以下に添付図面を参照して、本願に係る放射線治療装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る放射線治療装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、実施形態は、処理内容に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る放射線治療装置を含む放射線治療システムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る放射線治療システム1は、治療計画用CT(Computed Tomography)装置100と、治療計画装置200と、放射線治療情報システム300と、表面形状計測装置400と、放射線治療装置500とを含む。治療計画用CT装置100、治療計画装置200、放射線治療情報システム300、表面形状計測装置400、及び、放射線治療装置500は、ネットワーク2を介して、相互に通信可能に接続されている。なお、図1に示す構成はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、その他種々の装置やシステムが放射線治療システム1に含まれる場合でもよい。
治療計画用CT装置100は、架台と、天板を有する寝台装置と、コンソールとを有し、天板に横臥した被治療体の治療対象部位(腫瘍など)を含むCT画像データを収集して、収集したCT画像データを治療計画装置200に送信する。具体的には、治療計画用CT装置100は、架台に備えられたX線管とX線検出器とを被治療体の周囲で回転させながら投影データを収集し、収集した投影データに基づいて3次元のCT画像データを再構成する。ここで、治療計画用CT装置100における天板は、放射線治療装置の天板と同様に平面形状を有している。
なお、本実施形態では、治療計画用の画像データを収集する装置として、治療計画用CT装置100のみを示しているが、実施形態はこれに限られない。例えば、治療計画用MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置や、超音波診断装置などによって治療計画用の3次元の画像データが収集される場合でもよい。
治療計画装置200は、治療計画用CT装置100により収集された被治療体の3次元のCT画像データを用いて、放射線治療装置500による放射線治療の治療計画を立てる。例えば、治療計画装置200は、治療計画用CT装置100が収集したCT画像データを用いて、被治療体内の治療対象部位の位置を特定する。また、例えば、治療計画装置200は、CT画像データを用いて位置を特定した治療対象部位に対して放射線治療装置500が照射する放射線の照射角度や、照射角度ごとの線量及び照射野の形状、照射する回数などの計画を立てる。そして、治療計画装置200は、放射線治療情報システム300及び放射線治療装置500に対して治療計画を送信する。
放射線治療情報システム300は、放射線治療に関する種々の情報を記憶して管理する。具体的には、放射線治療情報システム300は、治療計画や、実績情報(照射履歴)、種々の報告、被治療体の状況の記録など、治療の進捗に関わる種々の情報を、被治療体ごとに記憶して管理する。放射線治療情報システム300は、ネットワーク2に接続された各装置からアクセスされ、管理する情報を提供することができる。
表面形状計測装置400は、治療室内に設置され、放射線治療装置500の天板に横臥する被治療体の体表の形状を計測して、体表の3次元形状データを収集する。そして、表面形状計測装置400は、収集した3次元形状データを放射線治療装置500に送信する。具体的には、表面形状計測装置400は、被治療体が天板に横臥して放射線治療のための位置合わせが実行されてから放射線治療が終了するまでの間、体表の3次元形状データを継続して収集する。ここで、表面形状計測装置400は、種々の手法によって実現することができる。
例えば、表面形状計測装置400は、2眼カメラ(ステレオカメラ)を有し、ステレオカメラによって2方向から被治療体を撮影する。そして、表面形状計測装置400は、2方向から撮影した2つの画像データにおいて対応する画素(被治療体の同一位置を示す画素)をそれぞれ抽出する。表面形状計測装置400は、対応する各画素間の位置の差とステレオカメラの撮影位置の差とを用いて、被治療体の体表の各位置までの距離をそれぞれ算出することで、被治療体の体表の各位置の3次元座標を算出する。なお、2つの画像データにおいて対応する画素の抽出は、既存の種々のマッチングアルゴリズムにて行うことができる。これにより、表面形状計測装置400は、被治療体の体表面の3次元形状データを収集することができる。
また、例えば、表面形状計測装置400は、レーザーを出射する投光装置と、カメラとを有する。そして、表面形状計測装置400は、投光装置によって天板上の被治療体をレーザーでライン状に走査するとともに、レーザー光を画像として取り込む。さらに、表面形状計測装置400は、レーザーの光源の位置と画像上のレーザー光の位置とから3次元座標を算出する。表面形状計測装置400は、この操作をレーザーの投光角度を変化させながら繰り返し同定することで、被治療体の体表面の3次元形状データを収集することができる。
なお、体表面の3次元形状データの収集は、上記2つの手法に限られず、被治療体の体表を計測できるものであればどのような方法が用いられる場合でもよい。
放射線治療装置500は、治療計画装置200による治療計画に従い、被治療体に対して放射線を照射し、放射線治療を実行する。図2は、第1の実施形態に係る放射線治療装置500の一例を示す外観図である。なお、図2においては、治療室に設置された放射線治療装置500について示す。
図2に示すように、放射線治療装置500は、放射線発生器512と、放射線絞り器513と、撮像装置(X線発生器511a及びX線検出器511b)とを有する架台と、天板522を有する寝台装置とを含み、図示しないコンソールからの制御に基づいて、放射線治療を行う。具体的には、放射線治療装置500は、放射線治療情報システム300から治療計画を取得する。そして、放射線治療装置500は、架台を矢印の方向に回転させることで治療計画に沿った照射角度に設定して、天板522に横臥した被治療体に対して放射線照射を行う。
ここで、放射線治療においては、まず、治療計画用CT装置100によって、治療計画を作成するために必要な3次元のCT画像データが収集される。ここで、被治療体の体勢の再現性及び保持性を高めるために固定具が作成される場合もある。また、被治療体は、放射線治療の各回において正確に放射線を照射させるための位置合わせに必要なマークが体表に付けられる。
そして、治療計画において、放射線の照射領域や、放射線の照射角度、照射角度ごとの線量及び照射野の形状、照射する回数などが決定される。例えば、放射線の照射領域の決定においては、まず、治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データなどに基づいて、放射線の照射を避けるべきリスク臓器が設定される。そして、腫瘍の進展や存在が肉眼的に確認できる3次元領域である肉眼的腫瘍体積(GTV:gross tumor volume)が設定され、設定されたGTV及び肉眼的には確認できないが潜在的な腫瘍領域を含む臨床的標的体積(CTV:clinical target volume)が設定される。なお、リスク臓器、GTC及びCTVの設定は、例えば、コンツーリング(輪郭の抽出)によって行われるが、コンツーリングは、医師による手動の処理及び画像処理技術による自動の処理のどちらでも行うことができる。
そして、放射線の照射領域の決定においては、呼吸、嚥下、心拍動、蠕動などの体内臓器の動きによる影響を吸収するためのインターナルマージン(IM:internal margin)を含めたITV(internal target volume)がCTVに対して設定される。さらに、毎回の照射における設定誤差(SM:set-up margin)を含めた計画標的体積(PTV:planning target volume)がCTVに対して設定されることで、放射線の照射領域が決定される。
このように、放射線の照射領域が決定されると、決定された照射領域に対する放射線の照射条件が設定される。例えば、治療計画装置200において、操作者(医療従事者)は、放射線の照射角度、照射角度ごとの線量及び照射野の形状、照射回数などの照射条件を設定する。ここで、照射野の形状は、例えば、放射線絞り器513であるマルチリーフコリメータ(MLC:Multi-Leaf Collimator)によって形成される。MLCは、放射線の照射範囲を設定する複数の放射線遮蔽板を有し、治療計画に基づいて各遮蔽板が独立して駆動することで、放射線の照射領域(PTV)の形状に一致した照射野を形成することができる。
このように作成された治療計画は、放射線治療情報システム300に送信され、患者情報、治療履歴などと一緒に管理される。放射線治療時には、治療計画は放射線治療情報システム300から放射線治療装置500に送信される。放射線治療装置500は、受信した治療計画に沿って、天板522に横臥した被治療体に対して放射線を照射する。
ここで、天板522に横臥する被治療体が治療計画用のCT画像データを収集した際と同じ体勢になるように、レーザー照準器からのレーザーに対して被治療体の体表に付けられたマークが重なるように被治療体の体勢や寝台などが調整され、大まかな位置合わせが実行される。
その後、放射線治療装置500は、放射線の照射領域と放射線治療装置500のアイソセンターとの位置合わせを行うため、X線発生器511a及びX線検出器511bを含む撮像装置によって位置合わせ用のコーンビームCT画像データを生成する。例えば、放射線治療装置500は、架台を回転させながらX線発生器511aからX線を照射して、200度以上の角度分の投影データを収集し、収集した投影データに基づいて3次元のコーンビームCT画像データを再構成する。
放射線治療装置500は、再構成したコーンビームCT画像データと、治療計画用のCT画像データとを用いて、照射領域とアイソセンターとの位置合わせを実行する。なお、放射線治療装置500は、上記したコーンビームCT画像データを用いた位置合わせ以外にも、他の方法によって位置合わせを行うことができる。例えば、図2に示すように、撮像装置として、2つのX線撮影装置511cが治療室に設置される。放射線治療装置500は、天板522に横臥する被治療体を2つのX線撮影装置511cによって撮影し、得られた2方向のX線画像と、治療計画用のCT画像データから生成したDRR(Digitally Reconstructed Radiograph)とを比較することで、照射領域とアイソセンターとの位置合わせを実行する。なお、DRRとは、治療計画用のCT画像データを、2つのX線撮影装置511cによって撮影した2方向にそれぞれ投影することで得られる仮想的なX線撮像画像である。
このように、放射線治療では、治療計画に沿った放射線照射を行うために、細かい位置合わせが実行されるが、上述したように、位置合わせ後も体勢に若干の変化が生じるため、放射線の照射領域(PTV)は、それらを吸収するためのマージンが設定されている。そこで、本実施形態に係る放射線治療装置500は、表面形状計測装置400によって取得される被治療体の体表面の形状に基づいて、位置合わせ後の体勢の変化を検出する。その結果、放射線治療装置500は、投与線量のズレを判定したり、ズレが大きい場合に検出した変化に基づいて治療計画を修正したりすることが可能となり、照射領域に含まれるマージンを小さくし、不要な被ばくを低減する。なお、表面形状計測装置400は、例えば、図2に示すように、治療室に設置される。
以下、本実施形態に係る放射線治療装置500の詳細について説明する。図3は、第1の実施形態に係る放射線治療装置500の構成の一例を示す図である。図3に示すように、放射線治療装置500は、架台510と、寝台装置520と、コンソール530とを有する。
架台510は、撮像装置511と、放射線発生器512と、放射線絞り器513とを含む。撮像装置511は、X線発生器511a及びX線検出器511bを備え、コンソール530による制御のもと、寝台装置520に載置された被治療体のコーンビームCT画像データを収集するための撮影を行う。具体的には、撮像装置511は、撮影用のX線を照射するX線発生器511aと、撮影用のX線を検出するX線検出器511bとが被治療体を挟んで対向するように配置される。そして、撮像装置511は、架台510の回転中にX線発生器511aからX線を照射して、X線検出器511bによってX線を検出することで、200度以上の角度分の投影データを収集する。撮像装置511は、収集した投影データをコンソール530に送信する。
放射線発生器512は、図示しない電子銃と加速管を備える。加速管は、電子銃から発生した熱電子を加速し、タングステンターゲットに衝突させて治療用の放射線を放射する。放射線絞り器513は、例えば、MLCであり、治療用の放射線の照射範囲を設定する複数の放射線遮蔽板を有する。例えば、放射線絞り器513は、コンソール530からの制御に応じて、図示しない移動機構によって複数の放射線遮蔽版を独立して移動させることで被治療体の照射領域に対応した形状を有する放射線の照射野を形成する。
寝台装置520は、基台521と、天板522とを有する。基台521は、寝台駆動装置523が内蔵され、天板522を移動可能に支持する。天板522は、平面形状を有し、被治療体が載置される。寝台駆動装置523は、モータ及びアクチュエータ等を含み、コンソール530による制御のもと、天板522を移動させる。
コンソール530は、通信インターフェース531と、入力インターフェース532と、ディスプレイ533と、記憶回路534と、処理回路535とを有する。
通信インターフェース531は、処理回路535に接続され、ネットワーク2を介して接続された各装置との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース531は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
入力インターフェース532は、処理回路535に接続され、操作者(医療従事者)から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路535に出力する。具体的には、入力インターフェース532は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路535に出力する。例えば、入力インターフェース532は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース532は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース532の例に含まれる。
ディスプレイ533は、処理回路535に接続され、処理回路535から出力される各種情報及び各種画像データを表示する。例えば、ディスプレイ533は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。本実施形態では、例えば、ディスプレイ533は、治療計画や照射履歴などを表示する。
記憶回路534は、処理回路535に接続され、各種データを記憶する。例えば、記憶回路534は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。一例を挙げると、記憶回路534は、表面形状情報5341や、照射履歴5342などを記憶する。また、記憶回路534は、放射線治療情報システム300から受信した治療計画や、各種処理結果などを記憶する。
表面形状情報5341は、表面形状計測装置400によって取得された被治療体の体表面の3次元形状データである。具体的には、表面形状情報5341は、被治療体が天板522上で位置合わせされた後、放射線治療が終了するまでの間継続して収集された複数の3次元形状データである。表面形状情報5341は、表面形状計測装置400によって取得されるごとに、処理回路535によって取得されて記憶回路534に格納される。
照射履歴5342は、被治療体に対して実際に照射された放射線の照射条件や、線量分布などを含み、放射線照射が実行されるごとに記憶回路534に格納される。ここで、本実施形態にかかる照射履歴5342は、後述する処理回路535によって修正された治療計画に基づいて実際に照射された放射線の照射条件や、線量分布も含む。なお、この照射条件については、後に詳述する。照射履歴5342は、放射線照射が完了するごとに、放射線治療情報システム300に送信され、放射線治療情報システム300によって管理される。
処理回路535は、入力インターフェース532を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、放射線治療装置500全体の動作を制御する。例えば、処理回路535は、プロセッサによって実現される。図3に示すように、処理回路535は、制御機能5351、取得機能5352、撮像機能5353、再構成機能5354、同定機能5355、及び、修正機能5356を実行する。ここで、取得機能5352は、第1の取得部及び第2の取得部の一例である。また、同定機能5355は、同定部の一例である。また、修正機能5356は、修正部の一例である。
制御機能5351は、入力インターフェース532を介して入力された各種要求に応じた処理を実行するように制御する。例えば、制御機能5351は、通信インターフェース531を介した情報(例えば、治療計画や、照射履歴など)の送受信、記憶回路534への情報の格納、ディスプレイ533への情報の表示などを制御する。
また、制御機能5351は、治療計画に基づいて、架台510の回転、放射線発生器512による放射線の照射、放射線絞り器513における放射線遮蔽版の移動などを制御する。また、制御機能5351は、治療計画に基づいて、寝台装置520における寝台駆動装置523を制御することで、天板522の移動を制御する。
取得機能5352は、表面形状計測装置400から被治療体の体表面形状を示す形状情報を取得する。具体的には、取得機能5352は、放射線照射前の位置合わせ時における被治療体の体表面形状を示す被治療体の体表面の3次元形状データ(第1の形状情報)を取得する。また、取得機能5352は、放射線照射時における被治療体の体表面形状を示す3次元形状データ(第2の形状情報)を取得する。ここで、取得機能5352は、連続する放射線照射の直前及び放射線照射中の少なくとも一方において、被治療体の体表面形状を示す3次元形状データ(第2の形状情報)を取得する。
例えば、取得機能5352は、位置合わせが実行された場合に、天板522上の被治療体の体表面形状の計測を開始するように表面形状計測装置400に対して制御信号を送信する。取得機能5352は、表面形状計測装置400によって経時的に取得される3次元形状データを順次取得し、記憶回路534に格納する。取得機能5352は、放射線の照射が終了するまで、3次元形状データの取得を継続する。なお、取得機能5352は、位置合わせ時に3次元形状データを取得した後、3次元形状データの取得を一旦停止し、放射線の照射が開始される直前、あるいは開始後に、3次元形状データの取得を再開するように制御することもできる。
撮像機能5353は、撮像装置511を制御して、コーンビームCT画像データを再構成するための投影データを収集する。具体的には、撮像機能5353は、架台510の回転、X線発生器511aによるX線の照射、X線検出器511bによるデータ収集を制御する。例えば、撮像機能5353は、架台510を200度以上回転させながら、X線発生器511aにX線を照射させて、X線検出器511bにてデータを収集することで、被治療体の周囲200度以上の角度分の投影データを収集する。そして、撮像機能5353は、収集した投影データを記憶回路534に格納する。
また、治療室に2つのX線撮影装置511cが設置されている場合、撮像機能5353は、2つのX線撮影装置511cを制御して、2方向のX線画像を収集し、収集した2方向のX線画像を記憶回路534に格納する。
再構成機能5354は、撮像機能5353によって収集された投影データから各種画像を生成し、生成した画像を記憶回路534に格納する。例えば、再構成機能5354は、投影データを種々の再構成法によって再構成することでコーンビームCT画像データを再構成し、再構成したコーンビームCT画像データを記憶回路534に格納する。
同定機能5355は、画像データに基づいて、放射線治療装置500におけるアイソセンターと放射線の照射領域との位置関係を同定する。例えば、同定機能5355は、治療計画用CT装置100が収集したCT画像データとコーンビームCT画像データとを比較して、コーンビームCT画像データ内の照射領域を抽出する。すなわち、同定機能5355は、放射線治療装置500の座標系における照射領域の位置を抽出する。そして、同定機能5355は、放射線治療装置500におけるアイソセンターと照射領域との位置関係を同定する。さらに、同定機能5355は、特定した位置関係に基づいて、アイソセンターに対して照射領域を位置合わせするための天板522の位置及び角度の6軸のパラメータを算出する。
また、例えば、同定機能5355は、2つのX線撮影装置511cによって撮影した2方向のX線画像と、治療計画用のCT画像データから生成したDRRとを比較することで、放射線治療装置500の座標系における照射領域の位置を抽出する。そして、同定機能5355は、放射線治療装置500におけるアイソセンターと照射領域との位置関係を同定し、アイソセンターに対して照射領域を位置合わせするための天板522の位置及び角度の6軸のパラメータを算出する。
また、同定機能5355は、被治療体の体表の3次元形状データに基づいて、位置合わせ後の照射領域の位置の変化を同定する。具体的には、同定機能5355は、位置合わせ時に収集した体表の3次元形状データと放射線照射時に収集した体表の3次元形状データとに基づいて、照射領域の位置の変化を同定する。より具体的には、同定機能5355は、位置合わせが完了した直後に収集された体表の3次元形状データを基準として、放射線の照射開始直前に収集された体表の3次元形状データ及び放射線照射中に収集された体表の3次元形状データの基準からの位置及び形状の変化を同定する。そして、同定機能5355は、同定した体表の3次元形状の変化に基づいて、放射線の照射領域の位置の変化を同定する。
例えば、同定機能5355は、位置合わせ時に収集した3次元形状データにおける体表の各位置と、放射線照射時に収集した3次元形状データにおける体表の各位置との対応関係を抽出する。すなわち、同定機能5355は、表面形状計測装置400の座標系における位置合わせ時の体表の各位置の座標と放射線照射時の体表の各位置の座標とを比較して、同一の体表位置の座標の変化を抽出する。
一例を挙げると、同定機能5355は、位置合わせ時に収集した体表の3次元形状データ及び放射線照射時に収集した体表の3次元形状データに対して、一方の体表面形状を他方の体表面形状に合わせる非剛体位置合わせを行い、当該非剛体位置合わせの結果に基づいて照射領域の位置ズレ及び変形を同定する。すなわち、同定機能5355は、非剛体位置合わせにおいて、体表面形状の移動に基づいて照射領域の位置ズレを同定し、体表面形状の変形に基づいて照射領域の変形を同定する。
例えば、同定機能5355は、位置合わせ時に収集した体表の3次元形状データと放射線照射時に収集した体表の3次元形状データとを非剛体位置合わせした際に、体表形状は変化せずに位置が移動していた場合、照射領域に表面形状と同様の移動(位置ズレ)が生じていると判定する。また、同定機能5355は、例えば、位置合わせ時に収集した体表の3次元形状データと放射線照射時に収集した体表の3次元形状データとを非剛体位置合わせした際に、体表面の形状が変化していた場合、照射領域に表面形状の変化に関わる変化が生じていると判定する。
そして、同定機能5355は、非剛体位置合わせの結果に基づいて、照射領域の位置ずれ量及び変形量を算出する。例えば、同定機能5355は、非剛体位置合わせにおける体表面の各位置の移動量及び移動方向に基づいて、放射線の照射方向に対する照射領域の移動量及び移動方向を算出する。同定機能5355は、放射線の照射中に順次取得される被治療体の体表の3次元形状データに対して、上記した処理を繰り返し行い、照射領域の位置の変化及び形状の変化の同定を継続して行う。
なお、上述した例では、体表面の3次元形状データの変化を直接用いて照射領域の変化を同定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データを用いて照射領域の変化を同定する場合でもよい。
通常、治療計画を作成するために収集される3次元のCT画像データは、呼吸や拍動に伴う変化を考慮するため、複数時相で収集される。そこで、同定機能5355は、治療計画を作成するために収集された複数時相のCT画像データの中から、時相が近接する2時相のCT画像データを抽出する。そして、同定機能5355は、抽出した2時相のCT画像データに含まれる照射領域をそれぞれ抽出し、抽出した照射領域の形状の変化に基づいて、実際の照射領域の位置ずれ量及び変形量を算出する。
修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化に基づいて、治療計画を修正する。具体的には、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化に基づいて、被治療体に対する放射線の照射中にMLCの形状を変化させる。例えば、修正機能5356は、放射線の照射方向に対する照射領域の移動量及び移動方向に基づいて、放射線の照射方向での照射領域の位置ズレ及び形状の変化を特定する。そして、修正機能5356は、変化後の照射領域の位置と形状に対して照射野が合うように、MLCの形状を変化させる。すなわち、修正機能5356は、制御機能5351によってMLCの形状が変化されるように制御する。
修正機能5356は、放射線の照射中に順次同定される照射領域の位置の変化及び形状の変化に応じて、上記したMLCの形状の変更を行う。したがって、本実施形態に係る放射線治療装置500は、放射線の照射時に生じる照射領域の位置ズレ及び形状の変化に対して、放射線の照射野の修正をリアルタイムに行うことができる。その結果、放射線治療装置500においては、インターナルマージン及びセットアップマージンを小さくすることができ、放射線による被ばくを低減することができる。
ここで、放射線治療における放射線の照射は、1方向からだけでなく、複数の方向から実施される場合もある。このような場合においても、放射線治療装置500は、各方向からの放射線の照射において、上記したリアルタイムでのMLCの形状の修正を行う。
なお、リアルタイムでMLCの形状の修正を行うことで、実際の放射線線量分布と計画した放射線線量分布との間で差異が生じることが有り得る。その場合、修正機能5356は、実際の放射線線量分布と計画した放射線線量分布との間で差異がなくなるように、次回以降の治療計画を修正することもできる。例えば、修正機能5356は、30回の放射線照射を行う治療計画において、1回目の放射線照射による放射線線量分布と、計画した放射線線量分布との間に差異が生じた場合に、2回目以降の放射線照射の照射計画を修正する。修正機能5356は、各回の放射線照射後に、放射線線量分布の差異の有無を判定し、差異が生じている場合に、照射計画を都度修正することができる。
そして、修正機能5356は、放射線照射の終了後、照射履歴を記憶回路534に格納する。例えば、修正機能5356は、実際に照射した放射線の照射条件や、照射領域の位置及び形状の変化の有無、照射領域の位置及び形状の変化量、MLCの形状の変更内容、実際の放射線線量分布、照射領域の位置及び形状の変化に対して、仮にMLCの形状を変更しなかった場合の放射線線量分布などを含む照射履歴を記憶回路534に格納する。
また、修正機能5356は、照射領域の位置及び形状に変化が生じた場合でも、治療計画をリアルタイムに修正せず、治療計画通りに放射線照射を実行したのちに、次回以降の治療計画を修正することもできる。すなわち、修正機能5356は、治療計画通りに放射線照射を実行することで生じた放射線線量分布のずれを補正するように、次回以降の治療計画を修正する。
ここで、修正機能5356は、上記したリアルタイムの治療計画の修正と、次回以降の治療計画の修正とを、照射領域の変化の度合いに応じて、使い分けることができる。具体的には、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された照射領域の変化が閾値よりも大きい場合に、被治療体に対する放射線の照射中にMLCの形状を変化させる。すなわち、修正機能5356は、照射領域の変化が大きく、放射線線量分布が治療計画から大きく乖離してしまう場合に、リアルタイムで治療計画を修正する。また、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された照射領域の変化が閾値よりも小さい場合に、放射線照射の対象領域の位置が変化した状態で放射線を照射させ、次回以降の治療計画を修正する。
以下、図4を用いて、放射線治療装置500による処理の一例を説明する。図4は、第1の実施形態に係る放射線治療装置500による処理手順を示すフローチャートである。ここで、図4におけるステップS101、S103〜S104は、例えば、処理回路535が同定機能5355に対応するプログラムを記憶回路534から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS102は、例えば、処理回路535が取得機能5352に対応するプログラムを記憶回路534から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS105〜S107、S109〜S111は、例えば、処理回路145が修正機能5356に対応するプログラムを記憶回路534から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS108は、例えば、処理回路535が制御機能5351に対応するプログラムを記憶回路534から読み出して実行することにより実現される。
第1の実施形態に係る放射線治療装置500においては、まず、医療スタッフが、被治療体を天板522に載せ、体表につけたマークとレーザー照準器からのレーザーとが一致するように、寝台装置520を調整する。そして、医療スタッフは、治療計画に基づいて1回目の放射線の照射方向に架台510を回転させる。回転が完了し、放射線の照射方向に架台510がセットされると、撮像機能5353が、撮像装置511を制御して、画像データを収集する。例えば、撮像機能5353は、撮像装置511を制御して、コーンビームCT画像データを再構成するための投影データを収集する。或いは、撮像機能5353は、2つのX線撮影装置511cを制御して、2方向のX線画像を収集する。
このように、画像データが収集されると、図4に示すように、同定機能5355が、画像データに基づいて位置合わせを実行する(ステップS101)。例えば、同定機能5355は、治療計画用CT装置100が収集したCT画像データとコーンビームCT画像データとを比較して、放射線治療装置500におけるアイソセンターと照射領域との位置関係を同定する。そして、同定機能5355は、特定した位置関係に基づいて、アイソセンターに対して照射領域を位置合わせするための天板522の位置及び角度の6軸のパラメータを算出する。
或いは、同定機能5355は、2つのX線撮影装置511cによって撮影した2方向のX線画像と、治療計画用のCT画像データから生成したDRRとを比較することで、放射線治療装置500におけるアイソセンターと照射領域との位置関係を同定し、アイソセンターに対して照射領域を位置合わせするための天板522の位置及び角度の6軸のパラメータを算出する。なお、同定機能5355は、コーンビームCT画像データを用いた位置合わせを実行した後、さらに、2方向のX線画像を撮像して位置の確認を行うこともできる。
上述したように位置合わせが実行されると、取得機能5352は、天板522上の被治療体の表面形状を示す3次元形状データの取得を開始する(ステップS102)。同定機能5355は、位置合わせ時3次元形状データを基準形状として決定して(ステップS103)、以降で取得された表面形状と基準形状とを比較する(ステップS104)。そして、同定機能5355は、形状に変化が生じたか否かを判定する(ステップS105)。
ここで、被治療体の体表面の形状に変化が生じていない場合(ステップS105、否定)、制御機能5351は、治療計画に従って管電圧、管電流、照射時間、MLCの形状を調整して、放射線を照射する(ステップS108)。
一方、被治療体の体表面の形状に変化が生じた場合(ステップS105、肯定)、同定機能5355は、治療計画をリアルタイムで修正するか否か判定する(ステップS106)。例えば、同定機能5355は、同定機能5355によって同定された形状の変化量が閾値を超えたか否かを判定する。
ここで、治療計画をリアルタイムで修正する(例えば、変化量が閾値を超えた)場合(ステップS106、肯定)、修正機能5356は、形状の変化に基づいて、MLCの形状を変更する(ステップS107)そして、制御機能5351は、治療計画に従った管電圧、管電流及び照射時間と、変更後のMLCの形状とにより、放射線を照射する(ステップS108)。なお、治療計画をリアルタイムで修正しない(例えば、変化量が閾値を超えない)場合(ステップS106、否定)、制御機能5351は、治療計画に従って管電圧、管電流、照射時間、MLCの形状を調整して放射線を照射する(ステップS108)。
照射が終了すると、修正機能5356は、照射履歴を記憶回路534に格納して(ステップS109)、全ての照射が完了したか否かを判定する(ステップS110)。例えば、修正機能5356は、1回目の照射における全ての照射角度からの照射が完了したか否かを判定する。
ここで、全ての照射が完了していない場合(ステップS110、否定)、制御機能5351が次の照射角度に架台510を回転させるとともに、ステップS104からの処理が再度実行される。一方、全ての照射が完了した場合(ステップS110、肯定)、修正機能5356は、照射履歴に基づいて、次回以降の治療計画を修正して(ステップS111)、処理を終了する。
(変形例)
上述した実施形態では、治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データを用いて照射領域の変化を同定する例を記載したが、このCT画像データを予め高い収集レートで収集しておくことで、照射領域の変化を精度よく同定することもできる。
図5は、変形例に係る同定機能5355による処理の一例を説明するための図である。ここで、図5においては、上段に呼吸信号を示す。呼吸信号は、例えば、胸部或いは腹部の周囲に巻かれた伸縮を検知するセンサによって取得される。すなわち、当該センサは、呼吸に伴う胸囲或いは腹囲の変化を呼吸信号として検出する。例えば、当該センサによって検出される伸長は、吸気によって胸囲或いは腹囲が上がったことを示す。また、当該センサによって検出される収縮は、呼気によって胸囲或いは腹囲が下がったことを示す。すなわち、図5において曲線が右下に下がっている部分が、息を吐く一連の位相である呼気に相当し、図5において曲線が右上に上がっている部分が、息を吸う一連の位相である吸気に相当する。
例えば、放射線治療では、図5に示すように、呼気の終了タイミングで放射線の照射がONされ、吸気の開始タイミングで放射線の照射がOFFとなるように制御される。したがって、治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データを用いて照射領域の変化を同定する場合、放射線の照射がONとなる呼気の終了タイミングで収集されたCT画像データを用いるのが好ましい。
例えば、同定機能5355は、図5に示すように、呼吸全周期に渡って収集された複数のCT画像データの中から、呼吸位相が近接する2時相のCT画像データ11とCT画像データ12とを抽出する。そして、同定機能5355は、CT画像データ11を撮影した時の体表の3次元形状データと、CT画像データ12を撮影した時の体表の3次元形状データとに基づいて、放射線照射時の体表の3次元形状データに略一致させた仮想的なCT画像データ13を生成する。すなわち、同定機能5355は、CT画像データ11とCT画像データ12を用いることで、実際に体内で生じる照射領域の位置及び形状の変化を参考に、放射線照射時の照射領域の位置及び形状を推定する。なお、このような推定を行うことにより、上述した第1の実施形態で対象とした僅かな体動だけでなく、当該変形例では呼吸位相のずれによるずれをも補正することができる。
このように、同定機能5355は、実際の照射領域の位置及び形状の変化に基づいて、放射線照射時の照射領域の位置及び形状を推定することで、照射領域の変化を同定する。したがって、放射線の照射がONとなる呼気の終了タイミングから吸気の開始タイミングにおけるCT画像データをより高い収集レートで収集することで、実際の照射領域の位置及び形状の変化をより詳細に取得することができ、照射領域の変化を精度よく同定することができる。
ここで、呼吸動を考慮した照射領域の位置及び形状の変化の推定は、上記したセンサのデータを用いる方法とセンサのデータを用いない方法とが考えられる。センサのデータを用いる方法の場合、同定機能5355は、センサによって取得された時相の情報に基づいて、呼吸全周期に渡って収集された複数のCT画像データの中から、放射線照射時の時相に対応し、呼吸位相が近接する2時相のCT画像データを抽出する。そして、同定機能5355は、呼吸位相が近接する2時相のCT画像データにおける体表の3次元形状データを放射線照射時の体表の3次元形状データと比較して呼吸によるズレを適用し、2時相のCT画像データの一方に非剛体変形を適用する。同定機能5355は、その非剛体変形による変換に基づいて、照射領域の変形を推定する。さらに、同定機能5355は、動きによる位置ズレを補正する。この方法の場合、呼吸による変形が僅かで済むため、呼吸が大きくずれてなければ短時間で、安定した推定を行うことが可能となる。
また、センサのデータを用いない方法の場合、同定機能5355は、呼吸全周期に渡って収集された複数のCT画像データに対して基準となる頭部と骨盤部の位置合わせを行う。そして、同定機能5355は、位置合わせ後のCT画像データの中から、胸部と腹部の位置が一番近い2つのCT画像データを抽出する。そして、同定機能5355は、2つのCT画像データにおける体表の3次元形状データを放射線照射時の体表の3次元形状データと比較して呼吸によるズレを適用し、2時相のCT画像データの一方に非剛体変形を適用する。同定機能5355は、その非剛体変形による変換に基づいて、照射領域の変形を推定する。さらに、同定機能5355は、動きによる位置ズレを補正する。この方法の場合、呼吸による変形は再現性がないと仮定して、一番近い3次元形状データを全時相から探索する。その結果、計算量は増加するが、呼吸がもっとも近い位相のデータを用いて変形を行うことができ、精度良く推定を行うことが可能となる。
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能5352は、放射線照射前の位置合わせ時における被治療体の体表面形状を示す第1の形状情報を取得する。取得機能5352は、放射線照射時における被治療体の体表面形状を示す第2の形状情報を取得する。同定機能5355は、第1の形状情報と第2の形状情報とに基づいて、放射線照射の対象領域の位置の変化を同定する。修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化に基づいて、治療計画を修正する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、照射領域の位置の変化に応じて治療計画を修正することができ、インターナルマージン及びセットアップマージンを小さく設定することを可能にする。その結果、放射線治療装置500は、放射線による正常部位への被ばくを低減すること、さらにはターゲット領域への正確な線量投与を可能にする。
また、第1の実施形態によれば、取得機能5352は、放射線の照射直前及び放射線の照射中の少なくとも一方において、被治療体の体表面形状を示す第2の形状情報を取得する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、位置合わせ後の照射領域の変化を検出することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、同定機能5355は、第1の形状情報及び第2の形状情報に対して、一方の体表面形状を他方の体表面形状に合わせる非剛体位置合わせを行い、当該非剛体位置合わせの結果に基づいて対象領域の位置ズレ及び変形を同定する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、放射線を用いない手法によって照射領域の変化を検出することができ、被ばくの増加を抑止することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、同定機能5355は、非剛体位置合わせにおいて、体表面形状の移動に基づいて対象領域の位置ズレを同定し、体表面形状の変形に基づいて対象領域の変形を同定する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、照射領域の位置ズレ及び形状の変化を同定することを可能にする。
また、変形例によれば、同定機能5355は、被治療体から経時的に収集された対象領域を含む複数の3次元画像データ及び同時に撮影された複数の体表の3次元形状データにおいて、体表面形状の変化と類似する変化を示す複数の3次元画像データを抽出し、抽出した複数の3次元画像データに基づいて対象領域の変形を同定する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、実際の照射領域の位置ズレ及び形状の変化に基づいて、照射領域の位置ズレ及び形状の変化を同定することができ、精度の高い同定を可能にする。
また、変形例によれば、複数の3次元画像データは、少なくとも被治療体の1呼吸における各位相で収集される。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、呼吸による実際の照射領域の位置ズレ及び形状の変化を参考にすることを可能にする。
また、変形例によれば、複数の3次元画像データは、被治療体の1呼吸のうち放射線が照射される呼吸位相近傍において、相対的に高い収集レートで収集される。従って、変形例に係る放射線治療装置500は、実際の照射領域の位置ズレ及び形状のより細かい変化を参考にすることができ、より精度の高い同定を可能にする。
また、第1の実施形態及び変形例によれば、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化に基づいて、被治療体に対する放射線の照射中にマルチリーフコリメータ(MLC:Multi Leaf Collimator)の形状を変化させる。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、治療計画のリアルタイムの修正を可能にする。
また、第1の実施形態及び変形例によれば、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化が閾値よりも大きい場合に、被治療体に対する放射線の照射中にマルチリーフコリメータの形状を変化させる。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、照射領域の位置及び形状が大きく変化した場合に、リアルタイムで修正することができ、セットアップのやり直しにかかる時間を削減し、被治療体に対する負荷を低減することを可能にする。
また、第1の実施形態及び変形例によれば、修正機能5356は、放射線照射の対象領域の位置が変化した状態で放射線が照射された後の放射線線量分布と、治療計画における放射線線量分布との差異に基づいて、次回以降の治療計画を修正する。従って、第1の実施形態及び変形例に係る放射線治療装置500は、治療計画全体の修正を可能にする。
また、第1の実施形態及び変形例によれば、修正機能5356は、同定機能5355によって同定された変化が閾値よりも小さい場合に、放射線照射の対象領域の位置が変化した状態で放射線を照射させ、次回以降の治療計画を修正する。従って、第1の実施形態に係る放射線治療装置500は、放射線照射時の治療計画の過剰な修正を抑止して、放射線照射に係る時間が延びることを抑止し、被治療体に対する負荷を低減することを可能にする。
(その他の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、修正機能5356が、同定機能5355によって同定された変化に基づいて、治療計画を修正する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、修正機能5356が治療計画を修正しない場合でもよい。一例を挙げると、修正機能5356は、計画した放射線線量分布と、同定機能5355によって同定された変化後における放射線線量分布とを比較して、投与線量のズレが閾値以内である場合に、治療計画を修正せずに、そのまま照射を行うようにしてもよい。
上述した実施形態では、処理回路535が有する各処理機能について説明した。ここで、例えば、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路534に記憶される。処理回路535は、各プログラムを記憶回路534から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路535は、図3に示した各処理機能を有することとなる。
なお、図3では、単一の処理回路535によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路535は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路535が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶部等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)−ROM、FD(Flexible Disk)、CD−R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、不要な被ばくを低減することができる。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。