JP2022033717A - 可変圧縮比位相制御器のためのシステム及び方法 - Google Patents

可変圧縮比位相制御器のためのシステム及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるための可変圧縮比(VCR)位相制御システムを提供する。【解決手段】ギアハブ302とクレードルロータ304との間の位相角を、プラネタリアクチュエータ100によって駆動することができる。一部の非限定的な例では、回転アクチュエータ313と共に回転するように回転アクチュエータとの間に入力軸315が回転連結されている。入力軸の回転が、クレードルロータとギアハブとの相対回転をロック解除することができる。一部の非限定的な例では、位相制御システムはギアハブとクレードルロータと、これら両者間に配置されたねじりばね402と、を備えることができる。ねじりばねは、ギアハブとクレードルロータとの間に内部トルク負荷を印加することにより、ギアハブ又はクレードルロータに印加される外部トルク負荷をオフセットさせることができる。【選択図】図8

Description

<関連分野の相互参照>
本願は、発明の名称を「可変圧縮比位相制御器のためのシステム及び方法(Systems and Methods for Variable Compression Ratio Phaser)」とする米国仮特許出願第63/066,659号(出願日:2020年8月17日)に基づくと共にその優先権を主張するものであり、当該仮特許出願の記載内容は全て、参照により本願の記載内容に含まれるものとする。
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
該当なし。
一般に、回転用途(例えばエンジン、モータ等)のための回転位相制御システムは、第1要素と、第1要素に対して回転位相制御することができる第2要素と、を備えることができる。
一側面では本願開示は、クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるための可変圧縮比(VCR)位相制御システムを提供する。VCR位相制御システムは、クランク軸との間で回転伝動を行うように構成されたギアハブと、偏心軸との間で回転伝動を行うように構成されたクレードルロータと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するように構成されたスパイダーロータと、前記ギアハブと前記スパイダーロータとに結合されたプラネタリアクチュエータと、を備えている。プラネタリアクチュエータは、回転入力を受け取って前記スパイダーロータへ出力を供給することにより、前記クレードルロータと前記ギアハブとの間の相対回転をロック解除するように構成されている。VCR位相制御システムはまた、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねも備えている。ねじりばねは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に第1の方向にトルク負荷を印加することにより、前記偏心軸又は前記クランク軸のうちいずれか1つにより第2の方向に印加されるトルク負荷をオフセットさせるように構成されている。
一側面では本願開示は、第1の回転要素と第2の回転要素との回転関係を変化させるための位相制御システムを提供する。位相制御システムは、ギアハブと、クレードルロータと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するように構成されたスパイダーロータと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねと、を備えている。ねじりばねは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間にトルク負荷を印加するように構成されている。位相制御システムはまた、前記ギアハブと前記スパイダーロータとに結合されたプラネタリアクチュエータも備えている。前記プラネタリアクチュエータは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの相対回転が阻止される定常モードと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの相対回転を選択的に提供するための所定の大きさの回転入力を受け取る位相制御モードと、で動作可能である。
一側面では本願開示は、クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるための可変圧縮比(VCR)位相制御システムを提供する。VCR位相制御システムは、クランク軸との間で回転伝動を行うように構成されたギアハブと、偏心軸との間で回転伝動を行うように構成されたクレードルロータと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するための入力を受け取るように構成されたスパイダーロータと、前記ギアハブに結合され、前記ギアハブに対して回転不能であるばねスリーブと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねと、を備えている。ねじりばねは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間にトルク負荷を印加するように構成されている。前記ねじりばねの付勢は、前記ねじりばねの第1端を前記クレードルロータに結合し、前記ねじりばねの反対側の第2端をばね座に結合し、前記ばねスリーブに対して前記ばね座を相対的に回転させることにより、前記ばねスリーブに配置された複数の第1のスロットのうち少なくとも1つの第1のスロットを、前記ばね座に配置された複数の第2のスロットのうち少なくとも1つの第2のスロットと選択的にアライメントすることにより設定される。前記少なくとも1つの第1のスロットと前記少なくとも1つの第2のスロットとの選択的なアライメントが、前記ばね座に対する前記ばねスリーブの回転をロックするように構成されている。
一側面では本願開示は、クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるためのVCR位相制御システムを提供する。VCR位相制御システムは、クランク軸との間で回転伝動を行うように構成されたギアハブと、偏心軸との間で回転伝動を行うように構成されたクレードルロータと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置されたスパイダーロータと、を備えることができる。スパイダーロータは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するように構成することができる。VCR位相制御システムはまた、前記ギアハブと前記スパイダーロータとに結合されたプラネタリアクチュエータを備えることもできる。プラネタリアクチュエータは、回転入力を受け取って前記スパイダーロータへ出力を供給することにより、前記クレードルロータと前記ギアハブとの間の相対回転を選択的にロック又はロック解除するように構成することができる。前記プラネタリアクチュエータは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの相対回転が阻止される定常モードと、前記ギアハブに対して前記クレードルロータを所望の方向に相対回転させるようにプラネタリアクチュエータへの所定の大きさの回転入力を設定できる位相制御モードと、で動作可能とすることができる。
以下の詳細な説明を参照すれば、本発明をより良好に理解することができ、また、上記にて記載した以外の構成、側面及び利点が明らかとなる。この詳細な説明は、以下の図面を参照する。
本願開示の一側面の回転位相制御システムの断面斜視図である。 本願開示の一側面のプラネタリアクチュエータの分解図である。 図2のプラネタリアクチュエータの背面斜視図である。 図3のプラネタリアクチュエータの正面斜視図である。 定常動作モードにおける図3のプラネタリアクチュエータの正面図である。 第1の方向に位相制御中の図3のプラネタリアクチュエータの正面図である。 第2の方向に位相制御中の図3のプラネタリアクチュエータの正面図である。 図1の回転位相制御システムの断面図である。 図8の回転位相制御システムの分解図である。 図8の回転位相制御システムのギアハブの斜視図である。 図8の回転位相制御システムのねじりばねアセンブリの分解図である。 図11のねじりばねアセンブリのばね座の斜視図である。 線13-13(図8参照)に沿った図11のねじりばねアセンブリの断面図である。 図8の回転位相制御システムのクレードルロータの分解図である。 図8の回転位相制御システムのスパイダーロータの斜視図である。 複数のロックアセンブリが設けられた図15のスパイダーロータの斜視図である。 図8の回転位相制御システムの結合アセンブリの分解図である。 図8の機械的位相制御アセンブリとプラネタリアクチュエータとの間に設けられた図17の結合アセンブリの斜視図である。 線19-19に沿った図8の機械的位相制御アセンブリの断面図である。 本願開示の他の一側面の回転位相制御システムの断面図である。 図20の回転位相制御システムのねじりばねアセンブリの分解図である。 線22-22に沿った図20の回転位相制御システムのねじりばねアセンブリの断面図である。 図20のスパイダーロータを示す図である。 図20の機械的位相制御アセンブリを示す図である。 時間軸上における偏心軸トルクパルスを示す図である。 時間軸上における偏心軸とクランク軸との間の位相角を示す図である。
ここでいう「軸方向」との用語及びその変形は、特定の要素又はシステムの対称軸、中心軸、又は長手方向に概ね沿った方向をいう。例えば、ある要素の軸方向に延在する構成要素は、当該要素の対称軸又は長手方向に対して平行な方向に概ね沿って延在する構成要素とすることができる。これに対応して、ここでいう「径方向」との用語及びその変形は、軸方向に対して概ね垂直な方向をいう。例えば、ある要素の径方向に沿った構造は、当該要素の長手軸又は中心軸に対して垂直な方向に少なくとも部分的に概ね沿って延在するものとすることができる。また、ここで「周方向」との用語及びその変形を使用した場合、ある物の概ね周まわりに延在し、又は特定の要素若しくはシステムの概ね対称軸まわり、中心軸まわり又は長手方向まわりに延在する方向をいう。
従来の回転位相制御(すなわち選択的相対回転又は回転差)システムは、2つの要素間の所望の相対回転を達成するために力又は変位を加える入力メカニズムを必要とする。中には、軸方向/直線入力がアクチュエータにより提供されるシステムがある。所望の位相制御を促進するために必要とされる力の量が増大すると、従来の位相制御システムではそのコストが指数関数的に増加する。さらに、位相制御システムにより提供される相対回転量が増大すると、その位相制御システムの高さも増大する。つまり、所与の用途で必要とされる相対回転量が増大するにつれて、軸方向/直線入力を提供するアクチュエータもストロークを増加する必要があり、これによりアクチュエータの高さが増大し、位相制御システムの全パッケージサイズが増大する。
本願開示は一般に、回転システムにおいて選択的に制御下で相対回転を達成するためのシステム及び方法を提供する。一部の非限定的な例では、回転アクチュエータとツーウェイクラッチ又はロック機構との間に結合されるプラネタリアクチュエータを設けることができる。ロック機構は、2つの回転要素の間に結合することができる。例えば、第1の回転要素を外部動力源によって所望の回転速度で駆動すると共に、第2の回転要素をツーウェイクラッチ又はロック機構によって回転駆動することができる。プラネタリアクチュエータも、ツーウェイクラッチ又はロック機構によって回転することができる。回転アクチュエータはプラネタリアクチュエータに入力を供給することができ、プラネタリアクチュエータは、第1の回転要素と第2の回転要素との間の選択的な相対回転を可能にするよう構成することができる。例えば、プラネタリアクチュエータはツーウェイクラッチ又はロック機構の一部を回転変位させ又は当該一部に回転力を加えることにより、第1の回転要素と第2の回転要素との間に所望の方向の所定の相対回転(すなわち所定の回転差)を提供するように構成することができる。
本願開示のプラネタリアクチュエータの使用により、相対回転運動を促進するために軸方向/直線変位/力ではなく回転変位/回転力が用いられるので、位相制御システムの軸方向高さを縮小することができる。さらに、相対回転運動を達成するために必要な力の量を、従来の位相制御システムと比較して格段に低減することもでき、これにより、プラネタリアクチュエータを用いる位相制御システムのコストが削減される。
図1は、本願開示の非限定的な一例の回転位相制御システム10を示す。一部の非限定的な例では、内燃機関の可変圧縮比(VCR)システムにおいて、クランク軸と偏心軸との間の選択的な回転位相制御(すなわち所定の相対回転量制御)を促進するため、回転位相制御システム10を使用することができる。かかるVCRシステム構成は、米国特許出願公開第2019/0323390号明細書に記載されている。回転位相制御システム10はクランク軸12によって回転駆動されることができる。例えば、クランク軸12には、エンジンクランク軸と共に回転するギアを固定することができる。後述するように、クランク軸ギアは、回転位相制御システムに結合された第1のギアと噛み合って、これに回転駆動入力を供給することができる。このようにして、回転位相制御システム10は偏心軸14を回転駆動することができる。例えば、偏心軸14には、当該偏心軸14と共に回転するギアを固定することができる。後述するように、偏心軸ギアは、回転位相制御システム10に結合された第2のギアと噛み合って、これから回転駆動入力を受け取ることができる。一般に、偏心軸14の回転位置は、内燃機関の圧縮比を変化させるためにクランク軸12に対してシフトしている。例えば、偏心軸14の回転位置は、偏心軸14を角度変位させることにより、クランク軸12の回転位置に対してシフトする。下記にて詳細に説明するように、回転位相制御システム10は、クランク軸12と偏心軸14との間の選択的な回転位相制御(すなわち所定の相対回転量又は角度変位)を促進するものである。
図中の非限定的な例では、回転位相制御システム10はプラネタリアクチュエータ100と、ツーウェイクラッチ又はロック機構の形態の機械的位相制御アセンブリ300と、を備えることができる。一部の用途では、プラネタリアクチュエータ100を用いてクランク軸と偏心軸との間の位相制御を直接的若しくは間接的に駆動し又は開始することができる。図中の非限定的な例では、プラネタリアクチュエータ100を機械的位相制御アセンブリ300と共に使用することができ、ここでは、クランク軸12と偏心軸14との間の相対回転を選択的に可能にするため、これら両軸間にツーウェイクラッチ又はロック機構を結合する。これらの用途では、プラネタリアクチュエータ100は、ツーウェイクラッチ又はロック機構に所定量の回転力/回転変位を与えるように構成することができ、この回転力/回転変位の所定量は、供給される回転入力によって決定される。図中の非限定的な例では、回転位相制御システム10は回転アクチュエータ313を備えることができ、この回転アクチュエータ313は、プラネタリアクチュエータ100が回転するときにプラネタリアクチュエータ100の2つのリングギアのアライメントを所定の大きさで選択的に変化させるためにプラネタリアクチュエータ100に回転入力を供給するためのものである。後述するように、回転アクチュエータ313により供給される回転入力が、所望の方向における偏心軸14とクランク軸12との間の選択的な相対回転を促進する。
図2は、本願開示の非限定的な一例のプラネタリアクチュエータ100を示す。図中の非限定的な例では、プラネタリアクチュエータ100は第1のリングギア200と、第1のサンギア202と、キャリアアセンブリ204と、第2のリングギア206と、第2のサンギア208と、入力軸315(図1参照)と、を備えることもできる。図中の非限定的な例では、プラネタリアクチュエータ100の構成要素は、共通の中心軸Cに沿って配列することができる。
図2を参照すると、第1のリングギア200は内側の歯列面212と外面214とを有することができる。歯列面212は第1のリングギア200の軸方向端部から径方向内側に延在することができ、歯列面212に周方向に延在する複数のギア歯を有することができる。第1のリングギア200の外面214は当該第1のリングギア200の径方向外側のエッジから軸方向に延在して、第1のリングギア200の内側にキャビティ215を形成する。外面214は複数のスロット216を有することができる。これら複数のスロット216は第1のリングギア200に矩形の切欠きを形成し、軸方向には、外面214の長さの一部に沿った範囲に及ぶ。図中の非限定的な例では、第1のリングギア200は2つのスロット216を有し、これら2つのスロット216は外面214に周方向に等間隔に配置されている(例えば、周方向に180°の間隔で配置されている)。他の非限定的な例では、第1のリングギア200が有するスロット216を2より多く又は少なくすることができ、また、これらのスロット216は外面214に周方向に任意の間隔で配置することができる。
スロット又は切欠き216の延在起点となる軸方向端は、歯列面212よりも第1のリングギア200の軸方向反対側寄りに配置されてもよい。後述するように、プラネタリアクチュエータ100が回転位相制御システム10に組み付けられる場合には、1つ又は複数のコンプライアンス部材をキャビティ215内に受容することができ、このコンプライアンス部材は、スロット216のエッジに力を加えるように構成することができる。また、第1のリングギア200は、アセンブリにおけるコンプライアンス部材の軸方向位置を維持するためにスナップリングを受容するように構成されたスナップリング溝218を含むことができる。
引き続き図2を参照すると、キャリアアセンブリ204は、第1のプラネットギアセット222と、第2のプラネットギアセット224と、キャリアプレート226と、を備えることができる。第1のセットのプラネットギア222と第2のセットのプラネットギア224とは、キャリアプレート226の軸方向に相反対側に配置することができる。図中の非限定的な例では、第1のプラネットギアセット222は3つのプラネットギア228を含むことができ、これら3つのプラネットギア228は、第1のサンギア202の周囲に周方向に配列されて第1のサンギア202と噛み合う。他の非限定的な例では、第1のプラネットギアセット222に含まれ第1のサンギア202の周囲に周方向に配列されてこれと噛み合うプラネットギア228は、3つより多く又は少なくすることができる。
図中の非限定的な例では、第1のサンギア202は、プラネットギア228の中央に配置することができ、当該第1のサンギア202を軸方向に貫通する結合用開口230を含んでもよい。結合用開口230は、第1のサンギア202を回転させるために回転アクチュエータ313(図1参照)から入力軸315を受け入れるキー形又は矩形の凹部となることができ、これにより、回転アクチュエータ313の入力軸315と第1のサンギア202とが共に回転する。他の非限定的な例では、結合用開口230は、入力軸315と共に第1のサンギア202を回転させるために入力軸315と第1のサンギア202との回転結合を可能にする任意の幾何学的形状(例えば、卵形、正方形、三角形、多角形等)とすることができる。回転アクチュエータ313の入力軸315の一端は、第1のサンギア202内へ軸方向に延在して、第1のサンギア202の結合用開口230の形状に合った概ね相補的な形状であることが分かる。このようにして、例えば、入力軸315のこの一端を結合用開口230に挿入することによって入力軸315と第1のサンギア202との回転結合を可能にし、入力軸315と第1のサンギア202とが共に回転するこができる。
回転アクチュエータ313からの入力軸315は、キャリアプレート226を軸方向に貫通する中央開口234内に受けて挿通することができる。また、入力軸315は、第2のサンギア208を軸方向に貫通して第1のサンギア202と係合することもできる。入力軸315は第2のサンギア208を貫通するが、第1のサンギア202は、第2のサンギア208に対して独立して相対回転可能とすることができる。一部の非限定的な例では、入力軸315における第1のサンギア202に隣接する一端においてスナップリング(不図示)を使用して、入力軸315がキャリアプレート226に対して軸方向に相対変位することを防止し、これにより第1のサンギア202がキャリアプレート226に対して軸方向に相対変位することを防止することができる。
図中の非限定的な例では、第2のプラネットギアセット224は3つのプラネットギア236を含むことができ、これら3つのプラネットギア236は、第2のサンギア208の周囲に周方向に配列されて第2のサンギア208と噛み合う。他の非限定的な例では、第2のプラネットギアセット224に含まれ第2のサンギア208の周囲に周方向に配列されてこれと噛み合うプラネットギア236は、3つより多く又は少なくすることができる。第2のサンギア208は、プラネットギア236の中央に配置することができ、また、当該第2のサンギア208の少なくとも一部がプラネットギア236から軸方向にはみ出ることを確実にするのに充分な軸方向高さとすることができる。つまり、第2のサンギア208の少なくとも一部がプラネットギア236から軸方向に(例えばキャリアプレート226から離れる方向等に)はみ出ることを可能にするために、第2のサンギア208の軸方向高さはプラネットギア236の軸方向高さよりも大きい、ということである。
第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228及び第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236は、キャリアプレート226に対して軸方向に相対的に固定することができる。例えば、図2に示すように、キャリアアセンブリ204は、複数のベアリングロッド238と一対のリングプレート240とを備えることができる。一部の非限定的な例では、複数の各ベアリングロッド238は、当該各ベアリングロッド238のフランジ付き端部とは反対側の遠位端に配置された溝(不図示)を有することができる。各溝は、各溝のベアリングロッド238内において径方向内側に向かって延在することができる。各ベアリングロッド238は、リングプレート240のうちの1つに軸方向に挿通され、次に第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228のうち1つ又は第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236のうち1つのいずれかに挿通され、その次にキャリアプレート226のロッド開口243に挿通されることができる。一部の非限定的な例では、例えば、第1のプラネットギアセット222の各プラネットギア228及び第2のプラネットギアセット224の各プラネットギア236がキャリアプレート226に対して軸方向に相対変位することを防止するため、各溝にスナップリング(不図示)を入れることができる。
引き続き図2を参照すると、第2のリングギア206は、内側の歯列面246と、フランジ248と、一対のタブ250とを備えることができる。歯列面246は、当該歯列面246の周囲に周方向に延在する複数のギア歯を有することができる。フランジ248は、第2のリングギア206の軸方向端部から径方向外側に向かって延在することができる。一対のタブ250は、フランジ248から径方向外側に向かって延在する。図中の非限定的な例では、タブ250は、フランジ248の周方向において相対向する側に配置される。後述するように、第2のリングギア206のタブ250は、第2のリングギアをそれとともに回転するためのばねスリーブに回転的に固定するように構成される。
一般に、第1のサンギア202及び第2のサンギア208の一方を回転しないように回転不能とすることができる。図1~2に示されている非限定的な例では、第2のサンギア208を回転防止リング(不図示)に結合することにより、第2のサンギア208を回転アクチュエータハウジングに対して回転ロックすることができる。第2のサンギア208が第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236から軸方向にはみ出ていることにより、回転防止リングを第2のサンギア208に近付けて第2のサンギア208の一部に軸方向に嵌めることができる。回転防止リングの内面を第2のサンギア208に軸方向に挿入できるように、当該内面を第2のサンギア208の歯列プロファイルに合わせることができることが分かる。回転防止リングは、当該回転防止リングの回転を防止することにより第2のサンギア208の回転を防止する回転アクチュエータのハウジング等の回転不能な外部部品に結合することができる。一部の非限定的な例では、第1のサンギア202を回転不能とし、第2のサンギア208は、入力軸315と共に回転するように入力軸315に結合することができる。
図3~4を参照すると、歯列面212が第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228と噛み合うように、組み立てられたキャリアアセンブリ204の少なくとも一部を、第1のリングギア200のキャビティ215に挿入することができる。第2のリングギア206は、歯列面246が第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236と噛み合うように、キャリアアセンブリ204に嵌めることができる。なお、リングプレート240はプラネタリアクチュエータ100における噛み合いを隠す位置にあるため、図3~4ではリングプレート240の図示を省略している。
一般に、プラネタリアクチュエータ100の動作時には、第1のリングギア200及び第2のリングギア206は所望の方向に自在に回転可能とすることができる。例えば、第1のリングギア200は、歯列面212が、第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228と噛み合うことにより第1のサンギア202まわりに回転可能とすることができる。第2のリングギア206も同様に、歯列面246が第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236と噛み合うことにより第2のサンギア208まわりに回転可能とすることができる。
第2のサンギア208は、プラネタリアクチュエータ100に対して相対回転不能とすることができるので、第1のサンギア202を選択的に回転させて、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の回転関係を変更することができる。例えば、回転アクチュエータ313(図1参照)の入力軸315は、第1の方向に所望の回転大きさを選択的に回転することができ、この回転により、入力軸315と回転結合した第1のサンギア202が第1の方向に回転する。第1のサンギア202が第1の方向に回転することにより、第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228が第1の方向とは反対の方向に回転することができ、これによって最終的には、第1のリングギア200が上述の第1の方向とは反対の方向に第2のリングギア206に対して相対回転する。第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の相対回転又は回転差の大きさは、第1のリングギア200と入力軸315との間で定められるギア比に依存することができる。例えば、合成ギア比(resultant gear ratio)は、入力軸315と第1のサンギア202とのギア比と、第1のサンギア202と第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228とのギア比と、第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228と第1のリングギア200との間のギア比と、の各ギア比を考慮したものである。いずれの場合においても、合成ギア比が分かれば、入力軸315が回転する度数は、第1のリングギア200が第2のリングギア206に対して相対回転する既知の度数と相関することができる。従って、回転アクチュエータ313によって駆動される入力軸315の回転の方向及び大きさは、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の相対回転又は回転差の所定の方向及び大きさと相関することができる。
後述するように、プラネタリアクチュエータ100は、第1の回転要素と第2の回転要素との間に相対回転、すなわち回転差を選択的に付与するために、第1の回転要素と第2の回転要素との間に回転結合することができる。一般に、プラネタリアクチュエータ100は、第1の回転要素と第2の回転要素との間の回転関係を維持する(例えばロックする)定常モードと、第1の回転要素と第2の回転要素との間の回転関係を所望の方向及び所望の大きさにオフセットする位相制御モードと、で動作可能とすることができる。
図5は、定常モードで動作するプラネタリアクチュエータ100を示す。図5の矢印によって示されるように、第1のリングギア200及び第2のリングギア206は、第1の方向(例えば、図5では反時計回り)に回転している。定常モードでは、回転アクチュエータ313(図1参照)の入力軸315は相対回転不能とすることができ、これによって第1のサンギア202は、入力軸315と第1のサンギア202との回転結合によって相対回転不能とすることができる。さらに、第2のサンギア208も、(例えば本明細書で前述した回転防止リングによって)相対回転不能とすることができる。第1のサンギア202及び第2のサンギア208が相対回転不能とされていることにより、第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228は第1の方向に回転することができ、プラネットギア228自体は、第1のリングギア200の回転によって、第1のサンギア202まわりに第1の方向に回転することができる(例えば、プラネットギア228は中心軸Cまわりに回転することができる)。第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236も同様に、第2のリングギア206の回転によって、第2のサンギア208まわりに回転することができる。このようにして、定常モードでは、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の相対的な回転の向きを維持することができ、これにより第1の回転要素と第2の回転要素との間の相対的な回転の向きを維持することができる。
図中の非限定的な例では、第1のリングギア200及び第2のリングギア206は第1の方向に回転しているが、第2の方向(例えば、図5では時計回り)にも回転できると解すべきである。これにより、第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228は第2の方向に回転することができ、プラネットギア228自体は、第1のリングギア200の回転によって、第1のサンギア202まわりに第2の方向に回転することができる(例えば、プラネットギア228は中心軸Cまわりに回転することができる)。第2のプラネットギアセット224のプラネットギア236も同様に、第2のリングギア206の回転によって、第2のサンギア208まわりに回転することができる。図中の非限定的な実施例では、第1のリングギア200と第2のリングギア206とは、定常モードでは同じ速度で回転している。
図6は、第1の方向に位相制御を行う位相制御モードで動作するプラネタリアクチュエータ100を示す。図6の矢印によって示されているように、第1のリングギア200は、第1の方向(例えば図6では反時計回り)に第2のリングギア206に対して選択的に相対回転することができる。第2のリングギア206に対する第1のリングギア200の相対回転を容易にするために、回転アクチュエータ313に回転結合された入力軸315(図1参照)を、第1の方向とは反対の第2の方向(例えば図6では時計回り)に回転させることができる。入力軸315が第2の方向に回転することにより、第1のサンギア202が第2の方向に回転する。第1のサンギア202が第2の方向に回転することによって第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228が第1の方向に回転し、このプラネットギア228の回転により第1のリングギア200が第1の方向に回転する。第2のサンギア208が相対回転不能となっていることにより、上述の第1のサンギア202の選択的な回転、ひいては第1のリングギア200の選択的な回転によって、第1のリングギア200が第2のリングギア206に対して第1の方向に相対回転することが可能になる。
図7は、第2の方向に位相制御を行う位相制御モードで動作するプラネタリアクチュエータ100を示す。図7の矢印によって示されているように、第1のリングギア200は、第2の方向(例えば図7では時計回り)に第2のリングギア206に対して選択的に相対回転することができる。第2のリングギア206に対する第1のリングギア200の相対回転を容易にするために、回転アクチュエータ313に回転結合された入力軸315(図1参照)を、第2の方向とは反対の第1の方向(例えば図7では反時計回り)に回転させることができる。入力軸315が第1の方向に回転することにより、第1のサンギア202が第1の方向に回転する。第1のサンギア202が第1の方向に回転することによって第1のプラネットギアセット222のプラネットギア228が第2の方向に回転し、このプラネットギア228の回転により第1のリングギア200が第2の方向に回転する。第2のサンギア208が相対回転不能となっていることにより、上述の第1のサンギア202の選択的な回転、ひいては第1のリングギア200の選択的な回転によって、第1のリングギア200が第2のリングギア206に対して第2の方向に相対回転することが可能になる。
本願明細書に記載されるように、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の相対回転の量は、入力軸315と第1のリングギア200との間の既知のギア比によって求めることができる。図6~7は、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の相対回転を示しているが、適用時には、第1のリングギア200と第2のリングギア206自体を同位相に調整しつつ回転させることができ、又は相対回転を生じさせつつ回転させることができることが明らかである。さらに、プラネタリアクチュエータ100の設計により、第1のリングギア200(及び第1のリングギア200に回転結合された任意の他の回転要素)と第2のリングギア206(及び第2のリングギア206に回転結合された任意の他の回転要素)との間の360度の周回遅れの相対回転も可能になる。
一般に、プラネタリアクチュエータ100の設計及び具現化に必要なのは、入力信号(すなわち、回転アクチュエータ313の入力軸315から提供される入力トルク/入力速度/入力変位)が常時第1のリングギア200及び/又は第2のリングギア206のいずれかを回転させることではなく、相対回転が必要な場合に入力信号が回転させることだけである。定常動作のとき、相対回転が必要でない場合には、入力軸315は回転不能(例えば静止状態)とすることができる。位相変化(すなわち相対回転)の際には、入力軸315は、第1のリングギア200又は第2のリングギア206のいずれかと同じ速度で回転する必要はない。例えば、入力軸315は、所望の相対角の変化率で回転するだけでよく、これにより、第1のサンギア202も所望の相対角の変化率で回転するだけでよいこととすることができる。このようにして、例えば、位相制御モードのときの入力軸315の回転(すなわち速度/変位)は、第1のリングギア200と第2のリングギア206との間の所望の相対回転の大きさに比例することができる。このようにして、所望の相対回転を達成するために入力軸315を回転させるために必要な出力及び速度は、第1のリングギア200及び/又は第2のリングギア206の速度に依存しないことができる。さらに、入力軸315と第2のリングギア206との間にギア減速が存在する非限定的な例では、このギア減速により、所望の相対回転を達成するために必要とされるトルクの量を低減することができる。
一般に、プラネタリアクチュエータ100は、選択的で制御可能な相対回転が望まれる回転システムにおいて利用することができる。例えば、プラネタリアクチュエータ100は、機械的位相制御アセンブリにおいて具現化することができる。図8~9は、プラネタリアクチュエータ100を機械的位相制御アセンブリ300内に設置した回転位相制御システム10の非限定的な一例を示す。図中の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ300は、ギアハブ302(例えば第1の回転要素)と、クレードルロータ304(例えば第2の回転要素)と、ベアリングケージ又はスパイダーロータ308と、複数のロックアセンブリ310と、プラネタリアクチュエータ100と、ねじりばねアセンブリ400と、を備えることができる。プラネタリアクチュエータ100と、ねじりばねアセンブリ400と、ギアハブ302と、クレードルロータ304と、スパイダーロータ308と、複数のロックアセンブリ310とはそれぞれ、組み立てられたときに共通の中心軸Cを共有することができる。後述するように、ねじりばねアセンブリ400は、クレードルロータ304とギアハブ302との間にトルク負荷を印加するように構成することができる。ねじりばねアセンブリ400は、ねじりばね402と、ばねスリーブ403とを備えることができる。図中の非限定的な例では、ばねスリーブ403は、第1のばねスリーブ404と第2のばねスリーブ406とを備えた二部品構成のばねスリーブとして構成されている。後述するように、ねじりばねアセンブリ400は、第2のリングギア206をギアハブ302に対して回転不能とするように構成することができる。ねじりばねアセンブリは、ねじりばね402の一端をギアハブ302に取り付けるように構成することもできる。
図中の非限定的な例では、スパイダーロータ308(複数のロックアセンブリ310を含む)は、クレードルロータとギアハブとの間に放射状に配置することができる。ねじりばねアセンブリのばねスリーブ403はギアハブ302に結合されて、ギアハブ302から軸方向に離れていく方向に延在することができる。図示の例では、ねじりばね402のコイル部は、ばねスリーブ403の外側の周囲に周方向に延在することができる。図示されているように、ばねスリーブ403は内部キャビティ418(図11参照)を画定することができ、プラネタリアクチュエータ100はこの内部キャビティ418に入れられることができる。図中の非限定的な例では、回転アクチュエータ313の少なくとも一部をばねスリーブ403の内部キャビティ418に入れることもできる。
図中の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ300は回転アクチュエータ313を備えることができる。一部の非限定的な例では、回転アクチュエータ313はステータと、ステータに電磁的に結合されたロータ(不図示)とを備えることができる。回転アクチュエータ313に電流を印加して、回転アクチュエータ313により、所望の方向及び所望の力の回転出力を入力軸315に生じさせることができる。一部の非限定的な実施例では、回転アクチュエータ313はブラシレスDC(BLDC)モータの形態とすることができる。図中の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ300は1つ又は複数のベアリング317を備えることができ、このベアリング317は、機械的位相制御アセンブリの内部構成要素を回転支持し、又は、機械的位相制御アセンブリ300をエンジンの構成要素に対して相対回転支持するように構成されたものである。例えば、エンジンブロック又は他のエンジン部品に含まれ又はその一部として形成された構造物又はブラケットを介して行われる。図中の非限定的な例では、ギアハブ302とクレードルロータ304との間にベアリング317が、クレードルロータから延在する軸に沿って配置されている。ギアハブ302の外側に沿って、追加のベアリング317が配置されている。
図9~11を具体的に参照すると、ギアハブ302は、その外径上に配置された第1のギア311を含むことができ、この第1のギア311は、例えばベルト、チェーン又は歯車機構アセンブリを介して、内燃機関のクランク軸12(図1参照)と回転伝動することができる(例えば連結される)。ギアハブ302は、内面316及び前面320を有することができる。ギアハブ302の前面320は、例えば、ばねスリーブ403(例えば第1のばねスリーブ404)をギアハブ302と共に回動するようにギアハブ302に固定して取り付けるための締結要素を受けるように構成された複数の開口322を含むことができる。一部の非限定的な例では、ギアハブ302は、軸方向に窪んだ複数の周方向スロット(不図示)を有することができ、これらの周方向スロットは、第1のばねスリーブの外周から突出する径方向突起(不図示)を受けるように構成されている。いずれの場合においても、第1のばねスリーブ404は、ギアハブ302と共に回転するように(例えば相対回転不能となるように)ギアハブ302に結合することができる。また、ギアハブ302は、軸部325から径方向外側に延びる弧状の凹部323を有することができる(図10参照)。
図9及び図11を具体的に参照すると、第1のばねスリーブ404はフランジ412及び環状突起414を有することができる。上述のように、フランジ412は複数の開口416を有することができる。これら複数の各開口416は、ギアハブ302の前面320の各対応する開口322とアライメントするように配置することができる。環状突起414は、フランジ412から軸方向に離れる方向に延在して内部キャビティ418を画定することができる。内部キャビティ418は、プラネタリアクチュエータ100の少なくとも一部を軸方向に受けるような寸法とすることができる。内部キャビティ418は、当該内部キャビティ418に沿って軸方向に延在する切欠き420を有することができ、これにより、内部キャビティ418の長さに沿った開口を形成することができる。切欠き420は、ねじりばね402の第1のコイル端(不図示)を通す構成となっている。
第1のばねスリーブ404及び第2のばねスリーブ406は、その軸方向の一端にキャスタレーション部を含むことができる。このキャスタレーション部は、複数の軸方向突起422と複数の軸方向凹部424とを含むことができる。第1のばねスリーブ404の軸方向突起422は第2のばねスリーブ406の軸方向凹部424と係合することにより、第2のばねスリーブ406に対する第1のばねスリーブ404の回転をロックして第2のばねスリーブ406と共に回転させるように構成されている。第2のばねスリーブ406の軸方向突起422も同様に、第1のばねスリーブ404の軸方向凹部424と係合するように構成されている。組み立てる際には、第1のばねスリーブ404及び第2のばねスリーブ406の各々に設けられた軸方向突起422のスナップリング溝にスナップリング426を入れることにより、第1のばねスリーブ404を第2のばねスリーブ406に結合することができる。第2のばねスリーブ406におけるキャスタレーション部とは反対側の軸方向の一端には、スプラインとして形成された複数の第1のスロット428を設けることができる。また、第2のばねスリーブ406は、当該第2のばねスリーブの内部キャビティ431内にタブ凹部429(図8参照)を有することができる。タブ凹部429は、第2のリングギア206のタブ250(図8参照)を受けることにより、第2のばねスリーブ406に対して第2のリングギア206を相対回転不能とし、これにより第2のリングギア206が第1のばねスリーブ404及びギアハブ302に対して相対回転不能となってこれらと共に回転するように構成されている。
図11~13を参照すると、ねじりばねアセンブリ400は、ばねスリーブ403(例えば、第2のばねスリーブ406)に結合されたばね座430を有することもできる。ばね座430は、ねじりばね402の第2のコイル端432(図13参照)を固定して係合するように構成することができる。例えば、ばね座430は、ばね座430から軸方向に離れる方向に第1のばねスリーブ404のフランジ412に向かって突出する第1のばね支持部433を有することができる。また、第1のばね支持部は、ねじりばね402から径方向外側に配置される。第1のばね支持部433は、ねじりばね402の第2のコイル端432と係合し、ねじりばね402のコイル巻き状態が解かれて無負荷状態(例えばバイアスの無い状態又は無付勢状態)になるのを防止するように構成されている。また、ばね座430は、第2のばね支持部437及び第3のばね支持部439を有することができる。図中の非限定的な例では、第2及び第3のばね支持部437,439は、ばね座430から軸方向に離れる方向に第1のばねスリーブ404のフランジ412に向かって突出している。第2のばね支持部437は、ねじりばね402のコイル部の外側を支持するために、ねじりばね402から径方向外側に配置される。第3のばね支持部439は、ねじりばね402のコイル部の内側を支持するために、ねじりばね402から径方向内側に配置されている。
図中の非限定的な例では、第1、第2、及び第3のばね支持部433,437及び439は、ばね座430に沿って周方向に延在して、ねじりばね402のコイル部の曲率半径と同じ中心を共有する曲率半径の弧状の突起となっている。すなわち、第1、第2、及び第3のばね支持部433、437、439によって形成される弧状の突起は、ねじりばね402のコイル部の円形の輪郭と同心、ということである。第1、第2、及び第3のばね支持部433、437、439は、これらが合わさってねじりばね402における応力集中部を防止し、ねじりばね402に嵌合する構成要素間の側方荷重を防止するように構成することができる。例えば、第1、第2、及び第3のばね支持部433、437、439は、ねじりばね402の内側部分及び外側部分と係合して、側方荷重を防止することができる。
ばね座430は、当該ばね座430を第2のばねスリーブに対して相対回転不能とし、第2のばねスリーブと共に回転させることができるように、第2のばねスリーブ406の第1のスロット428と相補的なスプラインとして形成された複数の第2のスロット434を有することができる。組み立ての際には、第2のばねスリーブ406の第1のスロット428に隣接するスナップリング溝にスナップリング436を入れることにより、第2のばねスリーブ406に対するばね座430の軸方向の変位を防止することができる。
本願明細書で前述したように、ねじりばね402の第1のコイル端401はクレードルロータ304に結合することができ、ねじりばねの第2のコイル端432はばね座430に結合することができ、これにより、第1及び第2のばねスリーブ404,406を介してギアハブ302に結合することができる。この構成では、ねじりばね402によってギアハブ302とクレードルロータ304との間にトルク負荷を印加することができる。
図14を参照すると、クレードルロータ304は、第2のギア332を介して内燃機関の偏心軸14(図1参照)と回転伝動する(例えば連結される)ように構成することができる。クレードルロータ304は、当該クレードルロータ304の一端から軸方向に離れる方向に延在するスプライン軸331を備えている。第2のギア332はスプライン孔333を有し、このスプライン孔333はスプライン軸331と相補的な形状であり、スプライン軸331を受けて第2のギア332に結合するように構成されている。図中の非限定的な例では、第2のギア332は、クレードルロータ304と共に回転するようにクレードルロータ304に対して回転不能とすることができる。また、クレードルロータ304は、ねじりばね402の一端を受けて係合する少なくとも1つの軸方向突起337を有することもできる。図中の非限定的な例では、クレードルロータ304は、スプライン軸331とは反対側の端部から軸方向に離れる方向に延在する2つの軸方向突起337を有する。図中の非限定的な例では、軸方向突起337は、ばねスリーブ403によって形成された内部キャビティ418内へ延在して、ねじりばね402と係合する(図8参照)。軸方向突起337はクレードルロータ304の周囲に周方向に等間隔で配置される(例えば、周方向に180°離隔している)。他の非限定的な例では、クレードルロータ304の周囲に周方向に配置される軸方向突起337を2つよりも多く又は少なくすることができる。各軸方向突起337は、軸方向突起337内に軸方向に延在するばね凹部339を含む。ばね凹部339は、ねじりばね402がクレードルロータ304にトルクを加えることができるように、ねじりばね402の第1のコイル端401(図8参照)を受けるように形成されている。
第2のギア332は、第2のギア332から軸方向に離れる方向に延在する弧状の突起335を有することができる。弧状突起の個数335は、ギアハブ302の弧状凹部323(図10参照)の数に相当することができる。組み立ての際には(図8参照)、クレードルロータ304のスプライン軸331をギアハブ302の軸部325の内側に入れられて軸部325に挿通されることができる。その後、第2のギア332の弧状突起335がギアハブ302の弧状凹部323に受け入れられるように、第2のギア332をスプライン軸331上に取り付けることができる。クレードルロータ304に結合された第2のギア332の弧状突起335はギアハブ302の弧状凹部323の端部と係合して、(偏心軸14と回転伝動する)クレードルロータ304と(クランク軸12と回転伝動する)ギアハブ302(図1参照)との間の全体的な相対回転を機械的に制限することができる。これにより、ギアハブ302の弧状凹部323の端部が、クレードルロータ304に結合された第2のギア332の弧状突起に対して回転当接ストッパとして機能し得るので、偏心軸とクランク軸との間に生じ得る相対回転の量を機械的に制限することができる。機械的位相制御アセンブリ300が故障した場合、又は回転アクチュエータが故障した場合には、回転位相制御システム10に深刻な故障が生じるのを防止することができ、それによって内燃機関の深刻な故障を防止することができる。
図14を参照すると、一般には、クレードルロータ304の外面336をロックアセンブリ310と係合させることができる。この他にも、ギアハブ302と、クレードルロータ304と、偏心軸14と、クランク軸12との相対的結合のための代替構成が可能であることが明らかである。図15~16に示すように、スパイダーロータ308は、第1のケージリング340と第2のケージリング342との間に軸方向に延在する複数のアーム338を備えることができる。複数のロックアセンブリ310のうちの1つは、周方向に隣り合う各対のアーム338の間に周方向に配置することができる。スパイダーロータ308は、当該スパイダーロータ308の第1の面346から軸方向に離れる方向に延在する複数の軸方向突起344を有することができる。軸方向突起344の数は、スパイダーロータ308とプラネタリアクチュエータ100の第1のリングギア200との間に配置された結合リング360(図17参照)内のスロットの数に相当することができる。図中の非限定的な例では、スパイダーロータ308は2つの軸方向突起344を有することができる。他の非限定的な例では、スパイダーロータ308は、2つよりも多い又は少ない突起344を含んでもよい。また、スパイダーロータ308は、第1の面346を通って延びる開口部347を含むことができる。開口部347は、クレードルロータ304から延びる軸方向突起337を受け入れるように構成される。
各ロックアセンブリ310は、第1のロック部350と、第2のロック部352と、これらに対応するロック部支持体353とを有することができ、これら各ロック部支持体353はそれぞれ、第1のロック部350及び第2のロック部352のうちの対応する1つと係合することができる。第1のロック部350及び第2のロック部352は、1つ又は複数の付勢部材358によって互いに離れていく方向に押し広げることができる。各付勢部材358は、それぞれ対応する一対のロック部支持体353間に配置してこれらと係合することができ、これにより、第1のロック部350と第2のロック部352とを互いに離れていく方向に押し広げることができる。図中の各ロックアセンブリ310はそれぞれ、ばねの形態の1つの付勢部材358を有することができる。他の実施形態では、ロックアセンブリ310はそれぞれ複数の付勢部材358を有することができ、及び/又は付勢部材358は、第1のロック部350と第2のロック部352とを押し広げることができる任意の実施可能な機械的連結部の形態とすることができる。
図中の非限定的な例では、第1のロック部350及び第2のロック部352は、丸いベアリングローラの形態とすることができる。第1のロック部350及び第2のロック部352は、ギアハブ302とクレードルロータ304との間で選択的にロック及びロック解除を行うことができる任意の形状とすることができることが明らかである。また、ベアリング以外の第1のロック部350及び第2のロック部352についても、他に代替機構が可能であることも明らかである。例えば、第1のロック部350及び第2のロック部352は楔形状とすることができる。
図9及び図17~図18を具体的に参照すると、機械的位相制御アセンブリ300とプラネタリアクチュエータ100との間に結合アセンブリ330を配置することができる。結合アセンブリ330は、結合リング360と、1つ又は複数のコンプライアンス部材348と、1つ又は複数のワッシャ349と、スナップリング351と、を有することができる。組み立ての際には(図18参照)、コンプライアンス部材348及びワッシャ349は、第1のリングギア200のキャビティ215に入れられる。コンプライアンス部材が第1のリングギア200に対して軸方向に相対変位するのを防止するため、コンプライアンス部材348及びワッシャ349はスナップリング351によって第1のリングギア200のキャビティ215内に固定される。スナップリング351は、キャビティ215の内側に沿ったスナップリング溝218に挿入されることにより、第1のリングギア200に固定することができる(図3参照)。結合リング360は、第1のリングギア200を受容できる寸法となっている。
図中の非限定的な例では、コンプライアンス部材348は第1のリングギア200と結合リング360との間に結合することができ、これにより、第1のリングギア200の回転が結合リング360に回転伝達されるようにすることができる。結合リング360は、この回転を第1のリングギア200からスパイダーロータ308に伝達するように構成されている。以下に説明するように、第1のリングギア200と結合リング360との間の回転の伝達は、機械的位相制御アセンブリ300がロック状態にある間に回転アクチュエータ313(図8)がプラネタリアクチュエータ100に入力することを可能にしながら、コンプライアンス部材348によって行うことができる。
結合リング360は、中空コア361を有する環状スリーブを形成することができる。結合リング360は、第1のセットの軸方向に凹んだスロット362と、第2のセットの軸方向に凹んだスロット364とを有する。スロット362の第1のセットの数は、第1のリングギア200のスロット216の数に相当することができる。図中の非限定的な例では、スロット362の第1のセットは、結合リング360の外面366の周囲に周方向に等間隔で配置された(例えば周方向に180°離隔した)2つのスロットを含む。他の非限定的な例では、スロット362の第1のセットは、結合リング360の外面366の周囲に周方向に任意の増分で配置された2つよりも多い又は少ないスロット362を含むことができ、これにより、スロット362が第1のリングギア200のスロット216と周方向にアライメントするようにすることができる。
組み立ての際には(図18参照)、コンプライアンス部材348のコイル部368を第1のリングギア200のキャビティ215内に入れることができる。コンプライアンス部材348は、その第1端370及び第2端372がコイル部368から径方向外側に向かって突出して、第1のリングギア200のスロット216と結合リング360のスロット362の第1のセットとを貫通することができる。一部の非限定的な例では、コンプライアンス部材348は、自由状態のときにその第1端370及び第2端372が周方向に互いに離れる方向に延在するように、予め付勢されることができる。例えば、コンプライアンス部材348の第1端370及び第2端372は互いに離れる方向に延在して、これら両端間に周方向の間隙を形成することができ、この間隙は自由状態のときには、組立状態又は圧縮状態のときより大きくすることができる。
組み立ての際(図18を参照)、及び、相対回転が望まれないときの定常動作の際には、コンプライアンス部材348の第1端370及び第2端372は、第1のリングギア200のスロット216のエッジと、結合リング360の第1のセットのスロット362のエッジとに係合して、第1のリングギア200と結合リング360との間の回転アライメントを維持する。図中の非限定的な例では、第1のセットのスロット362及びスロット216によって形成される開口が同じ周方向幅となるように、第1のリングギア200のスロット216のエッジと、結合リング360の第1のセットのスロット362のエッジとは、同じ周方向間隙を形成することができる。
引き続き図17~18を参照すると、スロット364の第2のセットの数は、スパイダーロータ308内の軸方向突起344の数と対応し得る。図中の非限定的な例では、スロット364の第2のセットは、結合リング360の外面366の周囲に周方向に等間隔で配置された(例えば周方向に180°離隔した)2つのスロットを含む。他の非限定的な例では、スロット364の第2のセットは、結合リング360の外面366の周囲に周方向に任意の増分で配置された2つよりも多い又は少ないスロット364を含むことができ、これにより、スロット362がスパイダーロータ308の軸方向突起344と周方向にアライメントするようにすることができる。
組み立ての際には(図18を参照)、スパイダーロータ308の軸方向突起344は結合リング360の第2のセットのスロット364と係合することにより、スパイダーロータ308と結合リング360との間の回転アライメントを維持する。すなわち、結合リング360とスパイダーロータ308との相互回転はロックされている。図中の非限定的な例では、軸方向突起344は、結合リング360の第2のセットのスロット364に対して相補的な形状となっている。図18を具体的に参照すると、機械的位相制御アセンブリ300とプラネタリアクチュエータ100との間に結合アセンブリ330が配置されていることにより、第1のリングギア200はコンプライアンス部材348を介して結合リング360に回転結合することができ、結合リング360は、スパイダーロータ308に回転結合することができるが、第1のリングギア200はスパイダーロータ308と直接接触しないことが可能である。従って、コンプライアンス部材348を用いることにより、回転アクチュエータ313がプラネタリアクチュエータ100を駆動することによって、スパイダーロータ308と第1のリングギア200との間の回転変位又は角変位を生じさせることができる。
図18~19を参照すると、プラネタリアクチュエータ100がスパイダーロータ308に取り付けられると、各コンプライアンス部材348の端部370、372は径方向外側に延在し、第1のリングギア200に形成された凹みスロット216及び結合リング360に形成された第1のセットのスロット362のうち対応する1つと係合する。コンプライアンス部材348が取り付けられた状態では、第1のリングギア200の凹みスロット216及び結合リング360の第1のセットのスロット362の各スロットの周方向幅は、コンプライアンス部材348の端部370,372が自由状態のときよりも互いに向かって付勢されることを確実にする幅とすることができる。従って、コンプライアンス部材348の事前付勢により、スパイダーロータ308が第1のリングギア200と回転アライメントするまで(すなわち、第1のリングギア200に対して相対回転しなくなるまで)、第1のリングギア200とスパイダーロータ308との間の相対回転により生じる力がスパイダーロータ308において維持されることを保証することができる。
回転アクチュエータ313は第1のサンギア202に回転結合されて、第1のサンギア202の回転を制御することができ、この第1のサンギア202は第1のリングギア200の回転を制御する。一般に、第2のリングギア206は、ギアハブ302と共に回転するように、ねじりばねアセンブリ400のばねスリーブ403を介してギアハブ302に回転結合されるように構成することができる。図中の非限定的な例では、第2のリングギア206は第2のばねスリーブ406に固定することができ、第2のばねスリーブ406は、ギアハブ302と共に回転するように第1のばねスリーブ404を介してギアハブ302に回転結合されている。
動作時には、回転アクチュエータ313は、第1のリングギア200の既知の回転変位を達成するように第1のサンギア202に回転変位/トルクを加える構成とすることができ、この既知の回転変位は、スパイダーロータ308の既知の所望の回転変位に相当する。回転アクチュエータ313は、内燃機関のエンジン制御モジュール(ECM)によって制御され、給電を受けることができる。
動作中、ギアハブ302をVCR内燃機関のクランク軸12に結合することができる。VCR内燃機関の偏心軸14は、クレードルロータ304に結合することができる。これにより、偏心軸14とクランク軸12とは共に回転するように機械的位相制御アセンブリ300を介して結合することができ、その際には、偏心軸14はクランク軸12の半分の速度で回転する。偏心軸14は、エンジン動作中に内燃機関の圧縮比を変化させるように構成することができる。エンジン動作中には、機械的位相制御アセンブリ300を使用して、クランク軸12に対する偏心軸14の回転関係を変更することができ、これにより圧縮比が変化する。この圧縮比の変化は通常、ピストンと、クランク軸12と、偏心軸14(すなわち、VCR)との間のマルチリンク構成体を介して行われる。偏心軸14とクランク軸12との間の回転関係を変化させることにより、所与の動作条件におけるエンジン排出量を低減し、及び/又はエンジンの効率/性能を向上させることができる。
エンジンが動作しているときに偏心軸の回転調整が望まれない場合には、機械的位相制御アセンブリ300はギアハブ302とクレードルロータ304との間の回転関係をロックすることができ、これにより偏心軸とクランク軸との間の回転関係をロックすることができる。このロック状態(例えば、図19-20参照)では、回転アクチュエータ313は、プラネタリアクチュエータ100のために入力軸315に回転出力を供給せず、第1のリングギア200と第2のリングギア206とが、ギアハブ302と同調して回転する。従って、スパイダーロータ308はギアハブ302に対して相対回転せず、各ロックアセンブリ310の第1のロック部350及び第2のロック部352が付勢部材358を介して完全に互いに離れることができる。第1及び第2のロック部350及び352が互いに完全に離れた状態で、第1のロック部350及び第2のロック部352は、ギアハブ302の内面359及びクレードルロータ304の外面336のうちの少なくとも1つと係合することができ、これにより第1のロック部350及び第2のロック部352はクレードルロータ304とギアハブ302との間に挟まれて楔止め状態となる(図19参照)。この楔止め状態により、ギアハブ302に対するクレードルロータ304の相対的な動きをロック又は制限することができる(すなわち、ギアハブ302に対してクレードルロータ304の回転位置がロックされる)。従って、機械的位相制御アセンブリ300がロック状態にあるときには、偏心軸14とクランク軸12との間の回転関係は変化しない。
クランク軸に対して偏心軸を進角又は遅角させたい場合、回転アクチュエータ313はECMにより、入力軸315を通してプラネタリアクチュエータ100に回転変位/トルクを与えるよう指令を受けることができる。入力軸315の回転の方向及び大きさは、第2のリングギア206に対する第1のリングギア200の相対回転と相関関係にあることができる。第2のリングギア206はばねスリーブ403を介してギアハブ302に回転結合されているので、第1のリングギア200をギアハブ302に対して相対回転させることができる。第1のリングギア200に加わった相対回転の所望の大きさ及び方向は、コンプライアンス部材348及び結合リング360によってスパイダーロータ308に回転伝達することができる。例えば、第1のリングギア200が回転すると、第1のリングギア200のスロット216は、(相対回転の向きに応じて)コンプライアンス部材348の端部370,372のうち1つと係合して、これを周方向に付勢する。コンプライアンス部材348のこの周方向バイアスにより、コンプライアンス部材348は、結合リング360の第1のセットのスロット362上に対応する力を加え、次いで、その力を第2のセットのスロット364を介してスパイダーロータ308の突起344上に伝達する。スパイダーロータ308に加えられた力は、クレードルロータ304がギアハブ302に対する所望の相対回転位置に達するまでコンプライアンス部材348によりスパイダーロータ308に維持されることとなり、この所望の相対回転位置は、回転アクチュエータ313によって与えられる回転入力変位/力によって決定される。換言すると、クレードルロータ304がスパイダーロータ308と回転アライメントして機械的位相制御アセンブリ300がロック状態に戻るまで、スパイダーロータ308に力が維持される、ということである。
またコンプライアンス部材348は、機械的位相制御アセンブリ300がロック状態にある間、回転アクチュエータ313(図8)がプラネタリアクチュエータ100に入力を供給することを可能にする。例えば、第1のリングギア200が(回転アクチュエータ313(図8)によって提供される回転入力によって)回転すると、第1のリングギア200のスロット216は(相対回転の方向に応じて)コンプライアンス部材348の端部370,372のうちの1つと係合し、周方向にバイアスする。コンプライアンス部材348のこの周方向バイアスにより、結合リング360は、第1のリングギア200が回転されている間はスパイダーロータ308に対して相対回転不能な状態に留まり、これは、機械的位相制御アセンブリ300がロックされている間に行うことができる。コンプライアンス部材348は結合リング360の第1のセットのスロット362にかかる力を維持し、機械的位相制御アセンブリ300がロック解除状態に入ると、クレードルロータ304がギアハブ302に対する所定の相対回転位置に達するまで、コンプライアンス部材348は第2のセットのスロット364を介して、上記の力をスパイダーロータ308の突起344に伝達する。
コンプライアンス部材348によってスパイダーロータ308に加えられた回転力はスパイダーロータ308のアーム338を周方向に変位させて、第1のロック部350又は第2のロック部352のうちいずれか一方をロック位置又は楔止め位置から離脱させると共に、第1のロック部350又は第2のロック部352のうち他方をロック位置に留めることができる。例えば、スパイダーロータ308はロック状態から(図19において)時計回りに所望の回転量だけ回転することができる。スパイダーロータ308のこの回転により、第1のロック部350を時計回りに回転変位させて、第1のロック部350がギアハブ302の内面359やクレードルロータ304の外面336との係合状態から変位したロック解除位置にすることができる。他方、第2のロック部352は、回転変位せずにロック位置に留まることができる。
第1のロック部350のロック解除により、クレードルロータ304は、スパイダーロータ308が回転した方向と同じ回転方向に回転することができる。それと同時に、第2のロック部352がロック位置にあることにより、スパイダーロータ308が回転した方向とは反対方向にクレードルロータ304が回転するのを防止することができる。このようにして、スパイダーロータ308が時計回り308に付勢されている上記の非限定的な例では、第1のロック部350がロック解除位置にあることによりクレードルロータ304が時計回りに回転できると同時に、第2のロック部352がロック位置にあることによりクレードルロータ304が反時計回りに回転するのを防止することができる。これにより、機械的位相制御アセンブリ300は、第1のリングギア200によってスパイダーロータ308に与えられた所望の相対回転入力と同一方向に生じる偏心軸トルクパルスから、エネルギーを回収することができる。よって、プラネタリアクチュエータ100は、回転アクチュエータ313から回転入力を受け取り、これに応じて、クレードルロータ304とギアハブ302との間の相対回転を選択的にロック/ロック解除するための出力をスパイダーロータ308に供給する構成となっている。
例えば、第1のリングギア200がスパイダーロータ308を時計回りに回転付勢する非限定的な例では、偏心軸トルクパルスが時計回りの方向にクレードルロータ304に印加されるので、クレードルロータ304及び第2のロック部352は時計回りの方向に回転変位することができる。時計回りの偏心軸トルクパルスが消失すると、クレードルロータ304は、ギアハブ302に対して新しい相対回転位置に位置することができ、この新しい相対回転位置は、時計回りの方向の次の偏心軸トルクパルスがクレードルロータ304に印加されるまで、第2のロック部352が再度クレードルロータ304をロックする位置である。この処理は、クレードルロータ304が回転変位する場合、第1のロック部350がロック位置に戻ることができるよう程度に十分にクレードルロータ304が十分に回転変位するまで継続することができる。これが行われると、第1のロック部350及び第2のロック部352は両方ともロック位置に来ることができ、また、機械的位相制御アセンブリ300はロック状態に戻ることができる。その後、スパイダーロータ308は、(クランク軸に対する偏心軸の相対的な回転関係を変更するように再度指令を受けるまで)自己の回転位置を維持することにより、第1のロック部350及び第2のロック部352がロック状態に留まることを保証し、これにより、ギアハブ302に対するクレードルロータ304の相対角度位置をロックすることができる。スパイダーロータ308の反時計回りの回転については、上述の処理を逆にしたものが行われることが明らかである。
プラネタリアクチュエータ100を通してスパイダーロータ308に加えられる所与の回転入力変位/力に応じて、クレードルロータ304はスパイダーロータ308に回転追従し、場合によっては、偏心軸トルクパルスの大きさに依存せずにスパイダーロータ308の所定の最終回転位置に到達する。すなわち、コンプライアンス部材348は、コンプライアンス部材348がスパイダーロータ308を付勢しなくなって、クレードルロータ304がスパイダーロータ308に回転追従してギアハブ302に対する所望の相対回転位置に達するまで、回転アクチュエータ313からプラネタリアクチュエータ100を介してスパイダーロータ308に与えられた入力変位/力を維持するすることとなる。
この位相制御処理の間に行われるギアハブ302に対するクレードルロータ304の回転により、偏心軸14とギアハブ302との間の回転関係を変化させることができ、これは同時に、偏心軸14とクランク軸12との間の回転関係も変化させる。上述のように、回転アクチュエータ313によって与えられる所与の回転入力変位/トルクに対してスパイダーロータ308により達成される回転量は、第1のサンギア202と第1のリングギア200との間の歯車機構と、それらの間の合成ギア比とに基づいて知ることができる。さらに、機械的位相制御アセンブリ300の設計により、クレードルロータ304が、スパイダーロータ308と同一方向にしか回転できないようにすることもできる。従ってエンジン動作時には、機械的位相制御アセンブリ300は、エンジン速度と、返信軸トルクパルスの方向及び大きさとに依存せずに、偏心軸とクランク軸との間の回転関係を変更することができる。また、クレードルロータ304はスパイダーロータ308に追従して所望の位置に達するように制約を受けるので、機械的位相制御アセンブリ300は、所望の回転位置(すなわち、偏心軸とクランク軸との間の所望の回転差)に到達するために連続的にサイクル動作する必要はない。
一般に、プラネタリアクチュエータ100の設計及び具現化に必要なのは、回転アクチュエータ313が常時、偏心軸及びギアハブ302と同一速度で回転することではなく、相対回転を行いたいときに回転するための入力信号(すなわち、入力軸315から提供されて回転アクチュエータ313から第1のサンギア202に提供される入力トルク/変位)のみである。定常動作の際には、相対回転を行いたくないときには、回転アクチュエータ313を相対回転不能とし、それによって入力軸315を相対回転不能とする(例えば、静止状態とする)ことができる。位相の変化(すなわち、相対回転)の際には、回転アクチュエータ313ひいては入力軸315は、偏心軸とギアハブ302とを同じ速度で回転させる必要はない。例えば、回転アクチュエータ313によって入力軸315に供給され、ひいては第1のサンギア202に供給される出力は、所望の相対角の変化率で回転するだけでよいこととすることができる。このようにして、例えば、位相制御中の入力軸315の回転(すなわち、速度/変位)は、クレードルロータ304とギアハブ302との間で所望される相対回転の大きさに比例することができる。このようにして、回転アクチュエータ313が入力軸315を回転させて所望の相対回転を達成するために必要とされる出力及び速度は、エンジン速度に依存しないことが可能である。すなわち、回転アクチュエータ313によって出力される出力及び速度は、エンジン速度/偏心軸速度の変化に起因して変化しないことが可能である。さらに、入力軸315と第2のリングギア206との間にギア減速が存在する非限定的な例では、このギア減速により、所望の相対回転を達成するために回転アクチュエータ313が出力しなければならないトルクの量を低減することができる。
図20は、位相制御システム1000の別の非限定的な例を示す。位相制御システム1000は位相制御システム10に類似する構成となっており、1000年代に索引付けられた同一の参照番号を用いて識別される類似の要素には、明細書に記載され又は図面から明らかな点を除いて、1000と同一符号とを足したものを符号として付している(例えば、ギアハブ1302にはギアハブ302が関連する)。
例えば、位相制御システム1000は位相制御システム10と同様に、機械的位相制御アセンブリ1300に設置されたプラネタリアクチュエータ1100を備えている。図示の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ1300は、ギアハブ1302(例えば、第1の回転要素)と、クレードルロータ1304(例えば、第2の回転要素)と、スパイダーロータ1308と、複数のロックアセンブリ1310と、プラネタリアクチュエータ1100と、ねじりばねアセンブリ1400と、を備えている。プラネタリアクチュエータ1100と、ねじりばねアセンブリ1400と、ギアハブ1302と、クレードルロータ1304と、スパイダーロータ1308と、複数のロックアセンブリ1310とはそれぞれ、組み立てられたときに共通の中心軸Cを共有することができる。ねじりばねアセンブリ1400は、クレードルロータ1304とギアハブ1302との間にトルク負荷を印加するように構成することができる。ねじりばねアセンブリ1400は、ねじりばね1402と、ばねスリーブ1403とを備えることができる。ねじりばねアセンブリ1400は、第2のリングギア1206をギアハブ1302に対して回転不能とするように構成することができる。 ねじりばねアセンブリは、ばねスリーブ1403と、当該ばねスリーブ1402に結合されたばね座1430とを介して、ねじりばね1402の一端をギアハブ1302に取り付けるように構成することもできる。
図中の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ1300は1つ又は複数のベアリング1317を備えることができ、このベアリング1317は、機械的位相制御アセンブリの内部構成要素を回転支持し、又は、機械的位相制御アセンブリ1300をエンジンの構成要素に対して相対回転支持するように構成されたものである。図中の非限定的な例では、ベアリング1317は、クレードルロータ1304から延在する軸に沿って配置されている。一部の非限定的な例では、特に第1のギア1311又は第2のギア1332がヘリカルギアとして形成されている場合、第1のギア1311及び/又は第2のギア1332の隣に1つ以上のスラストベアリング1317aを配置することができる。ギアハブ1302の外側に沿って、追加のベアリング1317が配置されている。
図21~22を参照すると、ばねスリーブ1403はシングルピース構成のばねスリーブとして構成されている。以下の図では、複数の側面の位相制御システム1000のサブアセンブリが図示されており、これらの構成要素の中には、説明されるべき図示された側面の明確性を向上させるために図示されていないもの(例えば、プラネタリアクチュエータ1100及び/又はギアハブ1302)があると解すべきである。
ばねスリーブ1403は、フランジ1412及び環状突起1414を備えることができる。環状突起1414は、フランジ1412から軸方向に離れる方向に延在して内部キャビティ1418を画定することができる。ばねスリーブ1403は、軸方向に環状突起1414の一部に沿って延在する1つ以上の切欠き1420a、1420bを有することができる。また、切欠き1420aは、環状突起1414の長さに沿って軸方向に延在するスロット1421を有することができ、このスロット1421は、切欠き1420aからばねスリーブ1403におけるフランジ1412とは反対側まで軸方向に延在する。切欠き1420aは、ねじりばね1402の第1のコイル端(不図示)を受けるように構成された開口を形成し、これによりねじりばね1402を組み立てることができる。切欠き1420a、1420bが合わさって、位相制御イベントからの回転中、軸方向突起1337がクレードルロータ304から延在するためのクリアランスを提供することができる。
ばねスリーブ1403は、ばねスリーブ1403のフランジ1412から軸方向に離れる方向に突出する第4のばね支持部1451を備えることができる。第4のばね支持部1451は、ねじりばね1402より径方向外側に配置される。図中の非限定的な例では、第4のばね支持部1451はばね座1430に沿って周方向に延在して、ねじりばね1402のコイル部の曲率半径と同じ中心を共有する曲率半径の弧状の突起を形成する。第4のばね支持部1451も第1、第2、及び第3のばね支持部1433,1437,1439と同様に、ねじりばね1402内の応力集中部を防止し、ねじりばね1402に嵌合する構成要素間の側方荷重を防止するように構成されてもよい。例えば第4のばね支持部1451は、ねじりばね1402の外側におけるばね座1430とは反対側の第1のコイル端に隣接する部分と係合することにより、側方荷重を防止することができる。
図中の非限定的な例では、ばねスリーブ1403は複数の第1のスロット1428を有することができ、ばねスリーブ1403に結合されたばね座1430は複数の第2のスロット1434を有することができ、これら第2のスロット1434は、第2のばねスリーブと共に回転させるためにばね座1430を第2のばねスリーブに対して相対回転不能とできるように、ばねスリーブ1403の第1のスロット1428と相補的となっている。図中の非限定的な例では、第2のスロット1434は、ばね座1430の第3のばね支持部1439を軸方向に貫通する。特に図22を参照すると、組み立ての際には、ばね座1430は、第1のスロット1428と第2のスロット1434とが合わさってキー1435を受ける1つのキー溝を形成するように、ばね座1430をばねスリーブ1403と回転アライメントして第1のスロット1428のうち少なくとも1つを第2のスロット1434のうち少なくとも1つとアライメントすることができる。キー1435は、ばねスリーブ1403に対してばね座1430を相対回転不能とするものである。ばね座1430に対するキー1435の軸方向の相対変位を防止するため、ばね座1430によって形成される開口内に環状リング1436を入れることができる。
図示のように、ねじりばね1402の第1のコイル端1401はクレードルロータ1304に結合されることができ、ねじりばねの第2のコイル端1432にはばね座1430が係合することができ、これによって、ばねスリーブ1403を介してギアハブ1302(図20参照)が係合することができる。この構成では、ねじりばね1402によってギアハブ1302とクレードルロータ1304との間にトルク負荷を印加することができる。
次に、図23~24を参照すると、機械的位相制御アセンブリ1300のスパイダーロータ1308は、第1のケージリング1340と第2のケージリング1342との間に軸方向に延在する複数のアーム1338を有することができ、複数のロックアセンブリ1310のうち1つは、周方向に隣接する各対のアーム1338の間に周方向に配置することができる。図中の非限定的な例では、スパイダーロータ1308は、当該スパイダーロータ1308内に一体に形成されたオイル通路1380を有することができる。オイル通路1380は入口1382でオイルを受け取って、このオイルを少なくとも1つの出口から機械的位相制御アセンブリ1300又はプラネタリアクチュエータ1100の構成要素の一方又は両方に分配するように構成されている。図中の非限定的な例では、オイル通路1380は、スパイダーロータ1308の第1の面1346から軸方向に離れる方向に延在する第1の出口1384を有し、プラネタリアクチュエータ1100の方を向いている(図20も参照)。また、オイル通路1380は第2の出口1386も有し、この第2の出口1386は、スパイダーロータ1308の第1の面1346に沿って形成されてスパイダーロータ1308より径方向外側の方を向いた導管によって画定されている。図中の非限定的な例では、第2の出口1386は、第1の出口1384に対して直交して配置されている。
また、スパイダーロータ1308は、当該スパイダーロータ1308の第1の面1346から軸方向に離れていく方向に延在する弧状突起1335を有することもできる。組み立ての際には(図24参照)、ばねスリーブ1403は、スパイダーロータ1308の弧状突起1335がばねスリーブ1403の開口部1420aに入るように、ギアハブ1302に装着されることができる。スパイダーロータ1308の弧状突起1335は、ばねスリーブの開口部1420aの端部と係合することにより、(偏心軸14と回転伝動する)クレードルロータ1304と(クランク軸12と回転伝動する)ギアハブ1302(図1参照)との間の全体的な相対回転を機械的に制限することができる。これにより、ばねスリーブ1403の開口部1420aの端部が、クレードルロータ1304に追従するスパイダーロータ1308の弧状突起1335に対して回転当接ストッパとして機能し得るので、偏心軸とクランク軸との間に生じ得る相対回転の量を機械的に制限することができる。
以下の動作説明では、回転位相制御システム10を参照する。なお、以下の説明は、回転位相制御システム1000にも適用されると解すべきである。ここで図25を参照すると、ねじりばね402,1402は、回転位相制御システム10,1000内部のオフセットトルクを加えるように構成することができることが分かる。具体的には、ギアハブ302とクレードルロータ304とにトルク差を適用することによって、ねじりばね402は、偏心軸からのトルクパルスによって生じる正味トルク、又は、偏心軸とクランク軸との間(すなわち、ギアハブ302の第1のギア311と、クレードルロータ304に取り付けられた第2のギア332との間)に生じる正味トルクをオフセットすることができる。例えば、偏心軸からのトルクパルスは、ギアハブ302とクレードルロータ304との間に第1の方向に印加される正味トルク(すなわち、正味の正のトルクパルス)を生じさせることができる。ねじりばね402は、第1の方向とは反対の第2の方向に、ギアハブ302とクレードルロータ304との間にトルク負荷(すなわち、負のトルク)を印加するように構成することができる。ねじりばね402によって送られたトルク負荷は、第2の方向におけるギアハブ302とクレードルロータ304との間の正味の正のトルクパルスをオフセットすることができる(例えば、図25においてパルス曲線の垂直方向シフトとして示されているように、偏心軸からのトルクパルスの垂直方向シフト又はオフセットとなる)。正又は負のトルクは、負荷事例を解析する見方に依存する相対的な用語であるから、「正」及び「負」との用語は入れ替え可能であると解すべきである。さらに、ねじりばねは、当該ねじりばねのトルクが偏心軸からのトルクパルスをオフセットするものであれば、任意の方向にトルクを与えるように構成又は設置できると解すべきである。
図20に図示されている非限定的な例のような一部の用途では、偏心軸からクレードルロータ304に印加されたトルクパルスは、クレードルロータ304とギアハブ302との間に正味ゼロ又は二方向のトルクパルスを生じさせないことがある。また一部の事例では、このことによって、機械的位相制御アセンブリが二方向ロック機能を果たすことが妨げられることがあり得る。というのも、ロックアセンブリ310の「楔止め」作用を利用してクレードルロータ304をギアハブ302に対してより効果的にロックするためには、二方向にトルクパルス(例えば、正味トルク)を印加しなければならない(すなわち、図25のy軸上の正負がゼロ交差しなければならない)からである。
図25に示されるように、ねじりばね402の構成体は、機械的位相制御アセンブリ300内部のオフセットルクを印加することができる。ねじりばね402によって印加されるこのトルク負荷により、ギアハブ302とクレードルロータ304との間にトルク負荷が常時印加され、これにより偏心軸からのトルクパルスがオフセットする。図中の非限定的な例では、ねじりばね402によって印加されるトルク負荷は一方向である。ねじりばね402によって印加されたオフセットトルク負荷は、機械的位相制御アセンブリ300が受ける正味トルクが二方向(すなわち、図25のy軸上でゼロ交差する)となる(すなわち、図25のy軸上でゼロ交差する)ように、機械的位相制御アセンブリ300が受ける正味のトルク負荷(すなわち、偏心軸トルクパルスを含む)をオフセットすることができる。このようにして、ねじりばね402により、ロックアセンブリ310の「楔止め」作用を介してギアハブ302に対してクレードルロータ304をより効果的にロックするために、機械的位相制御アセンブリが二方向ロック機能を達成することができる。特に一部のVCR内燃機関等の場合には、偏心軸によって送られる正味のトルクパルスは、正味で正又は正味で負とすることができる。一部の非限定的な例では、ねじりばね402は偏心軸トルクパルスに線形オフセットを適用することができる。他の非限定的な例では、ねじりばね402は、一定の一方向トルク負荷を適用することができる。
一部の非限定的な例では、ねじりばね402は事前付勢(例えば事前荷重)されることができる。例えば、図11及び22を参照すると、ばね座430、1430は、複数の異なる位置でばねスリーブ403、1403と回転ロックすることができる。これら複数の異なる各位置は、ねじりばね402、1402によって提供されるトルク負荷をそれぞれ唯一に決定し、これにより、ねじりばね402、1402の事前付勢の大きさが定まる。ねじりばね402、1402の事前付勢は、クレードルロータ304、1304(図9、11、及び22参照)に対するばね座430、1430の相対回転位置に基づいて調整されることができる(図9、11、及び22参照)。すなわち、ばねスリーブ403、1403に対するばね座430、1430の相対位置は、ばねスリーブ403,1403の第1のスロット428、1428とばね座430,1430の第2のスロット434、1434とを利用して調整されることができる。例えば、特に図11のねじりばねアセンブリ400を参照すると、ねじりばね402の第1のコイル端401をクレードルロータ304に結合することによって、ねじりばね402の事前付勢を設定することができる。その後、ねじりばね402の反対側の第2のコイル端432をばね座430に結合することができる。その後、ばね座430をばねスリーブ403に対して相対回転させて、ねじりばねに所望の事前付勢を提供する位置に移動させることができる。その時点で、ばねスリーブ403の複数の第1のスロット428のうち少なくとも1つの第1のスロット428を、ばね座430の複数の第2のスロット434のうち少なくとも1つの第2のスロット434と選択的にアライメントすることができる。選択的にアライメントした後は、本例ではスプラインとして形成された第1のスロット428と第2のスロット434とが互いに噛み合って、ばね座430に対するばねスリーブ403の回転をロックすることができる。図中の非限定的な例では、第1のスロット428の複数のスプラインと第2のスロット434の複数のスプラインとが噛み合う。
例えば、ねじりばねアセンブリ400は、ねじりばね402の第1のコイル端401がクレードルロータ304のバネ凹部339に挿入されると共にねじりばね402の第2のコイル端がばね座430内に設けることができる第1の向きで組み立てることができる。この第1の向きでは、ばね座430はばねスリーブ403に対して相対的な第1の回転位置に位置することができ、これにより第1のトルク負荷(一部の事例ではゼロトルク負荷)が定まる。その後、ばね座430の第2のスロット434をばねスリーブ403の第1のスロット428と係合させずにばねスリーブ403に対してばね座430を相対回転させることにより、ねじりばねアセンブリ400を複数の可能な回転位置のうち第2の回転位置に調整することができる。その後、ばね座430の第2のスロット434をばねスリーブ403の第1のスロット428に再係合させることができ、これにより、第2のトルク負荷を定める第2の回転位置にばね座430を固定することができる。
一部の非限定的な例では、ねじりばね402は、約5Nm~約200Nmのトルク負荷を印加することができる。他の非限定的な例では、ねじりばね402は、約20Nm~約100Nmのトルク負荷を印加することができる。一部の非限定的な例では、ねじりばね402は、約40Nm~約80Nmのトルク負荷を印加することができる。第1及び第2のスロット428,434の配置により、ばねスリーブ403とばね座430との間に約1°~約10°の回転調整を行うことができる。一部の非限定的な例では、スロットは、約3°~約5°の回転調整を提供することができる。一部の非限定的な例では、さらに細やかな回転調整能力を実現するため、他のばね座に対してそれぞれ若干ずれた2つ以上のばね座430を設けることができる。
また、特に図22のねじりばねアセンブリ1400を参照すると、ねじりばね1402の事前付勢も同様に、ねじりばね1402の第1のコイル端1401をクレードルロータ1304に結合することによって設定することができる。その後、ねじりばね1402の反対側の第2のコイル端1432をばね座1430に結合することができる。その後、ばね座1430をばねスリーブ1403に対して相対回転させて、ねじりばねに所望の事前付勢を提供する位置に移動させることができる。その時点で、ばねスリーブ1403の複数の第1のスロット1428のうち少なくとも1つの第1のスロット1428を、ばね座1430の複数の第2のスロット1434のうち少なくとも1つの第2のスロット1434と選択的にアライメントすることができる。選択的にアライメントされると、第1のスロット1428のうち1つと第2のスロット1434のうち1つとが合わさって、キー1435を挿入できる1つのキー溝を形成し、これにより、ばね座1430に対するばねスリーブ1403の回転をロックすることができる。図中の非限定的な例では、複数の第1のスロット1428のうち1つのスロットのみが、複数の第2のスロット1434のうちの1つのスロットのみとアライメントしている。すなわち、ばね座1430のいかなる特定の回転向きにおいても、1つの第1のスロット1428のみが1つの第2のスロット1434とアライメントすることができる。
いくつかの非限定的な例では、ねじりばね402、1402によって印加されるトルク負荷は、第1のリングギア200、1200と第2のリングギア206、1206との間の相対的な回転差に依存することができる。すなわち、特に図11を参照すると、回転アクチュエータ313によって第1のリングギア200が第2のリングギア206に対して回転シフトした場合、ねじりばね402の第1のコイル端401に結合されているスパイダーロータ308が、当該ねじりばね402の第2のコイル端432に結合されているばね座430から回転シフトする、ということである(図8参照)。ねじりばね402の第1のコイル端401と第2のコイル端432との間のこのような回転シフトは、ねじりばね402から送られるトルク負荷を変化させることとなる。図22のねじりばねアセンブリ1400についても同様のことが当てはまる。
次に図11及び21を参照すると、一部の非限定的な例では、機械的位相制御アセンブリ300を所定の範囲の位相角又は回転差に機械的に制限することができる。図中の非限定的な例では、ギアハブ302及びクレードルロータ304は、最小位相角(例えば位相角0°)から最大位相角(例えば、図21に-30°~+30°として図示されている位相角60°)に回転することができる。VCR内燃機関は、ギアハブ302とクレードルロータ304との間の位相角が最小位相角であるときに高圧縮比(CR)設定とすることができ、また、ギアハブ302とクレードルロータ304との間の位相角が最大位相角であるときに低CR設定とになるように構成することができる。上述のように、ねじりばね402によって印加されるトルク負荷は、位相角に依存することができる。位相角が増大すると、ねじりばね402によって印加されるトルク負荷も増大することができる。よって、ねじりばね402によって印加されるトルク負荷は、VCR内燃機関が高CR設定(すなわち最小位相角)である場合は最小トルク負荷とすることができ、位相角が最大位相角に向かって増大するにつれて、ねじりばね402によって提供されるトルク負荷も最大トルク負荷に向かって増大する。一部の非限定的な例では、ねじりばね402は、ギアハブ302とクレードルロータ304との間の位相角が0°となるように機械的位相制御アセンブリ300を保持することができる。つまり、ねじりばね402は、最小位相角設定になるように位相制御システム10を付勢するよう構成されている。よって、ねじりばね402は、VCR内燃機関を高CR設定に保持することができる。図22のねじりばねアセンブリ1400についても同様のことが当てはまる。
本願明細書では、詳細な説明を明確かつ簡潔に記載できるように実施形態を記載しているが、実施形態は本発明から逸脱することなく種々に組み合わせ、又は分離できることを意図したものであり、またその旨が明らかである。例えば、本願にて記載されている好適な構成は全て、本願に記載されている発明の全ての側面に適用できることが明らかである。
よって、特定の実施形態及び事例を参照して本発明を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、数多くの他の実施形態、事例、使用、改良、並びにこれらの実施形態、使用、使用からの派生態様も、本願明細書に添付の特許請求の範囲に包含されることを意図したものである。本願にて引用した各特許公報及び特許公開公報の開示内容は全て参照により本願の開示内容に含まれるものとし、当該各特許公報又は特許公開公報を個別に参照によって含む場合と同等の効果を生ずる。
本発明の種々の構成及び利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。

Claims (20)

  1. クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるための可変圧縮比(VCR)位相制御システムであって、
    クランク軸との間で回転伝動を行うように構成されたギアハブと、
    偏心軸との間で回転伝動を行うように構成されたクレードルロータと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するように構成されたスパイダーロータと、
    前記ギアハブと前記スパイダーロータとに結合されたプラネタリアクチュエータであって、回転入力を受け取って前記スパイダーロータへ出力を供給することにより、前記クレードルロータと前記ギアハブとの間の相対回転をロック解除するように構成されたプラネタリアクチュエータと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねであって、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に第1の方向にトルク負荷を印加することにより、前記偏心軸又は前記クランク軸のうちいずれか1つにより第2の方向に印加されるトルク負荷をオフセットさせるように構成されたねじりばねと、
    を備えていることを特徴とする可変圧縮比位相制御システム。
  2. 前記トルク負荷は約5Nm~約200Nmである、
    請求項1記載の可変圧縮比位相制御システム。
  3. 前記ギアハブに結合されたばねスリーブであって、前記ギアハブから軸方向に離れる方向に延在し、内部キャビティを画定するばねスリーブをさらに備えている、
    請求項1記載の可変圧縮比位相制御システム。
  4. 前記ねじりばねのコイル部は、前記ばねスリーブの外側まわりに周方向に延在する、
    請求項3記載の可変圧縮比位相制御システム。
  5. 前記プラネタリアクチュエータは前記ばねスリーブの前記内部キャビティに受容されている、
    請求項3記載の可変圧縮比位相制御システム。
  6. 前記ねじりばねは、第1のコイル端と、前記第1のコイル端とは反対側の第2のコイル端と、を有し、
    前記ねじりばねの前記第1のコイル端は前記クレードルロータに係合すると共に、前記第2のコイル端は、前記ばねスリーブに結合されたばね座に係合する、
    請求項3記載の可変圧縮比位相制御システム。
  7. 前記クレードルロータは、軸方向に前記ばねスリーブの前記内部キャビティ内へ延在する少なくとも1つの突起を有し、
    前記少なくとも1つの突起は、前記ねじりばねの前記第1のコイル端を受けるように構成された凹部を有する、
    請求項6記載の可変圧縮比位相制御システム。
  8. 前記ばね座は、前記ばねスリーブに対して複数の異なる位置に回転ロック可能であり、前記複数の異なる各位置は、それぞれ前記ねじりばねからの唯一のトルク負荷を決定する、
    請求項6記載の可変圧縮比位相制御システム。
  9. 前記ばねスリーブは複数の第1のスロットを有し、
    前記ばね座は複数の第2のスロットを有し、
    前記複数の第1のスロットのうち少なくとも1つの第1のスロットと、前記複数の第2のスロットのうち少なくとも1つの第2のスロットと、の選択的なアライメントが、前記ばね座に対する前記ばねスリーブの回転をロックする、
    請求項8記載の可変圧縮比位相制御システム。
  10. 前記複数の第1のスロット及び前記複数の第2のスロットは、互いに噛み合うスプラインとして形成されている、
    請求項9記載の可変圧縮比位相制御システム。
  11. 前記複数の第1のスロットのうち1つの第1のスロットのみが、前記複数の第2のスロットのうち1つの第2のスロットのみとアライメントする、
    請求項9記載の可変圧縮比位相制御システム。
  12. 前記少なくとも1つの第1のスロットと前記少なくとも1つの第2のスロットとは、アライメントしたときに、キーを受ける1つのキー溝を構成する、
    請求項9記載の可変圧縮比位相制御システム。
  13. 第1の回転要素と第2の回転要素との回転関係を変化させるための位相制御システムであって、
    ギアハブと、
    クレードルロータと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するように構成されたスパイダーロータと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねであって、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間にトルク負荷を印加するように構成されたねじりばねと、
    前記ギアハブと前記スパイダーロータとに結合されたプラネタリアクチュエータと、
    を備えており、
    前記プラネタリアクチュエータは、前記ギアハブと前記クレードルロータとの相対回転が阻止される定常モードと、前記ギアハブと前記クレードルロータとの相対回転を選択的に提供するための所定の大きさの回転入力を受け取る位相制御モードと、で動作可能である
    ことを特徴とする位相制御システム。
  14. 前記ギアハブに結合されたばねスリーブであって、前記ギアハブから軸方向に離れる方向に延在するばねスリーブをさらに備えている、
    請求項13記載の位相制御システム。
  15. 前記ねじりばねは、第1のコイル端と、前記第1のコイル端とは反対側の第2のコイル端と、を有し、
    前記ねじりばねの前記第1のコイル端は前記クレードルロータに係合すると共に、前記第2のコイル端は、前記ばねスリーブに結合されたばね座に係合する、
    請求項14記載の位相制御システム。
  16. 前記ばね座は、前記ばねスリーブに対して複数の異なる位置に回転ロック可能であり、前記複数の異なる各位置は、それぞれ前記ねじりばねからの唯一のトルク負荷を決定する、
    請求項15記載の位相制御システム。
  17. 前記ばねスリーブは複数の第1のスロットを有し、
    前記ばね座は複数の第2のスロットを有し、
    前記複数の第1のスロットのうち少なくとも1つの第1のスロットと、前記複数の第2のスロットのうち少なくとも1つの第2のスロットと、の選択的なアライメントが、前記ばね座に対する前記ばねスリーブの回転をロックする、
    請求項16記載の位相制御システム。
  18. 前記少なくとも1つの第1のスロットと前記少なくとも1つの第2のスロットとは、アライメントしたときに、キーを受ける1つのキー溝を構成する、
    請求項17記載の位相制御システム。
  19. クランク軸と偏心軸との回転関係を変化させるための可変圧縮比(VCR)位相制御システムであって、
    クランク軸との間で回転伝動を行うように構成されたギアハブと、
    偏心軸との間で回転伝動を行うように構成されたクレードルロータと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に配置され、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の相対回転を選択的にロック及びロック解除するための入力を受け取るように構成されたスパイダーロータと、
    前記ギアハブに結合され、前記ギアハブに対して回転不能であるばねスリーブと、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間に結合されたねじりばねであって、前記ギアハブと前記クレードルロータとの間にトルク負荷を印加するように構成されたねじりばねと、
    を備えており、
    前記ねじりばねの付勢は、
    前記ねじりばねの第1端を前記クレードルロータに結合し、
    前記ねじりばねの反対側の第2端をばね座に結合し、
    前記ばねスリーブに対して前記ばね座を相対的に回転させることにより、前記ばねスリーブに配置された複数の第1のスロットのうち少なくとも1つの第1のスロットを、前記ばね座に配置された複数の第2のスロットのうち少なくとも1つの第2のスロットと選択的にアライメントする
    ことにより設定され、
    前記少なくとも1つの第1のスロットと前記少なくとも1つの第2のスロットとの選択的なアライメントが、前記ばね座に対する前記ばねスリーブの回転をロックするように構成されている
    ことを特徴とする可変圧縮比位相制御システム。
  20. 前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の位相角が最小位相角であるとき、前記ねじりばねによって提供される前記トルク負荷は最小トルク負荷となり、
    前記ギアハブと前記クレードルロータとの間の位相角が増大すると、前記ねじりばねにより提供される前記トルク負荷が増大する、
    請求項19記載の可変圧縮比位相制御システム。
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