JP2021060320A - ガンマ線測定システム、ガンマ線測定方法、及びガンマ線測定プログラム - Google Patents

ガンマ線測定システム、ガンマ線測定方法、及びガンマ線測定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】入射ガンマ線エネルギーが未知で、かつ反応回数が3回のみの場合にもガンマ線の反応順序を推定する。【解決手段】ガンマ線測定システムは、入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラと、前記多重コンプトンカメラの出力に基づいて、検出器の内部におけるガンマ線の反応順序を決定する情報処理装置と、を有し、前記情報処理装置は、前記検出器の内部で発生した3つ以上の反応点について、可能なすべての反応順序の組を仮定し、前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存則で決まる散乱とが整合する第1の確率と、前記i番目と仮定された反応点でクライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率とを求め、前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて前記ガンマ線の反応順序を決定する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガンマ線測定システム、ガンマ線測定方法、及びガンマ線測定プログラムに関する。
高エネルギーの原子核が物質と反応を起こすと、原子核の束縛エネルギーに相当する数MeV〜10MeVの核ガンマ線が放射される。このエネルギー帯のガンマ線を撮像する手段として、コンプトン散乱を利用したカメラが知られている。通常のコンプトンカメラは、散乱体でコンプトン散乱を受けた後のガンマ線を、厚い吸収体で光電吸収させ、散乱体と吸収体のそれぞれで測定されたエネルギーから、ガンマ線の到来方法を決定する。しかし、光電吸収過程の反応断面積はエネルギーの−3.5乗程度のべき乗関数で急激に減少するため、数MeV以上のガンマ線を高感度で検出するには、非常に重量のある吸収体を用意しなければならない。
上記のデメリットを解決するカメラが多重コンプトン散乱カメラである。数MeVを超えるガンマ線は、原子番号の比較的小さな物質を用いることで光電吸収が起きる確率を非常に小さくできるため、ある程度の厚みのある原子番号の小さな物質で構成された散乱体を用いることで、複数回のコンプトン散乱を引き起こすことができる。多層に重ねた位置敏感型放射線検出器を用いて、多重コンプトン散乱を利用したカメラが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。検出器中でガンマ線を複数回反応させ、可能なすべての反応順序を仮定し、各反応位置での散乱がエネルギー・運動量保存則と所定の許容誤差範囲内で矛盾しないかどうかをチェックすることで、反応順序を決めている。
特公平7−1309号公報
特許文献1の手法では、反応の起きた各層で検出されたエネルギーの総和および散乱体を取り囲むように配置した吸収体で測定されたエネルギーから、入射ガンマ線のエネルギーE0を求め、反応順序からガンマ線の入射方向を推定する。ここで、散乱体での反応点が3か所しかない場合でも、吸収体のエネルギー情報を用いていることに注意する。下記の式(1)はエネルギー・運動量保存則を基にして仮定した反応順序におけるE0を推定する式である。式(1)の各パラメータについては、図4を参照して後述する。吸収体がある場合は、推定したエネルギーと実際のエネルギーの比較により、特許文献1の通り反応順序の判定ができる。吸収体がない場合は、下記の式(1)を用いてE0を推定しなければならないが、そのエネルギーでは自動的に式(1)を満たす。反応回数が3回のみの場合、式(1)しか満たすべき条件がないため、仮定したすべての反応順序で自動的にエネルギー・運動量保存則が満たされ、反応順序を特定することができない。
Figure 2021060320
一方、多重コンプトン散乱は、散乱体の厚さにも依存するが、通常は3回までの反応の確率は、4回以上の反応に比べて大きいので、3回の反応で入射ガンマ線の方向とエネルギーを特定できることが望ましい。
本発明は、3回の反応でも精度良くガンマ線の反応順序を決定することのできるガンマ線測定の技術を提供することを目的とする。
本発明では、仮定したガンマ線の反応順序に基づいて正しい反応順序を決定する際に、エネルギー及び運動量保存則との矛盾の有無だけでなく、クライン・仁科の式で決まる散乱方向への反応確率を考慮する。これにより、吸収体がない多重コンプトンカメラにおいて、入射ガンマ線のエネルギーが未知の場合にも、3回のみの反応で反応順序を決定することが可能になる。さらに、クライン・仁科の式で決まる散乱方向の確率を考慮することで、順序決定の正答率が向上する。
本発明の一つの態様では、ガンマ線測定システムは、入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラと、前記多重コンプトンカメラの出力に基づいて、検出器の内部におけるガンマ線の反応順序を決定する情報処理装置と、を有し、
前記情報処理装置は、前記検出器の内部で発生した3つ以上の反応点について、可能なすべての反応順序の組を仮定し、前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存則で決まる散乱とが整合する第1の確率と、前記i番目と仮定された反応点でクライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率とを求め、前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて前記ガンマ線の反応順序を決定する。
上記の構成により、入射ガンマ線エネルギーが未知の場合にも、3回のみの反応の順序決定が可能になり、また、順序決定の正答率が向上する。
実施形態のガンマ線測定システムの模式図である。 実施形態のガンマ線測定システムで用いられる多重コンプトンカメラの模式図である。 実施形態のガンマ線測定方法のフローチャートである。 多重コンプトンカメラによるガンマ線の入射方向とエネルギーの再構成の図である。 クライン・仁科の反応断面積の方位角依存性を示す図である。 実施形態の手法による反応順序の正答率を示す図である。
図1は、実施形態のガンマ線測定システム1の模式図である。ガンマ線測定システム1は、多重コンプトンカメラ10と、情報処理装置20を有する。情報処理装置20は、多重コンプトンカメラ10によって観測されたガンマ線の反応位置と、反跳電子のエネルギーに基づいて、入射ガンマ線のエネルギーと入射方向を特定する。
多重コンプトンカメラ10は、検出器11と、光電子増倍管12と、光学系13と、イメージインテンシファイア14と、CMOSカメラ等のイメージセンサ15と、トリガー信号生成装置17を有する。検出器11は、一例として、シンチレーションファイバー束で構成されるシンチレータであり、多数のシンチレーションファイバーを組み合わせて一定の厚みをもつシンチレータが構成されている。
検出器11にガンマ線が入射すると、検出器11を構成する原子との相互作用により、エネルギーの一部を失って散乱し、原子中の電子は軌道から飛び出す。図中、ガンマ線は太線の矢印で示され、反跳電子は破線の矢印で示されている。検出器11内でガンマ線が散乱する際に放出される反跳電子は、シンチレーションファイバーと反応して、光が放出される。多重コンプトンカメラ10は、検出器11内で放出された光の像を撮像する。
図2は、検出器11を構成するシンチレータの模式図である。図2の(A)に示すように、Y方向に延びる多数のシンチレーションファイバー111をX方向に並べたシンチレーションファイバープレートが、厚さ方向(Z方向)に重ねられている。厚さ方向で隣接するシンチレーションファイバー111の間に、X方向に延びるシンチレーションファイバー111をY方向に並べたシンチレーションファイバープレートが挟まれている。図示の便宜上、最上部と最下部においてのみX方向に延びるシンチレーションファイバー111が描かれているが、すべての隣接するY方向ファイバープレートの間に、X方向ファイバープレートが挿入されている。X方向のプレートおよびY方向のプレートを交互に重ねることで、一定の厚みをもつ三次元の放射線検出器が構成される。隣接するプレートで反跳電子によるエネルギーが測定されると、散乱した座標が求まる。これをX−Y面内でみると、図2の(B)に示すように、X方向に延びるシンチレーションファイバー111と、Y方向に延びるシンチレーションファイバー111の各交点が座標を表わし、反応が観察されたi番目の座標Ciは、Ci=(xi,yi, zi)で表される。
検出器11の内部で複数回の散乱を検出できるように、一例として、ファイバーの径が0.5mm角のシンチレーションファイバー111を用いて、10cm×10cm×10cmのファイバーキューブを形成する。シンチレーションファイバー111を用いた検出器11の位置分解能を利用して、数MeV〜10MeVのガンマ線の入射に対して、反応点を検出することができる。
図1に戻って、検出器11の一端側は光電子増倍管12に接続されている。検出器11の他端側は、ファイバーオプティックプレート(FOP)などの光学系13を介して、イメージインテンシファイア14に接続されている。この構成例では、イメージインテンシファイア14の有効径がファイバーキューブの一辺の長さよりも小さいので、FOPなどの光学系13を用いて光を誘導しているが、イメージインテンシファイア14の有効径とファイバーキューブのサイズが整合している場合は、光ガイド用の光学系13を用いなくてもよい。
イメージインテンシファイア14は、検出器11で得られる微弱な光像を増強して、高輝度の光像を出力する。イメージインテンシファイア14で増強された高輝度の光像は、CMOSカメラ等のイメージセンサ15によって、高速に読み出される。光電子増倍管12は、他端からの光を電気信号に変換した後に増幅する。増幅された信号は、トリガー信号生成装置17で波形整形を受け、ある閾値を超えた信号が入力された場合のみイメージセンサ15へのトリガー信号を生成する。イメージセンサ15は、トリガー信号生成装置17からのトリガー信号のタイミングで、イメージインテンシファイア14から光像を読み出す。
イメージセンサ15の出力は、情報処理装置20の入力に接続されている。情報処理装置20は、入出力インタフェース21と、プロセッサ22と、メモリ23と、表示装置24と、入力装置25を有し、これらはシステムバス27によって相互に接続されている。情報処理装置20は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等、情報処理機能を有する任意の装置である。
入出力インタフェース21は、外部デバイスを情報処理装置20に接続してデータの入出力を行うためのインタフェースである。図1の例では、イメージセンサ15が情報処理装置20にとっての外部デバイスとなる。
プロセッサ22は、情報処理装置20の全体の動作と各装置の動作を制御し、必要な演算、データ加工等を行う。プロセッサ22はまた、メモリ23または図示しない補助記憶装置に記憶された各種のプログラムを実行する。
表示装置24は、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等であり、静止画像、または動画像を表示する。イメージセンサ15からの出力をプロセッサ22で画像変換して、反応画像を表示装置24に表示してもよい。
入力装置25は、キーボード、マウス、マイク、タッチパネル等の入力用のユーザインタフェースである。入力装置25がタッチパネルの場合は、表示装置24の表示画面と入力装置25が一体化されていてもよい。
実施形態の特徴として、情報処理装置20は、多重コンプトンカメラ10への入射ガンマ線のエネルギーが未知で、かつ、検出器11での反応回数が3回のみであっても、入射ガンマ線の到来方向とエネルギーを推定する。検出器11での反応回数が3回以上の場合も、もちろん、ガンマ線の到来方向とエネルギーの推定が可能であるが、極端に厚みのある散乱体を用いない限り、3回の反応が起きる確率は、4回以上の反応が起きる確率に比べて大きいので、3回の反応に基づくガンマ線測定は検出感度が良好である。
図3は、実施形態のガンマ線測定方法のフローチャートである。この処理フローは、情報処理装置20のプロセッサ22によって実行される。まず、検出器11でのガンマ線の反応位置を取得する(S0)。反応位置を取得する前提として、検出器11で起きたすべての反応で電子が得たエネルギーΔEi(i=1,2,...,N)の総和Etotに相当する電気信号をモニタし、Etotがある設定値以上になったときに、各反応位置(xi,yi,zi)と、それぞれの反応位置でのエネルギーΔEi(i=1,…N)を決定する。
このとき、バックグラウンドノイズとなり得るガンマ線以外の荷電粒子を排除するために、検出器11を取り囲むように反同時計数検出器を配置して、反同時計数検出器からの信号EAを取得してもよい。検出器11で検出された信号の総エネルギーEtotが第1の閾値を上回り、かつ反同時計数検出器からの信号EAが第2閾値を下回る場合のみ、反応位置決定のトリガーを出力する電子回路をプロセッサ22に組み込んでもよい。
検出器11での反応位置が求まると、入射ガンマ線の反応回数Nが3以上であるか否か(N≧3)を判断する(S1)。反応回数Nが3回に満たない場合は(S1でNO)、エネルギーの再構成ができないので、処理を中止する。エネルギーの再構成とは、式(1)で表される入射ガンマ線のエネルギーの推定である。
図4は、多重コンプトンカメラ10によるガンマ線の入射方向とエネルギーの再構成の図である。検出器11内の位置D1、D2、D3で入射ガンマ線が散乱する場合を考える。座標(x1,y1,z1)で表される1つ目の位置D1で、入射ガンマ線のエネルギーの一部ΔE1は反跳電子に移り、ガンマ線のエネルギーはΔE1だけ減少する。座標(x1,y1,z1)での反応によって散乱されるガンマ線の散乱角をθ1とする。
座標(x2,y2,z2)で表される2つ目の位置D2で、ガンマ線のエネルギーの一部ΔE2は反跳電子に移り、ガンマ線のエネルギーはさらにΔE2だけ減少する。座標(x2,y2,z2)での反応によって散乱されるガンマ線の散乱角をθ2とする。下記の式(1)を用いて入射ガンマ線のエネルギーE0を推定するには、右辺第3項のcosθ2 geoを取得しなければならない。
Figure 2021060320
散乱角θ2を得るには、3回目の反応の情報が必要である。すなわち、散乱点i=2に着目したときに、i=1の反応点と、i=3の反応点の情報を用いる。反応回数が3回未満の場合(N<3)はエネルギーを再構成することができず、処理を中止する。
一方、反応回数が3回以上の場合(S1でYES)、反応順序さえわかれば、入射ガンマ線のエネルギーE0と到来方向を推定することができる。そこで、ステップS2に進んで反応順序のk通りの組を決定する(S2)。
たとえば、N=3で3個の反応点(xi,yi,z1)(i=1,2,3)がある場合、反応順序の組kとしては、{1,2,3}、{1,3,2}、{2,1,3}、{2,3,1}、{3,1,2}、{3,2,1}の6通り(3!=3×2×1)が考えられる。以下で、反応順序の組を仮定した場合のi番目の反応点の座標を(xi,yi,zi)、反応で反跳電子が得たエネルギーをΔEiと表す。
次に、ステップS3で、ある組の入射ガンマ線のエネルギーE0を決定する(S3)。エネルギー再構成におけるΔE1とΔE2は、イメージセンサ15で検出される各反応点の信号強度から得られる。cosθ2 geoは、反応点の座標から、
Figure 2021060320
で求められる。左辺の上付き「geo」は、観測された3つの反応点で決まる幾何学的な角度であることを示す。
式(1)に、ΔE1とΔE2、cosθgeo 2の計算結果を代入して、入射ガンマ線のエネルギーE0を決定する。
Figure 2021060320
次に、その組でi番目と仮定した反応点における散乱前のガンマ線のエネルギーEiを算出する(S4)。ステップS3で入射ガンマ線のエネルギーE0が求まっているので、
i=E0−ΔE1−ΔE2…−ΔEi
で求めることができる。
次に、その組のエネルギー再構成の結果と、エネルギー運動量保存則とが整合する確率pi kinを求める(S5)。エネルギー運動量保存則との整合性は、たとえば、運動学で決まる角度のcosθi kin
Figure 2021060320
と、3つの反応点で決まる幾何学的なcosθi geo
Figure 2021060320
を計算し、比較することで求めてもよい。
式(2)のcosθi kinと、式(3)のcosθi geoの値には、測定エネルギーや位置の不定性が含まれるため、その不定性を考慮した整合性の確率pi kinをi=2,3,…,N−1のそれぞれで求める。ここで、角度θiで着目している散乱点はi番目の反応点である(
i=2,3,…,N−1)。
確率pi kinの定義の仕方は様々考えられるが、例えば以下のようにする。ガンマ線が同じ反応を起こしたとしても、cosθi geo やcosθi kinは検出器11のエネルギー分解能や位置分解能によってばらつく。その期待されるばらつきを解析的に算出するのは難しいので、乱数を用いて測定されたエネルギーと反応位置をばらつかせ、cosθi geoとcosθi kinの分布を作成する。それぞれの分布における平均値μgeokinおよび標準偏差σgeokinを求める。確率pi kinは、たとえば、
Figure 2021060320
で与えられる。ここで、xとσは以下のように表される。
Figure 2021060320
cosθi geo やcosθi kinは正規分布ではなく近似的な方法ではあるが、この方法でも十分な正答率が与えられる。
ここで、i=2のとき、E1=E0−ΔE1を式(2)に代入して変形すると、式(1)と同様の式(4)が得られる。
Figure 2021060320
が得られる。
一方、測定された反応位置に基づいて式(3)で求められるcosθ2 geoを式(1)に入れることで、式(1)を満たすE0が定まるわけだが、そのE0を式(4)に入れて求まるcosθ2 kinの値は、常にcosθ2 geoとなり、順序決定のための判定に使うことができない。そのため、i=2の場合は便宜上、p2 kin=1と置く。散乱点が3つのみの場合はi=2のみであるため、このままでは順序決定の判定ができない。
ステップS6で、各反応点でその反応が起こる確率pi KNを、クライン・仁科の式から求める。ステップS6とステップS5は同時に行われてもよいし、順序が逆であってもよい。i=2〜N−1の反応点で、散乱前のガンマ線のエネルギーEγと、散乱後のガンマ線エネルギーEγ'と、散乱角θが求まっていることになる。例えば、散乱前のエネルギーEγ=Eiのときは、散乱後のガンマ線のエネルギーEγ'はEi+1、θ=θi+1となる。その反応が起こる確率pi KNを、以下のクライン・仁科の式
Figure 2021060320
で求める。クライン・仁科の式は、入射ガンマ線がコンプトン散乱をおこす断面積σを、ガンマ線が散乱される方向の立体角で微分した微分(反応)断面積である。ガンマ線は、エネルギーが高いほど前方に散乱するという特徴を持っているため、クライン・仁科の式は、反応順序の識別に有効である。
図5は、クライン・仁科の反応断面積の方位角依存性を示す図である。上記のクライン・仁科の式の古典電子半径r0は、r0=1で規格化されている。角度は、ラジアン単位となっている。0ラジアンは、入射ガンマ線と同じ方向へガンマ線が散乱すること(直進すること)を意味する。100keVから1000keVと入射ガンマ線のエネルギーが高くなるほど、後方への散乱がほとんどなくなり、かつ前方に散乱する角度範囲が狭くなっている。
クライン・仁科の式に基づく反応の確率pi KNとして、反応位置の不定性による散乱ガンマ線の散乱角の不定性を考慮して適当な立体角dΩを掛け合わせたものを用いてもよい。
図3に戻って、エネルギー運動量保存則との整合性の確率pi kinと、クライン・仁科の式に基づく反応の確率pi KNと用いて、尤度(likelihood)を計算する(S7)。尤度Lkは、
Figure 2021060320
で表される。
次に、仮定した他の組があるか否かを判断する(S8)。他に仮定した組が有る場合は(S8でYES)、ステップS3〜S8を繰り返す。仮定したすべての組についてS3〜S8の処理が終わると(S8でNO)、最大尤度の組の反応順序を、正しい反応順序と推定して(S9)、処理を終了する。
この手法によると、反応点が3点のみの場合も、クライン・仁科の式の基づく反応の確率を取り込むことで、反応順序の推定が不可能になる事態を回避し、正しい反応順序を推定することができる。なお、仮定する順序の数はNの階乗で増えるため、Nが大きいときには計算量が増えるが、最初の4あるいは5点といった適当なM回(M<N)の散乱だけをチェックし、後は打ち切ってもよい。
図6は、実施形態の手法による反応順序の正答率を示す図である。実施形態の効果を検証するために、CERN(欧州原子核研究機構)が開発したGEANT 4パッケージを用いて物質中における粒子の反応をシミュレーションした。横軸は反応点の数、縦軸は反応順序の正答率である。黒丸は、反応順序の決定にクライン・仁科の式を用いる実施形態の構成と手法による計算結果、三角マークは、クライン・仁科の式を用いない公知の反応順序決定方法による計算結果である。シミュレーションでは、3次元の粒子飛跡の検出器11(図1参照)に用いられるシンチレーションファイバーの素材であるポリスチレンに、4MeVのガンマ線を入射させた。シンチレーションファイバーの位置分解能を1mmとし、典型的なエネルギー分解能を仮定する。
仮定する条件によって変化するが、上記の条件では、Nの値が大きいところ(N=7以上)で正答率が顕著に向上した。3回反応の場合は、クライン・仁科の式を使わないとそもそも反応順序が決定できないので、横軸の値が3のとき公知方法での計算結果は得られていない。あるいは、3の階乗通りの順序があるので、適当な順序を選択することで100/3!=17%の正当率があると換算してもよい。
物質の厚みによっても効果は異なるが、3回反応は通常、多重散乱の中で高い確率で引き起こされるため、3回反応でも高い正答率で順序決定が可能となる本発明の効果は大きい。多重コンプトンカメラを用いたガンマ線測定で、本発明の手法により反応順序決定の正当率を向上させることにより、検出器サイズを大きくすることなく検出感度を向上させることができる。
実施形態のガンマ線測定方法をコンピュータプログラムで実現する場合は、ガンマ線測定プログラムを情報処理装置20のメモリ23または補助記憶装置に格納しておき、プロセッサ22によってプログラムを実行する。この場合、プロセッサ22は、プログラムに従って、以下の手順を実行する。
入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラからの出力に基づいて、検出器内部でのガンマ線の反応位置を3つ以上特定する手順;
3つ以上の前記反応位置について、可能なすべての反応順序の組を仮定する手順;
仮定した前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存側で決まる散乱とが整合する第1の確率を求める手順;
前記i番目と仮定された反応点で、クライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率を求める手順;及び
前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて前記ガンマ線の反応順序を決定する手順。
情報処理装置20にこのプログラムを実行させることで、反応回数が3回の場合でも、高い正答率でガンマ線の反応順序を特定することができる。
本発明は多様な分野への応用が可能である。
(A)放射線治療分野への応用
がんの治療法としての放射線治療には、これまではガンマ線や電子線が多く使われてきたが、最近ではより体への負担が少なく効果的な陽子線や重粒子線といった原子核を加速させて治療する方法に変わりつつある。しかし、患者を設置してから照射までに患者や臓器の動きによる位置不定性および粒子の飛程の不定性があるため、照射時に患部に十分な吸収線量が与えられているか、あるいは照射箇所や飛程は適切かということを現場でモニタする技術が求められている。そのためには、ビームと患部の原子核の相互作用で発生するガンマ線の撮像が有用である。特に、実施形態の構成と手法では、2MeV以上のガンマ線撮像を高感度、かつ高位置分解能で測定でき、粒子飛程の決定精度が向上する。実施形態のガンマ線測定をモニタに用いることで、より体への負担が少ないがん治療が可能となる。
(B)核融合分野への応用
高いエネルギー増倍率(核融合出力のプラズマへの加熱入力に対する比率)を実現するためには、重水素とトリチウムの核融合反応で生成されるヘリウムイオン(α粒子)の排出・制御が重要であるが、現状ではα粒子の状態を精度良くモニタできていない。実施形態の構成と手法では、数MeV以上のガンマ線が高感度、かつ高分解能で撮像でき、高い正答率で到来方向を推定できる。実施形態のガンマ線測定により、α粒子と炉壁の材料であるベリリウムとの反応で生成される3〜4MeVのラインガンマ線を観測することで、α粒子を間接測定することが可能となる。損失α粒子の間接測定技術が確立できれば、内部の閉じ込め領域の高エネルギーα粒子の診断も可能になり、核融合プラズマ研究の基盤の拡大に貢献できる。
(C)宇宙観測への応用
加速器を遥かに凌駕するエネルギーを持つ原子核(宇宙線)が宇宙のどこで、どのように加速されているかという宇宙線起源の問題は、未だ完全には解決されていない。宇宙線起源の仮説を立証するには、宇宙線と天体近傍の星間物質が相互作用する際に生じるガンマ線の観測が有効である。実際、ガンマ線観測によって、粒子を加速している天体は見つかってきている。しかし、加速される粒子が、地球で測定される宇宙線の主要な成分である原子核なのか、それとも電子なのか、という根本的な問題が残されている。この問題を解決するための有力な方法が、宇宙線原子核が星間物質中の原子核を励起した後に生ずる脱励起ラインガンマ線(10MeV以下)である。実施形態の構成と手法により、1MeV〜10MeVのガンマ線観測技術を用いて脱励起ラインガンマ線を捉えることで、加速されている宇宙線の種類を観測的に検証することが可能になる。
1 ガンマ線測定システム
10 多重コンプトンカメラ
11 検出器
111 シンチレーションファイバー
12 光電子増倍管
13 光学系
14 イメージインテンシファイア
15 イメージセンサ
17 トリガー信号生成装置
20 情報処理装置
21 入出力インタフェース
22 プロセッサ
23 メモリ
24 表示装置
25 入力装置

Claims (6)

  1. 入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラと、
    前記多重コンプトンカメラの出力に基づいて、検出器の内部におけるガンマ線の反応順序を決定する情報処理装置と、
    を有するガンマ線測定システムにおいて、
    前記情報処理装置は、前記検出器の内部で発生した3つ以上の反応点について、可能なすべての反応順序の組を仮定し、前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存則で決まる散乱とが整合する第1の確率と、前記i番目と仮定された反応点でクライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率とを求め、前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて前記ガンマ線の反応順序を決定する、
    ことを特徴とするガンマ線測定システム。
  2. 前記情報処理装置は、前記反応順序の各組で、前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて対応する反応順序の尤度を計算し、前記尤度が最大の組で仮定された反応順序を正しい反応順序として決定する、
    ことを特徴とする請求項1に記載のガンマ線測定システム。
  3. 前記多重コンプトンカメラは、複数のシンチレーションファイバーで形成される立体型の前記検出器を有し、
    前記情報処理装置は、前記検出器における前記3つ以上の反応点の各々について3次元座標位置を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のガンマ線測定システム。
  4. 情報処理装置において、
    入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラからの出力を取得し、
    前記出力に基づいて検出器内部での3つ以上のガンマ線の反応点を特定し、
    前記3つ以上の反応点について、可能なすべての反応順序の組を仮定し、
    前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存側で決まる散乱とが整合する第1の確率を求め、
    前記i番目と仮定された反応点で、クライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率を求め、
    前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて、前記ガンマ線の反応順序を決定する、
    ことを特徴とするガンマ線測定方法。
  5. 前記反応順序の各組で、前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて、対応する反応順序の尤度を計算し、
    前記尤度が最大の組で仮定された反応順序を正しい反応順序として決定する、
    ことを特徴とする請求項4に記載のガンマ線測定方法。
  6. プロセッサに、
    入射ガンマ線と物質との複数回の反応を撮像する多重コンプトンカメラからの出力に基づいて、検出器内部でのガンマ線の反応点を3つ以上特定する手順と、
    3つ以上の前記反応点について、可能なすべての反応順序の組を仮定する手順と、
    仮定した前記反応順序の各組で、i番目(i=2,3,…、N−1;Nは反応点の数)と仮定された反応点で観測される散乱と、エネルギー及び運動量保存側で決まる散乱とが整合する第1の確率を求める手順と、
    前記i番目と仮定された反応点で、クライン・仁科の式で決まる散乱方向に前記反応が起こる第2の確率を求める手順と、
    前記第1の確率と前記第2の確率に基づいて、前記ガンマ線の反応順序を決定する手順と、
    を実行させるガンマ線測定プログラム。
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