JP2022069255A - 基準器の校正値の誤差診断方法 - Google Patents

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【課題】複数のターゲットを有する基準器であっても校正値の誤差を測定可能とし、且つ反転法では機械の運動誤差との分離ができないターゲット間隔の校正値に対しても誤差の度合いの診断を可能とする。【解決手段】S1で基準器をテーブルに設置し、S2で主軸頭に取り付けたセンサを用いて複数のターゲットの位置を検出することで、ターゲットの位置に関する反転前計測値を取得し、S3で基準器の校正値と反転前計測値とをもとに反転前誤差値を算出し、S4で基準器をターゲットの突出方向と平行な軸を中心に反転させ、S5でセンサを用いて、反転した基準器の複数のターゲットの位置を検出することでターゲットの位置に関する反転後計測値を取得し、S6で校正値と反転後計測値とをもとに反転後誤差値を算出し、S7で反転前誤差値と反転後誤差値とをもとに診断指標値を計算する。【選択図】図6

Description

本発明は、工作機械等の誤差測定に用いられる基準器について、その校正値の誤差の度合いを診断する方法に関するものである。
図1は、3つの並進軸を有する数値制御工作機械(マシニングセンタ)の模式図である。
主軸頭2は、並進軸であり互いに直交するY軸、Z軸によって並進2自由度の運動が可能である。テーブル3は、並進軸でありY・Z軸に直交するX軸により並進1自由度の運動が可能である。したがって、テーブル3に対して主軸頭2は並進3自由度を有する。各軸は、数値制御装置により制御されるサーボモータにより駆動され、被加工物をテーブル3に固定し、主軸頭2に工具を装着して回転させ、被加工物を任意の形状に加工する。
工作機械の運動誤差として、位置決め誤差や真直度といったものがある。これらの運動誤差は被加工物の形状に転写され、被加工物の形状・寸法誤差の要因となる。運動誤差は予めターゲットの相対位置が校正された基準器を用いて測定することができる。しかし、基準器の校正値に誤差がある場合、それが測定誤差となる。
これに対して、特許文献1の発明で用いられている反転法を用いることで、基準器の校正値と機械の真直度とを分離して測定することができる。
特許文献1で用いられている反転法について、図3のような基準器としてのホールピッチマスタ21を、図4に示すようにテーブル3上にX軸と平行に設置し、ホールピッチマスタ21上のターゲット穴22の位置を主軸頭2に装着したタッチプローブ31を用いて測定する例を用いて説明する。適用する機械としては、図1のマシニングセンタを例に説明する。
校正値から求められる反転前のターゲット穴PとP(i=1~10)の理想的な相対位置をca=(cax, cay)、相対位置の計測結果をma=(max, may)とすると、反転前の相対位置の誤差δa=(δax, δay)は、以下の数1の式で求められる。
Figure 2022069255000002
次にX軸まわりにホールピッチマスタ21を反転し、反転前と同様に計測を行う。校正値から求められる反転後のターゲット穴PとP(i=1~10)との理想的な相対位置をcb=(cbx, cby)、相対位置の計測結果をmb=(mbx, mby)とすると、反転後の相対位置の誤差δb=(δbx, δby)は、以下の数2の式で求められる。
Figure 2022069255000003
反転前後の誤差δa, δbは、以下の数3の式のように、機械の運動誤差δma=(δmax, δmay), δmb=(δmbx, δmby)と、校正値の誤差δwa=(δwax, δway), δwb=(δwbx, δwby)とに分けることができる。
Figure 2022069255000004
反転前後でホールピッチマスタ21の位置を変えずに反転しているため、反転前後の機械の運動誤差は、以下の数4の関係となる。
Figure 2022069255000005
ここで、ホールピッチマスタ21をX軸周りに反転させているため、図5に示すようにY方向の校正値の誤差δway, δwbyは、以下の数5の関係となる。
Figure 2022069255000006
このため、反転前後の誤差値の平均をとることで、以下の数6の式のようにY方向の運動誤差δmayを求めることができる。
Figure 2022069255000007
また、反転前後の誤差値の差分をもとに、以下の数7の式のようにY方向の校正値の誤差δwayを求めることができる。
Figure 2022069255000008
特開平5-187868号公報
図2のように相対位置が校正された複数のターゲット球12(P~P10)が梁上へ凸状に取り付けられている基準器11を用いる場合、ターゲット球12の配置方向に平行な軸を中心にして基準器11を反転することができないため、特許文献1で用いられているような反転法を用いることができない。また、凸状のターゲット球12やホールピッチマスタのターゲット穴22の間隔に関する校正値については、反転法では機械の運動誤差との分離ができないため、校正値の誤差の度合いを診断することができない。
そこで、本発明は、複数のターゲットを有する基準器であっても校正値の誤差の測定が可能で、且つ反転法では機械の運動誤差との分離ができないターゲット間隔の校正値に対しても誤差の度合いの診断が可能となる基準器の校正値の誤差診断方法を提供することを目的としたものである。
上記目的を達成するために、本発明は、2軸以上の並進軸と、工作物を保持可能なテーブルと、工具を保持可能な主軸頭とを有し、前記主軸頭に保持された工具が、前記並進軸により、工作物に対して並進2自由度以上の相対運動が可能である工作機械を用いて、複数のターゲットが直線上に配置されてなる基準器の前記ターゲットの位置に関する校正値の誤差の度合いを診断する方法であって、
前記基準器を前記テーブルに設置する基準器設置ステップと、
前記主軸頭に取り付けたセンサを用いて、前記複数のターゲットの位置を検出することで、前記ターゲットの位置に関する反転前計測値を取得する反転前計測ステップと、
前記校正値と前記反転前計測値とをもとに反転前誤差値を算出する反転前誤差算出ステップと、
前記反転前計測ステップの基準器設置方向に対して、前記複数のターゲットが配置されている方向に直交し、且つ前記ターゲットの突出方向と平行な軸を中心に前記基準器を反転させる基準器反転ステップと、
前記センサを用いて、反転した前記基準器の前記複数のターゲットの位置を検出することで、前記ターゲットの位置に関する反転後計測値を取得する反転後計測ステップと、
前記校正値と前記反転後計測値とをもとに反転後誤差値を算出する反転後誤差算出ステップと、
前記反転前誤差値と前記反転後誤差値とをもとに診断指標値を計算する診断指標値計算ステップと、を実行することを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記診断指標値計算ステップでは、前記診断指標値が、前記反転前誤差値と前記反転後誤差値との差分をもとに計算されることを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記診断指標値計算ステップでは、前記反転前誤差値と前記反転後誤差値とを鮮鋭化フィルタに通すことで局所的な誤差成分を抽出し、前記誤差成分をもとに前記診断指標値を計算することを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、前記診断指標値を予め設定したしきい値と比較する判定ステップと、
前記判定ステップで前記診断指標値が前記しきい値以上と判定した場合はその旨を報知する報知ステップと、を更に有することを特徴とする。
本発明によれば、ターゲットの突出方向と平行な軸を中心に反転させる前後で基準器のターゲットの位置に関する計測を実施し、反転前後の計測結果をもとに基準器の校正値の診断指標値を計算することで、基準器の校正値の誤差の度合いを診断することができる。これにより、複数のターゲットを有する基準器であっても、校正値の誤差の測定が可能となる。また、反転法では機械の運動誤差との分離ができないターゲット間隔の校正値に対しても誤差の度合いが診断可能となる。
X軸、Y軸、Z軸の並進軸を有する数値制御工作機械の模式図である。 基準器の一例を示す説明図である。 ホールピッチマスタの一例である。 タッチプローブとテーブル上に設置されたホールピッチマスタとの模式図である。 (A)は、反転前のホールピッチマスタとY方向の誤差との関係を示した図である。(B)は、反転後のホールピッチマスタとY方向の誤差との関係を示した図である。 校正値の誤差診断方法のフローチャートである。 タッチプローブとテーブル上に設置された反転前の基準器との模式図である。 タッチプローブとテーブル上に設置された反転後の基準器との模式図である。 (A)は、反転前の基準器とX方向の誤差との関係を示した図である。(B)は、反転後の基準器とX方向の誤差との関係を示した図である。
以下、本発明の基準器の校正値の誤差診断方法について、図6のフローチャートにもとづいて説明する。
図7に示すように、基準器11をテーブル3上にX軸と平行に設置し(S1:基準値設置ステップ)、基準器11上のターゲット球12の位置を主軸頭2に装着したタッチプローブ31を用いて測定する(S2:反転前計測ステップ)。校正値から求められる反転前のターゲット球PとP(i=1~10)との理想的な相対位置をca=(cax, cay, caz)、相対位置の計測結果をma=(max, may, maz)とすると、反転前の相対位置の誤差δa=(δax, δay, δaz)は、以下の数8の式で求められる(S3:反転前誤差算出ステップ)。
Figure 2022069255000009
次に、図8に示すように、基準器11を、X軸方向での中心位置で、ターゲット球12の突出方向と平行となるZ軸周りに180°反転させてテーブル3に設置し(S4:基準器反転ステップ)、反転前と同様の計測を行う(S5:反転後計測ステップ)。校正値から求められる反転後のターゲット球PとP(j=1~10)との理想的な相対位置をcb=(cbx, cby, cbz)、相対位置の計測結果をmb=(mbx, mby, mbz)とすると、反転後の相対位置の誤差δb=(δbx, δby, δbz)は、以下の数9の式で求められる(S6:反転後誤差算出ステップ)。
Figure 2022069255000010
続けて反転前後で得た誤差をもとに基準器11の校正値誤差に対する診断指標値Fwを計算する(S7:診断指標値計算ステップ)。
反転前後の誤差δa,δbは、以下の数10の式のように、機械の運動誤差δma=(δmax, δmay, δmaz), δmb=(δmbx, δmby, δmbz)と、校正値の誤差δwa=(δwax, δway, δwaz), δwb=(δwbx, δwby, δwbz)とに分けることができる。
Figure 2022069255000011
反転前後で基準器11の位置が同じであるため、反転前のターゲット球Pと反転後のターゲット球P11-iとは近い位置となる。このため、基準器11の反転前後で機械の運動誤差が変化しないとすると、以下の数11の関係が成り立つ。
Figure 2022069255000012
下記の数12の式のように反転前後の誤差の差分Δabを計算すると、校正値の誤差成分のみが残る。
Figure 2022069255000013
基準器11をZ軸周りに反転させているため、図9に示すように反転前後の校正値の誤差δwa, δwbは、以下の数13の関係となる。
Figure 2022069255000014
校正値の誤差はターゲット球によって異なるため、δwaとδwb11-iとは一定の関係を持たない。
よって、本例では、反転前後の誤差の差分Δabの絶対値の最大値を、以下の数14に示す診断指標値Fwとして計算する。
Figure 2022069255000015
診断指標値Fwが大きな値となる場合、いずれかの|Δab|が大きな値でなければならない。さらに、|Δab|が大きな値となるには、校正値の誤差δwaもしくはδwb11-i(=-δwa11-i)のいずれかが大きな値である必要がある。つまり、診断指標値Fwが大きな値であれば、校正値の誤差が大きいと診断することができる。
よって、S7で求めた診断指標値Fwを、あらかじめ定めたしきい値と比較して、診断指標値Fwがしきい値以上かどうか判定する(S8:判定ステップ)。ここでしきい値以上の場合には、校正値の誤差が大きいと判断してアラームを出力する(S9:報知ステップ)。
このように、上記形態の基準器11の校正値の診断方法では、基準器11をテーブル3に設置する基準器設置ステップ(S1)と、主軸頭2に取り付けたタッチプローブ31(センサ)を用いて、複数のターゲット球12(ターゲット)の位置を検出することで、ターゲット球12の位置に関する反転前計測値を取得する反転前計測ステップ(S2)と、基準器11の校正値と反転前計測値とをもとに反転前誤差値を算出する反転前誤差算出ステップ(S3)と、反転前計測ステップの基準器設置方向に対して、複数のターゲット球12が配置されている方向と直交し、且つターゲット球12の突出方向と平行な軸を中心に基準器11を反転する基準器反転ステップ(S4)と、タッチプローブ31を用いて、反転した基準器11の複数のターゲット球12の位置を検出することで、ターゲット球12の位置に関する反転後計測値を取得する反転後計測ステップ(S5)と、校正値と反転後計測値とをもとに反転後誤差値を算出する反転後誤差算出ステップ(S6)と、反転前誤差値と反転後誤差値とをもとに診断指標値を計算する診断指標値計算ステップ(S7)と、を実行する。
この構成により、凸状のターゲット球12を有する基準器11であっても、校正値の誤差の測定が可能となる。また、反転法では機械の運動誤差との分離ができないターゲット間隔の校正値に対しても、診断指標値に基づいて誤差の度合いが診断可能となる。
なお、S7の診断指標値計算ステップでは、誤差δa, δbに対して鮮鋭化フィルタなどで局所的な誤差成分のみを抽出してから同様に診断指標値の計算を行うことで、局所的な校正値誤差の影響のみを診断することもできる。
また、上記形態では、診断指標値を1つのしきい値と比較して校正値の誤差の適否を判定しているが、しきい値を複数設定して誤差の度合いを複数段階で判定するようにしてもよい。診断指標値も、誤差の差分の絶対値の最大値のみとせず、複数個設定して誤差の適否を診断することもできる。よって、誤差の適否はしきい値との比較に限らない。
報知ステップは、アラームに代えてモニタに表示したりしてもよいし、報知ステップを省略したりしてもよい。
その他、基準器の形状は適宜変更可能で、凸状のターゲットは球状に限らないし、ターゲットの数も上記形態に限定されない。凹状のターゲットを備えたマスタや、平面をターゲットとするマスタ、ホールピッチマスタ等においても本発明は採用可能である。センサの形態も変更できる。工作機械もマシニングセンタに限らない。
1・・ベッド、2・・主軸頭、3・・テーブル、11・・基準器、12・・ターゲット球、21・・ホールピッチマスタ、22・・ターゲット穴、31・・タッチプローブ。

Claims (4)

  1. 2軸以上の並進軸と、工作物を保持可能なテーブルと、工具を保持可能な主軸頭とを有し、前記主軸頭に保持された工具が、前記並進軸により、工作物に対して並進2自由度以上の相対運動が可能である工作機械を用いて、複数のターゲットが直線上に配置されてなる基準器の前記ターゲットの位置に関する校正値の誤差の度合いを診断する方法であって、
    前記基準器を前記テーブルに設置する基準器設置ステップと、
    前記主軸頭に取り付けたセンサを用いて、前記複数のターゲットの位置を検出することで、前記ターゲットの位置に関する反転前計測値を取得する反転前計測ステップと、
    前記校正値と前記反転前計測値とをもとに反転前誤差値を算出する反転前誤差算出ステップと、
    前記反転前計測ステップの基準器設置方向に対して、前記複数のターゲットが配置されている方向に直交し、且つ前記ターゲットの突出方向と平行な軸を中心に前記基準器を反転させる基準器反転ステップと、
    前記センサを用いて、反転した前記基準器の前記複数のターゲットの位置を検出することで、前記ターゲットの位置に関する反転後計測値を取得する反転後計測ステップと、
    前記校正値と前記反転後計測値とをもとに反転後誤差値を算出する反転後誤差算出ステップと、
    前記反転前誤差値と前記反転後誤差値とをもとに診断指標値を計算する診断指標値計算ステップと、
    を実行することを特徴とする基準器の校正値の誤差診断方法。
  2. 前記診断指標値計算ステップでは、前記診断指標値が、前記反転前誤差値と前記反転後誤差値との差分をもとに計算されることを特徴とする請求項1に記載の基準器の校正値の誤差診断方法。
  3. 前記診断指標値計算ステップでは、前記反転前誤差値と前記反転後誤差値とを鮮鋭化フィルタに通すことで局所的な誤差成分を抽出し、前記誤差成分をもとに前記診断指標値を計算することを特徴とする請求項1に記載の基準器の校正値の誤差診断方法。
  4. 前記診断指標値を予め設定したしきい値と比較する判定ステップと、
    前記判定ステップで前記診断指標値が前記しきい値以上と判定した場合はその旨を報知する報知ステップと、を更に有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の基準器の校正値の誤差診断方法。
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