JP2022003020A - 植物病害防除剤 - Google Patents

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成寿 石川
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Abstract

【課題】本発明は、植物の病害を防除でき、人体に安全で且つ環境への負荷が少なく、さらに薬害の発生リスクを抑制できる、植物病害防除剤、各種糸状菌及び細菌に対して抗菌活性を有する抗菌剤、植物病害防除剤又は抗菌剤を用いて、植物病害を防除する方法及び植物の成長を維持させる植物の育成方法の提供を課題とする。【解決手段】ミョウバン化合物を有効成分とする、植物病害防除剤、抗菌剤、植物病害の防除方法及び植物の育成方法。【選択図】なし

Description

本発明は、植物病害防除剤、抗菌剤、植物病害の防除方法及び植物の育成方法に関する。
植物栽培時、特に有用作物栽培時における植物病害の防除は、世界的な食糧問題を解決する上で非常に重要である。植物病害としては、例えばいもち病、炭疽病、つる割病などの種子伝染性病害、灰色かび病、うどんこ病などの空気伝染性病害、並びに青枯病、萎凋病などの土壌伝染性病害などが知られている。
これらの植物病害を確実に防除するためには、病害やその原因となる病原菌の種類、宿主とする植物種やその生育ステージに応じて、防除剤の種類、使用方法及び総使用回数などを適宜決定する必要がある。特に栽培圃場では、糸状菌病や細菌病などの植物病害による被害が甚大であり、両者を効果的に防除することが必要である。一方で、防除剤の種類によっては、どちらか一方の病害(糸状菌病又は細菌病)に対してのみ効果を有するものが多くあり、糸状菌病と細菌病の両者を効果的に防除するためには、それぞれに対して防除効果を有する複数の化学農薬を処理したり、これらの農薬を混合したりして製剤化して処理する必要がある。
従来、このような植物病害に対しては、重金属化合物や有機塩素系薬剤、有機リン酸系薬剤などの防除剤が広く使用されてきた。重金属化合物を用いた防除方法としては、銅化合物(銅剤)を用いた防除方法が古くから広く知られている。しかし、一般的に銅剤は処理する植物体に薬害を発生させる場合が有り、銅剤で処理できる植物体の生育ステージも限られている。例えば、キュウリ斑点細菌病は種子伝染するので、発病の蔓延を防止するうえで幼苗期の防除が重要である。しかし、銅剤系統の農薬を用いた幼苗期の防除では、薬害の発生が問題となる。このような問題に対して、例えば特許文献1には、銅剤による薬害の程度を緩和させた、銅剤とトリホリンとを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤組成物が記載されている。
また、銀イオンは比較的高い抗菌活性と安全性を有することが知られており、銀を無機化合物に担持又はイオン交換させた抗菌剤を使用した抗菌性樹脂組成物が多数提案されている。例えば特許文献2及び3には、銀及び有機酸アニオン含有アルミニウム硫酸塩水酸化物粒子又は銀含有アルミニウム硫酸塩水酸化物粒子からなる抗菌剤を含む農薬が記載されている。
一方で、このような農薬については、しばしば耐性菌が発生するという問題がある。これまでにも多数の農薬が販売されているが、通常一つの主要病害に対して高い防除効果を示す農薬は3〜4グループ程度であり、そのため常に新規の農薬の開発が求められている。また、特に細菌病に対する農薬は種類が少なく、また防除効果も十分でない場合が多い。さらに、耐性菌は化学的・生化学的に共通の作用機構である同じグループの農薬の連用によって発生することがある。そのため、病原菌に対して新規の耐性菌が発生しにくい農薬の開発が必要である。
また、植物病害の防除にあたっては、環境保全に配慮した防除方法が強く求められている。動植物への影響や環境汚染へのリスクを考慮し、化学農薬などについては総使用回数や使用量の制限が課せられている場合が多い。また、平成29年度では、農薬の散布中、又は誤用による中毒が20件(37人)発生しており、消費者だけではなく生産者にとっても安全で安心に使用できる農薬の開発に需要がある。
このような背景もあって、近年では有機栽培が広がりつつあり、有機栽培にも利用できる新たな農薬の開発に期待が高まっている。
特開2008−290993号公報 特開2007−039442号公報 特開2007−039444号公報
植物病害の病原菌の一種である糸状菌や細菌に対しては、一般的にそれぞれ異なる防除作用や抗菌作用を有する農薬が使用されることが多く、有用作物の収穫までに複数の農薬の使用が必要となる。そのため、安全で安心できる使用、防除費軽減などの観点から、糸状菌病や細菌病の両者に効果のある農薬の開発が急務となっている。そのことにより、農薬全体の総使用量の低減が期待される。
さらに、病原菌に対して強い防除効果、抗菌効果を有する農薬は、同時に植物体の正常な生育を妨げる(薬害を発生させる)場合が多く、農薬によっては使用できる植物体の生育ステージが限られ、必ずしも使い勝手が良いものとは言えない現状があった。これまでにも、薬害の発生を抑えた農薬が開発されてきているが、薬害の発生を抑えることと、高い防除効果、汎用性とを両立させることは困難であった。
このことから、様々な病害(特に、糸状菌病及び細菌病の両者に起因する病害)、病原菌(特に、糸状菌病菌及び細菌病菌の両者)に対して高い防除効果、抗菌効果を有しながら、植物の種類や生育ステージに関わらず安全に使用でき、薬害発生のリスクが抑えられ、さらには人体にも安全で自然環境への負荷の少ない防除剤・抗菌剤の開発に需要がある。
本発明は、糸状菌病及び細菌病両者の病害を防除でき、人体に安全で且つ環境への負荷が少なく、さらに薬害の発生リスクを抑制できる、植物病害防除剤の提供を課題とする。
また本発明は、各種糸状菌及び細菌の両者に対して抗菌活性を有する抗菌剤の提供を課題とする。
また本発明は、前記植物病害防除剤又は抗菌剤を用いて、植物病害を防除する方法の提供を課題とする。
また本発明は、前記植物病害防除剤又は抗菌剤を用いて、植物の正常な成長を維持させる方法の提供を課題とする。
ミョウバンは、古くから媒染剤や防水材、消火剤、皮なめし剤、沈殿剤、消臭・制汗剤などに用いられている。また、食品添加物としては、ビスケットやスポンジケーキの膨張剤、ナスなどの漬物の色付けの安定剤、根菜や芋類、栗のアク抜き、甘露煮などを作る際の煮崩れ防止、品質安定剤などとしても広く一般的に用いられている。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、ミョウバン化合物を植物体に適用することにより、人体や自然環境に安全でありながら、糸状菌病及び細菌病などの病害やこれらの原因となる病原菌に対して高い防除効果、抗菌作用を発揮することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
(1)
ミョウバン化合物を有効成分とする植物病害防除剤。
(2)
前記植物が、穀類及び野菜類からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上である、前記(1)に記載の植物病害防除剤。
(3)
前記病害が、イネ褐条病、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病、イネいもち病、イネごま葉枯病、キュウリうどんこ病、キュウリ斑点細菌病、コマツナ炭疽病、イチゴ萎黄病、及びムギ類の赤かび病からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上である、前記(1)又は(2)記載の植物病害防除剤。
(4)
前記ミョウバン化合物が下記一般式(1)で表されるミョウバン化合物である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の植物病害防除剤。

(M13(SO42・nH2O)m 一般式(1)

(一般式(1)中、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンであり、M3はアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン及びイリジウムイオンからなる群より選ばれる金属イオンである。nは0、若しくは1〜24の整数であり、mは1又は2である。)
(5)
前記ミョウバン化合物が、硫酸カリウムアルミニウム・十二水和物(KAl(SO42・12H2O)又はその無水物(KAl(SO42)である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の植物病害防除剤。
(6)
ミョウバン化合物を有効成分とする抗菌剤。
(7)
前記抗菌剤が、穀類及び野菜類からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上を宿主植物とする病原菌に対する抗菌剤である、前記(6)に記載の抗菌剤。
(8)
前記抗菌剤が、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、フザリウム(Fusarium)属菌、ピリクラリア(Pyricularia)属菌、コクリオボルス(Cochliobolus)属菌、ポドスフェラ(Podosphaera)属菌、及びコレトトリカム(Colletotrichum)属菌からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上に対して抗菌効果を示すものである、前記(6)又は(7)記載の抗菌剤。
(9)
前記ミョウバン化合物が、下記一般式(1)で表されるミョウバン化合物である、前記(6)〜(8)のいずれかに記載の抗菌剤。

(M13(SO42・nH2O)m 一般式(1)

(一般式(1)中、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンであり、M3はアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン及びイリジウムイオンからなる群より選ばれる金属イオンである。nは0、若しくは1〜24の整数であり、mは1又は2である。)
(10)
前記ミョウバン化合物が、硫酸カリウムアルミニウム・十二水和物(KAl(SO42・12H2O)又はその無水物(KAl(SO42)である、前記(6)〜(9)のいずれかに記載の抗菌剤。
(11)
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤、又は前記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の抗菌剤によって、植物の種子又は植物体を処理することを含む、植物病害の防除方法。
(12)
前記(1)〜(5)のいずれかに記載の植物病害防除剤、又は前記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の抗菌剤によって、植物の種子又は植物体を処理することを含む、植物の育成方法。
(13)
前記植物病害防除剤又は抗菌剤に植物の種子を浸種処理する工程を含む、前記(11)又は(12)記載の方法。
(14)
前記植物病害防除剤又は抗菌剤を植物体に散布処理する工程を含む、前記(11)又は(12)記載の方法。
本発明の植物病害防除剤によれば、人体や環境への負荷が少なく、かつ薬害の発生リスクを抑制して、処理された植物を糸状菌病や細菌病から防除することができる。
また本発明の抗菌剤によれば、各種糸状菌及び細菌の生育や増殖を抑制することができる。
また本発明の植物病害の防除方法によれば、人体や環境に安全な状態で、かついずれの植物生育ステージであっても薬害を生じさせずに、植物を糸状菌病や細菌病から防除することができる。
また本発明の植物の生育方法によれば、いずれの植物生育ステージであっても薬害を生じさせず、植物の健全な成長を維持することができる。
図1(a)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加したWA培地で培養したイネいもち病菌(Pyricularia oryzae)の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。図1(b)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加していないWA培地で培養したイネいもち病菌の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。 図2(a)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加したWA培地で培養したイネいもち病菌の付着器の形成の有無を示す図面代用写真である。図2(b)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加していないWA培地で培養したイネいもち病菌の付着器の形成の有無を示す図面代用写真である。 図3(a)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加したWA培地で培養したイチゴ萎黄病菌(Fusarium oxysporum f.sp. fragariae)の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。図3(b)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加していないWA培地で培養したイチゴ萎黄病菌の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。 図4(a)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加したWA培地で培養したイネばか苗病菌(Fusarium fujikuroi)の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。図4(b)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加していないWA培地で培養したイネばか苗病菌の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。 図5(a)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加したWA培地で培養したムギ類の赤かび病菌(Fusarium graminearum)の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。図5(b)は、光学顕微鏡により観察した、ミョウバン化合物を添加していないWA培地で培養したムギ類の赤かび病菌の菌糸先端の状態を示す図面代用写真である。
植物病害に対する一般的な防除方法としては、例えば化学的方法、生物的方法、物理的方法、耕種的方法などの方法により病原菌を制御する方法;植物の抵抗力・自然免疫力を高めることによる宿主植物を制御する方法;気温・湿度、肥料、土壌の湿度・pHを調整することにより環境を制御する方法、などが挙げられる。
本発明に用いるミョウバン化合物は、植物病害の病原菌等に対して強い抗菌作用を有している。本発明に用いるミョウバン化合物が抗菌効果を発揮する具体的なメカニズムは定かではないが、アルミニウムイオンなどの3価の金属イオンが病原菌に直接作用して抗菌作用を発揮する一方で、カリウムイオンなどの1価の陽イオンが植物体の健全な成長を維持するので、植物病に対する抵抗力が発揮できると考えられる。
(防除剤)
本発明の第1の態様は、ミョウバン化合物を有効成分として有する植物病害防除剤である。以下、「本発明の植物病害防除剤」又は「本発明の防除剤」ともいう。
本明細書において、「防除」とは、植物の病害を予防、抑制又は排除する意味を包含する。
前記ミョウバン化合物は、好ましくは下記一般式(1)で表される、陽イオンの硫酸塩と金属イオンの硫酸塩の複塩である。

(M13(SO42・nH2O)m 一般式(1)
一般式(1)中、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンであり、M3はアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン及びイリジウムイオンからなる群より選ばれる金属イオンである。nは0、若しくは1〜24の整数であり、mは1又は2である。
1で表される陽イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン、マグネシウムイオンが挙げられる。中でも、植物体の健全な成長を維持する観点から、アンモニウムイオン及びカリウムイオンが好ましく、カリウムイオンがより好ましい。
3で表される金属イオンとしては、例えばアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン、イリジウムイオンが挙げられる。中でも、病原菌に対する抗菌活性の観点から、アルミニウムイオンが好ましい。
nH2Oで表される結晶水において、nは0、若しくは1〜24の整数である。好ましくは、nは0、12、22又は24であり、より好ましくは0又は12である。
mは1又は2であり、1が好ましい。
一般式(1)で表されるミョウバン化合物のうち、一般式(1−1)〜(1−3)のいずれかで表される化合物が好ましい。

1113(SO42・12H2O 一般式(1−1)
1113(SO42 一般式(1−2)
21(SO4)・M23(SO43・nH2O 一般式(1−3)
11及びM21は一般式(1)におけるM1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
13及びM23は一般式(1)におけるM3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
前記ミョウバン化合物の具体例としては、カリミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物;KAl(SO42・12H2O)、ナトリウムミョウバン(硫酸アルミニウムナトリウム十二水和物;NaAl(SO42・12H2O)、カリウム鉄ミョウバン(硫酸カリウム鉄(III);KFe(SO42)、アンモニウム鉄ミョウバン(硫酸鉄(III)アンモニウム;NH4Fe(SO42・12H2O、又はNH4(Fe(H2O)6(SO42・6H2O)、クロムミョウバン(硫酸クロムカリウム十二水和物;CrK(SO42・12H2O)、及び苦土ミョウバン(MgAl2(SO44・22H2O)、並びにこれらの無水物が挙げられる。この中でも、肥料の三要素であるカリウムを含み、植物体の健全な成長を維持する観点から、前記ミョウバン化合物はカリミョウバン(KAl(SO42・12H2O)又はその無水物(焼ミョウバン;硫酸カリウムアルミニウム KAl(SO42)であることが好ましい。
本発明に用いるミョウバン化合物は、無機合成によって製造することもでき、市販品を用いることもできる。市販品は、例えば、健栄製薬株式会社、大成薬品工業株式会社、栗本薬品工業株式会社、昭栄薬品株式会社などから販売されている。
本発明の防除剤は、ミョウバン化合物に加えて、展着剤を含むことが好ましい。展着剤を含むことにより、防除剤で植物を処理した際に、防除剤の付着性や拡展性を高めることができる。展着剤としては、一般展着剤、機能性展着剤、固着剤など、防除剤に一般的に用いられる展着剤を用いることができる。
本発明に用いる展着剤としては、付着性及び浸達性の観点から、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステルが好ましい。
本発明が上記展着剤を含む場合、その含有量は用いる展着剤や防除剤の種類、及び防除方法に応じて適宜設定できる。例えば、散布処理によって防除する場合、適当な濃度に調整した防除剤に対して農薬登録に定められている使用量で展着剤を添加することが好ましい。
さらに本発明の防除剤は、上記展着剤以外にも、本発明の効果を妨げない範囲で任意の成分を含有することができる。このような成分としては、例えば展着剤以外の界面活性剤、結合剤、粘着付加剤、増粘剤、着色剤、拡展剤、凍結防止剤、固結防止剤、崩壊剤、分解防止剤、防腐剤などが挙げられる。これらの成分は単独で含有されてもよいし、2種類以上を組み合わせて含有されていてもよい。
また、本発明の防除剤は、他の防除剤と組み合わせて用いてもよい。
本発明の防除剤の形態は、例えばDL粉剤、FD剤などの粉剤;粒剤;微粒剤F、細粒剤Fなどの粉粒剤;粉末;顆粒水和剤、フロアブル製剤、サスポエマルション製剤などの水和剤;水溶剤;濃厚エマルション製剤などの乳剤;マイクロエマルション製剤などの液剤;油剤;エアゾル;マイクロカプセル剤;ペースト剤;くん煙剤;くん蒸剤;塗布剤、とすることができる。また、本発明の防除剤は、例えばジャンボ剤、豆つぶ剤、1キロ粒剤、水面展開剤とすることもできる。
使用に際しては、適当な濃度に調整した防除剤を植物体に散布することができ、又は適当な濃度に調整した防除剤に種子を浸漬して処理することもできる。
本発明の防除剤により病害を防除される植物種は特に限定されないが、種子植物が好ましい。例えば、穀類;イモ類、根菜類、鱗茎類、豆類、ウリ科野菜、なす科果菜類、アブラナ科野菜、葉菜類、茎野菜類、食用花類などの野菜類;かんきつ類、仁果類、核果類、ベリー類等の小粒果実類などの果樹類;牧草類;芝類;香料など特用作物類;花卉類;樹木類などが挙げられる。なかでも穀類及び野菜類からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上であることが好ましい。
穀類としては、例えば、イネ、小麦、大麦、えんばく、ライ麦、アマランラス、キノア、あわ、きび、食用ソルガム、はとむぎ、ひえ、とうもろこし、そばなどが挙げられる。中でも、イネ、小麦、大麦、えんばく、ライ麦が好ましく、イネがより好ましい。
野菜類としては、例えば、キュウリ、コマツナ、イチゴ、キャベツ、トマト、ホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン、ナス、コールラビ、ハクサイ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー、シュンギク、アーティチョーク、レタス、アスパラガス、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ、フダンソウ、ペッパー、オクラ、ニラ、などが挙げられる。中でも、キュウリ、コマツナ及びイチゴが好ましい。
また、上記植物は、遺伝子組み換え植物であってもよい。
本発明の防除剤は、植物病害に対して優れた防除効果を有する。植物病害としては、子嚢菌、担子菌、ツボカビ菌、接合菌などの糸状菌や細菌により引き起こされる植物病害(糸状菌病や細菌病)が挙げられる。本発明の防除剤は、糸状菌病と細菌病の両方の防除に好適に用いることができる。具体的な植物病害としては、例えば「日本植物病名目録(2020年1月版)(日本植物病理学会編)」に記載される植物病害が挙げられる。
糸状菌病の具体例としては、例えば、フザリウム(Fusarium)属菌、ピリクラリア(Pyricularia)属菌、コクリオボルス(Cochliobolus)属菌、ポドスフェラ(Podosphaera)属菌、コレトトリカム(Colletotrichum)属菌、シュードペロノスポラ(Pseudoperonospora)属菌、ベンチュリア(Venturia)属菌、エリシフェ(Erysiphe)属菌、ボトリチス(Botrytis)属菌、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌、パクシニア(Puccinia)属菌、セプトリア(Septoria)属菌、スクレロティニア(Sclerotinia)属菌、ピシウム(Pythium)属菌、スフェロテカ(Sphaerotheca)属菌、などの糸状菌に起因する植物病害が挙げられる。細菌病の具体例としては、例えば、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、などの細菌に起因する植物病害が挙げられる。
ここで、「糸状菌」とは、分枝した糸状の菌糸体で栄養成長する微生物(菌類、かび)である。また、「細菌」とは、一般的に大きさが1〜2μm程度の単細胞からなる微生物である。
また、本発明の防除剤は、特にイネ科植物の病害に対して効果的に用いることができる。イネを宿主植物とする植物病害としては、例えば、萎縮病(細菌病、病原菌:Pseudomonas syringae pv. oryzae)、褐条病(細菌病、病原菌:Acidovorax avenae subsp. avenae)、株腐病(細菌病、病原菌:Dickeya zeae)、白葉枯病(細菌病、病原菌:Xanthomonas oryzae pv. oryzae)、内穎褐変病(細菌病、病原菌:Pantoea ananatis)、苗立枯細菌病(細菌病、病原菌:Burkholderia plantarii)、もみ枯細菌病(細菌病、病原菌:Burkholderia gladioliBurkholderia glumae)、葉しょう褐変病(細菌病、病原菌:Pseudomonas fuscovaginae)、赤かび病(糸状菌病、病原菌:Fusarium asiaticumFusarium incarnatumFusarium sporotrichioidesGibberella zeae)、稲こうじ病(糸状菌病、病原菌:Villosiclava virens)、いもち病(糸状菌病、病原菌:Pyricularia oryzae)、疫病(糸状菌病、病原菌:Phytophthora japonicaPythiomorpha oryzae)、黄化萎縮病(糸状菌病、病原菌:Sclerophthora macrospora)、褐色菌核病(糸状菌病、病原菌:Ceratobasidium setariae)、褐色小粒菌核病(糸状菌病、病原菌:Waitea circinata)、褐色葉枯病(糸状菌病、病原菌:Monographella albescens)、褐色紋枯病(糸状菌病、病原菌:Thanatephorus cucumeris)、褐紋病(糸状菌病、病原菌:Nigrospora oryzae)、株枯病(糸状菌病、病原菌:Gibberella fujikuroi)、眼斑病(糸状菌病、病原菌:Drechslera gigantea)、黄枯病(糸状菌病、病原菌:Pyrenochaeta oryzae)、球状菌核病(糸状菌病、病原菌:Sclerotium hydrophilum)、黒しゅ病(糸状菌病、病原菌:Entyloma dactylidis)、黒変病(糸状菌病、病原菌:Cladosporium herbarum)、黒粒菌核病(糸状菌病、病原菌:Helicoceras oryzae)、小黒菌核病(糸状菌病、病原菌:Helminthosporium sigmoideum)、ごま葉枯病(糸状菌病、病原菌:Cochliobolus miyabeanus)、ささら病(糸状菌病、病原菌:Sphaerulina miyakei)、さび色小粒菌核病(糸状菌病、病原菌:Sclerotium sp.)、シナモン色かび病(糸状菌病、病原菌:Peziza ostracoderma)、小球菌核病(糸状菌病、病原菌:Magnaporthe salvinii)、白絹病(糸状菌病、病原菌:Sclerotium rolfsii)、すじ葉枯病(糸状菌病、病原菌:Sphaerulina oryzina)、すす病(糸状菌病、病原菌:Cladosporium herbarumNeocapnodium tanakaeAureobasidium pullulans)、すす紋病(糸状菌病、病原菌:Pseudocochliobolus lunatus)、すそ枯病(糸状菌病、病原菌:Rhizoctonia solani)、墨黒穂病(糸状菌病、病原菌:Tilletia barclayana)、赤色菌核病(糸状菌病、病原菌:Waitea circinata)、立枯病(糸状菌病、病原菌:Gaeumannomyces graminis)、種もみ腐敗病(糸状菌病、病原菌:Fusarium merismoidesFusarium sp.)、苗腐病(糸状菌病、病原菌:Achlya americanaAchlya americanaAchlya klebsianaDictyuchus sterilisPythiomorpha miyabeanaPythiomorpha oryzaePythium spp.)、苗立枯病(糸状菌病、病原菌:Fusarium avenaceumFusarium solaniRhizopus chinensisRhizopus oryzaeRhizopus arrhizusRhizopus javanicusTrichoderma virideMucor fragilisPhoma sp.、Pythium arrhenomanesPythium catenulatumPythium dissotocumPythium graminicolaPythium inflatumPythium irregularePythium marsipiumPythium spinosumPythium sylvaticumPhytopythium litorale)、にせいもち病(糸状菌病、病原菌:Alternaria oryzaeEpicoccum nigrumCladosporium herbarumPseudocochliobolus lunatus)、ねずみかび病(糸状菌病、病原菌:Alternaria oryzae)、灰色菌核病(糸状菌病、病原菌:Ceratobasidium cornigerum)、灰色葉枯病(糸状菌病、病原菌:Hendersonia oryzae)、灰紋病(糸状菌病、病原菌:Cladosporium miyakei)、葉枯病(糸状菌病、病原菌:Phaeosphaeria oryzae)、斑点病(糸状菌病、病原菌:Cochliobolus sativus)、ばか苗病(糸状菌病、病原菌:Fusarium fujikuroiGibberella fujikuroi)、ブラキスポリウム病(糸状菌病、病原菌:Curvularia senegalensis)、穂黒粒病(糸状菌病、病原菌:Epicoccum hyalopes)、もみ枯病(糸状菌病、病原菌:Phoma glumarum)、紋枯病(糸状菌病、病原菌:Thanatephorus cucumeris)、葉しょう網斑病(糸状菌病、病原菌:Cylindrocladium scoparium)、葉しょう褐斑病(糸状菌病、病原菌:Pyrenochaeta sp.)、葉鞘腐敗病(糸状菌病、病原菌:Sarocladium oryzae)、陸稲連作障害(糸状菌病、病原菌:Pythium graminicola)、及び綿疫病(糸状菌病、病原菌:Phytophthora sojae)などが挙げられる。これらの植物病害の病原菌としては、上述した植物病害の病原菌が挙げられる。
これらのうち、本発明の防除剤は、イネ褐条病、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病、イネいもち病、イネごま葉枯病の防除に特に好ましく用いることができる。
また本発明の防除剤は、特にウリ科植物の病害に対して効果的に用いることができる。ウリ科植物であるキュウリを宿主植物とする植物病害としては、例えば、青枯病(細菌病、病原菌:Ralstonia solanacearum)、黄色かさ斑細菌病(細菌病、病原菌:Pseudomonas syringae)、褐色かさ斑細菌病(細菌病、病原菌:Pseudomonas syringae)、褐斑細菌病(細菌病、病原菌:Xanthomonas cucurbitae)、軟腐病(細菌病、病原菌:Pectobacterium carotovorum)、斑点細菌病(細菌病、病原菌:Pseudomonas syringae pv. lachrymans)、縁枯細菌病(細菌病、病原菌:Pseudomonas marginalis pv. marginalisPseudomonas viridiflava)、うどんこ病(糸状菌病、病原菌:Golovinomyces cucurbitacearumLeveillula tauricaPodosphaera xanthii)、疫病(糸状菌病、病原菌:Phytophthora melonisPhytophthora nicotianae)、果実腐敗病(糸状菌病、病原菌:Fusarium pallidoroseum)、褐斑病(糸状菌病、病原菌:Corynespora cassiicola)、環紋葉枯病(糸状菌病、病原菌:Cristulariella moricola)、菌核病(糸状菌病、病原菌:Sclerotinia sclerotiorum)、黒星病(糸状菌病、病原菌:Cladosporium cucumerinum)、こうがいかび病(糸状菌病、病原菌:Choanephora cucurbitarum)、黒点根腐病(糸状菌病、病原菌:Monosporascus cannonballus)、黒斑病(糸状菌病、病原菌:Alternaria alternataAlternaria cucumerina)、白絹病(糸状菌病、病原菌:Sclerotium rolfsii)、炭腐病(糸状菌病、病原菌:Macrophomina phaseolina)、立枯病(糸状菌病、病原菌:Globisporangium splendens)、炭疽病(糸状菌病、病原菌:Colletotrichum orbiculare)、つる枯病(糸状菌病、病原菌:Didymella bryoniae)、つる割病(糸状菌病、病原菌:Fusarium oxysporum)、苗立枯病(糸状菌病、病原菌:Pythium cucurbitacearumPythium debaryanumRhizoctonia solani)、根腐病(糸状菌病、病原菌:Pythium aphanidermatumPythium myriotylumPythium volutum)、灰色疫病(糸状菌病、病原菌:Phytophthora capsici)、灰色かび病(糸状菌病、病原菌:Botrytis cinerea)、半身萎凋病(糸状菌病、病原菌:Verticillium dahliae)、斑点病(糸状菌病、病原菌:Cercospora citrullina)、斑葉病(糸状菌病、病原菌:Stemphylium cucurbitacearum)、ばら色かび病(糸状菌病、病原菌:Trichothecium roseum)、変形菌病(糸状菌病、病原菌:Didymium squamulosumPhysarum cinereum)、べと病(糸状菌病、病原菌:Pseudoperonospora cubensis)、ホモプシス根腐病(糸状菌病、病原菌:Phomopsis sp.)、円葉枯病(糸状菌病、病原菌:Helminthosporium cucumerinum)、紫紋羽病(糸状菌病、病原菌:Helicobasidium mompa)、輪紋病(糸状菌病、病原菌:Ascochyta phaseolorum)、及び綿腐病(糸状菌病、病原菌:Pythium aphanidermatum)などが挙げられる。これらの植物病害の病原菌としては、上述した植物病害の病原菌が挙げられる。
これらのうち、本発明の植物病害防除剤は、キュウリうどんこ病、及びキュウリ斑点細菌病の防除に特に好ましく用いることができる。
また本発明の防除剤は、特にアブラナ科植物の病害に対して効果的に用いることができる。アブラナ科植物であるコマツナを宿主植物とする植物病害としては、例えば、黒斑細菌病(細菌病、病原菌:Pseudomonas cannabina pv. alisalensisPseudomonas syringae pv. maculicola)、萎黄病(糸状菌病、病原菌:Fusarium oxysporum)、菌核病(糸状菌病、病原菌:Sclerotinia sclerotiorum)、白さび病(糸状菌病、病原菌:Albugo macrospora)、炭疽病(糸状菌病、病原菌:Colletotrichum higginsianum)、灰色かび病(糸状菌病、病原菌:Botrytis cinerea)、白斑病(糸状菌病、病原菌:Pseudocercosporella capsellae)、斑葉病(糸状菌病、病原菌:Phoma wasabiae)、べと病(糸状菌病、病原菌:Hyaloperonospora brassicae)、及びリゾクトニア病(糸状菌病、病原菌:Rhizoctonia solani)などが挙げられる。これらの植物病害の病原菌としては、上述した植物病害の病原菌が挙げられる。
これらのうち、本発明の植物病害防除剤は、コマツナ炭疽病の防除に特に好ましく用いることができる。
また、本発明の防除剤は、上述した以外にも、例えばイチゴ萎黄病(糸状菌病、病原菌:Fusarium oxysporum f.sp. fragariae)、ムギ類の赤かび病(糸状菌病、病原菌:Fusarium graminearumGibberella zeaeFusarium avenaceumFusarium culmorumFusarium crookwellense)に対しても効果的に用いることができる。前記ムギ類の赤かび病の具体例としては、例えばコムギ赤かび病、オオムギ赤かび病、エンバク赤かび病、ライムギ赤かび病が挙げられる。
(抗菌剤)
本発明の第2の態様は、ミョウバン化合物を有効成分とする抗菌剤である。
本明細書において「抗菌」とは、菌の増殖を抑制する効果、及び菌を死滅させる効果の両方を含む概念である。
「菌の増殖を抑制する効果、及び菌を死滅させる効果」とは、例えば、病原菌の分裂阻害、糸状菌の菌糸先端の分裂異常、糸状菌の付着器形成阻害、分生子形成阻害、分生子殻形成阻害、分生子層形成阻害、子嚢殻形成阻害、などを原因として引き起こされる効果が挙げられる。
本発明の抗菌剤は、子嚢菌、担子菌、ツボカビ菌、接合菌などの糸状菌と、細菌の両者に対して抗菌活性を有する。
糸状菌などの病原菌は、宿主植物の表面に菌糸を伸ばし、菌糸の先端に付着器と呼ばれるドーム状の特殊な細胞を形成し、この付着器を介して宿主植物に感染することが知られている。本発明の抗菌剤は、このような糸状菌の菌糸の正常な伸長・生育を阻害し、また付着器の形成を阻害することができる。
また細菌に対しては、細菌の正常な生育・分裂を阻害することができる。
本発明の抗菌剤に用いるミョウバン化合物としては、第1の態様で述べたミョウバン化合物を好適に用いることができる。また、抗菌剤に含まれるミョウバン化合物の含有量も、第1の態様と同様の量を含有することができる。
さらに、展着剤や他の成分を、第1の態様と同様の態様で含むことができ、同様の形態(剤型)で使用することができる。
本発明が抗菌作用を有する病原菌としては、例えば第1の態様で述べた植物病害を引き起こす病原菌が挙げられる。中でも、細菌であるアシドボラックス属細菌、バークホルデリア属細菌、及びシュードモナス属細菌、並びに糸状菌であるフザリウム属菌、ピリクラリア属菌、コクリオボルス属菌、ポドスフェラ属菌、及びコレトトリカム属菌からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の病原菌に対して、優れた抗菌活性を有する。
(植物病害の防除方法)
本発明の第3の態様は、上記の植物病害防除剤(第1の態様)又は抗菌剤(第2の態様)によって、植物の種子や植物体を処理することを含む、植物病害の防除方法である。
本発明の防除剤又は抗菌剤の処理は、病害の抑制又は排除、及び病原菌の増殖抑制又は病原菌を死滅させるために処理すること、並びに病害発生の予防及び治療するために処理することを含む。
本発明の植物病害の防除方法における、前記防除剤又は抗菌剤を処理する方法は特に限定されず、対象となる植物種、病原菌の種類や感染程度、施用範囲、剤型に応じた方法で行うことができる。具体的には、種子浸漬処理、種子紛衣処理、種子塗布処理、種子吹き付け処理、植物体への散布処理、覆土への混和、床土への混和、育苗箱への施用、液剤かん注、側条施用、水面施用、無人飛行機による散布等が挙げられる。中でも、本発明の防除方法には、種子浸漬処理又は植物体への散布処理を好ましく適応できる。また、防除剤又は抗菌剤は、前述した剤型を、処理の目的に応じて適切に選択することが好ましい。さらに、たとえば農薬キャリアーなどを用いて防除剤又は抗菌剤を調整し、散布することも好ましい。
また、例えば処理の対象となる植物がイネである場合、浸種前又は催芽時に防除剤又は抗菌剤で種子浸漬処理することが好ましい。また、対象となる植物がキュウリやコマツナである場合、植物体の葉や茎に防除剤又は抗菌剤を散布することが好ましい。
なお、本明細書において「催芽」とは、種モミを予め発芽させることをいい、本発明における催芽処理は、催芽処理として通常用いられる条件で行うことができる。具体的には、例えば30℃の温水に種モミを1日間浸漬させて、播種から出芽までの時間を短縮し、出芽を均一にすることができる。
本発明の防除剤は、糸状菌病及び細菌病の両者を効果的に防除することができ、また本発明の抗菌剤は糸状菌及び細菌の両者に対して抗菌活性を示す。したがって本発明の植物病害の防除方法によれば、本発明の防除剤又は抗菌剤の総使用回数を、他の複数の農薬を使用した場合の総使用回数に比べて低減することができる。
また、本発明の防除剤又は抗菌剤の処理では、処理後の植物体において生育抑制や葉の黄化などの薬害が発生しにくいことから、例えば薬害が顕著に表れやすい幼苗期の植物体に対しても本発明の防除剤又は抗菌剤を処理することができる。また、環境の温度変化による影響も受けづらく、季節を問わず植物体に処理をすることができる。
本発明の防除剤又は抗菌剤は、そのまま用いてもよいし、前記防除剤又は抗菌剤を溶媒で溶解ないし希釈して用いてもよく、適宜希釈して用いることが好ましい。希釈して用いる場合、使用する溶媒は水であることが好ましい。適切な希釈倍率は、本発明の防除剤、抗菌剤が含有する有効成分量、対象となる病害やその病原菌の種類、宿主植物の種類やその生育ステージ、防除剤及び抗菌剤の処理方法などによって適宜決定することができる。例えば、本発明の防除剤又は抗菌剤は、100倍〜1600倍に希釈して用いることもでき、200倍〜800倍に希釈して用いることも好ましい。
本発明の植物病害の防除方法において、使用する防除剤又は抗菌剤に含まれるミョウバン化合物の含有量は、目的に応じて適宜設定することができる。
病害の抑制又は排除、並びに病原菌の増殖抑制又は病原菌を死滅させる目的で本発明の防除剤又は抗菌剤を施用する場合、対象となる病害やその病原菌の種類、宿主植物の種類やその生育ステージなどによって本発明の防除剤又は抗菌剤の希釈倍率を適宜決定することができる。希釈倍率としては、上記と同様の希釈倍率が挙げられる。
さらに、本発明の防除方法が病害発生の予防を目的とする場合、病害の抑制又は排除、並びに病原菌の増殖抑制又は病原菌を死滅させる目的の場合と比べて、防除剤又は抗菌剤の処理量を少なくすることが好ましい。
本発明の防除剤又は抗菌剤の処理回数は、対象となる植物種、防除する菌種、防除方法などによって適宜設定することができる。例えば植物体への散布処理の場合、植物の生育に合わせて複数回処理をすることが好ましい。
また、本発明の防除剤又は抗菌剤を複数回使用するときの使用頻度は、対象となる植物種、防除する菌種、防除方法などによって適宜設定することができるが、対象病害の発生前または初期に予防的に散布処理することが好ましい。また、通常一定以上の間隔を空けて使用し、処理間隔は、宿主植物の成長、病勢に適合することがより好ましい。
(植物の育成方法)
本発明の第4の態様は、上記の植物病害防除剤又は抗菌剤によって、植物の種子や植物体を処理することを含む、植物の育成方法である。
本発明の植物の育成方法は、前述した本発明の防除方法(第3の態様)と同様の方法によって処理することができる。
本発明の植物の育成方法は、本発明の防除剤又は抗菌剤を植物体に処理することで、植物の生育を維持することができる。具体的には、本発明の防除剤又は抗菌剤を処理することで、植物の葉の色をより濃くすることができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例において、例えば「イネ褐条病」とあるのは、「イネを宿主植物とする褐条病」を意味する。他の病害についても同様である。また、実施例において、「イネ褐条病菌」とあるのは、「イネ褐条病の原因となる病原菌」を意味する。他の病原菌についても同様である。
試験例1 イネの病害に対する防除試験及びイネの生育試験
本試験例の供試作物として、イネ(Oryza sativa、品種:コシヒカリ又はあきたこまち)を用いた。
試験例1−1 イネ褐条病に対する防除試験
(1)病原菌の接種
イネ褐条病菌の菌株(細菌、MAFF106618菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、Potato Peptone Glucose Agar (PPGA)培地(組成:ジャガイモ 200gの煎汁 1000mL、ペプトン 5g、グルコース 5g、NaHPO・12HO 3g、KHPO 0.5g、NaCl 3g、寒天 18g)に植菌し、30℃で3日間培養した。培養後の培養液を、病原菌の濃度が10個cfu/mLとなるように超純水に懸濁し、イネ褐条病菌の懸濁液を得た。該懸濁液にイネ(品種:コシヒカリ)の種モミを浸漬し、アスピレーター(型番:MDA−015A、アルバック機工株式会社製)を用いて、0.03MPa条件下で60分間減圧接種して、イネ褐条病菌に汚染されたイネの種モミを得た。
(2)防除剤処理
カリミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、蒸留水1000mLに5g溶解させて防除剤1を調製した。また、焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、蒸留水1000mLに5g溶解させて防除剤2を調製した。また、対照試験に用いる防除剤として、化学農薬であるイプコナゾール銅水和剤(商品名:テクリードCフロアブル(登録商標)、クミアイ化学工業株式会社製、200倍希釈液)、及び特定農薬である食酢(商品名:穀物酢、株式会社Mizkan製、40倍希釈液)を用いた。
前記のイネ褐条病菌に汚染された種モミを水道水に入れ、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを、前記防除剤1、防除剤2、又は食酢の溶液に浸漬し、30℃で24時間催芽処理を行った。また、イネ褐条病菌で処理した種モミを、前記イプコナゾール銅水和剤の溶液に、15℃で24時間浸漬処理をした後、種モミを水道水に移し、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを30℃で24時間催芽処理を行った。
なお、上記防除剤処理の対照試験として、前記のイネ褐条病菌に汚染された種モミを、前記防除剤処理を施さずに、水道水にて浸種、催芽処理を行った種モミを用意した。
(3)防除効果の測定
培養土(パールソイル、株式会社関東農産製)を、合成樹脂製育苗箱(縦9cm×横14cm×高さ4cm)に、高さ3.5cmまで充填し、上記催芽処理後の種子を1育苗箱当たり300粒となるように播種、覆土し、温室内で育苗管理した。
葉齢2.5に発病苗数を計数し、発病苗率を算出し、下記式(1)にて防除価を算出した。なお、発病は目視にて判断した。試験は3連制で実施した。下記式(1)中、「処理区」とは各防除剤で処理した区画を、「無処理区」とは各防除剤で処理していない区画を意味する。

防除価=100−{(処理区の発病苗率/無処理区の発病苗率)×100} 式(1)
試験結果を表1〜3に示す。なお、表中の防除価は、試験の平均値である。また、薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(防除剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを示す。
Figure 2022003020
Figure 2022003020
Figure 2022003020
表1〜3に示される通り、防除剤1(カリミョウバン)及び防除剤2(焼ミョウバン)を用いた場合は、細菌病であるイネ褐条病に対して高い防除効果を示すことがわかった。さらに、イネ褐条病に対して既に防除効果が知られているイプコナゾール銅水和剤や食酢に比べて、防除剤1(カリミョウバン)及び防除剤2(焼ミョウバン)はより高い防除効果を示すことがわかった。
試験例1−2 イネもみ枯細菌病に対する防除試験
試験例1に準じた方法で、イネもみ枯細菌病に対する防除試験を行った。
イネもみ枯細菌病菌の菌株(細菌、MAFF302395菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、PPGA培地(試験例1−1と同様の組成)に植菌し、25℃で3日間静置培養して接種用細菌を得た。培養後のペトリ皿上のコロニーから集菌し、病原菌の濃度が10個cfu/mLとなるように超純水に懸濁し、イネもみ枯病細菌の懸濁液を得た。該懸濁液にイネ(品種:コシヒカリ)の種モミを浸漬し、アスピレーター(型番:MDA−015A、アルバック機工株式会社製)を用いて、0.03MPa条件下で60分間減圧接種して、イネもみ枯細菌病に汚染されたイネの種モミを得た。
前記のイネもみ枯細菌病菌に汚染された種モミを水道水に入れ、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを、前記防除剤1、防除剤2、又は食酢の溶液に浸漬し、30℃で24時間催芽処理を行った。また、イネもみ枯細菌病菌で処理した種モミを、前記イプコナゾール銅水和剤の溶液に、15℃で24時間浸漬処理をした後、種モミを水道水に移し、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを30℃で24時間催芽処理を行った。なお、上記防除剤処理の対照試験として、前記のイネもみ枯細菌病菌に汚染された種モミを、前記防除剤処理を施さずに、水道水にて浸種、催芽処理を行った種モミを用意した。
葉齢2.5に発病苗数を計数し、発病苗率を算出し、上記式(1)にて防除価を算出した。なお、3連制で実施し、発病は目視にて判断した。
試験結果を表4及び5に示す。
Figure 2022003020
Figure 2022003020
表4及び5に示される通り、防除剤1(カリミョウバン)及び防除剤2(焼ミョウバン)は、細菌病であるイネもみ枯細菌病に対して高い防除効果を示すことがわかった。さらに、防除剤1(カリミョウバン)は、食酢に比べて、より高い防除効果を示すことがわかった。防除剤2(焼ミョウバン)は、イプコナゾール銅水和剤に比べて、同等の高い防除効果を示すことがわかった。
試験例1−3 イネ苗立枯細菌病に対する防除試験
試験例1に準じた方法で、イネ苗立枯細菌病に対する防除試験を行った。なお、本試験で用いる汚染種モミの混合率は2%とし、具体的には下記接種により得られた汚染種モミを、汚染種モミの割合が2%となるように非汚染種モミと混ぜて用いた。
イネ苗立枯細菌病菌の菌株(細菌、MAFF302466菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、PPGA培地(試験例1−1と同様の組成)に植菌し、30℃で2日間静置培養して接種用細菌を得た。培養後のペトリ皿上のコロニーから集菌し、病原菌の濃度が10個cfu/mLとなるように超純水に懸濁し、イネ苗立枯細菌病の懸濁液を得た。該懸濁液にイネ(品種:コシヒカリ)の種モミを浸漬し、アスピレーター(型番:MDA−015A、アルバック機工株式会社製)を用いて、0.03MPa条件下で60分間減圧接種して、イネ苗立枯細菌病に汚染されたイネの種モミを得た。得られた汚染種モミを、非汚染種モミと混合して、混合率が2%の混合種モミを得た。
前記混合種モミを水道水に入れ、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の混合種モミを、前記防除剤1、防除剤2、又は食酢の溶液に浸漬し、30℃で24時間催芽処理を行った。また、前記混合種モミを、前記イプコナゾール銅水和剤の溶液に、15℃で24時間浸漬処理をした後、混合種モミを水道水に移し、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを30℃で24時間催芽処理を行った。なお、上記防除剤処理の対照試験として、前記混合種モミを、前記防除剤処理を施さずに、水道水にて浸種、催芽処理を行った種モミを用意した。
葉齢2.5に発病苗数を計数し、発病苗率を算出し、上記式(1)にて防除価を算出した。なお、3連制で実施し、発病は目視にて判断した。
試験結果を表6及び7に示す。
Figure 2022003020
Figure 2022003020
表6及び7に示される通り、防除剤1(カリミョウバン)及び防除剤2(焼ミョウバン)は、細菌病であるイネ苗立枯細菌病に対して高い防除効果を示すことがわかった。さらに、防除剤1(カリミョウバン)は、食酢に比べて、著しく高い防除効果を示すことがわかった。防除剤2(焼ミョウバン)は、イプコナゾール銅水和剤に比べて、同等の高い防除効果を示すことがわかった。
試験例1−4 イネばか苗病に対する防除試験
(1)病原菌の接種
糸状菌病であるイネばか苗病に罹患したイネ株(品種:あきたこまち)から種子(自然感染種)を採取し、罹患していない種モミ(品種:あきたこまち)と混ぜて、自然感染種モミ率を20%とする混合種モミを得た。
(2)防除剤処理
焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、蒸留水1000mLに、それぞれ10g、5g、2g、1g溶解し、防除剤3(100、200、500、1000倍液)を調製した。また、対照試験に用いる防除剤としては、化学農薬であるイプコナゾール銅水和剤(商品名:テクリードCフロアブル(登録商標)、クミアイ化学工業株式会社製、200倍希釈液)を用いた。
前記の混合種モミを水道水に入れ、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種子を、上記防除剤3の各溶液に浸漬し、30℃で24時間催芽処理を行った。
また、前記の混合種モミを、上記イプコナゾール銅水和剤(200倍希釈液)、又は前記防除剤3(500倍液)の溶液に、15℃で24時間浸漬処理をした後、種モミを水道水に移し、15℃で7日間浸種処理した。浸種処理後の種モミを30℃で24時間催芽処理を行った。
なお、上記防除剤処理の対照試験として、前記の混合種モミを、上記防除剤処理を施さずに、水道水で浸種、催芽処理を行った種モミを用意した。
(3)防除効果の調査
培養土(パールソイル、株式会社関東農産製)を、合成樹脂製育苗箱(縦9cm×横14cm×高さ4cm)に高さ3.5cmまで充填し、上記催芽処理後の種子を1育苗箱当たり300粒となるように播種、覆土し、20〜30℃の温室内で育苗管理した。
葉齢2.5に発病苗数を計数し、発病苗率を算出し、上記式(1)にて防除価を算出した。なお、発病は目視にて判断した。試験は3連制で実施した。
試験結果を表8に示す。なお、表中の防除価は、3連制試験の平均値である。また、薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(薬剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを意味する。
Figure 2022003020
表8に示される通り、防除剤3で処理したイネは、処理が浸種前か催芽時であるかに関わらず、防除価が高いことがわかった。このことから、本発明の防除剤は糸状菌病であるイネばか苗病に対し高い防除効果を示すことがわかった。
試験例1−5 イネいもち病に対する防除試験
(1)供試作物の育成
培養土(パールソイル、株式会社関東農産製)を、合成樹脂製ポット(直径15cm、高さ17cm)に高さ16cmまで充填し、浸種・催芽処理をした種子(品種:コシヒカリ)を1ポットあたり4株となるように播種、覆土し、20〜30℃の温室内で育苗管理した。
(2)防除剤処理
焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、蒸留水1000mLに5g溶解させて焼ミョウバン溶液(200倍液)を調製し、さらに展着剤として、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル(商品名:アプローチBI(登録商標)、花王株式会社製)を、前記焼ミョウバン溶液に対して1000倍希釈となるように加えて、防除剤4(200倍液)を調製した。また対照試験に用いる防除剤としては、化学農薬であるアゾキシストビン水和剤(商品名:アミスターエイト(登録商標)、シンジェンタジャパン株式会社製)を蒸留水に1500倍で希釈して用いた。なお、薬剤処理をしない区画には、上記展着剤を蒸留水に1000倍で希釈したもの(展着剤加用蒸留水)を用いた。
5葉展開期のイネに対し、上記防除剤4、アゾキシストビン水和剤(1500倍希釈)、又は展着剤加用蒸留水を、処理量が1ポットあたり30mLとなるように手動噴霧器で散布処理した。各処理に対して、10ポットずつ供した。
(3)病原菌の接種
イネいもち病菌の菌株(糸状菌、MAFF101512菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、オートミール寒天培地(BD Difco(TM)ベクトン・ディッキンソン社製)に植菌し、25℃で10日間培養して分生子を得た。病原菌の濃度が10分生子/mLとなるように調製し、前記防除剤の処理1日後に、調製した本病菌分生子の懸濁液60mLを全供試株に手動噴霧器で噴霧接種し、接種後2日間多湿条件下(温度:25℃)に置いた。病原菌接種2日後のイネ生育ポットは、無作為に配置して温室内で管理した。
(4)防除効果の測定
接種2週間後に1株当たり病斑数を計測して下記式(2)を用いて防除価を算出した。発病は目視にて判断し、具体的には斑点病斑の発生を発病と判断した。なお、計測は全供試株ついて行った。下記式中、「処理区」とは各防除剤で処理した区画を、「無処理区」とは各防除剤で処理していない区画(展着剤加用蒸留水で処理した区画)を意味する。

防除価=100−{(処理区の病斑数/無処理区の病斑数)×100} 式(2)

試験結果を表9に示す。薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(薬剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを意味する。
Figure 2022003020
表9に示される通り、防除剤4で処理したイネは、展着剤で処理したものと比べて、1株あたりのイネいもち病由来の病斑の発生が抑えられることがわかった。このことから、本発明の防除剤は糸状菌病であるイネいもち病に対して高い防除効果を示すことがわかった。
試験例1−6 イネごま葉枯病に対する防除試験
試験例1−5に準じた方法で、イネごま葉枯病に対する前記防除剤4(200倍液)を用いた防除試験を行った。
なお、イネごま葉枯病菌の菌株(糸状菌、応用植物科学科保存株147菌株、本学より入手)を、ポテトデキストロース(PDA)培地(BD Difco(TM) ポテトデキストロース寒天培地、ベクトン・ディッキンソン社製)で培養した以外は、試験例1−5と同様に方法により培養・接種した。
病原菌接種2日後のイネ生育ポットを無作為に配置して温室内で管理し、接種2週間後に1株当たり病斑数を計測して上記式(2)を用いて防除価を算出した。発病は目視にて判断し、具体的には斑点病斑の発生を発病と判断した。なお、計測は全供試株について行った。
試験結果を表10に示す。
Figure 2022003020
表10に示される通り、防除剤4で処理したイネは、展着剤で処理したものと比べて、1株あたりのイネごま葉枯病由来の病斑の発生が抑えられることがわかった。このことから、本発明の防除剤は糸状菌病であるイネごま葉枯病に対して高い防除効果を示すことがわかった。
以上のように、本発明の防除剤は、糸状菌病と細菌病のいずれの病害に対して高い防除効果を示すことがわかった。また、本発明の防除剤で処理したイネはいずれも薬害が見られず、正常に生育することがわかった。
試験例2 キュウリの病害に対する防除試験及び生育試験
供試作物として、キュウリ(Cucumis sativus、品種:ゆうみ637)を用いた。
試験例2−1 キュウリうどんこ病に対する防除試験
(1)供試作物の育成及び発病
培養土(育苗培土 野菜・草花育苗用、タキイ種苗株式会社製)を、合成樹脂製ポット(直径12cm、高さ10cm)に高さ9cmまで充填し、そこにキュウリ種子を1ポットにつき1株となるように播種し、20〜30℃の温室内で育成管理した。なお、絶対寄生菌であるキュウリうどんこ病の発生は自然発生とした。
(2)防除剤処理
カリミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、蒸留水1000mLに5g溶解させてカリミョウバン溶液(200倍液)を調製し、さらに展着剤として、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル(商品名:アプローチBI(登録商標)、花王株式会社製)を、前記カリミョウバン溶液に対して1000倍希釈となるように加えて、防除剤5(200倍液)を調製した。また対照試験に用いる防除剤としては、化学農薬であるメパニピリム水和剤(商品名:フルピカフロアブル(登録商標)、クミアイ化学工業株式会社製)を蒸留水に3000倍で希釈して用いた。また、生物農薬であるタラロマイセス フラバス水和剤(商品名:タフパール(登録商標)、出光興産株式会社製)を蒸留水に2000倍で希釈して用いた。なお、薬剤処理をしない区画には、上記展着剤を蒸留水に1000倍で希釈したもの(展着剤加用蒸留水)を用いた。各処理ポットは、無作為に配置して温室内で管理した。
調査葉である上位展開葉に病斑が認められない時期(播種後10日目)に、上記防除剤5、メパニピリム水和剤、タラロマイセス フラバス水和剤、又は展着剤加用蒸留水を、処理量が1ポットあたり30mLとなるように手動噴霧器で散布処理した。
(3)防除効果の測定
上記防除剤散布処理9日後に、第2本葉について、キュウリうどんこ病による葉1枚あたり病斑数を目視にて計数し、上記式(2)にて防除価を算出した。なお、計測は各防除剤処理につき12ポット行った。
試験結果を表11に示す。なお、表中の病斑数及び防除価は、供試株(12株)の平均値である。また、薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(防除剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを意味する。
Figure 2022003020
表11に示される通り、防除剤5で処理したキュウリの第2本葉は、展着剤で処理したものと比べて、葉1枚あたりのキュウリうどんこ病由来の病斑の発生が抑えられることがわかった。このことから、本発明の防除剤は糸状菌病であるキュウリうどんこ病に対して高い防除効果を示すことがわかった。
試験例2−2 キュウリ斑点細菌病に対する防除試験
(1)供試作物の育成
培養土(育苗培土 野菜・草花育苗用、タキイ種苗株式会社製)を、合成樹脂製ポット(直径12cm、高さ10cm)に高さ9cmまで充填し、キュウリ種子を1ポットにつき1株となるように播種し、20〜30℃の温室内で育成管理した。
(2)防除剤処理
防除剤として、試験例1−5で調製した防除剤4を使用した。また対照試験に用いる防除剤としては、化学農薬である銅水和剤(商品名:クプロシールド、エス・ディー・エス バイオテック株式会社製)を蒸留水に1000倍で希釈して用いた。なお、薬剤処理をしない区画には、上記展着剤を蒸留水に1000倍で希釈したもの(展着剤加用蒸留水)を用いた。
第2本葉展開中のキュウリ(播種後14日目)に対し、上記防除剤4、銅水和剤、又は展着剤加用蒸留水を、処理量が1ポットあたり30mLとなるように手動噴霧器で散布処理した。なお、試験は各防除剤処理につき7ポット(7株)供し、3連制で行った。
(3)病原菌の接種
キュウリ斑点細菌病菌の菌株(細菌、MAFF730050菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、PPGA培地(試験例1−1と同様の組成)に植菌し、25℃で2日間静置培養して接種用細菌を得た。病原菌の濃度が10個cfu/mLとなるように調製し、前記防除剤処理の1日後に、調製した本病菌懸濁液50mLを全供試株に手動噴霧器で噴霧接種し、接種後24時間多湿条件下(温度:25℃)に置いた。接種24時間後、植物体のポットを温室に移して生育させた。
(4)防除効果の測定
発病調査は、接種から5日後に第1本葉及び第2本葉それぞれの葉1枚当たり斑点数を目視にて計測し、上記式(2)を用いて防除価を算出した。なお、計測は各処理につき全株について行った。
試験結果を表12及び13に示す。薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(防除剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを、「+」とあるのは、同期間に薬害作用(防除剤処理による生育抑制、葉身の黄化)が認められたことを意味する。
Figure 2022003020
Figure 2022003020
表12及び13に示される通り、防除剤4で処理した、第1本葉及び第2本葉のいずれにおいても、展着剤で処理したものに比べてキュウリ斑点細菌病由来の病斑の発生が抑えられることがわかった。このことから、本発明の防除剤は細菌病であるキュウリ斑点細菌病に対して高い防除効果を示すことがわかった。
さらに、キュウリ斑点細菌病に対して既に防除効果が知られている銅水和剤に比べて、防除剤4はより高い防除効果を示すことがわかった。また、銅水和剤で処理したキュウリの本葉は葉が黄化して生育抑制が認められるのに対し、防除剤4で処理したキュウリの本葉はそのような生育抑制が見られなかった。以上の結果から、本発明の防除剤は幼苗期での防除のためにも効果的に使用することができることがわかった。
試験例2−3 防除剤散布処理がキュウリ葉色に及ぼす影響
試験例2−2の防除試験に供したキュウリ第2本葉の葉色を「FHK葉色カラースケール」(FHK富士平工業株式会社製)を用いて調査した。なお、FHK葉色カラースケールは葉色指数の数値が小さいほど黄緑色に近く、数値が大きいほど深緑色に近い。
試験結果を表14に示す。なお、表中の葉色指数は、第2本葉20〜21枚の葉色指数の平均値である。
Figure 2022003020
表14からわかるように、防除剤4で処理したキュウリの第2本葉は、銅水和剤や展着剤のみを処理したものに比べて、葉色指数が大きく、深緑色に近いことがわかった。
以上のように、本発明の防除剤は、糸状菌病と細菌病のいずれの病害に対して高い防除効果を示すことがわかった。また、本発明の防除剤で処理したキュウリはいずれも薬害が見られず、正常に生育することがわかった。
試験例3 コマツナ炭疽病に対する防除効果
(1)供試作物の育成
供試作物として、コマツナ(Brassica rapa var. perviridis、品種:いなむら)を用いた。
培養土(育苗培土 野菜・草花育苗用、タキイ種苗会社製)を、合成樹脂製ポット(直径9cm、高さ8cm)に高さ7cmまで充填し、コマツナ種子を1ポットにつき1株となるように播種し、20〜30℃の温室内で育成管理した。
(2)防除剤処理
防除剤として、試験例1−5で調製した防除剤4を使用した。また対照試験に用いる防除剤としては、化学農薬であるマンデストロビン水和剤(商品名:スクレアフロアブル(登録商標)、住友化学株式会社製)を蒸留水に2000倍で希釈して用いた。なお、薬剤処理をしない区画には、上記展着剤を蒸留水に1000倍で希釈したもの(展着剤加用蒸留水)を用いた。
播種後3週目のコマツナに対し、上記防除剤4、マンデストロビン水和剤及び展着剤加用蒸留水を、処理量が1ポットあたり30mLとなるように手動噴霧器で散布処理した。なお、各防除剤処理につき10ポットを供し、3連制で行った。
(3)病原菌の接種
コマツナ炭疽病菌の菌株(糸状菌、MAFF305635菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を、PDA培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)に植菌し、25℃で10日間培養した。病原菌の濃度が10分生子/mLとなるように調製し、前記防除剤の処理1日後に、調製した本病菌分生子の懸濁液50mLを全供試株に手動噴霧器で噴霧接種し、接種後2日間多湿条件下(温度:25℃)に置いた。接種2日後、植物体のポットを温室に移して生育させた。
(4)防除効果の測定
接種後5日目のコマツナの1株当たりの斑点数を目視にて計測し、上記式(2)を用いて防除価を算出した。なお、計測は各防除剤処理につき全ポットで行った。
試験結果を表15に示す。なお、表中の病斑数及び防除価は、供試株(30株)の平均値である。また、薬害調査は随時目視による観察によって行い、下記表中の薬害に対する評価で「−」とあるのは、防除剤処理後、防除効果測定時までの期間に薬害作用(防除剤処理による葉身の黄化及び生育抑制)を認めなかったことを意味する。
Figure 2022003020
表15に示される通り、防除剤4で処理したコマツナでは、展着剤のみを処理したものと比べて、病斑の発生数が抑えられることがわかった。このことから、本発明の防除剤は糸状菌病であるコマツナ炭疽病に対して防除効果を示すことがわかった。
以上のように、本発明の防除剤は、コマツナの病害に対して防除効果を示すことがわかった。また、本発明の防除剤で処理したコマツナはいずれも薬害が見られず、正常に生育することがわかった。
これらの結果から、ミョウバン化合物を有効成分として有する本発明の防除剤を処理することで、糸状菌病と細菌病のいずれの植物病害に対して高い防除効果を示すことがわかった。また、本発明の防除剤を処理しても植物体に薬害が認められず、さらに葉の色をより深い緑色に改質する効果を示すことがわかった。
試験例4 本発明の抗菌活性試験
試験例4−1 イネばか苗病菌及びイネいもち病菌の菌糸伸長に対する効果
供試培地としては、焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、PDA培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)に対して重量基準で1/200倍量となるように添加して作製したPDA培地(焼ミョウバン加用培地)、及び対照試験として焼ミョウバンを添加していないPDA培地(無処理培地)を用いた。
供試菌株は、イネばか苗病菌(糸状菌、MAFF306883菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;MAFF306892菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;MAFF306883菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;MAFF238531菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;MAFF235953菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;及び栃木農試菌株、栃木県農業試験場より入手)、イネいもち病菌(糸状菌、MAFF101229菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手;及び法政大菌株(応用植物科学科保存株140菌株;下記表において、「応植保存140菌株」と表す)、本学より入手)を用いた。これらの各供試菌株を用いてPDA平板培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)で培養コロニー周辺部の各供試菌株の含菌ディスク(直径5mm)を作製した。作製した各ディスクを前記焼ミョウバン加用培地及び無処理培地に置床し、25℃にて3日間培養後に各コロニーの直径を計測した。
試験結果を表16に示す。なお、下記表中のコロニーの直径は、5個のコロニーの平均値である。
Figure 2022003020
表16からわかるように、焼ミョウバンを添加したPDA培地では、無処理培地と比較して、各病原菌のコロニーの直径が小さいことがわかった。さらに、イネいもち病菌ではいずれの菌株においても、焼ミョウバンを添加した培地では生育できず、コロニーを形成しないことがわかった。
試験例4−2 病原菌の生育に対する効果
供試培地としては、焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、WA寒天培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)に対して重量基準で1/200倍量となるように添加して作製したWA培地(焼ミョウバン加用培地)、及び対照試験として焼ミョウバンを添加していないWA培地(無処理培地)を用いた。
イネいもち病菌の菌株(糸状菌、MAFF101229菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)、イチゴ萎黄病菌の菌株(糸状菌、栃木農試菌株)、栃木県農業試験場より入手)、イネばか苗病菌の菌株(糸状菌、MAFF306883菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)、及びムギ類の赤かび病菌の菌株(糸状菌、法政大菌株(応用植物科学科保存株)、本学より入手)について、上記試験例4−1と同様の方法で直径5mmの供試菌株含菌ディスクを作製し、各ディスクを焼ミョウバン加用培地及び無処理培地に置床し、25℃で4日間培養して菌糸の生育状況等を光学顕微鏡(商品名:BX51、オリンパス株式会社製、倍率:100倍)を用いて観察した。なお、菌糸先端の状態は、下記評価基準によって判断した。

−評価基準
レベル0:無処理培地での菌糸先端の状態
レベル1:レベル0とレベル3の間で、レベル0に近い状態
レベル2:レベル0とレベル3の間で、レベル3に近い状態
レベル3:焼ミョウバン加用培地での麦類赤かび病菌の菌糸先端の状態

試験結果を図1〜4に示す。
(イネいもち病菌、MAFF101229菌株)
図1(b)で示すように、無処理培地で培養したイネいもち病菌は、菌糸先端は分岐せず、正常に伸長した。さらに図2(b)で示すように、付着器の形成も確認された。このように、焼きミョウバンを添加しない場合、病菌の生育に異常は見られなかった。
これに対し焼ミョウバン加用培地で培養した場合、図1(a)で示すように菌糸の生育が抑制され、菌糸先端にレベル2の樹枝状異常分岐が認められた。さらに図2(a)で示すように、付着器の形成が認められなかった。このように、焼きミョウバンをイネいもち病菌に適用することで、病菌の生育が抑制された。
(イチゴ萎黄病菌、栃木農試菌株)
図3(b)で示すように、無処理培地で培養したイチゴ萎黄病菌は、菌糸先端は分岐せず、正常に伸長した。これに対し、焼ミョウバン加用培地で培養した場合、図3(a)で示すように菌糸生育が抑制され、菌糸先端にレベル2の樹枝状異常分岐が認められた。
(イネばか苗病菌、MAFF306883菌株)
図4(b)で示すように、無処理培地で培養したイネばか苗病菌は、菌糸先端は分岐せず、正常に伸長した。これに対し、焼ミョウバン加用培地で培養した場合、図4(a)で示すように菌糸生育が抑制され、菌糸先端にレベル1の樹枝状異常分岐が認められた。また、コイリング現象も認められた。
(ムギ類の赤かび病菌、法政大菌株)
図5(b)で示すように、無処理培地で培養したムギ類の赤かび病菌は、菌糸先端は分岐せず、正常に伸長した。これに対し、焼ミョウバン加用培地で培養した場合、図5(a)で示すように菌糸生育が抑制され、菌糸先端にレベル3の樹枝状異常分岐が認められた。
以上のように、ミョウバン化合物を添加した培地で各病原菌を培養することで、各病原菌の生育が抑制され、さらに器官形成に異常を示すことがわかった。
試験例4−3 ディスク拡散法試験によるキュウリ斑点細菌病菌に対する抗菌活性測定
キュウリ斑点細菌病菌の菌株(細菌、MAFF730050菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)をPPGA培地(試験例1−1と同様の組成)に植菌し、25℃で2日間静置培養し、滅菌水に懸濁してマクファーランド濁度が0.5の菌懸濁液を調製した。供試菌の接種は、滅菌綿棒に供試菌懸濁液を染み込ませ、PPGA培地に塗布培養した。
焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、超純水1000mLに5g溶解させて焼ミョウバン溶液(200倍液)を作製し、さらに焼ミョウバン溶液(200倍液)を、超純水を用いて段階希釈した焼ミョウバン溶液(400〜3200倍液)を調製した。対照試験としては、超純水を用いた。その後、直径10mmのペーパーディスク(No.6濾紙(東洋濾紙株式会社製)をコルクボーラーにて直径10mmに打ち抜いたもの)を各溶液に浸漬し、アルミホイル上で風乾した。供試溶液を染み込ませたペーパーディスクを本病菌培養PPGA培地に等間隔に置床(3ディスク/ペトリ皿)した。25℃で3日間静置培養した後に、阻止円の形成を目視にて観察した。
試験結果を表17に示す。なお、下記表中「+」とあるのは、供試ディスクのうち少なくとも1つについて阻止円形成がみとめられたことを、「−」とあるのは、いずれの供試ディスクにおいても阻止円形成が認められなかったことを意味する。また、表中の数値(n/供試ディスク数)は、供試ディスク数あたりの阻止円形成が認められたディスク数を示す。
Figure 2022003020
表17からわかるように、焼ミョウバン溶液(200倍液、400倍液、800倍液)に浸漬したペーパーディスクでは、阻止円の形成が認められた。
試験例4−4 キュウリ斑点細菌病菌のコロニー形成
試験例4−3に準じて、キュウリ斑点細菌病菌の菌株(細菌、MAFF730050菌株、農研機構 農業生物資源ジーンバンクより入手)を培養し、菌懸濁液を調製した。供試培地は、焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム、富士フイルム和光純薬株式会社製)を、PPGA培地(試験例1−1と同様の組成)に対して重量基準で1/200倍量から1/3200倍量となるように添加し、各焼ミョウバン加用PPGA培地を作製した。その後、本病菌懸濁液を各培地上に均一に塗布し、25℃で3日間静置培養し、コロニー形成状況を観察した。
試験結果を表18に示す。なお、下記表中「+」とあるのは、コロニー形成がみとめられたことを、「−」とあるのは、コロニー形成が認められなかったことを意味する。
Figure 2022003020
表18からわかるように、焼ミョウバンを1/200倍、及び1/400倍となるように加えた焼ミョウバン加用PPGA培地では、キュウリ斑点細菌病菌のコロニー形成が見られないことがわかった。
これらのことから、ミョウバン化合物を有効成分として有する本発明の抗菌剤は、糸状菌及び細菌の両者に対して、高い抗菌活性を有することがわかった。
よって本発明の防除剤は、処理された植物体に薬害を生じさせずに、むしろ植物体の健康な成長を維持しつつ、植物病害を効果的に防除することができる。また、本発明の抗菌剤は、植物病害の原因となる病原菌に対して高い抗菌活性を有する。さらに本発明の防除剤及び抗菌剤の有効成分であるミョウバン化合物を使用することにより、得られる防除剤又は抗菌剤は人体にとって安全であり、さらに環境汚染のリスクも抑えることができる。

Claims (14)

  1. ミョウバン化合物を有効成分とする植物病害防除剤。
  2. 前記植物が、穀類及び野菜類からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上である、請求項1に記載の植物病害防除剤。
  3. 前記病害が、イネ褐条病、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネばか苗病、イネいもち病、イネごま葉枯病、キュウリうどんこ病、キュウリ斑点細菌病、コマツナ炭疽病、イチゴ萎黄病、及びムギ類の赤かび病からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の植物病害防除剤。
  4. 前記ミョウバン化合物が下記一般式(1)で表されるミョウバン化合物である、請求項1〜3のいずれか1項記載の植物病害防除剤。

    (M13(SO42・nH2O)m 一般式(1)

    (一般式(1)中、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンであり、M3はアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン及びイリジウムイオンからなる群より選ばれる金属イオンである。nは0、若しくは1〜24の整数であり、mは1又は2である。)
  5. 前記ミョウバン化合物が、硫酸カリウムアルミニウム・十二水和物(KAl(SO42・12H2O)又はその無水物(KAl(SO42)である、請求項1〜4のいずれか1項記載の植物病害防除剤。
  6. ミョウバン化合物を有効成分とする抗菌剤。
  7. 前記抗菌剤が、穀類及び野菜類からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上を宿主植物とする病原菌に対する抗菌剤である、請求項6に記載の抗菌剤。
  8. 前記抗菌剤が、アシドボラックス(Acidovorax)属細菌、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、フザリウム(Fusarium)属菌、ピリクラリア(Pyricularia)属菌、コクリオボルス(Cochliobolus)属菌、ポドスフェラ(Podosphaera)属菌、及びコレトトリカム(Colletotrichum)属菌からなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上に対して抗菌効果を示すものである、請求項6又は7記載の抗菌剤。
  9. 前記ミョウバン化合物が、下記一般式(1)で表されるミョウバン化合物である、請求項6〜8のいずれか1項記載の抗菌剤。

    (M13(SO42・nH2O)m 一般式(1)

    (一般式(1)中、M1はナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン、チタニウムイオン、タリウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる陽イオンであり、M3はアルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、バナジウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、クロムイオン、ロジウムイオン及びイリジウムイオンからなる群より選ばれる金属イオンである。nは0、若しくは1〜24の整数であり、mは1又は2ある。)
  10. 前記ミョウバン化合物が、硫酸カリウムアルミニウム・十二水和物(KAl(SO42・12H2O)又はその無水物(KAl(SO42)である、請求項6〜9のいずれか1項記載の抗菌剤。
  11. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物病害防除剤、又は請求項6〜10のいずれか1項に記載の抗菌剤を用いて、植物の種子又は植物体を処理することを含む、植物病害の防除方法。
  12. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物病害防除剤、又は請求項6〜10のいずれか1項に記載の抗菌剤を用いて、植物の種子又は植物体を処理することを含む、植物の育成方法。
  13. 前記植物病害防除剤又は抗菌剤に植物の種子を浸種処理する工程を含む、請求項11又は12記載の方法。
  14. 前記植物病害防除剤又は抗菌剤を植物体に散布処理する工程を含む、請求項11又は12記載の方法。
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