JP2022028609A - 聴覚装置のための減衰フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】インレットの悪影響を除去できる聴覚装置を提供する。【解決手段】聴覚装置において、マイクロフォン3の大部分は、聴覚装置の外部シールド5によって遮蔽される。外部シールドのインレットチャネル11は、補聴器の外側からの音がマイクロフォンに伝わり、マイクロフォンによって拾われることを可能にする。しかしながら、マイクロフォンとインレットの組み合わせは、いくつかの可聴周波数においてマイクロフォンをより敏感にする。インレットに関連して配置された減衰フィルタ13は、マイクロフォンが感度を増加させている可聴周波数範囲の音を減衰させることによってインレットの音響効果に対抗するように作用する。【選択図】図3
Description
本開示は、マイクロフォンと、インレットと、インレット内の減衰フィルタとを有する聴覚装置に関する。さらに、本開示は、減衰フィルタを有する聴覚装置を構成する方法に関する。
補聴器、ヘッドセット等のような聴覚装置は、ある種のカバー又はシールド内に配置された1つ以上のマイクロフォンを有し、1つ以上のマイクロフォンは、カバー又はシールド内のインレット又はアパーチャを介して音を受け取る。次に、補聴器の外部からの音は、インレットを通ってマイクロフォンに到達する。シールドは、聴覚装置をより堅牢にし、聴覚装置の一部を形成する電子部品のような壊れやすい部品を保護する。マイクロフォンによって拾われた音は、デジタル化され、様々な方法で処理され、その後、人の外耳道の内側又は近くに存在するスピーカに伝達される。
しかしながら、インレットの存在は、インレットの音響負荷のためにマイクロフォンの性能に影響を与え、その結果、マイクロフォンは、いくつかの可聴周波数においてより敏感になる。こうした効果は、いくつかの理由から望ましくない。1つには、聴覚装置のマイクロフォンは、好ましくは、可能な限り忠実な音の再生を可能にすべきであり、これは、マイクロフォンの感度が、すべての可聴周波数について同様であるか、又は同様に近いことを必要とする。さらに、マイクロフォンが拾う音は、マイクロフォン感度が不均一なため、ゲインによって変化する可能性があり、そのため、補聴器の安定性に潜在的な問題が生じる。
したがって、マイクロフォンへのインレットの影響が低減又は排除される聴覚装置が当技術分野で必要とされている。
本明細書では、マイクロフォンを有する聴覚装置が開示され、マイクロフォンの大部分は、聴覚装置の外部シールドによって遮蔽される。外部シールドにおけるインレットは、補聴器の外側からの音がマイクロフォンに伝わり、マイクロフォンによって拾われることを可能にする。しかしながら、マイクロフォンとインレットの組み合わせは、いくつかの可聴周波数においてマイクロフォンをより敏感にする結果となる。インレットに関連して配置された減衰フィルタは、マイクロフォンが感度を増加させている周波数範囲の音を減衰させることによってインレットの音響効果に対抗するように作用する。
第1の態様では、マイクロフォンと、装置内の構成要素を遮蔽するように構成された外部シールドと、減衰フィルタと、を備える聴覚装置が提供される。外部シールドは、装置の外側からマイクロフォンに音を伝導するように構成されたインレットチャネルを備える。インレットチャネルは、外部からの音が入る外側開口部と、音がマイクロフォンに到達する内側開口部とを有する。減衰フィルタは、インレットによって伝導される音が減衰フィルタを通過するようにインレットに関連して配置され、インレットチャネルの音響効果による可聴周波数でのマイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、インレットチャネルを介してマイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成される。
聴覚装置は、2つ以上のマイクロフォンを含むことができる。例えば、補聴器は、しばしば、2つ以上のマイクロフォンを有し、通常、各マイクロフォンは、それ自体のインレットを有する。インレットチャネルは、外側開口部と内側開口部との間に延在し、外部から及びマイクロフォンへ、音を伝導させることを可能にする任意の形状を有し得る。インレットチャネルは、例えば、変化する直径など、チャネルに沿った異なる形状及び/又は断面を有してもよい。一般的に、インレットが狭いほど、マイクロフォンの周波数応答に対する音響効果が大きくなる。従って、インレットを広くすることによって音響効果を小さくすることができる。しかしながら、聴覚装置のマイクロフォンインレットについては、その機能を維持しながら、マイクロフォンの周波数応答に対する音響効果を避けるために、サイズを十分大きくすることはできない。
聴覚装置内の、直径がしばしば0.4~4mm程度であるインレットは、水、砂、ほこりなどの環境物質がインレットに入ることがあるので、聴覚装置の機能に影響を及ぼすことも引き起こす。いくつかの聴覚装置では、環境フィルタがインレット内に配置されて、そのような環境物質が聴覚装置の機能を損なうか、又は妨げる可能性を低減する。望ましくない物質を防ぐために、環境フィルタは、理想的には、非常に小さい孔径を有するが、ある点において孔径は、フィルタが音響的にニュートラルでないほど十分に小さくなり、したがって、環境フィルタは、環境フィルタが音響的にニュートラルであることを保証するために、理想よりも大きい孔径を有するように選択される。
減衰フィルタは、マイクロフォンが感度を増加させた周波数範囲の音を音響的に減衰させるように構成されている。その存在とフィルタ構造により、減衰フィルタは環境フィルタとしてもある程度作用するであろう。しかし、環境フィルタは音響的に透明であるように設計されており、これは減衰フィルタではない。しかし、インレットが感度の増加を引き起こす周波数範囲の音を減衰させることにより、インレットと減衰フィルタの組み合わせは音響的に透明に近づく。
減衰フィルタの付加的な利点は、超音波周波数域で音を減衰させることもできることである。超音波周波数は通常人間には聞こえないが、マイクロフォンを飽和させ、聴覚装置の繊細なセンサーや電子機器に問題を生じさせる可能性がある。したがって、超音波周波数の減衰は、聴覚装置において望ましい効果である。
インレットチャネルに関連する減衰フィルタの存在は、ノイズを生成し、いくつかの実施形態では、減衰フィルタを構成することは、減衰と減衰フィルタによって生成されるノイズとの間のトレードオフを最適化することである。生成されるノイズの量は、フィルタタイプと有効フィルタ面積によって異なる。一般的に有効フィルタ面積が小さいほどノイズが多くなる。したがって、これは、減衰フィルタを構成する際の要因でもあり得る。
インレットの存在に対するマイクロフォンの応答は、マイクロフォンのタイプ及びモデルごとに異なることがあり、したがって、減衰フィルタのある構成は、あるタイプ及びモデルのマイクロフォンと組み合わせた場合に望ましい効果を有するが、他のタイプのマイクロフォンと組み合わせた場合には、おそらく、それほど効果はないであろう。したがって、減衰フィルタは、マイクロフォンのタイプ及び/又はモデルごとに構成される必要がある可能性が高い。
減衰フィルタの付加的な利点は、どんなフィルタでもある程度経時的に経験することになる目詰まりに対する反応である。インレットの存在によるマイクロフォンの感度の増加は、マイクロフォンの周波数応答のピークとしてそれ自体を提示する。減衰フィルタが詰まると、フィルタ領域の位置におけるインレットの断面積が減少する。これは、周波数応答における前記ピークが、より低い周波数に向かって移動する効果を有する。すなわち、感度の増加は、より低い周波数に向かってシフトする。しかし、減衰フィルタの目詰まりは、減衰の増加につながる。つまり、より高い周波数で音を減衰させるように減衰フィルタが設計されていたにもかかわらず、シフトされたピークはさらに減衰される。
減衰フィルタは、インレットによって伝導されている音が減衰フィルタを通過するように配置される。いくつかの実施態様において、減衰フィルタは、外側開口部と内側開口部との間に配置される。減衰フィルタは、代替的に、インレットの頂部、すなわち外側開口部の外側に配置されてもよい。インレットの頂部に配置した場合、減衰フィルタは、インレットが減衰フィルタを取り囲むことによっては保護されない。インレットの頂部に配置された減衰フィルタを保護するために、表面に装着されたフィルタの頂部に機械的グリッドを配置することができる。機械的グリッドは、減衰フィルタを誤操作から保護するという唯一の目的を有するように、ゼロ音響効果を有するように構成されてもよい。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタは、完全に又は少なくとも部分的にインレットチャネルを横切って延在する。減衰フィルタは、減衰フィルタの位置でインレットチャネルの壁に対して直角、鈍角、又は鋭角でインレットチャネルを横切って延びることができる。これは、インレットチャネルの断面全体を覆うように延在してもよく、又は減衰フィルタが配置される位置でインレットチャネルの断面を部分的にのみ覆うように延在してもよい。減衰フィルタがインレットチャネルの断面全体をカバーしない場合、チャネルによって伝導される音は減衰フィルタの周りに通り道があり、減衰フィルタの効果はあまりない。しかしながら、減衰フィルタによるカバーの不足によって作り出される開口部が小さい場合には、減衰フィルタの効率が大きく損なわれることがないという可能性がある。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタは、1つ又は複数のフィルタパラメータの所定の値によって構成され、1つ又は複数のフィルタパラメータは、有効フィルタ面積、孔径、フィルタ厚さ、及びマイクロフォンからの距離のうちの1つ又は複数である。
有効フィルタ面積は、音がマイクロフォンに到達するために通過し得る減衰フィルタの面積である。有効フィルタ面積の形状は、インレットチャネルの形状に依存するであろうが、インレットチャネルは、しばしば、楕円又は円形の断面を有することになるので、減衰フィルタの角度に応じて、円又は楕円であろう。
アセンブリで使用されるフィルタの実際の合計サイズは、有効フィルタ面積よりも大きくてもよい。組み立てのために、より大きなフィルタが使用されてもよい。その場合、その一部は、周囲構造によって覆われ、覆われた部分が音響性能に関して機能しないようにされる。これは、補聴器を、インレットチャネル内の所望の位置に所望の有効フィルタ面積の減衰フィルタを有するインレットを有するように組み立てる1つの方法である。
いくつかの実施形態では、有効フィルタ面積は、0.1mm2~13mm2の範囲内にあり、例えば0.19~3.15mm2の範囲内にあり、また例えば、0.19~1.77mm2の範囲内にある。インレットチャネルが円形状の場合、これは、円形状のインレットチャネルの直線断面に配置された減衰フィルタの場合、それぞれ、約0.2mm~2mmの半径に対応することになる。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタの孔径は、5~25μmの範囲内であり、例えば5~15μmの範囲内、また例えば、5~10μmの範囲内である。
減衰フィルタは厚さを有しており、その厚さは、単純なフィルタ形状の場合、音が通過しなければならないフィルタ材料の長さである。いくつかの実施形態では、フィルタの厚さは、5~2500μmの範囲内、例えば20~200μmの範囲内である。一般に、孔径と有効フィルタ面積が大きいほど、減衰フィルタを厚くして所望の減衰を達成しなければならない。これにより、孔径及び有効フィルタ面積が小さくなるほど、減衰フィルタを薄くすることができる。1つ又は複数のフィルタを積み重ねて、減衰フィルタの有効厚さを増加させることができる。
インレットチャネルに関連する減衰フィルタの配置は、インレットチャネル内の減衰フィルタの存在によって達成される減衰にも影響を及ぼし得る。一般に、減衰フィルタがマイクロフォンから遠くに配置される場合、すなわち、マイクロフォンから減衰フィルタまでの距離が比較的大きい場合、減衰フィルタは、それがマイクロフォンのより近くに配置される場合よりも、より多くの減衰を生成する。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタは、複数のフィルタを含んでもよく、ここで、結果として生じる音響減衰は、減衰フィルタに含まれる複数のフィルタによって達成される。複数のフィルタは、フィルタ材料が存在しない空間によって分離されるか、又は互いに当接して配置されてもよい。複数のフィルタが類似の特性を有する場合、それらを当接させると、音響的には、当接するフィルタの総厚さを有する単一のフィルタに類似する。しかしながら、複数のフィルタにおけるフィルタの各々は、異なる孔径、有効フィルタ面積及びフィルタ厚さのような異種の特性を有することができる。フィルタはまた、異なる材料から作製されてもよい。
周波数は通常人間の耳で聞こえるもので、おおよそ20Hzから20kHzの範囲である。聴覚装置の寸法及び構造に関しては、感度の増加は、通常、可聴周波数におけるより高い範囲にあるであろう。したがって、この場合、減衰フィルタは、可聴周波数のこの範囲で減衰すべきであり、いくつかの実施形態において、減衰フィルタは、3~20kHzの周波数範囲内の1つ以上の可聴周波数で減衰する。更に、幾つかの実施例では、減衰フィルタによる減衰は、3~20kHzの周波数範囲内の1つ又は複数の可聴周波数において、少なくとも1dB又は少なくとも2dB以上である。いくつかの実施形態では、減衰フィルタによる減衰は、3~20kHzの周波数範囲内の1つ又は複数の可聴周波数において、少なくとも5dB又は少なくとも10dBである。
以下の態様では、用語及び特徴は、第1の態様と同じ名前を有する用語及び特徴に関連し、したがって、上記で与えられた用語及び特徴の説明及び説明は、以下の態様にも適用される。
第2の態様は、聴覚装置を構成する方法に関する。聴覚装置は、マイクロフォンと、外部シールドとを備え、その外部シールドは、装置内の構成要素を遮蔽するように構成される。外部シールドは、装置の外側からマイクロフォンに音を伝導するように構成されたインレットチャネルを備える。インレットチャネルは、外部からの音が入る外側開口部と、音がマイクロフォンに到達する内側開口部とを有する。この方法は:
インレットチャネルの音響効果の下で前記マイクロフォンの周波数応答をシミュレート又は測定するステップと、
減衰フィルタを、減衰フィルタが設置されたときに、インレットチャネルの音響効果による可聴周波数での前記マイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、減衰フィルタがインレットチャネルを介してマイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成するステップと、
インレットによって伝導される音が減衰フィルタを通過するように、減衰フィルタをインレットに関連して配置するステップを備える。
インレットチャネルの音響効果の下で前記マイクロフォンの周波数応答をシミュレート又は測定するステップと、
減衰フィルタを、減衰フィルタが設置されたときに、インレットチャネルの音響効果による可聴周波数での前記マイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、減衰フィルタがインレットチャネルを介してマイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成するステップと、
インレットによって伝導される音が減衰フィルタを通過するように、減衰フィルタをインレットに関連して配置するステップを備える。
マイクロフォンの周波数応答は、例えば電圧レベル(dBV)対周波数又は相対応答(dB)対周波数として、シミュレート又は測定される。
減衰フィルタを構成することは、適切なパラメータを決定するためのコンピュータシミュレーションを含んでもよい。こうしたパラメータは、フィルタを特徴づけ、インレットの音響効果のためにさもなければ強化される可聴周波数が減衰されるような方法で、インレットチャネルを介してマイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させる所望の効果を得る。いくつかの実施形態では、減衰フィルタを構成するステップは、1つ又は複数のフィルタパラメータを決定するステップを含み、1つ又は複数のフィルタパラメータは、有効フィルタ面積、孔径、フィルタ厚さ、及びマイクロフォンからの距離のうちの1つ又は複数である。
フィルタパラメータのうちの3つは、減衰フィルタに固有である:有効フィルタ面積、孔径、及びフィルタ厚さであり、一方、マイクロフォンからの距離は、組み立て時に使用されるパラメータである。従って、インレットチャネルに関連して減衰フィルタを配置するステップは、減衰フィルタを構成する時に決定されたマイクロフォンからの距離に減衰フィルタを配置するステップを含むことができる。一実施形態によると、減衰フィルタは、内側開口部と外側開口部との間のインレットチャネル内に配置される。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタは、3~20kHzの周波数範囲内の1つ以上の可聴周波数で減衰するように構成される。
いくつかの実施形態では、減衰フィルタによる減衰は、3~20kHzの周波数範囲の1つ又は複数の可聴周波数で少なくとも1dB又は少なくとも2dBである。
いくつかの実施形態では、フィルタを構成することは、減衰と、減衰フィルタによって生成されるノイズとの間のトレードオフを最適化することである。
いくつかの実施形態では、設置された減衰フィルタは、完全に又は少なくとも部分的にインレットチャネルを横切って延在する。
以下において、本発明の例示的な実施形態が、添付の図面を参照してより詳細に説明される:
マイクロフォンインレットを有する例示的な補聴器の簡略図を示す。
インレットの音響効果によって影響を受けた場合の、聴覚装置用のマイクロフォンのシミュレートされた周波数応答のグラフを示す。
本発明の一実施形態による、減衰フィルタを伴うインレットを有する外部シールドの背後にある聴覚装置用のマイクロフォンの簡略図を示す。
本発明の実施形態によるインレットチャネル内に配置された減衰フィルタの簡略図である。
本発明の実施形態によるインレットチャネル内に配置された減衰フィルタの簡略図である。
本発明の実施形態によるインレットチャネル内に配置された減衰フィルタの簡略図である。
減衰フィルタを有する場合と有しない場合の、聴覚装置用のマイクロフォンの可聴周波数におけるシミュレート及び測定された周波数応答のグラフを示す。
減衰フィルタを有する場合と有しない場合の、聴覚装置用のマイクロフォンの超音波周波数における測定された周波数応答のグラフを示す。
本発明の例示的実施形態による、フロー図を示す。
以下、添付の図面を参照して、様々な例示的な実施形態を説明する。当業者は、添付の図面が、明確にするために概略的かつ簡略化されており、したがって、本発明の理解に不可欠である詳細を単に示すに過ぎず、他の詳細は省略されていることを理解するであろう。全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を指す。したがって、同様の要素は、各図に関して必ずしも詳細に説明されない。
図1は、レシーバ・イン・イヤ補聴器1のビハインド・ザ・イヤ部分として例示された聴覚装置1の簡略図を示す。補聴器1は、マイクロフォン(図示せず)を有し、マイクロフォンは、機械的損傷及び有害物質から外部シールド5によって遮蔽される。外部シールド5は、外側開口部7を有するインレットを有する。インレットは、補聴器1の外部環境からの音を補聴器1の外部シールド5内のマイクロフォンに導く。マイクロフォンへのインレット伝導音の存在は、インレットとマイクロフォンの組み合わせシステムが、効果的に、マイクロフォンを、音のいくつかの周波数に対してより敏感にするように、音響効果を有する。
図2は、マイクロフォンのシミュレートされた周波数応答のグラフを示す。異なるモデル、特に異なるタイプのマイクロフォンは、異なる周波数応答を有する。マイクロフォンがインレットを伴って配置されると、周波数応答はグラフのように変更される。インレットの音響効果の影響を受けると、この特定のマイクロフォンは、約6kHzを超える周波数の音に対して望ましくない感度の増加を呈する。
図3は、外側開口部7と、内側開口部9と、内側開口部9と外側開口部7との間に延びるインレットチャネル11とを備えるインレットを有する、外部シールド5の後方に配置されたマイクロフォン3の簡略図を示す。インレットは、インレットチャネル11を介して外部シールド5の外部からマイクロフォン3に音を伝導する。
インレットの存在は、図2のグラフによって示されるように、マイクロフォン3の周波数応答に影響を及ぼす。したがって、インレットは、インレットチャネル11内に配置され、可聴周波数におけるマイクロフォンの感度の増加であるインレットの音響効果を打ち消すように構成された減衰フィルタ13をさらに備える。これは、アコースティックダンパとして作用する減衰フィルタ13によって達成される。減衰フィルタ13によって生成される減衰に影響を及ぼすパラメータのいくつかは、有効フィルタ面積、孔径、フィルタ厚さ及びマイクロフォン3からのフィルタ13の距離である。
減衰フィルタ13は、インレットチャネル11の断面を越えて延在するフィルタとしてインレットチャネル11に設置される。これは、聴覚装置1の組み立て中に減衰フィルタ13をどのように取り付けることができるかの一例である。外部シールド5内に延びるフィルタの部分は、減衰フィルタ13の有効フィルタ面積の一部を形成しない。減衰フィルタ13は、当業者に公知の他の方法で設置することができる。
減衰フィルタ13は、インレットによって伝導される音が減衰フィルタ13を通過しなければならないように、インレットチャネル11を完全に横切って延在することが好ましい。しかしながら、減衰フィルタ13は、インレットチャネル11を部分的にのみ横切って延在してもよく、それでも機能を果たす、すなわち、減衰フィルタ13の減衰が許容できない程度まで損なわれることがない。
減衰フィルタ13は、断面を変えることなく、単純なインレットチャネル11を横切って直角に位置決めされるように、図3に単純に図示されている。しかしながら、減衰フィルタ13は、インレットチャネル11の壁に対してある角度で配置されてもよい。また、インレットチャネル11は、変化する断面を有していてもよい。さらに、減衰フィルタ13は、2つ以上のフィルタを含むことができ、結果として生じる音響減衰は、減衰フィルタ13に含まれる複数の個別フィルタによって達成される。
図4A、図4B、及び図4Cは、本発明の実施形態による、インレットチャネル11内に配置された複数の個別フィルタ15を備える減衰フィルタ13の簡略図を示す。個別フィルタ15は、フィルタ材料が存在しない空間によって分離されるか、又は互いに当接して配置されてもよい。個別フィルタ15が類似の特性を有する場合、それらを当接させることは、当接されるフィルタの総厚さの単一のフィルタに音響的に類似するであろう。しかしながら、個別フィルタ15は、異なる孔径、有効なフィルタ面積及びフィルタ厚さのような異種の特性を有することができる。個別フィルタ15はまた、異なる材料から作製されてもよい。
図4Aは、フィルタ材料が存在しない空間によって分離された2つの個別フィルタ15からなる減衰フィルタ13を示している。2つのフィルタ15は、一定の断面を有するインレットチャネル11の壁に対して直角に配置されている。
図4Bは、2つの個別フィルタ15から構成される減衰フィルタ13を示し、2つのフィルタ15の一方は、インレットチャネル11の壁に対して直角に配置され、一方、個別フィルタ15の他方は、インレットチャネル壁に対して90度ではない角度でインレットチャネル11内に配置される。
図4Cは、2つの個別フィルタ15から成る減衰フィルタ13を示しており、ここで、両方のフィルタ15は、インレットチャネル壁に対して90度でない角度でインレットチャネル11内に配置されている。
図5は、マイクロフォンに音を伝えるためのインレットを備えて設置された聴覚装置用のマイクロフォンの可聴周波数における、シミュレートされ、測定された周波数応答のグラフを示す。減衰フィルタが取り付けられていない場合、可聴スペクトルの高周波端部に比較的大きなピークが見られる(図2と比較する)。ピークが大きいフィルタリングされていない周波数応答は望ましくないが、インレットに関連して減衰フィルタを取り付けることで緩和できる。減衰フィルタは、インレットの存在がマイクロフォンの感度を増大させる範囲の音を減衰させるように構成される。その効果は、ピークを減衰させることである。これにより、周波数特性のグラフが「フラット」になる。つまり、レベル値の範囲が小さくなる。これは、聴覚装置で望ましいことである。図5に示すように、減衰フィルタの効果が大きい場合がある。
ピークは、通常、例えば、補聴器のマイクロフォンインレットなどの聴覚装置のマイクロフォンインレットの可聴周波数、例えば3~20kHzのような、より高い範囲にある。このため、減衰フィルタは、この可聴周波数の範囲で減衰するように設計されている。
図5に示すマイクロフォンモデルは、ピーク最大の周波数で7dBを越えて首尾よく減衰させることに成功した。
図6は、マイクロフォンに音を伝えるためのインレットを備えて設置された聴覚装置用のマイクロフォンの超音波周波数における測定された周波数応答のグラフを示す。減衰フィルタの付加的な利点として、可聴スペクトルの高周波数で減衰する場合、超音波周波数でも減衰する可能性が高いことである。図6は、超音波スペクトルの周波数において、減衰フィルタによって少なくとも1~2dB、さらには4dBを越える減衰が見られる。超音波はマイクロフォンを飽和させ、聴覚装置の繊細なセンサーや電子機器に問題を生じさせる可能性があるので、聴覚装置における超音波の減衰が望ましい。
図7は、本発明の例示的な実施形態によるフロー図を示す。フロー図は、聴覚装置を構成する方法を示しており、ここで、減衰フィルタは、マイクロフォンインレットに関連して使用されて、インレットの音響効果がマイクロフォンの周波数応答に及ぼす影響を打ち消す。減衰フィルタは、例えば、本明細書に記載される実施形態のいずれかであってもよい。
聴覚装置は、マイクロフォンと、装置内の構成要素を遮蔽するように構成される外部シールドとを備える。外部シールドは、装置の外部からマイクロフォンに音を伝えるように構成されたインレットチャネルを備える。インレットチャネルは、外部からの音が入る外側開口部と、音がマイクロフォンに到達する内側開口部とを有する。
ステップS10において、マイクロフォンの周波数応答が、インレットチャネルの音響効果の下でシミュレート又は測定される。
ステップS20において、減衰フィルタが設置されると、インレットチャネルの音響効果による可聴周波数でのマイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、減衰フィルタがインレットチャネルを介してマイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成される。
マイクロフォン及びインレットを含むシステムは、インレットを任意に変化する直径を有する伝送ラインとし、減衰フィルタが単純な抵抗としてモデル化されてシミュレートされ得る。さらに、抵抗は、シミュレーションにおいて抵抗を調整することによって有効フィルタ面積が調整できるように、減衰フィルタの有効フィルタ面積に比例することになる。この仮定は、オーディオ帯域において有効であるが、超音波周波数においては、減衰フィルタは、膜としての振る舞いを開始し得る。
フィルタがノイズを導入するので、フィルタの構成は、減衰と、減衰フィルタによって生成されるノイズとの間のトレードオフの最適化であってもよい。
1つ以上のパラメータを固定することができ、例えば、減衰フィルタの孔径を固定することができ、シミュレーションから、所望の減衰に到達するように有効なフィルタ面積を決定することができる。
ステップS30において、減衰フィルタは、内側開口部と外側開口部との間のインレットチャネルに関連して配置される。
1 聴覚装置
3 マイクロフォン
5 外部シールド
7 外側開口部
9 内側開口部
11 インレットチャネル
13 減衰フィルタ
15 減衰フィルタに含まれる個別フィルタ
3 マイクロフォン
5 外部シールド
7 外側開口部
9 内側開口部
11 インレットチャネル
13 減衰フィルタ
15 減衰フィルタに含まれる個別フィルタ
Claims (15)
- 聴覚装置であって、
マイクロフォンと、
前記聴覚装置内の構成要素を遮蔽するように構成された外部シールドであって、前記聴覚装置の外側から前記マイクロフォンに音を伝導するように構成されたインレットチャネルであって、外部からの音が入る外側開口部と、音が前記マイクロフォンに到達する内側開口部とを有する前記インレットチャネルを備える前記外部シールドと、
減衰フィルタであって、前記インレットによって伝導される音が前記減衰フィルタを通過するように前記インレットに関連して配置される前記減衰フィルタと、
を備え、
前記減衰フィルタは、前記インレットチャネルの音響効果による可聴周波数での前記マイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、前記インレットチャネルを介して前記マイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成されている、聴覚装置。 - 前記減衰フィルタは、前記インレットチャネルを完全に又は少なくとも部分的に横切って延在する、請求項1に記載の聴覚装置。
- 前記減衰フィルタは、1つ又は複数のフィルタパラメータの所定の値によって構成され、前記1つ又は複数のフィルタパラメータは、有効フィルタ面積、孔径、フィルタ厚さ、及びマイクロフォンからの距離のうちの1つ又は複数である、請求項1又は2に記載の聴覚装置。
- 前記有効フィルタ面積は、0.1mm2~13mm2の範囲内、例えば、0.19~3.15 mm2の範囲内、また例えば、0.19~1.77mm2の範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載の聴覚装置。
- 前記減衰フィルタの前記孔径は、5~25μmの範囲内、例えば5~15μmの範囲内、また例えば5~10μmの範囲内である、請求項1~4のいずれかに記載の聴覚装置。
- 前記フィルタ厚さは、5~2500μmの範囲内、例えば20~200μmの範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載の聴覚装置。
- 前記減衰フィルタは、3~20kHzの周波数範囲内の1つ又は複数の可聴周波数で減衰する、請求項1~6のいずれかに記載の聴覚装置。
- 前記減衰フィルタによる減衰は、3~20kHzの周波数範囲内の1つ又は複数の可聴周波数で少なくとも1dB又は少なくとも2dBである、請求項1~7のいずれかに記載の聴覚装置。
- 前記減衰フィルタは、前記内側開口部と前記外側開口部との間の前記インレットチャネル内に配置される、請求項1~8のいずれかに記載の聴覚装置。
- 聴覚装置を構成する方法であって、
前記聴覚装置は、
マイクロフォンと、
前記聴覚装置内の構成要素を遮蔽するように構成された外部シールドであって、前記聴覚装置の外側から前記マイクロフォンに音を伝導するように構成されたインレットチャネルであって、外部からの音が入る外側開口部と、音が前記マイクロフォンに到達する内側開口部とを有する前記インレットチャネルを備える前記外部シールドと、を備え、
前記方法は、
前記インレットチャネルの音響効果の下で前記マイクロフォンの周波数応答をシミュレート又は測定するステップと、
減衰フィルタを、前記減衰フィルタが設置されたときに、前記インレットチャネルの前記音響効果による可聴周波数での前記マイクロフォンの感度の増加を少なくとも部分的に打ち消すように、前記減衰フィルタが前記インレットチャネルを介して前記マイクロフォンに到達する音を音響的に減衰させるように構成するステップと、
前記インレットによって伝導される音が前記減衰フィルタを通過するように、前記減衰フィルタを前記インレットに関連して配置するステップと、を備える、方法。 - 設置された前記減衰フィルタは、前記インレットチャネルを完全に又は少なくとも部分的に横切って延在する、請求項10に記載の方法。
- 前記減衰フィルタを構成する前記ステップは、1つ又は複数のフィルタパラメータを決定するステップを含み、前記1つ又は複数のフィルタパラメータは、有効フィルタ面積、孔径、フィルタ厚さ、及びマイクロフォンからの距離のうちの1つ又は複数である、請求項10又は11に記載の方法。
- 前記減衰フィルタは、3~20kHzの周波数範囲内の1つ以上の可聴周波数で減衰するように構成される、請求項10~12のいずれかに記載の方法。
- 前記減衰フィルタによる減衰は、3~20kHzの周波数範囲内の1つ又は複数の可聴周波数において、少なくとも1dB又は少なくとも2dBである、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
- 前記減衰フィルタが、前記内側開口部と前記外側開口部との間の前記インレットチャネルの内部に配置される、請求項10~14のいずれかに記載の方法。
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