JP2021056098A - 試験片の製造方法、及び、鋼中析出物の検査方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼中の微細析出物を簡便かつ鮮明に検査することが可能な方法を提供する。【解決手段】鋼の試験片の観察面をバフ研磨し、観察面に対し、コロイダルシリカ研磨、または、電解研磨により鏡面仕上げを行い、さらに観察面に対し、高周波グロー放電発光分析装置にて、プラズマ励起ガスを用いてスパッタリングを行う、ことを特徴とする、試験片の製造を行い、FE−SEMでの反射電子像観察による鋼中微細析出物の観察を行う。【選択図】図1
Description
本発明は、試験片の製造方法、及び、鋼中析出物の検査方法に関する。
鋼中の微細な析出物は、強度、延性、靱性への関与や結晶粒界のヒ゜ン止め作用など、様々な効果を受け持つが、その作用解明には大きさや分布を把握することが重要である一方、その大きさが100nm前後となると光学顕微鏡では観察が不可能であり、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEMという)や、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、以下TEMという)による観察が必須となる。
ただし、高硬度鋼の母相組織であるマルテンサイトは多量に転位を含み、TEMの薄膜透過観察では転位コントラストに隠れて析出物を明瞭に判別できないことが多かった。また、同じく抽出レプリカ法により得られた薄膜のTEM観察では析出物の観察が可能であるが、高硬度鋼の強度に影響を及ぼす析出物の分布状態については正しく評価できない。
他方、SEMによる観察ではバフ研磨による鏡面仕上げならびに電解研磨後に、電界放出形走査電子顕微鏡(Field Emission-Scanning Electron Microscope、以下、FE-SEMという)にて観察する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
マルテンサイト鋼では電解研磨を行うと腐食による微細なピットが生じる場合があり、析出物の分布状態を正しく把握することは困難になる。
さらには、SEMによる観察では通常は試料表面のエッチングが必要であり、析出物の分布(大きさや分散状態)が試料のエッチングの度合いによっても左右されること、そして、エッチングの過程で母相から析出物が脱落する場合があることが課題であった。したがって、簡便かつ迅速に、精度よく析出物を検査する為の手法が望まれていた。
本発明は、前述の従来技術が有していた、試験片をエッチングした状態でFE-SEM観察に供した場合に、母相が高硬度のマルテンサイト鋼である場合に明瞭に析出物を観察することが困難であるとの課題を解決し、簡便かつ迅速に、精度よく微細な析出物を検査する方法を提供しようとするものである。
本発明は、鋼の試験片の観察面をバフ研磨し、観察面に対し、高周波グロー放電発光分析装置にて、プラズマ励起ガスを用いてスパッタリングを行う、試験片の製造方法である。
また、本発明は、上記試験片に対して、電界放出形走査電子顕微鏡により、表面に存在する鋼中の析出物の反射電子像を取得して、析出物を検査する、鋼中析出物の検査方法である。
本発明の試験片の製造方法、及び、鋼中析出物の検査方法によれば、簡便かつ迅速に、精度よく微細な析出物を検査することが可能となる。
以下、本発明の実施形態である試験片の製造方法、及び、鋼中析出物の検査方法について、図を参照して詳細に説明をする。
本発明者らは、マルテンサイト鋼の試験片の観察面をバフ研磨した後に、コロイダルシリカ研磨、または、電解研磨により鏡面仕上げした試料面に対し、高周波グロー放電によるスパッタリングを行い、研磨痕の無い極めて平滑な表面を得た試験片を作製したのち、この試験片に対してFE-SEMにより表面からごく浅い領域内(観察面の表面からの深さ数十nm(20〜30nm)内)に存在する鋼中の析出物からの反射電子像を取得することによって、鋼中の析出物の大きさや鋼中での実際の分布状態をマルテンサイト組織に影響を受けずに直接観察することができることを見出した。
さらに、鋼中の析出物の組成を、FE-SEMに付属させたエネルギー分散型X線分析装置により分析することが可能である。この方法は、TEM観察の分解能には及ばないが、薄膜試料作製が必須となるTEM観察に比べて試料の調整が容易であり、なおかつTEMでの薄膜観察において析出物の観察を阻害するマルテンサイト組織のコントラストの影響を受けにくい特長を有する。
なお、高周波グロー放電発光分析装置を用いたスパッタリングのみでも試料面の平滑化は可能であるが、観察面の平滑化に長時間を要するため、予備処理として、実施形態のごとく、バフ研磨ならびにコロイダルシリカ研磨や電解研磨による観察面の平滑化を行うのがよい。
観察面の平滑化のためのスパッタリングに使用するプラズマ励起ガスは種々あり、必要に応じて選択することができる。例えば、実施形態ではArガスならびにAr+O2混合ガスを用いている。
プラズマ励起ガスにAr+O2混合ガスを用いた場合には、より一般的なArガスを用いた場合に比べて、不純物となるO2のプラズマの励起のためにエネルギーが余分に消費されることを通じて観察面のスパッタリング速度を下げることが可能である。これにより、プラズマ励起ガスとしてArを用いる場合と比べ、スパッタリングに時間を多く要するものの、平滑性の高いスパッタリング面の形成が可能となる。
図1は、実施形態の鋼中析出物の検査方法のフローチャートである。実施形態では、SUJ2鋼をモディファイし、Vを添加した鋼材を代表例として用い説明する。しかしながら、実施形態は、鋼種の対象を特段限定するものではなく、他の鋼材においても鋼材の特質に合わせて実施することが可能である。
(工程A:バフ研磨等による試験片の予研磨)
微小析出物検査用の試験片作製にあたっては、グロー放電によるスパッタリングのみで平滑化することが可能である。しかしながら、グロー放電によるスパッタリングは、観察面の平滑化に長時間を要するため、実施形態では、予研磨として、鋼の観察面のバフ研磨を行い、その後、コロイダルシリカ研磨、または、電解研磨をおこない予め鏡面状態へと加工する。
微小析出物検査用の試験片作製にあたっては、グロー放電によるスパッタリングのみで平滑化することが可能である。しかしながら、グロー放電によるスパッタリングは、観察面の平滑化に長時間を要するため、実施形態では、予研磨として、鋼の観察面のバフ研磨を行い、その後、コロイダルシリカ研磨、または、電解研磨をおこない予め鏡面状態へと加工する。
なお、バフ研磨は、布等で作られたバフに研磨剤を塗布し、回転させたバフに試験片を押し当てて、試験片表面を研磨する方法である。コロイダルシリカ研磨は、粒度が数十μm程度のコロイダルシリカ懸濁液を研磨材として、試験片表面を研磨する方法である。電解研磨は、電解液中にて研磨を行いたい試験片を陽極とし、電解することで、試験片表面を極平滑化する研磨手法である。本実施例では電解液として、過塩素酸と無水酢酸の混合液を用いているが、他の溶液でも実施可能である。
予研磨後の試験片の観察面の表面粗さRaは0.001μm程度であるが、バフ研磨後の線条痕ならびにコロイダルシリカ粒子による掘り起こしがみられるため、次工程でスパッタリングによる極平滑化をおこなう。
(工程B:高周波グロー放電による試験片表面のプラズマスパッタリング)
観察面平滑化のためのスパッタリングに使用するプラズマ励起ガスは種々あり、必要に応じて選択することができる。実施形態では、ArガスならびにAr+O2混合ガスを用いているが、使用するプラズマ励起ガスを限定するものではない。
観察面平滑化のためのスパッタリングに使用するプラズマ励起ガスは種々あり、必要に応じて選択することができる。実施形態では、ArガスならびにAr+O2混合ガスを用いているが、使用するプラズマ励起ガスを限定するものではない。
Arガスによるプラズマ励起は実施形態で用いた試験機の標準ガスであるが、これにO2を添加することで、添加されたO2がプラズマ励起エネルギーを消費するため、スパッタリング速度を下げることから、Arガス単独で実施する場合より、時間は要するものの精緻な表面調整が可能となる。以上の工程Aと工程Bにより、試験片の作製(製造)が完了する。
(工程C:FE-SEMでの反射電子像観察による鋼中微細析出物の観察)
スパッタリングによって観察面を極平滑に調整した試験片をFE-SEMにて反射電子像の観察を実施することで、試験片の表面に現出している析出物の大きさや分布の検査を実施する。
スパッタリングによって観察面を極平滑に調整した試験片をFE-SEMにて反射電子像の観察を実施することで、試験片の表面に現出している析出物の大きさや分布の検査を実施する。
通常のSEMの2次電子像観察では表面の凹凸に起因するエッジ効果によるコントラスト差を観察している。一方、反射電子像は凹凸情報では無く、平均原子番号に依存してコントラストが決まる。析出物は、マトリクスとは構成元素の組成範囲が大きく異なるためにマトリクスとはモノクロ観察像のコントラストが大きく異なる。これを利用してマトリクスの反射電子コントラストを白飛びさせて観察することで、析出物のみの観察が容易となる(図3参照)。
(実施例)
次に、実施例の検査方法について説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
次に、実施例の検査方法について説明するが、本発明は実施例の内容に限定されるものではない。
SUJ2鋼をモディファイし、Vを添加した鋼をセメンタイトが完全に固溶する温度から焼入れを行い、マルテンサイト中に微細なV系析出物が分散する組織とした。
被検査材を適当なサイズとなるように切り出し、高周波グロー放電によるプラズマスパッタリングの前処理として、観察面のバフ研磨を実施した。さらに、実施例では、バフ研磨後にコロイダルシリカ研磨を実施した。ただし、コロイダルシリカ研磨なしでも同様の析出物観察が可能である。
高周波グロー放電によるバフ研磨面へのプラズマスパッタリングに際しては、その励起ガスにAr+O2の混合ガスを使用し、スパッタリング時間は15min.とした。
実施例による調整法にてスパッタリングを行った試験片のFE-SEMで撮影した反射電子像を図2に示す。また、比較例としてコロイダルシリカ研磨後にナイタル液による腐食を行った後にFE-SEMにて撮影した二次電子像を図3に示す。
図3に示すように、従来法では、腐食のコントラストに析出物が隠れてしまい観察することが困難であるが、図2に示すように、プラズマスパッタリング面の反射電子像からは、粒状の微細析出物が鮮明に観察できている。この析出物をFE-SEMに付帯させたEDSにて分析したところ、Vを含有する析出物であることが確認できた。なお、反射電子は表面付近から若干内部に侵入したところで発生し、その侵入深さはFE-SEMの加速電圧に依存するため、観察の目的に応じた適切な加速電圧を選定すると良い。
以上説明したように、実施例によれば、バフ研磨ならびにコロイダルシリカ研磨、電解研磨に加えて、高周波グロー放電によるプラズマスパッタリングを組み合わせることで、これまで観察が困難であった、鋼中の微細析出物を簡便かつ鮮明に観察することが可能となる。そして、強度、延性、靱性への関与や結晶粒界のヒ゜ン止め作用など、様々な効果を受け持つ、鋼中の微細析出物の作用解明に当たって、その大きさや分布を把握することが可能となる。
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
Claims (7)
- 鋼の試験片の観察面をバフ研磨し、
前記観察面に対し、高周波グロー放電発光分析装置により、プラズマ励起ガスを用いてスパッタリングを行う、
ことを特徴とする試験片の製造方法。 - 前記バフ研磨された観察面に対し、コロイダルシリカ研磨、または、電解研磨により、鏡面仕上げを行う、ことを特徴とする請求項1に記載の試験片の製造方法。
- 前記プラズマ励起ガスとして、Ar+O2混合ガスを用いてスパッタリングを行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載の試験片の製造方法。
- 前記プラズマ励起ガスとして、Arガスを用いてスパッタリングを行う、ことを特徴とする請求項1または2に記載の試験片の製造方法。
- 前記鋼は、マルテンサイト鋼である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の試験片の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の試験片の製造方法により試験片を製造し、
当該試験片に対して、電界放出形走査電子顕微鏡により、前記観察面の表面に存在する鋼中の析出物の反射電子像を取得して、前記析出物を検査する、
ことを特徴とする鋼中析出物の検査方法。 - 前記試験片に対して、エネルギー分散型X線分析装置により、前記析出物の組成を分析する、ことを特徴とする請求項6に記載の鋼中析出物の検査方法。
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JP2019179402A JP2021056098A (ja) | 2019-09-30 | 2019-09-30 | 試験片の製造方法、及び、鋼中析出物の検査方法 |
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