JP2021063000A - 発酵組成物、発酵組成物の製造方法、発酵組成物の製造装置及び植物の栽培方法。 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕泥炭(成分A)と、糖質、食物繊維、脂質、蛋白質、ビタミン及びミネラルからなる群から選ばれる1種以上の栄養素を含む食物(成分B)と、水(成分C)との混合物を発酵してなる発酵組成物(以下「本発明1」ともいう);
〔2〕前項〔1〕記載の成分Aを含有する泥炭層の乾燥処理物(成分A含有原料)と、前項〔1〕記載の成分Bを含有する含水物(成分B含有原料)との混合物を発酵する工程を含む前項〔1〕記載の発酵組成物の製造方法;
(以下「本発明2」ともいう)、
〔3〕前項〔2〕記載の混合物に空気を通過させる通気装置を備える前項〔1〕記載の発酵組成物の製造装置(以下「本発明3」ともいう);及び、
〔4〕前項〔1〕記載の発酵組成物を添加した土壌で植物を栽培する植物の栽培方法。(以下「本発明4」ともいう)に関する。
本発明1は、泥炭(成分A)と、糖質、繊維質、脂質、蛋白質、ビタミン及びミネラルからなる群から選ばれる1種以上の栄養素を含む食物(成分B)と、水(成分C)との混合物を発酵してなる発酵組成物である。
本発明1における成分Aは泥炭である。
我国では、北海道、東北、関東及び中部の各地方に広く分布しており、中部地方では、静岡県、愛知県、三重県、石川県の山間淀地に泥炭層があることが知られている。
好ましくは、泥炭を含む泥炭層を層状のまま採種して、乾燥処理をして、
より好ましくは、さらに分級して細粉化したものを成分A含有原料として、後述する発酵工程に供する。
なお、乾燥処理は静岡県のような常温が20±10℃程度の気候下で行われることを想定しており、例えば、常温が30℃を超える熱帯地、常温が10℃以下の寒冷地では(好ましくは空調の効いた)屋内で作業することが好ましい。
好ましくは50〜300トン、より好ましくは100〜200トン、更に好ましくは好ましくは130〜150トン程度の採種した泥炭層を、
好ましくは0.1〜20a、より好ましくは0.5〜10a、更に好ましくは1〜3a程度の屋外の空き地に(「a」は面積の単位「アール」である)、
好ましくは1月〜5年、より好ましくは6月〜4年、更に好ましくは1〜3年程度の期間静置する(以下、この態様の乾燥を「野積乾燥」という)。
野積乾燥後の泥炭層から、本発明1を所定回数製造するのに必要な量をさらに風乾する。
風乾は、自然乾燥と送風乾燥の態様が挙げられ、両者を組み合わせてもよい。
野積乾燥後の泥炭層から、
本発明1を一定回数製造するのに必要な量(好ましくは1〜50t、より好ましくは5〜30t、更に好ましくは好ましくは10〜20t程度)を、
野積みした空き地とは別の屋外の空き地(好ましくは10〜500m2、より好ましくは50〜300m2、更に好ましくは100〜200m2程度)に分けて、
泥炭層中への風通しをよくする観点から、フォーク等で、好ましくは3〜50cm、より好ましくは5〜30cm、更に好ましくは10〜20cm程度の高さに慣らして広げて乾燥する。
野積乾燥後の又は自然乾燥後の泥炭層を、
本発明1を所定回数製造するのに必要な量(好ましくは1〜100kg、より好ましくは5〜50kg、更に好ましくは10〜30kg程度)を、
ビニールハウス、硬質透明プラスチックハウス等の防水保温環境下に移し、
好ましくは1〜50cm、より好ましくは3〜30cm、更に好ましくは5〜15cm程度の高さにフォーク等で慣らして広げて、
好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃、更に好ましくは15〜25℃程度の環境温度で送風機で送風しながら、
好ましくは1日〜1月、より好ましくは2〜20日、更に好ましくは3〜10日程度の期間静置する。
本発明1における成分Bは、糖質、繊維質、脂質、蛋白質、ビタミン及びミネラルからなる群から選ばれる3種以上の栄養素を含む食物であり、
植物の育成・収穫の効率向上の観点から、少なくとも3種以上の栄養素の中に繊維質を含む。
好ましくは、糖質、繊維質、脂質、蛋白質、ビタミン及びミネラルからなる群から選ばれる3種以上の栄養素を含む食物残渣を含み、より好ましくは、繊維質に木葉質自然発酵物を含む。
食物残渣とは、食品として供された食用食物、又は、食品を製造するために供された食品原料食物で、廃棄物として食用食物又は食品原料としては使用されない食物をいう。
スーパー・コンビニ・デパ地下等の食品小売店での消費期限切れによる廃棄食物、
レストランや家庭で供された食品の食用に供されなかった部分や食べ残し等の廃棄食物、
例えば、ダシを抽出する等の調理のためだけに使用された後の廃棄食物等が例示でき、
これらの廃棄食物には、牛、豚、鶏肉、カツオ、カニ・エビ、コンブ、シイタケ、タマネギ、ニンジン、キャベツ及びトマトから選ばれる3種以上、より好ましくは5種以上、更に好ましくは10種以上の廃棄食物が含まれることが好ましい。
好ましくは0.1〜10a、より好ましくは0.5〜5a、更に好ましくは1〜2a程度の屋外の空き地に、
好ましくは1月〜5年、より好ましくは3月〜3年、更に好ましくは6月〜2年程度の期間野積みした後、本発明1を一定回数製造するのに必要な量として使用することが好ましい。
本発明1の発酵組成物は、成分Aと、成分Bと、水(成分C)との混合物を発酵してなる。
以下の工程では、成分A含有原料及び成分B含有原料に含有される水だけを成分Cとする場合を例示する。
発酵工程に供する成分A含有原料及び成分B含有原料を混合して原料混合物とする。
原料の混合性と発酵工程での発酵効率及び発酵組成物の育成・収穫性の観点から、
成分A含有原料の固形分と成分B含有原料の固形分の重量割合(A/B)は、
好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30、更に好ましくは20/80〜50/50、更に好ましくは20/80〜30/70である。
成分B1含有原料の固形分と成分B2含有原料の固形分の重量割合(B1/B2)は、
好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30、更に好ましくは20/80〜50/50、更に好ましくは25/75〜30/70である。
原料混合物の発酵は、例えば、発酵促進用の微生物を添加する微生物発酵でも、発酵促進用の微生物を添加せず、原料混合物に外気を通過させる通気発酵とが例示できるが、工程管理の容易さと発酵組成物の育成・収穫性の観点から通気発酵が好ましい。
微生物発酵においては、原料混合物に好気性微生物を添加して攪拌混合することで本発明1を得ることが出来る。
C/Nは、好ましくは5〜40、より好ましくは10〜30、更に好ましくは15〜20になるように食物を選択又は分別し、
pH、好ましくは4.5〜10、より好ましくは5〜9、更に好ましくは6〜8になるように食物を選択又は分別し、必要に応じて、貝殻粉末、粉末炭、畜糞、窒素系化学肥料、有機質肥料等を添加できる。
通気発酵では、原料混合物中に空気を通過させることで本発明1を得ることが出来る。原料混合物に微生物を添加してC/NやpHを調整する必要がないため、工程管理が容易である。
(2-1-1)原料混合物載置工程
原料混合物載置工程は、原料混合物を発酵槽に載置する工程である。
好ましくは載置高さの20%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは100%以上であり、
通気工程の間、壁面上端を支持手段として利用し、載置された原料混合物上をネット又はプレートで被覆して、原料混合物上で作業する観点から、壁面の高さは、
好ましくは載置高さの200%以下、より好ましくは150%以下、更に好ましくは120%以下である。
好ましくは0.0002≦tanθ≦0.04、より好ましくは0.001≦tanθ≦0.02、
更に好ましくは0.002≦tanθ≦0.01、更に好ましくは0.003≦tanθ≦0.006である。
好ましくは1≦h≦200、より好ましくは5≦h≦100、
更に好ましくは10≦h≦50、更に好ましくは15≦h≦30である(好適範囲は床の長さに比例するように設定できる)。
通気工程は、発酵槽の床に載置された原料混合物内に空気を通過させる工程である。
(1)窒素全量N
本発明1の発酵組成物は、堆肥としても肥料としても使用できる観点から、窒素全量が、
好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1.0〜7.0%、更に好ましくは1.5〜5.0%、さらに好ましくは2.0〜3.0%になるように成分A、B及びCの組成を調製することが好ましい。
本発明1の発酵組成物は、以下の17種類のアミノ酸の少なくとも5種類以上、好ましくは8種類以上、より好ましくは12種類以上、更に好ましくは17種類全てを含むことが好ましい。
(1)アスパラギン酸(Asp)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜3.0、更に好ましくは1.0〜2.5;
(2)グルタミン酸(Glu)が、好ましくは0.1〜5.、より好ましくは1.0〜4.、更に好ましくは1.5〜3.0;
(3)アルギニン酸(Arg)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは1.0〜4.0、更に好ましくは2.0〜4.0;
(4)ヒスチジン(His)が、好ましくは2.0〜25.0、より好ましくは5.0〜20.0、更に好ましくは8.0〜15.0;
(5)リシン(Lys)が、好ましくは30.0〜80.、より好ましくは40.0〜75.0、更に好ましくは50.0〜70.0;
(6)アラニン(Ala)が、好ましくは0.1〜10.0、より好ましくは0.5〜5.0、更に好ましくは1.0〜3.0;
(7)シスチン(Cys)が、好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは2.0〜7.0、更に好ましくは3.0〜5.0;
(8)グリシン(Gly)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0;
(9)イソロイシン(Ile)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0;
(10)ロイシン(Leu)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは1.0〜4.0、更に好ましくは2.0〜4.0;
(11)メチオニン(Met)が、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.2〜3.0、更に好ましくは0.5〜2.0;
(12)フェニルアラニン(Phe)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0;
(13)プロリン(Pro)が、、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.2〜3.0、更に好ましくは0.5〜2.0;
(14)セリン(Ser)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0;
(15)トレオニン(Thr)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは1.0〜4.0、更に好ましくは2.0〜4.0;
(16)チロシン(Tyr)が、好ましくは0.1〜5.0、より好ましくは0.5〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0;そして
(17)バリン(Val)が、、好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.05〜1.5、更に好ましくは0.1〜1.0である。
(1)アスパラギン酸(Asp)が、好ましくは0.1〜5.0 mgN%、より好ましくは0.5〜3.0 mgN%、更に好ましくは1.0〜2.5 mgN%;
(2)グルタミン酸(Glu)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは1.0〜4.0mgN%、更に好ましくは1.5〜3.0mgN%;
(3)アルギニン酸(Arg)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは1.0〜4.0mgN%、更に好ましくは2.0〜4.0mgN%;
(4)ヒスチジン(His)が、好ましくは2.0〜25.0mgN%、より好ましくは5.0〜20.0mgN%、更に好ましくは8.0〜15.0mgN%;
(5)リシン(Lys)が、好ましくは30.0〜80.0mgN%、より好ましくは40.0〜75.0mgN%、更に好ましくは50.0〜70.0mgN%;
(6)アラニン(Ala)が、好ましくは0.1〜10.0mgN%、より好ましくは0.5〜5.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;
(7)シスチン(Cys)が、好ましくは1.0〜10.0mgN%、より好ましくは2.0〜7.0mgN%、更に好ましくは3.0〜5.0mgN%;
(8)グリシン(Gly)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは0.5〜4.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;
(9)イソロイシン(Ile)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは0.5〜4.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;
(10)ロイシン(Leu)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは1.0〜4.0mgN%、更に好ましくは2.0〜4.0mgN%;
(11)メチオニン(Met)が、好ましくは0.1〜4.0mgN%、より好ましくは0.2〜3.0mgN%、更に好ましくは0.5〜2.0mgN%;
(12)フェニルアラニン(Phe)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは0.5〜4.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;
(13)プロリン(Pro)が、、好ましくは0.1〜4.0mgN%、より好ましくは0.2〜3.0mgN%、更に好ましくは0.5〜2.0mgN%;
(14)セリン(Ser)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは0.5〜4.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;
(15)トレオニン(Thr)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは1.0〜4.0mgN%、更に好ましくは2.0〜4.0mgN%;
(16)チロシン(Tyr)が、好ましくは0.1〜5.0mgN%、より好ましくは0.5〜4.0mgN%、更に好ましくは1.0〜3.0mgN%;そして
(17)バリン(Val)が、、好ましくは0.01〜2.0mgN%、より好ましくは0.05〜1.5mgN%、更に好ましくは0.1〜1.0mgN%である。
本発明の発酵組成物は、肥料としての効果の観点から、好ましくは、腐植酸、N、P、K、Ca、Mg及びSからなる群から選ばれる1以上の化合物を含む。
本発明の発酵組成物は、肥料として作物(好ましくは水稲)の生育・収量・品質を高め、環境ストレス耐性や連作障害・病害虫抵抗力も高める観点から、Fe、Zn、Cu、Mn、B、Cl、Mo、Ni及びSiからなる群から選ばれる1以上の化合物を含む。
本発明2は、成分Aを含有する泥炭層の乾燥処理物(成分A含有原料)と、成分Bを含有する含水物(成分B含有原料)との混合物を発酵する工程を含む発酵組成物の製造方法である。
具体的には、本発明2は、上述した、
成分A含有原料の調整工程(好適には泥炭層の採種工程、乾燥処理工程、分級工程を含む)、
成分B含有原料の調整工程(好適には食物残渣の回収工程、乾燥処理工程、水分調整工程を含む)、及び、
成分A,B及びCの混合物の調整工程(好適には、成分A含有原料、成分B含有原料及び必要に応じて成分Cの原料混合工程及び発酵工程を含む)を含む。
本発明3は、本発明2の成分Aを含有する泥炭層の乾燥処理物(成分A含有原料)と、成分Bを含有する含水物(成分B含有原料)との混合物に空気を通過させる通気装置を備える発酵組成物の製造装置である。
(装置態様1)
成分A含有原料と成分B含有原料とを撹拌混合して混合物を得る撹拌混合手段と、当該混合物を収容する発酵槽と、この発酵槽における混合物内へ敷設する多数の穿孔を有する吸気部材と、この吸気部材に接続させた吸引手段とを備える態様。
成分A含有原料と成分B含有原料とを撹拌混合して混合物を得る撹拌混合手段と、前記混合物を収容する発酵槽と、該発酵槽に設けた軌道に沿って進退自在に移動する走行体と、この走行体に載置した巻き取り手段に支持させて挿入手段により前記発酵槽における混合物内へ敷設する多数の穿孔を有する吸気部材と、この吸気部材に接続させた吸引手段と、前記発酵槽に設けた軌道に沿って進退自在に移動し前記発酵槽内の混合物を撹拌混合する切り返し手段とを備える態様。
装置態様1又は2において、吸気部材に接続させた吸引手段に脱臭槽を接続させた態様。
本発明4は、本発明1の発酵組成物を添加した土壌で植物を栽培する植物の栽培方法である。
本発明4では、土壌を構成する土は、天然土又は人工土を問わず、従来から農業用土として使用されてきたものが使用でき、例えば、天然土としては灰色低地土、黒ボク土、褐色森林土、黄色土、海成砂土等が挙げられ、本発明1を添加した際の育成・収穫性の観点から天然土だけでなく、田畑のように農作物の育成のために整備された土壌の土、例えば多孔質フィラー等を粒子状物の集合体である市販の人工土等を使用できる。
本発明4では、好ましくは、農地、庭の敷地を直接耕した土、あるいは、予め十分に耕した土を充填した函体又は鉢に本発明1を添加して攪拌して土壌とする。
本発明4が適用される好適な食用植物としては、
種子植物では、
アサガオ、タンポポ、ツツジ、キク、ナス、ジャガイモ等の合弁花類;
アブラナ(例えばコマツナ)、サクラ、エンドウ、バラ等の離弁花類;
チューリップ、ユリ、ツユクサ、イネ、アヤメ、トウモロコシ、ムギ等の単子葉類;
マツ、スギ、イチョウ、ソテツ等の裸子植物が挙げられ、
胞子植物では
ゼンマイ、ワラビ、シノブ、スギナ、トクサシダ植物;
ゼニゴケ、スギゴケ、ヒカリゴケ、ミズゴケ等のコケ植物;
コンブ、ワカメ、ハネケイソウ、クロレラ、ミカヅキモ等のソウ類が挙げられる。
土壌に、植物の種を撒きそのまま播種栽培しても、一度、鉢の土壌で育苗して発芽したものを別の土壌に植え替えて定植栽培してもよい。
植物の種類に応じて、土壌、土壌容器、温度、潅水、施肥の補充、発芽の間引き、定植のタイミング等の育苗条件を管理する。
〔実施例1〕
(1)原料
(1-1-1)静岡県掛川市山崎町の水田土壌から表土を取り除いた泥炭層を掘削して層状のまま採取した。
(1-1-2-1)採取した泥炭層を採種現場近傍に静置して重力脱水し、発酵槽を備える工場の屋外敷地に静置して一次乾燥し、さらに重力脱水した。
食品加工会社(カネマサ社)から入手先した牛肉、豚肉、鶏肉、かつお、えび、こんぶ、しいたけ及び各種野菜からなる群から選ばれる3種以上が含まれる食物のダシ抽出残渣混合物を1週間ごとに8回に分けて入手した(含水率80重量%)。各回の成分B1含有原料を、それぞれ、成分B1含有原料n(n=1〜8)とする。
静岡県下の廃棄物業者から入手した、雑木の剪定枝・雑草の刈草を1年間野積みして自然発酵させた木葉質発酵物(含水率30重量%)。
成分A含有原料(含水率30重量%)1kg、成分B1含有原料1(含水率80重量%)3kg(300質量部)、成分B2含有原料(含水率20重量%)2kgを、タイヤシャベル(TCM社製)で攪拌混合して原料混合物1を得た。
原料混合物1の組成を表1に示す。
(2-2-1)製造直後の原料混合物1を本発明3の発酵槽(幅6m、長さ40m、深さ1m)内に、製造直後の原料混合物1を、深さ約1m、長さ2mで載置する。
吸気チューブ(DENKA社製)は外径60mm、内径50mmで、直径5mmの吸気孔が長さ方向に5mm毎に5個ずつ穿孔されている。
(2-2-4)製造直後の原料混合物2を発酵槽内の原料混合物1に隣接して、深さ約1m、長さ2mで載置して、原料混合物1及び2をロータリー式撹拌機(6型−D1000)、岡田製作所社製)で攪拌混合する。
(2-2-5)攪拌混合物中に、発酵槽の幅方向両端を50cm空けて、吸気チューブ6本を1m間隔で発酵槽の全長に対して埋設する。
(2-2-6)発酵槽内で、加温して温度60〜70℃下で、吸気チューブから発酵槽内の空気を吸引量2280m3/時間で吸引して大気中に排出する。空気の吸引は7日間行った後、吸気チューブを攪拌混合物から取り除く。
(2-2-7)製造直後の原料混合物iを、原料混合物1〜(i-1)の攪拌混合物に隣接して、
深さ約1m、長さ2mで載置して、原料混合物1〜(i-1)の攪拌混合物と原料混合物iをロータリー式撹拌機で攪拌混合する。
(2-2-8)攪拌混合物中に、発酵槽の幅方向両端を50cm空けて、吸気チューブ6本を1m間隔で発酵槽の全長に対して埋設する。
(2-2-9)発酵槽内で、加温して温度60〜70℃下で、吸気チューブから発酵槽内の空気を吸引量2280m3/時間で吸引して大気中に排出する。空気の吸引は7日間行った後、吸気チューブを原料混合物から取り除く。
(2-2-10)上記工程(2-2-7)〜(2-2-9)をi=3、4、5、6、7及び8について繰り返して、本発明1の発酵組成物を得た。
測定項目の後の括弧内は
「2019年版:肥料等試験法(農林水産消費安全技術センター)」(以下「試験法1」)、
「1992年版:肥料分析法(農林水産省環境技術研究所)」(以下「試験法2」)、及び、
「1988年版:第二次改訂紹介肥料分析法(越野正義著)」(以下「試験法3」)の該当測定方法である。
(3-1-1)pH(試験法1:3.3a ガラス電極法)
(3-1-2)EC(電気伝導度)(試験法1:3.4a 電気伝導率計法による測定方法)
(3-1-3)CEC(陽イオン交換容量)(試験法3:6.8.1 カラム浸透法)
(3-2-1)水分(試験法1:3.1.a乾燥器による乾燥減量法)
(3-2-2)硫黄分全量(S)(試験法1:4.12.1.a 過マンガン酸カリウム法)
(3-2-3)鉄全量(Fe)(試験法2:5.17.2 原子吸光測光法)
(3-2-4)亜鉛全量(Zn)(試験法1:4.9.1.a フレーム原子吸光法)
(3-2-5)マンガン全量(Mn)(試験法2:4.7.3原子吸光法)
(3-2-6)モリブデン全量(Mo)(試験法2:5.27.2原子吸光法)
(3-2-7)く溶性ホウ素(B)(試験法1:4.8.1.b ICP発行分光分析法)
(3-2-8)塩素(Cl)(試験法1:6.2.b 硝酸銀法)
(3-2-9)可溶性ケイ酸(Si)(試験法1:4.4.1.a ふっ化カリウム法)
(3-2-10)窒素全量(N)(試験法1:4.1.1.a ケルダール法)
(3-2-11)りん酸全量(P2O5)(試験法1:4.2.1.a バナドモリブデン酸アンモニウム法)
(3-2-12)加里全量(K2O)(試験法1:4.3.1.a フレーム原子吸光法)
(3-2-13)石灰全量(CaO)(試験法1:4.5.1.a フレーム原子吸光法)
(3-2-14)苦土(MgO)(試験法1:4.6.1.a フレーム原子吸光法)
(3-2-15)腐植酸(酸不溶アルカリ可溶分)(試験法1:6.9.a 重量法)
「肥料取締法に基づく告示の改正に伴う措置等について(通達)」(50農蚕第7007号(昭和50年11月6日付け)別紙1)に準拠した。但し、保温静置温度は25℃、経過分析は最長42日とした。
富士市大渕地内の富士火山灰系の淡色黒ボク土壌(未耕土)を供試した。火山灰系土壌のため、リン酸吸収係数が高いので、供試風乾細土に過リン酸石灰をP2O5として10mg/100g乾土になるように予め添加し、リン酸の吸収阻害を矯正した。P2O5以外のN及びK2Oは添加していない。
未耕土の表層を風乾し、2mmメッシュ篩を通した(風乾細土)を供試する。
200ml培養ビンに風乾細土を乾土として20gを加える。
これに、供試肥料を窒素換算10mgに相当する量を秤取り、最大容水量の60%相当の水を添加し、容器の口をアルミで覆った後、25℃保温室に入れ、所定の期間保温静置する。
この間、水分の蒸発があれば減少分を補給した。
水は精製水を用いた(水道水は塩素殺菌剤が入っているため使用しなかった)。
培養ビンを以下の条件で保温静置して培養した。
空調機を42日間、25℃、24時間連続運転保温した。
温度計を設置し、25℃に保たれていることを確認しながら試験した。
0、14、28及び42日目に経過分析した。
なお、無肥料区及び無機肥料区の分析も実施した。
アンモニア性窒素及び硝酸性窒素・亜硝酸性窒素を分別定量し、アンモニア性窒素及び硝酸性窒素・亜硝酸性窒素の合計量を無機態窒素量とし、無肥料区の無機態窒素を差し引いて補正した。
毎回、下記式で培養物のデータである現物表示から水分を差し引いた乾物表示のデータに基づきN無機化率を算出した。
培養後の培養ビンに、80mlの2M塩化カリウム液を加え、パラフィルムを挟んで中ふたをした状態で、30分間振盪した後静置し、乾燥ろ紙でろ過し、ろ液の適当量に重質酸化マグネシウム0.2gを加え蒸留法(ケルダール法)で定量した。
上記の蒸留法(ケルダール法)で定量した蒸留残液にデバルダ合金0.2gを加え再度蒸留法(ケルダール法)で定量した、硝酸性・亜硝酸性窒素由来のアンモニア量を硝酸性・亜硝酸性窒素量に換算した。
「栄養診断のための栽培植物分析測定法」(作物分析法委員会編、養賢堂)における「アミノ酸自動分析法」に基づき、パリノ・サーヴェイ株式会社に測定を依頼。
結果を表8に示す。
表3及び図1によれば、発酵組成物の窒素全量Nが2.5%であるうち、25℃で、
6週間培養で発現する無機態窒素は僅か6.8%であり、
1ヶ月経過後においても10%以下と極めて少ない量である。
従って、化成肥料(同条件での培養で無機態窒素発現量はほぼ100%である)との比較で生育・収量等が化成肥料より優れる場合は、有機体窒素の吸収効果であると考えられる。
(1)比較例1:窒素8重量%、リン酸8%、カリ8重量%の化学肥料(日東エフシー社製化学肥料8-8-8)を比較例1とした。
〔栽培実施例1〜3〕(播種栽培)
(1)土壌調整
(1-1)鉢:中国製10号黒ビニールポット2鉢を3組使用した。
窒素含有量が15kg/10aになるよう添加して均一に攪拌混合した土壌1の鉢を2つ、
窒素含有量が30kg/10aになるよう添加した均一に攪拌混合した土壌2の鉢を2つ、
窒素含有量が45kg/10aになるよう添加した均一に攪拌混合した土壌3の鉢を2つ作成し、
それぞれを土壌とした。。
土壌1にコマツナを4粒播種した場合を栽培実施例1、
土壌2にコマツナを4粒播種した場合を栽培実施例2、
土壌2にコマツナを4粒播種した場合を栽培実施例3とし、
それぞれを、温度14℃、湿度39%の下で静置した。各土壌について、土壌表面の乾燥時に、定量カップで、水を20gを1回/日撒いた。
播種してから7、9、12日後に発芽状況を調査した。
播種してから12日後に、各土壌について、発芽した4株を3株に間引いた。
各土壌について、播種してから16日後に発芽率・生育・収量・品質を確認した。
栽培実施例1〜3において、実施例1の発酵組成物を、
比較例1の化学肥料に置き換えた場合の土壌1〜3をそれぞれ土壌1-1〜3とし、
比較例2の発酵組成物に置き換えた場合の土壌1〜3をそれぞれ土壌2-1〜3とし、
それぞれの土壌に、栽培実施例1〜3と同様にコマツナを播種し、
土壌1-1〜3に播種された場合を栽培比較例1-1〜3、
土壌2-1〜3に播種された場合を栽培比較例2-1〜3として、
栽培実施例1〜3と同様の測定及び観察を行った。
栽培実施例1及び2において、各土壌に、コマツナを播種するのに代えて、別途発芽したコマツナ1株を定植した条件による栽培を栽培実施例4及び5とした。
別途発芽したコマツナは、以下の条件で育成した。
栽培実施例4及び5において、実施例1の発酵組成物を比較例1〜2の発酵等組成物に置き換えた以外は同じ条件での栽培を栽培比較例4及び5とした、
〔栽培実施例1〜5〕
各土壌における発芽率(播種8粒に対する発芽数の割合)を表4にまとめた。
播種してから50日目に、各土壌について下記項目を測定した。
(1)サンプリング
各測定の直前に、各鉢の株を掘り起こして土を振るい落とした。
(2)地上部の草丈
3株/鉢の各株の最大葉長を測定し、最大葉長の3株の平均値をその鉢の株の「地上部の草丈」とした。
3株/鉢の各株の地上部から上を切断して重量を測定し、3株の平均値をその鉢の株の「地上部の株重」とした。
「地上部の株重」で切断して残った地下部の長さを測定し、3株の平均値をその鉢の株の「地下部の根長」とした。
「地上部の株重」で切断して残った地下部を水洗して水をティッシュペーパーで取り除き、地下部の重量を測定し、3株の平均値をその鉢の株の「地下部の根重」とした。
本発明の発酵組成物を使用すると、化学肥料及び泥炭層乾燥泥炭を使用するよりも、
植物の発芽率が同等以上、生育(地上部の草丈・株重)・収量(地下部の根長・根重)が向上し、これらの施肥量増量効果が大きいことがわかった。
〔栽培実施例6及び栽培比較例6〕
(1)水稲栽培
(1-1)栽培実施例6
静岡県内の圃場における水田A(10a)に実施例1の発酵組成物を施用して、市販米「きぬむすめ」を生育した。
(1-2)栽培比較例6
同圃場の水田B(10a)に比較例3の肥料を施用して、市販米「きぬむすめ」を生育した。
(2-1)3月:土壌調整工程(土壌に土壌改良剤を添加して土壌調整する)
(2-2)5月:元肥工程(実施例1及び比較例3の肥料を施肥する)
(2-3)5月:田植工程(米苗を田植する)
(2-4)7月:追肥工程(実施例1及び比較例3の肥料を追肥する)
(2-5)9月:収穫工程(育成された稲を刈り取る)
水田Bの土壌は、比較例3肥料を使用して少なくとも3年連作している。
水田Aでは、実施例1肥料を300kg(N量6.9kg)、
水田Aでは、比較例3肥料を70kg(N量4.9kg)を施肥した。
水田Aでは、実施例1肥料を105kg(N量2.4kg)、
水田Aでは、比較例3肥料を70kg(N量0.7kg)を施肥した。
(2-1)収穫工程時の生育状態
各水田の1坪から坪刈された53株の中庸な10株について、稈長、穂長、穂数、根重、根長を測定し、稈長、穂長、穂数は10株の平均値を算出した。
(2-1-1)稈長:1株の水稲の地際から穂首までの長さを測定した。
(2-1-2)穂長:1株の水稲の穂首から穂先(芒は含まない)までの長さを測定した。
(2-1-3)穂数:穂首から穂先(芒を含まない)間での長さを測定した。
(2-1-4)根量:坪刈した箇所の中庸な3株を採取して、水洗して泥土を除去し風乾した後の重量を測定した。
(2-1-5)根長:根量を測定した3株の最大根長を測定した。
収穫工程時の生育状態の対象となった1坪分の水稲を刈り取り(坪刈し)、各水田について53株分について、前重、藁重、籾重、粃米重、玄米重、精玄米重、千粒重、水分を測定し、53株の平均値を算出した。
(2-2-1)全重W:刈り取った水稲の風乾重量を測定した。
(2-2-2)粃米重WS:刈り取って風乾した水稲を脱穀して分離された籾中の粃米の重量を測定した。
(2-2-3)籾重WM:刈り取って風乾した水稲を脱穀して分離された籾の重量からwSを刺しい引いた重量とした。
(2-2-3)藁重WW:全量Wから粃米重WS及び籾重WMを除いた重量とした。
(2-2-4)玄米重:脱穀して分離された籾を籾摺機で籾摺りして得た玄米の重量を測定した。
(2-2-5)精玄米重:玄米を米選機で屑米を除外して得た精玄米の重量を測定した。
(2-2-6)千粒重:精玄米1000粒の重量を測定した。
(2-2-7)水分:精玄米の水分量を米水分計を使用して測定した。
(3-1)収穫工程時の生育状態
(1)栽培実施例7
(1-1)鉢:中国製10号黒ビニールポットを使用した。
(1-2)土:静岡県田方郡函南町で採取した箱根火山灰土を2mmメッシュ篩で分級したものを淡色黒ボク土として使用した。
(1-3)施肥と栽培:鉢に土500mlを充填し、実施例1の発酵組成物を、以下の要領で施肥した。
(1-3-1)伏せ込み:実施例1の発酵組成物を窒素含有量が18kg/10aになるよう添加して、均一に攪拌混合した土壌を作成し、土壌1にサトイモ(品種:石川早生(赤松種苗社)を土の中に埋め込む(図2参照)。
(1-3-2)追肥1回目:伏せ込み56日後に、実施例1の発酵組成物を窒素含有量が6kg/10aになるよう添加した。
(1-3-3)追肥2回目:追肥1回目から31日後に、実施例1の発酵組成物を窒素含有量が kg/10aになるよう添加した。
(1-5)育成条件
温度14℃、湿度39%の下で静置した。各土壌について、土壌表面の乾燥時に、定量カップで、水を20gを1回/日撒いた。
栽培実施例7と同種の鉢に栽培実施例7と同じ土500mlを充填し、比較例1の肥料を使用して、栽培実施例7と同種のサトイモを伏せ込みして(図2参照)、栽培実施例7と同じ条件で施肥及び育成をした。
栽培実施例7と同種の鉢に栽培実施例7と同じ土500mlを充填し、比較例2の発酵組成物を使用して、栽培実施例7と同種のサトイモを伏せ込みして(図2参照)、栽培実施例7と同じ条件で施肥及び育成をした。
本発明の栽培実施例7は、発芽状態(伏せ込み19日後(図3参照)、伏せ込み24日後(図4参照)、伏せ込み70日後(図5参照))がよく、そのまま収穫状態(伏せ込み70日後、図6参照)の優位に反映されている。
Claims (6)
- 泥炭(成分A)と、糖質、繊維質、脂質、蛋白質、ビタミン及びミネラルからなる群から選ばれる3種以上の栄養素を含む食物(成分B)と、水(成分C)との混合物を発酵してなる発酵組成物。
- 前記成分Bが前記栄養素を含む食物残渣である請求項1記載の発酵組成物。
- 前記繊維質が木葉質自然発酵物を含む請求項1又は2記載の発酵組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の成分Aを含有する泥炭層の乾燥処理物(成分A含有原料)と、請求項1〜3のいずれか1項記載の成分Bを含有する含水物(成分B含有原料)との混合物を発酵する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の発酵組成物の製造方法。
- 請求項4記載の混合物に空気を通過させる通気装置を備える請求項1〜3のいずれか1項記載の発酵組成物の製造装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の発酵組成物を添加した土壌で植物を栽培する植物の栽培方法。
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