JP2021128914A - 高耐食性導電材料、固体高分子形燃料電池用セパレータ材料及びその製造方法 - Google Patents

高耐食性導電材料、固体高分子形燃料電池用セパレータ材料及びその製造方法 Download PDF

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沙代子 稲川
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Abstract

【課題】高耐食性と導電性を両立した材料、当該材料を用いる固体高分子形燃料電池用セパレータ材料ならびにそれら材料の製造方法を提供する。
【解決手段】基体上に、窒素原子の原子の数を1とした場合にクロム原子が0.70以上1.2以下の膜を形成し、該膜を650℃を超えて890℃以下で加熱処理することで、該基体上にクロム含有層を形成し、該クロム含有層は39%以上57%以下の窒化クロムを有し、該クロム含有層の金属クロムは27%未満である高耐食性導電材料とすることにより本発明の課題が達成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性を有する高耐食性材料に関し、特に固体高分子形燃料電池用セパレータに使用可能な導電性を有する高耐食性材料とその製造方法に関する。
安価でかつ加工しやすい材料、とりわけ金属材料で高耐食性を有するものが、化学製品、具体的には医薬品や農薬製造のプラントにて使用されているが、これらは酸やアルカリなどの腐食性環境下で使用される。そのため少なからず腐食が進行することから、加工が容易な高耐食性材料の開発が望まれている。腐食性環境の最も激しいもののひとつに固体高分子形燃料電池が挙げられる。これは、反応場とその周辺に電子、酸そして酸素と酸素還元体である過酸化水素が存在するところから、白金電極触媒も容易に腐食溶解する程である。このように、化学反応プラントや固体高分子形燃料電池用セパレータには、加工が容易な高耐食性導電材料の使用が必須である。
このような化学プラント用途に対して、ステンレス鋼が使用されているが、耐食性の高いニッケル、クロム及びモリブデンを含有するステンレス鋼は高価であり、大規模なプラントには不向きである。また、現状の家庭用の固体高分子形燃料電池用セパレータには、グラファイトなどのカーボン塊を切削・研磨などで加工したものやモールドカーボンを用いた材料が耐食性導電材料として実用化されている。これらは、安価で耐食性を持つ導電材料ではあるが、振動や衝撃によりひび割れや破壊を受けやすいという難点を有する。つまり、家庭用固体高分子形燃料電池のセパレータとして使用に問題はないものの、自動車用燃料電池のセパレータとしては実用に供するに至らない。さらに言及すると、現状の家庭用の固体高分子形燃料電池に使用される炭素系セパレータは容積が嵩張ることから、燃料電池の体積を小型化することが難しく、狭い場所に燃料電池を据え置くことが出来ずに、その実用において制約を受けている。
金属セパレータの使用は、加工性、電気導電性、小型化のいずれも満たすものであり、固体高分子形燃料電池用に期待されているが、唯一の大きな問題は腐食である。上述したように、固体高分子形燃料電池内は高腐食環境であり、金めっきした金属セパレータの金が腐食溶解したという報告もある。現状の自動車用燃料電池のセパレータ材料として、チタンないしチタン合金に表面処理したものが使用されることが有るようであるが、価格と加工性を考慮すると、安価な金属の使用が望まれる。ただし、高耐食の目的で絶縁性のセラミックスや高分子材料を使用ないし被覆することは、この場合において無意味であることは自明である。
以上の背景に鑑みると、安価で加工が容易かつ小型薄層化できる高耐食性金属材料の開発は、きわめて魅力的に映る。ここで、現存のステンレス鋼の固体高分子形燃料電池用セパレータ材料としての可能性を考える。このとき指標となる耐食性能の評価方法として、米国エネルギー省(US DOE)の指標(非特許文献1)が挙げられる。これに依れば、酸性水溶液中で電気化学的に電流電位曲線を計測し、固体高分子形燃料電池の作動電位において腐食電流が1マイクロアンペア毎平方センチメートル以下を要件に挙げている。なお、同非特許文献1によれば、導電率が100ジーメンス毎センチメートル以上であることを要求している。
非特許文献2は、ニッケルとクロムを含むステンレス鋼の電流電位曲線データが開示されており、これは前記の指標値に及ばないことが分かる。また、非特許文献3には、16〜24 mass%クロム含有ステンレス鋼の電流電位曲線データが開示されているが、この場合も同指標値を超えるものでないことが分かる。これらより、合金材料の開発よりも表面処理による開発方式が優位であることが強く示唆される。
特許文献1には、ステンレス鋼箔表面をマイクロパルスプラズマで窒化処理した遷移金属窒化物とそれを用いた燃料電池用セパレータが開示されている。特許文献2には、熱間鍛造と熱間圧延を経て作製した耐食性に優れる高濃度窒素を添加したオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献3には、プラズマ窒化処理した燃料電池セパレータ用オーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。特許文献4には、ステンレス鋼板の上に不動態皮膜とコーティング層を設けた積層材料が開示されている。
さらに、非特許文献4には、クロム含有ステンレス鋼を減圧窒素雰囲気下、1200℃で熱処理すると耐食性と導電性を備えた材料が得られることが開示されている。
さらに、非特許文献5には、CrNおよびCrNが、耐食性を有する導電材料であることが開示されている。
特開2006-257550号公報 特開2008-186601号公報 特開2010-3417号公報 特開2012-182142号公報
DOE Technical Targets for Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell Components Yang Yu, Sayoko Shironita, Kunio Nakatsuyama, Kenichi Souma, Minoru Umeda, Electrochemistry, 84, 709-713 (2016). Yang Yu, Sayoko Shironita, Kenichi Soma, Minoru Umeda, Heliyon, 4, e00958/1-13 (2018). Yang Yu, Sayoko Shironita, Takaaki Mizukami, Kunio Nakatsuyama, Kenichi Souma, Minoru Umeda, International Journal of Hydrogen Energy, 42, 6303-6309 (2017). 水野大輔、赤尾昇、原信義、杉本克久、材料と環境、48、589-596 (1999).
高価な材料を用いることなく、安価で高強度を持ち加工しやすい高耐食性導電材料は、さまざまな用途での使用が見込まれており、その端的な適用先が固体高分子形燃料電池用セパレータ材料である。上述した従来技術においては、高価な元素を用いたり高温処理に代表される高エネルギー使用したりする等コスト上昇につながる材料や製法が開示されている。特に、固体高分子形燃料電池の本格普及については、価格を低くすることが大きな課題として取り上げられている。セパレータ材料のコストに関しては、現状で燃料電池全体の21%を占めるとの試算もあり、その早急な解決が待ち望まれている。
一方で、高耐食高導電を発現するには大量処理プロセスでの実現は難しく、低価格と小型で薄層化でき強度と加工性を併せ持つ均質な高耐食性導電材料とその製造方法は、十分に満足行くものが実現されていないことから、かかる条件を満たす高耐食性導電材料とその製造方法が待ち望まれている。
本発明の第一の目的は、高耐食性導電材料を提供するものである。
本発明の第二の目的は、固体高分子形燃料電池用セパレータ材料を提供するものである。
本発明の別の目的は、高耐食性導電材料製造方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、固体高分子形燃料電池用セパレータ材料の製造方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の構成を具備することで前記の課題を解決することを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、例えば、以下の構成・特徴を備えるものである。
(態様1)
基体と、該基体上に形成されるクロム含有層とを有する高耐食性導電材料であって、該クロム含有層は39%以上57%以下の窒化クロムを有し、該クロム含有層の金属クロムは27%未満である高耐食性導電材料。
(態様2)
該クロム含有層の残部が酸化クロム及び不可避の不純物を含む態様1の高耐食性導電材料。
(態様3)
該窒化クロムは、CrN及びCrNを含む態様1または2の高耐食性導電材料。
(態様4)
該酸化クロムは、Cr及びCrOの少なくともいずれかを含む態様2または3の高耐食性導電材料。
(態様5)
該窒化クロムは、CrNを1とした場合にCrNが1より大きく2.9以下である態様3または4の高耐食性導電材料。
(態様6)
基体と、該基体上に形成されるクロム含有層とを有する高耐食性導電材料であって、該クロム含有層は39%以上57%以下の窒化クロムを有し、該クロム含有層の金属クロムは27%未満である固体高分子形燃料電池用セパレータ材料。
(態様7)
基体上に、窒素原子とクロム原子を、窒素原子の原子の数を1とした場合にクロム原子が0.70以上1.2以下の膜を形成するステップと、該膜を650℃を超えて890℃以下で加熱処理するステップを備える高耐食性導電材料の製造方法。
(態様8)
該膜を真空薄膜形成法により形成する態様7の高耐食性導電材料の製造方法。
(態様9)
基体上に、窒素原子とクロム原子を、窒素原子の原子の数を1とした場合にクロム原子が0.70以上1.2以下の膜を形成するステップと、該膜を650℃を超えて890℃以下で加熱処理するステップを備える固体高分子形燃料電池用セパレータ材料の製造方法。
本発明の高耐食性導電材料、固体高分子形燃料電池用セパレータ材料及びその製造方法によれば、酸やアルカリを使用する化学反応リアクターなどの過酷な環境下でも腐食することない高耐食性導電材料を製造でき、提供することができる。これは、燃料電池用セパレータ材料として、酸、電子、酸素と酸素由来の過酸化水素が共存する雰囲気においても、優れた耐食性と伝導性を示す材料をも製造でき、提供できる。
本発明の高耐食性導電材料を説明する断面斜視概念図である。 本発明の高耐食性導電材料を固体高分子形燃料電池用セパレータに使用する場合の概念図である。 図2の一部を取り出して示した部分図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。 本発明の実施例にかかる試験結果を示した図である。
まず、高耐食性導電材料及びその製造方法について、図を参照しながら説明する。以下の発明を実施するための形態は、本発明を詳しく説明するためのものであり、それらにより本発明が制約を受けるものではない。
(高耐食性導電材料)
図1は、本発明の高耐食性導電材料10の一つの形態を表す断面斜視概念図であり、基体11の上にクロム含有層15が設けられて高耐食性導電材料10が構成される。
(基体)
基体11の形状は、平板のほか、円筒形、球状を含む非平面などいずれの形状でもよい。基体11の形状が平板の時は基板と呼ぶこともある。固体高分子形燃料電池用セパレータに使用する場合は予めガス流路を形成するか、クロム含有層15を設けた後にガス流路を形成する必要がある。
基体11の材質は、電気導電体、半金属、半導体、絶縁体のいずれでも使用可能である。具体的な基体11の材質としては、全ての金属、半金属、半導体、絶縁体、乃至はそれらの合金、固溶体、混合物などが挙げられ用いられる。ただし、本発明の主旨に鑑みれば、金属、半金属、半導体またはそれらの合金は機械強度の特性面から好適である。また、基体11は、その上にクロム含有層15を設けるとき、またはその後に、クロム含有層15を600℃以上で加熱処理する工程が設けられるため、基体11は耐熱性が劣る紙やプラスチックなどの熱分解性材料は避ける方が好ましい。しかるに、基体11としては、機械強度を有して加工性に優れかつ資源量が豊富なアルミニウムや鉄乃至はそれらの合金が特に好適に用いられる。
(クロム含有層)
図1に示される本発明の高耐食性導電材料10は、基体11の片面にのみCrNおよびCrNを含むクロム含有層15が設けられているが、該層15を基体11の両面に設けることも有用かつ有効であるし、該層15を基体11の全面に設けても良い。
次に、CrNおよびCrNを含むクロム含有層15についてより詳細に説明する。クロム含有層15には窒化クロムが含まれていて、この窒化クロムが耐食性を発現させる。窒化クロムは、具体的には、CrNおよびCrNを含む。該層15は真空薄膜形成法で設けることができる。真空薄膜形成法は、減圧環境下で基体11上に外来物質を物理的に堆積させる手段であり、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法に代表される公知の方法が使用できる。ここで、スパッタリング法を例に取るなら、CrNおよび/またはCrNをスパッタターゲットとして用い、アルゴンガスなどのプラズマ形成雰囲気下にて、基体11上に目的とするクロム含有層15および/またはその前駆体を形成できる。別のスパッタリング法として反応性スパッタリングが挙げられる。これはCr、CrN、CrNのうち少なくともいずれか1つ又は複数をスパッタターゲットとして用い、窒素源としての反応物の分圧下でアルゴンガスなどのプラズマ形成雰囲気下でクロム含有層15および/またはその前駆体を形成するものである。ここで、窒素源としての反応物として、窒素ガスやアンモニアなどが挙げられ使用される。
真空薄膜形成法で作製された薄膜層は、窒化クロムを含むこともあるが、化学結合を含まないCrとNを内在するクロム含有層15の前駆体として得られる場合もある。薄膜形成時に基体11の温度を高温にすると直接窒化クロムを含むクロム含有層15を得ることも可能であるが、多くの真空薄膜形成装置、特に大量生産を指向する装置では可動部を有するため、基体11を400℃以上に加熱することが難しいため、化学結合を有さないCrとNを多く含む薄膜層が得られる。このように、該真空薄膜形成法で作製された薄膜層は窒化クロムを多くは含まず、化学結合を含まないCrとNを多く含む。本願発明者らは、該薄膜層に化学結合を含まないCrとNが存在することを見出し、それらをCrNおよびCrNの前駆体とみなし、CrNおよびCrNを含む窒化クロムをクロム含有層15に備えることで高耐食性発現に到達した。
真空薄膜形成法で作製された薄膜層には、クロム含有層15および前駆体に含まれるCrN、CrN、化学結合を含まないCr及びNを含み、内在する全てのN原子に対して好ましくはCr原子が0.7以上1.2以下、より好ましくは0.7以上1.1以下、さらに好ましくは0.73以上1.05以下の割合でN原子とCr原子が存在するように、該薄膜層を作製することで、加熱処理によって高耐食性を発現するクロム含有層15を得ることができる。
化学結合を含まないCrとNを含むクロム含有層15の前駆体膜を真空薄膜形成装置の中でもしくは外で加熱処理することにより、それらが化学結合したCrNおよび/またはCrNになり、CrNおよびCrNを含む窒化クロムがある組成範囲において高耐食性導電材料10となることを見出した。具体的には、窒化クロムは、クロム含有層15を構成する物質の物質量に対して窒化クロム組成が39%以上57%以下であることが耐食性発現に好ましい。より好ましくは41%以上52%以下であり、最も好ましくは42%以上50%以下の割合で窒化クロムがクロム含有層15に含まれると効果的に耐食性が発現する。
窒化クロム組成すなわちCrNおよびCrNの組成合計が上述適正値未満の場合、腐食電流密度が大きくなり、CrNおよびCrNの組成合計が上述適正値より大きい場合、導電率が低下する。
CrNおよびCrNの組成比も耐食性が発現する重要な因子であり、CrNの物質量を1とした場合にCrN(すなわちCrN/CrN)が1より大きく2.9以下となる比が好ましく、より好ましくは1.1以上2.3以下である。CrNおよびCrNの組成比が上述適正値未満のときは、導電率が低下し、CrNおよびCrNの組成比が上述適正値より大きいと、腐食電流密度が大きくなる。
クロム含有層15に含まれる金属クロムが少ないと耐食性発現に有利で、クロム含有層15を構成する物質の物質量に対して金属クロム組成は27%未満が好ましく、より好ましくは25%以下である。尚、クロム含有層15を構成する物質とはCr化合物全てと製造過程における不可避の不純物を指す。
クロム含有層15の窒化クロム以外の残部には酸化クロム及び製造過程において不可避の不純物が含まれる。酸化クロムは、具体的には、Cr及びCrOの少なくともいずれかを含み、Cr及びCrOの両者が含まれることもある。製造過程において不可避の不純物とは、例えば金属Cr、N、Oなどが上げられるが、制御できない不可避の不純物はどのような物質も入り込む可能性があることは言うまでもない。
尚、高耐食性導電材料における耐食性の発現には、クロム含有層の組成が重要であることは上述の通りであるが、腐食性環境下での使用に於いて腐食は表面から進行するので、耐食性の発現にはクロム含有層の表面組成が特に重要である。
クロム含有層15を加熱処理する場合において、非処理体である導電材料10の熱処理は、真空下でも、減圧下でも、常圧下でも、加圧下でも構わないし、雰囲気はアルゴン、ヘリウムに代表される不活性ガス、あるいは窒素、酸素、アンモニア、メタン、メタノールなどの反応性ガス雰囲気下でも可能である。加熱温度は650℃を超えて890℃以下が好ましく、より好ましくは660℃以上880℃以下であり、さらに好ましくは670℃以上850℃以下であり、この加熱処理することで高耐食性と導電材料を両立することを見出して本発明の完成に至った。なお、加熱時間は任意であり、目的とする反応を生じたところで加熱を停止すればよい。加熱方式は、電気発熱体、赤外線加熱、燃焼熱による加熱方式など、公知の方法が用いられる。
ここで、基体11とCrNおよびCrNを含むクロム含有層15の間に、中間層(図示せず)を設けることも有効である。この中間層は、基体11とクロム含有層15を接着する役割を持ち、温度変化や機械的ストレスに対しても高耐食性導電材料10を安定に使用することを可能にする。
(固体高分子形燃料電池用セパレータ材料)
次に、本発明の高耐食性導電材料が固体高分子形燃料電池用セパレータ材料として使用される場合について図2の概念図で説明する。
図2において、100と110はセパレータ、20は電解質、30はアノード、40はカソード、50はガス拡散層、60はエンドプレート、70と71は各々アノード反応性流体導入部とアノード反応性流体排出部を、また80と81は各々カソード反応性流体導入部とカソード反応性流体排出部を表す。
図2は、固体高分子形燃料電池の単セルが4個直列に接続されているスタックを図示しているが、これは固体高分子形燃料電池の一形態を示すものであり、この4セルの中心のひとつを抜き出して分かり易く図3に示す。
(セパレータ)
セパレータ100,110は、アノード反応性流体導入部70,カソード反応性流体導入部80から供給される反応物を、各々カソード側ガス拡散層50とアノード側ガス拡散層50を介してアノード30とカソード40に供給するためのものである。セパレータ100の両面には、反応性流体を流通させるための流路120が設けられており、一方はアノード反応性流体を、もう一方はカソード反応性流体を均質にガス拡散層50に供給する機能とともに、アノード30,カソード40で発生する反応生成物等をアノード反応性流体排出部71とカソード反応性流体排出部81を介して外部に排出する機能を有する。セパレータ100は、バイポーラ板と呼ばれることもある。また、図2に示すように、セパレータ110は、直列接続した固体高分子形燃料電池スタックの端部にのみ使用されるが、これは端部であるが故にアノード反応性流体またはカソード反応性流体だけを対象とするため、流路120が片面にだけ設けられた構造になっている。このようなセパレータ100,110の流路120の構造としては、例えば、サーペンタイン流路やストレート流路をはじめとする公知の流路が挙げられ用いられる。なお、固体高分子形燃料電池用のセパレータ100,110には、カソード40で生成する水をスタック外に排出せずにカソード40ないし電解質20に再供給するための微細孔を設けることもできる。さらに、固体高分子形燃料電池用のセパレータ100,110に冷却媒体を流通させる機構を設けて(図示せず)、スタックを冷却して電極反応による発熱を取り除き所定の温度を越えないようにすることもまた有用である。
セパレータ100,110は、単セルを直列に接続する役割が求められるため、これらは導電性を有する必要がある。さらに、セパレータ100,110は反応性流体と常に接触しているところから、耐食性が要求される。また、セパレータ100,110には、ガスバリア性は高いことが望まれる。ガスバリア性が高いと、カソード40及びアノード30に供給・排出される流体が混合することなく回収されるためである。
以上述べた性能を有するセパレータ100,110材料には、高耐食性導電材料10が好適に使用される。このときの高耐食性導電材料10としては、前記した基体11の全面にCrNおよびCrNを含むクロム含有層15が設けられていても良いが、基体11のうち反応性流体が接触する部位にだけクロム含有層15を設けても効果が得られる。
(電解質)
電解質20には、適切なイオン伝導性を持つことが求められる。具体的には、電解質を含んだ寒天やガラスフィルター、ポリオレフィン系樹脂の不織布や多孔性フィルムなどが挙げられ用いられる。しかしこの場合、電解液の混合を十分に防止することが難しく、また、隔膜の寿命が短いなどの問題点を有する。この問題を解決するため、電解質20としてイオン交換膜が好適に使用される。イオン交換膜はカチオン交換膜とアニオン交換膜とがあり、各々単独で用いることができるが、カソード反応物とアノード生成物が混入しないようなものを用いることが望まれる。具体的には、ナフィオン膜、ダウ膜、フレミオン膜、セレミオン膜、アシプレックス膜、ゴアセレクト膜(全て登録商標)などが有用である。また、電解質20のカソード側をこれらのイオン交換膜として、かつアノード側をイオン伝導機能を有する液体とすることも本発明の範疇に属するものである。カソード40とアノード30との間に効率的に電圧を印加できるよう電解質20の材質は電子電導性が少ないものが望ましい。
(カソード)
カソード40は、触媒材料により構成される。触媒材料としては、酸素の還元によって生じる水への親和性が高い材料を含有することが好ましい。このような触媒材料を用いることにより、カソード40における還元反応を効率的に進行させることができる。このような触媒は必要に応じて選択でき、例えば、白金、金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、銀、鉄、銅、コバルトからなる群より選ばれる、1種又は2種以上が挙げられる。この中でも、とりわけ白金を有効成分として含むものが好適に使用される。特に、2種以上よりなる場合は、合金あるいはコアシェル構造よりなる材料が好ましく用いられる。さらには、炭素材料、窒素を含む炭素材料などが使用できる。また、これらを微粒子の形態で使用する場合はカーボンや酸化チタンなどの粒子に代表される担体上に触媒材料を固定して使用する方法が有用であり好ましい。
カソード40には、触媒材料のほかに導電性を有する材料を含有させてもよい。導電性材料を含有させる場合は、還元固定化反応の効率が良くなるので好ましい。導電性を有する材料は特に限定されず、例えば白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、スズ、鉄、クロム、銅、ニッケル、コバルト、チタン、ジルコニウム、ステンレス、カーボン、スズドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウムからなる群より選択される少なくとも1種、又はこれらの混合物、もしくは金属同士であればこれらの合金ないし複合材を用いることができる。
またカソード40には、カチオンを輸送できる固体電解質を含有させることが好ましい。固体電解質を含有させることで、電気化学反応の反応点と考えられている電解質と電極との界面(三相界面)を増加させることができるためである。
カソード40の形状は特に限定されず、ワイヤー状、シート状、板状、棒状、及びメッシュ状等、通常のカソードに用いられる任意の形状を選択できる。これらの形状の中でも、二酸化炭素の還元反応が効率的に進む点で、表面積が大きい構造が好ましい。さらに、反応物である二酸化炭素がカソード40の全体に容易に浸透できるように、カソード40が空隙を有していることが好ましい。ここで言う空隙とは、電気化学でいうところの三相界面において反応物が効果的に反応場に供給される流通路のことを意味する。また、電解質20と反応物の授受を効率的に行うために、電解質20とカソード40の接合面積が大きい構造であることが好ましい。このような構造として、カソード40の形状はシート状の形状が好ましい。
(アノード)
アノード30は、触媒材料により構成される。触媒材料としては、特に限定されない。しかしながら、アノード反応として選択した反応に対して活性が高い材料を選択すれば、反応効率を高めることができるため好ましい。アノード反応として、水素やメタノールなどの酸化を反応として選択した場合を例にとれば、触媒材料としては、白金、金、パラジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、ロジウム、ニッケル、銀、鉄、銅、コバルトからなる群より選ばれる、少なくとも1種が好適に用いられる。上記の触媒材料は単結晶、多結晶ないし非晶質のいずれを用いてもよい。
アノード30には、カソード40と同様に、触媒材料のほかに導電性を有する材料を含有させてもよい。この場合にも還元固定化反応の効率を向上させる効果が得られる。導電性を有する材料としてはカソード40と同様のものを用いることができる。またアノード30に、イオンを輸送できる固体電解質を含有させてもよい。このような固体電解質を含有させる場合は、電気化学反応の反応点と考えられている電解質と電極との界面(三相界面)を増加させることができるため好ましい。
アノード30の形状は特に限定されず、カソード40と同様の構成を採用することができる。シート状とすることが特に好ましい。また、反応物の酸化反応を効率的に進める点で、表面積が大きい構造であることが好ましく、白金黒などの微粒子状の触媒材料を用いた構成とすることが好ましい。さらに、アノード30が、触媒材料と、上記導電性材料及び上記固体電解質の少なくとも1種を含む材料とで構成される場合の粒子径、導電性材料の含有量、固体電解質の含有量についても、カソード40と同様の構成を採用することができる。
(ガス拡散層)
ガス拡散層50は、導電性を有しており、かつ、アノード30及びカソード40のそれぞれに対して反応性流体を供給できるものであれば、特に限定されない。反応効率を高めるため、アノード反応性流体導入部70から供給される反応物を、ガス拡散層50を通じてアノード30均一に拡散させることができ、また未反応物と反応生成物をガス拡散層50介してアノード反応性流体排出部71に導く機能が求められる。カソード側にも同様に、カソード反応性流体導入部80から供給される反応物を、ガス拡散層50を通じてカソード40均一に拡散させることができ、また未反応物と反応生成物をガス拡散層50介してカソード反応性流体排出部81に導く機能が求められる。このようなものとしては例えば、カーボンペーパーやステンレスメッシュ等に代表される公知の材料を用いることができる。
ガス拡散層50は、アノード30及びカソード40と別体でもよく、一体に形成してもよい。一体に形成する場合には、例えばアノード30及びカソード40の構成材料を、それぞれガス拡散層50上に設けることで一体化することができる。
(エンドプレート)
図2に示されるエンドプレート60は、直列接続した固体高分子形燃料電池をスタックするための部材であり、両端から直列接続した固体高分子形燃料を締め付けるだけの機械強度を有するものなら全ての材料が使用できる。エンドプレート60は導電性が有ってもなくても良く、また耐食性も有ってもなくても良い。エンドプレート60の両端から、複数個の固体高分子形燃料を締め付けるには、エンドプレート60に設けた孔(図示せず)を用いてボルトとナットで締め付けるなどすればよい。
(セルスタック)
図2に示される固体高分子形燃料電池スタックを締め付ける際には、系全体を密閉した構成とすることが好ましい。具体的には、図2には図示しないが、アノード反応性流体導入部70、カソード反応性流体導入部80、アノード反応性流体排出部71、カソード反応性流体排出部81の開口端とセパレータ100,110の開口端とを、接着機能を有する絶縁材を間に介して突き合わせ、密着させるのが好ましい。
絶縁材としては、セパレータ100,110の間を絶縁させることができるものであれば特に限定されない。絶縁材として接着機能を有するものを用いた場合、還元固定化システムを容易に密閉することが可能になる。このような接着機能を有するものとしては例えばテフロン(登録商標)製のシール等が挙げられる。なお、絶縁材が接着機能を含有しない場合には、別途接着剤を用いて、アノード反応性流体導入部70、カソード反応性流体導入部80、アノード反応性流体排出部71、カソード反応性流体排出部81の開口端同士を接着させればよい。この場合の接着剤としても、系外へのイオンや電子の漏洩を防止するために絶縁性のものを用いることが好ましい。
(カソード反応性流体導入部)
カソード40に対し反応物を導入するカソード反応性流体導入部80は、カソード40に対して主に酸素を供給するものであり、酸素を有効成分として含む空気などのカソード反応物としての流体と、その流量を制御するガス流量制御手段からなる。なお、カソード反応物としての流体は加湿されて用いられることもある。
酸素を有効成分として含む空気などのカソード反応物としての流体は、必要に応じて水蒸気を含ませてもよい。水蒸気を含ませる例として、水蒸気を流体(酸素を含む流体)に含有させるためのバブリング機構と、水蒸気を含有させた流体を送出するガス搬送機構を備えた構成とすることができる。水蒸気を含ませる必要がある場合とは、電解質20を湿潤状態に保持しなければならない場合である。
電解質20を湿潤状態に保持しなければならない場合とは、電解質20の含水量が、膜のイオン導電率やガス浸透速度、電解質20を固体状態で使用したときの膜強度等に、影響する場合である。
カソード40に供給するガスの流量は特に限定されない。しかしながら、還元によって消費される二酸化炭素を速やかに供給できる、すなわち必要とされる酸素含有量(濃度)を供給できる流量以上であることが好ましい。
(アノード反応性流体導入部)
アノード30に反応物を供給するアノード反応性流体導入部70は、アノード30に対してアノード反応物を供給する手段である。アノード反応物は酸化反応を生じかつ反応生成物をアノード30より容易に取り除けるものであることが望まれる。さらにその反応は、アノード構成要素を破壊ないし溶解しないことが好ましい。この要件を満たすアノード反応物としては、水素およびメタノールなどが好適に使用される。水素酸化反応は、水素イオンを生成するが、これは電解質20を介してカソード反応に消費される。メタノールの酸化反応は、二酸化炭素ガスと水素イオンを生成するが、二酸化炭素ガスはアノード流体排出部71より外部に排出され、水素イオンは前述の通りに消費される。
アノード反応物が気体である場合、必要に応じて上述した理由と方法によりカソード反応物の場合と同様に加湿することができる。
アノード反応性流体導入部70から導出される反応物が気体の場合はマスフロー制御装置やガス流量計をはじめとする既知の装置を使用できるし、該反応物が液体の場合は送液ポンプや液体流量計をはじめとする既知の装置を使用できる。この使用により、アノード反応物は任意の流速でアノード30に供給される。
(固体高分子形燃料電池スタック)
図2の固体高分子形燃料電池には、温度を制御する温度制御機構を設けてもよい。このような温度制御機構としては、カソード40及びアノード30の反応場を−30℃以上120℃以下の範囲に温度制御できるものであれば特に限定されず、従来公知の加熱冷却装置を用いることができる。上記の温度範囲は、固体高分子形燃料電池セルにおいて典型的に用いられる電解質20がイオン導電性を有する温度範囲であり、電解質20の種類に応じて制御範囲を適宜変更することが好ましい。アノード反応およびカソード反応は、0℃以上100℃以下で実施させるのが好ましく、10℃以上かつ90℃以下で実施させるのがより好ましい。
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、実施例は本発明を詳しく説明することが目的であり、本発明はこれらの実施例によって何らの制約も受けないことは断るまでもない。
[実施例1〜2、比較例1〜4]
(基板の前処理)
フェライト系Niフリーステンレス鋼SUS430を3 cm ×3 cm にカットし、基板表面の研磨を行ったものを実施例-1〜2及び比較例-1〜4の基板(基体)として使用した。研磨にはメイワフォーシス株式会社製LE CUBE/小型マニュアル研磨装置を使用し、次の手順で行なった。まず、P320のサンドペーパーでサンプル表面を0.01 g研磨し、次にP1000のサンドペーパーで研磨P320の傷がなくなるまで研磨を行った。最後にP2400のサンドペーパーでP1000の傷がなくなるまで研磨した。研磨後、基板をアセトンと蒸留水で5分ずつ超音波洗浄した。
(スパッタリング)
薄膜層の作製に使用したスパッタリング装置は株式会社アルバック製CS-200 である。ターゲットには純度99.9%のCrを使用した。まず、基板をスパッタ室に搬入し、スパッタ室内の圧力が5.0×10-4 Pa になるまで真空引きを行った。その後、Arを115 mL/min 流し、基板表面にArプラズマを衝突させて基板表面のクリーニングを行った。次に、基板とCrN膜の間に中間層としてCr層を作製するためにAr流量を60 mL/min に設定してCrスパッタを行い、基板上に厚さ約0.25マイクロメートルのCr層を作製した。その後、チャンバー内にAr流量6 mL/min、N流量30 mL/min に設定して反応性スパッタリングを行い、Cr層の上に厚さ約0.70マイクロメートルのCrN膜を作製した。この得られたC−N膜をグロー放電発光分析装置にて、表面から0.15 マイクロメートルの深さを分析したところCr/Nの比は原子比で0.73であった。
(加熱処理)
実施例-1〜2及び比較例-1〜4の各サンプルの作製条件は表1にまとめて示す。比較例-1は加熱処理を施していないサンプルである。反応性スパッタリングをして作製した実施例-1〜2及び比較例-2〜4の各サンプルに窒素雰囲気下での加熱処理を行った。加熱処理に用いた電気炉は株式会社アドバンス理工製赤外線加熱装置QHC-P610である。加熱処理は次に示す手順で行った。まず、真空ポンプを用いて電気炉内を1.5×100 Paまで減圧し、その後、Nガスを1 dm3/minの流量で導入し、内圧を8.1×103 Paに調整した。その後、温度600/650/700/800/900℃に設定して1時間の加熱処理を行った。1時間経過後、窒素ガスを流したまま電気炉内が150℃になるまで自然冷却してからサンプルを取り出した。600℃で加熱処理したサンプルを比較例-2、650℃で加熱処理したサンプルを比較例-3、700℃で加熱処理したサンプルを実施例-1、800℃で加熱処理したサンプルを実施例-2、900℃で加熱処理したサンプルを比較例-4とした。
Figure 2021128914
(電流−電位曲線)
作製した各サンプルの耐食性を電流-電位曲線により評価した。測定には3電極式電気化学セルを用い、電解液に0.5 mol/dm3 H2SO4 水溶液、作用極に作製したサンプル、参照極にAg/Ag2SO4(0.705 V vs. SHE)、対極に白金コイルを使用した。測定の前にArガスバブリングを30分間行った。測定は日本工業規格(JIS G 0579:2007)に準拠して、まず電位を-0.47 V vs. SHE に設定して1分間カソード処理を行い、自然電位で5分間放置した。その後、自然電位から+1.1 V vs. SHE まで0.33 mVs-1 の速度で掃引した。比較例-1の結果を図4の150、比較例-2の結果を図4の151、比較例-3の結果を図4の152、実施例-1の結果を図4の153、実施例-2の結果を図4の154、比較例-4の結果を図4の155に示す。比較例-2、比較例-3、実施例-1、実施例-2は小さい電流密度を示しており、中でも実施例-1と実施例-2はUS DOE目標値の一桁低い電流密度を示している。一方で、比較例-1、比較例-4は大きい電流密度を示しUS DOE目標値を満たさない結果になった。また、加熱処理温度は800℃までは温度が高くなるにつれ、耐食性が高くなるが、900℃を超えると耐食性が低くなる傾向がみられる。表2に図4に示す実施例-1〜2、比較例1〜4の電流−電位曲線の0.8 V vs. SHE の電流密度を記述した。
(X線光電子分光分析)
各サンプルのスパッタ層表面の結合状態を分析するため、X線光電子分光分析を行った。測定にはX線光電子分光装置(JPS-9010TR, JEOL)を用いた。そのCr2pピークの結果を図5〜図10に示す。Cr2pピークは文献値に沿って波形分離を行った。この波形分離によって得られたピークの面積比は物質量の比を表している。図5〜図10中の200は測定したピークの実測値、点線201は各波形の合計値、210は金属Cr、220はCrN、230はCrN、240はCr、250はCrOを示している。図5に示す比較例-1は金属Crのピークである574.1 eV、CrNのピークである575.6 eV、CrNのピークである574.8 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eV の5つのピークに帰属できる。図6に示す比較例-2、図7に示す比較例-3、図8に示す実施例-1、図9に示す実施例-2はCrNのピークである575.6 eV、CrNのピークである574.8 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eVの4つのピークに帰属でき、金属Crのピークの消失がみられる。また、図10に示す比較例-4は金属Crのピークである574.1 eV、CrNのピークである575.6 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eVの4つのピークに帰属できる。窒素雰囲気下でのCrスパッタリングにより基板上にCrNおよびCrNからなる薄膜層を作製できたことがわかる。しかし、図5からわかるように、反応性スパッタリングのみではスパッタ薄膜層内に一部金属Crが存在していることが分かる。一方で、図6から図9に示す比較例-2、比較例-3、実施例-1、実施例-2は金属Crが存在していない。また、加熱処理したすべてのサンプルは加熱処理をしていない比較例-1と比較してCrNが増加している。この結果から、温度600/650/700/800℃での加熱処理により、スパッタ膜内に存在していたCrとNが化学結合を形成することでCrNを形成し、金属Crのピークが消失したと考えられる。また、900℃で加熱処理した比較例-4は加熱処理したサンプルの中で唯一表面に金属Crが存在している。表3に実施例-1〜2、比較例1〜4のCrN面積比、CrN面積比、CrN+CrN面積比、CrN/CrN、Cr面積比、CrO面積比、Cr面積比を示す。比較例-4のCrN/CrNの値は無限大なので2.9倍以下には該当しない。
(表面抵抗測定)
作製した各サンプルの表面抵抗測定を行った。評価方法として、表面抵抗測定装置であるMitsubisi Chemical Loresta HP (MCP-T410) electrometer を用いて、四端子四探針法により評価した。その結果を表2に示す。また、従来のPEFCセパレータ材料であるグラファイトカーボンを比較例-5とする。比較例-1、比較例-3、実施例-1、実施例-2、比較例-4はDOE目標値である導電率100 S/cm以上を達成している。しかし、比較例-2はDOE目標値を達成していない。
Figure 2021128914
Figure 2021128914
[実施例-3〜4、比較例-6〜7]
(基板の前処理)
実施例-3〜4及び比較例-6〜7に使用した基板の前処理は、実施例-1〜2及び比較例-1〜4の基板と同じ処理をした。
(スパッタリング)
実施例-3〜4及び比較例-6〜7の各サンプルは、実施例-1〜2及び比較例-1〜4と同じ処理により基板上に厚さ約0.25マイクロメートルのCr層を作製した。その後、チャンバー内にAr流量10 mL/min、N流量50 mL/min に設定して反応性スパッタリングを行い(表4)、Cr層の上に厚さ約0.70マイクロメートル のCrN膜を作製した(比較例-6および実施例-3)。この得られたC−N膜をグロー放電発光分析装置にて、表面から0.15マイクロメートルの深さを分析したところCr/Nの比は原子比で0.81であった。また、ArとNの流量をそれぞれ6mL/minと48mL/minに設定して反応性スパッタリングを行ったものを比較例-7と実施例-4とした。このとき得られたC−N膜をグロー放電発光分析装置にて、表面から0.15マイクロメートルの深さを分析したところCr/Nの比は原子比で1.05であった。
(加熱処理)
加熱処理を施していないサンプルが比較例-6と比較例-7である。実施例-3及び実施例-4の加熱処理は、電気炉内圧を8.1×103 Paに調整した後、温度設定が700℃であること以外は、実施例-1〜2及び比較例-2〜4と同じ処理をした(表4)。
Figure 2021128914
(電流−電位曲線)
実施例-3〜4及び比較例-6〜7の各サンプルの耐食性は、実施例-1〜2及び比較例-1〜4と同じ測定により得られた電流-電位曲線により評価した。その結果を表5に示す。
(X線光電子分光分析)
実施例-3〜4及び比較例-6〜7の各サンプルのスパッタ層表面の結合状態は、実施例-1〜2及び比較例-1〜4と同じX線光電子分光分析により分析した。Cr2pピークを分離して算出した面積比を表6にまとめて示す。比較例-6と比較例-7は金属Crのピークである574.1 eV、CrNのピークである575.6 eV、CrNのピークである574.8 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eVの5つのピークに帰属できた。実施例-3と実施例-4はCrNのピークである575.6 eV、CrNのピークである574.8 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eV の4つのピークに帰属でき、金属Crのピークの消失がみられる。反応性スパッタリングにより基板上にCrNおよびCrNからなる膜を作製できたことがわかる。しかし、反応性スパッタリングのみではスパッタ膜内に一部金属Crが存在していることが分かる。一方で、加熱処理をした実施例-3と実施例-4は金属Crが存在していない。また、加熱処理していない比較例-6と比較例-7は加熱処理をした実施例-3と実施例-4と比較してCrNが増加している。この結果から、温度700℃での加熱処理により、スパッタ膜内に存在していたCrとNが化学結合を形成することでCrNを形成し、金属Crのピークが消失したと考えられる。
(表面抵抗測定)
実施例-3〜4及び比較例-5〜7の各サンプルに対し実施例-1〜2及び比較例-1〜4と同じ表面抵抗測定を行った。その結果を表5に示す。また、従来のPEFCセパレータ材料であるグラファイトカーボンを比較例-5とする。実施例-3、実施例4、比較例-5、比較例-6、比較例-7は全部DOE目標値である導電率の目標値100 S/cm以上を達成している。
Figure 2021128914
Figure 2021128914
[実施例-5、比較例-8〜10]
(基板の前処理)
実施例-5及び比較例-8〜10に使用した基板の前処理は、実施例-1〜4、比較例-1〜4及び比較例-6〜7の基板と同じ処理をした。
(スパッタリング)
実施例-5及び比較例-8〜10は、実施例-1〜2及び比較例-1〜4と同じ処理により同じ厚さのCr層の上に同じ厚さのCrN膜を作製した。この得られたC−N膜をグロー放電発光分析装置にて、表面から0.15 マイクロメートルの深さを分析したところCr/Nの比は原子比で0.73であった。
(加熱処理)
実施例-5及び比較例-8〜10の加熱処理は、加熱処理時の電気炉内圧以外は、実施例-1及び実施例-2と同じ処理をした。比較例-8及び実施例-5は、Nガスを導入し、内圧を8.1×102 Paに調整した後、700及び800℃に設定して加熱処理を行った。比較例-9及び比較例-10は、窒素を流さず7.9×10-1 Paの内圧で700及び800℃に設定して真空加熱処理した。すなわち、700℃で加熱処理したサンプルを比較例-8、800℃で加熱処理したサンプルを実施例-5、700℃で真空加熱処理したサンプルを比較例-9、800℃で真空加熱処理したサンプルを比較例-10とし、これらの条件を表7にまとめた。
Figure 2021128914
(電流−電位曲線)
実施例-5及び比較例-8〜10の各サンプルの耐食性は、実施例-1〜4、比較例-1〜4及び比較例-6〜7と同じ測定により得られた電流-電位曲線により評価した。その結果を表8に示す。
(X線光電子分光分析)
実施例-5及び比較例-8〜10の各サンプルのスパッタ層表面の結合状態は、実施例-1〜4、比較例-1〜4及び比較例-6〜7と同じX線光電子分光分析により分析した。実施例-5、比較例-8、比較例-9サンプルは、CrNのピークである575.6 eV、CrNのピークである574.8 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eVの4つのピークに帰属できる。また、比較例-10サンプルはCrNのピークである575.6 eV、Crのピークである576.6 eV、CrOのピークである578.5 eVの3つのピークに帰属できる。表9にはピーク分離によって算出した各化合物の面積比を示す。
(表面抵抗測定)
実施例-5及び比較例-8〜10の各サンプルに対し実施例-1〜4及び比較例-1〜7と同じの表面抵抗測定を行った。その結果を表8に示す。実施例-5はDOE目標値である導電率の目標値100 S/cm以上を達成している。しかし、比較例-8、比較例-9、比較例-10はDOE目標値を達成していない。
Figure 2021128914
Figure 2021128914
高耐食性と導電性を併せ持つ高耐食性導電材料は、腐食環境にある化学反応装置や固体高分子形燃料電池のセパレータ乃至バイポーラ板に使用され安定に機械強度を発現して該化学反応装置を有するプラントの維持管理を最小限に抑えたり、固体高分子形燃料電池を安定的に作動させることが可能となる。
10.高耐食性導電材料
11.高耐食性導電材料の基体
15.クロム含有層
10’.高耐食性導電材料
20.電解質
30.アノード
40.カソード
50.ガス拡散層
60.エンドプレート
70.アノード反応性流体導入部
71.アノード反応性流体排出部
80.カソード反応性流体導入部
81.カソード反応性流体排出部
100.セパレータ
110.セパレータ
120.流路


Claims (9)

  1. 基体と、
    前記基体上に形成されるクロム含有層とを有する高耐食性導電材料であって、
    前記クロム含有層は39%以上57%以下の窒化クロムを有し、
    前記クロム含有層の金属クロムは27%未満
    であることを特徴とする高耐食性導電材料。
  2. 前記クロム含有層の残部が酸化クロム及び不可避の不純物
    とを含む請求項1に記載の高耐食性導電材料。
  3. 前記窒化クロムは、CrN及びCrNを含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の高耐食性導電材料。
  4. 前記酸化クロムは、Cr及びCrOの少なくともいずれかを含む
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の高耐食性導電材料。
  5. 前記窒化クロムは、CrNを1とした場合にCrNが1より大きく2.9以下である
    ことを特徴とする請求項3または4に記載の高耐食性導電材料。
  6. 基体と、
    前記基体上に形成されるクロム含有層とを有する高耐食性導電材料であって、
    前記クロム含有層は39%以上57%以下の窒化クロムを有し、
    前記クロム含有層の金属クロムは27%未満
    であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用セパレータ材料。
  7. 基体上に、窒素原子とクロム原子を、窒素原子の原子の数を1とした場合にクロム原子が0.70以上1.2以下の膜を形成するステップと、
    前記膜を650℃を超えて890℃以下で加熱処理するステップ
    を備える高耐食性導電材料の製造方法。
  8. 前記膜を真空薄膜形成法により形成する
    ことを特徴とする請求項7に記載の高耐食性導電材料の製造方法。
  9. 基体上に、窒素原子とクロム原子を、窒素原子の原子の数を1とした場合にクロム原子が0.70以上1.2以下の膜を形成するステップと、
    前記膜を650℃を超えて890℃以下で加熱処理するステップ
    を備える固体高分子形燃料電池用セパレータ材料の製造方法。


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