JP2022013898A - 情報処理装置及び学習済モデル - Google Patents

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【課題】実際の硬組織に対する術式の客観的な評価を可能ならしめる技術を提供する。【解決手段】情報処理装置(1)は、プロセッサ(11)を備えている。プロセッサ(11)は、術式適用前の硬組織を表す撮像画像(IM1)を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記硬組織を表す推定画像(PI)を含む出力情報を導出する導出処理(M12)を、機械学習により構築された学習済モデル(LM1)を用いて実行する。【選択図】図5

Description

本発明は、評価対象者の術式の巧拙を評価する情報処理装置に関する。また、そのような評価に用いる学習済モデル、及び、そのような学習済モデルを構築する情報処理装置に関する。
硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織に対する術式(例えば、歯牙の削合や築造、歯体の固定や移動、骨の削合や再生、硬組織への補綴、支持組織の除去や再生や縫合など)は、医師を含む歯科医等の医療従事者(以下、単に医療従事者)に必要とされる手技である。しかしながら、これらの術式の巧拙は、医療従事者によって大きく異なり、これを客観的に評価することは、医療従事者の技能を向上させるうえで、また、医療従事者を適切に選択する機会を患者に与え、患者が適切な診療を受けられるようにするために、極めて重要である。
非特許文献1には、研修歯科医による窩洞形成の評価方法が紹介されている。この評価方法においては、研修歯科医による窩洞形成後の人工患歯を表す画像(光学印象により生成された3Dデータ)と予め用意された評価基準となる窩洞形成後の人工患歯を表す画像とがディスプレイ上に並べて表示される。研修歯科医は、これら2つの画像を目視比較することによって、自身による窩洞形成の巧拙を客観的に評価することができる。
岡篤志他、"歯科医師臨床研修における窩洞形成実習に光学印象のデジタルデータを活用した研究"、日総歯誌、第11巻 第1号、58~65頁、2019年10月
しかしながら、非特許文献1に記載の評価方法は、人工患歯に対する窩洞形成の巧拙を評価することはできても、実際の患歯に対する窩洞形成の巧拙を評価することはできない。なぜなら、人工患歯に対しては、評価基準となる窩洞形成後の患歯を表す画像を予め用意しておくことができるが、実際の患歯に対しては、形成すべき窩洞の形状がその患歯の状態などに応じて変化するため、そのような画像を予め用意しておくことができないからである。
なお、このような問題は、歯牙の窩洞形成の評価に限らず、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織に対する術式一般の評価において生じ得る。また、術式適用後の硬組織に対する補綴の評価においても、同様の問題が生じ得る。
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織に対する術式、又は、術式適用後の硬組織に対する補綴の客観的な評価を可能ならしめる技術を提供することにある。
本発明の態様1に係る情報処理装置においては、少なくとも1つのプロセッサを備え、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、前記プロセッサは、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の対象組織に対して、評価基準となる術式適用後の対象組織を表す画像を生成することができる。この画像を用いれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を客観的に評価することが可能になる。
本発明の態様2に係る情報処理装置においては、態様1の構成に加えて、前記術式は、歯牙の削合や築造、歯体の固定や移動、骨の削合や再生、硬組織への補綴、支持組織の除去や再生や縫合、及び、それらに付随する生体への侵襲行為である、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、歯牙の削合や築造、歯体の固定や移動、骨の削合や再生、硬組織への補綴、支持組織の除去や再生や縫合、及び、それらに付随する生体への侵襲行為の巧拙を客観的に評価することが可能になる。
本発明の態様3に係る情報処理装置においては、態様1又は2の構成に加えて、前記出力情報には、治療方針を示す付加情報が含まれている、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、医療従事者が術式に着手する前に治療方針を医療従事者及び患者の双方に提示することが可能になる。
本発明の態様4に係る情報処理装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、前記入力情報には、問診結果又は検査結果を表す付加情報が含まれている、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を、問診結果又は検査結果を考慮に入れて評価することが可能になる。
本発明の態様5に係る情報処理装置においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、前記プロセッサは、問診結果又は検査結果に対応した学習済モデルを、前記学習済モデルとして用いる、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を、問診結果又は検査結果を考慮に入れて評価することが可能になる。
本発明の態様6に係る情報処理装置においては、態様1~5の何れかの構成に加えて、前記プロセッサは、評価対象者による術式適用後の前記対象組織を表す撮像画像と前記推定画像とを含む入力情報から、前記評価対象者による術式の巧拙を表す評価値を含む出力情報を導出する評価処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を人の判断を介在させることなく評価することが可能になる。
本発明の態様7に係る情報処理装置においては、少なくとも1つのプロセッサを備え、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、前記プロセッサは、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する学習済モデルを、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報と評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す撮像画像を含む出力情報との組み合わせを教師データとする機械学習により構築する構築処理を実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を客観的に評価するために必要となる学習済モデルを生成することができる。
本発明の態様8に係る学習済モデルは、機械学習により構築された学習済モデルであって、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を少なくとも1つのプロセッサに実行させるための学習済モデルである。
上記の学習済モデルを用いれば、実際の対象組織に対する術式の巧拙を客観的に評価することが可能になる。
本発明の態様9に係る情報処理装置においては、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の硬組織に対して、評価基準となる補綴後の硬組織を表す画像を生成することができる。この画像を用いれば、実際の硬組織に対する補綴の巧拙を客観的に評価することが可能になる。
本発明の態様10に係る情報処理装置においては、態様9の構成に加えて、前記プロセッサは、評価対象者による補綴後の前記硬組織を表す撮像画像と前記推定画像とを含む入力情報から、前記評価対象者による補綴の巧拙を表す評価値を含む出力情報を導出する評価処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の硬組織に対する補綴の巧拙を人の判断を介在させることなく評価することが可能になる。
本発明の態様11に係る情報処理装置においては、少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する学習済モデルを、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報と評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す撮像画像を含む出力情報との組み合わせを教師データとする機械学習により構築する構築処理を実行する、という構成が採用されている。
上記の構成によれば、実際の硬組織に対する補綴の巧拙を客観的に評価するために必要となる学習済モデルを生成することができる。
本発明の態様12に係る学習済モデルは、機械学習により構築された学習済モデルであって、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を少なくとも1つのプロセッサに実行させるための学習済モデルである。
上記の学習済モデルを用いれば、実際の硬組織に対する補綴の巧拙を客観的に評価することが可能になる。
本発明の一態様によれば、実際の硬組織に対する術式又は補綴の客観的な評価を可能ならしめる技術を提供することができる。
本発明の一態様に係る評価システムの構成を示すブロック図である。 図1に示す評価システムに含まれる情報処理装置が実施する評価方法の流れを示すフローチャートである。 術式が窩洞形成術である場合の撮像画像(術式適用前の硬組織を表す)、推定画像、及び撮像画像(術式適用後の硬組織を表す)の一例を模式的に示した図である。 術式が根管形成術である場合の撮像画像(術式適用前の硬組織を表す)、推定画像、及び撮像画像(術式適用後の硬組織を表す)の一例を模式的に示した図である。 図2に示す評価方法を実施する情報処理装置の構成を示すブロック図である。 図1に示す評価システムに含まれる情報処理装置が実施する機械学習方法の流れを示すフローチャートである。 図6に示す評価方法を実施する情報処理装置の構成を示すブロック図である。 本発明の一応用例に関し、医療評価システムのブロック図である。 本発明の一応用例に関し、嵩洞形成説明図である。 本発明の一応用例に関し、医療評価システムの概念図である。 本発明の一応用例に関し、医療評価システムのブロック図である。 本発明の一応用例に関し、医療評価システムの詳細ブロック図である。 本発明の一応用例に関し、ブロックチェーンデータベースの説明図である。 本発明の一応用例に関し、診療情報の説明図である。 本発明の一応用例に関し、ブロックチェーンデータベースの概念図である。 本発明の一応用例に関し、生存率の説明図である。
(評価システムの構成)
本発明の一実施形態に係る評価システムSについて、図1を参照して説明する。図1は、評価システムSの構成を示すブロック図である。
評価システムSは、図1に示すように、情報処理装置1と、情報処理装置2と、撮像装置3と、を備えている。
情報処理装置1は、評価対象者(例えば、医療従事者)による対象組織に対する術式の巧拙を、学習済モデルLM1,LM2を用いて、撮像画像I1に基づいて評価するための装置である。対象組織としては、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織が挙げられる(以下の説明においては、対象組織が硬組織であるとする)。硬組織としては、例えば、歯牙又は骨が挙げられる。また、術式としては、例えば、歯牙の削合や築造、歯体の固定や移動、骨の削合や再建が挙げられる。ここで、歯牙の削合には、例えば、窩洞形成、レスト形成、ガイドプレーン形成、支台歯形成、根管形成が含まれる。また、骨の削合には、例えば、インプラント植立窩洞形成、逆根管充填骨削合、骨掻把術(腫瘍摘出掻把)、人工関節埋入時の関節窩形成、人工骨埋入時の骨形成が含まれる。また、歯牙の築造には、例えば、支台歯築造が含まれる。情報処理装置2は、上記の評価のために情報処理装置1が利用する学習済モデルLM1,LM2を生成するための装置である。撮像装置3は、上記の評価のために情報処理装置1が参照する撮像画像I1,I2を生成するための装置である。
撮像画像I1は、術式適用前の硬組織を被写体として含む画像である。撮像装置3は、評価対象者が術式を適用する前に硬組織を撮像することによって、この撮像画像I1を生成する。撮像画像I2は、評価対象者による術式適用後の硬組織を被写体として含む画像である。撮像装置3は、評価対象者が術式を適用した後に硬組織を撮像することによって、この撮像画像I2を生成する。なお、撮像画像I1,I2の種類及び次元は特に限定されない。撮像画像I1,I2は、例えば、可視光画像、X線画像、CT(Computer Tomography)画像、MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像、超音波画像、又は病理検査像であり得る。また、撮像画像I1,I2は、例えば、画素値の2次元配列(ピクセル画像)、又は、画素値の3次元配列(ボクセル画像、ピクセル画像)であり得る。硬組織を3Dスキャンすることにより得られた3DCADデータ(例えば、点群データ又はメッシュデータ、或いは、光学計測の三次元三角メッシュ像)を、撮像画像I1として用いてもよい。また、イルミネータやコンポジットレジン照射器を用いた透照診において得られる画像を、撮像画像I1として用いてもよい。また、撮像画像I1,I2の画角は、特に限定されず、全顎を含んでいてもよい。
なお、X線画像の具体例としては、例えば、パノラマX線画像及びデンタルX線画像が挙げられる。パノラマX線画像は、患歯の全体への波及、及び、患歯の顎関節への影響の評価に適している。デンタルX線画像は、患歯の状態、歯根の状態、及び、患歯の隣在歯への影響の評価に適しており、歯根形成の参考になる。また、CT画像の具体例としては、例えば、3次元CT画像、造影CT画像、コーンビームCT画像が挙げられる。3次元CT画像は、歯髄内の状態、歯槽骨の状態、歯根内部の状態の評価に適しており、根管形成の参考になる。造影CT画像は、腺組織及び軟組織の評価に適している。また、MRI画像の具体例としては、例えば、T1強調画像及びT2強調(脂肪強調)画像が挙げられる。T1強調画像及びT2強調は、硬組織と軟組織(腺組織)との間の相互影響の評価に適している。また、可視光画像の具体例としては、例えば、一眼レフ写真が挙げられる。一眼レフ写真は、患部の硬組織又は軟組織の表面状態の評価に適している。例えば、一眼レフ写真によれば、軟組織の表面に現れる炎症の5徴候のうちの3つの徴候を適切に評価することができる。また、病理検査像としては、顕微鏡像及び染色顕微鏡像が挙げられる。顕微鏡像及び染色顕微鏡像は、歯牙腫などの良性腫瘍とエナメル上皮腫などの悪性腫瘍との識別に適している。また、3DCADデータは、う蝕の表面形態の採取など、個別患歯の硬組織評価に適しており、窩洞形成及び支台歯形成の参考になる。
学習済モデルLM1は、撮像画像I1を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の硬組織を表す推定画像PIを含む出力情報を導出するモデルである。本実施形態においては、標準治療として選択される術式、或いは、EBM(Evidence Based Medicine)において最善と考えられる術式を、評価基準とする。情報処理装置2は、推定画像PIにおける硬組織の像が、標準治療として選択される術式、或いは、EBMにおいて最善と考えられる術式適用後の硬組織の像を再現するように、この学習済モデルLM1を構築する。学習済モデルLM1は、例えば、推定された診断に基づき、適用するべき術式が歯牙に対する窩洞形成である場合、窩洞形成後の歯牙を表す推定画像PIを出力し、適用するべき術式が歯牙に対する支台歯成である場合、支台歯形成後の歯牙を表す推定画像PIを出力し、適用するべき術式が歯牙に対する根管形成術である場合、根管形成後の歯牙を表す推定画像PIを出力する。学習済モデルLM2は、撮像画像I2と推定画像PIとを含む入力情報から、評価対象者による術式の巧拙を表す評価値Vを含む出力情報を導出するためのモデルである。情報処理装置2は、評価値Vが、撮像画像I2における硬組織の像と推定画像PIにおける硬組織の像との類似度に相関するように、この学習済モデルLM2を構築する。なお、学習済モデルLM1,LM2の種類は特に限定されない。学習済モデルLM1は、例えば、CNN(Convolution al Neural Network)やRNN(Recurrent Neural Network)などのニューラルネットワークであり得る。学習済モデルLM2は、例えば、線形回帰式や非線形回帰式などの回帰モデルであり得る。
以下、情報処理装置1による評価方法M1の流れ、情報処理装置1の構成、情報処理装置2による機械学習方法M2の流れ、及び、情報処理装置2の構成について、順に説明する。
(学習済モデルLM1の入力情報に関する補足)
学習済モデルLM1の入力情報には、撮像画像I1以外の付加情報が含まれていてもよい。学習済モデルLM1の入力情報に含めることが好ましい付加情報としては、例えば、問診結果又は検査結果を表す付加情報が挙げられる。問診結果又は検査結果を示す付加情報は、例えば、テキストとして学習済モデルLM1に入力される。問診結果又は検査結果を示す付加情報が予めコード化されている場合、問診結果又は検査結果に対応するコードを学習済モデルLM1に入力するようにしてもよい。
問診結果としては、例えば、主訴を示す情報、既往歴を示す情報、全身疾患を示す情報、患者の希望する補綴材料(例えば、レジン、セラミックス、金銀パラジウムなど)を示す情報、患者の希望する補綴方法(例えば、レジン樹脂充填、クラウン、インレーなど)を示す情報などが挙げられる。なお、主訴を示す情報には、例えば、患者の痛み(例えば、冷痛、温痛、拍動痛、刺激痛など)に関する情報、審美性(例えば、開口時、閉口時など)に関する情報、患者の困事に関する情報、患者の希望に関する情報などが含まれ得る。
検査結果としては、血液検査の結果を示す情報、電気抵抗値診断の結果を示す情報、触診の結果を示す情報、共鳴波長計測診の結果を示す情報、温度診の結果を示す情報、電気歯髄診断などが挙げられる。なお、触診には、探針を用いた小寓裂溝のスティッキーフィッシャーの確認、デンタルフロスを用いた隣接面嗣蝕の診断、探針等を用いた修復物の辺縁漏洩の確認などが含まれ得る。電気抵抗値診断は、電気抵抗値に基づいて嗣蝕の進行度を測定する検査である(電気抵抗値が600kΩ以上であれば、健全歯、電気抵抗値が251kΩ以上599kΩ以下であれば、エナメル質限局顧蝕、電気抵抗値が6kΩ以上250kΩ以下であれば、象牙質願蝕、電気抵抗値が5kΩ以下であれば、露髄であることを示す)。共鳴波長計測診では、波長655nmのレーザ光を利用した嗣蝕診断、又は、非侵襲性の麟蝕診断が可能である。小嵩裂溝/平滑面用プローブと隣接面用プローブとがある。温度診では、冷風、冷水、氷片、気化熱吸収型スプレーなど用いて冷刺激を与えるか、又は、加熱ストッピングを用いて温熱刺激を与える。電気歯髄診断器の電極を歯面に当てて、違和感を訴えた電圧のレベルによって判断する。電気歯髄診断では、電極を歯面に当てて、患者が違和感を訴えた電圧のレベルによって、歯髄の状態を判断する。
評価基準となる術式は、硬組織の状態に加えて、実際の診療における術前情報としての問診結果及び検査結果を可能な限り考慮して決めることが望ましい。学習済モデルLM1の入力情報が撮像画像I1のみである場合、問診結果及び検査結果を考慮することなく推定画像PIが生成されるため、例えば、窩洞形成を選択するべき症例に対して、根管形成後の歯牙を表す推定画像PIが生成されてしまうことがある。そして、このような推定画像PIに基づいて評価を行うと、正しい術式を選択した評価対象者の手技が不当に低く評価されたり、誤った術式を選択した評価対象の手技が不当に高く評価されたりするといった不具合が生じる。更に言えば、禁忌となる術式も評価対象としてしまうという不具合が生じる。これに対して、学習済モデルLM1の入力情報に問診結果又は検査結果を表す付加情報が含まれている場合、このような不具合を防ぐことができる。
(学習済モデルLM1の出力情報に関する補足)
学習済モデルLM1の出力情報には、推定画像PI以外の付加情報が含まれていてもよい。学習済モデルLM1の出力情報に含めることが好ましい付加情報としては、例えば、う蝕進行度又は治療方針を示す付加情報が挙げられる。う蝕進行度又は治療方針を示す付加情報は、テキストとして、学習済モデルLM1から出力されてもよいし、画像として、学習済モデルLM1から出力されてもよい。後者の場合、う蝕進行度又は治療方針を示す画像を、推定画像PIに合成して学習済モデルLM1から出力する構成を採用してもよい。
う蝕進行度を示す情報としては、例えば、う蝕のクラス(C1,C2,C3,C4の何れか)が挙げられる。また、治療方針を示す情報としては、選択するべき術式(窩洞形成、レスト形成、ガイドプレーン形成、支台歯形成、根管形成、インプラント植立窩洞形成、逆根管充填骨削合、骨掻把術、関節窩形成、骨形成の何れか)を示す情報、又は、禁忌するべき術式を示す情報が挙げられる。特に、選択するべき術式が窩洞形成である場合には、更に、理想的なMO窩洞、対合歯との理想的なクリアランス、対合歯との理想的な噛み合わせを、治療方針を示す付加情報として、学習済モデルLM1の出力情報に含めることが好ましい。また、補綴方法を、治療方針を示す付加情報として、学習済モデルLM1の出力情報に含めてもよい。
(学習済モデルLM2の入力に関する補足)
学習済モデルLM2の入力情報には、撮像画像I2以外の付加情報が含まれていてもよい。学習済モデルLM2の入力情報に含めることが好ましい付加情報としては、例えば、補綴材料を示す情報、補綴方法を示す情報、禁忌処置に関する情報などが挙げられる。これらの付加情報は、例えば、テキストとして学習済モデルLM2に入力される。例えば、学習済モデルLM2は、撮像画像I2から読み取った硬組織の形状が、付加情報が示す補綴材料及び補綴方法に適した形状になっている場合には、評価値Vとして高いスコアを出力し、そうでない場合には、評価値Vとして低いスコアを出力する。或いは、学習済モデルLM2は、撮像画像I2から読み取った硬組織の形状が、付加情報が示す選択するべき術式により得られる形状になっている場合には、評価値Vとして高いスコアを出力し、そうでない場合には、評価値Vとして低いスコアを出力する。
なお、学習済モデルLM2に入力される撮像画像I2から、う蝕の除去状態が読み取れることに注意する。したがって、学習済モデルLM2は、学習済モデルLM1の出力情報に含まれるう蝕のクラスを、撮像画像I2から読み取ったう蝕の除去状態と比較することによって、評価値Vを算出することが可能である。また、学習済モデルLM2に入力される撮像画像I2から、実際のMO窩洞、対合歯との実際のクリアランス、対合歯との実際の噛み合わせが読み取れることに注意する。したがって、学習済モデルLM2は、学習済モデルLM1の出力情報に含まれる理想的なMO窩洞、対合歯との理想的なクリアランス、対合歯との理想的な噛み合わせを、それぞれ、撮像画像I2から読み取った実際のMO窩洞、対合歯との実際のクリアランス、対合歯との実際の噛み合わせと比較することによって、評価値を算出することも可能である。
(評価方法M1の流れ)
情報処理装置1が実施する評価方法M1の流れについて、図2~図4を参照して説明する。図2は、評価方法M1の流れを示すフロー図である。図3は、術式が窩洞形成術である場合の撮像画像I1、推定画像PI、及び撮像画像I2の一例を模式的に示した図である。図4は、術式が根管形成術である場合の撮像画像I1、推定画像PI、及び撮像画像I2の一例を模式的に示した図である。
評価方法M1は、図2に示すように、第1取得処理M11と、導出処理M12と、第2取得処理M13と、評価処理M14と、を含んでいる。
第1取得処理M11は、撮像画像I1を撮像装置3から取得する処理である。撮像画像I1は、上述したように、術式適用前の硬組織を表す。術式が窩洞形成である場合の撮像画像I1の一例を図3に、術式が根管形成である場合の撮像画像I1の一例を図4に、それぞれ模式的に示す。
導出処理M12は、第1取得処理M11にて取得した撮像画像I1を含む入力情報から、推定画像PIを含む出力情報を導出する処理であり、学習済モデルLM1を用いて実行される。推定画像PIは、上述したように、評価基準となる術式適用後の硬組織を表す。術式が窩洞形成である場合の推定画像PIの一例を図3に、術式が根管形成である場合の推定画像PIの一例を図4に、それぞれ模式的に示す。
なお、学習済モデルLM1の入力情報には、撮像画像I1以外の付加情報が含まれていてもよい。例えば、学習済モデルLM1の入力情報には、問診結果又は検査結果を表す付加情報が含まれていることが好ましい。評価基準となる術式適用後の硬組織の形態は、患者の診療への希望を含む問診結果又は検査結果に応じて導かれる治療方針によって異なるところ、当該構成を採用すれば、その問診結果又は検査結果に応じた治療方針によって決まる評価基準となる術式適用後の硬組織を表す推定画像PIを得ることが可能になる。また、予め定められた問診結果又は検査結果毎に学習済モデルを予め用意できる場合には、学習済モデルLM1として、患者から得られた問診結果又は検査結果に対応した学習済モデルを用いる構成を採用しても、同様の効果が得られる。
また、学習済モデルLM1の出力情報には、推定画像PI以外の付加情報が含まれていてもよい。例えば、学習済モデルLM1の出力情報には、治療方針を示す付加情報が含まれていることが好ましい。これにより、選択するべき術式などの治療方針を、推定画像PIから視覚的に把握することに加えて、これらの付加情報から明示的に把握することが可能になる。
なお、学習済モデルLM1の出力情報に治療方針を示す付加情報を含める構成を採用する場合、ディスプレイ等を介してその治療方針を提示する提示処理を、情報処理装置1が導出処理M12終了後に実行する構成を併せて採用することが好ましい。これにより、医療従事者にとっては、適用する選択可能な複数の治療方針が何であるのかを事前に知ることが可能になり、患者にとっては、適用される治療方針が何であるのかを事前に知ることが可能になる。なお、選択可能な複数の治療方針に対して患者の同意が得られる場合、情報処理装置1は、評価方法M1の実施を継続し、医療従事者は、治療に着手する。一方、選択可能な複数の治療方針に対する患者同意が得られない場合、情報処理装置1は、評価方法M1の実施を中止し、医療従事者は、治療に着手しない。
第2取得処理M13は、撮像画像I2を撮像装置3から取得する処理である。撮像画像I2は、上述したように、評価対象者による術式適用後の硬組織を表す。術式が窩洞形成である場合の撮像画像I2の一例を図3に、術式が根管形成である場合の撮像画像I2の一例を図4に、それぞれ模式的に示す。
評価処理M14は、導出処理M12にて導出した推定画像PIと第2取得処理M13にて取得した撮像画像I2とを含む入力情報から、評価値Vを含む出力情報を導出する処理であり、学習済モデルLM2を用いて実行される。評価値Vは、上述したように、評価対象者による術式の巧拙を表す。
なお、本実施形態においては、学習済モデルLM2を用いて評価値Vを導出する構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、推定画像PIと撮像画像I2との差分の大きさ(例えば、各画素の画素値の差分の和)を算出し、差分の大きさが相対的に小さければ、評価値Vとして相対的に高いスコアを、差分の大きさが相対的に小さければ、評価値Vとして相対的に低いスコアを算出するようにしてもよい。
また、評価処理M14にて導出された評価値Vを、術式の完了までに要した時間に応じて補正する補正処理を更に実行してもよい。例えば、術式の完了までに要した時間が相対的に長ければ、スコアが下がるように評価値Vを補正し、術式の完了までに要した時間が相対的に短ければ、スコアが上がるように評価値Vを補正する。これにより、評価対象者の手際の良さまで考慮に入れた評価値Vを得ることが可能になる。
(効果に関する補足)
歯髄感染時には、それぞれの症例に応じた適切な診断及び処置が必要である。例えば、根管治療から根管形成、さらに根管充填に至る場合、患者毎に異なる複雑な形状の根管に対する適切な処置が求められる。
歯科医学会の歯内療法のガイドラインによれば、根管形成においては根管充填のために、根管の側枝やイスムスなどの複雑な形状を考慮して適切な根管形態を、また根尖孔において生理学根尖孔と解剖学的根尖孔をふまえアピカルシートやアピカルカラーの形態を付与し、根管充填が緊密に行えるようにすることとされている。
図4に示した例について言うと、学習済モデルLM1は、歯髄感染した患歯を表す撮像画像I1から、適切な根管治療及び根管形成を経て、根管充填が適切になされた患歯を表す推定画像PIを導出する。これに対して、評価対象者による根管形成後の患歯は、撮像画像I2から分かるように、一連の根管治療の最終形態が不十分(側枝やまで充填剤が緊密に充填されない、根尖の根充がオーバーやアンダーなど)な状態である。このように、推定画像PIと撮像画像I2との類似度が低い場合、学習済モデルLM2は、低いスコアを評価値Vとしてアウトプットすることになる。あるいは、撮像画像I2が、医学上の禁忌処置と推定された場合、警告としてその医療行為のやり直しをアウトプットする。
(情報処理装置1の構成)
情報処理装置1の構成について、図5を参照して説明する。図5は、情報処理装置1の構成を示すブロック図である。
情報処理装置1は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13と、入出力インタフェース14と、通信インタフェース15と、バス16とを備えている。プロセッサ11、一次メモリ12、二次メモリ13、入出力インタフェース14、及び通信インタフェース15は、バス16を介して相互に接続されている。
二次メモリ13には、評価プログラムP1及び学習済モデルLM1,LM2が格納されている。プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されている評価プログラムP1及び学習済モデルLM1,LM2を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開された評価プログラムP1に含まれる命令に従って、上述した評価方法M1を実行する。一次メモリ12上に展開された学習済モデルLM1は、評価方法M1に含まれる導出処理M12を実行する際に利用される。また、一次メモリ12上に展開された学習済モデルLM2は、評価方法M1に含まれる評価処理M14を実行する際に利用される。
プロセッサ11として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ11は、「演算装置」と呼ばれることもある。また、一次メモリ12として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。一次メモリ12は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ13として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ13は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。
なお、二次メモリ13は、情報処理装置1に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース14又は通信インタフェース15を介して情報処理装置1と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。また、本実施形態においては、情報処理装置1における記憶を2つのメモリ(一次メモリ12及び二次メモリ13)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、情報処理装置1における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ12として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ13として利用すればよい。
入出力インタフェース14には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース14としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)、ATA(Advanced Technology Attachment)、PCI(Peripheral Component Interconnect)などのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、例えば、撮像装置3が挙げられる。評価方法M1に含まれる第1取得処理M11及び第2取得処理M13おいて撮像装置3から取得する撮像画像I1,I2は、入出力インタフェース14を介して情報処理装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される入力デバイスとしては、例えば、キーボード、マウス、マイクなどが挙げられる。評価方法M1においてユーザから取得するデータ(例えば、補綴物の種類)は、これらの入力デバイスを介して情報処理装置1に入力され、一次メモリ12に記憶される。また、入出力インタフェース14に接続される出力デバイスとしては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどが挙げられる。評価方法M1においてユーザに提供する情報(例えば、評価値V)は、これらの出力デバイスを介して情報処理装置1から出力される。
通信インタフェース15には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース15としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。評価方法M1に先行して情報処理装置1が情報処理装置2から取得する学習済モデルLM1,LM2は、これらのネットワークを介して送受信される。
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて評価方法M1を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて評価方法M1を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して評価方法M1を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して評価方法M1を実行する態様などが考えられる。
また、本実施形態においては、評価方法M1を実行するプロセッサ(プロセッサ11)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ13)に学習済モデルLM1,LM2を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、評価方法M1を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLM1,LM2を格納する構成を採用してもよい。この場合、学習済モデルLM1,LM2を格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、評価方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLM1,LM2を格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが評価方法M1を実行する態様などが考えられる。
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ13)に学習済モデルLM1,LM2を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習済モデルLM1,LM2を分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習済モデルLM1,LM2を格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(評価方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(評価方法M1を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習済モデルLM1,LM2を分散して格納する構成などが考えられる。
(機械学習方法M2の流れ)
情報処理装置2が実施する機械学習方法M2の流れについて、図6を参照して説明する。図6は、機械学習方法M2の流れを示すフロー図である。
機械学習方法M2は、第1準備処理M21と、第1構築処理M22と、第2準備処理M23と、第2構築処理M24と、を含んでいる。
第1準備処理M21は、教師データの集合である学習用データセットDS1を準備する処理である。学習用データセットDS1に含まれる教師データは、術式適用前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報と、評価基準となる術式適用後の硬組織を表す撮像画像を含む正解ラベルとを組み合わせたものである。正解ラベルに含める撮像画像としては、例えば、高い技術を有する医療従事者が、標準治療として選択される術式、或いは、EBMにおいて最善と考えられる術式を適用した後の硬組織を撮像することに得られたものを利用する。
第1構築処理M22は、第1準備処理M21にて得られた学習用データセットDS1を用いた教師あり学習によって、学習済モデルLM1を構築する処理である。学習済モデルLM1は、上述したように、撮像画像I1を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の硬組織を表す推定画像PIを含む出力情報を導出するモデルである。第1構築処理M22においては、学習済モデルLM1の入力情報と出力情報との関係が、教師データを構成する入力情報と出力情報との関係を再現するように、学習済モデルLM1がチューニングされる。
第2準備処理M23は、教師データの集合である学習用データセットDS2を準備する処理である。学習用データセットDS2に含まれる教師データは、評価対象者による術式適用後の硬組織を表す撮像画像及び評価基準となる術式適用後の硬組織を表す推定画像を含む入力情報と、評価対象者による術式適用の巧拙を表す評価値を含む出力情報(入力情報に付与するラベル)とを組み合わせたものである。
第2構築処理M24は、第2準備処理M23にて得られた学習用データセットDS2を用いた教師あり学習によって、学習済モデルLM2を構築する処理である。学習済モデルLM2は、上述したように、撮像画像I2と推定画像PIとを含む入力情報から、評価値Vを含む出力情報を導出するモデルである。第2構築処理M24においては、評価値Vが、撮像画像I2における硬組織の像と推定画像PIにおける硬組織の像との類似度に相関するように、学習済モデルLM2がチューニングされる。
(情報処理装置2の構成)
情報処理装置2の構成について、図7を参照して説明する。図7は、情報処理装置2の構成を示すブロック図である。
情報処理装置2は、汎用コンピュータを用いて実現されており、プロセッサ21と、一次メモリ22と、二次メモリ23と、入出力インタフェース24と、通信インタフェース25と、バス26とを備えている。プロセッサ21、一次メモリ22、二次メモリ23、入出力インタフェース24、及び通信インタフェース25は、バス26を介して相互に接続されている。
二次メモリ23には、機械学習プログラムP2及び学習用データセットDS1,DS2が格納されている。プロセッサ21は、二次メモリ23に格納されている機械学習プログラムP2を一次メモリ22上に展開する。そして、プロセッサ21は、一次メモリ22上に展開された機械学習プログラムP2に含まれる命令に従って、上述した機械学習方法M2を実行する。二次メモリ23に格納された学習用データセットDS1は、機械学習方法M2に含まれる第1準備処理M21において作成され、機械学習方法M2に含まれる第1構築処理M22において利用される。また、二次メモリ23に格納された学習用データセットDS2は、機械学習方法M2に含まれる第2準備処理M23において作成され、機械学習方法M2に含まれる第2構築処理M24において利用される。
プロセッサ21として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU、GPU、DSP、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。プロセッサ21は、「演算装置」と呼ばれることもある。また、一次メモリ22として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAMを挙げることができる。一次メモリ22は、「主記憶装置」と呼ばれることもある。また、二次メモリ23として利用可能なデバイスとしては、例えば、フラッシュメモリ、HDD、SSD、又は、これらの組み合わせを挙げることができる。二次メモリ23は、「補助記憶装置」と呼ばれることもある。なお、二次メモリ23は、情報処理装置2に内蔵されていてもよいし、入出力インタフェース24又は通信インタフェース25を介して情報処理装置2と接続された他のコンピュータ(例えば、クラウドサーバを構成するコンピュータ)に内蔵されていてもよい。なお、本実施形態においては、情報処理装置2における記憶を2つのメモリ(一次メモリ22及び二次メモリ23)により実現しているが、これに限定されない。すなわち、情報処理装置2における記憶を1つのメモリにより実現してもよい。この場合、例えば、そのメモリの或る記憶領域を一次メモリ22として利用し、そのメモリの他の記憶領域を二次メモリ23として利用すればよい。
入出力インタフェース24には、入力デバイス及び/又は出力デバイスが接続される。入出力インタフェース24としては、例えば、USB、ATA、PCIなどのインタフェースが挙げられる。入出力インタフェース24に接続される入力デバイスとしては、例えば、キーボード、マウス、マイクなどが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザから取得するデータは、これらの入力デバイスを介して情報処理装置2に入力され、一次メモリ22に記憶される。また、入出力インタフェース24に接続される出力デバイスとしては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどが挙げられる。機械学習方法M2においてユーザに提供する情報は、これらの出力デバイスを介して情報処理装置2から出力される。
通信インタフェース25には、ネットワークを介して他のコンピュータが有線接続又は無線接続される。通信インタフェース25としては、例えば、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などのインタフェースが挙げられる。利用可能なネットワークとしては、PAN、CAN、MAN、WAN、GAN、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。情報処理装置2が他のコンピュータ(例えば、情報処理装置1)に提供するデータ(例えば、学習済モデルLM1,LM2)は、これらのネットワークを介して送受信される。
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ21)を用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて機械学習方法M2を実行する構成を採用してもよい。この場合、連携して機械学習方法M2を実行する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、バスを介して相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携して機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
また、本実施形態においては、機械学習方法M2を実行するプロセッサ(プロセッサ21)と同じコンピュータに内蔵されたメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDS1,DS2を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、機械学習方法M2を実行するプロセッサと異なるコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDS1,DS2を格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDS1,DS2を格納するメモリが内蔵されたコンピュータは、機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータとネットワークを介して相互に通信可能に構成される。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたメモリに学習用データセットDS1,DS2を格納し、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサが機械学習方法M2を実行する態様などが考えられる。
また、本実施形態においては、単一のメモリ(二次メモリ23)に学習用データセットDS1,DS2を格納する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のメモリに学習用データセットDS1,DS2を分散して格納する構成を採用してもよい。この場合、学習用データセットDS1,DS2を格納する複数のメモリは、単一のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータであってもよいし、そうでなくてもよい)に設けられていてもよいし、複数のコンピュータ(機械学習方法M2を実行するプロセッサが内蔵されたコンピュータを含んでいてもよいし、そうでなくてもよい)に分散して設けられていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成する複数のコンピュータの各々に内蔵されたメモリに学習用データセットDS1,DS2を分散して格納する構成などが考えられる。
また、本実施形態においては、評価方法M1及び機械学習方法M2を異なるプロセッサ(プロセッサ11及びプロセッサ21)を用いて実行する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、評価方法M1及び機械学習方法M2を同一のプロセッサを用いて実行してもよい。この場合、機械学習方法M2を実行することによって、このプロセッサと同じコンピュータに内蔵されたメモリに学習済モデルLM1,LM2が格納さる。そして、このプロセッサは、評価方法M1を実行する際に、このメモリに格納された学習済モデルLM1,LM2を利用することになる。
(変形例)
本実施形態において説明した構成は、補綴の評価にも利用することができる。この場合、(1)撮像画像I1を、補綴前の硬組織を表す撮像画像に置き換え、(2)推定画像PIを、評価基準となる補綴後の硬組織を表す推定画像に置き換え、(3)撮像画像I2を、評価対象者による補綴後の硬組織を表す撮像画像に置き換える。また、これに伴い、(4)学習済モデルLM1を、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する学習済モデルに置き換え、(5)学習済モデルLM2を、評価対象者による補綴後の硬組織を表す撮像画像と評価基準となる補綴後の硬組織を表す推定画像とを含む入力情報から、評価対象者による補綴の巧拙を表す評価値を含む出力情報を導出する学習済モデルに置き換える。
(補足事項)
学習済モデルが一回性(唯一無二)の臓器に対して、規格化された治療介入をする上で、治療のプロセスと完成形を提示する意義について、補足する。
歯牙や骨といった硬組織の削合は、削合の後に予定されている処置(歯牙補綴や生体骨内へのインプラント埋入)の要件に見合うように形態を形成せねばならない。その要件は、各臓器の性質や処置に利用される治療器具などの材料力学的視点から、各医学会と歯科医学会の各分科会のガイドライン等で規格化されている。
それらの要件は、規格化されているが、患者固有の臓器に対して各診療毎に実現せねばならず、機械部品の様に合同形態を生産するようにはいかず、診療毎に必要な形態を学習済モデルにて推測、提示されることが好ましい。
支台歯の規格化条件(これを満たさないと材料力学的にセラミックが割れる)としては、以下の条件が挙げられる。
(1)両隣接面の軸面のテーパー:3°~5°
(2)歯冠長(縦の長さ):3mm以上
(3)歯冠長/歯冠幅の比:0.4
(4)削除量:咬合面(対合歯とのクリアランス)
機能咬頭: 2.0mm
非機能咬頭: 1.5mm
中心溝: 1.0mm~1.5mm
頬側面: 1.0mm以上
舌側面: 1.0mm以上
(5)フィニソシュライン
厚さ(幅):0.6mm以上
形態:ヘビーシャンファー
イントアングルとラインアングルはすべて角がない。
(応用例)
以下、図8~図16を参照して本発明の応用例に係る医療評価システム、医療評価方法及び医療評価プログラムを説明する。但し、以下に示す応用例は本発明の技術思想を具体化するための医療評価システム、医療評価方法及び医療評価プログラムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の応用例のものにも等しく適用し得るものである。なお、図8~図16及び以下の説明においては、図1~図7及び以上の説明とは異なる符号を用いる。図1~図7及び以上の説明における符号は、全角英数字とし、図8~図16及び以下の説明における符号は、半角英数字とすることで、これらを区別する。
[応用例1]
本発明の応用例lに係る医療評価システム1について、図8~図10を参照して説明する。
図8は本応用例に係る医療評価システムのブロック図である。実際の診療を評価することとは、例えば医師・歯科医師の手技を評価することを含み、また、医師の手技以外の評価、例えば治療環境、助手の手当て等の評価も含む。
医療評価システム10は、電子カルテ装置11及び診断評価装置としての診療評価AIを備えている。医療評価システム10は、診察室画像取得装置14、診療部位画像取得装置15、問診情報入力装置16、及び、診療装置センサ17に接続されており、これらの各装置からの情報が入力される。これらの各装置からの情報は電子カルテ装置11に記憶されると共に、診療評価AI12において評価され、診療に対する評価である評価情報が出力される。医療評価システムには入出力装置13が接続されており、入出力装置は電子カルテ情報や評価情報等を表示できる表示装置を備えている。
複数の医療評価システム10がブロックチェーンデータベース20に接続されている。ブロックチェーンデータベース20には、評価情報分析システムとしての評価情報分析AI21、複数の利用者システム22、保険システム23、ガイドラインデータベース24等が接続されている。さらに、ブロックチェーンデータベース20に、診療報酬計算システム等、他のシステムを接続することが可能である。図8では保険システム23が代表的に記載されているが、ブロックチェーンデータベース20に接続されるものは、保険システム23に限定されるものではなく、例えば、公的医療保険制度を含む医療保険、損害賠償保険、その他金融派生商品等の経済原則を含む(以下同様)。
診療装置センサ17とは、医療用機器に備えられたセンサであり、歯科治療の場合には例えばタービンセンサ(タービンの動作ないし動作時間を検出)、バー検出センサ(バーの種類を検出)、浄水センサ等が挙げられる。診療部位画像取得装置15としては、例えば3Dスキャン、X線CT、動画取得手段等が含まれる。
診察室画像取得装置14としては、例えば天井カメラやWEBカメラ等を採用することができ、特に限定されるものではないが、動画を撮影できることが望ましい。診察室画像取得装置14が画像認識装置、例えばAI画像解析装置等を備えている場合には、診療内容を画像認識により判断し、その場で禁忌治療に対して警告を発することができる。
図9は本応用例に係る窩洞形成説明図である。標準治療について窩洞形成の例を説明し、評価の考え方をについて説明する。図9は歯の平面図である。図9のように歯の立体形状に沿った適切な腐洞形成が必要であり、凹凸嵌合の観点から補綴物が他方向から安定して固定できるようにされることが望ましい。また、腐洞形成は断面、逆台形形状とする必要がある。また、嵩洞形成の開口部側にはテーパーを設ける必要があり、その角度は120度が望ましい。窩洞形成の評価には例えば上記のような観点が含まれる。
裔洞形成に必要な条件としては、例えば次の(1)~(3)が挙げられる。
(1)連接する小窯・裂溝は腐洞に含める。
(2)咬頭稜線を保存する。
(3)咬頭内斜面の1/2にとどめる。
図10は本実施例の医療評価システムの概念図である。ガイドラインデータベースには歯科標準治療に係る複数のガイドライン及び医科標準治療に係る複数のガイドラインが蓄積されている。これらのガイドラインデータベースに蓄積された標準治療に係る情報に基づき、診療評価システムは、客観的に診療に関する評価を行う。
図11は本応用例のAIシステム30全体の概念図である。本応用例のAIシステム30は、診療評価AI12と、評価情報分析AI21とからなる。
診療評価AI12には、ガイドラインデータベース24から抽出されたガイドライン情報が診療評価AI訓練システム18を介して診療情報として入力される。この診療評価AI12は、教師データを用いて訓練されたニューラルネットワークを用いて入力された診療情報に対して、複数の観点の指数からなる評価情報を評価情報分析AI21に出力する。
評価情報分析AI21は、診療評価AI12が出力した複数の評価情報を分析し、ベストプラクティスの選定を含む定量的な評価を行い、利用者に対して診療評価情報を提供し、保険システム23に対して保険料基礎情報を提供すると共に、ガイドラインデータベース24に対して、ガイドライン更新情報を提供する。
利用者は、ブロックチェーンデータベース20を介して得られた診療評価情報に基づき自分が希望する医師ないしクリニックを選定することができる。保険システム23では保険料基礎情報等に基づき保険料等を算定することができる。評価情報分析AI21から出力される評価情報は、政府系システムにも提供され、この評価情報は専門医の認定や保険点数演算にも用いられる。また、評価情報分析AI21においては、医療評価情報を含む、各種診療情報等が多変量解析的に分析され、望ましい診療内容が抽出され、ガイドライン更新情報が生成されるガイドラインデータベース24はこのガイドライン更新情報によって更新される。
なお、評価情報分析AI21では、診療評価AI12から入力された評価情報に関して、各医療評価システム10の入出力装置13を介して医師から入力されたセカンドオピニオン情報を参酌するようにしてもよい。
図12は医療評価システムの詳細ブロック図である。医療評価システム10は、電子カルテ装置11、診療評価AI12及びタイマ19等を備えている。電子カルテ装置11は、電子カルテ演算部11aと、電子カルテデータベース11bと、評価情報メモリ11Cと、会計演算部11dと、を有する。また、電子カルテ装置11には、診察室画像取得装置14、診療部位画像取得装置15、問診情報入力装置16、診療装置センサ17、入出力装置13等から各種診療情報等が入力され、これらの情報を電子カルテデータベースに蓄積する。また、電子カルテ装置11は、治療評価AI訓練システム、診療評価AI12、利用者システム22等の接続されている。
診療評価AI12は、診療評価AI訓練システム18で訓練された訓練済みニューラルネットの情報が提供されている。診療評価AI訓練システム18においては、ガイドラインデータベースから提供される各種ガイドラインの情報等を教師データとして、後述のように、教師あり学習の分類(classification)によるアルゴリズムにより、ディープラーニングが用いられる。
評価情報分析AI21は、後述のように学習により訓練されたニューラルネットワークを用いている。この学習のアルゴリズムとしては、例えば、教師無し学習のクラスタリング(clustering)においてディープラーニングが用いられる。評価情報分析AI21は多数の評価情報や各種エビデンス情報を入力可能であり、多変量解析的に診察内容について客観的な評価を行うことができる。評価情報分析AI21には、複数の医療評価システム10からの診療評価情報が入力され、ニューラルネットワークの学習に用いられると共に、学習されたAIによる診療評価情報の分析によって、望ましい症例の抽出などを行うことができる。この望ましい症例を元にガイドライン更新情報が生成され、ガイドラインデータベース24が更新される。
本システムの会員すなわち利用者である、患者または医師ないし歯科医師は、利用者システム22を用いて、診療評価情報を有料で入手することが可能である。この場合の会計にもIOTA等のブロックチェーンデータベースを用いることができる。
また、診療評価AIないし評価情報分析AIから出力される診療評価情報(図14等を参照。)は、政府系システム25や保険システム23においても利用可能である。政府系システムでは、専門医認定部25aにおける専門医の認定や、保険点数演算部25bにおける保険点数、すなわち診療報酬の演算に用いられる。保険システム23においては、診療評価情報は医師損害賠償保険料金演算部23aにおける医師損害賠償料の算定や、保険対象医師認定部23bにおける民間保険適応対象医師の判定等に用いられる。
電子カルテ演算部11a診療情報によって、患者とこの患者を治療した医師とが一体となってIDを付与されさらに術前情報と術後情報等が一体となって、データ1、2、…、mとして保存される。
データ1:患者1十医師A-Σ(術前情報)k+Σ(術後情報)k,k=l~n
データ2:患者2十医師A-Σ(術前情報)k+Σ(術後情報)k,k=l~n
データm:...
電子カルテデータベース11bには、治療時に検出された情報及び診療評価AI12に入出力された情報が記憶される。
評価情報メモリ11Cは、評価情報分析AI21、政府システム25及び会計演算部11dに接続され、入出力装置13によって医師から入力されたセカンドオピニオン情報、政府システム25によって設定された専門医、保険点数に関する情報が記箇される。この評価情報メモリ11Cは、評価情報分析AI21及び政府システムに接続され、セカンドオピニオン情報が評価情報分析AI21によって参酌できるようになっている。
会計演算部11dは、評価情報メモリ11Cに基づいた会計処理を行うものであり、保険システム23に接続されている。
政府システム25は、専門医認定部25aと、保険点数演算部25bと、を有する。専門医認定部25aは、専門医の手技の質を基準とし、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3(評価項目は、もっとあるべき約100項目ある)が所定の基準を満たしている医師について専門医として認定処理する。保険点数演算部25bは、専門医認定部25aによって専門医として認定された医師に対する診療に対して、診療報酬の保険点数を加算するように診療報酬制度を設定する。
保険システム23は、評価情報分析AI21から提供された保険料甚礎情報に基づいて保険料等を算出する。この保険システム23は、医師損害賠償保険料金演算部23aと、保険対象医師認定部23bと、経理処理部23Cと、を有する。
医師損害賠償保険料金演算部23aは、評価情報分析システム21から出力される保険料基礎情報に含まれる医師損害賠償保険料金算定基礎情報に基づいて医師への医師損害賠償保険の保険料の保険料を算定する。
保険対象医師認定部23bは、治療実績に基づいて保険料の減額対象なる優れた医師を認定する。
経理処理部23Cは、医師損害賠償保険料金演算部23a及び保険対象医師認定部23bに基づいた保険料を算出する。
また、本応用例では、医療評価システム10、保険システム23及び評価情報分析AIに接続される利用者システム22(図12参照)を設けている。利用者システム22は、入出力装置13からの接続を制御する利用者CPU22aと、支払処理部22bと、評価情報メモリ22Cと、を有する。
支払処理部22bは、電子カルテ装置11の会計演算部11dに接続すると共に、保険システム23の経理処理部23Cに接続しており、保険料を加味した利用者の支払い費用を算出すると共に、決済処理を行うものである。また、診療評価情報を入手するための料金の精算にも用いられる。評価情報メモリ22cは、評価情報分析AI21及び保険システム23の保険対象医師認定部23bに接続しており、診療評価AIによる評価情報や評価情報分析AI21による出力情報及び保険対象医師認定部23bによって認定された保険対象となる医師の情報等を記憮する。
また、本応用例では、治療時間を計測するためのタイマ19が医療評価システム10に接続されている。このタイマ19によって計測された治療時間情報は、治療時間評価指数S3に基づいた判定を実施するために用いられる。
[診療評価AI12について]
診療評価AI12は、AIを備えており、症例に応じた遁正な治療方針の策定、及び、治療結果の評価を行うことができる。このために診療評価AI12は、例えばブロックチェーンデータベース20に接続されたガイドラインデータベース24にアクセス可能である。ガイドラインデータベース24はガイドラインが改定されるたびに更新され、常に最新の情報が記憶されている。この情報は医療評価システムが診療の評価に用いるだけでなく、医師が診療の際に参照することも可能である。
ガイドラインデータベース24には、医科標準治療ないし歯科標準治療を規定した複数種類のガイドラインが含まれる。EBM(エビデンスベースドメディスン)とは、エビデンスの信頼性が高い治療行為のことである。治療方針を適切な手技で実現しているかどうかを判定するために参照される。EBMグレードの高いものが無視されないように、必要に応じて治療中に医師に対して治療評価情報を報知することができる。例えば、ラバーダムを使用する必要がある場合に、ラバーダムの不使用が画像認識により検出されると、即時に、医師に対して警報を発することができる。
AIは治療中の画像データ等を分析し、術中に医師が行っている、あるいは、行おうとしている施術が標準治療から外れていることを警報し、医師にフィードバックを行うことができる。
まず、医療面接によって医師は、患者の状態と要望を把握し、この医療面接の内容に沿って診療計画を策定する。診療評価AI12は、医師による診療計画の決定をサポートすることができる。診療評価AI12は、医療面接によって収集した情報、ガイドラインデータベースの情報、電子カルテ情報等をもとに、医学的問題、心理的な問題、経済的問題の3つに分けて整理し、問題解決のための診療計画を提案する。診療評価AI12は診断計画、教育計画についても、同様に提案することができる。例えば、窟洞形成を伴う場合には、患者の歯の3Dスキャンの画像及びX線CTの画像から嵩洞形成の3D-CADデータを出力できる。診療評価AI12は、ガイドラインデータベースを教師データとして訓練されており、入力された診療方針、患者の歯の3Dスキャンの画像及びX線CTの画像等から、治療内容である窩洞形成の3D-CADデータを出力することが可能である。
治療の進捗に応じて、診療経過情報を診療評価AI12に入力すると、診療評価AI12は目標とする治療内容との差分を出力することができる。例えば、診療評価AI12は治療途中の3Dスキャンデータを入力されると、目標とする治療内容である寓洞形成との差分を示した3D-CADデータを出力することが可能である。
窩洞形成の場合を例に挙げると、診療評価AI12は治療途中の3Dスキャンデータを入力されると、目標とする治療内容である窩洞形成との差分を示した3D-CADデータを出力する。歯科医は、診療評価AI12によって示された差分を無くすための治療を行った上、再度、3Dスキャンデータを診療評価AI12に入力する。この治療が1回以上行われることにより、診療評価AI12から出力される目標とする治療内容である窩洞形成との差分が所定の許容範囲になったことが、歯科医に対して報知される。この報知を確認し、歯科医は次の充填、咬合調整の段階へと進む。各段階の情報が入力されることにより、診療評価AI12から目標とする治療内容との差分の情報が出力されるので、医師はこの情報を参酌してガイドラインにしたがって標準治療を実施することができる。このような処理は、例えば、診療のプロトコルに応じたリカレントニューラルネットワークを用いて実現することができる。
また、ブリッジや義歯等の補綴物を支えるための支台歯の形成についても、診療評価AI12は目標とする3D-CADデータを出力し、また、歯科医による治療後の3Dスキャンデータを診療評価AI12に入力すると、目標とする治療内容である支台歯形状との差分に関する情報が出力される。これにより上記嵩洞形成の場合と同様に、医師は診療評価AI12から出力される情報を参酌してガイドラインにしたがって標準治療を実施することができる。
治療後の3Dスキャンデータ及びX線CTの画像が入力されると、診療評価AI12は、治療内容について評価することができる。
標準治療を評価する場合、ラバーダムの使用の有無のように、可か不可かだけの2択による評価だけではない。窩洞形成の内側面の角度が適正角度かどうか、裔洞形成の開口面に適正角度のテーパーが付与されているか等の例えば100点から0点等の評価とすることもできる。
治療時に検出された情報及び診療評価AI12に入出力された情報は、電子カルテ情報として、電子カルテデータベースに記憶される。各医療評価システムによって蓄積された電子カルテ情報を用いることにより、患者の状態を的確に把握し、的確な診療計画の作成と適切かつ効率的な診療を行うことができると共に、医療安全の向上を図ることが可能である。各医療評価システム10によって蓄積された電子カルテデータベースの情報は、診療評価AI12や評価情報分析AI21を訓練するために用いることができる。
また、う蝕検知液を用いた治療にも診療評価AI12を用いた画像認識技術が有効である。
(1)補綴物を歯から取り除く。
(2)う蝕検知液を塗布し、洗浄する。
(3)赤色、濃いピンク色の部分を削り取り、基準色よりも薄いピンク色の部分を残す。
(4)カメラでカラー画像を撮影し、診療評価AI12に入力し、画像認識を行う。
(5)上記(2)及び(3)を繰り返す。
(6)診療評価AI12から窩洞形成完了の報知があった場合、歯科医は次の充填、咬合調整の段階へと進む。
このように各段階の情報を入力することにより、診療評価AI12から目標とする治療内容との差分の情報が出力されるので、医師はこの情報を参酌してガイドラインにしたがって標準治療を実施することができる。う蝕検知液の色の判定は医師の判断に主観的な要素があるが、診療評価AI12を用いることにより基準色の判定を迅速かつ的確に行うことができる。
ここではう蝕の治療例を説明したが、本応用例はこれに限定されるものではない。う蝕検知液によって検出されたう蝕を光学検査機器によって検出し、診断基準と比較することにより、客観的にう蝕を判定し、記録するシステムを提供することが可能である。
評価は主に3つの観点から行う。
(a)標準治療評価指数S
(b)術後画像評価指数S2
(c)治療時間評価指数S3
(a)標準治療評価指数S1について
標準治療評価指数S1は、
a-1.適切な基材の選択と使用、ラバーダム、ターピン、バー選択
a-2.タービン、注水、エンジンの利用方法
a-3.麻酔
a-4.禁忌治療
a-5.裔洞形成評価
等の項目に関して、標準治療がガイドラインどおり行われているかどうかの判定を示す指数である。標準治療どおりの治療が行われているほど、評価が高くなる。診察室画像取得手段から取得された治療を行っている様子を撮影した動画に、前処理を行った上で、AI画像認識を行い、評価する。
診療評価AI12から出力される評価情報は、診察室カメラ、診察部位カメラ、問診入力装置、診察装置センサ(3Dスキャナ、X線CT、ドリルのマイクロモーターセンサ、タービンセンサ、バキュームセンサ、浄水センサ等)、電子カルテデータベース、及び、ガイドラインデータベース等の情報に基づき、医師・歯科医師等による診療に対する客観的かつ定量的な評価を含むものである。
(b)術後画像評価指数について
術後画像評価指数S2は、診療の結果が、医療面接から導き出した診療方針(AIによって提案された診療内容)どおりになっているかどうかを判定する指数である。AIが計算した窟洞形成にどれだけ近いか等が判定され、医療面接による診療方針に近いほど評価が高くなる。3Dスキャン、X線CT等の画像からAI画像認識を行い評価する。
(c)治療時間評価指数について
治療時間評価指数S3は、標準治療を行うための治療時間が適正時間内であるかどうかを判定する指数である。ガイドラインに沿った標準治療にかかる時間には適正範囲があるため、この適正時間範囲であれば評価が高くなる。治療が早ければ高得点となるとは限らない。これは、ガイドラインを遵守するためには所定の時間を要する治療もあるためである。
複数の医療評価システム得られた3つの指標からなる評価情報を、評価情報分析AI21を用いて統計的にも適切な評価を行う。ブロックチェーンデータベース20を用いて評価情報を利用者(患者)に提供可能とする。
診療評価AI12は、複数の教師データにより訓練された訓練されたニューラルネットワークを使用している。教師データとしては、ガイドラインデータベース24の情報が含まれる。この学習のアルゴリズムとしては、例えば教師あり学習の分類(classification)においてディープラーニングが用いられる。ニューラルネットワークは例えば窟洞形成の画像とその適正度(合否ないしは点数)との組み合わせからなる教師データにより訓練される。診療評価AI12は、例えば診療部位画像取得手段15からの画像を入力し、標準治療遵守指数、術後画像評価指数及び治療時間評価指数等を含む複数の指標を評価情報として出力する。また、ニューラルネットワークは入力情報として、診察室画像取得装置14、診療部位画像取得装置15、問診情報入力装置16、及び、診療装置センサ17からの各装置を入力とすることもでき、この場合、ニューラルネットワークを学習するデータとしても、これらの各装置からの入力に対応する教師データを含む。例えば、診察室画像取得装置14からの情報をニューラルネットワークに入力する場合、あるいは、ニューラルネットワークを訓練する場合には、動画データに前処理を加える。前処理としては、例えば必要画像の切り出し、サイズ調整、カラー調整等である。
ニューラルネットワークによって、例えば入カデータがどの程度ガイドラインに近い窩洞形成であるかを推論する。この推論結果は、専門医による評価、及び/又は、その後の経過情報による評価により検証され、ニューラルネットワークの訓練に用いられる。
[評価情報分析AI21について]
前述のとおり、評価情報分析AI21は、診療評価AI12が出力した複数の評価情報を分析し、ベストプラクティスの選定を含む定量的な評価を行い、利用者に対して診療評価情報を提供し、保険システム23に対して保険料基礎情報を提供すると共に、ガイドラインデータベース24に対して、ガイドライン更新情報を提供する。診療評価AI12は上記3つの評価情報だけでなく、これらを細分化した情報や評価に用いられる各種エビデンス情報を出力することが可能である。
評価情報分析AI21は学習により訓練されたニューラルネットワークを用いている。この学習のアルゴリズムとしては、例えば、教師無し学習のクラスタリング(clustering)においてディープラーニングが用いられる。評価情報分析AI21は多数の評価情報や各種エビデンス情報を入力可能であり、多変量解析的に診察内容について客観的な評価を行うことができる。
[利用者による診療評価情報の利用について]
利用者は、ブロックチェーンデータベース20を介して得られた診療評価情報に基づき自分が希望する医師ないしクリニックを選定することができる。ブロックチェーンデータベース20を用いることにより匿名性を担保しながら、改ざんができないようなデータ管理が実現できる。
[保険システム23による保険料基礎情報35の利用について]
保険システム23では保険料基礎情報に基づき保険料等を算定することができる。詳細は応用例2で説明する。
[診療評価AI12におけるガイドライン更新情報の利用について]
診療評価AI12では、ガイドライン更新情報に基づきガイドラインデータベース24の更新ないしその更新のための検討を行うことができる。ガイドライン更新情報は最新の臨床結果に基づくベストプラクティスを分析することにより得られものであり、ガイドライン更新のために利用することができる。
[作用効果について]
これまでは実際の診療、例えば医師ないし歯科医の手技を評価するために、実際の治療の術前及び術後を対比して分析するシステムは存在しなかった。また、単に診療を評価するだけではなく、この評価情報を経済的インセンティブ(保険料金や診療報酬等)に反映されることができる。これにより、コンビニエンスストアーの数よりも多いと言われる医師・歯科医師の適正数化、及び、適正価格を是正することにも繋がる。本応用例の医療評価システムは、評価情報をエビデンスに基づき算出することで、医療市場における医師・歯科医師の質を担保しつつ、患者本位の医療の実現に寄与する。
[医療評価の効果]
医師・歯科医師は、標準治療として推奨されるべき処置法を行うことが義務付けられているが、その処誼の品質が医師・歯科医師によって異なる場合がある。例えば、卓越した手技によって最短時間で標準治療で規定された処置をする医師・歯科医師の診療報酬が、時間当たりの診療報酬として適切な単価か否かを、ニューラルネットワークによる出力によって判断することができる。
また、医学的手技のみならず、コメデイカル、例えば歯科においては、歯科衛生士や歯科助手、医科であれば看護師や理学療法の配匿や動きが適切であるか、あるいは、機材の配置やメンテナンス等が適切かについても、訓練されたニューラルネットワークにより評価する。これにより、AIを用いて、エビデンスに基づいて医師を評価すると共に、さらに、その医師が診察する環境、その診療所の経営効率等も評価することができ、コンサル機能や教育改善効果をもたらす。また、本システムを利用する医師・歯科医師については、他の優れた事例等を匿名あるいは実名にて参照することができる。これにより、医局や系列に縛られないオープンシステムを提供し、技術の鍛錬を安価にもたらすことができる。
本システムに登録した患者は、優れた医師・歯科医師をこのオープンシステムから、それぞれの医師・歯科医師が受け持った治療実績を参酌して、医師・歯科医師を選択することができる。いわゆるロコミ情報はウエッブサイトで容易に入手可能であるが、エビデンスが十分でない等の問題があった。ここで、本システムで提供される、エビデンスやこのエビデンスに基づく評価により、医療過誤や医療事故、更には医原病が起こりにくい医師・歯科医師や診療所、難しい症例の成功確率等を把握することができる。
医師・歯科医師が受け持った治療実績に応じて、医療保険加入者のそれぞれに、推奨する医師・歯科医師のリスト化に適用することができる。これにより、医師・歯科医師毎に支払保険料の設定も可能になり、医師・歯科医師の賠償保険料も算出でき、公的医療保険や民間医療保険の保険料最適化に貢献できる。これは、医師の倫理に反するような医療過誤や医療事故、更には医原病の発生や保険料の高騰を防ぐことにつながり、外部不経済を抑制することができる。各学会の専門医や認定医の手技がどの程度優れているかを客観的に評価することにもつながる。
本応用例では、窩洞形成等の支台歯形成を伴う、う蝕歯の補綴治療を例に挙げて説明したが、本応用例はこれに限定されるものではない。支台歯形成は、多数の医療行為の1つとして例示したものであり、本応用例の医療評価システムは他の医療行為に対しても同様に適用可能である。例えば、口腔がんの診断にも適用可能である。口内炎と前がん病変との見極めは重要な診断であり、この診断の過程を動画として電子カルテに記憶すると共に、適切な評価情報と共にデータベースに保存・活用することは有用である。さらに、歯科以外の医科に対しても本応用例の医療評価システムは適応可能である。
[応用例2]
応用例2に係る医療評価システムついて図12を参照して説明する。本応用例の医療評価システムは、患者と医師との組み合わせた情報により、医師の評価を行うものである。本応用例の医療評価システムによれば、秘密鍵情報を患者が管理することにより、患者の意志により匿名加工情報を提供することが可能となる。
図13は、ブロックチェーンデータベースの説明図であり、図13Aは患者とこの患者を治療した医師とが一体となってIDが付されたデータ構造の説明図であり、図13Bはブロックチェーンを用いたデータベースの説明図である。電子カルテ演算部は、診療情報に、患者とこの患者を治療した医師とが一体となってIDを付与し、さらに術前情報と術後情報等が一体となって、データ1、2、...、mとして評価情報メモリ11C等に保存する。診療評価システムでは、患者とこの患者を治療した医師とが一体となったIDが付された診療情報が用いられ、これらの診療情報をもとに診療内容の分析・評価・記憶が行われる。
データ1:患者1十医師A-Σ(術前情報)k+Σ(術後情報)k,k=l~n
データ2:患者2十医師A-Σ(術前情報)k+Σ(術後情報)k,k=l~n
データm:...
患者とこの患者を治療した医師との組み合わせであるデータ1~データm(診療情報)をブロックとし、各部ブロックが順序付けられたレコードとして追加されていくように、ブロックチェーンが構成される。図12の例では、下方のブロックから上方に向かって複数のブロックがチェーン状に付加されていき、複数のブロックからなる情報が記憶される。例えば、「患者1と医師A」のブロックに対し、「患者1と医師B」のブロックが付加され、さらに、「患者1と医師C」のブロックが付加されるというように、ブロックが順次付加される。
医師Aが受け持った患者1、患者2、患者3等の患者の数だけ、IDが1人目、2人目、3人目と付与される。医師Aに関する情報として、専門医、認定医、それ以外の医師などの種別も付与される。他の医師B、医師Cについても、同様に治療した患者の数だけ、患者1、患者2、患者3等とデータが保存される。
各データがブロックとして、順序付けられて記憶されているため、例えば患者1が医師Cによる特定の治療を受ける前に、医師Aによる別の治療を受けていたこと等、その特定の治療及び別の治療についての術前情報、術後情報等と共に、患者1がアクセス権を設定できる状態で治療履歴が保存される。
各データは公開鍵データと秘密鍵データとによって暗号化されている。本応用例では患者が秘密鍵データを管理しており、患者が他者に対してデータのアクセス権を設定できるようになっている。
従来のデータベースでは匿名情報加工業者が患者情報、医師情報等を匿名化してデータを提供していたが、本応用例の医療評価システムでは、患者1が自分の診療情報へのアクセス権を設定できる。例えば患者1は自分の意思でブロックチェーンの秘密鍵データを医師Bに提供し、自分の診療履歴にアクセスすることを許可することができる。また、患者1は医師Bにアクセス権を付与し、自己の既往歴や治療歴を公開し、医師Bとの将来の診療や健康維持管理に活用することができる。
ブロックチェーンの管理サーバでは、データヘのアクセス権の管理、有料でデータにアクセスする場合の課金管理等を行う。
患者とこの患者を治療した医師との組み合わせのデータをブロックとするブロックチェーンにより治療履歴情報をデータベース化することにより、患者にも医師にも、また、これらのデータを利用者にもさまざまな利点がある。
患者にとっては、患者が自分の治療データヘのアクセス権を有することにより、自分の診療履歴へ容易にアクセスすることができると共に、自分の診療履歴情報を他者に開示するかどうかの権限が得られる。自分の診療履歴へのアクセスにより、過去の治療履歴を考慮した上で、次の治療を受けることが可能となると共に、過去の治療に関する医師、術前惰報、術後情報などの内容を、現在の症状との相関を明らかにすることができる。患者と医師とが対応づけられることによって、術前、術後のトレースが可能となる。術中の手技が予後にどのように影響したのかを示す情報が記録され、AIによって医師の評価に関する分析対象とされる。
医師にとっても担当する患者から過去の診療履歴情報の開示へのアクセスを許可されれば、過去の治療における術前情報や術後情報を今の治療及び今後の治療に生かすことができる。例えば、医師Cが患者1と医師Aの症例を閲覧したい場合は、本応用例の医療評価システムにおいては、患者1からの許可に基づき、有償によりかかる症例の医師Cによる閲覧を可能とする。また、例えば医師Aが患者1の症例が難症例で、医師Dやその他医師に問いかけたい場合にも、同様に、この症例に係る患者からの自己のデータにたいするアクセス許可に基づき、有償によりかかる症例の医師Aによる閲覧を可能とすることができる。
診療評価AIにおいては、過去の診療履歴をもとに医師による適切に治療方針・資料内容の決定を支援すると共に、治療経過に対する注意情報・警告情報の報知を行うことができる。また、治療履歴も考慮した診療内容及び診療結果の評価を行うことができる。診療評価AI訓練システムにおいても、患者とこの患者を治療した医師との組み合わせであるデータ1~データmを教師データとして使用することにより、適切に診療評価AI12を訓練することができる。なお、診療評価AIは教師あり学習により訓練されるが、教師データとしては、患者情報、医師情報、術前情報及び術後情報等を含む各データの診療内容・診療結果に対する訓練用の評価情報を含まれている。この訓練用の評価情報は、診療評価AIの出力、評価情報分析AIの出力、又は、専門医など経験豊富な医師による評価のいずれか少なくとも1つとすることができる。
例えば、データ1~データmには、評価情報分析AIにより各種エビデンスに基づいた客観的な評価情報が付与される。これは、各データの診療内容に対する客観的な評価とすることができる。評価情報分析AI21は、このように患者とこの患者を治療した医師とを一体として付与されたIDを有する術前情報と術後情報を分析することにより、術前、術後のトレースできる情報を用いて、医師の評価情報を演算することが可能となる。医師による術中の手技が予後にどのように影響したのかをより的確に分析することが可能となる。したがって、客観的な評価情報が付与された各データは後述の応用例3における医師損害賠債保険の料金算定、民間医療保険、診療報酬等の公的医療保険制度、専門医制度等に利用することができる。
また、患者情報は匿名加工情報として扱えるので、本サービスを通じて新たな患者が医師を選ぶとき情報として流通することも可能である。ある患者が現在の自分の症状にあった医師ないしクリニックを選択する際に、本診療評価システムのデータベースは大変有用であるため、例えば会員に対して有償で提供するようにしてもよい。また、医師が過去の症例を参考にして治療計画を策定し、また、治療を進めるための参照情報として用いることもできる。
さらに、診療評価AIは治療計画の策定を支援すると共に、治療中の医師に対する適切な治療のための情報提示や注意情報の報知を行うことができるので、本応用例の医療評価システムは例えば研修医による診療技術の習熟や、専門医のための診療技術向上支援のためにも有用である。なお、医科の専門医と認定医は、内科、脳神経外科、整形外科、眼科等約30と多岐にわたる。歯科の専門医と認定医は、歯科保存科、歯科口腔外科、歯科麻酔科、小児歯科等が挙げられる。
医療サービスの提供とその質を見極めるのに、医師と患者の双方の情報が不可欠であり、本応用例の医療評価システムによれば、ある患者に対して治療行為を提供した医師とが一体となった情報に対して、IDが付与され、治療前情報と治療後の情報等を含む治療行為に関わる収集された全ての情報が、一評価情報分析AIによって、各々の患者に対する当該医師の一連の治療行為を評価することができる。
各種エビデンスに基づいた客観的な評価情報が付与されたデータに基づくブロックチェーンによるデータベースからより治療実績の良い医師を検索、参照することを可能にし、患者は適切な医療サービスを選択でき、医療過誤や医療事故、更には医原病を回避すること、及び、治療後によりよいQOLを得ることの実現に寄与することができる。
本応用例のブロックチェーンデータベースから提供される匿名加工情報を調査機関に提供することによって、調査機関では、患者に対する医師・歯科医師による治療の履歴や患者の症状の経過等を含めて評価情報を利用した分析が可能となる。本応用例においては、患者が暗号鍵情報を管理するため、患者自身が自分の診療履歴を含む電子カルテ情報をどこまで開示するのかを決めることができる。例えば、患者の情報は、その所有者である。患者が自らの意思で、公開したい情報を取捨選択して、第3者に提供することも可能である。
本応用例において評価情報含む診療情報ブロックチェーンデータベースにより管理することの作用・効果をまとめると、次の5つの観点となる。
(1)診療情報を情報ネットワーク上で管理
(2)常時アクセス可能
(3)暗号化
(4)所有権の明確化
(5)アクセス履歴の記録が可能
上記(1)評価情報を含む診療情報を情報ネットワーク上で管理する効果は、患者情報、術前情報、術後情報及び評価情報等を含めてネットワーク上に管理することで、遠隔からのアクセスが可能なことである。従前、診療情報はネットワークとは独立のアイソレーションされたデータベースで管理されているため、遠隔からのアクセスは不可能であった。
上記(2)常時アクセス可能なことの効果は、患者によるアクセス権の付与がいつでもできるようになっていることによるものである。
上記(3)暗号化について、患者によりアクセス権が付与されていなければ、その患者の診療情報には誰もアクセスできず、診療情報が患者の許可なく公開されることはない。すなわち、暗号鍵情報を保存していない第3者は、診療情報にアクセスできないため、患者にとって安心なデータベースであるという効果がある。
上記(4}所有権の明確化については、患者のみに暗号鍵情報を付与しているため、診療情報がネットワーク上にどこに存在していても、診療情報の所有権が明確であるという効果がある。診療情報がネットワーク上のどこに記憶されていたとしても、患者によりアクセス権が付与されない限り、医師を含む第3者はその診療情報にアクセスできない。
上記(5)アクセス履歴の記録が可能であるため、誰が診療情報にアクセスしたかとうい履歴が追跡可能である。これにより、診療情報への不正アクセスを追跡でき、また、暗号キーを変更した時期まで記録されているため、誰がいつ不正アクセスしたのか追跡でいるため、ネットワーク上のセキュリティーが向上する。
本応用例の変形例を図14及び図15を参照して説明する。図14は診療情報の説明図である。図15は、診療情報をブロックチェーンデータベースで管理する概念図である。診療情報は患者ID、医師ID、各種症例データ(術前、術後)、医師手技判定データ、予後データ、医師評価データ等からなる。図15は、診療情報がブロックチェーンデータベースで管理される様子を概念的に示している。患者aOOOOOlを医師aOOOOOOlが治療した履歴が、その患者の予後1の状況である患者aOOOOOl'と関連して記憶される。同様に、その後患者aOOOOOl'に対して、医師AOOOOOOlが治療したという履歴が、予後2の状況である患者aOOOOOl’'と関連して記憶される。
本変形例において、医師・歯科医師による診療時には、患者の予後の状態は分かっていない。本変形例の医療評価システムでは、治療後に所定期間が経過した後、患者の予後の経過が分かった時点で、過去に行われた医師・歯科医師による診療内容が検討され、その診療内容が客観的に評価される。予後の経過が良好であった場合には、患者の予後が良好なのか、過去に医師・歯科医師が行った手技が検討される。また、予後の経過が悪い場合にも、過去の診療内容を踏まえた検討が可能となる。
また、患者の予後の経過を含む診療情報は、診療評価AIを訓練するための教師データとして使用される。教師データで実際の患者の予後の経過を含めることによって、診療評価AIを実際の症例とその予後の結果に則して、より適切に訓練することができる。
本応用例の医療評価システムでは、予後の経過が良好な症例を参考にしたいという医師・歯科医師に対して、患者からアクセス権が付与された場合には、診療情報が提供される。医師・歯科医師は、治療前のカンファレンス時に、予後の良好な症例を参酌して、診療方針を決定することができる。従前は論文でしか紹介されていないような症例についても、ブロックチェーンデータベースで管理されているため、所望の診療情報でのアクセスが容易となる。論文上では医師・歯科医師による手技の良否までは十分に考慮されていない場合があるが、本応用例の医療評価システムによれば、診療評価AIにより客観的に判断された評価情報が診療情報に付加され、ブロックチェーンデータベース上で患者からのアクセス権が付与されたことを条件に、第3者に診療情報を提供することができる。これにより提供された診療情報は、症例研究のための資料や、患者が医師・歯科医師を選択する際の参考情報として有用である。さらには、これらの評価情報を含む診療所法は、後述のとおり公的医療保険制度を含む医療保険、損害賠償保険、その他金融派生商品等にも利用可能である。
[応用例3]
応用例3に係る保険システム等へ適用した医療評価システムついて説明する。本応用例では、応用例1において述べた3つの評価指数を保険料の算定等に利用する。以下、医師損害賠償保険の料金算定への適用例、民間医療保険への適用例、診療報酬への適用例、その他の適用例について以下説明する。
(実施例1)医師損害賠債保険(Medical liability insurance)の料金算定への適用
評価情報分析システム21から出力される保険料基礎情報には、医師損害賠償保険料金算定基礎情報が含まれる。医師損害賠償保険料金算定基礎情報は、ベストプラクティスに近い診療を行う医師ほど、医師損害賠償保険の保険料が低くなるような評価指数Sliaを含んでいる。
医師損害賠償保険料金算定指数Sliaを算定する計算式は、特に限定されるものでは無いが例えば次のようなものを用いることができる。応用例1において述べた3つの評価指数を、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3としたとき、例えば医師損害賠償保険料Fliaは、
Flia=fl(Sl.S2,S3),Flia_min≦Flia≦Flia_max
として求められる。ここでFminは最低保険料、Fmaxは最大保険料である。関fI(SI,S2,S3)は、SI,S2,S3を変数とする関数であり、必ずしも連続関数に限定されるものでは無く、不連続関数であってもよい。
また、上記計算式の別の例として、次のように標準化された評価値を用いることもできる。応用例1において述べた3つの評価指数を、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3としたとき、例えば、標準化された評価値Sliaを、
Slia=S1・a1+S2・a2+S3・a3+a0
として求める。ここで、O≦a1≦l、O≦a2≦1、0≦a3≦1であり、Sliaが平均0,分散1で標準化されているとすると、例えば医師損害賠償保険料Fliaは、
Flia=f(Slia),Flia_min≦Flia≦Flia_max
として求められる。ここで、Fminは最低保険料、Fmaxは最大保険料である。関数f(Slia)は、SIiaを変数とする関数であり、必ずしも連続関数に限定されるものでは無く、不連続関数であってもよい。
上記関数fl(SI.S2.S3)や関数f(SIia)の関数の設定方法としては、次の(1)~(4)などが挙げられる。
(1)保険料Fliaをリスク値に応じて変動させる。保険料のリスク値のパラメータとして、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3、標準化された評価値sliaが用いられる。例えば、リスク値を段階的に変化する閾値を有する保険等級として与えることができ、リスク値が高いほど、保険料Fliaは嵩くなるような関数が得られる。保険料Fliaの上限Flia_maxと下限Flia_minを考慮し、リスク等級として与えられるリスク値の閾値は、保険事業運営上の適正籠囲に応じて設定されている。
(2)上記(1)のリスク値ないしリスク等級に応じて保険料Fliaが算出される。この計算では、保険事業に係るキャッシュフロー、準備金、保険契約の状態(保留、失効あるいは継続中等、保険年度、保険期間、保険タイプ、特約、免責事項)、各保険年度におけるリスク値等を考慮することができる。また、保険料Fliaを基本保険料と加算保険料とに分離し、加算保険料の部分をリスク等級に応じて計算するようにしてもよい。また、リスク値ないしリスク等級は単一でなく、複数種類のリスク値ないしリスク等級を設定し、複数種類のリスク値ないしリスク等級に基づいて保険料Fliaを算出するようにしてもよい。
(3)上記(2)では、リスク値ないしリスク等級に応じて加算保険料を計算する例を説明したが、リスク値ないしリスク等級に応じて、基本保険料からの割引保険料を計算するようにして、保険料Fliaを算出してもよい。なお、リスク値ないしリスク等級の演算には、上記(1)及び(2)と同様に、例えば標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3、標準化された評価値Sliaを用いることができる。
(4)評価情報分析AIにおいて医療評価情報を含んだ診療情報等を多変量解析的に分析することにより、保険料Fliaに影響するリスク指標が抽出される。抽出されたリスク指標と保険料Fliaとの相関が計算され、計算された相関とリスク情報の値とに基づいて保険料Fliaが計算される。リスク指標としては、例えば標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3、標準化された評価値Slia、診療情報に含まれる医療評価情報等の各種情報を用いることができる。また、リスク指標の抽出にあたり、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3をさらに細分化した指標を用いることも可能である。診療評価AIはより細分化された指標を出力することが可能であり、また、指標を抽出するために用いられた各種エビデンスも保険料Fliaの算出に利用可能である。
このようにして算定された医師損害賠償保険料Fliaは、ベストプラクティスに近い診療を提供する医師には最低保険料Fminに近い保険料が適用されるようになる。
(実施例2)民間医療保険への応用
所定の保険料を支払った被保険者に対して、ベストプラクティスに近い診療を行う医師の診療にだけ治療費を支払う保険制度を設定することができる。この保険制度では、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3が所定の基準を満たしている医師だけを対象として、治療費を保険金で賄うようにする。被保険者に対しては、ベストプラクティスに近い診療を受けられることが保証されると共に、その治療費も保険料から支給されるという利点があると共に、ベストプラクティスに近い医療を提供する医師には被保険者が集まることにより、被保険者及び医師の相応にとって利点がある。さらに、医療制度全体にとっても、ベストプラクティスに近い医療が提供されることにより、不要な治療費が削減できることにより、医療の全体最適化を促すことに繋がる。
実施例2の変形例について、仮想通過IOTAを用いる例を説明する。例えば、実施例2の保険対象となる歯科医の診療を受け、被保険者の診療に10万円の費用が発生したとする。保険支払いの要件に定期的な検診を義務付けている保険制度の場合には、前述の被保険者が所定の定期的な検診を受けていた場合には、保険会社からは、その保険者に対しては定期的な検診代例えば2万円に加え、治療費の10万円分の合計12万円分のIOTAが付与される。非保険者は付与されたIOTAによって、診療ないし診察の対価としての費用を医師に支払うことができる。ブロックチェーンデータベースの例としは、本実施例のように支払を兼ねる場合には、例えばIOTAを採用することができるが、IOTA以外のブロックチェーンを用いることが可能である。
歯科の市場において本応用例の医療評価システムを採用した場合の効果について説明する。約3兆円の歯科市場、約25兆円の医科市場がある。そのうち、歯科では禁忌処匿が約10%、ラバーダム未使用など非標準治療は30%程度あるのではと推定されている。歯科では、ラバーダム未使用などに起因する治療中に再感染により、歯科治療によるう蝕の再発誘導も発生していることが予想されている。約3兆円のうち、9000憶円が再治療によって市場が形成されている試算されている。本応用例の医療評価システムによれば、医師・歯科医師の手技の質を、室内カメラなども含む複数のセンサにより、診療行為全体、窩洞形成(光学3Dスキャナ)、口腔粘膜への侵襲(口腔スキャナ)を治療前と治療後で評価し、診療評価AIが治療警報情報を医師へ治療中に報知したり、診療評価AIが診療内容・診療結果について評価したり、あるいは、評価情報分析AIが各診療情報に対してエビデンスに基づく客観的な評価情報を付加する。評価情報が付加された診療情報は、医療過誤や医療事故、更には医原病を阻止する環境を醸成する政策支援にも役立つ。本応用例の医療評価システムを民間医療保険に適用すれば、評価の高い医師・歯科医師による治療を提供するための保険制度実施する上で、エビデンスに基づく客観的な評価が付与された治療データは有用である。
例えば、口腔がん(歯肉がん)が歯肉炎と誤診されたようなケースにおいて、本応用例の診療評価システムを用いた場合には、患者情報、医師情報、術前情報、術後情報及びエビデンスに基づいた客観的な評価情報を含む診療情報がデータベースに保管されているため、医師に対して診療の経緯や今後の適切な治療計画や治療内容について情報提供することが可能である。
本実施例では、民間医療保険への応用について説明したが、本応用例の医療評価システムの適用対象は民間医療保だけに特定されるものではなく、他の保険商品や金藷派生商品にも適用することができる。本実施例では、ベストプラクティスに近い診療を行う医師の診療にだけ治療費を支払う保険制度を設定することを説明したが、このような仕組みを金融派生商品に適用することが可能である。例えば、本応用例の医療評価システムは、ベストプラクティスに近い診療を行う医師の診療を受けられる権利を証券化した金融派生商品等にも適用可能である。
(実施例3)診療報酬への反映
図16(保存修復クリニカルガイド第2版)には、治療後の歯の生存率について専門医と、その他の歯科医師とによる比較結果を示す。図16より専門医による治療の方が、歯の生存率が高い傾向があることが分かる。専門医と同等のスキルを有する医師を判別し、その治療に係る診療報酬を高めることにより、公的医療保険制度の全体最適化を図ることができる。
具体的には、専門医の手技の質を基準とし、標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3(評価項目は、もっとあるぺき約100項目ある)が所定の基準を満たしている医師に対する診療に対して、診療報酬の保険点数を加算するように診療報酬制度を設定する。専門医の資格を取得は必ずしも実際の臨床の内容ないし症例に依存するものでは無く、また、専門医でなくとも十分なスキルを備える医師も存在する。そのため、本実施例の標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数s3に基づいて、所定のスキルを備えた医師を識別して、診療報酬の保険点数を加点することにより、専門医ないし専門医同等のスキル獲得に対するインセンティブを与え、かつ、公的医療保険制度の全体最適化を図ることができる。専門医・認定医制度が、専門医・認定医になるために、多くの症例数を満たし、論文を書いていることを求めている。本システムでは、医師・歯科医師の真の技量を客蜆的に評価し、症例数や論文数だけによらない専門医・認定医制度を実現することができる。手技の質が高い医師・歯科医師は、医療過誤や医療事故、更には医原病医療過誤や医療事故、更には医原病をもたらす確率は低く、患者の予後も良好となるため、その経済効果は大きい。他方、医師・歯科医師の手技の質が低いと仮定した場合には、医療過誤や医療事故、更には医原病医療過誤や医療事故、更には医原病の発生リスクがあり、環境問題同様に、外部不経済である。他の医師・歯科医師が、さらに医療過誤や医療事故、更には医原病を治療することで、経済損失が多いし、患者の真の使用コストではなく、公的医療保険への負担と受益者負担が非常に大きい原因となる。本応用例の医療評価システムによれば、診療内容を客観的かつ定量的に評価することができ、また、手技の質が高い医師・歯科医師を見出すこともできるため、公的医療保険への負担の低減、受益者負担の低減に寄与することができる。医療過誤や医療事故、更には医原病医療過誤や医療事故、更には医原病医療過誤や医療事故、更には医原病の発生を防ぐことができる。
(実施例4)その他
専門医制度の専門医認定要件にベストプラクティスに対する到達度の指標を設けることができる。実施例3で述べた所定のスキルを備えた医師を識別し、その医師に対して専門医の資格を与えることができれば、専門医制度の最適化を図ることができる。具体的には、本応用例の標準治療評価指数S1、術後画像評価指数S2、治療時間評価指数S3に基づいて、専門医に求められるスキルに相当する所定のスキルを備えた医師を判別し、所定のスキルを有すると判別された医師に対して専門医の資格を付与することができる。
本実施例では実際に患者の診療を行う際のシステムの利用について説明したが、本応用例は臨床だけでなく、歯科模型を用いた実習にも適用することが可能である。例えば、実習者情報と歯科模型毎の識別情報とに関連付けて取得された実習履歴情報により、各自主者の実習内容を検証・評価することが可能である。
また、匿名加工情報を扱う他のシステムトとの連携により、診療評価AI12及び評価情報分析AI2に匿名加工情報からなるビッグデータの活用が可能となる。医師の評価情報を本システムの会員、本システムが提供する医療保険の被保険者等にも提供することが可能となる。
本応用例の医療評価システムによれば、医師と患者の情報をセットにしてブロックチェーン上で管理できることにより、また、そのデータヘのアクセス権を患者側が管理することにより、ガイドラインに基づいて適切な治療を行う医師ないし歯科医師が評価される環境を造成することができる。例えば入れ歯の保険再製作は6か月以内は不可である等の6か月規制が存在する。本応用例の医療評価システムを用いれば、例えば、会社が被保険者(患者)の保険料が適当かどうか(6か月規制に従っているかどうか、ガイドラインに従って適正な治療であるかどうか等)を、監査機関が適切に監査することができる。また、これにより、病院(医師ないし歯科医師)に、適正な公費及び非保険者の負担分が支払われるようになり、保険制度全体(監査機関、会社、被保険者、病院の全て)の健全化が図られる。
以上、本発明のいくつかの応用例について説明したが、これらの応用例は本発明の技術思想を具体化するための医療評価システム、医療評価方法及び医療評価プログラムを例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、その他の応用例のものにも等しく逝用し得るものであり、また、これらの応用例の一部を省略、追加、変更することや、各応用例の態様を組み合わせることが可能である。また、応用例の中で歯科治療を中心に説明したが、本発明は歯科に特定されるものでは無く、医科及び歯科を含むあらゆる医療評価に適用可能である。
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる個々の技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
〔図1~図7に関して〕
S 評価システム
1 情報処理装置(評価用)
2 情報処理装置(機械学習用)
LM1,LM2 学習済モデル
I1,I2 撮像画像
PI 推定画像
〔図8~図16に関して〕
10 医療評価システム
11 電子カルテ装置
11a 電子カルテ演算部
11b 電子カルテデータベース
11C 評価情報メモリ
11d 会計演算部
12 診療評価AI
13 入出力装置
14 診察室画像取得装置
15 診療部位画像取得装置
16 問診情報入力装置
17 診療装置センサ
18 診療評価AI訓練システム
19 タイマ
20 ブロックチェーンデータベース
21 評価情報AI
22 利用者システム
22a 利用者CPU
22b 支払処理部
22C 評価情報メモリ
23 保険システム
23a 医師損害賠償保険料金演算部
23b 保険対象医師認定部
23c 経理処理部
24 ガイドラインデータベース
25 政府システム
25a 専門医認定部
25b 保険点数演算部
30 AIシステム

Claims (12)

  1. 少なくとも1つのプロセッサを備え、
    硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、前記プロセッサは、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、
    ことを特徴とする情報処理装置。
  2. 前記術式は、歯牙の削合や築造、歯体の固定や移動、骨の削合や再生、硬組織への補綴、支持組織の除去や再生や縫合、及び、それらに付随する生体への侵襲行為である、
    を特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
  3. 前記出力情報には、治療方針を示す付加情報が含まれている、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
  4. 前記入力情報には、問診結果又は検査結果を表す付加情報が含まれている、
    ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の情報処理装置。
  5. 前記プロセッサは、問診結果又は検査結果に対応した学習済モデルを、前記学習済モデルとして用いる、
    ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の情報処理装置。
  6. 前記プロセッサは、評価対象者による術式適用後の前記対象組織を表す撮像画像と前記推定画像とを含む入力情報から、前記評価対象者による術式の巧拙を表す評価値を含む出力情報を導出する評価処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、
    ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の情報処理装置。
  7. 少なくとも1つのプロセッサを備え、
    硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、前記プロセッサは、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する学習済モデルを、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報と評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す撮像画像を含む出力情報との組み合わせを教師データとする機械学習により構築する構築処理を実行する、
    ことを特徴とする情報処理装置。
  8. 機械学習により構築された学習済モデルであって、硬組織、又は、硬組織周辺の支持組織を対象組織として、術式適用前の対象組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる術式適用後の前記対象組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を少なくとも1つのプロセッサに実行させるための学習済モデル。
  9. 少なくとも1つのプロセッサを備え、
    前記プロセッサは、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、
    ことを特徴とする情報処理装置。
  10. 前記プロセッサは、評価対象者による補綴後の前記硬組織を表す撮像画像と前記推定画像とを含む入力情報から、前記評価対象者による補綴の巧拙を表す評価値を含む出力情報を導出する評価処理を、機械学習により構築された学習済モデルを用いて実行する、
    ことを特徴とする請求項9に記載の情報処理装置。
  11. 少なくとも1つのプロセッサを備え、
    前記プロセッサは、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する学習済モデルを、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報と評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す撮像画像を含む出力情報との組み合わせを教師データとする機械学習により構築する構築処理を実行する、
    ことを特徴とする情報処理装置。
  12. 機械学習により構築された学習済モデルであって、補綴前の硬組織を表す撮像画像を含む入力情報から、評価基準となる補綴後の前記硬組織を表す推定画像を含む出力情報を導出する導出処理を少なくとも1つのプロセッサに実行させるための学習済モデル。
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