JP2021172597A - 脂質ナノ粒子 - Google Patents

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イクラミ アブデルラヒム カリル イブラヒム
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Abstract

【課題】本発明は、肝細胞癌の治療に有用な、抗癌剤を搭載した脂質ナノ粒子を提供することを課題とする。【解決手段】抗癌剤と、RNA干渉によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する低分子核酸と、下記一般式(1)[式中、とは、互いに独立して、炭素数12〜24の直鎖状の炭化水素基である。]で表される脂質と、癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドがポリエチレングリコールを介してリン脂質に結合しているPEG化リン脂質と、を含有しており、前記抗癌剤がソラフェニブである、脂質ナノ粒子。[化1]【選択図】なし

Description

本発明は、肝細胞癌の治療に有用な、抗癌剤を搭載した脂質ナノ粒子に関する。
肝細胞癌は、世界で5番目に多い癌であり、癌関連死の中で2番目に多い死因である。生命にかかわる病気であるにもかかわらず、その治療戦略は、肝臓切除や肝移植などの外科的介入に主に依存している。切除不可能な腫瘍の場合、基本的に放射線療法及び/又は化学療法である。放射線療法は、小さな限局性腫瘍に限定されており、大きな腫瘍や転移性腫瘍にはほとんどメリットがない。一方で、化学療法剤は、それらのオフターゲット毒性と化学療法抵抗性の発生が問題となる。
肝細胞癌の治療に用いられる化学療法剤としては、例えば、キナーゼ阻害剤が挙げられる。中でも、複数のキナーゼに対して阻害活性を有するマルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブ(SOR)は、切除不能であり、かつ薬剤耐性の肝細胞癌に対する治療剤として、FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けている(非特許文献1)。
近年では、遺伝子治療が癌治療に応用されるようになってきている。遺伝子治療では、例えば、内因性遺伝子が機能不全である場合に、健全に機能する正常な遺伝子を導入することや、病原性遺伝子や過剰発現した遺伝子をノックダウンすることが行われる。癌治療のための遺伝子治療の標的遺伝子として考えられている遺伝子の1つが、ミッドカイン(MK)遺伝子である。ミッドカインは、肝細胞癌及び他の悪性腫瘍で過剰発現されるヘパリン結合サイトカインであり、抗アポトーシス、分裂促進、血管新生、及び化学療法抵抗性等の機能に関与している(非特許文献2)。
一方で、脂溶性薬物や、siRNA(short interfering RNA)又はmRNA等の核酸を封入し、標的細胞へ送達するためのキャリアとして、脂質ナノ粒子(LNP)が利用されている。例えば、siRNAなどの核酸を効率的に標的細胞内へ送達するためのキャリアとなる脂質ナノ粒子として、pH感受性カチオン性脂質を構成脂質として含む脂質ナノ粒子が報告されている(非特許文献3、特許文献1)。また、肝臓特異的に高い遺伝子発現を示す脂質ナノ粒子も報告されている(非特許文献4)。
薬効成分を標的の細胞へ送達するナノ粒子(薬剤キャリアナノ粒子)の小型化は、間質バリアを突破するための非常に有効な戦略である。siRNAを標的の細胞へ送達する脂質ナノ粒子(siRNAキャリア脂質ナノ粒子)においても同様の戦略が非常に有効であると考えられるが、siRNAキャリア脂質ナノ粒子の粒子径を小さく制御することは技術的に難しい。近年、2液の瞬間混合を達成可能なマイクロミキサー内蔵マイクロ流路を用いることで直径30nm程度の脂質ナノ粒子を再現良く製造可能であることが報告され(例えば、非特許文献5参照。)、製造そのものの技術的バリアは解消されつつある。
国際公開第2018/230710号
Ziogas, et al., World journal of clinical oncology, 2017, vol.8 (3), p.203-213. Takei and Kadomatsu, Midkine: From Embryogenesis to Pathogenesis and Therapy, 2012, p.225-236. Sato, et al., Journal of Controlled Release, 2012, vol.163 (3), p.267-276. Khalil et al., Journal of Controlled Release, 2011, vol.156(3), p.374-380. Leung et al.,Journal of Physical Chemistry C Nanomater Interfaces,2012,vol.116(34),p.18440-18450. Lo, et al., Molecular cancer therapeutics, 2008, vol.7(3), p.579-589. Warashina, et al., Journal of Controlled Release, 2016, vol.225, p.183-191. Sakurai, et al., Molecular Therapy, 2013, vol.21(6), p.1195-1203.
癌は単純な単一の疾患ではなく、実際には一群の疾患及び異常に基づくと考えられており、化学療法、遺伝子療法、免疫療法などの複数の治療法を組み合わせることによって、治療効果を最大化し、耐性メカニズムを克服し、副作用を軽減する試みがなされている。
そこで、本発明は、化学療法と遺伝子治療を併用した肝細胞癌の治療剤として有用な脂質ナノ粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、ソラフェニブとミッドカイン遺伝子を標的とした遺伝子治療を併用することが、肝細胞癌の治療に有効であること、肝細胞に高度に選択的なペプチドで修飾された脂質ナノ粒子が、肝細胞選択的に送達可能な送達キャリアとして優れていること、当該ペプチドで修飾されており、かつソラフェニブとミッドカイン遺伝子に対するsiRNAの両方を担持する脂質ナノ粒子が、肝細胞癌に対して高い治療効果を奏することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の脂質ナノ粒子等を提供するものである。
[1] 抗癌剤と、
RNA干渉によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する低分子核酸と、
下記一般式(1)
Figure 2021172597
[式(1)中、とは、互いに独立して、炭素数12〜24の直鎖状の炭化水素基である。]
で表される脂質と、
癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドがポリエチレングリコールを介してリン脂質に結合しているPEG化リン脂質と、
を含有しており、
前記抗癌剤が、ATC分類がL01XEであるプロテインキナーゼ阻害剤であり、
前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号1で表されるアミノ酸配列中の1〜3個のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチド、又は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドである、脂質ナノ粒子。
[2] 前記一般式(1)で表される脂質が、下記式で表される化合物である、前記[1]の脂質ナノ粒子。
Figure 2021172597
[3] 前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが、ポリエチレングリコールを介して、炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するリン脂質に結合している、前記[1]又は[2]に記載の脂質ナノ粒子。
[4] 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記PEG化リン脂質の量の割合が8〜13モル%である、前記[1]〜[3]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[5] 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記一般式(1)で表される脂質の量の割合が40〜60モル%である、前記[1]〜[4]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[6] さらに、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン、及び卵黄由来ホスファチジルコリンからなる群より選択される1種以上を含む、前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
[7] さらに、前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが結合していないポリアルキレングリコール修飾脂質を含有する、前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
[8] 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記ポリアルキレングリコール修飾脂質の量の割合が2〜4モル%である、前記[7]の脂質ナノ粒子。
[9] 個数平均粒子径が100nm以下である、前記[1]〜[8]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[10] 前記低分子核酸が、ミッドカイン遺伝子を標的とするsiRNAである、前記[1]〜[9]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[11] 前記抗癌剤が、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、又はカボザンチニブである、前記[1]〜[10]のいずれかの脂質ナノ粒子。
[12] 前記[1]〜[11]のいずれかの脂質ナノ粒子を有効成分とする、医薬用組成物。
[13] 肝細胞癌の治療に用いられる、前記[12]の医薬用組成物。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、抗癌剤とRNA干渉によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する低分子核酸の両方を、癌化した肝細胞に選択的に導入させることができる。このため、当該脂質ナノ粒子は、肝細胞癌治療に用いられる治療剤として有用である。
実施例1において、製造したSP94修飾脂質ナノ粒子の各培養細胞株に対する相対取り込み量(%)を調べた結果を示した図である。 実施例1において、製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた各細胞株の細胞生存率(%)を調べた結果を示した図である。 実施例1において、製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた各細胞株のMK遺伝子の相対発現量を調べた結果を示した図である。 実施例2において、SOR濃度が10μMのSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませて24時間インキュベート後の細胞生存率の結果を示した図である。 実施例2において、SOR単独、MK−siRNA単独、SORとMK−siRNA、又はSORとCtrl−siRNAを搭載させたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませて、24時間インキュベート後の細胞生存率の結果を示した図である。 実施例2において、SOR単独、MK−siRNA単独、SORとMK−siRNA、又はSORとCtrl−siRNAを搭載させたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませて、48時間インキュベート後の細胞生存率の結果を示した図である。 実施例2において、5μMのSOR濃度、200nMのMK−siRNA濃度をpH5.5又はpH7.4で搭載したSP94修飾脂質ナノ粒子について、脂質ナノ粒子からのin vitroにおけるSORの放出の経時的変化を調べた結果を示した図である。 実施例3において、SP94修飾DSPE−PEG又はDSPE−PEG2k−MAの割合を5モル%とした脂質ナノ粒子を肝細胞癌の担癌マウスに尾静脈注射した場合の、血中濃度(ID%/mL)の測定結果を図7Aに示す。 実施例3において、SP94修飾DSPE−PEG又はDSPE−PEG2k−MAの割合を10モル%とした脂質ナノ粒子を肝細胞癌の担癌マウスに尾静脈注射した場合の、血中濃度(ID%/mL)の測定結果を図7Bに示す。 実施例4において、YSK05を構成脂質全体の40〜70モル%含有させて製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスの肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた結果を示した図である。 実施例4において、YSK05に加えてさらにDSPE−PEG2k−MAを含有させて製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスの肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた結果を示した図である。 実施例5において、製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスの肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた結果を示した図である。 実施例6において、製造したSP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスの肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた結果を示した図である。 実施例7において、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスの腫瘍体積をモニタリングした図である。
以下、本発明の実施態様について具体的に説明する。本願明細書において、「X1〜X2(X1とX2は、X1<X2を満たす実数)」は、「X1以上X2以下」を意味する。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、抗癌剤とRNA干渉(RNAi)によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する低分子核酸(以下、「MK発現抑制用低分子核酸」ということがある。)とを含み、癌化した肝細胞に選択的に取り込まれる脂質ナノ粒子である。ミッドカインは、抗アポトーシス、分裂促進、血管新生、及び化学療法抵抗性等の機能に関与しており(非特許文献2)、癌細胞においてミッドカインの機能を低減させることにより、抗癌剤単独投与よりも高い抗癌効果が得られる。本発明に係る脂質ナノ粒子が導入された細胞では、当該脂質ナノ粒子に搭載されていたMK発現抑制用低分子核酸によってミッドカイン遺伝子の発現が抑制されるため、同じく脂質ナノ粒子に搭載されていた抗癌剤の抗癌効果が改善される。
抗癌剤の多くは低分子化合物であり、低分子核酸とは物理化学的特性が大きく異なる。一般的には、物理化学的特性の異なる複数の薬剤を、独立して同一の標的細胞へ送達させることは非常に困難である。加えて、抗癌剤は細胞毒性を有すること、及び、低分子核酸は代謝に不安定であることから、それぞれに対して適切な送達デバイスが必要となる。本発明においては、抗癌剤とMK発現抑制用低分子核酸の両方を脂質ナノ粒子に搭載させることにより、それぞれを独立した送達デバイスで送達させた場合よりも、より高効率に両者を同一の細胞に導入させることができる。さらに、両者を脂質ナノ粒子の内部に搭載させることによって、当該脂質ナノ粒子が取り込まれていない細胞や組織に対する抗癌剤の影響を低減させることができ、さらに、低分子核酸を生体内でより安定して標的細胞へ送達させることができる。
本発明に係る脂質ナノ粒子が含む抗癌剤としては、特に限定されるものではないが、ミッドカイン遺伝子の発現抑制と併用することにより、抗癌効果の相乗的な改善が期待できる抗癌剤であることが好ましい。このような抗癌剤としては、例えば、ATC分類(解剖治療化学分類)がL01XEであるプロテインキナーゼ阻害剤が好ましい。当該プロテインキナーゼ阻害剤としては、マルチキナーゼ阻害剤が好ましく、特に、肝細胞癌の治療薬として使用されているソラフェニブ(CAS No.: 284461-73-0、ATC code:L01XE05)、レンバチニブ(CAS No.: 417716-92-8、ATC code:L01XE29)、レゴラフェニブ(CAS No.:755037-03-7、ATC code:L01XE21)、又はカボザンチニブ(CAS No.: 849217-68-1、ATC code:L01XE26)が好ましい。
Figure 2021172597
本発明に係る脂質ナノ粒子が含むMK発現抑制用低分子核酸としては、導入された細胞内において、RNA干渉によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する機能を発揮し得る核酸であれば特に限定されるものではなく、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、siRNA(small interfering RNA)、microRNA等が挙げられる。これらは、ミッドカイン遺伝子の塩基配列に基づいて常法により設計して合成することができる。
siRNAは、21〜23塩基対からなる低分子二本鎖RNAであり、RNA干渉に関与し、mRNAの破壊によって配列特異的に遺伝子の発現を抑制する。本発明において使用可能なsiRNAの種類は特に限定されず、RNA干渉を引き起こすことができるものであればいかなるものを使用してもよい。一般的には、21〜23塩基対の二本鎖RNAであって、RNA鎖の3’部分が2塩基分突出した構造をとり、それぞれの鎖は5’末端にリン酸基と3’末端にヒドロキシル基を有する構造のRNAを、本発明に係る脂質ナノ粒子に搭載させるsiRNAとして使用することができる。また、リボース骨格の2’位のヒドロキシル基がメトキシ基、フルオロ基、あるいはメトキシエチル基に、ホスフォジエステル結合がホスフォロチオエート結合に一部置換されたsiRNAも含まれる。その他、本発明に係る脂質ナノ粒子が搭載するMK発現抑制用低分子核酸としては、細胞内でsiRNAを発現させるsiRNA発現ベクターであってもよい。siRNA発現ベクターとしては、市販のsiRNA発現ベクターから調製することができ、また、これを適宜改変してもよい。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、下記一般式(1)で表される脂質と、癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチド(以下、「肝癌細胞結合性ペプチド」ということがある。)がポリエチレングリコール(PEG)を介してリン脂質に結合しているPEG化リン脂質(以下、「肝癌細胞結合性PEG化脂質」ということがある。)と、を含む。下記一般式(1)で表される脂質はpH感受性カチオン性脂質である。本発明に係る脂質ナノ粒子は、脂質ナノ粒子の構成脂質として、特定の構造のpH感受性カチオン性脂質と肝癌細胞結合性PEG化脂質とを含むため、癌化した肝細胞に対する選択性が高い。すなわち、本発明に係る脂質ナノ粒子は、癌化した肝臓に選択的に送達可能となるように、構成脂質が最適化されたものであり、全身投与型遺伝子治療のための医薬用組成物の有効成分として有用である。
Figure 2021172597
一般式(1)中、R及びRは、互いに独立して、炭素数12〜24の直鎖状の炭化水素基である。当該炭化水素基としては、アルキル基であってもよく、アルケニル基であってもよい。当該アルケニル基としては、不飽和結合を1個有する基であってもよく、2個有する基であってもよく、3個有する基であってもよい。炭素数12〜24の直鎖状アルキル基としては、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。炭素数12〜24の直鎖状のアルケニル基としては、デセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、エイコセニル基、ヘンイコセニル基、ヘンエイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基等が挙げられる。
一般式(1)で表される脂質としては、R及びRが互いに独立して、炭素数14〜22の直鎖状のアルキル基又は炭素数14〜22の直鎖状のアルケニル基である脂質が好ましく、R及びRが互いに独立して、炭素数16〜20の直鎖状のアルキル基又は炭素数16〜20の直鎖状のアルケニル基である脂質がより好ましく、R及びRが互いに独立して、炭素数16〜20の直鎖状のアルケニル基である脂質がさらに好ましく、YSK05(非特許文献3)が特に好ましい。
Figure 2021172597
本発明に係るリン脂質の構成脂質に含まれている肝癌細胞結合性PEG化脂質としては、肝癌細胞結合性ペプチドがPEGを介してリン脂質に結合しているPEG化グリセロリン脂質であれば特に限定されるものではない。肝癌細胞結合性PEG化脂質としては、PEGの一方の端部が、リン脂質の親水性基部分と直接又は連結基を介して結合しており、残る他方の端部が、肝癌細胞結合性ペプチドと直接又は連結基を介して結合しているリン脂質が挙げられる。
肝癌細胞結合性PEG化脂質中のリン脂質としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファリジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、セラミドホスフォリルエタノールアミン、セラミドホスフォリルグリセロール、セラミドホスフォリルグリセロールホスファート、1,2−ジミリストイル−1,2−デオキシホスファチジルコリン、プラスマロゲン、ホスファチジン酸(PA)などを挙げることができる。
肝癌細胞結合性PEG化脂質中のリン脂質としては、特に限定されるものではないが、前記一般式(1)で表される脂質との親和性が高く、リン脂質膜を構成しやすい点から、炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するグリセロリン脂質であることが好ましい。当該グリセロリン脂質としては、1個の炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するモノアシルグリセロリン脂質であってもよく、2個の炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロリン脂質であってもよく、1個の炭素数12〜24の脂肪酸残基と1個の炭素数11以下又は25以上の脂肪酸残基とを有するジアシルグリセロリン脂質であってもよい。2個の炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するジアシルグリセロリン脂質は、2個の脂肪酸残基が同じ脂肪酸残基であってもよく、異なる脂肪酸残基であってもよい。本発明に係る脂質ナノ粒子中の肝癌細胞結合性PEG化脂質としては、肝癌細胞結合性ペプチドがPEGを介して、1個又は2個の炭素数12〜24の飽和脂肪酸残基を有するグリセロリン脂質の親水性基部分と結合した脂質であることが好ましく、肝癌細胞結合性ペプチドがPEGを介して、ジステアリルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノステアリルホスファチジルエタノールアミン(MSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、モノパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(MPPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、モノミリストイルホスファチジルエタノールアミン(MMPE)等のホスファチジルエタノールアミン;ジステアリルホスファチジルコリン(DSPC)、モノステアリルホスファチジルコリン(MSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、モノパルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、モノミリストイルホスファチジルコリン(MMPC)等のホスファチジルコリンの親水性基部分と結合した脂質であることがより好ましく、肝癌細胞結合性ペプチドがPEGを介して、ジステアリルホスファチジルエタノールアミンの親水性基部分と結合した脂質であることがさらに好ましい。
肝癌細胞結合性PEG化脂質中の肝癌細胞結合性ペプチドとしては、癌化した肝細胞の表面と選択的に結合するペプチドであれば特に限定されるものではなく、公知のペプチドの中から適宜選択して使用することができる。肝癌細胞結合性ペプチドとしては、例えば、12アミノ酸からなるSP94(SFSIIHTPILPL:配列番号1)(非特許文献6)が挙げられる。また、肝癌細胞結合性ペプチドとしては、SP94に対して、その肝癌細胞結合能を損なわないように、アミノ酸残基の一部に変異を導入したペプチドも用いることができる。具体的には、配列番号1で表されるアミノ酸配列中の1〜3個のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドや、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが挙げられる。
肝癌細胞結合性PEG化脂質中のPEGとしては、肝癌細胞結合性ペプチドの効果を損なうことなく、グリセロリン脂質の親水性基部分と連結させることができる長さの物であれば特に限定されるものではない。本発明に係るリン脂質としては、血中滞留性とエンドソーム脱出能の両方を良好に調整しやすい点から、その構成脂質に含まれている肝癌細胞結合性PEG化脂質のPEGの数平均分子量は、2,000〜5,000が好ましい。PEGの数平均分子量は、例えば、JIS K1557−1に準拠したアセチル化法により測定された水酸基価に基づいて算出することができる。
肝癌細胞結合性PEG化脂質において、PEGとリン脂質の親水性基部分を結合させる連結基、及びPEGと肝癌細胞結合性ペプチドを結合させる連結基としては、特に限定されるものではなく、例えば、−(CH−、−O−、−NH−、−C(=O)−、−S−、2価のマレイミド基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明に係る脂質ナノ粒子において、肝癌細胞結合性PEG化脂質の量が少なすぎる場合には、十分な肝癌細胞に対する選択性が得られないおそれがある。一方で、肝癌細胞結合性PEG化脂質の量が多すぎる場合にも、かえって肝癌細胞に対する選択性が低下する場合がある。充分な肝癌細胞に対する選択性が得られやすい点から、本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する肝癌細胞結合性PEG化脂質の量の割合は、5〜15モル%が好ましく、8〜13モル%がより好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子において、一般式(1)で表される脂質の量は特に限定されるものではない。本発明においては、脂質ナノ粒子の大きさを肝癌細胞への送達効率の点で好ましい範囲内に調節しやすい点から、本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する一般式(1)で表される脂質の量の割合は、40〜70モル%が好ましく、肝癌細胞においてミッドカイン遺伝子の発現抑制効率をより向上させられる点から、40〜60モル%がより好ましく、45〜55モル%がさらに好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子の構成脂質のうち、一般式(1)で表される脂質と肝癌細胞結合性PEG化脂質以外の脂質としては、一般的にリポソームを形成する際に使用される脂質を用いることができる。このような脂質としては、例えば、リン脂質、ステロール、又は飽和若しくは不飽和の脂肪酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
リン脂質としては、肝癌細胞結合性PEG化脂質を構成するリン脂質と同様のものを用いることができる。ステロールとしては、例えば、コレステロール、コレステロールコハク酸、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、ジヒドロコレステロール等の動物由来のステロール;スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来のステロール(フィトステロール);チモステロール、エルゴステロール等の微生物由来のステロールなどが挙げられる。本発明に係る脂質ナノ粒子としては、ステロールを含むことが好ましく、コレステロールを含むことがより好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子としては、肝癌細胞においてより高いミッドカイン遺伝子の発現抑制効果が得られる点から、本発明に係る脂質ナノ粒子の構成脂質のうち、一般式(1)で表される脂質と肝癌細胞結合性PEG化脂質以外の脂質としては、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、及び卵黄由来ホスファチジルコリン(EPC)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、コレステロールと、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、及び卵黄由来ホスファチジルコリン(EPC)からなる群より選択される1種以上とを含むことがより好ましく、コレステロールとジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとを含むことがさらに好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、脂質成分としてポリアルキレングリコール修飾脂質を含有することが好ましい。ポリアルキレングリコールは親水性ポリマーであり、ポリアルキレングリコール修飾脂質を脂質膜構成脂質として用いて脂質ナノ粒子を構築することにより、脂質ナノ粒子の表面をポリアルキレングリコールで修飾することができる。ポリアルキレングリコールで表面修飾することにより、脂質ナノ粒子の血中滞留性などの安定性を高めることができる場合がある。
ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどを用いることができる。ポリアルキレングリコールの分子量は、例えば300〜10,000程度、好ましくは500〜10,000程度、さらに好ましくは1,000〜5,000程度である。
例えば、脂質のポリエチレングリコールによる修飾には、ステアリル化ポリエチレングリコール(例えばステアリン酸PEG45(STR-PEG45)など)を用いることができる。その他、N-[カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-2000]-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、n-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000]-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-750]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-2000]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-[カルボニル-メトキシポリエチレングリコール-5000]-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(PEG−DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE−PEG2k−MA)などのポリエチレングリコール誘導体などを用いることもできるが、ポリアルキレングリコール化脂質はこれらに限定されることはない。
本発明に係る脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する、ポリアルキレングリコール修飾脂質の割合は、一般式(1)で表される脂質と肝癌細胞結合性PEG化脂質による肝癌細胞への選択性を損なわない量であれば特に限定されるものではない。例えば、脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する、ポリアルキレングリコール修飾脂質の割合は、肝癌細胞においてミッドカイン遺伝子の発現抑制効率をより向上させられる点から、2〜4モル%とすることが好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子には、必要に応じて適宜の表面修飾などを行うことができる。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、表面を親水性ポリマー等で修飾することにより、血中滞留性を高めることができる。これらの修飾基で修飾された脂質を脂質ナノ粒子の構成脂質として使用することにより、表面修飾を行なうことができる場合もある。
本発明に係る脂質ナノ粒子の製造にあたり、血中滞留性を高めるための脂質誘導体として、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリグリセリンリン脂質誘導体などを利用することもできる。また、血中滞留性を高めるための親水性ポリマーとして、ポリアルキレングリコールのほかにデキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、カラギーナンなどを表面修飾に用いることもできる。
また、本発明に係る脂質ナノ粒子の核内移行を促進するために、例えば、脂質ナノ粒子を3糖以上のオリゴ糖化合物で表面修飾することもできる。3糖以上のオリゴ糖化合物の種類は特に限定されないが、例えば、3〜10個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができ、好ましくは3〜6個程度の糖ユニットが結合したオリゴ糖化合物を用いることができる。
オリゴ糖化合物で脂質ナノ粒子を表面修飾する方法は特に限定されないが、例えば、脂質ナノ粒子をガラクトースやマンノースなどの単糖で表面を修飾したリポソーム(国際公開第2007/102481号)が知られているので、この刊行物に記載された表面修飾方法を採用することができる。上記刊行物の開示の全てを参照により本明細書の開示として含める。
また、本発明に係る脂質ナノ粒子には、例えば、温度変化感受性機能、膜透過機能、遺伝子発現機能、及びpH感受性機能などのいずれか1つ又は2つ以上の機能を付与することができる。これらの機能を適宜付加することにより、脂質ナノ粒子の血液中での滞留性を向上させ、標的細胞におけるエンドサイトーシスの後にエンドソームから効率的に脂質ナノ粒子を脱出させて、封入された核酸を肝癌細胞内でより効率よく発現させることができる。
肝細胞癌に存在する間質バリアは、脂質ナノ粒子の肝癌細胞への送達の障害となっている。脂質ナノ粒子の大きさを、肝細胞癌の間質関門を通過できる程度の大きさに調整することによって、腫瘍の微小環境自体を調整する必要なく、効率よく肝癌細胞へ送達させることができる。そこで、本発明に係る脂質ナノ粒子の大きさは、個数平均粒子径が、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、40〜70nmがさらに好ましく、50〜70nmがよりさらに好ましい。なお、脂質ナノ粒子の平均粒子径とは、動的光散乱法(Dynamic light scattering:DLS)により測定された個数平均粒子径を意味する。動的光散乱法による測定は、市販のDLS装置等を用いて常法により行うことができる。
本発明に係る脂質ナノ粒子の多分散度指数(PDI)は0.05〜0.7程度、好ましくは0.1〜0.6程度、さらに好ましくは0.2〜0.6程度である。ゼータ電位は−50mV〜−1mVの範囲、好ましくは−30mV〜−5mVの範囲とすることができる。
本発明に係る脂質ナノ粒子の形態は特に限定されないが、例えば、水系溶媒に分散した形態として一枚膜リポソーム、多重層リポソーム、球状ミセル、又は不定型の層状構造物などを挙げることができる。本発明に係る脂質ナノ粒子としては、一枚膜リポソーム、多重層リポソームであることが好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、脂質膜で覆われた粒子内部に、標的の細胞内に送達する目的の成分を内包していることが好ましい。すなわち、本発明に係る脂質ナノ粒子は、抗癌剤とMK発現抑制用低分子核酸を粒子内部に内包していることが好ましい。
本発明に係る脂質ナノ粒子は、本発明の効果を損なわない範囲において、抗癌剤とMK発現抑制用低分子核酸以外の他の成分を粒子内部に内包していてもよい。当該他の成分としては、酸、糖類、ペプチド類、低分子化合物、金属化合物などが挙げられる。
本発明に係る脂質ナノ粒子の製造方法は特に限定されず、当業者に利用可能な任意の方法を採用することができる。一例を挙げれば、全ての脂質成分をクロロホルムなどの有機溶媒に溶解し、エバポレータによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことによって脂質膜を形成した後、当該脂質ナノ粒子に封入させる抗癌剤とMK発現抑制用低分子核酸を水系溶媒に溶解させた状態で添加し、さらにホモジナイザーなどの乳化機、超音波乳化機、又は高圧噴射乳化機などにより乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としてよく知られている方法、例えば逆相蒸発法などによっても製造することができる。脂質ナノ粒子の大きさを制御したい場合には、孔径のそろったメンブランフィルターなどを用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。本発明に係る脂質ナノ粒子は、例えば、非特許文献5に記載の方法を用いて製造することもできる。
水系溶媒(分散媒)の組成は特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩液などの緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。これら水系溶媒(分散媒)は脂質ナノ粒子を安定に分散させることができるが、さらに、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)や、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)などを加えてもよい。この水系溶媒に分散した脂質ナノ粒子を安定に長期間保存するには、凝集抑制などの物理的安定性の面から水系溶媒中の電解質を極力排除することが望ましい。また、脂質の化学的安定性の面からは水系溶媒のpHを弱酸性から中性付近(pH3.0〜8.0程度)に設定し、及び/又は窒素バブリングなどにより溶存酸素を除去することが望ましい。
得られた脂質ナノ粒子の水性分散物を凍結乾燥又は噴霧乾燥する場合には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトースなどの二糖類、ラフィノース、メレジノースなどの三糖類、シクロデキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコールなどの糖(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。また、上記水性分散物を凍結する場合には、例えば、前記の糖類やグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)を用いると安定性を改善できる場合がある。
本発明に係る脂質ナノ粒子を動物個体に投与すると、当該脂質ナノ粒子に封入された抗癌剤とMK発現抑制用低分子核酸は、他の臓器や健康な肝細胞よりも肝癌細胞に選択的に取り込まれ、ミッドカイン遺伝子の発現が抑制され、かつ抗癌剤によって細胞死に至る。この肝癌細胞に対する高選択的なミッドカイン遺伝子発現抑制活性と抗癌活性により、本発明に係る脂質ナノ粒子は、肝細胞癌を標的とする抗癌剤の有効成分として機能する。このため、本発明に係る脂質ナノ粒子は、医薬用組成物の有効成分として有用であり、特に、肝細胞癌に対する治療に用いられる医薬用組成物の有効成分として有用である。
本発明に係る脂質ナノ粒子が投与される動物は、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。また、本発明に係る脂質ナノ粒子を動物に投与する際の投与経路は、特に限定されるものではないが、経静脈投与、経腸投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、経肺投与等の非経口投与であることが好ましい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[試薬等]
SORは、米国のAstaTech社から入手した。MK−siRNAとコントロールsiRNA(siGL4)は、表1に記載の塩基配列からなる合成RNAを用いた。qRT−PCRで使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、表2に記載の塩基配列からなる合成RNAを用いた。SP94ペプチドの末端にシステインを付加したペプチド(SFSIIHTPILPL−Cys)は、化学合成したものを用いた。
Figure 2021172597
Figure 2021172597
YSK05は、非特許文献3に記載の方法で合成した。N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン(DOPC)、及び1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォコリン(DSPC)は、米国のAvanti Polar Lipids社から入手した。1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン(POPE)、卵黄由来L−α−ホスファチジルコリン(EPC)、及び1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスフォエタノールアミン−N−[マレイミド(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG2k−MA)は、日本のNOF社から入手した。コレステロール、Triton X100、Tri試薬、及びシナピン酸は、米国のSigma-Aldrich社から入手した。分岐型ポリエチレンイミン(PEI)(平均分子量10KDa)は、日本の和光社から入手した。 ステアリル化オクタアルギニンペプチド(STR−R8)は、日本のクラボウ社によって合成された。Ribogreenは、米国のInvitrogen社から入手した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)細胞増殖アッセイキットは、英国のAbcam社から入手した。ReverTra Ace qPCR RT Master Mix kitとgDNA Remover及びThunderbird SYBR qPCRMixは、日本のTOYOBO社から購入した。細胞培養プレート(2.5×150mm、6ウェルプレート及び24ウェルプレート)は、米国のCorning社から入手した。ガラス底ディッシュ(35mm)は、日本のいわき社から入手した。
ヌクレアーゼフリー水、1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドジカルボシアニン−4−クロロベンゼンスルホン酸塩(DiD)及び2’−(4−エトキシフェニル)−5−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2,5’−ビベンゾイミダゾール(Hoechst 33342)は、米国のThermo Fisher Scientific社から入手した。Cy3標識siRNAは、米国のQiagen社から入手した。カットオフ分子量3.5KDa(Spectra / Por 6)の透析膜は、米国のSpectrum Labs社から入手した。
[細胞]
ヒト肝細胞癌細胞株HepG2、ヒト子宮頸部腺癌細胞株HeLa、マウス肝細胞癌細胞株Hepa 1−6、及びマウス正常肝細胞株FL83Bは、米国のATCC(American Type Culture Collection)から入手した。各細胞株は、製造業者のガイドラインに従って培養され、維持された。HepG2及びHepa 1−6細胞は、高比率のグルコース(4.5g/L)(ナカライテスク社、日本)を含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)で培養され、HeLa細胞は、低比率のグルコース(1g/L)を含むDMEM(米国、Sigma Aldrich社)で培養された。FL83B細胞をF−12K培地(米国、ATCC)で培養した。すべての培地に10容量%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)(Biosera、米国)と抗生物質溶液(Thermo Fisher Scientific社、米国)を追加し、微生物汚染を防ぐために100ユニット/mL ペニシリンと100μg/mL ストレプトマイシンを含有させた。すべての細胞は、37℃、5% CO、湿度95%のインキュベーター内で培養した。
[脂質ナノ粒子の調製]
以降の実験において、特に記載のない限り、脂質ナノ粒子は、脂質薄膜水和法によって調製された。
siRNA(3nmol)とPEIは、個別にHEPESバッファー(10mM、pH4)に溶解し、リン酸に対する窒素比(N/P)がイコールから0.5になるように、PEI溶液をsiRNA溶液にボルテックスをしながら徐々に加えることで、負に帯電したコアを形成するようにして、複合体を形成した。室温で30分間インキュベーションした後、このコア溶液を使用して、脂質のエタノール溶液を真空下で蒸発させることにより形成された脂質フィルムを水和させた。SORは、エバポレーション前に、望ましい量のエタノール溶液を脂質溶液に添加することにより、脂質ナノ粒子に内包させた。室温でさらに30分間インキュベーションした後、水和したフィルムを1分間超音波処理して脂質ナノ粒子を形成し、脂質ナノ粒子を安定させるためにさらに室温で30分間インキュベートした。脂質ナノ粒子溶液を、分子量15kDaのフィルターチューブ(Merck Millipore社)を使用した限外濾過−遠心分離(2000g、30分間、室温)で濾過し、内包されていないSORを除去した。
次に、フィルター上に保持された脂質ナノ粒子をHEPESバッファー(10mM、pH7.4)に再懸濁して、YSK05のカチオン電荷を中和した。他のpH非依存性脂質を使用した場合も、すべての調製物はHEPESバッファー(10mM、pH7.4)で処理した。ブランク脂質ナノ粒子は、siRNA又はSORなしで同様の方法で調製され、ネガティブコントロールとした。
[脂質ナノ粒子の粒子径及びゼータ電位の測定]
脂質ナノ粒子の粒子径及びゼータ電位は、動的光散乱法を用いて粒子径を、DLS装置(製品名:「ゼータサイザー」、マルバーン・パナリティカル社製)を用いて測定した。
[脂質ナノ粒子への封入効率の評価]
SORの脂質ナノ粒子への封入効率(encapsulation efficiency:EE)は、最終的に得られた脂質ナノ粒子溶液のサンプル30μLを、適切な量のエタノールと激しくボルテックスしながら混合して測定した。SOR含有量は、脂質ナノ粒子を入れずに同様に調製したサンプルをブランクとして、266nmの分光光度法(「Life Science UV / vis Spectrophotometer DU730」、米国、Beckman Coulter社)で決定された。予め設定された検量線を使用して、封入されたSOR量を計算した。SOR封入効率は、以下の式で計算した。
Figure 2021172597
siRNA封入効率は、Ribogreen蛍光分析法(非特許文献7)によって決定された。
[細胞毒性の評価]
以降の実験において、特に記載のない限り、細胞毒性は以下の方法によって評価された。
細胞を、各実験の24時間前に5×10細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。実験時に、0.25mLの無血清培地で、細胞を目的の濃度に調製した脂質ナノ粒子で処理し、37℃で4時間インキュベートした。次に、10% FBSを含む1mLの新鮮な培地を各ウェルに加え、細胞をさらに20時間インキュベートした。 細胞生存率を評価するために、製造元のガイドラインに従ってMTTアッセイを実施した。
まず、培地を除去し、細胞を滅菌PBSで洗浄した。MTT試薬の50μLアリコートと等量の無血清培地を各ウェルに加え、細胞を37℃で3時間インキュベートした。次いで、各ウェルに150μLのMTT溶媒を加えて、形成されたホルマザンを溶解し、プレートをシェーカーで15分間振とうした。各ウェルの溶液の590nmの吸光度を、マルチプレートリーダー(「Enspire 2300 Multilabel Reader」、PerkinElmer社、米国)を使用して分光測光法で測定し、その吸光度を未処理のコントロール細胞の吸光度と比較した。細胞を含まない無血清培地を同様の方法で処理したものをネガティブコントロールとし、バックグラウンドの吸光度を補正した。細胞生存率は、未処理細胞の補正後吸光度に対する、処理細胞の補正後吸光度の割合([処理細胞の補正後吸光度]/[未処理細胞の補正後吸光度])(%)として求めた。
[細胞へのin vitroトランスフェクション]
以降の実験において、特に記載のない限り、細胞へのin vitroトランスフェクションは以下の方法によって実施した。
各実験の24時間前に、細胞を2×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種した。無血清培地1mLに目的の濃度になるようにsiRNA搭載脂質ナノ粒子を含有させたサンプルを各ウェルに加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした。次いで、10% FBSを含む新鮮な培地(4mL)を各ウェルに加え、細胞をさらに20時間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄した後、500μLのTri試薬を使用して溶解し、測定が行われるまで−80℃で保存した。
[遺伝子発現の測定]
以降の実験において、特に記載のない限り、遺伝子発現量は以下の方法によって測定した。
細胞溶解物を含むTri試薬をクロロホルムと混合し、遠心分離して、DNA及びタンパク質から全RNAを分離した。上部のRNA層を分離し、RNAペレットをイソプロパノールで沈殿させ、75% 冷エタノールで2回洗浄した。次に、最終的なRNAペレットを適切な量のヌクレアーゼフリー水に溶解し、UV分光光度法(「NanoDrop Lite」、Thermo Fisher Scientific社、米国)で定量化した。製造元のプロトコルに従って、gRNA Remover(TOYOBO社、日本)を含むReverTra Ace qPCR RT Master Mix kitを使用して、トータルRNAの500ngサンプルを逆転写して相補DNA(cDNA)に得た。
qRT−PCR分析は、Thunderbird SYBR qPCR Mix(TOYOBO社、日本)と表2に記載のプライマーを使用して、取得したcDNAを用いて実行した。qRT−PCRは、サクライらの方法(非特許文献8)と同じ条件下で、Light Cycler 480(Roche Diagnostics、バーゼル、スイス)を使用して96ウェルプレートで行われた。MK遺伝子のmRNAの相対量は、サクライらの方法(非特許文献8)と同様にddCt法で計算され、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)遺伝子のmRNAで正規化された。
[蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析による細胞取り込み実験]
以降の実験において、特に記載のない限り、FACS分析による細胞取り込み実験は以下の方法によって実施した。
調製した脂質ナノ粒子の細胞への取り込みを、様々な細胞株で評価した。被験細胞は、各実験の24時間前に2×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種した。脂質ナノ粒子は、親油性蛍光プローブDiD(0.1モル%)で標識された。被験脂質ナノ粒子を含むサンプルを無血清細胞培養培地と混合して、総量1mLで10μM SORに相当する最終濃度に調整して、細胞を37℃で4時間インキュベートした。培地を除去して細胞をPBSで洗浄した後、0.05% トリプシンでの処理により剥離した。次に、細胞懸濁液500gを4℃で10分間遠心し、細胞ペレットを、0.5% ウシ血清アルブミンと0.1% アジ化ナトリウムを含む1mLのFACSバッファーに懸濁した。遠心分離と細胞ペレットのFACSバッファーによる洗浄を2サイクル行った後、細胞ペレットを750μLのFACSバッファーに完全に懸濁し、ナイロンメッシュに通して全ての細胞凝集体を除去した。細胞の平均蛍光強度(MFI)は、FACSCaliburフローサイトメトリー(BD Biosciences社、米国)によって決定され、様々な細胞株による様々な脂質ナノ粒子の細胞取り込みを比較するために、未処理の細胞のMFIに正規化された。
[統計]
以降の実験において、特に記載のない限り、分析による細胞取り込み実験は以下の方法によって実施した。
GraphPad Prism 7ソフトウェアを使用して、統計分析を行った。さまざまなグループの平均値の比較は、一元配置分散分析(ANOVA)に続いてBonferroni検定を使用して行った。平均間のペアワイズ比較は、両側スチューデントt検定を使用して行った。 P値<0.05は有意であるとした。各測定値は、3つの独立した実験の平均値±標準偏差で表された。
[製造例1]
肝癌細胞結合性PEG化脂質として、SP94修飾DSPE−PEGを合成した。システインが末端に付加されたSP94ペプチド(Cys−SP94)を、Micheal反応を介してDSPE−PEG2k−MAに結合させた。
Figure 2021172597
Cys−SP94とDSPE−PEG2k−MAのエタノール溶液又は水溶液を2mM濃度で調製した。次に、等量の2つの溶液を混合し、900rpm、30℃で24時間振とうしながらインキュベートして、最終濃度1mMのコンジュゲートを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)を使用して、反応の完了とコンジュゲートの分子量を確認した。
[MALDI−TOF−MS分析]
反応物と生成物の分子量を確認するために、共役反応の後にMALDI−TOF−MSを使用した。0.1% トリフルオロ酢酸(TFA)と1% シナピン酸を含むアセトニトリル(30%)の水溶液をマトリックス溶液として使用した。各サンプルの分子量は、MALDI−TOF Ultraflex II機器(Bruker Daltonics社、米国)を用いて測定された。
[実施例1]
製造例1で合成したSP94修飾DSPE−PEGを構成脂質として含み、SORとMK−siRNAを搭載した脂質ナノ粒子(SP94修飾脂質ナノ粒子)を製造し、各培養細胞へのin vitroにおける取り込み等を調べた。
さらに、pH感受性カチオン性脂質YSK05も構成脂質として用いた。脂質ナノ粒子の構成脂質のモル比は、YSK05/EPC/コレステロール/SP94修飾DSPE−PEG=4:3:3:0.5とした。SP94修飾脂質ナノ粒子には、10μMのSORと400nMのMK−siRNAを搭載させた。
SP94修飾DSPE−PEGは、事前挿入法又事後挿入法のいずれかの方法で、脂質ナノ粒子に挿入した。事前挿入法では、SP94修飾DSPE−PEGのエタノール溶液を、蒸発及び脂質薄膜の形成前に、他の脂質のエタノール溶液に目的の量で直接添加した。事後挿入法では、SP94修飾DSPE−PEGの水溶液を目的の量で脂質ナノ粒子の水溶液に添加し、脂質ナノ粒子を室温又は60℃で30分間インキュベートして、脂質ナノ粒子を安定化させた。
調製されたSP94修飾脂質ナノ粒子を、HepG2細胞、HeLa細胞、Hepa 1−6細胞、及びFL83B細胞にそれぞれ導入させて、FACS分析による細胞への取り込み量を調べた。HepG2細胞への取り込み量を100%とした相対取り込み量(%)を図1に示す。図中、「*」はP<0.05、「***」はP<0.0001を表す。図1に示すように、肝癌細胞由来のHepG2細胞とHeLa細胞とHepa 1−6細胞では、いずれもSP94修飾脂質ナノ粒子の取り込みが確認されたが、正常肝細胞由来のFL83B細胞には、SP94修飾脂質ナノ粒子の取り込みは確認されなかった。
また、SP94修飾脂質ナノ粒子の取り込み処理を行った各細胞について、細胞毒性を評価した。各細胞の細胞生存率(%)を調べた。結果を図2に示す。図中、「**」はP<0.001を表し、「***」はP<0.0001を表す。SP94修飾脂質ナノ粒子の取り込みが確認されなかったFL83B細胞では細胞生存率はほぼ100%近くであったのに対して、3種の肝癌細胞由来の培養株では、図1に示すSP94修飾脂質ナノ粒子の取り込み量が多いほど、細胞生存率は低い傾向が観察された。
搭載させるMK−siRNAの量を0〜400nMとした以外は同様にして、SP94修飾脂質ナノ粒子を製造した。得られたSP94修飾脂質ナノ粒子を各細胞へ取り込ませ、RNA干渉によるMK遺伝子の発現抑制(サイレンシング)を調べた。MK−siRNAを搭載していないSP94修飾脂質ナノ粒子(MK−siRNA量が0nM)のMK遺伝子の発現量を100%とした相対発現量の測定結果を図3に示す。図中、「**」はP<0.001を表し、「***」はP<0.0001を表す。SP94修飾脂質ナノ粒子の取り込みが確認されなかったFL83B細胞では、MK−siRNAの搭載量を増大させてもMK遺伝子の発現量は変化しなかった。3種の肝癌細胞由来の培養株では、MK−siRNAの搭載量依存的にMK遺伝子の発現量は低下した。
これらの結果から、SP94修飾脂質ナノ粒子は、肝癌細胞に選択的に取り込まれ、MK遺伝子の発現抑制と細胞死を引き起こすことがわかった。
[実施例2]
製造例1で合成したSP94修飾DSPE−PEGを構成脂質として含む脂質ナノ粒子(SP94修飾脂質ナノ粒子)に、SORのみ、MK−siRNAのみ、SORとMK−siRNA、又はSORとCtrl−siRNAを搭載させ、得られたSP94修飾脂質ナノ粒子をHepG2細胞に取り込ませた。
SP94修飾脂質ナノ粒子は、SOR濃度が0、5、又は10μM、MK−siRNA及びCtrl−siRNAの濃度が400nMとした以外は実施例1と同様にして製造した。製造されたSP94修飾脂質ナノ粒子は、HepG2細胞の培養培地に添加した後、24又は48時間インキュベートした後の細胞生存率(%)を調べた。
SOR濃度が10μMのSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませて24時間インキュベート後の細胞生存率の結果を図4に示す。図中、「**」はP<0.001を表し、「***」はP<0.0001を表す。MK−siRNAのみが搭載されたSP94修飾脂質ナノ粒子やSORとCtrl−siRNAが搭載されたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた細胞よりも、SORとMK−siRNAの両方が搭載されたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた細胞のほうが、細胞生存率が明らかに低下していた。
SOR濃度が0、5、又は10μMであり、SOR単独、MK−siRNA単独、SORとMK−siRNA、又はSORとCtrl−siRNAを搭載させたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませて、24時間インキュベート後の細胞生存率の結果を図5Aに、48時間インキュベート後の細胞生存率の結果を図5Bに、それぞれ示す。図中、「**」は、SORとCtrl−siRNAを搭載させたSP94修飾脂質ナノ粒子に対してP<0.001を表し、「***」はP<0.0001を表す。SORのみが搭載されたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた細胞よりも、SORとMK−siRNAの両方が搭載されたSP94修飾脂質ナノ粒子を取り込ませた細胞のほうが、細胞生存率が明らかに低下していた。
図4〜5に示すように、MK−siRNAの存在は、HepG2細胞におけるSORの用量反応曲線を大幅に改善した。これは、MK−siRNAをコントロールのsiRNAであるsiCntrlで置き換えた場合には示されなかった。さらに、二元配置分散分析テスト(SOR*MK−siRNAのP値<0.05)、及び、Compusyn(登録商標)ソフトウェアを使用してChou−Talalayモデルから計算された組み合わせインデックス値(CI<1)から、SORとMK−siRNA間の相互作用効果は、相加的であるだけでなく、相乗的であった。すなわち、これらの結果から、SORとMK−siRNAを併用することにより、SORの抗癌効果が相乗的に増強されることが確認された。
5μMのSOR、200nMのMK−siRNAをpH5.5又はpH7.4で搭載したSP94修飾脂質ナノ粒子について、脂質ナノ粒子からのin vitroにおけるSORの放出の経時的変化を調べた。各pHでの脂質ナノ粒子からのin vitro SOR放出プロファイル(「***」は、pH7.4の結果に対してP<0.0001を表す。)を図6に示す。SORは、pH7.4の場合よりもpH5.5においてより多く放出されており、脂質ナノ粒子からのSORのin vitro放出は、pHに敏感であることがわかった。
[実施例3]
実施例2において、in vitroにおける優れた抗癌効果が確認された、SORとMK−siRNAを搭載したSP94修飾脂質ナノ粒子について、肝細胞癌の担癌マウスに対する抗癌効果を調べた。
雄のBALB/cヌードマウスの右側腹部に、ヒト肝細胞癌由来培養細胞株HepG2を皮下接種して、4〜6週間生育させることにより、肝細胞癌の担癌マウスを作製した。腫瘍の体積が約100mmに達したとき、当該担癌マウスに0.5mg/kgのsiRNA用量で尾静脈からSP94修飾脂質ナノ粒子を静脈内投与した。
投与されたSP94修飾脂質ナノ粒子は、実施例1及び2におけるin vitroでの細胞への取り込みや抗癌効果等について優れていたにもかかわらず、担癌マウスへ投与した場合には、腫瘍細胞への選択的な取り込みが確認できず、腫瘍細胞内においてMK遺伝子のサイレンシング活性を誘発することもできなかった。
SP94修飾脂質ナノ粒子の構成脂質全体に占めるSP94修飾DSPE−PEGの割合を、5又は10モル%とした以外は実施例2と同様にして、5μMのSORと200nMのMK−siRNAを搭載したSP94修飾脂質ナノ粒子を製造した。コントロールとして、SP94修飾DSPE−PEGに代えてDSPE−PEG2k−MAを用いた以外は同様にして、SP94不含脂質ナノ粒子を製造した。これらの脂質ナノ粒子を、担癌マウスに0.5mg/kgのsiRNA用量で尾静脈からSP94修飾脂質ナノ粒子を静脈内投与し、血中量を経時的に測定した。SP94修飾DSPE−PEG又はDSPE−PEG2k−MAの割合を5モル%とした脂質ナノ粒子の血中濃度(ID%/mL)の測定結果を図7Aに、SP94修飾DSPE−PEG又はDSPE−PEG2k−MAの割合を10モル%とした脂質ナノ粒子の血中濃度(ID%/mL)の測定結果を図7Bに、それぞれ示す。
SP94修飾DSPE−PEGを全構成脂質に対して5モル%含有しているSP94修飾脂質ナノ粒子は、in vitroでは優れた肝癌細胞への取り込みと抗癌効果を有していたにもかかわらず(実施例2)、担癌マウスでは血中での平均滞留時間(MRT)が20分間未満と非常に低い薬物動態を示し、肝臓と脾臓による急速なクリアランスを示した(図7A)。これに対して、SP94修飾DSPE−PEGを全構成脂質に対して10モル%含有しているSP94修飾脂質ナノ粒子は、MRTが9時間を超えて延長され、血中プロファイルが劇的に改善された(図7B)。これらの結果から、肝癌細胞結合性PEG化脂質の含有割合を最適化することにより、SP94修飾脂質ナノ粒子のin vivoにおける抗癌効果を顕著に改善できることがわかった。
[実施例4]
侵襲性脂質ナノ粒子製造装置(iLiNP)と呼ばれるマイクロ流体デバイス(非特許文献5)を利用して、装置の製造条件や、構成脂質の組成を変化させて、個数平均粒子径が100nm以下となるように調節して、SORとMK−siRNAを搭載したSP94修飾脂質ナノ粒子を調製した。マイクロ流体デバイスの流量比を変化させて調製された脂質ナノ粒子の特性値を表3に、マイクロ流体デバイスのバッファーを変化させて調製された脂質ナノ粒子の特性値を表4に、siRNA量と構成脂質のモル比を変化させて調製された脂質ナノ粒子の特性値を表5に、それぞれ示す(n=6)。
Figure 2021172597
Figure 2021172597
Figure 2021172597
これらの結果から、以降は、より粒子径が小さく、生体内の肝細胞癌へ送達させやすい脂質ナノ粒子を製造するため、流量比を4:1、HEPESバッファーを用い、siRNA/脂質モル比を1:1000として製造することにした。
流量比等の条件を最適化した上で、YSK05の構成脂質全体に対する割合(モル%)を変化させて調製されたSP94修飾脂質ナノ粒子の特性値を表6に示す。また、調製された脂質ナノ粒子と、実施例2と同じ条件で、YSK05の構成脂質全体に対する割合40モル%で調製されたSP94修飾脂質ナノ粒子を作製した。これらのSP94修飾脂質ナノ粒子を、実施例2と同様にして作製した肝細胞癌の担癌マウスに対して、腫瘍の体積が約100mmに達したとき、0.5mg/kgのsiRNA用量で尾静脈からSP94修飾脂質ナノ粒子を静脈内投与し、肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた。結果を図8に示す(n=3)。図中、「NT」は、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与していない担癌マウスの結果を示す。
Figure 2021172597
図8に示すように、個数平均粒子径を160nmから100nmに減少させると、脂質組成は同じであるにもかかわらず、肝細胞癌に対する選択性が向上した。さらに、YSK05の含有量を増大させ、個数平均粒子径を70nmに小さくすることにより、肝細胞癌に対する選択性をより向上させることができた。
次いで、YSK05の含有量が50モル%、個数平均粒子径が70nmの脂質ナノ粒子の構成脂質に、ポリアルキレングリコール修飾脂質を加えて、正常肝臓におけるMK遺伝子の遺伝子サイレンシング能に対する影響を調べた。具体的には、DSPE−PEG2k−MAを構成脂質全体に対して0、1、3、又は5モル%となるように添加した以外が前記と同様にしてSP94修飾脂質ナノ粒子を製造した。実施例2と同様にして作製した肝細胞癌の担癌マウスに対して、腫瘍の体積が約100mmに達したとき、0.5mg/kgのsiRNA用量で尾静脈からSP94修飾脂質ナノ粒子を静脈内投与し、肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた。結果を図9に示す(n=3)。図中、「NT」は、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与していない担癌マウスの結果を示す。
DSPE−PEG2k−MAの含有量依存的に、得られたSP94修飾脂質ナノ粒子の個数平均粒子径は小さくなった。DSPE−PEG2k−MAの含有量が0モル%では得られたSP94修飾脂質ナノ粒子の個数平均粒子径は70nmであったのに対して、DSPE−PEG2k−MAの含有量が3モル%では得られたSP94修飾脂質ナノ粒子の個数平均粒子径は60nm程度、DSPE−PEG2k−MAの含有量が5モル%では得られたSP94修飾脂質ナノ粒子の個数平均粒子径は50nm程度であった。DSPE−PEG2k−MAの含有量が3モル%で平均粒子径60nmのSP94修飾脂質ナノ粒子が、肝細胞癌において最大のMK遺伝子の遺伝子サイレンシングが達成され、正常肝臓では遺伝子サイレンシングを最小限にすることができた。
[実施例5]
SP94修飾脂質ナノ粒子の構成脂質のうち、リン脂質の種類がMK遺伝子の遺伝子サイレンシング能に対する影響を調べた。リン脂質としては、EPC、DOPC、又はDOPEを用いた。脂質ナノ粒子の構成脂質のモル比は、YSK05/リン脂質/コレステロール/SP94修飾DSPE−PEG/DSPE−PEG2k−MA=5:2:3:1:0.3とした。SP94修飾脂質ナノ粒子には、5μMのSOR、200nMのMK−siRNAを搭載させた。
実施例4と同様の製造条件で、平均粒子径が60μm程度のSP94修飾脂質ナノ粒子を調製した。実施例2と同様にして作製した肝細胞癌の担癌マウスに対して、腫瘍の体積が約100mmに達したとき、得られたSP94修飾脂質ナノ粒子を、0.3mg/kgのsiRNA用量で尾静脈から静脈内投与し、肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた。結果を図10に示す(n=3)。図中、「NT」は、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与していない担癌マウスの結果を示す。いずれのリン脂質を用いたSP94修飾脂質ナノ粒子でも肝細胞癌に対して選択的な高いMK遺伝子の遺伝子サイレンシングが達成された。中でも、YSK05/DOPE/コレステロール/SP94修飾DSPE−PEG/DSPE−PEG2k−MA=5:2:3:1:0.3(モル比)のSP94修飾脂質ナノ粒子は肝細胞癌に対する選択性が最も良好であった。
[実施例6]
血中滞留時間は、充分な治療効果を得るために重要なファクターである。そこで、構成脂質に占めるSP94修飾DSPE−PEGの割合の、血中滞留時間に対する影響を調べた。構成脂質をYSK05/DOPE/コレステロール/SP94修飾DSPE−PEG/DSPE−PEG2k−MA=5:2:1.5〜3:0〜1.5:0.3(モル比)とした以外は実施例5と同様の製造条件で、平均粒子径が60μm程度のSP94修飾脂質ナノ粒子を調製した。
実施例2と同様にして作製した肝細胞癌の担癌マウスに対して、腫瘍の体積が約100mmに達したとき、得られたSP94修飾脂質ナノ粒子を、0.5mg/kgのsiRNA用量で尾静脈から静脈内投与し、血中濃度を経時的に測定した。各SP94修飾脂質ナノ粒子を投与したマウスのT20%(脂質ナノ粒子の血中濃度が20%ID/mLに下がるまでの時間)を表7に示す。SP94修飾DSPE−PEGが8〜13モル%のSP94修飾脂質ナノ粒子では、T20%が6時間以上であり、非常に良好であった。
Figure 2021172597
また、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与した担癌マウスにおける、肝細胞癌と正常肝臓におけるMK遺伝子の相対発現量を調べた。結果を図11に示す(n=3)。図中、「NT」は、SP94修飾脂質ナノ粒子を尾静脈投与していない担癌マウスの結果を示す。SP94修飾DSPE−PEGが10又は13モル%のSP94修飾脂質ナノ粒子を投与したマウスでは、肝細胞癌において高い遺伝子サイレンシングが達成され、正常肝臓では遺伝子サイレンシングが抑えられており、肝癌細胞に対する選択性が良好であった。
[実施例7]
SP94修飾脂質ナノ粒子の肝細胞癌に対する治療効果を調べた。実施例3と同様にして作製された肝細胞癌の担癌マウスを4つのグループに分け、脂質ナノ粒子を尾静脈投与した。グループ1は、HEPESバッファーのみを封入した脂質ナノ粒子を尾静脈投与するコントロールグループ、グループ2は、SORとsiCntrを封入した脂質ナノ粒子を尾静脈投与するグループ、グループ3は、MK−siRNAを封入した脂質ナノ粒子を尾静脈投与するグループ、グループ4は、SORとMK−siRNAを封入した脂質ナノ粒子を尾静脈投与するグループとした。脂質ナノ粒子のSOR含有量は7.5モル%とした。SORの用量は、中程度の抗癌活性を示す2.5mg/kgとした。siRNA用量は、0.5mg/kgとした。
HepG2細胞を移植した日から7、10、13、16、19、22、及び25日目に脂質ナノ粒子を尾静脈投与した。また、各マウスの腫瘍体積をモニタリングした。結果を図12に示す。腫瘍体積は以下の式で算出した。
[腫瘍体積(mm)]=[長径(mm)]×[短径(mm)]×0.52
グループ2〜4の治療終了時の腫瘍増殖の抑制は、グループ1(コントロール群)と比較して、グループ2は40%、グループ3は18%、グループ4は85%であった。これらの結果から、MK−siRNAが、肝細胞癌のSORに対する感受性を2倍以上増加させること、SOR等の抗癌剤とMK−siRNAを両方内包し、肝癌細胞への選択性が高い本発明に係る脂質ナノ粒子は、肝細胞癌の治療剤として非常に有効であることが明らかである。

Claims (13)

  1. 抗癌剤と、
    RNA干渉によりミッドカイン遺伝子の発現を抑制する低分子核酸と、
    下記一般式(1)
    Figure 2021172597
    [式(1)中、とは、互いに独立して、炭素数12〜24の直鎖状の炭化水素基である。]
    で表される脂質と、
    癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドがポリエチレングリコールを介してリン脂質に結合しているPEG化リン脂質と、
    を含有しており、
    前記抗癌剤が、ATC分類がL01XEであるプロテインキナーゼ阻害剤であり、
    前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号1で表されるアミノ酸配列中の1〜3個のアミノ酸が置換、挿入、若しくは欠失したアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチド、又は、配列番号1で表されるアミノ酸配列と配列同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、かつ癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドである、脂質ナノ粒子。
  2. 前記一般式(1)で表される脂質が、下記式で表される化合物である、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
    Figure 2021172597
  3. 前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが、ポリエチレングリコールを介して、炭素数12〜24の脂肪酸残基を有するリン脂質に結合している、請求項1又は2に記載の脂質ナノ粒子。
  4. 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記PEG化リン脂質の量の割合が8〜13モル%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  5. 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記一般式(1)で表される脂質の量の割合が40〜60モル%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  6. さらに、コレステロール、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン、及び卵黄由来ホスファチジルコリンからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  7. さらに、前記癌化した肝細胞に選択的に結合するペプチドが結合していないポリアルキレングリコール修飾脂質を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  8. 脂質ナノ粒子を構成する全脂質量に対する前記ポリアルキレングリコール修飾脂質の量の割合が2〜4モル%である、請求項7に記載の脂質ナノ粒子。
  9. 個数平均粒子径が100nm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  10. 前記低分子核酸が、ミッドカイン遺伝子を標的とするsiRNAである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  11. 前記抗癌剤が、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、又はカボザンチニブである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子を有効成分とする、医薬用組成物。
  13. 肝細胞癌の治療に用いられる、請求項12に記載の医薬用組成物。
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