本発明の一実施形態(本実施形態)に係る超音波診断装置について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら、以下に詳細に説明する。
なお、本実施形態は、本発明の代表的な実施態様であるが、あくまでも一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
<<超音波診断装置の概要>>
本実施形態に係る超音波診断装置10について、図1乃至図4を参照しながら、その概要を説明する。図1は、超音波診断装置10の概略構成を示す図である。図2は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部及びその周辺を拡大して示した平面図である。なお、図2では、図示の都合上、後述のバルーン37を破線にて図示している。図3は、超音波内視鏡12の挿入部22の先端部40を図2に図示のI-I断面にて切断したときの断面を示す断面図である。図4は、超音波内視鏡12内に設けられた送気送水用及び吸引用の管路を示す図であり、超音波内視鏡12の模式的な断面図である。なお、図4では、各管路を容易に区別できるようにするために、管路以外の部分(中空部を含む)を斜線で表示している。
超音波診断装置10は、超音波内視鏡システムであり、超音波を用いて、被検体である患者の体内の観察対象部位の状態を観察(以下、超音波診断とも言う。)するために用いられる。ここで、観察対象部位は、患者の体表側(外側)からは検査が困難な部位であり、例えば胆嚢又は膵臓である。超音波診断装置10を用いることにより、患者の体腔である食道、胃、十二指腸、小腸、及び大腸等の消化管を経由して、観察対象部位の状態及び異常の有無を超音波診断することが可能である。
超音波診断装置10は、図1に示すように、超音波内視鏡12と、超音波用プロセッサ装置14と、内視鏡用プロセッサ装置16と、光源装置18と、モニタ20と、操作卓100とを有する。また、図1及び図4に示すように、超音波診断装置10の付属機器として、送水タンク21a、吸引ポンプ21b及び送気ポンプ21cが設けられている。さらに、図4に示すように、超音波内視鏡12内には、水及び気体の流路となる管路が形成されている。
超音波内視鏡12は、内視鏡スコープであり、患者の体腔内に挿入される挿入部22と、医師又は技師等の術者(ユーザ)によって操作される操作部24と、を有する。挿入部22の先端部40には、図2及び図3に示すように、複数の超音波振動子48を備える超音波振動子ユニット46が取り付けられている。
超音波内視鏡12の機能により、術者は、患者の体腔内壁の内視鏡画像と、観察対象部位の超音波画像とを取得することができる。内視鏡画像は、患者の体腔内壁を光学的手法によって撮影することで得られる画像である。超音波画像は、患者の体腔内から観察対象部位に向かって送信された超音波の反射波(エコー)を受信し、その受信信号を画像化することで得られる画像である。なお、超音波内視鏡12については、後の項で詳しく説明する。
超音波用プロセッサ装置14は、図1に示すように、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた超音波用コネクタ32aを介して超音波内視鏡12に接続される。超音波用プロセッサ装置14は、超音波内視鏡12の超音波振動子ユニット46を制御して超音波振動子ユニット46に超音波を送信させる。また、超音波用プロセッサ装置14は、超音波の反射波(エコー)を超音波振動子ユニット46が受信したときの受信信号を画像化して超音波画像を生成する。なお、超音波用プロセッサ装置14については、後の項で詳しく説明する。
内視鏡用プロセッサ装置16は、図1に示すように、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた内視鏡用コネクタ32bを介して超音波内視鏡12に接続される。内視鏡用プロセッサ装置16は、超音波内視鏡12(詳しくは、後述する固体撮像素子86)によって撮像された観察対象隣接部位の画像データを取得し、取得した画像データに対して所定の画像処理を施して内視鏡画像を生成する。なお、観察対象隣接部位とは、患者の体腔内壁のうち、観察対象部位と隣り合う位置にある部分である。
光源装置18は、図1に示すように、ユニバーサルコード26及びその端部に設けられた光源用コネクタ32cを介して超音波内視鏡12に接続される。光源装置18は、超音波内視鏡12を用いて観察対象隣接部位を撮像する際に、赤光、緑光及び青光の三原色光からなる白色光又は特定波長光を照射する。光源装置18が照射した光は、ユニバーサルコード26に内包されたライトガイド(不図示)を通じて超音波内視鏡12内を伝搬し、超音波内視鏡12(詳しくは、後述する照明窓88)から出射される。これにより、観察対象隣接部位が光源装置18からの光によって照らされる。
なお、本実施形態では、超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16が、別々に設けられた二台の装置(コンピュータ)によって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、一台の装置によって超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16の双方が構成されてもよい。
モニタ20は、図1に示すように、超音波用プロセッサ装置14及び内視鏡用プロセッサ装置16に接続されており、超音波用プロセッサ装置14により生成された超音波画像、及び内視鏡用プロセッサ装置16により生成された内視鏡画像を表示する。超音波画像及び内視鏡画像の表示に関して言うと、いずれか一方の画像を切り替えてモニタ20に表示してもよく、両方の画像を同時に表示してもよい。また、これらの表示方式を任意に選択及び変更できる構成であってもよい。
なお、本実施形態では、一台のモニタ20に超音波画像及び内視鏡画像を表示するが、超音波画像表示用のモニタと、内視鏡画像表示用のモニタとが別々に設けられてもよい。また、モニタ20以外の表示形態、例えば、術者が携帯する個人用端末のディスプレイに超音波画像及び内視鏡画像を表示する形態であってもよい。
操作卓100は、術者が超音波診断に際して必要な情報を入力したり、術者が超音波用プロセッサ装置14に対して超音波診断の開始指示を行ったりするために設けられた入力装置である。操作卓100は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド及びタッチパネルによって構成されている。操作卓100が操作されると、その操作内容に応じて超音波用プロセッサ装置14のCPU152が装置各部(例えば、後述の受信回路142及び送信回路144)を制御する。
具体的に説明すると、術者は、超音波診断を開始する前段階で、検査情報(例えば、年月日及びオーダ番号を含む検査オーダ情報、及び、患者ID及び患者名を含む患者情報)を操作卓100にて入力する。検査情報の入力完了後、術者が操作卓100を通じて超音波診断の開始を指示すると、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が、入力された検査情報に基づいて超音波診断が実施されるように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。
また、術者は、超音波診断の実施に際して、各種の制御パラメータを操作卓100にて設定することが可能である。制御パラメータとしては、例えば、ライブモード及びフリーズモードの選択結果、表示デプス(深度)の設定値、及び、超音波画像生成モードの選択結果等が挙げられる。
ここで、「ライブモード」は、所定のフレームレートにて得られる超音波画像(動画像)を逐次表示(リアルタイム表示)するモードである。「フリーズモード」は、過去に取得した1フレーム分の超音波画像(静止画像)を、後述のシネメモリ150から読み出して表示するモードである。
本実施形態において選択可能な超音波画像生成モードは、複数存在し、具体的には、B(Brightness)モード、CF(Color Flow)モード及びPW(Pulse Wave)モードである。Bモードは、超音波エコーの振幅を輝度に変換して断層画像を表示するモードである。CFモードは、平均血流速度、フロー変動、フロー信号の強さ又はフローパワー等を様々な色にマッピングしてBモード画像に重ねて表示するモードである。PWモードは、パルス波の送受信に基づいて検出される超音波エコー源の速度(例えば、血流速度)を表示するモードである。
なお、上述した超音波画像生成モードは、あくまでも一例であり、上述した3種類のモード以外のモード、例えば、A(Amplitude)モード及びM(Motion)モード等が更に含まれてもよい。
以上のように構成された超音波診断装置10は、電源投入後に、検査情報を入力する入力ステップと、超音波診断を行う診断ステップと、超音波診断準備等のために待機する待機ステップと、を実施する。超音波診断装置10の起動時には、先ず、入力ステップが実施される。入力ステップでは、術者が操作卓100を操作することにより、上述した検査情報の入力が行われる。検査情報の入力終了後、術者が操作卓100によって超音波診断の開始を指示すると、診断ステップが開始される。また、検索情報の入力が終了してから超音波診断の開始指示があるまでの間は、待機ステップが実施される。
また、入力ステップの実施後には、超音波診断装置10の動作モード(以下、単に動作モードと言う。)の設定がなされる。本実施形態において、動作モードは、第一モード及び第二モードを含んでおり、超音波診断装置10は、いずれか一方のモードに従って動作する。第一モードは、通常の手順にて超音波診断を実施するモードである。第二モードは、超音波診断を実施する一方で、超音波診断の実施期間以外の期間(以下、非診断期間と言う。)に後述の分極処理を実施するモードである。
<<超音波内視鏡の構成>>
次に、超音波内視鏡12の構成について図1乃至4を参照しながら説明する。超音波内視鏡12は、挿入部22及び操作部24を有する。挿入部22は、図1に示すように先端側(自由端側)から順に、先端部40、湾曲部42及び軟性部43を備える。先端部40には、図2に示すように超音波観察部36及び内視鏡観察部38が設けられている。
また、図2に示すように、先端部40には処置具導出口44が設けられている。処置具導出口44は、鉗子、穿刺針、若しくは高周波メス等の処置具(不図示)の出口となり、且つ、血液及び体内汚物等の吸引物を吸引する際の吸引口にもなる。
さらに、図1及び図2等に示すように、先端部40において、超音波振動子ユニット46を覆う位置にバルーン37が着脱自在に装着されている。このバルーン37は、膨張及び収縮可能な袋体であり、超音波振動子ユニット46とともに患者の体腔内に配置され、体腔内で膨張及び収縮する。
なお、バルーン37については、後の項で詳しく説明する。
湾曲部42は、挿入部22において先端部40よりも基端側(超音波振動子ユニット46が設けられている側とは反対側)に設けられた部分であり、湾曲自在である。軟性部43は、湾曲部42と操作部24との間を連結している部分であり、可撓性を有し、細長く延びた状態で設けられている。
挿入部22及び操作部24の各々の内部には、図4に示すように送気送水用の管路及び吸引用の管路が、それぞれ複数形成されている。さらに、図3及び図4に示すように、挿入部22及び操作部24の各々の内部には、一端が処置具導出口44に通じる処置具チャンネル45が形成されている。
次に、超音波内視鏡12の構成要素のうち、超音波観察部36、内視鏡観察部38、バルーン37、送気送水用及び吸引用の管路、並びに操作部24に関して詳しく説明する。
(超音波観察部)
超音波観察部36は、超音波画像を取得するために設けられた部分であり、挿入部22の先端部40において先端側に配置されている。超音波観察部36は、図3に示すように超音波振動子ユニット46と、複数の同軸ケーブル56と、FPC(Flexible Printed Circuit)60とを備える。
超音波振動子ユニット46は、超音波探触子(プローブ)に相当し、患者の体腔内(被検体の内部)において超音波を送受信する。具体的に説明すると、超音波振動子ユニット46は、複数の超音波振動子48のうちの駆動対象振動子が駆動することにより、超音波を送受信する。駆動対象振動子とは、超音波診断時に実際に駆動(振動)して超音波を発し、その反射波(エコー)を受信したときに電気信号である受信信号を出力する超音波振動子48である。
なお、本実施形態では、超音波振動子ユニット46が内視鏡と一体化されており、内視鏡とともに患者の体腔内に挿入されることになっているが、これに限定されるものではない。例えば、超音波振動子ユニット46が内視鏡とは分離しており、内視鏡とは別に患者の体腔内に挿入されるものであってもよい。
本実施形態に係る超音波振動子ユニット46は、図3に示すように複数の超音波振動子48が円弧状に配置されたコンベックス型の探触子であり、放射状(円弧状)に超音波を送信する。ただし、超音波振動子ユニット46の種類(型式)については特に限定されるものではなく、超音波を送受信できるものであれば他の種類でもよく、例えば、セクタ型、リニア型及びラジアル型等であってもよい。
超音波振動子ユニット46は、図3に示すようにバッキング材層54と、超音波振動子アレイ50と、音響整合層76と、音響レンズ78とを積層させることで構成されている。
超音波振動子アレイ50は、一次元アレイ状に配列された複数の超音波振動子48(超音波トランスデューサ)からなる。より詳しく説明すると、超音波振動子アレイ50は、N個(例えばN=128)の超音波振動子48が先端部40の軸線方向(挿入部22の長手軸方向)に沿って凸湾曲状に等間隔で配列されることで構成されている。なお、超音波振動子アレイ50は、複数の超音波振動子48を二次元アレイ状に配置したものであってもよい。
N個の超音波振動子48の各々は、圧電素子である単結晶振動子の両面に電極を配置することで構成されている。単結晶振動子としては、水晶、ニオブ酸リチウム、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)、インジウムニオブ酸鉛(PIN)、チタン酸鉛(PT)、タンタル酸リチウム、ランガサイト、酸化亜鉛、マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMN-PT)、及び亜鉛ニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PZN-PT)などが用いられる。
電極は、複数の超音波振動子48の各々に対して個別に設けられた個別電極(不図示)と、複数の超音波振動子48に共通のグランド電極(不図示)とからなる。また、電極は、同軸ケーブル56及びFPC60を介して超音波用プロセッサ装置14と電気的に接続される。
なお、本実施形態に係る超音波振動子48は、患者の体腔内の超音波画像を取得する理由から、7MHz~8MHzレベルの比較的高周波数で駆動(振動)する必要がある。そのために、超音波振動子48を構成する圧電素子の厚みは、比較的薄く設計されており、例えば、75~125μmであり、好ましくは90~125μmである。
各超音波振動子48には、パルス状の駆動電圧が、入力信号として超音波用プロセッサ装置14から同軸ケーブル56を通じて供給される。この駆動電圧が超音波振動子48の電極に印加されると、圧電素子が伸縮して超音波振動子48が駆動(振動)する。この結果、超音波振動子48からパルス状の超音波が出力される。このとき、超音波振動子48から出力される超音波の振幅は、その超音波振動子48が超音波を出力した際の強度(出力強度)に応じた大きさとなっている。ここで、出力強度は、超音波振動子48から出力された超音波の音圧の大きさとして定義される。
また、各超音波振動子48は、超音波の反射波(エコー)を受信すると、これに伴って振動(駆動)し、各超音波振動子48の圧電素子が電気信号を発生する。この電気信号は、超音波の受信信号として各超音波振動子48から超音波用プロセッサ装置14に向けて出力される。このとき、超音波振動子48から出力される電気信号の大きさ(電圧値)は、その超音波振動子48が超音波を受信した際の受信感度に応じた大きさとなっている。ここで、受信感度は、超音波振動子48が送信する超音波の振幅に対する、その超音波振動子48が超音波を受信して出力した電気信号の振幅の比として定義される。
本実施形態では、N個の超音波振動子48をマルチプレクサ140などの電子スイッチで順次駆動させることで、超音波振動子アレイ50が配された曲面に沿った走査範囲、例えば曲面の曲率中心から数十mm程度の範囲で超音波が走査される。より詳しく説明すると、例えば超音波画像としてBモード画像(断層画像)を取得する場合には、マルチプレクサ140のチャンネル選択により、N個の超音波振動子48のうち、連続して並ぶm個(例えば、m=2/N)の駆動対象振動子に駆動電圧が供給される。これにより、m個の駆動対象振動子の各々が駆動し、各駆動対象振動子から超音波が開口から出力される。出力されたm個の超音波は、直後に合成され、その合成波(超音波ビーム)が観察対象部位に向けて送信される。その後、m個の駆動対象振動子の各々は、観察対象部位にて反射された超音波(エコー)を受信し、その時点での受信感度に応じた電気信号(受信信号)を出力する。
上記一連の工程(すなわち、駆動電圧の供給、超音波の送受信、及び電気信号の出力)は、マルチプレクサ140での開口チャンネルを切り替えて駆動対象振動子の位置を1つずつ(1個の超音波振動子48ずつ)ずらしながら繰り返し行われる。例えば、1フレーム分のBモード画像を取得するにあたり、上記一連の工程(以下、便宜的にパスと言う。)は、N個の超音波振動子48のうち、一端側の超音波振動子48から他端側の超音波振動子48に向かって計N回繰り返され、各パスによってBモード画像を構成する各画像片が形成される。ここで、画像片とは、略扇状のBモード画像をその外縁である円弧に沿ってN等分したものである。
バッキング材層54は、超音波振動子アレイ50を裏側(音響整合層76とは反対側)から支持する。また、バッキング材層54は、超音波振動子48から発せられた超音波、若しくは観察対象部位にて反射された超音波(エコー)のうち、超音波振動子アレイ50の裏側に伝播した超音波を減衰させる機能を有する。なお、バッキング材は、硬質ゴム等の剛性を有する材料からなり、超音波減衰材(フェライト及びセラミックス等)が適量添加されている。
音響整合層76は、患者の人体と駆動対象振動子との間の音響インピーダンス整合をとるために設けられたものである。音響整合層76は、超音波振動子アレイ50(つまり、複数の超音波振動子48)の外側に配置され、厳密には、超音波振動子アレイ50の上に重ねられている。音響整合層76が設けられていることにより、超音波の透過率を高めることが可能となる。音響整合層76の材料としては、音響インピーダンスの値が超音波振動子48の圧電素子に比して、より患者の人体のものの値に近い様々な有機材料を用いることができる。音響整合層76の材料としては、具体的にはエポキシ系樹脂、シリコンゴム、ポリイミド及びポリエチレン等が挙げられる。
音響整合層76上に重ねられた音響レンズ78は、駆動対象振動子から発せられる超音波を観察対象部位に向けて収束させるためのものである。なお、音響レンズ78は、例えば、シリコン系樹脂(ミラブル型シリコンゴム(HTVゴム)、液状シリコンゴム(RTVゴム)等)、ブタジエン系樹脂、及びポリウレタン系樹脂等からなり、必要に応じて酸化チタン、アルミナ若しくはシリカ等の粉末が混合される。
なお、駆動対象振動子から送信された超音波の一部は、音響インピーダンスの違いにより、音響レンズ78の境界位置にて反射する。このため、超音波振動子48は、音響レンズ78の境界位置にて反射した超音波を受信し、その受信信号を出力することになる。この結果、超音波画像(詳しくは、断層画像)には、音響レンズ78の境界が映り込むことになる(例えば、図12参照)。
FPC60は、各超音波振動子48が備える電極と電気的に接続される。複数の同軸ケーブル56の各々は、その一端にてFPC60に配線されている。超音波内視鏡12が超音波用コネクタ32aを介して超音波用プロセッサ装置14に接続されると、各同軸ケーブル56は、その他端(FPC60側とは反対側)にて超音波用プロセッサ装置14と電気的に接続される。
さらに、超音波内視鏡12は、内視鏡側メモリ58(図7参照)を備えている。内視鏡側メモリ58には、超音波診断時に駆動対象振動子が駆動した駆動時間が記憶される。より厳密に説明すると、内視鏡側メモリ58には、超音波診断装置10の動作モードが第一モードになってからの駆動対象振動子の駆動時間(厳密には、述べ駆動時間)が記憶される。
なお、本実施形態では、術者が超音波診断の開始指示を行ってから超音波診断が終了するまでの時間(より詳しくは、ライブモードで超音波診断が実施された時間)を駆動時間として取り扱うこととする。ただし、これに限定されるものではなく、実際に駆動対象振動子に対して駆動電圧を供給した時間を駆動時間としてもよい。
超音波内視鏡12が超音波用プロセッサ装置14と接続された状態では、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間を読み取ることが可能である。また、超音波用プロセッサ装置14のCPU152は、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間を初期値に書き換えたり(すなわち、クリアしたり)、超音波診断の実施に伴って駆動時間が増えた場合には新たな駆動時間に更新したりする。
(内視鏡観察部)
内視鏡観察部38は、内視鏡画像を取得するために設けられた部分であり、挿入部22の先端部40において超音波観察部36よりも基端側に配置されている。内視鏡観察部38は、図2及び図3に示すように観察窓82、対物レンズ84、固体撮像素子86、照明窓88、洗浄ノズル90及び配線ケーブル92等によって構成されている。
観察窓82は、挿入部22の先端部40において軸線方向(挿入部22の長手軸方向)に対して斜めに傾けられた状態で取り付けられている。観察窓82から入射されて観察対象隣接部位にて反射された光は、対物レンズ84で固体撮像素子86の撮像面に結像される。
固体撮像素子86は、観察窓82及び対物レンズ84を透過して撮像面に結像された観察対象隣接部位の反射光を光電変換して、撮像信号を出力する。固体撮像素子86としては、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)、及びCMOS(Complementary MetalOxide Semiconductor:相補形金属酸化膜半導体)等が利用可能である。固体撮像素子86で出力された撮像画像信号は、挿入部22から操作部24まで延設された配線ケーブル92を経由して、ユニバーサルコード26により内視鏡用プロセッサ装置16に伝送される。
照明窓88は、図2に示すように観察窓82の両脇位置に設けられている。照明窓88には、ライトガイド(不図示)の出射端が接続されている。ライトガイドは、挿入部22から操作部24まで延設され、その入射端は、ユニバーサルコード26を介して接続された光源装置18に接続されている。光源装置18で発せられた照明光は、ライトガイドを伝わり、照明窓88から観察対象隣接部位に向けて照射される。
洗浄ノズル90は、観察窓82及び照明窓88の表面を洗浄するために挿入部22の先端部40に形成された噴出孔であり、洗浄ノズル90からは、空気又は洗浄用液体が観察窓82及び照明窓88に向けて噴出される。なお、本実施形態において、洗浄ノズル90から噴出される洗浄用液体は、水、特に脱気水である。ただし、洗浄用液体については、特に限定されるものではなく、他の液体、例えば、通常の水(脱気されていない水)であってもよい。
(バルーン)
バルーン37は、膨縮自在な筒状のゴム材からなり、挿入部22の先端部40の外周面において超音波振動子ユニット46を覆う位置に配置されている。具体的に説明すると、バルーン37の開口端には伸縮自在な止着リング39が形成されている。先端部40の外面には、止着リング39の位置に合わせて円環状の嵌合溝41が形成されている。止着リング39の直径は、嵌合溝41の直径よりも僅かに短くなっている。そして、止着リング39を嵌合溝41に嵌合させると、バルーン37が先端部40の外周面に圧着するようになる。
バルーン37は、その内部に超音波伝達媒体が注入されることで膨張する。また、挿入部22の先端部40が患者の体腔内に挿入された状態でバルーン37が膨張すると、バルーン37は、体腔内壁(例えば、観察対象隣接部位の周辺)に当接する。これにより、超音波振動子ユニット46と体腔内壁との間から空気が排除されるようになり、空気中での超音波及びその反射波(エコー)の減衰を防止することが可能となる。
本実施形態において、超音波伝達媒体は、液状媒体であり、具体的には水(厳密には、脱気水)である。ただし、超音波伝達媒体については、特に限定されるものではなく、超音波を良好に伝達させ得る液状媒体であれば制限なく利用可能である。
また、超音波伝達媒体である脱気水は、挿入部22の先端部40において超音波振動子ユニット46付近に形成された送水口47を通じてバルーン37内に注水される。これにより、バルーン37が膨張する。一方、患者の体腔内から挿入部22を引き出す際には、バルーン37内の脱気水を送水口47から吸引することにより、バルーン37の内部から脱気水を排水してバルーン37を収縮させる。
なお、バルーン37の膨張及び収縮は、患者の体内に超音波内視鏡12が挿入された状態で繰り返し行われる場合がある。例えば、観察対象部位を変えて超音波診断を実施する場合には、超音波内視鏡12を体腔内に挿入したままの状態で超音波内視鏡12の挿入量を変えたり超音波内視鏡12の操作部24を操作したりして、超音波振動子ユニット46が接触する部位(すなわち、観察対象隣接部位)を変えることになる。この場合、膨張状態のバルーン37をいったん収縮させ、新たな観察対象隣接部位に超音波振動子ユニット46を接触させてから、バルーン37を再度膨張させることになる。
また、駆動対象振動子から送信された超音波の一部は、音響インピーダンスの違いによりバルーン37にて反射する。このため、駆動対象振動子は、バルーン37にて反射した超音波を受信し、その受信信号を出力することになる。この結果、超音波画像(詳しくは、断層画像)には、バルーン37が映り込むことになる(例えば、図12参照)。
(送気送水用及び吸引用の管路)
送気送水用及び吸引用の管路について説明するにあたり、超音波診断装置10が備える送気送水用及び吸引用の設備、具体的には送水タンク21a、吸引ポンプ21b及び送気ポンプ21cについて説明する。
送水タンク21aは、脱気水を貯留するタンクである。なお、脱気水は、洗浄ノズル90から噴出される洗浄用液体として用いられると共に、バルーン37内に注水される超音波伝達媒体としても用いられる。ただし、これに限定されるものではなく、洗浄用液体と超音波伝達媒体とを分けて用意し、それぞれを別々のタンクに貯留してもよい。
吸引ポンプ21bは、処置具導出口44を通じて体腔内の吸引物(洗浄用に供給された脱気水を含む)を吸引する。送気ポンプ21cは、所定の送気先に空気を送気する。送気ポンプ21cによって送られる空気の送気先については、切り替え可能であり、例えば、洗浄ノズル90を通じて患者の体腔内に送気することが可能である。また、送気ポンプ21cから送水タンク21a内に送気することも可能である。この場合には送水タンク21a内が加圧され、加圧されたタンク内圧力を利用して送水タンク21a内の脱気水をバルーン37内に送水することができる。
なお、吸引ポンプ21b及び送気ポンプ21cは、超音波診断装置10の起動中、常時作動する。
次に、挿入部22及び操作部24の各々の内部に設けられた管路について図4を参照しながら説明する。挿入部22及び操作部24内には、図4に示すように、処置具チャンネル45と送気送水管路62とバルーン管路63とが設けられている。
処置具チャンネル45は、操作部24に設けられた処置具挿入口30と処置具導出口44との間を連絡している。また、処置具チャンネル45からは吸引管路64が分岐している。吸引管路64は、操作部24に設けられた吸引ボタン28bに接続している。送気送水管路62は、その一端側で洗浄ノズル90に通じており、他端側では送気管路65と送水管路66とに分岐している。送気管路65及び送水管路66は、操作部24に設けられた送気送水ボタン28aに接続している。
バルーン管路63は、その一端側が送水口47に接続されていてバルーン37内部と連通しており、他端側ではバルーン送水管路67とバルーン排水管路68とに分岐している。バルーン送水管路67は、送気送水ボタン28aに接続しており、バルーン排水管路68は、吸引ボタン28bに接続している。
また、図4に示すように、送気送水ボタン28aには、送気管路65、送水管路66、及びバルーン送水管路67のほかに、送気ポンプ21cに通じる送気源管路69の一端と、送水タンク21aに通じる送水源管路70の一端とが接続されている。送気源管路69の他端は、光源用コネクタ32c内で分岐管路71によって分岐されている。分岐管路71は、送水タンク21aの入口に接続されている。また、送水源管路70の他端は、分岐管路71内を通って送水タンク21a内に挿入されている。そして、分岐管路71を介して送気ポンプ21cからの送気により、送水タンク21aの内部圧力が上昇すると、送水タンク21a内の水(脱気水)が送水源管路70へ送水される。
吸引ボタン28bには、吸引管路64及びバルーン排水管路68のほかに、吸引ポンプ21bに通じる吸引源管路72の一端が接続されている。
(操作部)
操作部24は、超音波診断開始時、診断中及び診断終了時等に術者によって操作される部分であり、その一端にはユニバーサルコード26の一端が接続されている。操作部24は、図1に示すように送気送水ボタン28a、吸引ボタン28b、一対のアングルノブ29及び処置具挿入口(鉗子口)30を有する。
一対のアングルノブ29の各々を回動すると、湾曲部42が遠隔的に操作されて湾曲変形する。この変形操作により、超音波観察部36及び内視鏡観察部38が設けられた挿入部22の先端部40を所望の方向に向けることができる。処置具挿入口30は、鉗子等の処置具(不図示)を挿通するために形成された孔であり、処置具チャンネル45を介して処置具導出口44と連絡している。処置具挿入口30に挿入された処置具は、処置具チャンネル45を通過した後に処置具導出口44から体腔内に導入される。
送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bは、2段切り替え式の押しボタンであり、挿入部22及び操作部24の各々の内部に設けられた管路の開閉を切り替えるために操作される。特に、本実施形態では、送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bを操作することで、バルーン37を膨張又は収縮させることができる。換言すると、送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bは、バルーン37を膨張又は収縮させる際に術者によって操作される押しボタンである。
以下、送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bの各々の詳細構成について図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、吸引ボタン28bの断面図である。図6は、送気送水ボタン28aの断面図である。なお、送気送水ボタン28aの構成は、吸引ボタン28bの構成と類似しているため、図6に図示した送気送水ボタン28aの構成部品のうち、吸引ボタン28bが有する部品と同じ部品には、吸引ボタン28bが有する部品と同一の符号が付けられている。
送気送水ボタン28aは、その頂部に設けられた操作キャップ112が操作されていないときには、送水源管路70を遮断すると共に、送気源管路69を操作キャップ112の排気孔110に連通される。この状態において、操作キャップ112に形成された排気孔110が術者の指等によって塞がれると(図6参照)、送気源管路69と送気管路65とが連通する。これにより、送気管路65へ空気が送られて洗浄ノズル90から空気が噴出される。
また、送気送水ボタン28aは、操作キャップ112が半押し操作(一段階操作)されたときに、送気源管路69を遮断すると共に、送水源管路70を送水管路66のみに連通させる。これにより、送水源管路70から送られる脱気水が送水管路66を流れて洗浄ノズル90から噴出される。また、送気送水ボタン28aは、操作キャップ112が全押し操作(二段階操作)されたときに、送気源管路69の遮断が継続された状態で、送水源管路70をバルーン送水管路67のみに連通させる。これにより、送水源管路70から送られる脱気水がバルーン送水管路67を流れてバルーン37内へ送水される。
吸引ボタン28bは、その頂部に設けられた操作キャップ112が操作されていないときは、吸引源管路72を大気に連通させる。また、吸引ボタン28bは、操作キャップ112が半押し操作(一段階操作)されたとき、吸引源管路72を吸引管路64のみに連通させる。これにより、吸引管路64及び処置具チャンネル45の負圧吸引力が上昇し、処置具導出口44から吸引物が吸引される。また、吸引ボタン28bは、操作キャップ112が全押し操作(二段階操作)されたとき、吸引源管路72をバルーン排水管路68のみに連通させる。これにより、バルーン排水管路68及びバルーン管路63の負圧吸引力が上昇し、バルーン37内の水が排水される。
吸引ボタン28bは、図5に示すように、シリンダ114内にピストン116がスライド自在に収容され、シリンダ114に設けられたシリンダキャップ118によってピストン116が位置決めされるように構成されている。シリンダ114には、吸引管路64、バルーン排水管路68、及び吸引源管路72が接続されている。また、シリンダ114内には、その軸方向に延びたシリンダ管路120が形成されている。シリンダ管路120の一端は、開口端となっており、シリンダ管路120の他端には、吸引管路64に通じる吸引接続口73が設けられている。さらに、シリンダ管路120内には、他端側から一端側に向かって吸引源管路72に通じる吸引源接続口74と、バルーン排水管路68に通じる排水接続口75とが開口している。
ピストン116は、シリンダ管路120の一端である開口端から突出した軸先端部122と、シリンダ管路120内に常時収容される軸本体部124とからなる。軸先端部122の頂部には、押圧操作を受ける操作キャップ112が固定されている。軸本体部124には、その軸後端面に形成された後端面開口126と、側面に形成された側面開口128と、後端面開口126及び側面開口128を連通する内部管路130とが設けられている。側面開口128は、操作キャップ112が半押し操作されたときに吸引源接続口74と略対向する位置に形成されている。また、軸本体部124の側面において、側面開口128よりも軸先端部122により近い部分には、環状の周溝132が形成されている。周溝132は、操作キャップ112が全押し操作されたときに排水接続口75及び吸引源接続口74と略対向する位置に形成されている。
ピストン116は、操作キャップ112が押圧操作されていないときの位置(以下、非押圧位置)と、操作キャップ112が全押し操作されたときの位置(以下、全押し位置)との間でスライド移動する。そして、ピストン116が非押圧位置にあるとき、吸引源接続口74と吸引接続口73との連通を遮断し、且つ、吸引源接続口74と排水接続口75との連通を遮断する遮断状態にある。また、ピストン116は、全押し位置に至ると、周溝132により吸引源接続口74に対して排水接続口75のみを連通されるバルーン排水状態となる。バルーン排水状態時には、排水接続口75が吸引源接続口74と連通することで、吸引源管路72がバルーン排水管路68及びバルーン管路63と連通する。そして、吸引源管路72からバルーン管路63に至る範囲で負圧吸引力が上昇して、バルーン37内から脱気水が排水されてバルーン37が収縮する。バルーン37から排水された脱気水は、超音波内視鏡12の外へ排出される。また、ピストン116は、操作キャップ112が半押し操作されたとき、非押圧位置と全押し位置との間に位置する半押し位置に移動する。この際、ピストン116は、内部管路130によって吸引源接続口74に吸引接続口73のみを連通させる吸引状態になる。
また、ピストン116は、シリンダキャップ118内に設けられた2つのコイルバネ134a、134bによって操作キャップ112側に付勢される。これにより、ピストン116は、操作キャップ112が操作されていないときには、非押圧位置で維持される。また、ピストン116を非押圧位置から半押し位置へ移動させるとき、ピストン116を全押し位置へ更に移動させるときには、コイルバネ134a、134bの付勢力に抗して操作キャップ112を押圧することになる。ここで、ピストン116は、非押圧位置から半押し位置までの範囲にある間には、2つのコイルバネ134a、134bの一方のみから付勢され、半押し位置から全押し位置までの範囲にある間には、2つのコイルバネ134a、134bの双方から付勢される。このため、ピストン116を非押圧位置から全押し位置に移動させる途中、具体的には、ピストン116が半押し位置に至った際に、ピストン116に掛かる付勢力が変わる。これにより、ピストン116が半押し位置に至った時点で操作キャップ112を一時停止させることが可能となる。
また、シリンダ管路120内の吸引接続口73側の端部(後端部)には、図5に示すように検知器139aが配置されている。この検知器139aは、バルーン37を収縮させるための操作(すなわち、全押し操作)が吸引ボタン28bにて行われたことを検知する。具体的に説明すると、検知器139aは、ピストン116が全押し位置に至ったときにピストン116と接触し、その際に検知信号を超音波用プロセッサ装置14のCPU152に向けて出力する。
送気送水ボタン28aは、図6に示すように、シリンダ114と、シリンダ114内に収容されたピストン116と、ピストン116の先端に取り付けられた操作キャップ112と、シリンダ114に取り付けられるシリンダキャップ118とを有する。シリンダ114は、有底筒状に形成されており、シリンダ管路120を有する。シリンダ管路120には、送気管路65との接続口121a、送気源管路69との接続口121b、送水管路66との接続口121c、送水源管路70との接続口121d、及びバルーン送水管路67との接続口121eが設けられている。
送気送水ボタン28aの操作キャップ112には排気孔110が形成されており、排気孔110は、ピストン116の貫通穴136と連通している。
送気送水ボタン28aのピストン116は、吸引ボタン28bの場合と同様に操作キャップ112が操作されることで移動し、非押圧位置、半押し位置及び全押し位置に変位する。ピストン116が非押圧位置にあるときには、送気ポンプ21cからの空気が操作キャップ112の排気孔110から排出される。このとき、図6に示すように排気孔110が指等によって塞がれると、送気管路65から送られてくる空気がピストン116内に滞留し、これによってピストン116内の圧力が上昇する。この結果、ピストン116の、操作キャップ112とは反対側の端部に取り付けられた逆止弁138が開き、ピストン116内の空気が送気管路65へ送気される。
操作キャップ112が半押し操作されると、ピストン116が半押し位置に移動する。これにより、送水管路66と送水源管路70とが互いに接続された状態になり、ノズル送水が行われ、洗浄ノズル90から脱気水が噴出される。このとき、送気管路65及び送気源管路69は遮断されている。また、操作キャップ112が全押し操作されると、ピストン116が全押し位置に移動する。これにより、バルーン送水管路67と送水源管路70とが互いに接続された状態になり、送水タンク21aに貯留された脱気水が送水源管路70、バルーン送水管路67、及びバルーン管路63を経由して送水口47からバルーン37内に注水される。このときも、送気管路65及び送気源管路69は遮断されている。
また、吸引ボタン28bと同様に、送気送水ボタン28aのシリンダ管路120内の吸引接続口73側の端部にも、図6に示すように検知器139bが配置されている。この検知器139bは、バルーン37を膨張させるための操作(すなわち、全押し操作)が送気送水ボタン28aにて行われたことを検知する。具体的に説明すると、検知器139bは、ピストン116が全押し位置に至ったときにピストン116と接触し、その際に検知信号を超音波用プロセッサ装置14のCPU152に向けて出力する。
<<超音波用プロセッサ装置の構成>>
超音波用プロセッサ装置14は、超音波振動子ユニット46に超音波を送受信させ、且つ、超音波受信時に駆動対象素子が出力した受信信号に基づいて超音波画像を生成する。また、超音波用プロセッサ装置14は、生成した超音波画像をモニタ20に表示する。
さらに、本実施形態において、超音波用プロセッサ装置14(厳密には、後述の分極処理部155)は、分極処理を実施し、N個の超音波振動子48のうちの分極対象振動子に対して分極用電圧を供給して分極対象振動子を分極する。分極処理の実施により、超音波診断の繰り返し実施によって脱分極した超音波振動子48を再度分極することができ、これにより、超音波振動子48の超音波に対する受信感度を良好なレベルまで回復させることが可能となる。
超音波用プロセッサ装置14は、図7に示すように、マルチプレクサ140、受信回路142、送信回路144、A/Dコンバータ146、ASIC148、シネメモリ150、メモリコントローラ151、CPU(Central Processing Unit)152、DSC(Digital Scan Converter)154、及び分極処理部155を有する。
受信回路142及び送信回路144は、マルチプレクサ140を介して超音波内視鏡12の超音波振動子アレイ50と電気的に接続する。マルチプレクサ140は、N個の超音波振動子48の中から最大m個の駆動対象振動子を選択し、そのチャンネルを開口させる。
送信回路144は、超音波振動子ユニット46から超音波を送信するために、マルチプレクサ140により選択された駆動対象振動子に対して超音波送信用の駆動電圧を供給する回路である。駆動電圧は、パルス状の電圧信号であり、ユニバーサルコード26及び同軸ケーブル56を介して駆動対象振動子の電極に印加される。
受信回路142は、超音波(エコー)を受信した駆動対象振動子から出力される電気信号、すなわち受信信号を受信する回路である。また、受信回路142は、CPU152から送られてくる制御信号に従って、超音波振動子48から受信した受信信号を増幅し、増幅後の信号をA/Dコンバータ146に引き渡す。A/Dコンバータ146は、受信回路142と接続しており、受信回路142から受け取った受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をASIC148に出力する。
ASIC148は、A/Dコンバータ146と接続しており、図7に示すように、位相整合部160、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164及びCFモード画像生成部166を構成している。
なお、本実施形態では、ASIC148等のようなハードウェア回路によって上述の機能(具体的には、位相整合部160、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164及びCFモード画像生成部166)を実現しているが、これに限定されるものではない。中央演算装置(CPU)と各種データ処理を実行させるためのソフトウェア(コンピュータプログラム)とを協働させることで上記の機能を実現させてもよい。
位相整合部160は、A/Dコンバータ146によりデジタル信号化された受信信号(受信データ)に対して遅延時間を与えて整相加算する(受信データの位相を合わせてから加算する)処理を実施する。整相加算処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が生成される。
Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164及びCFモード画像生成部166は、超音波振動子ユニット46が超音波を受信した際に駆動対象振動子が出力する電気信号(厳密には、受信データを整相加算することで生成された音声信号)に基づいて、超音波画像を生成する。
Bモード画像生成部162は、患者の内部(体腔内)の断層画像であるBモード画像を生成する画像生成部である。Bモード画像生成部162は、順次生成される音線信号に対し、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施す。また、Bモード画像生成部162は、補正後の音線信号に対して包絡線検波処理及びLog(対数)圧縮処理を施して、Bモード画像(画像信号)を生成する。
PWモード画像生成部164は、所定方向における血流速度を表示する画像を生成する画像生成部である。PWモード画像生成部164は、位相整合部160によって順次生成される音線信号のうち、同一方向における複数の音線信号に対して高速フーリエ変換を施すことで周波数成分を抽出する。その後、PWモード画像生成部164は、抽出した周波数成分から血流速度を算出し、算出した血流速度を表示するPWモード画像(画像信号)を生成する。
CFモード画像生成部166は、所定方向における血流の情報を表示する画像を生成する画像生成部である。CFモード画像生成部166は、位相整合部160によって順次生成される音線信号のうち、同一方向における複数の音線信号の自己相関を求めることで、血流に関する情報を示す画像信号を生成する。その後、CFモード画像生成部166は、上記の画像信号をBモード画像信号に組み込むことにより、血流に関する情報を重畳させたカラー画像としてのCFモード画像(画像信号)を生成する。
DSC154は、ASIC148に接続されており、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164又はCFモード画像生成部166が生成した画像の信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後にモニタ20に出力する。
メモリコントローラ151は、ASIC148に接続されており、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164又はCFモード画像生成部166が生成した画像信号をシネメモリ150に格納する。シネメモリ150は、1フレーム分又は数フレーム分の画像信号を蓄積するための容量を有する。ASIC148が生成した画像信号は、DSC154に出力される一方で、メモリコントローラ151によってシネメモリ150にも格納される。フリーズモード時には、メモリコントローラ151がシネメモリ150に格納された画像信号を読み出し、DSC154に出力する。これにより、フリーズモード時には、シネメモリ150から読み出された画像信号に基づく超音波画像(静止画像)がモニタ20に表示されるようになる。
分極処理部155は、分極処理を実施するものであり、図7に示すように分極用回路156及び回路切り替え器158によって構成されている。分極用回路156は、分極用電圧供給部を構成しており、分極対象振動子を分極するために、分極対象振動子に対して分極用電圧を供給する。分極用電圧は、分極対象振動子(厳密には、分極対象振動子が有する圧電素子)を分極するための電圧であり、分極対象振動子が有する電極に印加されることで分極対象振動子が分極される(すなわち、分極子の方向が一方向に揃えられる)。
分極用回路156は、ユニバーサルコード26及び同軸ケーブル56を介して複数の超音波振動子48の各々と電気的に接続される。また、本実施形態において、分極用回路156は、送信回路144とは別に設けられており、送信回路144が駆動対象振動子に対して駆動電圧を供給する期間以外の期間(非診断期間)に、分極対象振動子に対して分極用電圧を供給する。また、分極用電圧は、分極用回路156からマルチプレクサ140を経由して分極対象振動子に供給されるが、本実施形態においてマルチプレクサ140を通じて分極用電圧を同時に供給することが可能な分極対象振動子の数は、最大m個である。
なお、分極用電圧は、直流電圧であってもよく、若しくは交流電圧であってもよい。また、分極用電圧が交流電圧である場合、その波形は、連続波形であってもよく、若しくはパルス波形であってもよい。また、分極用電圧の波形がパルス波形である場合、ユニポーラパルスであってもよく、若しくはバイポーラパルスであってもよい。
回路切り替え器158は、図7に示すように、マルチプレクサ140の手前位置で送信回路144及び分極用回路156の双方に接続されており、送信回路144及び分極用回路156のうち、マルチプレクサ140に接続させる回路を切り替えるスイッチである。回路切り替え器158は、通常時には送信回路144のみをマルチプレクサ140に接続させる。この状態において、駆動対象振動子に対して超音波送信用の駆動電圧が供給される。
一方、分極処理の実施時には、回路切り替え器158がマルチプレクサ140に接続させる回路を送信回路144から分極用回路156へ切り替える。この状態において、分極対象振動子に対して分極用電圧が供給される。
CPU152は、超音波用プロセッサ装置14の各部を制御する制御部として機能し、受信回路142、送信回路144、A/Dコンバータ146、ASIC148、分極用回路156及び回路切り替え器158と接続しており、これらの機器を制御する。具体的に説明すると、CPU152は、操作卓100と接続しており、超音波診断時には、操作卓100にて入力された検査情報及び制御パラメータに従って超音波用プロセッサ装置14各部を制御する。これにより、術者によって指定された超音波画像生成モードに応じた超音波画像が取得されるようになり、特にライブモード時には一定のフレームレートにて超音波画像が随時取得される。
また、CPU152は、超音波内視鏡12が超音波用コネクタ32aを介して超音波用プロセッサ装置14に接続されると、PnP(Plug and Play)等の方式により超音波内視鏡12を自動認識する。その後、CPU152は、超音波内視鏡12の内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間を読み取る。さらに、CPU152は、超音波診断終了時に内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間を、直前に実施していた超音波診断の所要時間の分だけ加算した値に更新する。
なお、本実施形態では、超音波内視鏡12側に駆動時間が記憶されることとしたが、これに限定されるものではなく、超音波用プロセッサ装置14側に駆動時間が超音波内視鏡12別に記憶されてもよい。
さらにまた、CPU152は、動作モードが第二モードである期間中、非診断期間を利用して分極処理を分極処理部155に実施させる。つまり、本実施形態では、超音波診断が実施されていない期間(換言すると、駆動電圧が駆動対象振動子に対して供給される期間以外の期間)に分極処理が実施されることになっている。より詳しく説明すると、本実施形態では、バルーン37が膨張又は収縮している間に、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を供給することになっている。
分極用電圧の大きさ(電位)及びその供給時間は、分極対象振動子の仕様(詳しくは、圧電素子の厚み及び材質等)に応じて、CPU152が適当な値に設定することになっている。その後、CPU152は、上記の設定値に基づいて分極処理部155を制御する。具体的に説明すると、CPU152は、分極処理の実施に際して、超音波用プロセッサ装置16側に記憶された条件テーブル(不図示)を参照する。条件テーブルには、超音波内視鏡12別に設定された分極処理の実施条件(例えば、分極用電圧の電位等)が予め規定されている。そして、CPU152は、条件テーブルに記載された分極処理の実施条件のうち、超音波内視鏡12と対応する条件に則って分極処理を実施する。
<<超音波診断装置の動作例について>>
次に、超音波診断装置10の動作例として、超音波診断に関する一連の処理(以下、診断処理とも言う。)の流れを、図8及び図9を参照しながら説明する。図8は、超音波診断装置10を用いた診断処理の流れを示す図である。図9は、診断処理中の診断ステップの手順を示す図である。
超音波内視鏡12が超音波用プロセッサ装置14、内視鏡用プロセッサ装置16及び光源装置18に接続された状態で超音波診断装置10各部の電源が投入されると、それをトリガーとして診断処理が開始される。診断処理では、図8に示すように、先ず入力ステップが実施される(S001)。入力ステップでは、術者が操作卓100を通じて検査情報及び制御パラメータ等を入力する。入力ステップが完了すると、診断開始の指示があるまで、待機ステップが実施される(S002)。待機ステップにおいて、超音波用プロセッサ装置14のCPU152が、超音波内視鏡12の内視鏡側メモリ58から駆動時間を読み取る(S003)。
その後、CPU152は、読み取った駆動時間が規定時間以上であるかどうかを判定する(S004)。規定時間は、予め設定された時間であり、超音波用プロセッサ装置14側で記録されている。なお、規定時間は、超音波内視鏡12毎に異なっていてもよく、あるいは、超音波内視鏡12間で共通した値であってもよい。また、術者が操作卓100を通じて規定時間を変更することが可能な構成であってもよい。
読み取った駆動時間が規定時間未満であると判定した場合(S004でNo)、CPU152は、動作モードを第一モードに設定する(S005)。なお、本実施形態では、初期設定の段階で動作モードが第一モードに設定されていることとする。
動作モードが第一モードに設定された場合、以後のステップ(具体的には、ステップS006、S007、S008)が通常の手順にて行われる。具体的に説明すると、術者からの診断開始指示があると(S006でYes)、CPU152が超音波用プロセッサ装置14各部を制御して診断ステップを実施する(S007)。診断ステップは、図9に図示の流れに沿って進行する。詳しく説明すると、CPU152は、指定された超音波画像生成モードがBモードである場合には(S031でYes)、Bモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御し(S032)、指定された超音波画像生成モードがCFモードである場合には(S033でYes)、CFモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御し(S034)、指定された超音波画像生成モードがPWモードである場合には(S035でYes)、PWモード画像を生成するように超音波用プロセッサ装置14各部を制御する(S036)。
各モードによる超音波画像の生成は、診断終了条件が成立するまで繰り返し実施される(S037)。診断終了条件としては、例えば、術者が操作卓100を通じて診断終了を指示すること等が挙げられる。
診断終了条件が成立すると(S037でYes)、CPU152は、それまで実施していた超音波診断の所要時間を、ステップ003で内視鏡側メモリ58から読み取った駆動時間に加算し、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間を加算後の駆動時間に更新する(S038)。診断ステップにおける上記一連の工程(すなわち、ステップS031からステップS038までの工程)が終了した時点で診断ステップが終了する。その後、超音波診断装置10各部の電源がオフとなると(S008でYes)、診断処理が終了する。一方、超音波診断装置10各部の電源がオン状態で維持される場合には(S008でNo)、入力ステップS001に戻る。なお、診断開始の指示がなされないまま(S006でNo)、電源がオフになった場合にも診断処理は終了する。
診断処理のステップS004に戻って説明すると、内視鏡側メモリ58から読み取った駆動時間が規定時間以上であると判定した場合(S004でYes)、CPU152は、動作モードを第一モードから第二モードに移行させる(S009)。動作モードが第二モードである間には、超音波診断が実施される一方で、非診断期間中に分極処理が実施される。つまり、本実施形態では、動作モードが第二モードであるときに限り、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を供給することになっている。このような構成を採用している理由について、図10を参照しながら、以下に説明する。図10は、超音波振動子48の駆動時間及び分極用電圧供給時間と、超音波振動子48の受信感度との関係を示す説明図である。なお、図中の記号Sは、診断ステップの実施期間を表しており、図中の記号Qは、待機ステップの実施期間を表しており、図中の記号Rは、分極処理の実施期間を表している。
超音波振動子48は、初期の時点(例えば、工場出荷時点)では、所定のレベルまで分極されており、その分極度合いに応じた送受信感度(以下、初期感度Pi)にて超音波を送受信することが可能である。一方、超音波振動子48が超音波の送受信のために駆動すると、図10に示すように、駆動時間が増加するにつれて脱分極が進行し、それに伴って受信感度も低下する。このような傾向は、超音波振動子48が単結晶振動子である場合に顕著であり、特に、超音波振動子48の厚みが薄く高周波数(7MHz~8MHz)にて振動する場合には、より顕著である。
ここで、超音波振動子48の駆動時間(厳密には、延べ駆動時間)をTaとすると、Taは、各回の超音波診断の所要時間(図10中のta1、ta2、、、tan)の合計時間として表されるが、駆動時間Taが規定時間を超えると、図10に示すように、超音波振動子48の受信感度が下限感度Plを下回るようになる。下限感度Plは、超音波画像の画質を維持する上で満たすべき受信感度の下限レベルに相当する。換言すると、上記の規定時間は、下限感度Plに対応する時間として設定されている。
そこで、本実施形態では、駆動時間Taが規定時間以上となったとき(つまり、超音波振動子48の受信感度が下限感度Pl以下となったとき)に、動作モードを第一モードから第二モードに移行させ、第二モードにおいて分極処理を適宜実施することとした。これにより、脱分極した超音波振動子48を再分極し、超音波振動子48の受信感度を回復することが可能となる。
診断処理の説明に戻ると、動作モードが第二モードである間中、駆動電圧が駆動対象振動子に対して供給される期間以外の期間(非診断期間)にバルーン37が膨張又は収縮すると(S010)、CPU152は、バルーン37の膨張中又は収縮中に分極処理を分極処理部155に実施させる(S011)。このように本実施形態では、動作モードが第二モードである期間中の非診断期間にバルーン37が膨張又は収縮し、且つ、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を供給することになっている。
上記のステップS010及びS011についてより詳しく説明すると、超音波診断の実施の前段階で、術者は、超音波内視鏡12が患者の体腔内に挿入された状態で操作部24の送気送水ボタン28a又は吸引ボタン28bを全押し操作してバルーン37を膨張又は収縮する。送気送水ボタン28a又は吸引ボタン28bが全押し操作されると、それぞれの内部に搭載された検知器139a、139bが全押し操作を検知して検知信号をCPU152に向けて出力する。CPU152は、検知信号を受信すると、これをトリガーとして分極処理部155を制御して分極処理部155に分極処理を実施させる。分極処理では、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を一定時間供給する。なお、1回の分極処理では、N個の超音波振動子48の全てを分極対象振動子とする。より詳しく説明すると、分極処理の前半において、N個の超音波振動子48のうちの半分(m個)に対して分極用電圧を供給し、後半において、残り半分(m個)の超音波振動子48に対して分極用電圧を供給する。
また、本実施形態では、動作モードが第二モードである間にバルーン37が繰り返し膨張又は収縮すると、その都度、分極処理が実施される。例えば、超音波診断の実施に際してバルーン37を膨張させるときには、その時点で分極処理が実施され、超音波診断の終了後にバルーン37を収縮させるときには、その時点で分極処理が再度実施される。その後、超音波診断を新たに実施する際に上記の手順と同様の手順にてバルーン37が膨張又は収縮すると、分極処理が再び実施される。
分極処理の実施後、CPU152は、分極用電圧が分極対象振動子に対して供給された分極用電圧供給時間(以下、分極用電圧供給時間Tr)、及び、動作モードが第一モードになってから現時点までの駆動時間Ta(図10ではta1、ta2、ta3及びta4の合計値)の関係が予め設定された条件を満たすかどうかを判断する(S012)。分極用電圧供給時間Trは、動作モードが第二モードになってからの分極処理の累積実施時間である。つまり、分極用電圧供給時間Trは、動作モードが第二モードである期間中に繰り返し実施される分極処理の実施時間(図10ではtr1、tr2、tr3)の合計時間である。
ステップS012について具体的に説明すると、CPU152は、分極用電圧供給時間Trと駆動時間Taとの関係が次式(1)を満たしているかどうかを判定する。
Ta≦αTr (1)
ここで、上式(1)における係数αは、1より大きい値であり、予め超音波用プロセッサ装置14に記憶されている。なお、係数αは、超音波内視鏡12の仕様(具体的には、超音波振動子48を構成する圧電素子の種類)に応じて決定され、超音波内視鏡12毎に記憶されている。ただし、これに限定されるものではなく、係数αは、超音波内視鏡12間で共通した値であってもよい。また、術者が操作卓100を通じて係数αを変更することが可能な構成であってもよい。
CPU12は、分極処理の実施が終了すると、係数αを読み出し、且つ、その時点での分極用電圧供給時間Tr及び駆動時間Taを特定し、上記の関係式(1)が成立するかを判定する。そして、上記の関係式(1)が成立しないとCPU152が判定した場合(S012でNo)、診断開始の指示を待って診断ステップが実施される(S007)。他方、上記の関係式(1)が成立すると判定した場合(S012でYes)、CPU152は、図8に示すように、動作モードを第二モードから第一モードに戻す(S005)。つまり、本実施形態では、分極用電圧供給時間Trをα倍した時間が駆動時間Ta以上となると、動作モードが第二モードから第一モードに移行する。これは、上記の関係式(1)が成立した時点では、脱分極した超音波振動子48が十分に分極されたと考えられるためである。このことについて、以下、図10を参照しながら具体的に説明する。
動作モードが第一モードになってから超音波診断が実施される度に駆動時間Taが各診断の所要時間(図10中のta1、ta2)の分だけ増加する。そして、駆動時間Taが増加すると、その増加量に応じて各超音波振動子48の分極レベル及び受信感度が低下することになる。一方、動作モードが第二モードに移行すると、非診断期間、厳密にはバルーン37が膨張又は収縮する期間に分極処理が実施される。これにより、図10に示すように、動作モードが第二モードである期間中には、各超音波振動子48の分極レベル及び受信感度が分極処理の実施時間(図10中のtr1、tr2、tr3)に応じた分だけ回復する。なお、動作モードが第一モードから第二モードに切り替わった後にも、診断開始の指示があると超音波診断が実施され、それに伴って、各診断の所要時間(図10中のta3、ta4)の分だけ駆動時間Taが増加する。つまり、動作モードが第二モードである間には、超音波振動子48が脱分極する期間と、超音波振動子48を再分極する期間とが併存することになる。
換言すると、動作モードが第二モードである間には、図10に示すように分極処理と、脱分極を伴う超音波診断とが実施され、特に、分極処理は、超音波診断が実施されていない期間を利用して実施される。この結果、分極用電圧供給時間Tr(=tr1+tr2+tr3)は、徐々に増加し、やがて駆動時間Taとの間で上記の関係式(1)を満たすようになる。この時点では、図10から明らかなように、受信感度が初期感度Piのレベルとなるまで各超音波振動子48が分極されている。かかる状態になれば、もはや分極処理を実施する必要がなくなるので、本実施形態では、上記の関係式(1)が成立したことを契機として動作モードを第二モードから第一モードに戻す(移行する)こととしている。
CPU152は、動作モードを第二モードから第一モードに移行させるに際して、内視鏡側メモリ58にアクセスし、内視鏡側メモリ58に記憶された駆動時間Taをクリアして初期値(ゼロ)に書き換える(S013)。なお、このステップS013は、動作モードを第二モードから第一モードに移行させた後に行われてもよい。
<<本発明の超音波診断装置の有効性について>>
本発明の超音波診断装置の特徴は、バルーン37が膨張又は収縮している間に分極対象振動子に対して分極用電圧を供給することにある。
つまり、本発明の超音波診断装置では、超音波診断の前段階におけるバルーン37の膨張時間又は収縮時間を利用して分極処理を実施する。これにより、本発明の超音波診断装置では、特許文献1に記載の超音波診断装置のように分極処理の実施が原因で以後の処理の開始が遅延するような事態が回避される。また、本発明の超音波診断装置では、特許文献2に記載の超音波診断装置のように駆動波形中に分極用の直流成分を含ませるために超音波診断の所要時間が長くなるような事態が回避される。
以上により、本発明の超音波診断装置によれば、超音波診断の所要時間に影響を及ぼさずに超音波振動子48の受信感度を良好に維持する(より詳しくは、分極処理によって受信感度を回復させる)ことが可能である。
<<第二実施形態>>
上述の実施形態では、バルーン37の膨張及び収縮を検知するために、送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bの各々に検知器139a、139bを設けている。そして、送気送水ボタン28a又は吸引ボタン28bにて全押し操作が行われたことを検知器139a、139bが検知すると、これをトリガーとしてCPU152が分極用回路156を制御し、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を供給することとした。ただし、これに限定されるものではなく、バルーン37の膨張及び収縮を検知する方法は、他にも考えられる。
以下では、バルーン37の膨張及び収縮を検知する第二の方法を採用した実施形態(以下、第二実施形態と言う。)について、図11乃至図13を参照しながら説明する。図11は、第二実施形態に係る超音波用プロセッサ装置14xの構成を示すブロック図である。図12は、後述する画像解析部168の解析対象となる断層画像を示す図である。図13は、画像解析部168の解析対象となる断層画像の輝度プロファイルを示す図である。なお、図13の横軸は、断層画像各部の表示深度(デプス)をmm単位で示しており、縦軸は、断層画像各部の輝度を示している。
以下では、第二実施形態について、上述の実施形態と相違する点について説明することとする。また、第二実施形態に関して、上述の実施形態と共通する要素には、図11にて上述の実施形態での符号と同じ符号を付けており、その説明については省略することとする。
第二実施形態の超音波内視鏡12xには、図11に示すように送気送水ボタン28a及び吸引ボタン28bに検知器139a、139bが設けられていない。一方、第二実施形態の超音波用プロセッサ装置14xが有するASIC148は、位相整合部160、Bモード画像生成部162、PWモード画像生成部164及びPWモード画像生成部164に加えて、画像解析部168を更に構成している。画像解析部168は、上述の画像生成部(具体的には、Bモード画像生成部162)に接続しており、Bモード画像生成部162が生成した断層画像であるBモード画像を解析する。そして、第二実施形態では、画像解析部168による画像解析を通じてバルーン37の膨張及び収縮を検知する。
より詳しく説明すると、第二実施形態では、動作モードが第二モードである間において、術者が超音波診断の実施に際して送気送水ボタン28a又は吸引ボタン28bを全押し操作をすると、バルーン37が膨張又は収縮する。CPU152は、これに連動する形で、送信回路144を制御して超音波振動子ユニット46に超音波を送受信させる。これにより、超音波振動子ユニット46の駆動対象振動子が超音波を受信して受信信号を出力する。受信回路142、A/Dコンバータ146及びASIC148(厳密には、位相整合部160及びBモード画像生成部162)は、協働して、駆動対象振動子から出力された受信信号に基づいて、断層画像であるBモード画像を生成する。
上記のBモード画像について図12を参照しながら説明すると、Bモード画像には、観察対象部位(図12中、記号Gが付された部分)の他に音響レンズ78及びバルーン37が映り込んでいる。つまり、Bモード画像生成部162は、音響レンズ78及びバルーン37が映り込んだBモード画像(断面画像)を生成することになる。
Bモード画像生成部162により生成されたBモード画像(厳密には、画像信号)は、画像解析部168に送られて画像解析に供される。具体的に説明すると、画像解析部168は、Bモード画像中、超音波の走査範囲と交差する一つの方向(例えば、図12中のA-A線が示す方向)における輝度プロファイルを抽出する。ここで、Bモード画像の輝度プロファイルには、音響レンズ78の位置に対応する輝度ピーク(図13中、記号P1が付されたピーク)と、バルーン37の位置に対応する輝度ピーク(図13中、記号P2が付されたピーク)と、観測対象部位Gの位置に対応する輝度ピーク帯(図13中、記号P3が付されたピーク帯)とが現れている。
また、Bモード画像は、Bモード画像生成部162により一定速度にて複数回繰り返し生成され、画像解析部168は、Bモード画像が生成される都度、上記の画像解析を実施する。そして、画像解析部168は、各Bモード画像の解析結果から、Bモード画像中におけるバルーン37のサイズの変化を特定する。具体的に説明すると、図12に図示のBモード画像において、例えば、バルーン37が図12の実線位置から破線位置まで膨張するとき、図13に図示の輝度プロファイルでは、バルーン37の位置に対応する輝度ピークP2が、図13中、実線で示す輝度ピークP2から破線で示す輝度ピークP2まで変位する。画像解析部168は、この輝度ピークP2の変位からバルーン37のサイズの変化(すなわち、バルーン37の膨張)を特定する。また、図12に図示のBモード画像において、例えば、バルーン37が図12の破線位置から一点鎖線位置まで収縮するとき、画像解析部168は、上記と同様の手順により輝度ピークP2の変位からバルーン37のサイズの変化(すなわち、バルーン37の収縮)を特定する。
そして、バルーンのサイズの変化が画像解析部168によって特定された場合、CPU152が分極処理部155に分極処理を実施させ、分極用回路156が分極対象振動子に対して分極用電圧を供給するようになる。
以上のように、第二実施形態では、Bモード画像の解析を通じてバルーン37の膨張及び収縮を検知している。つまり、第二実施形態では、バルーン37のサイズ変化を実際に特定するので、バルーン37の膨張及び収縮をより正確に検知することが可能となる(換言すると、誤検知を回避することができる)。
なお、第二実施形態は、バルーン37の膨張及び収縮を検知する手法が異なる点以外は上述の実施形態と共通しており、上述の実施形態と同様の効果を発揮するものである。
<<第三実施形態>>
上述の実施形態では、分極用電圧供給部が、送信回路144とは別に設けられた分極用回路156によって構成されていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、送信回路144が分極用電圧供給部として兼用される実施形態(以下、第三実施形態と言う。)も考えられる。
以下では、第三実施形態に係る超音波診断装置について、図14及び図15を参照しながら説明する。図14は、第三実施形態に係る超音波プロセッサ装置14yの構成を示すブロック図である。図15は、第三実施形態において供給される分極用電圧の波形を示す図である。
以下では、第三実施形態について、上述の実施形態と相違する点について説明することとする。また、第三実施形態に関して、上述の実施形態と共通する要素には、図14にて上述の実施形態での符号と同じ符号を付けており、その説明については省略することとする。
第三実施形態の超音波プロセッサ装置14yは、図14に示すように、分極処理部155に相当する機器を備えていない。他方、第三実施形態では、送信回路144が、分極用電圧供給部を構成しており、動作モードが第二モードである期間において非診断期間中(詳しくは、バルーン37が膨張又は収縮している間)に分極対象振動子に対して分極用電圧を供給する。つまり、第三実施形態では、CPU152が送信回路144を制御し、超音波診断時には駆動電圧を送信回路144に出力させ、非診断期間中には分極用電圧を送信回路144に出力させる。
第三実施形態において、送信回路144が供給する分極用電圧は、駆動電圧と同様のパルス波状の電圧、より詳しくはユニポーラパルスの電圧である。また、第三実施形態において、CPU152は、効率よく分極を行う目的から、図15に示すように、ユニポーラパルスである分極用電圧が送信回路144から断続的に複数回供給されるように送信回路144を制御する。ここで、パルス波の間隔(図15中のw)は、送信回路144に入力されるクロック信号の複数個分に相当し、具体的には、断続的に並ぶ複数の分極用電圧の波形が疑似的に直流波形をなす程度の間隔となっている。上記の間隔については、分極用電圧の波形を直流波形に近づける理由から、極力短くなっているのが好ましく、特に、最小クロック数に相当する間隔に設定されるのがよい。
以上のように、第三実施形態では、送信回路144が分極用電圧供給部を構成しているため、既存の送信回路144を利用して超音波振動子48を分極することが可能である。これにより、分極用回路156を別途設ける必要がなく、その分、超音波プロセッサ装置14yのハードウェア構成が簡素化される。かかる点においては、第三実施形態の方が好ましい。
一方で、送信回路144と分極用回路156とを別々に設ければ、分極処理の時間を短縮できる等の利点があり、かかる点では、上述の実施形態の方が好ましい。
なお、第三実施形態は、送信回路144が分極用電圧供給部を構成している点では上述の実施形態と相違するものの、それ以外の点では上述の実施形態と共通しており、上述の実施形態と同様の効果を発揮するものである。