以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
<有機ELディスプレイ>
図1は、一実施形態による有機ELディスプレイを示す平面図である。図1において、一の単位回路11の回路を拡大して示す。
有機ELディスプレイは、基板10と、基板10上に配列される複数の単位回路11と、基板10上に設けられる走査線駆動回路14と、基板10上に設けられるデータ線駆動回路15とを有する。走査線駆動回路14に接続される複数の走査線16と、データ線駆動回路15に接続される複数のデータ線17とで囲まれる領域に、単位回路11が設けられる。単位回路11は、TFT層12と、有機発光ダイオード13とを含む。
TFT層12は、複数のTFT(Thin Film Transistor)を有する。一のTFTはスイッチング素子としての機能を有し、他の一のTFTは有機発光ダイオード13に流す電流量を制御する電流制御用素子としての機能を有する。TFT層12は、走査線駆動回路14およびデータ線駆動回路15によって作動され、有機発光ダイオード13に電流を供給する。TFT層12は単位回路11毎に設けられており、複数の単位回路11は独立に制御される。尚、TFT層12は、一般的な構成であればよく、図1に示す構成には限定されない。
尚、有機ELディスプレイの駆動方式は、本実施形態ではアクティブマトリックス方式であるが、パッシブマトリックス方式であってもよい。
図2は、一実施形態による有機ELディスプレイの要部を示す断面図である。基板10としては、ガラス基板や樹脂基板などの透明基板が用いられる。基板10上には、TFT層12が形成されている。TFT層12上には、TFT層12によって形成される段差を平坦化する平坦化層18が形成されている。
平坦化層18は、絶縁性を有している。平坦化層18を貫通するコンタクトホールには、コンタクトプラグ19が形成されている。コンタクトプラグ19は、平坦化層18の平坦面に形成される画素電極としての陽極21と、TFT層12とを電気的に接続する。コンタクトプラグ19は、陽極21と同じ材料で、同時に形成されてよい。
有機発光ダイオード13は、平坦化層18の平坦面上に形成される。有機発光ダイオード13は、画素電極としての陽極21と、画素電極を基準として基板10とは反対側に設けられる対向電極としての陰極22と、陽極21と陰極22との間に形成される有機層23とを有する。TFT層12を作動させることで、陽極21と陰極22との間に電圧が印加され、有機層23が発光する。
陽極21は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などによって形成され、有機層23からの光を透過する。陽極21を透過した光は、基板10を透過し、外部に取り出される。陽極21は、単位回路11毎に設けられる。
陰極22は、例えばアルミニウムなどによって形成され、有機層23からの光を有機層23に向けて反射する。陰極22で反射した光は、有機層23や陽極21、基板10を透過し、外部に取り出される。陰極22は、複数の単位回路11に共通のものである。
有機層23は、例えば、陽極21側から陰極22側に向けて、正孔注入層24、正孔輸送層25、発光層26、電子輸送層27および電子注入層28をこの順で有する。陽極21と陰極22との間に電圧がかかると、陽極21から正孔注入層24に正孔が注入されると共に、陰極22から電子注入層28に電子が注入される。正孔注入層24に注入された正孔は、正孔輸送層25によって発光層26へ輸送される。また、電子注入層28に注入された電子は、電子輸送層27によって発光層26へ輸送される。そうして、発光層26内で正孔と電子が再結合して、発光層26の発光材料が励起され、発光層26が発光する。
発光層26として、例えば、赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層が形成される。赤色発光層は赤色に発光する赤色発光材料で形成され、緑色発光層は緑色に発光する緑色発光材料で形成され、青色発光層は青色に発光する青色発光材料で形成される。赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層は、バンク30の開口部31に形成される。
バンク30は、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液を隔てることで、これらの材料液の混合を防止する。バンク30は、絶縁性を有しており、平坦化層18を貫通するコンタクトホールを埋める。
<有機発光ダイオードの製造方法>
図3は、一実施形態による有機発光ダイオードの製造方法を示すフローチャートである。
先ず、ステップS101では、画素電極としての陽極21の形成を行う。陽極21の形成には、例えば蒸着法が用いられる。陽極21は、平坦化層18の平坦面に、単位回路11毎に形成される。陽極21と共に、コンタクトプラグ19が形成されてよい。
続くステップS102では、バンク30の形成を行う。バンク30は、例えばフォトレジストを用いて形成され、フォトリソグラフィ処理によって所定のパターンにパターニングされる。バンク30の開口部31において、陽極21が露出する。
続くステップS103では、正孔注入層24の形成を行う。正孔注入層24の形成には、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布することで、図4に示すように塗布層Lが形成される。その塗布層Lを乾燥、焼成することで、図5に示すように正孔注入層24が形成される。
続くステップS104では、正孔輸送層25の形成を行う。正孔輸送層25の形成には、正孔注入層24の形成と同様に、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布することで、塗布層が形成される。その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25が形成される。
続くステップS105では、発光層26の形成を行う。発光層26の形成には、正孔注入層24や正孔輸送層25の形成と同様に、インクジェット法などが用いられる。インクジェット法によって発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布することで、塗布層が形成される。その塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26が形成される。
発光層26として、例えば赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層が形成される。赤色発光層、緑色発光層、および青色発光層は、バンク30の開口部31に形成される。バンク30は、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液を隔てることで、これらの機能液の混合を防止する。
続くステップS106では、電子輸送層27の形成を行う。電子輸送層27の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。電子輸送層27は、複数の単位回路11に共通のものでよいので、バンク30の開口部31内の発光層26上だけではなく、バンク30上にも形成されてよい。
続くステップS107では、電子注入層28の形成を行う。電子注入層28の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。電子注入層28は、電子輸送層27上に形成される。電子注入層28は、複数の単位回路11に共通のものでよい。
続くステップS108では、陰極22の形成を行う。陰極22の形成には、例えば蒸着法などが用いられる。陰極22は、電子注入層28上に形成される。陰極22は、複数の単位回路11に共通のものでよい。
尚、有機ELディスプレイの駆動方式が、アクティブマトリックス方式ではなく、パッシブマトリックス方式である場合、陰極22は、所定のパターンにパターニングされる。
以上の工程により、有機発光ダイオード13が製造される。有機層23のうち、正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26の形成に、基板処理システム100が用いられる。
<基板処理システム>
図6は、一実施形態による基板処理システムを示す平面図である。基板処理システム100は、図3のステップS103〜S105に相当する各処理を行い、陽極21上に正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26を形成する。基板処理システム100は、搬入ステーション110と、処理ステーション120と、搬出ステーション130と、制御装置140とを有する。
搬入ステーション110は、複数の基板10を収容するカセットCを外部から搬入させ、カセットCから複数の基板10を順次取り出す。各基板10には、予めTFT層12や平坦化層18、陽極21、バンク30などが形成されている。
搬入ステーション110は、カセットCを載置するカセット載置台111と、カセット載置台111と処理ステーション120との間に設けられる搬送路112と、搬送路112に設けられる基板搬送体113とを備える。基板搬送体113は、カセット載置台111に載置されたカセットCと処理ステーション120との間で基板10を搬送する。
処理ステーション120は、陽極21上に、正孔注入層24、正孔輸送層25および発光層26を形成する。処理ステーション120は、正孔注入層24を形成する正孔注入層形成ブロック121と、正孔輸送層25を形成する正孔輸送層形成ブロック122と、発光層26を形成する発光層形成ブロック123を備える。
正孔注入層形成ブロック121は、正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布して塗布層を形成し、その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔注入層24を形成する。正孔注入層24の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
正孔注入層形成ブロック121は、塗布装置121aと、バッファ装置121bと、減圧乾燥装置121cと、熱処理装置121dと、温度調節装置121eとを備える。塗布装置121aは、正孔注入層24の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置121bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置121cは、塗布装置121aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置121dは、減圧乾燥装置121cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置121eは、熱処理装置121dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
塗布装置121a、バッファ装置121b、熱処理装置121d、および温度調節装置121eは、内部が大気雰囲気に維持される。減圧乾燥装置121cは、内部の雰囲気を、大気雰囲気と減圧雰囲気とに切り替える。
尚、正孔注入層形成ブロック121において、塗布装置121a、バッファ装置121b、減圧乾燥装置121c、熱処理装置121dおよび温度調節装置121eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
また、正孔注入層形成ブロック121は、基板搬送装置CR1〜CR3と、受渡装置TR1〜TR3とを備える。基板搬送装置CR1〜CR3は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。例えば、基板搬送装置CR1は、隣接する塗布装置121aおよびバッファ装置121bへ基板10を搬送する。基板搬送装置CR2は、隣接する減圧乾燥装置121cへ基板10を搬送する。基板搬送装置CR3は、隣接する熱処理装置121dおよび温度調節装置121eへ基板10を搬送する。受渡装置TR1〜TR3は、それぞれ順に、搬入ステーション110と基板搬送装置CR1の間、基板搬送装置CR1と基板搬送装置CR2の間、基板搬送装置CR2と基板搬送装置CR3の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。基板搬送装置CR1〜CR3や受渡装置TR1〜TR3は、内部が大気雰囲気に維持される。
正孔注入層形成ブロック121の基板搬送装置CR3と、正孔輸送層形成ブロック122の基板搬送装置CR4との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR4が設けられる。受渡装置TR4は、内部が大気雰囲気に維持される。
正孔輸送層形成ブロック122は、正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布して塗布層を形成し、その塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25を形成する。正孔輸送層25の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
正孔輸送層形成ブロック122は、塗布装置122aと、バッファ装置122bと、減圧乾燥装置122cと、熱処理装置122dと、温度調節装置122eとを備える。塗布装置122aは、正孔輸送層25の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置122bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置122cは、塗布装置122aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置122dは、減圧乾燥装置122cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置122eは、熱処理装置122dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
塗布装置122aおよびバッファ装置122bは、内部が大気雰囲気に維持される。一方、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eは、正孔輸送層25の有機材料の劣化を抑制するため、内部が低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。減圧乾燥装置122cは、内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替える。
ここで、低酸素の雰囲気とは、大気よりも酸素濃度が低い雰囲気、例えば酸素濃度が10ppm以下の雰囲気をいう。また、低露点の雰囲気とは、大気よりも露点温度が低い雰囲気、例えば露点温度が−10℃以下の雰囲気をいう。低酸素かつ低露点の雰囲気は、例えば窒素ガス等の不活性ガスで形成される。
尚、正孔輸送層形成ブロック122において、塗布装置122a、バッファ装置122b、減圧乾燥装置122c、熱処理装置122dおよび温度調節装置122eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
また、正孔輸送層形成ブロック122は、基板搬送装置CR4〜CR6と、受渡装置TR5〜TR6とを備える。基板搬送装置CR4〜CR6は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。受渡装置TR5〜TR6は、それぞれ順に、基板搬送装置CR4と基板搬送装置CR5の間、基板搬送装置CR5と基板搬送装置CR6の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。
基板搬送装置CR4の内部は、大気雰囲気に維持される。一方、基板搬送装置CR5〜CR6の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。基板搬送装置CR5に隣接される減圧乾燥装置122cの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替えられるためである。また、基板搬送装置CR6に隣設される熱処理装置122dや温度調節装置122eの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持されるためである。
受渡装置TR5は、その内部の雰囲気を、大気雰囲気と、低酸素かつ低露点の雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。受渡装置TR6の下流側に減圧乾燥装置122cが隣設されるためである。一方、受渡装置TR6の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。
正孔輸送層形成ブロック122の基板搬送装置CR6と、発光層形成ブロック123の基板搬送装置CR7との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR7が設けられる。基板搬送装置CR6の内部は低酸素かつ低露点の雰囲気に維持され、基板搬送装置CR7の内部は大気雰囲気に維持される。そのため、受渡装置TR7は、その内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、大気雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。
発光層形成ブロック123は、発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26を形成する。発光層26の材料液は、有機材料および溶剤を含む。その有機材料は、ポリマー、モノマーのいずれでもよい。モノマーの場合、焼成によって重合され、ポリマーとされてもよい。
発光層形成ブロック123は、塗布装置123aと、バッファ装置123bと、減圧乾燥装置123cと、熱処理装置123dと、温度調節装置123eとを備える。塗布装置123aは、発光層26の材料液の液滴を、バンク30の開口部31に向けて吐出する。バッファ装置123bは、処理待ちの基板10を一時的に収容する。減圧乾燥装置123cは、塗布装置123aで塗布された塗布層を減圧乾燥し、塗布層に含まれる溶剤を除去する。熱処理装置123dは、減圧乾燥装置123cで乾燥された塗布層を加熱処理する。温度調節装置123eは、熱処理装置123dで加熱処理された基板10の温度を、所定の温度、例えば常温に調節する。
塗布装置123aおよびバッファ装置123bは、内部が大気雰囲気に維持される。一方、熱処理装置123dおよび温度調節装置123eは、発光層26の有機材料の劣化を抑制するため、内部が低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。減圧乾燥装置123cは、内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替える。
尚、発光層形成ブロック123において、塗布装置123a、バッファ装置123b、減圧乾燥装置123c、熱処理装置123dおよび温度調節装置123eの、配置や個数、内部の雰囲気は、任意に選択可能である。
また、発光層形成ブロック123は、基板搬送装置CR7〜CR9と、受渡装置TR8〜TR9とを備える。基板搬送装置CR7〜CR9は、それぞれ隣接する各装置へ基板10を搬送する。受渡装置TR8〜TR9は、それぞれ順に、基板搬送装置CR7と基板搬送装置CR8の間、基板搬送装置CR8と基板搬送装置CR9の間に設けられ、これらの間で基板10を中継する。
基板搬送装置CR7の内部は、大気雰囲気に維持される。一方、基板搬送装置CR8〜CR9の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。基板搬送装置CR8に隣接される減圧乾燥装置123cの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気と、減圧雰囲気とに切り替えられるためである。また、基板搬送装置CR9に隣設される熱処理装置123dや温度調節装置123eの内部が、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持されるためである。
受渡装置TR8は、その内部の雰囲気を、大気雰囲気と、低酸素かつ低露点の雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。受渡装置TR8の下流側に減圧乾燥装置123cが隣設されるためである。受渡装置TR9の内部は、低酸素かつ低露点の雰囲気に維持される。
発光層形成ブロック123の基板搬送装置CR9と、搬出ステーション130との間には、これらの間で基板10を中継する受渡装置TR10が設けられる。基板搬送装置CR9の内部は低酸素かつ低露点の雰囲気に維持され、搬出ステーション130の内部は大気雰囲気に維持される。そのため、受渡装置TR7は、その内部の雰囲気を、低酸素かつ低露点の雰囲気と、大気雰囲気との間で切り替えるロードロック装置として構成される。
搬出ステーション130は、複数の基板10を順次カセットCに収納し、カセットCを外部に搬出させる。搬出ステーション130は、カセットCを載置するカセット載置台131と、カセット載置台131と処理ステーション120との間に設けられる搬送路132と、搬送路132に設けられる基板搬送体133とを備える。基板搬送体133は、処理ステーション120と、カセット載置台131に載置されたカセットCとの間で基板10を搬送する。
制御装置140は、CPU(Central Processing Unit)141と、メモリなどの記憶媒体142とを含むコンピュータで構成され、記憶媒体142に記憶されたプログラム(レシピとも呼ばれる)をCPU141に実行させることにより各種処理を実現させる。
制御装置140のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
次に、上記構成の基板処理システム100を用いた基板処理方法について説明する。複数の基板10を収容したカセットCがカセット載置台111上に載置されると、基板搬送体113が、カセット載置台111上のカセットCから基板10を順次取り出し、正孔注入層形成ブロック121に搬送する。
正孔注入層形成ブロック121は、正孔注入層24の材料液を陽極21上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、正孔注入層24を形成する。正孔注入層24が形成された基板10は、受渡装置TR4によって、正孔注入層形成ブロック121から正孔輸送層形成ブロック122に受け渡される。
正孔輸送層形成ブロック122は、正孔輸送層25の材料液を正孔注入層24上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、正孔輸送層25を形成する。正孔輸送層25が形成された基板10は、受渡装置TR7によって、正孔輸送層形成ブロック122から発光層形成ブロック123に受け渡される。
発光層形成ブロック123は、発光層26の材料液を正孔輸送層25上に塗布して塗布層を形成し、形成した塗布層を乾燥、焼成することで、発光層26を形成する。発光層26が形成された基板10は、受渡装置TR10によって、発光層形成ブロック123から搬出ステーション130に受け渡される。
搬出ステーション130の基板搬送体133は、受渡装置TR10から受取った基板10を、カセット載置台131上の所定のカセットCに収める。これにより、基板処理システム100における一連の基板10の処理が終了する。
基板10は、カセットCに収められた状態で、搬出ステーション130から外部に搬出される。外部に搬出された基板10には、電子輸送層27や電子注入層28、陰極22などが形成される。
<塗布装置および塗布方法>
次に、発光層形成ブロック123の塗布装置123aについて、主に図7〜図13を参照して説明する。図7は、一実施形態による塗布装置を示す平面図である。図7において、基板10の搬入位置を破線で示す。図8〜図13は一実施形態による塗布装置を示す側面図であって、図8はY方向移動部による基板のヨーイング時の状態を示す側面図、図9はY方向移動部からX方向移動部への基板の受渡時の状態を示す側面図、図10はX方向移動部による基板の移動開始時の状態を示す側面図、図11はX方向移動部による基板の移動終了時の状態を示す側面図、図12はX方向移動部からY方向移動部への基板の受渡時の状態を示す側面図、図13はY方向移動部による基板の移動時の状態を示す側面図である。以下の図面において、X方向は主走査方向、Y方向は副走査方向、Z方向は鉛直方向である。X方向およびY方向は、互いに直交する水平方向である。尚、X方向とY方向とは、交差していればよく、直交していなくてもよい。また、図7〜図13において、液滴吐出部160のX方向片側を「左側」とも呼び、液滴吐出部160のX方向反対側を「右側」とも呼ぶ。
塗布装置123aは、基板10における機能液(例えば発光層26の材料液)の液滴の着弾位置をX方向およびY方向に移動させて、基板10に機能液の描画パターンを描く。塗布装置123aは、例えば、基板10をガスの風圧によって所定の高さに浮かせるステージ部150と、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10に機能液の液滴を滴下する液滴吐出部160とを備える。また、塗布装置123aは、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10をX方向に移動させて液滴吐出部160の下を通過させるX方向移動部170と、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板をY方向に移動させるY方向移動部180とを備える。Y方向移動部180は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を、X方向移動部170から受け取ってY方向に移動させ、X方向移動部170に再び受け渡す。また、塗布装置123aは、液滴吐出部160をY方向に移動させるスライド機構部200と、液滴吐出部160の機能を維持するための処理を行うメンテナンス部210とを備える。
ステージ部150は、その上面に、ガスを噴射する給気口151を複数有する。ステージ部150は、各給気口151にガスを供給するガス供給源152と接続されている。ガス供給源152を作動させると、ステージ部150の各給気口151からガスが噴射され、ガスの風圧によって基板10がステージ部150の上面から一定の高さで支持される。
ステージ部150は、その上面に、ガスを吸引する吸気口153を複数有してもよい。ステージ部150は、各吸気口153からガスを吸引するガス吸引源154と接続されている。ガス吸引源154を作動させると、各吸気口153からガスが吸引される。これにより、ガスの吸引量とガスの噴射量とをバランスさせることができ、基板10とステージ部150との隙間のばらつきを低減でき、基板10の上面の水平度を向上できる。
ステージ部150は図8に示すようにX方向に3つの領域X1、X2、X3に区画されてもよく、X方向両端の領域X1、X3には給気口151のみが設けられ、X方向中央の領域X2には給気口151と吸気口153の両方が設けられてよい。X方向中央の領域X2の上方において、基板10の水平度を向上でき、基板10における機能液の描画パターンの精度を向上できる。尚、X方向両端の領域X1、X3にも、給気口151と吸気口153の両方が設けられてもよい。
ステージ部150は、その上面から出没するリフトピン(不図示)を有してもよい。ステージ部150がロボットとの間で基板10を受け渡すとき、リフトピンはステージ部150の上面から突出する。一方、X方向移動部170が基板10を移動させると共に液滴吐出部160が基板10に機能液の液滴を滴下するとき、リフトピンはステージ部150の上面に没入する。リフトピンを昇降させる昇降機構としては、例えば空気圧シリンダなどが用いられる。
ステージ部150は、図7に示すように、Y方向に複数(例えば3つ)の分割ステージ部155、156、157に分割されている。Y方向に隣り合う分割ステージ部155、156の間、およびY方向に隣り合う分割ステージ部156、157の間には、それぞれ、X方向に延びるX軸ガイド部171が設けられる。X軸ガイド部171の詳細については、後述する。尚、ステージ部150のY方向における分割数は、3つには限定されず、2つや4つ以上でもよい。
液滴吐出部160は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10に向けて機能液の液滴を吐出する。液滴吐出部160は、Y方向に複数(例えば図7では10個)並んでいる。複数の液滴吐出部160は、独立にY方向に移動されてもよいし、一体にY方向に移動されてもよい。
各液滴吐出部160は、複数の吐出ヘッド161(図8参照)を有する。各吐出ヘッド161は、その下面に、Y方向に並ぶ複数の吐出ノズルからなる吐出ノズル列を有する。各吐出ヘッド161は、その下面に、複数の吐出ノズル列を有してもよい。
各吐出ヘッド161は、吐出ノズルごとにピエゾ素子を有する。ピエゾ素子に電圧をかけると、ピエゾ素子が変形して吐出ノズルから液滴が吐出される。ピエゾ素子の代わりに、ヒータなどが用いられてもよい。ヒータに電圧をかけると、バブルが発生し、発生したバブルの圧力によって吐出ノズルから液滴が吐出される。
各液滴吐出部160は、複数種類の機能液を吐出するものであってよい。複数種類の機能液としては、例えば、赤色発光層の材料液、緑色発光層の材料液、および青色発光層の材料液などが挙げられる。同一の吐出ヘッド161に設けられる複数の吐出ノズルは、同一の種類の機能液の液滴を吐出する。
図14は、一実施形態による吐出ヘッドの配列を示す平面図である。各液滴吐出部160は、Y方向に並ぶ2つの吐出ヘッド列162を有する。各吐出ヘッド列162は、X方向に階段状に並ぶ6つの吐出ヘッド161で構成される。各吐出ヘッド列162は、赤色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161R、緑色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161G、および青色発光層の材料液の液滴を吐出する吐出ヘッド161Bを、それぞれ2つずつ有する。
スライド機構部200は、図7に示すように、液滴吐出部160を、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10に機能液の液滴を吐出する位置と、メンテナンス部210による機能維持のための処理を受け付ける位置との間で移動させる。スライド機構部200は、ステージ部150の上方に架け渡される一対のY軸ビーム201と、一対のY軸ビーム201上に敷設される一対のY軸ガイド202と、一対のY軸ガイド202に沿って液滴吐出部160を移動させる一対のY軸リニアモータとを有する。
メンテナンス部210は、液滴吐出部160の機能を維持する処理を行い、液滴吐出部160の吐出不良を解消する。メンテナンス部210は、吐出ノズルの吐出口の周囲を払拭するワイピングユニット211と、吐出ノズルの吐出口から液滴を吸引する吸引ユニット212とを有する。吸引ユニット212は、休止状態の吐出ノズルの吐出口を塞ぎ、乾燥による目詰まりを抑制する役割をも果たす。
次に、基板10をX方向に移動させるX方向移動部170、および基板10をY方向に移動させるY方向移動部180について説明する。基板10をY方向に移動させるのは、図14に示すように同じ種類の機能液を吐出する複数の吐出ヘッド161同士の間に隙間ΔYが存在するためである。基板10をY方向に移動させることで、基板10のY方向全体に特定の種類の機能液の液滴を着弾させることが可能になる。また、液滴吐出部160ではなく基板10をY方向に移動させるのは、液滴吐出部160の内部に収容される機能液の揺れを防止するためである。
X方向移動部170は、図10および図11に示すように、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を、X方向に移動させて液滴吐出部160の下を通過させる。基板10が液滴吐出部160の下を通過する間に、液滴吐出部160は基板10に液滴を吐出する。
X方向移動部170は、例えば、X方向に延びるX軸ガイド部171と、X軸ガイド部171に沿って移動させられるX軸スライダ部172とを有する。X軸ガイド部171に沿ってX軸スライダ部172を移動させる駆動源としては、リニアモータなどが用いられる。
X方向移動部170は例えば図7に示すようにX軸ガイド部171を一対有し、一のX軸ガイド部171はY方向に隣り合う分割ステージ部155、156の間に設けられ、他の一のX軸ガイド部171はY方向に隣り合う分割ステージ部156、157の間に設けられる。各X軸ガイド部171には、少なくとも1つ(図10などでは2つ)のX軸スライダ部172が走行自在に設けられる。
X方向移動部170は、基板10を保持する複数(例えば4つ)の基板保持部173を有する。各基板保持部173は、図10および図11に示すように、X軸スライダ部172と共に移動しながら、基板10を保持する。各基板保持部173としては、例えば真空吸着パッドが用いられるが、静電吸着パッドなどが用いられてもよい。
X方向移動部170は、複数の基板保持部173で保持される基板10の水平度を補正する水平度補正部174(図10参照)を有してもよい。これにより、例えば、バンク30の上面を水平に揃えることができ、バンク30の開口部31からの機能液の溢れ出しを抑制できる。
水平度補正部174は、例えば、複数の基板保持部173を独立に昇降させる複数の昇降部175を含む。昇降部175は、基板保持部173ごとに設けられる。各昇降部175は、例えばサーボモータと、サーボモータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ等の運動変換機構とを含む。各昇降部175は、詳しくは後述するが、X方向移動部170とY方向移動部180との間での基板10の受け渡しにも用いられる。
Y方向移動部180は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を、図12に示すようにX方向移動部170から受け取って、図13に示す状態でY方向に移動させ、X方向移動部170に再び受け渡す。
Y方向移動部180は、液滴吐出部160を基準としてX方向両側に設けられてよい。液滴吐出部160のX方向両側において、基板10に対する液滴の着弾位置をY方向に変位させる調整が可能である。その調整が2回以上必要である場合に、短時間で描画を終了できる。
各Y方向移動部180は、例えば図8および図13に示すように、Y方向に延びるY軸ガイド部181と、Y軸ガイド部181に沿って移動させられるY軸スライダ部182とを有する。Y軸ガイド部181に沿ってY軸スライダ部182を移動させる駆動源としては、リニアモータなどが用いられる。
各Y方向移動部180は、基板10を保持する複数(例えば4つ)の基板保持部183を有する。各基板保持部183は、Y軸スライダ部182と共に移動しながら、基板10を保持する。各基板保持部183は、基板10の機能液の描画エリアを避けるように、基板10の端部を上方から保持する。各基板保持部183としては、例えば真空吸着パッドが用いられるが、静電吸着パッドなどが用いられてもよい。
各Y方向移動部180は、複数の基板保持部183で保持される基板10の水平度を補正する水平度補正部184を有してもよい。これにより、例えば、バンク30の上面を水平に揃えることができ、バンク30の開口部31からの機能液の溢れ出しを抑制できる。
水平度補正部184は、例えば、複数の基板保持部183を独立に昇降させる複数の昇降部185を含む。昇降部185は、基板保持部183ごとに設けられる。各昇降部185は、例えばサーボモータと、サーボモータの回転運動を直線運動に変換するボールねじ等の運動変換機構とを含む。各昇降部185は、詳しくは後述するが、X方向移動部170とY方向移動部180との間での基板10の受け渡しにも用いられる。
各Y方向移動部180は、鉛直方向視で、複数の基板保持部183で保持される基板10を回転移動させるヨーイング補正部190(図15参照)を有してもよい。基板10の回転中心は、基板10の中心部に設定されてよい。基板10のヨーイングにより、バンク30の開口部31が並ぶ方向と、吐出ノズル列の延在方向とを揃えることができる。
図15は、一実施形態によるY方向移動部のヨーイング補正部を下方から見た図である。図15において、基板10の保持位置を破線で示す。また、図15において、ヨーイング補正部190を拡大して示す。
ヨーイング補正部190は、例えば、鉛直方向視で複数の基板保持部183を独立に回転自在にする複数の回転支持部191と、複数の基板保持部183を独立にX方向およびY方向に移動自在に支持する複数の移動支持部192とを有する。
回転支持部191および移動支持部192は、基板保持部183ごとに設けられる。基板保持部183は、図8に示すように、回転支持部191や移動支持部192、昇降部185を介して、Y軸スライダ部182などに取付けられる。
回転支持部191は、基板保持部183と共に回転する回転軸を回転自在に支持する軸受などで構成される。移動支持部192は、X方向に延びるX軸位置補正ガイド193と、X軸位置補正ガイド193に沿って移動させられるX軸位置補正スライダ194と、Y方向に延びるY軸位置補正ガイド195と、Y軸位置補正ガイド195に沿って移動させられるY軸位置補正スライダ196とを有する。
例えば、図15中左側の回転支持部191は、Y軸位置補正スライダ196に固定される。そのY軸位置補正スライダ196をY方向に案内するY軸位置補正ガイド195は、X軸位置補正スライダ194に固定される。そのX軸位置補正スライダ194をX方向に案内するX軸位置補正ガイド193は、昇降部185を介して、Y軸スライダ部182に取付けられる。
また、図15中右側の回転支持部191は、X軸位置補正スライダ194に固定される。そのX軸位置補正スライダ194をX方向に案内するX軸位置補正ガイド193は、Y軸位置補正スライダ196に固定される。そのY軸位置補正スライダ196をY方向に案内するY軸位置補正ガイド195は、昇降部185を介して、Y軸スライダ部182に取付けられる。
ヨーイング補正部190は、一部の基板保持部183をX方向に移動させるX軸駆動部197と、他の一部の基板保持部183をY方向に移動させるY軸駆動部198とを有する。X軸駆動部197は、X軸位置補正スライダ194をX軸位置補正ガイド193に沿って移動させる。Y軸駆動部198は、Y軸位置補正スライダ196をY軸位置補正ガイド195に沿って移動させる。X軸駆動部197やY軸駆動部198は、昇降部185と同様に構成される。
ヨーイング補正部190は、X軸駆動部197およびY軸駆動部198を作動させることにより、鉛直方向視で、複数の基板保持部183で保持される基板10を回動させる。尚、上記構成のヨーイング補正部190は、複数の基板保持部183で保持される基板10を、X方向に平行移動させたり、Y方向に平行移動させることもできる。
ヨーイング補正部190は、意図しない基板10のヨーイング等を防止するため、X軸位置補正スライダ194の移動やY軸位置補正スライダ196の移動、基板保持部183の回転などを禁止するブレーキ装置を有してもよい。ブレーキ装置は、必要に応じて、X軸位置補正スライダ194の移動やY軸位置補正スライダ196の移動、基板保持部183の回転などを許容する。
次に、上記構成の塗布装置123aを用いた塗布方法について、主に図8〜図13を参照して説明する。塗布装置123aの下記の動作は、制御装置140によって制御される。制御装置140は、図6では塗布装置123aとは別に設けられるが、塗布装置123aの一部として設けられてもよい。
先ず、ロボット(不図示)が塗布装置123aの外部から塗布装置123aの内部に基板10を搬入すると、ステージ部150はステージ部150の上面からリフトピンを突出させてリフトピンで基板10をロボットから受け取る。ロボットは、ステージ部150とY方向移動部180との間に基板10を搬入してよい。その後、ステージ部150は、リフトピンを下降させ、給気口151から噴射されるガスの風圧で、基板10をステージ部150の上面から所定の高さに浮かせる。尚、ロボットによる基板10の搬入出時に、Y方向移動部180がY方向に退避してもよい。
続いて、図8に示すように、左側のY方向移動部180は、基板10を複数の基板保持部183で保持しながら、基板10のアライメントマークを撮像した画像に基づき基板10のヨーイングを行う。基板10のヨーイングの他に、基板10のX方向やY方向への平行移動、基板10の水平度補正が行われてもよい。
続いて、図9に示すように、X方向移動部170は、複数の基板保持部173を上方に変位させて、複数の基板保持部173で基板10を保持する。このとき、左側のY方向移動部180は、基板10の位置ずれを防止するため、複数の基板保持部183で基板10を上方から保持している。
その後、図10に示すように、左側のY方向移動部180は、複数の基板保持部183による基板10の保持を解除し、基板10の保持を解除した基板保持部183を上方に退避させる。
次いで、図11に示すように、X方向移動部170は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を、X方向に移動させて、液滴吐出部160の下を通過させる。基板10が液滴吐出部160の下を通過する間、液滴吐出部160は基板10に向けて液滴を吐出する。
その後、図12に示すように、X方向移動部170は、基板10の移動を停止させる。続いて、右側のY方向移動部180は、複数の基板保持部183を下方に変位させて、複数の基板保持部183で基板10を保持する。このとき、X方向移動部170は、基板10の位置ずれを防止するため、複数の基板保持部173で基板10を下方から保持している。
その後、図13に示すように、X方向移動部170は、複数の基板保持部173による基板10の保持を解除し、基板10の保持を解除した基板保持部173を下方に退避させる。続いて、右側のY方向移動部180は、基板10をY方向に移動させる。基板10をY方向に移動させるのは、図14に示すように同じ種類の機能液を吐出する複数の吐出ヘッド161同士の間に隙間ΔYが存在するためである。基板10をY方向に移動させることで、基板10のY方向全体に特定の種類の機能液の液滴を着弾させることが可能になる。また、液滴吐出部160ではなく基板10をY方向に移動させるのは、液滴吐出部160の内部に収容される機能液の揺れを防止するためである。
尚、本実施形態では、基板10の保持を解除した基板保持部173を下方に退避させたうえで、Y方向移動部180によって基板10をY方向に移動させるが、基板10の保持を解除した基板保持部173を下方に退避させなくてもよい。例えば、Y方向移動部180を上昇させたうえで、Y方向移動部180によって基板10をY方向に移動させてもよい。塗布装置123aは、Y方向移動部180を昇降させる昇降装置を有してもよい。
右側のY方向移動部180は、基板10をY方向に移動させるため、Y軸スライダ部182をY方向に移動させる。これに伴い、左側のY方向移動部180は、X方向移動部170から基板10を受取る時に基板10の端部を保持できるように、Y軸スライダ部182をY方向に移動させる。右側のY軸スライダ部182と、左側のY軸スライダ部182とは、同じ移動方向に同じ移動量、移動させられる。
その後、右側のY方向移動部180は基板10をX方向移動部170に受け渡し、X方向移動部170が基板10を右側から左側に移動させる。基板10が液滴吐出部160の下を通過する間、液滴吐出部160は基板10に向けて液滴を吐出する。
このように、塗布装置123aは、X方向移動部170による基板10のX方向移動および液滴吐出部160による液滴の滴下と、一のY方向移動部180による基板10のY方向移動とを交互に繰り返すことで、基板10に機能液の描画パターンを描く。
描画終了後、ステージ部150はリフトピンで基板10を持ち上げ、基板10をロボットに受け渡す。その後、ロボットが基板10を塗布装置123aの内部から塗布装置123aの外部に搬出する。
その後、ロボットが次の基板10を塗布装置123aの外部から塗布装置123aの内部に搬入し、塗布装置123aが基板10に機能液の描画パターンを描き、ロボットが基板10を塗布装置123aの内部から塗布装置123aの外部に搬出することが繰り返し行われる。
尚、メンテナンス部210によって液滴吐出部160の機能を維持する処理は、基板10の入れ換えの合間などに、適宜行われる。
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、塗布装置123aは、ガスの風圧によってステージ部150から所定の高さに基板10を浮かせながら基板10に機能液の描画パターンを描くため、基板10を移動させる駆動力を低下できる。よって、基板10の位置制御性を向上でき、また、基板10の移動速度を高速化できる。これを可能とするため、塗布装置123aは、ガスの風圧によってステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10をX方向に移動させるX方向移動部170と、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10をY方向に移動させるY方向移動部180とを備える。Y方向移動部180は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を、X方向移動部170から受け取ってY方向に移動させ、X方向移動部170に再び受け渡す。ステージ部150は図7に示すようにY方向に複数の分割ステージ部155〜157に分割されており、Y方向に隣り合う分割ステージ部155、156の間、およびY方向に隣り合う分割ステージ部156、157の間にX方向移動部170が設けられる。よって、X方向移動部170で基板10のY方向中央部を下方から支持でき、基板10の撓みを抑制できる。
本実施形態によれば、Y方向移動部180は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を上方から保持しながらY方向に移動させる。Y方向移動部180をステージ部150の上方に設けることで、Y方向移動部180の直下にもガスの給気口151を設けることができ、基板10のガスが当たる領域を拡大でき、基板10の姿勢を安定化できる。
本実施形態によれば、Y方向移動部180は、液滴吐出部160を基準としてX方向両側に設けられる。液滴吐出部160のX方向両側において、基板10に対する液滴の着弾位置をY方向に変位させる調整が可能である。その調整が2回以上必要である場合に、短時間で描画を終了できる。
本実施形態によれば、Y方向移動部180は、Y方向に延びるY軸ガイド部181と、Y軸ガイド部181に沿って移動させられるY軸スライダ部182と、基板10を保持する複数の基板保持部183とを有する。各基板保持部183は、Y軸スライダ部182と共に移動しながら、基板10を保持する。各基板保持部183のY方向の移動をY軸ガイド部181によって安定化でき、基板10のY方向の移動を安定化できる。
本実施形態によれば、Y方向移動部180は、鉛直方向視で、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を回転移動させるヨーイング補正部190を有する。これにより、例えば、バンク30の開口部31が並ぶ方向と、各吐出ノズル列の延在方向(つまり、吐出ノズルが並ぶ方向)とを揃えることができる。
本実施形態によれば、Y方向移動部180は、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10の水平度を補正する水平度補正部184をさらに有する。これにより、例えば、バンク30の上面を水平に揃えることができ、バンク30の開口部31からの機能液の溢れ出しを抑制できる。
<変形、改良>
以上、塗布装置などの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
図16は、変形例による塗布装置を示す平面図である。図17は、変形例による塗布装置を示す側面図である。本変形例のY方向移動部180Aは、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を下方から保持してY方向に移動させる点で、上記実施形態のY方向移動部180とは相違する。以下、相違点について主に説明する。
本変形例のY方向移動部180Aは、図16に示すように、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10の下方に、Y軸ガイド部181AおよびY軸スライダ部182Aを有する。Y方向移動部180Aは、複数の基板保持部183Aを有する。複数の基板保持部183Aのうち、基板10を下方から保持する基板保持部183Aは、Y軸スライダ部182Aと共にY方向に移動する。一方、基板10を上方から保持する基板保持部183Aは、基板10のヨーイングや基板10の水平度補正に用いられるものであり、Y軸スライダ部182Aと共にはY方向に移動しない。少なくとも一部の基板保持部183AがY軸スライダ部182Aと共に移動すれば、基板10のY方向の移動を安定化できる。尚、基板10を上方から保持する基板保持部183Aは、Y軸スライダ部182Aと共にY方向に移動してもよい。
Y方向移動部180Aは、複数の基板保持部183Aで保持される基板10の水平度を補正する水平度補正部184Aを有する。水平度補正部184Aは、上記実施形態の水平度補正部184と同様に構成され、例えば、複数の基板保持部183Aを独立に昇降させる複数の昇降部185Aを含む。
また、Y方向移動部180Aは、鉛直方向視で、複数の基板保持部183Aで保持される基板10を回転移動させるヨーイング補正部190Aを有する。ヨーイング補正部190Aは、上記実施形態のヨーイング補正部190と同様に構成され、鉛直方向視で複数の基板保持部183Aを独立に回転自在にする複数の回転支持部191Aと、複数の基板保持部183Aを独立にX方向およびY方向に移動自在に支持する複数の移動支持部192Aとを有する。回転支持部191Aおよび移動支持部192Aは、基板保持部183Aごとに設けられる。
本変形例によれば、Y方向移動部180Aは、ステージ部150から所定の高さに浮かせている基板10を下方から保持しながらY方向に移動させる。Y方向移動部180Aの少なくとも一部(例えばY軸ガイド部181AやY軸スライダ部182A)をステージ部150の上面よりも下に設けることができ、ステージ部150とロボットとの基板10の受渡スペースを確保しやすい。
上記実施系形態およびその変形例では、Y方向移動部180、180Aがヨーイング補正部190、190Aを有するが、その代わりに、またはそれに加えて、X方向移動部170がヨーイング補正部を有してもよい。
上記実施形態およびその変形例では、本発明を発光層形成ブロック123の塗布装置123aに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明の塗布装置は、基板に機能液の描画パターンを描くものであればよい。例えば、本発明は、正孔注入層形成ブロック121の塗布装置121aや正孔輸送層形成ブロック122の塗布装置122aにも適用可能である。また、正孔輸送層形成ブロック122の塗布装置122aは、複数種類の発光層26に対応する複数種類の正孔輸送層25を形成してもよい。発光層26と正孔輸送層25との相性を向上できる。同様に、正孔注入層形成ブロック121の塗布装置121aは、複数種類の発光層26に対応する複数種類の正孔注入層24を形成してもよい。発光層26と正孔注入層24との相性を向上できる。
上記実施形態およびその変形例では、発光層26の種類は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層の3つであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、これらの3つの発光層に加えて、赤色と緑色の中間色である黄色に発光する黄色発光材料を含む黄色発光層、および/または、緑色と青色の中間色であるシアン色に発光するシアン色発光材料を含む発光層などが用いられてもよい。発光色の組合せの数が大きいほど、表示できる色座標の範囲が広がる。
上記実施形態およびその変形例では、液滴吐出部160のX方向両側に設けられる複数のY方向移動部180は同様に構成されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板10の受け渡し時に基板10の位置ずれがほとんど生じない場合、左側のY方向移動部180と右側のY方向移動部180の一方のみがヨーイング補正部190を有してもよい。
有機ELディスプレイは、上記実施形態では発光層26からの光を基板10側から取り出すボトムエミッション方式であるが、発光層26からの光を基板10とは反対側から取り出すトップエミッション方式でもよい。
トップエミッション方式の場合、基板10は、透明基板ではなくてもよく、不透明基板であってもよい。発光層26からの光は、基板10とは反対側から取り出されるためである。
トップエミッション方式の場合、透明電極である陽極21が対向電極として用いられ、陰極22が単位回路11毎に設けられる画素電極として用いられる。この場合、陽極21と陰極22の配置が逆になるので、陰極22上に、電子注入層28、電子輸送層27、発光層26、正孔輸送層25および正孔注入層24が、この順で形成される。
有機層23は、上記実施形態では、陽極21側から陰極22側に向けて、正孔注入層24、正孔輸送層25、発光層26、電子輸送層27、電子注入層28をこの順で有するが、少なくとも発光層26を有していればよい。有機層23は、図2に示す構成には限定されない。