JP2021190689A - 熱電キャパシタ及び熱電キャパシタの使用方法 - Google Patents

熱電キャパシタ及び熱電キャパシタの使用方法 Download PDF

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雅一 向田
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Abstract

【課題】簡便に製造でき、ゼーベック係数に優れ、温度差から断続的に電気エネルギーを得ることのできる熱電キャパシタ、該熱電キャパシタを用いた熱電変換モジュール及び温度センサ並びにこれらの使用方法を提供する。【解決手段】少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料を備える熱電キャパシタであって、前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなることを特徴とする、熱電キャパシタ。【選択図】図4

Description

本発明は、エネルギーハーベストに用いられる熱電キャパシタ及び熱電キャパシタの使用方法に関する。
人間を取り巻くあらゆるモノをインターネット接続し、安心、安全、かつ利便性良い社会の実現を目指すIoT(Internet of things)の普及が進んでいる。しかし、IoTではモノの情報を得るために数兆個規模のセンサ使用量が想定されるため、各センサに電池交換や充電、配線等のメンテナンス作業を施すことは現実的に不可能であり、メンテナンスフリーな電源技術が必要となる。これに対し、環境中に広く薄く存在する熱や光、振動などの未利用エネルギーをその場で収穫し、電力に変換して電子回路の作動に使用するエネルギーハーベストの技術開発が進んでいる。近年では無線センサの消費電力を大幅に下げる技術開発も進んでおり、電力の地産地消を可能にするエネルギーハーベストの適用可能性も高まっている。例えば、環境中の熱から得られる温度差を電力に変換する熱電変換が、エネルギーハーベストの一形態として知られている。
熱電変換は温度差から電気を生み出す技術であり、その変換特性は、材料の単位温度差当たりの発生電圧であるゼーベック係数(S)と、導電率(σ)、熱伝導率(κ)、絶対温度(T)によって算出される無次元性能指数(ZT)で評価される。ZTは、ZT=SσT/κで計算され、ZTが大きいほど変換性能の高い材料である。すなわち、変換効率の高い熱電発電素子を実現するには、より大きなゼーベック係数と導電率、そしてより低い熱伝導率を有する材料を開発する必要がある。
高いZTを示す熱電変換材料としては、従来、ビスマス、テルル、鉛、コバルトなどを含む無機材料が研究開発されてきた。しかし、これらの材料は毒性元素や希少元素を含む問題がある。焼結の作製プロセスを取ることから、製造にコストがかかる問題点がある。また柔軟性に乏しいため、曲面への貼り付けが困難であるといった問題点がある。さらに、エネルギーハーベスト用途では室温付近から百数十度程度の中低温領域の熱源から効果的に素子へ温度差を与え、効率的に発電することが望まれるため、熱伝導率の低い材料が重要となる。
柔軟性を有し、熱伝導率の低い熱電変換材料としては導電性高分子やナノカーボン材料、またはこれらの複合体が知られている。
半導体や金属、導電性高分子やナノカーボン材料以外に、材料中の電荷キャリアがイオンである物質であっても温度差のもとで起電力を発生することが知られている。熱化学電池は、酸化還元対を含むイオンの溶液を主に白金電極で挟み込んだ構造を取る熱電発電素子である。熱化学電池に温度差を与えると、高温側電極では還元体(酸化体)の酸化反応(還元反応)、低温側電極では酸化体(還元体)の還元反応(酸化反応)が生じることで、回路に連続的に電流が流れ、発電素子とすることができる(例えば、特許文献1参照。)。
非特許文献1は、NaOHとPEO(ポリエチレンオキシド)からなるイオン伝導体とAu電極又はAu/CNT電極を用い、熱電キャパシタとして機能することを報告している。
国際公開第2017/155046号
D. Zhao et al., Energy Environ. Sci. 2016, 9, 1450-1457
熱電変換素子は従来、主に発電所等から排出される高温廃熱を再利用する目的で開発されてきた。そのため、無機半導体を用いた熱電変換材料が注目されてきた。近年では、IoTに関連する電源技術としてエネルギーハーベスト分野での期待が高まっている。当該ア
プリケーションには低コスト、軽量、柔軟、大面積化可能、資源的制約の低い材料が必須であり、また低温熱源から発電するために熱伝導性の低い材料が重要となる。フレキシブルで低熱伝導性の材料として有機系熱電材料が注目されているが、現状ではゼーベック係数が小さく電圧を稼ぐために多数の有機膜からなるモジュールを構成する必要があり、また昇圧回路とのインピーダンスマッチングを考慮する必要があり、製造プロセスや素子設計が煩雑であるという問題がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、簡便に製造でき、ゼーベック係数に優れ、温度差から断続的に電気エネルギーを得ることのできる熱電キャパシタ及び熱電キャパシタの使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体を電極で挟み込み温度差を付与したところ、熱電変換材料として有効であり、しかもゼーベック係数の絶対値が大きいことを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の具体的態様等を提供する。
<1>少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタであって、
前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなることを特徴とする、熱電キャパシタ。
<2>前記ハロゲンアニオンを有する塩がハロゲン化イミダゾリウムである、<1>に記載の熱電キャパシタ。
<3>前記ハロゲン化イミダゾリウムが下記式(1)で表される化合物である、<2>に記載の熱電キャパシタ。
Figure 2021190689

式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。
<4>前記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基であり、Xはクロロアニオンである、<3>に記載の熱電キャパシタ。
<5>前記イオン伝導体は、イオン液体、イオン溶液またはイオンゲルである、<1>〜<4>のいずれかに記載の熱電キャパシタ。
<6>前記電極が少なくとも表面に、導電性高分子、銀若しくは白金を有する電極である、<1>〜<5>のいずれかに記載の熱電キャパシタ。
<7>前記電極は、導電性高分子電極、銀電極、白金電極、または銀若しくは白金をナノカーボン材料に被覆してなる電極である、<6>に記載の熱電キャパシタ。
<8>ゼーベック係数の絶対値が1mV/K以上である、<1>〜<7>のいずれに記載の熱電キャパシタ。
<9>電気的に直列に接続された複数のセルを備える、<1>〜<8>のいずれかに記載の熱電キャパシタ。
<10>p型である、<1>〜<9>のいずれかに記載の熱電キャパシタ。
<11>n型である、<1>〜<9>のいずれかに記載の熱電キャパシタ。
<12>一以上の<10>に記載のp型の熱電キャパシタと一以上の<11>に記載のn型の熱電キャパシタとを備え、該p型の熱電キャパシタと該n型の熱電キャパシタが交互に電気的に直列に接続されている、熱電キャパシタモジュール。
<13><1>〜<11>のいずれかに記載の熱電キャパシタ又は<12>に記載の熱電キャパシタモジュールを備えた、温度センサ。
<14>少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタの使用方法であって、
前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなり、
前記一対の電極が一定の温度差を維持しながら、
断続的に電力を出力することを特徴とする、熱電キャパシタの使用方法。
<15>前記ハロゲンアニオンを有する塩がハロゲン化イミダゾリウムである、<14>に記載の熱電キャパシタの使用方法。
<16>前記ハロゲン化イミダゾリウムが下記式(1)で表される化合物である、<15>に記載の熱電キャパシタの使用方法。
Figure 2021190689

式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。
<17>前記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基であり、Xはクロロアニオンである、<16>に記載の熱電キャパシタの使用方法。
<18>前記イオン伝導体は、イオン液体、イオン溶液またはイオンゲルである、<14>〜<17>のいずれかに記載の熱電キャパシタの使用方法。
<19>前記電極が少なくとも表面に導電性高分子、銀若しくは白金を有する電極である、<14>〜<16>のいずれかに記載の熱電キャパシタの使用方法。
<20>前記電極は、導電性高分子電極、銀電極、白金電極、または銀若しくは白金をナノカーボン材料に被覆してなる電極である、<19>に記載の熱電キャパシタの使用方法。
本発明によれば、簡便に製造でき、ゼーベック係数に優れ、断続的に電気エネルギーを得ることのできる熱電キャパシタ、該熱電キャパシタを用いた温度センサ並びにこれらの使用方法を提供できる。
図1は、熱化学電池の概念図である。 図2は、本発明の一態様である熱電キャパシタの概念図である。 図3は、本発明の一態様である熱電キャパシタの概念図である。 図4は、本発明の一態様である熱電キャパシタの使用方法を示す概念図である。 図5は、実施例1のゼーベック係数評価用素子を示す図である。 図6は、実施例1のゼーベック係数評価用素子の測定方法を示す図である。 図7は、実施例1のEmim−Clゲルのゼーベック係数の測定結果を示すグラフである。 図8は、実施例1のEmim−Cl/PVAゲルへ温度差を与え負荷抵抗を接続した実験における電圧の変化を示すグラフである。 図9は、実施例1のEmim−Cl/PVAゲルへ温度差を与え、負荷抵抗の接続・開放を繰り返した場合の電圧変化を示すグラフである。 Emim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を示すグラフである。 Emim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの高周波数領域(原点の近く)の拡大図である。 Hmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を示すグラフである。 Hmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの高周波数領域(原点の近く)の拡大図である。 Dmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を示すグラフである。 Dmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの高周波数領域(原点の近く)の拡大図である。 図16は、実施例5の複数個のゲルを電極で直列に接続したゼーベック係数評価用素子を示す図である。 図17は、複数個のゲルを電極で直列に接続した熱電キャパシタの起電力を示すグラフである。 図18は、5個のゲルを直列に接続して温度差を与え負荷抵抗を接続した実験における電圧の変化を示すグラフである。 図19は、コインセル型熱電キャパシタの製造例である(図面代用写真)。 図20は、コインセル型熱電キャパシタについて負荷抵抗を接続・開放を繰り返した場合の電圧の変化を示すグラフである。 図21は、実施例7のEmim−Clゲルのゼーベック係数の測定結果を示すグラフである。 図22は、実施例7のEmim−Cl/PVAゲルへ温度差を与え負荷抵抗を接続した実験における電圧の変化を示すグラフである。
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
1.熱電キャパシタ及び熱電キャパシタモジュール
本発明の一態様に係る熱電キャパシタは、少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備え、前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなることを特徴とする。
図1は熱化学電池の概念図であり、図2は本発明の一態様に係る熱電キャパシタの概念図である。図1に示すように、半導体物質や酸化還元対からなる電解液は、温度差のもとで電池のように振舞う一方、図2に示すように、酸化還元対を有さないイオン伝導性物質は、温度差のもとで分極することで充電可能なキャパシタとして振舞う。本発明の一態様に係る熱電キャパシタでは、図3(A)に示すように、電極間に温度差を付与することに
より、電極間に挟持されたセルにおいて温度差に起因するイオン分極が生じ、開放端電圧が発生する。そこに負荷を接続すると、図3(B)に示すように、イオン分極を補償するように電圧がゼロになるまで回路に電流が流れ、電極に電荷が蓄積する。電流が流れることで、電圧が仕事に変換されるのである。本発明者は、ハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体を用いることで、巨大なゼーベック係数を発現させることができ、低いインピーダンスと極めて低い熱伝導率を両立する、熱電変換特性に優れた熱電キャパシタを実現できることを見出した。本発明に係る熱電キャパシタはゼーベック係数の絶対値(以下、「ゼーベック係数の絶対値」のことを単に「ゼーベック係数」ともいう。)が巨大であるが故に、従来製造プロセスが煩雑であった熱電モジュールの個数を大幅に減らす、もしくはモジュール化すら不要にし得る。巨大な開放端電圧は、熱電キャパシタに負荷抵抗を接続することで電気的仕事に変換することが可能であり、さらには仕事への変換を終えたのち、温度差を維持したまま負荷抵抗を取り除くことで開放端電圧を再度回復することも可能である。この性質により、本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタは、温度差による巨大な電圧の発生と、負荷接続による仕事への変換を交互に繰り返すことのできる熱電変換装置を提供できる。例えば、数秒から数時間、あるいは数日に一度、未利用熱から得た電圧を用いて無線センサへ断続的に電力を供給するアプリケーションへと展開できる。さらに、本発明に用いられる熱電変換材料は、ゲルや液体等、柔軟性があり、熱電キャパシタを局面形状の熱源へ貼り付けて使用可能な形態に作製できる。また、塗布や電極材で挟むだけで素子にすることが可能であり、大面積化にも対応しやすく、簡便なプロセスで製造可能である。
本発明の一実施形態としては、電気的に直列に接続された複数のセルを備える熱電キャパシタとすることも好ましい。複数のセルを電気的に直列に接続することで、より大きな起電力を有する熱電キャパシタとすることができる。例えば、後述の実施例では、5つのセルを直列に接続して、37mV/Kのゼーベック係数が得られた。これは、ビスマス・テルルを約150個用いてモジュール化しなければ得られない値であり、素子作製の簡便化と低コスト化に本発明が非常に有効であることを示している。また、当該キャパシタに33℃の温度差を与えた状態では、昇圧回路を介さずとも、アルカリ乾電池の起電力に匹敵する約1.1Vの開放端電圧が得られた。このように、本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタは単位温度差あたりの起電力が大きいため、少ない個数でモジュール化して大きな起電力を得ることができる。
また、本発明者は、特定のイオン伝導体を用い、電極の種類を変えることで、熱電キャパシタの極性を制御できることを見出した。本発明によれば、同じイオン伝導体を用い、p型の極性の熱電キャパシタを得ることも、n型の極性の熱電キャパシタを得ることも可能である。したがって、一以上のp型の熱電キャパシタと一以上のn型の熱電キャパシタとを備え、該p型の熱電キャパシタと該n型の熱電キャパシタが交互に電気的に直列に接続されている熱電キャパシタモジュールも本発明の一態様である。このようにp型の熱電キャパシタとn型の熱電キャパシタを交互に電気的に直列に接続して熱電キャパシタモジュールを構成することで、電気的には直列、熱的には並列な接続により電圧を加算することができ、より大きな電圧を得ることができる。
以下、本発明に用いられる「熱電変換材料」及び「電極」ついて説明する。
1−1.熱電変換材料
本発明においては、熱電変換材料としてハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体を用いる。
前記ハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体は、ハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体であれば特に限定されず、市販品を用いてもよいし、合成して用いてもよい。
ハロゲンアニオンとしては、フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオンが挙げられる。大きなゼーベック係数と低い熱伝導率の両立の観点、溶解性、ゼーベック係数の観点から、好ましくは、クロロアニオンである。
ハロゲンアニオンを有する塩のカウンターカチオンは特に限定されないが、大きなゼーベック係数と低い熱伝導率の両立、比較的高い導電率の実現の観点から、好ましくはイミダゾリウムカチオンである。
イミダゾリウムカチオンとしては、入手容易性の点から、好ましくは、1,3−二置換イミダゾリウムカチオン、1,2,3−三置換イミダゾリウムカチオンであり、より好ましくは1,3−二置換イミダゾリウムカチオンであり、さらに好ましくは1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオンである。
イミダゾリウムカチオンとしては、具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘプチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンなどのジアルキルイミダゾリウムカチオン;3−エチル−1,2−ジメチル−イミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−ヘキシルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3,4−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオンなどのトリアルキルイミダゾリウムカチオンなどを挙げることができる。
ハロゲンアニオンを有する塩としては、好ましくはハロゲン化イミダゾリウムであり、より好ましくはカウンターカチオンが1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオンである、式(1)で表される化合物である。
Figure 2021190689

式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。本明細書においてアルキル基とは、直鎖状のアルキル基に限られず、分岐構造及び/又は環状構造を有していてもよい。
及びRは好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。炭素数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−ドコシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
式(1)で表される化合物としては、溶解性、ゼーベック係数、導電率の観点から、好ましくは、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜18のアルキル基であり、Xはクロロアニオンである。より好ましくは、Rがメチル基でありXがクロロアニオンである、下記式(2)で表される化合物である。
Figure 2021190689

式(2)中、Rはアルキル基を表す。
溶解性、ゼーベック係数、導電率の観点から、Rは好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基である。中でも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオンが特に好ましい。
イオン伝導体は液体であっても固体であってもよい。上記のハロゲンアニオンを有する塩自体がイオン液体であればそのまま用いてもよいし、ハロゲンアニオンを有する塩を水等の溶媒に溶解してイオン溶液として用いてもよいし、ポリビニルアルコール(PVA)等の高分子を用いてハロゲンアニオンを有する塩をゲル化してイオンゲルとして用いてもよい。
イオン溶液の溶媒としては、例えば、水、水と有機溶媒とを含む水系溶媒が用いられる。
イオンゲルとしては、ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;ポリビニルピロリドン;アミロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;等の高分子を用いてハロゲンアニオンを有する塩をゲル化したものが好ましい。
イオンゲルの調製方法としては、具体的には、例えば、濃度0.1g/mL程度のハロゲンアニオンを有する塩を含む水溶液と濃度10wt%程度のPVA水溶液を混合し、その後、大気雰囲気下80℃で過剰な水分を除去して、熱電変換材料のイオン伝導体を調製する方法が挙げられる。
イオン伝導体は、好ましくは、イオン液体、イオン溶液またはイオンゲルであり、より好ましくは、取り扱いの容易性、熱電キャパシタの熱膨張の抑制、低熱伝導性の観点から、イオンゲルである。ゼーベック係数を大きくする観点から、ゲルの重量に対するハロゲンアニオンを有する塩の重量の比(ハロゲンアニオンを有する塩の重量[g]/ゲルの重量[g])は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、さらに好ましくは1.0以上である。
1−2.電極
本発明に用いられる電極は特に限定されず、熱電キャパシタの形状、サイズに応じ、市販品をそのまま用いてもよいし、市販品を加工して用いてもよいし、市販の材料を加工して用いてもよい。
大きなゼーベック係数と低い熱伝導率の両立の観点から、好ましくは、表面に導電性高分子、銀若しくは白金を有する電極であり、より好ましくは、導電性高分子電極、銀電極、白金電極、または銀若しくは白金をナノカーボン材料に被覆してなる電極である。
銀電極及び白金電極は多孔性であってもよい。
電極の市販品としては、例えば、株式会社ニラコ製の銀板(AG−403324)、株式会社ニラコ製の白金板(PT−353325)、藤倉化成株式会社製の銀ペースト(ドータイトD−550)、アズワン株式会社製の銀多孔質体(Ag−MF80A−□50−1)が挙げられる。
導電性高分子としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。
導電性高分子を構成するπ共役高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリパラフ
ェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリフルオレン及びポリチエニレンビニレンからなる群より選択される重合体若しくは2種以上の共重合体が挙げられる。また、これらのπ共役高分子は、アルキル基などの官能基が導入されていてもよい。
導電性高分子に添加されるドーパントは特に限定されず、π共役高分子の電子準位や化学構造をもとに適切なものを選択すればよい。ドーパントとしては、例えば、ハロゲン分子、アルカリ金属、塩化鉄、塩化金(III)、五フッ化ヒ素、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、
ポリスチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、テトラフルオロほう酸ニトロソニウム、ヘキサフルオロリン酸ニトロソニウム、ビストリフルオロメタンスルホニル銀、及び1,3−ジメチル−2−フェニル−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾ[d]イミダゾールが挙げられる。ドーパントの添加量や添加方法などについても、適宜決定することができる。
大きなゼーベック係数(高いゼーベック係数)と低い熱伝導率を有するp型の熱電キャパシタとする場合、電極としては、表面に銀若しくは白金を有する電極が好ましく、銀電極、白金電極、または銀若しくは白金をナノカーボン材料に被覆してなる電極がより好ましい。
絶対値の大きなゼーベック係数(低いゼーベック係数)と低い熱伝導率を有するn型の熱電キャパシタとする場合、電極としては、導電性高分子電極が好ましく、導電性高分子を構成するπ共役高分子としてはポリエチレンジオキシチオフェンが好ましく、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸が好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる導電性高分子が特に好ましい。また、より高い導電性を付与するために、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホン酸))に、エチレングリコールのような高沸点極性溶剤を混合してもよい。
一対の電極は、同じ材料であってもよいし異なる材料であってもよいが、好ましくは同じ材料である。
1−3.熱電キャパシタの製造方法
本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタの製造方法は、少なくとも一対の電極と熱電変換材料を準備し、その電極で熱電変換材料を挟持する工程を含めば、特に限定されない。
例えば、コインセル型の熱電キャパシタを製造する場合、コインセルに用いられるステンレス容器の内側に電極となる銀ペーストを塗布した後、熱電変換材料であるハロゲンアニオンを有する塩を含むイオンゲルを流し込み、カシメ機でかしめることにより作製することができる。
1−4.熱電キャパシタのゼーベック係数、交流導電率、熱伝導率
本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタは単位温度差あたりの起電力の絶対値がミリボルトオーダー以上と大きい。本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタのゼーベック係数の絶対値は、好ましくは1mV/K以上であり、より好ましくは1.5mV/K以上、さらに好ましくは2.0mV/K以上、特に好ましくは3.0mV/K以上である。無機熱電材料では、例えばビスマス・テルル系無機熱電材料は約0.25mV/Kである。後述の実施例では、10.1mV/Kのゼーベック係数が得られることが示されており、これは、市販熱材料の約40倍という優れた熱電変換材料であることがわかる。
本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタは、熱電変換材料がイオン伝導体としては比較的高い交流導電率が得られる。交流導電率は下記式で求められる。
交流導電率=電極間ギャップ/(内部抵抗×イオン伝導体断面積)
具体的な評価方法は後述の実施例の通りである。
また、本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタは、ビスマス・テルル系無機熱電材料や近年注目を集める導電性高分子熱電材料と同程度の極めて低い熱伝導率を実現できる。本発明の一実施形態に係る熱電キャパシタの熱伝導率は、好ましくは0.35Wm−1−1以下であり、より好ましくは0.33Wm−1−1以下であり、さらに好ましくは0.30Wm−1−1以下である。低い熱伝導率は、熱電キャパシタを熱源に設置する際に、キャパシタへ付与される温度差を
維持して発電量を大きくとるのに有効である。熱伝導率の測定方法は、ISO−22007−6に従う。例えば、ai−Phase社製ai−Phase Mobile M10を使用して測定すればよい。具体的な測定方法は後述の実施例の通りである。
2.熱電キャパシタの使用方法
本発明の一態様である熱電キャパシタの使用方法は、少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタの使用方法であって、前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなり、前記熱電キャパシタの前記電極が一定の温度差を維持しながら、断続的に電力を出力することを特徴とする。
熱電変換材料及び電極については、それぞれ上記1−1.熱電変換材料及び1−2.電極の説明が適用される。また、少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタと、前記熱電キャパシタに接触して熱を伝える伝熱部と、を備えた熱電変換装置であって、前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなり、前記伝熱部により前記一対の電極が一定の温度差を維持するように制御され、断続的に電力を出力する、熱電変換装置も本発明の好ましい態様である。伝熱部は目的とする温度に応じて適宜選択すればよい。
図4は、本発明の一態様である熱電キャパシタの使用方法を示す概念図である。
(i)は電極間の温度差なし、すなわち無分極状態を示している。
(ii)に示すように、開回路状態で温度差を付与することで、温度差に起因したイオン分極が生じ、開放端電圧が発生する。
(iii)に示すように、温度差を付与したまま閉回路状態とすることで、イオン分極を
補償するように負荷(回路)に電流が流れ、電極には電荷が蓄積する。電流が流れることで、電圧が仕事に変換される。すなわち、このエネルギーでセンサを動かすことができる。
(iv)は開回路状態で温度差を付与することで、電圧が回復することを示している。温度差が維持された状態であっても、キャパシタの自己放電によって電極に蓄積した電荷が消失し、電圧が回復する。そして、再び負荷を接続することで、回復した電圧は再度仕事に変換可能である。つまり、熱をエネルギー源として、断続的な充放電を繰り返し行うことができる。
図9は、本発明の一態様である熱電キャパシタについて、負荷抵抗の接続・開放を繰り返した実施例の電圧変化を示すグラフである。図9に示されるように、(iii)温度差付
与(開回路)と(iv)温度差付与(開回路)がリバーシブルであるため、電圧回復、仕事に変換、電圧回復、の繰り返しで、電極間が一定の温度差のもとで断続的に電力を出力することができる。このため、センサ情報を数分から数時間に一度の頻度で断続的に送信するための電源としての利用が期待できる。
非特許文献1では、キャパシタに対し、開放状態にて温度差を与えることで電圧を発生させ、そこに負荷抵抗を接続することで仕事に変換する形の使用方法が示されている。しかし、当該文献では、温度差を付与することで発生させた開放端電圧は、負荷を接続しても0Vには至っておらず、発生電圧をすべて仕事として有効に活用できているとは言い難い。さらには、電圧を回復させるための手段として、一度負荷を取り外して温度差をなくし、もう一度負荷を接続し、さらに再び開放状態にした上で、改めて温度差を付与しなおす方法が取られている。すなわち、温度差の変動がある場面での使用が想定されている。太陽熱のように昼夜で温度差が上下するような場面では、このような使用方法が有効であ
るものの、工場の温水用配管や人間の体温のような温度変動が小さい熱源を使用する場合には適用が困難であると言える。
一方、本発明の一態様に係る熱電キャパシタは温度差が維持されたままでも仕事への変換、電圧の回復を繰り返し行えるため、そのような使用方法のみならず、温度変動が小さい熱源を使用する場合にも使用可能であり、実用上有利である。
また、IoTに関連して、環境情報等を無線送信するアプリケーションにおいては、現実的に、取得情報を必ずしも常時送信する必要はなく、数分から数時間あるいは数日に一度、熱エネルギーから得た電力で無線送信するような場面へ好ましく適用されると考えられる。
3.温度センサ
上記の熱電キャパシタ又は熱電キャパシタモジュールを備えた温度センサも、本発明の好ましい態様の1つである。
自動照明等に汎用される焦電センサは、通常温度変化のみしかセンシングすることができない。一方、既存の熱電対は金属のゼーベック効果を利用したものである。本発明に係る熱電キャパシタ及び熱電キャパシタモジュールは、温度差さえ存在すれば大きな熱起電力を発生することができるため、温度それ自体を高感度にセンシングするアプリケーションに好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1.ゼーベック係数評価用素子の作製と測定>
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Emim−Cl)水溶液(濃度0.1g/mL)とポリビニルアルコール(PVA)水溶液(濃度10wt%)をスクリュー瓶中で混合して、Emim−Cl:PVAの重量比が表1に示す重量比となるようにゲル前駆体を調製した。なお、Emim−Cl:PVAの重量比が10:1の時、Emim−Cl:PVAのモル比は1500:1であった。
ガラス基板の上に約1cmの間隔で金属電極を2つ設置(銀−銀または白金−白金)した。図5に示すように、ゲル前駆体を電極間に約50μL滴下し、80℃に熱したホットプレートで加熱することで過剰な水分を蒸発させ、イオン伝導性ゲルの膜を作製した。熱重量測定の結果から、ゲルに残った水分は、ゲルの全重量に対して約20%であった。
図6に示すように、2台のペルチェ素子を橋渡しするように素子を設置し、R熱電対(温度と電圧計測用)を電極に直接設置した。R熱電対はデータロガー(温度、電圧計測器)に接続した。
片方のペルチェ素子を高温、もう一方を低温に設定し、電極間に温度差(ΔT)を付与した。このとき、低温側電極の温度が約300Kで一定となるように調節しながら温度差を付与した。温度と開放端電圧(VOC)を同時計測し、ゼーベック係数を決定した。結果を表1に示す。Emim−Cl/PVAゲルで最大+10.1mV/Kの巨大なゼーベック係数が得られた。また、ハロゲンアニオンを有する塩としてEmim−Clを用いた場合のゼーベック係数(熱起電力:単位温度差あたりの発生電圧)の測定結果を図7に示す。また、図8に、当該Emim−Cl/PVAゲルの素子について、温度差を与えた開回路状態(open)から負荷抵抗(100Ω)に接続した際の電圧変化のグラフを示す。図3において、(A)開回路状態(open)で生じていた電圧(開放端電圧)が、(B)電極間に負荷抵抗を接続することで直ちに0Vに減衰したことから、温度差で発生した分極状態が補償されるように負荷に電流が流れ、仕事に変換されたといえる。半導体や金属の熱電材料または熱化学電池の場合、電子やホールといった回路に取り出すことのできる電荷が負荷抵抗と熱電材料中を連続的に流れるため、負荷を接続しても電圧はゼロに
ならないはずである。以上から、当該素子は温度差の下で、通常の熱電材料のような電池的な振る舞いではなく、熱で充電可能なキャパシタとして動作することがわかる。
また、Emim−Cl:PVAのモル比が1500:1のゲルを用いた素子について、温度差を約3℃で一定に保持し、負荷(100Ω)の接続(図4の(iii))、開放(図
4の(iv))を繰り返した際の電圧変化のグラフを図9に示す。図9から、負荷接続により仕事に変換され減少した電圧が、開放により負荷接続前と同程度まで回復していることがわかる。すなわち、熱をエネルギー源として、断続的な充放電を繰り返し行うことができることが示された。
Figure 2021190689
<実施例2.ゼーベック係数評価用素子の作製と測定>
ハロゲンアニオンを有する塩を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Emim−Cl)から、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Hmim−Cl)、又は1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Dmim−Cl)に変更した以外は実施例1と同様にして、ゼーベック係数評価用素子の作製と測定を行った。イオンゲル中、ハロゲンアニオンを有する塩とPVAのモル比は1500:1とした。測定結果を1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドの結果と併せて表2に示す。
Figure 2021190689
<実施例3.交流導電率の評価>
ハロゲンアニオンを有する塩として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Emim−Cl)から、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Hmim−Cl)、又は1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Dmim−Cl)をPVAでゲル化したイオンゲルを用い、交流導電率の評価を以下の通り行った。イオンゲル中、ハロゲンアニオンを有する塩とPVAのモル比は1500:1とした。
フッ素ドープ酸化スズ(透明導電膜)付きガラス基板2枚を電極とした。厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムスペーサを介し、各々のゲルを電極で挟んだ。電極間ギャップは25μmとし、交流電圧を印加した。
内部抵抗は、インピーダンス分光法によってナイキストプロットを作成し、このプロットを実数軸へと外挿した交点から算出した。Emim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を図10に、高周波数領域(原点の近く)
の拡大図を図11に示す。Hmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を図12に、高周波数領域(原点の近く)の拡大図を図13に示す。Dmim−Cl/PVAゲルのナイキストプロットの全体像(測定周波数1〜10Hz)を図14に、高周波数領域(原点の近く)の拡大図を図15に示す。図10〜図15中、横軸Z’はインピーダンスの実数部、縦軸Z”はインピーダンスの虚数部を表す。各ゲルの交流導電率を表3に示す。いずれのゲルも、イオン伝導体としては比較的高い値であることがわかった。
Figure 2021190689
<実施例4.熱伝導率の評価>
ハロゲンアニオンを有する塩として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Emim−Cl)から、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Hmim−Cl)、又は1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Dmim−Cl)をPVAでゲル化したイオンゲルを用い、熱伝導率の評価を以下の通り行った。イオンゲル中、ハロゲンアニオンを有する塩とPVAのモル比は1500:1とした。
ISO−22007−6に準拠し、ai−Phase社製ai−Phase Mobile M10を使用して測定を行った。
サーモパイル(温度センサ)/基準サンプル(ポリエチレンテレフタレートフィルム)/サーモパイル(温度センサ)の順にラミネートされた測定部の上に評価ゲルを載せ、周波数50mHz、振幅±1℃の交流温度波をペルチェ素子により印加し、その振幅減衰率から熱伝導率を算出した。その結果、0.25〜0.29Wm−1−1と、ビスマス・テルルや有機熱電材料に匹敵する低い値を有することが確認された。結果を表4に示す。
Figure 2021190689
<実施例5.複数のセルを電気的に直列に接続した素子の評価>
図16に示すように、複数のセルを電気的に直列に接続して、ゼーベック係数を測定した。まず、ガラス基板の上に銀ペーストを塗布し、電極にした。この電極間にゲルを塗布
し、電気的に直列な接続を形成した。温度差は2台のペルチェ素子によって図の方向に付与した。各セルは熱的に並列な配置をしているため、各セルには同じ温度差が付与されるが、電気的には直列であるため、電圧は構成セルの個数に応じて加算されていき、増加する構造である。図のように両端の電極にR熱電対を接続し、データロガーで温度差と電圧を同時計測し、熱起電力(単位温度差あたりの発生電圧)を評価した。イオン伝導体はEmim−Cl:PVAのモル比が1500:1(重量比は10:1)のイオンゲルを用いた。
イオンゲルのゼーベック係数(単位温度差あたりの発生電圧;熱起電力)は、Emim−Cl/PVAにおいて最大で10.1mV/Kと市販熱電材料の約40倍という巨大な値が得られているが、電極を介してゲルを複数接続することで、これをより高めることができた。
また、イオンゲルの個数と発生した熱起電力の関係を図17に示す。イオン伝導体はEmim−Cl:PVAのモル比が1500:1のイオンゲルを用いた。イオンゲルの個数が増えるにつれ熱起電力も増加し、5個接続において最大37mV/Kが得られた。ビスマス・テルル系材料では約150個接続しなければ得られない熱起電力をわずか5個の配線で達成でき、熱電素子の製造プロセス簡略化に有効であることが示された。
続いて、ゲル5個を接続した素子に温度差を33℃付与し、開放端電圧を測定したところ、アルカリ乾電池に匹敵する約1.1Vが得られた。また、負荷に接続することで得られたエネルギーは約1.7mJに達した。図18に電圧変化を示す。
通常の熱電素子でボルトオーダーの電圧を得るためには昇圧回路を用いて昇圧する必要がある。この際、熱電素子と昇圧回路のインピーダンスマッチングなどを考慮する必要があるが、本発明に係る熱電キャパシタでは昇圧回路を介さずともボルトオーダーの電圧を発生可能であることが示された。
<実施例6.コインセル型熱電キャパシタの作製と評価>
コインセル(ボタン電池)の電極に用いられるステンレス容器(LIR2450)の内側に銀ペーストを塗布した後(図19左図)、Emim−Cl:PVAのモル比が1500:1(重量比は10:1)のイオンゲルを流し込み、カシメ機でカシメて作製した。得られたコインセル型熱電キャパシタを図19右図に示す。2つのペルチェ素子で得られたコインセル型熱電キャパシタを挟みこみ、上下電極間に温度差を付与し、データロガーで電圧を測定した。このとき、抵抗ボックスを用いて、開放と負荷抵抗接続を繰り返し行った。負荷抵抗の接続、開放を繰り返すことで、電圧の減少(仕事への変換)と電圧の回復を交互に繰り返すことができた。このときの電圧変化を図20に示す。コインセルに充填することで、イオン伝導体の液漏れを防止することができる。
<実施例7.ゼーベック係数評価用素子の作製と測定>
実施例1と同様にして、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(Emim−Cl)水溶液(濃度0.1g/mL)とポリビニルアルコール(PVA)水溶液(濃度10wt%)をスクリュー瓶中で混合して、Emim−Cl:PVAの重量比が10:1(Emim−Cl:PVAのモル比は1500:1)のゲルを調製した。
市販のPEDOT:PSS分散液(Clevios PH1000)にエチレングリコールを3重量パーセント混合し、ポリプロピレンケースにキャストし、乾燥後、ポリプロピレンケースから剥離することで、PEDOT:PSSの自立膜を作製した。これを短冊状にカットしてガラス基板上に設置し、接着剤で土手を作り、上記のゲルを注ぎ、加熱して過剰な水分を蒸発させ、イオン導電性のゲル膜を作製して測定用のサンプルとした。実施例1と同様にして、2台のペルチェ素子を橋渡しするように素子を設置し、R熱電対(温度と電圧計測用)を電極に直接設置した。R熱電対はデータロガー(温度、電圧計測器)に接続し、実施例1と同様にして、ゼーベック係数を決定した。ゼーベック係数は、−1から−2mV/Kであった。Emim−Cl/PVAゲルのゼーベック係数をPEDOT:PSS電極により計測したゼーベック係数(熱起電力:単位温度差あたりの発生電圧
)の測定結果を図21に示す。また、当該Emim−Cl/PVAゲルの素子について、温度差を与えた開回路状態(open)から負荷抵抗(loading:1kΩ)に接続した際の電圧変化のグラフを図22に示す。
注目すべきは、図7と図21または図8と図22の比較において、開放端電圧の符号が逆になっている点である。実施例1では、図7に示したように、温度差を拡大するごとに正側に開放端電圧が増加することから、ゼーベック係数が正でありp型の極性である。一方、図21では、温度差の拡大に対して負側に開放端電圧が増加していくことから、ゼーベック係数は負である。すなわち、実施例1と同じEmim−Cl/PVAゲルを用い電極をPEDOT:PSS電極に変更することで、極性が反転し、n型となったことがわかる。図22から、電極をPEDOT:PSS電極に変更しても、負荷抵抗に接続すると開放端電圧は0となり、熱電素子や熱化学電池のような電子が連続的にフローするメカニズムではなく、キャパシタとして動作することがわかる。なお図22でも、実施例1の図8における開放端電圧とは符号が逆になっている。すなわちn型の熱電キャパシタである。
本発明は、IoT(Internet of things)におけるセンサや無線送信デバイスの電力を供
給する発電素子、特に中低温領域の未利用熱を用いた素子として有用である。アプリケーション例としては、ヘルスケア用センサ、子供の見守りセンサ、温湿度の自動モニタなどのための電源、熱起電力を利用した高感度温度センサが期待される。

Claims (17)

  1. 少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタであって、
    前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなることを特徴とする、熱電キャパシタ。
  2. 前記ハロゲンアニオンを有する塩がハロゲン化イミダゾリウムである、請求項1に記載の熱電キャパシタ。
  3. 前記ハロゲン化イミダゾリウムが下記式(1)で表される化合物である、請求項2に記載の熱電キャパシタ。
    Figure 2021190689

    式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。
  4. 前記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基であり、Xはクロロアニオンである、請求項3に記載の熱電キャパシタ。
  5. 前記イオン伝導体は、イオン液体、イオン溶液またはイオンゲルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  6. 前記電極が少なくとも表面に、導電性高分子、銀若しくは白金を有する電極である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  7. 前記電極は、導電性高分子電極、銀電極、白金電極、または銀若しくは白金をナノカーボン材料に被覆してなる電極である、請求項6に記載の熱電キャパシタ。
  8. ゼーベック係数の絶対値が1mV/K以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  9. 電気的に直列に接続された複数のセルを備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  10. p型である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  11. n型である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ。
  12. 一以上の請求項10に記載のp型の熱電キャパシタと一以上の請求項11に記載のn型の熱電キャパシタとを備え、該p型の熱電キャパシタと該n型の熱電キャパシタが交互に電気的に直列に接続されている、熱電キャパシタモジュール。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱電キャパシタ又は請求項12に記載の熱電キャパシタモジュールを備えた、温度センサ。
  14. 少なくとも一対の電極及びそれらに挟持された熱電変換材料から構成されるセルを備える熱電キャパシタの使用方法であって、
    前記熱電変換材料がハロゲンアニオンを有する塩を含むイオン伝導体からなり、
    前記一対の電極が一定の温度差を維持しながら、
    断続的に電力を出力することを特徴とする、熱電キャパシタの使用方法。
  15. 前記ハロゲンアニオンを有する塩がハロゲン化イミダゾリウムである、請求項14に記載の熱電キャパシタの使用方法。
  16. 前記ハロゲン化イミダゾリウムが下記式(1)で表される化合物である、請求項15に記載の熱電キャパシタの使用方法。
    Figure 2021190689

    式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を表し、Xはハロゲンアニオンを表す。
  17. 前記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基であり、Xはクロロアニオンである、請求項16に記載の熱電キャパシタの使用方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115394905A (zh) * 2022-08-02 2022-11-25 上海应用技术大学 一种柔性pva/pedot:pss复合热电薄膜的制备方法

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