JP2022049273A5 - - Google Patents

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JP2022049273A5
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本発明は、セル吸収シートを備えた吸収性物品における、股間部のフィット性の改善に関するものである。
吸収性物品は、吸収体と、吸収体の表側を覆う液透過性トップシートと、吸収体の裏側を覆う液不透過性シートとを備えており、尿や経血等の排泄液はトップシートを透過して吸収体により吸収され保持されるようになっている。吸収体としては、粉砕パルプ等の親水性短繊維に高吸収性ポリマー粒子(SAP)を混合し綿状に積繊したものが広く採用されているが、十分な吸収可能量を確保しつつ、さらなる薄型化、軽量化、ローコスト化等の要請にこたえるものとして、液透過性を有する上シート及び下シートの接合部により周りを囲まれ、かつ上シート及び下シートが接合されていない多数のセル(小室)と、このセル内に含まれた高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体とを有する吸収シート(以下、セル吸収シートともいう)が各種提案されている(例えば下記特許文献1~6参照)。
従来のセル吸収シートでは、製造容易性や製造安定性等を重視する場合、その全体にわたり一様な網状のパターンで接合部が形成されることが望ましい。
しかし、セル吸収シートは接合部に沿って折れ曲がりやすいため、これを内蔵する吸収性物品もセル吸収シートの接合部に沿って折れ曲がりやすくなる。よって、セル吸収シートの接合部が一様な網状パターンで形成されていると、吸収性物品はあらゆる部位で好き勝手な方向に折れ曲がることができるため、装着状態ではフィット性に優れる反面、意図しない形状に変形するおそれがあった。これは、特に吸収性物品の股間部で問題となる。すなわち、吸収性物品が両脚の間に挟まれた装着状態で、股間部の両側部が装着者の内腿に沿って変形しない状況が発生しやすく、漏れや装着感の悪化を引き起こすおそれがある。
特表平09-504207号公報 特表2014-500736号公報 特開2011-189067号公報 特開平10-137291号公報 特開2017-176507号公報 特開2010-522595号公報
そこで、本発明の主たる課題は、セル吸収シートを備えた吸収性物品における、股間部のフィット性を改善すること等にある。
上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
前後方向の中間に位置する股間部を有し、
吸収体と、この吸収体の表側に配置された液透過性トップシートと、吸収体の裏側に配置された液不透過性シートとを備え、
前記吸収体は、液透過性を有する上シート及び下シートと、上シート及び下シートの接合部により周りを囲まれた、上シート及び下シートが非接合の部分であるセルと、このセル内に収容された高吸収性ポリマー粒子を含む粉粒体とを有するセル吸収シートを含み、
前記セル吸収シートは、前記股間部の前後両側にわたり延びており、
前記セル吸収シートの接合部は、前記セル吸収シートの全体にわたり一様な網状のパターンで設けられており、
前記セル吸収シートにおける前記股間部に位置する部分の両側部には、前記接合部及び前記セルを横切りつつ、脚周りに沿って線状に延びる易折り曲げ部が設けられている、
ことを特徴とする、吸収性物品。
(作用効果)
本吸収性物品は、セル吸収シートの接合部がセル吸収シートの全体にわたり一様な網状のパターンで設けられている基本構造を踏襲し(つまりその利点を残し)つつ、この接合部とは別に、セル吸収シートにおける股間部に位置する部分の両側部には、接合部及びセルを横切りつつ、脚周りに沿うように易折り曲げ部が設けられているものである。これにより、セル吸収シートにおける股間部に位置する部分の両側部は、セルを形成するための接合部ではなく、易折り曲げ部に沿って表側に折れ曲がりやすくなる。よって、本吸収性物品は、両脚の間に挟まれた装着状態では、股間部の両側部が装着者の内腿に沿って所望の形状に変形しやすくなり、漏れや装着感の悪化を引き起こしにくくなる。
<第2の態様>
前記上シート及び前記下シートはそれぞれ不織布であり、
前記接合部は、前記セルの周方向に間欠的に設けられた、前記上シート及び前記下シートを厚み方向に加圧しつつ溶着した部分であり、
前記易折り曲げ部は、前記上シート及び前記下シートを厚み方向に加圧しつつ溶着した溶着部が前記脚周りに沿って間欠的に設けられた部分であり、
前記易折り曲げ部における溶着部の幅が、前記接合部の幅よりも太いとともに、前記易折り曲げ部における溶着部の間隔が、前記接合部の間隔よりも狭い、
第1の態様の吸収性物品。
(作用効果)
接合部がセルの周方向に間欠的に設けられた、上シート及び下シートを厚み方向に加圧しつつ溶着した部分である場合、同様の溶着部を脚周りに沿って配置することにより易折り曲げ部を形成することができる。この場合、本態様のように、易折り曲げ部における溶着部の幅が、接合部の幅よりも太いとともに、易折り曲げ部における溶着部の間隔が、接合部の間隔よりも狭いと、より確実に易折り曲げ部に沿って折れ曲がりやすくなるため好ましい。もちろん、易折り曲げ部は、セル吸収シートに対して非加熱のエンボス加工又は罫線加工を施すことにより形成したり、ミシン目加工により形成することもできる。
<第3の態様>
前記接合部は、前記セルの周方向に間欠的に設けられた、前記上シート及び前記下シートを厚み方向に加圧しつつ溶着した部分であり、
前記易折り曲げ部の溶着部は、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しないものであり、
前記易折り曲げ部が通過する前記セル及びこれよりも側方に位置するセルは、高吸収性ポリマー粒子を含有しないか、又はそれ自体の幅方向内側に隣接するセルと比べて高吸収性ポリマー粒子の含有量が少ない低含有セルである、
第1又は2の態様の吸収性物品。
(作用効果)
易折り曲げ部を上シート及び下シートの溶着部により形成する場合、易折り曲げ部は、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しないものであると、易折り曲げ部の効果が排泄物の吸収後においても発揮されるため好ましい。これとともに又はこれに代えて易折り曲げ部が通過するセル及びこれよりも側方に位置するセルが低含有セルであると、易折り曲げ部を挟んで両側の部分が膨張して互いに押し合うことにより易折り曲げ部に沿う折れ曲がりが阻害される(平坦になる方向に力が働く)状況が発生しにくくなるため好ましい。
<第4の態様>
前記接合部は、前記セルの周方向に間欠的に設けられた、前記上シート及び前記下シートを厚み方向に加圧しつつ溶着した部分であり、
前記易折り曲げ部の溶着部は、隣接するセル内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しないものであり、
前記下シートの各セルに位置する部分が下側に押し出されて、前記下シートの上面及び下面に表裏一対の凹部及び凸部が形成されており、
前記上シートの各セルに位置する部分は厚み方向に押し出されておらず、平坦である、
第1~3のいずれか1つの態様の吸収性物品。
(作用効果)
セル吸収シートでは、内部の高吸収性ポリマー粒子が吸収膨張したときの容積を確保するため、上シート及び下シートの少なくとも一方は、各セルに位置する部分が厚み方向の外側に押し出された凹部を有していると好ましい。しかし、上シートに上側に窪む凹部を有すると、高吸収性ポリマー粒子が吸収膨張したとき、易折り曲げ部を挟んで両側の部分が膨張して互いに押し合うことにより易折り曲げ部に沿う折れ曲がりが阻害される(平坦になる方向に力が働く)。これに対して、本態様のように、下シートにのみ下側に窪む凹部を有すると、このような問題が発生しないため好ましい。
<第5の態様>
前記セル吸収シートは、前記易折り曲げ部よりも側方の部分の全体が、上方、下方及び側方にそれぞれ隣接する部材に接合されていない、
第1~4のいずれか1つの態様の吸収性物品。
(作用効果)
本態様の場合、セル吸収シートにおける易折り曲げ部よりも側方の部分の全体が、上方、下方及び側方にそれぞれ隣接する部材により拘束されないため、前述の易折り曲げ部に沿う折れ曲がり作用が発揮されやすくなる。
<第6の態様>
前記セル吸収シートは、前後方向の全体にわたり一定の幅を有する、
第1~5のいずれか1つの態様の吸収性物品。
(作用効果)
セル吸収シートは、前後方向の全体にわたり一定の幅を有すると、製造が容易であるため好ましいが、前述の股間部のフィット性の問題が発生しやすいものとなる。よって、前述の易折り曲げ部はこのようなセル吸収シートに適用すると特に意義が大きいものとなる。
本発明によれば、セル吸収シートを備えた吸収性物品における、股間部のフィット性が改善する等の利点がもたらされる。
テープタイプ使い捨ておむつの内面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 テープタイプ使い捨ておむつの外面を示す、おむつを展開した状態における平面図である。 図1の6-6断面図である。 図1の7-7断面図である。 (a)図1の8-8断面図、(b)図1の9-9断面図である。 図1の5-5断面図である。 (a)吸収体の要部破断底面図、(b)その1-1断面図である。 吸収体の平面図である。 吸収体の平面図である。 図8及び図9の2-2断面図である。 接合部を簡略的に示した吸収体の平面図である。 セルの各種の配置例を示す概略平面図である。 各種セル吸収シートの断面図である。 各種セル吸収シートの断面図である。 吸収体の要部を示す断面図である 吸収体及び包装シートの層構造を示す断面図である。 吸収時の変化を示す、断面図である。 高吸水不織布の層構造を概略的に示す断面図である。 易折り曲げ部の折り曲げ状態を示す断面図である。
以下、吸収性物品の一例として、テープタイプ使い捨ておむつについて添付図面を参照しつつ説明する。図1~図6は、前後方向LDの中間に位置する股間部Mを有するテープタイプ使い捨ておむつの一例を示している。図中の符号Xはファスニングテープを除いたおむつの全幅を示しており、符号Lはおむつの全長を示している。股間部Mは、図示例のように製品の前後方向LDの中間に前後両側よりも幅が狭く形成された括れ部を有する場合にはこの括れ部を有する前後方向LDの範囲を意味し、このような括れ部を有しない場合には前後方向LDの中央に位置する部分であって、かつ前後方向LDの寸法が製品全長の20~40%である部分を意味する。
図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、液透過性を有するトップシートと、裏側に位置する液不透過性シートとの間に吸収体70が介在された基本構造を有している。また、このテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体70の前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、かつ吸収体70を有しない部分であるエンドフラップEFを有するとともに、吸収体70の側縁よりも側方に延出する一対のサイドフラップSFを有している。サイドフラップSFの両側縁は、脚周りに沿うように括れた形状となっているが、直線状となっていてもよい。背側部分BにおけるサイドフラップSFにはファスニングテープ13がそれぞれ設けられており、おむつの装着に際しては、背側部分BのサイドフラップSFを腹側部分FのサイドフラップSFの外側に重ねた状態で、ファスニングテープ13を腹側部分F外面の適所に係止する。
また、このテープタイプ使い捨ておむつでは、ファスニングテープ13以外の外面全体が外装不織布12により形成されている。特に、吸収体70を含む領域においては、外装不織布12の内面側に液不透過性シート11がホットメルト接着剤等の接着剤により固定され、さらにこの液不透過性シート11の内面側に吸収体70、中間シート40、及びトップシート30がこの順に積層されている。トップシート30及び液不透過性シート11は図示例では長方形であり、吸収体70よりも前後方向LD及び幅方向WDにおいて若干大きい寸法を有しており、トップシート30における吸収体70の側縁よりはみ出る周縁部と、液不透過性シート11における吸収体70の側縁よりはみ出る周縁部とがホットメルト接着剤などにより接合されている。また液不透過性シート11は、トップシート30よりも若干幅広に形成されている。
さらに、このテープタイプ使い捨ておむつの幅方向の両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられており、この起き上がりギャザー60を形成するギャザーシート62が、トップシート30の両側部上から各サイドフラップSFの内面までの範囲に固着されている。
厚み方向に隣接する各構成部材は、以下に述べる固定又は接合部分以外も、必要に応じて公知のおむつと同様に固定又は接合される。断面図における点模様部分は、この固定又は接合手段としてのホットメルト接着剤等の接着剤を示している。ホットメルト接着剤は、スロット塗布、連続線状又は点線状のビード塗布、スパイラル状、Z状、波状等のスプレー塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)等、公知の手法により塗布することができる。これに代えて又はこれとともに、弾性部材の固定部分では、ホットメルト接着剤を弾性部材の外周面に塗布し、弾性部材を隣接部材に固定することができる。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する固定又は接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。厚み方向の液の透過性が要求される部分では、厚み方向に隣接する構成部材は間欠的なパターンで固定又は接合される。例えば、ホットメルト接着剤によりこのような間欠的な固定又は接合を行う場合、スパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を好適に用いることができ、一つのノズルによる塗布幅以上の範囲に塗布する場合には、幅方向に間隔を空けて又は空けずにスパイラル状、Z状、波状等の間欠パターン塗布を行うことができる。
以下、各部の詳細について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
(外装不織布)
外装不織布12は製品外面を構成するものであり、製品外面を布のような外観及び肌触りとするためのものである。外装不織布の繊維目付けは10~50g/m、特に15~30g/mのものが望ましい。外装不織布12は省略することもでき、その場合には液不透過性シート11を外装不織布12と同形状として、製品外面を構成することができる。
(液不透過性シート)
液不透過性シート11の素材は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを例示することができる。もちろん、この他にも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂又は疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、液不透過性シート11として用いることができる。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、有孔プラスチックシートなどを例示することができる。トップシート30の両側部は、吸収体70の裏側に折り返しても良く、また図示例のように、折り返さずに吸収体70の側縁より側方にはみ出させても良い。
トップシート30は、裏側の部材に対する位置ずれを防止する等の目的で、ヒートシール、超音波シールのような素材溶着による接合手段や、ホットメルト接着剤により裏側に隣接する部材に固定することが望ましい。図示例では、トップシート30はその裏面に塗布されたホットメルト接着剤により中間シート40の表面及び包装シート45のうち吸収体70の表側に位置する部分の表面に固定されている。
(中間シート)
中間シート40は、トップシート30を透過した排泄液を吸収体70側へ速やかに移動させるため、及び逆戻りを防ぐために、トップシート30の裏面に接合されているものである。中間シート40及びトップシート30間の接合は、ホットメルト接着剤を用いる他、ヒートエンボスや超音波溶着を用いることもできる。
中間シート40としては、不織布を用いる他、多数の透過孔を有する樹脂フィルムを用いることもできる。不織布としては、トップシート30と同様の素材を用いることができるが、トップシート30より親水性が高いものや、繊維密度が高いものが、トップシート30から中間シート40への液の移動特性に優れるため好ましい。例えば、中間シート40としては、エアスルー不織布を好適に用いることができる。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは17~80g/mが好ましく、25~60g/mがより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.0~10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。
図示例の中間シート40は、吸収体70の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向LDの寸法は、おむつの全長と同一でもよいし、吸収体70の寸法と同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
(起き上がりギャザー)
トップシート30上における排泄物の横方向移動を阻止し、横漏れを防止するために、幅方向WDにおける製品の両側の内面から突出(起立)する起き上がりギャザー60を設けるのは好ましい。
この起き上がりギャザー60は、ギャザーシート62と、このギャザーシート62に前後方向LDに沿って伸長状態で固定された細長状のギャザー弾性部材63とにより構成されている。このギャザーシート62としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性部材63としては糸ゴム等を用いることができる。弾性部材は、図1及び図3に示すように各側に複数本設ける他、各側に1本設けることができる。
ギャザーシート62の内面は、トップシート30の側部上に幅方向WDの固着始端を有し、この固着始端から幅方向WDの外側の部分は、液不透過性シート11の側部及び当該部分に位置する外装不織布12の側部にホットメルト接着剤などにより固着されている。
脚周りにおいては、起き上がりギャザー60の固着始端より幅方向WDの内側は、製品前後方向LDの両端部ではトップシート30上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性部材63の収縮力が作用するので、弾性部材63の収縮力により起き上がりギャザー60が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
図示例と異なり、ギャザーシート62の幅方向WDの内側の部分における前後方向LDの両端部を、幅方向WDの外側の部分から内側に延在する基端側部分と、この基端側部分の幅方向WDの中央側の端縁から身体側に折り返され、幅方向WDの外側に延在する先端側部分とを有する二つ折り状態で固定し、その間の部分を非固定の自由部分とすることもできる。
(平面ギャザー)
各サイドフラップSFには、図1~図3に示すように、ギャザーシート62の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向WDの外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に、糸ゴム等の細長状の弾性部材からなる脚周り弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップSFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性部材64はサイドフラップSFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に配置することもできる。脚周り弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
(ファスニングテープ)
図1、図2及び図6に示されるように、ファスニングテープ13は、おむつの側部に固定されたテープ取付部13C、及びこのテープ取付部13Cから突出するテープ本体部13Bをなすシート基材と、このシート基材におけるテープ本体部13Bの幅方向WDの中間部に設けられた、腹側に対する係止部13Aとを有し、この係止部13Aより先端側の部分が摘み部とされたものである。ファスニングテープ13のテープ取付部13Cは、サイドフラップSFにおける内側層をなすギャザーシート62及び外側層をなす外装不織布12間に挟まれ、かつホットメルト接着剤によりそれらのシートに接着されている。また、係止部13Aはシート基材に接着剤により固定されている。
係止部13Aとしては、メカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(雄材)が好適である。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、レ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状、ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ13の係止部として粘着材層を設けることもできる。
また、テープ取付部13Cからテープ本体部13Bまでを形成するシート基材としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布等の各種不織布の他、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材を用いることができる。
(ターゲットシート)
腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所には、係止を容易にするためのターゲット有するターゲットシート12Tを設けるのが好ましい。ターゲットシート12Tは、係止部13Aがフック材の場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また係止部13Aが粘着材層の場合には、ターゲットシート12Tは、粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおけるファスニングテープ13の係止箇所が不織布からなる場合、例えば図示例の外装不織布12が不織布からなる場合であって、ファスニングテープ13の係止部13Aがフック材の場合には、ターゲットシート12Tを省略し、フック材を外装不織布12の不織布に絡ませて係止することもできる。この場合、ターゲットシート12Tを外装不織布12と液不透過性シート11との間に設けてもよい。
(吸収体)
吸収体70は、図1、図3、図5、図15及び図16に示すように、排泄物の液分を吸収保持する部分であり、最上部に設けられた上補助層71と、その裏側に設けられた主吸収層72とを有している。後述するように、主吸収層72上に、上補助層71を有していると好ましいが、上補助層71は省略することも可能である。図16は、図15の吸収体70の層構造を分離して分かりやすく示したものである。吸収体70は、その表裏少なくとも一方側の部材に対してホットメルト接着剤等の接着剤50hを介して接着することができる。
(上補助層)
上補助層71は、表面が吸収体70の最上面に露出する、クレム吸水度が100mm以上の高吸水不織布42を有するものである。この高吸水不織布42は、粘性液であっても迅速に吸収及び拡散することができる。よって、吸収体70による粘性液の吸収性を顕著に向上させることができる。高吸水不織布42は、クレム吸水度が130mm以上であると、特に好ましい。また、高吸水不織布42のクレム吸水度の上限は特に限定されるものではないが、180mm程度が好ましく、160mmであると特に好ましい。
上補助層71の高吸水不織布42の荷重下保水量は0gより大きく0.15g以下であると好ましく、0gより大きく0.12g以下であると特に好ましい。上補助層71の高吸水不織布42の無荷重下保水量は0gより大きく0.7g以下であると好ましく、0gより大きく0.3g以下であると特に好ましい。
高吸水不織布42は、素材及び製法により限定されるものではないが、パルプ繊維又はレーヨン繊維を50%以上含む、目付け25~50g/mの湿式不織布(特に湿式スパンレース不織布)であると好ましい。パルプ繊維又はレーヨン繊維以外の繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)を用いることができる。このような湿式不織布を用いると、微小な繊維間隙による毛細管現象により、粘性液を迅速に吸収・拡散することができるため好ましい。特に、このような湿式不織布はクレム吸水度が高いだけでなく、非常に薄く、柔軟であるため、吸収体70全体としての柔軟性の低下及び厚みの増加を抑えることができる。高吸水不織布42の厚みは限定されるものではないが、上記目付けの場合、0.13~0.48mm程度であることが好ましい。
また、高吸水不織布42としては、図18に示すように、合成樹脂の長繊維を含む支持層42bと、最も表側に位置し、パルプ繊維のみからなるパルプ層42aとを有する二層、又は三層以上の不織布が特に好適である。このような高吸水不織布42は、パルプ層42aによりクレム吸水度を高くしつつ、支持層42bの存在により強度を高くすることができるため、吸収体70の最上部に設けた場合に耐久性に優れるようになる。
上補助層71は、高吸水不織布42の裏面に隣接する第1高吸収性ポリマー粒子43を有すると、図17(a)に矢印で示すように、高吸水不織布42により吸収及び拡散した粘性液Nを、徐々に高吸水不織布42の裏側に隣接する高吸収性ポリマー粒子で吸収保持することができる。これにより、粘性液Nの吸収性を顕著に向上させることができる。特に、上補助層71の高吸水不織布42が前述の湿式不織布であると、裏面に隣接する第1高吸収性ポリマー粒子43への粘性液Nの受渡しが円滑となるため好ましい。
上補助層71の高吸水不織布42の寸法、配置は適宜定めることができる。例えば図示例のように、高吸水不織布42は主吸収層72の表面の全体を覆うように配置されていてもよいし、主吸収層72の表面の一部、例えば前端部、後端部、中央部又はこれらのうちの複数個所のみを覆うように配置されていてもよい。また、高吸水不織布42は、主吸収層72の周縁からはみ出す部分を有していてもよいし、高吸水不織布42の周縁の一部又は全部が主吸収層72の周縁よりも中央側に離間していてもよい。通常の場合、上補助層71の高吸水不織布42は、主吸収層72の面積の90%以上を覆っていると望ましい。
第1高吸収性ポリマー粒子43を有する領域の寸法、配置は適宜定めることができる。例えば図示例のように、第1高吸収性ポリマー粒子43は、高吸水不織布42と主吸収層72とが重なる領域の全体に配置されていてもよいし、高吸水不織布42と主吸収層72とが重なる領域の一部、例えば前端部、後端部、中央部又はこれらのうちの複数個所のみに配置されていてもよい。通常の場合、第1高吸収性ポリマー粒子43を有する領域は、主吸収層72の面積の83%以上を占めていると望ましい。
第1高吸収性ポリマー粒子43は、高吸水不織布42に固定されていなくてもよいが、固定されているとより好ましい。第1高吸収性ポリマー粒子43は、例えば高吸水不織布42の裏面に間欠パターンで塗布されたホットメルト接着剤等の接着剤42hにより高吸水不織布42に接着することができる。
第1高吸収性ポリマー粒子43は、主吸収層72の表面に接するだけで固定しなくてもよいが、固定してもよい。例えば、主吸収層72の表面にホットメルト接着剤等の接着剤43hを間欠パターンで塗布した後、その塗布部分の上に第1高吸収性ポリマー粒子43を散布し、さらにその上に接着剤42hを介して又は介さずに高吸水不織布42を配置することができる。
第1高吸収性ポリマー粒子43の目付けは適宜定めることができるが、泥状便や水様便、軟便における液分のように一度に必要とされる吸収量が少ない粘性液を想定すると、50~150g/mであると好ましく、50~100g/mであると特に好ましい。第1高吸収性ポリマー粒子43の目付けが50g/m未満では、少量の粘性液であっても十分な吸収が困難となるおそれがある。また、第1高吸収性ポリマー粒子43の目付けが150g/mを超えると、尿などの多量の非粘性液を吸収するとき、第1高吸収性ポリマー粒子43が十分に吸収し、膨張した後にゲルブロッキングが生じ、主吸収層72に対する非粘性液の供給が阻害されるおそれが高くなる。これに対して、上記範囲内であると、第1高吸収性ポリマー粒子43が十分に吸収し、膨張した後でも、ゲルブロッキングが生じない部分が残り、主吸収層72に対する非粘性液の供給が確保されるため好ましい。
(主吸収層:セル吸収シート)
主吸収層72は、図示例のように、セル55内に第2高吸収性ポリマー粒子53が内包されたセル吸収シート50となっており、股間部Mの前後両側にわたり延びている。セル吸収シート50の吸収性能は、第2高吸収性ポリマー粒子53に依存するものであるため、必然的に吸収速度が遅く、粘性液Nの吸収性が低いものとなる。よって、前述の上補助層71は、このようなセル吸収シート50を主吸収層72とする場合に特に意義を有するものである。
セル吸収シート50の全幅(つまり、上シート51及び下シート52のうち幅の広い方のシートの全幅。上シート51及び下シート52の全幅が同じ場合には両方のシートの全幅)は、製造を容易にするため、及び切断による廃材を発生させないためには、前後方向LDの全体にわたり一定の幅であることが好ましい。
セル吸収シート50ついてさらに詳しく説明する。図7及び図15に拡大して示すように、このセル吸収シート50は、上シート51と、その裏側に配された下シート52と、上シート51及び下シート52の接合部54により周りを囲まれ、かつ上シート51及び下シート52が非接合の部分であるセル(小室)55と、このセル55内に含まれた、第2高吸収性ポリマー粒子53とを有する。セル55は接合部54の分の間隔を空けて多数配列される。このように、接合部54により周囲全体を囲まれた多数のセル55に第2高吸収性ポリマー粒子53を分配保持させることにより、セル吸収シート50における第2高吸収性ポリマー粒子53の偏在を防止できる。
製造時の第2高吸収性ポリマー粒子53の配置を容易にするため、及び吸収膨張後の容積確保のために、セル55における上シート51及び下シート52の少なくとも一方が、展開状態でセル55の外側に窪む凹部50cとなっていると好ましいが、凹部50cを有せず、単に上シート51及び下シート52の間に第2高吸収性ポリマー粒子53が挟まっているだけでもよい。
凹部50cは、対象シートにエンボス加工等の賦形加工を施すことにより形成できるものである。また、このエンボス加工により、対象シートにおける各セル55に位置する部分には、外側に膨らむ凸部50pが形成されることとなる。つまり、エンボス加工により上シート51に凹部50cを形成すると、上シート51における各セル55に位置する部分が上側に押し出されて、上側に膨らむ凸部50pが形成される。凹部50cの深さ50dは特に限定されないが、1.0~7.0mm、特に1.0~5.0mm程度とすることが好ましい。
尿等の非粘性液Uを吸収する場合、上補助層71の第1高吸収性ポリマー粒子43が一様に設けられていると、第1高吸収性ポリマー粒子43が優先的に吸収膨張して、膨張した第1高吸収性ポリマー粒子43が密着して難液透過性の層を形成するゲルブロッキングが発生しやすくなり、主吸収層72に非粘性液Uが供給されにくくなるおそれがある。つまり、上補助層71が主吸収層72による吸収を阻害するおそれがある。これに対して、図15に示すように、上シート51における各セル55に位置する部分が、上側に膨らむ凸部50pとなっており、第1高吸収性ポリマー粒子43は、主吸収層72の上シート51の上面に固定されており、上シート51の上面における第1高吸収性ポリマー粒子43の付着量(目付け)は、凸部50pの頂部から隣接する凸部50pの間に位置する谷部の底部に向かうにつれて多くなっていると、図17(a)に示すように上シート51の上面に固定された第1高吸収性ポリマー粒子43を粘性液Nの吸収に有効に利用できるものでありながら、同じ第1高吸収性ポリマー粒子の使用量で比べた場合、図17(b)に示すように非粘性液Uの吸収に際して第1高吸収性ポリマー粒子43が十分に吸収膨張した後においても、第1高吸収性ポリマー粒子43の付着量が少ない部分ほどゲルブロッキングが生じにくくなり、主吸収層72に対する非粘性液Uの供給が阻害されにくくなる。また、上シート51の凸部50pを利用することで、上シート51の上面における第1高吸収性ポリマー粒子43の付着量に規則的な変化をつける(付着量の多い部分と少ない部分とを交互に設ける)ことが容易となる。すなわち、前述のように、主吸収層72の表面にホットメルト接着剤を間欠パターンで塗布した後、その塗布部分の上に第1高吸収性ポリマー粒子43を散布すると、その散布が均一であっても、重力により谷部の底部に向かって第1高吸収性ポリマー粒子43が転げ落ちやすいために、自然に、第1高吸収性ポリマー粒子43の付着量は、凸部50pの頂部から隣接する凸部50pの間に位置する谷部の底部に向かうにつれて多くなるのである。よって、このような第1高吸収性ポリマー粒子43の不均一付着構造は、一見すると複雑な構造でありながら製造は比較的に容易である。なお、この場合においても、第1高吸収性ポリマー粒子43の目付けは、前述の範囲内であると好ましいことはいうまでもない。
上シート51の上面における第1高吸収性ポリマー粒子43の付着量を、凸部50pの頂部から隣接する凸部50pの間に位置する谷部の底部に向かうにつれて多くする場合、凸部50pの頂部を含む一部には第1高吸収性ポリマー粒子43が付着しておらず、それ以外の部分にのみ第1高吸収性ポリマー粒子43が付着していてもよいし、図示例のように凸部50pの頂部及びそれ以外の部分を含むほぼ全体に第1高吸収性ポリマー粒子43が付着しているとともに、その付着量が谷部の底部に向かって連続的(または段階的でもよい)に増加していてもよい。
凸部50pの寸法は適宜定めることができるが、このような観点から、上シート51の凸部50pの前後方向LDの寸法55Lは6~30mmであり、上シート51の凸部50pの幅方向WDの寸法55Wは7~50mmであり、接合部54の幅54Wは1.0~1.8mmであり、上シート51の谷部の深さ50d(凸部50pの高さ)は1.0~7.0mmであると好ましい。
上シート51に凹部50cを設けると、上シート51の上面に凸部50pが形成され、上補助層71の高吸水不織布42と密着しにくくなり(隙間が生じやすくなり)、高吸水不織布42から第1高吸収性ポリマー粒子43への粘性液Nの受渡しが阻害されるおそれもある。したがって、この観点からは、図13(c)に示すように、上シート51には凹部50cを形成せずに(つまり賦形加工が施されていない平坦な上面を有し)、下シート52における各セル55を構成する部分に凹部50cを形成するのも好ましい。これにより、下シート52の凹部50cにより第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張容積を確保しつつ、上シート51の上面及びそこに配置された第1高吸収性ポリマー粒子43が上補助層71の高吸水不織布42と密着しやすくなり、高吸水不織布42から第1高吸収性ポリマー粒子43への粘性液Nの受渡しが阻害されにくいものとなる。
他方、図7(b)及び図13(a)等に示すように、上シート51及び下シート52の間には、不織布からなる中シート80が介在されていると好ましいが、図14(b)に示すように中シート80を設けなくてもよい。中シート80を設ける場合、接合部54では上シート51、中シート80及び下シート52の三層が接合される。また、中シート80は、接合部54に位置する部分では厚み方向に圧縮されるとともに、セル55内に位置する部分では凹部50c内まで膨らんでいる(換言すると繊維密度が接合部から遠ざかるほど低下する)と好ましい。これにより、製品の包装状態で加わる圧力や装着時に加わる圧力により凹部50cが(したがって凸部も)潰れにくく、また潰れたとしても、中シート80の弾力性により少なくとも中シート80が入り込んでいた部分又はそれに近い容積まで形状復元が促進される。そして、排泄液の吸収時には、高吸収性ポリマーが中シート80の繊維間隙を拡大し、その間に入り込みながら、あるいは中シート80を容易に圧縮しながら、あるいはその両方により膨張することができるため、中シート80の存在は第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張を阻害しにくい。さらに、凹部50c内に広がる中シート80の繊維が個々の第2高吸収性ポリマー粒子53への通液路を確保するため、第2高吸収性ポリマー粒子53が膨張を開始した後も拡散性の低下が抑制され、ゲルブロッキングが生じにくい。したがって、これらの相乗作用により、本セル吸収シート50を備えた使い捨ておむつの吸収速度(特に吸収初期)が改善される。
上シート51は、トップシート30と同様に液透過性素材であれば特に限定されるものではない。上シート51は吸収速度に対して影響するものであるため、親水性繊維、特に綿・パルプ等の天然繊維を原料とする乾式不織布、中でもパルプ70重量%以上(100重量%未満の場合における残量は適宜の合成繊維とすることができる)のエアレイドパルプ不織布は上シート51に特に好適なものの一つである。不織布の繊維結合法は特に限定されないが、第2高吸収性ポリマー粒子53の離脱を防止するため、スパンボンド法、メルトブローン法、ニ一ドルパンチ法のように繊維密度が高くなる結合法が好ましい。また、不織布の繊度、目付け及び厚みはそれぞれ2.0~7.0dtex程度、18~50g/m程度、0.10~0.60mm程度であると好ましい。有孔プラスチックシートを用いる場合、その開孔径は、第2高吸収性ポリマー粒子53の脱落を防止するため、第2高吸収性ポリマー粒子53の外形より小さくするのが好ましい。また、上シート51の素材が疎水性の場合には、親水剤を含有させることもできる。
下シート52は、液透過性素材であっても、液不透過性素材であってもよく、特に限定されるものではないが、クレム吸水度が50mm以上、荷重下保水量が0.1g以上、かつ無荷重下保水量が0.5g以上の高吸水不織布であると好ましい。図17(b)に示すように、セル吸収シート50に供給された尿等の非粘性液Uは、セル吸収シート50内の第2高吸収性ポリマー粒子53により吸収されるとともに、第2高吸収性ポリマー粒子53により吸収されずに下シート52に到達した非粘性液Uは下シート52に吸収され、下シート52内に保水され、拡散された後、セル吸収シート50内の第2高吸収性ポリマー粒子53により吸い上げることができる。ここで、セル吸収シート50は第2高吸収性ポリマー粒子53を有しない接合部54が、セル吸収シート50の周囲に向かって連続的に延びており、セル吸収シート50の裏面に凸部50pがある場合にはセル吸収シート50の裏面と対向面との間の隙間もセル吸収シート50の周囲に向かって連続的に延びている。このため、セル吸収シート50の保水性が低いと、セル吸収シート50を透過した非粘性液Uが液不透過性シート11上を移動し、吸収体70の周囲から肌側に染み出して、肌に付着したり、漏れたりするおそれがある。
下シート52をなす高吸水不織布のクレム吸水度は70mm以上であると、特に好ましい。また、下シート52をなす高吸水不織布のクレム吸水度の上限は特に限定されるものではないが、150mm程度が好ましく、100mmであると特に好ましい。下シート52をなす高吸水不織布の荷重下保水量は0.13g以上であると、特に好ましい。また、下シート52をなす高吸水不織布の荷重下保水量の上限は特に限定されるものではないが、0.30g程度が好ましく、0.26gであると特に好ましい。下シート52をなす高吸水不織布の無荷重下保水量は0.70g以上であると、特に好ましい。また、下シート52をなす高吸水不織布の荷重下保水量の上限は特に限定されるものではないが、1.40g程度が好ましく、1.20gであると特に好ましい。
下シート52をなす高吸水不織布は、素材及び製法により限定されるものではなく、上補助層71と同様の高吸水不織布42を好適に用いることができる。上シート51及び下シート52の接合部54を溶着により形成する場合には、下シート52をなす高吸水不織布はポリエチレン繊維やポリエチレン成分を含む複合繊維等の熱融着繊維が好適である。特に、下シート52は尿などの非粘性液Uの一時的貯留が目的であるため、上補助層71の高吸水不織布42よりも保水量が多いものが好ましい。例えば、下シート52をなす高吸水不織布は、荷重下保水量が上補助層71の高吸水不織布42の2~4倍のものが好ましい。より具体的には、下シート52をなす高吸水不織布の目付けは、上補助層71の高吸水不織布42の目付けの1.2~1.8倍とするか、下シート52をなす高吸水不織布として、上補助層71と同等の高吸水不織布を複数枚重ねて配置することができる。
上シート51に凹部50cを有すると、上シート51の表面積が大きくなり、セル吸収シート50内の高吸収性ポリマー粒子に対してより広範囲に液を供給することができるため好ましい。一方、下シート52に凹部50cを有すると、下シート52の表面積が大きくなり、下シート52に賦形加工を施さずに平坦とする場合と比較して下シート52の保水量が多くなるため好ましい。
中シート80としては不織布であれば特に限定されないが、不織布の構成繊維の繊度は1.6~7.0dtex程度が好ましく、5.6~6.6dtexであるとより好ましい。また、中シート80の不織布の空隙率は80~98%であると好ましく、90~95%であるとより好ましい。中シート80の繊度及び空隙率がこの範囲であると、中シート80の弾力性を可能な限り確保しつつ、第2高吸収性ポリマー粒子53が排泄液の吸収前及び排泄液の吸収時に中シート80の繊維間隙に容易に入り込むことが可能なものとなる。よって、吸収時には凹部50c内に広がる中シート80の繊維が個々の第2高吸収性ポリマー粒子53への通液路を確保するため、第2高吸収性ポリマー粒子53が膨張を開始した後も拡散性の低下が抑制され、ゲルブロッキングが生じにくいものとなる。中シート80の厚みは、凹部50cの深さ50dや凹部50c内への入り込みの程度等を考慮して適宜定めればよいが、厚みが凹部50cの深さ50dの10%~90%であると好ましく、70%~90%であるとより好ましい。中シート80の目付けも同様の理由で適宜定めればよいが、上記厚み範囲では25~40g/m程度とすることが好ましい。中シート80の不織布の空隙率を高く(繊維間隙を広く)するためには、構成繊維を捲縮繊維とすることが好ましい。また、中シート80の不織布の構成繊維が親水性繊維(親水化剤により親水性となった繊維を含む)であると保水性が高くなり、疎水性繊維であると拡散性が向上する。不織布の繊維結合法は特に限定されないが、空隙率を高く(繊維間隙を広く)しつつ、十分に繊維を結合して弾力性を確保するため、熱風加熱により繊維を結合したエアスルー不織布が中シート80には好ましい。
中シート80における凹部50cと対向する面は凹部50c内に入り込んでいる限り、図13(a)(c)及び図14(a)(c)にそれぞれ示すように、凹部50cの内面に接していると好ましいが、図13(b)に示すように離間していてもよい。中シート80における凹部50cと対向する面と凹部50cの内面とを離間させる場合、その離間距離80sは適宜定めることができるが凹部50cの深さ50dの30%以下とすることが好ましい。このように、セル55内に隙間が生じる場合、製品状態で凸部50p(凹部50c)はその隙間に応じて潰れていてもよい。
中シート80は、図13(a)~(c)及び図14(a)にそれぞれ示すように、セル55内及び接合部54の両方において、上シート51及び下シート52の少なくとも一方に対してホットメルト接着剤80hにより接着されていてもよいし、図14(c)に示すように、上シート51及び下シート52の両方に接着されていなくてもよい。
第2高吸収性ポリマー粒子53はそのほぼ全部(例えば95%以上)を上シート51、下シート52及び中シート80に対して非固定とし、自由に移動可能とすることが好ましい。しかし、第2高吸収性ポリマー粒子53の一部又はほぼ全部(例えば95%以上)を、上シート51、下シート52及び中シート80の少なくとも一つに接着又は粘着させることもできる。図14(b)は第2高吸収性ポリマー粒子53の一部をホットメルト接着剤等の接着剤53hにより下シート52に接着した例を示している。また、第2高吸収性ポリマー粒子53はある程度塊状化していても良い。特に、セル55内で第2高吸収性ポリマー粒子53が自由に移動可能である場合、セル55内に中空部分を有すると、使用時に第2高吸収性ポリマー粒子53がセル55内で移動することにより、音がしたり、第2高吸収性ポリマー粒子53がセル55内で偏在することによる吸収阻害が発生するおそれがある。よって、これを解決するために、前述のように中シート80における凹部50cと対向する面を凹部50cの内面に接触させる、つまり換言すると凹部50cを含むセル55内のほぼ全体にわたり高空隙率の中シート80の繊維を充満させるのは一つの好ましい形態である。これにより、第2高吸収性ポリマー粒子53は中シート80の繊維により捕捉されるか、又は上シート51若しくは下シート52に押し付けられるか、又はその両方となるため、自由な移動が起こりにくくなる。よって、第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張阻害を防止しつつも、第2高吸収性ポリマー粒子53の移動による音の発生や、第2高吸収性ポリマー粒子53がセル55内で偏在することによる吸収阻害を防止することができる。
図13(a)(b)、図14(c)にそれぞれ示す例のように、第2高吸収性ポリマー粒子53が中シート80の上面上に最も多く存在しており、そこから下側に向かって減少していると、使用者がおむつの外面を手で触ったときに中シート80の介在により第2高吸収性ポリマー粒子53のじゃりじゃりとした触感(違和感)が手に伝わりにくくなるため好ましい。特に、中シート80が空隙率の高いかさ高な不織布の場合、第2高吸収性ポリマー粒子53は排泄液の吸収前及び排泄液の吸収時に中シート80の繊維間隙に入り込むことが可能であるため、吸収速度がより一層向上する。すなわち、吸収初期においては、第2高吸収性ポリマー粒子53が多く分布する中シート80上面での吸収が進行するが、その速度には限りがある。よって、この吸収初期には、排泄液は、第2高吸収性ポリマー粒子53が少ない中シート80内にも多く入り込み、中シート80内の第2高吸収性ポリマー粒子53により吸収されるか、第2高吸収性ポリマー粒子53により吸収されるまで一時的に貯留されるか、又は周囲のセル55に拡散する。周囲に拡散した排泄液は、そこに存在する中シート80内の第2高吸収性ポリマー粒子53により吸収されるか、その上方に多く存在する第2高吸収性ポリマー粒子53によって吸い上げられることとなる。そして、各第2高吸収性ポリマー粒子53が排泄液を吸収していく過程で、高吸収性ポリマーが繊維間隙を拡大し、その間に入り込みながら、あるいは中シート80を圧縮しながら膨張することとなる。このような吸収メカニズムにより、排泄液は速やかにセル吸収シート50の広範囲に拡散し、かつセル吸収シート50の内部に受け入れられた状態となるため、吸収速度の向上はもちろん、逆戻り防止性にも優れたものとなる。また、このような吸収メカニズムを良好に発揮させるためには、凹部50cは、少なくとも上シート51における各セル55を構成する部分に形成されていると好ましい。
セル55内における第2高吸収性ポリマー粒子53の分布の程度は適宜定めることができるが、通常の場合、中シート80の上面上に存在する第2高吸収性ポリマー粒子53の重量割合は全量の50%以上であると好ましく、中シート80内に保持された(つまり下シート52上でない)高吸収性ポリマーの重量割合は全量の45%以上であると好ましい。
もちろん、セル55内における第2高吸収性ポリマー粒子53の分布はこれに限定されるものではない。したがって、下シート52をなす高吸水不織布からの吸い上げ性を重視するのであれば、図13(c)に示すように第2高吸収性ポリマー粒子53が下シート52の上面上に最も多く存在しており、そこから上側に向かって減少している分布とするのも好ましい。また、図14(a)に示すように、中シート80の上面上及び下シート52の上面上に存在する第2高吸収性ポリマー粒子53の量が、それらの間の部分よりも多い分布となっていてもよい。さらに、図示しないが、第2高吸収性ポリマー粒子53が中シート80の厚み方向中間に最も多く存在しており、そこから上側及び下側に向かって減少している分布とすることもできる。この形態は、中シート80を二層の不織布とし、層間に第2高吸収性ポリマー粒子53を挟むことにより形成することができる。
第2高吸収性ポリマー粒子53の目付けは適宜定めることができる。本例の吸収体70では、上補助層71に第1高吸収性ポリマー粒子43を含有するため、主吸収層72における第2高吸収性ポリマー粒子53の目付けを少なく抑えることができるものの、上補助層71だけで尿のような比較的に多量の排泄液の吸収を賄うことは適切ではない。したがって一概には言えないが、第2高吸収性ポリマー粒子53の目付けは、第1高吸収性ポリマー粒子43の目付けよりも多くすることが好ましく、例えば150~250g/mとすることができる。一般に、第2高吸収性ポリマー粒子53の目付けが150g/m未満では吸収量を確保し難く、250g/mを超えると使用者が製品の外面を手で触ったときに第2高吸収性ポリマー粒子53のじゃりじゃりとした触感(違和感)が手に伝わりやすくなる。
セル55の平面形状は適宜定めることができ、図8等に示すように、六角形、菱形、正方形、長方形、円形、楕円形等とすることができるが、より密な配置とするために多角形とすることが望ましく、図示例のように隙間なく配列することが望ましい。セル55は、同一形状及び同一寸法の物を配列する他、図示しないが形状及び寸法の少なくとも一方が異なる複数種のセル55を組み合わせて配列することもできる。
セル55(つまり第2高吸収性ポリマー粒子53の集合部も同様)の平面配列は適宜定めることができるが、規則的に繰り返される平面配列が好ましく、図12(a)に示すような斜方格子状や、図12(b)に示すような六方格子状(これらは千鳥状ともいわれる)、図12(c)に示すような正方格子状、図12(d)に示すような矩形格子状、図12(e)に示すような平行体格子(図示のように、多数の平行な斜め方向の列の群が互いに交差するように2群設けられる形態)状等(これらが伸縮方向に対して90度未満の角度で傾斜したものを含む)のように規則的に繰り返されるものの他、セル55の群(群単位の配列は規則的でも不規則でも良く、模様や文字状等でも良い)が規則的に繰り返されるものとすることもできる。
各セル55の寸法は適宜定めることができ、例えば前後方向LDの寸法55L(凸部50pの前後方向LDの寸法に等しい)は6~30mm程度とすることができ、また幅方向WDの寸法55W(凸部50pの幅方向WDの寸法に等しい)は7~50mm程度とすることができる。各セル55の面積は31~1650mm程度とすることができる。
上シート51及び下シート52を接合する接合部54は、製造容易性や製造安定性等を重視する場合、その全体にわたり一様な網状のパターンで接合部54が形成されることが望ましい。このために、図示例のように、同じ寸法・平面形状のセル55を一種又は複数種、規則的にかつ隙間なく配列することが望ましい。上シート51及び下シート52を接合する接合部54は、超音波溶着やヒートシールのように上シート51及び下シート52の溶着された溶着部であることが望ましいが、ホットメルト接着剤を介して接合された接着部であっても良い。
上シート51及び下シート52の接合部54は、各セル55を取り囲むように配置され、隣接するセル間の境界となる限り、図示例のように点線状(各セル55を取り囲む方向に断続的)に形成する他、連続線状に形成することもできる。接合部54を断続的に形成する場合、セル55を取り囲む方向における接合部54の間には、第2高吸収性ポリマー粒子53が存在しないか又は存在するとしてもセル55内よりも少ないことが好ましい。特に、接合部が点線状(断続的)に設けられていると、中シートの繊維群が隣り合う接合部の間を通り多数のセル間にわたり延びることとなる。よって、隣り合う接合部の間には液拡散通路が形成されるため、セル間にわたる液拡散性の向上により、吸収速度の向上が図られる。
図10にも示すように、接合部54は、隣接するセル55内の第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により剥離可能な弱接合部54bであっても、また、隣接するセル55内の第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により基本的に剥離しない強接合部54aであってもよい。個々のセル55容積以上の第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張にも対応するためには、接合部54の一部又は全部は弱接合部54bであることが好ましい。弱接合部54bを有することにより、弱接合部54bを挟んで隣接するセル55同士は、当該セル55内の第2高吸収性ポリマー粒子53の吸収膨張圧により剥離して合体して一つの大きなセル55となることが可能となる。
一方、強接合部54aはその両側のセル55が吸収膨張しても基本的に剥離しない部分であるため、それが特定の方向に続くことにより拡散性を向上させたり、第2高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物の流動を防止したり、表面側の接触面積を低減したりする等の効果を有する。よって、これを弱接合部と組み合わせることにより、後述するように様々な特徴を有するセル吸収シート50を構築することができる。なお、幅方向WDの最も外側に位置する接合部54は、これが剥離するとセル吸収シート50の側方に第2高吸収性ポリマー粒子53又はそのゲル化物が漏れ出るおそれがあるため強接合部54aとすることが望ましい。同様の観点から、上シート51及び下シート52はセル55形成領域よりも幅方向WDの外側にある程度延在させ、この延在部分に補強のために縁部接合部54cを施しておくのが好ましい。
接合強度の差異は、接合部54の面積を変化させることにより形成するのが簡単でよいが、これに限定されず、例えば接合部54をホットメルト接着剤により形成する場合にはホットメルト接着剤の種類を部位により異ならしめるといった手法を採用することもできる。特に、上シート51及び下シート52を溶着することにより接合部54を形成する場合、弱接合部54bは、接合部54を点線状にして点間隔54Dを広くすることのみでも形成できるが、接合部54は隣接するセル55同士の境界となる部分であるため、点間隔54Dが広くなりすぎると隣接するセル55同士の境界に隙間が多くなり、第2高吸収性ポリマー粒子53が移動しやすくなる。よって、接合部54の幅54Wの広狭と、点間隔54Dの広狭とを組み合わせて点線状の弱接合部54bを形成すると、その弱接合部54b部分は隙間が少ない割には剥離しやすいものとなる。
上シート51及び下シート52を接合する接合部54の寸法は適宜定めることができ、例えば幅(セル55を取り囲む方向と直交する方向の寸法であり、セル55の間隔に等しい)54Wは1.0~1.8mm程度とすることができる。また、点線状(セル55を取り囲む方向に断続的)に接合部54を形成する場合、セル55を取り囲む方向における接合部54の寸法54Lは0.6~1.5mm程度、点間隔54Dは0.8~3.0mm程度とすることが好ましい。特に、強接合部54aの場合には、幅54Wは1.3~1.8mm程度、接合部54の寸法54Lは1.0~1.5mm程度、点間隔54Dは0.8~2.0mm程度とすることが好ましい。また、弱接合部54bの場合には、幅54Wは1.0~1.3mm程度、接合部54の寸法54Lは0.6~1.0mm程度、点間隔54Dは1.5~3.0mm程度とすることが好ましい。
弱接合部54bを剥離可能とするために、弱接合部54bに隣接するセル55の容積よりも当該セル55内の第2高吸収性ポリマー粒子53の飽和吸収時の体積が十分に大きくなるように、各セル55内に配置される第2高吸収性ポリマー粒子53の種類及び量を定めることができる。また、強接合部54aを基本的に剥離しないものとするために、弱接合部54bの剥離により合体可能なセル55の合体後の容積よりも、当該合体可能なセル55に含まれる第2高吸収性ポリマー粒子53の飽和吸収時の体積が小さくなるように、各セル55内に配置される第2高吸収性ポリマー粒子53の種類及び量を定めることができる。
接合部54を連続線状に形成する場合における接合部54の幅、並びに接合部54を点線状に形成する場合における幅54Wは、セル55を取り囲む方向に一定とする他、変化させることもできる。また、接合部54を点線状に形成する場合における各接合部54の形状は適宜定めることができ、すべて同一とする他、部位に応じて異なる形状とすることもできる。特に各セル55の形状を多角形とする場合には、各辺の中間位置及び各頂点位置の少なくとも一方には接合部54を設けるのが好ましい。また、強接合部54aの場合は各頂点位置にも設けることが好ましいが、弱接合部54bの場合は各頂点位置には設けない方が弱接合部54bが剥離しやすくなり、セル55の合体が円滑に進行するため好ましい。
図8及び図11に示すように、セル吸収シート50の幅方向WDの中間の領域に、強接合部54aが前後方向LDに続く縦強接合線58、及びその両脇に隣接する低膨張セル55sからなる拡散性向上部57が設けられていると好ましい。この拡散性向上部57の低膨張セル55sは、拡散性向上部57の両脇に隣接するセル55よりも第2高吸収性ポリマー粒子53の単位面積当たりの内包量が少なく、かつ当該拡散性向上部57の両脇に隣接するセル55との間の接合部54が弱接合部54bとなっているものである。この場合、図10に示すように、排泄液の吸収当初、拡散性向上部57とその周囲部分との膨張量の差により、拡散性向上部57を底部とする幅の広い溝が形成され、その溝により液拡散が促進される。この状態は、拡散性向上部57の周囲のセル55における第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張力により、拡散性向上部57の低膨張セル55sとその両脇のセル55との間の弱接合部54bが外れるまで続き、当該弱接合部54bが外れた後も強接合部54aは外れないため、溝の幅は狭くなるものの強接合部54aを底部とする溝が残り拡散性は維持される。つまり、多量の排泄液の拡散が重要となる吸収初期には溝の幅が広く、その後は、ゲルブロッキング等の問題が生じないように拡散性向上部57の低膨張セル55sも周囲のセル55と合体するものの、強接合部54aにより溝が残り、拡散性向上作用が維持される。
低膨張セル55sにおける第2高吸収性ポリマー粒子53の内包量は、重量比で隣接するセル55の1/3以下であることが好ましく、全く内包しないと特に好ましい。
なお、図11では、強接合部54aが太い点線で表現され、他の弱接合部54bは細い点線で表現されており、第2高吸収性ポリマー粒子53を含有するセル55(低膨張セル55s及び後述の低含有セル56を除くセル55)には図11では斜線模様が付されている。
拡散性向上部57は、図8に示すように、セル吸収シート50の全長にわたり設けられていてもよく、図11に示すように、前後方向LDの中間部分(特に股間部を含み、その前後両側にわたる範囲)にのみ設けられていてもよい。また、拡散性向上部57は、図8及び図11に示すように、幅方向WD中央の一か所に設ける他、図示しないが、幅方向WDに間隔を空けて複数か所に設けることもできる。
セル吸収シート50の前後方向LD全体にわたりセル55同士が合体可能であると、吸収時に膨張した第2高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物が、合体したセル55内を前後方向LDに大きく移動可能となり、当該ゲル化物が股間部等の低所に集合して装着感を悪化させるおそれがある。よって、図8に示すように、強接合部54aが幅方向WD又は斜め方向に連続的又は断続的(連続線状又は点線状)に続く部分である横強接合線59(図7参照)が、前後方向LDに間隔を空けて複数設けられているのは好ましい形態である。これにより、吸収時に基本的に剥離しない強接合部54aによって第2高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物の前後方向LD移動を阻止することができ、セル吸収シート50の形状の崩れを防止することができる。もちろん、図11に示すように、このような横強接合線59を有しない形態とすることもできる。
特に、図8に示す形態のように、強接合部54aがセル吸収シート50全長にわたって前後方向LDに続く部分である縦強接合線58が、幅方向WDの最も外側に位置するセル55の側縁に沿って幅方向WDの両側にそれぞれ設けられるとともに、これらの幅方向WDの中間にも設けられており、かつ横強接合線59が、幅方向WDに隣り合う縦強接合線58間にわたるように幅方向WD又は斜め方向に続く部分であると、強接合部54aにより囲まれる最拡大区画55G以上にはセル55が合体しないため、吸収時に膨張した第2高吸収性ポリマー粒子53のゲル化物は最拡大区画55G外には移動せず、吸収時におけるセル吸収シート50の形状崩れを効果的に防止できる。また、強接合部54aが前後方向LDに続く部分である縦強接合線58により縦方向の液拡散性が向上し、強接合部54aが幅方向WD又は斜め方向に続く部分である横強接合線59により横方向の液拡散性が向上する。例えば図8に示す形態において、符号Zの位置に尿が排泄されたと仮定すると、そこを中心に図9に示すように尿が周囲に拡散しつつ、その尿を各位置の第2高吸収性ポリマー粒子53が吸収していく。このとき、図9及び図10に示すように、内部の第2高吸収性ポリマー粒子53の膨張圧が高まったセル55については、その周囲の弱接合部54bが膨張圧に抗しきれずに剥離し、隣接するセル55と合体する。この合体は、第2高吸収性ポリマー粒子53の吸収膨張が弱接合部54bを剥離しうる限り続き、周囲に強接合部54aを有するセル55まで進行可能となる。
最拡大区画55Gの大きさや形状、配置(つまり強接合部54aの配置)は適宜定めることができるが、最拡大区画55Gを小さくし過ぎると強接合部54aを設ける意義がなくなり、またセル55数が多くても細長く形成したときにはセル55の合体後の形状が膨らみにくい形状となる。
図8~図10に示す形態では、縦強接合線58が、セル吸収シート50の幅方向WD中央部及び両側部にそれぞれ設けられており、横強接合線59は、前記中央の縦強接合線58及び両側部の縦強接合線58の間のそれぞれで、左右に繰り返し折れ曲がりつつ前後方向に延びるジグザグ状をなしている。この結果、中央の縦強接合線58の位置に頂点を有するほぼ三角形状の最拡大区画55Gと、両側部の縦強接合線58の位置に頂点を有するほぼ三角形状の最拡大区画55Gとが、前後方向に交互に繰り返し形成されている。横強接合線59がこのようにジグザグ状に形成されていると、少ない横強接合線59の本数で効率的に横方向の液拡散を促進でき、かつ最拡大区画55Gは膨らみやすいほぼ三角形となり、セル55合体数に対するセル容積増加量にも優れるため好ましい。
低膨張セル55sを設けずに縦強接合線58のみとすることもできる。この場合、排泄液の吸収時に強接合部54aは外れないため、強接合部54aを底部とする溝が残ることによる拡散性の向上は図られる。
他方、図8等に示すように、第2高吸収性ポリマー粒子53の単位面積当たりの内包量が他のセルよりも少ない低含有セル56を設けることもできる。図11では、第2高吸収性ポリマー粒子53を含有するセル55(低膨張セル55s及び低含有セル56を除くセル55)には斜線模様が付されている。このうち、図8における斜線模様を付した領域は、製造時の第2高吸収性ポリマー粒子53の散布領域53Aを想定しているため、周縁のセル55には斜線模様のない部分があるが、セル55内で第2高吸収性ポリマー粒子53が移動可能である場合には製品ではセル55内における第2高吸収性ポリマー粒子53の存在位置が固定されるものではなく、他の図のものと同様にセル55内の全体に第2高吸収性ポリマー粒子53が分布しうるものである。低含有セル56における第2高吸収性ポリマー粒子53の内包量は、重量比で他のセルの1/2以下であることが好ましく、全く内包しないと特に好ましい。例えば、セル吸収シート50の前端及び後端は、製造の際に個々のセル吸収シート50へ切断することにより形成されるため、この位置に第2高吸収性ポリマー粒子53を含有すると切断装置の刃の寿命が短くなるおそれがある。よって、少なくともセル吸収シート50の前後端が通過する位置のセル55は低含有セル56であることが望ましい。また、セル吸収シート50の前後方向LDの中間における両側部のセル55を低含有セル56とすることにより、当該部分は吸収後も膨張が少ないものとなり、したがって吸収後においてもセル吸収シート50が脚周りにフィットする形状となる。
上記例は、セル55内に第2高吸収性ポリマー粒子53のみ内包させているが、第2高吸収性ポリマー粒子53とともに消臭剤粒子等、高吸収性ポリマー粒子以外の粉粒体を内包させることもできる。
(易折り曲げ部)
セル吸収シート50における股間部Mに位置する部分の両側部には、接合部54及びセル55を横切りつつ、脚周りに沿って線状に延びる易折り曲げ部90が設けられていると好ましい。易折り曲げ部90がない場合、一様に設けられた網状パターンの接合部54のどこかで好き勝手な方向に折れ曲がることができるため、装着状態ではフィット性に優れる反面、意図しない形状に変形するおそれがある。これに対して、図1及び図8等に示すように、易折り曲げ部90を有すると、図19に示すように、セル吸収シート50における股間部Mに位置する部分の両側部は、セル55を形成するための接合部54ではなく、易折り曲げ部90に沿って表側に折れ曲がりやすくなる。よって、本テープタイプ使い捨ておむつは、両脚の間に挟まれた装着状態で、股間部Mの両側部が装着者の内腿に沿って所望の形状に変形しやすくなり、漏れや装着感の悪化を引き起こしにくくなる。
易折り曲げ部90を有することにより、セル吸収シート50における股間部Mに位置する部分の両側部は、易折り曲げ部90に沿って表側に折れ曲がりやすくなるが、前述の平面ギャザー及び起き上がりギャザー60の少なくとも一方を有すると、折れ曲がりの方向がより確実に表側になるため好ましい。
易折り曲げ部90の平面形状は、脚周りに沿って線状に延びている限り、特に限定されるものではない。例えば、易折り曲げ部90は、接線が前後方向LDに沿う直線をなす最内部91と、この最内部91から前側及び後側に向かうにつれて幅方向WD外側に位置するように延びる前斜め部92及び後斜め部93とを有する形状であってもよい。この場合、最内部91(つまり接線が前後方向LDに沿う直線である部位)が一点しかなく、全体として前斜め部92から後斜め部93に直線部分を経ることなくつながっていてもよいが、図示例のように最内部91が易折り曲げ部90全体の前後方向LDの寸法の1/4以上前後方向LDに沿って直線的に延びていてもよい。易折り曲げ部90は直線状の部分を有しない曲線状であってもよい。易折り曲げ部90は、平面視で変曲点を有していてもよいが、有しない(ジグザグ状でない)ことが好ましい。また、易折り曲げ部90は連続的に延びていてもよいし、間欠的(点線状)に延びていてもよい。
易折り曲げ部90の前後方向LDの寸法は装着者の股間部Mの標準的寸法を考慮して適宜定めることができ、通常の場合、製品全長Lの30~70%程度とすることができる。また、易折り曲げ部90の幅方向WDの寸法(片側)は装着者の股間部Mの標準的寸法及びセル吸収シート50の全幅50Wを考慮して適宜定めることができ、例えばセル吸収シート50の全幅50Wの10~30%程度とすることができる。易折り曲げ部90の線幅90W(後述するように、易折り曲げ部50を接合部と同様に形成する場合には符号54Wで示される寸法)は適宜定めればよいが、通常の場合、1.5~12.0mmであることが好ましい。
易折り曲げ部90は、セル吸収シート50に対して非加熱のエンボス加工又は罫線加工を施すことにより形成したり、ミシン目加工により形成することができるほか、前述のセル55を取り囲む接合部54と同様の手法で形成することもできる。すなわち、易折り曲げ部90は、上シート51及び下シート52を厚み方向に加圧しつつ溶着した溶着部が脚周りに沿って間欠的に設けられた部分であってもよい。この場合、易折り曲げ部90における溶着部の幅(54Wと同様)を、接合部54の幅54Wよりも太くする(例えば1.5~3.0倍)とともに、易折り曲げ部における溶着部の間隔(54Dと同様)を、接合部54の間隔54Dよりも狭くする(例えば1/4~1/2倍)と、より確実に易折り曲げ部90に沿って折れ曲がりやすくなるため好ましい。
易折り曲げ部90を上シート51及び下シート52の溶着部により形成する場合、当該溶着部は、前述の強接合部54aと同様に、隣接するセル55内の高吸収性ポリマー粒子の膨張力により剥離しないものであると、易折り曲げ部90の効果が排泄物の吸収後においても発揮されるため好ましい。これとともに又はこれに代えて、図示例のように、易折り曲げ部90が通過するセル55及びこれよりも側方に位置するセル55が前述の低含有セル56であると、易折り曲げ部90を挟んで両側の部分が膨張して互いに押し合うことにより易折り曲げ部90に沿う折れ曲がりが阻害される(平坦になる方向に力が働く)状況が発生しにくくなるため好ましい。
また、図13(a)等に示すように、セル吸収シート50の上シート51に上側に窪む凹部50cを有すると、高吸収性ポリマー粒子が吸収膨張したとき、易折り曲げ部90を挟んで両側の部分が膨張して互いに押し合うことにより易折り曲げ部90に沿う折れ曲がりが阻害されるおそれがある(平坦になる方向に力が働く)。よって、この点を考慮するならば、図13(c)に示すように、下シート52の各セル55に位置する部分が下側に押し出されて、下シート52の上面及び下面に表裏一対の凹部50c及び凸部50pが形成されているとともに、上シート51の各セル55に位置する部分は厚み方向に押し出されておらず、平坦であるのが好ましい。
セル吸収シート50は、隣接部材に接合されていることが望ましい。しかし、セル吸収シート50における易折り曲げ部90よりも側方の部分が隣接部材に接合されていると、易折り曲げ部90に沿う折れ曲がりの抵抗が大きくなる。よって、セル吸収シート50における左右の易折り曲げ部90の間に位置する部分は上下少なくとも一方に隣接する部材に接合し、易折り曲げ部90よりも側方の部分の全体は、上方、下方及び側方にそれぞれ隣接する部材に接合せず、前述の易折り曲げ部90に沿う折れ曲がり作用が発揮されやすくなっていると好ましい。
易折り曲げ部90は、セル吸収シート50より表側の部材、例えば図示例の包装シート45、中間シート40及びトップシート30の少なくとも一つに設けられていてもよいが、これらのうち少なくともトップシート30及び中間シート40には設けられていないことが好ましく、セル吸収シート50より表側の部材のすべてに設けられていないとより好ましい。
(高吸収性ポリマー粒子)
第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53の粒径は特に限定されないが、例えば、500μm超の粒子の割合が30重量%以下で、500μm以下かつ180μm超の粒子の割合が60重量%以上で、106μm超かつ180μm以下の粒子の割合が10重量%以下で、かつ106μm以下の粒子の割合が10重量%以下であると好ましい。なお、これらの粒径の測定は、以下のように行う。すなわち、500μm、180μm、106μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)、及び受皿を上からこの順に並べて配置し、最上段の500μmのふるいに、高吸収性ポリマー粒子の試料を10g投入し、ふるい分け(5分間の振とう)を行った後、各ふるい上に残る粒子の重量を計測する。このふるい分けの結果、500μm、180μm、106μmの各ふるい上に残った試料、及び受皿上に残った試料の投入量に対する重量割合を、それぞれ500μm超の粒子の割合、500μm以下かつ180μm超の粒子の割合、106μm超かつ180μm以下の粒子の割合、106μm以下の粒子の割合とする。
第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。また、第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53は破砕法により製造されたものであると、ゲルブロッキングが生じにくいため好ましい。第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体70内に供給された液が吸収体70外に戻り出てしまういわゆる逆戻りを発生しやすくなる。
また、第1高吸収性ポリマー粒子43及び第2高吸収性ポリマー粒子53としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
(包装シート)
図3及び図16(a)に示すように、吸収体70は包装シート45により包装することができる。この場合、一枚の包装シート45を吸収体70の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付ける他、2枚の包装シート45で表裏両側から挟むようにして包装することができる。包装シート45としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子53が抜け出ないシートであるのが望ましい。包装シート45に不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。包装シート45に用いる不織布の目付けは、5~40g/m、特に10~30g/mのものが望ましい。
図16(b)に示すように、吸収体70の裏面から、吸収体70の幅方向WD両側を経て吸収体70の上面の両側部まで包装シート45を巻付け、吸収体70の上面の幅方向WD中間部に包装シート45により覆われていない領域45Sを設けるとともに、この領域45Sの全体を含むように、上補助層71が設けられていると好ましい。吸収体70は、製造時、使用前、又は吸収後の高吸収性ポリマー粒子の漏出を防止するために、包装シート45で被覆することが一般的であるが、前述の上補助層71を有する吸収体70の場合、上補助層71が速やかに粘性液Nに接触することが望ましい。したがって、図16(b)に示すように、包装シート45の被覆範囲を制限し、上補助層71は吸収体70の上面に露出させることが望ましい。このような構造としても、吸収体70における包装シート45により覆われていない部分は、上補助層71の高吸水不織布42で覆われており、上補助層71はクレム吸水度が高い(つまり緻密な)高吸水不織布42を基本とするから、吸収体70全体を包装シート45で覆うものとほぼ同様の、高吸収性ポリマー粒子の漏出防止効果を発揮するものとなる。
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載がない限り、以下の意味を有するものである。
「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T481の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
「展開状態」とは、収縮(弾性部材による収縮等、あらゆる収縮を含む)や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度37度で使用される。
「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm、及び加圧面積:2cmの条件下で自動測定する。
「空隙率」とは、以下の方法により計測するものである。すなわち、中シートにおける接合部以外の部分を矩形に切取り、試料とする。試料の長さ、幅、厚み、重量を測定する。不織布の原料密度を用いて、試料と同じ体積で空隙率が0%の場合の仮想重量を算出する。試料重量及び仮想重量を以下の式に代入し、空隙率を求める。
空隙率 = 〔 (仮想重量 - 試料重量) / 仮想重量 〕 × 100
「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
「クレム吸水度」は、JIS P 8141:2004に規定される「紙及び板紙-吸水度試験方法-クレム法」により測定されるクレム吸水度を意味する。
「保水量」は、以下の方法により測定されるものを意味する。MD方向10cm×CD方向10cm(面積100cm)の試験片を用意し、吸収前重量を測定する。次に、試験片を人工尿に5秒間浸漬した後、いずれか1つの角部を親指と人差し指で軽く摘んで(可能な限り水を絞り出さないように軽く摘まむ)対向する角部が下に向くように吊し上げ、30秒間放置し、しずくを落とす。その後、「荷重下保水量」を測定する場合、ろ紙(縦150mm×横150mm)を8枚重ねて敷いた上に試験片を載せ、その試験片の上面全体に荷重が加わるように縦100mm×横100mmの底面を有する四角柱状の錘(重量3kg)を載せ、5分経過した時点で錘を取り除き、試験片の吸収後重量を測定する。「無荷重下保水量」を測定する場合、ろ紙を8枚重ねて敷いた上に試験片を載せ、その上に何も載せずに、5分経過した時点で試験片の吸収後重量を測定する。これらの測定結果に基づき、吸収後重量と吸収前重量との差を面積10cmあたりに換算した値を「荷重下保水量」及び「無荷重下保水量」とする。
各部の寸法は、特に記載がない限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
本発明は、上記例のようなテープタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ使い捨ておむつ、パッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品全般に利用できるものである。
LD…前後方向、M…股間部、N…粘性液、U…非粘性液、WD…幅方向、11…液不透過性シート、12…外装不織布、12T…ターゲットシート、13…ファスニングテープ、13A…係止部、13B…テープ本体部、13C…テープ取付部、30…トップシート、40…中間シート、42…高吸水不織布、42a…パルプ層、42b…支持層、43…第1高吸収性ポリマー粒子、45…包装シート、50…セル吸収シート、50c…凹部、50d…深さ、50p…凸部、51…上シート、52…下シート、53…第2高吸収性ポリマー粒子、54…接合部、54a…強接合部、54b…弱接合部、54c…縁部接合部、55…セル、55G…最拡大区画、55s…低膨張セル、56…低含有セル、57…拡散性向上部、58…縦強接合線、59…横強接合線、60…起き上がりギャザー、62…ギャザーシート、70…吸収体、71…上補助層、72…主吸収層、80…中シート、90…易折り曲げ部。
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