JP2021124718A - 調光素子、及びこれを用いた光学装置、撮像装置、レンズユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】色再現性に対する実質的な光源影響を高度に抑制した可変NDフィルタ等の調光素子を提供する。【解決手段】外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を有する調光素子1001であって、前記複数の化合物は、それぞれ吸収波長が異なる化合物であり、前記複数の化合物の光吸収特性を組み合わせた可変透過率VT(λ)を有し、NWDMax<NWDMaxFPである。NWDMax:光検出器1002の検出光波長領域ごとの透過光の信号強度比の、調光素子1001の透過状態と減光状態とにおける比の、基準光源と対照光源の比(基準光源/対照光源又は対照光源/基準光源)の最大値。NWDMaxFP:前記検出光波長領域における前記VT(λ)の波長平坦性TFが最小値TFFPとなる前記複数の化合物の濃度比におけるNWDMax。【選択図】図1
Description
本発明は調光素子、及びこれを用いた光学装置、撮像装置、レンズユニットに関する。
調光素子の一つであるND(Neutral Density)フィルタは、色に対する影響を抑えながら光量を低減するフィルタであり、静止画や動画撮影に広く用いられている。近年NDフィルタの減光度を電気的に変化させることができる可変NDフィルタが実用化され、これまで不可能であった像表現が可能となってきている。この可変NDフィルタには外部刺激により(特に電気的に)光吸収特性が変化する複数の化合物が用いられ、その複数の化合物の光吸収の組合せにより色への影響を抑えた減光度の制御を実現している。
NDフィルタの重要な特性の一つに、色再現性に対する光源の影響が小さい(色再現性に対する光源影響が小さい)ことが挙げられる。理想的なNDフィルタは透過率が透過光の波長に依らず一定(波長平坦性が最高)なものであり、そのようなNDフィルタは色に対する光源の影響をゼロにできる。そのため従来のNDフィルタでは、波長平坦性を高めることで色再現性に対する光源影響を抑制してきた。特許文献1には、波長平坦性の高い多層膜を用いた減光度の変化しない(減光度固定の)NDフィルタが記載されている。このように高い波長平坦性を有するNDフィルタは色再現性に対する光源影響を小さいものとすることができる。
NDフィルタの重要な特性の一つに、色再現性に対する光源の影響が小さい(色再現性に対する光源影響が小さい)ことが挙げられる。理想的なNDフィルタは透過率が透過光の波長に依らず一定(波長平坦性が最高)なものであり、そのようなNDフィルタは色に対する光源の影響をゼロにできる。そのため従来のNDフィルタでは、波長平坦性を高めることで色再現性に対する光源影響を抑制してきた。特許文献1には、波長平坦性の高い多層膜を用いた減光度の変化しない(減光度固定の)NDフィルタが記載されている。このように高い波長平坦性を有するNDフィルタは色再現性に対する光源影響を小さいものとすることができる。
外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を用いた可変NDフィルタでは、複数の化合物の吸収スペクトルの組合せによりND性を発現するものがある。この場合、複数の化合物の吸収波長の制御には限界があるため、減光度の変化しないNDフィルタ(従来の減光度固定のNDフィルタ)のように平坦性の高いスペクトルを実現することは困難である。本発明者は波長平坦性を高める工夫を重ねて行ってきたが、色再現性に対する光源影響を高度に抑制した可変NDフィルタを実現することは困難であった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は色再現性に対する実質的な光源影響を高度に抑制した可変NDフィルタ等の調光素子、及び該調光素子を用いた装置を提供することである。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は色再現性に対する実質的な光源影響を高度に抑制した可変NDフィルタ等の調光素子、及び該調光素子を用いた装置を提供することである。
本発明の第一は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を有する調光素子であって、
前記複数の化合物は、それぞれ吸収波長が異なる化合物であり、
前記複数の化合物の光吸収特性を組み合わせた可変透過率VT(λ)を有し、
前記調光素子は、複数の検出光波長領域を持つ光検出器を対象としており、
NWDMax<NWDMaxFPであることを特徴とする。
NWDMax:光検出器に入射する検出光波長領域ごとの透過光の信号強度比の、前記調光素子の透過状態と減光状態とにおける比の、基準光源と対照光源の比(基準光源/対照光源又は対照光源/基準光源)の最大値
NWDMaxFP:前記検出光波長領域における前記VT(λ)の波長平坦性TFが最小値TFFPとなる前記複数の化合物の濃度比におけるNWDMax
本発明の第二は、調光素子と、
前記調光素子を通した光を受光し、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器と、を有し、前記光検出器が撮像素子であり、前記調光素子が上記本発明の調光素子であることを特徴とする光学装置である。
本発明の第三は、複数のレンズを有する光学系と、前記光学系を透過した光を受光する撮像素子と、前記光学系と前記撮像素子との間に配置されている光学フィルタとを有する撮像装置であって、前記光学フィルタは、上記本発明の調光素子を有することを特徴とする。
本発明の第四は、上記本発明の調光素子と、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有するレンズユニットであって、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続可能であり、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続することで、レンズユニットを通した光が、前記光学装置の前記光検出器に入射するように配置され、
前記光検出器は、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器であることを特徴とする。
前記複数の化合物は、それぞれ吸収波長が異なる化合物であり、
前記複数の化合物の光吸収特性を組み合わせた可変透過率VT(λ)を有し、
前記調光素子は、複数の検出光波長領域を持つ光検出器を対象としており、
NWDMax<NWDMaxFPであることを特徴とする。
NWDMax:光検出器に入射する検出光波長領域ごとの透過光の信号強度比の、前記調光素子の透過状態と減光状態とにおける比の、基準光源と対照光源の比(基準光源/対照光源又は対照光源/基準光源)の最大値
NWDMaxFP:前記検出光波長領域における前記VT(λ)の波長平坦性TFが最小値TFFPとなる前記複数の化合物の濃度比におけるNWDMax
本発明の第二は、調光素子と、
前記調光素子を通した光を受光し、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器と、を有し、前記光検出器が撮像素子であり、前記調光素子が上記本発明の調光素子であることを特徴とする光学装置である。
本発明の第三は、複数のレンズを有する光学系と、前記光学系を透過した光を受光する撮像素子と、前記光学系と前記撮像素子との間に配置されている光学フィルタとを有する撮像装置であって、前記光学フィルタは、上記本発明の調光素子を有することを特徴とする。
本発明の第四は、上記本発明の調光素子と、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有するレンズユニットであって、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続可能であり、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続することで、レンズユニットを通した光が、前記光学装置の前記光検出器に入射するように配置され、
前記光検出器は、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器であることを特徴とする。
本発明によれば、色再現性に対する実質的な光源影響を高度に抑制した可変NDフィルタ等の調光素子と、該調光素子を用いた光学装置、撮像装置、レンズユニットを提供することができる。
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を有し、当該化合物の複数の吸収スペクトルの重ね合せにより、可視光領域において可変的な光吸収を発現する。横軸を波長とし、縦軸を透過率として、調光素子の透過スペクトルをとると、複数の化合物の濃度比等により吸収スペクトルを平坦に近づけることができる。本発明の調光素子は、吸収スペクトルの平坦性よりも色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することを重視した素子であり、パラメーターNWDMaxを用いて評価される。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に含まれる。
≪調光素子を備えた光学装置≫
図1は、本発明の調光素子を備えた光学装置の一例を示す模式図である。図1において、光学装置1000は、可変NDフィルタ等の調光素子1001と、R(赤)、G(緑)、B(青)等の複数の検出光波長領域を持つ、撮像素子等の光検出器1002を有する。尚、光学装置1000とは別に光検出器を設ける場合には、光学装置1000は光検出器1002を有さなくてよい。本実施形態に係る光学装置としては、可変NDフィルタ付きのカメラシステム(カメラ、レンズを含む)、透過率可変窓、透過率可変眼鏡、反射率可変ミラーを挙げることができる。
図1は、本発明の調光素子を備えた光学装置の一例を示す模式図である。図1において、光学装置1000は、可変NDフィルタ等の調光素子1001と、R(赤)、G(緑)、B(青)等の複数の検出光波長領域を持つ、撮像素子等の光検出器1002を有する。尚、光学装置1000とは別に光検出器を設ける場合には、光学装置1000は光検出器1002を有さなくてよい。本実施形態に係る光学装置としては、可変NDフィルタ付きのカメラシステム(カメラ、レンズを含む)、透過率可変窓、透過率可変眼鏡、反射率可変ミラーを挙げることができる。
<光検出器>
本発明の調光素子は、特定の光検出器を対象としたものである。言い換えると、本発明の調光素子は、特定の光検出器との組み合わせで機能を発揮するように設計されたものである。その例としては、カメラシステムとCMOSセンサのような撮像素子との組み合わせ、透過率可変窓と人の目との組み合わせ、透過率可変眼鏡と人の目との組み合わせ、反射率可変ミラーと人の目との組み合わせを挙げることができる。また、この光検出器は、複数の検出光波長領域を持つ光検出器である。具体的には、撮像用のCMOSセンサの例であればR,G,B、人の目の例であれば一例としてCIE等色関数のxバー,yバー,zバーの複数の検出光波長領域を有する。CIEの等色関数の例としては、CIE(1931)、CIE(1964)、CIE(2006)などが挙げられ、2度視野、10度視野の関数が選択できる。RRGACの算出にはいずれの値を用いてもよいが、特にCIE(1931)の2度視野が好ましく用いられる。
本発明の調光素子は、特定の光検出器を対象としたものである。言い換えると、本発明の調光素子は、特定の光検出器との組み合わせで機能を発揮するように設計されたものである。その例としては、カメラシステムとCMOSセンサのような撮像素子との組み合わせ、透過率可変窓と人の目との組み合わせ、透過率可変眼鏡と人の目との組み合わせ、反射率可変ミラーと人の目との組み合わせを挙げることができる。また、この光検出器は、複数の検出光波長領域を持つ光検出器である。具体的には、撮像用のCMOSセンサの例であればR,G,B、人の目の例であれば一例としてCIE等色関数のxバー,yバー,zバーの複数の検出光波長領域を有する。CIEの等色関数の例としては、CIE(1931)、CIE(1964)、CIE(2006)などが挙げられ、2度視野、10度視野の関数が選択できる。RRGACの算出にはいずれの値を用いてもよいが、特にCIE(1931)の2度視野が好ましく用いられる。
また、本発明の調光素子は、複数のレンズ系を有する光学系と、光学フィルタと、該光学フィルタを通した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の該光学フィルタの構成部材としても用いられる。さらに、本発明の調光素子は、複数のレンズを有する撮像光学系と組み合わせてレンズユニットを構成することができる。係るレンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続可能であり、該光学装置に接続することで、レンズユニットを透過した透過光が、上記光検出器に入射するようにレンズユニットが配置される。また、光検出器は複数の検出光波長領域を持ち、撮像素子であっても良い。
≪外部刺激により光吸収特性が変化する化合物≫
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する。係る外部刺激の例としては、電気的刺激、熱的刺激、光刺激、pH刺激などが挙げられる。外部刺激により光吸収特性が変化する化合物の例としては、エレクトロクロミック(EC)化合物、液晶化合物(ゲスト・ホスト液晶を含む)、サーモクロミック化合物、フォトクロミック化合物、pH応答性化合物が挙げられる。中でも安定性、外部からの制御の容易性、応答速度の観点から電気的に光吸収特性が変化する化合物が好ましく用いられる。電気的に光吸収特性が変化する化合物の中でもエレクトロクロミック化合物(EC化合物)、液晶化合物が好ましく用いられる。中でもEC化合物を用いた調光素子は透過率の高い光透過状態と透過率の低い減光状態を両立できるため、好ましく用いることができる。
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する。係る外部刺激の例としては、電気的刺激、熱的刺激、光刺激、pH刺激などが挙げられる。外部刺激により光吸収特性が変化する化合物の例としては、エレクトロクロミック(EC)化合物、液晶化合物(ゲスト・ホスト液晶を含む)、サーモクロミック化合物、フォトクロミック化合物、pH応答性化合物が挙げられる。中でも安定性、外部からの制御の容易性、応答速度の観点から電気的に光吸収特性が変化する化合物が好ましく用いられる。電気的に光吸収特性が変化する化合物の中でもエレクトロクロミック化合物(EC化合物)、液晶化合物が好ましく用いられる。中でもEC化合物を用いた調光素子は透過率の高い光透過状態と透過率の低い減光状態を両立できるため、好ましく用いることができる。
これらの外部刺激により光吸収特性が変化する化合物を用いて調光素子を作製するためには、単一の化合物の光吸収特性変化だけで高い色再現性を得ることは容易でなく、複数の化合物の光吸収特性変化を利用することが好ましく行われる。複数の化合物の光吸収特性変化を効果的に利用するためには、これら複数の化合物としてそれぞれ光吸収波長が異なる化合物を選択し、それらの吸収の強いところと弱いところを組み合わせることで色再現性を向上させることが有用である。
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収することで可変NDフィルタの色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。複数である理由は、使用する化合物が単数であれば、可変NDフィルタのスペクトルを構成するスペクトル形状が該化合物により決定され、その化合物のスペクトルの持つ色再現性以上の色再現性が望めず、色再現性に対する実質的な光源影響の抑制を図ることができないためである。
組み合わせる化合物は、3以上であることが好ましい。この理由を以下に記述する。
(1)異なる可変吸収スペクトルを有する化合物の組み合わせで可変透過率スペクトルを形成する際に、化合物の種類が多ければ、より詳細な吸収波長の補完が可能となる。その結果、より高い色再現性、及び色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することが可能になる。具体的には以下のように説明できる。濃度比で考えると化合物が2種類の場合には、片方の化合物の濃度比が決定すれば他方の濃度比に自由度はない。化合物が3種類以上の場合には、1種類の化合物の濃度比が決定しても、他の2種類の化合物の濃度比には自由度があり、より詳細な吸収波長の補完が可能となる。
(1)異なる可変吸収スペクトルを有する化合物の組み合わせで可変透過率スペクトルを形成する際に、化合物の種類が多ければ、より詳細な吸収波長の補完が可能となる。その結果、より高い色再現性、及び色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することが可能になる。具体的には以下のように説明できる。濃度比で考えると化合物が2種類の場合には、片方の化合物の濃度比が決定すれば他方の濃度比に自由度はない。化合物が3種類以上の場合には、1種類の化合物の濃度比が決定しても、他の2種類の化合物の濃度比には自由度があり、より詳細な吸収波長の補完が可能となる。
(2)NDフィルタが対象とする分光器は、人間の目やRGBセンサに代表されるように3種類以上の検出波長領域を持つ。そのため、複数の化合物が3種類以上の化合物であれば、それぞれの検出波長領域に対応する光吸収の程度を、比較的に他の化合物に対して自由度高く行うことができ、NWDMaxによる最適化の効果を飛躍的に増大させることができる。具体的な化合物の数としては、4以上が好ましく、6以上がさらに好ましい。
上述の観点から光検出器の複数の検出光波長領域のそれぞれ1つに、前記複数の化合物から選択される少なくとも1つの化合物が、可変吸収スペクトルのピークを有することが好ましい。これによって、光検出器の検出光波長領域に対応する光吸収の設定を他の化合物に対してさらに自由度高く行うことができる。この場合の光検出器の複数の検出光波長領域のそれぞれ1つとは、光検出器の規格化された感度スペクトルにおいて、最大となる検出波長領域の波長領域である。例としては、図2(b)において、複数の検出光波長領域(xバー、yバー、zバー)の検出光領域はxバー:580nm乃至680nm、yバー:500nm乃至580nm、zバー:425nm乃至500nmである。これらそれぞれの領域に複数の化合物から選択される化合物の少なくとも1つが、可変吸収スペクトルのピークを有することが好ましい。
≪色再現性向上の原理≫
従来の調光素子では、波長平坦性を高めることにより、色再現性に対する光源影響を抑制してきた。本発明の調光素子では、波長平坦性向上よりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。本発明の調光素子における色再現性向上の原理について以下に詳細に説明する。
従来の調光素子では、波長平坦性を高めることにより、色再現性に対する光源影響を抑制してきた。本発明の調光素子では、波長平坦性向上よりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。本発明の調光素子における色再現性向上の原理について以下に詳細に説明する。
調光素子を通して光検出器である撮像素子や人間の目に入る光の量は、調光素子の透過率に比例する。このため色について再現性を議論する場合には、光量によって規格化された透過率を用いて行うことになる。この規格化透過率のスペクトルが変化しなければ、色再現性に対する光源影響は補正によって除くことができる。しかし、本発明の調光素子は光吸収素子であり、複数の化合物を組み合わせて特定の形状を持つ吸光度(吸収)スペクトルを形成する。この場合、吸光度スペクトルの形状は、基本的には(理想的には)濃度によらず一定である(言い換えれば、規格化吸光度スペクトルは基本的に変化しない。)。一方、吸光度Absと透過率Tの関係はT=10-Absであるため、吸光度スペクトルの形状が一定であっても、規格化透過率のスペクトルは一定とはならず、吸光度の増大とともに平均値からの乖離幅は大きくなる。その結果、色再現性に対する光源影響を補正によって除くことが難しくなる。
そこで、本発明においては、主に光検出器、光源との関係で、色再現性に対する光源影響を抑制する。具体的には光検出器の感度と光源の強度との関係において、信号強度の高い波長領域における規格化透過率の平均値からの乖離を抑制する。例えば撮像素子に用いられる光検出器は、典型的には上記<光検出器>に記載したような波長感度特性を持ち、主要光源は、光源の項(後述)で記載するように、ある程度連続的な強度スペクトルを有する。このように検出器の感度、光源の強度は、それぞれ特徴的な波長依存性を持つ。この感度と強度の積に比例する信号強度が高い波長領域において、調光素子の透過率が他の波長領域と比較して大きく乖離している場合には、光源が変化した場合への影響が大きい。逆に、この信号強度が低い波長領域においては、調光素子の透過率の乖離が大きくても比較的に影響は少ない。本発明の調光素子は、この考え方を利用してより影響の大きな波長領域における規格化透過率の平均値からの乖離を抑制することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。
ここで「実質的な」という表現について説明する。例えばあらゆる光源、極端な例でいうと全ての波長においてレーザー光のような波長のそろった光源があり、それらに対する光源影響を抑制しようとする場合には、波長平坦性を向上させることになる。しかし主に調光素子を使用する環境で用いられる光は、自然光或いは自然光を模した光が多く、波長分布に幅のある、ある程度連続的なスペクトルを持つ。このような調光素子を使用する環境において用いられる光源に対応することができれば、実質的な光源影響を抑制することができることになる。
<可変透過率VT(λ)>
本発明の調光素子が有する、光吸収特性が変化する複数の化合物のそれぞれの光吸収特性変化(例として変化吸光係数Δε(λ))を組み合わせた可変透過率をVT(λ)とする。ここで、変化吸光係数Δε(λ)とは、光吸収特性が変化する化合物の減光状態におけるモル吸光係数から、同化合物の透過状態におけるモル吸光係数を差し引いたモル吸光係数の変化成分である。また、可変透過率VT(λ)は、調光素子の減光状態の透過率を、同調光素子の透過状態における透過率で割った変化成分である。光吸収特性が変化する、ある化合物mの変化吸光係数をΔεm(λ)、減光状態の濃度をCm、調光素子の光路長をLとすると、VT(λ)は以下の式で記述できる。尚、mは、1以上、調光素子に用いられた光吸収特性が変化する化合物の総数以下である。
本発明の調光素子が有する、光吸収特性が変化する複数の化合物のそれぞれの光吸収特性変化(例として変化吸光係数Δε(λ))を組み合わせた可変透過率をVT(λ)とする。ここで、変化吸光係数Δε(λ)とは、光吸収特性が変化する化合物の減光状態におけるモル吸光係数から、同化合物の透過状態におけるモル吸光係数を差し引いたモル吸光係数の変化成分である。また、可変透過率VT(λ)は、調光素子の減光状態の透過率を、同調光素子の透過状態における透過率で割った変化成分である。光吸収特性が変化する、ある化合物mの変化吸光係数をΔεm(λ)、減光状態の濃度をCm、調光素子の光路長をLとすると、VT(λ)は以下の式で記述できる。尚、mは、1以上、調光素子に用いられた光吸収特性が変化する化合物の総数以下である。
上記光路長L、減光状態の濃度Cmの例について以下に記述する。光路長Lの例としては、透過型NDフィルタでは光吸収特性が変化する化合物が保持されている層の厚さを挙げることができる。また、NDフィルタの裏面で反射して光がNDフィルタ内部を往復する場合には、その層の厚さの二倍を挙げることができる。濃度Cmは光吸収特性が変化する化合物が保持されている層の厚さにおける減光状態にある光吸収特性が変化する化合物の平均濃度である。ここで、減光状態にあるとは、光吸収特性が変化する化合物の変化しうる状態が、調光素子が透過状態の時より減光状態にある時に多くとられる状態であることを意味する。具体的な例としては、可視光領域の光吸収特性変化のあるEC化合物や二色性色素の可視光領域における光吸収の大きな状態を挙げることができる。
<波長平坦性TF>
光検出器の検出光波長領域におけるVT(λ)の波長平坦性をTFとする。この光検出器の検出光波長領域とは、光検出器が有意な分光感度を有する波長領域のことである。また光検出器の分光感度とは、その光検出器にとっての通常の構成で用いられた時の分光感度である。具体的には、光検出器がカメラシステムとして用いられる場合には、そのカメラシステムで通常用いられるUV、IRカットフィルタ、ローパスフィルタ等の他の光学要素を含んだ分光感度のことである。図2(a)には光検出器がカメラシステムとして用いられる場合のUV、IRカットフィルタ、ローパスフィルタの透過率の影響を含んだRGB撮像素子の分光感度の例を示す。また光検出器が人の目の場合には、CIEの等色関数がこれに当たる。
光検出器の検出光波長領域におけるVT(λ)の波長平坦性をTFとする。この光検出器の検出光波長領域とは、光検出器が有意な分光感度を有する波長領域のことである。また光検出器の分光感度とは、その光検出器にとっての通常の構成で用いられた時の分光感度である。具体的には、光検出器がカメラシステムとして用いられる場合には、そのカメラシステムで通常用いられるUV、IRカットフィルタ、ローパスフィルタ等の他の光学要素を含んだ分光感度のことである。図2(a)には光検出器がカメラシステムとして用いられる場合のUV、IRカットフィルタ、ローパスフィルタの透過率の影響を含んだRGB撮像素子の分光感度の例を示す。また光検出器が人の目の場合には、CIEの等色関数がこれに当たる。
図2(b)にはCIEの等色関数を示す。これらの光検出器の検出光波長領域の典型的な例として425nm以上680nm以下の領域を挙げることができる。さらに一つの例としては、光検出器の分光感度の最大値の10%以上の感度を持つ波長領域を挙げることができる。波長平坦性TFは、下記式の通り、VT(λ)の上記光検出器の検出光波長領域における最大値と最小値の差を平均値で割ることで求められる。
<光源>
調光素子に入射する光(最終的に調光素子を通して光検出器に入射する光)の光源について記述する。本発明の調光素子は色再現性に対する実質的な光源影響を抑制した調光素子である。光源とは、調光素子に入射する光の源(光源)そのものと光源から出射される光がフィルタ等を透過したものとを含む。例えば人工光源の照明を使用する場合には、その人工光源だけでなく、人工光源にフィルタ等を設置して照明等として使用する場合にはフィルタ等を含めたものを含む。例えば地球上の太陽光について考えると、地球の大気を透過して地表に到達した太陽光を含む。色温度によって光源を分類すると、色温度が4000K以下の低色温度、色温度が4000K乃至7000Kの中色温度、色温度が7000K以上の高色温度の三種類に分類することができる。
調光素子に入射する光(最終的に調光素子を通して光検出器に入射する光)の光源について記述する。本発明の調光素子は色再現性に対する実質的な光源影響を抑制した調光素子である。光源とは、調光素子に入射する光の源(光源)そのものと光源から出射される光がフィルタ等を透過したものとを含む。例えば人工光源の照明を使用する場合には、その人工光源だけでなく、人工光源にフィルタ等を設置して照明等として使用する場合にはフィルタ等を含めたものを含む。例えば地球上の太陽光について考えると、地球の大気を透過して地表に到達した太陽光を含む。色温度によって光源を分類すると、色温度が4000K以下の低色温度、色温度が4000K乃至7000Kの中色温度、色温度が7000K以上の高色温度の三種類に分類することができる。
本発明の調光素子は光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。ここで基準光源と対照光源との選択について、二つの方法がある。理解を容易にするために、調光素子を撮像装置の光学フィルタとして使用する場合を例として説明する。一方は撮像装置の設定(補正)を光源によっては変化させずに行う場合であり、他方は撮像装置の設定(補正)を光源によって変化させる場合である。それぞれの場合について、以下に説明する。
前者の場合、基準光源としては、調光素子を用いる頻度の高い昼間の自然光が好ましく選択され、これに対応する中色温度の光源が好ましく選択される。図3(a)に、昼間の自然光及び色温度約5000Kの擬似太陽光源のスペクトルの例を示す。定義された光源の例としては、CIEのD65、D55、D50、B光源、C光源等を挙げることができる。
基準光源に対する対照光源については、調光素子の使用される環境において重要な(比較的に高い頻度で使用される)光源を選択することで、調光素子のND性を高度に発現することが可能となる。対照光源の色温度の一例としては、2000K乃至9000Kの色温度を挙げることができる。それぞれの色温度に対応する光源の例として、図3(b)に、色温度3200K,5600K,8000Kの光源のスペクトルの例を示す。低色温度の光源は、高度の低い位置にある太陽光や白熱電灯やハロゲンランプといった伝統的によく使用される人工光として重要である。中色温度の光源は、基準光源としての昼間の自然光を模した人工光として重要である。高色温度の光源は例えば日陰における色を表現したい場合に重要である。中でも中色温度の基準光源との両立という観点で、対照光源としては2000K乃至4000K又は7000K乃至9000Kの色温度を持つ光源が重要である。
さらに上記基準光源との両立の観点に加えて、よく使用される人工光として2000K乃至4000Kの色温度を持つ光源が重要である。具体的な光源としては、前述の低色温度の光源の部分に挙げたものを、定義された光源の例としては、CIEのA光源を挙げることができる。
本発明の調光素子では、複数の色温度の光源に対して対応できることが好ましい。また中色温度を含む複数の色温度に対応できることがさらに好ましい。例示すると、中色温度と低色温度、中色温度と高色温度、中色温度と低色温度と高色温度とに対応できることが好ましい。ここで、ある色温度の光源に対応できるとは、その光源を用いた場合においても、NWDMax<NWDMaxFPを実現できることを意味する。複数の色温度の光源に対して対応できることで調光素子の適用範囲を拡大することができる。具体的には、光源の色温度に依らず調光素子は高い色再現性を発揮することができる。例えばカメラであれば光源の色温度を識別することなく、高い色再現性を発現することができる。
後者(撮像装置の設定(補正)を光源によって変化させる)の場合の例としては、光源の色温度を推定してその色温度ごとに撮像装置の設定(補正値)を変化させることが挙げられる。この補正値の例としては、ホワイトバランスの補正値を挙げることができる。この場合は、光源の色温度に基づく補正値の変化は、光源の推定色温度に基づく補正によって補償されるため、(複数の色温度の光源に対して対応できてもよいが、それに先立って)一つの色温度領域の複数の光源に対応できることが好ましい。具体的には、中色温度の基準光源と中色温度の対照光源、といった組み合わせになる。大きな傾向としては、同じ色温度領域から選択される異なる光源を用いた場合は、異なる色温度領域から選択される光源を用いた場合と比較して色再現性に対する光源影響は小さいことが多いが、例外もよく出現する。同じ色温度領域から選択される異なる光源を用いた場合の色再現性に対する光源影響の課題として多く上がるのは、強度変動の大きなスペクトルを持つ光源の影響である。具体的には、蛍光灯、LED光源を挙げることができる。図14には、昼白色蛍光灯(色温度5000K)のスペクトルを例示する。ここからスペクトル強度の大きな変化があることがわかる。特に蛍光灯は輝線の影響が大きく、色再現性に対する光源影響の課題となりやすい。このような光源を用いる場合の基準光源と対照光源の選択方法としては、基準光源として連続的なスぺクトルを持つ光源を選択し、対照光源として強度変動の大きなスペクトルを持つ光源を選択するのが好ましい。連続的なスぺクトルを持つ光源としては、中色温度の光源としては昼間の自然光、擬似太陽光源、D65、D55、D50、B光源、C光源等を挙げることができる。また、低色温度の光源としては、ハロゲンランプやA光源を挙げることができる。
また、調光素子の色再現性を向上させるためには、さまざまな色を忠実に再現することが望まれる。そのため、上述の光源光を様々な色のサンプルに反射させた光を調光素子に入射する光として想定するのが好ましい。色のサンプルの具体例としてはカラーチェッカー(例えばx−rite ColorChecker)を挙げることができる。
<NWDMax>
本発明の調光素子では、波長平坦性を高めることよりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。これを実現するためのパラメーターであるNWDMaxについて図1の光学装置の模式図を用いて説明する。
本発明の調光素子では、波長平坦性を高めることよりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先することで色再現性に対する実質的な光源影響を抑制する。これを実現するためのパラメーターであるNWDMaxについて図1の光学装置の模式図を用いて説明する。
調光素子1001の可変透過率をVT(λ)、透過状態の透過スペクトルをT0(λ)、光検出器(RGB撮像素子)1002の分光感度をR、G、BそれぞれDR(λ)、DG(λ)、DB(λ)とする。この光学装置1000にIn(λ)のスペクトルを持つ入射光1003が入射し、調光素子1001を透過した時の光検出器1002から得られる信号強度をそれぞれSRn,SGn,SBnとする。ここでn=0は基準光源(I0)、n=1は対照光源(I1)を意味する。この時、透過状態の時の信号強度SRTn(SRT0又はSRT1),SGTn(SGT0又はSGT1),SBTn(SBT0又はSBT1)は下式で記述される。
同様に、減光状態の調光素子(透過状態からの可変透過率をVT(λ)とする)の信号強度SRCn(SRC0又はSRC1),SGCn(SGC0又はSGC1),SBCn(SBC0又はSBC1)は下式で記述される。
減光状態の調光素子の透過率は、透過状態に可変透過率VT(λ)をかけた透過率として作用する。この透過状態の調光素子は、減光状態の調光素子より透過率の高い状態である。典型的には調光素子の最も透過率の高い状態である。調光素子の最も透過率の高い状態のスペクトルの与える色再現性が低い場合には、調光素子として有効に使用できる範囲で透過状態を選択することが好ましい。この調光素子の透過状態と減光状態との減光比(同じ光量の光を入射し、出射される光の光量の比(透過状態/減光状態))は、8(ND8)以上であることが望ましく、32(ND32)以上であることがさらに好ましい。これには以下の二つの理由がある。
(1)調光素子としての有用性
減光比が8以下である場合には、調光素子の調整可能な範囲が限定的であり調光素子としての適用範囲が強く限定されてしまう。また、減光比が32以上ある場合には、調光素子としての応用可能性が飛躍的に拡大する。
減光比が8以下である場合には、調光素子の調整可能な範囲が限定的であり調光素子としての適用範囲が強く限定されてしまう。また、減光比が32以上ある場合には、調光素子としての応用可能性が飛躍的に拡大する。
(2)減光比が大きいほど高い色再現性を実現することが困難になる。
光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する調光素子は光吸収素子であり、複数の化合物を組み合わせて特定の形状を持つ吸光度(吸収)スペクトルを形成する。この吸光度スペクトルの形状は、基本的には(理想的には)濃度によらず一定である。一方、光検出器である撮像素子や、人間の目に入る光量は「入射光量×透過率」によって決定される。このため光量によって規格化された色について再現性を議論する場合には規格化された透過率を用いて行うことになる。ここで吸光度Absと透過率Tの関係はT=10-Absであるため、吸光度の波長によるばらつきの影響は、吸光度が大きくなるほど指数関数的に大きくなる。このため減光比が8以下と小さい場合には、調光素子の減光度変化が色再現性へ与える影響は比較的に小さい。一方で減光比が8以上の場合には、調光素子の減光度変化が色再現性へ与える影響は大きくなり、32以上の場合には非常に大きくなる。本発明の調光素子の手法を用いることで、このような大きな減光比の領域においても、調光素子に高い色再現性を与えることができる。
光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する調光素子は光吸収素子であり、複数の化合物を組み合わせて特定の形状を持つ吸光度(吸収)スペクトルを形成する。この吸光度スペクトルの形状は、基本的には(理想的には)濃度によらず一定である。一方、光検出器である撮像素子や、人間の目に入る光量は「入射光量×透過率」によって決定される。このため光量によって規格化された色について再現性を議論する場合には規格化された透過率を用いて行うことになる。ここで吸光度Absと透過率Tの関係はT=10-Absであるため、吸光度の波長によるばらつきの影響は、吸光度が大きくなるほど指数関数的に大きくなる。このため減光比が8以下と小さい場合には、調光素子の減光度変化が色再現性へ与える影響は比較的に小さい。一方で減光比が8以上の場合には、調光素子の減光度変化が色再現性へ与える影響は大きくなり、32以上の場合には非常に大きくなる。本発明の調光素子の手法を用いることで、このような大きな減光比の領域においても、調光素子に高い色再現性を与えることができる。
この時、R、G、BのGを基準とする透過状態の光検出器のR及びBの検出波長領域の信号強度比WRTn(WRT0又はWRT1)、WBTn(WBT0又はWBT1)は下式のようにGを基準とするゲイン(逆数)で記述される。
WRTn=SGTn/SRTn
WBTn=SGTn/SBTn
WRTn=SGTn/SRTn
WBTn=SGTn/SBTn
同様に、Gを基準とする減光状態の光検出器のR及びBの検出光波長領域の信号強度比WRCn(WRC0又はWRC1)、WBCn(WBC0又はWBC1)は下式のようにGを基準とするゲイン(逆数)で記述される。
WRCn=SGCn/SRCn
WBCn=SGCn/SBCn
WRCn=SGCn/SRCn
WBCn=SGCn/SBCn
検出信号比変化の程度として用いるNWRn(NWR0又はNWR1)、NWBn(NWB0又はNWB1)は、下式のように上記透過状態の信号強度比と減光状態の信号強度比との変化(減光状態/透過状態)で記述される。
NWRn=WRCn/WRTn
NWBn=WBCn/WBTn
NWRn=WRCn/WRTn
NWBn=WBCn/WBTn
そして検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比NWDMaxは、上記NWRn、NWBnそれぞれの基準光源と対照光源との比(基準光源/対照光源又は対照光源/基準光源)の中で最も大きいものになる。即ち以下の4つの比の中で最大の値がNWDMaxである。
NWR1/NWR0
NWR0/NWR1
NWB1/NWB0
NWB0/NWB1
NWR1/NWR0
NWR0/NWR1
NWB1/NWB0
NWB0/NWB1
複数の化合物の光吸収特性変化スペクトルを組み合わせた透過スペクトルの波長平坦性の最小値をTFFP、その際のNWDMaxをNWDMaxFPとする。この最小値TFFPと、TFFPを与える可変透過率VTFP(λ)は、複数の化合物の光吸収特性変化スペクトルを用いて最小化計算を行うことによって算出できる。そしてNWDMaxFPは、VTFP(λ)と上記の式を用いて算出する。
本発明の調光素子では、波長平坦性を高めることよりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先する。そのため、本発明の調光素子の波長平坦性TFは、TF>TFFPであり、且つNWDMax<NWDMaxFPである。
NWDMaxの好ましい値について記載する。NWDMaxの値は、可変透過率VT(λ)の変化量によって変化するため、規格化された値で評価を行うことが好ましい。そこで、可変透過率VT(λ)の光検出器の複数の検出光波長領域における平均変化量を1/64(ND64)となるよう規格化した値で評価する。可変透過率のスペクトルは、透過率の変化によって形状が変化するため、規格化は、可変透過率スペクトルを可変吸光度スペクトル(−log(VT(λ))で与えられる)に変換して規格化を行い、可変透過率スペクトルに戻すことで行われる。NWDMax値の異なるフィルタ群の減光状態を通した場合のシミュレーション画像を官能的に評価したところ、同じフィルタの透過状態を通した場合の画像と比較して、画像に違和感がないと認識されるNWDMaxの範囲は1.03以下であった。このことから、好ましいNWDMaxの値は、平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下である。
≪エレクトロクロミック素子(EC素子)≫
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する。EC化合物を用いたEC素子は透過率の高い光透過状態と透過率の低い減光状態を両立できるため、最も好ましく用いられる。以下にEC素子を用いた調光素子について詳細に記載する。
本発明の調光素子は、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を組み合わせて光を吸収する。EC化合物を用いたEC素子は透過率の高い光透過状態と透過率の低い減光状態を両立できるため、最も好ましく用いられる。以下にEC素子を用いた調光素子について詳細に記載する。
EC素子としては、無機材料を用いたもの、有機材料を用いたものがあり、前者の例としては、酸化タングステンを用いたものが挙げられる。有機材料を用いたものとしては、高分子型、低分子型のEC素子があり、前者の例としては、ポリチオフェンを用いたものが挙げられる。色再現性の高い調光素子を作製するためには、光吸収特性を精密に制御する必要があり、この観点から低分子型のEC素子が好ましく用いられる。具体的には、それぞれ光吸収波長が異なる低分子EC化合物を選択し、それらの吸収の強いところと弱いところを組み合わせることで色再現性を向上させることが好ましく行われる。
典型的なEC素子は、少なくとも一方が透明な二枚の透明導電性電極を対向して配置して、その間の空間にEC化合物を含むEC層を配置して、周辺をシール材で封止して構成される。そしてそれらの電極間の電圧を制御することでEC素子を透過状態から減光状態に変化させることができる。
<電極>
電極としては、EC素子の動作環境において安定に存在し、外部からの電圧の印加に応じて速やかに酸化還元反応を進行させることのできる材料が好ましく用いられる。電極の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)といった透明導電性材料や金属等を用いることができる。電極のうち少なくとも一方が透明電極であることによって、EC素子の外部より効率的に光を取り込み、EC層中のEC化合物と相互作用させて、EC化合物の光学的特性を出射光に反映させることができる。
電極としては、EC素子の動作環境において安定に存在し、外部からの電圧の印加に応じて速やかに酸化還元反応を進行させることのできる材料が好ましく用いられる。電極の構成材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)といった透明導電性材料や金属等を用いることができる。電極のうち少なくとも一方が透明電極であることによって、EC素子の外部より効率的に光を取り込み、EC層中のEC化合物と相互作用させて、EC化合物の光学的特性を出射光に反映させることができる。
<シール材>
シール材としては、化学的に安定で、気体及び液体を透過しにくく、EC化合物の酸化還元反応を阻害しない材料で構成されていることが好ましい。例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ系、アクリル系樹脂等の有機材料、金属等を用いることができる。尚、シール材は、スペーサー材料を含有する等して二枚の電極間の距離を保持する機能を有していてもよい。このことによって、電極間距離を規定し、光路長を規定することができる。スペーサーの素材としては、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジビニルベンゼン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料を用いることができる。
シール材としては、化学的に安定で、気体及び液体を透過しにくく、EC化合物の酸化還元反応を阻害しない材料で構成されていることが好ましい。例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ系、アクリル系樹脂等の有機材料、金属等を用いることができる。尚、シール材は、スペーサー材料を含有する等して二枚の電極間の距離を保持する機能を有していてもよい。このことによって、電極間距離を規定し、光路長を規定することができる。スペーサーの素材としては、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジビニルベンゼン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料を用いることができる。
<エレクトロクロミック層(EC層)>
EC素子は、片側の電極において電気化学反応が進行する単極型のEC素子と、両側の電極において電気化学反応が進行する相補型のEC素子がある。本発明の調光素子としては、どちらのタイプのEC素子も用いることができるが、調光素子の透過状態と減光状態の減光比を大きくするためには相補型のEC素子が好ましい。典型的な相補型のEC素子では、酸化反応によって透過状態から減光状態に変化するアノード性のEC化合物と、還元反応によって透過状態から減光状態に変化するカソード性のEC化合物とを有する。典型的な相補型のEC素子の中でもEC化合物の電気化学反応以外の電気化学反応を高度に抑制したEC素子は、繰り返し動作させても減光状態の色変化が少なく、本発明の調光素子として好ましい形態である。
EC素子は、片側の電極において電気化学反応が進行する単極型のEC素子と、両側の電極において電気化学反応が進行する相補型のEC素子がある。本発明の調光素子としては、どちらのタイプのEC素子も用いることができるが、調光素子の透過状態と減光状態の減光比を大きくするためには相補型のEC素子が好ましい。典型的な相補型のEC素子では、酸化反応によって透過状態から減光状態に変化するアノード性のEC化合物と、還元反応によって透過状態から減光状態に変化するカソード性のEC化合物とを有する。典型的な相補型のEC素子の中でもEC化合物の電気化学反応以外の電気化学反応を高度に抑制したEC素子は、繰り返し動作させても減光状態の色変化が少なく、本発明の調光素子として好ましい形態である。
EC化合物の電気化学反応以外の電気化学反応を高度に抑制した相補型EC素子では、アノード性のEC化合物の反応が進行する時に用いられる電荷と、カソード性のEC化合物の反応が進行する時に用いられる電荷とが略等しくなる。そのため、このような相補型EC素子では、複数の化合物の光吸収特性変化を組み合わせた可変透過率VT(λ)を構成する際には、アノード性のEC化合物の光吸収特性変化とカソード性のEC化合物の光吸収特性変化とを区別して行う必要がある。具体的には、アノード性のEC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性のEC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とが略等しくなるように構成する。
ここで、減光状態の電荷濃度とは、減光状態のEC化合物の濃度を作り出すのに要する電荷を言い、EC材料を透過状態から減光状態にする反応に用いられる反応電子数をnとし、減光状態のEC化合物の濃度をcとするとn×cで表すことができる。また、電荷濃度の合計が略等しくなるとは、電荷濃度の合計の差異が10%以内、好ましくは5%以内であることを意味する。
上述のように、相補型のEC素子では、可変透過率スペクトルを構成する際に、アノード性のEC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性のEC化合物の減光状態の電荷濃度の制限がある。上述したように、この複数の化合物は、3以上の化合物であることが好ましい。相補型のEC素子では、この電荷濃度の制限下における可変透過率スペクトルの構成の自由度を確保するために、さらにアノード性のEC化合物、カソード性のEC化合物の双方を複数有することが好ましい。これは、上述の電荷濃度の制限があったとしても、アノード性EC化合物同士の間、カソード性のEC化合物同士の間では、それぞれの減光状態の濃度比を、自由度をもって設定できるためである。これによって本発明のNWDMaxによる最適化の効果を飛躍的に増大させることができる。
EC素子におけるEC化合物は、溶媒等に溶解されてEC層を形成していてもよく、電極に固定化されていてもよい。電極に固定化されている場合には、電極として多孔質の電極を用いることで吸着するEC化合物の濃度を多くすることにより、透過状態と減光状態の減光比を大きくすることができる。この場合のEC層の厚さは、透過率が変化するEC化合物の存在する範囲であり、その濃度はEC層の厚さにおける平均濃度である。
EC化合物は、酸化還元反応により、繰り返しEC素子の対象とする光波長領域において光吸収特性が変化する化合物である。EC化合物の中には、比較的に変化吸光係数が小さい化合物もある。このような比較的に変化吸光係数が小さい化合物も、小さいながらも光吸収特性が変化し、反応電荷に寄与するため、上述の電荷濃度を算出する上では、このような変化吸光係数が小さい化合物をEC化合物として含めて計算を行う。
アノード性EC化合物としては、例えば、チオフェン誘導体、芳香環を有するアミン類(例えば、フェナジン誘導体、トリアリルアミン誘導体)、ピロール誘導体、チアジン誘導体、トリアリルメタン誘導体、ビスフェニルメタン誘導体、キサンテン誘導体、フルオラン誘導体、スピロピラン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、アノード性EC化合物としては、低分子の芳香環を有するアミン類が好ましく、ジヒドロフェナジン誘導体が最も好ましい。これはこれらの化合物をEC化合物として用いることにより、所望の吸収スペクトルを有するEC素子を提供しやすく、繰り返し使用に対する高い耐久性を有しているためである。これらの化合物は、中性状態(還元体)において紫外領域に吸収ピークを有し、可視光領域には吸収を有さず、可視光領域の透過率が高い透過状態を取る。そして、酸化反応によりこれらの分子がラジカルカチオン(酸化体)となると、吸収ピークが可視光領域にシフトして減光状態となる。これらの分子は、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長を任意に設計することができる。ここでいう低分子とは、分子量で2000以下である。
カソード性EC化合物は特に限定はされないが、例えば、ピリジン誘導体、キノン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ピリジン誘導体、特にビオロゲン誘導体が最も好ましく用いられる。これらの化合物は、典型的には、二価のカチオン状態(酸化体)において紫外領域に吸収ピークを有し、可視光領域には吸収を有さず、可視光領域の透過率が高い透過状態を取る。そして、還元反応によりこれらの分子がラジカルカチオン(還元体)となると、吸収ピークが可視光領域にシフトして減光状態となる。これらの分子も、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長を任意に設計することができる。ここでいう低分子とは、カウンターイオンを含まない分子量で2000以下である。
≪色再現性の評価方法≫
本発明の調光素子の色再現性の評価方法について以下に記述する。本発明の調光素子では、減光度を変化させた時の色変化が、光源によって変化しないことが望まれる。そのため調光素子への入射光の光検出器における色について、調光素子の透過状態と減光状態とにおける変化(比)について、基準光源を基準として対照光源に適用した時の差を評価する。具体的には調光素子の減光度を変化させると明るさが変化するため、調光素子の透過状態と減光状態における明るさを揃えた上で、その色の差異をL*a*b*空間のa*b*平面にプロットして評価する。また数値的には、色差(CIEDE2000(ΔE00))を用いて評価する。
本発明の調光素子の色再現性の評価方法について以下に記述する。本発明の調光素子では、減光度を変化させた時の色変化が、光源によって変化しないことが望まれる。そのため調光素子への入射光の光検出器における色について、調光素子の透過状態と減光状態とにおける変化(比)について、基準光源を基準として対照光源に適用した時の差を評価する。具体的には調光素子の減光度を変化させると明るさが変化するため、調光素子の透過状態と減光状態における明るさを揃えた上で、その色の差異をL*a*b*空間のa*b*平面にプロットして評価する。また数値的には、色差(CIEDE2000(ΔE00))を用いて評価する。
この色差の値が小さいほど色再現性が高いと言える。その指標として広く知られている日本電色工業株式会社の表を参照して記載する。
C級許容差(ΔE00:6.5乃至13.0):JIS標準色票、マンセル色票などの1歩度に相当する色差。
B級許容差(ΔE00:3.2乃至6.5):印象レベルでは同じ色として扱える範囲であり、塗料業界やプラスチック業界では色違いでクレームになることがある色差。
A級許容差(ΔE00:1.6乃至3.2)色の離間比較では、ほとんど気づかれない色差レベルであり、一般的には同じ色だと思われているレベル。
AA級許容差(ΔE00:0.8乃至1.6):色の隣接比較でわずかに色差が感じられるレベル。一般の測色機関の誤差を含む許容色差の範囲。
C級許容差(ΔE00:6.5乃至13.0):JIS標準色票、マンセル色票などの1歩度に相当する色差。
B級許容差(ΔE00:3.2乃至6.5):印象レベルでは同じ色として扱える範囲であり、塗料業界やプラスチック業界では色違いでクレームになることがある色差。
A級許容差(ΔE00:1.6乃至3.2)色の離間比較では、ほとんど気づかれない色差レベルであり、一般的には同じ色だと思われているレベル。
AA級許容差(ΔE00:0.8乃至1.6):色の隣接比較でわずかに色差が感じられるレベル。一般の測色機関の誤差を含む許容色差の範囲。
≪効果≫
本発明の調光素子によれば、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物等の複数の化合物を用いた調光素子を備えた光学装置においても、色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することができる。本発明は、波長平坦性を高めることよりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先する。そのことで、波長平坦性を高めた場合よりもさらに色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することができる。
本発明の調光素子によれば、外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物等の複数の化合物を用いた調光素子を備えた光学装置においても、色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することができる。本発明は、波長平坦性を高めることよりも、光検出器の複数の検出光波長領域それぞれにおける検出信号比変化の、基準光源と対照光源との比を低減することを優先する。そのことで、波長平坦性を高めた場合よりもさらに色再現性に対する実質的な光源影響を抑制することができる。
具体的には以下のような光学装置を実現できる。例えば、可変NDフィルタを用いて光量を調整するカメラシステムにおいて、様々な照明下においても高い色再現性を発揮するカメラシステムが挙げられる。また、様々な照明下においても違和感のない色を示す透過率可変窓、透過率可変眼鏡(サングラス)が挙げられる。さらには、様々な照明下においても違和感のない色を示す透過率可変ミラー(防眩ミラー)が挙げられる。
以下、実施例により本発明の調光素子について説明する。具体的には、電気的に光吸収特性が変化する複数のEC材料を組み合わせて光を吸収する相補型EC素子を用いた可変NDフィルタを備えたEC素子を例に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔EC化合物〕
〈アノード性EC化合物〉
以下に、本実施例で用いたアノード性EC化合物を示す。但し、本発明に用いられるEC化合物はこれらに限定されるものではない。
〈アノード性EC化合物〉
以下に、本実施例で用いたアノード性EC化合物を示す。但し、本発明に用いられるEC化合物はこれらに限定されるものではない。
上記EC化合物(1)乃至(5)は、下記式(A)で示される反応を用いて合成できる。
上記式(A)中、R1は、水素原子、アルキル基またはフェノキシ基であり、R2は水素原子、アルキル基またはアリール基である。フェナジン環の還元とイソプロピル化を行うことにより、EC化合物(1)乃至(5)を合成することができる。
EC化合物(2)乃至(4)については、上記式(A)の反応に先立って、下記式(B)で示される置換フェナジンのハロゲン体(Xはハロゲン)と、オルト位(R3,R4)に置換アルキル基、アルコキシ基を有するフェニルボロン酸もしくはボロン酸エステル化合物の組み合わせで、公知のPd触媒によるカップリング反応で前駆体を合成することができる。尚、R1位置もR2位置と同様に行うことができる。
EC化合物(3)については、上記式(A)、(B)の反応に先立ってフェナジン環の7位のフェノキシ基を導入することになる。そのフェノキシ基は、フェナジンのハロゲン体に対して、フェノールを用いた公知のCu触媒によるカップリング反応で導入することができる。式(A)、(B)の反応の具体例の意味も含めて、EC化合物(3)の合成スキームを下記式(C)に示す。
EC化合物(3)は、例えば以下の手順で合成できる。先ず、一段階目の中間体を合成した。2,7−ジブロモフェナジン、フェノールをDMSO(ジメチルスフホキシド)中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。次に、CuI/Spartein錯体、炭酸カリウムを添加し、8時間還流する。反応溶液を減圧濃縮、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、黄色固体の一段階目の中間体を得た。
次に、一段階目の中間体、2−イソプロポキシ−6−メトキシフェニルボロン酸を、トルエン/1,4−ジオキサン混合溶媒中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。Pd(OAc)2、2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos)、リン酸三カリウムを添加し、15時間還流する。反応溶液を減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、黄色固体の二段階目の中間体を得た。
続いて、二段階目の中間体、2−ヨードプロパンをアセトニトリル/水混合溶媒中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。ハイドロサルファイトナトリウム、炭酸カリウムを添加し、10時間還流した。反応溶液を減圧濃縮、シリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、固体のEC化合物(3)を得た。
1H−NMR(重アセトン)δ(ppm):7.35(m,2H),7.19(t,1H),7.06(t,1H),6.99(d,2H),6.8−6.65(m,6H),6.49(d,1H),6.42(dd,1H),4.47(sep,1H),4.17(sep,1H),3.97(sep,1H),3.71(s,3H),1.51(d,6H),1.46(d,6H),1.18(d,6H)。
1H−NMR(重アセトン)δ(ppm):7.35(m,2H),7.19(t,1H),7.06(t,1H),6.99(d,2H),6.8−6.65(m,6H),6.49(d,1H),6.42(dd,1H),4.47(sep,1H),4.17(sep,1H),3.97(sep,1H),3.71(s,3H),1.51(d,6H),1.46(d,6H),1.18(d,6H)。
〈カソード性EC化合物〉
以下に、本実施例で用いたカソード性EC化合物を示す。但し、本発明に用いるEC化合物はこれらに限定されるものではない。
以下に、本実施例で用いたカソード性EC化合物を示す。但し、本発明に用いるEC化合物はこれらに限定されるものではない。
上記EC化合物(6)乃至(8)は、下記式(D)で示される反応を用いて合成できる。
上記式(D)中、R4は水素原子又はメチル基、R5は水素原子又はアルキル基である。例として、EC化合物(7)の具体的な合成法を記載する。
一段階目の反応は、反応容器に、3−メチル−4−クロロピリジン塩酸塩、4−ピリジルボロン酸、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリシクロヘキシルホスフィン、リン酸三カリウムをジオキサン/水溶媒で、窒素気流下、8時間加熱還流して反応させた。反応液を濃縮後、酢酸エチルで抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶で生成を行い3−メチル−4、4’−ビピリジンを得た。
二段階目の反応は、3−メチル−4、4’−ビピリジン、2,4−ジニトロブロモベンゼンをN,N,−ジメチルホルムアミド溶媒中、100℃で24時間反応させ、析出結晶をろ過、アセトニトリルで洗浄して、中間体1を得た。
三段階目の反応は、中間体1、o−トルイジンをエタノール溶媒中8時間還流反応させた。溶媒除去後、酢酸エチルを加え沈殿をろ過した。得られた結晶を水に溶解させ、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを溶解した水溶液を滴下し、室温で3時間撹拌した後、さらに、イソプロピルアルコールを加えて再結晶を行い、EC化合物(7)を得た。
1H−NMR(CD3CN)σ(ppm):9.00(d,2H),8.89(s,1H),8.83(d,1H),8.33(d,2H),8.12(d,1H),7.76−7.66(m,2H),7.64−7.51(m,6H),2.57(s,3H),2.27(s,3H),2.25(s,3H)。
1H−NMR(CD3CN)σ(ppm):9.00(d,2H),8.89(s,1H),8.83(d,1H),8.33(d,2H),8.12(d,1H),7.76−7.66(m,2H),7.64−7.51(m,6H),2.57(s,3H),2.27(s,3H),2.25(s,3H)。
上記EC化合物(9)、(10)は、下記式(E)で示される反応を用いて合成できる。
上記式(E)において、R6、R7は水素原子又はアルキル基(R6、R7を通して環を形成する)である。例として、EC化合物(9)の具体的な合成法を式(F)に記載する。
先ず中間体である9,9−ジメチル−2,7−ジアザフルオレンの合成法について記述する。技術文献(E.Botana,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.46,198−201(2007).)を参考に合成した。反応容器に3,8−フェナントロリン、水酸化カリウム、水を加え、90℃で加熱した。その後、水、過マンガン酸カリウムを混合し90℃に加熱した溶液を、反応溶液に滴下した。1時間反応させた後、析出した固体をろ過、クロロホルムで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥、濃縮することで、褐色粉末を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、黄色の固体である第一の中間体を得た。
反応容器に第一の中間体、ジエチレングリコール、ヒドラジン一水和物を加え、100℃で12時間反応させた。得られた黒赤色懸濁液に水を加え、ジクロロメタンで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥、濃縮することで、黒黄色固体を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、黄褐色の固体である第二の中間体を得た。
反応容器に第二の中間体、DMF(ジメチルホルムアミド)を加え、氷浴で冷却した。その後、カリウムtert−ブトキシドを加えて同温で30分間撹拌し、DMFに希釈したヨードメタンを滴下した。さらに同温で30分間撹拌した後、室温下で3時間反応させた。得られた赤褐色懸濁液を飽和重曹水に加え、酢酸エチルで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄し、乾燥、濃縮することで、黒黄色固体を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーで分離精製し、ベージュ色の固体である9,9−ジメチル−2,7−ジアザフルオレンを得た。
反応容器に9,9−ジメチル−2,7−ジアザフルオレン、過剰量の1−ブロモペプタンを加え、DMFを溶媒として19時間110℃で反応させた。析出物を回収し、水に溶解、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを過剰に加え、析出物をろ過回収、乾燥することで、EC化合物(9)を得た。
〔EC素子の作製〕
インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜が成膜されている透明導電性ガラスを2枚用意し、ITO膜同士が対向するように配置した。そして、2枚の透明導電性ガラスの外周を、粒径50μmのスペーサービーズを混合したシール材を用いて接着した。所定のEC化合物を溶解させた溶液を透明導電性ガラスに予め形成した注入口から注入することで、2枚の透明導電性ガラスとシール材によって形成されている空間内に当該溶液を充填した。その後、シール剤で注入口を封止して、EC素子を得た。
インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜が成膜されている透明導電性ガラスを2枚用意し、ITO膜同士が対向するように配置した。そして、2枚の透明導電性ガラスの外周を、粒径50μmのスペーサービーズを混合したシール材を用いて接着した。所定のEC化合物を溶解させた溶液を透明導電性ガラスに予め形成した注入口から注入することで、2枚の透明導電性ガラスとシール材によって形成されている空間内に当該溶液を充填した。その後、シール剤で注入口を封止して、EC素子を得た。
〔EC化合物の変化吸光係数Δε(λ)〕
単独のEC化合物の変化吸光度(減光状態における吸光度から、同化合物の透過状態における吸光度を差し引いた値)スペクトルを得た。具体的には、EC化合物を1mmol/Lの濃度で0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートの炭酸プロピレン溶液に溶解させた。白金メッシュ電極を作用電極、白金線電極を対極に、Ag/Ag+電極を参照極とし、光路長1mmのキュベット内で、EC化合物が減光状態となる電位を120s印加し、変化吸光度スペクトルを得た。
単独のEC化合物の変化吸光度(減光状態における吸光度から、同化合物の透過状態における吸光度を差し引いた値)スペクトルを得た。具体的には、EC化合物を1mmol/Lの濃度で0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートの炭酸プロピレン溶液に溶解させた。白金メッシュ電極を作用電極、白金線電極を対極に、Ag/Ag+電極を参照極とし、光路長1mmのキュベット内で、EC化合物が減光状態となる電位を120s印加し、変化吸光度スペクトルを得た。
次にアノード性EC化合物1種と、カソード性EC化合物1種とをそれぞれ0.05mol/Lの濃度で炭酸プロピレンに溶解させ、この溶液を用いてEC素子を作製した。EC化合物の電気化学反応以外の電気化学反応を高度に抑制した相補型のEC素子では、アノード性EC化合物、カソード性EC化合物、それぞれの減光状態を作り出すのに用いられる電荷量が等しくなる。そのことを利用し、基準化合物の変化吸光係数を用いて、反対側の極性となるEC化合物の変化吸光係数を決定した。ここで参照化合物としては、5,10−ジイソプロピル−5,10−ジヒドロフェナジン(Δε(480nm)=6.5×103mol-1Lcm-1)を基準として用いた。
図4(a)には、EC化合物(1)乃至(5)の、図4(b)にはEC化合物(6)乃至(10)の、それぞれの変化吸光係数Δε(λ)スペクトルを示す。尚、本実施例では相補型のEC素子であるために変化吸光係数Δε(λ)を決定してから可変透過率VT(λ)を算出しているが、変化吸光度から(Δε(λ)を決定せずに)直接可変透過率VT(λ)、またその波長平坦性TFを算出することも可能である。
(実施例1、比較例1)
図4に示したΔε(λ)スペクトルを有するアノード性EC化合物(1)、(2)、(3)、及びカソード性EC化合物(6)、(7)、(9)を用いて可変透過率VT(λ)を有するEC素子を構成した。この時の光検出器の検出光波長領域としては、図2(a)に記載の光検出器の425nm以上680nm以下の領域を用いた。ここでEC化合物(6)、(7)、(9)が光検出器のR領域に、EC化合物(2)、(3)が光検出器のG領域に、EC化合物(1)、(6)が光検出器のB領域に可変吸収スペクトルのピークを有する。また、このEC素子の透過状態と減光状態との減光比は64(=平均可変透過率1.56%)とした。
図4に示したΔε(λ)スペクトルを有するアノード性EC化合物(1)、(2)、(3)、及びカソード性EC化合物(6)、(7)、(9)を用いて可変透過率VT(λ)を有するEC素子を構成した。この時の光検出器の検出光波長領域としては、図2(a)に記載の光検出器の425nm以上680nm以下の領域を用いた。ここでEC化合物(6)、(7)、(9)が光検出器のR領域に、EC化合物(2)、(3)が光検出器のG領域に、EC化合物(1)、(6)が光検出器のB領域に可変吸収スペクトルのピークを有する。また、このEC素子の透過状態と減光状態との減光比は64(=平均可変透過率1.56%)とした。
図5に、複数のEC化合物(1)、(2)、(3)、(6)、(7)、(9)のΔε(λ)を組み合わせ、図3に示した各種光源に対しNWDMaxが小さくなるよう構成したスペクトルを示す。この時のEC化合物の組成を備えたEC素子を実施例1とし、減光状態の各EC化合物の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表1に示す。また、図6に、実施例1と同様のEC化合物群を組み合わせ、可変透過率の波長平坦性を最小化したスペクトルを示す。この組成のEC化合物を備えたEC素子を比較例1とし、各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表1に示す。
表1からアノード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とが実施例1では68.5mmol/L、比較例1では66.2mmol/Lと66.3mmol/Lで、略等しいことが確認できる。
図5(a)は、実施例1のEC素子の可変吸光度スペクトルVA(λ)、図5(b)は実施例1のEC素子のVA(λ)を透過率に変換した可変透過率VT(λ)を示す。また図6(a)は、比較例1のEC素子の可変吸光度スペクトルVA(λ)、図6(b)は比較例1のEC素子のVA(λ)を透過率に返還した可変透過率VTFP(λ)を示す。
検出光波長領域における波長平坦性TFは、実施例1が103%、比較例1が67.6%であり、比較例1の波長平坦性TFは、使用したEC化合物の組み合わせにおけるもっとも低い波長平坦性TFFPであった。
また、図3(a)に示した昼間の自然光のスペクトルを基準光源として用い、A光源、ハロゲンランプ、図3(b)に示した色温度のスペクトルの低色温度から高色温度までの5種類を対照光源として算出したNWDMaxの値を表2に示す。
表2の比較から、実施例1のEC素子は比較例1のEC素子に比べて、中色温度、低色温度、高色温度により対応できることが確認できた。
図7(a)には実施例1の、図7(b)には比較例1の、それぞれのEC素子の透過状態(ND0)と減光状態(ND64)の透過スペクトルを示す。また、図8(a)には実施例1の、(b)には比較例1の、それぞれのEC素子について、以下の条件を用いて色再現性に対する光源の影響を評価した結果を示す。
透過スペクトル:図7(a)、図7(b)
分光感度:図2(a)
基準光源:図3(a)に示した昼間の自然光スペクトル
対照光源:A光源、ハロゲンランプ、図3(b)に示した色温度のスペクトル
透過スペクトル:図7(a)、図7(b)
分光感度:図2(a)
基準光源:図3(a)に示した昼間の自然光スペクトル
対照光源:A光源、ハロゲンランプ、図3(b)に示した色温度のスペクトル
評価は、まず基準光源の光源光(被写体反射率=1)を用いて、EC素子を透過状態から減光状態へと変化させた時のホワイトバランス変化(倍数)を取得、これを補償する(変化をゼロにする)補正値を算出する。次に対照光源の光源光(被写体反射率=1)に対し、EC素子の透過状態(ND0)でホワイトバランスを実施し、先に取得した基準光源の補正値を適用する。この時の輝度を規格化したEC素子の減光状態の色をL*a*b*空間のa*b*平面上にプロットした。この図において減光状態のプロットが原点(ホワイトバランスを実施したEC素子の透過状態)に近いほど色再現性が高い。言い換えれば色再現性に対する光源の影響は小さい。意味合いとしては、異なった光源を使用し減光度が変化しても被写体としての白画像としても白く表現されることを意味する。
図8(a)と図8(b)とを比較すると、NWDMaxを優先した実施例1の方が、波長平坦性を優先した比較例1よりも減光状態のプロットが原点(透過状態)に近い。ここからNWDMaxを優先した実施例1のEC素子の方が、波長平坦性を優先した比較例1のEC素子よりも色再現性に対する光源の影響を低減できていることがわかる。表5には、図8に示した各対照光源を用いた場合の減光状態(プロット)と透過状態(原点)との色差(ΔE00)の値を示す。
ここから、同じEC化合物を組み合わせた場合であっても、波長平坦性を優先した場合と比較して、本発明のようにNWDMaxを優先した場合の方が光源影響を抑制できることがわかった。具体的には低色温度から高色温度までの5種類の対照光源全てについて光源影響を2.8倍乃至11倍抑制できることがわかった。また、実施例のEC素子を可変NDフィルタとして撮像素子を有するカメラに設置した際に、光源を変化させた場合のシミュレーション画像の官能評価を行った。実施例のEC素子は、基準光源、対照光源いずれの光源においても、素子の透過状態と減光状態それぞれの画像を比較して違和感が小さいと認識された。このことから、NWDMaxの値を平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下とすることで良好な色再現性が得られることがわかった。
基準光源と対照光源を変更した場合の、実施例1、比較例1のEC素子におけるNWDMaxの値を表4に、また、図9に、上記と同様にして色再現性に対する光源影響を評価した結果を示す。
表4の比較から、実施例1のEC素子は比較例1のEC素子に比べて、中色温度と低色温度とにより対応できることが確認できた。また、図9より、実施例1のプロットの方が、比較例1のプロットより、対照光源の減光状態のプロットが原点(透過状態)に近い。ここから実施例1のEC素子の方が、比較例1のEC素子よりも色再現性に対する光源影響を低減できていることがわかる。表7には、図9に示した各基準光源を用いた場合の減光状態(プロット)と透過状態(原点)との色差(ΔE00)の値を示す。
ここから、同じEC化合物を組み合わせた場合であっても、波長平坦性を優先した場合と比較して、本発明のようにNWDMaxを優先した場合の方が光源影響を抑制できることが分かった。具体的には3種類の基準光源全てについて光源影響を2.1倍乃至3.2倍抑制できることがわかった。また、実施例のEC素子を可変NDフィルタとして撮像素子を有するカメラに設置した際に、光源を変化させた場合のシミュレーション画像の官能評価を行った。実施例のEC素子は、基準光源、対照光源いずれの光源においても、素子の透過状態と減光状態それぞれの画像を比較して違和感が小さいと認識された。このことから、NWDMaxの値を平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下とすることで良好な色再現性が得られることがわかった。
(実施例2、3)
図10に、実施例1と同様のEC化合物群を用いて、異なった組成(濃度比)でEC層を構成した実施例2、3のEC素子のVT(λ)を示す。検出光波長領域における波長平坦性TFは、実施例2が110%、実施例3が97.5%であった。各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表6に示す。
図10に、実施例1と同様のEC化合物群を用いて、異なった組成(濃度比)でEC層を構成した実施例2、3のEC素子のVT(λ)を示す。検出光波長領域における波長平坦性TFは、実施例2が110%、実施例3が97.5%であった。各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表6に示す。
表6から実施例2、3のアノード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とがそれぞれ66.5mmol/Lと66.6mmol/L、67.6mmol/Lと67.5mmol/Lで、略等しいことが確認できる。表7には、図3(a)に示した昼間の自然光のスペクトルを基準光源として用い、ハロゲンランプを対照光源として算出したNWDMaxと波長平坦性TFの値を示す。表7には、同じ化合物群を用いて構成された実施例1(NWDMax優先)、比較例1(波長平坦性優先)のNWDMaxの値と波長平坦性も併記する。
表7より、実施例1乃至3のEC素子は、比較例1のEC素子よりも中色温度と低色温度とにより対応できることが確認できた。
図11に、実施例1乃至3、比較例1の各EC素子において、基準光源に図3(a)に示した昼間の自然光を用い、対照光源にハロゲンランプを用いた場合の、色再現性に対する光源影響を評価した結果を示す。図11より、実施例1乃至3の方が、比較例1よりも、対照光源の減光状態のプロットが原点(透過状態)に近い。ここからNWDMaxを優先した実施例1乃至3のEC素子の方が、波長平坦性を優先した比較例1のEC素子よりも、色再現性に対する光源影響を低減できていることがわかる。表7に、図11に示した減光状態(プロット)と透過状態(原点)との色差(ΔE00)の値を示す。
表7より、同じEC化合物を組み合わせた場合であっても、波長平坦性を優先した組成と比較して、本発明のようにNWDMaxを優先した組成の方が光源影響を抑制できることが分かった。具体的には3種類の濃度比全てについて光源影響を約3倍以上抑制できることがわかった。また、実施例のEC素子を可変NDフィルタとして撮像素子を有するカメラに設置した際に、光源を変化させた場合のシミュレーション画像の官能評価を行った。実施例のEC素子は、基準光源、対照光源いずれの光源においても、素子の透過状態と減光状態それぞれの画像を比較して違和感が小さいと認識された。このことから、NWDMaxの値を平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下とすることで良好な色再現性が得られることがわかった。
図4に示したスペクトルを有するEC化合物の組み合わせと組成とを変えて、実施例4,5、比較例2,3のEC素子を作製した。実施例4及び比較例2は、アノード性EC化合物(1)、(4)、(5)とカソード性EC化合物(6)、(7)、(9)を用いてEC層を構成した。実施例5及び比較例3は、アノード性EC化合物(1)、(2)、(3)とカソード性EC化合物(8)、(9)、(10)を用いてEC層を構成した。EC化合物(6)乃至(10)が光検出器のR領域に、EC化合物(2)乃至(4)が光検出器のG領域に、EC化合物(1)、(5)、(6)、(8)が光検出器のB領域に可変吸収スペクトルのピークを有する。また、各EC素子の透過状態と減光状態との減光比は64(=平均可変透過率1.56%)とした。光検出器の検出光波長領域としては、図2(a)に記載の光検出器の425nm以上680nm以下の領域を用いた。
図12に、実施例4、5、比較例2,3の可変透過率VT(λ)スペクトルを示す。表8には、各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を示す。
表8から実施例4,5のアノード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とがそれぞれ68.3mmol/L,63.5mmol/Lで、略等しいことが確認できる。また、比較例2,3のアノード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とがそれぞれ66.6mmol/Lと66.7mmol/L、61.3mmol/Lで、略等しいことが確認できる。
また、図3(a)に示した昼間の自然光のスペクトルを基準光源として用い、ハロゲンランプを対照光源として算出したNWDMaxの値を表9に示す。表9より、実施例1,4,5は、中色温度と低色温度とに対応できることが確認できる。
図13に、実施例1,4,5及び比較例1,2,3の各EC素子の色再現性に対する光源影響を評価した結果を示す。図13より、実施例1,4,5の方が、比較例1,2,3よりも、対照光源の減光状態のプロットが原点(透過状態)に近い。ここからNWDMaxを優先した実施例1,4,5のEC素子の方が、波長平坦性を優先した比較例1,2,3のEC素子よりも色再現性に対する光源影響を低減できていることがわかる。表9には、図13に示した減光状態(プロット)と透過状態(原点)との色差(ΔE00)の値を示す。
表12より、EC化合物が異なった場合であっても、波長平坦性を優先した場合と比較して、本発明のようにNWDMaxを優先した場合の方が色再現性に対する光源影響を抑制できることが分かった。具体的には3種類の化合物の組合せ全てについて光源影響を約2.4倍以上抑制できることがわかった。また、実施例のEC素子を可変NDフィルタとして撮像素子を有するカメラに設置した際に、光源を変化させた場合のシミュレーション画像の官能評価を行った。実施例のEC素子は、基準光源、対照光源いずれの光源においても、素子の透過状態と減光状態それぞれの画像を比較して違和感が小さいと認識された。このことから、NWDMaxの値を平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下とすることで良好な色再現性が得られることがわかった。
(実施例6)
図15に、比較例3と同様のEC化合物群を用いて、異なった組成(濃度比)でEC層を構成した実施例6のEC素子のVT(λ)を示す。検出光波長領域における波長平坦性TFは、130%であった。各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表10に示す。
図15に、比較例3と同様のEC化合物群を用いて、異なった組成(濃度比)でEC層を構成した実施例6のEC素子のVT(λ)を示す。検出光波長領域における波長平坦性TFは、130%であった。各EC化合物の減光状態の濃度(単位mmol/L)、及びアノード性EC化合物、カソード性EC化合物それぞれの電荷濃度の合計を表10に示す。
表10から実施例6のアノード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とカソード性EC化合物の減光状態の電荷濃度の合計とがそれぞれ60.2mmol/Lと60.2mmol/Lで、略等しいことが確認できる。
表11には、図3(a)に示した昼間の自然光のスペクトルを基準光源として用い、図14に示した昼白色蛍光灯を対照光源として算出したNWDMaxと波長平坦性TFの値を示す。表11には、同じ化合物群を用いて構成された比較例3(波長平坦性優先)のNWDMaxの値と波長平坦性も併記する。
表11より、実施例1乃至3のEC素子は、比較例1のEC素子よりも中色温度領域において、強度変動の大きなスペクトルを持つ蛍光灯により対応できることが確認できた。
図16に、実施例6、比較例3の各EC素子において、基準光源に図3(a)に示した昼間の自然光を用い、対照光源に図14に示した昼白色蛍光灯を用いた場合の、色再現性に対する光源影響を評価した結果を示す。図16より、実施例6の方が、比較例3よりも、対照光源の減光状態のプロットが原点(透過状態)に近い。ここからNWDMaxを優先した実施例6のEC素子の方が、波長平坦性を優先した比較例3のEC素子よりも、色再現性に対する光源影響を低減できていることがわかる。表11に、図16に示した減光状態(プロット)と透過状態(原点)との色差(ΔE00)の値を示す。
表11より、同じEC化合物を組み合わせた場合であっても、波長平坦性を優先した組成と比較して、本発明のようにNWDMaxを優先した組成の方が光源影響を抑制できることが分かった。具体的には比較的に強度変化の小さい昼間の自然光のスペクトルを基準光源として用い、強度変動の大きなスペクトルを持つ蛍光灯光源を対照光源として用いた場合に、光源影響を約26倍抑制できることがわかった。また、実施例のEC素子を可変NDフィルタとして撮像素子を有するカメラに設置した際に、光源を変化させた場合のシミュレーション画像の官能評価を行った。実施例のEC素子は、基準光源、対照光源いずれの光源においても、素子の透過状態と減光状態それぞれの画像を比較して違和感が小さいと認識された。このことから、NWDMaxの値を平均変化量をND64となるよう規格化した可変透過率VT(λ)を用いた値で1.03以下とすることで良好な色再現性が得られることがわかった。
Claims (24)
- 外部刺激により光吸収特性が変化する複数の化合物を有する調光素子であって、
前記複数の化合物は、それぞれ吸収波長が異なる化合物であり、
前記複数の化合物の光吸収特性を組み合わせた可変透過率VT(λ)を有し、
前記調光素子は、複数の検出光波長領域を持つ光検出器を対象としており、
NWDMax<NWDMaxFPであることを特徴とする調光素子。
NWDMax:光検出器に入射する検出光波長領域ごとの透過光の信号強度比の、前記調光素子の透過状態と減光状態とにおける比の、基準光源と対照光源の比(基準光源/対照光源又は対照光源/基準光源)の最大値
NWDMaxFP:前記検出光波長領域における前記VT(λ)の波長平坦性TFが最小値TFFPとなる前記複数の化合物の濃度比におけるNWDMax - 前記NWDMaxは、NWR1/NWR0、NWR0/NWR1、NWB1/NWB0、NWB0/NWB1のうちの最大値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の調光素子。
NWR0:前記基準光源から出射され前記調光素子を透過した透過光の赤の波長領域の光検出器における検出信号比変化
NWR1:前記対照光源から出射され前記調光素子を透過した透過光の赤の波長領域の光検出器における検出信号比変化
NWB0:前記基準光源から出射され前記調光素子を透過した透過光の青の波長領域の光検出器における検出信号比変化
NWB1:前記対照光源から出射され前記調光素子を透過した透過光の青の波長領域の光検出器における検出信号比変化
NWR0=WRC0/WRT0
NWR1=WRC1/WRT1
NWB0=WBC0/WBT0
NWB1=WBC1/WBT1
WRC0=SGC0/SRC0
WRC1=SGC1/SRC1
WRT0=SGT0/SRT0
WRT1=SGT1/SRT1
WBC0=SGC0/SBC0
WBC1=SGC1/SBC1
WBT0=SGT0/SBT0
WBT1=SGT1/SBT1
SRT0、SRT1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、透過状態の前記調光素子を透過した透過光の赤の波長領域の前記光検出器における検出信号強度
SGT0、SGT1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、透過状態の前記調光素子を透過した透過光の緑の波長領域の前記光検出器における検出信号強度
SBT0、SBT1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、透過状態の前記調光素子を透過した透過光の青の波長領域の前記光検出器における検出信号強度
SRC0、SRC1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、減光状態の前記調光素子を透過した透過光の赤の波長領域の前記光検出器における検出信号強度
SGC0、SGC1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、減光状態の前記調光素子を透過した透過光の緑の波長領域の前記光検出器における検出信号強度
SBC0、SBC1:前記基準光源、前記対照光源から出射し、減光状態の前記調光素子を透過した透過光の青の波長領域の前記光検出器における検出信号強度 - 前記NWDMaxは、変化量を1/64となるよう規格化した前記可変透過率VT(λ)を用いて1.03以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記複数の化合物は、電気的に光吸収特性が変化する化合物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記複数の化合物は、エレクトロクロミック化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記複数の化合物は、3以上の化合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記複数の化合物がアノード性のエレクトロクロミック化合物とカソード性のエレクトロクロミック化合物であり、
前記アノード性のエレクトロクロミック化合物の減光状態の電荷濃度の合計と前記カソード性のエレクトロクロミック化合物の減光状態の電荷濃度の合計とが略等しいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の調光素子。 - 前記アノード性のエレクトロクロミック化合物、前記カソード性のエレクトロクロミック化合物をそれぞれ複数有することを特徴とする請求項8に記載の調光素子。
- 前記光検出器の複数の検出光波長領域のそれぞれ1つに、前記複数の化合物から選択される化合物の少なくとも1つが、可変吸収スペクトルのピークを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記基準光源は、4000K乃至7000Kの色温度を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記基準光源は、昼間の太陽光であることを特徴とする請求項11に記載の調光素子。
- 前記基準光源は、擬似太陽光源、D50、D55、D65、B光源、C光源から選択されることを特徴とする請求項11に記載の調光素子。
- 前記対照光源は、2000K乃至4000K、或いは7000K乃至9000Kの色温度を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記対照光源が、ハロゲンランプ、白熱電灯及びA光源から選択されることを特徴とする請求項14に記載の調光素子。
- 前記基準光源及び前記対照光源の両方が、2000K乃至4000K、4000K乃至7000K、7000K乃至9000Kの三種類の色温度領域のうちから一つ選択される色温度領域をもち、前記対照光源が、蛍光灯、LED光源のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記光検出器は、撮像素子であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の調光素子。
- 減光状態に対する透過状態の比である減光比が8以上であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の調光素子。
- 前記減光比が32以上であることを特徴とする請求項18に記載の調光素子。
- TF>TFFPであることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか一項に記載の調光素子。
- 調光素子と、
前記調光素子を通した光を受光し、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器と、を有し、前記光検出器が撮像素子であり、前記調光素子が請求項1乃至20のいずれか一項に記載の調光素子であることを特徴とする光学装置。 - 複数のレンズを有する光学系と、前記光学系を透過した光を受光する撮像素子と、前記光学系と前記撮像素子との間に配置されている光学フィルタとを有する撮像装置であって、前記光学フィルタは、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の調光素子を有することを特徴とする撮像装置。
- 請求項1乃至20のいずれか一項に記載の調光素子と、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有するレンズユニットであって、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続可能であり、
前記レンズユニットは、光検出器を有する光学装置に接続することで、レンズユニットを通した光が、前記光学装置の前記光検出器に入射するように配置され、
前記光検出器は、前記調光素子が対象とする複数の検出光波長領域を持つ光検出器であることを特徴とするレンズユニット。 - 前記光検出器は、撮像素子であることを特徴とする請求項23に記載のレンズユニット。
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