JP2022106643A - 生態系の人為的な構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高木を人工緑地に植栽した後に植え替えを要するリスクを低減する。また、生態系を太陽光発電のような現下の社会的ニーズに応える利用に供しつつ、20~30年後のニーズの変化に応じた生態系を構築する基盤づくりを行うことで、生態系の保全と経済性の両立を可能とする。【解決手段】人工緑地の高木樹林を構成させる高木について、その人工樹林において当該高木と相性が良いサポート生物を特定し、人工樹林に当該高木を導入すると同時にまたは高木を導入するのに先立って当該サポート生物を人工緑地に導入する。また、生態系サービスの価値評価が低い生態系を改変して太陽光発電などを行いながら、肥沃な土壌を醸成できる生態系を構築する。【選択図】図1

Description

本発明は、生態系の人為的な構築方法に関する。
従来、生態系は人為的に利用、改変されてきたが、時には、生態系の機能が十分に発揮されない状態に置かれたり、生態系の機能が損なわれるような生態系の利用や改変が行われたりすることがある。例えば、耕作放棄地や荒廃林(放置林)は、人による適度な利用がなされることで豊かな生産力を発揮していた生態系の生産機能が発揮されない状態となっている例といえる。また、後者の例としては、過剰な耕作により土壌が劣化して生産力が低下した農地生態系が挙げられる。住宅、マンション、ビル、道路その他の建造物の建築工事や、土砂災害などによって植生が失われ裸地化した攪乱地もまた、生態系の機能が損なわれた状態となっている土地と言える。
このように生態系の機能が発揮されない状態となっている土地に、人為的に生態系を構築することも従来、行われている。例えば都市開発などによって生じた、植生を失った裸地に人工的に植生を回復させた人工緑地が構築されている。特に、都市部では多くの工事が施され、様々な人工緑地が構築されている一方、山野のような自然生態系は乏しい。
都市部の人工緑地としては、従来、都市的な美観を備えるようにデザインされ、工事完了と同時にデザインされた人工緑地が完成するよう、施工されてきた。近年では、こうした都市部の人工緑地として、自然生態系に近い景観や機能(例えば生物多様性保持機能)を有する人工緑地が求められるようになっている。自然生態系に近い景観や機能を持つ人工緑地を構築するためには、ある程度の高さに成長する樹木を複数、植栽することが好ましく、従来は、人工緑地を施工する際に数mの高さに成長した樹木を植栽して人工緑地の施工を完了させる。
このように構築された都市部の人工緑地では、通常、樹木の天然更新は生じにくいため、施工後に樹木が枯死するなどの損傷を受けた場合、新たな樹木の植栽が必要となる。しかし、都市部で人工緑地の施工を完了した後に数mの樹高がある樹木を植栽すると、高コストとなることが指摘されている(特許文献1)
特許文献1は上記課題に対し、都市部の人工緑地に極相林に至る複数の植生を構築し、施工後の人工緑地の植生の自然な回復力を向上させる人工緑地の施工方法を提案している。
また近年では、脱炭素社会を実現するために需要が高まっている再生可能エネルギー(代表的には太陽光発電)の電源開発事業について、電源開発地に元から存在していた自然生態系の機能を損なう開発が行われる危険性が指摘されている。このため、電源開発に際して開発予定地やその周辺の生態系を調査し、これらを保全する手当てがなされることもある。
さらに最近では地震や豪雨被害(洪水や土砂崩れなど)、山火事その他の自然災害が増えており、被災地復興において生態系の人為的構築が求められる。被災地復興として行われる生態系の人為的構築としては、農林地の再生や復興させた道路の法面緑化などが挙げられる。災害復興としての生態系の人為的構築においては、被災前と同じ場所で同じように農林業や生活を営めるよう被災前と同じ生態系の回復が図られるケースもある一方で、災害を契機とした人口移動(移住)も生じるため、多大なコストを投入して再生した農林地などの生態系が投入したコストに見合うだけの利用がされない場合もある。
特開2018-42527号
特許文献1に記載された方法では、広い範囲に点在する複数の緑地に、極相林と極相林に至るまでの遷移途中の植物群落とで構成される群落環を配置する。このように、複数の土地を対象として極相林に至る群落環をなす人工緑地を配置するためには、複数の土地の各所有者や管理者の同意を得る必要があり、手間やコストを要する。
また、電源開発地に生態系としての価値が高い生態系が存在している場合、電源開発時に環境保全を図っても、ある程度の生態系の価値、機能低下は避けがたい。なお、生態系としての価値が高いというのは、生態系サービスの評価値が高い、すなわち生態系が奏する有益な機能が多い、大きい、例えば多様な生物を保全している、貴重な動植物の生息場所となっている、二酸化炭素の吸収力が大きい、農林産物の生産力が高い、土壌流出防止や保水機能が高いといったことを意味するものとする。
このように、人為的な利用、改変がされる前の生態系の価値が高い場合、生態系の人為的な利用や改変による生態系の価値低下を回避するには多大な労力を要する。このため、生態系保全に労力を投じると開発コストが大きくなる一方、労力を投じなければ生態系の価値低下を招くため、経済性と環境保全とを両立させがたい。
あるいは、災害復興として生態系を人為的に構築する場合、とりわけ農林地を再生する場合は、災害後の人口移動を考慮してできるだけ人手(コスト)をかけずに生態系を人為的に構築し、再生した農林地も被災前に比べて人手(コスト)をかけずに利用・管理できれば、被災地の復興を容易化できると考えられる。
本発明は、施工後に損傷樹木を補填するコストを低減し、施工範囲が広くない一区画の土地であっても樹高が3~5m以上に達するような樹木を有する人工緑地を構築できる人工緑地の形成方法を提供する。本発明はまた、経年変化の利益を享受できる生態系の人為的な構築方法を提供する。
本発明はさらに、生態系の人為的な利用や改変に際しての生態系の価値の低下を回避する方法を提供する。特に、生態系を人為的に利用するための改変を契機として、機能(価値)が低下している生態系を改変して、その生態系が存在している土地の生産性、利用価値を高めながらより価値が高い生態系を構築する生態系の人為的な構築方法を提供する。
本発明はまた、自然災害などで被災し植生が失われた土地(攪乱地)の復興コストを低減できる生態系の人為的な構築方法を提供する。
本発明の第1の態様では、人工緑地において高木樹林を構成させる高木について、その人工樹林において当該高木と相性が良いサポート生物を特定し、人工樹林に当該高木を導入すると同時にまたは高木を導入するのに先立って当該サポート生物を人工緑地に導入する。
本明細書において、「高木樹林」とは、自然生態系においては樹高が10m以上、特に20m以上に達する高木を優占種とする樹林を意味するものとする。本明細書では、高木樹林を構成しうる高木であって、人工緑地に構築する地上生態系の最高の位置(最高層)を構成する高木として選定される高木を「高層樹木」と称する。人工緑地においてはしばしば高層樹木は高さが5~10m程度に剪定されるため、人工緑地の高木樹林の高さは10m程度に人為的に制限されることもある。
本明細書において、人工緑地に導入する高層樹木と決定された高木が最高層をなし、安定した植物群落を「極相的林」と称する。「安定した植物群落」とは、人為的に植物を植栽することなく、群落が維持されるような植物群落を意味するものとする。
高層樹木と相性が良い生物(「サポート生物」と称する場合がある)とは、本明細書においては高層樹木と決定された高木の生育に有益な共生関係を構築する関係性にある生物、特に植物もしくは微生物、またはその両方を指すものとする。「高木の生育に有益な共生関係」とは、高木の成長や活着を促進する、もしくは乾燥、高温、低温、風雪その他の天候ストレスや病害虫ストレスといったストレスへの耐性を高める関係にあることを意味するものとする。
より具体的には、高木の根元を覆うことで高木の天候ストレス耐性を高める中低層植物や草本植物、高木に食害被害を与える昆虫などの忌避物質を生成して高木の病害虫ストレスを低減する植物や微生物、高木の根に共生して高木の養分や水分吸収を助ける土壌微生物などが挙げられる。
サポート生物として、草本植物を人工緑地に導入する場合、人工緑地に高層樹木を導入する前に草本植物を優占種とする草本植物群落を構築してもよい。このようにすれば、同一の土地に人為的に設計した植生遷移を生じさせ、人工緑地の施工開始から年単位の時間をかけて、植物群落を意図的に変化させることで経年的に人為的にデザインされた景観の変化を誘導できる。
本発明の他の態様では、生態系が奏しうる機能が十分に発揮されない(生態系サービスの評価値が低い)状態となっている生態系が存在する土地に対し、その土地に構築しうる別のタイプの生態系(未来生態系)を構築する。具体的には、改変前の土地に存在している生態系(現存生態系)の価値を算出するとともに、その土地を人為的に利用しながら構築できる、現存生態系とは別のタイプの生態系(未来生態系)を構築することでその土地から得られる価値(将来価値)を算出する。そして、現存生態系が存在し続けることによる価値よりその土地の将来価値が高くなるような未来生態系をその土地を利用しながら構築していくために、その土地の改変を行う。
生態系のタイプは、例えば、樹木が優占する森林生態系、草本類が優占する草本生態系、農地や公園のように人為的な植栽がなされ人手による植生管理が行われている人造生態系に大別できる。森林生態系と草本生態系は、さらに人手による管理や利用の状態に応じた区分(「放置」「準放置」「管理」など)と、植生に応じた区分(「人工林」「竹林」「常緑高木樹林」「針広混合林」など)生態系」とでタイプ分けするとよい。
未来生態系は、改変予定地の現存生態系を変更した後の所定期間に渡って遷移させてもよい。すなわち、未来生態系には、タイプが異なる2以上の生態系を含んでよい。例えば、あるタイプの生態系(第1の未来生態系)から別のタイプの生態系(第2の未来生態系)へと人為的に遷移させるために、改変予定地の土壌から単離して培養しておいた微生物であって、第2の未来生態系で優占させたい植物の生育に寄与する微生物を人為的に共生させた植物を改変予定地に導入してよい。
このように、未来生態系の構築に有益な微生物を改変予定地に導入することで、未来生態系の構築を促進するとともに、土壌の生物性、特に微生物叢の多様性を向上させることが期待できる。また、改変予定地に植物残差や炭化物のような炭素源を導入しておけば、炭素源が微生物の生息場所やエネルギー源となるため、土壌の生物性の向上(生物量の増大または生物相の多様性の増大の一方または両方)を促進できる。
本発明ではこれらの様々なタイプの生態系を価値評価する。生態系の価値は例えば、公知の生態系サービスの経済価値評価に係る評価手法で評価できる。生態系サービスの経済価値評価は、生態系サービスと紐づけられる生態系の機能の一部のみを評価対象として評価してもよい。生態系の機能の一部の価値評価を行う場合、少なくとも生態系の供給サービスである木材や食糧などの物資の供給機能または調整サービスである二酸化炭素の吸収固定に係る機能のどちらか一方、好ましくは両方を評価する。両機能は、経済的な価値としての数値化がしやすい。また、調整サービスである水循環の制御、自然災害の防護機能および基盤サービスである土壌形成機能の少なくとも1以上も評価することが好ましい。
供給機能は、ある物資を生産した場合の生産力(土地生産性)として数値化してよく、二酸化炭素吸収固定機能は、二酸化炭素吸収固定量やそれに基づく二酸化炭素排出源取引価格として数値化してもよい。
現存生態系と未来生態系の価値評価は、同一の機能を対象として評価することが好ましいが、改変後から所定の期間の現存生態系と未来生態系の価値について合理的な比較ができる限りにおいて異なる機能を評価対象としてもよい。例えば、現存生態系と未来生態系について、それぞれ最も価値が高い機能(例えば現存生態系について水循環の制御機能、未来生態系について二酸化炭素吸収固定機能)に基づく価値を評価対象として比較してもよい。あるいは、それぞれの生態系について価値が高い2以上の異なる機能を評価対象としてもよい。
現存生態系および未来生態系は、短くとも改変後20年以上、好ましくは25年以上、より好ましくは30年以上の期間の価値を算出するとよい。人為的な改変がなされた生態系は、20年程度は変化しやすいため、改変後20年~30年程度に渡って改変した生態系の管理利用形態を定めることで、改変時に意図した未来生態系を構築しやすくなる。また、改変後30年程度経過すると、改変時の経済社会との違いが顕在化してくる。このため、所定の期間を20~30年としておくと、所定の期間が経過した時点で、改変後に構築した生態系を維持するか否かを検討し、時流に合った生態系を構築しやすい。
本発明のさらに別の態様は、自然災害などにより土砂が堆積したり従前の植生が失われたりして土壌が表出している(すなわち裸地化した)攪乱地に好適に用いられ、自然生態系が有する生態系の構築力、安定化力を人為的に利用することによって低コストな被災地復興(生態系回復)を実現する。具体的には、生態系を人為的に構築する対象地(攪乱地)に植栽する木本植物(植栽樹木)の導入に先んじて、当該植物の生育に有益な先行植物(リード植物)を導入する。リード植物と植栽樹木は同種の植物であってよく、窒素固定菌と共生する緑肥植物、菌根菌と共生する菌根菌共生樹木、または非菌根性糸状菌を人為的に共生させた人為共生樹木などを用いることができる。
攪乱地の表層土壌が流出していたり、土砂が堆積するなどして地形が変化し水はけが被災前と変わっている可能性があったりする場合は、リード植物として草本系の緑肥植物を用いることが好ましい。草本の緑肥植物は生育が早く、攪乱地の表面を被覆して土壌の流出を防止でき、また、その生育を通して攪乱地の水はけの良否を知ることができるためである。
また、攪乱地が乾燥しがちな斜面であるような場合は、植栽樹木としてはヤシャブシ類やマツ類のように菌根菌と共生して貧栄養な土地で生育できる先駆種樹木とすることが好ましい。ただし、菌根菌を樹木と人為的に共生させるためには特殊な栽培管理技術や資材が必要である。このため広い範囲で生態系を人為的に構築する場合、菌根菌を人為的に共生させた植栽樹木を植栽することは技術面、コスト面から容易ではない。
そこで本発明では、攪乱地やその近傍地(攪乱地から30km、好ましくは10km程度以内の場所、以下本明細書において同じ)にある自然生態系から切り出された自然土壌ブロックまたは菌根菌をリード植物に人為的に共生させた人工植物ブロックを攪乱地に点在させる。ブロックは、厚さ10cm~40cm程度、好ましくは15cm~30cm程度で、辺の長さが15~50cm、好ましくは20~30cm(表面積としては200~2,500平方cm、好ましくは300~500平方cm)程度が好ましい。ブロックの配置は、3~200m間隔、特に5~10m程度の間隔とするのが好ましい。
仲介微生物とは、本明細書において植栽樹木に先立って攪乱地に導入するリード植物や植栽樹木の生育をサポートしうる微生物を意味する。仲介微生物としては、攪乱地やその近傍地に存在する土壌微生物の中から、後述するTojuによる微生物解析方法や文献調査、接種試験などの微生物実験により、植栽樹木として選定した植物ともリード植物とも友好的(すなわち、生育を促進する、病害防除作用があるなど)な機能を奏する微生物を選定するとよい。特に、攪乱地やその近傍地の土壌に含まれていた非菌根性糸状菌は仲介微生物として好ましい。非菌根性糸状菌の中でも内生菌と呼ばれる糸状菌は、菌糸や菌核などの菌体を植物体内に入り込ませて植物と共生するが菌根は形成しない。非菌根性糸状菌には、内生菌と呼ばれるもののほか、腐生菌や土壌菌と呼ばれるものもあり、植物と共生させるとことなく一般的な微生物培養培地(オートミール培地など)で人為的に培養、増殖させることができる。このため、攪乱地やその近傍地の土壌に含まれる非菌根性糸状菌の中から、リード植物と共生し植栽樹木の生育に有益な非菌根性糸状菌を選定し、これを単離して培養した培養物をリード植物や植栽樹木と人為的に共生させて攪乱地に導入すれば、生態系の人為的構築をより技術的、コスト的に容易にできる。
本発明では攪乱地で生態系を人為的構築する際に自然生態系の力(具体的には土着微生物)を利用するため、再生した生態系を農林業に供する場合も当該再生地の土壌微生物叢を活用して、生態系が持つ病害虫に対する防除力や安定性を引き出して低負荷な農林業を営みやすい。
本発明によれば、人工緑地が自然状態に置かれた場合に生じうる植生遷移を模した人為的な植生遷移を生じさせることで、損傷した樹木を植え替える手間やコストを低減できる人工緑地を形成できる。また本発明によれば、自然生態系に近い景観や機能を有する人工緑地の形成を容易化できる。さらに本発明によれば、経年変化を愉しめる人工緑地を形成できる。
また、本発明によれば、例えば、適切な森林管理が行われず、二酸化炭素吸収源とならず、土壌が露出するなどして土壌保持機能や雨水保持機能が低下しているような放置林を、太陽光発電の事業地とする改変を行い、太陽光発電を行いながら別の生態系(構築格の生態系)を構築して生物多様性の保全機能や土壌保持機能などを高めることができる。
さらに、本発明によれば、災害被災地のような攪乱地における生態系の人為的構築に要する技術や手間(コスト)の難易度を低減し、低負荷な農林業を営みやすい被災地再生ができる。
土壌微生物叢についての環境DNA分析により得られるデータ例 土壌微生物叢と植物との共生関係の分析例(Toju, H. et al. Assembly of complex plant-fungus networks. Nature Communications 5:5273 DOI:10.1038/ncommms6273(2014)からの引用) 本発明の第1実施態様に係る人工緑地に自然に構成されうる極相林を構成する植物を示す表 本発明の第3実施態様の改変予定地を示す模式図 本発明の第4実施態様で使用する、植栽樹木としてのカラマツ苗(非菌根性糸状菌を人為的に共生させていない苗;左側2鉢と共生させた苗;右側2鉢)
以下、本発明に係る第1実施態様として、110m×50mの広さの土地をマンション建設地予定地と想定し、ここに110m×5mの人工緑地を形成する例について説明する。
人工緑地を形成する予定地(以下、予定地)は、宅地造成に伴う工事によって工事前に存在していた植生が失われた攪乱地で、近畿地方の内陸部に位置する。予定地が存在する地域は、潜在自然植生としてはナナメノキ―アラカシ群落が極相林をなすとされる地域である。気候帯としてはこの地域は、アラカシが高木層を構成するナナメノキ―アラカシ群落以外に、シラカシ、コジイ、スタジイ、アカガシなどが高木層となる極相林を構成しうる。
そこで予定地には、人工的に構築しうる極相林に似た林分(以下、「極相的林」)の高木層の優占種として、アラカシ、シラカシ、コジイ、スタジイ、およびアカガシを高層樹木の候補とし、これらの中から1種以上を高層樹木に選定するものとする。本実施態様では高層樹木を選定する際に、予定地の土壌微生物叢を参照し、予定地の土壌微生物叢と相性が良い、すなわち予定地の土壌微生物叢との間で良好な共生関係を構築しうる樹種を選定する。
具体的には、予定地の土壌と、この予定地近傍の自然生態系として、予定地から約1kmの距離にある山林の土壌および植物根を採取する。採取した土壌および植物根は環境DNA分析に供する。環境DNA分析は一般的な方法で行えばよく、一般的に提供されている環境DNA分析サービスを利用すればよい。
環境DNA分析により得られたデータを用いて、予定地の土壌微生物叢および予定地近傍の自然生態系の土壌微生物叢を分析し、土壌微生物叢を構成する土壌微生物と高層樹木の候補樹種との共生関係の分析を行う。高層樹木と土壌微生物との共生関係を分析する方法としては、文献調査、微生物データベースとの照合、およびToju, H. et al. Core microbiomes for sustainable agroecosystems. Nature Plants 4 247-257(2018)に記載された解析方法(以下「Tojuによる微生物叢解析」)などを用いることができる。
このように予定地の土壌微生物叢を分析すれば、予定地にどのような土壌微生物が存在するかを把握できる。また、予定地近傍の自然生態系の土壌微生物叢を分析すれば、予定地近傍の自然生態系を構成する植物と土壌微生物との共生関係を把握できる。特に予定地近傍の自然生態系に高層樹木の候補が含まれる場合、その自然生態系を構成する生物同士の共生関係を分析することよって、その自然生態系において高層樹木の候補樹木と良好な共生関係を構築している土壌微生物や、予定地への高層樹木の導入に有益な土壌微生物を特定できる。
図1に環境DNA分析による土壌微生物叢分析結果の一例を示す。また、微生物叢分析から植物と微生物との共生関係を分析した分析例を図2に示す。なお図1、図2で分析対象とされた微生物は、糸状菌であり、バクテリア(細菌)は含んでいない。図1では、16の試料について、複数の微生物種のグループごとに、各試料に含まれる微生物種のグループ由来のDNAの存在量を比率で示している。また図2では、植物と微生物とを円で示し、友好的な共生関係を有する生物同士を線で結ぶことにより、植物と微生物との共生関係を示している。
上記方法により、予定地またはその近傍の土壌微生物叢を構成する土壌微生物と高層樹木候補の樹木の中から、予定地に形成する生態系の最高層(林冠)を構成する樹木である高層樹木と、この高層樹木の生育に有益な共生関係を構築できる土壌微生物とを特定する。例えば、分析法として文献調査を用いる場合であれば、高層樹木候補との関係性、特に生育促進効果などの有益な共生関係が認められた微生物が特定されている文献を得ることにより、高層樹木とサポート生物としての微生物とを決定する。あるいは、採取した試料に含まれる土壌微生物について、微生物データベースを参照して高層樹木候補に対し、有益な共生関係を構築できるか否かを照合し、高層樹木とサポート生物となる微生物とを選定する。また、採取した試料から単離した土壌微生物(特に非菌根性糸状菌)の培養物を高層樹木候補に接種して生育への影響を調べる接種試験や、高層樹木候補の病害菌に対する拮抗・防除作用を調べる対地培養試験などの微生物実験を行って選定してもよい。
サポート生物は、予定地やその近傍生態系の土壌微生物叢を構成する微生物以外であってよい。例えば、予定地やその近傍生態系の土壌微生物叢では存在量が少ないものの、様々な地域に存在するような一般的な土壌微生物であって予定地に高層樹木を定着させることに寄与しうる微生物をサポート生物としてもよい。
また、高層樹木の生育を助けることができる植物をサポート生物としてもよい。例えば、地面を被覆することにより高層樹木の根圏を保護する低木や草本類、窒素固定をすることにより高層樹木の窒素源を供給する緑肥植物、高層樹木と土壌微生物を介した共生関係を構築する植物などをサポート生物とすることができる。
サポート生物は2種以上としてよく、土壌微生物と植物とをサポート生物としてもよい。サポート生物とする植物としては、高層樹木としない(すなわち高木、亜高木以外の)中低木や草本植物、ツル・ツタ植物が挙げられる。本明細書において、高層樹木としない中低木、草本、ツル・ツタ植物を「中低層植物」と称する。特に、特定の土壌微生物(「仲介微生物」と称する)を介して高層樹木と有益な共生関係を構築できる植物(「根圏共生植物」と称する)をサポート生物とするとよい。根圏共生植物は仲介微生物と共生関係を構築させ、高層樹木とともにまたは高層樹木より前に人工緑地に導入するとよい。
本実施態様では、シラカシが高層樹木と特定され、低木樹木であるナンテン、レンギョウ、および草本植物であるシャガとオキザリスとがサポート生物として特定されたものとする。また、内生菌である糸状菌Aもサポート生物と特定されたものとする。糸状菌Aは予定地の土壌微生物叢では構成比率は小さいものの、予定地近傍の自然生態系においてシラカシおよびナンテンの根に共生しており、共生関係分析によりシラカシ、ナンテン、レンギョウ、オキザリス、およびシャガ、のいずれとも共生関係を構築し、糸状菌Aを介してこれら植物同士が土壌中で植物―微生物共生ネットワークを構築しうるとの分析結果が得られたものとする。すなわち本実施態様において、糸状菌Aは仲介微生物、ナンテン、レンギョウ、オキザリス、およびシャガは根圏共生植物である。
本実施態様では、草本群落を出現させた後、低木群落を出現させ、10~20年を経て樹高10m程度のシラカシが林冠を構成する極相的林に至る植生遷移を生じさせる人工緑地を形成する。高層樹木および中低層植物は、糸状菌Aを含む培土で根を伸長させることにより糸状菌Aとの共生関係を構築させることができる。
そこで本実施態様では、糸状菌Aを含ませた培土で育成したオキザリスを秋から冬にかけて予定地全体を覆うように植栽する。翌春に、糸状菌Aを含む培土で育成したシャガを予定地全体に散在するよう株間20~30cm程度で植栽する。シャガを植栽する際、またはシャガを植栽した後、糸状菌Aを含む培土で育成した樹高20~30cm程度のシラカシ、ナンテン、レンギョウの幼苗を、株間2~3m程度の間隔で予定地全体に散在するように植栽する。なお、糸状菌Aを含ませた培土は、野外試料から単離して培養、保存しておいた糸状菌Aの菌株を、菌体増殖用の培土(菌床)で増殖させたものを植物育成用培土に含ませて調整する。
予定地では、まずオキザリスが優占する一年生草本群落が出現し、次いでシャガが優占する多年生草本群落が出現する。シャガ群落の中には、シラカシ、ナンテン、レンギョウといった樹木苗が含まれ、これらの樹木苗が成長することにより、ナンテンやレンギョウが優占する低木群落が出現した後、成長したシラカシが林冠を構成する極相的林を出現させることができる。
これらの植生遷移は、各遷移段階の優占種とする植物同士の関係性を考慮することで人為的に誘導するものである。特に本実施態様では、各遷移段階の優占種とする植物同士が地中で、仲介微生物(糸状菌A)を介した植物(根)-土壌微生物共生ネットワークを構築するようにしている。具体的には予定地に導入する植物同士を繋ぐ共生ネットワークを構築するキーとなる微生物(仲介微生物)として特定された糸状菌Aと共生関係を構築させた植物を予定地に導入するようにしている。
このように本実施態様では、予定地またはその近傍の自然生態系の土壌微生物叢を把握し、予定地の土壌微生物叢から見て相性が良い、すなわち予定地の土壌微生物と良好な共生関係を構築しうる植物を選定できる。このため、予定地に自然に形成される生態系(本態様の場合ナナメノキ―アラカシ群落)ではなく人工的に形成したい植物群落(シラカシ群落)をバックキャスト思考で設計できる。
図3に、予定地に自然に形成されるナナメノキ―アラカシ群落およびシラカシ群落を構成する植物種を示す。本実施態様において形成する極相的林は、シラカシを優占高木とし、ナンテンおよびレンギョウが低木層を構成し、シャガが草本層を構成する植物群落であり、予定地に自然環境下で形成される植物群落とは異なる。
このように自然環境下で形成される植物群落ではなく、バックキャスト思考で設計され人為的に形成させる植物群落は、一般的に群落を構成する植物を損傷させないための管理が必要で、損傷した場合に植え替えが必要となる。特に樹高3m、さらには5mを超えるような高木樹木は、入手も植栽も容易ではない。そして、このような高木樹木が人工緑地に植栽した後に損傷した場合、意図した景観が形成できなくなり、損傷樹木に代わる樹木を植栽することは建物を損壊するリスクやコストがかかる。
本発明によれば、人工緑地を形成する高木を中心に、この高木と有益な共生関係を構築できるサポート生物を人工緑地に導入することで、人工緑地を構成する植物群落の頑強性を向上させることが期待できる。このため本発明によれば、人工緑地の管理を不要または簡略化し、特に損傷植物の発生リスクや植え替えコストを低減させることができる。
特に、本発明によれば、バックキャスト思考で設計され形成される人工緑地に導入される植物、中でも施工後の植栽が困難な、樹高3~5m以上の高木樹木の損傷リスクを低減できる。また、本実施態様のように人工緑地の施工地において人為的に植生遷移を生じさせれば、高木樹林を形成する場合でも安価で入手や取扱が容易な幼木を用いることができるため、人工緑地の形成コストを低減できる。さらに、変化する景観をデザインできるため、人工緑地に対する入居者の関心を高めることが期待できる。
樹木苗は例えば、マンションの入居者の希望に応じて入居者に樹木苗の鉢植えを提供し、一定期間、入居者が育成したものを人工緑地に植栽するようにしてもよい。入居者が育成した苗木を所定のタイミング(例えば入居後5年記念など)で人工緑地に導入するようにすれば、人工緑地に対する入居者の愛着をより高めることが期待できる。なお入居者に提供する鉢植えの培土としては、仲介微生物を含む培土を用いることで、人工緑地に植え替えた樹木苗の定着や成長を促進できる。
次に、本発明に係る第2実施態様について説明する。第2実施態様では人工緑地として、道路の新設工事に伴って車道と歩道との間にハナミズキとツツジとを植栽した街路樹帯を構築するものとする。第2実施態様では、道路の新設工事前の現地に存在していた雑木林の土壌と植物根とを採取し環境DNA分析を行っておく。その後、新設された道路脇の街路樹植栽予定地の土壌を採取し、環境DNA分析を行う。
環境DNA分析により、ハナミズキとツツジの両方と共生ネットワークを構築しうる微生物であって、環境DNA分析に供した試料中に存在していた内生菌根菌である糸状菌Bがサポート生物と特定されたものとする。第2実施態様では、糸状菌Bを含ませた培土を植栽するハナミズキとツツジの根圏の周囲に投入し、ハナミズキとツツジの苗を植栽する。
本実施態様によれば、植栽されたハナミズキとツツジとが根を伸長させる際、培土に含ませた糸状菌Bと共生関係を構築することで、糸状菌Bからの養分や水分の供給を受けることができる。これにより植栽に伴うストレスを緩和して成長が促進され、枯死といった損傷リスクを低減できる。
以上のように、本発明によれば人工緑地を構成する高木の損傷リスクを低減し、人工緑地の形成、維持管理コストを低減できる。
次に、本発明に係る第3実施態様について説明する。第3実施態様では、図4に示す約300m×300mの改変候補地を例として、生態系の人為的な構築方法を実施する場合について説明する。
改変候補地には、約1,000平方メートル程度の宅地(図4「家」と表示した部分の周辺)、この宅地を囲むように広がる畑地、畑地の背後に広がる放置林(竹林、雑木林、杉林)が含まれ、道路を挟んで宅地と反対側は平坦な水田地帯となっている。
沢を挟んで向かい合う杉林は棚田状で、これらの杉林(以下、「棚田林」と称する)と宅地と畑地と谷川沿いの地形は平坦地、その他の林(竹林、雑木林および道路に面した杉林)は斜面である。本実施態様では、図4に示す竹林、雑木林、杉林(棚田林含む)および谷川沿いの平坦地(合計約60,000平方メートル)を改変検討地とする。
改変検討地は、まず位置および地形について属性を特定する。具体的には位置について、気候帯区分と潜在自然植生を特定し、さらに宅地および農耕地(これらを「人里地」と称する)からの距離に基づいて、人里地の外縁からの直線距離30m以内の「人里隣接地」、50m以内の「人里近接地」、70m以内の「緩衝地」、70mより離れた「自然地」のいずれかに区分する。
本実施態様の改変検討地は、位置的には大分県の県北山地で潜在自然植生はスタジイ―ヤブコウジ群落、コジイ―クロキ群落、イチイガシ群落などであり、場所によって、人里隣接地、人里近接地、緩衝地、自然地に区分される。この改変検討地のうち、人里隣接地と人里近接地とを改変予定地とし、改変予定地の地形属性を特定する。地形については、傾斜度8度未満の平坦地、8度以上を斜面とし、斜面は傾斜度20度未満の緩斜面、20度以上35度未満の急斜面、35度以上の極急斜面に区分する。本実施態様の改変予定地は、棚田林と谷川沿いが平坦地、その他の林はほとんどが緩斜面で一部が急斜面に区分される。
この改変予定地に現存している生態系(現存生態系)は、森林生態系と草本生態系であり、人的管理状態はほぼ全体が放置であり、植生に応じた区分も組み合わせた場合のタイプは、放置竹林、放置雑木林、放置スギ林、準管理草本生態系(ススキ―セイタカアワダチソウ―アカメガシワ草本群落)に区分された。
本実施態様では、現存生態系について、物資供給機能、二酸化炭素吸収固定機能、自然災害防護機を数値化し価値評価する。現存生態系は農林産物の生産に利用されていないため、現状を維持すると、今後30年間の物資供給機能に基づく価値はゼロと算出された。また、放置杉林の樹齢は50年を超えており、現存生態系を現状のままとすると、今後30年間の二酸化炭素吸収固定機能に基づく価値もゼロないしマイナスと算出された。
さらに、今後30年間、現状を維持すると放置竹林が拡大して根張りが低下し、過植された杉の倒壊リスクが高まるため、自然災害防護機能に基づく価値もゼロないしマイナスとなった。
そこでこの改変予定地の人里隣接地約1,200平方メートル、棚田林と谷川沿いの平坦地約5,000平方メートル、および人里近接地約800平方メートルを改変することとした。特に、人里隣接地と棚田林と谷川沿いの平坦地とを合わせた合計約6,200平方メートルは太陽光発電地として人為的利用に供することとした。
太陽光発電設備としては、システム容量380kwの発電設備を設置することとした。この発電利用により得られる価値(生態系利用外価値)は、10円/kwhで売電する利用に供するとした場合で年間380万円となる。
この上記約7,000平方メートルの土地にある現存生態系を伐採して裸地化した土壌には、炭素源として現存生態系の伐採により生じた植物残差を導入することとした。また改変から5年間は近傍地の農地などで生じた植物残差を改変予定地に埋設または敷設して土壌形成機能を強化することとした。改変後5年間の土壌の形成機能は、投入された植物残差から農用資材(堆肥)を生産する生産力として価値評価した。本実施態様では、約7,000平方メートルの改変予定地で年間3,000kgの農用資材(堆肥)を生産し、その価値は年間約30万円と算出された。
そして、改変から5年を過ぎた後は、改変予定地の2割で農用資材(堆肥)を生産しながら、他部は農林産物を生産する農地生態系を構築することとする。農地生態系では主として葉蘭を栽培することとした場合、改変後5年以降の改変予定地の人造生態系では、年間約6万円の農用資材と、約96万円の農産物(葉蘭)が生産され、その物資供給機能の価値は年間約100万円と算出された。
改変予定地の発電事業は改変後20年間行うものとし、改変後20年以降は改変予定地に農地生態系、またはキノコ栽培とキノコ栽培木生産を行う管理雑木林生態系を構築することにした。改変予定地に農地生態系を構築する場合の平坦地5,000平方メートルの供給機能に基づく価値は年間約100万円と算出した。また、管理雑木林生態系については、供給機能に基づく価値が年間約30万円と算出した。
また、改変予定地では改変後30年間、少なくとも年間4,500kgの有機物が導入されることとした場合、未来生態系の二酸化炭素の吸収固定量は、少なくとも年間600kgCO2と算出された。なお、改変予定地には植物残差に変えて別の炭素源、例えば炭化物(竹炭その他の木炭など)を導入してもよい。炭化物は多孔質の炭素源であり、炭化物を導入することで二酸化炭素の吸収固定量を増大させる、土壌生物の生息場所を提供する、水分保持機能を高めるといった生態系の機能を増強できる
以上の通り、現存生態系を今後30年間、現状維持した場合の価値はゼロないしはマイナスであることが示された。一方で、現存生態系をいったん、消失させて太陽光発電地として利用しながら現存生態系とタイプが異なる複数の生態系(未来生態系)を構築することで未来生態系から得られる価値は改変後30年で物資の供給機能に基づく価値のみで2,000万円を超え、他に土壌形成機能、二酸化炭素の吸収固定機能に基づく価値も現存生態系の今後30年間を上回ることが確認できた。
また、改変後の改変予定地を太陽光発電という人為的利用(生態系の利用ではない、生態系非活用利用)に供することで、改変後20年間の生態系利用外価値は7,600万円になると想定された。
本実施態様では、太陽光発電終了後の改変予定地での生態系構築(植生繁茂)を促進するため、土壌の物理化学性および生物性が良好となるようにする。具体的には前述したとおり、改変後の改変予定地土壌に有機物(植物残差)のような炭素源を導入するとともに、未来生態系の構築に寄与する微生物を導入する。
より詳細には、改変前の土壌を採取し、土壌微生物叢分析を行うとともに、一般的な微生物培養用の培地(PDA培地など)を用いて試料に含まれる微生物を単離して菌株化する。有機物量の測定および土壌微生物叢分析は強熱減量法や環境DNA分析などの一般的な方法で行えばよい。
微生物叢分析を用いて、試料から単離、菌株化された微生物の中から未来生態系の構築に有益な(例えば葉蘭の栽培に有益な)微生物を特定する。そして、改変後の改変予定地に投入する有機物など(例えば剪定枝や植栽する植物など)に菌株化した微生物の培養物を含ませるなどして改変予定地に導入する。このような微生物を利用した生態系の構築促進は、第1実施態様に準じる。
以上のように、本発明によれば生態系サービスの評価値が低下している生態系を改変し、即時的な経済的価値を生む人為的利用に供しながら、当該人為的利用を終えた後に現存生態系とは異なる生態系の構築に有益な土づくりができる。このように、本発明によれば、改変予定地について、改変時点の社会的ニーズに合致した利用をしながら、20年、30年、あるいは50年後の価値を創出することができ、経済性と環境保全の両立、短期的利益の確保と長期的な資産構築とを両立させられる。
すなわち、本発明によれば生態系の改変時には、その時の社会的ニーズに合致した生態系の利用を行いながら、20~30年後における社会情勢の変化に対応した、20~30年後という未来のニーズに合致した生態系の基盤を構築できる。
さらに、本発明に係る第4実施態様について説明する。第4実施態様では、北海道東部地域にある幅300m、高さ150m程度の向かい合う山林斜面と、その斜面の間に位置し、崩落した土砂などで谷が埋められて形成された平地(約300m四方)とを生態系を人為的に構築する対象の攪乱地とする。山林斜面は斜面の崩落によって植生が失われ、平地部は埋設土が堆積し、どちらも裸地化している。
この攪乱地は裸地状態であるが、攪乱地の近傍地(5km以内)には被災前の植生を残す自然生態系がある。この攪乱地と近傍地の自然生態系の植生調査および土壌微生物(糸状菌)叢分析の結果、攪乱地およびその近傍地ではマツ類の実生苗が菌根菌と共生していることが確認できた。また環境DNA分析からは、攪乱地およびその近傍地の土壌の土壌微生物叢に、菌根菌以外にもマツ類の病害菌や生育に有益な非菌根性糸状菌が含まれていることが確認された。非菌根性糸状菌の一部は、一般的な微生物培養培地であるPDA培地またはオートミール培地を用いて、植物と共生させることなく単離、培養できた。
攪乱地の斜面は攪乱地に被災前に植林されていたカラマツを主体とする林地として再生することとして、カラマツを植栽樹木兼リード植物とし、カラマツと共生しその生育を助ける菌根菌を仲介微生物(第1の仲介微生物)に選定した。そして、攪乱地の裸地化した斜面のうち、裸地化した部分であって自然植生の回復が難しいと判断された部分(斜面中央部約50m四方)に、攪乱地の近傍地から切り出した土壌ブロック(幅約20cm×10cm、厚さ約15cm)を約5m間隔で点在させる。土壌ブロックは、第1の仲介微生物である菌根菌と共生しているリード植物としてのマツ実生苗を含む自然土壌ブロックである。
攪乱地(斜面)への土壌ブロック配置から数年(1~5年)後には、攪乱地やその近傍地から単離・培養した非菌根性糸状菌(内生菌)を第2の仲介微生物とし、これを増殖させた培土で発根させ育苗したカラマツ苗を植栽樹木として導入する。植栽樹木としてのカラマツ苗は、第2の仲介微生物を含む培土を充填した容器で発根させたコンテナ苗を用いることが好ましい。
本実施態様では、攪乱地平面にリード植物として草本系の緑肥植物(かぼちゃ)を導入する。かぼちゃは第1の仲介微生物としての窒素固定菌と共生する。カボチャ栽培は最低、1サイクル、好適には2~3サイクル行い、窒素固定菌と共生させるとともに、その生育具合を観察する。攪乱地平面は、カボチャの生育状況を参考に、排水設備を埋設する箇所などを特定し、一般的な農作物栽培を行う区域(農用地)、カラマツ苗の育成を行う苗畑とする区域、その他粗放的農林業を行う区域に区分する。このうち、苗畑とする区域と粗放的農林業を行う区域において、リード植物としてのカボチャ栽培を終えた後に、第2の仲介微生物を人為的に共生させた植栽樹木を育成する。
また、斜面と粗放的農林業を行う区域には、樹木系の緑肥植物(アキグミ)を導入する。土壌ブロックに含まれるカラマツ苗がリード植物として導入され、土壌ブロックの配置後に植栽樹木としてのカラマツ苗が導入される斜面部ではカラマツが第1の植栽樹木、アキグミは第2の植栽樹木という2種類の植栽樹木が導入される。アキグミと植栽樹木としてのカラマツ苗木の導入順序はリード植物導入後であればどちらが先でもよい。またアキグミは、リード植物としてカラマツを導入しない斜面に導入し、その後、植栽樹木として商業利用がしやすいが肥沃な土地を好む別の樹木(例えばブルーベリーなどの果樹)を導入してもよい。この場合、第1の仲介微生物としての窒素固定菌をアキグミと共生させ、土着の非菌根性糸状菌の中から第2の仲介微生物を選定し植栽樹木に共生させるとよい。
本実施態様ではリード植物としてのカボチャが導入された平面で、第2の仲介微生物を増殖させた培土を用いた植栽樹木の苗木育成を行う。第2の仲介微生物としては、植栽樹木とリード植物双方にとって友好的な共生関係を構築でき、単離、増殖、培養が容易な非菌根性糸状菌であり、特に攪乱地またはその近傍地の土壌微生物叢を構成する土着の非菌根性糸状菌を用いることが好ましい。第2の仲介微生物としては、非菌根性糸状菌の中でも特に様々な植物に対して友好的な糸状菌、例えばトリコデルマ属やモルテリア属糸状菌を用いることが特に好ましい。
土着の非菌根性糸状菌を第2の仲介微生物として選定する際には、単離した土着の非菌根性糸状菌について微生物実験を行うことが好ましい。具体的には、非菌根性糸状菌の培養物を植栽樹木の根圏に配置して人為的に共生させた場合に生育に発芽、発根、生育促進などの効果が認められた、病害菌に対する拮抗作用があったなどの有益な効果が認められるか否かを試験するとよい。さらに、第1の仲介微生物と共生しているリード植物の根圏に導入した場合にリード植物の生育に悪影響を及ぼさないことも実験して確認しておくとよい。
本実施態様では、攪乱地の近傍地の土壌から単離され広範な植物に対する成育促進効果が分析及び接種試験により認められたモルテリア属糸状菌を第2の仲介微生物とする。カラマツ苗には第2の仲介微生物を人為的に共生させることとし、第2の仲介微生物を含む培土を用いて挿し木苗または実生苗を発根、発芽させて育成する。このようにして第2の仲介微生物を人為的に共生させたカラマツ容器苗を攪乱地平面で育成し、植栽樹木として斜面に導入する。
この苗木づくりにより、攪乱地平面にも第2の仲介微生物が人為的に持ち込まれる。すなわち、攪乱地の平面には、リード植物としてのカボチャと第1の仲介微生物としての窒素固定菌が導入され、その後、苗木づくりにおいて第2の仲介微生物が人為的に持ち込まれる。この第2の仲介微生物は土着の微生物であり、かつ、広範な植物に対して友好的な非菌根性糸状菌であるため苗畑土壌の生物性を良好にすることに寄与しうる。このため、苗畑を農地に転用して農作物を栽培する場合、栽培される農作物に第2の仲介微生物が共生してその生育を促進することが期待でき、「土づくり」の負担を低減した農地再生ができる。
また、攪乱地の斜面には、リード植物(カラマツ)を含む土壌ブロックの配置により第1の仲介微生物(菌根菌)が導入され、その後、植栽樹木として第2の仲介微生物(非菌根性糸状菌)を人為的に共生させたカラマツ苗が導入される。第2の仲介微生物としては、リード植物とも植栽樹木とも友好的に共生できる微生物が選択されることで、植栽樹木に先立って導入するリード植物が植栽樹木の活着や育成をサポートする。リード植物としては植栽樹木より過酷な環境(土壌が薄い、乾湿が激しい、養分や水分が少ない、吸収しづらいなど)でも生育しやすい植物、生育が早い植物(例えば草本植物や緑肥植物など)を用いることで、少量の植栽(つまり低コスト)で裸地化した攪乱地の植生を早期に回復させ、リード植物より定着しづらい樹木の育成基盤ができる。このため、本実施態様によれば植生回復のコストを低減しながら、被災地を放置するのに比べて早い植生回復を実現できる。

Claims (16)

  1. 人工緑地に形成される生態系を構成する生物同士の共生関係を分析し、
    前記生態系における最高層を構成する樹木である高層樹木と、当該高層樹木の生育に有益な共生関係を構築する関係性にある生物であって、前記人工緑地またはその近傍地の生態系に含まれる土壌微生物叢に含まれる土着微生物であり、菌根を形成せずに菌糸によって植物と共生関係を構築する非菌根性糸状菌と共生関係を構築するリード植物と、を特定し、
    前記人工緑地に前記リード植物と前記高層樹木とを導入する生態系の人為的な構築方法。
  2. 前記リード植物は、中低層植物であり、
    前記非菌根性糸状菌は、前記中低層植物および前記高層樹木の根と共生ネットワークを構築する仲介微生物であり、
    前記中低層植物は、前記仲介微生物を介して前記高層樹木にとって有益な共生関係を構築する関係性にある請求項1に記載の生態系の人為的な構築人工緑地形成方法。
  3. 前記中低層植物を前記人工緑地に導入した後、前記仲介微生物との共生関係を人為的に構築させた高層樹木を当該人工緑地で生育させることにより、当該人工緑地に人工的な植生遷移を生じさせる請求項1または2に記載の生態系の人為的な構築方法。
  4. 生態系の人為的な改変を伴う生態系の人為的な構築方法であって、
    改変対象の生態系である現存生態系に対して生態系サービスの経済的評価がより高い未来生態系を決定し、
    前記現存生態系を前記未来生態系に変更するために前記改変予定地を改変して人為的に利用しながら所定の未来期間に渡って前記未来生態系を構築する生態系の人為的な構築方法。
  5. 前記改変予定地の土壌に含まれる炭素源量および土壌の生物性を測定し、当該土壌の炭素源量および生物性が、前記改変を行う前より行った後の方が増大するように改変後の当該改変予定地に炭素源を導入する請求項4に記載の生態系の人為的な構築方法。
  6. 前記生物性として、前記改変予定地の改変前の土壌の微生物叢を分析するとともに、当該微生物叢を構成する微生物を単離して培養し、前記土壌中で増殖可能で前記未来生態系の構築に有益な微生物の培養物を改変後の当該改変予定地に導入する請求項5に記載の生態系の人為的な構築方法。
  7. 前記改変予定地に再生可能エネルギー発電設備を設置する改変を行い、当該改変予定地を発電利用に供する請求項4から6のいずれかに記載の生態系の人為的な構築方法。
  8. 生態系の人為的な改変を伴う生態系の人為的な構築方法であって、
    改変対象の生態系である現存生態系が存在している改変予定地の土壌に炭素源を導入するとともに再生可能エネルギー発電設備を設置する改変を行い、
    当該改変予定地に所定の未来期間に渡って前記現存生態系とは異なる1以上のタイプの生態系である未来生態系を構築する生態系の人為的な構築方法。
  9. 前記改変予定地の改変前の土壌の微生物叢を分析するとともに、当該微生物叢を構成する微生物を単離して培養し、前記土壌中で増殖可能で前記未来生態系の構築に有益な微生物の培養物を改変後の当該改変予定地に導入する請求項8に記載の生態系の人為的な構築方法。
  10. 前記所定の未来期間は20年以上である請求項4から9のいずれにかに記載の生態系の人為的な構築方法。
  11. 攪乱を受けた攪乱地での生態系の人為的な構築方法であって、
    攪乱地への植栽を予定する樹木である植栽樹木と友好的な共生関係を構築できる仲介微生物と共生できるリード植物を前記攪乱地に導入して当該リード植物の根圏において前記仲介微生物と共生させ、
    前記リード植物を前記攪乱地に導入した後に前記植栽樹木を導入する生態系の人為的な構築方法。
  12. 前記植栽樹木は、前記攪乱地が位置する地域の潜在自然植生を構成する樹種である潜在植生樹種または前記攪乱地の攪乱前に当該攪乱地またはその近傍地に生育していた従来樹種から選ばれた土着性樹種の樹木であり、
    前記仲介微生物は、前記攪乱地およびその近傍地のどちらか一方または両方の土壌微生物叢に含まれる糸状菌であり、前記植栽樹木または前記リード植物の根圏において当該仲介微生物と共生している状態で前記植栽樹木を前記攪乱地に導入する請求項11に記載の生態系の人為的な構築方法。
  13. 前記仲介微生物と前記リード植物とを含むリード植物ブロックを複数、前記攪乱地に点在させることにより前記リード植物を前記攪乱地に導入する請求項11または12に記載の生態系の人為的な構築方法。
  14. 前記リード植物は仲介微生物としての窒素固定菌と共生関係を構築する緑肥植物である請求項11または13に記載の生態系の人為的な構築方法。
  15. 前記リード植物は仲介微生物としての菌根菌と共生関係を構築する菌根菌共生樹木であり、
    前記リード植物ブロックは、前記攪乱地の近傍地の自然生態系から切り出され、当該リード植物が菌根菌と共生関係を構築している自然土壌ブロックまたは当該リード植物と菌根菌との共生関係が人為的に構築された人工植物ブロックである請求項13に記載の生態系の人為的な構築方法。
  16. 前記攪乱地およびその近傍地のどちらか一方または両方の土壌微生物叢に含まれ、菌根を形成せずに菌糸によって植物と共生関係を構築する土着の非菌根性糸状菌を仲介微生物とし、
    前記仲介微生物の培養物を含む培土で育成した前記植栽樹木を前記攪乱地に導入する請求項11から15のいずれかに記載の生態系の人為的な構築方法。


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