JP2022013391A - 活動的全身性エリテマトーデスの鑑別用バイオマーカー - Google Patents

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Abstract

【課題】活動的SLE患者を迅速かつ簡便に鑑別できるバイオマーカー、及び該バイオマーカーを用いた、活動的SLE患者の鑑別方法の提供。【解決手段】HMGB1タンパク質又はHMGB1転写産物、又はIFNαタンパク質又はIFNα転写産物からなる、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するためのバイオマーカー。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年7月12日 https://doi.org/10.1177/0961203319862865を通じて発表
本発明は、活動的全身性エリテマトーデスの鑑別用バイオマーカーに関する。より詳しくは、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するための、HMGB1又はIFN-αのバイオマーカーとしての使用等に関する。
自己核酸と自己抗体からなる免疫複合体(IC)は、自己免疫疾患の病原性のトリガーとして機能し得る内因性リガンドとしての特性を有する。全身性エリテマトーデス(SLE)は、ICを介した多臓器障害を特徴とする自己免疫疾患であり、自己核酸に対する自然免疫系の寛容の破綻によって引き起こされる。一連の研究により、自己核酸と自己抗体からなるICが内因性トリガーとして機能し、形質細胞様樹状細胞(pDC)のエンドソームのトール様受容体(TLR)を刺激することができることが明らかとなっており、I型インターフェロン(IFN)の産生の調節不全を通じて、pDCは病原性因子として機能することが知られている(例えば、非特許文献1)。
異常なI型IFNの応答により、単球から骨髄系樹状細胞への分化が引き起こされ、それにより、自己反応性のCD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞の分化が引き起こされる。これらの自己反応性のエフェクターが、組織を傷つけ、自己の抗核抗体を誘導し、核酸フラグメントの生成と、自己DNA又は自己RNAを含むICの誘導が生じる。かかるICにより、TLRを介して持続的にpDCをさらに活性化し、I型IFNを起点とする悪循環が生じる(例えば、非特許文献1)。組織の損傷又は壊死により、核タンパク質であるHMGB1(high-mobility group box 1)などの内在性分子が放出される。HMGB1は、ダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns)の一部であるDNA結合タンパク質である(非特許文献2)。HMGB1は、細胞外核酸を分解から保護し、エンドソームの区画に効率的に輸送することにより、自己核酸に対する自然免疫系の寛容を破綻させ、pDCの継続的な活性化を介して血清のI型IFNの上昇の調節不全を引き起こす(例えば、非特許文献3)。SLE患者においては、IFNαの血清濃度が健常者と比較して高いことが報告されており(例えば、非特許文献4)、また、HMGB1の血清濃度がSLE患者において健常者と比較して高いことも報告されている(例えば、非特許文献5)。
Banchereau J & Pascual V, Immunity, (2006) 25:383-392 Harris HE & Raucci A, EMBO Rep, (2006) 7:774-778 Gilliet M, et al., Nat Rev Immunol, (2008) 8:594-606 Bengtsson AA, et al., Lupus, (2000) 9:664-671 Lu M, et al., J Immunol Res, (2015) 2015:946748
しかしながら、IFNα及びHMGB1の血清濃度と、SLEの活動性との関連性は十分に知られておらず、またIFNα及びHMGB1は健常者及び非活動的SLE患者の血清においても発現していると考えられているため、IFNα又はHMGB1を活動的SLE患者を鑑別するためのバイオマーカーとして用いるためには、カットオフ値を設定する必要があるが、信頼性の高い鑑別のためのカットオフ値の設定は容易ではない。さらに、上記鑑別方法では、被験者由来の試料において、IFNα又はHMGB1の血清濃度を正確に測定する必要も生じる。従って、本発明は、活動的SLE患者を迅速かつ簡便に鑑別できるバイオマーカー、及び該バイオマーカーを用いた、活動的SLE患者の鑑別方法を提供することを課題とする。
本発明者は、全身性エリテマトーデス(SLE)の活動性のメカニズムを解明するため、まず、健常者、非活動的SLE患者及び活動的SLE患者から採取した試料を用いて、SLEとの関連性が示唆されている、各種サイトカイン、HMGB1及びトロンボモジュリンの血清中の濃度を測定したところ、HMGB1及びサイトカインのIFNαが、健常者のみならず非活動的SLE患者の大部分においても、検出限界未満であることを見出した。HMGB1及びIFNαは、健常者の血清中でも存在すると考えられていたことから、上記知見は驚くべきものであった。そこで、HMGB1又はIFNαの血清中での濃度を測定せずとも、単に検出の有無のみによって(即ち、定性的な分析によって)も、被験者のSLEの活動性を評価できるのではないかとの着想の下、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下よりなる。
[1]
HMGB1タンパク質又はHMGB1転写産物、又は
IFNαタンパク質又はIFNα転写産物
からなる、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するためのバイオマーカー。
[2A]
被験者由来の試料において、[1]に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程を含む、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者との鑑別を補助する方法。
[2B]
被験者由来の試料において、[1]に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程を含む、活動的全身性エリテマトーデスの可能性を分析する方法。
[3A]
被験者由来の試料において、[1]に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程、及び
前記工程で1種以上のバイオマーカーが検出された場合に、前記被験者が活動的全身性エリテマトーデス患者であると判定する工程
を含む、[2A]に記載の方法。
[3B]
被験者由来の試料において、[1]に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程、及び
前記工程で1種以上のバイオマーカーが検出された場合に、前記被験者が活動的全身性エリテマトーデスである可能性があると判定する工程
を含む、[2B]に記載の方法。
[4]
[1]に記載のバイオマーカーを2種用いることを特徴とする、[2A]~[3B]のいずれかに記載の方法。
[5]
HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体又はHMGB1転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー、又は
IFNαタンパク質を特異的に認識する抗体又はIFNα転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー
を用いて前記バイオマーカーを検出することを特徴とする、[2A]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記試料が血清である、[2A]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体又はHMGB1転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー、又は
IFNαタンパク質を特異的に認識する抗体又はIFNα転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー
を含む、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するための判定キット。
[8]
前記抗体が基板に固定されていることを特徴とする、[7]に記載のキット。
[9]
前記基板に、HMGB1タンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体又はIFNαタンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体が固定されていることを特徴とする、[7]に記載のキット。
[10]
前記基板に、抗IgG抗体又は抗IgM抗体がさらに固定されていることを特徴とする、[8]又は[9]に記載のキット。
[11]
HMGB1タンパク質又はHMGB1転写産物、又は
IFNαタンパク質又はIFNα転写産物
からなる、活動的全身性エリテマトーデス患者と関節リウマチ患者とを鑑別するためのバイオマーカー。
[12]
被験者由来の試料において、[11]に記載のバイオマーカーの1種以上を検出又は定量する工程を含む、活動的全身性エリテマトーデス患者と関節リウマチ患者との鑑別を補助する方法。
[13]
以下の(i)~(iv)の工程を含む、全身性エリテマトーデスの治療方法。
(i)被験者由来の試料における、[1]又は[11]に記載のバイオマーカーを検出する工程、
(ii)前記工程で1種以上のバイオマーカーが検出された場合に、前記被験者が活動的全身性エリテマトーデス患者であると判定する工程、及び
(iii)(ii)により活動的全身性エリテマトーデスであると判定された被験者に、全身性エリテマトーデスの治療薬を投与する工程
[14]
以下の(i)~(iv)の工程を含む、全身性エリテマトーデスの治療方法。
(i)被験者由来の試料における、[1]又は[11]に記載のバイオマーカーを測定する工程、
(ii)前記工程の測定結果に基づき、前記被験者が活動的全身性エリテマトーデス患者であるか否かを判定する工程、及び
(iii)(ii)により活動的全身性エリテマトーデスであると判定された被験者に、全身性エリテマトーデスの治療薬を投与する工程
[15]
前記全身性エリテマトーデスの治療薬又は予防薬が、コルチコステロイド、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗マラリア薬、免疫抑制薬、非ステロイド抗炎症薬、抗高血圧薬、スタチン、抗B細胞薬、抗BLyS抗体、抗Tリンパ球抗体、1型インターフェロン受容体アンタゴニスト、抗CD4抗体、抗凝固剤、及びビタミンD補給剤からなる群から選択される、[13]又は[14]に記載の方法。
本発明のHMGB1及びIFNαは、いずれも活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するためのバイオマーカーとなる。さらに、HMGB1又はIFNαをバイオマーカーとして検出することにより、活動的全身性エリテマトーデス患者である否かの、迅速で簡易な判定をすることできる。本発明の一実施態様において、IFNαの疾患活動性群を推定するための陽性的中率は84.2%であり、非活動性群の陰性的中率は62.5%であり、感度は72.7%であり、特異度は76.9%である。また、HMGB1の疾患活動性群を推定するための陽性的中率は81.0%であり、非活動性群の陰性的中率は64.3%であり、感度は77.3%であり、特異度は69.2%である。
IFNαとHMGB1との相関を示す。SLE患者における(n=35)IFNαとHMGB1の血清濃度の相関をプロットし、分析した。相関係数(r)の統計学的有意性を、ピアソンの相関検定を用いて決定した。
1.本発明のバイオマーカー
本発明は、活動的全身性エリテマトーデス患者(以下では、「活動的SLE患者」ともいう。)と非活動的全身性エリテマトーデス患者(以下では、「非活動的SLE患者」ともいう。)又は健常者とを鑑別するためのバイオマーカー(以下「本発明のバイオマーカー」と称することがある。)を提供する。本発明のバイオマーカーとして、具体的には、(a)HMGB1(High Mobility Group Box 1)タンパク質又はHMGB1転写産物、及び(b)IFNα(Interferon α)タンパク質又はIFNα転写産物が挙げられる。以下では、HMGB1タンパク質及びIFNαタンパク質から選択される1種以上のタンパク質を「本発明のバイオマーカータンパク質」と称する場合がある。また、HMGB1転写産物及びIFNα転写産物から選択される1種以上の転写産物を「本発明のバイオマーカー転写産物」と称する場合がある。HMGB1タンパク質には、アイソフォームが2種類(即ち、HMGB1アイソフォーム1及びHMGB1アイソフォーム2)知られているが、特に断らない限り、以下では両アイソフォームをまとめてHMGB1タンパク質と称する。また、「転写産物」は、HMGB1タンパク質又はIFNαタンパク質をコードするRNAを意味するが、特に断らない限り、以下ではmRNAを指す。従って、HMGB1転写産物についても、特に断らない限り、両アイソフォームのいずれかをコードする転写産物をまとめてHMGB1転写産物と称する。
また、下述の実施例(表3)で示されるように、本発明のバイオマーカーの血清濃度が、SLE患者と、関節リウマチ(RA)患者とでは有意に異なることが実証された。また、表3では、RA患者において、HMGB1のタンパク質濃度の平均値は検出限界未満であり(ただし、検出されなかったサンプルの濃度を0 ng/mlにして平均値を算出している。)、またIFNαについても検出限界未満のサンプルが得られた(検出されなかったサンプル数は、HMGB1では14、IFNαでは16であった。)ことから、HMGB1又はIFNαの検出の有無によっても、SLE患者と、RA患者とを鑑別し得る。従って、本発明のバイオマーカーは、活動的SLE患者とRA患者との鑑別するためのバイオマーカーとして用いることもでき、本明細書において、かかるバイオマーカーも、「本発明のバイオマーカー」に包含されるものとする。SLE及びRAは共に膠原病の一種であり、その症状は重複するものもあるため、本発明のバイオマーカーを用いることで、精度よく両者を鑑別することが可能となる。
本明細書において、「非活動的SLE患者」とは、SLEDAIスコア(Bombardier C, Gladman DD, Urowitz MB, et al., Arthritis Rheum 1992; 35: 630-640)が6未満のSLE患者を意味し、「活動的SLE患者」とは、SLEDAIスコアが6以上のSLE患者を意味する。
本発明のバイオマーカーに含まれるHMGB1及びIFNαの各タンパク質は公知のタンパク質であり、それぞれNCBI Accession No.: NP_001300821.1、NP_001300822.1、NP_001357269.1、NP_001357270.1及びNP_002119.1(いずれも同一アミノ酸配列である。)(HMGB1アイソフォーム1)、NCBI Accession No.:NP_001350590.1及びNP_001357268.1(いずれも同一アミノ酸配列である。)(HMGB1アイソフォーム2)、並びにGenBank Accession No.: AAI12303(IFNα)としてアミノ酸配列が開示されている。本発明において、HMGB1及びIFNαの各タンパク質は、それぞれ配列番号2(HMGB1アイソフォーム1)、配列番号4(HMGB1アイソフォーム2)及び配列番号6(IFNα)で表されるアミノ酸配列であってもよく、これらと実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質であってよい。
配列番号2、4又は6で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、これらのアミノ酸配列と60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは、95%以上、最も好ましくは98%以上の類似性又は同一性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「類似性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方若しくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸及び類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。本明細書におけるアミノ酸配列の類似性又は同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
本発明のバイオマーカータンパク質は、公知のタンパク質合成法、例えば、固相合成法、液相合成法等に従って製造することができる。得られたタンパク質は、公知の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせ等により精製単離することができる。また、自体公知の方法により、生体試料から単離、精製してもよい。あるいは、本発明のバイオマーカータンパク質は、それをコードする核酸を含有する形質転換体を培養し、得られる培養物からタンパク質を分離精製することによって製造することもできる。かかる核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。
また、配列番号2、4又は6で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、これらのアミノ酸配列のうち1又は2個以上(好ましくは、1~100個程度、好ましくは1~50個程度、さらに好ましくは1~10個程度、特に好ましくは1~数(2、3、4若しくは5)個)のアミノ酸が置換、挿入及び/又は欠失したアミノ酸配列を含有するタンパク質なども含まれる。
本発明のバイオマーカーに含まれるHMGB1及びIFNαの各転写産物は公知の転写産物であり、それぞれNCBI Accession No.: NM_001313892.1、NM_001313893.1、NM_001370340.1、NM_001370341.1及びNM_002128.7(HMGB1アイソフォーム1)、NCBI Accession No.: NM_001363661.1及びNM_001370339.1(HMGB1アイソフォーム2)、並びにNCBI Accession No.: NM_024013.3(IFNα)として塩基配列が開示されている。本発明において、HMGB1及びIFNαの各転写産物としては、上記の塩基配列(但し、TをUと読み替えるものとする)を有するものであればいずれでもよいが、例えば、配列番号1(NM_001313892.1の配列;HMGB1アイソフォーム1)、配列番号3(NM_001363661.1の配列;HMGB1アイソフォーム2)、及び配列番号5(NM_024013.3の配列;IFNα)で表される塩基配列と同一又は実質的に同一な塩基配列を含む核酸などが挙げられる。
配列番号1、3又は5で表される塩基配列と実質的に同一な塩基配列を含む核酸としては、例えば、これらの塩基配列と60%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列を含有し、且つ本発明のバイオマーカータンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードする核酸、あるいは上記バイオマーカーをコードする遺伝子のホモログなどが挙げられる。
本発明のバイオマーカー転写産物は、例えば、該転写産物を含有する生体試料から、自体公知の方法により単離、精製することにより得ることができる。
2.本発明の判定方法及び分析方法
本発明は、被検者由来の試料について、本発明のバイオマーカーを検出する工程を含む、該被験者が活動的SLEであるか否かの判定等(例:判定、診断、判断、鑑別、検査)を行う方法、又は該判定等を補助する方法(以下では、これらをまとめて「本発明の判定方法」と称する場合がある)を提供する。あるいは、被験者由来の試料について、本発明のバイオマーカーを検出する工程を含む、活動的SLEの可能性を分析等(例:分析、評価)する方法(以下「本発明の分析方法」と称する場合がある)を提供する。以下では、本発明の判定方法と本発明の分析方法をまとめて「本発明の方法」と称する場合がある。本明細書において、「判定等を補助する」とは、被験者が活動的SLEであるか否かの判断のための指標となる情報を提供することをいい、医療行為である、活動的SLEであるか否かを判断する工程自体を含まないことを意味する。
また、別の態様において、本発明は、被検者由来の試料について、本発明のバイオマーカーを検出又は定量する工程を含む、該被験者が活動的SLEであるか否かの判定等を行う方法、又は該判定等を補助する方法(以下では、これらの方法も、「本発明の判定方法」に包含されるものとする。)を提供する。
本発明の方法は、具体的には、被験者由来の試料において、(i)本発明のバイオマーカーの1種以上を検出又は定量する工程を含む方法である。また、本発明の判定方法は、上記(i)に加えて、(ii)(i)の結果に基づき、前記被験者が活動的SLE患者であるか、あるいは非活動的SLE患者又は健常者であると判定等する工程、又は(ii’)(i)の結果に基づき、前記被験者が活動的SLE患者であるか、あるいはRA患者であると判定等する工程を含んでいてもよい。また、本発明の分析方法は、上記(i)に加えて、(ii”)(i)の結果に基づき、前記被験者が活動的SLE患者である可能性があると判定等する工程、を含んでいてもよい。
本発明の方法において、IFNαの血清濃度と、HMGB1の血清濃度とは高い相関系を有するため、いずれか1種を用いることで十分であるが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種類を組み合わせて用いる場合には、例えば、2種類のバイオマーカーが共に検出された場合に、被験者が活動的SLE患者であると判定(あるいは、活動的SLEである可能性があると判定)してもよい。
本発明の方法の被検対象となり得る被験者は、ヒト以外の動物であってもよい。好ましくは、SLEが疑われる動物、あるいはSLEと臨床的に診断された動物が挙げられる。動物の種類としては、例えば、哺乳動物(例:ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、ハムスター、モルモット、マウス、ラット等)、鳥類(例:ニワトリ等)などが挙げられる。好ましくは、哺乳動物、より好ましくはヒトである。
被験者由来の試料は、例えば、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙、汗、乳汁、鼻汁、精液、胸水、消化管分泌液、脳脊髄液、組織間液、及びリンパ液などが挙げられ、好ましくは血清又は血漿であり、より好ましくは血清である。これらの試料は、自体公知の方法により得ることができ、例えば、血清や血漿は、常法に従って被験者から採血し、液性成分を分離することにより調製することができ、脳脊髄液は、脊椎穿刺等の公知の手段により採取することができる。
本明細書において、HMGB1又はIFNαが検出されるとは、HMGB1タンパク質若しくはHMGB1転写産物又はIFNαタンパク質若しくはIFNα転写産物が、該検出方法の検出限界以上の濃度で試料中に存在することを意味する。かかる検出限界濃度は、検出方法に応じて決定されるが、例えばHMGB1タンパク質を検出する場合には、1つの基準として、0.2 ng/mlを検出限界と設定し、IFNαタンパク質を検出する場合には、1つの基準として、1.5 pg/mlを検出限界と設定することができる。よって、一態様において、タンパク質の濃度の定量方法において、HMGB1タンパク質が0.2 ng/ml未満の濃度であると定量された場合にも、HMGB1タンパク質が検出されないと決定してもよい。従って、本明細書において、HMGB1又はIFNαの検出方法は、HMGB1又はIFNαの定量(若しくは測定)方法であってよい。HMBG1タンパク質はアイソフォームが2種類存在するが、試料中に両方のタンパク質が存在する場合には、その両者を合わせたタンパク質量の濃度が検出限界以下である場合に、HMGB1タンパク質が検出されないと決定される。HMGB1の転写産物についても、同様である。
被験者由来の試料における本発明のバイオマーカーの検出又は定量は、該試料からRNA(例:全RNA、mRNA)画分を調製し、該画分中に含まれる本発明のバイオマーカー転写産物を検出することにより調べることができる。従って、一実施態様において、本発明の方法は、本発明のバイオマーカー転写産物をそれぞれ特異的に認識し得る核酸プローブ又は核酸プライマーを用いて検出又は定量することを含む。
RNA画分の調製は、グアニジン-CsCl超遠心法、AGPC法など公知の手法を用いて行うことができ、市販のRNA抽出用キット(例:RNeasy Mini Kit;QIAGEN製等)を用いて、微量検体から迅速且つ簡便に高純度の全RNAを調製することもできる。RNA画分中の本発明のバイオマーカー転写産物を検出する手段としては、例えば、ハイブリダイゼーション(ノーザンブロット、ドットブロット等)を用いる方法、あるいはPCR(RT-PCR、競合PCR、リアルタイムPCR等)などを用いる方法などが挙げられる。微量試料から迅速且つ簡便に発現を検出できる点で、競合PCRやリアルタイムPCRなどの定量的PCR法が好ましい。
ノーザンブロット又はドットブロットハイブリダイゼーションによる場合、本発明のバイオマーカー転写産物の検出又は定量は、例えば、本発明のバイオマーカーの各転写産物を特異的に認識し得る核酸プローブを用いて行うことができる。そのような核酸プローブとして、前述の公知のHMGB1又はIFNαの転写産物であるポリヌクレオチドのうち、15塩基以上、好ましくは18~500塩基、より好ましくは18~200塩基、さらに好ましくは18~50塩基の連続したヌクレオチド配列又はその相補配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。該核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、プローブとして用いられる核酸は、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、アンチセンス鎖配列を含むものを用いることができる。
上記核酸プローブは、本発明のバイオマーカー転写産物であるポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法、具体的には、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法に従って行なうことができる。ストリンジェントな条件としては、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1%SDS中65℃での一回以上の洗浄が挙げられる。
上記核酸プローブは、本発明のバイオマーカー転写産物の一部若しくは全部を増幅し得るプライマーセットを用い、被検動物の細胞由来のcDNA若しくはゲノムDNAを鋳型としてPCR法によって所望の長さの核酸を増幅するか、該cDNA若しくはゲノムDNAライブラリーから、コロニー若しくはプラークハイブリダイゼーション等により上記の遺伝子若しくはcDNAをクローニングし、必要に応じて制限酵素等を用いて適当な長さの断片とすることにより取得することができる。あるいは、市販のDNA/RNA自動合成機等を用いて化学的に合成することによっても得ることができる。
上記核酸プローブは、標的核酸の検出を可能とするために、標識剤により標識されていることが好ましい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔32P〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、プローブと標識剤との結合にビオチン-(ストレプト)アビジンを用いることもできる。
ノーザンハイブリダイゼーションによる場合は、上記のようにして調製したRNA画分をゲル電気泳動にて分離した後、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等のメンブレンに転写し、上記のようにして調製された標識プローブを含むハイブリダイゼーション緩衝液中、特異的にハイブリダイゼーションさせた後、適当な方法でメンブレンに結合した標識をバンド毎に検出するか、あるいは標識量をバンド毎に検出又は測定することにより、本発明のバイオマーカーの転写又は転写量を測定することができる。ドットブロットの場合も、RNA画分をスポットしたメンブレンを同様にハイブリダイゼーション反応に付し、スポットの標識を検出するか、あるいはスポットの標識量を測定することにより、本発明のバイオマーカーの転写を検出又は転写量を測定することができる。
別の好ましい実施態様によれば、本発明のバイオマーカー転写産物を検出又は定量する方法として、定量的PCR法が用いられる。PCRでプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのセットとしては、例えば、本発明のバイオマーカーの転写産物を特異的に認識し得る核酸プライマーを挙げることができる。1つの好ましい態様において、本発明の方法に用いられる核酸プライマーとして、例えば、公知の本発明のバイオマーカーの各転写産物であるポリヌクレオチドのうち、15塩基以上、好ましくは15~50塩基、より好ましくは15~30塩基、さらに好ましくは15~25塩基の連続したヌクレオチド配列の長さを有し、100bp~数kbpのDNA断片を増幅するようにデザインされたポリヌクレオチド(センス鎖)配列に相補的なポリヌクレオチド、及び前記のポリヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド(アンチセンス鎖)にハイブリダイズし得るポリヌクレオチドのオリゴヌクレオチドのセットが挙げられる。かかる核酸プライマーも、核酸プローブと同様の方法により調製や合成等することができる。
あるいは、被験者由来の試料における本発明のバイオマーカーの検出又は定量は、該試料からタンパク質画分を調製し、該画分中に含まれる該遺伝子の翻訳産物(即ち、本発明のバイオマーカータンパク質)を検出又は定量することにより調べることができる。これらのタンパク質の検出又は定量は、各タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて、免疫学的測定法(例:ELISA、FIA、RIA、ウェスタンブロット等)によって行うことができるが、好ましくは免疫学的測定法、特にELISAや、下記4.で記載の本発明の簡易キットを用いた方法がより好ましい。従って、一実施態様において、本発明の方法は、本発明のバイオマーカータンパク質をそれぞれ特異的に認識し得る抗体を用いて、該バイオマーカーを検出又は定量することを含む。
本発明のバイオマーカータンパク質をそれぞれ特異的に認識し得る抗体は、これらのタンパク質又はエピトープを有する部分ペプチドを免疫原として用い、既存の一般的な製造方法によって製造することができる。本明細書において、抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)等の天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、及びこれらの結合性断片などが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又はこれらの結合性断片である。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味し、具体的には例えばF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAbなどが挙げられる(Exp. Opin. Ther. Patents, Vol.6, No.5, p.441-456, 1996)。抗体のクラスは、特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。好ましくは、IgG又はIgMであり、精製の容易性等を考慮するとより好ましくはIgGである。また、本発明において、本発明のバイオマーカータンパク質をそれぞれ特異的に認識し得る抗体として、市販の抗体又は抗体を含むキットやアレイ等を使用することもまた好ましい。
個々の免疫学的検出法又は定量法を本発明の方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のバイオマーカーの検出又は測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書Vol.73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書Vol.74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書Vol.84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書Vol.92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書Vol.121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
また、本発明のバイオマーカーの検出又は定量は、ハイスループットなタンパク質の検出又は定量解析が可能なiTRAQTM試薬(ABI社)及び質量分析計の組み合わせによりプロテオーム解析を用いて検出又は定量してもよい。
また、活動的SLE患者とRA患者との鑑別において、両者のバイオマーカーの量の比較により、活動的SLE患者であるとの判定等を行うこともできる。具体的には、例えば、SLE患者であると診断された、若しくはSLEである可能性が高い対照個体由来の試料(以下「対照試料」と称する場合がある)、及び鑑別対象とする被験者由来の試料における本発明のバイオマーカーの濃度を定量し、両者の濃度を比較することにより行うことができる。あるいは、バイオマーカーの量を基準値と比較することにより行ってもよい。本発明に用いる「基準値」としては、対照試料における本発明のバイオマーカーの量を用いてもよい。あるいは、対照試料におけるバイオマーカーの定量値からあらかじめ設定した値を用いてもよい。この場合、基準値として、例えば、複数個体を対照群として、複数個体の測定値の平均値や最頻値などを採用することもできる。
上記基準値は、カットオフ値であってもよい。「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)及び高い診断特異度(無病正診率)の両方を満足できる値である。例えば、活動的SLE患者群で高い陽性率を示し、かつ、RA患者群で高い陰性率を示す値をカットオフ値として設定することができる。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、活動的SLE患者及びRA患者から採取した血清中の本発明のバイオマーカーの量を定量し、定量された値における診断感度及び診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。
上記本発明のバイオマーカーの量の比較の結果、例えば、被験者由来の試料において、本発明のバイオマーカーが、対照試料に比べて高値であった場合、又は上記基準値以上である場合には、該被験者が活動的SLE患者であると判定等することができ、本発明のバイオマーカーが、対照試料に比べて同程度若しくは低値であった場合、又は上記基準値未満である場合には、該被験者がRA患者であると判定等することができる。
また、バイオマーカーの量の比較の結果、例えば、被験者由来の試料において、本発明のバイオマーカーが検出された場合、あるいは、対照試料に比べて高値であった場合、又は上記基準値以上である場合には、該被験者が活動的SLE患者である可能性があると判定等することができ、対照試料に比べて同程度又は低値であった場合、又は上記基準値未満である場合には、該被験者がRA患者である可能性があると判定等することができる。
3.本発明の治療又は予防方法
上記2.で記載した本発明の方法の結果、被験者が活動的SLEであるとの判定等がされた場合、又は活動的SLEである可能性があるとの判定等がされた場合に、該判定等の結果に基づき、該被験者に投与すべきSLEの治療薬を選択又は決定し、該被験者に治療上有効量の治療薬を投与することにより、SLEを治療することができる。本明細書において、「治療薬」には、SLEの根治治療を目的とする医薬だけでなく、例えば、これらの疾患の進行抑制を目的とする医薬又は症状の軽減を目的する医薬も含まれるものとする。
SLEの治療薬としては、コルチコステロイド(例:プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン等)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)(例:メトトレキサート、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロリムス等)、抗マラリア薬(例:ヒドロキシクロロキン、クロロキン等)、免疫抑制薬(例:シクロホスファミド、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート等)、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)(例:アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ナブメトン、セレコキシブ等)、抗高血圧薬(例:カルシウムチャネル遮断薬(例:アムロジピン、ニフェジピン等)、利尿薬(例:フロセミド等)等)、スタチン(例:アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン等)、抗B細胞薬(例:抗CD20抗体(例:リツキシマブ等)、抗CD22抗体等)、抗BLyS抗体(例:ベリムマブ、ブリシビモド等)等)、抗Tリンパ球抗体(例:アバタセプト等)、1型インターフェロン受容体アンタゴニスト(例:アニフロルマブ等)、抗CD4抗体(例:リゲリモド、トレガリズマブ等)、抗凝固剤(例:ヘパリン、ワーファリン等)、ビタミンD補給剤などが挙げられるが、これらに限定されない。上記治療薬は、患者の症状に合わせて、適宜組み合わせて使用してもよい。
上記治療薬は、有効成分をそのまま単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合し、適当な剤型の医薬組成物として経口的又は非経口的に投与してもよい。経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含してもよい。また、治療薬の投与量は、化合物の種類、投与対象の症状、齢、体重、薬物受容性等の種々の条件により、適宜設定することができる。
4.本発明の判定キット
さらに本発明は、活動的SLE患者と非活動的SLE患者又は健常者とを鑑別するための判定キット(以下、本発明の判定キット)を提供する。本発明の判定キットには、好ましくは、
(a)HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体又はHMGB1転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー、及び
(b)IFNαタンパク質を特異的に認識する抗体又はIFNα転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー
のいずれかが含まれる。これらは1種類のみ含まれていてもよいし、複数種類含まれていてもよい。
一態様において、本発明の判定キットは、ELISA法を利用して、試料を基板に接触させるだけで、該試料中に本発明のバイオマーカーの有無を検出できるキット(本明細書において、「本発明の簡易キット」とも称することがある。)としても提供される。本発明の簡易キットは、HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体、及び/又はIFNαタンパク質を特異的に認識する抗体(以下、「第一の抗体」ともいう。)が固定された基板を含み、典型的には、該抗体は標識された抗体である。また、本発明の簡易キットに含まれる基板には、上記抗体とは別の、HMGB1タンパク質又はIFNαタンパク質を特異的に認識する抗体(以下、「第二の抗体」ともいう。)が含まれることが好ましく、かかる態様により、サンドイッチELISA法により本発明のバイオマーカーを検出することができる。従って、該基板には、HMGB1タンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体、及び/又はIFNαタンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体が固定されていることが好ましい。さらに、本発明の簡易キットに含まれる基板には、第一の抗体を認識する抗体(例:抗IgG抗体又は抗IgM抗体)がさらに固定されていることが好ましく、かかる抗体により、キットによる判定が正常に行われたことを確認することができる。
本発明の簡易キットについて、より詳細に説明する。一態様において、本発明の簡易キットに含まれる上記基板は、(a)試料を吸収採取する試料採取部、(b)標識された第一の抗体が固定された標識抗体部、(c)第二の抗体が固定された検出結果の判定部を備え、好ましくは、(d)第一の抗体を認識する抗体が固定された確認部、及び/又は(e)上記試料採取部、標識抗体部及び判定部を移動してきた試料の残液を吸収する液吸収部を備える。(a)の試料採取部に試料を接触させることで、試料が毛細管現象により順次(b)、(c)、(d)及び(e)へと移動するが、この際に(b)の第一の抗体も、該試料と共に、(b)から、(c)、(d)及び(d)へと移動する。検査対象の試料中にHMGB1又はIFNαが含まれる場合には、該タンパク質と第一抗体との複合体が、(c)の判定部に捕捉され、判定部で標識が認められることとなる。(d)では、(b)から移動してきた第一の抗体が捕捉されることで標識されるが、(d)で標識が認められない場合には、試料が基板中を適切に移動せず、判定が正常に行われなかったこととなる。
本発明の判定キットが前記の核酸プローブ又は核酸プライマー(単に「核酸」ともいう。)を構成として含む場合、これらの核酸としては、上記2.の本発明の方法で例示されたプローブ用核酸及びプライマー用オリゴヌクレオチドが挙げられる。これらの核酸は、乾燥した状態若しくはアルコール沈澱の状態で、固体として提供することもできるし、水若しくは適当な緩衝液(例:TE緩衝液等)中に溶解した状態で提供することもできる。標識プローブとして用いられる場合、核酸は予め上記のいずれかの標識物質で標識した状態で提供することもできるし、標識物質とそれぞれ別個に提供され、用時標識して用いることもできる。あるいは、該核酸は、適当な基板に固定された(担持された、又は固相化されたともいう。)状態で提供することもできる。基板としては、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。また、固定化手段としては、予め核酸にアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチンなどの官能基を導入しておき、一方、基板上にも該核酸と反応し得る官能基(例:アルデヒド基、アミノ基、SH基、ストレプトアビジンなど)を導入し、両官能基間の共有結合で基板と核酸を架橋したり、ポリアニオン性の核酸に対して、基板をポリカチオンコーティングして静電結合を利用して核酸を固定化するなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の判定キットに含有される上記核酸が複数種類含まれる場合、同一の方法(例:ノーザンブロット、ドットブロット、DNAアレイ技術、定量RT-PCR等)により本発明のバイオマーカーの発現を検出又は定量し得るように構築されていることが好ましい。
本発明の判定キットが前記の抗体を構成として含む場合、これらの抗体としては、上記2.の本発明の方法で例示された抗体が挙げられる。
本発明の判定キット(本発明の簡易キットも含む。以下同様。)には、上記核酸や抗体に加えて、本発明のバイオマーカーの発現を検出又は定量するための反応において必要な他の物質を含んでいてもよい。これらの他の物質は、反応に悪影響を及ぼさない限り、核酸や抗体等と共存状態で提供されてもよく、あるいは、別個の試薬とともに提供されてもよい。例えば、本発明のバイオマーカーの発現を検出又は定量するための反応がPCRの場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、dNTPs、耐熱性DNAポリメラーゼ等が挙げられる。競合PCRやリアルタイムPCRを用いる場合は、competitor核酸や蛍光試薬(上記インターカレーターや蛍光プローブ等)などをさらに含むことができる。また、本発明のバイオマーカーの発現を検出又は定量するための反応が抗原抗体反応の場合、当該他の物質としては、例えば、反応緩衝液、competitor抗体、標識された二次抗体(例えば、一次抗体がウサギ抗体の場合、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼ等で標識されたマウス抗ウサギIgGなど)、ブロッキング液、ELISA用プレートなどが挙げられる。また、本発明の判定キットには、キットや試薬の使用方法や、疾患の判定基準等の説明が記載された説明書を含んでいてもよい。また、上記判定キットには、例えばポジティブコントロールとして用いるため、本発明のバイオマーカーを1種以上含んでいてもよい。
以下に、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
手順
患者
末梢血サンプルは、この研究への参加に同意した、13人の健常対照者、35人のSLE(全身性エリテマトーデス)患者及び29人の生物学的製剤ナイーブのRA(リウマチ)患者から採取した。SLE患者は、関西医科大学第一内科学教室及びリウマチ・膠原病科において、Systemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)分類基準(Petri M, Orbai AM, Alarcon GS, et al., Arthritis Rheum 2012; 64: 2677-2686)に従い、2010年4月から2014年12月の間に新たにSLEと診断された患者である。また、RA患者は、ACR/EULAR 関節リウマチ分類基準2010(Aletaha D, Neogi T, Silman AJ, et al., Arthritis Rheum 2010; 62: 2569-2581)に従い、RAと診断された患者である。SLEの治療前に、又はRAの生物学的製剤での治療前にデータを収集した。全てのドナー及び患者から、書面によるインフォームドコンセントを得た。本研究は、関西医科大学の治験審査委員会によって承認され、本研究はヘルシンキ宣言に準拠した。感染の証拠のない(身体症状、C反応性タンパク質の増加、及び異常な白血球数の増加のいずれもない)13人の健康なドナーを、病院の従業員の中から選んだ。疾患活動性を、採血時のSLEDAI(Bombardier C, Gladman DD, Urowitz MB, et al., Arthritis Rheum 1992; 35: 630-640)及び血清の補体力価(補体の50%溶血単位; CH50)により決定した。SLEDAIスコアが6以上の患者を活動的(active)SLEと定義し、SLEDAIスコアが6未満の患者を非活動的(inactive)SLEと定義した。CH50が20 U/ml未満は、低補体血症を示す。すべてのRA患者は、継続してメトトレキサートを経口投与していたが、十分に制御されていなかった。血液サンプルの採取後、すべてのRA患者は生物学的製剤による治療を開始していた。
発現分析
血液サンプルを遠心分離した後、血清を分析時まで-80℃で保存した。インターロイキン1β(IL-1β)、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13、及びIFNγ、並びに腫瘍壊死因子α(TNFα)の発現量をサイトメトリービーズアレイ法で定量(BD Biosciences)した。IL-17A(R&D Systems)、IL-17F(Abcam)、IFNα(PBL Biomedical Laboratories)、可溶性トロンボモジュリン(sTM; Abcam)及びHMGB1(Alexis Biochemicals)を定量ELISAキットで測定した。メーカーの説明書に記載されている各サイトカインの最小検出可能濃度は、2.3 pg/ml(IL-1β)、11.2 pg/ml(IL-2)、1.4 pg/ml(IL-4)、1.1 pg/ml(IL-5)、1.6 pg/ml(IL-6)、0.13 pg/ml(IL-10)、0.6 pg/ml(IL-13)、15.6 pg/ml(IL-17A)、20 pg/ml(IL-17F)、1.8 pg/ml(IFNγ)、0.7 pg/ml(TNFα)、1.5 pg/ml(IFNα)、0.31 ng/ml(sTM)及び0.2 ng/ml(HMGB1)であった。メーカーの説明書に従い、本実施例では、IFNαの検出限界を1.5 pg/ml、HMGB1の検出限界を0.2 ng/mlと定義した。
統計分析
2つの独立したグループのデータ(表3及び表4)を、マン・ホイットニーのU検定を用いて比較した。別の2つのグループ(表1、表7及び表6)からのデータを、フィッシャーの正確確率検定を用いた二次元分割表により比較した。HMGB1と血清サイトカインレベル(図1)との関連を、ピアソンの相関検定を用いて評価した。血清サイトカインとIFNα/HMGB1の相関関係を、重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて評価した(表5)。p < 0.05である場合に、統計学的に有意であるとみなした。データ分析を、JMP(登録商標)8、StatFlex ver.6.0、及びGraphPad Prism(登録商標)ソフトウェアを用いて実行した。
実施例1:SLE患者及びRA患者のサイトカイン及び内在性分子の血清レベルの評価
最初に、35人のSLE患者、29人の生物学的製剤ナイーブのRA患者、及び13人の健康な正常ドナーにおいて、血清HMGB1とそのデコイ受容体、sTM、及び血清サイトカイン(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-13、IL-17A、IL-17F、IFNα、IFNγ、及びTNFα)の濃度を分析した。患者のプロファイルを表1及び表2に示す。IL-17F(平均値±標準偏差(SD);298.3±677.6 pg/ml)及びsTM(平均値±SD;1.84±1.02 ng/ml)を除いて、血清サイトカイン及びHMGB1は健康なドナーでは検出不可レベルであった(表3)。しかしながら、試験したすべてのサイトカイン、HMGB1、及びsTMは、SLE患者及びRA患者の血清において検出可能であった(表3)。SLE患者のIFNαとHMGB1の血清レベルは、RA患者の血清レベルよりも有意に高かった。対照的に、RA患者のIL-2及びIL-6の血清レベルは、SLE患者の血清レベルよりも有意に高かった。さらに、SLE患者のsTMレベルは、RA患者のsTMレベルよりも有意に低かった。従って、上記結果から、IFNα及びHMGB1が、SLEに対する全身性応答に関連するがRAに対する全身性応答に関連しない、発症関連サイトカイン及び内因性分子であることが示唆された。
Figure 2022013391000002
*このカテゴリには、発作、精神病、器質性脳症候群、視覚障害、脳神経障害、ループス頭痛、及び脳血管障害が含まれる。
**このカテゴリには、尿円柱、血尿、タンパク尿、及び膿尿が含まれる。
2つのグループのデータは、フィッシャーの正確確率検定を用いた二次元分割表分析で比較した(p < 0.05、下線で強調表示)。
Figure 2022013391000003
Figure 2022013391000004
サイトカイン及び他の分子の血清濃度を、SLE患者及びRA患者で評価した。SLE患者とRA患者との測定値の差異の統計学的有意性は、マン・ホイットニーU検定を用いて決定した(p < 0.05、下線で強調表示)。値は平均値±SDとして示す。n.d.は検出不可を示す。Healthy donors:健康なドナー;p-value (between SLE and RA):SLEとRAの間のp値
実施例2:活動的SLE患者におけるIFNα及びHMGB1の血清レベルの分析
以前の報告では、血清IFNαレベルとSLE疾患活動性との間に正の相関があることが示され(L, Zhang J, et al., Rheumatol Int 2012; 32: 395-402、Fragoso-Loyo H, Atisha-Fregoso Y, Nunez-Alvarez CA, et al., J Rheumatol 2012; 39: 504-509、Jolly M, Francis S, Aggarwal R, et al., Lupus 2014; 23: 881-888)、このことから、血清IFNαがSLEの重症度のバイオマーカーであることが示唆されている。本実施例では、すべての患者を2つのグループに分類した。1つは、疾患活動性の臨床パラメーターであるSLEDAIスコアが6以上の「活動的」グループである。もう1つは、SLEDAIスコアが6未満の「非活動的」グループである。活動的SLE患者(n=22)には、18人の抗dsDNA抗体陽性の患者、9人の抗RNP抗体陽性の患者、2人の抗sm抗体陽性の患者、9人の抗カルジオリピン抗体陽性の患者が含まれる。また、非活動的SLE患者(n=13)には、6人の抗dsDNA抗体陽性の患者、5人の抗RNP抗体陽性の患者、1人の抗sm抗体陽性の患者、及び4人の抗カルジオリピン抗体陽性の患者が含まれる。SLEDAIの症状として、神経学的問題(発作、精神病、器質性脳症候群、視覚障害、脳神経障害、ループス頭痛、脳血管障害を含む)、血管炎、関節炎、筋炎、粘膜潰瘍、漿膜炎(胸膜炎及び心膜炎)が、活動的SLEにおいてのみ観察された(表1)。しかしながら、統計分析により、関節炎、尿路異常(尿円柱、血尿、タンパク尿及び膿尿)、発疹、発熱の存在が活動的SLE患者で有意に観察され、活動性において、抗dsDNA抗体陽性、及び漿膜炎の存在の傾向があった(表1)。SLEDAIのこれらの症状は、患者の活動性に寄与した。
次に、これら2つのグループ間の血清サイトカインレベルの差異の統計学的有意性を分析した。表4に示すように、「活動的」グループの血清IFNαレベル及びHMGB1レベルは、「非活動的」グループのそれらよりも有意に高かった。同様の傾向(p < 0.1)は、IL-1βとTNFαの血清レベルで観察された。血清sTMがSLE患者の疾患活動性と相関することを示す報告があるが、予想外にも、上記相関関係は本実施例では認められなかった。これらのことから、血清HMGB1及びIFNαの測定は、SLE患者における疾患活動性の評価に有用であることが示された。
Figure 2022013391000005
「活動的」SLE患者及び「非活動的」SLE患者のサイトカイン及び他の分子の血清濃度を評価した。「活動的」グループと「非活動的」グループの差異の統計学的有意性は、マン・ホイットニーU検定を用いて決定した(p < 0.05、下線で強調表示)。値は平均値±SDとして示す。Active:活動的;Inactive:非活動的;p-value:p値
実施例3:SLEにおけるIFNαの血清濃度とHMGB1の血清濃度との間の強い相関
HMGB1は、自己核酸及び自己抗体からなるICに応答して、血液の形質細胞様樹状細胞(pDC)からのIFNαの連続的な産生を通じて、SLEの病因に支持的な役割を果たす。SLE病因に対する全身性反応における血清IFNαとHMGB1の関係をさらに評価するために、血清IFNαレベルが血清HMGB1レベルと関連しているか否かを評価した。図1に示すように、IFNαレベルとHMGB1レベルとの間に強い正の相関が認められた(r=0.756)。多変量解析により、サイトカインのうち、血清IFNαが、血清IL-1β、TNFα、及びIL-4レベルと正の相関を示した(表5)。さらに、HMGB1は、IL-1β、TNFα、IL-4、及びIL-5レベルと正の相関を示した(表5)。これらの知見から、炎症性応答及びTh2を介した体液性免疫応答に関連する、SLE病因におけるアジュバントサイトカインとしてのIFNαと、アジュバント分子としてのHMGB1の密接な関連が示唆される。
Figure 2022013391000006
SLEにおけるIFNαの血清レベルと他のサイトカイン/分子(目的変数; IFNα)、及びHMGB1と他のサイトカイン/分子(目的変数; HMGB1)の血清レベル間の相関関係を分析した。統計学的有意性を、重回帰分析を用いて決定した。p < 0.05; 下線で強調した。
β:標準化回帰(standardized regression);p-value:p値
実施例4:血清IFNα及びHMGB1の検出可能レベルの活動的SLEの判定への有用性評価
予測バイオマーカーとしての血清IFNα及びHMGB1測定の有用性を評価した。疾患活動性を評価するために、両方のマーカーの感度と特異度を算出した。健康なドナーの血清IFNαとHMGB1濃度は検出できなかったため、それぞれの血清レベルが検出可能か検出不可であったかにより、すべての患者を「IFNα検出可能」及び「IFNα検出不可」の2つのグループ、又は「HMGB1検出可能」及び「HMGB1検出不可」の別の2つのグループに分類した。IFNα及びHMGB1の検出可能カットオフ値は、それぞれ1.5 pg/ml及び0.2 ng/mlであった。IFNα検出可能グループ(n=19)には、活動的SLEDAIスコアであった患者が16人いたため、活動的SLEを評価するためのIFNα検出の陽性的中率は84.2%であった(表6)。IFNα検出不可グループ(n=16)にSLEDAIスコアが非活動的な患者が10人いたため、陰性的中率は62.5%であった。このカテゴリーデータの場合、フィッシャーの正確確率検定を用いたp値は0.006であり、感度及び特異度はそれぞれ72.7%及び76.9%であった。従って、血清IFNαの検出可能レベルは、活動的SLEの判定にとって重要な情報であり得る。
さらに、HMGB1レベルに基づき並べ替えたグループでは、HMGB1検出可能グループ(n=21)における活動的SLEDAIスコアであった17人の患者では、陽性的中率は81.0%であった。HMGB1検出不可グループ(n=14)における活動的SLEDAIスコアであった9人の患者では、陰性的中率は64.3%であった(表6)。フィッシャーの正確確率検定を用いて計算したp値は0.012であり、感度及び特異度はそれぞれ77.3%及び69.2%であった。従って、血清HMGB1の検出もまた、活動的SLEを示す重要な情報であり得る。即ち、IFNα又はHMGB1の定性分析により、活動的SLEを検出するためのスクリーニング検定が可能となる。
Figure 2022013391000007
IFNα:84.2%の陽性的中率(検出可能なIFNα及び活動的SLEDAIスコアの両方を有する患者/検出可能なIFNαを有する患者の合計)、及び62.5%の陰性的中率(検出不可IFNα及び非活動的SLEDAIスコアの両方を有する患者/検出不可のIFNαを有する患者の合計)。
HMGB1:81.0%の陽性的中率(検出可能なHMGB1及び活動的SLEDAIスコアの両方を有する患者/検出可能なHMGB1を有する患者の合計)、及び64.3%の陰性的中率(検出不可HMGB1及び非活動的SLEDAIスコアの両方を有する患者/検出不可能なHMGB1を有する患者の合計)。
実施例5:血清IFNα及びHMGB1の検出のSLEに関連する関節炎、発熱、尿路異常の良好なマーカーとしての有用性
最後に、血清IFNαとHMGB1の測定値が、SLEDAIに由来するループスの特定の症状のより良好なマーカーであるか否かを評価した。表7に示すように、血清IFNαの検出可能レベルは、発熱、関節炎、及び尿路異常(尿円柱、血尿、タンパク尿、及び膿尿を含む)の存在と有意に相関していた。また、血清HMGB1の検出可能レベルは、発熱と尿路異常の存在と有意に相関していた。従って、SLE患者における定性的な血清IFNα又はHMGB1レベルは、発熱、尿路異常及び/又はSLE関連関節炎の存在を示し得る。
Figure 2022013391000008
*このカテゴリには、発作、精神病、器質性脳症候群、視覚障害、脳神経障害、ループス頭痛及び脳血管障害が含まれる。
**このカテゴリには、尿円柱、血尿、タンパク尿、及び膿尿が含まれる。
別の2つのグループのデータを、フィッシャーの正確確率検定を用いた二次元分割表分析で比較した(p < 0.05、下線で強調表示)。
IFNα又はHMGB1は、活動的SLE患者を鑑別するためのバイオマーカーとして有用である。

Claims (10)

  1. HMGB1タンパク質又はHMGB1転写産物、又は
    IFNαタンパク質又はIFNα転写産物
    からなる、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するためのバイオマーカー。
  2. 被験者由来の試料において、請求項1に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程を含む、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者との鑑別を補助する方法。
  3. 被験者由来の試料において、請求項1に記載のバイオマーカーの1種以上を検出する工程、及び
    前記工程で1種以上のバイオマーカーが検出された場合に、前記被験者が活動的全身性エリテマトーデス患者であると判定する工程
    を含む、請求項2に記載の方法。
  4. 請求項1に記載のバイオマーカーを2種用いることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
  5. HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体又はHMGB1転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー、又は
    IFNαタンパク質を特異的に認識する抗体又はIFNα転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー
    を用いて前記バイオマーカーを検出することを特徴とする、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記試料が血清である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
  7. HMGB1タンパク質を特異的に認識する抗体又はHMGB1転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー、又は
    IFNαタンパク質を特異的に認識する抗体又はIFNα転写産物を特異的に認識する核酸プローブ若しくは核酸プライマー
    を含む、活動的全身性エリテマトーデス患者と非活動的全身性エリテマトーデス患者又は健常者とを鑑別するための判定キット。
  8. 前記抗体が基板に固定されていることを特徴とする、請求項7に記載のキット。
  9. 前記基板に、HMGB1タンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体又はIFNαタンパク質を特異的に認識する2種類以上の抗体が固定されていることを特徴とする、請求項7に記載のキット。
  10. 前記基板に、抗IgG抗体又は抗IgM抗体がさらに固定されていることを特徴とする、請求項8又は9に記載のキット。
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