JP2022076601A - Octを利用した軟骨診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】OCTを用いた軟骨診断をより実用に供し得るものとする。【解決手段】軟骨診断装置1は、OCTを用いる光学系を含む光学ユニット2と、光学ユニット2に接続される一方、先端部が関節腔に挿入可能に構成され、軟骨に当接して変形エネルギーを伝達可能な光透過性の当接面と、光学ユニット2からの光を軟骨に導くための光学機構とを有するプローブ4と、光学機構の駆動を制御し、軟骨への変形エネルギーの付与に応じて光学ユニット2から出力された光干渉信号を処理することによりドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の診断評価値を算出する制御演算部6と、軟骨組織の診断評価値を表示する表示装置8と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、軟骨の変性度を診断するための装置に関する。
軟骨は荷重衝撃の緩和や関節滑動性の向上等の重要な役割を担っているが、血液の循環がなく、自己治癒が困難な組織である。高齢者の多くは軟骨の磨耗による変形性膝関節症(Osteoarthritis:以下「OA」と表記する)を発症しており、特に高齢化社会を迎える国ではその診断治療法の確立が求められている。軟骨組織は80%の水分と20%のマトリクス(細胞外基質)からなり、そのマトリクスはコラーゲンとプロテオグリカンを含む。特に、コラーゲン線維に拘束されるプロテオグリカンは、軟骨内部の流動特性を決定するなど、軟骨の優れた粘弾性特性に大きく関与すると考えられている。OAは、その軟骨の粘弾性特性の損失によって発症する。
近年の医療診断技術の発達に伴い、光コヒーレンス断層画像(Optical Coherence Tomography:以下「OCT」という)が開発されている。このOCTによれば、非侵襲、非接触にて生体組織内部をマイクロ断層可視化できる。また、二次元OCT断層画像の取得レートはビデオレート以上であり、高時間分解能を有している。そこで、このOCTを用いて軟骨の力学特性を断層可視化する手法も提案されている(特許文献1)。この手法によれば、軟骨に所定の応力を負荷して軟骨組織の変形度合いを断層可視化することで、正常軟骨と変性軟骨との識別が可能となる。
特許文献1に記載の技術は、OCTによる軟骨の初期疾患診断の一手法になり得ると考えられるが、基本的に時間連続的に多数のOCT断層画像を取得したうえでのポスト処理によって診断用画像が表示される。このため、医療現場における迅速な診断を実現する観点では実用化の面で改善の余地があった。また、特許文献1に記載の技術は、その信号処理上の理由により、OCT断層画像を取得する断層断面を固定して撮影することが要求されるため、体動や医師の手技の点で実際の臨床現場における実用化が困難であった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、OCTを用いた軟骨診断をより実用に供し得るものとすることにある。
本発明のある態様は、関節軟骨を診断するための軟骨診断装置である。この装置は、光コヒーレンストモグラフィーを用いる光学系を含む光学ユニットと、光学ユニットに接続される一方、先端部が関節腔に挿入可能に構成され、軟骨に当接して変形エネルギーを伝達可能な光透過性の当接面と、光学ユニットからの光を軟骨に導くための光学機構とを有するプローブと、光学機構の駆動を制御し、軟骨への変形エネルギーの付与に応じて光学ユニットから出力された光干渉信号を処理することによりドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の診断評価値を算出する制御演算部と、軟骨組織の診断評価値を表示する表示装置と、を備える。
本発明によれば、OCTを用いた軟骨診断をより実用に供し得るものとできる。
本発明の一実施形態は、OCTを利用した軟骨診断装置である。この軟骨診断装置は、軟骨に変形エネルギーを付与しつつそのOCT断層画像を撮影し、そのOCT断層画像から算出される軟骨組織の変位速度に基づいて軟骨診断のための画像を提供する。医師等のユーザは、その画像を見ることで軟骨の変性度を診断することができる。
この軟骨診断装置は、OCTの光学系を含む光学ユニットと、その光学ユニットに接続されるプローブを備える。このプローブは、先端部が関節腔に挿入可能であり、軟骨に当接して変形エネルギー(荷重)を伝達可能な当接面と、光学ユニットからの光を軟骨に導くための光学機構とを有する。プローブの先端部は、シリンジ針で構成されてもよい。軟骨の表面を傷つけないよう、シリンジ針の先端に光透過性の樹脂やガラス等を配置してもよい。シリンジ針の内方に可撓性を有するシースを同軸状に配置し、そのシースの先端にガラス等を配置してもよい。
このプローブは、医師が手動で扱えるものであってもよいし、装置の一部として自動的に駆動されるものであってもよい。広く医療現場の実用に供する観点からは前者のほうが好ましい。プローブの当接面が光透過性を有するため、光学ユニットからの光はその当接面を透過して軟骨に照射される。軟骨からの反射光は、その当接面を透過してプローブに取り込まれる。
医師がそのプローブの先端を患者の軟骨に軽く押し当てることで、変形エネルギーが伝達される。このときの応答をOCTにより断層計測することにより、軟骨の変性度を評価できる。後述のように、変性度の進行度合いに応じて軟骨組織の変位速度(マトリクスの変位速度、組織液の流動速度を含む)が異なる形で表れるからである。
光学ユニットは、軟骨で反射した物体光と参照光とを合波し、その光干渉信号を制御演算部へ送る。制御演算部は、光学機構の駆動を制御する一方、その光干渉信号を処理することで後述のドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の診断評価値を算出する。表示装置がその診断評価値を画面に表示する。
「診断評価値」は、ドップラー速度そのものであってもよい。後述の実験結果から、ドップラー速度と軟骨の変性度との間に相関が認められるためである。ドップラー速度の断層分布を表示させることで、軟骨の変性度を直感的に把握することができる。このドップラー速度は、軟骨組織のマトリクス(細胞外基質)の変位速度と、組織液(水分)の速度(流動速度)とを合わせた軟骨組織の変位速度として得られる。
一方、後述のように、軟骨の変性初期に影響が大きく現れるのは組織液の速度と考えられる。マトリクスの変位速度は、OCT断層計測から算出することができる。このため、ドップラー速度とマトリクスの変位速度との差分に基づき組織液の速度を算出し、「診断評価値」としてその断層分布を表示してもよい。
「診断評価値」の表示形態については、ユーザの視認性を考慮して適宜設定できる。例えば数値そのものを表示させてもよいし、数値範囲(どの数値範囲に属するか)を表示させてもよい。具体的には、ドップラー速度や組織液の速度について、例えば一定速度範囲ごとに色分けするなど視認性を変化させてもよい。
これらの断層分布は、軟骨の奥行方向(z方向)の走査のみで得られた画像(つまり一軸方向の一次元画像)を時間経過とともに表示させる時系列的表示としてもよい。あるいは、奥行方向と垂直方向にも走査することで得られた二次元画像又は三次元画像を表示させてもよい。医療現場等でリアルタイム診断を行う場合には、一次元画像を表示させるのが好ましい。
より具体的には、制御演算部は、軟骨について時間連続的に取得する奥行き方向の2ライン分の断層信号に基づき診断評価値を演算してもよい。そして、その2ライン分の断層信号に基づく診断評価値の演算ごとに表示装置の画面を更新させてもよい。
変形エネルギー(荷重)を伝達方法については、測定対象(軟骨)に対して一定のひずみ速度を与える圧縮試験法、一定のひずみを与えたままで静止する応力緩和法に基づくものでもよい。あるいは、測定対象に対して動的ひずみを与える動的粘弾性法に基づくものでもよい。あるいは、測定対象に対して一定の大きさの応力を与えるクリープ法に基づくものでもよい。
また、上記技術を利用した軟骨診断方法を構築してもよい。この方法は、軟骨に対して所定の変形エネルギー(荷重)を伝達するステップと、変形エネルギーの付与(荷重の負荷)に応じたOCTの光干渉信号を処理することによりドップラー速度を演算するステップと、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の診断評価値を出力するステップとを備えるものでよい。
以下、図面を参照しつつ本発明を具体化した実施例について詳細に説明する。
[実施例]
図1は、実施例に係る軟骨診断装置の構成を概略的に表す図である。
本実施例の軟骨診断装置は、関節軟骨のOCT断層画像に基づき、軟骨組織の変性度を評価するための診断評価値を表示させるものである。
[実施例]
図1は、実施例に係る軟骨診断装置の構成を概略的に表す図である。
本実施例の軟骨診断装置は、関節軟骨のOCT断層画像に基づき、軟骨組織の変性度を評価するための診断評価値を表示させるものである。
軟骨診断装置1は、光学ユニット2、プローブ4、制御演算部6および表示装置8を備える。光学ユニット2は、光源10、オブジェクトアーム12、リファレンスアーム14、光学機構16および光検出装置18を含む。プローブ4は、光学ユニット2に接続され、オブジェクトアーム12の一端を構成する。
光学ユニット2の各光学要素は、光ファイバにて互いに接続されている。なお、図示の例では、マッハツェンダー干渉計をベースとした光学系が示されているが、マイケルソン干渉計その他の光学系を採用することもできる。また、本実施例では、OCTとしてTD-OCT(Time Domain OCT)を用いるが、SS-OCT(Swept Source OCT)、SD-OCT(Spectral Domain OCT)その他のOCTを用いてもよい。
光源10から出射された光は、カプラ20(ビームスプリッタ)にて分けられ、その一方がオブジェクトアーム12に導かれて物体光となり、他方がリファレンスアーム14に導かれて参照光となる。オブジェクトアーム12の物体光は、サーキュレータ22を介してプローブ4に導かれ、診断対象である軟骨に照射される。この物体光は、軟骨の表面および断面にて後方散乱光として反射されてプローブ4に取り込まれ、サーキュレータ22を経てカプラ24に導かれる。
プローブ4の本体30にはサーキュレータ22から延びる光ファイバ32が挿通されている。本体30の先端にはシリンジ針34が取り付けられており、プローブ4の先端部は、そのシリンジ針34を介して生体内(患者の膝K)に挿入可能とされている。本体30には、光学ユニット2からの光を膝Kの軟骨に導くための光学機構と、軟骨に当接して所定の荷重(応力)を伝達するための圧子(当接面)が設けられている。光学機構は、軟骨に向けて光を照射し、その反射光をオブジェクトアーム12に導く。
一方、リファレンスアーム14の参照光は、サーキュレータ26を介して光学機構16(「第2光学機構」として機能する)に導かれる。この参照光は、光学機構16の参照鏡28にて反射されてサーキュレータ26に戻り、カプラ24に導かれる。すなわち、物体光と参照光とがカプラ24にて合波(重畳)され、その干渉光が光検出装置18により検出される。光検出装置18は、これを光干渉信号(干渉光強度を示す信号)として検出する。この光干渉信号は、A/D変換器36を介して制御演算部6に入力される。
制御演算部6は、光学系全体の制御と、OCTによる画像出力のための演算処理を行う。制御演算部6の指令信号は、図示略のD/A変換器を介して光源10、光学機構16等に入力される。制御演算部6は、光検出装置18に入力された光干渉信号を処理し、OCTによる軟骨の断層画像を取得する。そして、その断層画像データに基づき、後述の手法により軟骨組織の変性度を診断するための評価値(「診断評価値」という)を演算する。
より詳細には以下のとおりである。
光源10は、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminessent Diode:以下「SLD」と表記する)からなる広帯域光源である。光源10から出射された光は、カプラ20にて物体光と参照光に分けられ、それぞれオブジェクトアーム12、リファレンスアーム14に導かれる。オブジェクトアーム12およびリファレンスアーム14には光ファイバとして、シングルモードファイバが用いられている。
光源10は、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminessent Diode:以下「SLD」と表記する)からなる広帯域光源である。光源10から出射された光は、カプラ20にて物体光と参照光に分けられ、それぞれオブジェクトアーム12、リファレンスアーム14に導かれる。オブジェクトアーム12およびリファレンスアーム14には光ファイバとして、シングルモードファイバが用いられている。
光学機構16は、RSOD方式(Rapid Scanning Optical Delay Line)の機構であり、リファレンスアーム14を構成する。このRSODは、光が後述の回折格子42に往復1回ずつ照射されるシングルパス型でもよいし、往復2回ずつ照射されるダブルパス型でもよい。光学機構16は、コリメータレンズ40、回折格子42、レンズ44および参照鏡28(レゾナントミラー)を含む。
サーキュレータ26を経た光は、コリメータレンズ40を介して回折格子42に導かれる。この光は、回折格子42によって波長ごとに分光され、各波長の位相が整えられたうえでそれぞれレンズ44によって参照鏡28上の異なる位置に集光される。参照鏡28を微小角にて回転させることで、各波長の位相が整えられた状態(ドップラー変調周波数を検出できる状態)で高速光路走査および周波数変調が可能となる。参照鏡28からの反射光は、参照光としてサーキュレータ26に戻り、カプラ24に導かれる。そして、物体光と重畳されて干渉光として光検出装置18に送られる。なお、変形例においては、回折格子42を経た光をレンズ44に代えて湾曲ミラーによって参照鏡28に集光してもよい。
光検出装置18は、光検出器50、フィルタ52およびアンプ54を含む。カプラ24を経ることで得られた干渉光は、光検出器50にて光干渉信号として検出される。この光干渉信号は、フィルタ52によりノイズが除去又は低減され、アンプ54およびA/D変換器36を経て制御演算部6に入力される。
制御演算部6は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどを有する。制御演算部6は、これらのハードウェアおよびソフトウェアによって、光学系全体の制御と、OCTによる画像出力のための演算処理を行う。制御演算部6は、光学機構16の駆動を制御し、それらの駆動に基づいて光検出装置18から出力された光干渉信号を処理し、OCTによる軟骨の断層画像を取得する。そして、その断層画像データに基づき、後述の手法により軟骨組織の診断評価値を演算する。
表示装置8は、例えば液晶ディスプレイからなり、制御演算部6にて演算された軟骨組織の診断評価値を断層可視化する態様で画面に表示する。
図2は、プローブ4の構成を概略的に表す図である。
プローブ4は、段付円筒状の本体30の先端に穿刺部としてのシリンジ針34が取り付けられている。本体30の下半部は、シリンジ針34よりも外径がやや大きい程度の細径部35とされており、医師がプローブ4を操作するときのシリンジ針34の視認性を高めている。
プローブ4は、段付円筒状の本体30の先端に穿刺部としてのシリンジ針34が取り付けられている。本体30の下半部は、シリンジ針34よりも外径がやや大きい程度の細径部35とされており、医師がプローブ4を操作するときのシリンジ針34の視認性を高めている。
シリンジ針34の先端部には、軟骨に当接可能な圧子64が同軸状に配設されている。圧子64は、光透過性を有する部材であり、その先端面が軟骨Jの表面に当接可能な当接面65となっている。圧子64は、本実施例ではガラス製であるが、軟骨に押し当てても破損および変形しない程度の十分な強度をもち、物体光を透過させることができるものであれば、プラスチックその他の材質を選択することもできる。
本体30の上半部にコリメータレンズ60が配設され、細径部35とシリンジ針34との境界部にはアクロマティックレンズ62(対物レンズ)が配設されている。光ファイバ32が本体30の壁面を貫通してコリメータレンズ60に接続されている。コリメータレンズ60、アクロマティックレンズ62および圧子64は同一直線上に配置され、「第1光学機構」を構成する。
光ファイバ32によりプローブ4に導かれた光は、コリメータレンズ60、アクロマティックレンズ62および圧子64を経て出射され、軟骨Jに照射される。それにより軟骨Jの表面又は内部にて反射された光がプローブ4に取り込まれ、光ファイバ32を介して光学ユニット2のオブジェクトアーム12に導かれる。
以下、軟骨組織の診断評価値を提示するまでの演算処理方法について説明する。
上述のように、オブジェクトアーム12を経た物体光(軟骨Jからの反射光)と、リファレンスアーム14を経た参照光とが合波され、光検出装置18により低コヒーレンス光干渉信号として検出される。制御演算部6は、この光干渉信号を干渉光強度に基づく軟骨Jの断層画像として取得する。
上述のように、オブジェクトアーム12を経た物体光(軟骨Jからの反射光)と、リファレンスアーム14を経た参照光とが合波され、光検出装置18により低コヒーレンス光干渉信号として検出される。制御演算部6は、この光干渉信号を干渉光強度に基づく軟骨Jの断層画像として取得する。
OCTの光軸方向(奥行方向)の分解能であるコヒーレンス長lcは、光源の自己相関関数によって決定される。ここでは、コヒーレンス長lcを自己相関関数の包括線の半値半幅とし、下記式(1)にて表すことができる。
ここで、λcはビームの中心波長であり、Δλはビーム波長帯幅の半値全幅である。
一方、光軸垂直方向(ビーム走査方向)の分解能は、集光レンズによる集光性能に基づき、ビームスポット径Dの1/2とされる。そのビームスポット径ΔΩは、下記式(2)にて表すことができる。
ここで、dは集光レンズに入射するビーム径、fは集光レンズの焦点距離である。
(ドップラー速度の検出)
OCTにより取得される光干渉信号強度Idet(z)は、下記式(3)に示す畳み込み積分にて得られる。
ここで、Iincは測定対象への照射光強度を示す。R(z)は測定対象内部の奥行き位置zにおける反射係数であり、G(z)はコヒーレンス関数である。fRSODは参照鏡28の走査によって生じるドップラー変調周波数であり、fdは測定対象内部の変位(変形、変動、流動)によって生じるドップラー変調周波数である。vは参照鏡28の走査速度である。なお、「ドップラー変調周波数」とは、光の反射対象が変位したり、測定対象の屈折率が時間変化することで生じ、「ドップラー効果によりシフトする周波数」を意味する。
OCTにより取得される光干渉信号強度Idet(z)は、下記式(3)に示す畳み込み積分にて得られる。
光干渉信号強度Idet(z)に高速フーリエ変換を施し、下記式(4)のヒルベルト変換を適用することで周波数領域にてπ/2位相を遅らせたスペクトルS^(f)を取得する。このスペクトルS^(f)に逆フーリエ変換を施すことで、解析信号Γ(t)=s(t)+is^(t)を得る。この解析信号の実部s(t)と虚部s^(t)の二乗和の平方根(瞬時振幅)は、OCT断層画像の信号強度(信号包絡線)を与える。
ヒルベルト変換を用いることにより、瞬時振幅だけでなく瞬時位相を求めることもできる。その瞬時位相の時間微分から瞬時周波数も算出できる。このため、本実施例のように高周波変調された信号を処理する場合には特に有効である。これにより、ドップラー変調周波数の検出解像度を高め、高精度かつリアルタイムな検出を実現できる。
ここでは、測定対象(軟骨)の内部の変動によって発生するドップラー変調周波数fdをリアルタイムに得るために隣接自己相関法が用いられる。すなわち、奥行きz方向走査(Aスキャン)によって取得される光干渉信号(RF干渉信号)に関し、x方向走査において隣接したj,j+1番目の解析信号(又はx方向を固定した状態でのj,j+1回目の解析信号)をそれぞれΓj,Γj+1とする。このとき、Γj+1は下記式(5)にて表される。
ここで、ΔTは光干渉信号の取得時間間隔、つまりAスキャンの時間間隔を表している。もしくは信号処理を施すAスキャンの時間間隔であってもよい。A(t)は光干渉信号の振幅(つまり後方散乱強度)を表す。
RSODによる参照鏡28の走査(回転駆動)は周期的であるため、そのドップラー変調周波数fRSODは一定と仮定する。このとき、解析信号ΓjとΓj+1との隣接自己相関によって導出される位相差φi,jを用いると、ドップラー変調周波数fdは下記式(6)から算出できる。ここで、iは奥行z方向についての光干渉信号のサンプリング点数を表し、jは検出される光干渉信号のライン数を表している。なお、Γi,j
*はΓi,jの複素共役である。下記式(6)は、ヒルベルト変換により瞬時位相の検出が可能であることを利用したものである。さらにAスキャンNライン分(又はAスキャンN回分)の位相差φi,jについてアンサンブル平均処理を施し、また、z方向にピクセル平均(ピクセルごとの平均)を施すことで、ドップラー変調周波数fdの検出精度を向上できる。また、時刻tは奥行z方向についての光干渉信号のサンプリング点数iに対応している。
このドップラー変調周波数fdを用いて下記式(7)を演算することにより、ドップラー速度vdを得ることができる。時刻tは奥行z方向についての光干渉信号のサンプリング点数iに対応することから、奥行z位置のドップラー速度を意味する。軟骨について検出されるドップラー速度vdは、軟骨組織のマトリクスの変位速度と組織液の流動速度を合わせた値として得られる。
ここで、λcは光源の中心波長、ntは測定対象内部の屈折率であり、θは光軸と変位方向とのなす角である。
(ドップラー変調量検出能の安定化)
本実施例では、上記式(6)に示したサンプリング点ごとの自己相関(以下「ポイント自己相関」ともいう)に代えて、下記式(8)に示す積分型の自己相関(相関積分による自己相関:以下「自己相関積分」ともいう)を演算する。
本実施例では、上記式(6)に示したサンプリング点ごとの自己相関(以下「ポイント自己相関」ともいう)に代えて、下記式(8)に示す積分型の自己相関(相関積分による自己相関:以下「自己相関積分」ともいう)を演算する。
ここでは、時間連続的に隣接する2ライン分のAスキャンデータについて自己相関を演算する際、奥行方向(z方向)に積分区間(-Tw/2≦t≦Tw/2)を設け、位相差の算出揺らぎを低減させる。Twは窓幅を表す。その後、その積分区間においてz座標の任意位置におけるドップラー変調周波数fdを決定する。この積分区間の設定によってノイズを低減する程度を調整できる。
ここで,Ri,jは座標(i,j)に対応する自己相関係数を表している。
位相差φi,jを求めるに際し、下記式(9)によりAスキャンNライン分(AスキャンN回分)のアンサンブル平均を行うことにより、ショットノイズのように揺らぐシステムノイズを抑制できる。
上記式(9)から得られるドップラー変調周波数fdを用いて上記式(7)を演算することにより、ドップラー速度vdを得ることができる。
(組織変位速度と組織液流動速度の検出)
上述した解析信号Γ(t)の実部s(t)と虚部s^(t)の二乗和の平方根(瞬時振幅)は、下記式(10)に示すように、上記式(5)の振幅A(t)=Ai,jを与える。
ここで、iは奥行z方向についての光干渉信号のサンプリング点数を表し、jは検出される光干渉信号のライン数を表している。この振幅Ai,jは、OCT断層像の信号強度(信号包絡線)であることから、組織形態分布を表している。
上述した解析信号Γ(t)の実部s(t)と虚部s^(t)の二乗和の平方根(瞬時振幅)は、下記式(10)に示すように、上記式(5)の振幅A(t)=Ai,jを与える。
そこで、軟骨組織の移動量(変位速度)を検出するために、下記式(11)に示す瞬時振幅の相関係数RA
i+Δi,jを用いる。組織形態分布の奥行きz位置を表すサンプリング点数iをΔi変化させてRA
i+Δi,jを算出する。
この相関係数は、組織形態分布における奥行きパターンの類似性を意味する。このため、下記式(12)に示すように、相関係数RA
i+Δi,jが最大となるサンプリング点の位置i+Δiは、組織形態分布の奥行きz軸方向の組織移動を表す。
上述のように、上記式(7)のドップラー速度は、上記式(13)のマトリクスの変位速度を含んでいると考えられる。マトリクスの変位速度および組織液の流動速度は、各時刻、各位置において算出されるため、時空間分布として断層検出される。このため、組織液のような液体成分の速度vwは、下記式(14)に示す両者の差によって与えられる。
この液体成分の速度vwは、組織浸透の組織液流動速度成分と考えられる。生体下では特に皮膚表皮直下に存在する毛細血管から漏出する血漿成分の組織浸透を表し、培養再生組織では培養液の浸透速度を表すと考えられ、細胞組織の活性を評価するパラメータと考えられる。軟骨組織についていえば、その組織液の流動速度を表し、軟骨の変性度を評価する指標となる。
なお、上記手法では、上記式(10)に示す振幅A(t)の信号に相関法を適用して組織の移動量(変位速度)を検出しているが、低コヒーレンス干渉信号(RF干渉信号)自体である上記式(3)のIdet(z)=Ii,jを用いてもよいし、RF干渉信号の解析信号Γi,jを用いてもよい。例えば解析信号Γi,jを用いる場合、下記式(15)に示すように、z方向の光干渉信号のサンプリング点数iをΔi変化させて相関係数RΓ
i+Δi,jを算出する。
この相関は、低コヒーレンス干渉信号(RF干渉信号)の奥行きパターンの類似性を表す。相関係数RΓ
i+Δi,jが最大となるサンプリング点の位置i+Δiは、RF干渉信号j+1本目の奥行きz方向の組織移動を表している。このため、上記式(12)および(13)に基づき、組織変位速度および組織液速度を検出することができる。
このように、RF干渉信号Idet(z)=Ii,jや解析信号Γi,jを用いる場合、組織液流動の情報も含まれた信号による相関が算出されるため、ノイズが混入した情報を利用しているとも考えられる。しかし、組織の移動量は組織液の流動量よりも大きいと予想できることから、軟骨の変性度を評価するうえでは、解析信号Γi,jの利用も有用と考えられる。
次に、上述した手法の有効性について説明する。
本実施例では上述のように、OCTを用いて軟骨組織のドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の変性度を評価できるようにする。ここでは、軟骨診断装置1により正常軟骨と変性軟骨との違いが可視表示できることを検証するために行った実験結果について説明する。
本実施例では上述のように、OCTを用いて軟骨組織のドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の変性度を評価できるようにする。ここでは、軟骨診断装置1により正常軟骨と変性軟骨との違いが可視表示できることを検証するために行った実験結果について説明する。
通常の診断では医師がプローブ4を持ち、その先端部を患者の膝関節に挿入する。そして、圧子64の先端面(当接面65)を軟骨Jの表面に当接させてわずかに押し込む。押し込み量としては、例えば10~20μm程度が想定される。本実験装置では医師に代わり、これを機械的に再現する。
図3は、実験装置の構成を概略的に表す図である。
本実験装置は、図1に示した光学ユニット2に対して圧縮試験機70を接続して構成される。圧縮試験機70は、試験片Wを載置するための載置台72と、載置台72の上方でプローブ4を鉛直方向に支持する支持機構74と、プローブ4の後端に下方(つまり試験片W)への押圧荷重を付与可能なロードセル76等を備えている。ロードセル76は、制御演算部6により駆動される。なお、ロードセル76によりプローブ4の押圧力を検出することもできる。
本実験装置は、図1に示した光学ユニット2に対して圧縮試験機70を接続して構成される。圧縮試験機70は、試験片Wを載置するための載置台72と、載置台72の上方でプローブ4を鉛直方向に支持する支持機構74と、プローブ4の後端に下方(つまり試験片W)への押圧荷重を付与可能なロードセル76等を備えている。ロードセル76は、制御演算部6により駆動される。なお、ロードセル76によりプローブ4の押圧力を検出することもできる。
本実験では、ブタの膝関節大腿骨外側顆の軟骨組織サンプルを直径7mmの円筒形状にて採取し、これを正常軟骨の試験片Wとした。また比較例として、この試験片Wに酵素処理を施すことで模擬変性軟骨(変性度を人為的に制御して軟骨を模擬的に再現したOA試験片)を作製した。この酵素処理には、関節軟骨の弾性を保つコラーゲン線維を分解するコラゲナーゼを用いた。すなわち、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水にコラゲナーゼを溶解させた溶液に正常軟骨を入れ、その溶液の温度を37℃に保ちつつ2時間放置することで模擬変性軟骨を得た。
図4は、実験結果を表す図である。図4(A)は正常軟骨の実験結果を示し、図4(B)は模擬変性軟骨の実験結果を示す。各図の上段はOCT断層画像の時間変化を示し、中段は軟骨組織の変位速度(ドップラー速度)の時間変化を示す。各図の下段は、試験片Wに作用する圧力とプローブ4のストロークとの関係を時間変化とともに示す。
なお、実験条件は以下のとおりである。すなわち、光源10として中心波長λc=1317.7nm、半値全幅Δλ=102.0nmのLSD広帯域光源を使用した。圧縮試験機70による圧縮量を100μm、圧縮速度を100μm/secとした。参照鏡28の走査周波数を約4.0kHz、奥行分解能を7.5μm、奥行断層走査範囲を1130μmとした。OCTによるサンプリング周波数を20MHzとした。
図4下段から、時間t=0.7secまではプローブ4のストロークがゼロであり、圧縮試験機70は停止している。時間t=0.7secに圧縮試験機70によるプローブ4の駆動が開始され、時間2.8sec付近まで等速で変位している。その間、圧子64が試験片Wに接近し、時間1.2sec付近において試験片Wの表面に当接している。時間t=2.8sec付近においてプローブ4の位置が固定されている。その結果、それ以降に試験片Wにおいて応力緩和が生じている。
図4上段において、軟骨表面から約200μmは表層、それ以下は中層に該当する。OCT断層画像(組織形態断層分布)において、軟骨に圧縮が開始されて荷重応答が確認できてから圧子64が静止するまで、高輝度信号が斜め上方に移動していることが確認できる。これは、軟骨組織が圧子64に接近する方向に変位していること、およびその変位量を表している。図4上段によれば、正常軟骨における変位量(t=1.2~2.8sec)に比べ、模擬変性軟骨の変位量(t=1.3~2.9sec)のほうが大きいことが定性的に確認できる。
図4中段では、ドップラー速度の時間変化が色分け表示されている。軟骨の圧縮中におけるドップラー速度は、正常軟骨および模擬変性軟骨のいずれにおいても、軟骨組織もしくは組織液が軟骨表面に向けて運動している。このことが画面に視認容易に可視化されている。
本図により、軟骨中層におけるドップラー速度は、正常軟骨では約20μm/secであるに対し、模擬変性軟骨では約50μm/secと2倍以上高いことが分かる。ドップラー速度が奥行きz方向に増大する空間分布を有することから、軟骨の表層では中層に比べて大きなひずみが発生していることも確認できる。これは、コラーゲン線維の配向特性から表層が中層に比べて弾性係数が低いことが原因と考えられる。また、模擬変性軟骨ではコラーゲン線維の破壊やプロテオグリカンの離脱によって弾性特性や粘性特性がさらに低下し、それにより大きな変位速度が検出されたと考えられる。
図4下段によれば、正常軟骨では時間t=2.8sec以降、模擬変性軟骨では時間t=2.9sec以降に応力緩和が開始されている。図4中段によれば、その応力緩和開始から約0.5secにおけるドップラー速度は、正常軟骨では5μm/sec以下と検出され、速やかに運動停止している。これに対し、模擬変性軟骨では20μm/sec程度と大きい。これも模擬変性軟骨における組織透水性の向上すなわち粘性特性の低下が原因と考えられる。
図5は、ドップラー速度および組織液流動速度と軟骨の変性度との対応関係を検証した実験結果を表す図である。図5(A)はドップラー速度と軟骨の変性度との対応関係を示し、図5(B)は組織液流動速度と軟骨の変性度との対応関係を示す。図5(A)は圧縮中、図5(B)は応力緩和中における速度を縦軸に示す。横軸における「Con」は正常軟骨、「2H」は模擬変性軟骨を示す。
図5(A)に示すように、ドップラー速度に関して正常軟骨と模擬変性軟骨との間に有意差が認められた。図5(B)に示すように、組織液流動速度に関しても正常軟骨と模擬変性軟骨との間に有意差が認められた。
以上の実験により、ドップラー速度および組織液の流動速度の分布と軟骨の機械的挙動との間に相関が認められ、それらが正常軟骨と模擬変性軟骨において顕著に異なることが分かった。すなわち、本実施例のOCTを用いた変性軟骨の診断が有効であることが示唆された。このため、例えば図4中段に示されるドップラー速度の分布を軟骨の診断評価値として表示させることができる。また、本実験では示されていないが、ドップラー速度とマトリクスの変位速度との差分から得られる組織液の流動速度を診断評価値として表示することもできる。軟骨の変性初期においては水分の保持力(組織液を安定に保つ機能)が失われるため、変性傾向の発見につながる可能性がある。
次に、制御演算部6が実行する具体的処理の流れについて説明する。
図6は、軟骨診断処理の流れを示すフローチャートである。なお、この軟骨診断処理は、医師等によりプローブ4の先端部が患者の膝関節に挿入された状態にて行われ、光学ユニット2の駆動が開始されると所定の演算周期で繰り返し実行される。
図6は、軟骨診断処理の流れを示すフローチャートである。なお、この軟骨診断処理は、医師等によりプローブ4の先端部が患者の膝関節に挿入された状態にて行われ、光学ユニット2の駆動が開始されると所定の演算周期で繰り返し実行される。
制御演算部6は、OCT干渉信号を取得し(S10)、フーリエ変換(FFT)を実行する(S12)。制御演算部6は、続いて、キャリア周波数を基準としてバンドパスフィルタリング処理を実行して信号SN比を向上させた後(S14)、ヒルベルト変換を実行する(S16)。このヒルベルト変換によって得られた解析信号を用いて隣接自己相関処理を施して位相差を求め(S18)、ドップラー変調周波数を得る(S20)。
制御演算部6は、そのドップラー変調周波数を用いて上記式(7)に基づきドップラー速度vd(軟骨組織全体の変位速度)を算出する。一方(S22)、上記式(12)に基づき軟骨組織のマトリクスの変位速度vtを算出する(S24)。そして、上記式(13)に基づき組織液の速度vwを算出する(S26)。制御演算部6は、ドップラー速度vdおよび組織液の速度vwのいずれか一方又は双方を診断評価値として表示装置8の画面に表示させる(S28)。
以上に説明したように、本実施例によれば、軟骨のOCT断層画像から演算されるドップラー速度と、軟骨の変性度との間に対応関係があるとの知見に基づき、診断対象である軟骨の診断評価値が断層可視化される。このため、医師等がその断層可視化された画像を確認することにより、軟骨診断を容易に行えるようになる。
特に、奥行きz方向のOCT断層画像(一次元断層分布)を取得すれば足りるため、診断画像の表示を短時間で行うことができ、医療現場におけるリアルタイム診断が可能となる。また、奥行きz方向のOCT断層画像(二次元断層分布)であっても、Aスキャン1軸の相関しか用いないため、ドップラー速度の二次元断層カラーマップをリアルタイム表示することも可能である。また、軟骨に対してプローブ4の位置を固定して撮影する必要もない。このため、患者の体動や医師の手技の点が診断に影響することも少ない。したがって、実際の臨床現場において、OCTを用いた軟骨診断をより実用に供し得るものにできる。
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はその特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
[変形例]
図7は、変形例に係るプローブの構成を概略的に表す図である。
本変形例のプローブ104は、光学機構80を備える。光学機構80は、オブジェクトアーム12を構成し、光源10からの光を測定対象(軟骨J)に導いて走査させる機構と、その機構を駆動するための駆動部を備える。光学機構80は、コリメータレンズ60、光学ユニット2軸のガルバノミラー82、およびアクロマティックレンズ62を含む。サーキュレータ22を経た光は、コリメータレンズ60を介してガルバノミラー82に導かれ、x軸方向やy軸方向に走査されつつ測定対象に照射される。測定対象からの反射光は、プローブ104に取り込まれる。
図7は、変形例に係るプローブの構成を概略的に表す図である。
本変形例のプローブ104は、光学機構80を備える。光学機構80は、オブジェクトアーム12を構成し、光源10からの光を測定対象(軟骨J)に導いて走査させる機構と、その機構を駆動するための駆動部を備える。光学機構80は、コリメータレンズ60、光学ユニット2軸のガルバノミラー82、およびアクロマティックレンズ62を含む。サーキュレータ22を経た光は、コリメータレンズ60を介してガルバノミラー82に導かれ、x軸方向やy軸方向に走査されつつ測定対象に照射される。測定対象からの反射光は、プローブ104に取り込まれる。
プローブ104にこのような光学機構80を設けることにより、二次元断層分布や三次元断層分布のOCT計測が可能となる。それにより、軟骨の診断評価値を二次元又は三次元で表示することができる。
[他の変形例]
上記実施例では述べなかったが、プローブ4そのものにロードセルなどのセンサを取り付け、軟骨に付与する荷重を計測できる構成としてもよい。これにより、例えば図4下段に示したような応力緩和の程度を表示でき、図4中段に示した変位速度画像と合わせ読むことで、軟骨組織の診断評価値を多面的に表示させることができる。
上記実施例では述べなかったが、プローブ4そのものにロードセルなどのセンサを取り付け、軟骨に付与する荷重を計測できる構成としてもよい。これにより、例えば図4下段に示したような応力緩和の程度を表示でき、図4中段に示した変位速度画像と合わせ読むことで、軟骨組織の診断評価値を多面的に表示させることができる。
上記実施例では、図2に示したように、プローブ4による押圧力をそのユーザ(医師)が手動で与えることを前提とした。変形例においては、プローブ4に負荷装置を設け、軟骨に所定の変形エネルギー(負荷)を付与できるようにしてもよい。このような負荷装置として、圧電素子等の接触により応力を付与する荷重機構を採用してもよい。あるいは、超音波(音圧)、光音響波、電磁波等によって非接触にて軟骨に負荷(加振力)を付与する負荷装置を採用してもよい。
なお、本発明は上記実施例や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施例や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施例や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
1 軟骨診断装置、2 光学ユニット、4 プローブ、6 制御演算部、8 表示装置、10 光源、12 オブジェクトアーム、14 リファレンスアーム、16 光学機構、18 光検出装置、20 カプラ、22 サーキュレータ、24 カプラ、26 サーキュレータ、28 参照鏡、30 本体、32 光ファイバ、34 シリンジ針、35 細径部、40 コリメータレンズ、42 回折格子、44 レンズ、50 光検出器、52 フィルタ、54 アンプ、60 コリメータレンズ、62 アクロマティックレンズ、64 圧子、65 当接面、70 圧縮試験機、72 載置台、74 支持機構、76 ロードセル、80 光学機構、82 ガルバノミラー、104 プローブ、J 軟骨、K 膝、W 試験片。
Claims (3)
- 関節軟骨を診断するための軟骨診断装置であって、
光コヒーレンストモグラフィーを用いる光学系を含む光学ユニットと、
前記光学ユニットに接続される一方、先端部が関節腔に挿入可能に構成され、軟骨に当接して変形エネルギーを伝達可能な光透過性の当接面と、前記光学ユニットからの光を軟骨に導くための光学機構とを有するプローブと、
前記光学機構の駆動を制御し、前記軟骨への変形エネルギーの付与に応じて前記光学ユニットから出力された光干渉信号を処理することによりドップラー速度を演算し、そのドップラー速度に基づいて軟骨組織の診断評価値を算出する制御演算部と、
前記軟骨組織の診断評価値を表示する表示装置と、
を備えることを特徴とする軟骨診断装置。 - 前記制御演算部は、
前記軟骨への変形エネルギーの付与に応じて前記光学ユニットから出力された光干渉信号を処理することにより前記軟骨のマトリクスの変位速度を算出し、
前記ドップラー速度と前記マトリクスの変位速度との差分に基づき前記軟骨の組織液の速度を算出し、その組織液の速度に基づき前記軟骨組織の診断評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の軟骨診断装置。 - 前記軟骨を経由するオブジェクトアームに設けられ、前記光学機構として機能する第1光学機構と、
前記軟骨を経由しないリファレンスアームに設けられ、光源からの光を参照鏡に導いて反射させる第2光学機構と、
前記軟骨にて反射した物体光と前記参照鏡にて反射した参照光とが重畳された干渉光を検出する光検出装置と、
を備え、
前記制御演算部は、前記光検出装置から入力された光干渉信号に対して周波数解析を実行し、ドップラー変調周波数を用いて前記ドップラー速度を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の軟骨診断装置。
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