JP2021516104A - 超音波ニューロモジュレーション技術 - Google Patents

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Abstract

本開示の主題は概して、組織にエネルギー(例えば、超音波エネルギー)を印加して、ニューロンと非神経細胞との間のシナプスの活動を変化させることを含む、組織のニューロモジュレーションのための技術に関する。一実施形態では、エネルギーは、所定の治療期間内でエネルギーを繰り返し印加することで持続的な効果を引き起こすように印加される。【選択図】図1

Description

本明細書に開示される主題は、ニューロモジュレーションに関し、より具体的には、エネルギー源から印加されるエネルギーを使用して生理学的反応を調節するための技術に関する。
ニューロモジュレーションは、さまざまな病態の治療に使用されている。例えば、慢性的な腰痛の治療として、脊髄に沿った様々な部位に電気刺激を与えることが行われている。このような治療は、特定の神経線維を活性化するために組織に印加される電気エネルギーを周期的に生成するインプラント型デバイスによって行われる。これにより、痛みの感覚が緩和され得る。脊髄刺激の場合、刺激用電極は一般に硬膜外腔に配置される。一方で、パルス発生器は例えば腹部または臀部のように電極からやや離れて配置され、導線を介して電極に接続され得る。他の例として、脳の特定の領域を刺激して運動障害を治療するために深部脳刺激が行われ得る。神経画像により、刺激位置への誘導が行われ得る。そのような中枢神経系の刺激は、一般に、局所神経または脳細胞機能を標的とし、電気パルスを送達し、標的神経またはその近くに配置される電極を介して実行され得る。
しかし、電極を標的神経またはその近くに配置することは困難である。例えば、そのような技術は、外科処置を通じて、エネルギー送達電極を配置することを伴い得る。さらに、ニューロモジュレーションで特定の組織を標的とするのは困難である。特定の標的神経またはその近くに配置された電極は、神経線維の活動電位をトリガすることによってニューロモジュレーションを仲介する。これにより、神経シナプスによる神経伝達物質の放出と隣の神経とのシナプス伝達が生じ得る。現状、インプラント電極は一度に多くの神経または軸索を刺激する。したがって、上記伝播は、想定よりも大きな、あるいは散漫な生理学的効果に帰結し得る。神経経路は複雑で、繋がり合っているため、より的を絞った調節効果が、より臨床的に有効となろう。
最初に請求された主題の範囲に見合った特定の実施形態を以下に要約する。これらの実施形態は、請求される主題の範囲を限定することを意図しておらず、むしろこれらの実施形態は、可能な実施形態の簡単な要約を提供することのみを意図している。実際、本発明は、以下に述べる実施形態と同様または異なることができる様々な形態を包含し得る。
一実施形態では、対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、コントローラとを備え、前記コントローラが、前記関心領域を空間的に選択し、前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの繰り返し印加を調整可能に制御することで、所定時間内で前記シナプスの、前記関心領域内に存在するサブセットを繰り返し優先的に活性化させ、前記エネルギーの繰り返し印加後に、1または複数の関心分子の持続的変化を生じさせるように構成される、調節システムが提供される。
別の実施形態では、対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、コントローラとを備え、前記コントローラが、前記関心領域を空間的に選択し、前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの印加を繰り返し制御することで、所定時間内で前記シナプスの、前記関心領域内に存在するサブセットを優先的に活性化させ、前記エネルギーの繰り返し印加後に、1または複数の関心分子の持続的変化を生じさせるように構成される、調節システムが提供される。
別の実施形態では、対象の糖尿病治療を行うシステムであって、内臓に、超音波用法を適用するように構成された超音波エネルギー印加装置と、前記超音波用法を適用するため、前記超音波エネルギー印加装置を制御するように適用されたコントローラとを備え、前記超音波用法が、前記超音波用法の時間枠内の個別の複数の時点で印加される、複数のエネルギー線量を含む、システムが提供される。
別の実施形態では、対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、コントローラとを備え、前記コントローラが、前記関心領域を空間的に選択し、前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの印加を繰り返し制御することで、前記関心領域に、低デューティ比エネルギー用法を適用するように構成され、前記低デューティ比エネルギー用法は、少なくとも4時間の調整可能オフ期間を開けた複数の電気刺激を含み、前記オフ期間は、前記コントローラが受信したフィードバックに少なくとも部分的に基づいて決定される、調節システムが提供される。
別の実施形態では、代謝障害を持つ対象を治療する方法であって、前記代謝障害を持つ前記対象の内臓に、超音波用法を適用することで、前記代謝障害を治療することを含み、前記超音波用法は、個別の複数の時点で印加される複数の超音波エネルギー線量を含む、方法が提供される。
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むと、よりよく理解されるであろう。図面全体を通して、同様の文字は同様の部分を表す。
本開示の実施形態に係るパルス発生器を使用するニューロモジュレーションシステムの概略図である。 本開示の実施形態に係るニューロモジュレーションシステムのブロック図である。 本開示の実施形態に係る、動作中の超音波エネルギー印加装置の概略図である。 本開示の実施形態による、脾臓の関心領域に焦点を合わせるための空間情報として使用され得る脾臓の超音波視覚化を示す。 本開示の実施形態による、肝臓の関心領域に焦点を合わせるための空間情報として使用され得る肝臓の超音波視覚化を示す。 本開示の実施形態に係るニューロモジュレーション技術のフロー図である。 体外装置として構成され、超音波トランスデューサを含むエネルギー印加装置の概略図である。 高強度集中超音波を印加するように構成されたエネルギー印加装置およびパルス発生器の概略図である。 図7のシステムと併せて使用され得るエネルギー印加装置の例を示す。 所望の生理学的効果を実現するための超音波エネルギー印加のための実験設定の概略図である。 超音波エネルギー印加の実験タイムラインである。 印加された超音波エネルギーパルスのパルス特性を示す。 ハイドロフォン測定設定を示す。 x−y平面における超音波圧力場の例を示す。 炎症および/または高血糖/高インスリン血症のモデルおよび超音波治療を生成するためのLPS注射の実験的ワークフローを示す。 広範におよぶ迷走神経刺激の概略図である。 器官に基づく、標的を定めた末梢ニューロモジュレーションの概略図である。 ラット脾臓への超音波エネルギー印加の実験タイムラインである。 超音波圧力MPaとして示される、ラット脾臓への異なる複数の印加超音波エネルギーレベルでの脾臓ノルエピネフリン、アセチルコリン、およびTNF−αを示す。 図16Bと同じ条件でのTNF−αの循環濃度を示す。 図16Bと同じ条件での脾臓IL−1α濃度を示す。 対照と比較した脾臓TNFα濃度の誘発された変化に対する応答時間を示す。 脾臓標的を空間的に選択するために超音波刺激の焦点を合わせるために使用されるラット脾臓の2D超音波画像を示す。 コリン作動性抗炎症経路活性化に対する刺激の効果の持続時間を測定するように設計された調査のタイムラインを示す。 保護的超音波治療後の脾臓TNF−αの濃度を示す。 脾臓超音波調節の結果としての活性化/リン酸化キナーゼの濃度を示す。 別の超音波刺激パラメータを使用した場合の例示的超音波バースト持続時間と、超音波刺激脾臓(LPS注入後)のノルエピネフリン(NE)、アセチルコリン(ACh)、および組織壊死因子アルファ(TNF−α)濃度への影響を示す。 別の超音波刺激パラメータを使用した場合の例示的超音波キャリア周波数と、超音波刺激脾臓(LPS注入後)のノルエピネフリン(NE)、アセチルコリン(ACh)、および組織壊死因子アルファ(TNF−α)濃度への影響を示す。 脾臓超音波調節の効果を、各種阻害剤存在下での脾臓TNF−αに対する標準電極またはインプラント型の迷走神経刺激(VNS)と比較したものを示す。 BTXまたは外科的迷走神経刺激の効果を伴うおよび伴わないLPS処理げっ歯類の超音波刺激後の(左)ノルエピネフリン(NE)および(右)TNF−αの脾臓濃度に対するαーブンガロトキシンの効果を示す。 心拍数に対するVNS(いくつかの刺激強度および周波数で)対脾臓超音波刺激(0.83MPaで)の効果を比較するデータを示す。 LPS誘発性高血糖の抑制に関する、既に観察されたVNSの副作用と、脾臓超音波刺激を使用した場合の副作用の欠如を裏付けるデータを示す。 超音波刺激を集中させるために使用されるラット肝臓の2D超音波画像である。 LPS誘発高血糖症に対する肝臓の超音波刺激の効果を示す。 インスリン感受性のいずれかに関連するいくつかの分子の(超音波刺激がない場合と比較した)相対濃度の測定および肝臓におけるインスリン介在性ならびに非インスリン依存性グルコース取り込みおよび代謝機能に関連する視床下部マーカーの変化を示す。 cFOS免疫組織化学画像(左)およびLPS対照および超音波刺激サンプル(右)における活性化ニューロンの数を示すデータを示す。 LPS対照(上)対超音波刺激サンプル(下)の脳幹におけるcFOS発現を示す、さらなる免疫組織化学画像を示す。 活性化マップ(オーバーSPGR、左)と脳アトラス(オーバーSPBR、右)との間の例示的なMRIオーバーレイを示す。 視床下部(PVN)の左右両方の脳室傍核におけるADCの増加のグラフを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環グルコースを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環トリグリセリドを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環グルカゴンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環インスリンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環レプチンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環ノルエピネフリンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部インスリン受容体基質1(IRS−1)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ホスホ−Aktを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部GLUT4を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ノルエピネフリンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部グルコースー6−リン酸を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部グルカゴン様ペプチド(GLP−1)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ガンマ−アミノ酪酸(GABA)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部脳由来神経栄養因子(BDNF)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部神経ペプチドY(NPY)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝IRS−1を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓のホスホ−Aktを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓グルコース輸送体2(GLUT2)を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝ノルエピネフリンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓のグルコース−6−リン酸を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓GLP−1を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓グルカゴンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓インスリンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵レプチンを示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓IRS−1を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓GLUT2を示す。 糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓ホスホ−Aktを示す。 Zuckerラットモデルにおける治療後の持続的効果を示す。
1または複数の具体的な実施形態を以下に説明する。これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の形態のすべての特徴が本明細書に記載されているわけではない。このような実際の実施の開発では、あらゆるエンジニアリングプロジェクトや設計プロジェクトと同様に、実施毎に異なり得るシステム関連およびビジネス関連の制約の遵守など、開発者固有の目標を達成するために、実施固有の多数の決定を行う必要があることが理解されたい。そのような開発努力は複雑で時間がかかる可能性があるが、それでも、本開示の利益を享受する当業者にとっては、設計、製造、および製造の日常業務の範囲内であることを理解されたい。
本明細書に示される例または図の表現は決して、それらで仕様される用語を制限、限定、または定義するものと見なされるべきではない。むしろ、これらの例または図の表現は、様々な特定の実施形態に関して記載されていると見なされるべきであり、あくまでも例示と見なされるべきである。当業者には、これらの例または図の表現とともに仕様される任意の用語が、一部の実施形態や明細書のその他箇所で使用されなかったとしてもそれら実施形態にも適用され、それら実施形態の全てが、当該1または複数の用語の範囲に含まれることが理解されよう。そのような非限定的な例および図の表現を指定する言語には、「たとえば」、「たとえば」、「など」、「たとえば」、「含む」、および「一(ある)実施形態における」が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書によると、標的関心領域の直接的かつ集中的な刺激に基づくニューロモジュレーションの技術が説明される。標的関心領域は、非神経細胞または流体とシナプスを形成する複数の種類の軸索終末を有する体内の任意の組織または構造であってもよい。一例では、関心領域は、肝臓、膵臓、または胃腸組織などの器官または構造内にあってもよい。関心領域のニューロモジュレーションは、標的関心領域のみにエネルギーを限定的かつ非切除的に印加可能にし、関心領域外にエネルギーが印加されないようにする。エネルギー印加は、例えば、関心領域を含む器官内、ならびに関心領域を含まない他の器官および構造内での関心領域外で効果を生じ得る。しかしながら、関心領域外での当該効果は、関心領域外の領域に直接エネルギーを印加することなく実現され得る。したがって、局所的エネルギー印加により全身効果が実現され得る。本明細書に記載のように、全身効果はさらに、断続的および非連続的なエネルギー印加でも実現され得る。さらに、エネルギー印加後の数時間および数日間、効果が持続し得る。
特定の実施形態では、本明細書に記載のニューロモジュレーションは、慢性障害の進行度合いを変えるための、さらに特定の実施形態では、慢性障害の影響を反転させ得る治療に使用され得る。一実施形態では、疾患と診断された患者が、ニューロモジュレーション治療を受け得る。治療後、患者は健康な患者と見做される臨床水準に達し得る。例えば、糖尿病の患者は、正常範囲外の血中グルコースおよび/またはインスリン値を示し得る。治療後、患者の血中グルコースやインスリン値は正常範囲内になり得る。別の例において、異常な免疫応答性を有する患者が治療後、免疫細胞集団の変化および/またはリンパドレナージの変化を含む、正常な免疫応答特性への回復を成し得る。
標的関心領域に対するニューロモジュレーションの治療結果は、治療期間を超えて持続し得る。ニューロモジュレーションは、患者の病状を変化させて、長期的効果を実現し得る。例えば、定められた期間に亘り標的関心領域へのエネルギー印加を繰り返す治療により、疾患症状の持続的な改善が実現され得る。一実施形態では、改善は、未治療の患者または従来の治療法で治療された患者にもたらされる。所定の期間は、治療が行われる数時間または数日の期間であり得る。さらに、治療は、所定の期間内の1または複数の別個のエネルギー印加イベントを含み得る。
本明細書に記載の技術は、グルコース代謝および関連する異常の治療に適用され得、病状の進行を変え得る。一実施形態では、1または複数の関心領域での肝臓調節を利用して、糖尿病(すなわち、1型または2型糖尿病)、高血糖、敗血症、外傷、感染、糖尿病関連認知症、肥満、或いは他の摂食または代謝異常を治療することができる。一例において、ニューロモジュレーションは、減量促進、食欲制御、悪液質治療、または食欲増進に利用され得る。例えば、膵臓への直接刺激は食欲増進を実現し得、肝臓への直接刺激はNPY減少を引き起こし、それにより満腹信号促進を実現し得る。本明細書で提供されるニューロモジュレーションは、治療後数日、数週間、および/または数か月持続する治療効果を実現するように、治療前の状態から糖調節設定値を変更し得る。一例では、糖尿病患者に対するニューロモジュレーションは、治療期間(例えば、数時間または数日)中のベースライン(ニューロモジュレーション前)と比較して循環グルコースの初期減少をもたらし得る。治療が終了すると、循環グルコースは治療後に増加し得る。しかし、増加は治療前の設定値よりも大幅に低い新しい設定値までに抑えられ得る。新しい設定値は、臨床的に有効と見做されるレベルであり得る。
本明細書に記載のように、本明細書に記載のニューロモジュレーション治療は、所定の治療時間にわたって同じ関心領域へ、繰り返し別個のエネルギー印加を実行することを含み得る。例えば、ニューロモジュレーションは、関心領域(例えば、門脈)に対して1日1回であってもよい。この1日1回の治療は、2日以上連続して、予め設定された調節パラメータに従ってもよい。
本技術は、エネルギー源によるエネルギー印加を通じた、組織の軸索終末におけるシナプスの調節に関する。例えば、これらは、シナプス前軸索終末とシナプス後非神経細胞との間に形成された軸索細胞外シナプスが含まれ得る。さらに、特定の開示された実施形態は、軸索細胞外シナプスに関して議論されるが、軸索終末は、軸索分泌、軸索シナプス、軸索または軸索細胞外シナプスを形成し得、さらに/あるいは、これら種類のシナプスが本明細書に記載のとおりに選択的に調節されると考えられることを理解されたい。さらに、特定の軸索終末は、調節の結果として同様に神経伝達物質を放出し得る間質液または体液での終末でもあり得る。開示されたシナプスは、シナプスにおける活動、例えば、シナプス前軸索終末からの神経伝達物質の放出が変更されるように調節されてもよい。このように変化した活動は、局所効果および/または非局所(例えば、全身)効果をもたらし得る。本技術は、特定の軸索終末を含む組織の部分にエネルギーを集中させて可能である。これにより目標の軸索終末を優先的に直接活性化して、所望の結果を実現する。このようにして、特定の実施形態では、同じ器官または組織構造内の関心領域外の軸索終末を活性化せずに、標的領域内の標的軸索終末が活性化される。器官および組織構造には、さまざまなタイプのシナプス後非神経細胞とシナプスを形成するさまざまなタイプの軸索終末が含まれ得る。したがって、活性化により目的とする生理学的効果が得られる軸索終末を含む関心領域を選択してもよい。したがって、調節は、シナプス前ニューロン型、シナプス後細胞型、またはその両方に基づいて、特定のタイプの軸索終末を標的とすることができる。
例えば、一実施形態では、軸索終末のタイプは、常在(すなわち、組織常在または非循環)肝臓、膵臓、または胃腸組織細胞と軸索細胞外シナプスを形成する軸索終末であり得る。すなわち、軸索細胞外シナプスは、軸索終末と非神経細胞、間質または体液との間の接合部で形成される。したがって、エネルギー印加は、関心領域における代謝機能の調節をもたらす。しかしながら、軸索終末型の集団と、軸索細胞外シナプスのシナプス前ニューロン型およびシナプス後細胞(例えば、免疫細胞、リンパ球、粘膜細胞、筋細胞など)の特徴に基づいて、実現される対象生理学的効果が異なり得る。したがって、対象の組織の関心領域にエネルギーを印加すると、関心領域外の非対象の軸索終末(および関連シナプス)に影響を与えずに、関心領域内の軸索終末とそれに関連する軸索細胞外シナプスが活性化され得る。しかしながら、調節は全身的な影響をもたらす可能性があるため、関心領域内の軸索終末の活性化により、関心領域外の非標的軸索終末にも特定の全身変化が生じ得る。本明細書に記載のとおり、優先的活性化または直接活性化は、関心領域内で、エネルギーが直接印加される細胞または構造を指し得る。具体的には、本明細書で提供されるようなエネルギー印加を直接受けるのは、軸索終末、軸索細胞外シナプス、および/またはシナプス後非神経細胞、あるいは間質または体液である。
人間の神経系は、脳と脊髄のような中心と、体のさまざまな神経の末梢に存在する、神経細胞(ニューロン)の複雑なネットワークである。ニューロンは細胞体、樹状突起、軸索を有する。神経は、体の特定の部分に作用するニューロンの集団である。神経は、数百から数十万のニューロンを含み得る。多くの神経は求心性および遠心性の両方のニューロンを含む。求心性ニューロンは中枢神経系に信号を運び、遠心性ニューロンは末梢に信号を運ぶ。1つの場所にある神経細胞体の集団は、神経節と呼ばれている。神経内で生成された電気信号は(たとえば、内因性または外部から加えられる刺激を介して)、ニューロンと神経を介して伝達される。ニューロンは、受容細胞に隣接するシナプス(接続)で神経伝達物質を放出して、電気信号の持続と調節を可能にする。末梢では、神経節でシナプス伝達が発生することが多い。
ニューロンの電気信号は活動電位と呼ばれている。細胞膜間電位が特定の閾値を超えると、活動電位が発生する。そして活動電位はニューロンの長さ全体に伝搬する。神経の活動電位は、その内部の個々のニューロンの活動電位の合計であり、複雑である。ニューロンの軸索終末と受容細胞の間の接合部はシナプスと呼ばれる。活動電位は、ニューロンの軸索を下ってその軸索終末、すなわち、神経線維のシナプス前終末またはシナプス終末を形成する軸索神経の枝の遠位終端まで移動する。活動電位の電気的刺激は、神経伝達物質を含む小胞の、シナプス前軸索終末のシナプス前膜への移動を生じる。そして最終的に、シナプス間隙(例えば、シナプス前細胞とシナプス後細胞の間に形成される空間)または軸索細胞外への神経伝達物質の放出が生じる。シナプス終末に到達して、活動電位の電気信号を神経伝達物質放出の化学信号に変換するシナプスを化学シナプスと呼ぶ。化学シナプスは、電気シナプスに対比される。電気シナプスは、シナプス前軸索終末に流入するイオン電流が2つの細胞膜の障壁を越えてシナプス後細胞に入るものである。
活動電位の生理学的効果は、細胞膜を通じたイオンの動きによって媒介される。ニューロンは、Na、K、Clなどのイオンが神経膜を通過するのを容易にするイオンポンプを介して、静止膜電位を積極的に維持する。異なるタイプのニューロンにより、異なる静止電位(例えば、−75mVから−55mV)が維持され得る。活動電位は、イオンの流入、すなわち、膜の電位の一時的な上昇(例えば、30から60mVの範囲の上昇)に関連する膜電位の大きな変動を生じる電荷の動きによって生成される。個々のニューロンの活動電位は、シナプス前(例えば、上流)ニューロンからの神経伝達物質の放出に応じて生じ、シナプス後細胞での受容体結合と、イオンの流入および膜脱分極につながる一連の事象を引き起こす。これにより、神経を通じて伝播される活動電位が生じる。
シナプスは2つのニューロン間の接合部に位置し得、これにより活動電位を神経線維に伝搬可能となる。しかしながら、軸索終末はまた、ニューロンと非神経細胞の間の接合部でシナプスを形成するか、または間質液または体液で終端することもある。シナプスの種類の例として、神経免疫接合部の免疫細胞とのシナプス、器官内の常駐感覚細胞とのシナプス、または腺細胞とのシナプスが挙げられる。シナプス間隙への神経伝達物質の放出およびシナプス後細胞のシナプス後膜の受容体への結合は下流効果をもたらす。この効果は、シナプス前ニューロンの性質および放出される特定の神経伝達物質、ならびにシナプス後細胞の性質(例えば、シナプス後細胞の利用可能な受容体の種類)に依存する。さらに、活動電位は興奮性または抑制性であり得る。興奮性シナプス後活動電位は、それに応じてシナプス後ニューロンが活動電位を発射または放出する可能性の高いシナプス後電位である。一方、抑制性シナプス後活動電位は、それに応じてシナプス後ニューロンが活動電位を発射または放出する可能性の低い高いシナプス後電位である。さらに、いくつかのニューロンが連携して神経伝達物質を協調して放出し、下流の活動電位を誘発したり、下流の活動電位を阻害したりする可能性がある。
ニューロモジュレーションは、外部エネルギー源からのエネルギーを神経系の特定の領域に印加して、神経または神経機能を活性化または増加させ、さらに/あるいは神経または神経機能を遮断または減少させる技術である。特定のニューロモジュレーション技術では、1または複数の電極が標的神経またはその近くに適用され、エネルギーの印加が神経を通じて(たとえば活動電位として)伝達され、エネルギー印加部位の下流の領域で生理学的反応を引き起こすものである。ただし、神経系は複雑であるため、特定のエネルギー印加部位の生理学的反応の範囲と最終的なエンドポイントを予測することは困難である。
中枢神経系(すなわち、脳組織)の超音波調節に関する手法により、神経活動の調節が実現されることは確認されているが、末梢神経の変節に関する試みは遅れをとっている。たとえば、中枢神経系(CNS)の超音波調節は、シナプス構造を大量に含む脳の皮質領域の刺激を伴い得る。一方、末梢神経に対する超音波刺激の試みの対象となるのは、シナプス構造が少ない、または存在しない神経幹である。
本技術において、末梢神経の調節は、血中グルコースレベルに影響を与えるために、さらに/あるいはグルコース調節経路および/またはインスリン産生経路に影響を与えるため、1または複数の末梢軸索終末を標的とすることを含む。現在の技術では、反復エネルギーパルスが軸索終末を含む対象の標的内部組織に印加される。軸索終末は軸索細胞外シナプスと、例えば神経細胞と非神経細胞の間のシナプスでの他の細胞型、間質液、または体液との神経接合部を含む。したがって、シナプスへのエネルギー印加は、シナプス前軸索終末の活性化および/またはシナプス後細胞での活性化を生じ、目的の生理学的効果が得られる。一例において、軸索終末の刺激は、神経伝達物質/神経ペプチドを放出、または分泌細胞または他の細胞などの隣接する非神経細胞の近くで改変された神経伝達物質放出を引き起こす。これにより、細胞活性が調節される。さらに、そのような調節を介して、他の組織構造または器官が直接刺激されることなく、調節され得る。一実施形態では、器官の比較的小さな領域(例えば、器官全体の体積の25%未満)への直接エネルギー印加は、脳の異なる様々な領域(例えば、視床下部)に突出する求心性突出ニューロンにおける活動電位の刺激をもたらし得る。ただしこれは、シナプスを大量に含む領域への直接脳刺激でなくても実現され得る。直接脳刺激は、他の経路の望ましくない活性化をもたらし、所望の生理学的効果を妨害または阻害する可能性がある。さらに、直接脳刺激は、侵襲的な処置を伴い得る。したがって、本技術は、直接的な脳刺激または電気的末梢神経刺激よりも、標的を絞ったより特定的な方法で、脳活動または器官内の活動のいずれかの細かい活性化を可能にする。
本技術の利点として、組織の関心領域での局所調節が挙げられる。即ち、1または複数の関心分子の濃度を変化させる効果を達成する。さらに、上述の効果を達成するため、局所調節は、組織の比較的小さな領域(例えば、組織全体の体積の25%未満)の直接的な活性化を含み得る。このため、所望の生理学的効果を達成するため、印加される総エネルギーは比較的小さい。特定の実施形態では、印加されるエネルギーは、非侵襲的な体外エネルギー源(例えば、超音波エネルギー源、機械的振動器)からのものであり得る。たとえば、集中型エネルギープローブは、対象の皮膚を通じて、内部組織の関心領域に集中的にエネルギーを印加してもよい。そのような実施形態は、侵襲的手順なしに、その他種類の処置または治療に関連し得る副作用なしに、所望の生理学的効果を実現する。
本明細書は、ニューロモジュレーションの技術について記載する。これは、エネルギー源(例えば、外部または体外エネルギー源)からのエネルギーが、軸索終末に印加されるものである。これにより、例えば軸索終末のようなエネルギー印加焦点部位で、神経伝達物質放出が活動電位ではなく、エネルギー印加によって生じるようにする。すなわち、軸索終末への直接エネルギー印加が、活動電位の代わりに作用して、非神経細胞との神経接合部(すなわち、シナプス)への神経伝達物質の放出を促進する。軸索終末への直接エネルギー印加は、シナプス内の軸索終末(例えば、軸索細胞外シナプス)から隣接する非神経細胞の近くへの神経伝達物質放出の変化をさらに生じる。一実施形態では、エネルギー源は、超音波エネルギー源または機械的振動器などの体外エネルギー源である。このようにして、非侵襲的で標的を定めたニューロモジュレーションは、下流部位を活性化する活動電位を生じるような上流部位での調節を介してではなく、エネルギー集中部位で直接実現され得る。
特定の実施形態では、標的組織は、電気刺激技術では到達しにくい内部組織または器官である。考えられる標的組織として、胃腸(GI)組織(胃、腸)、筋肉組織(心臓、平滑および骨格)、上皮組織(表皮、器官/GIライニング)、結合組織、腺組織(外分泌/内分泌)などが挙げられる。一例において、神経筋接合部でのエネルギーの集中的印加は、上流活動電位なしで神経筋接合部での神経伝達物質放出を促進する。考えられる調節標的としては、インスリン放出の制御に関係する膵臓の部位またはグルコース調節に関係する肝臓の部位が挙げられ得る。
標的関心領域へのニューロモジュレーションは、対象の1または複数の生理学的経路を遮断、減少、または増強する生理学的プロセスの変化を生じることで、所望の生理学的効果を実現し得る。さらに、局所エネルギー印加は全身性変化をもたらす可能性があるため、さまざまな生理学的経路がさまざまな方法で体内のさまざまな場所で変更され得る。これにより、対象内での生理学的変化の全体的な特徴的特性変化と、特定の対象についての標的を定めたニューロモジュレーションの特徴が変化する。これらの変更は複雑である。それでも、本ニューロモジュレーション技術は、標的関心領域(複数可)へのエネルギー印加またはその他の介入なくしては実現不能であり得る、ニューロモジュレーションの結果としての、1または複数の、標的を定めた測定可能な生理学的効果を処置対象にもたらす。さらに、他の種類の介入(例えば、薬物治療)は、ニューロモジュレーションによって引き起こされる生理学的変化のサブセットをもたらし得る。しかし特定の実施形態では、ニューロモジュレーションの結果として誘発される生理学的効果の特性は、標的関心領域(複数可)でのニューロモジュレーション(および関連する調節パラメータ)に特有であり得、患者ごとに異なり得る。
本明細書で論じるニューロモジュレーション技術を使用して、関心分子の濃度の変化(例えば、増加、減少)および/または関心分子の特性の変化という生理学的効果が実現され得る。つまり、1または複数の組織(例えば第1組織、第2組織…)内の1または複数の関心領域(例えば第1関心領域、第2関心領域…)に対するエネルギー印加の結果としての1または複数の関心分子(たとえば、第1関心分子、第2関心分子…)の選択的調節は、分子の濃度(循環、組織)または特徴(共有結合修飾)の変調または影響を示し得る。関心分子の調節には、エネルギー印加そのものによる、または分子のイオンチャンネルへの直接影響の結果としての、タンパク質の発現、分泌、転座などの分子特徴変化ならびに直接的な活性の変化が含まれ得る。関心分子の調節はまた、ニューロモジュレーションの結果として予期される濃度の変化または変動が生じないように、分子の所望の濃度を維持することを示し得る。関心分子の調節は、酵素媒介共有結合修飾(リン酸化、アセチル化、リボシル化などの変化)などの分子特性の変化を生じることを示し得る。すなわち、関心分子の選択的調節は、分子濃度および/または分子特性を示し得ることを理解されたい。関心分子は、炭水化物(単糖類、多糖類)、脂質、核酸(DNA、RNA)、またはタンパク質の1または複数などの生体分子であってもよい。特定の実施形態では、関心分子は、ホルモン(アミンホルモン、ペプチドホルモン、またはステロイドホルモン)などの信号伝達分子であり得る。
開示のニューロモジュレーション技術は、ニューロモジュレーションシステムと共に使用され得る。図1は、エネルギー印加により、神経伝達物質の放出、および/またはシナプスの構成要素(例えば、シナプス前細胞、シナプス後細胞)を活性化するニューロモジュレーションのためのシステム10の概略図である。図示のシステムは、エネルギー印加装置12(例えば、超音波トランスデューサ)に結合されたパルス発生器14を含む。エネルギー印加装置12は、使用時に、例えば導線または無線接続を介して、使用時に対象の内部組織または器官の関心領域に送られるエネルギーパルスを受信するように構成される。これにより、所望の生理学的効果が実現される。特定の実施形態では、パルス発生器14および/またはエネルギー印加装置12は、生体適合性部位(例えば、腹部)に埋め込まれてもよく、1または複数のリード線は、エネルギー印加装置12およびパルス発生器14を内部結合する。例えば、エネルギー印加装置12は、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサなどのMEMSトランスデューサであり得る。
特定の実施形態では、エネルギー印加装置12および/またはパルス発生器14は、例えば、コントローラ16と無線通信し得、それによりパルス発生器14に命令が提供され得る。他の実施形態では、パルス発生器14は、体外装置であってもよく、例えば、対象の体外の位置から経皮的または非侵襲的にエネルギーを印加するように動作してもよく、特定の実施形態では、コントローラ16内に統合されてもよい。パルス発生器14が体外にある実施形態では、エネルギー印加装置12は、介護者によって操作され、エネルギーパルスが所望の内部組織に経皮的に送達されるように、対象の皮膚上に接触、非接触に配置され得る。エネルギーパルスを所望の部位に印加するように配置されると、システム10は、ニューロモジュレーションを開始して、所望の生理学的効果または臨床的効果を実現し得る。
特定の実施形態では、システム10は、コントローラ16に結合され、調節による所望の生理学的効果が実現されたかどうかを示す特性を評価する評価装置20を含み得る。一実施形態では、所望の生理学的効果は局所的であり得る。例えば、調節は、組織構造の変化、特定の分子の濃度の局所的な変化、組織の変位、流体の動きの増加などの局所的な組織または機能の変化を生じ得る。
調節は全身的(非局所的)な変化を生じ得る。所望の生理学的効果は、循環分子の濃度の変化またはエネルギーが直接印加された関心領域を含まない組織の特性の変化に関し得る。一例では、変位は、所望の調節の代理測定であり得、測定される変異が予想変位値未満であれば、予想変位値が得られるまで、調節パラメータが修正され得る。したがって、評価装置20は、いくつかの実施形態において濃度変化を評価するように構成され得る。いくつかの実施形態では、評価装置20は、器官のサイズおよび/または位置の変化を評価するように構成された撮像装置であってもよい。システム10の図示された要素は別々に示されているが、要素のいくつかまたはすべてが互いに組み合わされてもよいことが理解されよう。さらに、要素の一部またはすべては、互いに有線または無線通信することができる。
評価に基づいて、コントローラ16の調節パラメータを変更することができる。例えば、所望の調節が、定義された時間枠内(例えば、エネルギー印加手順の開始後5分、30分)または相対的な濃度(1または複数のの分子の循環濃度または組織濃度)、または処理開始時のベースラインに対する変化に関連する場合、パルス周波数またはその他パラメータ等の調節パラメータの変化が望ましく成り得る。当該パラメータは、操作者により、または自動フィードバックループを介してコントローラ16に提供され得る。これにより、パルス生成器14のエネルギー印加パラメータまたは調節パラメータが定義または調整される。
本明細書に記載のシステム10は、様々な調節パラメータに従ってエネルギーパルスを提供することができる。例えば、調節パラメータは、連続的なものから断続的なものまで、様々な刺激時間パターンを含み得る。断続的な刺激の場合、シグナルオン時間に、一定の周波数で一定期間エネルギーが供給される。シグナルオン時間の後には、エネルギーが供給されない期間が続く。これを、シグナルオフ時間と称する。調節パラメータはまた、刺激印加の周波数および持続時間を含み得る。印加頻度は、連続的であり得るか、または、例えば、1日または1週間以内などの様々な期間で送達が実行され得る。治療期間は、数分から数時間までを含むがこれらに限定されない様々な期間にわたって持続し得る。特定の実施形態では、指定された刺激パターンによる治療期間は、1時間で、例えば、72時間の間隔を空けて繰り返される。特定の実施形態では、治療はより高頻度で、例えば3時間ごとに、より短い持続時間、例えば30分間実行されてもよい。治療期間および周波数などの調節パラメータにしたがって、エネルギー印加は、所望の効果を得るために調節可能に制御され得る。
図2は、システム10の特定の構成要素のブロック図である。本明細書に記載のように、ニューロモジュレーションのためのシステム10は、対象の組織に印加される複数のエネルギーパルスを生成するように利用されるパルス発生器14を備え得る。パルス発生器14は、個別に設けられてもよく、またはコントローラ16などの外部装置と一体化されてもよい。コントローラ16は、装置を制御するためのプロセッサ30を含む。装置の様々な構成要素を制御するためにプロセッサ30により実行されるソフトウェアコードまたは命令が、コントローラ16のメモリ32に格納される。コントローラ16および/またはパルス発生器14は、1または複数のリード線33を介して、または無線で、エネルギー印加装置12に接続され得る。
コントローラ16はまた、臨床医が選択入力または変調パラメータを調節プログラムに提供することを可能にするように利用される、入/出力回路34およびディスプレイ36を有するユーザインターフェースを含む。各調節プログラムは、パルス振幅、パルス幅、パルス周波数などを含む調節パラメータの1または複数のセットを含み得る。パルス発生器14は、コントローラデバイス16からの制御信号に応じてその内部パラメータを変更し、リード線33を介してエネルギー印加装置12が利用される対象に送信されるエネルギーパルスの刺激特性を変化させる。定電流、定電圧、複数の独立した電流または電圧源などを含むがこれらに限定されない、任意の適切な種類のパルス発生回路を使用してもよい。印加されるエネルギーは、現在の振幅とパルス幅の持続時間に基づく。コントローラ16は、調節パラメータを変更すること、および/または特定の時間にエネルギー印加を開始すること、または特定の時間にエネルギー印加を停止/抑制することによって、エネルギーを調整可能に制御することを可能にする。一実施形態では、エネルギー印加装置の調整可能な制御は、対象内の1または複数の分子(例えば、循環分子)の濃度に関する情報に基づく。情報が評価装置20からのものである場合、フィードバックループにより調整可能な制御を駆動可能である。例えば、評価装置20によって測定された循環グルコース濃度が所定の閾値または範囲を超えている場合、コントローラ16は、循環グルコースの減少に関する調節パラメータにより、関心領域(例えば、肝臓)へのエネルギー印加を開始してもよい。エネルギー印加の開始は、グルコース濃度が所定の(例えば、所望の)閾値を超えて、または所定の範囲外まで上昇することによってトリガされ得る。別の実施形態では、調整可能な制御は、エネルギーの最初の印加が、所定の時間枠(例えば、1時間、2時間、4時間、1日)内で目標とする生理学的効果(例えば、関心分子の濃度)に予想される変化が生じない場合、調節パラメータを変更する形態であり得る。
一実施形態では、メモリ32が、操作者が選択可能な異なる複数の動作モードを記憶する。例えば、記憶された動作モードは、肝臓、膵臓、胃腸管、脾臓の関心領域など、特定の治療部位に関連する一連の調節パラメータを実行するための命令を含み得る。関連する調節パラメータは、部位に応じて異なり得る。操作者に手動でモードを入力させるのではなく、コントローラ16は、選択に基づいて適切な命令を実行するように構成されてもよい。別の実施形態では、メモリ32は、異なる複数タイプの治療のための複数の動作モードを格納する。例えば、活性化は、組織機能の抑制または遮断に関連するものとは異なる刺激圧力または周波数範囲に関連し得る。特定の例では、エネルギー印加装置が超音波トランスデューサである場合、時間平均パワー(時間平均強度)とピーク陽圧は、1mW/cmから30,000mW/cm(時間平均強度)と0.1MPaから7MPa(ピーク圧力)の範囲内にある。一例では、熱損傷およびアブレーション/キャビテーションに関連するレベルを避けるため、関心領域での時間平均強度は35W/cm未満である。別の特定の例では、エネルギー印加装置が機械的アクチュエータである場合、振動の振幅は、0.1から10mmの範囲内である。選択された周波数は、エネルギー印加の形態、例えば、超音波または機械的アクチュエータに依存し得る。
別の実施形態では、メモリ32は、所望の効果を実現するために調節パラメータの調整または修正を可能にする較正または設定モードを記憶する。一例では、刺激は、低めのエネルギーパラメータで始まり、自動的に、または操作者入力の受信に応じて、徐々に増加する。このようにして、操作者は、調節パラメータ変更をしながら、生じる効果の調整を実現できる。
システムはまた、エネルギー印加装置12による集中を行いやすくする画像化デバイスを備え得る。一実施形態では、撮像装置が、エネルギー印加装置12と一体するか、またはそれと同一の装置として、関心領域を選択する(例えば、空間的に選択する)ため、さらに選択した関心領域にエネルギーを集中させて、標的を定め、その後ニューロモジュレーションを行うため、異なる超音波パラメータ(周波数、開口、またはエネルギー)が適用されるようにする。別の実施形態では、メモリ32は、器官または組織構造内の関心領域を空間的に選択するために使用される1または複数の標的特定または集中モードを格納する。空間的選択は、関心領域に対応する器官の部位を特定するため、器官の小領域を選択することを含み得る。本明細書に記載のように、空間的選択は画像データに依存し得る。空間的選択に基づいて、エネルギー印加装置12は、関心領域に対応する選択された部位に集中することができる。例えば、エネルギー印加装置12は、最初に標的特定モードで動作して、関心領域を特定するため使用される画像データを取り込むための標的特定モードエネルギーを印加するように構成され得る。標的特定モードエネルギーは優先的活性化に適したレベルにはなく、さらに/あるいはそれに適した調節パラメータが適用されたものではない。関心領域が特定されると、コントローラ16は、優先的活性化に関連する調節パラメータに従って治療モードで動作し得る。
コントローラ16はまた、調節パラメータの選択に対応する入力として、所望の生理学的効果に関連する入力を受信するように構成され得る。例えば、画像診断法が組織特性を評価するために使用される場合、コントローラ16は、特性の計算されたインデックスまたはパラメータを受信するように構成され得る。インデックスまたはパラメータが事前定義された閾値を超えるか、閾値未満であるかに基づいて、調節パラメータが変更され得る。一実施形態では、パラメータは、罹患組織の組織変位の測定値、または罹患組織の深さの測定値であり得る。他のパラメータとしては、1または複数の関心分子の濃度の評価(例えば、閾値またはベースライン/制御に対する濃度の変化、変化率、濃度が望ましい範囲内にあるかどうかの評価)を含み得る。さらに、エネルギー印加装置12(例えば、超音波トランスデューサ)は、コントローラ16の制御下で動作して、a)標的組織内の関心領域を空間的に選択するために使用され得る組織の画像データの取り込み、b)関心領域に調節エネルギーを印加し、c)所望の生理学的効果が実現されたかを判定する(例えば、変位測定による)ために撮像を行ってもよい。そのような実施形態では、撮像装置、評価装置20、およびエネルギー印加装置12は、同一の装置であってもよい。
別の形態では、所望の調節パラメータセットがさらにコントローラ16によって記憶され得る。このようにして、対象固有のパラメータが決定され得る。さらに、そのようなパラメータの有効性を、経時的に評価してもよい。特定のパラメータのセットの効果が時間の経過とともに低下する場合、対象が活性化された経路に対して不応となっている可能性がある。システム10が評価装置20を備える場合、評価装置20はフィードバックをコントローラ16に提供することができる。特定の実施形態では、所望の生理学的効果の特徴を示すフィードバックが、ユーザまたは評価装置20から受信されてもよい。コントローラ16は、エネルギー印加装置に、調節パラメータに従ってエネルギーを印加させ、フィードバックに基づいて調節パラメータを動的に調整させるように構成され得る。例えば、フィードバックに基づいて、プロセッサ16は、リアルタイムで、評価装置20からのフィードバックに応じて、調節パラメータ(例えば、超音波ビームまたは機械的振動の周波数、振幅、またはパルス幅)を自動的に変更してもよい。
一例では、本技術は、代謝障害を持つ対象を治療するために使用され得る。本技術はまた、グルコース調節障害を有する対象における血中グルコースレベルを調節するために使用され得る。したがって、本技術を使用して、関心分子の恒常性を促進するか、または1または複数の関心分子(例えば、グルコース、インスリン、グルカゴン、またはそれらの組み合わせ)の所望の循環濃度または濃度範囲実現を促進することができる。一実施形態では、本技術を利用して、循環(すなわち、血液)グルコースレベルを制御することができる。一実施形態では、以下の閾値を使用して、正常範囲の動的平衡に血中グルコースレベルを維持することができる。
絶食後:
50mg/dL(2.8mmol/L)未満:インスリンショック
50から70mg/dL(2.8から3.9mmol/L):低血糖/低血糖症
70から110mg/dL(3.9から6.1mmol/L):正常
110から125mg/dL(6.1から6.9mmol/L):上昇/障害(前糖尿病)
125(7mmol/L):糖尿病
絶食なし(食後約2時間):
70から140mg/dL:正常
140から199mg/dL(8から11mmol/L):上昇または「境界型」/前糖尿病
200mg/dL以上:(11mmol/L):糖尿病
例えば、本技術は、循環グルコース濃度を約200mg/dL未満および/または約70mg/dL超に維持するために使用され得る。この技術を使用して、グルコースを約4から8mmol/Lまたは約70から150mg/dLの範囲に維持することができる。この技術は、対象(例えば、患者)の正常な血中グルコース範囲を維持するために使用することができる。正常な血中グルコース範囲は、体重、年齢、病歴などの患者の個々の要因に基づいた個別の範囲であり得る。したがって、1または複数の関心領域へのエネルギー印加は、関心分子の所望の最終濃度に基づいてリアルタイムで調整され得、評価装置20からの入力に基づいてフィードバックループで調整され得る。例えば、評価装置20が循環グルコースモニターまたは血中グルコースモニターである場合、グルコースのリアルタイム測定値が、コントローラ16への入力として使用され得る。
別の実施形態では、本技術を使用して、生理学的変化の特徴的特性が発現され得る。例えば、特徴的特性は、エネルギー印加の結果として組織および/または血液中の濃度が増加する関心分子群と、エネルギー応用の結果として組織および/または血液中の濃度が減少する関心分子の別の群を含み得る。特徴的特性は、エネルギー印加の結果、変化が生じない分子群を含み得る。特徴的特性は、望ましい生理学的効果に関連する同時変化を定義し得る。例えば、特性は、循環インスリンの増加と共に見られる循環グルコースの減少を含み得る。
図3は、エネルギー印加装置12が、非限定的な例として肝臓として示される、標的組織43にエネルギーを印加することができる超音波トランスデューサ42を含む特定の例を示す。エネルギー印加装置12は、超音波トランスデューサ42を制御するための制御回路を備え得る。プロセッサ30の制御回路は、(例えば、一体型コントローラ16を介して)エネルギー印加装置12に統合されてもよく、または別個の構成要素であってもよい。超音波トランスデューサ42はまた、画像データを取得して、所望または標的関心領域を空間的に選択し、印加エネルギーを標的組織または構造の関心領域に集中するように構成され得る。
所望の標的組織43は、軸索終末46と非神経細胞48のシナプスを含む内部組織または器官であり得る。シナプスは、標的組織43の関心領域44に焦点を合わせた超音波トランスデューサ42の焦点領域内の軸索終末にエネルギーを直接印加することによって刺激され、分子をシナプス空間49に放出させることができる。図示の実施形態では、軸索終末46は、肝細胞とシナプスを形成する。神経伝達物質47の放出および/またはイオンチャネル活性の変化は、グルコース代謝の活性化などの下流効果を生じる。関心領域は、特定のタイプの軸索終末46、例えば特定のニューロンタイプの軸索終末46および/または特定のタイプの非神経細胞とシナプスを形成するものを含むように選択することができる。したがって、関心領域44は、所望の軸索終末46(および関連する非神経細胞48)を有する標的組織43の一部に対応するように選択され得る。エネルギー印加は、シナプス内の神経からの神経伝達物質などの1または複数の分子の放出を優先的にトリガするか、直接エネルギー変換(すなわち、非神経細胞内の機械的変換または電圧活性化タンパク質)を通じて非神経細胞自体を直接活性化するように選択され得る。または神経細胞と非神経細胞内の両方を活性化し、望ましい生理学的効果を実現し得る。関心領域は、器官への神経侵入の部位として選択されてもよい。一実施形態では、肝臓刺激または調節は、肝門部またはそれに隣接する関心領域44の調節を示し得る。
エネルギーは、関心領域44に集中し、または実質的に収束し、内部組織43の一部のみ、例えば、組織43の総体積の約50%、25%、10%、または5%未満に集中し得る。一実施形態では、エネルギーは、標的組織43内の2つ以上の関心領域44に加えられてもよく、2つ以上の関心領域44の総体積は、組織43の総体積の約90%、50%、25%、10%、または5%未満であり得る。一実施形態では、エネルギーは、組織43の総体積の約1%〜50%のみ、組織43の総体積の約1%〜25%のみ、組織43の総体積の約1%〜10%のみ、組織43の総容積の約1%〜5%のみに印加される。特定の実施形態では、標的組織43の関心領域44の軸索終末46のみが、印加されたエネルギーを直接受け、神経伝達物質を放出する。そして関心領域44の外側の刺激されていない軸索終末は、実質的にエネルギーを受けず、したがって、同様に活性化/刺激を受けることはない。いくつかの実施形態では、エネルギーを直接受ける組織の部分の軸索終末46は、変化した神経伝達物質放出を生じる。このようにして、細かく組織のサブ領域をニューロモジュレーションの標的にでき得る。例えば、1または複数のサブ領域を選択することができるのである。いくつかの実施形態では、エネルギー印加パラメータは、エネルギーを直接受ける組織内の神経または非神経成分のいずれかの優先的活性化を生じて、所望の複合生理学的効果を実現するように選択され得る。特定の実施形態では、エネルギーは、約25mm未満の体積内に集中または収束され得る。特定の実施形態において、エネルギーは、約0.5mmから50mmの体積内に集中または収束され得る。関心領域44内でエネルギーを集中または収束させるための集中量および焦点深度は、エネルギー印加装置12のサイズ/構成に影響され得る。エネルギー印加の集中量は、エネルギー印加装置12の焦点範囲によって定義されてもよい。
本明細書に記載のように、エネルギーは、所望の生理学的効果を達成するために所望のとおりにシナプスを優先的に活性化するために、実質的に1または複数の関心領域44にのみ印加され、組織43全体にわたって一般的または非特異的には実質的に印加されないものであってもよい。したがって、組織43内の複数の異なるタイプの軸索終末46のサブセットのみが、直接的なエネルギー印加に曝露される。図4は、標的器官の関心領域を空間的に選択するための空間情報として使用され得る、脾臓内の(ドップラー超音波で得られるような)血流の画像である。例えば、血管、神経、または他の解剖学的ランドマークのいずれかを含む器官内の関心領域を空間的に選択し、特定の軸索終末およびシナプスのある領域を特定するために使用してもよい。一実施形態では、脾動脈を特定し、脾動脈に近いか、またはそれに平行な領域を空間的に選択することによって関心領域が選択される。器官構造は、器官内の組織機能、血管、および神経刺激伝達に基づいてセグメント化され得る。そして軸索終末のサブセットを、エネルギーが直接印加される関心領域に含まれるように選択してもよい。他の軸索終末は、関心領域の外側にあり得るため、直接印加されるエネルギーに曝露されない可能性がある。関心領域に含める1または複数の個々の軸索終末は、履歴データや実験データ(特定の場所と、望ましい、または所望の生理学的効果との関連付けを示すデータなど)を含むがこれらに限定されない要因に基づいて選択され得る。別の実施形態では、軸索終末およびそれらに隣接する組織または構造の位置を使用して、優先的活性化のため、軸索終末の全セットから個々の軸索終末を選択してもよい。さらに/あるいは、システム10は、望ましい所望の生理学的効果が実現されるまで、エネルギーを個々の軸索終末に印加し得る。脾臓画像は単なる例であることを理解されたい。可視化された神経の空間情報を使用した、関心領域への直接エネルギー印加による優先的活性化を行うための軸索終末の、本開示における選択は、他の器官または構造(例えば、肝臓、膵臓、胃腸組織)と組み合わせて使用され得る。
開示の技術は、ニューロモジュレーション効果の評価に使用され得、ニューロモジュレーション効果は、ニューロモジュレーションパラメータを選択または変更するための入力またはフィードバックとして使用され得る。開示の技術は、組織の状態または機能の直接的な評価を、所望の生理学的効果として使用し得る。評価は、ニューロモジュレーションの前(すなわち、ベースライン評価)、中、および/または後に行うことができる。
評価技術は、機能的磁気共鳴画像法、拡散テンソル磁気共鳴画像法、ポジティブエミッショントモグラフィー、または音響モニタリング、熱モニタリングの少なくとも1つを含み得る。評価技術には、タンパク質および/またはマーカーの濃度評価も含み得る。評価技術による画像は、自動または手動の評価のためにシステムによって受信され得る。画像データに基づいて、調節パラメータの変更も行われ得る。たとえば、器官のサイズまたは変位の変化は、局所神経伝達物質濃度のマーカーとして利用でき、表現型調節神経伝達物質への局所細胞曝露の代理マーカーとして、およびグルコース代謝経路に対する予測される影響のマーカーとして効果的に使用され得る。局所濃度は、エネルギー印加の焦点範囲内の濃度を指し得る。
さらに/あるいは、システムは、組織内の、または血液内循環中の1または複数の分子の存在または濃度を評価し得る。組織内の濃度は、局所濃度または常駐濃度とも称され得る。組織は、細い針吸引によって取得することができ、関心分子の存在またはレベルの評価(たとえば、代謝分子、代謝経路のマーカー、ペプチド伝達物質、カテコールアミン)は、当業者に公知の任意の適切な技術で実行され得る。
他の実施形態において、所望の生理学的効果は、組織変位、組織サイズの変化、1または複数の分子の濃度の変化(局所、非局所、または循環濃度のいずれか)、遺伝子の変化、マーカー発現、求心性活動、および細胞移動などを含み得るが、これらに限定されない。例えば、組織へのエネルギー印加の結果として、組織の変位(例えば、肝臓の変位)が起こり得る。組織の変位を評価することにより(例えば、イメージングを介して)、他の効果が推定され得る。例えば、特定の変位は、分子濃度における特定の変化の特徴であり得る。一例では、5%の肝臓変位は、実験データに基づく循環グルコース濃度の所望の減少を示すか、またはそれに関連し得る。別の例では、参照画像データ(組織にエネルギーを印加する前の組織画像)を治療後の画像データ(組織にエネルギーを印加した後に撮った組織画像)と比較して変位のパラメータを決定することにより、組織の変位を評価してもよい。パラメータは、組織の最大または平均変位値であってもよい。変位のパラメータが閾値変位よりも大きい場合、エネルギーの印加により、望ましい所望の生理学的効果が実現された可能性が高いと評価され得る。
図5は、標的組織の関心領域を刺激するための方法50のフロー図である。方法50では、関心領域が空間的に選択される52。エネルギー印加装置が、エネルギーパルスがステップ54で所望の関心領域に集中するように配置される。パルス発生器が、ステップ56で複数のエネルギーパルスを標的組織の関心領域に印加する。これにより、ステップ58で、例えば、軸索終末を刺激して神経伝達物質を放出し、および/または神経伝達物質放出の変化を誘発し、および/または非神経細胞(シナプス内)の活動の変化を誘発するように、標的組織に存在するシナプスのサブセットを優先的に活性化して、所望の生理学的効果を実現する。特定の実施形態では、方法は、刺激の効果を評価するステップを含み得る。例えば、組織の機能または状態のステータスの1または複数の直接的または間接的な評価が使用され得る。評価された組織機能に基づいて、1または複数のエネルギーパルスの調節パラメータを修正して(例えば、動的にまたは調整可能に制御して)、目標とする生理学的効果を実現してもよい。
一実施形態では、調節の結果としてのグルコース濃度の変化を評価するために、エネルギーパルスを印加する前後に評価を行うことができる。グルコース濃度が閾値を超えるかまたは下回る場合、調節パラメータが適切に修正され得る。例えば、望ましい生理学的効果を伴うグルコース濃度である場合、ニューロモジュレーション中の印加エネルギーを、望ましい効果を達成する最小レベルに下げてもよい。閾値に対する特性の変化がグルコース濃度の不十分な変化に関連している場合、調節振幅または周波数、パルス形状、刺激パターン、および/または刺激位置を含むがこれらに限定されない特定の調節パラメータを変更してもよい。
さらに、評価された特性または条件は、値または指標、例えば、流速、濃度、細胞集団、またはそれらの任意の組み合わせであり得、これらは、適切な技術によって分析され得る。例えば、閾値を超える相対的変化を使用して、調節パラメータを変更するかを判定してもよい。望ましい調節は、組織構造サイズ(例、リンパ節サイズ)の増大または1または複数の放出された分子の濃度の変化(例、ニューロモジュレーション前のベースライン濃度と比較)の有無など、測定された臨床的効果を介して評価され得る。一実施形態では、所望の調節は、閾値を超える濃度の増加、例えば、ベースラインと比較した濃度の約50%、100%、200%、400%、1000%の増加を含み得る。ブロッキング治療の場合、評価は、時間の経過に伴う分子の濃度の減少、例えば、関心分子の少なくとも10%、20%、30%、50%、または75%の減少を確認することを含み得る。さらに、特定の対象について、所望のブロッキング治療は、分子の濃度を増加させる傾向がある可能性がある他の臨床事象に対して、特定の分子の比較的安定した濃度を維持することを含み得る。すなわち、望ましいブロッキングは増加の可能性を断つことであり得る。増加または減少、あるいはその他生じた測定可能な効果は、治療の開始から特定の時間枠内、例えば、約5分以内、約30分以内で測定され得る。特定の実施形態では、ニューロモジュレーションが望ましいと判定された場合、ニューロモジュレーションの変化は、エネルギーパルス印加を停止するための指示となる。別の実施形態では、ニューロモジュレーションが望ましくないものである場合、ニューロモジュレーションの1または複数のパラメータが変更される。例えば、調節パラメータの変化は、10〜100Hzの周波数の段階的な増加および所望のニューロモジュレーションが実現されるまでの所望の特性の評価のような、パルス反復周波数の増加であり得る。別の形態では、パルス幅を変更してもよい。他の実施形態では、2つ以上のパラメータが、共に、平行して、または順次変更されてもよい。複数のパラメータを変更した後でもニューロモジュレーションが望ましいものにならない場合、エネルギー印加の焦点(つまり部位)を変更してもよい。
エネルギー印加装置12は、体外非侵襲性装置または内部装置(例えば、最小侵襲性装置)として構成され得る。上記のように、エネルギー印加装置12は、体外の非侵襲性超音波トランスデューサまたは機械的アクチュエータであり得る。例えば、図6は、超音波トランスデューサ74を含むハンドヘルド超音波プローブとして構成されたエネルギー印加装置12の実施形態を示す。ただし、解剖学的標的上に超音波トランスデューサプローブを構成、付着、または配置するための他の方法を含む、他の非侵襲的実装も考えられることが理解されたい。さらに、ハンドヘルド構成に加えて、エネルギー印加装置12は、コントローラ16からの命令に応じた操縦機構を備え得る。操縦機構は、エネルギー印加装置12を標的組織43(または構造)に向けまたは配向し得る。その上で、コントローラ16が、エネルギー印加を関心領域44に集中させ得る。
図7は、高強度集束超音波(HIFU)を印加するように構成されたエネルギー印加装置12およびパルス発生器14を備えるシステム10のブロック図である。一実施形態では、システム10は、例えば、ファンクションジェネレータ80、電力増幅器82、および整合ネットワーク84を含むパルス発生器を含む。本明細書で提供される実験結果を得るための一実施形態では、パルス発生器は、1.1MHzの高強度集束超音波(HIFU)トランスデューサ(Sonic Concepts H106)、整合ネットワーク(例えば、Sonic Concepts)、RF電力増幅器(ENI350L)およびファンクションジェネレータ(Agilent 33120A)を備えた。図示の例では、直径70mmのHIFUトランスデューサは、中心に撮像トランスデューサを挿入できる直径20mmの穴を有する、曲率半径65mmの球面を持つ。トランスデューサの焦点深度は65mmである。数値的にシミュレーションされた圧力プロファイルは、振幅半値幅が横方向に1.8mm、深さ方向に12mmである。HIFUトランスデューサ12は、脱気された水で満たされた高さ6cmのプラスチックコーンを介して動物被験体に結合された。図8は、例えば、本明細書に記載のとおり、コントローラ16により、標的組織に対しエネルギー印加および撮像を行うように制御され得る、単一のエネルギー印加装置12に配置されたHIFUトランスデューサ74Aおよび画像化超音波トランスデューサ74Bを含む、図7のシステム10と共に使用され得るエネルギー印加装置の例である。
図9は、本明細書で提供される特定の脾臓調節実験を実行するために使用される実験設定を示す。図示の実施形態は脾臓標的組織43を示すが、実験設定の特定の要素は、異なる標的組織43間で共通であり得ることを理解されたい。例えば、エネルギー印加装置12は、コントローラ16によって設定されたパラメータに従って動作して、標的組織43内の関心領域にエネルギーを印加し得る。本明細書に記載のように、標的組織は、脾臓、肝臓、膵臓、胃腸組織などであり得る。図示の実験設定では40W RF増幅器が示されているが、これは単なる例であり、他の増幅器(例えば、線形増幅器)が使用されてもよい。特定の設定では、ラットの頭がバードケージコイルに挿入される。
図10は、本明細書に記載の特定の調節実験を実行するために使用される超音波エネルギー印加の実験タイムラインを示す。図示の実施形態では、超音波適用は、リポ多糖注射の前後に1分間行われた。リポ多糖(LPS)は、強力な免疫または炎症反応を誘発する細菌膜分子である。大腸菌0111:B4(シグマアルドリッチ製)からのLPSを使用して、薬剤未投与の成体スプラーグドーリー(SD)ラットを、炎症および代謝機能障害(高血糖やインスリン抵抗性など)の有意な状態にした。LPSは、腹腔内(IP)注射を介して動物(10mg/kg)に投与され、TNF、循環グルコース、およびインスリンの濃度を有意に上昇させた。これらの濃度は4時間でピークに達したが、対照と比較して、注入後最大8時間は上昇が維持された。動物は、超音波処理後に器官採取および処理のため、安楽死処分された。図示の期間は1時間であるが、これは一例であり、他の実施形態では、生じた変化を評価する期間が変動し得ることを理解されたい。
ファンクションジェネレータ80は、図11に示されるパルス正弦波波形を生成する。このパルス正弦波波形は、RF電力増幅器によって増幅され、HIFUトランスデューサの整合ネットワークに送信される。動物実験中に、パルス振幅、パルス長、パルス繰り返し周波数の3つの超音波パラメータを調整可能である。パルス振幅の範囲は、0.5Vピークから62Vピークである。18.2us、136.4us、および363.6usの3つのパルス長が使用される。一実施形態では、パルス繰り返し周波数(1/T)は2kHzである。治療時間は1分である。この超音波調節パラメータは一例である。一実施形態では、調節は、約0.1MHzから約5MHzの範囲の超音波トランスデューサ周波数を有する超音波刺激で実現され、超音波刺激は、約0.1Hzから約10kHzの範囲の超音波周波数パルス繰り返し周波数を有する。超音波エネルギーのパルス当たりの超音波サイクルは、約1から1000の範囲であり得る。一実施形態では、パルス中心周波数は1.1MHzであり、パルス繰り返し周期は0.5ms(2000Hzのパルス繰り返し周波数に対応)であり、パルス振幅とパルス長が変化した。表1は、HIFU超音波パラメータをまとめたものである。
Figure 2021516104
圧力測定は、Onda Corp.製のHIFUハイドロホン(HNA−0400)を使用して脱気水中で実施した。HIFUトランスデューサは、100サイクルの正弦波形によって駆動された。ハイドロフォンは、x−y平面のグリッドサイズ0.1mm、z軸に沿ったステップサイズ0.2mmの焦点により走査した。図12はハイドロフォンの設定を示し、図13Aは走査結果を示す。ピークの正(負)圧力は、x−y平面のトランスデューサ焦点での最大の正(負)圧力として定義される。入力電圧は、非線形性の影響を排除するのに十分な低さとした。したがって、正のピーク圧力の値は負のピーク圧力の値と等しかった。全動作電圧でのピーク圧力を推定するために、キャビテーションが発生する前に、いくつかの異なる駆動電圧でピーク圧力が測定され、カーブフィッティングが行われた。計算されたピーク圧力を表1に示す。
器官専用ニューロモジュレーションのための超音波ターゲティング
ニューロモジュレーション開始前に、GE Vivid E9超音波システムと11Lプローブを超音波スキャンに使用した。関心領域は動物の皮膚にラベル付して示された。HIFUトランスデューサをラベル付けした領域に配置した。HIFUトランスデューサの開口部に配置された小型のイメージングプローブ(3S)を使用して、別の超音波スキャンも実行した。3Sプローブの撮像ビームは、HIFUビームに揃えられた。したがって、対象の器官の画像(超音波スキャナーで視覚化)を使用して、HIFUビームが関心領域に向けられていることを確認可能となった。
動物用手順
8から12週齢の成体雄スプラーグドーリーラット(250から300g、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ)を25℃で12時間の明/暗サイクルで飼育し、実験を行う前に1週間馴化させた。水と通常のげっ歯類の餌は自由に接種可能とした。8週齢のZucker肥満ラット(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ)を25℃で12時間の明/暗サイクルで飼育し、インスリン抵抗性と高血糖を促進するために、供給者側で維持された条件に従って高カロリー食(Purina#5008)を与えた。水と通常のげっ歯類の餌は自由に接種可能とした。
内毒素(シグマアルドリッチ製大腸菌0111:B4からのLPS)を使用して、薬剤未投与の成体スプラーグドーリーラットを、炎症および代謝機能障害(高血糖や高インスリン血症など)の有意な状態にした。LPSは、腹腔内(IP)注射を介して動物(10mg/kg、Rosa−Ballinas PNAS,2008)に投与され、TNF、循環グルコース、および循環インスリンの濃度を有意に上昇させた。これらの濃度は4時間でピークに達したが、対照と比較して、注入後最大8時間は上昇が維持された。脾臓、肝臓、視床下部、海馬、および血液のサンプルは、LPS投与後60分(電力試験の場合)および30、60、120、240、または480分(持続時間および動態研究の場合)で採取した。脾臓および肝臓のサンプルを、ホスファターゼ(0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、5ug/mLアプロチニン、1mMベンズアミジン、1mMオルトバンデートナトリウムおよび2uMカンタリジン)およびプロテアーゼ(1uLから20mgの組織、Roche Diagnosticsによる)阻害剤を含むPBSの溶液で均質化した。すべてのサンプルに、PBS溶液1mLあたり組織0.2gの目標最終濃度を適用した。血液サンプルは、サンプルの凝固を防ぐために、抗凝固剤(二ナトリウム)EDTAとともに保管した。サイトカイン(Bio−Plex Pro;Bio−Rad)、TNF(Lifespan)およびアセチルコリン(Lifespan)濃度の変化について、サンプルをELISAアッセイで分析した。カテコールアミン濃度は、HPLC検出またはELISA(Rocky Mountain Diagnostic)分析を使用して評価した。
血中グルコースおよびインスリンレベルに対するLPSの影響を調べた。LPS注射後0、60、90、120、150、180、および240分に尾静脈から血液サンプルを採取して、グルコースとインスリンのレベルを測定した。循環血中グルコース濃度は、OneTouch Eliteグルコメーター(LifeScan;Johnson&Johnson)で測定した。血中から得られた血漿中のインスリン濃度を、ELISAキット(Crystal Chem、イリノイ州シカゴ)を使用して判定し、それにより全身インスリン抵抗性に対するLPSおよびその後の超音波刺激の影響を判定した。p38、p7056k、Akt、GSK3B、c−Src、NF−κβ、SOCS3、IRS−1、NPY、肝臓、筋肉、心臓、視床下部組織サンプルのPOMCを含むバイオマーカーの評価によって信号伝達の変化を測定した。超音波刺激によって生じた変化は、インスリン媒介性のグルコース取り込み、ならびに代謝活性の阻害/活性に関連する関連分子の変化を含み得る。
超音波ニューロモジュレーションは以下のような手順を採用し得る。
動物は2から4%イソフルランで麻酔してもよい。
処置中の高体温症を防ぐために、動物を水循環加温パッドの上に寝かせてよい。
超音波刺激の標的である関心領域上の領域(対象の神経)は、刺激の前に使い捨てカミソリと動物用バリカンで剃毛しておく。
関心領域を空間的に選択するため、画像診断超音波が使用され得る。
肝臓:肝門脈のドップラー特定によって示される肝門。
脾臓:診断用超音波による脾臓の視覚的特定。刺激の位置は、特定された脾臓軸に沿って維持されてもよい。
領域は、後に特定できるように恒久的なマーカーが付される。
FUS超音波プローブまたはLogiQ E9プローブは、診断用超音波によって以前に特定された指定された関心領域に配置され得る。
次に、超音波パルスは、単一の刺激の合計持続時間が単一の1分パルスを超えないように実行されてもよい。どの時点でも、エネルギーは、熱損傷とアブレーション/キャビテーションに関連するレベルに到達することはない(アブレーション/キャビテーションの際のエネルギーは35W/cm2)。すなわち、特定の実施形態では、関心領域の時間平均強度は、35W/cm未満である。
その後、LPS(10mg/kgを腹腔内に注射してもよい(急性/動態研究の場合)。あるいは、効果の持続期間のために、LPSはこの時点で注入されなくてもよく、代わりに、指定された後の時点で注入されてもよい。
2回目の1分間超音波刺激を印加してもよい。
その後、急性(1時間)および動態(LPS後最大3時間まで変化)研究のために、動物を麻酔下でインキュベートしてもよい。その後、動物を眠らせ、組織、血液サンプルを採取する。
効果研究の期間中、LPSは超音波刺激時に注入されず、超音波刺激印加後の指定された時点(たとえば、0.5、1、2、4、または8時間)で注入される。その後、動物を麻酔薬保持チャンバーに入れ、安楽死および組織/体液の採取まで監視する。
腹膜腔の底部から始まり、胸膜腔まで切開してもよい。器官を迅速に取り出し、ホスファターゼ(0.2mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、5ug/mLアプロチニン、1mMベンズアミジン、1mMオルトバンデートナトリウムおよび2uMカンタリジン)およびプロテアーゼ(1uLから20mgの組織、Roche Diagnosticsによる)阻害剤を含むPBSの溶液で均質化してもよい。すべてのサンプルに、PBS溶液1mLあたり組織0.2gの目標最終濃度を適用した。血液サンプルは、サンプルの凝固を防ぐために、抗凝固剤(二ナトリウム)EDTAとともに保管した。その後、サンプルは分析まで−80℃で保管される。サイトカイン(Bio−Plex Pro;Bio−Rad)、TNF(Lifespan/Abcam/ThermoFisher)およびアセチルコリン(Lifespan)濃度の変化について、サンプルをELISAアッセイで分析した。カテコールアミン濃度は、HPLC検出またはELISA(Rocky Mountain Diagnostic)分析を使用して評価した。
電極による迷走神経刺激制御実験手順
雄スプラーグドーリーラットを2%イソフルランで麻酔した。首に沿って一度切開を行い、僧帽筋、胸鎖乳突筋、および咬筋の頸部を露出させ、鈍的切開により左頸部迷走神経を露出させた。微小電極を露出した頸部迷走神経の主幹に沿って配置した。AcqKnowledgeソフトウェア(Biopac Systems)の制御下でBIOPAC MP150モジュールを使用して、電気刺激(5V、30Hz、2ms;5V、5Hz、2ms;1V、5Hz、2ms)を生成した。ラットに、10mg/kg LPSのIP注射の前後3分間、迷走神経刺激を与えた。LPS注射の60分後にラットを安楽死させ、脾臓および血液サンプルをTNF測定のために採取した。偽手術を施したラットについては、迷走神経が露出したが、触れたり操作したりはしなかった。
HPLC分析
血清サンプルを、前処理なしで機械に直接注入した。組織ホモジネートを最初に0.1M過塩素酸で均質化し、15分間遠心分離した後、上清を分離し、サンプルをHPLC(Dhir&Kulkarni、2007)に注入した。
カテコールアミン(ノルエピネフリン/エピネフリン)を、インライン紫外線検出器を備えた高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析した。この分析では、テストカラムSupelco Discovery C18(15cmx4.6mm I.D.、粒子径5um)を使用した。二相性移動相は、[A]アセトニトリル:[B]50mM KH2PO4(pH3に設定)で構成された(リン酸を含む)。次に、溶液を100mg/L EDTAおよび200mg/L1−オクタンスルホン酸で緩衝した。移動相混合物の最終濃度をA:B=5:95に設定した。カラムを常に20℃に保持しながら、1mL/minの流量により全体的なピーク分離度を向上させ、使用した移動相の粘度によるカラムの圧力圧縮を最小限に抑えた。UV検出器は、ノルエピネフリン、エピネフリンおよびドーパミンを含むカテコールアミンの吸収を捕捉することが知られている波長である254nmに維持された。
超音波調節分子信号伝達経路の化学的阻害
機械的対直接神経刺激(および神経対軸索細胞外シナプスの非神経コンポーネントの優先的調節)の影響をさらに調べるため、上記の超音波刺激手順を実行する前に、SRC阻害剤(直接機械受容器の共通マーカー)またはPI3K阻害剤(神経信号伝達の共通マーカー)。
組織抽出とパラフィンブロック変換:
組織(ラットの脳)を直ちに固定液に入れ、4℃で10%ホルマリンで約24時間固定する。
以下の手順(と各インキュベーション中の真空と圧力)で組織を処理する。
a.70%エタノール、37℃、40分
b.80%エタノール、37℃、40分
c.95%エタノール、37℃、40分
d.95%エタノール、37℃、40分
e.100%エタノール、37℃、40分
f.100%エタノール、37℃、40分
g.キシレン、37℃、40分
h.キシレン、37℃、40分
i.パラフィン、65℃、40分
j.パラフィン、65℃、40分
k.パラフィン、65℃、40分
l.パラフィン、65℃、40分*インプラントの準備ができるまでこのパラフィンに入れておく。ただし、12〜18時間を超えないようにする。
セクショニングのためにパラフィンブロックにインプラント、セクショニング前にブロックを冷却/硬化させる。セクションは厚さ5ミクロン。50℃のウォーターバスに浮かせて回収。正に帯電したスライドを使用し、すべてのスライドで同一方向の組織配置を試みる。スライドを空気乾燥。室温で一晩乾燥させるのが最善である。しかし、スライドを40℃のスライドウォーマーに置いてより早く乾燥させることもできる。ただし、スライドをウォーマーに1時間以上放置しないこと。スライドを4℃で保存。
IHCプロセス
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプル(ラット脳)を65℃で1時間焼いた。スライドをキシレンで脱パラフィンし、エタノール濃度を洗浄で低減して再水和し、抗原賦活化用に処理した。FFPE組織との多重化に特化した2段階の抗原賦活化法が開発されている。これにより、同じサンプルで異なる抗原賦活化条件の抗体を同時に使用可能となった。次に、1xPBS中で10%(wt/vol)ロバ血清および3%(wt/vol)BSAによる非特異的結合を45分間室温でブロックする前に、サンプルを0.3%、PBSーTritonX−100内において周囲温度で10分間インキュベートした。一次抗体cFOS(santa cruz−SC52)を最適化濃度(5μg/mL)に希釈し、PBS/3%(vol/vol)BSAで室温で1時間適用した。次に、サンプルをPBS、PBS−TritonX−100、再びPBSで順次10分間洗浄した。それぞれで攪拌を行った。二次抗体検出の場合、サンプルは、Cy3またはCy5のいずれかと共益した一次抗体種特異的二次ロバIgGとインキュベートされた。次に、スライドを上記のように洗浄し、DAPI(10μg/mL)で5分間染色し、PBSで再度洗浄し、撮像用に退色防止媒体を取り付けた。全組織画像は、10倍の倍率の蛍光Olympus IX81顕微鏡で撮像した。
画像処理
FFPE組織に典型的な自家蛍光(AF)は、自家蛍光除去プロセスを使用して、特徴付けられ、対象フルオロフォア信号から分離される必要がある。これにより非染色サンプルの画像が染色画像に加えて取得される。染色されていない画像と染色された画像は、それらの露光時間と暗いピクセル値(ゼロ露光時間でのピクセル強度値)に関して正規化される。その後、各正規化自己蛍光画像は、対応する正規化染色画像から減算される。AF除去画像は、登録済みの4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)画像と合成される。刺激および制御された複数のサンプル間で同じ関心領域が撮像され、cFOS発現について画像を定性的に評価して、神経活性化に関連する遺伝子発現の変化を検出した。
脾臓の組織学評価:刺激および制御された複数のラットからの脾臓を、上記のようにパラフィンブロックに処理した。文献に記載の標準的手順に従って、パラフィン包埋切片を洗浄し、H&E用に染色し、明視野オリンパススキャナーでスキャンした。H&E画像は、形態の違いについて定性的に評価され、刺激および制御された複数のサンプル間に顕著な違いは確認されなかった。
心拍数の観察と分析
心拍数(超音波または電極刺激実験中)を、製造元の指示に従って、市販の赤外線オキシメーターおよび生理学的監視システム(Starr Lifesciences)を使用して観察した。刺激手順の間、フットクリップセンサー(製造元から提供)が動物の足蹠に配置された。動物は、測定前に少なくとも5分間環境に順応させた。これは、動物が、制御下で生理的に測定される正常な心拍数活動に回復するのに十分であると確認された時間である。測定は、電気微小電極または超音波プローブそれぞれによる刺激の前(2分間の記録期間)、中、および後(2分間の記録期間)に記録された。
超音波誘発活性化の拡散機能MRI測定
ニューロンの活性化は、血中酸素濃度レベル依存(BOLD)fMRIを使用して検出できる。代謝要求が増加した脳領域は、脳血流の増加、酸素化血液の供給の増加、および勾配エコー信号の減少につながる。BOLD効果に対する感度には、高速グラディエントエコー取得が必要となる。これにより、副鼻腔や外耳道などのエアポケットに隣接する脳領域に望ましくない信号損失が発生し、これらの特定の脳領域近くのニューロンの活性化の検出が妨げられる。あるいは、広範囲の不均一性を特徴とする領域での信号損失を最小限に抑えるために、スピンエコー(またはダブルスピンエコー)拡散強調画像(DWI)を使用してもよい。DWI−fMRIでは、緩やかに拡散する(おそらく細胞内)水プールの体積の増加、または水の拡散(または見かけの拡散係数(ADC))の増加の両方が、ニューロンの活性化によって引き起こされる細胞の膨張と膜の拡大に対応付けられた。
図14のパラダイムを使用して、10匹のラットが脳MRIスキャンを受けた。その内6匹は(上記のように)LPS注射と超音波治療の両方を受けた。他4匹は、LPS注射のみを受けた。10匹のスプラーグドーリーラットに3%イソフルランを使用して麻酔をかけ、仰向けにして頭をバードケージコイルに挿入した。腹部領域は、ゲル/水で満たされたコーンを介してMR互換の超音波プローブ(f=1.47MHz)に結合された。同プローブの焦点は、グルコース感受性ニューロンを含んでいた肝領域である肝門部に当たっていた。
走査は、Doty Scientific製直角バードケージコイルを使用して、3T GE DVスキャナー(Waukesha、WI)で実行された。走査は、0.4/1mmの面内/面外空間分解能で、TE/TRを10/1475ms、合計取得時間を3:22分として、スポイルドグラディエントエコーシーケンスを使用したT1取得で開始した。ダブルスピンエコー拡散強調画像(DWI)画像(順極性勾配、またはFPGと呼ばれる)の6つのブロックが、0.6/1mmの面内/面外空間分解能で、82/3400msのTE/TRで取得された。この際、ブロックごとの総取得時間は1:49分で、b=0/b=1000s/mm2に対してそれぞれ3/4平均が使用された。注入前の6回のDWI取得の完了時に、歪みを補正する目的で、勾配の方向を逆にして別のDWI取得を実行した。この取得は、逆極性勾配(RPG)取得と呼ばれる。LPS注入、1回目の超音波治療、5分の待機時間、2回目の超音波治療に続いて、FPG DWI画像の他の6ブロックが取得された。LPS注射のみを受けた対照ラットの場合、最後の6つのDWIブロックはLPS注射の直後のものである。
水で満たされたコーンを使用して、関心領域(例えば、胃腸組織、膵臓、肝臓など)に結合された、MR対応の1.47MHz集束超音波トランスデューサを使用して超音波治療が実行された。各超音波治療は60秒間続き、その間、パルス状の正弦波超音波波形が適用された。パルスオン時間は150μs、パルスオフ時間は350μsだった。ラットの腹部はイメージングコイル外とした。仰臥位に動物を置くことで、カップリングゲルを使用して、超音波プローブを皮膚を通じて肝臓に簡単に結合できた。少なくとも0.5のT1画像と(歪み補正済み)b=0 DWI画像間の相互相関係数(ccc)を使用して、さらなる分析に使用されるスライスが特定された。見かけの拡散係数(ADC)が、処理前と処理後の画像に対して計算された。統計解析のために、治療前後の画像データをまとめてプールした。T1画像とラット環椎との間の厳密な位置合わせを利用して、ピクセル単位のt検定で有意な変化が示された領域を特定した。T1および環椎画像からのレジストレーション変換が、歪みが補正されたDWIおよびADC画像に適用された。
コリン作動性抗炎症経路
本例は、シミュレーションに対応する生理学的効果を実現するために、超音波エネルギー印加を利用して、器官内の特定の軸索投射を刺激する非侵襲的な方法を提示する。超音波は最初に脾臓に印加された。これにより、全身性サイトカイン濃度を調節するように、コリン作動性抗炎症経路(CAP)に関連する軸索が刺激されることが確認された。この経路が化学的または機械的に遮断された場合、超音波による効果は抑制された。超音波パラメータの変化により、細胞外神経伝達物質濃度、細胞内キナーゼ活性、およびCAP関連のサイトカインは異なる影響を受けた。したがって、超音波パラメータを変更することによって望ましい生理学的反応を生み出すことができることが示された。次に、肝臓の超音波刺激は、血中グルコースを調整する感覚経路を調節することが示された。この効果は、肝臓内の特定の解剖学的部位の刺激に依存することがわかった。まとめると、これらのデータは、器官内の超音波ニューロモジュレーションが、特定の生理学的機能(例えば、肝臓ニューロモジュレーションによる血中グルコース調節と、脾臓ニューロモジュレーションによる全身性サイトカイン)に影響を与えるために、器官または組織内のニューロンの小さなサブセットを刺激することを促進する、正確なニューロモジュレーション方法を提供できることを示している。
末梢神経内では、個々の軸索が群(束)に強固と束ねられ、保護組織内に包まれている。これにより、特定の器官で終端する軸索のサブセットを選択的に刺激し、その器官内の連絡細胞の機能を一意に調節することが困難となっている。精密な末梢神経刺激の臨床的実施は依然として複雑である。図15Aは、迷走神経内の遠心性および求心性ニューロンを投射する複雑なシステム、例示的な神経支配された器官、および子宮頸部VNSに使用される刺激装置のおおよその位置の部分的な概略図を示す。求心性ニューロンは、迷走神経(DMV)の背側運動核から発生し、求心性ニューロンは、孤束核(NTS)を介して脳に入る。内臓につながる末梢神経には、遠心性と求心性の両方のニューロンが含まれており、遠位の子宮頸部VNSインプラントを使用して独立的に刺激することは困難である。
図15Bは、器官内で終端する軸索のサブセットが集束パルス超音波を使用して優先的に刺激される、標的器官ベースの末梢ニューロモジュレーションを示す概略図である。ここで調査される対象としては、コリン作動性抗炎症経路に関連する脾臓内の軸索終末、および代謝情報を脳に伝達してグルコース恒常性維持に寄与することに関連する肝臓内の感覚終末が挙げられる。本明細書で提供される集中パルス超音波は、器官内で終端する軸索サブセットを刺激する(図15B)。本明細書で提供される特定の例では、超音波エネルギーは、脾臓(コリン作動性抗炎症経路(CAP)を介した全身性炎症に影響を与えるため)と肝臓(代謝情報を脳に伝達し、グルコース恒常性を維持するため)内の軸索投射に集中した。
CAPに関与する各細胞型は、げっ歯類LPS誘発炎症モデル(図16AおよびB;CAP(図15B))の3つの主要な細胞型から成る異なる超音波刺激パラメータの下で観察された。3つの主要な細胞型は、脾臓神経節から突出するシナプス後軸索終末、中間T細胞、および循環サイトカインレベルを調節するマクロファージである。CAP関連の神経伝達物質とノルエピネフリン(NE)、アセチルコリン(ACh)、腫瘍壊死因子(TNF−α)などのサイトカインの脾臓濃度を測定することにより、局所超音波刺激に対するCAP応答を観察した。
本明細書に記載のように、および図16Aのタイムラインに示されるように超音波刺激を実施して、対照と比較して生じた標的化生理学的効果を示した。LPS注射の前後に1分間の超音波刺激を与えた。サンプルは収集され、局所(すなわち、組織)ならびに全身性神経伝達物質とサイトカインで生じた誘発変化が測定された(図16BからE)。これにより、超音波誘発CAPニューロモジュレーションの、LPSモデルへの応答に対する効果が示された。図16Eを除くすべてのデータの応答時間は1時間だった。ただし、図示の応答時間は単なる例であることを理解されたい。すなわち、関心領域でのニューロモジュレーションの結果として変化が生じるのは、1時間以内であり得、いくつかの実施形態では、数時間または数日間持続し得る。したがって、本明細書で提供されるように、ニューロモジュレーションによって生じた測定可能な誘発変化の評価は、ベースライン(ニューロモジュレーション時またはその前)およびニューロモジュレーション後の1以上の時点(分間隔、時間間隔、日間隔)で発生し得る。治療手順の一部として、特定の対象を継続的または断続的に観測して、1または複数の分子または関心濃度(または器官変位などの他の測定可能な効果)を評価する。
超音波トランスデューサを標的器官に配置し、超音波刺は印加しないことで、疑対照を実現した。図16Bは、薬剤未投与ラット、偽対照(LPSを受けたが超音波刺激を受けなかったラット)、および様々な超音波刺激圧でLPSを受けた動物における測定されたCAP応答を示す。薬剤未投与動物、偽対象、および超音波刺激圧が0.03から1.72MPaの動物について、ノルエピネフリン(i)、アセチルコリン(ii)、およびTNF−α(iii)の濃度が示されている。(iii)の薬剤未投与動物、偽対象、および超音波刺激圧力を示すx軸ラベルが3つ全てのグラフに適用されることが理解されたい。脾臓ノルエピネフリンレベルは薬剤未投与動物で平均140nmol/Lであった。一方、LPS誘発炎症によりノルエピネフリンレベルはほぼゼロまで低下した。これは初期炎症でのCAP信号伝達の抑制を示す。
図示のように、超音波刺激は、薬剤未投与動物で測定されたレベルにまでLPS応答を減衰させた(図16B.i.)。CAP信号伝達プロセスと同様、超音波刺激された動物におけるノルエピネフリンの増加は、脾臓のアセチルコリンの増加と相関した。0.83MPaの超音波圧力では、平均アセチルコリン濃度は、偽対象の動物で測定された濃度のほぼ3倍だった(図16B.ii)。図16Cは、図16Bと同じ条件でのTNF−αの循環濃度を示す。図16Cの薬物未投与動物、偽対象、および超音波刺激圧力を示すx軸ラベルは、図16Bにも適用されることに留意されたい。図16Dは、図16Bと同じ条件での脾臓IL−1α濃度を示す。脾臓(図16B.iii)および循環TNF−α(図16C)の両方のレベルは、偽対照動物と比較して有意に減少した。治療に対する反応は超音波圧力に依存していた(0.83MPaが後続の実験で使用された)。脾臓超音波刺激が特にCAPの変化を引き起こしたというさらなる根拠として、図16Dは、超音波刺激がTNF−α特異的経路、例えばインタールキン−1−アルファ(IL−1α)によって調節される他のタンパク質の濃度に影響を与えたことを示す。したがって、このデータは、超音波圧力などの調整可能な調節パラメータを制御することで、関心分子の濃度を的確に制御できることを示す。関心領域に印加される超音波圧力を変化させることにより、所望の生理学的効果(例えば、1または複数の関心分子における所望の濃度変化)が実現され得る。印加される圧力は、患者単位で経験的に決定されてもよいが、いくつかの実施形態では、標的を定めたニューロモジュレーションのために、0.03から1.72MPaの超音波刺激圧力が使用される。本明細書に記載のとおり、超音波圧力は、所望の生理学的反応を実現するために、本明細書に記載のとおり変化または調整される調節パラメータであり得る。他の調整可能なパラメータは、治療タイムライン(例えば、治療期間、治療間の分離、および他の臨床事象の遅延時間または評価装置を介した評価)であり得る。
図16Fは、矢印で示す脾臓標的を空間的に選択し、そこに超音波刺激を集中させるために使用される、ラット脾臓の2D超音波画像を示す。矢印により、脾臓の輪郭と、超音波刺激用の標的焦点(即ち、脾臓の関心領域)が示されている。図16Gは、CAP活性化に対する刺激の効果の持続時間を測定するように設計された調査のタイムラインの、非限定的な実施形態を示す。この調査では、超音波刺激はLPS注入の前に印加され、超音波刺激とLPS注入の間の遅延時間は0.5から48時間で変化させた。図16Hは、0.5から48時間までの可変遅延時間後の超音波処置(すなわち、LPS注入の前に行われた超音波刺激)後、偽対照で測定された脾臓TNF−α濃度のパーセント(%)値としての脾臓TNF−αの濃度を示す。図16Iは、0.13から1.72MPaでび超音波刺激圧力による超音波刺激(陰影線)有る場合、超音波刺激なし(黒線棒)ない場合、活性化および/またはリン酸化キナーゼ(p38、p70S6K、Akt、GSK3B、c−SRC、NF−kβ、SOCS3)の濃度を示す。
これまでのインプラント型VNS研究と同様に、ピークの超音波媒介応答は治療の1から2時間後に発生した(図16E)。さらに、LPS注射の前に、脾臓超音波を印加し保護効果を得てもよい(図16Gおよび16H)。これもこれまでの侵襲性VNSの研究と一致する。図16Hは、保護効果が治療後48時間続いたことを示している。保護効果をさらに特定するために、LPS、CAP、またはTNF−αを介した信号伝達に関連する特定の細胞内キナーゼの超音波活性化を測定した(図16I)。これらのデータは、一部のキナーゼ(p38やp70S6Kなど)の活性化が超音波によって大幅に促進されてことを示している。さらに、一部のキナーゼ(p38など)の超音波圧力依存性応答が、以前に観察された超音波圧力依存性とおおよそ相関していることを示している(図16BからD)。
図16Jおよび16Kは、バースト持続時間とキャリア周波数について別の超音波刺激パラメータを使用した、超音波刺激脾臓(LPS注入後)のノルエピネフリン(NE)、アセチルコリン(ACh)、および組織壊死因子アルファ(TNF−α)濃度のデータを示す。データは、代替バースト持続時間(左)または超音波キャリア周波数(右)による刺激後に採取された脾臓サンプルについて、図16Bにおける0.83MPaデータとの比較として示す。
脾臓超音波調節の効果を、本明細書に記載のとおりに実行された標準電極またはインプラント型の迷走神経刺激(VNS)と比較した。図17Aおよび17Bにおいて、「+」は、示唆された事象または阻害剤の存在を示し、「−」は、示唆された事象または阻害剤が存在しないことを示す。図17Aにおいて、X軸は、異なる条件(超音波対VNS、さらに異なる阻害剤を伴う)でのラット脾臓における誘発された変化を表し、Y軸は、脾臓TNF−α(対LPS処理対照)の相対濃度変化をパーセントで示す。PP2(部分的に選択的なSrcキナーゼ阻害剤)、LY294002(PI3−キナーゼ選択的阻害剤)、PD98059(MEK1およびMEK2選択的MAPK選択的阻害剤)、およびα−ブンガロトキシン(BTX;CAP経路におけるα7nAChRの既知の拮抗薬)有り、無しでのVNS刺激と超音波刺激(0.83MPaの超音波刺激圧による)とについて、相対濃度を示す。図17Bは、BTXまたは外科的迷走神経刺激の効果を伴うおよび伴わないLPS処理げっ歯類の超音波刺激後の(左)ノルエピネフリン(NE)および(右)TNF−αの脾臓濃度に対するBTXの効果を示す。図17Aは、侵襲的な子宮頸部VNSおよび非侵襲的な脾臓超音波刺激が、TNF−α産生に対してほぼ同等の効果を有することを示している。さらに、図17Bは、α−ブンガロトキシン(BTX;α7nAChRの既知の拮抗薬)の脾臓注射がTNF−α濃度に対する超音波刺激の効果を抑制したことを示す。これは、超音波による望ましいCAP調節には(VNSベースのCAP活性化のように)脾臓のα7nAChRシグナリングを伴うことを示す。CAPモデル(図15B)と同様、NE濃度はBTXの影響を受けなかった(つまり、BTXはα7nAChR経路を通じて上昇したNEの効果を遮断した)。迷走神経切断はまた、超音波によるCAP調節を抑制し、CAPに対する超音波効果が神経を介して生じることの追加の証拠を提供する(図17B)。最後に、キナーゼ阻害剤PP2(Srcキナーゼに対して部分的に選択的)とLY294002(PI3−キナーゼ選択的)は超音波効果を抑制することが示され、PD98059(MEK1およびMEK2選択的MAPK阻害剤)は効果を示さなかった(図17A)。これらの結果は、図16Iのものを裏付ける。同図では、超音波刺激がPI3(すなわち、Akt、P70S6K)、c−Src、およびp38−MAPK経路内のキナーゼ活性化の変化を引き起こしたが、細菌の抗原応答に関与するキナーゼ(すなわち、NFKB、GSK3B)では変化を引き起こしていない。このような変化は、標的化されたニューロモジュレーションを介して実現され、標的化された生理学的効果を示す所望の特徴的特性の一部であり得る。
集中的超音波刺激の生理学的特異性を、侵襲的なVNSのいくつかの既知の副作用を測定することによって調べた。図17Cは、心拍数に対する(いくつかの刺激強度および周波数での)VNS対脾臓超音波刺激(0.83MPaの超音波刺激圧を伴う)の効果を比較するデータを示す。図17Cは、子宮頸部VNSまたは脾臓超音波刺激によって引き起こされる心拍数の変化を示す。1および5ボルトのVNS強度(CAPを活性化することが知られている)では、心拍数が大幅に減少した。ただし、局所脾臓超音波刺激は心拍数に影響を与えなかった。
図17Dは、LPS誘発性高血糖の抑制に関する、既に観察されたVNSの副作用と、脾臓超音波刺激を使用した場合の副作用の欠如を裏付けるデータを示す。グラフは、LPS制御(超音波刺激なし)のためのLPS注入、または脾臓超音波刺激または子宮頸部VNS刺激と組み合わせたLPS注入後5、15、30、および60分の時点での相対血中グルコース濃度(注入前の濃度と比較)を示す。図17Dは、超音波刺激が、LPSのみの対照と比較してグルコース濃度の変化をもたらさなかったのに対して、VNS実験には高血糖を減衰させる副作用があったことを示している。このCAP標的VNSの代謝副作用は、2番目の(非CAP)迷走神経経路の非標的VNSが原因であり得る。そのような非標的効果は、本明細書で提供される標的化末梢ニューロモジュレーションと比較して、VNSのより広く、より特異的ではない(すなわち、より標的化されていない)効果の結果である。記載の標的を定めたニューロモジュレーションの利点として、望ましくない非標的効果を回避することが挙げられる。高精度超音波刺激技術をさらに使用して、VNSによる高血糖の減少が代謝感覚ニューロンに由来する軸索の直接刺激と関連しているかどうかを調査した。
いくつかの実施形態では、標的を定めた超音波刺激送達のため、関心領域を空間的に選択するように超音波刺激をガイドするため、超音波画像が使用されてもよい。本明細書に記載のように、空間選択または空間選択工程は、組織または器官(あるいは組織または器官の一部)の画像を取得すること、および画像(例えば超音波画像)に基づいて器官内の関心領域を特定することを含み得る。いくつかの実施形態では、組織または器官は、器官内の関心領域の選択を導くために使用される解剖学的特徴を有し得る。そのような特徴は、いくつかの実施形態では、非限定的な例として、器官への血管または神経の進入部位、器官内の組織タイプ、器官の内部または縁、または下位器官構造を含み得る。特定の実施形態では、解剖学的特徴は、肝門部、胃腸管の下位器官(胃、小腸、大腸)、膵管、または脾臓の白髄を含み得る。画像内の解剖学的特徴を特定することにより、関心領域は、解剖学的特徴と重なるか、それを含むか、または解剖学的特徴に隣接するように選択され得る。他の実施形態では、解剖学的特徴は、関心領域から除外されてもよい。例えば、胃組織ではなく腸組織が関心領域として選択されてもよい。解剖学的特徴の特定は、画像に見える(例えば、超音波画像に見える)形態学的特徴を介して、または画像を取得するために使用される画像化モダリティの構造認識特徴によって行うことができる。本明細書に開示されるように、システム10は、エネルギー印加装置12が画像を取得するために撮像モードで動作し、画像が取得されて画像に基づいて関心領域が空間的に選択された後にエネルギー印加モードで動作するように構成され得る。
他の実施形態では、関心領域は、1または複数の生物学的マーカーの有無によって特定されてもよい。そのようなマーカーは、器官または組織を染色し、染色を示す画像を取得して、1または複数の生物学的マーカーを含む器官または組織の領域を特定することによって評価することができる。いくつかの実施形態では、生体マーカー情報は、生体染色技術によって得られ得る。これにより、対象固有の組織または器官における生体マーカーの位置データをリアルタイムで得ることができる。他の実施形態では、生物学的マーカー情報は、体外染色技術によって得られ得る。この技術により、対象の組織または器官内の生物学的マーカーの位置を予測するために使用される1または複数の代表的な画像の位置データが取得され得る。いくつかの実施形態では、関心領域は、特定の生物学的マーカーが豊富であるか、または特定の生物学的マーカーを欠く組織または器官の部位に対応するように選択される。例えば、1または複数の生物学的マーカーは、ニューロン構造のマーカー(例えば、ミエリン鞘マーカー)を含み得る。
器官または組織の関心領域は、操作者の入力に基づいて空間的に選択され得る。例えば、操作者は、画像を直接操作する(すなわち、画像上に関心領域を描画または書き込む)ことにより、または関心領域に対応する画像座標情報を提供することにより、取得した画像上の関心領域を指定し得る。別の実施形態では、関心領域は、空間的選択を実現するように画像データに基づいて自動的に選択されてもよい。いくつかの実施形態では、空間的選択は、関心領域に関連するデータをメモリに格納すること、およびデータにアクセスすることを含む。
空間的選択が行われると、システム10は、本明細書に記載のように、関心領域にエネルギーを印加するように構成される。たとえば、図18Aに示すように、ラットの肝臓の2D超音波画像を使用して超音波刺激を誘導し、標的の肝門部位に選択的に焦点を合わせる。白い矢印は肝臓の輪郭を示し、中央の矢印は関心領域を示す。図18Aは、超音波画像誘導が、肝臓の肝門領域の空間的選択を可能にし、局所標的超音波ニューロモジュレーションのために、グルコース感受性ニューロンを含む選択された肝門領域に超音波刺激を向けることを可能にする。
図18Bは、LPS誘発性高血糖動物モデルの肝臓の様々な領域に超音波刺激を選択的に印加して、血中グルコース濃度の所望の調節を実現する非限定的な例を示す。図18Bのグラフは、LPS注射後5、15、30、および60分の時点での(LPS前注射濃度と比較した)相対的血中グルコース濃度を示す。超音波刺激なしでLPS注射のみを受けた群では、LPS誘発の高血糖が観察される。データはさらに、肝臓の遠位葉の超音波刺激が血中グルコース濃度に有意な影響を与えないことを示している。対照的に、肝門部に対する超音波刺激の選択的印加は、LPS誘発性高血糖を逆転させ、血中グルコース濃度を調節するために利用され得る。したがって、関心領域の部位は異なる複数の結果をもたらし、葉への幅広いまたは非標的化肝臓治療は、肝門領域を標的とした(肝門領域に隣接するか含む関心領域を使用した)超音波治療と同様の効果は達成しない。図18Bの実施形態に示されるように、図16Gに示される手順に従って、肝臓の関心領域に超音波刺激を印加することにより、モデルのLPS誘発高血糖に対する保護を提供し、さらに/あるいは血中グルコース濃度増加を制限し、同濃度を食後濃度未満に調節する。さらに、調節は解剖学的部位に対して固有であり得る。図18Bは、超音波刺激を肝臓の右葉または左葉に向けることにより、血中グルコースに対する超音波誘発効果が減衰したことを示している。すなわち、肝臓のすべての領域が超音波エネルギー印加に同じように反応したわけではない。いくつかの実施形態では、エネルギー印加は、保護処置として、または予想される全身性の攻撃または破壊の前に適用される処置として使用されてもよい。
1または複数の関心分子の選択的調節は、超音波刺激に直接曝された部位(すなわち標的関心領域を含む器官)で実現され得る。例えば、関心領域での肝臓の標的を定めた超音波刺激は、肝臓組織内のシグナリング分子の肝臓濃度の変化を含む。ここで、グルコース代謝に関連するものは変化しないままであり得る(図18C、灰色の棒線)。さらに/あるいは、1または複数の関心分子の選択的調節は、直接超音波刺激を受けない遠位部位でも実現され得る。たとえば、図18Cは、肝臓の部位に超音波刺激を印加することで、NPYとNEの視床下部濃度の有意な変化を誘発し、さらに、改善されたインスリン感受性および改善されたブドウ糖利用により示される、インスリン信号伝達経路の活性の増加を示すイオンチャネルのリン酸化の増大を誘発することを示す。
図18Cは、インスリン感受性のいずれかに関連するいくつかの分子の(超音波刺激がない場合と比較した)相対濃度の測定および肝臓におけるインスリン介在性ならびに非インスリン依存性グルコース取り込みおよび代謝機能に関連する視床下部マーカーの変化を示す。肝臓では、エピネフリンはノルエピネフリンの変化と比較して低下した。エピネフリンは、肝臓で貯蔵されているものの放出を促進することにより、血中グルコースの迅速な増加を引き起こし得る。しかし、ノルエピネフリンは、骨格筋および脂肪によるグルコース取り込みに対するノルエピネフリンの効果とは対照的に、肝臓のグルコース産生に大きく寄与しない。視床下部のノルエピネフリンの増加は、高インスリン血症(インスリン感受性の低下を示す)の増加と耐糖能異常/高血糖を示し得る。超音波刺激により、直接刺激を受けない遠位部位で1または複数の関心分子の濃度を選択的に調節または変化させ得る。例えば、図18Cに示されるように、超音波刺激は、直接超音波刺激を肝臓の部位に印加することで、視床下部の遠位部位におけるノルエピネフリン(NE)、プロテインキナーゼB(pAkt)、インスリン受容体基質1(IRS−1)、および神経ペプチドY(NPY)などの分子の濃度を調節するように利用され得る。特定の実施形態において、超音波刺激は、所望の(すなわち、標的を定めた)生理学的効果を実現するために、組織の空間的に選択された関心領域に選択的に印加される。組織は、肝臓、膵臓、消化管、脾臓などから選択され得る。望ましい効果は、分子の濃度の変化または臨床的意義のあるマーカーであり得る。
特定の実施形態では、超音波誘発ニューロモジュレーションは、定義された視床下部および脳幹サブ核(それぞれ図18Dおよび18E)内の前初期遺伝子cFOSの活動依存性発現の程度によって定量化され得る。図18Dは、cFOS免疫組織化学画像(左)およびLPS対照(左)および超音波刺激サンプル(右)における活性化ニューロンのパーセンテージを示すデータを示す。対照画像では、活性化ニューロンの割合は約7.7%である一方、刺激画像では、刺激ニューロンの割合は約4.9%となっている。画像とデータは、脳室傍核(PVN)でセグメント化される。超音波刺激後の活性化ニューロンのパーセンテージの低下によって表される神経活動の低下は、全身のグルコース利用および代謝信号伝達に対する肝超音波ニューロモジュレーションの効果を(図18Cのデータに加えて)さらに裏付ける。図18Eは、LPS対照(上)対超音波刺激サンプル(下)の脳幹におけるcFOS発現を示す、さらなる免疫組織化学画像を示す。画像は、超音波刺激されたサンプルでの発現の増加を示す、孤束核(NTS)でセグメント化される。図18Fは、活性化マップ(強調スポイルドグラジエントリコールドエコーボリューム、左)と脳アトラス(強調スポイルドグラジエントリコールドエコーボリューム、右)との間の例示的なMRIオーバーレイを示す。この例は、視床下部(PVN)の左右両方の脳室傍核(矢印、左の画像)でのADCの増加を示している。これはニューロンの非活性化と一致する。図18Gはこの結果をまとめた棒グラフである。6匹のラットのうち3匹がPVNの有意な不活性化を示した。対照動物はいずれもそのような不活性化を示さなかった。さらに、非超音波処理動物で観察された高血糖は、超音波処理動物では観察されなかった。
表2は、検証済みPVN関心領域内のADC値を処理前と処理後の走査間で比較して得られたt検定値を示す。
Figure 2021516104
6匹中3匹のラットについて、超音波刺激に応じたPVN ADCの増加は、c−Fos発現データと概ね一致する。即ち、視床下部と連通するLPS活性化経路の超音波誘発性の非活性化を示す。この効果を示したLPS+超音波動物は一部のみだった(表S2のラット1、4、5)。
対照と比較して、傍室核(PVN)内のcFOS陽性(c−Fos+、図18D)細胞に有意な減少が認められた。これはLPS誘発神経信号伝達の超音波誘発調節を示唆する。これらのデータは、弓状核(ARC)がNPYを発現するニューロンを介して末梢感覚情報に基づいてPVNへの信号を変更するため、超音波刺激後にNPYおよびGABAの濃度が大幅に低下することを裏付ける。さらに、変更された視床下部c−Fos発現は、求核経路を介した信号伝達を介した超音波による調節を示す、孤束核(NTS;図18E)内のc−Fos発現の大幅増加を伴った。
視床下部サブ核における拡散強調機能的磁気共鳴画像法(DfMRI)画像からの見かけの拡散係数(ADC)を、肝臓の超音波刺激の前後で比較した。超音波刺激により、ADCはPVN内で増加した。これにより、化学物質(POMC、NPY、NE)およびc−Fosの両発現データが裏付けられ、視床下部に伝達するLPS活性化経路の超音波誘発性の非活性化が実証された。これらの結果は、NPYシステムを介したLPSによるエネルギー代謝への影響を調節する経路の活性化と、外部へのPVNシグナリングに対するその影響と一致する。
慢性肝臓刺激
糖尿病のZucker(fa/fa)ラットモデルにおける肝臓刺激の結果を示す。Zuckerラットは2型糖尿病、および/またはインスリン抵抗性のモデルである。肝刺激およびマーカー分析(すなわち、循環および組織)を、本明細書で概説したようにSDラットに対して実施した。ここで、本明細書に記載のように、ラット肝門またはそれに隣接した関心領域を標的とした。循環非末端マーカーは、尾静脈測定から評価された。図19は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環非絶食グルコースを示す。図示の期間は、55〜75日目である。56日目に超音波治療を開始した。1日の検疫後に動物が前糖尿病状態になったときに開始する治療。超音波刺激により、非絶食時の循環グルコースレベルが非糖尿病ラットと同等のレベルまで低下した。図20は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環トリグリセリドを示す。図21は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環グルカゴンを示す。図22は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環インスリンを示す。図23は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環レプチンを示す。図24は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の循環ノルエピネフリンを示す。糖尿病ラットのインスリンは、約3〜10ug/Lの範囲となる。典型的な通常非絶食時インスリン値は0.8〜1.5ug/Lである。Zucker動物はレプチン受容体KOではあるが、レプチンを自己生成することはできる。脂肪異栄養性糖尿病(レプチン欠乏症)患者へのレプチン投与は、インスリン応答性を高め、高血糖(糖新生を減少させることにより)を低下させる。グルカゴンに変化はなく、膵臓のアルファ細胞に効果がないことが示されている。従前のメトホルミン治療特性と比較して、肝臓の超音波は有益な変化を生じたようである。例えば、メトホルミン治療は、通常、循環インスリンの減少と関連性がない。一方、標的を定めた肝臓超音波治療の効果により、循環グルコース、インスリン、およびトリグリセリドに目に見える変化が生じる。ノルエピネフリンが変化しないことは、局所効果に起因する変化を示す。
図25〜33は、肝臓超音波治療後の対照と比較した様々な終末視床下部マーカーの濃度を示す。図25は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部インスリン受容体基質1(IRS−1)を示す。図26は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ホスホ−Aktを示す。図27は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部GLUT4を示す。図28は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ノルエピネフリンを示す。図29は糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部グルコースー6−リン酸を示す。図30は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部グルカゴン様ペプチド(GLP−1)を示す。図31は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部ガンマ−アミノ酪酸(GABA)を示す。図32は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部脳由来神経栄養因子(BDNF)を示す。図33は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の視床下部神経ペプチドY(NPY)を示す。超音波刺激による視床下部でのIRS−1、phopho−Akt、およびGLUT4信号伝達の有意な増加が確認された。これは前出のLPSによる高血糖モデルでの結果と一致する。インクレチンシグナリング(GLP−1)に変化は確認されなかった。これらの化合物は通常、インスリン分泌を増加させ、グルカゴンを阻害し、胃内容排出を遅らせる。偽刺激された糖尿病の動物と比較して、治療された患者のノルエピネフリンに有意な変化はなかった。視床下部におけるグルコキナーゼによるグルコースからグルコース−6−リン酸への変換は、グルコースに応じたインスリン分泌を初期段階で調節するのに寄与し得る。超音波刺激による視床下部のIRS−PI3K−GLUT4シグナリングの大幅な増加が認められた。これはLPSによる高血糖モデルの前出の結果と一致する。インクレチン信号伝達に変化があった(例、GLP−1)。これらの化合物は通常、インスリン分泌を増加させ、グルカゴンを阻害し、胃内容排出を遅らせる。偽刺激された糖尿病の動物と比較して、治療された患者のノルエピネフリンに有意な変化はなかった。視床下部におけるグルコキナーゼによるグルコースからグルコース−6−リン酸への変換は、グルコースに応じたインスリン分泌を初期段階で調節するのに寄与し得る。超音波刺激は抑制性神経伝達物質GABAの大幅な増加と関連していた。観察されたBDNFの増加は、GABA発現の増加と相まって、観察された視床下部NPYの減少を説明し得る。非糖尿病げっ歯類のニューロンは、細胞取り込みの増加(インスリン依存性および独立性の両方のGLUTトランスポーターを含むメカニズムによる)と、酸化的リン酸化およびATP生成のためにグルコースをグルコース−6−リン酸に変換することを含む可能性がある下流のメカニズムを通じて、グルコースに応答する。後者の際に、ATPに敏感なK+チャネル阻害GEニューロンが閉鎖される。IRS−1サブユニットまたは下流メディエーター(例えば、Akt)の活性化は、独立して、グルコース感知の突然の回復を説明する、天然のグルコース感知メカニズムのための「バイパス」となり得る。
図34〜39は、肝臓超音波治療後の対照と比較した様々な終末肝マーカーの濃度を示す。図34は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝IRS−1を示す。図35は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓のホスホ−Aktを示す。図36は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓グルコース輸送体2(GLUT2)を示す。図37は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝ノルエピネフリンを示す。図38は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓のグルコース−6−リン酸を示す。図39は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の肝臓GLP−1を示す。インスリン媒介性のグルコース取り込み、インクレチン放出または解糖活性の観察された変化とは無関係である肝臓のノルエピネフリンの有意な減少が見られた。
図41〜45は、肝臓超音波治療後の対照と比較した様々な終末膵臓マーカーの濃度を示す。図40は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓グルカゴンを示す。図41は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓インスリンを示す。図42は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵レプチンを示す。図43は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓IRS−1を示す。図44は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓GLUT2を示す。図45は、糖尿病ラットにおける肝臓刺激後の膵臓ホスホ−Aktを示す。
図46は、Zuckerレートモデルでの繰り返し処理の結果を示す。ラットは、到着時(約8週間/56日)に前糖尿病の症状が確認された。最初の治療群は、本明細書に記載のパラメータを用いて、1日1回、1分間の超音波刺激を3サイクル与えた。動物が前糖尿病の症状を示した到着時に治療を開始し、15日間治療を継続したのちに終了した。動物(灰色の円)を21日間観察し、循環しているグルコースとインスリンの変化を追跡した。
前糖尿病群での治療の中止と同時に、極めて高いグルコース濃度(≧500mg/dL)を呈する偽超音波刺激を受けた動物に、超音波治療を開始し(1×1日、1分間の3サイクル)、同じく21日間、グルコースとインスリンの変化を観察した。前出の超音波刺激を受けたそれらのアニマの循環グルコースは緩やかな増加を示した。そしてこれらの動物の循環グルコースは、超音波刺激の終了から8日後、〜400mg/dLで安定した。これらの値は重度の糖尿病と一致するが、年齢が同じの糖尿病Zuckerラット対照よりは大幅に低かった。したがって、本明細書に記載の反復治療は、糖調節設定点の調整の持続的な効果をもたらし得る。
本明細書に記載の開示技術は、神経系の自然な階層構造および組織を使用し、単純な非侵襲的技術で精密なニューロモジュレーションを可能にする。この技術は2つの特定の神経経路(脾臓のCAPと肝臓の代謝性感覚ニューロン)について実証されており、他の末梢神経回路を調節するために適用され得る。
本稿記載の説明は、例を使用して、最良の形態を含む本発明を開示し、また、当業者に任意のデバイスまたはシステムの作成および使用、および組み込まれた方法の実行を含む、本発明を実施できるようにする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言に反しない構造要素がある限り、または特許請求の範囲の文言から大きく異なることはない、同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。

Claims (8)

  1. 対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である前記関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、
    コントローラとを備え、
    前記コントローラが、
    前記関心領域を空間的に選択し、
    前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、
    前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの繰り返し印加を調整可能に制御することで、所定時間内で前記シナプスの、前記関心領域内に存在するサブセットを繰り返し優先的に活性化させ、前記エネルギーの繰り返し印加後に、1または複数の関心分子の持続的変化を生じさせるように構成される、調節システム。
  2. 前記コントローラが、
    プロセッサと、
    前記プロセッサが、前記関心領域を空間的に選択すること、前記関心領域および前記第2関心領域に前記エネルギーを集中すること、前記エネルギーの前記印加を制御すること、またはその組み合わせを行うために実行されるように構成される命令を記憶するメモリと、を備える、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記コントローラが、評価装置から第1分子濃度を示す入力を受信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
  4. 前記器官が肝臓である、請求項1に記載のシステム。
  5. 対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である前記関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、
    コントローラとを備え、
    前記コントローラが、
    前記関心領域を空間的に選択し、
    前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、
    前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの印加を繰り返し制御することで、所定時間内で前記シナプスの、前記関心領域内に存在するサブセットを優先的に活性化させ、前記エネルギーの繰り返し印加後に、1または複数の関心分子の持続的変化を生じさせるように構成される、調節システム。
  6. 対象の糖尿病治療を行うシステムであって、
    内臓に、超音波用法を適用するように構成された超音波エネルギー印加装置と、
    前記超音波用法を適用するため、前記超音波エネルギー印加装置を制御するように適用されたコントローラとを備え、
    前記超音波用法が、前記超音波用法の時間枠内の個別の複数の時点で印加される、複数のエネルギー線量を含む、システム。
  7. 対象内の関心領域であって、神経細胞と対応する非神経細胞間のシナプスを含む器官のサブ領域である前記関心領域に対し、エネルギーを印加するように構成されたエネルギー印加装置と、
    コントローラとを備え、
    前記コントローラが、
    前記関心領域を空間的に選択し、
    前記関心領域に前記エネルギーを集中させ、
    前記エネルギー印加装置を通じた前記関心領域に対する前記エネルギーの印加を繰り返し制御することで、前記関心領域に、低デューティ比エネルギー用法を適用するように構成され、
    前記低デューティ比エネルギー用法は、少なくとも4時間の調整可能オフ期間を開けた複数の電気刺激を含み、
    前記オフ期間は、前記コントローラが受信したフィードバックに少なくとも部分的に基づいて決定される、調節システム。
  8. 代謝障害を持つ対象を治療する方法であって、
    前記代謝障害を持つ前記対象の内臓に、超音波用法を適用することで、前記代謝障害を治療することを含み、
    前記超音波用法は、個別の複数の時点で印加される複数の超音波エネルギー線量を含む、方法。

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