以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1には、実施形態にかかる変位補正処理装置100の例の機能ブロック図が示される。図1において、変位補正処理装置100は、変位情報取得部10、変位情報分類部12、基準点情報取得部14、補正値算出部16、第1内挿処理部18、第2内挿処理部20、補正部22、表示制御部24、通信部26、記憶部28及びCPU30を含んで構成されている。なお、CPU30以外にGPU等のアクセラレーターを用いてもよい。上記変位補正処理装置100は、CPU30、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU30とCPU30の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
変位情報取得部10は、異なる観測時期にレーダー装置により取得された観測対象である地表面の時系列データ(位相を含む情報であり、以後位相情報ということがある)に対して干渉解析を行って生成された、地表面上の地点ごとの位相差情報(以後変位情報ということがある)を取得する。ここで、レーダー装置としては、例えばSAR(Synthetic Aperture Radar 合成開口レーダー)が挙げられるが、これには限定されない。変位情報取得部10は、上記SAR等により観測した時系列データ(位相情報)に含まれる反射波の位相から干渉解析により得られた変位情報(位相差情報)を、通信部26を介して外部のサーバ等から取得することができる。取得した変位情報は、記憶部28に記憶させる。変位情報(位相差情報)には、合成開口レーダーからの視線方向の距離変化の情報が含まれており、これを使用して地表面の高さの変化の情報(変位情報)や標高(高さの絶対値)を面的に、すなわち地表面上の地点ごとに抽出することができる。また、変位情報はアンラップ処理後の情報とするのが好適である。なお、上記変位情報には、元となる位相情報に含まれる、観測地点(変位情報の取得地点)の位置の座標情報(位置情報)が含まれる。
また、変位情報取得部10は、上記変位情報とともに、上記位相情報に対する干渉解析で得られるレイオーバ/レーダシャドウが発生する領域及びコヒーレンス画像(位相情報間の干渉の程度を表す画像)等の中間生成物も取得して記憶部28に記憶させる。
変位情報分類部12は、上記変位情報及び中間生成物(レイオーバ/レーダシャドウが発生する領域及びコヒーレンス画像)を記憶部28から読み出し、これらの情報から変位情報を解析し、予め定めた基準に基づき変位情報の使用可能性の高低を判断し、この使用可能性の高低に基づいて上記変位情報を取得した地表面上の各地点を分類1、分類2及び分類3に分類する。ここで、変位情報の使用可能性は、変位情報の存否、及び変位情報が在している場合の当該変位情報の信頼性に基づいて決定される。なお、分類1、分類2、分類3の順で上記使用可能性が低くなる(分類3では変位情報のデータが欠損している)。分類結果は記憶部28に記憶させる。取得地点の分類方法は後述する。
基準点情報取得部14は、GNSS測量または現地測量によって得た、予め定めた基準点の測量結果を基準点情報として取得し、記憶部28に記憶させる。基準点情報としては、基準点の座標情報(緯度、経度、標高等)の基準値(他の地点の測量の基準となる値)を含む情報である。この基準点情報は、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等の適宜な入力手段により使用者が測量結果を入力して取得させる構成や、外部のサーバから通信部26を介して取得する構成等が挙げられる。
補正値算出部16は、上記基準点情報と、上記分類1及び上記分類2の各地点における変位情報を記憶部28から読み出し、上記基準点において、上記基準点情報及び上記変位情報を用いて、上記分類1、分類2及び分類3毎に各地点における変位情報に対する補正値を算出し、記憶部28に記憶させる。補正値の算出方法は後述する。
第1内挿処理部18は、上記基準点情報と、上記分類1及び上記分類2に分類された各地点における変位情報を記憶部28から読み出し、上記基準点情報、上記分類1及び上記分類2の内変位情報の使用可能性が高い地点における変位情報に基づき、上記分類2の内変位情報の使用可能性が低い各地点及び分類3の各地点について、当該各地点の変位情報を内挿する。第1内挿処理部18が内挿した上記各地点の変位情報は、記憶部28に記憶させる。これにより、分類2の各地点の内、変位情報の使用可能性が低い地点及び分類3の各地点について変位情報を内挿処理により設定することができる。第1内挿処理部18による内挿処理は後述する。
第2内挿処理部20は、上記補正値算出部16が算出した上記基準点における補正値を記憶部28から読み出し、この補正値を、上記観測対象である地表面の各地点に内挿し、記憶部28に記憶させる。第2内挿処理部20による内挿処理は後述する。
補正部22は、上記第2内挿処理部20が内挿処理により設定した各地点の補正値を記憶部28から読み出し、当該補正値にて、上記観測対象である地表面上の各地点の変位情報を補正する。補正結果は記憶部28に記憶させる。
表示制御部24は、上記補正部22の補正結果を記憶部28から読み出し、補正後の変位情報を画像化し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する。
通信部26は、適宜なインターフェースにより構成され、外部のサーバ等から変位情報、基準点情報等を取得し、変位情報取得部10、基準点情報取得部14等に渡す。
記憶部28は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU30の動作プログラム等の、変位補正処理装置100が行う各処理に必要な情報を記憶する。なお、記憶部28としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部28には、主としてCPU30の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU30が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
図2には、変位情報分類部12が行う地表面上の各地点の分類方法のフロー図が示される。図2において、変位情報分類部12が記憶部28から変位情報及び中間生成物(レイオーバ/レーダシャドウが発生する領域及びコヒーレンス画像)を読み出し、上記取得地点がレイオーバまたはレーダシャドウが発生した領域、またはデータ欠損が生じた領域に含まれているか否かを判断する(S1)。ここで、データ欠損が生じた領域の判定は、以下のように行う。2時期で取得された位相情報のみを用いる「差分干渉SAR解析」の場合は、上記コヒーレンス画像においてコヒーレンス値が予め定めた閾値を下回る領域をデータ欠損が生じた領域と判定する。また、3時期以上で取得された位相情報を用いた「時系列干渉SAR解析」の場合は、干渉性の低い領域における解析のアウトプットの時点でデータ欠損が生じるので、この領域がデータ欠損が生じた領域となる。また、レイオーバまたはレーダシャドウが発生した領域もデータ欠損が生じている。レイオーバ及びレーダシャドウについては後述する。
上記S1において、含まれている(YES)と判断された場合には、変位情報分類部12が、データ欠損のために当該変位情報の使用可能性が無いと判断し、取得地点の分類を3(分類3)として、記憶部28に記憶させる。
一方、上記S1において、含まれていない(NO)と判断された場合には、変位情報分類部12は、上記取得地点がコヒーレンス画像においてコヒーレンス値が予め定めた閾値を下回る領域(ただし、ここでの閾値はS1における閾値より高い)、またはアンラップエラーが生じている領域に含まれるか否かを判断する(S2)。ここで、アンラップエラーとは、変位情報の変位(地表変動)を表す位相差が−πからπまで変化する毎に変位を積み重ね(ある変位の位相差がπとなったときの変位と、これと連続するが位相差が−πと表現された変位とを一致させ)て変位の連続化を行うアンラップ処理を実行したときに、水域/陸域の境界や、地盤変動(地すべり等)の境界等の影響で、SARで観測される反射波の位相が大きく変化し、変位情報の画像に不連続箇所が生じる現象をいう。このようなアンラップエラーは、変位情報を表す画像から判断することができる。
上記S2において、含まれている(YES)と判断された場合には、変位情報分類部12が当該変位情報に使用可能性が低いもの(干渉性が低い領域、またはアンラップエラーが生じている領域の変位情報)が含まれていると判断し、当該変位情報を取得した地点の分類を2(分類2)として、記憶部28に記憶させる。
一方、上記S2において、含まれていない(NO)と判断された場合には、変位情報分類部12は、上記変位情報を取得した地点における変位情報の使用可能性が高いと判断し、当該地点の分類を1(分類1)として、記憶部28に記憶させる。
図3(a)、(b)、(c)には、レイオーバ及びレーダシャドウの説明図が示される。図3(a)が、観測対象の地表面の模式図であり、地表面の位置が観測の順番(SARに近い順)に1から30の整数で示されている。また、図3(b)が、上記地表面をSARで観測して得たデータ(位相情報)の記録の状況の概念図(記録イメージ)である。また、図3(c)が、最終的に記録されるデータ(位相情報)の概念図(SAR画像)である。
図3(a)において、衛星に搭載されたSARから観測用の電波が照射され、その反射波をSARが受信して地表面を観測する。この場合、原則としてSARから近い地表面から遠い地表面に沿って順次観測が行われ、地表面の各点の位相情報が取得されていく。
このとき、地表面に山等の隆起地形Iがあると、その斜面ABでSARとの距離が逆転することがある。すなわち、図3(a)の例で、斜面の一端A(麓)の方が他端B(山頂)よりSARとの距離が長くなる。この場合、本来であれば、図3(a)に示された地表面の位置7にAの観測データが割り当てられ、位置8にBの観測データが割り当てられる筈のところ、上記距離の逆転が生じているため、図3(b)に示されるように、位置8と位置7の記録順が逆転され、さらに位置8がSARとの距離が等しい位置5と重複し、位置7が位置6と重複して、位置5、6のデータが位置8、7のデータにより上書きされる。この結果、位置5〜8のデータが判読不能として削除され、位置9、10によって上書きされる結果データ欠損が生じる。本明細書では、この現象をレイオーバと称している。
また、地表面に山等の隆起地形IIがあると、電波の照射角度(入射角)によっては、図3(a)に示されるように、隆起地形IIの影になる領域で電波が照射されないレーダシャドウ領域が生じる。図3(a)の例では、地表面の位置21から29がレーダシャドウ領域となっている。この場合、地表面から反射波がSARに戻ってこないので、この領域のデータが判読不能として削除され、データ欠損が生じる。本明細書では、この現象をレーダシャドウと称している。
以上のように、レイオーバまたはレーダシャドウが発生する領域では、上記の通りデータ欠損が生じる。このため、図3(c)に示されるSAR画像では、地表面の位置5〜8及び21〜29が欠損したデータとなっている。
図4には、補正値算出部16が行う補正値の算出方法の説明図が示される。図4の例では、上記変位情報分類部12が行った地表面上の各地点の分類結果(分類1、分類2及び分類3)毎に補正値の算出方法が示されている。なお、この場合の各地点は、基準点情報取得部14が基準点情報を取得した基準点と重なる地点である。
図4において、地表面上の地点が分類1の場合、当該地点で取得された変位情報の使用可能性が高いと判断されているため、基準点の測量結果(基準点情報)Miと変位情報Aiとの変位差(変位量の誤差)Eiを補正値Ci(=Ai−Mi)として算出する。ここで、添字iは予め定めた基準点の識別符号(ID)である。また、基準点の測量結果Miは、予め定めた基準点について、例えばGNSS測量または現地測量を行って得られた高さの変位量の測量結果である。また、変位情報Aiは、分類1の地点の内、上記基準点について得られた変位情報である。なお、干渉SAR解析では、変位量の他標高も観測対象となる。従って、標高の場合は、上記補正値Ciが標高の誤差となる。
また、地表面上の地点が分類2の場合、当該地点で取得された変位情報に使用可能性が低いものが含まれていると判断されているため、補正値算出部16は、測量結果Miと変位情報Aiとの誤差について統計的な外れ値であるか否かを判定して場合分けを行う。ここで、外れ値であるか否かの判定は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、箱ひげ図に基づく外れ値判定方法(第一四分位数、第三四分位数、および、四分位範囲(IQR)を利用して、上限値を「第三四分位数+1.5×IQRより小さい最大値」、下限値を「第一四分位数−1.5×IQRより大きい最小値」とした範囲外の値を外れ値と定義する方法)、スミルノフ・グラブス検定やトンプソン検定などの外れ値検定を利用する方法、クラスター分析を利用する方法等を例示することができる。
測量結果Miと変位情報Aiとの誤差が統計的な外れ値でない場合には、当該変位情報Aiの使用可能性が高いと判断し、補正値算出部16が分類1と同様の方法で補正値を算出する。一方、上記誤差が統計的な外れ値と判定された場合には、当該変位情報Aiの使用可能性が低いと判断し、補正値Ci=0とする。この場合には、上記第1内挿処理部18は、変位情報Aiを使用せず、測量結果Miを当該地点の変位情報Aiに置き換えて内挿処理に使用する。
また、地表面上の地点が分類3の場合、変位情報の使用可能性が無いので、補正値Ci=0とする。この場合には、上記第1内挿処理部18は変位情報Aiを使用せず、測量結果Miを当該地点の変位情報Aiに置き換えて内挿処理に使用する。
図5には、第1内挿処理部18による内挿処理の説明図が示される。図5において、レーダー装置による観測対象である地表面の範囲Oが示されている。地表面の範囲O内において干渉SAR等の手法により地表面上の各地点すなわちSAR画像等の画像の画素毎に変位情報が生成される。変位情報取得部10は、このように生成された変位情報を取得する。なお、補正部22の補正対象である地表面の各地点は、上記画素または複数の画素により構成される領域に相当する。
図5の例では、変位情報分類部12が分類した地表面上の各地点の分類結果が分類1、分類2及び分類3として示されている。これらの分類は、分類1、分類2及び分類3の地点がそれぞれ集合した領域として示されている。なお、分類2では、補正値算出部16が、測量結果Miと変位情報Aiとの誤差が統計的な外れ値でない(変位情報Aiの使用可能性が高い)と判定した領域がIで示され、統計的な外れ値である(変位情報Aiの使用可能性が低い)と判定した領域がIIで示されている。
また、図5の例では、GNSS測量または現地測量が行われた12個の基準点(a〜l)が黒塗りの四角(■)で示されており、基準点情報取得部14は、これらの基準点の測量結果である基準点情報を取得して記憶部28に記憶させる。なお、図5の例は、基準点の数を12個に限定するものではない。
第1内挿処理部18は、地表面の範囲Oの内、分類2のII及び分類3の領域にある各地点の変位情報を内挿処理により設定する。この場合、第1内挿処理部18は、図5に示されるように、地表面の範囲Oの内外に存在する基準点の中から、各基準点を結んだ線により囲まれる領域に内挿処理の対象となる分類2のII及び分類3の領域をすべて含むこととなる複数の基準点(a〜i)を選択し、これらの基準点情報に基づいて内挿処理を実行する。なお、分類2においては、測量結果Miと変位情報Aiとの誤差が統計的な外れ値であるIIの領域を含まない(全ての地点で分類2のIとなる)場合もある。この場合には、第1内挿処理部18は、分類3の領域にある各地点の変位情報だけを内挿処理により設定する。
また、上記内挿処理は、基準点情報とともに、または基準点情報に代えて上記分類1の変位情報及び上記分類2の変位情報の内使用可能性が高い変位情報に基づき実行することができる。ここで、変位情報の使用可能性が高い変位情報とは、図5における分類2のIの領域で取得された変位情報を意味する。これらの変位情報の選択は、上記基準点の選択方法に準じて行う。
また、上記内挿処理は、上記分類2の変位情報の内使用可能性が低い領域を除いても良い。この場合は、分類3の領域をすべて含む基準点情報、または、分類1の変位情報及び上記分類2の変位情報に基づいて内挿処理を実行する。また、この場合、上記分類2の使用可能性が低い領域の変位情報は、内挿処理を行わず、変位情報取得部10によって得られた変位情報を使用する。
なお、上記内挿処理の精度を向上させるために、上記基準点を結んで生成される領域は、面積が小さい方が好ましい。このため、図5の例では、内挿処理に使用する9個の基準点a〜iで囲まれた領域が示されているが、基準点dを省略して基準点cと基準点eとを結んだ方が上記分類2のII及び分類3の領域をすべて含む領域の面積が小さくなる場合には、基準点dを省略するのが好適である。さらに、上記内挿処理の精度を向上させるために、基準点a〜iで囲まれた領域内にある基準点(j〜l)も含めて、内挿処理をすることが、好適である。
以上に述べた内挿処理は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、逆距離加重法(Inverse Distance Weighted:IDW)、Natural Neighbor内挿法、クリギング、スプライン、トレンド等を例示することができる。
なお、上記分類2のII及び分類3の領域にある各地点の内挿処理は、フィルタリング処理(nxnピクセルのウィンドウによる平滑化処理など)やリサンプリング処理で得られた値を使用して、上記方法により内挿処理を行ってもよい。リサンプリング処理には、最近隣内挿法、共一次内挿法、三次たたみ込み内挿法などが含まれる。
図6には、第2内挿処理部20による内挿処理の説明図が示される。第2内挿処理部20は、観測対象である地表面の範囲O内の全ての基準点において補正値算出部16が算出した補正値Ciを記憶部28から読み出し、読み出した全ての補正値Ciに基づいて、内挿処理により範囲O内の全ての地点における補正値を設定する。なお、地表面の範囲Oの内、関心がある一部の領域について上記補正値を設定する構成としてもよい。
以上の構成によれば、上記地表面の範囲O内の全部または一部の地点における変位情報を補正することができる。
図6において、補正値算出部16が補正値を算出した点が白抜き四角(□)で示されている。これらの点では、図4に示された方法により補正値Ciが算出されている。なお、図6の例では、補正値Ciを算出した点が4点(Ci=Ai−Miの場合が2点、Ci=0の場合が2点)示されているが、補正値Ciの算出点の数は限定されない。ただし、第2内挿処理部20による上記補正値の内挿の信頼性を確保するため、地表面の範囲Oにおいて補正値算出部16が算出した全ての補正値を内挿処理に使用する必要がある。また、図6の例では、全ての基準点が地表面の範囲O内に存在しているが、範囲Oの外側に設定された基準点について求めた補正値を使用してもよい。これにより、地表面の範囲O内を全て囲んでいる基準点における補正値を使用して範囲O内の各地点を内挿することができ、補正部22による補正処理の精度を向上することができる。
補正部22は、上記地表面の範囲Oの各地点の変位情報Aの各々に、上記第2内挿処理部20の内挿処理により設定された各地点の補正値を加算することにより補正する。なお、上記各地点(SAR画像等の画像の画素)は複数まとめて補正してもよい。また、第1内挿処理部18で、上記分類2の変位情報の内使用可能性が低い領域を除いた場合、上記分類2の使用可能性が低い領域の補正値は、基準点の測量結果(基準点情報)Miと変位情報Aiとの変位差(変位量の誤差)Eiを補正値Ci(=Ai−Mi)として算出する。
図7には、補正部22による補正処理の概念図が示される。図7において、逆三角形(▽)が基準点を示す。また、第2内挿処理部20が設定した各地点の補正値を5分類して等高線状にグレースケール(図中A〜Eで示す)で色分けしている。この場合、白(A)がプラス方向(図の手前方向)への補正を示し、黒(E)がマイナス方向(図の裏方向)への補正を示しており、C→B→Aがプラス方向の補正、C→D→Eがマイナス方向の補正を示している。
なお、図7の例では、作図の便宜から第2内挿処理部20が設定した補正値を量子化して離散的に5分類しているため境界が明確に見えるが、実際は内挿処理により補正値間は連続した値となっている。
図8には、実施形態にかかる変位補正処理装置100の動作例のフロー図が示される。図8において、変位情報取得部10が、異なる観測時期にレーダー装置により取得された観測対象である地表面の時系列データ(位相情報)に対して干渉解析を行って生成された、地表面上の各地点ごとの位相差情報(変位情報)及びレイオーバ/レーダシャドウが発生する領域及びコヒーレンス画像等の中間生成物を取得し、記憶部28に記憶させ(S11)、変位情報分類部12が、上記変位情報及び中間生成物(レイオーバ/レーダシャドウが発生する領域及びコヒーレンス画像)を記憶部28から読み出し、これらの情報から変位情報を解析し、予め定めた基準に基づき変位情報の使用可能性の高低を判断し、この使用可能性の高低に基づいて上記変位情報を取得した地表面上の各地点を分類1、分類2及び分類3に分類する。分類結果は記憶部28に記憶させる(S12)。
また、基準点情報取得部14は、GNSS測量または現地測量によって得た、予め定めた基準点の測量結果を基準点情報として取得し、記憶部28に記憶させる(S13)。
次に、補正値算出部16は、上記基準点情報と、上記分類1及び上記分類2の各地点における変位情報を記憶部28から読み出し、上記基準点において、上記基準点情報及び上記変位情報を用いて、上記分類1、分類2及び分類3毎に、各地点における変位情報に対する補正値を算出し、記憶部28に記憶させる(S14)。
第1内挿処理部18は、上記基準点情報と、上記分類1及び上記分類2に分類された各地点における変位情報を記憶部28から読み出し、上記基準点情報、上記分類1及び上記分類2の内変位情報の使用可能性が高い地点における変位情報に基づき、上記分類2の内変位情報の使用可能性が低い各地点及び分類3の各地点について、当該各点の変位情報を内挿して結果を記憶部28に記憶させる(S15)。
第2内挿処理部20は、上記補正値算出部16が算出した上記基準点における補正値を記憶部28から読み出し、この補正値を、上記観測対象である地表面の各地点に内挿し、記憶部28に記憶させる(S16)。
次に、補正部22は、上記第2内挿処理部20が内挿処理により設定した各地点の補正値を記憶部28から読み出し、当該補正値にて、上記観測対象である地表面上の各地点の変位情報を補正する。補正結果は記憶部28に記憶させる(S17)。
補正後の変位情報は、表示制御部24が画像化し、適宜な表示装置に表示する(S18)。
上述した、図8の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。