JP2021091165A - 印刷物品質の調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット印刷において、インク組成物の優れた保存安定性を得つつ優れた印刷物品質を得ることが可能な印刷物品質の調整方法を提供する。【解決手段】顔料を含む顔料分散液と、界面活性剤、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤との混合時期に基づきインクジェット印刷の印刷物品質を調整する、印刷物品質の調整方法。【選択図】なし

Description

本発明は、印刷物品質の調整方法に関する。
インクジェット印刷は、非常に微細なノズルからインクジェット用インク組成物を被記録媒体に直接吐出し、インクジェット用インク組成物を付着させて文字や画像を得る印刷方式である(例えば、下記特許文献1参照)。インクジェット印刷では、デジタル可変データによるオンデマンド印刷が可能なことに加え、被記録媒体に対して非接触で印刷可能であるという大きなメリットがある。
インクジェット用インク組成物では、例えば、顔料が液状媒体中に分散している。インクジェット用インク組成物において顔料が凝集すると、インクジェットヘッドの吐出ノズルが詰まることにより吐出安定性が低下する。そのため、顔料の分散安定性を良好に維持するために種々の検討がなされている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開2017−177353号公報
ところで、インクジェット印刷に対しては、インク組成物の優れた保存安定性を得つつ優れた印刷物品質(印刷後の印刷物の品質)を得ることが求められ、印刷物品質を調整する新たな方法が求められている。
本発明の一側面は、インクジェット印刷において、インク組成物の優れた保存安定性を得つつ優れた印刷物品質を得ることが可能な印刷物品質の調整方法を提供することを目的とする。
本発明者は、顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性を低下させる成分として特定の添加剤(界面活性剤、バインダー樹脂及び有機溶剤)が作用し得ることを見出した上で、顔料を含む顔料分散液と、当該添加剤と、を混合してインクジェット用インク組成物を得る場合において、添加剤の混合時期に応じてインク組成物の保存安定性を制御可能であることを見出し、添加剤の混合時期を調整することによって、インク組成物の好適な保存安定性を確保しつつ、インクジェット印刷の印刷物品質を好適に調整し得ることを見出した。
本発明の一側面は、顔料を含む顔料分散液と、界面活性剤、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤との混合時期に基づきインクジェット印刷の印刷物品質を調整する、印刷物品質の調整方法を提供する。
本発明の一側面に係る印刷物品質の調整方法によれば、顔料と、顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性を低下させる添加剤とを分けて用いることから、保管時において顔料の分散を良好に維持してインク組成物の優れた保存安定性を得ることができる。これにより、添加剤の混合時期を調整することによってインクジェット印刷の印刷物品質を好適に調整可能であり、インクジェット印刷の優れた印刷物品質を得ることができる。
本発明の一側面によれば、インクジェット印刷において、インク組成物の優れた保存安定性を得つつ優れた印刷物品質を得ることが可能な印刷物品質の調整方法を提供することができる。
マイクロリアクターの模式図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、及び、それに対応するメタクリル酸の総称を表し、「(メタ)アクリレート」等の他の類似の表現においても同様である。
本実施形態に係る印刷物品質の調整方法では、顔料を含む顔料分散液と、界面活性剤、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤(以下、場合により「添加剤A」)との混合時期に基づきインクジェット印刷の印刷物品質を調整する。本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によれば、インクジェット用インク組成物(以下、場合により、単に「インク組成物」という)が、顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性を低下させる添加剤Aを含有するものの、顔料と添加剤Aとを分けて用いることから、保管時において顔料の分散を良好に維持してインク組成物の優れた保存安定性を得ることができる(例えば、粘度の経時変化を好適に抑制できる)。これにより、添加剤Aの混合時期を調整することによってインクジェット印刷の印刷物品質を好適に調整可能であり、インクジェット印刷の優れた印刷物品質を得ることができる。
本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によれば、保管時において顔料の分散を良好に維持してインク組成物の優れた保存安定性を得ることが可能であることから、例えば、インク組成物を吸収しない非吸収性被記録媒体であるプラスチックフィルムや、インク組成物を吸収しにくい難吸収性被記録媒体であるコート紙で発生しやすいモットリング(印刷物のインク濃度が高い箇所において、インク液滴が着弾後、被記録媒体上でインク組成物の乾燥ムラが生じ、印刷面が斑状になる現象)を抑制することができる。
また、本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によれば、スジ状の印刷不良が発生することを抑制することが可能であり、例えば、上述の非吸収性被記録媒体及び難吸収性被記録媒体への印刷において、インク液滴が被記録媒体上で濡れ広がりにくいために発生しやすいスジ状の印刷不良を抑制することができる。さらに、本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によれば、インク組成物中の顔料の分散安定性の不良により、吐出液滴の飛行曲がりやノズル詰まりの発生に伴い生じるスジ状の印刷不良を抑制することができる。
加えて、本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によれば、光学濃度(OD値)の高い印刷物を得ることが可能であり、例えば、インク組成物を吸収しやすい吸水性被記録媒体である普通紙に対し光学濃度の高い印刷物を得ることができる。
本実施形態に係る印刷物の製造方法では、顔料分散液と添加剤Aとを混合してインク組成物を得てから30分以上1か月以内にインク組成物を印刷してよい。インク調製後における印刷までの経過時間が30分以上であることにより、混合直後の不均一な混合状態(例えば、インク組成物の粘度が一定でない状態)で印刷を行うことを避けることができる。経過時間が1か月以内であることにより、顔料の過剰な凝集に起因する不具合の発生を抑制しやすい。そのため、30分以上1か月以内にインク組成物を印刷することにより、優れた顔料の分散安定性を得やすいことから優れた吐出安定性を得やすいため、インクジェット印刷の優れた印刷物品質を得やすい。また、分散状態が適度に不安定化した顔料が着弾後に凝集すること等により、モットリングを抑制しやすいと共に発色性等にも優れ、印刷物品質を更に向上させることができる。分散状態が適度に不安定化した顔料が着弾後に凝集する理由は定かではないが、着弾後に起こる溶媒の揮発によって系に変化があり、分散状態が崩れることで顔料が凝集すると推測される。但し、着弾後における顔料の凝集の要因は当該要因に限定されない。
本実施形態においてインク組成物は、水性媒体を含有するインクジェット用水性インクであってよい。インクジェット用水性インクは、耐光性に優れた印刷物の製造に使用でき、かつ、有機溶剤系インクのような火災、変異原性等の危険性を低減できる等の利点を有する。そのため、インクジェット用水性インクは、普通紙、コート紙、アート紙、塩化ビニル、プラスチックフィルム(ポリエステルフィルム等)、金属、布帛などの様々な被記録媒体への印刷に用いることができる。
本実施形態に係る印刷物品質の調整方法は、顔料を含む顔料分散液と、添加剤Aとを混合してインク組成物を得るインク調製工程を備える。本実施形態に係る印刷物品質の調整方法では、インク調製工程における顔料分散液と添加剤Aとの混合時期に基づきインクジェット印刷の印刷物品質を調整することができる。
インク調製工程では、顔料を含む顔料分散液(以下、場合により「母液A」という)と、添加剤Aを含む液(以下、場合により「母液B」という)と、を混合することによりインク組成物を得てよい。母液Aは、顔料及び液状媒体を含み、添加剤Aを含まなくてよい。母液Bは、添加剤A及び液状媒体を含み、顔料を含まなくてよい。母液Bは、顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性を低下させる成分として添加剤Aを含む。母液A及び母液Bは別々に保管できる。インク調製工程では、母液Aと、母液Bと、バインダー樹脂を含む液とを混合することによりインク組成物を得てもよい。
顔料分散液及び添加剤Aは、インク組成物を印刷機に供給する前に互いに混合されてよく、印刷機内において互いに混合されてもよい。インク組成物を印刷機に供給する前に顔料分散液及び添加剤Aを互いに混合する場合、顔料分散液と添加剤Aとを混合して得られたインク組成物を印刷機に供給することができる。顔料分散液及び添加剤Aを印刷機内において互いに混合する場合、顔料分散液及び添加剤Aを別々に印刷機内に供給できる。顔料分散液及び添加剤Aを印刷機内において互いに混合する場合、印刷機内の容器で顔料分散液及び添加剤Aを混合することによりインク組成物を得た後にインク組成物をインクジェットヘッドへ供給してよく、顔料分散液及び添加剤Aをインクジェットヘッド内で互いに混合してもよい。印刷機は、顔料分散液を収容する容器と、添加剤Aを含む液を収容する容器とを備えてもよい。顔料分散液及び添加剤Aを印刷機内において互いに混合する場合、印刷機内に備えられたスタティックミキサーを用いて顔料分散液及び添加剤Aを互いに混合してよい。
本実施形態に係る印刷物の製造方法は、上述のインク調製工程と、インク組成物を被記録媒体に印刷(インクジェット印刷)して印刷物を得る印刷工程と、を備え、インク調製工程において、本実施形態に係る印刷物品質の調整方法によりインクジェット印刷の印刷物品質を調整する。
インク組成物は、複写機で一般的に使用されているコピー用紙(PPC紙)等の、インク吸収性に優れた被記録媒体、インクの吸収層を有する被記録媒体、インク組成物の吸収性を全く有しない非吸収性の被記録媒体、又は、インク組成物の吸水性の低い難吸収性の被記録媒体に印刷することができる。被記録媒体としては、普通紙、布帛、段ボール、木材、インクジェット専用紙、アート紙、コート紙、微塗工紙、プラスチックフィルム(樹脂フィルム、重合体フィルム)等が挙げられる。
インク組成物は、プラスチックフィルム等の基材に印刷することができる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;ナイロンフィルム等のポリアミド系フィルム;ポリスチレンフィルム;ポリビニルアルコールフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリアクリロニトリルフィルム;ポリ乳酸フィルムなどが挙げられる。
インク組成物は、水性媒体(A)、顔料等の色材(B)、顔料分散剤(C)、バインダー樹脂(D)、尿素結合を有する化合物(E)(以下、場合により「化合物(E)」という)、有機溶剤(F)、界面活性剤(G)、その他の添加剤等を含有することができる。液状媒体としては、水性媒体(A)、有機溶剤(F)等を用いることができる。以下、インク組成物の構成成分について説明する。
(水性媒体(A))
水性媒体(A)としては、水を単独で用いてよく、水は、有機溶剤(F)との混合溶媒として使用してもよい。水としては、具体的には、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の、純水又は超純水を使用することができる。水性媒体(A)の含有量は、インク組成物の全量に対して、1〜98質量%又は5〜95質量%であってよい。
(色材(B))
色材(B)は、顔料を含み、顔料に加えて染料を含んでもよい。色材(B)としては、公知慣用の顔料、染料等を使用することができる。色材(B)としては、顔料が樹脂で被覆された着色剤を使用することもできる。
顔料としては、特に限定はなく、水性グラビアインクや水性インクジェット記録用インクにおいて通常使用される無機顔料又は有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の方法で製造されたカーボンブラックなどを使用することができる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、レーキ顔料(塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料としては、未酸性処理顔料及び酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
前記顔料のうち、ブラックインクに使用可能なカーボンブラックとしては、例えば、三菱化学株式会社製のNo.2300、No.2200B、No.900、No.960、No.980、No.33、No.40、No,45、No.45L、No.52、HCF88、MA7、MA8、MA100等;コロンビア社製のRaven5750、Raven5250、Raven5000、Raven3500、Raven1255、Raven700等;キャボット社製のRegal 400R、Regal 330R、Regal 660R、Mogul L、Mogul 700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400等;デグサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、同S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同1400U、Special Black 6、同5、同4、同4A、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180等を使用することができる。
イエローインクに使用可能な顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。マゼンタインクに使用可能な顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、176、184、185、202、209、269、282等;C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。シアンインクに使用可能な顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
白インクに使用可能な顔料の具体例としては、シリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。これらは表面処理されていてもよい。
顔料は、インク組成物中に安定に存在させるために、水性媒体(A)に良好に分散させる手段を講じてあることが好ましい。前記手段としては、例えば、(i)顔料を顔料分散剤(C)と共に、後述の分散方法で水性媒体(A)中に分散させる方法;(ii)顔料の表面に分散性付与基(親水性官能基及び/又はその塩)を、直接に、又は、アルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させた自己分散型顔料を水性媒体(A)に分散及び/又は溶解させる方法が挙げられる。
自己分散型顔料としては、例えば、顔料に物理的処理又は化学的処理を施し、分散性付与基、又は、分散性付与基を有する活性種を顔料の表面に結合(グラフト)させたものを使用することができる。自己分散型顔料は、例えば、真空プラズマ処理、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理;オゾンによる酸化処理;水中で酸化剤により顔料表面を酸化する湿式酸化法;p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることにより、フェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等によって製造することができる。
自己分散型顔料を含有する水性インクは、顔料分散剤(C)を含む必要がないため、顔料分散剤(C)に起因する発泡等がほとんどなく、吐出安定性に優れたインク組成物を調製しやすい。また、自己分散型顔料を含有する水性インクは、取り扱いが容易で、顔料分散剤(C)に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるため、顔料をより多く含有することが可能となり、印字濃度の高い印刷物の製造に使用することができる。
自己分散型顔料としては、市販品を利用することも可能であり、そのような市販品としては、マイクロジェットCW−1(商品名、オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET200、CAB−O−JET300(以上、商品名、キャボット社製)等が挙げられる。
色材(B)の含有量は、スジの発生を防止しやすい観点、及び、色材(B)の優れた分散安定性を維持し、かつ、印刷物の印字濃度や耐擦過性を向上させやすい観点から、インク組成物の全量に対して、0.5〜20質量%が好ましく、0.5質量%を超え20質量%以下がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましく、1.5〜15質量%が特に好ましく、2〜10質量%が極めて好ましく、3〜8質量%が非常に好ましく、4〜6質量%がより一層好ましい。
(顔料分散剤(C))
顔料分散剤(C)としては、例えば、ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル樹脂;スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体等の水性樹脂;前記水性樹脂の塩などを使用することができる。顔料分散剤(C)としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPBシリーズ;ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperbykシリーズ;BASF社製のEFKAシリーズ;日本ルーブリゾール株式会社製のSOLSPERSEシリーズ;エボニック社製のTEGOシリーズ等を使用することができる。
顔料分散剤(C)としては、粗大粒子を著しく低減でき、その結果、インク組成物をインクジェット記録方式で吐出する場合に求められる良好な吐出安定性を付与しやすい観点から、下記ポリマー(C1)が好ましい。
ポリマー(C1)としては、アニオン性基を有するものを使用することができる。中でも、水への溶解度が0.1g/100mL以下であり、かつ、塩基性化合物による前記アニオン性基の中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成可能な数平均分子量1000〜6000のポリマーを使用することが好ましい。
ポリマー(C1)の水への溶解度は、次のように定義できる。すなわち、まず、目開き250μm及び90μmの篩を用いて250μm〜90μmの範囲に粒子径を整えたポリマー(C1)0.5gを、400メッシュ金網を加工した袋に封入し、水50mLに浸漬、25℃の温度下で24時間緩やかに攪拌放置する。24時間浸漬後、ポリマー(C1)を封入した400メッシュ金網を、110℃に設定した乾燥機で2時間乾燥させる。ポリマー(C1)を封入した400メッシュ金網の水浸漬前後の質量の変化を測定し、次式により溶解度を算出する。
溶解度[g/100mL]=(浸漬前のポリマー封入400メッシュ金網[g]−浸漬後のポリマー封入400メッシュ金網[g])×2
また、塩基性化合物によるアニオン性基の中和率を100%にしたときに水中で微粒子を形成するか否かは、次のように判断できる。
(1)ポリマー(C1)の酸価を予め、JIS試験方法K 0070−1992に基づく酸価測定方法により測定する。具体的には、テトラヒドロフランにポリマー(C1)0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより酸価を求める。
(2)水50mLに対してポリマー(C1)を1g添加後、得られた酸価を100%中和するだけの0.1mol/L水酸化カリウム水溶液を加え、100%中和とする。
(3)100%中和させた液を、25℃の温度下で、2時間超音波洗浄器(株式会社エスエヌディ製、超音波洗浄器US−102、38kHz自励発振)中で超音波を照射させた後、24時間室温で放置する。
24時間放置後、液面から2cmの深さにある液をサンプル液として、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA−ST150」)を用い、微粒子形成による光散乱情報が得られるか判定することにより、微粒子が存在するか確認する。
前記微粒子の粒子径は、ポリマー(C1)が形成する微粒子の水中での安定性をより一層向上させる観点から、5〜1000nmが好ましく、7〜700nmがより好ましく、10〜500nmが更に好ましい。また、前記微粒子の粒度分布は、狭いほうがより分散安定性に優れる傾向にあるが、粒度分布が広い場合であっても、従来よりも優れた分散安定性を備えたインク組成物を得ることができる。なお、前記粒子径及び粒度分布は、前記微粒子の測定方法と同様に、動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、動的光散乱式粒子径測定装置「マイクロトラック粒度分布計UPA−ST150」)を用いて測定できる。
ポリマー(C1)の中和率は、次式により決定できる。
中和率(%)={(塩基性化合物の質量[g]×56×1000)/(ポリマー(C1)の酸価[mgKOH/g]×塩基性化合物の当量×ポリマー(C1)の質量[g])}×100
ポリマー(C1)の酸価は、JIS試験方法K 0070−1992に基づいて測定できる。具体的には、テトラヒドロフランに試料0.5gを溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.1M水酸化カリウムアルコール溶液で滴定することにより求めることができる。
ポリマー(C1)の数平均分子量は、水性媒体(A)中における顔料等の色材(B)の凝集などを効果的に抑制でき、色材(B)の良好な分散安定性を備えたインク組成物を得やすい観点から、1000〜6000が好ましく、1300〜5000がより好ましく、1500〜4500が更に好ましい。なお、数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とし、具体的には以下の条件で測定した値とする。
[数平均分子量(Mn)の測定方法]
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用する。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成する。
{標準ポリスチレン}
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
ポリマー(C1)としては、水に対し、未中和の状態では不溶又は難溶性であり、かつ、100%中和された状態では微粒子を形成するポリマーを使用することができ、親水性基であるアニオン性基のほかに疎水性基を1分子中に有するポリマーを用いることができる。
このようなポリマーとしては、例えば、疎水性基を有するポリマーブロックと、アニオン性基を有するポリマーブロックと、を有するブロックポリマーが挙げられる。ポリマー(C1)において、前記アニオン性基の数及び水への溶解度は、必ずしも、酸価や、ポリマー設計時のアニオン性基の数で特定されるものではなく、例えば、同一の酸価を有するポリマーであっても、分子量の低いものは水への溶解度が高くなる傾向にあり、分子量の高いものは水への溶解度は下がる傾向にある。このことから、ポリマー(C1)を水への溶解度で特定する。
ポリマー(C1)は、ホモポリマーであってもよいが、共重合体であることが好ましく、ランダムポリマーであっても、ブロックポリマーであっても、交互ポリマーであってもよいが、中でもブロックポリマーであることが好ましい。また、ポリマー(C1)は、分岐ポリマーであってもよいが、直鎖ポリマーであることが好ましい。
ポリマー(C1)は、設計の自由度からビニルポリマーであることが好ましく、所望される分子量や溶解度特性を有するビニルポリマーを製造する方法として、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、及び、リビングアニオン重合といった「リビング重合」を用いることにより製造することが好ましい。
中でも、ポリマー(C1)は(メタ)アクリレートモノマーを原料の1つとして用いて製造されるビニルポリマーであることが好ましく、そのようなビニルポリマーの製造方法としては、リビングラジカル重合又はリビングアニオン重合が好ましく、さらに、ブロックポリマーの分子量や各セグメントをより精密に設計できる観点から、リビングアニオン重合が好ましい。
リビングアニオン重合によって製造されるポリマー(C1)としては、具体的には、下記一般式(c1)で表されるポリマーを用いることができる。
Figure 2021091165
一般式(c1)中、Aは、有機リチウム開始剤残基を表し、Aは、疎水性基を有するポリマーブロックを表し、Aは、アニオン性基を有するポリマーブロックを表し、nは、1〜5の整数を表し、Bは、芳香族基又はアルキル基を表す。
一般式(c1)中、Aは、有機リチウム開始剤残基を表す。有機リチウム開始剤(重合開始剤)の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、へキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトシキメチルリチウム等のアルキルリチウム;ベンジルリチウム、α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、フェニルエチルリチウム等のフェニルアルキレンリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウムなどのアルキニルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体などが挙げられる。
有機リチウム開始剤では、有機基とリチウムとの結合が開裂し有機基側に活性末端が生じ、そこから重合が開始される。したがって、得られるポリマー末端には有機リチウム由来の有機基が結合している。本明細書においては、当該ポリマー末端に結合した有機リチウム由来の有機基を「有機リチウム開始剤残基」と称する。例えば、メチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤残基はメチル基となり、ブチルリチウムを開始剤として使用したポリマーであれば、有機リチウム開始剤残基はブチル基となる。
一般式(c1)中、Aは、疎水性基を有するポリマーブロックを表す。Aは、上述のとおり適度な溶解性のバランスを取る目的の他、顔料と接触したときに顔料への吸着の高い基であることが好ましく、同様の観点から、Aは、芳香環又は複素環を有するモノマー由来の構造単位を有するポリマーブロックであることが好ましい。芳香環又は複素環を有するモノマー由来の構造単位を有するポリマーブロックとは、具体的には、スチレン系モノマー等の、芳香族環を有するモノマーや、ビニルピリジン系モノマー等の、複素環を有するモノマーを単独重合又は共重合して得たホモポリマー又はコポリマーのポリマーブロックである。
芳香環を有するモノマーとしては、スチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−tert−(1−エトキシメチル)スチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−フロロスチレン、α−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン等のスチレン系モノマーや、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。複素環を有するモノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン系モノマーなどが挙げられる。芳香環又は複素環を有するモノマーのそれぞれは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
一般式(c1)中、Aは、アニオン性基を有するポリマーブロックを表す。Aは、上述のとおり適度な溶解性を与える目的の他、顔料分散体となったときに水中で分散安定性を付与する目的がある。
ポリマーブロックAにおけるアニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。中でも、その調製し易さ、モノマー品種の豊富さ、入手し易さ等の観点から、カルボキシル基が好ましい。また、2つのカルボキシル基が分子内又は分子間において脱水縮合した酸無水基となっていてもよい。
のアニオン性基の導入方法は特に限定はなく、例えば、アニオン性基がカルボキシル基の場合は、(メタ)アクリル酸を単独重合又は他のモノマーと共重合させて得たホモポリマー又はコポリマーのポリマーブロック(PB1)であってもよく、脱保護をすることにより、アニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを単独重合又は他のモノマーと共重合させて得たホモポリマー又はコポリマーの、当該アニオン性基に再生可能な保護基の一部又は全てがアニオン性基に再生されたポリマーブロック(PB2)であってもよい。
ポリマーブロックAで使用する(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸iso−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ペンタデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレンオキサイド基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
リビングアニオン重合法においては、使用するモノマーが、アニオン性基等の活性プロトンを持つ基を有するモノマーの場合、リビングアニオン重合ポリマーの活性末端が直ちにこれら活性プロトンを持つ基と反応し失活するため、ポリマーが得られにくい。リビングアニオン重合では、活性プロトンを持つ基を有するモノマーをそのまま重合することは困難であるため、活性プロトンを持つ基を保護した状態で重合し、その後、保護基を脱保護することで活性プロトンを持つ基を再生することが好ましい。
このような理由から、ポリマーブロックAにおいては、脱保護をすることによりアニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを用いることが好ましい。当該モノマーを使用することで、重合時には上述の重合の阻害を防止できる。また、保護基により保護されたアニオン性基は、ブロックポリマーを得た後に脱保護することによりアニオン性基に再生することが可能である。
例えばアニオン性基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基をエステル化し、後工程として加水分解等で脱保護することによりカルボキシル基を再生することができる。この場合のカルボキシル基に変換可能な保護基としては、エステル結合を有する基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基;イソプロポキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基;t−ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基;エトキシエチルカルボニル基等のアルコキシアルキルカルボニル基などが挙げられる。
アニオン性基がカルボキシル基の場合、使用できるモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコサニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のフェニルアルキレン(メタ)アクリレート;エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレートの中でも、カルボキシル基への変換反応が容易である観点から、t−ブチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、工業的に入手のしやすさの観点から、t−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
一般式(c1)中、Bは、芳香族基又はアルキル基を表す。アルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基を用いることができる。また、nは1〜5の整数を表す。
リビングアニオン重合法においては、求核性の強いスチレン系ポリマーの活性末端に(メタ)アクリレートモノマーを直接重合しようとした場合、カルボニル炭素への求核攻撃によりポリマー化できない場合がある。このため、前記A−Aに(メタ)アクリレートモノマーの重合を行う際には反応調整剤を使用し、求核性を調整した後、(メタ)アクリレートモノマーを重合することができる。一般式(c1)におけるBは、反応調整剤に由来する基である。反応調整剤の具体例としては、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン等が挙げられる。
リビングアニオン重合法は、反応条件を整えることにより、従来のフリーラジカル重合で用いられるようなバッチ方式により実施できる他、マイクロリアクターによる連続的に重合する方法であってもよい。マイクロリアクターは、重合開始剤とモノマーの混合性が良好であるため、反応が同時に開始し、温度が均一で重合速度を揃えることができるため、製造される重合体の分子量分布を狭くできる。また、同時に、成長末端が安定であるため、ブロックの両成分が混じりあわないブロック共重合体を製造することが容易になる。また、反応温度の制御性が良好であるため副反応を抑えることが容易である。
マイクロリアクターを使用したリビングアニオン重合の一般的な方法を、マイクロリアクターの模式図である図1を参照しながら説明する。
まず、第一のモノマーと、重合を開始させる重合開始剤とをそれぞれチューブリアクターP1及びP2から、複数の液体を混合可能な流路を備えるT字型マイクロミキサーM1に導入し、T字型マイクロミキサーM1内で、第一のモノマーをリビングアニオン重合して第一の重合体を形成する(工程1)。
次に、得られた第一の重合体をT字型マイクロミキサーM2に移動させ、同ミキサーM2内で、得られた重合体の成長末端を、チューブリアクターP3から導入された反応調整剤によりトラップして反応調節を行う(工程2)。なお、このとき、反応調整剤の種類や使用量により、一般式(c1)におけるnの数をコントロールすることが可能である。
次に、T字型マイクロミキサーM2内の反応調節を行った第一の重合体を、T字型マイクロミキサーM3に移動させ、同ミキサーM3内で、チューブリアクターP4から導入された第二のモノマーと、前記反応調節を行った第一の重合体とを、連続的にリビングアニオン重合を行う(工程3)。
その後、活性プロトンを有する化合物(メタノール等)で反応をクエンチすることでブロック共重合体を製造する。
一般式(c1)で表されるポリマー(C1)を前記マイクロリアクターで製造する場合は、前記第一のモノマーとして、疎水性基を有するモノマー(例えば、芳香環又は複素環を有するモノマー)を使用し、重合開始剤として有機リチウム開始剤を使用して反応させることで、Aの、疎水性基を有するポリマーブロック(例えば、芳香環又は複素環を有するモノマー由来の構造単位を有するポリマーブロック)を得る(ポリマーブロックAの片末端には、Aの有機リチウム開始剤残基である有機基が結合している)。
次に、反応調整剤を使用して成長末端の反応性を調整した後、前記アニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを前記第二のモノマーとして反応させてポリマーブロックを得る。
この後、加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生することにより、前記A(すなわち、アニオン性基を含むポリマーブロック)が得られる。
前記アニオン性基に再生可能な保護基のエステル結合を加水分解等の脱保護反応によりアニオン性基に再生させる方法を下記のとおり詳細に述べる。
エステル結合の加水分解反応は、酸性条件下でも塩基性条件下でも進行するが、エステル結合を有する基に応じて条件がやや異なる。例えば、エステル結合を有する基が、メトキシカルボニル基等の第1級アルコキシカルボニル基、又は、イソプロポキシカルボニル基等の第2級アルコキシカルボニル基の場合は、塩基性条件下で加水分解を行うことでカルボキシル基を得ることができる。この際、塩基性条件下とする塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物などが挙げられる。
エステル結合を有する基が、t−ブトキシカルボニル基等の第3級アルコキシカルボニル基の場合は、酸性条件下で加水分解を行うことによりカルボキシル基を得ることができる。この際、酸性条件下とする酸性化合物としては、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;トリフルオロ酢酸等のブレステッド酸;トリメチルシリルトリフラート等のルイス酸などが挙げられる。t−ブトキシカルボニル基の酸性条件下での加水分解の反応条件については、例えば、「日本化学会編第5版 実験化学講座16 有機化合物の合成IV」に開示されている。
t−ブトキシカルボニル基をカルボキシル基に変換する方法としては、例えば、上記の酸に代えて陽イオン交換樹脂を用いた方法も挙げられる。陽イオン交換樹脂としては、例えば、ポリマー鎖の側鎖にカルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)等の酸基を有する樹脂が挙げられる。これらの中でも、当該樹脂の側鎖にスルホ基を有する、強酸性を示す陽イオン交換樹脂が、反応の進行を速くできることから好ましい。陽イオン交換樹脂の市販品としては、オルガノ株式会社製の強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライト」等が挙げられる。陽イオン交換樹脂の使用量は、効果的に加水分解できる観点から、一般式(c1)で表されるポリマー100質量部に対して、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
エステル結合を有する基がベンジルオキシカルボニル基等のフェニルアルコキシカルボニル基である場合は、水素化還元反応を行うことによりカルボキシル基に変換できる。この際、反応条件としては、室温下、酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下で、水素ガスを還元剤として用いて反応させることにより定量的にフェニルアルコキシカルボニル基をカルボキシル基に再生できる。
上記のように、エステル結合を有する基の種類によってカルボキシル基への変換の際の反応条件が異なるため、例えば、Aの原料としてt−ブチル(メタ)アクリレートとn−ブチル(メタ)アクリレートとを用いて共重合して得られたポリマーは、t−ブトキシカルボニル基とn−ブトキシカルボニル基とを有することになる。ここで、t−ブトキシカルボニル基が加水分解する酸性条件下では、n−ブトキシカルボニル基は加水分解しないことから、t−ブトキシカルボニル基のみを選択的に加水分解してカルボキシル基へ脱保護が可能となる。したがって、Aの原料モノマーである、アニオン性基に再生可能な保護基を有する(メタ)アクリレートを含むモノマーを適宜選択することにより親水ブロック(A)の酸価の調整が可能となる。
顔料がポリマー(C1)によって水中に分散された水性顔料分散体の安定性を向上させる観点から、一般式(c1)で表されるポリマー(C1)において、ポリマーブロック(A)とポリマーブロック(A)とがランダムに配列して結合したランダム共重合体ではなく、前記ポリマーブロックがある程度の長さのまとまりとなって規則的に結合したブロック共重合体であるほうが有利である。水性顔料分散体は、インク組成物の製造に使用可能な原料であり、ポリマー(C1)を用いて顔料を高濃度で水中に分散させた液体である。ポリマーブロック(A)及びポリマーブロック(A)のモル比A:Aは、例えばインクジェット記録方式でインク組成物を吐出する際に求められる良好な吐出安定性を維持しやすい観点、及び、発色性等に更に優れた印刷物を製造可能なインク組成物を得やすい観点から、100:10〜100:500が好ましく、100:10〜100:450がより好ましい。
一般式(c1)で表されるポリマー(C1)において、ポリマーブロック(A)を与える、芳香環又は複素環を有するモノマー数は、5〜40が好ましく、6〜30がより好ましく、7〜25が更に好ましい。ポリマーブロック(A)を構成するアニオン性基の数は、3〜20が好ましく、4〜17がより好ましく、5〜15が更に好ましい。
ポリマーブロック(A)及びポリマーブロック(A)のモル比A:Aは、ポリマーブロック(A)を構成する芳香環又は複素環のモル数と、ポリマーブロック(A)を構成するアニオン性基のモル数とのモル比で表した場合、100:7.5〜100:400が好ましい。
一般式(c1)で表されるポリマー(C1)の酸価は、インクジェット記録方式でインク組成物を吐出する際に求められる良好な吐出安定性を維持しやすい観点、及び、耐擦過性等の点でより一層優れた印刷物を製造可能なインク組成物が得られやすい観点から、40〜400mgKOH/gが好ましく、40〜300mgKOH/gがより好ましく、40〜190mgKOH/gが更に好ましい。ポリマー(C1)の酸価は、ポリマー(C1)の微粒子の測定方法と同様の酸価測定方法による酸価とした。
インク組成物において、ポリマー(C1)のアニオン性基は中和されていることが好ましい。
ポリマー(C1)のアニオン性基を中和する塩基性化合物としては、公知慣用のものがいずれも使用でき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物などの無機塩基性物質や、アンモニア、トリエチルアミン、アルカノールアミン等の有機塩基性化合物を用いることができる。
水性顔料分散体中に存在するポリマー(C1)の中和量は、ポリマーの酸価に対して100%中和されている必要はない。具体的には、ポリマー(C1)の中和率が20〜200%になるように中和されることが好ましく、80〜150%になるように中和されることがより好ましい。
(バインダー樹脂(D))
バインダー樹脂(D)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを1種又は数種併用して使用することができる。中でも、バインダー樹脂(D)としては、アクリル系樹脂を使用することが好ましく、アミド基を有するアクリル系樹脂を使用することがより好ましい。バインダー樹脂(D)としては、BASF社製のJONCRYLシリーズを用いることができる。
バインダー樹脂(D)を含有するインク組成物は、乾燥による溶媒蒸発に伴いインク吐出口のインク組成物が凝固した場合であっても、吐出口に再びインク組成物が流通することによって、凝固物が容易にインク組成物中に分散できる性質(再分散性)に優れる。その結果、インクジェットヘッドから吐出する際、吐出を一定時間中断した後、再度開始した場合であっても、吐出液滴の飛行曲がり、あるいは、吐出口の閉塞を引き起こしにくく、スジ状の印刷不良の発生を効果的に防止しやすい。
アミド基を有するアクリル系樹脂としては、アミド基を有するアクリル系単量体と、必要に応じて使用されるその他の単量体との重合体を使用することができる。
アミド基を有するアクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリルアマイド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアマイド等を使用することができる。
前記アクリル系樹脂の製造に使用可能なその他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸やそのアルカリ金属塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体;芳香族ビニル化合物(スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等)、ビニルスルホン酸化合物(ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等)、ビニルピリジン化合物(2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ナフチルビニルピリジン等)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを使用することができる。
前記その他の単量体としては、顔料との親和性をより一層向上させる観点から、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート等の、芳香族基を有する単量体が好ましい。
前記アミド基を有するアクリル系樹脂は、再分散性の向上という効果をインク組成物に付与し、かつ、水性媒体(A)中での分散安定性に優れる。アミド基を有するアクリル系樹脂において、前記アミド基を有するアクリル系単量体の使用量は、インク組成物の再分散性及びインク組成物の構成成分の水性媒体(A)中での分散安定性をより一層向上させる観点から、アクリル系樹脂の製造に使用する単量体の全量に対して、0.5〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましく、1.5〜3質量%が更に好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定時の展開溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)に不溶で分子量の測定が困難な成分を含有するものであってもよいが、25℃におけるTHF不溶成分の含有率が20質量%未満であるものが好ましく、5質量%未満であるものがより好ましく、THF不溶成分を含有しないものが更に好ましい。
前記アクリル系樹脂(例えば、THFに溶解するアクリル系樹脂)の数平均分子量は、10000〜100000が好ましく、20000〜100000がより好ましい。前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、30000〜1000000が好ましく、50000〜1000000がより好ましい。
バインダー樹脂(D)としては、例えばポリオレフィンを使用することもできる。
ポリオレフィンとしては、オレフィン系モノマーを主成分とするモノマーの単独重合体又は共重合体を使用することができる。オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、メチルブテン、メチルペンテン、メチルへキセン等のα−オレフィン;ノルボルネン等の環状オレフィンなどを使用することができる。
ポリオレフィンとしては、酸化ポリオレフィンを使用することもできる。酸化ポリオレフィンとしては、例えば、熱分解、酸、アルカリ成分等を用いた化学的分解などにより、分子内に酸素原子が導入されたポリオレフィンを使用することができる。前記酸素原子は、例えば、極性を有するカルボキシル基等を構成する。
ポリオレフィンの融点は、90〜200℃が好ましく、120℃以上160℃未満がより好ましい。これらの場合、印刷直後に印刷物を重ね合わせた場合でも、被記録媒体の表面のインク組成物が剥離しない良好なセット性と、優れた耐擦過性とを付与することができる。なお、ポリオレフィンの融点は、JIS K 0064に準拠した融点測定装置によって測定した値を指す。
ポリオレフィンは、前記したとおり水性媒体(A)等の溶媒中に溶解又は分散した状態で存在することが好ましく、水性媒体(A)等の溶媒中に分散したエマルジョンの状態であることがより好ましい。
その場合、前記ポリオレフィンによって形成されるポリオレフィン粒子の平均粒子径は、インクジェット記録方式で印刷する際にインク組成物の良好な吐出安定性と印刷後の良好なセット性とを両立しやすい観点から、10〜200nmが好ましく、30〜150nmがより好ましい。ポリオレフィン(A)の平均粒子径は、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA粒度分布計を用い、動的光散乱法で測定した値を示す。
バインダー樹脂(D)としては、親水性基を有するバインダー樹脂を用いることができる。親水性基としては、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。本発明者の知見によれば、親水性基を有するバインダー樹脂が顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性が低下する場合がある。本実施形態に係る印刷物品質の調整方法では、親水性基を有するバインダー樹脂を用いる場合であっても、顔料と、親水性基を有するバインダー樹脂とを分けて用いることにより、保管時において顔料の分散を良好に維持してインク組成物の優れた保存安定性を得ることができる。これにより、親水性基を有するバインダー樹脂を用いる場合であっても、親水性基を有するバインダー樹脂の混合時期を調整することによってインクジェット印刷の印刷物品質を好適に調整可能であり、インクジェット印刷の優れた印刷物品質を得ることができる。
バインダー樹脂(D)は、スジ状の印刷不良の発生を防止しやすい観点、及び、印刷物の印字濃度や耐擦過性を向上させ、良好な光沢を付与する観点から、インク組成物の全量に対して、2〜7質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。また、これらの範囲でバインダー樹脂(D)を含有するインク組成物は、印刷後の加熱工程を経てバインダー樹脂(D)が架橋し強固な被膜を形成することで、印刷物の耐擦過性をより一層向上させることができる。また、印刷物に水を滴下した場合、あるいは、水を含んだ布等でこすった場合でも、被記録媒体の表面のインク組成物が剥離しない、良好な耐水性を付与することができる。
インク組成物では、バインダー樹脂(D)と化合物(E)を組み合わせて使用することができる。バインダー樹脂(D)と化合物(E)とを組み合わせて使用することによって、印刷物の良好なセット性と、優れた耐擦過性とを付与しやすい。
(尿素結合を有する化合物(E))
尿素結合を有する化合物(E)としては、尿素及び尿素誘導体からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。尿素及び尿素誘導体は、保湿剤としての保湿機能が高く、湿潤剤としても機能するため、インクジェットヘッドのインク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止し、優れた吐出安定性を確保しやすいことから、スジ状の印刷不良の発生を軽減しやすい効果がある。また、尿素及び尿素誘導体が加熱されると水を放出しやすいため、より一層優れたセット性を備えた印刷物を得やすい観点から、尿素又は尿素誘導体を用いる場合、インク組成物を印刷後に加熱乾燥を行うことが好ましい。
尿素誘導体としては、エチレン尿素、プロピレン尿素、ジエチル尿素、チオ尿素、N,N−ジメチル尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上組み合わせ使用することができる。中でも、化合物(E)としては、セット性に優れた印刷物を得やすい観点から、尿素、エチレン尿素及び2−ヒドロキシエチル尿素からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
化合物(E)の含有量は、インク組成物をインクジェット記録方式で吐出する場合に求められる吐出安定性や、セット性に優れた印刷物を得やすい観点から、インク組成物の全量に対して、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。
インク組成物がバインダー樹脂(D)及び化合物(E)を含有する場合、化合物(E)に対するバインダー樹脂(D)の質量割合[バインダー樹脂(D)/化合物(E)]は、印刷物のセット性向上効果を得やすい観点から、1/6〜6/1が好ましく、1/6〜3/1がより好ましく、1/5〜1/1が更に好ましい。
(有機溶剤(F))
有機溶剤(F)としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、これらと同族のジオール等のジオール類;ラウリン酸プロピレングリコール等のグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、及び、トリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールや2−ブタノール等のブチルアルコール、ペンチルアルコール、これらと同族のアルコール等のアルコール類;スルホラン;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類などが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明者の知見によれば、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルは、顔料の分散を不安定化させることによりインク組成物の保存安定性を低下させる作用を有している。本実施形態に係る印刷物品質の調整方法では、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルを用いる場合であっても、顔料とトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルとを分けて用いることにより、保管時において顔料の分散を良好に維持してインク組成物の優れた保存安定性を得ることができる。これにより、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルを用いる場合であっても、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルの混合時期を調整することによってインクジェット印刷の印刷物品質を好適に調整可能であり、インクジェット印刷の優れた印刷物品質を得ることができる。
有機溶剤(F)としては、吐出液滴が被記録媒体の表面に着弾した後、被記録媒体上で素早く乾燥する速乾効果を得やすい観点から、前記したものの他に、沸点が100〜200℃であり、かつ、20℃での蒸気圧が0.5hPa以上である水溶性有機溶剤(f1)が好ましい。
水溶性有機溶剤(f1)としては、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコール−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチルラクテート等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上組み合わせ使用することができる。
中でも、水溶性有機溶剤(f1)としては、インク組成物の良好な分散安定性を維持しやすい観点、及び、例えばインクジェット装置が備えるインク吐出ノズルの、インク組成物に含まれる溶剤の影響による劣化を抑制しやすい観点から、HSP(ハンセン溶解度パラメータ)の水素結合項δが6〜20の範囲であるような水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。
前記範囲のHSPの水素結合項を有する水溶性有機溶剤の具体例としては、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコール−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及び、プロピレングリコールモノプロピルエーテルからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、3−メトキシ−1−ブタノール、及び、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールからなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
水性媒体(A)と組み合わせ使用可能な有機溶剤としては、被記録媒体上でのインク速乾効果と、インク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止する効果とを両立しやすい観点から、水溶性有機溶剤(f1)のほかに、又は、水溶性有機溶剤(f1)と共に、プロピレングリコール(f2)と、グリセリン、グリセリン誘導体、ジグリセリン及びジグリセリン誘導体からなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤(f3)とを組み合わせ使用することが好ましい。
有機溶剤(f3)としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン脂肪酸エステル、下記一般式(f1)で表されるポリオキシプロピレン(n)ポリグリセリルエーテル、下記一般式(f2)で表されるポリオキシエチレン(n)ポリグリセリルエーテル等を、1種単独又は2種以上組み合わせ使用することができる。中でも、有機溶剤(f3)は、印刷物のセット性に優れ、インク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止する効果を得やすい観点から、グリセリン、及び、n=8〜15のポリオキシプロピレン(n)ポリグリセリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
Figure 2021091165
一般式(f1)及び一般式(f2)中のm1、m2、n1、n2、p1、p2、q1及びq2は、各々独立して1〜10の整数を示す。
有機溶剤(F)の含有量は、印刷物のセット性に優れ、インク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止する効果を得やすい観点から、インク組成物の全量に対して、1〜30質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。
プロピレングリコール(f2)に対する水溶性有機溶剤(f1)の質量割合[水溶性有機溶剤(f1)/プロピレングリコール(f2)]は、印刷物のセット性に優れ、インク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止する効果を得やすい観点から、1/25〜2/1が好ましく、1/25〜1/1がより好ましく、1/20〜1/1が更に好ましい。
有機溶剤(f3)に対するプロピレングリコール(f2)の質量割合[プロピレングリコール(f2)/有機溶剤(f3)]は、印刷物のセット性に優れ、インク吐出口におけるインク組成物の乾燥や凝固を防止する効果を得やすい観点から、1/4〜8/1が好ましく、1/3〜6/1がより好ましく、1/2〜5/1が更に好ましい。
(界面活性剤(G))
界面活性剤(G)としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。界面活性剤(G)は、他成分(顔料、バインダー樹脂(D)等)の凝集を抑制しやすく、優れた吐出安定性を得やすい観点から、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等を挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、及び、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
インク組成物は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、アセチレン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレン系界面活性剤は、分子中にアセチレン構造を有する界面活性剤である。アセチレン系界面活性剤は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、アセチレングリコール、及び、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物からなる群より選ばれる1種以上が含むことが好ましい。
その他の界面活性剤としては、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタントなども使用することができる。
アセチレン系界面活性剤の含有量は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、界面活性剤(G)の全量に対して、80〜100質量%が好ましく、85〜99.9質量%がより好ましく、90〜99.5質量%が更に好ましく、95〜99.3質量%が特に好ましい。
アセチレン系界面活性剤の主鎖の炭素数は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下が更に好ましく、13以下が特に好ましい。アセチレン系界面活性剤の主鎖の炭素数は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点から、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、11以上が特に好ましく、12以上が極めて好ましい。主鎖の炭素数は、アセチレン結合を含む最も長い分子鎖(例えば炭素鎖)の炭素数である。
界面活性剤(G)のHLB値は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点、及び、水を主溶媒とするインク組成物に界面活性剤(G)が溶解した状態を安定的に維持しやすい観点から、1〜12が好ましく、1〜10がより好ましく、2〜9が更に好ましく、3〜8が特に好ましく、4〜8が極めて好ましい。アセチレン系界面活性剤のHLB値は、スジ状の印刷不良が発生することを抑制しやすい観点、及び、水を主溶媒とするインク組成物に界面活性剤(G)が溶解した状態を安定的に維持しやすい観点から、これらの範囲であることが好ましい。界面活性剤(G)のHLB値は、例えばグリフィン法により求めることができる。
界面活性剤(G)の含有量は、インク組成物の全量に対して、0.001〜5質量%が好ましく、0.001〜3質量%がより好ましく、0.001〜2質量%が更に好ましく、0.01〜2質量%が特に好ましく、0.1〜2質量%が極めて好ましく、0.5〜2質量%が非常に好ましく、0.8〜2質量%がより一層好ましく、1〜1.6質量%が更に好ましい。これらの含有量で界面活性剤(G)を含有するインク組成物は、吐出液滴の被記録媒体の表面での濡れ性が良好であり、被記録媒体上で充分な濡れ広がりを有しやすく、スジ状の印刷不良の発生を防止する効果を得やすい。さらに、上記各範囲の界面活性剤(G)を含有するインク組成物は、塗膜のレベリング性を向上させる効果を得やすい。同様の観点から、アセチレン系界面活性剤の含有量が、上記各範囲であることが好ましい。
(その他の添加剤)
インク組成物は、湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、防腐剤(例えば、ソー・ジャパン株式会社製のACTICIDE B20)、粘度調整剤、pH調整剤(例えばトリエタノールアミン)、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等のその他の添加剤を含有することができる。
湿潤剤としては、インクジェットヘッドの吐出ノズルにおけるインク組成物の乾燥を防止することを目的として使用することができる。湿潤剤の含有量は、インク組成物の全量に対して3〜50質量%が好ましい。
湿潤剤としては、水との混和性があり、インクジェットヘッドの吐出口の閉塞防止効果が得られるものが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
浸透剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物;プロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。浸透剤の含有量は、インク組成物の全量に対して、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、浸透剤を実質的に含有しないことが更に好ましい。
以下、実験例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
<顔料分散体の調製>
FASTOGEN Super Magenta RY(DIC株式会社製、顔料)50質量部、及び、FASTOGEN Super Red IMQ(DIC株式会社製、顔料)2.5質量部をインテンシブミキサー(株式会社日本アイリッヒ製)に仕込んだ後、ローター回転数50rpm、パン回転数13.8rpmで混合した。次に、前記インテンシブミキサーにプロピレングリコール(旭硝子株式会社製)21質量部を投入した後に混合した。続いて、スチレン−アクリル酸樹脂X−1(星光PMC株式会社製)10.5質量部、スチレン−アクリル酸樹脂アクリディックLA022(DIC株式会社製)1.05質量部、プロピレングリコール18.3質量部、及び、34質量%水酸化カリウム水溶液3.8質量部を添加した後、前記と同様のローター周速及びパン周速で2時間混錬した。次に、前記インテンシブミキサーの撹拌を継続しながら、前記インテンシブミキサーにイオン交換水85質量部を徐々に加えることによって顔料濃度20質量%の顔料分散体(水性顔料分散体)を得た。
<インク組成物の調製>
以下のとおり、表1〜3に記載の成分を含有するインク組成物を調製した。表1〜3に記載の含有量は、インク組成物の全量を基準とした含有量(単位:質量%)を示す。表1〜3におけるバインダー樹脂の使用量は、バインダー樹脂水溶液としての使用量を示す。
(実験例A1)
上述の顔料分散体33.3質量部(水等を含む分散体の質量)に、イオン交換水12.0質量部、エチレン尿素5.0質量部、トリエタノールアミン1.0質量部、防腐剤(ソー・ジャパン株式会社製、ACTICIDE B20)0.1質量部、プロピレングリコール3.1質量部、及び、グリセリン10.5質量部を加えて攪拌することにより65質量部のインク用母液Aを得た。
イオン交換水0.2質量部、バインダー樹脂水溶液(BASF社製、JONCRYL PDX7696)12.5質量部、プロピレングリコール10.3質量部、グリセリン10.0質量部、サーフィノール420(日信化学工業株式会社製、ノニオン性界面活性剤)1.5質量部、及び、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製、ノニオン性界面活性剤)0.5質量部を混合して攪拌することにより35質量部のインク用母液Bを得た。
上述の65質量部のインク用母液A及び35質量部のインク用母液Bを混合して攪拌することによりインク組成物を得た。後述のとおり、このインク組成物をインクジェットヘッドに供給して各評価を行った。インク組成物を得てからインク組成物を印刷するまでの時間は、表1に記載のとおりであった。
(実験例A2〜A5)
インク用母液A及びインク用母液Bの組成を表1の組成へ変更したことを除き実験例A1と同様にインク組成物を得た後、このインク組成物をインクジェットヘッドに供給して各評価を行った。インク組成物を得てからインク組成物を印刷するまでの時間は、表1に記載のとおりであった。表1に記載の「エマルゲン103」は花王株式会社製のノニオン性界面活性剤であり、「エマルゲン106」は花王株式会社製のノニオン性界面活性剤であり、「Tego Wet 280」は巴工業株式会社製のシリコーン系界面活性剤であり、「TPnB」はトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルである。
(実験例B1〜B5)
実験例A1〜A5と同様の組成を有するインク用母液A及びインク用母液Bをそれぞれ得た。印刷機内部のインクタンクにインク用母液A及びインク用母液Bを別々に充填した。印刷機内部に設置した容器へ母液A及び母液Bをそれぞれ送液し、容器内で撹拌することで混合することによりインク組成物を得た。インク組成物をインクジェットヘッドに供給して各評価を行った。インク組成物を得てからインク組成物を印刷するまでの時間は、表2に記載のとおりであった。
(実験例C1〜C5)
複数の母液を調製することなく、表3に記載の各成分を混合して攪拌することによりインク組成物を得た。このインク組成物をインクジェットヘッドに供給して各評価を行った。インク組成物を得てからインク組成物を印刷するまでの時間は、表3に記載のとおりであった。表3に記載の「JONCRYL PDX7615」はBASF社製のアクリル樹脂である。
<準備形態での保存安定性の評価>
E型粘度系に相当する円錐平板形(コーン・プレート形)回転粘度計を用いて前記準備形態の液体の粘度を下記条件で測定した。
測定装置:TVE−25形粘度計(東機産業株式会社製、TVE−25 L)
校正用標準液:JS20
測定温度:32℃
回転速度:10〜100rpm
注入量:1200μL
準備形態の液体を作製し、同日に測定した上記物性を初期値とした。準備形態の液体を60℃の乾燥機で1週間保管し、同様に上記物性を測定した。それぞれ、初期値からの変化率を計算し、下記の基準に基づき評価した結果を表1〜3に示す。
A:粘度変化率20%未満
B:粘度変化率20%以上50%未満
C:粘度変化率50%以上
<白スジの評価>
実験例A1〜A5及び実験例B1〜B5のインク用母液A及びインク用母液Bを混合することによりインク組成物を得た後、インク組成物を京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体としてコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート+、米秤104.7g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを18pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施した直後に、近赤外線ランプを1秒間照射することによりインク組成物を乾燥させることによって印刷物を得た。
京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに上述の実験例C1及びC2のインク組成物をそれぞれ充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体としてコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート+、米秤104.7g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを18pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施した直後に、近赤外線ランプを1秒間照射することによりインク組成物を乾燥させることによって印刷物を得た。
印刷物をスキャナーで読み取り、画像解析ソフト『ImageJ』にて、インク組成物が塗布されていない部分の割合(スジ率)を算出した。下記の基準に基づき評価した結果を表1〜3に示す。
A:印刷物のスジ率10%未満
B:印刷物のスジ率10%以上20%未満
C:印刷物のスジ率20%以上
<モットリングの評価>
実験例A1〜A5及び実験例B1〜B5のインク用母液A及びインク用母液Bを混合することによりインク組成物を得た後、インク組成物を京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体としてコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート+、米秤104.7g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを18pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施した直後に、近赤外線ランプを1秒間照射することによりインク組成物を乾燥させることによって印刷物を得た。
京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに上述の実験例C1及びC2のインク組成物をそれぞれ充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体としてコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート+、米秤104.7g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを18pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施した直後に、近赤外線ランプを1秒間照射することによりインク組成物を乾燥させることによって印刷物を得た。
前記印刷物をスキャナーで読み取り、画像解析ソフト『ImageJ』にて数値解析を行った。前記画像を8bitで2値化し、前記画像の濃淡差の指標となる値(ベタ画質)を算出した。前記ベタ画質の値の上限は100であり、値が100に近いほどモットリングのない良好な塗膜であると判断した。前記ベタ画質の値に応じて5段階で評価した。下記の基準に基づき評価した結果を表1〜3に示す。
A:ベタ画質80以上100以下
B:ベタ画質50以上80未満
C:ベタ画質50未満
<OD値の評価>
実験例A1〜A5及び実験例B1〜B5のインク用母液A及びインク用母液Bを混合することによりインク組成物を得た後、インク組成物を京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体として普通紙(日本製紙株式会社製、npi上質紙、米秤64g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを12pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施しすることで印刷物を得た。
京セラ株式会社製のインクジェットヘッドKJ4B−YHに上述の実験例C1及びC2のインク組成物をそれぞれ充填し、ヘッドノズルプレート面からのインクサブタンクの水頭差を+35cm、負圧を−5.0kPaに設定することで供給圧を調整した。被記録媒体として普通紙(日本製紙株式会社製、npi上質紙、米秤64g/m)を準備した。インクジェットヘッドと被記録媒体とのギャップを1.2mmに設定した。ヘッドの駆動条件は、インクジェットヘッドの標準電圧及び標準温度とし、液滴サイズを12pLに設定して100%濃度ベタ印刷を被記録媒体に対して実施しすることで印刷物を得た。
得られた印刷物の印刷面の光学濃度(OD値)を分光濃度計X−Rite(500シリーズ)にて測定した。得られたOD値に応じて下記基準に基づき評価した結果を表1〜3に示す。
A:OD値1.1以上
B:OD値1.1未満
Figure 2021091165
Figure 2021091165
Figure 2021091165
M1,M2,M3…T字型マイクロミキサー、P1,P2,P3,P4…チューブリアクター、R1,R2,R3…チューブリアクター。

Claims (5)

  1. 顔料を含む顔料分散液と、界面活性剤、バインダー樹脂及び有機溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤との混合時期に基づきインクジェット印刷の印刷物品質を調整する、印刷物品質の調整方法。
  2. 前記顔料分散液と、前記添加剤を含む液と、を混合する、請求項1に記載の印刷物品質の調整方法。
  3. 前記添加剤が、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の印刷物品質の調整方法。
  4. 前記顔料分散液と前記添加剤とを混合してインク組成物を得てから30分以上1か月以内に前記インク組成物を印刷する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷物品質の調整方法。
  5. 前記顔料分散液と前記添加剤とを混合して得られたインク組成物を印刷機に供給する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷物品質の調整方法。
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