JP2022093202A - 細胞培養基材、細胞培養用樹脂薄膜、および細胞培養方法 - Google Patents

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篤 福田
Atsushi Fukuda
陽介 岡村
Yosuke Okamura
理王 喜多
Rio Kita
麻子 大友
Asako Otomo
宏 張
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Abstract

【課題】足場依存性を有する細胞の培養に広く使用することができ、光学観察に好適な細胞培養基材を提供する。【解決手段】ガラスからなる基材2と、基材2の培養面側を被覆する樹脂薄膜3と、を備える細胞培養基材1であって、載置した細胞の光学観察における光の波長の1/2よりも樹脂薄膜3の厚さが小さいことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養基材、細胞培養用樹脂薄膜、および細胞培養方法に関する。
一般的な足場依存性を有する細胞の培養において、拡大培養を目的とする場合には、表面改質処理の容易なポリスチレン(PS)等のプラスチック製の細胞培養基材を使用したり、ポリリジンやコラーゲン等の生体分子からなる細胞外マトリクス(ECM)を接着基質として表面にコーティングした細胞培養基材を使用したりする(例えば、非特許文献1)。一方、イメージングを目的として細胞を培養するための細胞培養基材は、培養した細胞を載置した状態で光学顕微鏡による観察を行うために、光学特性に優れたガラス製のものが多く使用されている。ところが、一般的に、多くの株化細胞、初代培養細胞、および胚性幹(ES)細胞や人工多能性幹(iPS)細胞等は、ガラス表面に接着し難い。また、播種した細胞がガラス表面に接着したとしても、分裂の際には接着面から離れるので、その後にガラス表面に再度接着できずに剥がれてしまって死に至り、増殖し難い。そこで、シクロオレフィン樹脂(COP)のような光学特性に優れたプラスチック製の細胞培養基材が開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献2)。
特許第4391523号公報
谿口征雅、関口 清俊、"幹細胞用培養基質の開発:現状と課題"、生物工学、92巻、9号、p.491-494、2014年 Aurora Microplatesカタログ、ワケンビーテック株式会社、[2020年12月1日検索]、インターネット〈URL:https://www.wakenbtech.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/1604-Aurora_Catalog-J-1.pdf〉
一部の株化細胞や、神経細胞および肝細胞等の初代培養細胞の培養においては、最適化された細胞外マトリクスをコーティングすることにより、ガラス基材を使用することができる。一方、再生医療分野で研究に利用されているヒトES/iPS細胞およびその分化細胞に対しては、ガラス基材では細胞接着性が不十分であり、増殖し難い。また、シクロオレフィン樹脂は、自家蛍光等の光学特性がガラスに及ばず、共焦点レーザー顕微鏡等による光学観察には不十分である。したがって、接着性の低いヒトES/iPS細胞およびその分化細胞を安定して培養しながら光学的な観察を継続するためには、ガラス基材と同等の光学特性を有しつつ、プラスチック基材のような細胞接着性能を有する細胞培養基材が必要である。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、ヒトやマウス等の哺乳動物由来のES/iPS細胞を始めとする足場依存性を有する細胞の培養に広く使用することができ、光学観察に好適な細胞培養基材、および細胞培養方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る細胞培養基材は、ガラスからなる基材と、前記基材の培養面側を被覆する樹脂薄膜と、を備え、載置した細胞の光学観察における光の波長の1/2よりも前記樹脂薄膜の厚さが小さい構成とする。また、本発明に係る細胞培養用樹脂薄膜は、基材の培養面側を被覆して細胞培養基材とするものであって、前記細胞培養基材上の細胞の光学観察における光の波長の1/2よりも厚さが小さい構成とする。かかる構成により、光学特性に優れたガラスを基材としつつ、表面を被覆する樹脂により、ガラスの光学特性を損なうことなくガラス基材に細胞の接着性を付与することができる。
前記課題を解決するため、本発明に係る細胞培養方法は、ガラスからなる基材を樹脂薄膜で被覆した細胞培養基材の前記樹脂薄膜側の面上に細胞を播種する播種工程と、前記細胞を増殖させる培養工程と、前記細胞を前記細胞培養基材上において光学的に観察する観察工程と、を行い、前記細胞培養基材の樹脂薄膜の厚さが、前記観察工程における光の波長の1/2よりも小さいとする。かかる手順により、細胞培養方法は、光学観察に好適な細胞培養基材で足場依存性を有する細胞を培養することができる。
本発明によれば、足場依存性を有する細胞の多くを培養することができると共に、光学観察が容易となる。
本発明の実施形態に係る細胞培養基材の構成を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る細胞培養基材の製造方法を説明するフローチャートである。 本発明の実施形態に係る細胞培養用樹脂薄膜の構成を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る細胞培養方法を説明するフローチャートである。 本発明に係る細胞培養基材の実施例と比較例の各供試材を使用してヒトES細胞を培養した写真であり、(a)は実施例(SPL1)、(b)はポリスチレン基材の参考例(SPL2)、(c)は樹脂薄膜のないガラス基材の比較例(SPL3)である。 本発明に係る細胞培養基材の実施例と比較例の各供試材を使用してヒトiPS細胞を培養した写真であり、(a)は実施例(SPL1)、(b)はポリスチレン基材の参考例(SPL2)、(c)は樹脂薄膜のないガラス基材の比較例(SPL3)である。 本発明に係る細胞培養基材の実施例(SPL1)、参考例(SPL2)および比較例(SPL3)によるヒトES細胞を培養した細胞数を示すグラフである。 本発明に係る細胞培養基材の実施例(SPL1)、参考例(SPL2)および比較例(SPL3)によるヒトiPS細胞を培養した細胞数を示すグラフである。 本発明に係る細胞培養基材の実施例と比較例の各供試材上のヒトES細胞についてのRNA-FISH解析の共焦点顕微鏡写真であり、(a)は実施例(SPL1)、(b)はシクロオレフィン樹脂基材の比較例(SPL4)、(c)は樹脂薄膜のないガラス基材の参考例(SPL3)である。 本発明に係る細胞培養基材の実施例と比較例の各供試材上のヒトES細胞についてのRNA-FISH解析における、DAPIの蛍光輝度の分布図である。
本発明に係る細胞培養基材および細胞培養方法を実施するための形態について、図を参照して説明する。図面に示す細胞培養基材およびその要素は、説明を明確にするために、大きさや位置関係等を誇張していることがあり、また、形状を単純化していることがある。
〔細胞培養基材〕
本発明の実施形態に係る細胞培養基材1は、図1に示すように、ガラスからなる基材2と基材2の片面(上面)を被覆する樹脂薄膜3とを備える。細胞培養基材1は、単層培養に使用され、樹脂薄膜3を設けた側の面を細胞の培養面として、組織から単離された細胞等を播種される。以下、各要素について詳細に説明する。
(基材)
基材2は、細胞培養基材1の主たる部材である。基材2は、材料が光学観察に使用可能なガラスであり、高倍率光学顕微鏡や蛍光顕微鏡等による光学観察に使用可能な形状に加工されている。光学観察に使用できれば、基材2のガラスの材料、形状は特に限定されない。また、基材2は、光学観察用に市販されているガラス製のスライドやカバースリップ等を流用してもよい。基材2は、光学観察の種類に対応した光学特性(高透過率、低複屈折性、低自家蛍光等)を有し、例えば、ホウケイ酸ガラスや石英ガラス等が適用され、平板状であることが好ましく、矩形や円形等、所望の平面視形状とすることができる。そして、基材2は、樹脂薄膜3、またはさらに細胞外マトリクスを支持するための強度を有しつつ、光学観察に対応した厚さとする。具体的には、基材2の厚さは、0.08mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましい。また、低倍率観察には1mm以下、高倍率観察には0.20mm以下が好ましい。特に基材2が1mm未満の厚さである細胞培養基材1は、ディッシュ(シャーレ)やウェルプレート等の蓋付きの培養容器に収容可能なサイズとしたり、後記するように、プラスチック製の枠体等に底板として貼り合わされたりすることが好ましい。
(樹脂薄膜)
樹脂薄膜3は、細胞培養基材1の培養面に設けられる。樹脂薄膜3は、基材2の一面を被覆することにより、培養しようとする細胞が接着し易くなって伸展するようにする。樹脂薄膜3は、単層培養に使用される一般的なプラスチック製のディッシュやウェルプレート等に適用されるような、無毒性、耐久性、および透明性を有する樹脂で形成される。具体的には、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはシクロオレフィン樹脂(COP)等のいずれかの樹脂を適用することができ、ポリスチレンが特に好ましい。あるいは、前記樹脂のいずれかを親水性基含有モノマーとの共重合体として、表面が親水性の樹脂薄膜3とすることもできる。樹脂薄膜3は、細胞接着性を付与するために、厚さが5nm以上であり、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上がさらに好ましい。一方、基材2への被覆方法等にもよるが、厚過ぎると基材2への密着性が低下して剥離する虞があるので、厚さが300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
また、細胞培養基材1上の細胞を光学顕微鏡または目視で光学観察に供する場合には、樹脂薄膜3は、ガラスからなる基材2よりも光学特性が劣るので影響を与えないようにするために、より薄いことが好ましく、光の波長の1/2よりも小さい厚さとする。光の波長の1/2よりも小さいとは、例えば、励起波長370nmの蛍光顕微鏡による観察であれば、185nm未満を指す。複数の単波長光源(例えば、405nm、488nm、546nm、633nm)を使用する共焦点レーザー顕微鏡等での観察であれば、最短波長の単波長光源の405nmの1/2よりも小さい202.5nm未満を指す。また、可視光のような波長域(例えば、380~780nm)を有する光での観察であれば、短波長である紫色の波長帯(380~430nm)の中心波長の405nmの1/2よりも小さい202.5nm未満を指し、好ましくは波長帯における下限の380nmの1/2よりも小さい190nm未満である。また、波長700~1100nmの近赤外レーザー光源を使用する走査型多光子レーザー顕微鏡による観察であれば、1000~1100nmの波長域の光で観察可能とするように、1000nmの1/2よりも小さい500nm未満を指し、好ましくは下限の700nmの1/2よりも小さい350nm未満である。言い換えると、樹脂薄膜3の厚さの2倍を超える波長域の光による観察を、樹脂薄膜3による光学的影響を受けずにすることができる。樹脂薄膜3は、細胞培養基材1に汎用性を持たせるために、また、基材2との密着性を確保するために、厚さ200nm以下であることが特に好ましい。なお、樹脂薄膜3は、細胞培養基材1の上面全体を被覆していなくてもよく、少なくとも細胞を伸展させたい領域に設けられていればよく、例えば、平面視で周縁部を被覆しない構成とすることができる。
樹脂薄膜3は、基材2との密着性を得るために、後記の細胞培養基材の製造方法で説明するように、アニール処理を施されていることが好ましい。また、樹脂薄膜3は、必要に応じて表面改質処理が施されている。前記のポリスチレンやポリエチレンテレフタラート等の樹脂は、疎水性であるので、細胞や細胞外マトリクスとの親和性が低い場合があり、細胞によっては接着性が不十分である虞がある。そのため、細胞培養基材1は、このような細胞を培養する場合には、樹脂薄膜3が、表面改質処理によって表面に親水性官能基を導入されて適度な親水性を付与されていることが好ましい。親水性を付与するための処理には、プラズマ照射、紫外線照射による活性酸素曝露、またはグラフト重合等を適用することができる。または、樹脂薄膜3は、シランカップリング処理によってアミノ基を修飾し、さらにグルタルアルデヒドを修飾していてもよく、このような処理により、様々な細胞外マトリクスを強固に架橋することができる。シランカップリング処理には、公知のカップリング剤を使用することができる。なお、樹脂薄膜3は、表面全体が表面改質されていなくてもよく、少なくとも細胞を伸展させたい領域が表面改質されていればよい。
(細胞外マトリクス)
培養する細胞によっては、培養面に接着基質(足場)を必要とするので、このような細胞を培養するための細胞培養基材1は、樹脂薄膜3上に細胞外マトリクスが被覆されていてもよい(図示省略)。細胞外マトリクスは、培養する細胞に対応した生体分子からなり、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン、ポリ-D-リジン、ならびにこれらを調製したCorning Matrigel(登録商標)等が適用される。
(細胞培養基材の製造方法)
細胞培養基材1は、図2に示すように、樹脂薄膜3を基材2上に形成する樹脂薄膜形成工程S1を行って製造され、その後に必要に応じて、樹脂薄膜3を表面改質する表面改質処理工程S2や、樹脂薄膜3上に細胞外マトリクスを被覆する接着基質被覆工程S3aを行う。樹脂薄膜形成工程S1は、樹脂薄膜3の材料や膜厚に対応した公知の方法を適用することができ、一例として、樹脂の有機溶媒溶液を基材2上に均一な厚みに塗布し、乾燥して溶媒を揮発させて、所望の厚さの樹脂薄膜3を形成する塗布工程S11を行う。溶液の塗布方法は、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法等が挙げられる。樹脂薄膜形成工程S1は、塗布工程S11の後に、樹脂薄膜3に材料に応じた条件でアニール処理を施すアニール工程S12を行うことが好ましい。
表面改質処理工程S2は、樹脂薄膜形成工程S1の後、また、接着基質被覆工程S3aを行う場合にはその前に行い、樹脂薄膜3の材料と、培養する細胞やそのために使用する細胞外マトリクスとに応じた表面改質処理を行う。表面改質処理工程S2は、一般的なプラスチック製のディッシュ等に施される方法と同様の表面改質処理方法を適用することができる。親水性を付与するためには、プラズマ照射、紫外線照射による活性酸素曝露、またはグラフト重合等を適用する。シランカップリング処理は、公知のカップリング剤を使用することができる。接着基質被覆工程S3aは、細胞外マトリクスを被覆した一般的なプラスチック製のディッシュ等と同様に、樹脂薄膜3上に細胞外マトリクスを被覆する。
細胞培養基材1は、ポリスチレン等のプラスチック製のディッシュやウェルプレート等の培養容器に組み合わせて使用することもできる。具体的には、ガラスボトムディッシュのように、底面に孔が形成されたプラスチック製の本体と本体の底面に貼り合わされて孔を塞ぐガラス板とから構成されているものについて、ガラス板を細胞培養基材1に置き換えることができる。このような構成により、細胞培養基材1を培養容器と一体として細胞を培養することができると共に、細胞培養基材1(基材2)の厚さが小さくても細胞や培地を支持することができ、さらに、培養した細胞を細胞培養基材1と共に培養容器から取り出さずに観察することができる。
〔細胞培養用樹脂薄膜〕
次に、細胞培養用樹脂薄膜について説明する。本発明の実施形態に係る細胞培養用樹脂薄膜3Aは、図3に示すように、基材2Aの培養面側を被覆して細胞培養基材とするシート状の部材であり、得られた細胞培養基材は、単層培養に使用される。特に、細胞培養基材1の基材2と同じ構成のガラス製の基材2Aを被覆することにより、前記実施形態に係る細胞培養基材1と同様に光学観察が可能となる。すなわち、細胞培養用樹脂薄膜3Aは、細胞培養基材1の樹脂薄膜3と同じ構成であり、単体で形成されるように構成されている。したがって、細胞培養用樹脂薄膜3Aは、単層培養に使用される一般的なプラスチック製のディッシュやウェルプレート等に適用されるような、無毒性、耐久性、および透明性を有する樹脂で形成される。具体的には、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリカーボネート(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはシクロオレフィン樹脂(COP)等のいずれかの樹脂を適用することができ、ポリスチレンが特に好ましい。 あるいは、前記樹脂のいずれかを親水性基含有モノマーとの共重合体として、表面が親水性の細胞培養用樹脂薄膜とすることもできる。また、細胞培養用樹脂薄膜3Aは、破損等しないように十分な強度を得るために、厚さが50nm以上であることが好ましい。また、細胞培養用樹脂薄膜は、後記するように接着剤等を介在せずに基材に貼付するために、厚さが200nm以下であることが好ましい。
(細胞培養用樹脂薄膜の製造方法)
細胞培養用樹脂薄膜3Aは、シリコン等からなる基板上に形成した後、基板から剥離して製造される。基板上に細胞培養用樹脂薄膜を形成する方法は、前記細胞培養基材の製造方法における塗布工程S11と同様である。細胞培養用樹脂薄膜3Aを形成する樹脂の有機溶媒溶液を塗布する前に、前記有機溶媒溶液の有機溶媒に不溶、かつ前記樹脂を不溶な溶媒(水性溶媒)に溶解する材料を剥離剤として、その溶液を基板上に塗布工程S11と同様に塗布して皮膜を形成することが好ましい。剥離剤となる材料として、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸、およびポリアクリルアミドのようなアクリル酸系水溶性ポリマー、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ならびに、デンプンやセルロースアセテート等の多糖類の非イオン性の水溶性高分子が挙げられる。剥離剤は、厚さが0.01~10μmであることが好ましい。基板上に剥離剤を介在して細胞培養用樹脂薄膜3Aを形成した後、基板ごと水性溶媒(例えば、水)に浸漬することにより、剥離剤を溶解して、細胞培養用樹脂薄膜3Aを基板から剥離する。そして、細胞培養用樹脂薄膜3Aを水性溶媒から掬い上げて乾燥させる。なお、細胞培養用樹脂薄膜3Aは、基板に貼り付けた状態で保管、流通するように構成されていてもよい。この場合、基板は厚さが小さいことが好ましく、数mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、一方、10μm以上が好ましい。
細胞培養用樹脂薄膜3Aは、基材2Aに、その培養面側と接触させることにより貼付される。細胞培養用樹脂薄膜3Aは、200nm程度以下の厚さであれば高密着性を発現し、ファンデルワールス力や静電相互作用等の物理吸着のみにより基材2Aに貼付される。また、基材2Aを被覆した細胞培養用樹脂薄膜3Aは、基材2Aとの密着性を得るために、アニール処理を施されることが好ましい。アニール処理方法は、前記細胞培養基材の製造方法におけるアニール工程S12と同様である。細胞培養用樹脂薄膜3Aを被覆した基材2Aは、細胞培養基材1と同様に使用することができる。
〔細胞培養方法〕
本発明の実施形態に係る細胞培養基材を使用した細胞培養方法について説明する。本発明の実施形態に係る細胞培養方法は、図4に示すように、前記実施形態に係る細胞培養基材の樹脂薄膜側の面上に細胞を播種する播種工程S4と、前記細胞を増殖させる培養工程S5と、前記細胞を前記細胞培養基材上において光学的に観察する観察工程S6と、を行い、前記細胞培養基材の樹脂薄膜の厚さが、観察工程S6における光の波長の1/2よりも小さいことを特徴とする。細胞培養方法は、さらに必要に応じて、播種工程S4の前に、前記細胞培養基材の前記樹脂薄膜側の面上に細胞外マトリクスを被覆する接着基質準備工程S3bを行う。工程S3b,S4,S5は、公知の単層培養と同様に行うことができる。
本実施形態に係る細胞培養方法で培養する細胞は、ポリスチレン等のプラスチック製のディッシュやプレートで単層培養が可能なものであれば特に限定されず、また、細胞培養基材上に載置(接着)した状態で、共焦点レーザー顕微鏡や超解像顕微鏡等による光学観察に供される場合に好適である。特に足場依存性によりガラス上での培養が困難なものが好適である。具体的には、初代培養細胞、マウスやヒト等の動物のES/iPS細胞およびその分化細胞、ならびに各種株化細胞等が挙げられる。
(接着基質準備工程)
接着基質準備工程S3bは、細胞培養基材1の樹脂薄膜3上に細胞外マトリクスを塗布する。接着基質準備工程S3bは、細胞培養基材1が予め細胞外マトリクスを被覆されておらず、接着基質の必要な細胞を培養する場合に行う。
(播種工程)
播種工程S4は、細胞培養基材1の培養面に培養する細胞を播種すると共に、培地を供給する。このとき、所定の播種密度となるように、細胞培養基材1の面積に応じた数の細胞を播種する。培地は、細胞を播種する前に細胞培養基材1に供給してもよいし、細胞を培地に懸濁させてから播種してもよい。
(培養工程)
培養工程S5は、細胞を播種した細胞培養基材1をインキュベーター(培養器)等に格納して、所定の環境(温度、湿度、CO2濃度等)に曝露する。また、必要に応じて、所定の時間が経過した時に培地を添加または交換する。培養工程S5は、最長で、細胞が細胞培養基材1の培養面(樹脂薄膜3や細胞外マトリクスで被覆された領域)全体に伸展するまでの時間とする。
(観察工程)
観察工程S6は、培養した細胞を細胞培養基材1上に載置したまま、光学顕微鏡で観察する。光学顕微鏡は、共焦点顕微鏡、全反射顕微鏡、誘導放出抑制(STED)顕微鏡等である。また、必要に応じて、細胞を染色する。細胞培養基材1が培養容器に収容されて培養した場合は、細胞培養基材1を細胞と共に培養容器から取り出して、光学顕微鏡のステージに載置する。
以上、本発明に係る細胞培養基材および細胞培養方法を実施するための実施形態につい説明したが、以下に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例および前記実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
〔細胞培養実験〕
細胞接着性を評価するために、足場依存性の細胞であるヒトES細胞およびヒトiPS細胞の単層培養を行い、細胞の伸展状態および細胞数を観察した。
(供試材)
厚さ0.17mm、18mm×18mm(培養面積3.24cm2)のカバーガラスZeiss,#0109030091(ZEISS社製)を基材とし、その片面に、分子量260000のポリスチレン(Acros Organics社製、30mg/mL)のトルエン溶液を、4000rpm、60sのスピンコートにより塗布し、乾燥器で100℃、1晩(約8hr)のアニール処理を施して、厚さ160nmのポリスチレンからなる樹脂薄膜を形成して、本発明の実施例に係る供試材(SPL1)を作製した。また、参考例として、ポリスチレン製、径35mm(培養面積9.62cm2)のウェルプレート(6well、表面処理なし)(#353046、FALCON社製)を供試材SPL2とした。一方、比較例として、供試材SPL1のカバーガラスを供試材SPL3とした。さらに供試材SPL1,SPL3は、供試材SPL2と同じウェルプレートに収容した。ヒトES細胞、ヒトiPS細胞それぞれの培養用に、各供試材を3well準備した。
(播種、培養)
供試材の片面全体(SPL1は樹脂薄膜側、SPL2は底面全体)に、細胞外マトリクスとして、Corning Matrigel(登録商標)#354277を塗布した。さらにその上に培地として、StemFlex #A3349401(Thermo Fisher Scientific製)を、Rock inhibitor +を添加して塗布し、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞を播種した。ヒトES細胞(SEES1)は、播種密度5.2×103cells/cm2で、各供試材に播種した。また、ヒトiPS細胞(ADSC-iPS)は、播種密度1.0×103cells/cm2で、各供試材に播種した。供試材に播種した細胞は、37℃、5%CO2、95%Air、humidity100%に調整した培養器で培養した。培養開始から24時間後、Rock inhibitor -を添加した培地に交換し、さらに9日間培養した。
(評価)
計10日間の培養後、供試材上の細胞をCrystal violetで染色し、目視で観察した。また、面積あたりの細胞数の指標として、ImageJ(https://imagej.nih.gov/ij/)により染色部分の信号強度を定量して、培養面積あたりの値を算出した。染色したヒトES細胞の写真を図5(a)、(b)、(c)に示し、ヒトiPS細胞の写真を図6(a)、(b)、(c)に示す。供試材上の色の濃い部分が、染色された細胞である。また、ヒトES細胞の細胞数のグラフを図7に、ヒトiPS細胞の細胞数のグラフを図8に示す。
本発明の実施例に係る細胞培養基材である供試材SPL1を使用することにより、図5(a)、(b)および図6(a)、(b)に示すように、ポリスチレン製の供試材SPL2と同様に、培養面に細胞が伸展して増殖した。さらに、図7および図8に示すように、実施例(供試材SPL1)は、供試材SPL2と同等に細胞を培養できることが確認された。これに対して、図5(c)および図6(c)に示すように、ガラスのみからなる供試材SPL3(比較例)は、播種した細胞がほとんど伸展せず、増殖しなかった。このことから、ヒトES/iPS細胞に対して、表面のポリスチレン製の薄膜だけで、かつ表面改質処理なしで、十分な接着性を付与できることが確認された。
〔光学顕微鏡による観察〕
光学特性を評価するために、細胞の状態が接着性に影響されないように、供試材に播種した細胞を、分裂し始める前に観察した。
(供試材)
本発明の実施例に係る細胞培養基材として実施例1で使用した供試材SPL1、および参考例として同供試材SPL3(カバーガラス)を準備した。また、比較例に係る供試材(SPL4)として、光学測定用に市販されている、底板に厚さ0.1mmのシクロオレフィン樹脂を設けた特殊ポリマーボトムシャーレBC-SFTD27(株式会社バイオメディカルサイエンス製)を準備した。
(播種)
実施例1のヒトES細胞の培養と同様に、供試材の片面全体に、細胞外マトリクスとして、Corning Matrigel(登録商標)#354277を塗布し、その上に、培地として、StemFlex #A3349401(Thermo Fisher Scientific製)を、Rock inhibitor +を添加して塗布し、ヒトES細胞(SEES1)を、播種密度5.2×104cells/cm2で播種した。各供試材に播種した細胞は、実施例1と同様に調整した培養器で短時間(2hr)曝露後、光学観察に供した。
(評価)
供試材上の細胞をDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)で青色に染色し、RNA-FISH(Fluorescence in situ Hybridization)解析を行った。光学観察として、共焦点レーザー顕微鏡ZEISS LSM 880 with Airyscan(#LSM880)(ZEISS社製)を、対物レンズ:×100で使用した。共焦点レーザー顕微鏡のレーザー光源は、405nm(青紫色)、488nm(青色)、546nm(緑色)、633nm(赤色)である。ヒトiPS細胞の共焦点顕微鏡写真を図9(a)、(b)、(c)に示す。また、図9(a)、(b)、(c)に白い破線で表す1個の細胞を横切る直線上におけるDAPIの蛍光輝度の分布を図10に示す。
図9(a)、(c)に示すように、本発明の実施例に係る細胞培養基材である供試材SPL1を使用することにより、ガラスのみからなる供試材SPL3と同様に細胞組織を観察することができた。なお、顕微鏡像では、紫みの青色に染色された歪な楕円形の細胞内に、明るい青色に染色された核、緑色のXACT RNA、および赤色のユビキチンリガーゼHUWE1が、それぞれ点状に観察された。これに対して、図9(b)に示すように、光学特性を向上させた樹脂製の供試材SPL4(比較例)では、光吸収により明瞭な像が得られず、細胞が低コントラストで辛うじて視認される程度であり、細胞内の核等は視認が困難であった。また、図10に示すように、蛍光輝度が、実施例(供試材SPL1)は供試材SPL3と同等であるのに対し、これらと比較して供試材SPL4は大幅に低かった。
本発明に係る細胞培養基材は、分子生物学分野、幹細胞生物学分野、細胞・組織工学分野、再生医療分野、バイオ画像解析分野、創薬等の研究や産業に利用することができる。
1 細胞培養基材
2 基材
2A 基材
3 樹脂薄膜
3A 細胞培養用樹脂薄膜
S1 樹脂薄膜形成工程
S2 表面改質処理工程
S3a 接着基質被覆工程
S3b 接着基質準備工程
S4 播種工程
S5 培養工程
S6 観察工程

Claims (13)

  1. ガラスからなる基材と、前記基材の培養面側を被覆する樹脂薄膜と、を備える細胞培養基材であって、
    載置した細胞の光学観察における光の波長の1/2よりも前記樹脂薄膜の厚さが小さいことを特徴とする細胞培養基材。
  2. 前記光は可視光であり、
    前記樹脂薄膜の厚さは、可視光の波長域の下限の1/2よりも小さい請求項1に記載の細胞培養基材。
  3. 前記樹脂薄膜の厚さは、前記光学観察に使用される光学顕微鏡の光源が照射する光の波長の1/2よりも小さい請求項1または請求項2に記載の細胞培養基材。
  4. ガラスからなる基材と、前記基材の培養面側を被覆する厚さ200nm以下の樹脂薄膜と、を備えることを特徴とする細胞培養基材。
  5. 前記樹脂薄膜は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィン樹脂のいずれかからなる請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の細胞培養基材。
  6. 前記樹脂薄膜は、アニール処理が施されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の細胞培養基材。
  7. 前記樹脂薄膜は、表面改質処理が施されている請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の細胞培養基材。
  8. 前記樹脂薄膜の表面改質処理は、プラズマ照射、紫外線照射、またはシランカップリング処理である請求項7に記載の細胞培養基材。
  9. 前記樹脂薄膜上に、細胞外マトリクスを備える請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の細胞培養基材。
  10. 基材の培養面側を被覆して細胞培養基材とする細胞培養用樹脂薄膜であって、
    前記細胞培養基材上の細胞の光学観察における光の波長の1/2よりも厚さが小さいことを特徴とする細胞培養用樹脂薄膜。
  11. ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリジメチルシロキサン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、シクロオレフィン樹脂のいずれかからなる請求項10に記載の細胞培養用樹脂薄膜。
  12. ガラスからなる基材を樹脂薄膜で被覆した細胞培養基材の前記樹脂薄膜側の面上に細胞を播種する播種工程と、
    前記細胞を増殖させる培養工程と、
    前記細胞を前記細胞培養基材上において光学的に観察する観察工程と、を行う細胞培養方法であって、
    前記細胞培養基材は、前記樹脂薄膜の厚さが、前記観察工程における光の波長の1/2よりも小さいことを特徴とする細胞培養方法。
  13. 前記播種工程の前に、前記細胞培養基材の前記樹脂薄膜側の面上に細胞外マトリクスを被覆する接着基質準備工程を行う請求項12に記載の細胞培養方法。
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