JP2021127343A - アンヒドロ糖アルコールの製造方法 - Google Patents

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秀人 辻
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Abstract

【課題】アンヒドロ糖アルコールの収率を高めるための技術、及び連続的な反応の遂行形態および効率的なアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供する。【解決手段】有機溶媒を含む有機溶媒相及び触媒を含む触媒相から形成される二相系内において糖アルコールの脱水反応を行うステップ、及び/又は糖アルコールの脱水反応により得られる反応物から、有機溶媒を用いてアンヒドロ糖アルコールを抽出するステップを含む、アンヒドロ糖アルコールの製造方法であって、該有機溶媒として炭素数が6以上であり、沸点が93℃以上の環状エーテルを用いることを特徴とする、アンヒドロ糖アルコールの製造方法。該脱水反応ステップにおける反応温度は93℃以上であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、アンヒドロ糖アルコールの製造方法に関し、特に高収率かつ効率的にアンヒドロ糖アルコールを製造する方法に関する。
本発明において、「アンヒドロ糖アルコール」とは「モノアンヒドロ糖アルコール」と「ジアンヒドロ糖アルコール」の総称である。
従来、マンニトール、イディトール、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトール等の糖アルコールを脱水環化することにより、アンヒドロ糖アルコールが得られることが知られている。得られるアンヒドロ糖アルコールは、化学品合成の原料や中間体として使用することができる。特に、ソルビトールから2分子の水を脱水、環化して得られるイソソルビドや、エリスリトール(エリトリトール)から1分子の水を脱水、環化して得られるエリスリタンは工業的に有用であり、医薬品・農薬品の原料、合成中間体、電池・コンデンサー用電解液、インキ・接着剤用の溶剤、界面活性剤、プラスチック及びポリマー等の製造原料として用いることができる。例えば、イソソルビドは、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリカーボネートジオール及びポリエステル等の製造に用いられる原料モノマーとして有用である。また、イソソルビドの原料であるソルビトールやエリスリタンの原料であるエリスリトールは、様々な天然資源から誘導することができる。このため、イソソルビドやエリスリタンは、ポリマー製造における再生可能な原料と考えることができる。
糖アルコールの脱水によりアンヒドロ糖アルコールを得る反応は、原料や生成物の性質のために、一般には液相で実行される。また、一般的には触媒が必要であり、分離や再使用が可能な有機や無機の固体酸触媒を脱水反応に用いる例が報告されている。例えば、特許文献1には、スルホン化ポリスチレン等のカチオン性イオン交換樹脂及びこれらの混合物を、触媒として用いることが開示されている。また、非特許文献1〜3には、硫酸根をドープした金属酸化物やイソポリ酸の一種であるニオブ酸などの無機の固体酸を、触媒として用いることが開示されている。さらに、特許文献2,3には、酸性ゼオライトを触媒として用いることが開示されている。
脱水反応は平衡反応であるため、効率的に脱水反応を進行させるために、生成する水を反応器外に除去する方法が有効であることが報告されている。加えて、生成物がイソソルビドの場合には生成物を水とともに反応器外に抜く方法も提案されている。例えば特許文献2に開示された方法では、反応温度下で真空条件により水、又は、水とイソソルビドとを留出させて反応系から除去している。また、特許文献3に開示された方法では、反応温度下でガスを流通させることにより水、又は水とイソソルビドとを蒸発させて反応系から除去している。一方で、脱水の進行とともに反応液が粘調になることを回避するために、溶媒を使用する方法(特許文献4)や、オートクレーブなどを用いて生成した水が反応器外に出ないようにする方法(特許文献5)も開示されている。
特許文献4には、溶媒としてキシレンを用いてソルビトールの脱水反応を行い、生成したイソソルバイドをキシレンで抽出し、その後抽出溶媒とイソソルバイドとを分離した後抽出溶媒を反応器に戻す方法が提案されている。
また、特許文献6には、溶媒として環状エーテル、具体的にはTHP(テトラヒドロピラン(C10O)、沸点:88℃)等を用いてソルビトールの脱水反応を行うことで、イソソルバイドの抽出効率を向上させ、イソソルバイドの重合などの副反応を回避する方法が開示されている。
米国特許第6849748号明細書 米国特許出願公開第2004/0152907号明細書 特表2004−501117号公報 特表2002−524455号公報 国際公開第2007/103586号 特開2017−141171号公報
Appl.Catal.A,452,34−38(2013) Catal.Commun.12(6)544−547(2011) Bull.Korean Chem.Soc.31(12)3679−3683(2010)
しかしながら、上記従来のいずれの方法によっても、高い効率でアンヒドロ糖アルコールを得ることは困難であった。
特に、有機溶媒を用いる方法では、触媒や原料との相分離を達成することは可能となったものの、反応温度を支配する溶媒の沸点と生成物の抽出効率、および水との相溶性、酸触媒に対する安定性の全てにおいて満足する有機溶媒は提案されていなかった。
例えば、用いる有機溶媒の沸点が低ければ、吸熱反応である脱水反応の実施において、高い反応温度で実施することが困難になり、反応の進行が抑えられる。また、有機溶媒による生成物の抽出効率が低ければ、大量の溶媒が必要になるなどのデメリットが生じる。また、水と混和する溶媒の場合は、脱水反応で生成する水の分離において、さらにエネルギーが必要となる。これらは、来る時代の化学品製造においては、非効率とみなされる要因となる。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンヒドロ糖アルコールの収率を高めるための技術、及び連続的な反応の遂行形態および効率的なアンヒドロ糖アルコールの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、触媒の存在下で糖アルコールを分子内脱水させてアンヒドロ糖アルコールを製造する方法のうち、有機溶媒を用いる方法について鋭意検討を重ねた結果、有機溶媒として特定の環状エーテルを用い、この環状エーテルと触媒の存在下に糖アルコールの脱水反応を行うと、見掛けの反応速度が高まると同時に生成物が選択的に環状エーテルに移行し、反応終了後の触媒と生成物の分離が容易になり、アンヒドロ糖アルコールを高効率に製造できることを見出した。また、連続的に原料を反応器に供給して生成物を反応器から抜き出すことも可能であり、高効率で高品質のアンヒドロ糖アルコールを製造することができることを見出した。
即ち、本発明は以下の[1]〜[6]を要旨とする。
[1] 有機溶媒を含む有機溶媒相及び触媒を含む触媒相から形成される二相系内において糖アルコールの脱水反応を行うステップ、及び/又は、糖アルコールの脱水反応により得られた触媒を含む反応混合物から、有機溶媒を用いてモノアンヒドロ糖アルコール及び/又はジアンヒドロ糖アルコール(以下、これらを「アンヒドロ糖アルコール」という。)を抽出するステップを含む、アンヒドロ糖アルコールの製造方法であって、
該有機溶媒として炭素数が6以上であり、沸点が93℃以上の環状エーテルを用いることを特徴とする、アンヒドロ糖アルコールの製造方法。
[2] 前記脱水反応ステップにおける反応温度が前記環状エーテルと水との共沸点以上である、[1]に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
[3] 前記脱水反応ステップにおける反応温度が93℃以上である、[2]に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
[4] 前記脱水反応ステップにおける反応温度が前記環状エーテルの沸点以下である、[3]に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
[5] 前記環状エーテルがメチルテトラヒドロピランである、[1]〜[4]のいずれかに記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
[6] 前記触媒がヘテロポリ酸を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
本発明によれば、アンヒドロ糖アルコールを高収率で製造するための技術を提供できる。即ち、本発明で用いる環状エーテル溶媒は、沸点が93℃以上と、従来の有機溶媒に比べて高いため、より高い反応温度で脱水反応を行うことが可能となり、返応の進行を促進し、反応速度を向上させることができる。
また、炭素数6以上の環状エーテルであることにより、生成物であるアンヒドロ糖アルコールの抽出効率も高く、大量の溶媒を用いることなく、効率的に有機溶媒相に生成物を選択的に抽出して回収することができ、触媒相との分離も容易に行うことができる。
このように、反応終了後の触媒と生成物の分離が容易となることから、高純度のアンヒドロ糖アルコールを高収率で容易に得ることができる。
また、連続的に原料を反応器に供給して生成物を反応器から抜き出すことが可能となり、優れた操作性のもとに高効率で高品質のアンヒドロ糖アルコールを製造することができる。
以下、本発明につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明のアンヒドロ糖アルコールの製造方法は、有機溶媒を含む有機溶媒相及び触媒を含む触媒相から形成される二相系内において糖アルコールの脱水反応を行うステップ(脱水反応ステップ)、及び/又は、糖アルコールの脱水反応により得られた触媒を含む反応混合物から、有機溶媒を用いてモノアンヒドロ糖アルコール及び/又はジアンヒドロ糖アルコール(以下、これらを「アンヒドロ糖アルコール」という。)を抽出するステップ(抽出ステップ)を含む、アンヒドロ糖アルコールの製造方法であって、該有機溶媒として炭素数が6以上であり、沸点が93℃以上の環状エーテルを用いることを特徴とする。
前記脱水反応のステップにおける反応温度は、用いた環状エーテルと水との共沸点以上であることが好ましく、93℃以上であることがより好ましく、93℃以上で用いた環状エーテルの沸点以下であることが更に好ましい。
以下、本実施形態に係るアンヒドロ糖アルコールの製造方法(以下、適宜「本実施形態に係る製造方法」と称す場合がある。)に用いられる原料、有機溶媒、触媒、反応条件等について説明する。
(原料)
本実施形態に係る製造方法では、反応の原料、すなわち脱水反応の反応物として糖アルコール(モノアンヒドロ糖アルコールを含む)が用いられる。また、モノアンヒドロ糖アルコールが主な反応の原料となる場合も含む。
原料として用いられる糖アルコールとしては特に限定されないが、ヘキシトール、ペンチトール及びテトリトールが好適な例として挙げられる。より好ましい糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、イディトール、キシリトール、アラビニトール、リビトール、エリトリトール、及びトレイトールが挙げられる。さらに好ましい糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、及びエリトリトールが挙げられ、特に好ましくはソルビトールである。
ソルビトールを原料とする場合、生成物であるアンヒドロ糖アルコールは、モノアンヒドロ糖アルコールであるソルビタン、及びジアンヒドロ糖アルコールであるイソソルビドの少なくとも一方である。ソルビタンは、ソルビトールから1分子脱水してなるソルビタンであり、好ましくは1,4−ソルビタンである。
また、キシリトールを原料とする場合、生成物として、環化したC5モノアンヒドロ糖アルコールが得られる。また、エリスリトールを原料とする場合、生成物として、モノアンヒドロ糖アルコールであるエリスリタンが得られる。また、マンニトールを原料とする場合、生成物であるアンヒドロ糖アルコールは、モノアンヒドロ糖アルコールであるマンニタン、及びジアンヒドロ糖アルコールであるイソマンニドの少なくとも一方である。
また、原料として用いられるモノアンヒドロ糖アルコールの例としては、ソルビタンが挙げられ、好ましくは1,4−ソルビタンである。ソルビタンを原料とする場合、生成物であるアンヒドロ糖アルコールは、ジアンヒドロ糖アルコールであるイソソルビドである。従って原料は、糖アルコール、モノアンヒドロ糖アルコール、及びこれらの混合物のいずれであってもよい。
本実施の形態の製造方法において、原料となる糖アルコール及びモノアンヒドロ糖アルコールは、セルロースやグルコース等の天然資源から化学合成法や糖化発酵法等で誘導されたものを用いることができる。この場合、化学合成法等で誘導された糖アルコール及びモノアンヒドロ糖アルコールを、単離精製せずに混合物の状態のまま原料として使用してもよく、また単離精製したものを使用してもよい。
本製造方法の脱水反応に供する原料(出発物質)の純度(例えば、出発物質中の糖アルコール及び/又はモノアンヒドロ糖アルコールの含有量、両方含む場合には合計含有量)は、特に限定されないが、好ましくは水を除いた純度が90%以上(90質量%以上)、より好ましくは95%以上(95質量%以上)、さらに好ましくは98%以上(98質量%以上)である。出発物質の純度を高めることで、不純物に起因する副生物が、脱水反応で無視できないほど増大することを抑制することができる。これにより、副生物の分離工程や生成物の精製工程における効率を向上させることができる。
原料(出発物質)の純度を高める単離精製の方法としては、活性炭や陽(酸性)イオン交換樹脂及び/又は陰(塩基性)イオン交換樹脂(IER)を用いる方法がある。処理の順序やバッチ方式かカラムを用いた固定床連続方式か等には特に制限はない。複数のIERの併用や混合品を用いることも好適に用いられる。上記の活性炭処理やIER処理には、出発物質(原料)は水に溶解した水溶液の状態で供されることもある。
なおソルビトールは、グルコースの還元により得ることができるため、工業的な入手が容易である。また、セルロースや木材などの非可食バイオマスの各種糖化処理や精製処理によって得られる糖(グルコース)液を還元することによっても得られる。このため、出発物質である糖アルコールとしては、なかでもソルビトールが特に好ましい。ソルビトールの脱水反応で得られるソルビタンやイソソルビドは、各種の化学品や医薬品の原料として、またポリウレタン、ポリカーボネート及びポリエステル等のポリマー製造の原料モノマーとして有用である。
(脱水反応ステップや抽出ステップに用いる有機溶媒)
本実施の形態の製造方法において、脱水反応ステップで使用される有機溶媒は、触媒相と共に二相系を形成し得る有機溶媒である。すなわち触媒を溶解せず、目的生成物であるアンヒドロ糖アルコールを溶解し、かつ原料である糖アルコールを溶解しないものが好ましい。また、酸性条件下での安定性を有し、分解等の反応を引き起こさないものが好ましい。更に、水と二相に層分離する性質を有し、水との相溶性が低いものが特に好ましい。
また、有機溶媒は水と共沸する性質を有するものがより好ましい。
本実施形態に係る製造方法においては、このような有機溶媒として炭素数が6以上であり、沸点が93℃以上の環状エーテル(エーテルの官能基である酸素原子が環の一部となっているもの)を用いる。
炭素数が6以上で、沸点が93℃以上の環状エーテルとしては、酸に対して安定な5員環又は6員環の環状エーテルであって、1つ以上のアルキル基等の置換基を環上に有することによって、炭素数6以上となっているものが好ましい。
本実施形態に係る製造方法で用いる炭素数が6以上で沸点が93℃以上の環状エーテルの炭素数の上限には特に制限はないが、通常12以下、好ましくは10以下である。
また、沸点の上限にも特に制限はないが通常160℃以下、好ましくは140℃以下である。
このような環状エーテルとしては、ジメチルテトラヒドロピラン、エチルテトラヒドロピラン、トリメチルテトラヒドロフラン、ジテトラヒドロフルフリル体、エチルテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロピランが挙げられる。より具体的には、ジメチルテトラヒドロピランとしては、2,6−ジメチルテトラヒドロピラン、2,5−ジメチルテトラヒドロピラン、2,4−ジメチルテトラヒドロピラン、2,3−ジメチルテトラヒドロピランが挙げられる。エチルテトラヒドロピランとしては、2−エチルテトラヒドロピラン、3−エチルテトラヒドロピラン、4−エチルテトラヒドロピランが挙げられる。トリメチルテトラヒドロフランとしては、2,3,4−トリメチルテトラヒドロフラン、2,3,5−トリメチルテトラヒドロフランが挙げられる。ジテトラヒドロフルフリル体としては、2,2’−ジテトラヒドロフルフリルプロパンが挙げられる。メチルテトラヒドロピランとしては、2−メチルテトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、4−メチルテトラヒドロピランが挙げられる。エチルテトラヒドロピランとしては、2−エチルテトラヒドロピラン、3−エチルテトラヒドロピラン、4−エチルテトラヒドロピランが挙げられる。
また、環状エーテルとして、ジオキソラン構造、ジオキサン構造、又はジオキサビシクロ構造を有する化合物も有効であり、ジオキサビシクロ構造を有する化合物としてはジオキサビシクロオクタンやジオキサビシクロデカンが挙げられる。
これらのうち特に、沸点が高く、また、アンヒドロ糖アルコールの抽出効率、水との二相系の安定性、水との相溶性、化学的安定性等の観点から、メチルテトラヒドロピランが好ましく、メチルテトラヒドロフランの中でも特に4−メチルテトラヒドロピラン(沸点105℃)が好ましい。
これらの環状エーテルは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの環状エーテル、例えばメチルテトラヒドロピランの由来は特に限定されず、どのようなものを用いてもよい。例えば、イソブテンから一酸化炭素を増炭剤として用いて合成された化石資源由来の3−メチル−1,5−ペンタンジオールを脱水環化して製造したものでもよく、バイオマス由来のフルフラール類から誘導されたものでもよい。
また、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからメチルテトラヒドロピランを製造する方法に本発明を応用することもできる。すなわち、触媒と3−メチル−1,5−ペンタンジオールを混合して加熱することによって、水との共沸条件において、3−メチル−1,5−ペンタンジオールの4−メチルテトラヒドロピランへの脱水環化が起こり、生成した4−メチルテトラヒドロピランは触媒相や水と二相系を形成するので、触媒や水との分離が容易となる。原料となる3−メチル−1,5−ペンタンジオールを連続的に供給し、脱水反応を行いつつメチルテトラヒドロピラン相を連続的に抜き出すことにより、連続的に反応を進行させることも可能である。
なお、そのようにして得られた環状エーテルには、製造時の反応で副生する不純物が含まれている場合がある。また、環状エーテルとしては、市販品を用いることもできるが、市販の環状エーテルには、重合禁止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT))等の添加剤が含有されている場合がある。環状エーテルに含まれる不純物は生成物の純度を下げる要因となり、また、重合禁止剤は酸触媒や目的のアンヒドロ糖アルコールを変質させる恐れがあり好ましくない。従って、環状エーテルは使用前に蒸留等により精製し、これらの不純物や添加剤を予め除去して、純度を98%以上、特に99%以上に高めた上で脱水反応溶媒として用いることが好ましい。
前掲の特許文献6には、有機溶媒として環状エーテルを用いることが記載され、環状エーテルの例示に、「テトラヒドロピラン(THP)等の置換(好ましくはアルキル基置換)又は無置換のテトラヒドロピラン」との記載はあるが、置換テトラヒドロピランの具体例は挙げられておらず、また、特許文献6には、「より好ましくは1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン、及びシクロペンチルメチルエーテルから選択される1種以上を含み、さらに好ましくは、テトラヒドロピラン(THP)、3−メチルテトラヒドロフラン、及び2,5−ジメチルテトラヒドロフランから選択される1種以上を含み、特に好ましくはテトラヒドロピラン(THP)を含む。」と記載され、特許文献6の実施例でも、環状エーテルとしては、テトラヒドロピラン(沸点:88℃)、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン(沸点:92℃)、3−メチルテトラヒドロフラン(沸点:89℃)が用いられているのみで、炭素数6以上で沸点が93℃以上の環状エーテルを用いること及びそれによる効果の示唆はない。
抽出ステップに先立つ脱水反応ステップにおいて有機溶媒を用いる場合、その有機溶媒としては特に制限はなく、具体的には酢酸メチル等のエステル、γブチロラクトン等のラクトン、エーテルが好ましく、好ましくはエーテルを用いることができ、特に脂肪族エーテルであることが好ましい。脂肪族エーテルとしては鎖状エーテル(1,2−ジメトキシエタン等のジアルコキシ(脂肪族鎖式アルキルオキシ及び脂環式アルキルオキシを含む)アルカン;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ETBE(エチルターシャリーブチルエーテル)、シクロペンチルメチルエーテル等のジアルキル(脂肪族鎖式アルキル及び脂環式アルキルを含む)エーテル(好ましくは、炭素数が1〜5のアルキル(脂肪族鎖式アルキル及び脂環式アルキルを含む)基を2つ有する対称または非対称のジアルキルエーテル)等)、環状エーテル(エーテルの官能基である酸素原子が環の一部となっているもの)(テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、2,5−ジメチルテトラヒドロフラン等の置換(好ましくはアルキル基置換)又は無置換のテトラヒドロフラン;テトラヒドロピラン(THP)等の置換(好ましくはアルキル基置換)又は無置換のテトラヒドロピラン等)等が例示される。
脱水反応ステップや抽出ステップに用いる有機溶媒は芳香族性のある構造、炭素−炭素二重結合やカルボニル基、水酸基を有しない方が好ましい。その理由の一つは、酸性条件下で置換反応や付加反応を起こすからである。その点では、脂肪族鎖式や脂環式の構造のみを有する化合物(好ましくはエーテル化合物)が好ましい。用いる有機溶媒の構造をC、H、Oで表せば、少なくとも一つのO(酸素)を含み、好ましくはH/Cが1.5以上、3以下、より好ましくは1.6以上、2.5以下、さらに好ましくは1.7以上2.3以下であり、特に好ましくは1.8以上、2.1以下である。用いる有機溶媒は、炭素、水素、酸素以外の元素を含んでいてもかまわないが、炭素、水素、酸素のみから成ることが好ましい。
また、用いる有機溶媒に対するアンヒドロ糖アルコールの溶解度は特に限定されないが、通常アンヒドロ糖アルコールの融点以上では混和相溶性を有する溶媒が好ましく、融点以下の温度での溶解度が高い有機溶媒が好ましい。アンヒドロ糖アルコールとしてイソソルビドを例にすれば、25℃における溶解度として1.0g/100mL以上、好ましくは1.5g/100mL以上、より好ましくは2.0g/100mL以上、さらに好ましくは2.5g/100mL以上、特に好ましくは3.0g/100mL以上である。これらの溶媒は1種、あるいは2種以上を併用してもかまわないし、水と混和相溶しない別の有機溶媒を併用してもかまわない。また、有機溶媒相は、通常有機溶媒のみから形成されるが、本発明の効果を阻害しない程度で有機溶媒以外の成分を含有することは排除されない。
一方、用いる有機溶媒に対する原料の糖アルコールの溶解度は特に限定されないが、糖アルコールの溶解度が低い有機溶媒が好ましい、原料となる糖アルコールとしてソルビトールを例にすれば、25℃における溶解度として、20g/100mL以下、好ましくは10g/100mL以下、より好ましくは5.0g/100mL以下、特に好ましくは3.0g/100mL以下である。
さらにいえば、用いる有機溶媒は脱水反応おける中間体を溶解しないほうが好ましい。中間体として、ソルビトールからイソソルビドへの脱水反応の中間体である1,4−ソルビタンを例にすれば、25℃における溶解度として、20g/100mL以下、好ましくは10g/100mL以下、より好ましくは5.0g/100mL以下、特に好ましくは3.0g/100mL以下である。
上記の有機溶媒に対する原料や生成物の溶解度は、水と有機溶媒二相系における分配係数として規定することも可能である。本発明で用いる有機溶媒に関しては、10mL水/10mL有機溶媒における分配係数(以下、単に「分配係数」と称す。)でいえば、原料の糖アルコールとしてソルビトール1.0gを例にすれば、25℃における分配係数として通常6/1以上、好ましくは7/1以上、より好ましくは8/1以上、さらに好ましくは9/1以上、特に好ましくは10/1以上であり、生成物のアンヒドロ糖アルコールとしてイソソルビド1.0gを例にすれば、25℃における分配係数として、通常10/1以下、好ましくは9/1以下、より好ましくは8/1以下、さらに好ましくは7/1以下、特に好ましくは6/1以下である。このような、有機溶媒を選ぶことによって、脱水反応において生成したアンヒドロ糖アルコールをスムーズに有機溶媒に抽出して触媒との接触を避け、望ましくない副反応を回避することが可能となると同時に、原料と触媒との接触効率を上げ、十分な反応速度を得ることが可能になり、結果として飛躍的な収率と生産性の向上を図ることができる。
用いる有機溶媒の沸点に特に制限はないが、好ましくは90℃以上、160℃以下、より好ましくは93℃以上、140℃以下、さらに好ましくは100℃以上、130℃以下、特に好ましくは105℃以上、120℃以下である。本法では、有機溶媒の沸点や水との共沸点は脱水反応の反応温度を支配するため、沸点が高いと反応温度を高くすることが可能となり、反応速度の増大とともに生産性が向上する。一方、反応温度が高すぎると当該有機溶媒の分解などの望ましくない反応が増大する。
用いる有機溶媒の水に対する溶解度(25℃)に特に制限はないが、好ましくは0.01g/L以上、5g/L以下、より好ましくは0.02g/L以上、4g/L以下、さらに好ましくは0.03g/L以上、3g/L以下、特に好ましくは0.04g/L以上、2g/L以下である。用いる有機溶媒の水に対する溶解度が小さければ、反応で留去された有機溶媒/水から分離した水を廃棄するにあたり、水に溶解した有機溶媒を回収する操作が軽減されると同時に、反応器内で生成したアンヒドロ糖アルコールの有機溶媒への抽出や、脱水反応速度にも好影響を与える。
(脱水触媒)
本実施の形態の製造方法において使用される脱水触媒は、糖アルコールを脱水可能であれば特段限定されないが、通常無機のプロトン酸であり、有機溶媒に溶解しないで二相(層)を形成し、かつ強い酸性質を有するものが好ましい。その種類は特に問わないが、好ましくは硫酸、スルホン酸、リン酸、フルオロ硫酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸、酸性イオン交換樹脂、及び多価カチオンイオン交換モンモリロナイト粘土触媒から選択される1種以上を含み、より好ましくは、硫酸、酸性イオン交換樹脂、イソポリ酸、及びヘテロポリ酸から選択される1種以上を含み、特に好ましくはヘテロポリ酸を含む。
ヘテロポリ酸の型としては、ドーソン型、ケギン型が好ましく、特に好ましくはケギン型である。ケギン型構造のヘテロポリ酸のうちではケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸が好ましく、これらは一部を欠損型にしたり、置換型にしてもかまわない。
脱水反応を進行させるためには、原料である糖アルコールやその中間体が、脱水触媒の活性点にアクセスできなければならない。よって、より有効な触媒形態としては、原料となる糖アルコールに溶解し、分子的に作用可能な非固体酸触媒が好ましい。これらの酸触媒は脱水反応使用前に、前処理として予め不活性ガス気流下で加熱脱水する、一部を部分中和して酸性を調節する、などの処理を施すことが好ましい。
また、有効な酸触媒としてプロトン密度(常圧、室温での固体または液体の単位体積あたりのプロトンモル数)が高いほうが好ましい。酸触媒が触媒相として有機溶媒と二相を形成する場合、触媒相がコンパクトなほうが、原料の糖アルコールとの接触と生成物の有機溶媒への移行が効率的に進行し、結果として反応が効率的に行える。好ましいプロトン密度(常圧、室温)は、通常1mmol/cm以上、好ましくは5mmol/cm以上、より好ましくは10mol/cm以上、特に好ましくは20mmol/cm以上である。
脱水触媒を脱水反応に供する際には、脱水触媒を予め反応器内に充填し、原料や有機溶媒を後から導入してもよいし、脱水触媒を原料や有機溶媒と混合した後に反応器内に導入してもよい。脱水触媒の量は、特に限定されないが、原料の糖アルコール及びモノアンヒドロ糖アルコールの合計質量に対して、好ましくは1質量%以上500質量%以下、より好ましくは2質量%以上200質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上100質量%以下である。
(脱水反応の態様)
本実施の形態の製造方法において、脱水反応ステップにおける脱水反応は加熱条件下で実施されることが好ましい。例えば、脱水反応は、脱水触媒と有機溶媒が装填され加熱された反応器内で実施されてよい。反応の形式は、バッチ式であっても連続式であってもよい。例えば、ソルビトールの脱水反応は、反応温度100℃で、ソルビトール0.1molに対して脱水触媒としてのヘテロポリ酸を5mmolとして実施してもよい。
本実施形態に係る製造方法の脱水反応ステップの脱水反応の反応温度は、有機溶媒である環状エーテルと水との共沸点以上であることが好ましく、好ましくは90℃以上、160℃以下、より好ましくは93℃以上、140℃以下、さらに好ましくは100℃以上、130℃以下、特に好ましくは105℃以上、120℃以下である。反応温度を上記上限以下とすることで、原料、中間体、生成物の分子間反応による重合を抑制することができる。反応温度を上記下限以上とすることで、1分子脱水体等の中間体が関与する副反応が無視できないほど増大することを抑制することができると共に、十分な脱水反応速度を得ることができる。
反応温度が、使用する有機溶媒の沸点より高い場合は、溶媒は蒸発するのでその補充が必要となる。その場合、新しい溶媒を別途補給する、蒸発した溶媒を還流させて反応器に戻す、などの方法が好適に用いられる。
一方で、有機溶媒の蒸発を抑制して、エネルギーを節約する目的においては、有機溶媒である環状エーテルの沸点以下の反応温度とすることも好適に行われる。水と共沸する有機溶媒の場合、有機溶媒中に相溶する水の量は共沸点の共沸組成から有機溶媒の沸点の0%まで連続的に変化し、相溶する水の量は有機溶媒の抽出性能や酸触媒の酸強度に影響する。したがって有機溶媒の生成物や中間体に対する抽出性能や酸触媒の性能を反応温度によってコントロールすることができる。
有機溶媒に水と共沸する物質を用いる場合、反応温度は共沸温度に依存する。さらには、共沸した溶媒を直接反応器に還流することなく、別途冷却捕集し、蒸留条件を変えて有機溶媒から水を取り除くこと、脱水剤などで水を取り除いた後に反応器に戻すこと、を行ってもよい。さらには、水と相分離する有機溶媒を用いる場合は、別途捕集した共沸物を静置して二相(層)に分離し、有機溶媒相だけを反応器に戻したり、再使用してもよい。
脱水反応の反応圧力は、特にこだわらないが、好ましくは絶対圧で0.08MPa以上、1MPa以下、より好ましくは0.09MPa以上、0.5MPa以下、さらに好ましくは0.1MPa以上、0.2MPa以下である。圧力の調整により共沸温度(反応温度)を調節することも好適に行われる。反応器内の雰囲気ガスとしては、例えばヘリウム、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の、脱水反応に悪影響を与えない不活性な物質を用いることができる。
原料となる糖アルコール(モノアンヒドロ糖アルコールを含む)の供給方法は特にこだわらないが、溶融して液体として供給する方法、水溶液として供給する方法を用いることができる。水溶液として原料を供給する場合には、あまり水の量が多いと脱水反応の効率が低下する場合がある。その場合には、脱水反応器に導入する前に、水溶液を予備的に加熱して所定の割合の水を蒸留分離し、原料となる糖アルコールを濃縮する方法も好適に用いられる。
本実施形態に係る製造方法では、反応器内で有機溶媒相と触媒相は二相(層)となるので、脱水反応の終了後、特別な触媒分離の操作を経ずに、有機溶媒相だけを採取することで、有機溶媒相に溶解した生成物を得ることができる。その際は、反応器の温度を生成物が析出しない程度にまで下げて行うのが好適である。有機溶媒相と触媒相が分離しにくい場合には、分離用の槽を別に設けて、そこに反応混合物を移送し、有機溶媒相と触媒相を分ける方法も好適に用いられる。
本実施形態に係る製造方法では、原料よりも中間体、中間体よりも生成物のほうが、有機溶媒相に分配しやすいことから、有機溶媒相を採取することによって、高純度のアンヒドロ糖アルコールを容易に得ることができる。例えば、ソルビトールの脱水によるイソソルビドの製造を例にすれば、反応終了後に採取した有機溶媒相中の、原料に対する中間体(1,4−ソルビタン)、生成物(イソソルビド)のモル比は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは8以上である。また、反応終了後に採取した有機溶媒相中の、中間体(1,4−ソルビタン)に対する生成物(イソソルビド)のモル比は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上、特に好ましくは8以上である。
また、本実施形態に係る製造方法では、原料由来の親水性の高い不純物や副生物は触媒相に留まるため、有機溶媒相だけを採取することで、結果的に不純物を取り除いた形で生成物を得ることができる。
さらには、得られた有機溶媒相を当該有機溶媒相と混和しない別の溶媒と接触させるか、あるいは得られた有機溶媒相を当該有機溶媒相と混和しない別の溶媒で洗浄することにより、得られた有機溶媒相から不純物や副生物、あるいは中間体を取り除くあるいは回収することが可能である。すなわち、この方法によって得られた有機溶媒相中のイソソルビドの含有率や純度を上げることが可能である。当該有機溶媒相と混和しない溶媒としては、各種のアルコールや水、ソルビトールが挙げられ、好ましくは水、ソルビトールが好適に用いられる。その際、接触、洗浄に用いる溶媒の量は特にこだわらないが、多すぎると不純物や副生物、あるいは中間体とともに大量のイソソルビドが移行してしまうため、効率が悪くなる。溶媒として水やソルビトールを用いた接触、洗浄を行う場合には、若干ながら有機溶媒相に混入する触媒を、中和等の処理無しで取り除くことができる。
また、溢流方式や吸引方式などの採用で、連続的に有機溶媒相を抜きながら、反応を連続的に継続することもできる。その際には、原料を連続的に反応器に供給することによって、長時間にわたって連続的に反応を継続することも可能である。
本実施形態に係る製造方法では、反応終了後の触媒相(固体触媒の場合は触媒表面や粒子内部)にも生成物が含まれている場合がある。その場合には、触媒相に有機溶媒を加えて抽出操作を施すことにより、生成物を回収することができる(抽出ステップ)。その際、触媒を塩基等で中和、あるいは処理してから抽出操作を行ってもよい。抽出に使用する有機溶媒は、触媒を溶解せず、かつ目的生成物であるアンヒドロ糖アルコールを溶解し、かつ原料である糖アルコールを溶解しないものが好ましい。また、酸性条件下での安定性を有し、自己が分解や重合等の反応を引き起こさないことが好ましい。水と共沸する性質を有するものがより好ましく、さらには水と二相に層(相)分離する性質を有するものが特に好ましい。
また、アンヒドロ糖アルコールの製造に係る糖アルコールの脱水反応には有機溶媒を用いずに、反応終了後に有機溶媒を加えることによって、原料である糖アルコール、水、触媒、副生物、不純物、反応中間体の少なくとも一種と生成物であるアンヒドロ糖アルコールとを含む混合物(反応物)から有機溶媒によってアンヒドロ糖アルコールを抽出することができる(抽出ステップ)。その際にも上記説明と同様に、触媒を塩基等で中和、あるいは濾過等の除去処理の後に抽出操作を行ってもよい。
有機溶媒を用いた脱水反応ステップ後の抽出ステップにおいても、有機溶媒を用いずに行った脱水反応ステップ後の抽出ステップにおいても、用いる有機溶媒としては、前述の脱水反応ステップで用いる有機溶媒として例示したものが好ましく用いられる。
また、この抽出ステップにおいて用いる有機溶媒としては特に制限はなく、前述の脱水反応ステップで用いる有機溶媒として例示したものが挙げられる。
脱水反応ステップで用いる有機溶媒と抽出ステップで用いる有機溶媒は同一である必要はなく、異なるものであってもよい。ただし、溶媒の準備や管理、取り扱い等の面で、同一の環状エーテルを用いることが好ましい。
抽出ステップにおいて、抽出に用いる有機溶媒は、触媒相中のアンヒドロ糖アルコール含有量や用いる有機溶媒の種類によっても異なるが、触媒相に対して0.5〜5容量倍程度とすることが好ましい。抽出ステップは複数回繰り返して行ってもかまわない。
本実施形態に係る製造方法において、好ましくは、触媒は反応器から触媒相を抜出した後に分離回収される。触媒の分離回収の方法としては、濾過や晶析、抽出が挙げられる。これらの操作の際、操作性の向上のために水や溶媒、あるいは酸やアルカリを加えてもよい。また、連続的に反応を継続するために、触媒相から一部の触媒を抜き出し、代わりに新しい触媒を補充する方法も好適に用いられる。
分離回収された触媒は、精製等の再生を経て再び脱水反応に用いることができる。その際に、触媒に付着した生成物や重合物を水や有機溶媒による洗浄等の処理によって除去あるいは分離回収することができる。また、触媒の分離回収にあたって酸やアルカリが用いられる場合には、脱水反応に再利用する前にそれらの酸やアルカリを除去することが好ましい。
さらには、触媒に付着した重合物等を乾燥や焼成処理等で除去することで、触媒を再生する方法も好適に用いられる。この場合の触媒の焼成処理は、触媒の構造が熱により崩壊しない程度の温度で実施することが好ましい。触媒再生時の焼成温度は、好ましくは250℃以上600℃以下、より好ましくは300℃以上550℃以下、さらに好ましくは350℃以上500℃以下である。
(生成されるアンヒドロ糖アルコールの精製、及び用途)
本実施形態に係る製造方法では、目的生成物であるアンヒドロ糖アルコール(モノアンヒドロ糖アルコール及び/又はジアンヒドロ糖アルコール)は、脱水反応終了後、有機溶媒に溶解した形で触媒と分離される。その際の有機溶媒中に溶解した物質内での目的生成物の割合は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。本実施形態では、比較的高純度のアンヒドロ糖アルコールが得られるため、このまま有機溶媒からアンヒドロ糖アルコールを析出させてアンヒドロ糖アルコールを得て、所望の用途に使用することもできるが、必要に応じてさらに有機溶媒相を精製してもかまわない。精製方法は特に限定されないが、活性炭処理やイオン交換樹脂処理、晶析や蒸留等が好適に用いられる。これらのうち、複数の精製方法を組み合わせて行ってもよい。
されてもよい。
また、減圧下でアンヒドロ糖アルコール類を蒸留により精製することも好ましい。イソソルビドを例に減圧下での蒸留操作を例示すれば、脱水反応後の有機溶媒相から有機溶媒を採取し、有機溶媒をエバポレータ等で除去した後、クライゼンヘッドを備えた蒸留装置を用いて2〜4torrの減圧下149〜156℃で蒸留することが可能で、得られたイソソルビドはガスクロマトグラフィの面積比として通常純度98%以上で、色調は白色である。なお、1,4−ソルビタンの量は通常2質量%以下である。
得られたアンヒドロ糖アルコールは、それ自体が各種の化学品、医薬品及び界面活性剤の原料あるいは添加物として用いることができ、また、ポリカーボネート等の各種のポリマーの原料としても用いることができる。
なお、本実施形態に係る製造方法では、生成物であるアンヒドロ糖アルコールの収率が好ましくは30mоl%以上、より好ましくは40mоl%以上、更に好ましくは50mоl%以上、特に好ましくは60mol%以上である。
また、本実施形態に係る製造方法では、高純度のアンヒドロ糖アルコールが得られ、析出や蒸留等により得られたアンヒドロ糖アルコールの固形分は白色固体となり、色差計で測定した際のYI値が好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.0以下であり、特に好ましくは1.0以下である。さらに、アンヒドロ糖アルコールの固形分は、同様に色差計で測定した際のAPHA値が好ましくは50以下であり、より好ましくは30以下であり、特に好ましくは20以下である。
以上説明した本実施形態に係る製造方法では、特定の有機溶媒と触媒の存在下で、有機溶媒相と触媒相を共存させ、所望により反応蒸留方式で水を除去しながら、糖アルコールの脱水反応を行う脱水反応ステップを含み、モノアンヒドロ糖アルコール及びジアンヒドロ糖アルコールの少なくとも一方が製造される。あるいは、上述の条件下で、モノアンヒドロ糖アルコールの脱水反応を行うことによりジアンヒドロ糖アルコールが製造される。これにより、脱水反応の速度を向上させることができ、また生成物を高い選択性をもって生成することができる。したがって、アンヒドロ糖アルコールの収率を高めることができる。
また、中間体や生成物の濃縮や触媒との接触が妨げられ、それらの分子間縮合による重合、炭化や分解などの副反応も抑制することができるため、得られるアンヒドロ糖アルコールの精製工程を簡略化することができる。また、精製後のアンヒドロ糖アルコールの純度も高く、各種化学品やポリマーの原料として優れる。さらに、脱水に用いた触媒を容易に分離することが可能で、連続的な原料の供給や生成物の分離により長時間に及ぶ連続的な反応を実施することができる。
したがって、本実施形態に係る製造方法によれば、アンヒドロ糖アルコールの製造規模の増大や、製造過程での諸要因の変化に起因する、反応温度や圧力の変化、及び、原料、中間体、生成物や副生成物の濃度や滞留時間の変化等を低減することができる。この結果、目的とするアンヒドロ糖アルコールを効率よく製造することができる。よって、本実施形態に係る製造方法は、工業的に有利な方法である。
以下に、ソルビトールの脱水反応によりイソソルビドを生成する方法を実施例に挙げて、本発明をより具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
有機溶媒として4−メチルテトラヒドロピラン(沸点:105℃)を用い、脱水触媒としてケイタングステン酸26水和物(プロトン密度:約2.5mmol/cm)を用いて、ソルビトールの脱水反応によりイソソルビドを製造した。
4−メチルテトラヒドロピランと水との共沸点は85℃である。
4−メチルテトラヒドロピランは、4−メチルテトラヒドロピラン(東京化成試薬)を予め蒸留精製して重合禁止剤であるBHTを除去したものを使用した
具体的な手順は以下の通りである。
還流冷却管、ディーンスターク型水分定量受器、テフロン被覆熱電対を付属したジャケット式の300mL四つ口フラスコに、D−ソルビトール(キシダ化学試薬特級)120mmol、ケイタングステン酸26水和物(キシダ化学試薬特級)12mmol、150mLの4−メチルテトラヒドロピランを装填した。
当該反応器を循環恒温槽から循環するシリコンオイルを用いて加熱し、テフロン製の撹拌翼をスリーワンモーターで回転させる方法で内容物を撹拌しながら、常圧、窒素雰囲気下で脱水反応を行った。反応器内の温度が上昇し、有機溶媒が激しく蒸発して還流し始めた時を反応開始時刻とした。開始時点では4−メチルテトラヒドロピランと、触媒とソルビトールとの混合層の2相に分離していることを確認した。
脱水反応中に有機溶媒とともに蒸発した水(原料の脱水反応で生成)は水分定量受器に捕集した。その速度は約4mL/hであった。
反応開始から1時間が経過した時点で反応を停止し、ただちに反応器を冷却した。
上記操作において、反応開始時の反応器内の温度(反応温度)は102℃であったが、脱水反応が進むにつれて反応器内の温度(反応温度)は徐々に上昇し、反応停止直前では107℃であった。なお、反応中や反応停止時点においても、反応器内は有機溶媒相と触媒相の2相系が成り立っていることを確認した。
反応器を室温まで冷却した後、反応器内の有機溶媒相125mLの全てをピペットで回収した。さらに残った触媒相に当該有機溶媒100mLを加えて85℃(オイルバス温度)で1時間撹拌し、触媒相に含まれるイソソルビド等を抽出し、それを有機溶媒ごと回収した。
回収した有機溶媒の一部を用いて、内部標準物質としてフェニルエーテル(東京化成試薬99%)を加え、ピリジン存在下、N−トリメチルシリルイミダゾール(東京化成試薬)を加えて70℃で20分間以上加熱することにより分析試料を調製し、キャピラリーカラム DB−1(アジレントテクノロジー 0.25μm、0.250mmΦ×60m)を装着したガスクロマトグラフで生成物等を分析した。
その結果、ソルビトールの仕込み量に対して、脱水反応後の有機溶媒相から55mol%、有機溶媒を用いて触媒相から抽出した部から16mol%、合わせて71mol%の収率でイソソルビドが得られたことが確認された。また、有機溶媒相中のイソソルビドのモル分率は約95%であった。
(実施例2)
脱水溶媒として、ケイタングステン酸26水和物12mmolの代りにプロトン密度約35mmol/cmである硫酸(95% 純正化学製)24mmolを用いて実施例1と同様にして、ソルビトールの脱水反応を開始した。開始時点では4−メチルテトラヒドロピラン、触媒とソルビトールとの混合層の2相に分離していることを確認した。
脱水反応中に有機溶媒とともに蒸発した水(原料の脱水反応で生成)は有機溶媒と二層となり水分定量受器に捕集された。その速度は約2.4mL/hであった。反応開始から2.5時間が経過した時点で反応を停止し、ただちに反応器を冷却した。反応開始時の反応器内の温度(反応温度)は104℃で、脱水反応が進むにつれて反応器内の温度(反応温度)は徐々に上昇し、反応停止直前では106℃であった。なお、反応中や反応停止時点においても、反応器内は有機溶媒相と触媒相の2相系が成り立っていることを確認した。
有機溶媒相の回収、反応に用いたのと同じ有機溶媒を用いた触媒相からのイソソルビド等の抽出、回収、および分析試料の調整、生成物等の分析については実施例1と同様に行った。
その結果、ソルビトールの仕込み量に対して、脱水反応後の有機溶媒相から59mol%、有機溶媒を用いて触媒相から抽出した部から14mol%、合わせて73mol%のイソソルビドが得られたことが確認された。また、有機溶媒相中のイソソルビドのモル分率は約93%であった。
(比較例1)
有機溶媒として、4−メチルテトラヒドロピランの代りにテトラヒドロピラン(沸点:88℃ 東京化成試薬 公称純度>98%)をそのまま用いて実施例1と同様にして、ソルビトールの脱水反応を行った。
テトラヒドロピランと水との共沸点は75℃である。反応開始時点ではメチルテトラヒドロピランと触媒とソルビトールとの混合層の2相に分離していることを確認した。
脱水反応中に有機溶媒とともに蒸発した水(原料の脱水反応で生成)は有機溶媒と二層となり水分定量受器に捕集された。その速度は約1mL/hであった。反応開始から6時間が経過した時点で反応を停止し、ただちに反応器を冷却した。反応開始時の反応器内の温度(反応温度)は85℃で、脱水反応が進むにつれて反応器内の温度(反応温度)は徐々に上昇し、反応停止直前では89℃であった。なお、反応中や反応停止時点においても、反応器内は有機溶媒相と触媒相の2相系が成り立っていることを確認した。
有機溶媒相の回収、反応に用いたのと同じ有機溶媒を用いた触媒相からのイソソルビド等の抽出、回収、および分析試料の調整、生成物等の分析については実施例1と同様に行った。
その結果、ソルビトールの仕込み量に対して、脱水反応後の有機溶媒相から31mol%、有機溶媒を用いて触媒相から抽出した部から15mol%、合わせて46mol%のイソソルビドが得られたことが確認された。また、有機溶媒相中のイソソルビドのモル分率は約85%であった。
実施例1、2と比較例1の結果から、本発明の方法により、炭素数が6以上で沸点が93℃以上の環状エーテルを有機溶媒として用いて93℃以上の温度で脱水反応を行い、更には反応後の抽出を炭素数が6以上で沸点が93℃以上の環状エーテルを有機溶媒として用いて行うと、反応の進行が速くなるとともに反応終了後の触媒と生成物との分離、および生成物の選択的な抽出が容易となり、効率よくアンヒドロ糖アルコールを製造できることがわかる。

Claims (6)

  1. 有機溶媒を含む有機溶媒相及び触媒を含む触媒相から形成される二相系内において糖アルコールの脱水反応を行うステップ、及び/又は、糖アルコールの脱水反応により得られた触媒を含む反応混合物から、有機溶媒を用いてモノアンヒドロ糖アルコール及び/又はジアンヒドロ糖アルコール(以下、これらを「アンヒドロ糖アルコール」という。)を抽出するステップを含む、アンヒドロ糖アルコールの製造方法であって、
    該有機溶媒として炭素数が6以上であり、沸点が93℃以上の環状エーテルを用いることを特徴とする、アンヒドロ糖アルコールの製造方法。
  2. 前記脱水反応ステップにおける反応温度が前記環状エーテルと水との共沸点以上である、請求項1に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
  3. 前記脱水反応ステップにおける反応温度が93℃以上である、請求項2に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
  4. 前記脱水反応ステップにおける反応温度が前記環状エーテルの沸点以下である、請求項3に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
  5. 前記環状エーテルがメチルテトラヒドロピランである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
  6. 前記触媒がヘテロポリ酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアンヒドロ糖アルコールの製造方法。
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