JP2021032712A - 中性子遮蔽材とその製造方法 - Google Patents

中性子遮蔽材とその製造方法 Download PDF

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真史 菅付
佑治 大石
Yuji Oishi
佑治 大石
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Abstract

【課題】金属水素化物をベースとしながらも、安定性及び安全性に優れ、クラックが生成され難く、熱伝導率の低下を招く恐れのない中性子遮蔽材とその製造方法を提供する。【解決手段】金属水素化物をベースとした中性子遮蔽材であって、金属水素化物およびクロムから構成され、金属水素化物が、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属の水素化物である中性子遮蔽材。高温雰囲気下で、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属と、クロムとの合金を作製する合金作製工程と、高温、水素雰囲気下で、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属に水素ガスを吸収させることにより、金属を水素化して金属水素化物とする水素化工程とを備えている中性子遮蔽材の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、中性子遮蔽材、詳しくは、水素化物をベースとした複合中性子遮蔽材とその製造方法に関する。
核融合炉、核分裂炉を含む原子力工学分野、またがん治療などを含む中性子工学分野において、コンパクトかつ安定性の高い中性子遮蔽材(以下、単に「遮蔽材」ともいう)が望まれている。これまで、核融合炉の遮蔽材としては、鉄とホウ素化合物との混合物や、タングステン化合物などが検討されてきた。
しかし、鉄とホウ素化合物との混合物からなる遮蔽材は、遮蔽性能が十分ではなく、大量に用いる必要があるため、コンパクト化することが難しいという問題があった。そして、タングステン化合物からなる遮蔽材は、遮蔽性能は十分なものの、密度とコストが大きいという問題があった。
このような状況下、チタンなどの金属水素化物は、安価でかつ水と同程度以上の水素密度を有しているため、中性子遮蔽能がタングステン化合物と同程度に大きいことが報告されており(非特許文献1)、金属水素化物と他の物質を複合化した遮蔽材が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
しかしながら、このような金属水素化物は、高温で水素を放出するため、安定性及び安全性に問題があり、また、水素吸蔵・放出時の体積変化に伴って、内部にクラックが生成して容易に微粉化してしまい、熱伝導率の低下を招いて除熱の妨げとなることも問題となっており、未だ、十分な性能が得られているとは言えず、さらなる改良が求められている。
即ち、特許文献1では、中性子遮蔽材として、Ti−Al合金の水素化物とホウ素化合物との複合物が提案されているが、複合化により、耐熱性と熱伝導率の向上については考慮されているものの、水素の放出温度はむしろ低下しており、また機械的特性は評価されていない。
そして、特許文献2では、中性子遮蔽材としてTi、Zr、Yを含む金属水素化物を主相として、ケイ酸カルシウムを複合化させることが提案されて、表面の酸化による水素放出温度の増加を試みている。しかし、ケイ酸カルシウムの熱伝導率は低いため、熱伝導率は低下していると推定され、また、水素放出温度の上昇についても触れられていない。
また、特許文献3では、Ni、Cuなどの発泡金属内に金属水素化物を充填することにより、機械的強度を高めることが提案されているが、熱伝導率の向上や水素放出温度の上昇については、解決できていない。
特開昭60−047998号公報 特開平04−143696号公報 特開平06−180387号公報
T.Tanaka,H.Muta et al,"Applicability of hydride materials for radiation shielding in helical reactor FFHR−d1",Fusion Science Technol.,68(2015)705.
本発明は、上記した従来の中性子遮蔽材における問題点を解決し、金属水素化物をベースとしながらも、安定性及び安全性に優れ、クラックが生成され難く、熱伝導率の低下を招く恐れのない中性子遮蔽材とその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
金属水素化物をベースとした中性子遮蔽材であって、
前記金属水素化物およびクロムから構成され、
前記金属水素化物が、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属の水素化物であることを特徴とする中性子遮蔽材である。
請求項2に記載の発明は、
前記クロムの量が、前記金属水素化物を構成する金属に対して、5〜15mol%であることを特徴とする請求項1に記載の中性子遮蔽材である。
請求項3に記載の発明は、
前記クロムの量が、前記金属水素化物を構成する金属に対して、5〜10mol%であることを特徴とする請求項2に記載の中性子遮蔽材である。
請求項4に記載の発明は、
前記金属水素化物の周囲が、第2の相として形成されたクロムあるいは前記金属とクロムとの金属間化合物により取り囲まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材である。
請求項5に記載の発明は、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材の製造方法であって、
高温雰囲気下で、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属と、クロムとの合金を作製する合金作製工程と、
高温、水素雰囲気下で、前記ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属に水素ガスを吸収させることにより、前記金属を水素化して金属水素化物とする水素化工程とを備えていることを特徴とする中性子遮蔽材の製造方法である。
請求項6に記載の発明は、
前記合金作製工程が、アーク溶解を用いた合金作製工程であることを特徴とする請求項5に記載の中性子遮蔽材の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、
前記水素化工程が、
前記金属がジルコニウムまたはチタンの場合は、前記金属に対する水素のモル比が1.5〜1.7となるように制御し、
前記金属がイットリウムの場合は、前記金属に対する水素のモル比が1.9〜2.1となるように制御して行う工程であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の中性子遮蔽材の製造方法である。
請求項8に記載の発明は、
前記水素化工程が、
前記合金を、真空雰囲気下で700〜900℃の温度まで昇温させて、6〜24時間保持した後、
前記700〜900℃の温度を維持しながら、前記合金を水素雰囲気下に、6〜60時間保持し、
その後、前記水素雰囲気下、300〜500℃の温度まで、10〜30時間掛けて降温させて、前記合金を徐冷する水素化工程であることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材の製造方法である。
本発明によれば、金属水素化物をベースとしながらも、安定性及び安全性に優れ、クラックが生成され難く、熱伝導率の低下を招く恐れのない中性子遮蔽材とその製造方法を提供することができる。
各種遮蔽材について、中性子遮蔽材厚さと高速中性子束との関係を示す図である。 本発明の一実施の形態において、Zr−Cr合金を水素化する際における温度と時間の関係を示す図である。 水素化前のZr−Cr合金のSEM画像である。 水素化後のZr−Cr合金のSEM画像である。 Zr−Cr合金におけるCrの添加量の水素放出温度への影響を説明する図である。 Cr添加の有無によるビッカース試験の結果を説明する図である。 Cr添加の有無による熱伝導率の差異を説明する図である。
1.本発明に至る経緯
本発明の具体的な実施の形態について説明する前に、本発明に至る経緯について説明する。
前記したように、金属水素化物は、水と同程度以上の水素密度を有しており、高い遮蔽能を持つことが知られている。
図1は、従来より使用されている各種遮蔽材について、中性子遮蔽材厚さ(横軸)と高速中性子束(縦軸)との関係を示す図(T.Tanaka et al.,Fusion Sci.Technol.,68(2015)705.より抜粋)である。具体的には、各種遮蔽材を用いて、厚さ10cm、20cm、40cm、60cmの遮蔽壁としたときの、高速中性子の透過の程度を示している。図1において、傾斜が大きいほど、遮蔽能が優れていることを示している。
図1より、ジルコニウム水素化物(ZrH)やチタン水素化物(TiH)は、現状、最も高い遮蔽能を示すタングステン(W)の化合物である炭化タングステン(WC)と同程度の遮蔽能を有していることが分かる。一方、鉄と炭化ホウ素との混合物や、鉄と水との混合物は、ほぼ、水と同等の遮蔽能に留まっていることが分かる。
その一方、金属水素化物は、一般的に、非常に脆く、また、高温で水素を放出すると微粒子化するなど、熱的安定性や機械的安定性に問題があることも知られており、金属水素化物単独で安定した遮蔽材として使用することが難しかった。
このような状況下、本発明者は、金属水素化物と他の金属との複合化によれば、他の金属が有する靱性により、水素保持能と共に、熱的安定性や機械的安定性を高めた中性子遮蔽材とすることができると考えた。そして、安定な金属水素化物を形成する適切な元素として、比較的高い水素密度や水素保持能を有する金属元素について実験と検討を行うと共に、複合するに適切な他の金属元素として、高い熱伝導率および靱性を有する金属相を構成する金属元素について、実験と検討を行った。
その結果、核融合炉の第一壁を構成する金属として、廃棄処分において許容される濃度に制限のない金属の内より、安定な金属水素化物を形成する金属元素として、W化合物と同程度の遮蔽能を有しながらも、安価で、密度も半分以下であるジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)のいずれかを選択し、複合する他の金属元素として、優れた靱性の金属間化合物を、前記したZr、Ti、あるいはYとの間に形成可能なクロム(Cr)を選択して、両者を複合化することにより、優れた遮蔽能で安定性や安全性に優れた遮蔽材を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
2.本発明の実施の形態
以下、本発明を実施の形態に基づき、具体的に説明する。なお、以下においては、水素化対象の金属としてジルコニウム(Zr)を用いた場合における具体的な例で説明しているが、チタン(Ti)やイットリウム(Y)の場合も同様に考えることができる。
(1)遮蔽材の作製
本実施の形態に係る遮蔽材は、以下の手順に従って、作製することができる。
(a)Zr−Cr合金(Zr1−XCr)の作製
最初に、高温雰囲気下で、Zr−Cr合金(Zr1−XCr)を作製する。なお、作製方法としては特に限定されないが、アーク溶解法を採用することが好ましい。また、温度条件としては、ZrとCrとが溶解して合金となる温度であればよく、高温の程度は特に限定されない。
具体的には、アーク溶解炉の中に、所定の比率のZrおよびCrを合金原料として投入した後、低圧のアルゴン雰囲気中で、高温のアーク熱に曝すことにより、Zr−Cr合金を作製する。なお、本発明者の実験においては、アーク溶解炉として、日新技研株式会社製「NEV−A05R−CT」を用いた。
作製されたZr−Cr合金は、冷却後、化学機械研磨を施した後、水素化のために準備されたチャンバ内にセットする。これにより、後述するように、ZrのまわりがZrCr相によって薄く取り囲まれた組織を形成させることができる。
(b)水素化
図2は、本実施の形態において、Zr−Cr合金を水素化する際における温度(縦軸)と時間(横軸)の関係を示す図である。
まず、作製されたZr−Cr合金を、真空雰囲気下、3℃/minの昇温速度で、700〜900℃まで昇温する。このように、徐々に昇温させることにより、合金表面における酸化の発生を防止することができる。そして、700〜900℃に達した後は、この温度を24時間保持する。
次に、チャンバ内の温度を700〜900℃に維持し、チャンバ内に水素ガスを充満させた状態で、48時間掛けて、Zr−Cr合金に水素を吸収させて、Zrの水素化を行う。このとき、水素は、Zrにのみ吸収され、Crには吸収されないため、結果的に、水素化されたZrのまわりがZrCr相によって薄く取り囲まれた組織を形成させることができる。
なお、このような高温で水素化を行うのは、低温で水素化を行った場合、水素吸収時、20%以上の体積変化を招いてクラックが生じやすく、遮蔽材として使用するには問題があるためである。
しかし、Zr−Hにおける平衡水素圧は、高温になるほど高くなることが分かっている。このため、高温のまま水素化した場合、Zr−Cr合金に100%の水素を取り込むことができない。そこで、その後は、雰囲気温度を、300〜500℃まで、徐々に(好ましくは、0.3℃/minの降温速度で)冷却して、Zr−Cr合金にさらに水素を取り込むと共に、水素を均質に分布させる。
なお、このような水素化工程においては、ジーベルツ装置を用いて、ガス吸収法により、金属水素化物相におけるH(水素)/M(Zr)、即ち、Zr原子1個に対するH原子の比率が、1.5〜1.7、好ましくは1.6となるように、充満させる水素量を調整する。H/Mを1.5〜1.7とすることにより、比較的高い水素密度や水素保持能を有する金属水素化物(δ−ZrH)を形成させることができる。なお、Zrに替えてTiを使用する場合には、H/Mは上記と同様に調整すればよいが、Zrに替えてYを使用する場合には、H/Mを1.9〜2.1、好ましくは2.0に調整する。
(2)遮蔽材の特性
次に、上記により作製された遮蔽材の特性について説明する。
(a)遮蔽材の組織観察
図3は、水素化前のZr−Cr合金のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)画像であり、図4は水素化後のZr−Cr合金のSEM画像である。なお、このSEM画像は、日本電子社製、JSM−6500Fを用いて得られた画像である。
図3に示すように、アーク溶解後で水素化前のZr−Cr合金は、ZrとZrCr金属間化合物とから形成されており、Zrのまわりを薄くZrCr相が取り囲むような組織が形成されている。
このような組織が形成されたのは、アーク溶解後の冷却に際して、ZrとCrの融点の差から、まず、Zrが固相として析出し、その後、融点が低いZrCr金属間化合物がZr粒の界面に析出して、ジルコニウム相を薄く金属間化合物相が取り囲む組織が形成されためである。
そして、このような組織は、図4に示すように、水素化後も大きく変化していない。即ち、水素との親和性が高いZrのみが水素化されて、ZrH1.6水素化物相の周りを薄くZrCr相が取り囲むような組織が形成されている。
このように、本実施の形態においては、Zr水素化物をベースとしつつ、高い靭性や熱伝導率をもつクロム化合物が第二相として微細に複合化、具体的には、Zr水素化物相のまわりを、添加したクロムにより形成された金属間化合物が取り囲むように複合化されることにより微細な組織となっている。このため、後述するように、水素の放出温度が上昇するとともに、熱伝導率が向上し、また水素放出後も微粉化等が起こらず、中性子遮蔽材として好ましく使用することができる。なお、クロム化合物ではなく、クロム単独で第二相が形成される場合もある。
(b)水素放出特性
次に、本実施の形態に係る遮蔽材の水素放出特性について説明する。
図5は、Zr−Cr合金におけるZrに対するCrの添加量の水素放出温度への影響を説明する図である。具体的には、Cr添加量が0〜15mol%(図では、単に「%」と記載)と異なる5種類の遮蔽材に対し、熱重量示差熱分析装置(TG−DTA)を用いて、水素放出温度を測定した。なお、図5において、それぞれにおけるピークが、各遮蔽材から水素が放出される水素放出温度である。
図5より、Cr無添加の場合には約1000Kであった水素放出ピークが、5〜15mol%のCr添加により、100K近く上昇していることが分かる。このような水素放出ピークの上昇は、遮蔽材としての機能が高温まで安定的に発揮されて、高い遮蔽能が保持できることを示している。
なお、Cr添加量が多くなると、遮蔽材中の水素密度が減少し、遮蔽能が減少するため、Cr添加量は、図5に示した5〜15mol%が好ましく、5〜10mol%であるとより好ましい。
そして、図5では、ZrにWを12.5mol%添加した遮蔽材についても記載しているが、水素放出ピークは約1000℃と、δ−ZrH1.6と同等程度に留まっており、水素保持性能はほとんど向上しないことが分かる。
(c)硬さおよび破壊靭性
次に、Cr添加の硬さおよび破壊靭性値に対する影響について説明する。具体的には、JIS Z 2244に準拠してビッカース硬さ試験を行い、その後、得られたビッカース硬さに基づいて、破壊靱性値を求めた。具体的には、アカシ社製ビッカース硬さ試験機(AVK)を用い、荷重9.8N、荷重保持時間10sでビッカース硬さ試験を行った。
図6は、Cr添加の有無によるビッカース試験の結果を説明する図であり、(a)にはCr無添加のδ−ZrH1.6における圧痕状態、(b)にはCr10mol%添加の10%Cr−ZrH1.6における圧痕状態が示されている。
Cr無添加のδ−ZrH1.6では、図6(a)に示すように、圧痕により発生したひび割れが長いのに対し、Cr10mol%添加の10%Cr−ZrH1.6では、図6(b)に示すように、圧痕により発生したひび割れがZrCr相内に留まっており、ひび割れの進展が抑制されていることが分かる。この結果より、Crの添加が、上記した微細な組織を形成して、水素化物の脆さを改善していることが分かる。
なお、測定されたビッカース硬さは、δ−ZrH1.6では2.3±0.1GPaであったのに対して、10%Cr−ZrH1.6では2.5±0.1GPaであった。
そして、破壊靱性値を測定したところ、δ−ZrH1.6では0.7±0.1MPa・m1/2であったのに対して、10%Cr−ZrH1.6では1.2±0.2MPa・m1/2と、十分な有意差で上昇していることが確認できた。
この結果より、本実施の形態に係る遮蔽材を使用することにより、機械的な安定性が得られることが分かる。このような結果が得られたのは、本実施の形態に係る遮蔽材は、上記したように、Zr水素化物相のまわりを、添加したクロムにより形成された金属間化合物やクロムが取り囲んだ微細な組織となっているためである。
(d)熱伝導率
次に、Cr添加の熱伝導率に対する影響について説明する。
図7は、Cr添加の有無による熱伝導率の差異を説明する図であり、横軸は温度(K)、縦軸は熱伝導率(Wm−1−1)である。具体的には、NETZSCH社製熱伝導率測定器(LFA457)を用い、約300℃から約700℃までの範囲で、レーザーフラッシュ法により測定を行った。
図7に示すように、Crを10mol%添加することにより、熱伝導率が約30%上昇していることが分かる。そして、この結果より、本実施の形態に係る遮蔽材を核融合炉に使用した場合、除熱性が大きく向上することが見込まれることが分かる。
3.本実施の形態の効果
以上述べてきたように、従来の遮蔽材としての金属水素化物は、高温での水素放出、水素放出等による内部クラック形成・微粉化、またこうしたクラックによる熱伝導率の低下などが欠点となっていたが、本実施の形態に係る遮蔽材は、Zr、Ti、Yのいずれかから選択された金属の水素化物を、水素を吸収しにくく靭性の高い金属Cr、あるいは、Zr、Ti、Yのいずれかから選択された金属とCrとの金属間化合物と適切に複合化することにより、100℃程度の水素放出温度の上昇、破壊靭性値の向上、また熱伝導率の向上を図ることができ、上記した各欠点を解消させることができる。
そして、本実施の形態に係る遮蔽材は、現状で最も高い中性子遮蔽性能を示すタングステン化合物に比較すると、安価で密度が半分以下であることから、ヘリカル型核融合炉、医療用で病院等に配置可能なホウ素捕獲療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)用中性子装置、また、核燃料および使用済燃料輸送体の遮蔽材として使用した場合、大きなメリットを得ることができる。即ち、これら巨大かつ高価な施設を、軽量かつコンパクトに設計することが可能となり、大きなメリットを得ることができる。
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。

Claims (8)

  1. 金属水素化物をベースとした中性子遮蔽材であって、
    前記金属水素化物およびクロムから構成され、
    前記金属水素化物が、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属の水素化物であることを特徴とする中性子遮蔽材。
  2. 前記クロムの量が、前記金属水素化物を構成する金属に対して、5〜15mol%であることを特徴とする請求項1に記載の中性子遮蔽材。
  3. 前記クロムの量が、前記金属水素化物を構成する金属に対して、5〜10mol%であることを特徴とする請求項2に記載の中性子遮蔽材。
  4. 前記金属水素化物の周囲が、第2の相として形成されたクロムあるいは前記金属とクロムとの金属間化合物により取り囲まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材の製造方法であって、
    高温雰囲気下で、ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属と、クロムとの合金を作製する合金作製工程と、
    高温、水素雰囲気下で、前記ジルコニウム、チタン、イットリウムのいずれかから選択された金属に水素ガスを吸収させることにより、前記金属を水素化して金属水素化物とする水素化工程とを備えていることを特徴とする中性子遮蔽材の製造方法。
  6. 前記合金作製工程が、アーク溶解を用いた合金作製工程であることを特徴とする請求項5に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
  7. 前記水素化工程が、
    前記金属がジルコニウムまたはチタンの場合は、前記金属に対する水素のモル比が1.5〜1.7となるように制御し、
    前記金属がイットリウムの場合は、前記金属に対する水素のモル比が1.9〜2.1となるように制御して行う工程であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
  8. 前記水素化工程が、
    前記合金を、真空雰囲気下で700〜900℃の温度まで昇温させて、6〜24時間保持した後、
    前記700〜900℃の温度を維持しながら、前記合金を水素雰囲気下に、6〜60時間保持し、
    その後、前記水素雰囲気下、300〜500℃の温度まで、10〜30時間掛けて降温させて、前記合金を徐冷する水素化工程であることを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の中性子遮蔽材の製造方法。
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