JP2022102686A - 鉢底石、鉢底石の製造方法、植物の栽培方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の解決しようとする課題は、一度植え付け又は植替え時に配置するだけで肥料成分を土壌中に放出できる、肥料成分を含有した鉢底石を提供することにある。【解決手段】本発明は、肥料成分が担持された鉢底石である。【選択図】図4

Description

本発明は、肥料成分が担持された鉢底石、当該鉢底石の製造方法、及び当該鉢底石を用いた植物の栽培方法に関する。
植物を栽培容器に植えて栽培する場合、鉢の底面に鉢底石を配置することがある。栽培容器の底には、通常水抜きのための穴が開いており、鉢底石は、鉢底から栽培土の流出するのを防ぐとともに、土壌の水はけを良くし、通気性を保つことを目的として利用される。鉢底石は、砂利、軽石、炭、又は、廃ガラス等を焼成発泡させてなるガラス発泡体が使用されることが多い。ガラス発泡体からなる鉢底石は多孔質で通気性等に優れることから、鉢底石として好ましく利用されている。
特許文献1及び2には、このような多孔質のガラス発泡体に、機能性成分を担持させて特定の機能を付した発明が開示されている。
特許文献1にはガラス粉末、発泡剤及び微生物(EM菌)による生成物を混合して焼成させた発泡資材が開示されている。特許文献2には、防虫忌避剤を担持させた二酸化ケイ素を、ポリエチレン樹脂粉粒と混合焼成した防虫材が開示されている。
ところで、植物を栽培する際には、通常、栽培条件に応じて適切な肥料を使用する必要がある。肥料には、土壌中に混ぜ込んで使用する遅効性の固形肥料や、水やりの一環として与えることができる即効性の液体肥料等が存在する。
特開2001-335391号公報 特開平9-165301号公報
植物は生育段階に応じて必要となる成分が異なるため、与える肥料も生育段階に応じて変える必要がある。従来では、生育段階後期に必要な肥料を与えるために、遅効性の固形肥料を予め土壌中に混ぜ込むか、又は必要に応じて追肥を行うことで、適切な肥料成分を与える方法がとられている。
しかしながら、利用される肥料は水溶性のものが多く、雨や水やりなどにより肥料成分が次々と溶け出してゆくため、肥料の効果が継続しないという欠点があった。また、コーティングを施した遅効性の化成肥料であっても、気温が高いほど肥料成分の溶解が促進されてしまい、十分に肥料の効果が発揮される前に肥料切れを起こしてしまうこともあった。このように、従来の肥料は、遅効性のものを用いた場合であっても、花卉の成熟する生育段階後期に十分な肥料効果が発揮されないこともあった。
また、植え付け後に固形肥料等を追肥するのは手間がかかり、特に栽培容器等に植えられている植物は、土壌部分が少なく肥料の混ぜ込みの作業が手間であった。
また、追肥をするタイミングを間違えると逆に植物の生育に害を与えるという問題もあった。
このような問題に鑑み、本発明は、一度植え付け又は植替え時に配置するだけで肥料成分を適切なタイミングで土壌中に放出できる、鉢底石を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明は、肥料成分が担持された鉢底石である。
本発明の鉢底石は、鉢底に配置するだけで、肥料として利用することができる。
本発明の好ましい形態では、前記鉢底石が多孔質構造である。
このような形態の鉢底石は、栽培容器内の通気性及び水はけをよくするだけでなく、鉢底石の内部まで水及び根酸等の溶液が浸透し、肥料成分を効率よく放出する。
本発明の好ましい形態では、前記肥料成分が、根酸に可溶である。
このような肥料成分を用いることで、植物がある程度生長して根が鉢底石近傍まで伸長したところで、根酸により鉢底石に含まれる肥料成分が放出される。このように、本発明の好ましい形態によれば、植物の生長に応じて適切なタイミングで肥料成分を与えることが可能となる。
また、鉢底石に包含された肥料成分の流出を緩やかにすることができ、肥料効果を長期間継続させることができる。
本発明の好ましい形態では、前記肥料成分が、リン酸、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及びホウ素から選ばれる一種又は二種以上を有効成分として含む。
本発明の好ましい形態では、前記鉢底石の最大径が、0.5~8cmである。
このような形態とすることで、通気性及び良好な水はけを保つといった鉢底石本来の機能を発揮すると共に、鉢底石に植物の根が接触しやすく、植物が根から肥料成分を効率的に吸収することできる。
また、本発明は、鉢底石の原材料、及び肥料成分を混合し、焼成発泡することを特徴とする、鉢底石の製造方法である。
このような製造方法を用いることで、肥料成分を包含する鉢底石を容易に製造することができる。
本発明の好ましい形態では、前記鉢底石の原材料がガラス粉末であることを特徴とする。
このような製造方法を用いることで、肥料成分を包含する鉢底石を容易に製造することができる。
また、本発明は、栽培容器を用いた植物の栽培方法であって、肥料成分が担持された鉢底石を前記栽培容器の底面に配置する工程と、当該鉢底石の上部に栽培用土を配置する工程と、当該栽培用土に植物を植える工程を備える。
このような栽培方法を用いることで、植物の植え付け時に鉢底石を配置するだけで、固形肥料等を施した場合と同様の効果を得ることができる。
本発明の好ましい形態では、前記肥料成分が、根酸に可溶である。
このような形態とすることで、植物は、ある程度生長し根が鉢底石近傍まで伸びたところで、根酸により肥料成分を溶解し、肥料成分を吸収することができる。すなわち、植物の生長に応じて適切な肥料成分を与えることが可能となる。
本発明の鉢底石によれば、一度栽培容器の底面に配置するだけで、肥料成分を土壌中へ放出することのできる鉢底石を提供することができる。
また、本発明の植物の栽培方法によれば、植え付け時に追加の固形肥料等を混ぜ込む必要なく、鉢底石を配置するだけで、植物へ十分に肥料を与えることができる。
本発明の鉢底石を用いた、植物の栽培方法の一形態を示す概略図である。 苗の植え付けから1週間後のビオラの生育状態を比較した写真であって、(a)は天然石を鉢底石として用いて栽培した比較例1を、(b)はリンを担持させた鉢底石を用いて栽培した実施例1を示す。 苗の植え付けから3ヶ月後のビオラの生育状態を比較した写真であって、(a)は天然石を鉢底石として用いて栽培した比較例1を、(b)はリンを担持させた鉢底石を用いて栽培した実施例1を示す。 図3の観察から数日後のビオラの生育状態を比較した写真であって、(a)は天然石を鉢底石として用いて栽培した比較例1を、(b)はリンを担持させた鉢底石を用いて栽培した実施例1を示す。
本発明の鉢底石は、肥料成分が担持されたものである。
肥料成分としては、リン酸、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素、硫黄、鉄、銅、ケイ酸、亜鉛、モリブデン等を含む無機成分、又は油粕、魚粉、骨粉、米ぬか、草木灰等の有機成分等を用いることができる。また、バリン、ロイシン、イソロイシン、プリン、メチオニン等のアミノ酸、ビタミンB1、コリン等のビタミン類、フルボ酸、フミン酸等の腐植物質、動植物からの抽出物等のいわゆる植物活力剤に配合される各種有効成分を、本発明の肥料成分とすることができる。
無機成分を含む肥料としては、尿素、硫安、塩安、硝安、硝酸石灰、リン酸一安、リン酸二安、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、熔成苦土リン肥、塩化加里、硫酸加里、硝酸加里、ケイ酸加里、硫酸苦土、消石灰、炭酸カルシウム、苦土石灰等が挙げられる。
植物の栽培に用いられる肥料には、クエン酸等の酸で溶解するク溶性肥料、根酸等の弱い酸で溶解する可溶性肥料、水で溶解する水溶性肥料が存在する。ク溶性肥料及び可溶性肥料は、根酸等の酸に触れることで初めて肥料成分が吸収可能となり、一般的に可溶性肥料は根酸で容易に溶解し、ク溶性肥料は根酸で緩やかに溶解する。
本発明の鉢底石においては、肥料成分が根酸に可溶であることが好ましい。このような肥料成分として、例えば、ク溶性リン酸、ク溶性加里等のク溶性の肥料成分、可溶性苦土、可溶性ケイ酸、可溶性石灰、可溶性マンガン、可溶性リン酸等の可溶性の肥料成分を用いることが好ましい。
また、上述の根酸に可溶な肥料成分を含む肥料を、本発明における肥料成分として利用することもでき、このような肥料としては、ク溶性リン酸を含む熔成リン肥(ようりん)、ク溶性加里を含むケイ酸加里、可溶性リン酸含む重過リン酸石灰等を好ましく例示できる。また、任意の肥料成分に、根酸で可溶となるようにコーティングを施したものを、本発明における肥料成分として用いてもよい。
このような根酸に可溶な肥料成分は、肥料成分の流出・消失が遅いため、鉢底石本体に長期間肥料成分が担持される。その結果、鉢底石は長期間肥料成分の効果を維持することができる。
また、根酸に可溶な肥料成分を用いた場合、植物の根が鉢底石周辺まで伸長し、根から分泌された根酸によって肥料成分が溶解されて初めて、植物が吸収できるようになる。そのため、生育段階後期(開花・結実時)に必要なク溶性肥料成分を含むことで、追肥等の手間を要することなく、生育段階後期の適切なタイミングで肥料成分を植物に与えることができる。
本発明の鉢底石としては、例えば、ガラス発泡体、軽石、パーライト、ゼオライト、炭、発泡スチロール、バーミキュライト、紙(パルプ)、木(バークを含む)、及び、ポリプロピレン又はポリエチレン等の石油由来の樹脂等、一般的に鉢底石として用いられる原材料を使用することができる。
鉢底石に肥料成分を担持させる方法は特に限定されず、例えば、鉢底石に肥料成分を含浸させる方法、鉢底石に肥料成分を塗布する方法、ガラス粉末等の鉢底石の原材料と肥料成分を混合させ、焼成発泡させることで鉢底石内部に肥料成分を分散させる方法を採用することができる。
また、本発明の鉢底石は、多孔質構造であることが好ましい。
このような構造とすることで、本発明の鉢底石は、栽培容器内の通気性及び水はけをよくするといった鉢底石本来の機能を十分に発揮するだけでなく、鉢底石の内部まで水及び根酸等の肥料成分を溶解するための媒体が浸透するため、肥料成分を効率よく溶解させることができる。
このような多孔質構造の鉢底石は、鉢底石の原材料、肥料成分、及び必要に応じて添加剤を混合し、焼成発泡させて得ることができる。また、既存のガラス発泡体の製造に用いる焼成炉及び冷却装置等を用いて製造することができる(例えば、特許第3628556号参照)。
具体的には、初めに、混合機を用いて鉢底石の原材料、肥料成分を混合し、原料破砕物を作製する。
鉢底石の原材料としては、黒曜石、真珠岩、及び松脂岩等のパーライト原石、ガラス粉末、珪藻土等を用いることができる。
鉢底石の原材料としては、ガラス粉末を用いることが好ましい。
また、ガラス粉末は、好ましくは500μm以下、より好ましくは250μm以下の粒径となるように粉砕されたものを用いることが好ましい。
ガラス粉末としては、瓶ガラスや窓ガラス等の廃材を粉砕した廃ガラスを用いることができる。これらの廃ガラスは、多量に流通し安価に入手することができる。また、これらの廃ガラスは、約650~700℃を超えると軟化する。
このような廃ガラスは、一般に、主成分のシリカ(SiO)以外に、アルミナ(Al)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、及び、微量の酸化第二鉄(Fe)、チタニア(TiO)、二酸化マンガン(MnO)、五酸化二リン(P)、三酸化硫黄(SO)等で構成されている。
原料粉砕物を作製する際、鉢底石の原材料及び肥料成分と共に、添加剤を加えてもよい。
このような添加剤としては、炭化ケイ素、炭素、ドロマイト、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等、炭酸ナトリウム、石灰石等の発泡剤を用いることができる。
これらの添加剤のうち、石灰石等の発泡剤は、加熱され酸化または熱分解することで、炭酸ガス及び/又は一酸化炭素ガスを生じる。例えば、石灰石は820℃以上、ドロマイトは約900℃以上で分解して炭酸ガスを放出する。
鉢底石の原材料と肥料成分の配合比は、好ましくは1:0.01~1:0.3であり、より好ましくは1:0.02~1:0.25であり、特に好ましくは1:0.03~1:0.2である。
このような配合比とすることで、肥料として十分な効果を発揮する鉢底石を作製することができる。
前記原料破砕物には、無機質剤を粉粒状としたものを混合してもよく、例えば、ホウ砂、バーキュライト、火山れき、膨張スラグ、膨張けつ岩等を混合することができる。
このような無機質剤を粉粒状としたものを混合させることで、鉢底石の通気性、保水性、硬さを向上させることができる。
前記原料粉砕物の焼成発泡には、既存設備を転用することができる。
すなわち、焼成炉に設置された焼成コンベア上に原料粉砕物を配置し、焼成コンベアが焼成炉を通過する間に原料粉砕物を焼成発泡させ、その後得られた発泡体を冷却装置にて急冷させる。
前記原料粉砕物を焼成する温度は、原材料に応じて適宜変更可能であるが、原材料としてガラス粉末を用いる場合には、好ましくは600~1000℃、より好ましくは700~800℃である。
このような温度範囲とすることで、肥料成分の効果を失うことなく適度な空隙を有する鉢底石を得ることができる。なお、焼成温度は、原料粉砕物を加熱する火力を調節して設定することができる。
また、前記原料粉砕物を焼成する時間は、原料粉砕物が完全に発泡する温度であればよく、焼成コンベアの走行速度を調節することで焼成時間を制御することができる。
急冷後、得られた発泡体を粉砕機により粗粉砕することで、鉢底石を得ることができる。鉢底石の最大径は好ましくは0.5~8cm、より好ましくは0.5~6cm、さらに好ましくは1~5cm、特に好ましくは2~5cmである。
本発明の鉢底石の最大径を上記の範囲とすることで、鉢底石が土壌中に混合されずに栽培容器の下部に留まることができ、通気性を保つといった鉢底石本来の機能を発揮することができる。また、根酸に可溶な肥料成分を用いた場合には、植物の根が容易に鉢底石の隙間に絡むことができるため、鉢底石に包含された肥料成分を容易に溶解し、吸収することができる。
なお、本発明における最大径とは、Feret径の最大値を指す。
本発明の鉢底石の最大径は、ノギスや各種メッシュ径の篩を用いて測定することができる。
以下、本発明の鉢底石を用いて植物を栽培する方法について、鉢底石に含まれる肥料成分として、植物の根酸にて溶解するク溶性、又は可溶性の肥料成分を担持した鉢底石を使用した場合を例に説明する。
本発明の鉢底石は、従来の鉢底石と同様に、使用することができる。
図1(a)に、本実施形態に係る植物の生長方法における、植物の植え付け段階(生育段階初期)の概要図を示す。本発明の鉢底石20を栽培容器10の底面に配置する。このとき、栽培容器10の底面全体を覆うように配置するのが好ましい。
続いて、鉢底石の上に栽培用土30を配置する。ここで、前記鉢底石は、鉢底石としての通気性を付与する役割を担うため、栽培用土中に混ぜ込まない。
続いて、栽培用土30を栽培容器10に配置した後、当該栽培用土30に植物40を植え付ける。植物40の植え付けは、播種から行ってもよく、ある程度成長した苗を用いてもよい。
ク溶性、又は可溶性の肥料成分を含む鉢底石20は、植物40の根から分泌される根酸によって鉢底石20中の肥料成分が栽培用土30中に溶解し、これにより植物40は肥料成分を吸収できるようになる。すなわち、植物40の根が栽培容器10の下部に到達する前は、鉢底石20は肥料としての効果を発揮せず、植物40が成長し、その根が十分に伸長して初めて肥料成分を吸収することができる。図1(a)の生育段階初期では、鉢底石20の肥料成分は溶解せず、鉢底石20に担持されている状態である。
図1(b)に、植物40がある程度生長した段階における概要図を示す。
本実施形態においては、この段階においても根酸が鉢底石20に到達せず、あるいはごく微量が到達する状態であるため、鉢底石20の肥料成分ほぼ溶解せず、そのほとんどが鉢底石20に担持されている状態である。
図1(c)に、植物40の根が鉢底石20に到達した段階における概要図を示す。この段階では、植物40の根が鉢底石20に到達し、根が放出される根酸が、鉢底石20に含まれるク溶性、又は可溶性の肥料成分を溶解する。そうすると、肥料成分が栽培用土30に分散し、植物40はその根から分散した肥料成分を吸収することができる。
このように、本実施形態においては、鉢底石20が、根がある程度生長した段階で肥料成分を放出するため、適切なタイミングで植物40に肥料成分を与えることができる。
このような特性から、本発明の肥料成分は、リン酸であることが好ましい。リン酸は植物の生育段階初期では多量に必要となる成分ではなく、生育段階後期に花や果実の成熟に必須の成分である。むしろ成長期に過剰のリン酸が存在すると生育を阻害する要因となり兼ねない。
しかし、ク溶性、又は可溶性のリン酸を含む鉢底石であれば、鉢底にある程度多量に配置したとしても、植物は、生育段階初期の生育障害を起こすことなく、リン酸が必要となる生育段階後期に初めてリン酸が吸収可能となる。また、開花・結実時までリン肥としての効果が持続し、追肥等の手間を省くことができる。
また、ク溶性、又は可溶性のリン酸を含有した鉢底石を用いれば、元肥として従来の混ぜ込み式の肥料を別途用意する必要なく、当該鉢底石を鉢底に配置するだけで、手軽に肥料を与えることができる。
一方、本発明の生育方法において、肥料成分はリン酸に限定されない。例えば、生育段階中期に必要な肥料成分であっても、栽培容器の高さ、栽培用土の高さを適宜調節することで、適切な段階で肥料成分を放出するよう調整することができる。
また、窒素やカリウム等の、生育の全段階において必要な肥料成分を含んでもよい。この場合には、肥料成分が枯渇しがちな生育段階後期において、追肥や、予め元肥を栽培用土に混ぜ込まなくとも、十分な肥料成分を植物に与えることができる。
また、肥料成分は、水溶性の肥料成分であってもよい。この場合には、水を与えることで肥料成分が溶解し、栽培用土中に肥料成分を放出させることができる。
本発明の栽培方法に用いられる植物は特に限定されないが、プランター等の栽培容器内での栽培に適した植物が好ましい。このような植物としては、トマト、ピーマン、パプリカ、シシトウ、唐辛子、ナス、ブロッコリー、イチゴ、スイカ、かぼちゃ、インゲン、スナップエンドウ、きゅうり等の実物、リーフレタス、水菜、小松菜、レタス、白菜、キャベツ等の葉物、ニンジン、じゃがいも等の根菜といった野菜、ペチュニア、マリーゴールド、ベゴニア、バラ、日々草、ビオラ、パンジー等の花卉、ハーブ類、果樹類、観葉植物等が例示できる。
ここで、肥料成分としてリン酸を用いる場合は、トマト、ナス、きゅうり、ピーマン、パプリカ、シシトウ等の実物野菜、ペチュニア、マリーゴールド、ベゴニア、バラ、日々草、ビオラ、パンジー等の花卉、キウイ、ブドウ、みかん、さくらんぼ等の果樹の栽培に好適に用いることができる。
ガラス粉末を主成分とする鉢底石の原料と発泡剤の混合物に、肥料成分としてリン酸を加え、600℃以上の温度で焼成発泡させた。得られたガラス発泡体を、粉砕機を用いて粗粉砕し、肥料成分としてリン酸が担持された鉢底石(以下、リン担持鉢底石という)を製造した。なお、肥料成分としてのリン酸は、根酸で可溶な「ようりん」を用いた。
得られたリン担持鉢底石をプランターに配置し、以下の条件でビオラの苗を栽培した(実施例1)。対比実験用に、安山岩等から成る天然石を鉢底石として配置したプランターを用意し、同様の条件でビオラの苗を栽培した(比較例1)。なお、各栽培条件において、追肥は行わなかった。
(栽培条件)
・用土:培養土(赤玉、ピートモス、バーミキュライト等を含む)
・栽培容器:スクエア650型プランター
・配置した鉢底石の容量:2L
・植物種:ビオラ
・試験場所:群馬県高崎市内
・試験期間:2020年1月上旬~4月下旬
図2~4に、天然石を鉢底に配置したプランターで栽培したビオラ(比較例1)と、リン担持鉢底石を鉢底に配置したプランターで栽培したビオラ(実施例1)の成長を経時的に観察した結果を示す。
図2は、苗の植え付けから1週間後のビオラの生育状態を示す。比較例1は、葉の生長は良いが花数は少なく、1プランターあたり20輪ほどの花が観察された(図2(a))。一方、実施例1は、花数が多く、1プランターあたり50~60輪ほどの花の形成が確認された(図2(b))。なお、花数は、開花済みのもののみをカウントした。
この結果から、本発明の鉢底石は、鉢底に配置するのみで、十分に肥料成分の効果が発揮されることが明らかとなった。
図3は、苗の植え付けから3ヶ月後のビオラの生育状態を示す。実施例1は、多数の花芽を形成し、開花する花数も多かったが(図3(b))、比較例1は、実施例1よりも花数が少なかった(図3(a))。この結果は、比較例のビオラは、リン欠乏により花芽が形成されず、葉のみが生長していることを示している。
また、図3の観察からさらに数日経過したところ、実施例1は花数が減少せず、開花量も多かったが、比較例1は花数の増加が見られなかった(図4)。
また、図3及び図4から、リン担持鉢底石を利用した場合には、水枯れを起こしにくく、葉や花のハリが失われていないが、天然石を鉢底石として利用した場合は、水切れを起こし、葉や花の萎れを引き起こすことが明らかとなった。ガラス発泡体の空隙に水分が保持されるため、結果として鉢内における土壌の保水力が向上したと考えられる。
ビオラは数ヶ月以上花が咲き続ける花卉であるため、花の形成に必要なリンが不足しがちとなる。そのため、花の開花時期に合わせてリン含む肥料を与える必要があり、通常、緩効性の肥料を1ヵ月おきに与えるか、即効性の液体肥料を1週間おきに与えるのが一般的である。しかし、本発明の鉢底石を用いれば、当該鉢底石を一度鉢底に配置するだけで、肥料効果が発揮され、その効果は3ヶ月以上の長期間にわたって継続することが明らかとなった。実施例1においては、植物から分泌された根酸によって徐々にリン酸が溶出するため、肥料効果が数カ月にわたって継続したと考えられる。
以上の結果から、本発明の鉢底石は、鉢底に配置するだけで、保水性等の鉢底石としての機能を担保しつつ、植物に継続的に肥料成分を供給することが可能であることが明らかとなった。
10 栽培容器
20 鉢底石
30 栽培用土
40 植物

Claims (9)

  1. 肥料成分が担持された鉢底石。
  2. 多孔質構造である、請求項1に記載の鉢底石。
  3. 前記肥料成分が根酸に可溶である、請求項1又は2に記載の鉢底石。
  4. 前記肥料成分が、リン酸、窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、及びホウ素から選ばれる一種又は二種以上を含む、請求項1~3の何れか一項に記載の鉢底石。
  5. 前記鉢底石の最大径が、0.5~8cmである、請求項1~4の何れか一項に記載の鉢底石。
  6. 鉢底石の原材料、及び肥料成分を混合し、焼成発泡することを特徴とする、鉢底石の製造方法。
  7. 前記鉢底石の原材料がガラス粉末であることを特徴とする、請求項6に記載の鉢底石の製造方法。
  8. 植物の栽培方法であって、
    肥料成分が担持された鉢底石を栽培容器の底面に配置する工程と、
    当該鉢底石の上部に栽培用土を配置する工程と、
    当該栽培用土に植物を植える工程を備えることを特徴とする、植物の栽培方法。
  9. 前記肥料成分が、根酸に可溶である、請求項8に記載の植物の栽培方法。

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