JP2021027990A - 筋肉刺激方法および中枢神経系刺激方法 - Google Patents

筋肉刺激方法および中枢神経系刺激方法 Download PDF

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Daichi Nozaki
大地 野崎
充晃 武見
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充晃 武見
翔大 萩生
Shota Hagio
翔大 萩生
優佑 宅見
Yusuke Takumi
優佑 宅見
智之 白井
Tomoyuki Shirai
智之 白井
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Abstract

【課題】電気刺激による効果を高めることができる筋肉刺激方法を提供する。【解決手段】筋肉刺激方法では、計測された脳活動に基づいて決定された電気刺激に関するパラメータにしたがって筋肉を電気刺激する。【選択図】図2

Description

本発明は、筋肉刺激方法および中枢神経系刺激方法に関する。
特許文献1は、ユーザの筋肉に電気刺激を付与する筋肉刺激装置を開示する。この筋肉刺激装置は、筋肉に微弱な電流を流して筋肉を緊張および弛緩させることで、筋肉を運動させる。これにより、例えば筋力強化が図られる。
特開2017−6644号公報
本発明者達は、筋肉を刺激する方法について鋭意研究を重ねた結果、刺激による効果を高める上で、従来の方法には改善の余地があることを認識するに至った。また、本発明者達は、中枢神経系を刺激する方法について、刺激による効果を高めることができる方法に想到した。また、本発明者達は、筋肉を刺激する方法について鋭意研究を重ねた結果、認知機能の改善に寄与しうる筋肉刺激方法に想到した。
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、刺激による効果を高めることができる筋肉刺激方法を提供することにある。また、別の態様の例示的な目的のひとつは、刺激による効果を高めることができる中枢神経系刺激方法を提供することにある。さらに別の態様の例示的な目的のひとつは、認知機能の改善に寄与しうる筋肉刺激方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の筋肉刺激方法は、計測された脳活動に基づいて決定される刺激に関するパラメータにしたがって筋肉を刺激する。
本発明の別の態様は、中枢神経系刺激方法である。この方法は、計測された筋活動に基づいて決定されるタイミングで中枢神経系を刺激する。
本発明のさらに別の態様は、筋肉刺激方法である。この方法は、30Hz〜50Hzの範囲内の所定の周波数で筋肉を刺激する。
本発明のさらに別の態様もまた、筋肉刺激方法である。この方法は、15Hz〜25Hzの範囲内の所定の周波数で第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激し、第2の筋肉を刺激するリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相である。
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、刺激による効果を高めることができる筋肉刺激方法を提供できる。また、刺激による効果を高めることができる中枢神経系刺激方法を提供できる。また、認知機能の改善に寄与しうる筋肉刺激方法を提供できる。
実施の形態に係るトレーニングシステムを示す模式図である。 図1のトレーニングシステム100の機能構成を示すブロック図である。 図1の筋肉刺激装置の動作を示すフローチャートである。 図1の筋肉刺激装置により筋肉を電気刺激したときの筋活動量の時間変化を示す図である。 図5(a)、(b)はそれぞれ、図1の筋肉刺激装置により各被験者の筋肉を電気刺激したときに各被験者の筋肉に生じる誘発電位を示す図である。 図1の筋肉刺激装置により筋肉を電気刺激しているときの脳波のベータ律動の振幅増減量を示す図である。 変形例に係るトレーニングシステム100の機能構成を示すブロック図である。 筋肉刺激装置により筋肉を電気刺激しているときの発揮張力を示す図である。 筋肉刺激装置により筋肉を電気刺激しているときの脳波のガンマ律動の振幅増減量を示す図である。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、実施の形態に係るトレーニングシステム100を示す模式図である。トレーニングシステム100は、筋肉刺激装置10と、遠隔制御装置12と、を備える。筋肉刺激装置10は、ユーザの身体、例えば腕、足または腹などの身体部位に装着される。筋肉刺激装置10は、それが装着された身体部位の筋肉に電気刺激を与える。また、筋肉刺激装置10は、筋肉刺激装置10の動作状況を検知して、その検知結果を無線または有線により遠隔制御装置12に出力する。
遠隔制御装置12は、ユーザにより操作される種々の端末である。遠隔制御装置12は、例えば、PC、タブレット端末、スマートフォンであってもよい。遠隔制御装置12は、ユーザの操作に応じて筋肉刺激装置10の動作を制御する。遠隔制御装置12は、筋肉刺激装置10から動作状況の検知結果を受信する。
図2は、トレーニングシステム100の機能構成を示すブロック図である。筋肉刺激装置10は、制御ユニット30と、少なくとも1つ(図示の例では1つ)の電極部36と、を含む。
制御ユニット30は、電極部36に筋肉刺激用の電圧を供給する電子ユニットである。図2に示す制御ユニット30の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
制御ユニット30は、ハウジング30mに収容されている、制御部30aと、スイッチ部20jと、20kと、充電端子20gと、電池20hと、を含む。図2では、スイッチ部をSW部と表記している。
ハウジング30mは、制御ユニット30の外殻をなす。ハウジング30mは、種々の樹脂材料で形成することができる。スイッチ部20j、20kは、押下げ操作されたことを検知して検知結果を制御部30aに出力する。スイッチ部20j、20kは、例えば、非操作時はクローズであり、押下げ操作されたときにオープンに変化する電気接点を含んでもよい。
電池20hは、制御部30aに電気的に接続され、制御部30aに電力を供給する。電池20hは、一次電池であってもよいが、本例では繰り返し充電可能なリチウムイオン電池を採用している。電池20hは、交換可能であってもよいが、本例では内臓タイプを採用している。充電端子20gは、電池20hを充電するための電力を受電して制御部30aに出力する。充電端子20gには、種々のコネクタを用いることができる。電池20hは、充電端子20gで受電した電力により充電される。電池20hは、ワイヤレス充電などの非接触式の充電システムによって充電されるように構成されてもよい。
制御部30aは、通信部30bと、肌検知部30cと、操作取得部30dと、電気刺激制御部30eと、記憶部30fと、充電制御部30gと、を含む。通信部30bは、筋肉刺激装置10の動作状況を遠隔制御装置12に送信することができる。遠隔制御装置12は、通信部30bから取得した動作状況を表示する。通信部30bは、遠隔制御装置12に入力された操作に基づく操作情報を受信する。制御部30aは、通信部30bを介して取得した操作情報に応じて筋肉刺激装置10の動作を制御する。
操作取得部30dは、スイッチ部20j、20kから操作の検知結果を取得する。操作取得部30dは、各スイッチ部の抵抗値に応じた電圧を検知して、検知電圧が閾値以上のときにスイッチ部は押下げ操作されたと判定し、検知電圧が閾値未満のときにスイッチ部は操作されていないと判定する。制御部30aは、各スイッチ部の押下げ状況の組合せや、押下げ時間の長さなどに応じて筋肉刺激装置10の制御方法を決定する。
記憶部30fには、筋肉を電気刺激する周波数が記憶される。具体的には、記憶部30fには、筋肉刺激装置10を使用するユーザの皮質運動野の脳波に現れるベータ律動(20Hz前後の脳活動)のうち、安静時に著明な周波数と同じ周波数、運動中に著明な周波数と同じ周波数、またはそれら両方の周波数、が記憶される。特には限定しないが、例えば筋肉刺激装置10を販売する販売店に脳波測定器を設置して当該脳波測定器により脳波を測定し、当該販売店において、公知の技術を用いて、測定された脳波から安静時の周波数と運動中の周波数とを特定してもよい。特定された周波数は、記憶部30fに記憶される。つまり、特定された周波数は、筋肉を電気刺激する周波数として決定される。なお、周波数は、例えば遠隔制御装置12により、また例えば販売店に設置された所定の端末により、記憶部30fに記憶される。
肌検知部30cは、電極が肌に接しているか否かを検知する。肌検知部30cは、第1電極36bと第2電極36cとの間の抵抗値を検出し、検出した抵抗値が閾値未満のときに電極が肌に接していると判定し、検出した抵抗値が閾値以上のときは電極が肌に接していないと判定する。
電気刺激制御部30eは、肌検知部30cによって電極が肌に接していることが検知されると、所定の動作時間(例えば20分)、記憶部30fに記憶された周波数で、設定された出力電圧に応じた電力を電極に供給する。記憶部30fに複数の周波数が記憶されている場合、例えば遠隔制御装置12による操作により、いずれの周波数で電気刺激するかを決定してもよい。つまり、筋肉刺激装置10は、皮質運動野の脳波に現れるベータ律動のうちの安静時または運動中の周波数と同じ周波数で、ユーザの身体部位に電気刺激を与える。詳しくは後述するが、ベータ律動の安静時の周波数と同じ周波数で筋肉に電気刺激を与えると、持続的に筋肉を収縮でき、ベータ律動の運動中の周波数と同じ周波数で筋肉に電気刺激を与えると、脳の興奮性を高めることができる。出力電圧は、遠隔制御装置12またはスイッチ部20j、20kを操作することによって変更することができる。この例の電気刺激制御部30eでは、スイッチ部20jが押下される度に出力電圧が上昇し、スイッチ部20kが押下される度に出力電圧が低下する。
充電制御部30gは、充電端子20gで受電した充電用の電力を制御して電池20hに供給する。充電制御部30gは、電池20hの充電率に応じて電池20hに供給する電流の大きさを制御する。例えば、充電率が低い場合には電池20hに供給する電流を大きくして、充電率が高い場合には電池20hに供給する電流を小さくする。充電制御部30gは、充電した電荷量に対する充電率の増加幅が小さい場合、電池の故障として充電を中止する。
以上がトレーニングシステム100の構成である。続いてその動作を説明する。図3は、筋肉刺激装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
処理が開始されると、制御部30aは、スイッチ部20jが押下げられたか否かを判定する(ステップS102)。スイッチ部20jが押下げられていない場合(ステップS102のN)、制御部30aは、処理をステップS102の先頭に戻し、ステップS102を繰り返し実行する。スイッチ部20jが押下げられている場合(ステップS102のY)、制御部30aは、所定の経過時間T1を経過したか否かを判定する(ステップS104)。
経過時間T1を経過していない場合(ステップS104のN)、制御部30aは、処理をステップS102の先頭に戻し、ステップS102〜S104を繰り返し実行する。経過時間T1を経過した場合(ステップS104のY)、制御部30aは、ステップS106に移行する。ステップS104における経過時間T1は所望の仕様に応じて設定することができる。本例の経過時間T1は2秒に設定されている。つまり、ユーザはスイッチ部20jを2秒間押下することにより筋肉刺激装置10の電源をオンにすることができる。
ステップS106において、制御部30aは、電極が肌に接しているか否かを判定する(ステップS106)。電極が肌に接していない場合(ステップS106のN)、制御部30aは、所定の待機時間待機してから処理をステップS106の先頭に戻す。
電極が肌に接している場合(ステップS106のY)、制御部30aは、ユーザの腹部3に電気刺激の付与を開始する(ステップS108)。このステップで、電気刺激制御部30eは、記憶部30fに記憶された周波数で電極部36に電力を供給する。
ステップS108を実行した制御部30aは、所定の経過時間T2を経過したか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110における経過時間T2は所望のトレーニング時間に応じて設定することができる。本例の経過時間T2は20分に設定されている。つまり、ユーザは20分間が経過するまでトレーニングを継続することができる。経過時間T2を経過していない場合(ステップS110のN)、制御部30aは、電極が肌に接しているか否かを判定する(ステップS112)。
電極が肌に接している場合(ステップS112のY)、制御部30aは、処理をステップS108の先頭に戻し、電気刺激の付与を継続する。電極が肌に接していない場合(ステップS112のN)、制御部30aは、電気刺激の付与を停止して処理S100を終了する。つまり、経過時間T2を経過していない場合でも、電極が身体2から離れた場合には、制御部30aは、電気刺激の付与を終了する。経過時間T2を経過した場合(ステップS110のY)、制御部30aは、電気刺激の付与を停止して処理S100を終了する。
処理S100は一例に過ぎず、この処理に他の処理を追加したり、ステップを削除・変更したり、ステップの順序を入れ替えたりしてもよい。
以上がトレーニングシステム100の構成とその動作である。続いて、筋肉を電気刺激する周波数について詳しく説明する。
従来の筋肉刺激装置の多くは、ユーザの身体に20Hzで電気刺激を与えるよう構成されている。これは、筋肉を効率的にトレーニングできる周波数が20Hzであると言われているためである。具体的には、従来の研究より、50Hzや80Hzなどの高い周波数で筋肉に電気刺激を与えると、60秒程度の短時間で筋肉の張力が低下し、したがってトレーニング効果があまり望めない状態に陥り、これに対して20Hzで筋肉に電気刺激を与えると、時間が経過しても筋肉の張力が保たれ、継続して効率的なトレーニングを行えることが知られている。
また、皮質運動野の自発的な神経活動の周波数、すなわち皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数が20Hz程度であることも知られている。この周波数は、筋肉を効率的にトレーニングできる周波数と同程度である。本発明者達は、これは偶然ではなく必然である、すなわち両者には関連性があると考えた。
ところで、皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数は20Hz程度であると説明したが、詳しくは、その周波数は人ごとで異なり、また、運動状態ごと、具体的には安静時、運動中または運動直後(すなわち運動状態)でそれぞれ異なる。これより発明者達は、筋肉を効率的にトレーニングできる周波数とベータ律動との間に関連性があるならば、人ごと、運動状態ごとに異なるベータ律動の周波数に基づいて筋肉を電気刺激する周波数を決定すれば、筋肉をより効率的にトレーニングできると考えた。
そこで発明者達は、筋肉をより効率的にトレーニングできる周波数、すなわち持続的に筋肉を収縮できる周波数を特定するための実験を行った。持続的に筋肉を収縮できれば、筋肉が肥大することが期待される。また、持続的に筋肉を収縮できれば、筋肉刺激装置10を糖尿病などの運動療法に用いることも可能となる。
実験では、6名の被験者を対象として、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数、運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数、運動直後のベータ律動の周波数と同じ周波数、20Hzの周波数で筋肉に電気刺激を与えたときの筋活動量をそれぞれ、公知の技術を用いて測定した。
図4は、実験結果を示す。図4は、筋肉を電気刺激したときの筋活動量の時間変化を示す、具体的には積分筋電図(Integrated electromyogram:iEMG)である。図4において、横軸は時間であり、縦軸は筋活動量である。グラフ120は、6人の被験者それぞれを、それぞれの安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合の、6人の被験者の筋活動量の平均値の時間変化を示す。グラフ122は、6人の被験者それぞれを、それぞれの運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合の、6人の被験者の筋活動量の平均値の時間変化を示す。グラフ124は、6人の被験者それぞれを、それぞれの運動直後のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合の、6人の被験者の筋活動量の平均値の時間変化を示す。グラフ126は、6人の被験者それぞれを20Hzで筋肉を電気刺激し続けた場合の、6人の被験者の筋活動量の平均値の時間変化を示す。
図4より、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激した場合、他の周波数で筋肉を電気刺激した場合に比べて高い筋活動量を、比較的長い間、得られることがわかる。これより、持続的に筋収縮させたい場合は、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続ければよいことがわかる。
筋肉を電気刺激すると、筋肉が収縮(すなわち活性化)するだけなく、電気刺激による感覚入力が脊髄や脳などの中枢神経系に伝わり、中枢神経系の興奮性や活動状態が変化する。そこで発明者達は2つの実験を行った。
1つ目の実験では、より中枢神経系の興奮性を高められる周波数の特定を試みた。筋肉に電気刺激を加えることで中枢神経系の興奮性が高められれば、興奮性が上がりにくい状態になっている脳卒中のリハビリ等に筋肉刺激装置10を用いることが可能となる。また、中枢神経系の興奮性が高まると学習が速くなること知られているスポーツに筋肉刺激装置10を応用できる。具体的には、スポーツジムや競技者によるトレーニングにおいて、運動訓練と併用することが考えられる。
実験では、2名の被験者を対象とした。この実験では、各被験者に対して、まず12秒間安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉に電気刺激を与え、次に12秒間休憩する(すなわち筋肉電気刺激を与えない)、というのを12回繰り返した。各回において、電気刺激中に2回、休憩中に2回、頭の上にかざしたコイルに強力な電気を流して脳を磁気刺激し、そのときに被験者の身体に生じる電位を、被験者の皮膚に貼り付けた電極により測定した。同じことを、筋肉に電気刺激を与える周波数を運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数、運動直後のベータ律動の周波数と同じ周波数、20Hzの周波数に変更して行った。なお、電位の計測は、これには限定されず、他の公知の技術を用いて測定されてもよい。
ここで、頭の上にかざしたコイルに強力な電気を流して脳を磁気刺激すると、コイルの下の脳の神経細胞が強制的に活動させられ、当該神経細胞に対応する筋肉で運動誘発電位が生じる。このとき、中枢神経系の神経細胞が、興奮性が高い状態にあれば、磁気刺激を受けてより多くの神経細胞が活動し、当該神経細胞に対応する筋肉で生じる運動誘発電位は比較的高くなる。一方、中枢神経系の神経細胞が、興奮性が低い状態にあれば、磁気刺激を受けても比較的少ない神経細胞しか活動せず、当該神経細胞に対応する筋肉で生じる運動誘発電位は比較的低くなる。つまり、運動誘発電位は中枢神経系の興奮性を反映する。したがって、被験者の身体に生じる電位、すなわち運動誘発電位を測定することで、中枢神経系が興奮した状態にあるか否かを判断できる。
図5(a)、(b)はそれぞれ、各被験者の実験結果、すなわち筋肉刺激装置10により各被験者の筋肉を電気刺激したときに各被験者の身体に生じる電位を示す図である。図5(a)、(b)において、縦軸は電位の振幅である。図5において、各点は12回の測定結果の平均値である。なお、平均値を求める際、筋肉刺激装置10により電気刺激を与えたタイミングでの電位の測定値はゼロとして計算した。これにより、筋肉刺激装置10が被験者に与える電気刺激に起因する電位の影響を除外できる。
図5より、運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激した場合、他の周波数で筋肉を電気刺激した場合に比べて高い運動誘発電位が得られること、つまり、中枢神経系が興奮した状態になることがわかる。
続いて2つ目の実験では、より中枢神経系の活動同期性を高められる周波数の特定を試みた。6名の被験者を対象として、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数、運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数、運動直後のベータ律動の周波数と同じ周波数、20Hzの周波数で筋肉に電気刺激を与えたときの皮質運動野の脳波を公知の技術を用いて測定した。
図6は、実験結果、すなわち筋肉を電気刺激しているときの脳波のベータ律動の振幅増減量を示す図である。図6では、筋肉を電気刺激していないときのベータ律動の振幅をゼロとしている。図6より、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合、他の周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合に比べてベータ律動の振幅が増加することがわかる。
ここで脳波の振幅は、中枢神経系の活動同期性とその頻度を反映する。具体的には、N(例えば20または40)Hzの周波数の脳波の振幅は、1秒間にN(例えば20または40)回の頻度で同期的に活動する神経細胞がより多いほど、すなわち中枢神経系の活動同期性がより高いほど、大きくなる。したがって、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合に最もベータ律動の振幅が増加しているということは、当該周波数で筋肉を電気刺激し続けた場合に中枢神経系の活動同期性が最も高められることになる。
まとめると、筋肉を電気刺激する周波数については以下のことがいえる。
(i)図4の実験結果より明らかなように、筋肉を電気刺激する周波数として安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数を採用すると、持続的に筋肉を収縮できる。
(ii)図5の実験結果より明らかなように、筋肉を電気刺激する周波数として運動中のベータ律動の周波数と同じ周波数を採用すると、他の周波数を採用する場合に比べ、中枢神経系の興奮性を高めることができる。
(iii)図6の実験結果より明らかなように、安静時のベータ律動の周波数と同じ周波数を採用すると、他の周波数を採用する場合に比べ、中枢神経系の活動同期性を高めることができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数に基づいて決定された電気刺激の周波数にしたがって筋肉を電気刺激する。ベータ律動の安静時の周波数と同じ周波数で電気刺激すれば、他の周波数で電気刺激する場合に比べて、比較的長い間高い筋活動量が得られ、中枢神経系の活動同期性を高めることができる。ベータ律動の運動中の周波数と同じ周波数で電気刺激すれば、筋収縮させつつも脳の興奮性(反応性)を高めることができる。つまり、目的に応じて筋肉を刺激できる。
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
(変形例1)
実施の形態では特に言及しなかったが、トレーニングシステム100は、複数の筋肉刺激装置10を備え、複数の筋肉刺激装置10によって複数の筋肉を同時に刺激してもよい。この場合、ユーザの皮質運動野の脳波に現れるベータ律動のうち、安静時に著明な周波数と同じ周波数または運動中に著明な周波数と同じ周波数で複数の筋肉を刺激すればよい。
また、安静時に著明な周波数と同じ周波数または運動中に著明な周波数と同じ周波数で複数の筋肉を同時に刺激する場合、一部の筋肉の刺激のリズムを逆位相としてもよい。具体的には例えば、2つの筋肉刺激装置10によって第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激する場合、第1の筋肉および第2の筋肉の両方をベータ律動の安静時または運動時の周波数と同じ周波数で刺激し、第2の筋肉の刺激のリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相であってもよい。この場合、個々の筋肉は20Hz程度の周波数で刺激されるが、筋肉全体としては40Hz程度で刺激されることになる。
ここで、認知機能障害の病態の1つとして、40Hzまたはその付近の周波数のガンマ律動の脳活動が弱くなることが知られている。また、40Hzまたはその付近の周波数の光や音による感覚刺激には、認知機能の改善、そしてアルツハイマー病の原因物質であるタウタンパクの凝集抑制の効果があることが知られている。感覚刺激による機能改善の背景メカニズムとしては、例えば40Hzの感覚刺激により、中枢神経系の多くの神経細胞が1秒間に40回の頻度で同期的に活動するようになることが挙げられている。
これに対し上述のように一部の筋肉の刺激のリズムを逆位相とすることで、個々の筋肉は20Hz程度の周波数で刺激されるものの、全体としては筋肉は40Hz程度で刺激されるため、脳が受け取る信号の周波数は40Hz程度となる。したがって、筋肉を効率的にトレーニングしつつも、認知機能の改善効果が望める。
(変形例2)
実施の形態では、皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数に基づいて、筋肉を電気刺激する周波数を決める場合について説明したが、これには限定されず、他の脳活動に基づいて筋肉を電気刺激する周波数を決定してもよい。例えば、皮質運動野以外の脳波に基づいて決定してもよく、また例えば、MEG(Magnetoencephalography)の計測結果に基づいて決定してもよい。
また、筋肉を電気刺激するときの周波数に加えて、あるいは周波数に代えて、筋肉を電気刺激するときの出力電圧、すなわち電極部に供給する電力を、皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数などの脳活動に基づいて決定してもよい。つまり、脳活動(皮質運動野の脳波など)に基づいて、電気刺激に関するパラメータ(電気刺激の周波数、出力電圧など)を決定すればよい。
(変形例3)
筋肉刺激装置10は、それが装着された身体部位に不随意運動を起こす装置である。不随意運動では、筋肉から中枢神経系に感覚入力が伝わるが、中枢神経系から筋肉への運動指令は伝わらない。これに対し、実際の運動、すなわち随意運動では、中枢神経系から筋肉に運動指令が伝わり、筋肉から中枢神経系に感覚入力が伝わる。つまり、閉ループ性の神経活動が生じている。そこで本変形例では、実際に運動している状態を模して、筋肉刺激装置10により筋肉を刺激する際に、脳を刺激して脳から筋肉への運動指令の伝達も生じさせ、閉ループ性の神経活動を惹起させる。
図7は、変形例に係るトレーニングシステム100の機能構成を示すブロック図である。図7は図2に対応する。本変形例では、トレーニングシステム100は、中枢神経系刺激装置14をさらに備える。中枢神経系刺激装置14は、本変形例では、有線または無線により、遠隔制御装置12と接続される。中枢神経系刺激装置14は、脳を電気、磁気、または超音波により刺激する装置である。中枢神経系刺激装置14は、公知の技術を用いて構成されればよい。
中枢神経系刺激装置14は、筋肉刺激装置10が筋肉を刺激する周波数と同じ周波数で、脳を刺激する。中枢神経系刺激装置14が脳に刺激を与えるタイミングと、筋肉刺激装置10が筋肉に電気刺激を与えるタイミングとの間には、目的に応じた任意のタイムラグを設定すればよい。つまり、中枢神経系刺激装置14は、筋肉刺激装置10が筋肉を刺激するタイミングと関連するタイミングで脳を刺激する。
例えば、実際の随意運動を模したタイムラグを設定してもよい。例えば前腕部の筋肉を刺激すると、おおよそ20msで脳に感覚入力が伝わるので、筋肉刺激装置10が前腕部の筋肉に電気刺激を与えるタイミングに対して、20ms遅れで中枢神経系刺激装置14が脳に刺激を与えてもよい。なお、筋肉刺激装置10が筋肉に交流電流の電気刺激を与える場合、中枢神経系刺激装置14は、筋肉に流れる電流が最大値となるタイミングから20ms遅れで脳に刺激を与えてもよいし、筋肉に流れる電流が最小値(負の最大値)となるタイミングから20ms遅れで脳に刺激を与えてもよい。
なおタイムラグは、刺激を与える筋肉と脳との距離に応じて調節する。したがって身長にも依存するが、例えば前腕部であればおおよそ20ms、下肢であれば35ms程度のタイムラグを設ける。
本変形によれば、随意運動を模して筋肉をトレーニングできるため、より実践的な筋肉をつけることが可能となることが期待される。
また本変形例によれば、ユーザに、閉ループ性の神経活動を惹起させることができる。そのため、トレーニングシステム100を、閉ループ性の神経活動を自らほとんど作り出せない重度の脳卒中麻痺患者へのリハビリツールとして応用できる。当該患者に閉ループ性の神経活動を擬似的に作り出すことで、神経可塑性とその後の機能回復を高める効果があると期待される。
筋肉刺激装置10を複数の筋肉に取り付け、これらを同時に刺激してもよい。通常、実際の運動では複数の筋肉が使用されるため、複数の筋肉を刺激することで、より随意運動を模した筋肉のトレーニングが可能となり、より一層実践的な筋肉をつけることができることが期待される。なおこの場合、筋刺激と脳刺激のタイムラグは、刺激を与える筋肉と脳との距離に応じて別個に調節する。したがって、筋肉ごとに刺激のタイミングは異なりうる。
さらなる変形例として、筋肉刺激装置10および中枢神経系刺激装置14の一方は、実施の形態で説明したようにして決定された周波数(すなわち20Hz程度の周波数)で刺激し、他方は、その2倍の周波数(すなわち40Hz程度の周波数)で刺激してもよい。
具体的には例えば、筋肉刺激装置10は筋肉を40Hz程度の周波数で刺激し、中枢神経系刺激装置14は脳を20Hz程度の周波数で刺激してもよい。つまり、筋肉刺激装置10が筋肉を刺激する周波数は、中枢神経系刺激装置14が脳を刺激する周波数の2倍の周波数であってもよい。ここで、脳内の神経細胞には、その配向性に依存して、刺激電極上ではプラスからマイナスに向かうときに発火しやすい神経細胞と、マイナスからプラスに向かうときに発火しやすい神経細胞が存在する。したがって、20Hz程度の交流電流で脳を電気刺激した場合、実際にはその2倍、つまり1秒間に40回程度(ただし単一の神経細胞では20回程度)、すなわち交流電流の2倍の周波数で脳を刺激したことになる。このため、筋肉を20Hz程度の周波数で刺激した場合、脳と筋肉とは、実質的には同じ周波数で刺激されることになる。
あるいは2つ以上の筋肉をそれぞれ20Hzで刺激するが、一部の筋肉の刺激のリズムを逆位相とすることで、全体としては筋肉を40Hzで刺激してもよい。これを20Hzの交流電流での脳刺激と組み合わせることで、効率的にトレーニングできる20Hzの周波数で筋肉を刺激しつつも、脳と筋肉とを実質的に同じ40Hzで刺激することができる。
(変形例4)
実施の形態では、ユーザの皮質運動野の脳波に現れるベータ律動の周波数に基づいて決定された周波数で筋肉を刺激する場合について説明したが、これには限定されず、ユーザの皮質運動野の脳波に現れるガンマ律動(35Hz〜100Hzの脳活動)の周波数で筋肉を刺激してもよい。
例えば、運動中のガンマ律動の周波数に基づいて決定された周波数で筋肉を刺激してもよい。この場合も、脳の興奮性をより高められること、随意運動を模して筋肉をトレーニングできるためより実践的な筋肉をつけることが可能となることが期待される。ガンマ律動の周波数は、公知の技術を用いて測定され、記憶部30fに記憶されればよい。
ところで、変形例1で説明したように、認知機能障害の病態のひとつとして、40Hzまたはその付近の周波数のガンマ律動の脳活動が弱くなる、すなわち脳波の振幅が減少することが知られている。そこで本発明達は、40Hzまたはその付近のガンマ律動の周波数であって、振幅が減少しているガンマ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を刺激すれば、認知機能の改善効果が期待できると考えた。
そこで例えば、ユーザの皮質運動野の脳波に現れるガンマ律動のうち、振幅が所定の閾値以下となっている周波数を、振幅が減少しているガンマ律動の周波数として特定してもよい。そして、少なくとも1つの筋肉を当該周波数で刺激してもよい。閾値は、一例としては、健常者のガンマ律動の振幅に基づいて決定されてもよい。例えば閾値は、複数の健常者のガンマ律動の振幅の平均値に余裕率(例えば0.6)を掛けた値であってもよい。閾値は、周波数ごとで異なっていてもよい。
また例えば、複数の筋肉を、振幅が減少しているガンマ律動の周波数(40Hz程度の周波数)の半分の周波数(20Hz程度の周波数)で刺激するものの、一部の筋肉の刺激のリズムを逆位相とすることで、全体としては、振幅が減少しているガンマ律動の周波数と同じ周波数で筋肉を刺激してもよい。例えば、2つの筋肉刺激装置10によって第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激する場合、振幅が減少しているガンマ律動の周波数の半分の周波数で第1の筋肉および第2の筋肉を刺激し、第2の筋肉の刺激のリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相であってもよい。この場合、認知機能と運動習慣に密接な関係があることを鑑みれば、効率的にトレーニングできる20Hz程度の周波数で筋肉を刺激しつつも、脳は40Hz程度で刺激されるため、優れた認知機能の改善効果が望める。
(変形例5)
実施の形態および上述の変形例では、筋肉刺激装置10が電気で筋肉を刺激する場合について説明したが、これには限定されず、筋肉刺激装置10は、磁気、振動(機械)、あるいはその他の方法により、筋肉を刺激するよう構成されてもよい。この場合、上の説明において、例えば、電気刺激を磁気刺激または振動(機械)刺激と読み替えればよい。例えば、筋肉刺激装置10が磁気により筋肉を刺激する場合、筋肉刺激装置10は、電極部36の代わりにコイルを備え、当該コイルに強力な電流を流すことにより、脳活動に基づいて決定した周波数で筋肉を刺激すればよい。本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
(変形例6)
実施の形態および上述の変形例では、筋肉刺激装置10により筋肉を刺激する場合や、筋肉刺激装置10により筋肉を刺激するとともに中枢神経系刺激装置14により脳を刺激する場合について説明した。本変形例では、筋肉刺激装置10により筋肉を刺激せずに、中枢神経系刺激装置14により中枢神経系を刺激する。例えば、筋力トレーニングなどの運動中に、中枢神経系刺激装置14により中枢神経系を刺激すればよい。この場合、中枢神経系刺激装置14は、筋活動に基づいて決定されたタイミングで中枢神経系を刺激してもよい。
例えば中枢神経系刺激装置14は、全波整流した筋電図の値にFFTをかけて得られた基本周波数で中枢神経系を刺激してもよい。また例えば中枢神経系刺激装置14は、リアルタイムに測定される筋電図の値であって全波整流した筋電図の値が、所定の閾値を下回るあるいは上回るタイミングで中枢神経系を刺激してもよい。
本変形例によれば、運動中に中枢神経系刺激装置14により中枢神経系を刺激することにより閉ループ性の神経活動が強化されるため、単に運動をする場合に比べて高い効果(例えば随意制御能力の向上)が得られる。
(変形例7)
上述の変形例4では、振幅が減少しているガンマ律動の周波数と同じ周波数、すなわちガンマ律動の脳活動に基づいて決定される周波数で筋肉を刺激する場合について説明したが、脳活動に基づいて決定される周波数でなくても、40Hzまたはその付近の周波数で筋肉や脳を刺激すれば、認知機能の改善効果が得られることが期待される。そこで、筋肉刺激装置10は、30Hz〜50Hzの範囲内の所定の周波数、より好ましくは35Hz〜45Hzの範囲内の所定の周波数、さらに好ましくは38Hz〜42Hzの範囲内の所定の周波数で筋肉や脳を刺激してもよい。
あるいはまた、筋肉全体としては40Hzまたはその付近の周波数で刺激されれば、脳が受け取る信号の周波数は40Hzまたはその付近の周波数となるため、認知機能の改善効果が得られることが期待される。そこで、複数の筋肉のそれぞれを、15Hz〜25Hzの範囲内の所定の周波数、より好ましくは17.5Hz〜22.5Hzの範囲内の所定の周波数、さらに好ましくは19Hz〜21Hzの範囲内の所定の周波数で筋肉を刺激してもよい。例えば、2つの筋肉刺激装置10によって第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激する場合、第1の筋肉および第2の筋肉を上述の範囲内の所定の周波数(例えば20Hz)で刺激し、第2の筋肉の刺激のリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相であってもよい。
発明者達は、本変形例による効果を確認するための実験を行った。実験では、4名の被験者を対象として、筋肉刺激装置10により当該腕の上腕二頭筋にのみ40Hzの電気刺激を付与した場合、腕撓骨筋にのみ40Hzの電気刺激を付与した場合、上腕二頭筋と腕撓骨筋に40Hzの電気刺激を同時に付与した場合、上腕二頭筋と腕撓骨筋に20Hzの電気刺激を逆位相で同時に付与した場合、のそれぞれについて発揮張力と皮質運動野の脳波を公知の技術を用いて測定した。
図8、9は、実験結果を示す図である。図8は、筋肉刺激装置10により筋肉を電気刺激しているときの発揮張力を示す図である。図9は、筋肉刺激装置10により筋肉を電気刺激しているときの38Hz〜42Hzの脳波の振幅増減量を示す図である。図9の振幅増減量は、被験者4名の平均値である。
図8に示すように、上腕二頭筋のみを40Hzで刺激すると、たかだか12秒で力の減衰すなわち疲労が始まった。腕撓骨筋は、上腕二頭筋ほど力は出ないが、疲労しにくかった。上腕二頭筋と腕撓骨筋を同時に40Hzで刺激すると、上腕二頭筋のみを40Hzで刺激したときに発揮される力と腕撓骨筋のみを40Hzで刺激したときに発揮される力を足し合わせたような力が発揮された。上腕二頭筋と腕撓骨筋を逆位相で20Hzで同時に刺激すると、初期に発揮される力は、上腕二頭筋と腕撓骨筋を同時に40Hzで刺激した場合に発揮される力に及ばないが、12秒後には発揮される力は、上腕二頭筋と腕撓骨筋を同時に40Hzで刺激した場合に発揮される力に近いレベルに達した。また、疲労も見られなかった。
図9に示すように、上腕二頭筋のみを40Hzで刺激しても、40Hzの脳波の振幅はあまり変化しなかった。腕橈骨筋のみを40Hzで刺激すると、40Hzの脳波の振幅が増加した。上腕二頭筋と腕橈骨筋を40Hzで同時に刺激すると、上腕二頭筋のみ又は腕橈骨筋のみを刺激したときよりも40Hzの脳波の振幅の増加量が大きかった。上腕二頭筋と腕橈骨筋を逆位相で20Hzで同時に刺激すると、上腕二頭筋と腕橈骨筋を40Hzで同時に刺激した場合と同等に40Hzの脳波の振幅が増加した。
これより、筋肉を40Hzで刺激すると40Hzの脳波の振幅が増加すること、特に2つの筋肉を同時に刺激すると40Hzの脳波の振幅が大きく増加することがわかる。つまり、認知機能に好ましい影響を外部から与えることがわかる。
また、2つの筋肉を20Hzで電気刺激しても、刺激が逆位相であれば、脳が受け取る信号の周波数は40Hzとなり、40Hzの脳波の振幅は増加した。これより、効率的にトレーニングできる20Hzの周波数で筋肉を刺激しつつも、脳を40Hzで刺激できるすなわち認知機能に好ましい影響を外部から与えることがわかる。
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
10 筋肉刺激装置、 12 遠隔制御装置、 14 中枢神経系刺激装置、 30 制御ユニット、 30a 制御部、 32 100 トレーニングシステム。

Claims (11)

  1. 計測された脳活動に基づいて決定される刺激に関するパラメータにしたがって筋肉を刺激する筋肉刺激方法。
  2. 前記脳活動は皮質運動野の脳波の周波数であり、
    前記パラメータは筋肉を刺激する周波数である請求項1に記載の筋肉刺激方法。
  3. 皮質運動野の脳波に現れるベータ律動のうち、安静時または運動中に著明な周波数と同じ周波数で筋肉を刺激する請求項2に記載の筋肉刺激方法。
  4. 皮質運動野の脳波に現れるベータ律動のうち、安静時または運動中に著明な周波数と同じ周波数で第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激し、第2の筋肉を刺激するリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相である請求項3に記載の筋肉刺激方法。
  5. 皮質運動野の脳波に現れるガンマ律動のうち、振幅が所定の閾値以下である周波数で筋肉を刺激する請求項2に記載の筋肉刺激方法。
  6. 皮質運動野の脳波に現れるガンマ律動のうち、振幅が所定の閾値以下である周波数の半分の周波数で第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激し、第2の筋肉を刺激するリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相である請求項2に記載の筋肉刺激方法。
  7. 計測された脳活動に基づいて決定される刺激に関するパラメータにしたがって、さらに脳を刺激する請求項1から6のいずれかに記載の筋肉刺激方法。
  8. 筋肉を刺激するタイミングと関連するタイミングで脳を刺激する請求項7に記載の筋肉刺激方法。
  9. 計測された筋活動に基づいて決定されるタイミングで中枢神経系を刺激する中枢神経系刺激方法。
  10. 30Hz〜50Hzの範囲内の所定の周波数で筋肉を刺激する筋肉刺激方法。
  11. 15Hz〜25Hzの範囲内の所定の周波数で第1の筋肉および第2の筋肉を同時に刺激し、第2の筋肉を刺激するリズムは第1の筋肉を刺激するリズムの逆位相である筋肉刺激方法。
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