を要求する。他の例では、因子負荷値が1を上回る場合、かかる値は項目ペアが(あり得ない)負の分散を有することを反映し、そのためCFAステップ160を新たな削減済みの部分集合155に対して実行する必要がある。新たな削減済みの部分集合155は、項目削減ステップ152によって生成される削減済みの部分集合のグループから選択することができる。例えば、次に高いクロンバックのαを有する新たな削減済みの部分集合を選択し、その新たな削減済みの部分集合にCFAステップ160を適用することができる。
[0125] 加えて、CFAステップ160を実行するプロセスの間、IRT結果測定180を生成するために使用されるモデルの適合度を改善するために、或る下位分野に含まれるものとして臨床家が指定した項目を異なる下位分野に移動すべきであることが明らかであり得る(以下で更に論じる)。例えば本明細書に記載の実施形態の策定中、「強さ」に関係するものとして臨床家が識別した項目がセルフケア分野に最初は配置されていた。しかしCFAステップ160を実行する際、それらの項目がモデルに適合しないと判定された。それらの項目を「上肢機能」の下位分野に移動することでモデルの適合度が改善された。
[0126] 以下の表2は、表1に示したグループ1~10を含む1因子CFAの適合度統計を示す。CFAステップ160では、表Bに列挙する適合度統計が通常の「優良適合」基準を満たすかどうかに関する評価を行うことができる。一実施形態では、それらの基準がRMSEA<0.08、CFI>0.95、TLI>0.95、及びWRMR<1.00である。他の優良適合基準も使用できることを当業者なら理解されよう。
Figure 2022125154000003
上記の例は1つの結果測定であるBerg Balance Scaleに関してのみ示すが、CFAステップ160は予備結果測定100内の各結果測定に適用されることを理解すべきである。
[0127] 項目応答理論。一実施形態では、複数の高レベル分野を含むようにIRT結果測定180を構成することができる。例えばIRT結果測定180は、(セルフケアを行う患者の能力を反映するように決定される項目を含む)「セルフケア」分野、(移動できる患者の能力を反映するように決定される項目を含む)「移動度」分野、及び(患者の認知能力を反映するように決定される項目を含む)「認知」分野を含むように構成され得る。各高レベル分野の中で、「因子」又は「クラスタ」とも呼ばれる特定の評価領域を識別することができる。表3は各高レベル分野に関連する例示的な評価領域を反映する。
Figure 2022125154000004
[0128] IRT結果測定180の測定目標は、全般的な分野(即ちセルフケア、移動度、及び認知)並びにそれらの分野内の特定の評価領域を測定することを含むので、分野のそれぞれに関する双因子構造を標的にすることができる(一般因子及び分野固有因子)。特殊因子の構成は各項目セットの内容によって決定され得る。例えばセルフケア分野内の「バランス」評価領域を形成するために、FIST、BBS、及びFGAからの項目を組み合わせることができる。RMSEA<0.08の基準を使用してデータに対する双因子モデルの許容可能な適合度を評価し(Browne&Cudeck, 1992)、追加の交差負荷(換言すれば項目が幾つかの因子に寄与すること)等、局所項目依存及びモデルに対する潜在的な改善を調べるために修正指標も計算した。
[0129] 項目応答理論は、人の能力と項目特性(困難度等)との間の関係を記述する数学モデルを反映する。例えば、より能力が高い人はより難しい課題を行える可能性が高く、一連の質問に基づいてより適応された介入を可能にし得る。高レベル又は低レベルの特性を有する人を区分する能力である項目の「識別力」等、他の項目特性も関連し得る。
[0130] 分野のそれぞれについてCFAモデルを構築した後、flexMIRT(Vector Psychometric Group, Chapel Hill, North Carolina, US)等の項目応答理論ソフトウェアパッケージ内で実行するために最終構造をコード化することができる。flexMIRTは、項目の分析及びテストの採点用のマルチレベル、多次元、及び多群項目応答理論(IRT)ソフトウェアパッケージである。臨床家によって評点される達成度評定からの項目応答の順序カテゴリカルな性質に対処するために、多次元段階応答モデル(M-GRM)を選択することができる。例えば次元は「セルフケア」、「移動度」、及び「認知」とすることができる。「セルフケア」の下位分野は「バランス」、「上肢機能」、「強さ」、「体位変更」、及び「嚥下」とすることができる。「移動度」の下位分野はバランス、車椅子(「W/C」)のスキル、体位変更、ベッド移動度、及び移動度とすることができる。「認知」の下位分野は「意識」、「興奮」、「記憶」、「発話」、及び「意思伝達」とすることができる。
[0131] しかし好ましい実施形態では、能力の重要な下位分野に集中するために下位分野を削減することができる。例えば「セルフケア」では、削減する下位分野はバランス、UE機能、及び嚥下であり得る。「認知」では、削減する下位分野は認知、記憶、及び意思伝達であり得る。「移動度」では下位分野がない可能性があり、換言すれば下位分野を全てまとめてクラスタ化することができる。
[0132] 分析も性質上多群であり得る。例えばセルフケア及び移動度のサンプルは、バランス(座位、立位、又は歩行)のレベルによって決定されるグループに分けることができる。別の例として、認知のサンプルは広範な診断カテゴリ(脳卒中、脳損傷、神経性、又は無関連)に分けることができる。一実施形態では、モデルの複雑さに対処するために、メトロポリスヘイスティングス-ロビンモンロー(MH-RM)アルゴリズム(Cai,2010)をより効率的なパラメータ推定のために使用することができる。MH-RMは、連続した2つのサイクル間の差が選択された基準を下回るまで以下の3つのステップを何度も繰り返す。ステップ1(補完)で、前のサイクルから取られる項目パラメータ推定によって暗示される分布から潜在特性のランダムサンプルを補完する。最初のサイクルである場合、アルゴリズムの開始値によって暗示される分布を使用する。この補完はMHサンプラを使用して行うことができる。ステップ2(近似)で、補完したデータの対数尤度を評価する。ステップ3(ロビンモンローアップデート)で、ステップ2の対数尤度に対してロビンモンローフィルタを使用することにより次のサイクルの新たなパラメータ推定を計算する。次いで、ステップ3の情報を使用してステップ1を繰り返す。傾きは項目識別力を反映することができ、切片は項目の困難度を反映することができる。
[0133] 項目の傾き及び切片に加えて、患者の能力レベルを反映する最大事後(MAP)潜在特性スコアを患者ごとに計算することができる。
[0134] IRTのためのプリンシパルコーディング(principal coding)は、CFA後に選択される数学的構造をIRTを使用して評価可能な構造へと変換することに集中する。分析に使用されるデータは、例えば単純に患者を評価した全ての項目に対する患者の評点であり得る。一貫性を得るために、出された各項目に対する各患者の直近に入手可能なデータを使用することができる。このように一貫性を保つことには患者のスコアを特定の基準系、つまり典型的な退院レベルに置く利便性がある。MAP(最大事後)採点法を使用できるが、代わりに使用することができるML(最大尤度)、EAP(期待事後)、又はMI(多重補完)等の他の採点方法が知られている。加えて、使用することができる様々な推定方法がある。例えば、期待値最大化アルゴリズムを用いた周辺最大尤度(MML-EM)を使用することができる。しかしこの方法は、少なからぬ数の次元を扱うとき不利を招き得る。好ましい実施形態では、メトロポリスヘイスティングス-ロビンモンロー(MH-RM)推定を使用する。
[0135] 最大事後(MAP)採点は2つの入力、つまり母集団の得点密度(通常は各次元の標準正規と見なされる)、及び患者を評点した各項目のIRTパラメータを必要とする。項目に関して知られていること及び項目のそれぞれについて患者がどのように評点されたのかを所与とし、各項目について母集団密度をIRT関数と掛けることは尤度として知られているもの、つまり様々なスコアの確率の数学的表現をもたらす。その関数の最大値の位置が患者のMAPスコアである。
[0136] 時として、或る項目に関する応答選択肢が非常に稀にしか選択されず、その項目のIRTパラメータを推定することに関連する問題を引き起こし得る(その応答選択肢が不要であり得ることも含意する)。そのような場合、それらの応答を隣接するカテゴリ内に折り畳むことができる。例えば或る項目に{1,2,3,4}の応答があり、2の応答がデータ内で非常に稀にしか認められない場合、データ{1,2,2,3}を再コード化することができる。IRT分析では数字の実数は重要ではなく、代わりに順序性が大事であることを理解すべきである。
[0137] グループ構成:より的を絞った評価を可能にするために、ここで使用するIRT分析は性質上多群とすることができる。セルフケア及び移動度では、患者をバランスレベル(なし、座位、立位、及び歩行)に従ってグループ化することができる。同様に、グループは認知的診断(脳卒中、脳損傷、神経性、又はなし)に従って認知分野内でも形成することができる。この方法は、各患者に適した項目だけを含む複数のテストフォームをもたらし得る。例えばかかるテストフォームは、「セルフケア」及び「移動度」ではバランスなし、座位バランス、立位(までの)バランス、及びバランス制約なし、「認知」では脳卒中、脳損傷、神経性、又は不調なしのようなテストフォームを含み得る。フォームは評価領域ではなくグループの帰属に応じて適応させることができる。例えば、患者のバランスレベルはセルフケア分野及び移動度分野上でどのバランス測定項目が現れるのかに影響し得る一方、患者の認知的診断(もしある場合)はどの測定がフォーム上で現れ得るのかに影響し得る。例えばABSは認知測定の脳損傷フォーム上でしか使用されず、KFNAPは脳卒中の測定でしか使用されない。)
[0138] 項目応答理論は分野ごとに別個のスコアをもたらす。例えば患者は「セルフケア」分野の得点が1.2であり、「移動度」分野の得点が1.4であり、「認知」分野の得点が3であり得る。一実施形態では、これらのスコアが臨床家、患者、及び他者に別々に報告され得る。他の実施形態では、これらのスコアが単一のスコアへと結合され得る。一実施形態では、+1のスコアは患者が平均よりも1ロジット上であることを意味する。-1のスコアは患者が平均よりも1ロジット下であることを意味する。-3を下回る値及び3を上回る値は非常にあり得ず、それはIRTの基礎を成す数学的仮定はスコアが平均分布をたどるというものだからである。標準偏差及びロジットを反映する他の数字が代わりに使用され得ることが当業者によって理解されるべきである。例えば3のスコアは患者が平均的であることを意味することができ、そのためスコアは0から6に及ぶ。別の例として、50のスコアは患者が平均的であることを意味することができ、+10のスコアは患者が平均よりも1ロジット上であることを意味することができ、そのためスコアは20から80に及ぶ。
[0139] セルフケア分野に関してIRTステップ170を実行する一例を次に示す。セルフケア因子、バランス因子、UE機能因子、嚥下因子、ARATの隠れ因子、FIST及びFGA結果測定間の負相関を克服するための隠れ因子、及びFISTが結果内で重視され過ぎないようにFISTに固有の隠れ因子という7個の因子がIRTステップ170に与えられる。(例えばMH-RM推定を使用する)IRTステップ170は、識別力行列172及び困難度行列174を返す。例えばこれらの行列は傾き/切片の公式化によって示すことができ、傾きは項目識別力を反映し切片は項目困難度を反映する。
[0140] 表4は、例示的なIRT結果測定180のセルフケア分野に関する例示的な識別力行列172を示す。表4内の列ヘッダa1~a7は次の内容、つまり:(a1:セルフケア、a2:(ARAT局所依存)、a3:上肢機能、a4:嚥下、a5:バランス、a6:(FISTの影響の低下)、a7:(BBS及びFGAの逆相関))を示し、「隠れ」因子は括弧内に示している。表4は、各因子a1~a7の項目ごとに傾きの値を列挙する。表4内の項目名は、例示的なIRT結果測定180内の項目を列挙する付録1の表6にも反映されている。
Figure 2022125154000005
表5は、IRT結果測定180の例示的な困難度行列174を示す。表5は、各因子d1~d6の項目ごとに切片の値を列挙する。表5内の列ヘッダd1~d6は次の内容、つまり:(d1:セルフケア、d2:(ARAT局所依存)、d3:上肢機能、d4:嚥下、d5:バランス、d6:(FISTの影響の低下))を示し、「隠れ」因子は括弧内に示している。
Figure 2022125154000006
IRT結果測定180内の分野ごとに識別力行列172及び困難度行列174を準備できることを理解すべきである。
[0141] 例示的なスコア/確率応答をプロットすることができ、X軸はスコアを反映しY軸は応答の確率を反映する。曲線のプロダクト(product)は、幾らか釣鐘曲線のように見える尤度曲線をもたらす。患者のスコアとして曲線のピークを使用することができる。
[0142] 臨床的関連を確実にするための療法士からの入力。各項目は、IRT結果測定180内でのその役割を最も適切に表すクラスタを用いてラベル付けされ得る。このラベル付けは、自らの教育、訓練、及び経験に基づいて臨床家によって行われ得る。例えば表1の「移動度」分野及び「バランス」因子に含まれる座位における機能をテストする項目等、臨床家はバランスを測定する項目をラベル付けすることができる。
[0143] 分析の項目削減ステップにおける項目の選択(保持又は除去)は精神測定学上の及び統計的な評価に基づいて予測されるので、一実施形態では、臨床専門家が更なるフィードバックのために削減済みの項目セット内で取り上げられている項目の内容を検討することができる。例えば完全な結果測定のそれぞれから取られる部分集合に項目を追加すべきか又はそこから項目を除去すべきかに関する入力について、臨床家の集まりを調査することができる。保持される項目が精神測定学的に正当であり且つ臨床的に関連することを確実にするのを助けるために、それらの臨床家の入力を使用して各分野の最終モデルを構築することができる。
[0144] 最終項目セットを導出するためのリモデリング。精神測定学的評価及び臨床判断の両方を考慮した取り決め済みの項目セットの準備が整った後、CFA及びIRTステップを実行することができる。臨床的な支持が高い選外の項目を再びモデルに追加することができる一方、含まれている支持が低い項目は除去することができる。次いで、CFA中に計算される平均二乗誤差平方根(RMSEA)を使用してデータに対するモデルの適合度を評価することができ、新たな項目パラメータ推定及び潜在特性スコアがIRT分析中に計算された。本明細書の付録1の表6は、好ましい例示的なIRT結果測定180内の項目を列挙する。
[0145] 表示
[0146] 個人患者のスコアに関するデータの様々な側面を臨床家及び/又は患者のために表示することができる。
[0147] 図3は、従来技術で知られているFIM(登録商標)スコアと比較したIRTの例示的な採点法を示す。IRTスコアは患者等の人が有する能力の量を反映する。IRTスコアは、全ての機能カテゴリにわたって連続してスケーリングされるスコアであり得る。厳密に0のスコアは、その人がdischare時に平均的な能力を有することを意味する。0を上回るスコアは、その人が平均を超える能力を有することを意味する。0未満のスコアは、その人が平均を下回る能力を有することを意味する。図3は、FIM上の更衣項目に関するFIMの採点及び到達可能なセルフケアIRTスコアの連続体を示す。FIMスコアはパターン化された各セクションの長さによって反映される。例えば「1」とラベル付けされているパターン化されたセクションは1のFIMスコアを反映し、「2」とラベル付けされているセクションは2のFIMスコアを反映し、その後も同様に続く。スコア及び困難度は同じメトリク上で提示され、つまり或る人のIRTスコアが1.50である場合、その人は項目の6番目のカテゴリ内で得点することが予期される。
[0148] IRTスコアの値は図3を分析することによって明らかになる。患者が入院リハビリ施設に入院し、その患者のIRTスコアが-1.00から0.00に改善すると仮定する。FIMレベルにおける同等の変化は+3である。その結果、患者が機能的利得を示したのでこれは患者にとって良い結果だと考えられる。
[0149] しかし、FIMレベルの範囲内で向上する場合、FIMスコアは利得を示すのに不十分である。別の患者が-2.00のスコアで入院し、-1.00まで向上すると仮定されたい。この患者は先の患者と同程度(+1.00)向上したにもかかわらず、この項目のFIMの変化が0なので、この患者は上半身更衣の機能レベルが依然として改善していないように見える。その結果、IRTスコアの1つの利点はFIMが検出できない改善を検出できることである。本発明者らの経験では、非外傷性脊髄損傷及び神経損傷を有する個人のセルフケアにおいて予期される変化はIRTを使用する場合かなり劇的である。
[0150] 図4は、セルフケア分野、認知分野、及び移動度分野における患者のスコアに関する特定のデータの例示的プロットを示す。パーセント値25%、50%、75%、及び100%は各分野上のスコアのパーセンテージを反映する。例えばセルフケア分野の100%のスコアは、その分野の最高可能得点を獲得した患者を反映する。実線の三角形は患者の初期スコアを反映し、初期スコアは入院時又は入院直後の評価に基づいて表にすることができる。黒い三角形は患者の現在のスコアを反映する。破線の三角形は患者の期待スコアを反映する。このようにスコアを検討することにより、臨床家は患者が改善した分野を容易に明らかにし、追加の治療又は他のケアが有用であり得る分野も容易に明らかにすることができる。例えば図4のプロットを検討した後、セルフケア及び移動度のスコアがそれらの分野の期待スコアを下回っているので、臨床家はセルフケア及び移動度の領域において更なるケアを集中させるべきだと判定することができる。
[0151] 予測推定は様々なやり方で導出することができる。一実施形態では、過去の患者の診断、それらの診断の重症度(診断内の患者の状態の重症度の測定である「case mix group」)、患者を測定した日にち、及びそれらの日にちのスコアに関する情報を組み込む階層線形モデリング(HLM)を使用することができる。このモデリングは50日間の入院滞在まで全ての診断内の全ての重症度について予測曲線を出力することができる。情報をプロットするとき、x軸は入院からの日数とすることができ、y軸はIRT(MAP)スコアであり得る。
[0152] ニューラルネットワーク及びランダムフォレストモデル等のデータサイエンス法を含む他の予測方法も使用することができる。更に、予測プロセスに追加の患者情報を組み込むことができる。
[0153] 一実施形態では、複数日にわたるIRT結果測定180を使用して患者を評価することができる。例えば患者は、初日にIRT結果測定180からの質問の第1の部分集合に基づいて、次いで2日目に質問の第2の部分集合に基づいて評価することができる。直近の項目値を集めるようにデータフィードがセットアップされ得る。
[0154] 既に評価されている項目のスコアに応じてIRT結果測定180内の項目が評価のために選択されるように適応型テストを使用することができる。例えば臨床家は、FISTテストからのIRT結果測定180内の項目を用いて患者を評価し、その結果に基づいて初期IRTスコアを計算し、初期IRTスコアに基づいて最適な次の項目(又は複数の次の項目)を選択することができる。所定の不確実性レベルの範囲内で正確だと患者のスコアを判定できるまで、このプロセスを繰り返し適用することができる。例えば不確実性が0.3以下であれば、この適応型テスト方法は評価のための追加の項目の提供をやめ、患者、臨床家、又は他者が検討するための最終的なIRTスコアを提供することができる。
[0155] 図5は、セルフケア分野における患者のスコアに関する特定のデータの例示的チャートを示す。チャートの各行は単一の項目に関する。例えば、一番上の行は木のブロックを掴むテストに関係する。図3に関して説明したように、このチャートの各行は異なる陰影付けへと分割されている。各セクションの長さは、その項目のスコアがAQスコアにどのように関係するのかを反映する。例えばセクションb1は、掴む項目の1のスコアがAQスコアにどのように関係するのかを反映する。
[0156] 図5は、セルフケア分野における項目/課題のそれぞれに関する患者の現在の及び期待される機能状態を更に示す。このチャートは移動度、認知、又は他の分野からのデータを表示できることを理解すべきである。「在院日数の選択」スクロールバーは、様々な在院日数について、全ての項目の各能力レベル(例えば現在対期待)を臨床家が比較することを可能にする。かかる比較は、更なる入院滞在日が患者のためになる可能性があるかどうか、及び患者のためになる場合はどの程度かを臨床家が判定できるようにし得る。
[0157] 追加の介入が適切かどうかを判定するために、臨床家は特定のFIM項目に関する患者のスコアと共にIRTスコアを検討することができる。例えば患者のAQスコアが1である場合、FIMのトイレ動作測定の4のスコアが期待される。しかしFIMのトイレ動作測定がそれよりも低い場合、臨床家はとりわけトイレ動作の改善を目標とするように治療を調節するための指示としてかかる測定を使用することができる。
[0158] 図6A及び図6Bは、FIM固有の課題ごとに臨床家が目標を選択し及び/又は設定することを可能にする機能を有する「FIMエクスプローラ」セクションである。例えば図6Aでは、摂食課題の治療目標として「4-最低限の介助」が選択されている。課題固有の目標が選択されると、図7に示す比較チャートが表示され得る。このチャートは、チャート上の垂直線と比較した場合に目標が高く設定され過ぎているのかどうか又は低く設定され過ぎているのかどうかを療法士又は他の臨床家が比較することを可能にし得る。垂直線は選択される目標の評点から導出され、IRTスコアに変換される。
[0159] 図8は、患者のFIMスコアと比較したセルフケア分野の様々なプロットを示す。図8に示すように、セルフケア分野内の評価領域はバランス、上肢機能、及び嚥下を含む。一実施形態では、スコアが低いのか単に不完全なのかの混乱を回避するために、不完全なFIMの執行はプロットから省くことができる。
[0160] 予測
[0161] AQスコアの予測は、医療サービスグループ、case mix group(CMG)、及び/又は在院日数等の様々な因子に基づき得る。CMG内で、年齢は予測を支援するために使用される因子であり得る。
[0162] 予測モデルによって生成されるデータは様々なやり方で使用することができる。例えば患者の在院日数は、その患者の医学的状態、損傷レベル、並びに他の人口学的特性及び臨床的特性によって予測することができる。別の例として、患者が所与の分野でその患者の予測を下回る場合、臨床家はより集中した治療のためにその領域に的を絞ることができる。別の例として、或る分野での患者の向上が徐々に減り始めている場合、臨床家はそのことに気付き、その分野においてバランスの取れた治療を優先することができる。別の例として、幾らかの金銭的情報を所与とし、或る期間にわたって期待される改善のドル価値を評価し、それを同じ時間枠にわたる入院患者ケアコストと比較することが可能になる。ケアコストに対するケア価値の比率を使用して退院の判断を下すことができる。加えて、他の治療機関における成功を予測することが可能である。他の治療レベル及び治療場所での同様の評価(例えば外来患者、SNF等)を所与とし、それらの機関における改善過程の予想される様子を明らかにすることができる。場合によっては、それらの機関におけるケアに関するより優れた決定を行うことができる。
Figure 2022125154000007
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Figure 2022125154000038

Claims (12)

  1. 患者を評価するためのコンピュータ支援方法であって、
    a.バランス、上肢機能、及び嚥下の領域内の項目を有するセルフケア分野内の前記患者の第1の評価の入力を受け付けること、
    b.バランス、車椅子スキル、体位変更、ベッド移動度、及び移動度の領域内の項目を有する移動度分野内の前記患者の第2の評価の入力を受け付けること、
    c.認知、記憶、及び意思伝達の領域内の項目を有する認知分野内の前記患者の第3の評価の入力を受け付けること、
    d.前記受け付けた評価に基づいてスコアを計算すること、及び
    e.前記計算したスコアを電子医療記録内に記憶すること
    を含む動作を実行する計算装置を含む、方法。
  2. 前記電子医療記録から前記スコアを取得すること、及び
    前記取得したスコアに基づいて治療計画を調節すること
    を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記電子医療記録から導出されるデータに因子分析を適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記電子医療記録から導出される古典的項目分析データを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  5. リハビリ患者の改善を測定する方法であって、
    a.項目応答理論を使用し、複数の評価を予め選択すること、
    b.セルフケアに関係する前記複数の評価の入力を受け付けること、
    c.移動度に関係する前記複数の評価の入力を受け付けること、
    d.認知に関係する前記複数の評価の入力を受け付けること、及び
    e.前記受け付けた入力を電子医療記録内に記憶すること
    を含む動作を実行する計算装置を含む、方法。
  6. 前記複数の評価が因子分析を使用して更に選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記複数の評価が古典的項目分析を使用して更に選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記セルフケア、移動度、及び認知の評価のそれぞれが因子に分けられる、請求項5に記載の方法。
  9. 前記セルフケアの因子がバランス、上肢機能、及び嚥下である、請求項6に記載の方法。
  10. 前記計算装置が前記改善を測定するためのスコアを決定することを更に含む、請求項5に記載の方法。
  11. 前記計算装置が前記スコアを表示画面上に表示することを更に含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記計算装置が、
    前記スコアを予測スコアと比較して治療必要性の領域を識別すること
    を含む更なる動作を実行することを含み、
    前記比較は治療を改善するために使用される、
    請求項10に記載の方法。
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