JP2021512945A - 剪断応力感受性リポソーム - Google Patents

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Abstract

本発明は、医薬品または造影剤を含む容積を取り囲む1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートからなる膜を含むリポソームベシクルに関する。このベシクルは、体温および生理学的または病態生理学的に妥当な剪断応力において、機械的感受性を有する。

Description

本発明は、新規のジアミドリン脂質1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)、ならびにこれにより形成される単層膜、二重層膜、および機械的感受性ベシクルに関する。こうした機械的感受性ベシクルは、人間の体温における薬物ターゲティングを可能とする薬物送達ビヒクルとして使用できる。
記載
機械的感受性薬物送達という新たな分野において、健康な組織と疾患組織との間の物理的特性の違いを薬物ターゲティングの誘発要因として利用することが求められている。剪断力は、血管中における誘発要因である。マレイの法則によれば、体内血液運搬に必要な仕事量を最小限とするために、血管系全体にわたって剪断力が1.5Pa未満で平衡に保たれている。狭窄部位においては剪断力が少なくとも10倍高くなるため、このような力の変化を用いて、ナノ粒子凝集体またはレンズ型ベシクルからの薬物放出を活性化することができる。
天然リン脂質1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC、図1の式1を参照)と比べると、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(Pad−PC−Pad、図1の式2を参照)は、2つの大きな違いを有する。すなわち、i)脂肪酸アシルエステルが、分子間のH結合ネットワークを形成できるアミド部位で置き換えられていることと、ii)天然には存在しない1,3配置によって末端同士が離れており、これによって指組み(interdigitated)構造の二重層膜となっていることである(図1)。こうした2つの作用が組み合わさることにより、ベシクルの幾何学的形状がくびれて、レンズ型またはd型のベシクルが形成される。こうしたベシクルは、そのままの状態では締まっているが、たとえば振とうなどにより機械的刺激を受けると、内容物を放出する。言い換えると、このベシクルは機械的感受性を有している。
人工リン脂質1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンを含有する自己集合ベシクルは、毒性を有さず、一般的には補体系を活性化しない。したがって、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンを含むベシクルは、機械的感受性ベシクルによる薬物送達のための候補となり得る。しかしながら、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンの主相転移温度(T)は37℃であり、このベシクルを当該温度に加熱すると、液晶膜の易漏性のために、ベシクル中に封入されていた内容物の全量がすぐに放出される。したがって、膜の機械的感受性を維持しながらTを増大させることが望まれる。
従来技術の上述されるような状況に鑑みて、本発明の目的は、機械的感受性薬物送達のための改善されたベシクルの提供である。当該目的は、本明細書の請求項によって達成される。
用語および定義
本明細書の文脈において、用語「ファセット形態」は、レンズ型(レンズ豆形状)または非球状、多くの場合は多面体の形状を有するベシクルに関し、かつ、非球状のベシクル形状を特徴とし得る。リポソームがレンズ型形状を有することによって、その表面領域が、障害および/または欠陥に関連した異なる湾曲を有することになる。そのため、湾曲が大きく規則性が小さい領域では、すなわち中心線に沿った領域では、破壊点となり得る箇所が生じる。こうしたレンズ型形態は、球状ベシクルと平坦表面との間のエネルギーが最小値をとる準安定状態であるとみなされる。冷却速度などのカイネティック因子およびベシクル調製法の選択が、ファセット形態の形成に影響を及ぼす。
本明細書の文脈において、用語「指組み(構造)」は、各脂質単層中のアシル鎖が脂質二重層の中心線を横切り、向かい合う単層中に侵入して、向かい合う脂質単層のアシル鎖と相互作用しているような脂質二重層に関する。完全な指組みとは、二重層中の各アシル鎖が二重層の幅全体にわたって伸びている、すなわち1つの頭部の表面領域に4本のアシル鎖のある脂質二重層である。
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、膜と、膜により境界が画定される水溶液の容積とを含む、または本質的にこれらからなるリポソームベシクルに関する。この膜は、本質的に1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)からなる。
Figure 2021512945
特定の実施形態において、膜は、二重層構造を特徴とする。
リポソームベシクルは、ファセット形態を有する。
特定の実施形態において、二重層構造は指組み相を含み、指組み相は、41℃〜46℃の温度範囲、具体的には42℃〜46℃の範囲、より具体的には43℃〜45.0℃の範囲、より具体的には43.7℃〜44.7℃の範囲、または約43.7℃もしくは約44.7℃において形成される。
特定の実施形態において、ベシクルは医薬品を含む。
特定の実施形態において、医薬品または活性剤は、
・線維素溶解剤、
・血栓溶解剤、
・抗凝固剤、
・抗凝集剤、
・抗血栓性剤、
・アテローム硬化性プラーク安定化剤、具体的にはスタチン、または他の関連もしくは非関連のプラーク安定化剤、
・肝臓X受容体作動薬、
・血管拡張剤、具体的には、直接または間接作用型の血管拡張薬から選択される血管拡張剤、より具体的には、酸化窒素遊離剤、アルファアドレナリン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、直接型レニン阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カリウムチャネル開口薬から選択される血管拡張剤、
・抗不整脈薬、具体的には、ナトリウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬から選択される抗不整脈薬、
・イノトロープ陽性薬(inotrope positive medication)、具体的には、カテコールアミンまたは非カテコールアミンから選択される医薬品、
・心筋リモデリング薬、具体的には、ACE阻害剤またはARBから選択される医薬品、
・拡張障害処置、具体的には、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、またはARBから選択される医薬品、
・鬱血解消、具体的には、脳性ナトリウム利尿ペプチドまたは窒素放出薬(nitro−release drugs)から選択される医薬品、
・放射線造影マーカー、具体的には、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像法、陽電子放射断層撮影、シンチグラフィー、経皮的冠動脈形成術において使用するための放射線造影マーカー、
・化学療法剤、
・凝固因子剤、
・抗炎症剤から選択されるいずれか1つである。
特定の実施形態において、医薬品は、アルテプラーゼ(alteplasum)、ヘパリン、アセチルサリチル酸、クロピドグレル(clopidogrelum)、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、ロスバスタチン(rosuvastatinum)、酸化窒素遊離剤、ニトロプルシド(nitroprussiate)、モルシドミン、フェントラミン、エナラプリル、カンデサルタン、ジルチアゼム、ボセンタン、ミルリノン、レボシメンダン、ミノキシジル(minoxidilum)、アリスキレン(aliskirenum)、キニジン、メトプロロール、アミオダロン、ベラパミル、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ドブタミン、イソプレナリン(isoprenalin)、レボシメンダン、バソプレシン、グリプレシン(glypressin)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ネシリチド(nesiritidum)、ニトログリセリン、アルテプラーゼ(alteplasum)、エプタコグアルファ(eptacogum alfa)、遺伝子組換え第VII因子(ノボセブン)、ペルリンガニット(perlinganit)から選択される。特定の実施形態において、本発明に係るベシクルは、ヨウ素またはヨウ素含有造影剤、およびガドリニウム含有造影剤を含む。
特定の実施形態において、リポソームベシクルは、心筋細胞または幹細胞を含む。
本発明の別の一態様は、ベシクルの調製方法であって、
i. 1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを、有機溶媒中、具体的には揮発性有機溶媒(solgent)中、より具体的にはメタノールまたはエタノールまたはエタノールアセテート、またはジクロロメタンまたはクロロホルム中に溶解させた状態で提供する工程と、
ii. 不活性雰囲気下(真空下または窒素気流下)において有機溶媒を除去することによって、脂質シートを得る工程と、
iii. 生理的pHを有する第1の水性緩衝溶液(具体的には10mmol/L HEPESを含む)中に脂質シートを懸濁する工程であって、第1の緩衝溶液が、
・クロリド塩を含む、具体的にはNaClを約5mmol/L〜約15mmol/Lの範囲、具体的には約10mmol/Lの濃度で含む、および/または
・200mOsm/L〜400mOsm/Lの範囲、具体的には280mOsm/L〜320mOsm/Lの範囲の容量オスモル濃度を有する、より具体的には308mOsm/Lの容量オスモル濃度を有する、工程と、
iv. 少なくとも1回の凍結工程と少なくとも1回の解凍工程とを適用する工程であって、
具体的には、凍結工程が、液体窒素などの低温貯蔵用の剤によって行なわれ、解凍工程が、試料の温度を急速に55℃〜70℃の範囲、具体的には65℃にして、懸濁液にすること(ベシクル断片化)によって行なわれる、工程と、
v. 押出工程において、懸濁液を、具体的には、孔径が50nm〜150nmの範囲、より具体的には80nm〜120nmの範囲、さらにより具体的には孔径が100nmであるフィルターを通してろ過することによって、押し出し、
任意に、この押出工程を、具体的には5〜15回繰り返すことによって、
押出物を得る工程と、
vi. 生理的pHおよび重量オスモル濃度を有する第2の緩衝溶液中に押出物を透析して、低分子量成分を除去する工程とを含む、方法に関する。
特定の実施形態において、第2の(透析用)緩衝液は、クロリド塩、具体的にはNaClを、約80mol/L〜120mmol/Lの範囲、具体的には107mmol/Lの濃度で含む。特定の実施形態において、緩衝液は、約10mmol/LのHEPESで緩衝されている。他の生理的および製薬学的に許容される緩衝系が、当技術分野において周知されている。
透析は、分子量1500Da以下の分子を除去するために選択される。その手段の例は、セファデックスG−50カラム、Illustra Sephacryl S−1000 Superfine、またはPD−10脱塩カラム(GE Healthcare、英国)を含むが、これらに限定されない。
本発明に係るベシクルは、当技術分野において周知の技術に従って得ることができる(たとえば、Encyclopedia of Nanoscience and Nanotechnology,第9巻,pp.43−79(37)の、Peter Waldeによる「Preparation of Vesicles(Liposomes)」)。特定の実施形態において、ベシクルは、薄膜水和、および/もしくは1回以上の凍結−解凍サイクル、超音波処理、もしくは/および押し出しによって、または電気形成(electroformation)法によって、または噴霧乾燥させた脂質を含水させることによって、または超音波処理によって、または凍結および解凍を繰り返すことによって、または脱水および再含水によって、または押し出し技術によって、または多重層ベシクルの懸濁液をマイクロフルイダイザーで処理することによって、または多重層ノバソーム(novasomes)の調製もしくは多重層球晶の調製によって、または「気泡法(bubble method)」(Talsmaら,J.Pharm.Sci.83,276(1994))による多重層ベシクルの調製によって、または「渦巻きシリンダ法(Cochleate cylinder method)」(Gould−Fogcrite and Mannino,Liposome Technology,第I巻,第2版,G.Gregoriadis編,CRC Press,Boca Raton(1993),p.67)による調製によって、または「逆相蒸発技術(Reversed−phase evaporation technique)」による調製によって、または水/油および水/油/水エマルションからの調製によって、または「溶媒−小球体(w/o/wエマルション)法(solvent−spherule(w/o/w−emulsion)method)」(Kimら.Biochim.Biophys.Acta 812.793(1985))もしくは「デポフォーム技術(DepoFoam Technology)」(Mantripragada,Progr.Lipid Res.41,392(2002))による調製によって、または有機水性二相系からの調製によって、または「エタノール注入法(ethanol injection method)」(Domazou and Luisi,1.Liposome Res.12,205(2002))による調製によって、または「プロリポソーム法(pro−liposome method)」(Williamsら,Phospholipids/Characterization,Metabolism,and Novel Biological Application,Cevc and Paltauf編,AOCS Press,Champaign IL(1995).p.181)による調製によって、または多重層エソソーム(ethosomes)の調製によって、または「指組み融合法(interdigitation−fusion method)」(Chenら Biochim.Biophys.Acta 1195,237(1994))による調製によって、または「コアセルベーション技術(coacervation technique)」(Ishiiら,Langmuir 11,483(1995))による調製によって、または「超臨界リポソーム法(supercritical liposome method)」(Frederiksenら,J.Pharm.Sci.86,921(1997))による調製によって、または初期油/水エマルションからの調製によって、または「エーテル注入法(ether injection method)」(Deamer,Ann.N.Y.Acad.Sci.308,250(1978))による調製によって、または「急速溶媒交換法(rapid solvent exchange method)」(Buboltz and Feigenson,Biochim.Biophys.Acta 1417,232(1999))による調製によって、または「界面活性剤枯渇法(Detergent−depletion method)」(Parente and Lentz,Biochemistry 23,2353(1984);Allenら,Biochim.Biophys.Acta 601,328(1980))による調製によって、または二重層形成両親媒性物質とミセル形成両親媒性物質の混合による調製によって、またはカオトロピック性イオン溶液中の脂質からの調製によって、または界面活性剤の使用により水/油エマルションから調製したベシクルの調製によって製造される。
本発明の別の一態様は、上述されるプロセスによって得られるベシクルに関する。
本発明のさらに別の一態様は、
・血管疾患、または
・皮膚科疾患、または
・関節症の処置における、上述される化合物の使用であって、
当該化合物は本発明に係るベシクルの形態で投与されることを特徴とする、使用に関する。
特定の実施形態において、本発明に係る化合物によって処置される疾患は、急性冠症候群(ACS)、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、脳血管発作(CVA)、脳卒中、アテローム性動脈硬化、血管攣縮、腫瘍処置、喀血、肺塞栓症、肺動脈性肺高血圧症、腸管虚血、腸管出血、腎梗塞、腎出血、高血圧処置のための腎自己調節、自己免疫性糸球体腎炎、間質性腎炎、胎児疾患、胎盤梗塞、胎盤出血、網膜虚血、網膜出血、および網膜血管新生から選択される血管疾患である。
特定の実施形態において、本発明に係る化合物によって処置される疾患は、皮膚科疾患であり、ざ瘡、ナプキン皮膚炎、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、乾癬、疣贅、足白癬、脂漏性角化症、蕁麻疹、酒さ、皮膚科性ウイルス感染、および皮膚科性細菌感染から選択される。
本発明の別の一態様は、先行する態様または実施形態のいずれか1つに記載のベシクルの、モニタリングまたは診断方法における使用に関する。
別の一態様において、本発明は、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)に関する。
Figure 2021512945
(4)の単層は、有機溶媒、具体的には揮発性有機溶媒、たとえばクロロホルム、DCM、またはメタノール、またはエタノール中に(4)を溶解することによって得ることができる。この溶液を水または水溶液の静止面上に滴下すると、溶媒が穏やかに除去される。
脂質単層を、たとえば、乳児サーファクタント欠乏により引き起こされる乳児呼吸窮迫症候群の処置または予防において使用できる。
図1は、天然リン脂質1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、ならびに、C16脂肪酸を有する1,3−ジアミドリン脂質(1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン)、C17脂肪酸を有する1,3−ジアミドリン脂質(1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート、およびC18脂肪酸を有する1,3−ジアミドリン脂質(1,3−ジステアラミドプロパン−2−ホスホコリン)の式である。 図2は、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含む単層の、ラングミュア−ポッケルストラフ上の空気−水界面での異なる水性部分相の温度における表面圧/1分子あたりの面積の等温線を示す。ウィルヘルミーの紙秤(精度0.2mN/m)を用いて表面圧を記録した。 図3は、空気−水界面に広がった1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含む単層の主相転移における主相転移圧力Πの温度依存性(左)およびエントロピー変化(ΔS)の温度依存性(右)を示す。 図4は、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)について、20℃および異なる表面圧π(左から右:14mN/m、18mN/m、22mN/m、26mN/m、36mN/m)における、散乱ベクトルQの面内Qxy要素および面外Q要素の関数としての回折強度のGIXDヒートマップを示す。 図5は、1/cos(t)として表されるアルキル鎖の傾斜角(t)の、20℃での、側方表面圧(π)に対する依存性を示す。 図6は、測定した膜断面が強調され(左、膜を通る白色のすじとして強調される)、かつ球状/ファセット状比率の統計学的評価のためにベシクルが着色された(オレンジ色、ファセット状;緑色、球状)、cryo−TEM画像を示す(スケールバーは200nm)。 図7は、画像全体のうち異なる区画が拡大され、ベシクル構造が強調された、cryo−TEM画像を示す(スケールバーは200nm)。 図8は、100nmのトラックエッチド(track−edged)フィルター膜(LUVET100)を通す押し出しによって得られた、5(6)−カルボキシフルオレセインを含む大きな単層の、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)を含むベシクルを使用した、放出実験を示す。引き起こされた放出は、ボルテックス振とう器を用いて試料を特定時間にわたって振とうすることにより誘発された。1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(2)は、37℃において、振とう無しで、内容物の全量をすぐに放出した。 図9は、NaCl水溶液中における(4)のカロリグラムを示す。曲線は、例示的な試料について生じたベシクルの形状およびサイズの分布を表す。 図10は、N=509個の膜切断片についての、Rad−PC−Rad含有ベシクル膜の膜厚の分布、およびガウスのフィッティングを示す。 図11は、静的条件下におけるDPPC/DSPE−PEG(黒い点、上ダイアグラム)およびPad−PC−Pad(黒い四角、下ダイアグラム)の散乱シグナルの積分値を示す。DPPC/DSPE−PEGシグナルのフィッティングを、薄い球状のシェルモデルおよび二重層ガウス電子密度プロファイルモデルを使用して行ない(灰色線、上パネル)、2つのリン脂質頭部の頭部間距離dhh=2.4nm、および2σ=3.0nmであった。Pad−PC−Pad散乱シグナルのフィッティングを、薄い楕円シェルモデルおよび二重層ガウス電子密度プロファイルモデルを使用して行ない(灰色線、下パネル)、偏心量εは0.43、2つのリン脂質頭部の頭部間距離dhh=3.3nm、および2σ=1.4nmであった。 図12は、q範囲0.096〜0.102nm−1における、3通りの流速vでの、平均散乱強度の2Dマップを示す。流速v=0:002μL/sでは、入口側における強度がわずかに高いものの、くびれの両側において強度はどちらかと言えば均質である。これより大きい流速(v=0.02;0.2μL/s)では、強度が高く明確なプルーム様の形状を有するシグナルがくびれ出口の直後に見られるが、くびれ入口では、シグナルは、中程度の流速において強度が高く、最も大きい流速においてはデバイス壁の停滞区域にて強度が低くなっている。 図13は、左上に示すマイクロ流体デバイスの概略図は、選択した7つの領域を示す。各領域について、3通りの流速(v=0.002μL/s、青色;v=0:02μL/s、緑色;およびv=0.2μL/s、オレンジ色)について、半径方向に積分した散乱シグナルがプロットされている。高いq値での差異がくびれの前と後との領域において明らかであり(これは二重層の厚さの変化を示す)、より大きい流速において顕著となる。 このグラフは、3通りの流速について、Iの差分を規格化したもの(I−I)/(I+I)を、領域AおよびBにおけるq曲線(図13を参照)に対して示す。特に、最も大きい流速について、散乱シグナルの著しい差異がみられ、これは高いqについて顕著であり、頭部間距離が変化したことを示す。選択した3通りのq範囲(Δq=0.04〜0.05nm−1、Δq=0.16〜0.17nm−1、およびΔq=0.83〜1.12nm−1)についての平均散乱強度の2Dマップが示される。図12と同様に、流速増大につれて流れ場が確立されていることが観察できる。 図15は、くびれよりも前(青い点)および後(赤い点)においてPad−PC−Pad(上)およびDPPC/DSPE−PEG(下)に対して同じ最大剪断力が作用した際の散乱強度曲線の比較を示す。くびれよりも前および静的条件下における散乱シグナル(暗色の点)と比較して、くびれよりも後に、Pad−PC−Padリポソームの二重層ピークの顕著なシフトが観察される。 DPPCリポソームについてのSANSデータのqプロットは、選択した温度について、小さな差異しか示さなかった。加熱サイクル前(塗りつぶした点)と後(中あきの丸)とで、散乱シグナルはほとんど同じである。SANS測定後に得られたcryo−TEM画像はサイズ約100nmのファセット状のリポソームを示し、スケールバーは100nmに対応する。 転移温度Tよりも低温および高温においてそれぞれ得られたPad−PC−PadリポソームについてのSANSデータのqプロットは、ナノメートル域の全体にわたって温度依存性の構造変化を明らかに示す。2つめのダイアグラム中のグラフに示されるように、SANS実験中の加熱が、二重層の厚さの周期性に対応する構造変化を誘発した。cryo−TEM顕微鏡写真の2つの選択した部分は、SANS測定の前と後とに記録したものであるが、これらは、リポソーム調製物の構造変化を特徴とする。スケールバーの長さは100nm。 Rad−PC−RadリポソームのSANS散乱シグナルは、調べた温度範囲にわたってほぼ同じである。SANS測定後に記録したcryo−TEM画像中にみられるリポソームは、長さ100nmを示すスケールバーよりも大きかった。 温度を上昇させると、Pes−PC−Pesリポソームの中性子散乱シグナルが実質的に変化した。加熱サイクルの後、q=0.83nm−1におけるピークがほぼ消えた。cryo−TEM顕微鏡写真は、長さ100nmを示すバーの長さよりも十分に大きいサイズを有する、特徴的な構造を示す。 Pad−Pad−PCリポソームのqプロットは、22〜42℃の温度範囲内において同じである。この懸濁液は、長さ100nmを示すスケールバーよりも大きいリポソーム因子を含有する。 Sur−PC−Surリポソームのqプロットは、調べた温度範囲内において一定である。選択されたcryo−TEM画像区画から分かる通り、リポソーム懸濁液は不均質である。バーの長さは100nmに対応する。 本研究で考慮した温度範囲内において、qプロットはほとんど変化せず、このことは、Sad−PC−Sadリポソームが構造上安定であることを意味する。SANS測定後に記録したcryo−TEM画像は、様々な形状およびサイズのリポソームを示すが、平均サイズは長さ100nmを示すスケールバーの範囲内である。 このダイアグラムは、選択した3通りの温度についての中性子散乱の実験データ(色つきの点)を、選択したモデル(色つき線)を用いてどこまで近似できるかを示す。差異を見やすくするために、35℃および39℃での結果を、32℃での結果を基準として、縦軸に沿ってそれぞれ3倍および10倍シフトさせた。
実施例
実施例1:1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートの合成
1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを、スキーム1に示される合成経路に従って合成した。オキシ三塩化リンを1,3−ジクロロプロパノールで置換することにより、ホスホロクロリデートを得た。さらにBoc保護エタノールアミンで置換することにより、適度に安定なホスホロアミデート(5)を得た。この中間体をジアジドに変換し、続いて還元してジアミンとした。ヘプタデカン酸と塩化チオニルとから調製したヘプタデカン酸クロリド(6)を用いてヘプタデカノイル鎖を得て、これをジアミンと反応させて、頭部が保護されたホスホロアミデート(7)を得た。酸性の頭部を脱保護し、硫酸ジメチルで4級化して、最終産物であるジアミドリン脂質1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)を得た。頭部保護ジクロロプロピルホスホロアミデート(5)から開始して5つの工程の後に得られた全収量は、37%であった。次いで、この化学的に純粋なジアミドリン脂質1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを、空気−水界面において単層として(2Dモデル)、およびバルク系として(3Dモデル)、分子レベルで特徴づけた。
Figure 2021512945
実施例2:表面圧/1分子あたり面積の等温線
表面圧/1分子あたり面積の等温線の測定を、ウィルヘルミーの紙秤(精度0.2mN/m)を備えたラングミュア−ポッケルストラフ上で、空気−水界面にて行なった。部分相の温度を5℃〜25℃の間で変えて、等温線を測定した(図2)。
1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含む単層は、液体膨張−液体凝縮という相挙動を示した。10℃より高温において、膨張と凝縮の相転移が混在するプラトーが観察された。プラトーの出現と共に、1分子あたりの面積が初期に持ち上がって高値にシフトしている。このプラトーは、液体膨張(LE)相から液体凝縮(LC)相への一次相転移を表す。プラトーは完全な水平ではなく、特に、温度が上昇するにつれて傾斜が急になっている。単層自体は、表面圧測定範囲の全体(機器の限界のため、上限51mN/mまで)にわたって安定である。プラトーの始まりから、温度依存性の主転移圧力Πを求めることができる。1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートについて、この依存性を1次関数で表すことができる(図3)。実験データは、最低転移温度T近傍のみにおいて当該1次関数からずれており、この温度未満では、凝縮相への転移が、気体に似た状態から直接開始する(再昇華過程)。1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートについて、この温度は284.4Kである。
Πでの一次相転移の始まりにおける1分子あたりの面積(A)と、膨張−凝縮の相共存状態の終わりにおける面積(A)とから、2次元のクラウジウス・クラペイロンの式の変形を用いて、相転移のエンタルピー変化(ΔH)を計算できる。
Figure 2021512945
このエントロピー変化の依存性が、ΔS=ΔH/Tによって表され、図3中に示される。ΔSをゼロに外挿することによって、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含む単層の臨界温度が306.3Kであると求められる。これより高温においては、単層が圧縮されて凝縮状態になる現象は起こり得ない。
実施例3:微小角入射X線回折(GIXD)
GIXD実験により、凝縮単層の格子構造についてのオングストロームスケールでの洞察が得られる。異なる測定値について、散乱ベクトルの面内要素(QXY)および面外要素(Q)の各最大値が表1中に示され、ヒートマップの例が図4中に示される。1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートについては、測定したすべての温度/表面圧の組み合わせに対して、2つのブラッグピークが観察された。高いQにおけるシグナルは、2つの等しいシグナルからなる縮重シグナルである。1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)の単層は、歪んだ矩形の単位胞で描かれる斜方格子構造を有し、NN(最近接)方向に歪んでおり、脂質尾部の同NN方向への傾斜角tが相当大きい(27°〜38°)。20℃において、鎖の断面積(A)は約19.3Åであり、したがって、これより低温における観察値(10℃にて19.0Å、および15℃にて19.1Å)よりもわずかに大きいだけである。これは、ヘリンボーン型(herringbone)充填様式の鎖に典型的な値である。この充填様式は、歪みとsin(t)の外挿により得られる歪み値によって裏付けられる。d値は−0.0775に達し、格子の歪みの原因が傾斜のみである場合に予期され得るゼロ値とは明らかに異なる。ここに提示される場合において、ヘリンボーン型充填は、さらなる原因であり、頭部と頭部との間の水素結合ネットワークによって生じている可能性がある。
表面圧の増加につれて、傾斜角tが1mN/mあたり0.41°減少する(図5)。凝縮相では断面積が一定であると仮定すると、1/cos(t)対側圧のプロットから傾斜相転移圧力を求めることができる。1/cos(t)=1への外挿によって、傾斜圧力が62.3mN/mであると求められる(図5)。このような相転移は、通常は、二次相転移について予期されるように表面圧面積等温線の屈曲によって特徴づけ得る。しかしながら、予期される転移表面圧は高すぎて、使用した設定では観察できない。傾斜相転移圧力は、ジアミドリン脂質のC18アナログである1,3−ジステアラミドプロパン−2−ホスホコリン(3)のような他の脂質の値に匹敵し得る。目に見える傾向として、脂肪酸アシル鎖が長いほど傾斜相転移圧力が高い。30℃において、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)の断面積20.2Åは、回転相について予期される範囲内である(表1および図3)。
Figure 2021512945
表1:1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)を含む単層の、異なる温度および表面圧における微小角入射X線回折測定により得られたデータの概要。Axy:鎖1本あたりの面内面積、A:A=Axycosτである鎖1本あたりの断面積。
実施例4:クライオ透過電子顕微鏡法(cryo−TEM)
本発明者らは、以前に記載されたプロトコール(Ishikawaら,J.Mol.Biol.2007,368(5),1249−1258)に従って、cryo−TEM画像を測定した。Rad−PC−Radのみからなる大きな単層ベシクル(LUV)について記録したcryo−TEM画像は、膜の膜主相転移温度よりも低温において、相当数の強ファセット状の形状を示す(T≒45℃)(図6および図7)。図6から計算した、ファセット状ベシクルと球状ベシクルとの比率は、21:4である。依然として球状の形状が生じているが、これは、調製した脂質膜中の小さな不純物によるものと考えられる、というのは、少量の界面活性化合物が膜の形状および挙動に対して既に相当な影響を及ぼしている可能性があるためである。
膜中における小葉の指組みを、cryo−TEM画像中において膜を横方向に切断したものから直接測定できる(図6)。統計学的に妥当なデータを収集するために、本発明者らは、平均膜厚が3.20nm±0.02nmである膜切断片509個(図6)について測定した(N=509)。疎水性層の厚さは、0.7nmである頭部の2倍であって、1.8nmである。16個のC原子を有する全トランス型アルキル鎖は、長さが2.05nmである。したがって、このアルキル鎖は傾斜角64°を有し得るが、これは物理的に不合理である。したがって、完全な二重層指組み構造になっていると仮定できる。
実施例5:示差走査熱量測定
膜の小葉の指組みは、膜の主相転移温度にも影響を及ぼす。加熱および冷却の速度を0.5℃/分として行なった、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含有するLUVからの示差走査熱量測定実験の結果、主相転移温度は44.7℃で、エンタルピー変化は24.16kJ/molであることが分かる。主相転移温度は、マルガリン酸鎖を有する天然1,2−ジエステルリン脂質の48.6℃よりも低い。また、二重層の主相転移温度の値は、指組みが起こり得ない単層実験から計算した臨界温度よりも、11.5K高い。
1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含有するベシクルの主相転移温度は人間の体温よりも十分に高いため、その機械的感受性リポソームの、標的薬物放出における使用に、関心が持たれている。この点において使用できそうなリポソームを調べるために、放出実験を行なった。
実施例6:放出実験
以前に、本発明者らは、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(2)を含有するベシクルからの5(6)−カルボキシフルオレセインの放出について報告している(Holmeら,Nat.Nanotechnol.2012,7,536−543)。1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(2)が、その主相転移温度(T=37℃)よりもわずかに高いだけの温度において強い自発性放出を示すことから、この脂質を人間の平均体温である37℃で使用することは理想的ではない。Tを上げることにより放出特性が改善されることが見込まれる。1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートは、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンよりも長い鎖を有するため、主相転移温度も44.7℃と高い。このことにより、22℃(室温)および37℃(人間の平均体温)におけるベシクルからの漏れは小さくなる(図8)。アシル鎖を、人工C18リン脂質1,3−ステアロイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンまで伸ばすと、Tが52℃に上がるが、このリン脂質はリポソームをほとんど形成しない。
各試料をTriton X−100で処理して、5(6)−カルボキシフルオレセインの完全な放出を誘発した。温度22℃において、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含むベシクルは、7日後に5(6)−カルボキシフルオレセインの9%の自発放出、および60秒間のボルテックス後に24%の機械的誘発放出を示す。1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリンを含むベシクルは、60秒間のボルテックス後に43.4%の機械的誘発放出、7日後に15.5%の自発放出を示す。1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)を含むベシクルは、60秒間のボルテックス後に1.1%の機械的誘発放出、および7日後に4.5%の自発放出を示す。37℃において、60秒間のボルテックス後における1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(Rad−PC−Rad)を含むベシクルの機械的誘発放出は34%であり、一方、1,3−パルミトイルアミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(Pad−PC−Pad)を含むベシクルはボルテックス無しで100%の放出を示し、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンを含むベシクルは60秒間のボルテックス後に17.9%の放出を示す(表2)。
この放出実験は、1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを含有するベシクルを、体温における機械的感受性の標的薬物放出に使用できる可能性があることを示す。
Figure 2021512945
表2:異なるリン脂質からなるリポソームの放出速度。
実施例7:ベシクルの調製
1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)の、直径100nm(LUVET100)の大きな単層ベシクルを、押し出しプロトコールに従って調製した。25mlの丸底フラスコ中において、この脂質10mgをCHCl中に溶解した。有機溶媒を蒸発させた後、得られたフィルムを高真空(40mbar)にて一晩、さらに乾燥させた。次いで、内部緩衝液(1ml、純水に50mM 5(6)−カルボキシフルオレセイン、10mM HEPES緩衝液(AppliChem)、10mM NaClを溶解したもの、pH7.4)を用いて、30分間かけてこのフィルムを含水させた。そして、少なくとも5回の凍結−解凍サイクル(液体Nから65℃)を行なった後、Mini Extruder(Avanti Polar Lipids、米国)を使用し、メッシュサイズ100nmのトラックエッチド(track−edged)フィルター(Whatman、米国)を使用して、懸濁液を11回押し出した。次いで、外部緩衝液(107mM NaClを超純水に溶解したもの、10mM HEPES、pH7.4)を用いたサイズ排除カラム(1.5×20cm セファデックスG−50カラム)を使用して、外部緩衝液の交換を行なった。
実施例8:リポソームの特徴づけ
Pad−PC−Padリポソームの最終濃度は(19.6+/−1.3)mg/mLであり、DPPC/DSPE−PEGの最終濃度は(20.2+/−6.5)mg/mLであった。
DLSの結果は、Pad−PC−Padについて平均直径が(131.6+/−0.9)nm、多分散指数(PDI)が(0.103+/−0.009)であることを示し、一方、DPPC/DSPE−PEGについては、平均直径が(101.3+/−0.5)nm、PDIが(0.256+/−0.005)であることが分かった。
実施例9:静的条件下におけるSAXS測定
調べたq範囲0:02nm−1〜1:65nm−1は、実空間距離dにして314〜3nmに対応し、したがって、リポソームの特徴づけに関連するナノメートル域のほぼ全体をカバーする。図11のダイアグラムは、好適なガラスキャピラリ中に得たDPPC−DSPE/PEG(上パネル)リポソームおよびPad−PC−Pad(下パネル)リポソームの散乱シグナルの半径方向の積分である。
DPPC/DSPE−PEGについて、1:1nm−1付近における強度のピーク(実空間では5:7nmに対応する)は、二重層の厚さに関する。
Pad−PC−Padについて、二重層の厚さに関するピークは、検出可能なq範囲の端に位置し、さらにノイズが増加しているため、明確に特徴づけることはできない。
好適なモデルが、しばしば、調べる対象である系の散乱シグナルを解釈するために利用される。ここでは、DPPC/DSPE−PEGおよびPad−PC−Padの両方の散乱曲線を、全体形状因子を長辺寸法の断面項と短辺寸法の断面項との積として因数分解できる分離(decoupling)アプローチを使用して、フィッティングする(Porodら,IV.Acta Physica Austriaca 1948,2,255−292)。DPPC/DSPE−PEGの全体的形状に関する形状因子のフィッティングには薄い球状のシェルモデルを使用し(Brey:lerら,Journal of Applied Crystallography 2015,48,1587−1598)、一方、二重層に関する強度のピークを、ガウスの電子密度プロファイル(Pabstら,Journal of Applied Crystallography 2003,36,1378−1388;Pabstら,Physical Review E 2000,62,4000)を有する二重層についての関数を使用してフィッティングした。二重層のフィッティングに使用したモデルによって、2つのリン脂質頭部の頭部間距離dhhとして二重層の厚さが得られ、およびこれらリン脂質頭部にわたる標準偏差が得られた。
多分散の理由を説明するために、半径Rおよびdhhは正規分布であり、平均はR=44.6nmおよびdhh=2.4nmであると仮定した。
DPPC/DSPE−PEGリポソームの平均直径89.2nmは、DLSから得られた平均値(101.3nm)よりも小さい。報告によれば、SAXSでは溶媒のコントラストのばらつきのためにリポソーム表面に結合したPEGの流体力学的なサイズを検出することができないため、DLSはSAXSよりも最大20%高い値を与える。図11中に示されるように、最も低いq値におけるDPPC/DSPE−PEGの散乱曲線の強度の急降下は、粒子間の干渉に起因する。報告によれば、PEGの付加によってリポソームの凝集が防止される、すなわち、粒子間に反発作用が生じる。使用したモデルにおいては、PEGの寄与は含まれなかった。
DPPC/DSPE−PEGの頭部間距離dhhが2.4nmであることは、2つのリン脂質頭部にわたって計算された標準偏差2σ=3:0nmを含めた場合、報告(Wangら,Journal of Colloid and Interface Science 2015,445,84−92)されている二重層の厚さの値5.6nmに見合う。
Pad−PC−Padの全体的形状に関する形状因子のフィッティングを行なうために、薄い楕円シェルモデルを使用した(Olsonら,Biochimica et Biophysica Acta(BBA)−Biomembranes 1979,557,9−23)。偏心量εが0.43であることが分かった。DPPC/DSPE−PEGについては、リン脂質頭部間距離dhhに関する強度のピークのフィッティングを、ガウスの電子密度プロファイル(Pabstら,Journal of Applied Crystallography 2003,36,1378−1388;Pabstら,Physical Review E 2000,62,4000)とdhhにわたる正規分布とを有する二重層についての関数を用いて行なった。結果から、2つのリン脂質頭部について、平均dhh値=3.3nmおよび標準偏差2σ=1:4nmであることが示された。
Pad−PC−Padの散乱曲線の低いq値において、Guinier近似(Guinier,Annales de Physique 1939,11,161−237)を使用して旋回半径(R)を求め、R=60.3nmでありかつ標準偏差σRg=0.4nmであることが分かったが(表4参照)、これは、DLSから得られた平均直径値(131.6nm)に見合うものであった。
実施例9:動的条件下におけるPad−PC−PadのSAXS測定
ガラスキャピラリ中での測定により、静的条件においてPad−PC−Padのリポソーム構造のフィンガープリントが得られた。剪断応力勾配などの外部摂動下におけるPad−PC−Padリポソームの挙動を調べるために、マイクロ流体デバイス中に作った流れ条件下でのPad−PC−Padリポソームの2DラスターSAXSスキャンを記録した。
3通りの流動速度v(v=0.002、0.02、および0.2μL/s)について試験した。等式1(Eq.1)を用いて、対応する剪断速度を求めた。最も小さい流速から最も大きい流速について、くびれ(h=250μm、w=125μm)における剪断速度は1.54、15.4、および154.0s−1であり、一方、広い領域(h=250μm、w=1000μm)においては0.2s−1、2.0s−1、および20.0s−1に対応していた。
全体的なサイズとリン脂質頭部間距離の大きさとの間の実空間範囲Δd=65.4〜61.6nmに対応するΔq=0:096〜0:102nm−1の範囲における平均散乱強度の2Dマップが、図12中に示される。
2Dマップにおいて観察された非対称の強度分布は、変動する流れ条件下におけるリポソームの複雑な挙動を示唆しており、流速と、その結果としての剪断応力とがリポソームに影響を及ぼし、デバイス内での位置に依存する散乱シグナルの変動を誘発することが明らかである。最も小さい流速では、入口側において強度がわずかに増加したことが観察された。
中程度の流速においては、くびれのために流れ場が相当に変化し、この変化はくびれに近づくにつれて加速し、くびれの直後にはプルーム様の形状に発散して、最後には、くびれから離れた位置で減速した。予想外にも、くびれの内部および全長における散乱シグナルは、入口でのものより減少していた。
最も大きい流速においても、類似の挙動が観察され、違いとして、入口における強度分布が「反転」、すなわちデバイスの壁に沿って強くなっていた。デバイスの壁においてこのように強度が強くなる現象は、停滞域を示唆するものであり、これは中程度の流速において既に始まっていた。くびれの直後には、中程度の流速におけるものと類似する高強度の「プルーム」が観察された。
図12の2D走査SAXSマップにおいて観察された平均散乱強度分布の局所変化は、図13の概略図中に示されるマイクロ流体デバイスの7つの領域の選択を裏付けるものであった。くびれよりも前で3つの領域を選択した(遠いもの(#1)、近づきつつあるもの(#2)、非常に近いもの(A))。対称的に、出口側においても、3つの領域を選択した(非常に近いもの(B)、近いもの(#4)、くびれから遠いもの(#5))。領域#3は、デバイスの端を避けて、くびれ内部にて選択した。各領域について、各流速vにおける散乱ベクトルqの関数としての散乱強度Iの半径方向の積分が示される。
入口側においては(領域#1および#2)、低いqおよび中程度のqにおける顕著な変化は、vの関数として観察できない。
中程度のqにおいて観察されるI(q)の振動(oscillations)が重なっているが、このことは、リポソームの形状およびサイズ分布が類似することを示す。対照的に、流れが増大するにつれて頭部間距離dhhがわずかに減少しており、これは、qの位置が最小値から高い方へシフトしていることによって示される(表3を参照)。
領域Aにおいて、最も小さい流速にて、散乱シグナルは、全q範囲にわたり、領域#1および#2において観察されたものと同等であった。中程度の流速および中程度のqにおいて、振動が不鮮明(smear)になった。この不鮮明化は、リポソームの全体的形状の変化を示すものであり得る。
v=0:2μL/sにおいて、振動が再度、最も小さい流速におけるものに類似して、より顕著に表れ、最小値の位置が右にシフトしており、このことはdhhの減少に見合う。
くびれ内部において(領域#3)、リポソームの散乱曲線は、流速の変化による顕著な差異を示さなかった。しかしながら、静的条件およびくびれよりも前の領域に関し、3通りの流速においてR値の増加が観察された(表4を参照)。dhh値の顕著な変化は検出されなかった。しかしながら、くびれに由来するシグナルはデバイスの壁からの残存エッジ散乱があるために信頼性が低いということに注目すべきである。
くびれの出口において(領域B)、振動は、最も小さい流速においては依然として顕著であるが、中程度および大きい流速においては完全に不鮮明になった。実際、表4中において報告されるR値は、静的条件下で見られた値と同等であったが、流速が上がると約13%の減少を示した。さらに、最小値が0.50から0:45nm−1に、さらに低いq値へとシフトし、このことは、この領域において、流れ場によって、静的条件と比較して約30%のdhhの増加が引き起こされたことを示す(表3を参照)。
Pad−PC−Padの二重層の厚さの増加は、液晶相(転移温度よりも高温)とコレステロール存在下におけるゲル相(転移温度よりも低温)とにおいて通常観察される機械的誘発によるリン脂質アミド鎖の完全な指組みの喪失に見合うものである。領域#4において、散乱シグナルが徐々に減少した。中程度および大きい流速については、領域Bでの場合と同様に振動が不鮮明となったが、最も小さい流速については、領域#2での場合と同様に振動を十分に視認できた。3通りの流速の間で、最小値の位置に顕著な差はなく、このことは、二重層の厚さに顕著な変化がなかったことを示す。
領域#5において、3通りの流速について、振動が、領域#1における場合と類似していた。一方、最小値の位置は、最も大きい流速において、中程度および最も小さい流速と比較して、0.55から0:6nm−1へと、わずかに右にシフトしていた。
流速を変えたことによって低いq(たとえば、領域#5)または高いq(たとえば、領域#1、#2)のいずれかにおいて変化が観察された他の領域と比較して、局所的な流れ場の影響を受けて、領域AおよびBにおいて、高いqおよび低いqの両方にてリポソーム形態の変化が検出される(図13を参照)。
3通りの流速における領域A(くびれよりも前)および領域B(くびれよりも後)での変化(図13を参照)を明らかに示すために、これらの2つの領域における散乱曲線を、散乱強度の差分を規格化したものとして示した(図14中のグラフを参照)。
ここでは、リポソームの全体的なサイズの平均(Δq=0.04〜0.05nm−1)、二重層の厚さの周りのサイズ(Δq=0.83〜1.12nm−1)、およびこれらの間の範囲(Δq=0.16〜0.17nm−1)を含む、3つのΔq範囲を選択した。各流速における、選択した各Δq以内の、散乱強度の積分値の2Dマップが示される。
最も小さい流速および範囲Δqにおける2Dマップ(図14、下右を参照)は、くびれの前と後とに垂直のすじを示しており、これは、マイクロ流体デバイス中に物体が存在することを明らかに示すものである。選択した3つのΔq範囲において、2Dマップ中(図14を参照)、図12中に示されるものと同等の傾向が観察された。
流れ場に対するPad−PC−Padリポソームの反応を、DPPC/DSPE−PEGの場合と比較して、図15中に示す。ここでは、図15のデバイス概略図中に示される2つのエリア(青い四角および赤い四角)におけるPad−PC−PadおよびDPPC/DSPE−PEGの散乱シグナルを半径方向に積分した。
動的条件におけるDPPC/DSPE−PEGの測定を、Pad−Pad−Padに使用したものの2倍のくびれ幅(wくびれ=250μm)を有するマイクロ流体デバイスにおいて行なった。公正な比較を期すために、かつ等式1(Eq.1)を考慮して、DPPC/DSPE−PEGリポソームについての流速を、Pad−PC−Padリポソームを供した流速の2倍に設定することによって、くびれ位置における剪断条件を同じにした。
散乱曲線は(二重層ピークのシフトを含む)、くびれ前後のPad−PC−PadリポソームのSAXSシグナルと相当に異なるが、静的条件下と動的条件下とでの(くびれ前後での)散乱シグナルが重なっているため、DPPC/DSPE−PEGリポソームの変化は証明できなかった。
DPPC/DSPE−PEGリポソームとの比較は、くびれよりも前に既にかつここで調べた剪断速度においてPad−PC−Padリポソームが機械的感受性を有するという本発明者らの仮説を裏付けるものである。
表3:マイクロ流体デバイスの7つの領域(図13の概略図を参照)における静的条件下(ガラスキャピラリ)および動的条件下でのPad−PC−Padリポソームの頭部間距離dhh。データは、正規分布の平均値を表す(標準偏差に由来する関連誤差を含む)。
Figure 2021512945
表4:図13の概略図中に示されるマイクロ流体デバイス内の位置に応じた、静的条件下(ガラスキャピラリ)および動的条件下におけるPad−PC−Padリポソームの旋回半径Rg。データは、正規分布の平均値を表す(標準偏差に由来する関連誤差を含む)。
Figure 2021512945
動的光散乱によるリポソームの特徴づけ
人工リン脂質のライブラリを合成した。表5に、温度依存性SANS測定の前および後における、流体力学的なサイズおよび多分散に関連した、リポソーム調製物の特徴づけの概要を示す。DPPCリポソームおよびPad−PC−Padリポソームのサイズは(120±2)nmであり、多分散指数は0.01〜0.20である。Rad−PC−Rad、Pes−PC−Pes、およびSad−PC−Sadのリポソーム調製物は、平均サイズ150〜170nm、多分散指数0.57および0.23を示した。Pad−Pad−PCおよびSur−PC−Surのリポソームは、サイズが400〜1,500nm、多分散指数が0.57であった。SANS実験において、リポソームを42℃に加熱した後に室温としたところ、流体力学的なサイズおよび多分散指数が実質的に変化した。概して、リポソームはサイズの増大を示した。唯一の例外がPad−PC−Padリポソームについてみられ、2分の1に減少した。このDLS測定結果を、cryo−TEMを用いて確認した。
中性子小角散乱測定
SANS実験は、q範囲0.01〜3nm−1が実空間での周期性2〜600nmに対応するため、ナノメートル域の全体をカバーする。したがって、リポソームのサイズだけでなく、その脂質二重層の厚さについても求めることができた。半径および偏心量は、Pad−PC−Padリポソームについてのみ計算した。
図16は、選択した温度についてのDPPCリポソームのqプロットを示す。散乱曲線は非常によく類似しており、唯一の違いは低いq範囲で、この域では温度上昇につれて強度が減少している。注意すべきは、こうした変化が35〜39℃において特に明白であり、DPPCリポソームの前転移温度(33.5℃〜35.8℃でばらつき、DO使用の場合にはさらに高く37.4℃である)に関連するということである。加熱前後で二重層の厚さに差異は観察されず、このことは、右下のダイアグラムにおいて曲線が重なっていることによって示される。
cryo−TEM画像から得られ図16中に例示されるように、DPPCリポソームの平均サイズは(87±20)nmであり、これはDLSで得られる平均直径の7分の1〜8分の1であった。本発明者らは、この差異が、熱処理および8か月間の保管によるリポソームのクラスタ形成に起因すると考える。リポソームの約16%が多重層であることが、cryo−TEMによって分かった。
図17は、Pad−PC−Padリポソームについての一連のqプロットを含む。温度上昇につれて、低q範囲の強度がほぼ2分の1に低下し、これはリポソームの分割を示す。このPad−PC−Padリポソームの崩壊は、DLS測定結果に見合う(表5を参照)。
左の顕微鏡写真は、Tよりも高温に加熱したPad−PC−Padリポソームのcryo−TEM画像である。直径約50nmの平らなリポソームおよび/またはバイセル(bicelles)が非常に多く存在していることが明らかに分かる。転移温度より高温に加熱しないこと以外は同じ方法で調製したPad−PC−Padリポソームは、これより大幅に大きく、容積も大幅に大きいことを、図17中の右のcryo−TEM画像を用いて確認した。cryo−TEM画像より、こうしたPad−PC−Padリポソームの平均サイズは(92±14)nmであると推定したが、これは、表5中に示すように、DLSで得られる値よりも25%小さい。DLSでの検出値が高い原因は、リポソームのクラスタ形成にもあると考えられる。
qプロットは、さらに、二重層の厚さに関連する低いq値でのシフトも特徴とする。図17の右のダイアグラムは、二重層の厚さが不可逆的に増大していることをはっきりと示す。Tより高温への温度上昇と、これに続く室温への冷却とによって、指組みの喪失が生じる。
Rad−PC−Radリポソームから得られるqプロットが、図18中に示される。予期されるように、転移温度T=45℃は調べた範囲の外にあるため、42℃への温度上昇によって際立った変化は生じなかった。
図18中のcryo−TEM画像区画は1つの球状リポソームのみを示すが、懸濁液は多分散系であった。このcryo−TEM顕微鏡写真は、球状リポソームに加えて、本発明者らがファセット状の単層および多重層リポソームを観察したことを示す。DLSデータは、約150nmの大きさのリポソームの顕著なピークを示すが、5μmの大きなリポソームも見られた。
Pes−PC−Pesリポソームの場合、22℃から42℃への温度上昇によって、中性子散乱シグナルにおける重要な変化が誘発された(図19中に示す)。低いq値では、ナノメートルサイズのリポソームから知られるようなプラトーが見られず、DLS測定によりサイズ約100nmおよび1μmの2つのポソーム集団の存在が示されるため、プラトーが存在しないということは、現行のSANSの設定では解像不可能な巨大リポソームが存在することを示す。
q=0.83nm−1における顕著なブラッグピークは、積層された脂質二重層の存在に起因する。温度上昇につれて、このピークは徐々に小さくなるため、積層された脂質層を有するリポソームが高温において崩壊するという結論に達し得る。図19の右のダイアグラムは、このプロセスが不可逆であることを示す。
Pes−PC−Pesのcryo−TEM顕微鏡写真は、このような説明と一致する。図19中のcryo−TEMデータを詳細に示す写真は、代表的なリポソームを示す。
図20は、ここで調べた温度範囲において変化しないPad−Pad−PCリポソームのqプロットを示す。先程と同様に、低いq値でプラトーが存在しないことは、マイクロメートルサイズのリポソームが存在することを示し、これはcryo−TEM顕微鏡写真と一致する。多くの凝集体がナノメートルサイズのリポソームからなるサブユニットを呈しており、この観察もまた、DLSを用いて検出された二峰性のサイズ分布と一致する。ここで、本発明者らは、サイズ約150nmにピークを有する集団と3μmにピークを有する別の集団とを観察した。
図21は、生理学的に妥当な温度範囲内におけるSur−PC−Surリポソームのqプロットを含む。このcryo−TEMデータの際だった特徴として、プラトーが存在しないことは、サイズ分布が広いことの結果であると考えられ、このことは、マイクロメートル域のリポソームについての二峰性のサイズ分布を示すDLSデータによって裏付けられる。不均質に凝集したリポソームは、実験温度範囲内において安定である。
図22に、Sad−PC−Sadリポソームから得た結果の概要を示すが、このqプロットの形状は従来のリポソームについて予期されるものである。また、考慮した温度範囲よりも転移温度が十分に高いため、これらの曲線は互いによく似ている。
こうしたcryo−TEM実験から、幾通りかのサイズを呈する球状および非球状のリポソームの存在が明らかとなった(図22中の画像区画を参照)。DLSから得られた最も可能性の高いサイズは160nmであり、これはcryo−TEMデータと一致する。
選択されたリポソーム調製物の二重層の厚さを含む構造パラメータを求めるために、データフィッティングのための好適なモデルを特定する必要がある。ここでは、Pad−PC−Padについて、本発明者らは、構造因子にサイズ平均形状因子を乗ずるアプローチを用い、同時に、リポソーム間相互作用ポテンシャルは球対称を呈しかつリポソームサイズとは独立していると仮定することによって、qプロットのフィッティングを行なった。構造因子のフィッティングは、sticky hard sphereモデルを用いて行なった(Baxterら,The Journal of Chemical Physics 1968,49(6),2770−2774;Mays,Langmuir 1989,5,422−428)。形状因子をリポソームの全体的形状に調整するために、均一の断面を有する楕円シェルモデル(Guinier,Annales de Physique,1939;pp161−237)を用いた。この楕円シェルモデルは、長さa=R、b=R、およびc=εRである3本の直交軸によって境界が画定され、偏心量はε>0である(ε<1:扁円、ε=1:球状、ε>1:扁長)。また、このモデルは、二重層の厚さおよびリポソームのサイズにおけるばらつきを説明するものでもある。この楕円シェルの使用によっては温度35℃におけるPad−PC−Padリポソームの散乱データを十分近似できなかったため、本発明者らは均質な断面を有するディスクを含めた(cryo−TEMの結果を動機とするアプローチ)。選択した3通りの温度におけるPad−PC−Padリポソームの実験データと共に、得られたフィッティングが図23中に示される。
表6は、本研究において適用した温度におけるPad−PC−Padリポソームについての曲線フィッティング結果のリストである。リポソームの半径およびリン脂質二重層の厚さについてのフィッティング値は一定で、標準偏差により得られるエラーバーの範囲内であった。しかしながら、Tより上のデータと下のデータとを比較したところ、リポソーム偏心量が10分の1に低下していた。DLSおよびcryo−TEMデータによれば、Pad−PC−Padリポソームの形状がファセット状から平らなディスク様に変化している。
本発明者らが認識するところによれば、この研究における人工脂質の形状およびサイズの点で、Pad−PC−Pad以外のリポソーム調製物が不均質であることは、ただ、二重層の厚さに対応するq範囲の妥当なフィッティングを可能とするものである。この目的のために、本発明者らは、Guinierの法則を拡張したものを適用し(Hjelmら,The Journal of Physical Chemistry B 2000,104(2),197−211;Fratzl,Journal of Statistical Physics 1994,77(1−2),125−143)、これによって二重層の厚さを得た。起こり得る多重層現象について説明するために、本発明者らは、準晶質積層モデル(Schwartzら,Biophysical journal 1975,15(12),1201−1233;FruE`hwirthら,Journal of Applied Crystallography 2004,37(5),703−710)を、構造因子として含めた。表7は、フィッティングの結果を示す。
予想された通り、DPPCリポソームは、温度とは独立した二重層の厚さを示し、但し熱サイクル中にリポソームのクラスタ形成が観察された。同じことが、Sur−PC−Sur、Pad−Pad−PC、およびRad−PC−Radのリポソームにも観察され、これらも、実験した温度についてほぼ一定の二重層の厚さを呈し、この挙動は相転移温度と整合するものであった。Sad−PC−Sadについての相転移温度もまた、熱処理に用いた最高温度よりも高く、したがって、二重層の厚さのばらつきは10%の域内であった。しかしながら、Pes−PC−Pesについては、転移温度が調査範囲内であった。加えて、室温への冷却を含む温度サイクルによって、二重層の厚さの24%の増大がそれぞれ引き起こされた。
表5.この研究において使用したリポソーム調製物に対する動的光散乱測定の結果。主相転移温度(T)は以前に報告されている。流体力学的なサイズおよび多分散指数(PDI)を、SANS実験の前(n=5)および後(n=3)で分析した。誤差は、独立した測定から得た標準偏差に対応する。
Figure 2021512945
表中、「n.a.」は、凝集体のサイズが原因でデータ抽出できなかったことを意味する。
表6.Pad−PC−Padについては、平均の半径および二重層の厚さと、それらの標準偏差およびこれらから得た偏心量も示されている。35℃において、均質な断面を有するディスクについての寄与が説明された。
Figure 2021512945
表7.温度の関数としての、最も可能性の高いリポソームの二重層の厚さ。
Figure 2021512945
材料および方法
リポソームの調製
2種のリン脂質、すなわち、市販のモル濃度5%のDSPE−PEG2000を含む天然1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン(DPPC)(Lipoid、Zug、スイス)と、近年報告されたプロトコール(Fedotenkoら,Tetrahedron Letters 2010,51,5382−5384)に従って合成した1,3−パルミトイル−アミド−1,3−デオキシ−sn−グリセロ−2−ホスファチジルコリン(Pad−PC−Pad)とを使用して、リポソームを調製した。簡潔には、標準的な薄膜法(Waldeら,Encycl.Nanosci.Nanotechnol.2004,9,43−79;Olsonら,Biochimica et Biophysica Acta (BBA)−Biomembranes 1979,557,9−23)によってリポソームを調製して、超純水を用いて含水させた。得られた各懸濁液は、脂質含有量が20mg/mLであり、これは、Pad−PC−Padを使用して達成できる最高濃度に対応する。液体窒素冷却および水浴加熱(60℃)からなる12工程を連続して行なうことによって、懸濁液を凍結/解凍した。直径約100nmでサイズ分布の狭いリポソームを得るために、Liposofast LF−50(Avestin社、カナダ)を使用し、トラックエッチド(track−edged)ポリカーボネートフィルター膜(Whatman Nucleopore、Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)を通して、複数回のバレル押し出しを行なった。
孔サイズを、400nm(5回)から、200nm(5回)を経て、100nm(15回)まで小さくした。
リポソームの特徴づけ
2種の調製物の脂質濃度を、リン酸塩試験によって求めた(Stalder and Zumbuehl.CHIMIA International Journal for Chemistry 2013,67,819−821)。リポソームのサイズおよびサイズ分布を、Delsa Nano C(Beckman Coulter、米国)を使用する動的光散乱(DLS)によって定量した。DLS測定は、温度25℃において、波長658nmで作動する2つのレーザダイオードを使用して行なった。散乱角度は165度に設定した。リポソーム懸濁液をグロー放電孔あき炭素グリッド上に載せ、Cryoplunge CP3システム(Gatan、米国)を用いて迅速に凍結させ、Gatan626クライオホルダーを用いてJEM2200FS透過電子顕微鏡(JEOL、日本)に移すことによって、Pad−PC−Padリポソーム懸濁液のCryo−TEM画像を得た。Cryo−TEM顕微鏡写真は、加速電圧200kV、倍率20,000、4〜8μm不足焦点、および線量として電子10個=Åにおいて、F416 CMOS検出器(TVIPS、ドイツ)を使用して記録した。
マイクロ流体デバイスの作製
X線に対応したマイクロ流体デバイスを、以前に報告されている通りに準備した(Lutz−Buenoら,Lab on a Chip 2016,16,4028−403)。簡潔には、Siウェハ上のSU−8ネガティブレジスト(Nano SU−8 100、MicroChem社、MA、米国)のフォトリソグラフィを使用してマスターを作製した。厚さ250μmのフォトレジストの層を、マイクロ流体設計を有するフォトマスクを通して紫外光に曝露した後、現像した。このマイクロ流体デバイス設計は、1000μm幅の水平な流路と、中程にある長さ2000μmのくびれとからなるものであった。くびれ幅が125μmのものと250μmのものとの、2通りの設計を作製した。ポリジメチルシロキサン(PDMS、Sylgard 184、Dow Corning社、Midland、米国)と架橋剤とを10:1の比率で混合して、可撓性のレプリカスタンプを形成した。このPDMS混合液をフォトリソグラフィマスター上に注ぎ、温度80℃において一晩硬化させた。その後、PDMSスタンプをマスターから剥がした。Norland Optical Adhesive 81(Norland Products社、Cranbury、米国)を、厚さ25μmのポリイミドフィルム(Goodfellow社、Cambridge、英国)上に注いだ。NOA 81で被覆したポリイミドフィルム上にPDMSスタンプを載せ、NOA 81被覆中にマイクロ流体構造の跡をつけた。λ=366nmの紫外光に1分間曝露してNOA 81を架橋させた後、可撓性のPDMSスタンプを剥がした。直径0:75mmの穴あけ器を使用して、入口および出口の孔をあけた。次いで、マイクロ流体NOA 81/ポリイミドフィルムを、厚さ25μmの第2のポリイミドフィルムで封止した。
SAXS測定
空間分解SAXS測定を、スイスの放射光施設Swiss Light Source(PSI、Villigen、スイス)のcSAXSビームラインで行なった。試料の位置においてX線ビームの焦点を25μm×50μm(垂直×水平)のスポットサイズに設定し、光子エネルギーを11:2keV(λ=1:1Å)に設定し、かつ、試料と検出器との間の距離を7:102mに設定し、ベヘン酸銀試料の第1散乱次数(first scattering order)によって求めた。Pilatus 2M検出器(Kraftら,J.Synchrotron Radiat.2009,16,368−375)(ピクセルサイズ:172μm×172μm)を使用して、散乱シグナルを記録した。アルミニウム/ポリエーテルエーテルケトン/アルミニウム試料ホルダー上に載せたマイクロ流体デバイスを使用して、リポソーム懸濁液の動的空間分解SAXS測定を行なった。デバイスを絶えず水平方向に動かしながら検出器でバーストモードでデータを記録することによって、1列毎に2次元(2D)スキャンを実現した。マイクロ流体デバイスの予め選択した領域において、1ポイントあたりの曝露時間を1:5秒として、ステップサイズ(step size)25μm(v)×50μm(h)にて48(v)×96(h)ポイントを得た。ビームラインから入手できるMatlabパッケージを使用して(https://www.psi.ch/sls/csaxs/software)、データ処理を行なった。実験中、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブを用いてマイクロ流路に接続したシリンジポンプシステム(Nemesys、Cetoni GmbH、Korbussen、ドイツ)を使用して、流速を調整した。ポイントに関するバックグラウンド補正のために、リポソーム懸濁液のSAXSシグナルを取得するよりも前に、測定したすべての流速について、マイクロ流体デバイス中における超純水の散乱シグナルを記録した。矩形の流路断面を有するマイクロ流体デバイスについては、下記等式により、体積流量vから壁剪断速度を計算した:(Molloyら,Journal of Thrombosis and Haemostasis 2016,15,972−982)
λ=6v=hw (1)
剪断速度は[s−1]、vは体積流量[μL/s]、かつwおよびhはそれぞれ流路の幅および高さ[μm]。
これに加えて、2種のリポソーム懸濁液および超純水の静的SAXS測定を、外径1.5mmおよび壁厚0.01mmのホウケイ酸塩ガラスキャピラリ(Hilgenberg、Malsfeld、ドイツ)中において、上述されるパラメータを用いて行なった。
SANS用のリポソームの調製
以前に報告されたプロトコール(Holmeら,Nature Nanotechnology 2012,7(8),536−543;Neuhausら,Langmuir 2018,34(10),3215−3220;Neuhausら,Soft matter 2018,14(19),3978−3986;Neuhausら,Angewandte Chemie 2017,129(23),6615−6618)に従って脂質を配合し、標準的な押し出しプロトコール(Holmeら,Nature Nanotechnology 2012,7(8),536−543)に従ってリポソームを調製した。要約すると、脂質10mgをCHCl中に溶解した。有機溶媒を蒸発させた後、得られた薄いフィルムをさらに真空条件下(40mbar)において一晩乾燥させた。このフィルムを、DOを用いて、30分間かけて含水させた。凍結−解凍サイクル(液体Nから65℃水浴へ)を5回行ない、続いて、Mini Extruder(Avanti Polar Lipids、米国)および孔サイズ100nmのトラックエッチド(track−edged)フィルター(Whatman、米国)を使用して押し出しサイクルを11回行なった。得られたリポソーム調製物の脂質濃度は約10mg/mLであった。
中性子小角散乱(SANS)
スイスのスパレーション中性子源施設(Swiss Spallation Neutron Source)SINQ(Paul Scherrer Institute、Villigen、スイス)のSANS−Iビームラインにて、SANS測定を行なった。経路長2mmのホウ素非含有石英ガラスセル中に試料を入れ、温度制御ホルダー中に入れた。このシステムは、試料の温度を1Kより良い精度で制御できるものである。3〜4Kステップにおいて22〜42℃にて、リポソーム懸濁液の測定を行なった。続いて、この懸濁液を室温(22℃)に冷却し、再度測定した。1.6、6.0、および18.0mの3通りの検出器距離を用い、散乱ベクトル範囲0.01nm−1<q<10nm−1、中性子波長(λ)0.45および1.2Åにて、データを採取した。128×128ピクセルのアレイを有する2次元He検出器を用いてデータを採取し、1次元のI(q)散乱曲線にして、その結果、2次元画像を半径方向に平均化した。標準的な手順に従い、BerSANSソフトウェアパッケージを使用して、透過、バックグラウンド散乱、および検出器効率についてデータを補正した(Keiderling,Applied Physics A 2002,74(1),s1455−s1457;Strunzら,Journal of Applied Crystallography 2000,33(3 Part 1),829−833)。
クライオ透過電子顕微鏡法(cryo−TEM)
このリポソーム懸濁液を、DOで1:2の比率で希釈して、最終濃度5mg/mLとした。次に、各懸濁液の4μLを孔あき炭素被覆グリッド(Lacey、Tedpella、米国)に吸着させ、ワットマン1ろ紙を用いてブロッティングして、Leica GPプランジャ(Leica、オーストリア)を使用して、液体エタン中において温度−178℃でガラス化した。凍結させたグリッドを、Gatan 626クライオホルダーを使用して、Talos電子顕微鏡(Thermo Fisher、米国)上に移した。低線量系(20e/Å)を使用し、試料を液体窒素の温度に保ちながら、加速電圧200kVおよび公称倍率45,000倍にて、電子顕微鏡写真を記録した。顕微鏡写真の記録はCETAカメラによって行なった。試料レベルでのピクセルサイズは(3.26Å)であった。cryo−TEM顕微鏡写真のいくつかが、ゆっくりと変動する明るさのばらつきを呈したため、この不均質性を、fuzzy C−meansアルゴリズムの変形(Schulzら,Sci Rep 2012,2,826;Ahmedら,IEEE Trans Med Imaging 2002,21(3),193−9)を使って補填した。
動的光散乱(DLS)
DLS測定を、DelsaMax PRO(Beckman Coulter、米国)を用いて、室温で、DO中の脂質濃度0.3mg/mLにて行なった。加熱サイクルよりも前に行なった5回の独立した測定で得たデータと、加熱サイクルを適用して8か月後に行なった3回の測定で得たデータとを平均した。データ処理は、キュムラント分析法によって行なった。
SANSデータ分析に使用したモデル
SASfitソフトウェア(Bresslerら,Journal of Applied Crystallography 2015,48(5),1587−1598)および対応するモデルを使用して、SANSデータを分析した。Pad−PC−Pad試料を、測定した全q範囲にわたってフィッティングしたが、他の試料についてのフィッティングを、脂質二重層の厚さに対応するq範囲に限定した。Pad−PC−Padについて、本発明者らは、厚さと半径との両方の観点において均質な断面(Guinier,Annales de Physique,1939;pp161−237)およびサイズ分布を有する楕円シェルモデルを使用した。また、本発明者らは、粒子間相互作用を説明するために、sticky hard sphereモデル(Baxterら,The Journal of Chemical Physics 1968,49(6),2770−2774;Mays,Langmuir 1989,5,422−428)を含めた。残りの調製物について、本発明者らは、一般化されたGuinier近似(Hjelmら,The Journal of Physical Chemistry B 2000,104(2),197−211;Fratzl,Journal of Statistical Physics 1994,77(1−2),125−143)を使用して、二重層の厚さを調べ、さらに、本発明者らは、適宜、多重層の寄与を追加した(準晶質理論)(Schwartzら,Biophysical journal 1975,15(12),1201−1233;FruE`hwirthら,Journal of Applied Crystallography 2004,37(5),703−710)。
考察
Pad−PC−Padリポソームは、T未満において、脂質二重層の指組みに関連するファセット状の形態を呈し得る。SAXSを使用して、Pad−PC−Padリポソームの層間隔を測定したところ、Tよりも高温においてリン脂質鎖の指組みが外れていることが示された。SAXSデータから、Pad−PC−Pad二重層内の脂質分子の頭部間距離が(3.3±0.8)nmに対応することが明らかになった。指組みの喪失は、加熱サイクル後の二重層の厚さにおける21%の増加を説明する。明らかに、冷却しても元の状態にはならず、リポソームが崩壊して、加熱サイクル前に測定した元のサイズの半分のナノ構造になった。生理学的に妥当な温度においてPad−PC−Padリポソームが不安定であるということから、これを人体内での標的薬物送達のためのキャリアとして使用することは示唆されない。
Pad−PC−PadのC17ホモログとしてのRad−PC−Radリン脂質は、T=45℃というさらに高い転移温度を特徴とし、これによって、人体内における剪断力感受性の薬物送達が可能となり得る。本研究によって、Rad−PC−Radリポソームが上限42℃まで熱安定的であって、生理学的に妥当な温度範囲である22〜42℃において構造変化を全く示さないことが確認される。
また、Pes−PC−Pesは、DPPCのb−DPPCアナログとして知られている。ゲル相において、b−DPPCは六角形の鎖充填構造および二重層指組みを呈したが、液晶相においては二重層鎖指組みが消えていた。相転移は、二重層の厚さの20%の増加を伴うが、この値は本研究と一致しており、本発明者らは、Pes−PC−Pesリポソームの二重層の厚さが18%増加したことを観察した。
Pad−Pad−PCリポソームの熱挙動は複雑で、このリン脂質の1,2−配置が膜の指組みを妨げていることが示される。転移温度46℃は実験した温度よりも十分に高いため、本発明者らが構造変化を全く検出しなかったことは驚くべきことではなく、同じ概念が、Sad−PC−SadおよびSur−PC−Sur脂質から構成されるリポソームにも当てはまる。

Claims (14)

  1. 膜と前記膜により境界が画定される容積とを含む、または本質的にこれらからなるベシクルであって、前記膜は、本質的に1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートからなる、ベシクル。
  2. 前記膜は二重層構造である、請求項1に記載のベシクル。
  3. 前記膜は単層構造である、請求項1に記載のベシクル。
  4. 前記二重層構造は指組み相を含み、指組み相は42℃〜46℃の温度範囲、具体的には43℃〜45℃の範囲、より具体的には44.5℃〜46.0℃の範囲、または約44.7℃において形成される、請求項1または2のいずれか1項に記載のベシクル。
  5. 前記ベシクルは、医薬剤もしくは医薬品または診断剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベシクル。
  6. 前記医薬品または診断剤は、
    ・線維素溶解剤、
    ・抗凝固剤、
    ・抗凝集剤、
    ・アテローム硬化性プラーク安定化剤、具体的にはスタチン、
    ・血管拡張剤、具体的には、直接または間接作用型の血管拡張薬から選択される血管拡張剤、より具体的には、酸化窒素遊離剤、アルファアドレナリン受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、直接型レニン阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、カリウムチャネル開口薬から選択される血管拡張剤、
    ・抗不整脈薬、具体的には、ナトリウムチャネル遮断薬、ベータ遮断薬、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬から選択される抗不整脈薬、
    ・イノトロープ陽性薬(inotrope positive medication)、具体的には、カテコールアミンまたは非カテコールアミンから選択される医薬品、
    ・心筋リモデリング薬、具体的には、ACE阻害剤またはARBから選択される医薬品、
    ・拡張障害処置のための薬物、具体的には、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、またはARBから選択される医薬品、
    ・鬱血解消のための薬物、具体的には、脳性ナトリウム利尿ペプチドまたは窒素放出薬(nitro−release drugs)から選択される医薬品、
    ・放射線造影マーカー、具体的には、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像法、陽電子放射断層撮影、シンチグラフィー、または経皮的冠動脈形成術において使用するための放射線造影マーカー、
    ・化学療法剤、
    ・凝固因子剤、および
    ・抗炎症剤から選択されるいずれか1つである、請求項5に記載のベシクル。
  7. 前記製薬学的活性剤、医薬品、または診断剤は、アルテプラーゼ(alteplasum)、ヘパリン、アセチルサリチル酸、クロピドグレル(clopidogrelum)、糖タンパク質IIb/IIIa阻害剤、ロスバスタチン(rosuvastatinum)、酸化窒素遊離剤、ニトロプルシド、モルシドミン、フェントラミン、エナラプリル、カンデサルタン、ジルチアゼム、ボセンタン、ミルリノン、レボシメンダン、ミノキシジル(minoxidilum)、アリスキレン(aliskirenum)、キニジン、メトプロロール、アミオダロン、ベラパミル、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ドブタミン、イソプレナリン(isoprenalin)、レボシメンダン、バソプレシン、グリプレシン(glypressin)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ネシリチド(nesiritidum)、ニトログリセリン、アルテプラーゼ(alteplasum)、エプタコグアルファ(eptacogum alfa)、遺伝子組換え第VII因子(ノボセブン)、ヨウ素またはヨウ素含有造影剤、ガドリニウム含有造影剤、心筋細胞、および幹細胞から選択される、請求項5〜6のいずれか1項に記載のベシクル。
  8. ベシクルの調製方法であって、
    i. 1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェートを、有機溶媒中に溶解させた状態で提供し、
    不活性雰囲気下において前記有機溶媒を除去することによって、脂質シートを得る工程と、
    ii. 生理的pHを有する第1の水性緩衝溶液中に前記脂質シートを溶解する工程と、
    iii. 少なくとも1回の凍結工程と少なくとも1回の解凍工程とを適用する工程と、
    iv. 前記懸濁液を、具体的には、孔径が50nm〜150nmの範囲、より具体的には80nm〜120nmの範囲、さらにより具体的には孔径が100nmであるフィルターを通して、押し出すことによって、
    押出物を得る工程と、
    v. 生理的pHを有する第2の緩衝溶液中に前記押出物を透析して、低分子量成分を除去する工程とを含む、方法。
  9. 請求項8に記載のプロセスによって得られるベシクル。
  10. ・心血管疾患、
    ・皮膚科疾患の処置において使用するための医薬品であって、
    前記医薬品は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のベシクル、もしくは請求項8に記載の方法によって提供されるベシクルの形態にて、または請求項9に記載のベシクルとして投与されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬品。
  11. 血管疾患の処置において使用するための医薬品であって、前記血管疾患は、急性冠症候群(ACS)、心筋梗塞、急性心不全、慢性心不全、脳血管発作(CVA)、脳卒中、アテローム性動脈硬化、血管攣縮、腫瘍処置、喀血、肺塞栓症、肺動脈性肺高血圧症、腸管虚血、腸管出血、腎梗塞、腎出血、高血圧処置のための腎自己調節、自己免疫性糸球体腎炎、間質性腎炎、胎児疾患、胎盤梗塞、胎盤出血、網膜虚血、網膜出血、および網膜血管新生から選択される、請求項10に記載の医薬品。
  12. 請求項10に記載の皮膚科疾患の処置において使用するための化合物であって、前記皮膚科疾患は、
    ・ざ瘡、
    ・ナプキン皮膚炎、
    ・アトピー性皮膚炎、
    ・脂漏性皮膚炎、
    ・乾癬、
    ・疣贅、
    ・足白癬、
    ・脂漏性角化症、
    ・蕁麻疹、
    ・酒さ、
    ・皮膚科性ウイルス感染、および
    ・皮膚科性細菌感染から選択される、化合物。
  13. モニタリングまたは診断方法において使用するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のベシクル、または請求項8に記載の方法によって提供されるベシクル、または請求項9に記載のベシクル。
  14. 1,3−ジヘプタデカンアミドプロパン−2−イル(2−(トリメチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(4)。
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