JP2021146338A - 微粒子分離方法 - Google Patents

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和之 田口
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Abstract

【課題】 過剰量のボディフィードろ過助剤を用いることなく、原水の性状に適合した運転条件にて微粒子の分離が可能な方法及び装置を提供する。【解決手段】 ろ過助剤を含むプリコート層を表面に形成したスプリングフィルタに、前記プリコート層の上流から、ボディフィードろ過助剤を添加した原水を供給し、原水中の微粒子を除去する微粒子分離方法であって、原水中の微粒子濃度、微粒子個数、粒子径を測定する工程と、予め得られた微粒子濃度、微粒子個数、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係に基づいて、原水のろ過抵抗の発達係数を得る工程と、前記原水のろ過抵抗の発達係数に基づき、前記スプリングフィルタのろ過条件を制御する工程とを含む方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、微粒子分離方法及び当該方法に用いる微粒子分離装置に関する。本発明は、特には、演算により運転条件を制御することが可能な、高効率な微粒子分離方法及び当該方法に用いる微粒子分離装置に関する。
排水の処理分野において、排水中から微粒子を物理的に除去する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された方法においては、コイル体を備えるスプリングフィルタをろ材とし、ろ材の上流側にろ過助剤からなる複数のプリコート層を設けた装置が開示されている。そして、ろ過に際し、微粒子を含む原水にボディフィード濾過助剤を混合して最も上流側の濾層に供給し、この供給により前記濾層の更に上流にボディフィード層を形成して、濾層における圧力損失の増加を抑制することが開示されている。この方法では、バクテリア(数μm)やプランクトン(数十μm)を除去することが可能であり、スプリングフィルタの目詰まりの除去は、低圧の逆洗で容易に行うことが可能である等、利点が大きい。
国際公開WO2009/028163号公報
特許文献1の技術を用いたろ過は、物理的なろ過方法であるため、原水の性状によって、フィルタが目詰まりするまでの時間や、ろ過可能な水量が変化する。その変化を軽減するために、従来は、過剰量のボディフィードろ過助剤を原水に添加して使用していた。そのため、過剰量のボディフィードろ過助剤のコストや、使用済みのボディフィードろ過助剤の廃棄コストが嵩むという問題があった。また、原水の性状が変化すると、その都度、プリコート層を構成するろ過助剤の量やボディフィードの量をチューニングする必要があった。そのため、ろ過に用いる装置を停止し、条件設定のための試運転が長期間必要となるという問題があった。
上述した問題に対し、過剰量のボディフィードろ過助剤を用いることなく、原水の性状に適合した運転条件にて微粒子の分離が可能な方法及び装置が求められる。
本発明は、一実施形態によれば、ろ過助剤を含むプリコート層を表面に形成したスプリングフィルタに、前記プリコート層の上流から、ボディフィードろ過助剤を添加した原水を供給し、原水中の微粒子を除去する微粒子分離方法であって、
原水中の微粒子濃度、微粒子個数、粒子径を測定する工程と、
予め得られた微粒子濃度、微粒子個数、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係に基づいて、原水のろ過抵抗の発達係数を得る工程と、
前記原水のろ過抵抗の発達係数に基づき、前記スプリングフィルタのろ過条件を制御する工程を含む方法に関する
前記微粒子分離方法において、前記ろ過条件が、前記ボディフィードろ過助剤の供給量及び/または原水供給量であることが好ましい。
前記微粒子分離方法において、前記原水が、船舶のバラスト水、スクラバ水、または発電所の冷却水から選択されることが好ましい。
本発明は、別の実施形態によれば、微粒子分離装置であって、
スプリングフィルタを備えるろ過部と、
前記ろ過部に、微粒子を含む原水を供給する原水供給部と、
前記原水の微粒子濃度、微粒子個数、粒子径を計測する微粒子計測部と、
前記ろ過部に、ろ過助剤を供給するろ過助剤供給部と、
微粒子濃度、微粒子個数、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係を蓄積したデータベースを備えた制御部であって、前記微粒子計測部による計測結果に基づいて前記原水のろ過抵抗の発達係数を演算し、前記原水供給部及び/または前記ろ過助剤供給部を制御する制御部とを備える。
前記微粒子分離装置において、前記ろ過部から得られる処理水の微粒子濃度、微粒子個数、及び粒子径を計測する微粒子計測部をさらに含むことが好ましい。
本発明の微粒子分離方法及び装置によれば、原水の種類、性状に適合した運転条件にて原水のろ過が可能であり、過剰量のボディフィードろ過助剤を用いることなく、経済的、かつ効率的に原水中の微粒子を分離することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態による微粒子分離装置を概念的に示す模式図である。 図2は、微粒子分離装置を構成するろ過部のスプリングフィルタ表面を模式的に示す図であって、ボディフィードろ過助剤を用いたろ過メカニズムを説明する図である。 図3は、図2のA部分を拡大し、模式的に示す図であって、プリコート層による微粒子の捕捉を説明する図である。 図4は、微粒子を含む水(粒子あり)と、微粒子を含まない水(粒子なし)について、スプリングフィルタ流量の経時的変化を概念的に示すグラフである。 図5は、微粒子を含む水(粒子あり)と、微粒子を含まない水(粒子なし)について、スプリングフィルタの積算流量の経時変化を概念的に示すグラフである。 図6は、原水中の微粒子濃度、粒子径と、ろ過抵抗の関係を示すグラフの例であって、本発明の一実施形態による微粒子分離方法の、ろ過抵抗の発達係数を得る工程において、予め得られたデータとして用いられる量的関係の例を示すグラフである。 図7は、2.5μmの標準粒子を各種濃度で含む原水モデルについて、ボディフィードろ過助剤を使用しない場合の、処理時間とろ過流量の関係の予測結果を示すグラフである。 図8は、2.5μmの標準粒子を250mg/Lの濃度で含む原水モデルについて、ボディフィードろ過助剤を使用しない場合、及び、0.67g/L、1.3g/Lの濃度で使用した含む場合の処理時間とろ過流量の関係の予測結果を示すグラフである。
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
本発明は、一実施形態によれば、微粒子分離方法及び微粒子分離装置に関する。本発明に係る方法は、微粒子を含む原水について、予めその性状を分析し、ろ過に好適な運転条件を演算した上で、当該条件に沿って原水を所定の構成を備えるろ過手段に供給し、微粒子が分離、除去された処理水を得る方法に関する。
本発明における原水は、物理的なろ過が可能な大きさの微粒子と、一般的にはゴミを含み、水を主成分とする液体であってよい。原水としては、例えば、船舶のバラスト排水、スクラバ排水が挙げられる。また、原水の別の例としては、発電設備や工場設備の冷却水が挙げられ、特には、火力発電所の冷却水、地熱発電所の冷却水、ビル空調や地域冷暖房設備の冷却水が挙げられる。
本発明において、原水に含まれ、分離の対象となる微粒子は、後述するろ過助剤の粒子間に捕捉することが可能な微粒子である。ろ過助剤の粒子径を選択することにより、所望のサイズの微粒子、より具体的には、粒子径が約1μm〜100μm程度の微粒子を捕捉することが可能である。このような微粒子としては、すすなどの炭化水素化合物粒子、細菌、プランクトン、鉱物や有機物などの天然物の欠片、配管や機器の削れによって生じた金属片、外気から混入する砂ぼこり、花粉、微小昆虫が挙げられる。理論に拘束される意図はないが、本発明によるろ過方法は、原水中の微粒子をろ過助剤の粒子間に捕捉し、原水から物理的に除去することによる微粒子分離方法である。したがって、微粒子を構成する物質の生物学的特性や化学的特性には依存することなく、捕捉・除去することが可能である。なお、原水に含まれるゴミとは、一般的には、捕捉される粒子よりも大きい夾雑物をいうものとする。
好ましい一態様においては、例えば、地熱発電所の冷却水を原水とし、硫黄酸化細菌を微粒子として除去する用途がある。地熱発電所の冷却水含まれる硫黄酸化細菌としてはAcidthiobacillus、Thiospira、Beggiatoa、Thiothrix、Clostridiaなどが挙げられる。これらの中には、概ね糸状の細菌も含まれるが、直径が1.5μm程度の微粒子とみなすことができ、微粒子として分離可能である。細菌類の殺菌剤による化学的処理は、殺菌剤の自然に与える影響や、耐性菌の発生により効果の低減が予測されるなどの不利益が考えられるため、本発明による物理的な捕捉、分離が特に有用である。
本発明の微粒子分離方法を、当該方法を実施可能な微粒子分離装置の一例を図示して説明する。図1は、微粒子分離装置の一例を示す模式図である。当該微粒子分離装置は、主として、ろ過部1と、原水供給部(供給タンク4と、撹拌機5と、ポンプP1と、ポンプP2とを備える)と、微粒子計測部(第1の微粒子計測部7と、第2の微粒子計測部3とを備える)、清水並びにろ過助剤供給部(供給タンク4と、撹拌機5と、第1ろ過助剤タンク8と、第2ろ過助剤タンク9と、ポンプP1と、ポンプP3とを備える)と、制御部20とを備える。
ろ過部1は、コイル体からなるスプリングフィルタ10を備えたベッセル11から構成される。ろ過部1においては、ベッセル11の入口から供給される原水から微粒子が除去され、清浄化された処理水がベッセル11の出口から放出される。
図2は、図1の微粒子分離装置を構成するろ過部のスプリングフィルタ10の表面の一例を模式的に示す図であって、ボディフィードろ過助剤を用いたろ過メカニズムを説明する図である。スプリングフィルタ10は、断面が略円形の線材を螺旋状に巻回したコイルスプリングから構成される。コイルスプリングには、長手方向、所定間隔ごとに突起が形成され、これにより、コイル10aの軸方向に間隙Sを有する。この間隙Sに原水を流すことによってろ過が可能になる。このようなスプリングフィルタ10としては市販のものを用いることができる。また、本発明者らによる特許文献1に、好適なスプリングフィルタ及びベッセルの構造が詳述されており、特許文献1の開示に基づいてスプリングフィルタを備えるろ過部を適宜設計することができる。本実施形態においては、スプリングフィルタ10の目詰まりや洗浄の容易性の観点から、間隙Sは、50〜100μmとすることが好ましく、50〜70μmとすることが好ましく、60μm程度とすることが最も好ましい。
再び図1を参照すると、ベッセル11には、スプリングフィルタ10とともにベッセル11の内部を、上流領域Uと下流領域Dに二分する仕切板13が設けられる。上流領域Uは、ベッセル11の鉛直方向下方に位置し、ベッセル11本体と、仕切板13と、スプリングフィルタ10の表面(コイルスプリングの外周面)とで画定される領域である。上流領域Uは、ベッセル11底部近傍のベッセル入口に連通し、微粒子分離装置の稼働中は、原水や、ろ過助剤を含む清水が流入、通過可能な領域である。一方、下流領域Dは、ベッセル11の鉛直方向上方に位置し、ベッセル11本体と、仕切板13と、スプリングフィルタ10の内面(コイルスプリングの内周面)とで画定される領域である。下流領域Dは、ベッセル11上部近傍のベッセル出口に連通する。微粒子分離装置の稼働中は、下流領域Dは、プリコート層及びスプリングフィルタ10の間隙Sを通過した処理水TWが流入可能な領域である。
微粒子分離装置が稼働し、微粒子の分離を行う際には、スプリングフィルタ10の表面には、図2に示すように複数の層を含むプリコート層が形成される。図示する態様においては、第1ろ過助剤101から構成される第1プリコート層L、第2ろ過助剤102から構成される第2プリコート層L、第3ろ過助剤103から構成される第3プリコート層Lが形成される。また、ボディフィードろ過助剤104が原水RWに混合されて供給され、第3プリコート層Lの上流側にボディフィード層Lが形成される。
第1プリコート層Lは、第2プリコート層Lをコイル上に支持する層であって、支持層ともいう。第1プリコート層Lを構成する第1ろ過助剤101としては、珪藻土、セルロースファイバー、砂等を用いることができるが、それらには限定されない。例えば、細菌、植物プランクトン、動物プランクトン等の微粒子を分離する用途の場合は、珪藻土のような細孔をもつ、多孔性のろ過助剤を用いることが好ましい場合がある。また、第1ろ過助剤101の代表粒子径は、コイル10aの軸方向に間隙Sに架橋可能な粒子径とすることができる。特には、第1ろ過助剤101の代表粒子径をd、間隙Sの間隔をdとしたときに、d/d=0.12〜0.25を満たす代表粒子径をもつ第1ろ過助剤101を用いることが好ましい。なお、代表粒子径とは、正規分布に準ずる粒子径分布をもつ粒子群について、最も存在頻度が高い粒子をいうものとする。一例として、発電所の冷却水やバラスト水を原水とする場合において、第1ろ過助剤101としては、代表粒子径が、20〜25μm程度の珪藻土を用いることが好ましい。第1プリコート層Lの厚さは、原水の性状によって異なってよく、本発明の方法により決定される運転条件のひとつでありうる。
第2プリコート層Lは、第1プリコート層Lの上流側に形成され、微粒子の捕捉層として機能する。第2プリコート層Lを構成する第2ろ過助剤102の素材は、第1ろ過助剤101と同じ選択肢の中から選択することができる。第1ろ過助剤101と、第2ろ過助剤102とは、同じ素材であっても異なっていてもよい。第2ろ過助剤102は、一般的には、第1ろ過助剤101よりも代表粒子径が小さいものを用いることができる。図3は、図2に示す第2プリコート層LのAで示す部分を拡大した模式図である。第2ろ過助剤102の代表粒子径dは、捕捉する微粒子105の代表粒子径をdとすると、d=0.155dの関係を満たすことが好ましい。例えば、本発明の好ましい実施態様の一例による分離対象物である細菌は、代表粒子径が1.5μm程度であるので、第2ろ過助剤102の代表粒子径dは、10μm程度とすることが好ましい。第2プリコート層Lの厚さも、原水の性状によって異なってよく、本発明の方法により決定される運転条件のひとつでありうる。
第3プリコート層Lは、第2プリコート層Lの上流側に形成され、第2プリコート層Lの保護層として機能する。すなわち、微粒子105を捕捉する第2プリコート層Lを、原水中のゴミから保護する。第3プリコート層Lを構成する第3ろ過助剤103の素材は、第1ろ過助剤101と同じ選択肢の中から選択することができる。第3ろ過助剤103は、第1ろ過助剤101及び第2ろ過助剤102とは、同じ素材であっても異なっていてもよい。第3ろ過助剤103は、一般的には、第2ろ過助剤102よりも代表粒子径が大きいものを用いることができ、第1ろ過助剤101と同程度の代表粒子径を持つものを用いることができる。第3プリコート層Lの厚さも、原水の性状によって異なってよく、本発明の方法により決定される運転条件のひとつでありうる。
ボディフィードろ過助剤104は、原水RWと混合されて、第3プリコート層Lの上流側から供給され、経時的にボディフィード層Lを形成する。ボディフィードろ過助剤104は、第1ろ過助剤101と同じ選択肢の中から選択することができる。ボディフィードろ過助剤104もまた、第1ろ過助剤101、第2ろ過助剤102、第3ろ過助剤103とは、同じ素材であっても異なっていてもよい。ボディフィードろ過助剤104は、微粒子105よりも代表粒子径の大きなものを選択して用いる。水道(みずみち)の閉塞によるろ過抵抗の上昇を防止し、圧力損失を抑えて、原水の処理流量を確保するためである。したがって、ボディフィードろ過助剤104も、第1ろ過助剤101と同程度またはこれより大きい代表粒子径を持つものを用いることができる。
ベッセル11にはさらに圧力計12が設けられる。圧力計12は、スプリングフィルタ10の外周圧力を測定することができる。圧力計12の測定結果は、プリコート層及びボディフィード層の閉塞の指標となり、これにより、ろ過操作の停止、洗浄のタイミングを検知可能となる。
ろ過部1の上流側には、原水供給部と、ろ過助剤供給部とが接続される。ここで、上流側とは、微粒子分離装置を稼働して分離操作を行う際の、原水、清水、ろ過助剤等を含む物質の流れの向きに基づく上流側をいう。特には、ベッセル11の上流領域Uに連通する部分をいうものとする。
原水供給部は、原水をろ過部1に供給する流路及び供給に用いられる装置を備える。より具体的には、原水RWの貯留部と、原水の貯留部からろ過部1に原水を運搬する流路、並びにポンプP2と、バルブB6と、供給タンク4と、ポンプP1とを備える。また、バルブB6にて当該流路から分岐して、原水を貯留部に返送する返送流路を備える。ポンプP2は、原水の貯留部と供給タンク4の間に設けられ、原水を供給タンク4に送出可能に、及び、返送流路を介して貯留部に送出可能に構成される。ポンプP1は、供給タンク4とろ過部1の間に設けられ、原水をろ過部1に送出可能に構成される。ポンプは定量ポンプや、遠心ポンプを用いることが好ましい。原水の貯留部はタンクなどであってもよい。あるいは、本実施形態による微粒子分離装置の外部に貯留された原水が流路等により連続的に運搬される態様であってもよい。
ろ過助剤供給部は、複数種のろ過助剤と、当該ろ過助剤と混合して用いる清水をろ過部1に供給する流路及び供給に用いられる装置を備える。ろ過助剤供給部は、清水源FWと、第1ろ過助剤タンク8と、第2ろ過助剤タンク9と、ポンプP3と、供給タンク4と、ポンプP1とを含む。清水の供給流路と、第1ろ過助剤タンク8、第2ろ過助剤タンク9のそれぞれの間には、バルブB4、B5を設け、これらにより、第1ろ過助剤タンク8と、第2ろ過助剤タンク9から吐出されるろ過助剤の量を調整可能に構成している。ポンプP3は、第2ろ過助剤タンク9と供給タンク4の間に設けられ、清水またはろ過助剤と混合した清水を供給タンク4に送出可能に構成される。
なお、図示する実施形態では、第1ろ過助剤タンク8と、第2ろ過助剤タンク9とが、同一の清水の供給流路に接続されているが、第1ろ過助剤タンク8に接続する清水の供給流路と、第2ろ過助剤タンク9に接続する清水の供給流路とを別々に設けることもできる。また、ろ過助剤タンクは、使用するろ過助剤が3種以上の場合には、3つ以上設けることもできる。さらに、清水に代えて、原水や処理水をろ過助剤と混合する水として用いることもできる。
供給タンク4は、撹拌機5とレベル計6とを備え、原水または清水と、ろ過助剤とを均一に混合可能に構成される。原水または清水にろ過助剤が均一に分散された状態で、ろ過助剤を沈殿させることなく、ろ過部1に流入させる必要があるためである。図示する実施態様において、供給タンク4は、原水の供給用途、ろ過助剤の供給用途において共通して用いられるが、原水の供給用途の供給タンクと、ろ過助剤の供給用途の供給タンクを別々に設けることもできる。あるいは、供給タンクを設けず、原水または清水とろ過助剤とをろ過部1に送る流路内に撹拌手段を設け、原水または清水とろ過助剤とが均一に分散された状態でろ過部1に流入させてもよい。供給タンク4は、ポンプP1を介して、ろ過部1を構成するベッセル11に接続される。供給タンク4とベッセル11の間には、バルブB3を設け、供給タンク4内の物質をベッセル11に流す流路と、ベッセル11内の物質の排出する流路とを切り替え可能に構成している。
本実施形態による微粒子分離装置はまた、第1の微粒子計測部7を備えている。第1の微粒子計測部7は原水の供給流路に設けられ、ろ過助剤と混合される前の原水中の、微粒子の個数、濃度、粒子径を測定する。第1の微粒子計測部7は、微粒子カウンタや、パーティクルカウンタであってよく、微粒子の粒子径分布及びその割合を計測することができるものが好ましい。あるいは、第1の微粒子計測部7は、微粒子の個数、濃度を演算可能な濁度計であってもよい。このような濁度計は、濁度から微粒子の個数、濃度を演算可能な機能を包含する市販の濁度計であってもよい。あるいは、予め得られた濁度と微粒子の個数、濃度の相関関係に基づき、濁度から、微粒子の個数、濃度を算出して出力可能な計算機を、濁度計に組み合わせて用いてもよい。
ろ過部1の下流側には、洗浄水供給部と、放出・返送部とが接続される。下流側とは、微粒子分離装置を稼働して分離操作を行う際の、物質の流れの向きに基づく下流側をいう。特には、ベッセル11の下流領域Dに連通する部分をいうものとする。
洗浄水供給部は、洗浄水CWの供給源と、洗浄水をろ過部1に供給する流路及び供給に用いられる装置を備える。洗浄水をろ過部1に供給する流路は、洗浄水の供給源からベッセル11上部近傍のベッセル出口に接続され、バルブB2で、処理水を送出する流路と切り替え可能に分岐している。洗浄水としては、処理水や原水を使用することもできる。
放出・返送部は、ベッセル11から吐出される処理水を送出する流路、流量計2、及び第2の微粒子計測部3を備える。処理水を送出する流路はベッセル11上部近傍のベッセル出口に接続され、バルブB2で洗浄水の流路と切り替え可能に分岐している。処理水を送出する流路は、さらにその下流で、処理水を放出する流路と、処理水を供給タンク4に返送する流路に分岐し、バルブB1により切り替え可能に構成される。処理水を放出する流路は、処理水TWの貯留部に接続される。あるいは、処理水を放出する流路は、河川や海洋などの自然水域に接続していてもよい。
ベッセル11から吐出される処理水を送出する流路には、第2の微粒子計測部3を備えている。第2の微粒子計測部3は、ろ過部1とバルブB1の間に設けられ、処理水中の、微粒子の濃度、個数、粒子径を測定する。第1の微粒子計測部7と同じ構成を持つ装置であってよい。第2の微粒子計測部3による計測は、微粒子分離装置を稼働している間にわたって、連続的に行うこともできるし、一定時間ごとに行うこともできるが、連続的に行うことが好ましい。第2の微粒子計測部3により、プリコート層の形成の終了確認及び異常ろ過の検知が可能となる。ろ過部1の下流であって、第2の微粒子計測部3の上流には、流量計2を備えている。
本実施形態による微粒子分離装置は、さらに制御部20を備えている。制御部20は、第1の微粒子計測部7及び/または第2の微粒子計測部3による計測結果に応じて、ボディフィードろ過助剤量を演算し、前記原水供給部及び/または前記ろ過助剤供給部を制御する。制御部20は、予め得られた微粒子個数、濃度、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係を示すデータベースを備え、これを参照し、第1の微粒子計測部7及び/または第2の微粒子計測部3による計測結果に基づいて、後述する所定の演算が可能な手段であってよい。
本実施形態による微粒子分離装置は、上記構成により、以下のような微粒子分離方法の動作を可能とする。微粒子分離方法は、詳細には下記の工程を含んでもよい。
(1)微粒子分離条件演算工程
(2)プリコート層形成工程
(3)処理工程
(4)洗浄工程
以下、各工程について説明する。なお、以下の方法は、図1〜8を参照して説明するが、これらの図は一例であって、本発明の方法は、当該図面に開示された実施態様に限定されるものではない。
(1)微粒子分離条件演算工程
本工程は、原水の性状から、微粒子分離操作における運転条件を演算する工程である。本工程は、以下のサブステップをさらに含む。
(a)原水中の微粒子の個数、濃度、粒子径を測定する工程
(b)原水の粒子径分布に応じた、ろ過抵抗を算出する工程
(c)ろ過抵抗から、ろ過抵抗の発達係数を算出する工程
(d)ろ過水量推定式に係数を代入し、ろ過水量(時間)を求める工程
なお、工程(b)〜(d)をまとめて、予め構築した原水の微粒子個数、濃度、粒子径とろ過抵抗の関係式により、(a)に基づき、ボディフィードろ過助剤量を演算する工程ということもできる。これらの工程は、制御部20が備えるデータベース及び演算手段により実施することができる。
ここで、演算工程における基礎となるろ過抵抗の考え方について説明する。スプリングフィルタに水を流し始めると、水中の微粒子、細菌はプリコート層の捕捉層に捕捉される。時間経過とともに微粒子が捕捉層に蓄積するので、徐々に水の通り道(水道、みずみち)が減少し、流量が低下してくる。この微粒子の蓄積による水の流れにくさを「ろ過抵抗」と定義する。ろ過抵抗は水中の微粒子個数、濃度、粒子径に依存する。
図4は、微粒子を含む水(粒子あり)と、微粒子を含まない水(粒子なし)について、スプリングフィルタ流量の経時的変化を概念的に示すグラフである。微粒子を含む水を流す場合、ろ過流量は時間経過とともに低下する(図4の実線)。水の中に微粒子がなければ微粒子の堆積がないのでろ過抵抗はゼロとなり、ろ過流量は初期流量から変化せず一定となる(図4の破線)。この初期流量から低下した流量分がろ過抵抗となる。図4中の矢印は、微粒子の堆積により流量が低下したこと、すなわちろ過抵抗が上昇したことを示す。
ろ過抵抗の解析では粒子の蓄積量を合わせて比較するため、流量の経時変化を積算流量に変換する。積算流量[L]=Σ(瞬時流量[L/秒]×単位時間[秒])で表される。図5は、微粒子を含む水(粒子あり)と、微粒子を含まない水(粒子なし)について、スプリングフィルタの積算流量の経時変化を概念的に示すグラフである。粒子濃度が同じ所定の水量をろ過することは、同じ粒子量をろ過し、捕捉層に蓄積していることになる。微粒子の蓄積によりろ過抵抗が増加すると、所定の水量をろ過するまでの処理時間が長くなる。この処理時間の増加分をろ過抵抗とする。図5中の矢印は、ろ過抵抗を示す。
図2に示すプリコート層及びボディフィード層にてろ過を行う場合、プリコート層L、L、L及びボディフィード層L内部の水の流れは、Darcy則に従うと、以下の式(1)で表すことができる。
Figure 2021146338
式中、pは、プリコート層全体L、L、L及びボディフィード層Lの全圧力損失、すなわちろ過圧力である。rは、プリコート層全体L、L、L及びボディフィード層Lの全ろ過抵抗である。μ’[kg/m・sec]は原水の粘度、A[m]はろ材のろ過面積、V[m]はろ液体積、t[sec]はろ過開始からの経過時間を表す。
一方、ボディフィードを用いてケークろ過を行う場合のろ過水量推定式は以下の式(2)で表される。
Figure 2021146338
式中、Q[m/sec]はろ過流量、V[m]はろ液体積、t[sec]はろ過開始からの経過時間、Q[m/sec]は最大ろ過流量、μ’[kg/m・sec]は原水の粘度、A[m]はろ材のろ過面積、p[kg/m]は最大ろ過圧力、t[sec]は見かけ時間であり、t=−tにおいて、ろ過抵抗r=rとなる時間である。rは、初期ろ過抵抗を表す。初期ろ過抵抗とは、ろ過操作の開始時のろ過抵抗、すなわち、ボディフィード層が積層される前のプリコート層のろ過抵抗をいう。初期ろ過抵抗rは、式(1)において、ポンプの水量と圧力の性能曲線(QPカーブ)上のろ過操作開始時のろ過圧力をp、そのときのろ過流量すなわち最大流量をQとしたときのろ過抵抗である。ろ過抵抗は原水中の微粒子を含むボディフィード層の形成とともに増加し、ろ過抵抗の発達速度はボディフィード形成量に比例する。このときの比例定数をξとする。本明細書において、ξをろ過抵抗の発達係数と指称する。
微粒子分離条件演算工程に含まれる具体的な工程について説明する。工程(1)(a)では、第1の微粒子計測部7により、原水中の微粒子の個数、濃度、粒子径を測定する。これらの測定は、連続的に実施することもでき、所定の時間ごとに実施することも可能である。計測結果は、制御部20に送信可能に構成される。
(1)(b)では、原水条件から重み付けしたろ過抵抗の算出を行う。算出には、原水条件から、ろ過抵抗を平均化するデータベースを用いる。このデータベースについて説明する。特定の濃度で、特定の粒子径をもつ微粒子が含まれる原水のろ過抵抗率は実験的に得ることができる。したがって、粒子径が既知の標準粒子について、標準粒子の粒子径、濃度と、特定の水量をろ過するまでの時間との関係を求めることにより、所定の粒子径の標準粒子について、濃度と、特定水量のろ過時間の関係を表す多項式を得ることができる。また、粒径が異なる複数種の標準粒子について、同様に多項式を得ることができる。
図6は、粒子径が、1.5μm、2.5μm、5μm、8μmの標準粒子について行った実験により、標準粒子濃度と、ろ過抵抗の関係から多項式を得た例を示す。グラフから、粒子径に固有の傾きがあることが理解される。図6中の矢印は、2.5μmの粒子径をもつ標準粒子に、ボディフィードろ過助剤を混合してろ過した場合に、ろ過抵抗が低減されることを表す。グラフの傾きは、ボディフィードろ過助剤を混合することにより小さくなるといえる。このような関係式から、所望のろ過時間を達成するために必要なボディフィードの量が演算可能である。
図6に例示するような複数の標準粒子についての特定水量のろ過時間と濃度の関係を表す多項式は、原水条件からろ過抵抗を平均化するデータベースとして、制御部20に蓄積することができる。なお、図6では、4種の標準粒子を用いて、4つの多項式を得た例を示しているが、本発明の方法は、図6に示す多項式に限定されるものではない。データベースに蓄積する情報には、より小さい粒子径の標準粒子を用いた多項式を含んでもよいし、さらに粒子径の異なる標準粒子を用いて得られた、5つ、6つ、7つ、あるいは8つ以上の多項式を含んでもよい。
実際の原水には、複数の異なる粒子径の微粒子が含まれ、その割合も異なる。したがって、データベースに蓄積した多項式に基づき、第1の微粒子計測部7による原水中の微粒子の粒子径、濃度、個数のデータから、加重平均等の手法により重みづけをし、平均化したろ過抵抗を算出することができる。
複数の粒子(複合粒子)のろ過抵抗の算出方法について、さらに例示する。ろ過抵抗は捕捉層の閉塞に依存する。例えば、捕捉層として代表粒子径が10μm程度の珪藻土を用い、保護層として代表粒子径が21μm程度の珪藻土を用いる場合、5μm、8μmの標準粒子は、保護層で捕捉されるため、ろ過抵抗への影響は比較的小さい。一方、硫黄酸化細菌に相当する粒子径を持つ1.5μmの標準粒子と、2.5μmの標準粒子は、捕捉層で捕捉される。1.5μmの標準粒子は、これらの標準粒子の中でろ過抵抗が最も高いが、2.5μmの標準粒子の混在で、1.5μmの標準粒子の圧密は緩和され、捕捉層の閉塞は低減し、ろ過抵抗は減少する。
複合粒子のろ過抵抗の計算式は、y=axで近似することができる。この二次関数の係数aの求め方は、加重平均、単純平均、最小値、最大値等のいずれであってもよい。一例として、下記式(3)により求めることができる。
Figure 2021146338
式中、a1.5は、1.5μmの標準粒子のろ過抵抗の計算式の傾きであり、図6のグラフから得られる。1.5μm粒子割合は、(1.5μm粒子の質量/総粒子質量)で得られる粒子の質量比である。k1.5は、合成ろ過抵抗を求めるときの各粒子径のろ過抵抗の寄与度である。寄与度は、実験による実測値、微粒子計測部による微粒子濃度、個数、粒子径の計測値から算出、または微粒子シミュレーションにより決定される。他のa、nμm粒子割合、k(nは粒子径)についても同様である。また、1.5μm、2.5μm、5μm、8μmの標準粒子以外に、追加の異なる粒子径nの標準粒子を用いてろ過抵抗を計算する場合には、式(3)に以下の項:a×〔nμm粒子割合〕×kを加えて計算することができる。また、式(3)による標準粒子の径は一例であって、他の径をもつ標準粒子を用いる場合も、同様の式から、係数aを求めることができる。
次いで、(1)(c)では、(1)(b)で得られたろ過抵抗からろ過水量推定式の係数であるろ過抵抗の発達係数を算出する。具体的には、(1)(b)で得られたろ過抵抗を、ろ過水量推定式(2)にフィッティングし、未知の係数ξを算出することができる。式(2)中、Aはスプリングフィルタの仕様により決まり、μ’は水の温度から計算可能である。また、Q、Qは流量計2による測定値である。rは、Qと圧力計12による測定値pに基づき、式(1)から得ることができる。発達係数の算出は、ろ過抵抗の発達係数ξ、見かけ時間tを未知のパラメータとして、実験データと流量推定式(2)での流量の2乗誤差が最小になるように誤差計算を行う。ろ過流量の推定式は強い非線型であるため、連立方程式型のニュートン・ラフソン法を適用して計算することが好ましい。算出には、ろ過抵抗と、ろ過抵抗の発達係数のデータベースを用いることができる。
(1)(d)では、ろ過水量推定式(2)に(1)(c)で得られたろ過抵抗の発達係数ξを代入し、ろ過水量(ろ過時間)を求める。これにより、処理時間とろ過流量の関係が予測可能となり、データベースから、ろ過抵抗が最小(ろ過水量が最大)となるボディフィードろ過助剤の条件を選定することができる。
図7は、一例として、2.5μmの標準粒子を各種濃度で含む原水モデルについて、ボディフィードろ過助剤を使用しない場合の、処理時間とろ過流量の関係の予測結果を示すグラフである。図8は、2.5μmの標準粒子を250mg/Lの濃度で含む原水モデルについて、ボディフィードろ過助剤を使用しない場合、及び、0.67g/L、1.3g/Lの濃度で使用した場合の処理時間とろ過流量の関係の予測結果を示すグラフである。図8から、ボディフィードろ過助剤を添加して用いることにより、経時的な流量の低下を抑制可能であること、流量低下の抑制の幅は、ボディフィードろ過助剤の添加量に依存することがわかる。したがって、種々の粒子径をもつ微粒子を、それぞれ異なる濃度で含む原水についても、処理時間とろ過流量の関係を多項式で表すことができれば、図8のように、ボディフィードろ過助剤の添加効果を予測することができ、ボディフィードろ過助剤の添加量を演算することができる。
したがって、上記の演算に基づき、ろ過操作において用いる、ボディフィードろ過助剤量を算出することが可能となる。この演算は通常、(2)プリコート層形成工程、(3)処理工程、(4)洗浄工程の1サイクルを行う前に、一度行うことができるが、必要に応じて演算を繰り返して行い、原水の性状により、処理工程を行う間においても、ボディフィードろ過助剤の量を変化させることもできる。
(2)プリコート層形成工程
本工程は、図2に示すプリコート層を、スプリングフィルタ上に形成する工程である。本工程は、以下のサブステップをさらに含む。
(a)清水に第1ろ過助剤を工程(1)(b)で演算した量となるように懸濁する工程
(b)清水に第2ろ過助剤を工程(1)(b)で演算した量となるように懸濁する工程
(c)工程(a)の第1ろ過助剤をろ過部に流し込み、スプリングフィルタ上に第1ろ過助剤からなる第1プリコート層(支持層)を貼付する工程
(d)工程(b)の第2ろ過助剤をろ過部に流し込み、支持層上に第2ろ過助剤からなる第2プリコート層(捕捉層)を形成する工程
(e)工程(a)の第1ろ過助剤をろ過部に流し込み、捕捉層上に第1ろ過助剤からなる第3プリコート層(保護層)を形成する工程
(f)処理水の微粒子計測部による計測値が所定の微粒子個数、濃度、粒子径になるまで(e)で流し込んだ液を循環する工程
(g)原水を通すまで清水を循環させる工程
(2)(a)では、予め第1ろ過助剤タンク8に清水を加え、第1ろ過助剤タンク8において、清水と第1ろ過助剤を工程(1)(b)で演算した量となるように、バルブB4及びろ過助剤ポンプ(図示せず)を用いて制御し、懸濁する。図2に示す例示的な実施態様では、第1プリコート層L、第3プリコート層Lを形成するろ過助剤、及びボディフィードろ過助剤104は、同一の代表粒子径をもつろ過助剤を用いることができる。さらに具体的には、例えば代表粒子径が21μm程度の珪藻土を用いることができる。したがって、これらの層を形成するために、第1ろ過助剤タンク8にて、代表粒子径が21μm程度の珪藻土からなる第1ろ過助剤の懸濁液を調製することができる。
(2)(b)では、同様にして、第2ろ過助剤タンク9において、清水と第2ろ過助剤を工程(1)(b)で演算した量となるように、バルブB5及びろ過助剤ポンプ(図示せず)を用いて制御し、懸濁する。図2に示す例示的な実施態様では、第2プリコート層Lを形成するろ過助剤は、先の、第1プリコート層L、第3プリコート層Lを形成するろ過助剤、及びボディフィードろ過助剤104とは異なり、より代表粒子径の小さいろ過助剤を用いることができる。さらに具体的には、例えば代表粒子径が10μm程度の珪藻土を用いることができる。したがって、第2プリコート層Lを形成するために、第2ろ過助剤タンク9にて、代表粒子径が10μm程度の珪藻土からなる第2ろ過助剤の懸濁液を調製することができる。
(2)(c)では、工程(2)(a)で調製した第1ろ過助剤を、ポンプP3にて供給タンク4に送り、撹拌機5にて均一になるまで撹拌した後、ポンプP1にてベッセル11に流し込む。供給タンク4内の水量は、レベル計6により測定することができる。ベッセル11への送液の際の圧力は、0.01〜0.03MPaとすることが好ましい。液はバルブB1により制御し、供給タンク4とベッセル11を循環するようにする。ろ過助剤はスプリングフィルタ10の表面に堆積(貼付)し、供給タンク4に戻ってくる水は次第に透明度が上がってくる。プリコート形成工程中はこの循環経路を維持する。
次いで、(2)(d)では、工程(2)(b)で調製した第2ろ過助剤を、ポンプP3にて供給タンク4に送り、撹拌機5にて均一になるまで撹拌した後、ポンプP1にてベッセル11に流し込む。圧力は、工程(2)(c)と同一とすることが好ましい。また、液のバルブB1による制御、供給タンク4とベッセル11の循環についても、工程(2)(c)と同様にして行うことができる。
(2)(e)では、再び、工程(2)(a)で調製した第1ろ過助剤を、ポンプP3にて供給タンク4に送り、撹拌機5にて均一になるまで撹拌した後、ポンプP1にてベッセル11に流し込む。圧力は、工程(2)(c)、(d)と同一とすることが好ましい。また、液のバルブB1による制御、供給タンク4とベッセル11の循環についても、工程(2)(c)と同様にして行うことができる。
次いで、(2)(f)では、ベッセル11からの吐出水の第2の微粒子計測部3による計測値が所定の微粒子個数、濃度、粒子径になるまで(2)(e)で流し込んだ液を、供給タンク4に循環する。プリコート層が正常に貼付けでき、破断や漏れがない状態であると微粒子濃度が最小となるので、所定の閾値になるまで循環することで、プリコート層が正常に形成されたことを確認することができる。所定の閾値は、プリコート層が崩壊したときの濁度や微粒子濃度の上昇を検知可能な範囲で決定することができる。
(2)(c)〜(f)の工程により、図2に示す第1プリコート層L、第2プリコート層L、第3プリコート層Lを形成することができる。第3プリコート層Lの形成後も、同一の圧力を保ってベッセル11へ水を流すことにより、三層がスプリングフィルタの表面に形成されたまま維持することが可能である。
プリコート層の形成が(2)(f)により完了した後、(2)(g)では、清水を循環させ、原水を通すまでプリコート層をスプリングフィルタの表面に維持する。
本実施形態では、図1、2を参照して、2種のろ過助剤を用いて、第1プリコート層L、第2プリコート層L、第3プリコート層Lからなる3層のプリコート層を形成する態様について説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。1種のろ過助剤を用いて、1層のプリコート層を形成する場合もあるし、2種のろ過助剤を用いて、4層以上のプリコート層を形成する場合もある。さらに、3種以上のろ過助剤を用いて、3層、または4層以上のプリコート層を形成する場合もある。プリコート層を4層以上にする場合には、スプリングフィルタ表面から離れたプリコート層ほど、ろ過助剤の代表粒子径を大きくすることが好ましい。
(3)原水処理工程
本工程は、工程(2)で形成され、維持されたプリコート層の上流側から原水とボディフィードろ過助剤を流し込み、原水のろ過処理を行う工程である。本工程は、以下のサブステップをさらに含む。
(a)原水に、工程(1)(b)で演算した量の第1ろ過助剤を懸濁し、ろ過部に送る工程
(b)ろ過流量、ろ過圧力、微粒子個数、濃度、粒子径から選択されるパラメータが所定の閾値に達した後、原水の送液を停止する工程
(3)(a)では、第1ろ過助剤タンク8において、清水と第1ろ過助剤を工程(1)(b)で演算した量となるように、ろ過助剤ポンプを用いて制御し、懸濁した第1ろ過助剤を、ポンプP3にて供給タンク4に送る。また、原水をポンプP2にて供給タンク4に送る。次いで、第1ろ過助剤を懸濁した清水と原水を、供給タンク4にて、撹拌機5にて均一になるまで撹拌した後、ポンプP1にてベッセル11に流し込む。ベッセル11への送液の際の圧力は、0.2〜1.0MPaとすることが好ましい。なお、(1)微粒子分離条件演算工程で原水を微粒子計測手段で測定するとき、および設定時間が経過し、ろ過が終了したとき、あるいは外乱によりプリコート層が崩壊し処理水の微粒子濃度や濁度が急増した場合には、バルブB6を切り替え、原水を供給タンク4に送ることなく、原水の貯留槽に返送することができる。
本工程においては、第1ろ過助剤をボディフィードろ過助剤として、原水に混合し、スプリングフィルタを備えるろ過部1に流し込む。これにより、図2に示すように、原水RWのろ過、すなわち、微粒子の分離が行われ、処理水TWがベッセル11から吐出される。なお、ボディフィードろ過助剤として、プリコート層の形成に用いたのとは、別のろ過助剤を用いる態様も可能である。
ベッセル11から吐出された処理水は、第2の微粒子計測部3にて微粒子個数、濃度、粒子径が計測される。所定の基準を満たしている処理水は、放出流路から装置外に放出される。所定の基準を満たしていない処理水は、供給タンク4に送られ、原水と混合されて、再度ろ過部1に送られ、微粒子の分離操作が行われる。
(3)(b)では、(3)(a)の工程を行いながら、流量計2で流量をモニタリングし、及び/または圧力計12でろ過圧力をモニタリングし、予め設定した閾値を超えたら、原水の送液を停止する。閾値は、微粒子の目詰まりによる圧力上昇を識別可能な値とすることができる。さらに、主として異常時の判断を目的として、第2の微粒子計測部3による計測値が所定の微粒子個数、濃度、粒子径になった場合にも、原水の送液を止めることができる。具体的には、振動、衝突など外部からの力によりプリコートが崩壊してろ過不能となったり、細菌の異常増加によりプリコートが微粒子を捕捉しきれず、微粒子が漏れだしたりしたときは、微粒子濃度や濁度が急変、急増する。第2の微粒子計測部3では、このような異常を検知することができる。
(4)洗浄工程
本工程は、工程(3)により、微粒子が捕捉され、あるいはゴミが集積したプリコート層L、L、L及びボディフィード層Lをスプリングフィルタ上から取り除く工程である。本工程は、以下のサブステップをさらに含む。
(a)洗浄水をろ過部に逆流させ、プリコート層及びボディフィード層を構成するろ過助剤をスプリングフィルタ上から剥離する工程
(b)剥離したろ過助剤を含む洗浄液を排出する工程
(4)(a)では、洗浄水CWをベッセル11の吐出口に送り、ベッセル11の下流領域Dから上流領域Uに、図2とは逆向きの水圧をかけることにより、プリコート層L、L、L及びボディフィード層Lをスプリングフィルタ上から剥離する。
(4)(b)では、バルブB3をドレインに切り替え、剥離したろ過助剤を含む洗浄水を排出する。排出されたろ過助剤は、ごみや捕捉対象の微粒子を含んでおり、焼却処理や、再利用に必要な処理を行うことができる。
工程(1)〜(4)により1サイクルの微粒子分離方法を実施することができる。1サイクルの微粒子分離方法を行った後は、続けて2サイクル目以降の方法を実施することもできる。
本発明の微粒子分離方法によれば、(1)微粒子分離条件演算工程による演算結果に基づいて、(2)プリコート層形成工程及び(3)処理工程における運転条件を決定することができる。具体的には、プリコート層を形成するろ過助剤の量、ボディフィードろ過助剤の供給量及び/または原水供給量を演算することができる。これにより、原水の性状によって異なる、適切なろ過の条件を得ることができ、過剰のろ過助剤を用いることなく、微粒子の分離が可能となる。
1 ろ過部、2 流量計、3 第2の微粒子計測部、4 供給タンク、5 撹拌機
6 レベル計、7 第1の微粒子計測部、
8 第1ろ過助剤タンク、9 第2ろ過助剤タンク
P1、P2、P3 ポンプ
B1、B2、B3、B4、B5、B6 バルブ
10 スプリングフィルタ、10a コイル、11 ベッセル、12 圧力計
13 仕切板
第1プリコート層、L 第2プリコート層、L 第3プリコート層
ボディフィード層
101 第1ろ過助剤、102 第2ろ過助剤、103 第3ろ過助剤
104 ボディフィードろ過助剤
20 制御部

Claims (5)

  1. ろ過助剤を含むプリコート層を表面に形成したスプリングフィルタに、前記プリコート層の上流から、ボディフィードろ過助剤を添加した原水を供給し、原水中の微粒子を除去する微粒子分離方法であって、
    原水中の微粒子濃度、微粒子個数、粒子径を測定する工程と、
    予め得られた微粒子濃度、微粒子個数、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係に基づいて、原水のろ過抵抗の発達係数を得る工程と、
    前記原水のろ過抵抗の発達係数に基づき、前記スプリングフィルタのろ過条件を制御する工程と
    を含む方法。
  2. 前記ろ過条件が、前記ボディフィードろ過助剤の供給量及び/または原水供給量である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記原水が、船舶のバラスト水、スクラバ水、または発電所の冷却水から選択される、請求項1または2に記載の方法。
  4. スプリングフィルタを備えるろ過部と、
    前記ろ過部に、微粒子を含む原水を供給する原水供給部と、
    前記原水の微粒子濃度、微粒子個数、粒子径を計測する微粒子計測部と、
    前記ろ過部に、ろ過助剤を供給するろ過助剤供給部と、
    微粒子濃度、微粒子個数、粒子径とろ過抵抗の発達係数との関係を蓄積したデータベースを備えた制御部であって、記微粒子計測部による計測結果に基づいて前記原水のろ過抵抗の発達係数を演算し、前記前記原水供給部及び/または前記ろ過助剤供給部を制御する制御部と
    を備える微粒子分離装置。
  5. 前記ろ過部から得られる処理水の微粒子濃度、微粒子個数、及び粒子径を計測する微粒子計測部をさらに含む、請求項4に記載の装置。
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