JP2021147316A - センチネルリンパ節イメージング剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】センチネルリンパ節を感度よく検出できるセンチネルリンパ節イメージング剤の提供。【解決手段】蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。【選択図】なし
Description
本発明は、センチネルリンパ節イメージング剤に関する。
近年、がんの切除術式において、がんからのリンパ流が初めに到達する一次リンパ節、いわゆるセンチネルリンパ節の切除が注目されている。乳がん等では、手術中にセンチネルリンパ節を同定し、センチネルリンパ節生検によって転移の有無を術中迅速病理診断で確認することが実施されている。センチネルリンパ節に転移が認められれば、リンパ節郭清を行い、センチネルリンパ節に転移が認められなければ、それ以外のリンパ節への転移もないと考えられるので、リンパ節郭清は省略できる。センチネルリンパ節に転移がない場合、不要なリンパ節郭清や郭清に伴う合併症を回避でき、ひいては患者の負担軽減やQOLの向上につながる。
センチネルリンパ節を同定するための手段としては、放射性物質を皮内に注入し、放射能を検出することでセンチネルリンパ節を同定するRI法と、色素を皮内に注入し、最初に染色されたリンパ節をセンチネルリンパ節と同定する色素法とが知られている。しかしながら、RI法は、放射性物質を使用するために、特定の機器や放射線管理区域が必要であり、実施できる施設が制限されてしまう。これに対し、色素法は、簡便ではあるが、色素のリンパ管からの流出が速く、短時間にセンチネルリンパ節を同定する必要があり、また、切開しながら色素で染色されたリンパ節を探索するため、判別が難しいといった問題点があった。
これらの問題点を解決すべく、蛍光色素を用いる蛍光法も普及してきている。蛍光法は、放射性物質を用いる必要がなく、また、蛍光を検出することでリンパ流を可視化でき、色素法に比べてリンパ流の確認が容易である。かかる方法として、近赤外蛍光色素であるインドシアニングリーン(ICG)を用いる方法(非特許文献1)、溶液中での安定性を改善すべくリポソームに内封したICGを用いる方法(非特許文献2)等が知られている。
Germaine D. Agollah et al. Journal of Cancer, 2014, 5(9): 774-783
Steven T. Proulx et al. Cancer Research, 2010, 70(18): 7053-7062
上述のインドシアニングリーン(ICG)をセンチネルリンパ節のイメージングに用いると、低分子化合物であるICGが投与部位から全身に拡散してしまい、センチネルリンパ節とその他の部位のシグナル強度比が十分ではなくなり、センチネルリンパ節の同定が不十分であった。また、リポソームに内封したICGを用いると、イメージング感度が十分でない場合があり、リンパシステム内を流れたリポソームが最終的に鎖骨下静脈より全身循環へと移行することにより、センチネルリンパ節特異性が低いという問題があった。
よって、本発明は、より検出感度の高いセンチネルリンパ節イメージング剤を提供することを課題とする。
よって、本発明は、より検出感度の高いセンチネルリンパ節イメージング剤を提供することを課題とする。
リンパシステムは、薬物送達技術における重要な標的であり、リンパシステムを標的とする研究においては、実験動物の足裏から種々の物質を投与することが一般的に行われている。しかしながら、足裏から投与された物質は、主に膝窩リンパ節、次いで身体深部に位置する座骨リンパ節及び腰部リンパ節に流れるため、該物質を非侵襲的に定量分析することは困難であった。かかる状況に鑑み、本発明者らは、センチネルリンパ節イメージング剤の開発に先立ち、マウスの膝窩リンパ節を切除しておくことにより、投与部位(足裏)、鼠経リンパ節、及び腋窩リンパ節へと体表近辺を流れるリンパ流を人工的に作り出したリンパ流改変モデルマウスを作製した。体表近辺を流れる物質は、予め標識しておくことで非侵襲的かつ経時的に観察できるため、該リンパ流改変マウスは、該物質の経リンパ管動態の非侵襲的かつ経時的な定量評価を可能とするモデルマウスとして有用であった。
本発明者らは、センチネルリンパ節イメージング剤としてリポソームに着目し、該モデルマウスを用いて種々検討を行った結果、蛍光物質とアニオン性脂質を含有し、特定の粒子径に制御したリポソームが、一次リンパ節に効率よく移行するとともに、高い一次リンパ節滞留性を示すことを見出した。また、本発明者らは、蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼを併用したところ、一次リンパ節を高感度で検出できることを見出した。ヒアルロニダーゼは、従来のセンチネルリンパ節イメージング剤には用いられていなかったため、この結果は予想外であった。かかる感度の増大は、アニオン性脂質を含有するリポソームでより顕著であった。これらの知見に基づき、本発明は完成された。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
〔1〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
〔2〕さらにヒアルロニダーゼを含有するものである、〔1〕のセンチネルリンパ節イメージング剤。
〔3〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームと、ヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
〔4〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
〔5〕さらにヒアルロニダーゼを投与することを含む、〔4〕のセンチネルリンパ節イメージング方法。
〔6〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
〔7〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
〔8〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
〔1〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
〔2〕さらにヒアルロニダーゼを含有するものである、〔1〕のセンチネルリンパ節イメージング剤。
〔3〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームと、ヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
〔4〕蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
〔5〕さらにヒアルロニダーゼを投与することを含む、〔4〕のセンチネルリンパ節イメージング方法。
〔6〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
〔7〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
〔8〕蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤によれば、蛍光物質及びアニオン性脂質を含有し、かつ特定の粒子径に制御したリポソームを用いることで、センチネルリンパ節を特異的、高感度に検出することができる。また、蛍光物質を含有するリポソームをヒアルロニダーゼと併用することで、センチネルリンパ節の検出感度を向上することができる。かかる感度向上は、リポソームとして、蛍光物質及びアニオン性脂質を含有し、かつ特定の粒子径に制御したリポソームを用いることで、さらに増強可能である。本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、乳がんや胃がんなどセンチネルリンパ節の切除が進められているがんにおいて、センチネルリンパ節のみを特異的に選出し、その選択的な切除を可能とする効率の高い検査薬として有用である。
本明細書において、「センチネルリンパ節」とは、がんからのリンパ流が初めに到達する一次リンパ節を指す。センチネルリンパ節は、最初のリンパ節転移が発生する場所と考えられており、センチネルリンパ節を検索することで、リンパ節転移の有無及びリンパ節郭清の必要性を判断できる。
本明細書において、「センチネルリンパ節イメージング」とは、生体内のセンチネルリンパ節を可視化することを意味する。具体的には、本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤を生体に投与し、生体外部から該センチネルリンパ節イメージング剤に含有される蛍光物質の励起光を照射し、発せられる蛍光を検出器で検出することで、センチネルリンパ節を可視化する。
一実施態様において、本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを含有する。
本発明で用いられるリポソームは、両親媒性の脂質分子の二分子膜(脂質二重層)で形成される小胞体である。リポソームは、その内部の水層に水溶性物質を、二分子膜内に脂溶性物質を封入することができ、また、高い生体親和性を有する。リポソームは、1つの脂質二重層からなる単層小胞であっても、複数の脂質二重層からなる多層小胞であってもよいが、リポソームの安定性の点から、単層小胞であることが好ましい。
リポソームの脂質二重層を形成する脂質としては、リン脂質、リン脂質以外の両親媒性の脂質のいずれでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、これらの脂質は、ポリアルキレングリコールやマレイミドが導入された修飾脂質であってもよい。リン脂質以外の両親媒性の脂質とは、リン酸を含まず、分子内に親水基と疎水基を有する脂質をさす。
リン脂質は、動植物から抽出、精製した天然物であっても、化学合成したものであってもよく、水素添加、水酸化処理等の加工を施したものであってもよい。例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等のグリセロリン脂質;スフィンゴミエリン、セラミドシリアチン等のスフィンゴリン脂質;大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆レシチン水素添加物、卵黄レシチン水素添加物;これらのリゾ体等が挙げられる。
リン脂質以外の両親媒性の脂質としては、例えば、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリド等のグリセロ糖脂質;ガラクトシルセラミド、ラクトシルセラミド、ガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質が挙げられる。
これら脂質を構成する脂肪酸としては、飽和又は不飽和の直鎖炭化水素鎖が挙げられる。なかでも、リポソームの安定性の点から、炭素数12〜20の脂肪酸が好ましく、炭素数14〜18の脂肪酸がより好ましく、飽和脂肪酸がさらに好ましい。
脂質二重層を形成する脂質は、リポソームの安定性の点から、リン脂質が好ましく、なかでも、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロールがより好ましく、ホスファチジルコリンがさらに好ましい。
リポソームを構成する脂質には、上述の脂質二重層を形成するリン脂質又はリン脂質以外の両親媒性の脂質に加えて、脂質二重層に取り込まれる脂溶性成分を用いるのが、膜安定化の点から好ましい。脂溶性成分としては、ステロール類、脂肪酸類、脂溶性の抗酸化剤、界面活性剤等が挙げられ、ステロール類がより好ましい。
ステロール類としては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールコハク酸、コレスタノール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール等の動物由来ステロール;シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等の植物由来ステロール;チモステロール、エルゴステロール等が挙げられる。なかでも、膜安定化の点から、コレステロール、コレステロールコハク酸、コレスタノールが好ましい。
リポソーム中のリポソームを構成する脂質の含有量に対するステロール類の含有量の割合は、膜安定化の点から、10〜70mol%が好ましく、20〜60mol%がより好ましく、30〜50mol%がさらに好ましい。本明細書において、リポソームを構成する脂質の含有量とは、脂質二重層を形成する脂質と、該形成された脂質二重層に取り込まれる脂溶性成分との総量である。
本発明で用いられるリポソームは、センチネルリンパ節への移行性及びセンチネルリンパ節での滞留性の点から、リポソームを構成する脂質としてアニオン性脂質を含有することが好ましい。アニオン性脂質は、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基、フェノール基等のアニオン性官能基を有する脂質である限り特に限定されず、脂質二重層を形成する脂質であっても、脂質二重層に取り込まれる脂溶性成分である脂質であってもよい。アニオン性脂質としては、例えば、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、コレステロールコハク酸等が挙げられ、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、コレステロールコハク酸が好ましく、なかでもコレステロールコハク酸がより好ましい。アニオン性脂質は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
リポソーム中のリポソームを構成する脂質の含有量に対するアニオン性脂質の含有量の割合は、例えば、10〜80mol%が好ましく、20〜70mol%がより好ましく、30〜60mol%がさらに好ましい。あるいは、リポソーム中のリポソームを構成する脂質の含有量に対するアニオン性脂質の含有量の割合は、得られるリポソームの表面電荷がマイナスとなる範囲であればよく、例えば、得られるリポソームのゼータ電位が−10mV以下となる範囲が好ましく、−20mV以下となる範囲がより好ましい。ここで、ゼータ電位の下限は−100mVである。本明細書におけるゼータ電位の値は、電気泳動光散乱法で測定される値をいう。ゼータ電位は、市販のZetasizer(Malvern Instruments製)等を用いて測定することができる。アニオン性脂質の含有量を上記の範囲とすることで、リポソームのセンチネルリンパ節への移行性及びセンチネルリンパ節での滞留性を高めることができる。
本発明で用いられるリポソームは、蛍光物質を含有するものである。ここで、「含有」とは、リポソームが蛍光物質を保持していることを意味するが、その保持様式は、特に限定されず、蛍光物質の安定性、分子量、溶解性等の物性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、蛍光物質をリポソーム内部の水層、脂質二重層内、又は脂質二重層の表面に保持させてもよいし、リポソームを構成する脂質のアシル基や親水基に蛍光物質を結合させてもよい。蛍光物質が脂溶性の場合、該蛍光物質は脂質二重層内に組み込まれるのが好ましい。
蛍光物質としては、特に限定されないが、GFP、DsRed、mCherry等の蛍光タンパク質;インジゴカルミン、パテントブルーV等の低分子有機蛍光色素;インドシアニングリーン(ICG)、DiR、DiD、DiI、フルオレセイン、ローダミン、Alexa Fluor、フタロシアニン、スクアリリウム、クロコニウム、オキサジン750、IR780、IR1048及びこれらの誘導体等の近赤外蛍光色素等が挙げられる。このうち、生体での吸収、散乱が小さく、生体透過性に優れている点から、近赤外蛍光色素が好ましく、ICG及びDiRがより好ましい。
リポソーム中のリポソームを構成する脂質の含有量に対する蛍光物質の含有量の割合は、センチネルリンパ節の検出感度の点から、0.01〜5mol%が好ましく、0.1〜3mol%がより好ましく、0.2〜1mol%がさらに好ましい。
本発明で用いられるリポソームの平均粒子径(以下、単に粒子径ということがある)は、約100〜約150nmが好ましく、約110〜約145nmがより好ましく、約120〜約140nmがさらに好ましく、約130nmが特に好ましい。リポソームの粒子径が約100nm未満では、リポソームが投与部位から拡散してしまい、リポソームのセンチネルリンパ節滞留性が低くなる。一方、リポソームの粒子径が約150nmを超えると、センチネルリンパ節への移行性が十分ではなくなる。また、リポソームの粒子径のばらつきの指標である多分散指数(polydispersity index:PdI)は、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましい。ここで、PdIの下限は0である。リポソームの形状としては、略球形が好ましい。本明細書におけるリポソームの平均粒子径及びPdIの値は、動的光散乱法により測定される値をいう。平均粒子径及びPdIの測定方法は、第十七改正日本薬局方の参考情報に動的光散乱法による液体中の粒子径測定法として記載されている。平均粒子径及びPdIは、市販のZetasizer(Malvern Instruments製)等を用いて測定することができる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤におけるリポソームの含有量は、投与形態、投与方法、投与対象の性別、年齢、体重、がんの種類、部位や大きさ、蛍光物質の種類等を考慮して適宜決定すればよいが、10〜100質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましい。
本明細書におけるリポソームのリンパ節への移行性は、後記実施例に示すように、該リンパ節における、生体に投与されたリポソームに含有される蛍光物質由来の蛍光強度で表される。蛍光強度が高いほど、リンパ節移行性は高くなる。また、本明細書におけるリポソームの一次リンパ節(センチネルリンパ節)滞留性は、後記実施例に示すように、次式(1)により算出される値である。ここで、二次リンパ節とは、一次リンパ節の次に到達するリンパ節をさす。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤では、センチネルリンパ節の検出感度の増大のため、蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームに加えて、さらにヒアルロニダーゼを用いることができる。これらの成分は、併用できる形態であればよい。具体的には、各成分をそれぞれの剤形に分けて製剤化してもよく、一つの剤形にまとめて製剤化(すなわち、配合剤として製剤化)してもよく、さらに各製剤を別個のパッケージに分けて製造販売してもよい。各製剤を1個のパッケージとするか別個のパッケージとする場合、各成分を併用投与することを記載した使用説明書を含むキット製剤とすることもできる。
なお、ヒアルロニダーゼは、従来のセンチネルリンパ節イメージング剤には用いられておらず、ヒアルロニダーゼによるセンチネルリンパ節の検出感度の増大効果は、本発明者らによって見出されたものである。よって、別の一実施態様において、本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼを含有する。これらの成分の併用形態については、上記と同じものが例示される。
本発明で用いられるヒアルロニダーゼ(HAase)は、N−アセチルグルコサミンとD−グルクロン酸が直鎖状に連結したヒアルロン酸を分解する酵素である。ヒアルロニダーゼは、分解様式の違いから、哺乳動物由来の加水分解酵素と、ヒル由来の加水分解酵素と、微生物由来の脱離酵素とに大別される。本発明で用いられるヒアルロニダーゼとしては、ヒアルロン酸を分解できる限り、特にその由来は限定されない。哺乳動物由来のヒアルロニダーゼとしては、例えば、ウシやヒツジの精巣由来のものが挙げられる。微生物由来のヒアルロニダーゼとしては、例えば、肺炎球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、放線菌由来のものが挙げられる。本発明で用いられるヒアルロニダーゼは、上記のいずれでもよいし、DNA組み換え技術により作製したヒアルロニダーゼであってもよい。このうち、入手の容易性の点から微生物由来のヒアルロニダーゼが好ましい。ヒアルロニダーゼは、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤におけるヒアルロニダーゼの含有量は、投与形態、投与方法、投与対象の性別、年齢、体重、がんの種類、部位や大きさ等を考慮して適宜決定すればよいが、100〜5,000Uが好ましく、500〜3,000Uがより好ましく、1,000〜2,000Uがさらに好ましい。本明細書におけるヒアルロニダーゼの1Uは、至適pH及び至適温度付近の条件において、1分間に1μmolの不飽和二糖をヒアルロン酸から遊離させる酵素量に相当する。
リポソームは、水和法、逆相蒸発法、超音波処理法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、凍結融解法等の公知の方法で調製することができる。例えば、水和法を用いると、以下のようにしてリポソームを調製できる。蛍光物質、リポソームの脂質二重層を形成する脂質、及び必要に応じてその他のリポソームを構成する成分を適当な有機溶媒に溶解させる。その後、溶媒を除去し、脂質膜を得る。脂質膜に蒸留水、生理食塩水等の生理学的に許容し得る水和媒体を添加して水和し、超音波処理等の物理的刺激を加えて、リポソームを形成させる。ポリカーボネートフィルターを用いたエクストルーダー処理等の手段によりリポソームを整粒すれば、所望の粒子径を有するリポソームを得ることができる。リポソームの粒子径は、フィルターの孔径やフィルターを通す回数を変化させることで適宜調節できる。また、得られたリポソーム懸濁液から、リポソームに含まれなかった遊離成分を、ゲルろ過法、超遠心法、透析法、イオン交換クロマトグラフィー法等により除去することができる。さらに、保存性の点から、整粒後に水分を除去して乾燥し、粉末状、顆粒状、固形状等の固体物の状態とすることもできる。水分を調整、除去する手段としては、凍結乾燥、蒸発乾固、噴霧乾燥等が挙げられる。乾燥方法は、特に制限されず、公知の方法を適用できる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤の投与形態は、特に限定されないが、液剤が好ましく、注射剤がより好ましい。注射剤としては、水性注射剤及び凍結乾燥注射剤のいずれであってもよい。これらの投与形態は、リポソーム及び必要に応じてヒアルロニダーゼに加えて、薬学的に許容される担体を用いて、通常公知の方法により調製することができる。かかる担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤の投与方法は、特に限定されず、静脈投与、皮下投与、皮内投与等が挙げられ、なかでも、皮下投与が好ましい。なお、リポソームとヒアルロニダーゼを併用する場合には、各成分を同時又は時間差で投与することができる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、さらに好ましくはヒトに投与される。投与部位としては、がん原発巣、がん原発巣周辺、又はがん原発巣周囲のリンパ管等が挙げられ、がんの種類に応じて適宜選択すればよい。
対象となるがんは、特に限定されず、術中のセンチネルリンパ節転移診断にもとづく不要なリンパ節郭清の省略が求められるがんであればいずれでもよい。例えば、乳がん、悪性黒色腫、胃がん等の消化器がん等が挙げられ、本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、乳がんに対し好適に用いられる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤の投与量は、特に限定されず、投与形態、投与方法、投与対象の性別、年齢、体重、がんの種類、部位や大きさ、蛍光物質の種類等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、注射剤の場合、投与量は、リポソーム換算で1〜10000nmolが好ましく、10〜1000nmolがより好ましい。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤を用いてセンチネルリンパ節検索を行うには、生体に対し上記のようにセンチネルリンパ節イメージング剤を投与し、リポソームに含まれる蛍光物質の励起光を外部から照射し、発せられる蛍光を対応する検出器により検出すればよい。これにより、蛍光物質が集積したセンチネルリンパ節を同定することができる。センチネルリンパ節イメージングには、市販のIVIS Imaging System(Caliper Life Science製)等のin vivoイメージングシステムを用いることができる。
本発明のセンチネルリンパ節イメージング剤は、一次リンパ節であるセンチネルリンパ節への移行性が高く、また、センチネルリンパ節での滞留性が高いため、高感度にセンチネルリンパ節を同定することができ、センチネルリンパ節の除去が進められているがんにおいて、センチネルリンパ節のみを特異的に検出し、選択的な切除を可能とする。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の動物実験は、すべて国立大学法人千葉大学 動物実験委員会の承認を受け、関連ガイドライン及び法令の定めを遵守して実施されたものである。
以下の動物実験は、すべて国立大学法人千葉大学 動物実験委員会の承認を受け、関連ガイドライン及び法令の定めを遵守して実施されたものである。
参考例1 リンパ流改変モデルマウスの作製
(1)リンパ流改変モデルマウスの作製
本試験には、6週齢の雌性BALB/cマウス(株式会社高杉実験動物より購入)を用いた。各マウスにイソフルランで麻酔をかけ、左後足の足裏から5mg/mLエバンスブルー溶液を0.02mL投与した。膝窩部を10mm切開し、大腿二頭筋下でエバンスブルーにより青く染色された膝窩リンパ節を露出させた。次いで、膝窩リンパ節と、その周囲の輸出リンパ管、輸入リンパ管、辺縁静脈、及び栄養血管を、これら脈管構造を5−0ナイロンモノフィラメント縫合糸で強く結紮した後、切除した。その後、切開部を縫合した。
各マウスの毛は、イメージング前に予め刈り取り、残った毛についても、除毛剤(VEET除毛クリーム:レキットベンキーザージャパン製)を用いて取り除いた。
(1)リンパ流改変モデルマウスの作製
本試験には、6週齢の雌性BALB/cマウス(株式会社高杉実験動物より購入)を用いた。各マウスにイソフルランで麻酔をかけ、左後足の足裏から5mg/mLエバンスブルー溶液を0.02mL投与した。膝窩部を10mm切開し、大腿二頭筋下でエバンスブルーにより青く染色された膝窩リンパ節を露出させた。次いで、膝窩リンパ節と、その周囲の輸出リンパ管、輸入リンパ管、辺縁静脈、及び栄養血管を、これら脈管構造を5−0ナイロンモノフィラメント縫合糸で強く結紮した後、切除した。その後、切開部を縫合した。
各マウスの毛は、イメージング前に予め刈り取り、残った毛についても、除毛剤(VEET除毛クリーム:レキットベンキーザージャパン製)を用いて取り除いた。
(2)リポソームの調製
(1)で得られたリンパ流改変モデルマウスのリンパ流を評価するために、近赤外蛍光色素であるDiR(PromoCell製)を含有するリポソームを、水和法により調製した。具体的には、ガラス試験管に卵ホスファチジルコリン(EPC:日油株式会社製)、コレステロール(Chol:シグマアルドリッチ製)、1−(モノメトキシポリエチレングリコール2000)−2,3−ジミリストイルグリセロール(DMG−PEG2000:日油株式会社製)、及びDiRをモル比70:30:3:1、全脂質量10μmolで含有するクロロホルム/エタノール溶液を調製し、エバポレーションにより溶媒を除去し、脂質膜を得た。該脂質膜に全脂質濃度が10mM(EPCとCholのモル比が7:3、3mol%DMG−PEG2000、及び1mol%DiR)となるようにPBSを加え、室温で10分間水和させた。水和後、水和液を超音波処理機(AU−25C:アイワ医科工業株式会社製)中、室温で30秒間超音波処理し、リポソーム懸濁液を得た。その後、ポリカーボネートフィルター(孔径100nm、GEヘルスケア製)を備えたミニエクストルーダー(Avanti Polar Lipids製)に該リポソーム懸濁液を通し、リポソームを整粒した。得られたリポソームの平均粒子径及びゼータ電位をZetasizer(Malvern Instruments製)で測定したところ、114±5nm及び0.6±1(平均値±標準偏差、n=3)であった。
(1)で得られたリンパ流改変モデルマウスのリンパ流を評価するために、近赤外蛍光色素であるDiR(PromoCell製)を含有するリポソームを、水和法により調製した。具体的には、ガラス試験管に卵ホスファチジルコリン(EPC:日油株式会社製)、コレステロール(Chol:シグマアルドリッチ製)、1−(モノメトキシポリエチレングリコール2000)−2,3−ジミリストイルグリセロール(DMG−PEG2000:日油株式会社製)、及びDiRをモル比70:30:3:1、全脂質量10μmolで含有するクロロホルム/エタノール溶液を調製し、エバポレーションにより溶媒を除去し、脂質膜を得た。該脂質膜に全脂質濃度が10mM(EPCとCholのモル比が7:3、3mol%DMG−PEG2000、及び1mol%DiR)となるようにPBSを加え、室温で10分間水和させた。水和後、水和液を超音波処理機(AU−25C:アイワ医科工業株式会社製)中、室温で30秒間超音波処理し、リポソーム懸濁液を得た。その後、ポリカーボネートフィルター(孔径100nm、GEヘルスケア製)を備えたミニエクストルーダー(Avanti Polar Lipids製)に該リポソーム懸濁液を通し、リポソームを整粒した。得られたリポソームの平均粒子径及びゼータ電位をZetasizer(Malvern Instruments製)で測定したところ、114±5nm及び0.6±1(平均値±標準偏差、n=3)であった。
(3)リンパ流の評価
(1)で得られたリンパ流改変モデルマウスに対し、膝窩リンパ節切除7日後にイソフルランで麻酔をかけ、左後足の足裏から(2)で得られたDiR含有リポソームを0.02mL皮下投与した。投与1時間後、3時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、30時間後、及び48時間後に、リンパ節におけるDiR含有リポソーム由来の蛍光シグナルを、非侵襲的蛍光in vivoイメージングシステム(IVIS Lumina II:Caliper Life Science社製)を用いて定量した。測定条件は、以下の通りである。波長:745〜840nm、露光時間:2s、f/stop:2、視野:10.0×10.0cm、感度:Medium。なお、事前の検討で、DiRの蛍光強度の線形性を保てる範囲(0.09〜20.2×108photons/s:決定係数0.99)を検討し、該範囲内でDiR含有リポソームの投与量を調節した。コントロールとしては、膝窩リンパ節を切除していない通常マウスを用いた。データは、n=3、平均±標準誤差で示し、2群間でWelchのt検定を行い、p<0.05を有意とした。図1に、リンパ流改変モデルマウスによる経時的リンパ節イメージングの概略図を示す。
(1)で得られたリンパ流改変モデルマウスに対し、膝窩リンパ節切除7日後にイソフルランで麻酔をかけ、左後足の足裏から(2)で得られたDiR含有リポソームを0.02mL皮下投与した。投与1時間後、3時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、30時間後、及び48時間後に、リンパ節におけるDiR含有リポソーム由来の蛍光シグナルを、非侵襲的蛍光in vivoイメージングシステム(IVIS Lumina II:Caliper Life Science社製)を用いて定量した。測定条件は、以下の通りである。波長:745〜840nm、露光時間:2s、f/stop:2、視野:10.0×10.0cm、感度:Medium。なお、事前の検討で、DiRの蛍光強度の線形性を保てる範囲(0.09〜20.2×108photons/s:決定係数0.99)を検討し、該範囲内でDiR含有リポソームの投与量を調節した。コントロールとしては、膝窩リンパ節を切除していない通常マウスを用いた。データは、n=3、平均±標準誤差で示し、2群間でWelchのt検定を行い、p<0.05を有意とした。図1に、リンパ流改変モデルマウスによる経時的リンパ節イメージングの概略図を示す。
DiR含有リポソームによるリンパ流改変モデルマウスのリンパ節検出結果を図2に、リンパ流改変モデルマウス及び通常マウスの鼠経リンパ節及び腋窩リンパ節におけるDiR含有リポソーム由来の蛍光強度を図3に示す。通常マウスにおいては、鼠経リンパ節及び腋窩リンパ節における蛍光強度が著しく低かった。これは、通常のマウスでは、足裏から投与されたDiR含有リポソームが、膝窩リンパ節、次いで体内深部に位置する座骨リンパ節及び腰部リンパ節に流れてしまったためである。これに対し、リンパ流改変モデルマウスにおいては、鼠経リンパ節及び腋窩リンパ節の両方で、蛍光の蓄積を良好に検出できた。リンパ流改変モデルマウスでは、投与部位から鼠経リンパ節、さらには腋窩リンパ節をつなぐ体表近くのリンパ管を流れる新たな経路が構築された結果、各リンパ節を検出できたと考えられる。よって、該リンパ流改変モデルマウスを用いれば、投与部位、投与部位から最初に到達する一次リンパ節である鼠経リンパ節、次に到達する二次リンパ節である腋窩リンパ節へと体表近辺を流れるリンパ流を非侵襲的かつ経時的に観察できるので、該リンパ流改変モデルマウスは、リポソームのリンパシステム内動態を解析するための生体モデルとして有用であることが明らかとなった。
実施例1 リポソームの調製
異なる表面電荷(中性、カチオン性、アニオン性)と粒子径(平均粒子径が80nm、130nm、300nm)を組み合わせた9種のリポソームを、水和法により調製した。
表面電荷が中性で、サイズが80nmのリポソームは、以下の手順により調製した。ガラス試験管にEPC、中性脂質であるChol、DMG−PEG2000、及びDiRをモル比49.5:49.5:1:0.2、全脂質量2μmolで含有するクロロホルム/エタノール溶液を調製し、エバポレーションにより溶媒を除去し、脂質膜を得た。該脂質膜に全脂質濃度が1mM(EPCとCholのモル比が1:1、1mol%DMG−PEG2000、及び0.2mol%DiR)となるようにPBSを加え、室温で10分間水和させた。水和後、水和液を室温で30秒間voltex処理し、リポソーム懸濁液を得た。その後、ポリカーボネートフィルター(孔径50nm、ワットマン製)を備えたミニエクストルーダーに該リポソーム懸濁液を通し、リポソームを整粒した。
表面電荷がカチオン性で、サイズが80nmのリポソームは、上記のCholに代えてカチオン性の脂質である3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol:シグマアルドリッチ製)を用いて調製した。
表面電荷がアニオン性で、サイズが80nmのリポソームは、上記のCholに代えてアニオン性の脂質であるコレステロールコハク酸(CHEMS:シグマアルドリッチ製)を用いて調製した。
表面電荷が中性、カチオン性、又はアニオン性で、サイズが130nm又は300nmのリポソームは、孔径がそれぞれ100又は400nmのポリカーボネートフィルターを用いた以外は上記同様にして調製した。
得られた各リポソームのゼータ電位を下記表1に示す。各リポソームにおいて、各蛍光色素は膜に埋め込まれた状態で存在する。
異なる表面電荷(中性、カチオン性、アニオン性)と粒子径(平均粒子径が80nm、130nm、300nm)を組み合わせた9種のリポソームを、水和法により調製した。
表面電荷が中性で、サイズが80nmのリポソームは、以下の手順により調製した。ガラス試験管にEPC、中性脂質であるChol、DMG−PEG2000、及びDiRをモル比49.5:49.5:1:0.2、全脂質量2μmolで含有するクロロホルム/エタノール溶液を調製し、エバポレーションにより溶媒を除去し、脂質膜を得た。該脂質膜に全脂質濃度が1mM(EPCとCholのモル比が1:1、1mol%DMG−PEG2000、及び0.2mol%DiR)となるようにPBSを加え、室温で10分間水和させた。水和後、水和液を室温で30秒間voltex処理し、リポソーム懸濁液を得た。その後、ポリカーボネートフィルター(孔径50nm、ワットマン製)を備えたミニエクストルーダーに該リポソーム懸濁液を通し、リポソームを整粒した。
表面電荷がカチオン性で、サイズが80nmのリポソームは、上記のCholに代えてカチオン性の脂質である3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol:シグマアルドリッチ製)を用いて調製した。
表面電荷がアニオン性で、サイズが80nmのリポソームは、上記のCholに代えてアニオン性の脂質であるコレステロールコハク酸(CHEMS:シグマアルドリッチ製)を用いて調製した。
表面電荷が中性、カチオン性、又はアニオン性で、サイズが130nm又は300nmのリポソームは、孔径がそれぞれ100又は400nmのポリカーボネートフィルターを用いた以外は上記同様にして調製した。
得られた各リポソームのゼータ電位を下記表1に示す。各リポソームにおいて、各蛍光色素は膜に埋め込まれた状態で存在する。
実施例2 リンパシステム内動態解析1
参考例1で作製したリンパ流改変モデルマウスに対し、膝窩リンパ節切除7日後にイソフルランで麻酔をかけ、実施例1で得られた各リポソーム100nmol/mouseを、足裏から皮下投与した。投与1時間後、3時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、30時間後、及び48時間後の鼠経リンパ節(一次リンパ節)及び腋窩リンパ節(二次リンパ節)における蛍光色素含有リポソーム由来の蛍光シグナルをIVISイメージングシステムにより定量し、各リポソームのリンパシステム内動態を評価した。測定条件は、参考例1(3)と同様とした。
各リポソームのリンパ節への移行性を図4に示す。アニオン性リポソームは、中性リポソーム及びカチオン性リポソームに比して、高い一次リンパ節移行性を示した。
また、投与部位から到達した初めのリンパ節である一次リンパ節と、その後移行するリンパ節である二次リンパ節への移行量から、次式(1)に従って、リポソームの一次リンパ節滞留性を算出した。
参考例1で作製したリンパ流改変モデルマウスに対し、膝窩リンパ節切除7日後にイソフルランで麻酔をかけ、実施例1で得られた各リポソーム100nmol/mouseを、足裏から皮下投与した。投与1時間後、3時間後、6時間後、9時間後、12時間後、24時間後、30時間後、及び48時間後の鼠経リンパ節(一次リンパ節)及び腋窩リンパ節(二次リンパ節)における蛍光色素含有リポソーム由来の蛍光シグナルをIVISイメージングシステムにより定量し、各リポソームのリンパシステム内動態を評価した。測定条件は、参考例1(3)と同様とした。
各リポソームのリンパ節への移行性を図4に示す。アニオン性リポソームは、中性リポソーム及びカチオン性リポソームに比して、高い一次リンパ節移行性を示した。
また、投与部位から到達した初めのリンパ節である一次リンパ節と、その後移行するリンパ節である二次リンパ節への移行量から、次式(1)に従って、リポソームの一次リンパ節滞留性を算出した。
結果を図5に示す。130nmに粒子径を制御したアニオン性リポソームが最も高い一次リンパ節滞留性を示した。
以上の結果から、リポソームに高い一次リンパ節移行性及び高い一次リンパ節滞留性を付与するには、リポソームの表面電荷をアニオン性とすること、かつリポソームの粒子径を130nm程度に制御することが重要であることが示された。
以上の結果から、リポソームに高い一次リンパ節移行性及び高い一次リンパ節滞留性を付与するには、リポソームの表面電荷をアニオン性とすること、かつリポソームの粒子径を130nm程度に制御することが重要であることが示された。
実施例3 リンパシステム内動態解析2
アニオン性脂質としてホスファチジルグリセロール又はホスファチジン酸を用い、リポソームの粒子径を130nmに制御した以外は、実施例1と同様にしてアニオン性リポソームを調製した。得られた各リポソームの一次リンパ節滞留性を、実施例2と同様にして評価した。コントロールとして、実施例1の粒子径を130nmに制御した中性リポソームを用いた。
結果を図6に示す。いずれのアニオン性脂質を用いてリポソームを調製した場合でも、高い一次リンパ節滞留性が認められた。よって、リポソームへのアニオン性の付与に関しては、アニオン性官能基の種類は特に制限されないことが示された。
アニオン性脂質としてホスファチジルグリセロール又はホスファチジン酸を用い、リポソームの粒子径を130nmに制御した以外は、実施例1と同様にしてアニオン性リポソームを調製した。得られた各リポソームの一次リンパ節滞留性を、実施例2と同様にして評価した。コントロールとして、実施例1の粒子径を130nmに制御した中性リポソームを用いた。
結果を図6に示す。いずれのアニオン性脂質を用いてリポソームを調製した場合でも、高い一次リンパ節滞留性が認められた。よって、リポソームへのアニオン性の付与に関しては、アニオン性官能基の種類は特に制限されないことが示された。
実施例4 センチネルリンパ節イメージング1
実施例2で高い一次リンパ節移行性及び高い一次リンパ節滞留性を示した130nmに粒子径を制御したアニオン性リポソームを、マウス乳がん細胞を移植した担癌マウスの腫瘍組織内に投与し、センチネルリンパ節を撮像できるかを検討した。具体的には、参考例1で得られたリンパ流改変モデルマウスの乳腺に乳がん細胞(4T1細胞、5×105cells)を移植した。移植18日後に該マウスに対し、アニオン性リポソーム又はコントロールとしてインドシアニングリーン(ICG:東京化成工業製)を腫瘍内投与した。1時間後にIVISイメージングシステムでマウスを撮影し、センチネルリンパ節である鼠経リンパ節の検出の有無を確認した。また、腫瘍組織も同様に投与1時間後に回収し、IVISイメージングシステムにより撮影した。測定条件は、参考例1(3)と同様とした。
結果を図7に示す。従来技術であるICGを用いた場合には、ICGが全身に拡散してしまい、センチネルリンパ節を特異的に検出することができなかった(図7(A))。これに対し、130nmのアニオン性リポソームを用いた場合には、センチネルリンパ節を検出できた(図7(B))。このように、本発明のリポソームを腫瘍内に投与した結果、現在臨床で使用されている低分子蛍光色素ICGと比較して、センチネルリンパ節をより高感度、特異的に検出できることが明らかとなった。
実施例2で高い一次リンパ節移行性及び高い一次リンパ節滞留性を示した130nmに粒子径を制御したアニオン性リポソームを、マウス乳がん細胞を移植した担癌マウスの腫瘍組織内に投与し、センチネルリンパ節を撮像できるかを検討した。具体的には、参考例1で得られたリンパ流改変モデルマウスの乳腺に乳がん細胞(4T1細胞、5×105cells)を移植した。移植18日後に該マウスに対し、アニオン性リポソーム又はコントロールとしてインドシアニングリーン(ICG:東京化成工業製)を腫瘍内投与した。1時間後にIVISイメージングシステムでマウスを撮影し、センチネルリンパ節である鼠経リンパ節の検出の有無を確認した。また、腫瘍組織も同様に投与1時間後に回収し、IVISイメージングシステムにより撮影した。測定条件は、参考例1(3)と同様とした。
結果を図7に示す。従来技術であるICGを用いた場合には、ICGが全身に拡散してしまい、センチネルリンパ節を特異的に検出することができなかった(図7(A))。これに対し、130nmのアニオン性リポソームを用いた場合には、センチネルリンパ節を検出できた(図7(B))。このように、本発明のリポソームを腫瘍内に投与した結果、現在臨床で使用されている低分子蛍光色素ICGと比較して、センチネルリンパ節をより高感度、特異的に検出できることが明らかとなった。
実施例5 センチネルリンパ節イメージング2
130nmのアニオン性リポソーム又は中性リポソームを用い、該リポソームの投与の際に、同時にヒアルロニダーゼ(HAase)を投与した以外は、実施例4と同様にして、センチネルリンパ節である鼠経リンパ節の検出の有無を確認した。
結果を図8に示す。リポソームにHAaseを組み合わせることでセンチネルリンパ節の検出感度が増大した(図8(A)及び(B))。この検出感度の増大は、リポソームの表面電荷によらず認められたが、アニオン性リポソームにおいてより顕著であった(図8(C))。また、アニオン性リポソームを用いた場合、検出感度の増大は、二次リンパ節よりもセンチネルリンパ節でより顕著であった。
130nmのアニオン性リポソーム又は中性リポソームを用い、該リポソームの投与の際に、同時にヒアルロニダーゼ(HAase)を投与した以外は、実施例4と同様にして、センチネルリンパ節である鼠経リンパ節の検出の有無を確認した。
結果を図8に示す。リポソームにHAaseを組み合わせることでセンチネルリンパ節の検出感度が増大した(図8(A)及び(B))。この検出感度の増大は、リポソームの表面電荷によらず認められたが、アニオン性リポソームにおいてより顕著であった(図8(C))。また、アニオン性リポソームを用いた場合、検出感度の増大は、二次リンパ節よりもセンチネルリンパ節でより顕著であった。
Claims (8)
- 蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
- さらにヒアルロニダーゼを含有するものである、請求項1記載のセンチネルリンパ節イメージング剤。
- 蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームと、ヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
- 蛍光物質及びアニオン性脂質を含有しかつ平均粒子径が100〜150nmであるリポソームを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
- さらにヒアルロニダーゼを投与することを含む、請求項4記載のセンチネルリンパ節イメージング方法。
- 蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング剤。
- 蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを含有する、センチネルリンパ節イメージング用キット。
- 蛍光物質を含有するリポソームとヒアルロニダーゼとを投与することを特徴とする、センチネルリンパ節イメージング方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2020044942A JP2021147316A (ja) | 2020-03-16 | 2020-03-16 | センチネルリンパ節イメージング剤 |
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Publications (1)
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-
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