〔実施形態1〕
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図1から図18に基づいて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
以下の説明において、「n」および「m」は、各々、「1」以上の整数を表すものとする。本実施の形態においては、例えばPLC(Programmable Logic Controller)10を予測装置の典型例として説明を行う。PLC10は、また、データ生成装置の典型例でもあり、詳細は後述する。本発明の一態様に係るPLC10についての理解を容易にするため、先ず、PLC10を含む制御システム1の概要を、図2を用いて説明する。
§1.適用例
従来、リチウムイオン二次電池の製造に際し、セル完成後に全数検査として実施するインピーダンス検査の前に、ロットごとなどの抜き取り検査として、集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpに対する引っ張り強度検査を実施している。
また、従来から、接合装置20について、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する際の超音波出力などの物理量を計測し、計測した物理量を、収集していた。例えば、「接合装置20の振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Fre」、「ユーザにより設定され、接合装置20が出力を制御する際の指標とするパワーPow」、「振動子Traに印加された電流Ipp」、「インピーダンスImp」などを計測していた。
PLC10の開発者は、計測した各種の物理量を、それぞれ単独で分析してみたが、リチウムイオン二次電池の製造不良に関連する、各種の物理量の変化、特に、超音波接合部分Ujpの接合強度の低下に関連する、各種の物理量の変化は、見つけられなかった。
さらに検討を重ねたPLC10の開発者は、計測した各種の物理量の各々の時系列データから各々の特徴量(統計的特徴量)を抽出し、複数の特徴量の組み合わせを観察することにより、接合強度の低下事象の発生を予測できることを見出した。PLC10は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する接合工程の段階で、接合工程により形成された超音波接合部分Ujpの接合強度の低下の予兆を捉えることができる。
具体的には、PLC10は、超音波接合部分Ujpを形成する際のインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの少なくとも2つを用いて、形成された超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。また、PLC10は、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの少なくとも2つを用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が低下する予兆を検知する。
§2.構成例
以下に先ず、接合装置20によって超音波接合された集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を予測するために、PLC10の開発者が行った検討および検証について、図5から図15を用いて説明しておく。
(接合強度の予測方法についての検討経緯)
図3に示すように、リチウムイオン二次電池の製造過程において、「負極板、セパレータ、および、正極板を重ねて捲回した電極体200」の集電箔群210と電極端子300とは、超音波振動によって超音波接合される。例えば、図2の接合装置20は、超音波振動を発生させることにより、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する。
PLC10の開発者は、集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を予測するのに利用可能な因子を検討するため、接合装置20が集電箔群210と電極端子300とを超音波接合している間の、以下の8種類の物理量を計測した。PLC10の開発者は、上述の8種類の物理量の計測に、オシロスコープ等の計測装置を利用したが、接合装置20自体が各種物理量の計測機能を備える場合、接合装置20に上述の8種類の物理量を計測させてもよい。
以下の説明においては、「超音波接合部分Ujpの接合強度が十分である」ことを、「正常である」とも称し、また、「超音波接合部分Ujpの接合強度が十分でない」ことを、「異常である」とも称する。
(検討対象とした物理量について)
PLC10の開発者が計測した8種類の物理量のうち、第1の物理量は、接合装置20の振動子Traが、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に発生させた超音波振動の周波数Fre[kHz]である。振動子Traが発生させる超音波振動の周波数Freの値は、接合装置20が効率の良い値を探し続けながら振動子Traを発振させるため、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に変動する。第2の物理量は、接合装置20に対してユーザが設定するパワーPow[W]であり、接合装置20は、ユーザによって設定されたパワーPowの値に応じて、出力を制御する。
第3の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に接合装置20の振動子Traに印加された電圧[V]の波高値(peak to peak)であり、以下の説明においては「電圧Vpp」と記載する。第4の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に接合装置20の振動子Traに印加された電流[A]の波高値(peak to peak)であり、以下の説明においては「電流Ipp」と記載する。
第5の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間の電圧反射率Gammaであり、第6の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間のインピーダンスImp[Ω]である。インピーダンスImpは、単純には「電圧Vpp/電流Ipp」と表現することができ、ただし、実際には電圧Vppと電流Ippとの位相差も関係する。
第7の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間の、電圧Vppと電流Ippとの位相差deg[度]である。電圧Vppと電流Ippとは、ともに正弦波であり、これら2つの正弦波の位相差が「位相差deg」である。第8の物理量は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間のエネルギEnr[J]である。
(物理量の計測方法について)
PLC10の開発者は、上述の8種類の物理量の各々について、接合装置20が集電箔群210と電極端子300とを超音波接合している間に所定の周期で繰り返し計測された、複数の計測結果を収集した。上述の8種類の物理量の各々を計測する処理は「サンプリング」処理とも呼ばれ、上述の8種類の物理量の各々を計測する周期は「サンプリング周期」とも呼ばれる。
以下の説明においては、「集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する」処理を1回行うのに要する期間(周期)を、「1フレーム(frame)」と称する。つまり、接合装置20は、接合強度が判定されるべき(予測されるべき)超音波接合部分Ujpを、「1フレーム」に1つ形成する。
「1サンプリング周期」は「1フレーム」に比べて十分に短く、「1フレーム」には複数の「サンプリング周期」が含まれる。つまり、「1フレーム」中にサンプリング周期で繰り返しサンプリングが実行され、上述の8種類の物理量の各々について、複数のサンプリング結果(計測結果)が取集される。「1フレーム中にサンプリング周期で繰り返し計測した値(つまり、サンプリング結果)を、時系列に並べたデータ」を、以下では「時系列データ」とも称する。
上述の8種類の物理量の各々は、1フレーム中にサンプリング周期で繰り返し計測され、つまり、上述の8種類の物理量の各々について、1フレーム中に計測された、複数のサンプリング結果(計測結果)が収集される。上述の8種類の物理量の各々について、各サンプリング処理において計測したサンプリング結果を時系列に並べた時系列データが生成される。
(検討対象とした特徴量について)
PLC10の開発者は、「接合装置20の振動子Traが集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する」間に収集した、上述の8種類の物理量の各々の時系列データに対して統計処理を行い、算出した統計量を8種類の物理量の各々の特徴量とした。「1フレーム」は「1つの超音波接合部分Ujp」に対応するから、「上述の8種類の物理量の各々の、1フレーム分の時系列データ」から算出された、「上述の8種類の物理量の各々の、1フレーム分の特徴量」は、「1つの超音波接合部分Ujp」に対応する。
以下の説明においては、統計量として、「複数の計測結果の中央値(メジアン)」を採用した場合について説明する。しかしながら、統計量としては、「1フレーム分の時系列データの平均値」を採用してもよいし、また、「1フレーム分の時系列データの標準偏差」等を採用してもよい。
以下の説明においては、1フレーム分の「周波数Fre」の時系列データから算出した統計量、特に「中央値」を、「Fre_median」と記載する。同様に、1フレーム分の「パワーPow」の時系列データから算出した統計量、特に「中央値」を「Pow_median」と記載し、1フレーム分の「電流Ipp」の時系列データから算出した統計量、特に「中央値」を「Ipp_median」と記載する。また、1フレーム分の「周波数Fre」の時系列データから算出した統計量、特に「中央値」を「Fre_median」と記載する。つまり、「Fre_median」、「Pow_median」、「Ipp_median」、「Imp_median」は、各々、「周波数Fre」、「パワーPow」、「電流Ipp」、「インピーダンスImp」の特徴量である。
上述の8種類の物理量の各々の統計量(つまり、特徴量)を用いることにより、上述の8種類の物理量の各々に係る膨大な量の計測結果について、効率的な検討が可能となり、また、正確な検討を阻害する異常値等からの影響を排除することができる。
(接合強度に対する判定について)
PLC10の開発者は、上述の8種類の物理量を計測した超音波接合によって形成された超音波接合部分Ujpについて、接合強度を判定した。具体的には、ロットごとに一部の超音波接合部分Ujpを抜き取って引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定した。
ここで、ロットごとに、抜き取った超音波接合部分Ujpの総数に対する、「『接合強度が十分である』と判定された超音波接合部分Ujp」の割合が、所定の正常値以上であると、「そのロットに含まれる超音波接合部分Ujpは、全て、正常である」とした。例えば、或るロットについて、抜き取った超音波接合部分Ujpの全てが「接合強度が十分である」と判定された場合に、「その或るロットに含まれる超音波接合部分Ujpは、全て、正常である」とした。
また、ロットごとに、抜き取った超音波接合部分Ujpの総数に対する、「『接合強度が十分でない』と判定された超音波接合部分Ujp」の割合が、所定の異常値以上であると、「そのロットに含まれる超音波接合部分Ujpは、全て、異常である」とした。例えば、或るロットについて、抜き取った超音波接合部分Ujpの半数以上が「接合強度が十分でない」と判定された場合に、「その或るロットに含まれる超音波接合部分Ujpは、全て、異常である」とした。さらに、「正常である」または「異常である」としたロット以外のロットは、「移行状態」のロットとした。
ここで、上述の「正常(接合強度が十分である)」、「異常(接合強度が十分でない)」、および、「移行状態」は、超音波接合部分Ujpの接合強度と上述の8種類の物理量との関係を検討するために定義した区別である。上述の8種類の物理量との関係を検討するために定義した「正常(接合強度が十分である)」、「異常(接合強度が十分でない)」、および、「移行状態」は、必ずしも、後述する検査結果データ124に格納される判定結果とは一致しない。すなわち、上述の8種類の物理量との関係を検討するために定義した「正常」、「異常」は、予測基準データ123を生成する際に利用される、超音波接合部分Ujpの接合強度についての「正常」、「異常」に、必ずしも対応しない。
(接合強度に影響する物理量についての仮説)
PLC10の開発者は、上述の8種類の物理量の各々の特徴量について、集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度との関係を確認した。図5から図8の各々は、上述の8種類の物理量の各々の特徴量と接合強度との関係を示す図であり、特に、Pow_median、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々の特徴量と接合強度との関係を示す図である。
図5は、パワーPowの特徴量であるPow_medianと超音波接合部分Ujpの接合強度との関係を示す図である。具体的には、図5には、以下の3つのロットに含まれる超音波接合部分Ujpが形成された時のPow_medianが示されている。すなわち、(1)「異常」(つまり、low_strength)とされたロット、(2)「移行状態」(つまり、intermediate)とされたロット、(3)「正常」(つまり、high_strength)とされたロットである。
図5において、超音波接合部分Ujpの接合強度は、紙面左から右に、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。つまり、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。
これに対して、上述の3つの接合強度の各々に対応する超音波接合部分Ujpを形成する際に計測されたパワーPowの特徴量であるPow_medianには、経時的な変化はほとんど見られず、特に、経時的に連続した変化は見られない。「異常」時のPow_medianは、「移行状態」時および「正常」時のPow_medianとは大きく異なっているが、前述の通り、パワーPowはユーザが設定する値であるため、「異常」時と「移行状態」時との間で、ユーザによって設定変更が行われた可能性がある。
図6は、インピーダンスImpの特徴量であるImp_medianと超音波接合部分Ujpの接合強度との関係を示す図である。図6においても、図5と同様に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、紙面左から右に、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。つまり、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。
ここで、図6において、上述の3つの接合強度の各々に対応する超音波接合部分Ujpを形成する際に計測されたインピーダンスImpの特徴量であるImp_medianは、超音波接合部分Ujpの接合強度と同様に、連続的に変化している。具体的には、上述の3つの接合強度の各々に対応するImp_medianは、接合強度と同様に、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、連続的に変化している。
図7は、電流Ippの特徴量であるIpp_medianと超音波接合部分Ujpの接合強度との関係を示す図である。図7においても、図5と同様に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、紙面左から右に、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。つまり、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、超音波接合部分Ujpの経時的に、接合強度は、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。
ここで、図7において、上述の3つの接合強度の各々に対応する超音波接合部分Ujpを形成する際に計測された電流Ippの特徴量であるIpp_medianは、超音波接合部分Ujpの接合強度と同様に、連続的に変化している。具体的には、上述の3つの接合強度の各々に対応するIpp_medianは、接合強度と同様に、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、連続的に変化している。
図8は、周波数Freの特徴量であるFre_medianと超音波接合部分Ujpの接合強度との関係を示す図である。図8においても、図5と同様に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、紙面左から右に、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。つまり、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、超音波接合部分Ujpの接合強度は、「異常」から「移行状態」を経て「正常」へと遷移している。
ここで、図8において、上述の3つの接合強度の各々に対応する超音波接合部分Ujpを形成する際に計測された周波数Freの特徴量であるFre_medianは、超音波接合部分Ujpの接合強度と同様に、連続的に変化している。具体的には、上述の3つの接合強度の各々に対応するFre_medianは、接合強度と同様に、フレーム(frame)数が大きくなるに従って、言い換えれば、経時的に、連続的に変化している。
図5から図8に示した、Pow_median、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々の特徴量と接合強度との関係から、PLC10の開発者は、以下の仮説を立てた。すなわち、「Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianは、超音波接合部分Ujpの接合強度の変化と何らかの相関関係がある」との仮説を立てた。
(3つの物理量の組み合わせと接合強度との関係)
これまでに説明してきた通り、PLC10の開発者は、接合強度が低下した事象について、上述の8種類の物理量の各々についての時系列データ(つまり、サンプリング周期で繰り返し計測したサンプリング結果を、時系列に並べたデータ)を解析した。具体的には、上述の8種類の物理量の各々の時系列データから、上述の8種類の物理量の各々の統計量である特徴量を算出し、上述の8種類の物理量の各々の特徴量について、接合強度との関係を考察した。
その結果、PLC10の開発者は、「接合強度の低下と、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianという3つの特徴量との間には、相関がある」と考えた。特に、PLC10の開発者は、「これら3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量を組み合わせることにより、3つの特徴量の各々を単独で用いるのに比べてより高い精度で、接合強度が十分であるか否かを予測できるようになる」と考えた。すなわち、PLC10の開発者は、「Pow_median、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianという3つの特徴量を複合的に判断することで、接合強度の低下を、高い精度で予測できるようになる」と考えた。
そこで、PLC10の開発者は、接合強度の判定結果が各々、「異常」、「移行状態」、および、「正常」である超音波接合部分Ujpについて、これらの超音波接合部分Ujpの各々に対応する上述の3つの特徴量の組み合わせにどのような関係があるかを確認した。
図9は、接合強度の判定結果が各々、「異常」、「移行状態」、および、「正常」である超音波接合部分Ujpに対応する、特徴点Pfe_異常、Pfe_移行状態、および、Pfe_正常の、特徴量空間Prsにおける位置を示す図である。図9に示すように、PLC10の開発者は、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々を次元とする空間(特徴量空間Prs)に、特徴点Pfe_異常、Pfe_移行状態、および、Pfe_正常をプロットしてみた。
特徴点Pfe_異常は、接合強度の判定結果が「異常」である超音波接合部分Ujpを形成する際に計測されたインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより座標が決定された点である。また、特徴点Pfe_移行状態は、接合強度の判定結果が「移行状態」である超音波接合部分Ujpを形成する際に計測されたインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより座標が決定された点である。同様に、特徴点Pfe_正常は、接合強度の判定結果が「正常」である超音波接合部分Ujpを形成する際に計測されたインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより座標が決定された点である。
つまり、特徴量空間Prs上の特徴点Pfeは、それぞれ、複数の超音波接合部分Ujpの各々を形成する際に計測されたインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの組み合わせに対応している。言い換えれば、複数の特徴点Pfeは、各々、複数の超音波接合部分Ujpに対応している。
図9に示すように、接合強度の判定結果が各々、「異常」、「移行状態」、および、「正常」である超音波接合部分Ujpに対応する、特徴点Pfe_異常、Pfe_移行状態、および、Pfe_正常は、相互に位置が重なることなく、連続的に配置された。
図10は、接合強度の判定結果が各々、「異常」および「正常」である超音波接合部分Ujpに対応する、特徴点Pfe_異常および特徴点Pfe_正常の、特徴量空間Prsにおける位置を示す図である。図10に示すように、特徴点Pfe_異常の集合(以下、「異常特徴点群」)と特徴点Pfe_正常の集合(以下、「正常特徴点群」)とは、特徴量空間Prs上の互いに離れた位置に配置された。
したがって、PLC10の開発者は、超音波接合部分Ujpを形成する際に計測したインピーダンスImp、電流Ipp、周波数Freの内の少なくとも2つの組み合わせと、超音波接合部分Ujpの接合強度とが関係することを確認した。特に、PLC10の開発者は、インピーダンスImp、電流Ipp、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの内の少なくとも2つの組み合わせと、超音波接合部分Ujpの接合強度とが関係することを確認した。
(更なる検討)
PLC10の開発者は、さらに検討を進めたところ、図11に示す事象を確認した。
図11は、或る期間において、特徴点Pfe_異常の位置と特徴点Pfe_正常の位置との関係が変化したことを示す図である。図11に示すように、20xy年3月19日時点では、特徴点Pfe_異常の位置と特徴点Pfe_正常の位置とは、互いに離れており、両者は特徴量空間Prs上の異なる位置に配置されている。
しかしながら、20xy年3月20日に、特徴点Pfe_異常および特徴点Pfe_正常の分布(位置)に変化が発生した。そして、20xy年3月20日以降、例えば20xy年3月25日において、特徴点Pfe_異常の位置と特徴点Pfe_正常の位置とは、互いに大きく重なる分布となった。
そこで、PLC10の開発者は、特徴点Pfe_異常および特徴点Pfe_正常の分布に変化が発生した時点、および、その時点以降に、何らかの特異な事象が発生していないかを確認した。
図12は、図11の期間(具体的には、20xy年3月19日から20xy年3月22日まで)における、「超音波接合部分Ujpを形成する際に計測した電流Ipp」の特徴量であるIpp_medianの変化を示す図である。図12に示すように、20xy年3月20日の18時頃から、Ipp_medianが変化しているように見える。
図13は、図12と同様に、図11の期間における、「超音波接合部分Ujpを形成する際に計測したインピーダンスImp」の特徴量であるImp_medianの変化を示す図である。図13に示すように、20xy年3月20日の18時頃から、Imp_medianが変化しているように見える。
図14は、図12と同様に、図11の期間における、「超音波接合部分Ujpを形成する際に計測した周波数Fre」の特徴量であるFre_medianの変化を示す図である。図14に示すように、20xy年3月20日の18時頃から、Fre_medianが変化しているように見える。
ただし、図12、図13、および、図14に示すように、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々の時系列データを個別に見ていても、変化は分かりづらい。
PLC10の開発者は、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの内の少なくとも2つの組み合わせを用いる方が、変化をとらえやすいことを確認した。つまり、変化をとらえるには、特徴量空間Prsに、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより座標が決定される特徴点Pfeを、プロットするのが好適であることを確認した。特徴量空間Prsに特徴点Pfeをプロットすることにより、特徴点Pfeの分布(位置)の変化をとらえやすくなる。図11に示すように、超音波接合部分Ujpごとの(フレームごとの)特徴量に対応する特徴点Pfeを特徴量空間Prsにプロットすることにより、特徴点Pfe_異常の位置と特徴点Pfe_正常の位置との関係の変化を捉え、接合強度の低下を予兆できる。
(開発者が至った結論)
図15は、特徴量空間Prsにおける、特徴点Pfe_異常の位置と特徴点Pfe_正常の位置とが互いに異なることを示す図である。PLC10の開発者は、「超音波接合部分Ujpの接合強度が低下する」との事象の予兆を、超音波接合部分Ujpを形成する際に計測したインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの少なくとも2つを用いて、検知するとの技術思想に思い至った。特に、計測したインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの少なくとも2つを用いて、接合強度の低下事象の予兆を、検知するとの技術思想に思い至った。
具体的には、先ず、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々を次元とする空間を、「特徴量空間Prs」として設定する。次に、複数の特徴点Pfe_正常を特徴量空間Prsにプロットし、特に、特徴点Pfe_正常の集合である「正常特徴点群」を特徴量空間Prsにプロットする。特徴点Pfe_正常は、「正常」な超音波接合部分Ujpが形成された際のインピーダンスImp、電流Ipp、および、周波数Freの各々の特徴量であるImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより特定される点である。そして、特徴量空間Prsにおける正常特徴点群の分布領域を、「正常状態分布領域」として、予め定義(学習)しておく。
超音波接合部分Ujpを形成する際の計測結果(時系列データ)から得たImp_median、Ipp_median、および、Fre_medianにより特定される特徴点Pfeが、正常状態分布領域から外れたら、「接合強度の低下」の予兆と見なす。
(技術思想の適用)
これまでに図5から図15を用いて説明してきた技術思想に基づいて、PLC10の開発者は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測可能なPLC10を開発した。特に、PLC10の開発者は、接合装置20をスレーブ装置とするマスタスレーブ制御システム(制御システム1)におけるマスタ装置としてのPLC10として、上述の技術思想に基づく予測装置およびデータ生成装置を実現した。以下、PLC10についての理解を容易にするため、先ず、PLC10を含む制御システム1の概要を、図2を用いて説明する。
(制御システムの全体概要)
図2は、PLC10を含む制御システム1の全体概要を示す図である。制御システム1は、マスタ装置としてのPLC10と、マスタ装置にネットワーク(フィールドネットワーク40)を介して接続される1つ以上のスレーブ装置とを含むマスタスレーブ制御システムである。PLC10は、フィールドネットワーク40を介したデータ伝送を管理しているという意味で「マスタ装置」と呼ばれる。図2に例示する制御システム1(マスタスレーブ制御システム)には、スレーブ装置として、接合装置20と、接合装置20以外のスレーブ装置であるスレーブ装置70(1)およびスレーブ装置70(1)とが含まれている。
以下の説明において、スレーブ装置70について、スレーブ装置70(1)およびスレーブ装置70(1)の各々を区別する必要がある場合には、符号に「(1)」、「(2)」、「(3)」、・・・、「(n)」等の添え字を付して区別する。複数のスレーブ装置70の各々を特に区別する必要がない場合は単に「スレーブ装置70」と称する。
フィールドネットワーク40に複数のPLC10が接続される場合には、いずれか1つのPLC10がマスタ装置となり、残りのPLC10がスレーブ装置になる場合もある。また、PLC10、接合装置20、および、スレーブ装置70のいずれとも異なる制御主体がマスタ装置になってもよい。すなわち、「マスタ装置」および「スレーブ装置」は、フィールドネットワーク40上のデータ伝送の制御機能に着目して定義されるものであり、各装置間でどのような情報が送受信されるかについては、特に限定されない。
PLC10は、制御システム1の全体の制御を行う。具体的には、PLC10は、接合装置20から、接合装置20が超音波接合を実施している間に計測された各種の物理量を入力データとして取得する。また、PLC10は、接合装置20に対する制御内容を決定し、決定した制御内容に対応する制御データを、接合装置20に送信してもよい。さらに、PLC10は、スレーブ装置70を介して、センサなどの入力デバイスからの情報を入力データとして取得する。PLC10は、予め組み込まれたユーザプログラムに従って、取得した入力データを用いた演算処理を実行する。PLC10は、前記演算処理を実行して、アクチュエータなどの出力デバイスへの制御内容を決定し、その制御内容に対応する制御データを、スレーブ装置70を介して、出力デバイスへと出力する。
フィールドネットワーク40は、PLC10が受信し、またはPLC10が送信する各種データを伝送し、例えば、EtherCAT(登録商標)、PROFINET(登録商標)、MECHATROLINK(登録商標)−III、Powerlink、SERCOS(登録商標)−III、CIP Motionである。また、フィールドネットワーク40は、例えば、EtherNet/IP(登録商標)、DeviceNet、CompoNet(登録商標)などであってもよい。なお、以下では、フィールドネットワーク40上をデータフレームが順次転送されることで、PLC10とスレーブ装置(接合装置20およびスレーブ装置70)との間、または、複数のスレーブ装置の間でデータが送受信される制御システム1について説明を行う。
接合装置20は、PLC10をマスタ装置とするネットワーク(フィールドネットワーク40)におけるスレーブ装置であり、図3に例示する電極体200の集電箔群210と電極端子300とを、超音波振動によって超音波接合する。接合装置20は、ユーザによって設定されたパワーPow[W]に応じて、振動子Traに印加する電圧Vppと電流Ippとを制御しつつ、振動子Traに超音波振動を発生させて、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する。
また、接合装置20は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間の各種の物理量を計測することができ、少なくとも、以下の3つの物理量を、1フレームよりも十分に短い期間である所定のサンプリング周期で、繰り返し計測する。すなわち、接合装置20は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Fre[kHz]を、所定のサンプリング周期で繰り返し計測する。また、接合装置20は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流[A]の波高値(peak to peak)である電流Ippを、所定のサンプリング周期で繰り返し計測する。さらに、接合装置20は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間のインピーダンスImp[Ω]を、所定のサンプリング周期で繰り返し計測する。インピーダンスImpは、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出される。
接合装置20は、サンプリング周期で繰り返し計測した周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々を時系列に並べたデータ(時系列データ)を、所定の制御周期ごとに、PLC10へと出力する。所定の制御周期は、PLC10と接合装置20との間で予め決められている期間であり、例えば「1フレーム(frame)」である。前述の通り、「1フレーム」は、接合装置20が「集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する」処理を1回行うのに要する時間(周期)であり、つまり、接合強度が判定または予測されるべき超音波接合部分Ujpを1つ形成するのに要する時間である。ただし、「1制御周期」が「1フレーム」に一致することは必須ではなく、例えば、複数の「制御周期」が「1フレーム」に対応したり、「1制御周期」が複数の「フレーム」に対応してもよい。
つまり、接合装置20は、超音波接合部分Ujpを1つ形成する間に、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々をサンプリング周期で繰り返し計測する。そして、接合装置20は、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々について、「1フレーム分の複数の計測結果」を時系列に並べた時系列データを、制御周期ごとに繰り返し、つまり、フレームごとに繰り返し、PLC10へと出力する。したがって、フレームごとに接合装置20からPLC10へと送信されるデータには、超音波接合部分Ujpが1つ形成される間にサンプリング周期で繰り返し計測された、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の時系列データが含まれている。
ただし、接合装置20が、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間の周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々を計測することは必須ではない。周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々は、オシロスコープ等の、接合装置20とは異なる計測装置によって計測されてもよい。接合装置20とは異なる計測装置が、所定のサンプリング周期で繰り返し、超音波接合部分Ujpが1つ形成される間の周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々を計測し、計測結果の時系列データを、フレームごとにPLC10へと送信してもよい。すなわち、PLC10にとっては、超音波接合部分Ujpが1つ形成される間の周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の値を取得できればよく、これらの値の各々がどの装置によって計測されるかは、PLC10にとって問題とはならない。
検査装置30は、接合装置20により形成された超音波接合部分Ujpについて、ロットごとに一部の超音波接合部分Ujpを抜き取って引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。検査装置30は、実施した引っ張り試験の結果を、つまり、「ロットごとに抜き取った超音波接合部分Ujpの、接合強度が十分であるか否かについての判定結果」を、PLC10へと通知する。
例えば、検査装置30は、100個の超音波接合部分Ujpを1ロットの超音波接合部分Ujpとして、そのうちの任意の5個の超音波接合部分Ujpを抜き出して、引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。具体的には、検査装置30は、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujp(1−001)から(1−100)までの100個の超音波接合部分Ujpから、5個の超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)を抜き出す。「A」、「B」、「C」、「D」、「E」は、各々「001」から「100」のいずれかであり、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」は互いに異なる。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)の各々に対して引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)の各々に対する判定結果を、PLC10に通知する。
また、検査装置30は、ロット番号が「2」である超音波接合部分Ujp(2−001)から(2−100)までの100個の超音波接合部分Ujpから、5個の超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−B)、(2−C)、(2−D)、(2−E)を抜き出す。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−B)、(2−C)、(2−D)、(2−E)の各々に対して引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−B)、(2−C)、(2−D)、(2−E)の各々に対する判定結果を、PLC10に通知する。
同様に、検査装置30は、ロット番号が「m」である超音波接合部分Ujp(m−001)から(m−100)までの100個の超音波接合部分Ujpから、5個の超音波接合部分Ujp(m−A)、(m−B)、(m−C)、(m−D)、(m−E)を抜き出す。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(m−A)、(m−B)、(m−C)、(m−D)、(m−E)の各々に対して引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。検査装置30は、5個の超音波接合部分Ujp(m−A)、(m−B)、(m−C)、(m−D)、(m−E)の各々に対する判定結果を、PLC10に通知する。
スレーブ装置70は、PLC10をマスタ装置とするネットワーク(フィールドネットワーク40)における、接合装置20とは異なるスレーブ装置であり、例えば、デバイスとの通信を管理する通信カプラ等のデバイス通信管理ユニットである。スレーブ装置70は、フィールドネットワーク40に直接接続されるサーボドライバであってもよい。スレーブ装置70には、例えばセンサなどの入力デバイス、および、例えばアクチュエータなどの出力デバイスの少なくとも一方が接続されてもよい。すなわち、スレーブ装置70には、1つ以上のデバイス(入力デバイスおよび出力デバイスの少なくとも一方)が、通信ケーブルを介して、接続されてもよい。
開発支援装置50は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルである通信ケーブルを介して、PLC10に接続する。開発支援装置50は、PLC10で実行されるユーザプログラム、および、制御システム1に対する各種の設定情報などを生成するための情報処理装置である。
開発支援装置50は、例えば、PLC10の開発環境を提供し、ユーザが、制御目的(たとえば、対象のラインおよびプロセス)に応じてユーザプログラムを作成する(作成・編集する)ための環境を提供する。ユーザは、開発支援装置50の提供する開発環境(プログラミングツール)を用いて、PLC10で実行させる制御プログラム(ユーザプログラム)のプログラムコードを作成する。開発支援装置50は、PLC10で実行させる制御プログラムをユーザが作成・編集するのを支援するため、デバック機能およびシミュレーション機能を有していてもよい。
また、開発支援装置50は、例えば、PLC10による状態値の取得(入力リフレッシュ)のタイミング、および、PLC10による出力値の更新(出力リフレッシュ)のタイミングの算出および設定を実行してもよい。開発支援装置50は、PLC10の運転状態、および各種データの値などを監視してもよい。
つまり、開発支援装置50は、PLC10のプログラミング、コンフィグレーション(構成設定)、デバッグ、メンテナンス、モニタリング機能の他、3Dモーションシミュレーションにも対応した統合開発環境を提供する装置であってもよい。また、開発支援装置50は、スレーブ装置70のための各種のパラメータの設定および調整を行ってもよい。
開発支援装置50は、典型的には、汎用のコンピュータで構成される。例えば、開発支援装置50で実行される情報処理プログラムは、不図示のCD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)に格納されて流通してもよい。このCD−ROMに格納されたプログラムは、図示しないCD−ROM駆動装置によって読取られ、開発支援装置50のハードディスクなどへ格納される。あるいは、開発支援装置50は、上位のホストコンピュータなどから、ネットワークを通じて、前記DVD−ROMに格納されたプログラムと同様のプログラムをダウンロードするように構成してもよい。
図2に示すように、HMI(Human Machine Interface)60が、通信ケーブルを介して、PLC10に接続されてもよい。HMI60は、人間と機械とが情報をやり取りするための手段であり、具体的には、人間が機械を操作したり(機械に指示を与えたり)、機械が現在の状態・結果を人間に知らせたりする手段である。HMI60について、人間が機械に指示を与える手段としてはスイッチ、ボタン、ハンドル、ダイヤル、ペダル、リモコン、マイク、キーボード、マウスなどが含まれ、機械が現在の状態・結果等に係る情報を人間に伝える手段としては液晶画面、メーター、ランプ、スピーカーなどが含まれる。
HMI60は、表示部と、操作部と、PLC10と通信する通信部と、各部を制御する制御部と、を備える。HMI60は、操作部へのユーザ操作に応じて、制御システム1(例えば、PLC10)の各種の設定を変更することができる。また、HMI60の表示部は、制御システム1についての所定の情報を表示する。
(予測装置およびデータ生成装置の概要)
これまで、図2を用いて、制御システム1の概要を説明してきた。次に、PLC10について、その詳細を説明する。図1等を用いて以下に詳細を説明するPLC10について、最初に概要を整理しておけば、以下の通りである。
すなわち、データ生成装置としてのPLC10は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するための予測基準データ123を生成するデータ生成装置である。データ生成装置としてのPLC10は、特徴量取得部130と、検査結果取得部160(強度取得部)と、生成部180と、を備えている。
特徴量取得部130は、(A)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Freについての統計的特徴量、(B)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippについての統計的特徴量、および、(C)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出されるインピーダンスImpについての統計的特徴量の3つの特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量を取得する。
検査結果取得部160は、振動子Traが発生させた超音波振動により超音波接合された、集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果を取得する。すなわち、検査結果取得部160は、「特徴量取得部130により前記特徴量が取得された超音波接合」によって形成された超音波接合部分Ujpについて、その接合強度が十分か否かの判定結果を取得する。
生成部180は、予測基準データ123を生成する。予測基準データ123において、特徴量取得部130により取得された前記少なくとも2つの特徴量と、検査結果取得部160により取得された前記判定結果と、は対応付けられている。すなわち、特徴量取得部130により取得された「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量」と、検査結果取得部160により取得された前記判定結果とは、予測基準データ123において対応付けられている。特に、前記少なくとも2つの特徴量の各々を次元とする空間(特徴量空間Prs)における、特徴量取得部130により取得された前記少なくとも2つの特徴量により座標が決定される特徴点Pfeの位置と、前記判定結果とが、予測基準データ123において対応付けられている。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量と、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果と、が対応付けられた、予測基準データ123を生成する。
前述の通り、PLC10の開発者は、実験により、超音波接合部分Ujpの接合強度に、振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Fre、振動子Traに印加された電流Ipp、振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出されるインピーダンスImpが強く影響していることを見出した。
そのため、データ生成装置としてのPLC10は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を高精度に予測可能な予測基準データ123を生成することができる。
また、振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Freの値、振動子Traに印加された電流Ippの値、振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出されるインピーダンスImpの値は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する際に容易に計測可能な値である。つまり、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量は、技術的にも費用的にも、容易に計測可能かつ取得可能なデータである。
そのため、データ生成装置としてのPLC10は、技術的にも費用的にも容易に取得可能なデータを利用して超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する、予測基準データ123を生成することができる。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測可能な予測基準データ123を生成することができるとの効果を奏する。
予測装置としてのPLC10は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する予測装置であり、特徴量取得部130と、予測部140とを備えている。予測部140は、特徴量空間Prsにおける特徴点Pfeの位置により、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。特徴量空間Prsとは、特徴量取得部130により取得される「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量」の各々を次元とする空間である。特徴点Pfeとは、特徴量取得部130により取得された「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量」により、特徴量空間Prsにおける座標が決定される点である。
前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
予測装置としてのPLC10は、超音波接合部分Ujpの接合強度に強く影響する、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」のうちの少なくとも2つについての特徴量を用いることにより、超音波接合部分Ujpの接合強度を高精度に予測することできる。
また、予測装置としてのPLC10は、技術的にも費用的にも、容易に計測可能かつ取得可能な「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」のうちの少なくとも2つについての特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測することできる。
したがって、予測装置としてのPLC10は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測することができるとの効果を奏する。
特徴量取得部130は前記3つの特徴量を全て取得するのが望ましく、つまり、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量の全てを取得するのが望ましい。
また、生成部180は、前記3つの特徴量の各々を次元とする特徴量空間Prsにおける、特徴量取得部130により取得された前記3つの特徴量に対応する特徴点Pfeの位置と、検査結果取得部160により取得された前記判定結果と、が対応付けられた、予測基準データ123を生成するのが望ましい。
同様に、予測部140は、前記3つの特徴量の各々を次元とする特徴量空間Prsにおける、特徴量取得部130により取得された前記3つの特徴量に対応する特徴点Pfeの位置により、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するのが望ましい。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の統計的特徴量と、前記定結果とが対応付けられた、予測基準データ123を生成する。
また、前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の統計的特徴量を全て用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
ここで、前述の通り、超音波接合部分Ujpの接合強度には、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」が強く影響する。また、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」は、技術的にも費用的にも、容易に計測可能かつ取得可能である。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測可能な予測基準データ123を生成することができるとの効果を奏する。
また、予測装置としてのPLC10は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測することができるとの効果を奏する。
PLC10において、「周波数Freについての統計的特徴量」は、「集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に所定の周期(例、サンプリング周期)で繰り返し計測された複数の周波数Fre」の中央値であるFre_medianである。また、「電流Ippについての統計的特徴量」は、「集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間にサンプリング周期で繰り返し計測された複数の電流Ipp」の中央値であるIpp_medianである。さらに、「インピーダンスImpについての統計的特徴量」は、「集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間にサンプリング周期で繰り返し計測された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出された複数のインピーダンスImp」の中央値であるImp_medianである。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間にサンプリング周期で繰り返し計測された複数の、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の中央値という3つの特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量と、前記判定結果と、が対応付けられた、予測基準データ123を生成する。具体的には、生成部180は、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量と、前記判定結果と、が対応付けられた予測基準データ123を生成する。
また、前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間にサンプリング周期で繰り返し計測された複数の、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの中央値という3つの特徴量のうち、少なくとも2つを用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。具体的には、予測部140は、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。
ここで、例えば、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の値に異常が発生した場合であっても、複数の周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の中央値を用いることにより、異常の影響を抑制することができる。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、複数の、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の中央値の少なくとも2つが前記判定結果に対応付けられた、高精度な予測を安定的に実現する予測基準データ123を生成できるとの効果を奏する。
また、予測装置としてのPLC10は、複数の、周波数Fre、電流Ipp、インピーダンスImpの各々の中央値の少なくとも2つを用いることによって、安定して高精度な予測を行うことができるとの効果を奏する。
これまでに概要を説明したPLC10について、次に、その構成の詳細について図1を参照しながら説明し、その後、PLC10が実行する処理について、図4を参照しながら説明していく。
(PLCの詳細)
図1は、制御システム1に含まれる、PLC10の要部構成を示すブロック図である。図1に示すように、PLC10は、機能ブロックとして、時系列データ取得部110、記憶部120、特徴量取得部130、予測部140、第2処理部150、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、第1処理部190を備える。
PLC10は、上述の各機能ブロックに加えて、ユーザプログラムに従って入力データを用いた演算処理を実行する演算部、実行した演算処理により決定した制御内容に対応する制御データを出力する出力部などを備えていてもよい。しかしながら、記載の簡潔性を担保するため、本実施の形態に直接関係のない構成は、説明およびブロック図から省略している。ただし、実施の実情に則して、PLC10は、当該省略された構成を備えてもよい。
時系列データ取得部110、特徴量取得部130、予測部140、第2処理部150、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、第1処理部190は、例えば、CPU(central processing unit)等が、ROM(read only memory)、NVRAM(non-Volatile random access memory)等で実現された記憶装置(記憶部120)に記憶されているプログラムを不図示のRAM(random access memory)等に読み出して実行することで実現できる。以下に先ず、PLC10における時系列データ取得部110、特徴量取得部130、予測部140、第2処理部150、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、第1処理部190について説明する。
以下では、記載の簡潔性を担保するため、PLC10が、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの3つの特徴量の全てを用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する例を説明する。しかしながら、PLC10にとって、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測するために、上述の3つの特徴量の全てを用いることは必須ではない。PLC10は、上述の3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量を用いることにより、超音波接合部分Ujpの接合強度を高精度に予測することができる。
PLC10は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測し、また、接合強度の低下が発生する予兆を検出する第2処理部150と、第2処理部150による予測および検知のための予測基準データ123を生成する第1処理部190とを含む。第1処理部190が実行する、予測基準データ123を生成するための一連の処理を「第1処理」とも称し、第2処理部150が実行する、第1処理により生成された予測基準データ123を用いた、接合強度の予測に係る一連の処理を「第2処理」とも称する。
(第2処理)
第2処理部150は、予測処理および検知処理に係る一連の処理を実行し、時系列データ取得部110、特徴量取得部130、予測部140、および、記憶部120の時系列データ121、特徴量データ122、予測基準データ123を含んでいる。
(時系列データ取得)
時系列データ取得部110は、接合装置20から、所定の周期(制御周期、フレーム)で繰り返し、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データが格納されたデータセットを受信する。制御周期は、予め、PLC10について設定されており、つまり、制御システム1について設定されている。
時系列データ取得部110は、取得したフレームごとの時系列データを、つまり、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ」を、記憶部120に、時系列データ121として格納する。前述の通り、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ」は、「超音波接合部分Ujpが1つ形成される間に周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々について計測した、複数のサンプリング結果を時系列に並べたデータ」である。つまり、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ」は、1つの超音波接合部分Ujpに対応する。例えば、或るフレームF(n)の「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ」である時系列データ121(n)は、或るフレームF(n)において形成された超音波接合部分Ujp(n)に対応する。
(特徴量取得)
特徴量取得部130は、記憶部120を参照して、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ121を取得する。特徴量取得部130は、取得した周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ121から、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、フレームごとの統計量を算出する。例えば、特徴量取得部130は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の、1フレーム分の時系列データ121について、各々の中央値(メジアン)を算出する。
具体的には、特徴量取得部130は、取得した周波数Freの1フレーム分の時系列データ121_Freについて、その中央値であるFre_medianを算出する。また、特徴量取得部130は、取得した電流Ippの1フレーム分の時系列データ121_Ippについて、その中央値であるIpp_medianを算出する。同様に、特徴量取得部130は、取得したインピーダンスImpの1フレーム分の時系列データ121_Impについて、その中央値であるImp_medianを算出する。
特徴量取得部130は、フレームごとの周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ121について算出した統計量を、フレームごとの周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122として、記憶部120に格納する。つまり、特徴量取得部130は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の1フレーム分の時系列データ121から、フレームごとの周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122を取得する。
具体的には、特徴量取得部130は、1フレーム分の時系列データ121_Fre、121_Ipp、および、121_Impの各々から、その1フレームに対応するFre_median、Ipp_median、および、Imp_medianを取得する。特徴量取得部130は、取得したFre_median、Ipp_median、および、Imp_medianの各々を、フレームごとの周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122として、記憶部120に格納する。「1フレーム」は「1つの超音波接合部分Ujp」に対応するから、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」は、「1つの超音波接合部分Ujp」に対応する。例えば、或るフレームF(n)の時系列データ121(n)から算出された、或るフレームF(n)の特徴量データ122(n)は、或るフレームF(n)において形成された超音波接合部分Ujp(n)に対応する。
(予測および検知)
予測部140は、記憶部120を参照して、「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」を取得する。具体的には、予測部140は、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianの各々」を取得する。また、予測部140は、記憶部120を参照して、予測基準データ123を取得する。
予測部140は、取得した「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、予測基準データ123とによって、取得した特徴量データ122に対応する超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。具体的には、予測部140は、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」と、予測基準データ123とから、対応する超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測する。
例えば、予測部140は、或るフレームF(n)の特徴量データ122(n)と、予測基準データ123とによって、或るフレームF(n)において形成された超音波接合部分Ujp(n)の接合強度を予測する。すなわち、予測部140は、「或るフレームF(n)の、Fre_median(n)、Ipp_median(n)、および、Imp_median(n)」と、予測基準データ123とから、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分であるかを予測する。
また、予測部140は、「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、予測基準データ123とによって、接合強度の低下が発生する予兆を検出する。具体的には、予測部140は、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」と、予測基準データ123とから、超音波接合部分Ujpの接合強度の低下が発生する予兆を検出する。
予測部140は、Imp_median、Ipp_median、および、Fre_medianの各々を次元とする特徴量空間Prsに、フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、特徴点Pfeをプロットする。「フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、特徴点Pfe」は、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」により、特徴量空間Prs上の座標が決定される点である。つまり、「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」は、「フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、特徴点Pfe」に対応する。言い換えれば、特徴量空間Prs上にプロットされる複数の特徴点Pfeの各々は、複数の超音波接合部分Ujpの各々に対応し、例えば、特徴点Pfe(n)は、フレームF(n)の特徴量データ122(n)を示し、超音波接合部分Ujp(n)に対応する。
予測部140は、「フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、特徴点Pfe」の、特徴量空間Prsにおける位置によって、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測する。また、予測部140は、或る超音波接合部分Ujpについて「接合強度が十分でない」と予測すると、超音波接合部分Ujpの接合強度が低下する予兆を検知したとする。
ここで、予測部140が予測に用いる特徴量空間Prsには、「正常」との判定結果が付与された(対応付けられた)特徴点Pfe’_正常、および、「異常」との判定結果が付与された特徴点Pfe’_異常の少なくとも一方が予めプロットされている。特徴点Pfe’_正常は、「正常」との判定結果が付与された超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfeであり、特徴点Pfe’_異常は、「異常」との判定結果が付与された超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfeである。特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常は、図5から図15を用いて説明した「PLC10の開発者が行った検討および検証」に際して利用された、特徴点Pfe_正常および特徴点Pfe_異常とは、必ずしも一致しないことに留意すべきである。
予測部140は、「フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、特徴点Pfe」と、「特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常の少なくとも一方」との位置関係から、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測する。予測部140による、接合強度の予測処理、および、接合強度が低下する予兆の検出処理について、詳細は後述する。
予測部140は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分でないと予測し、または、接合強度の低下が発生する予兆を検出すると、予測結果または検出結果を外部に出力して、ユーザに予測結果または検出結果を通知する(警告する)。
(第1処理)
第1処理部190は、予測基準データ123を生成するデータ生成処理に係る一連の処理を実行し、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、記憶部120の検査結果データ124、対応付けデータ125を含んでいる。
(強度取得)
検査結果取得部160は、検査装置30から、「時系列データ取得部110により、形成の際の周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpが取得された超音波接合部分Ujp」の接合強度に対して検査装置30が実施した判定の結果を取得する。つまり、検査結果取得部160は、検査装置30から、「対応する特徴量データ122が記憶部120に格納されている、1ロット分の超音波接合部分Ujp」に対して、抜き取り検査として実施された「接合強度が十分であるか否か」の判定結果を取得する。
例えば、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujp(1−001)から(1−100)までの超音波接合部分Ujpから、超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)を抜き出される。検査装置30は、抜き出された超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)の各々に対して引っ張り試験を行い、接合強度が十分であるか否かを判定する。検査結果取得部160は、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujpについての判定結果として、超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)の各々に対する判定結果を取得する。この場合、超音波接合部分Ujp(1−001)から(1−100)までの各々の超音波接合部分Ujpの形成の際の周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpが、時系列データ取得部110により取得されている。つまり、超音波接合部分Ujp(1−001)から(1−100)までの各々の超音波接合部分Ujpの形成の際の周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの時系列データ121および特徴量データ122が、記憶部120に格納されている。
また、検査結果取得部160は、例えば、ロット番号が「2」の超音波接合部分Ujpについての判定結果として、超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−B)、(2−C)、(2−D)、(2−E)の各々に対する判定結果を取得する。この場合、ロット番号が「2」の超音波接合部分Ujp(2−001)から(2−100)までの各々の超音波接合部分Ujpの形成の際の周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの時系列データ121および特徴量データ122が、記憶部120に格納されている。
同様に、検査結果取得部160は、例えば、ロット番号が「m」の超音波接合部分Ujpについての判定結果として、超音波接合部分Ujp(m−A)、(m−B)、(m−C)、(m−D)、(m−E)の各々に対する判定結果を取得する。この場合、ロット番号が「m」の超音波接合部分Ujp(m−001)から(m−100)までの各々の超音波接合部分Ujpの形成の際の周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの時系列データ121および特徴量データ122が、記憶部120に格納されている。
検査結果取得部160は、検査装置30から取得した判定結果を、検査結果データ124として記憶部120に格納する。例えば、検査結果取得部160は、超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)の各々に対する判定結果を、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujpについての検査結果データ124として、記憶部120に格納する。また、検査結果取得部160は、超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−B)、(2−C)、(2−D)、(2−E)の各々に対する判定結果を、ロット番号が「2」の超音波接合部分Ujpについての検査結果データ124として、記憶部120に格納する。同様に、検査結果取得部160は、超音波接合部分Ujp(m−A)、(m−B)、(m−C)、(m−D)、(m−E)の各々に対する判定結果を、ロット番号が「m」の超音波接合部分Ujpについての検査結果データ124として、記憶部120に格納する。
(特徴量と判定結果との対応付け)
対応付け部170は、記憶部120を参照して、ロットごとの検査結果データ124を取得し、つまり、ロットごとに、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かの判定結果を取得する。対応付け部170は、取得した「ロットごとの検査結果データ124」を用いて、ロットごとに、同じロットの全ての超音波接合部分Ujpに対して、「正常」または「異常」の判定結果を対応付ける。
対応付け部170は、例えば、ロットごとに、抜き取った超音波接合部分Ujpの総数に対する、接合強度が十分であると判定された超音波接合部分Ujpの割合が、所定の正常値以上であると、「そのロットの全ての超音波接合部分Ujpは正常である」とする。具体的には、対応付け部170は、抜き取った超音波接合部分Ujpの全てが「接合強度が十分である」と判定された場合に、「そのロットの全ての超音波接合部分Ujpは正常である」とする。「所定の正常値」はユーザが設定できてもよい。
対応付け部170は、例えば、ロットごとに、抜き取った超音波接合部分Ujpの総数に対する、接合強度が十分でないと判定された超音波接合部分Ujpの割合が、所定の異常値以上であると、「そのロットの全ての超音波接合部分Ujpは異常である」とする。具体的には、対応付け部170は、抜き取った超音波接合部分Ujpの半数以上が「接合強度が十分でない」と判定された場合に、「そのロットの全ての超音波接合部分Ujpは異常である」とする。「所定の異常値」はユーザが設定できてもよい。また、対応付け部170は、「正常」との判定結果を対応付けたロット以外のロットには、「異常」との判定結果を対応付けてもよい。
例えば、超音波接合部分Ujp(1−A)、(1−B)、(1−C)、(1−D)、(1−E)が全て正常と判定されていると、対応付け部170は、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujp(1−001)から(1−100)までの全ての超音波接合部分Ujpについて、「正常」との判定結果を対応付ける。超音波接合部分Ujp(2−A)、(2−D)が正常であり、超音波接合部分Ujp(2−B)、(2−C)、(2−E)が異常であると、対応付け部170は、ロット番号が「2」の超音波接合部分Ujp(2−001)から(2−100)までの全ての超音波接合部分Ujpについて、「異常」との判定結果を対応付ける。
ここで、前述の通り、或るフレームF(n)の時系列データ121(n)から算出された、或るフレームF(n)の特徴量データ122(n)は、或るフレームF(n)において形成された超音波接合部分Ujp(n)に対応する。つまり、超音波接合部分Ujp(n)に対する「正常」または「異常」の判定結果は、フレームF(n)に対する「正常」または「異常」の判定結果である。
そこで、対応付け部170は、記憶部120を参照して、「正常」または「異常」の判定結果が対応付けられたロットに含まれる超音波接合部分Ujpの各々の「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」を取得する。つまり、対応付け部170は、「正常」または「異常」の判定結果が対応付けられたロットにおける超音波接合部分Ujpの各々が形成されたフレームの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」を取得する。具体的には、対応付け部170は、「正常」または「異常」の判定結果が対応付けられたロットにおける超音波接合部分Ujpの各々が形成されたフレームの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianの各々」を取得する。
対応付け部170は、取得した「或るフレームの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、「その或るフレームにおいて形成された超音波接合部分Ujpについての判定結果」と、を対応付ける。例えば、ロット番号が「1」の超音波接合部分Ujpの全てについて「正常」との判定結果を対応付けると、対応付け部170は、ロット番号が「1」である超音波接合部分Ujpの各々に対応する特徴量データ122に、「正常」との判定結果を対応付ける。また、ロット番号が「2」の超音波接合部分Ujpの全てについて「異常」との判定結果を対応付けると、対応付け部170は、ロット番号が「2」である超音波接合部分Ujpの各々に対応する特徴量データ122に、「異常」との判定結果を対応付ける。
対応付け部170は、「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、「フレームごと(つまり、超音波接合部分Ujpごと)の判定結果」とを対応付けたデータを、記憶部120に、対応付けデータ125として格納する。具体的には、対応付け部170は、「フレームごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianの組み合わせ」と、「フレームごとの判定結果」とを対応付けた、対応付けデータ125を、記憶部120に格納する。
対応付け部170による上述の処理は、「特徴量空間Prsに、特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常をプロットする」処理と捉えることもできる。すなわち、対応付け部170は、「『正常』との判定結果が付与されたロットの超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfe」を、「特徴点Pfe’_正常」として、特徴量空間Prsにプロットする。対応付け部170は、「『異常』との判定結果が付与されたロットの超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfe」を、「特徴点Pfe’_異常」として、特徴量空間Prsにプロットする。言い換えれば、対応付けデータ125は、「特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常の少なくとも一方がプロットされた特徴量空間Prs」を示すデータとも捉えることができる。
(生成(予測基準データの生成))
生成部180は、記憶部120を参照して、「フレームごとに(つまり、超音波接合部分Ujpごとに)、特徴量データ122(つまり、特徴点Pfe)と、判定結果(正常または異常)とが対応付けられた」対応付けデータ125を取得する。生成部180は、取得した対応付けデータ125から、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するためのデータである予測基準データ123を生成する。
生成部180は、フレームごとの(つまり、超音波接合部分Ujpごとの)対応付けデータ125を複数用いて、例えば、特徴点Pfeのスコアを算出する予測基準データ123を生成する。また、生成部180は、対応付けデータ125を用いて、特徴量空間Prsに正常カテゴリ部分空間Ssnが設定された予測基準データ123を生成する。生成部180が生成する予測基準データ123について、詳細は後述する。生成部180は、生成した予測基準データ123を記憶部120に格納する。
(記憶部)
記憶部120は、PLC10が使用する各種データを格納する記憶装置である。なお、記憶部120は、PLC10が実行する(1)制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)PLC10が有する各種機能を実行するためのアプリケーションプログラム、および、(4)該アプリケーションプログラムを実行するときに読み出す各種データを非一時的に記憶してもよい。上記の(1)〜(4)のデータは、例えば、ROM(read only memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)、HDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置に記憶される。PLC10は、図示しない一時記憶部を備えていてもよい。一時記憶部は、PLC10が実行する各種処理の過程で、演算に使用するデータおよび演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリであり、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される。どのデータをどの記憶装置に記憶するのかについては、PLC10の使用目的、利便性、コスト、または、物理的な制約等から適宜決定される。記憶部120はさらに、時系列データ121、特徴量データ122、予測基準データ123、検査結果データ124、および、対応付けデータ125を格納している。
時系列データ121は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々についての複数のサンプリング結果が時系列で並べられた、フレームごとの、つまり、超音波接合部分Ujpごとの、データである。前述の通り、超音波接合部分Ujpの形成の際に、サンプリング周期で繰り返し、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の値が計測され、その計測結果が時系列で並べられたデータが、フレームごとの時系列データ121である。
特徴量データ122は、フレームごとの時系列データ121について算出した、フレームごとの統計量を示すデータである。特徴量データ122は、例えば、「フレームごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ121」の中央値(メジアン)を示すデータである。具体的には、特徴量データ122は、フレームごとの周波数Freの時系列データ121_Freの中央値であるFre_medianと、フレームごとの電流Ippの時系列データ121_Ippの中央値であるIpp_medianと、フレームごとのインピーダンスImpの時系列データ121_Impの中央値であるImp_medianと、を含む。
予測基準データ123は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するためのデータであり、特に、「各フレームの特徴量データ122」によって、「各フレームにおいて形成された超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する」ためのデータである。具体的には、予測基準データ123は、「各フレームの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」によって、「各フレームにおいて形成された超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する」ためのデータである。言い換えれば、予測基準データ123は、「特徴量空間Prsにおける特徴点Pfeの位置によって、特徴点Pfeに対応する超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測する」ためのデータである。
例えば、予測基準データ123は、「超音波接合部分Ujp(n)を形成した際の時系列データ(n)に対応する特徴量データ122(n)」によって、「形成された超音波接合部分Ujp(n)の接合強度を予測する」ためのデータである。つまり、予測基準データ123は、「フレームF(n)の、Fre_median(n)、Ipp_median(n)、および、Imp_median(n)」によって、「フレームF(n)において形成された超音波接合部分Ujp(n)の接合強度を予測する」ためのデータである。予測基準データ123は、「特徴量空間Prsにおける特徴点Pfe(n)の位置によって、特徴点Pfe(n)に対応する超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分であるか否かを予測する」ためのデータである。
詳細は後述するが、予測基準データ123は、例えば、特徴点Pfeの、特徴量空間Prsにおける位置から、特徴点Pfeについて、特徴点Pfeに対応する超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かの指標となるスコアを算出するためのデータである。また、予測基準データ123は、例えば、正常カテゴリ部分空間Ssnが設定された特徴量空間Prsを示すデータである。
予測基準データ123において、例えば、ロット番号が「1」から「m」までの複数の超音波接合部分Ujpの各々の接合強度に係る判定結果と、これら複数の超音波接合部分Ujpの各々に対応する特徴量データ122とが対応付けられている。すなわち、生成部180は、ロット番号が「1」から「m」までの複数の超音波接合部分Ujpの各々の接合強度に係る判定結果と、これら複数の超音波接合部分Ujpの各々に対応する特徴量データ122とから、予測基準データ123を生成する。そして、第2処理部150(特に、予測部140)は、ロット番号が「m+1」の超音波接合部分Ujp(m+1、n)に対応する特徴量データ122(m+1、n)と、予測基準データ123とから、超音波接合部分Ujp(m+1、n)の接合強度を予測する。具体的には、予測部140は、「超音波接合部分Ujp(m+1、n)に対応する、Fre_median(m+1、n)、Ipp_median(m+1、n)、および、Imp_median(m+1、n)」と、予測基準データ123とから、超音波接合部分Ujp(m+1、n)の接合強度を予測する。
検査結果データ124は、「検査装置30がロットごとの抜き取り検査として実施した引っ張り試験の結果」を示すデータであり、「ロットごとに抜き取られた超音波接合部分Ujpの、接合強度に対する判定結果(接合強度が十分であるか否か)」を示す。
対応付けデータ125は、「超音波接合部分Ujpごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、「超音波接合部分Ujpごとの、接合強度に係る判定結果」とが対応付けられたデータである。具体的には、「超音波接合部分Ujpごとの、Fre_median、Ipp_median、および、Imp_medianの組み合わせ(つまり、特徴点Pfe)」と、「超音波接合部分Ujpごとの判定結果」とが対応付けられたデータである。前述の通り、対応付けデータ125は、「特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常の少なくとも一方がプロットされた特徴量空間Prs」を示すデータとも捉えることができる。
(予測処理および予測基準データの詳細)
前述の通り、生成部180は、「超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測し、接合強度の低下が発生する予兆を検出する」ためのデータである予測基準データ123を生成する。また、予測部140は、予測基準データ123を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測し、接合強度の低下が発生する予兆を検出する。
具体的には、生成部180は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを設定する予測基準データ123を生成し、または、正常カテゴリ部分空間Ssnが設定された特徴量空間Prsを、予測基準データ123として生成する。また、予測部140は、予測基準データ123を用いて算出したスコアと所定の閾値とを比較して、または、特徴点Pfeが正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否かにより、接合強度を予測し、また、接合強度の低下が発生する予兆を検出する。以下に、「スコアを用いた予測」および「正常カテゴリ部分空間を用いた予測」の各々について、その詳細を説明する。
(1.スコアを用いた予測)
生成部180は、例えば、特徴量空間Prsにおける各点について、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを設定する、予測基準データ123を生成する。予測基準データ123は、例えば、図15に示す特徴量空間Prsにおける各点について、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを設定する。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、特徴量空間Prsにおける各点について、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを設定する、予測基準データ123を生成する。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、「特徴量空間Prsにおける特徴点Pfeの位置により、特徴点Pfeに対応する超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを算出する予測基準データ123」を生成できるとの効果を奏する。つまり、データ生成装置としてのPLC10は、超音波接合部分Ujpの接合強度を、二値(正常か否か)よりも大きな多値によって表現可能な前記スコアとして算出する予測基準データ123を生成でき、接合強度に対する多値的な評価が可能となる。
スコアを算出する予測基準データ123を利用することにより、例えば、ユーザによって設定された所定の閾値と前記スコアとを比較して、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの予測を行うことが可能となる。
予測部140は、例えば、特徴量取得部130により取得された特徴量データ122(n)に対応する特徴点Pfe(n)の、特徴量空間Prsにおける位置により、特徴点Pfe(n)のスコアを算出する。そして、予測部140は、算出したスコアと所定の閾値とを比較して、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かを予測する。
予測部140は、「特徴量空間Prsにおける各点について、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを設定する」予測基準データ123を用いて、特徴点Pfe(n)のスコアを算出する。予測部140は、算出したスコアと所定の閾値とを比較して、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かを予測する。
前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、特徴量空間Prsにおける特徴点Pfeの位置により、特徴点Pfeのスコアを算出し、算出したスコアと前記所定の閾値とを比較して、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
したがって、予測装置としてのPLC10は、特徴点Pfeの位置により算出したスコアと前記所定の閾値とを比較するというシンプルな判定方法により、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを高精度に予測することができるとの効果を奏する。
ここで、前記所定の閾値は、ユーザによって設定されてもよく、予測装置としてのPLC10は、ユーザによって設定された前記所定の閾値を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測してもよい。
特に、生成部180は、教師データとしての対応付けデータ125に対する機械学習により構築された予測モデルとして、予測基準データ123を生成するのが望ましい。教師データとしての対応付けデータ125は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量と、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果とが対応付けられたデータである。すなわち、対応付けデータ125は、「超音波接合部分Ujpごとの、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122」と、「超音波接合部分Ujpごとの、接合強度に係る判定結果」とが対応付けられた教師データである。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、教師データとしての対応付けデータ125に対する機械学習により構築された予測モデルとして、予測基準データ123を生成する。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、教師データとしての対応付けデータ125に対する機械学習により、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するための高精度な予測基準データ123を生成することができるとの効果を奏する。
また、予測部140は、特徴量取得部130により取得された、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量を、予測モデルとしての予測基準データ123に入力する。そして、予測部140は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量が入力された予測モデルとしての予測基準データ123の出力から超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量を入力した、予測モデルとしての予測基準データ123の出力から、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。ここで、予測モデルとしての予測基準データ123は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量と超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果とが対応付けられた教師データとしての対応付けデータ125に対する機械学習により生成されている。
したがって、予測装置としてのPLC10は、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量を入力とし、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを出力とする予測モデルとしての予測基準データ123を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを高精度に予測することができるとの効果を奏する。
例えば、予測部140は、特徴量取得部130により取得された「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」に対して、つまり、特徴点Pfeに対して、「Isolation Forest」等のアルゴリズムを適用してもよい。「Isolation Forest」は、異常検知アルゴリズムの一種であり、「I−Forest」とも略記される。予測部140は、特徴点Pfeに対して、I−Forestを適用することにより、「超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコア」を算出する。予測部140は、算出したスコアと前記所定の閾値とを比較して、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
(2.正常カテゴリ部分空間を用いた予測)
図16は、特徴量空間Prsを正常カテゴリ部分空間Ssnと異常カテゴリ部分空間Ssaとに分割する超平面Hypを示す図である。例えば、データ生成装置としてのPLC10は、超平面Hypが設定された特徴量空間Prsを、予測基準データ123として生成し、予測装置としてのPLC10は、このような予測基準データ123を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。
すなわち、生成部180は、例えば、特徴量空間Prsに、接合強度が十分であるとの判定結果に対応付けられた特徴点Pfe’_正常のみを含む部分空間(図16の正常カテゴリ部分空間Ssn)が設定された、予測基準データ123を生成する。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10は、特徴量空間Prsに、正常カテゴリ部分空間Ssnが設定された、予測基準データ123を生成する。
したがって、データ生成装置としてのPLC10は、「『特徴点Pfeの位置が、正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否か』というシンプルな判定基準によって接合強度が十分か否かを高精度に予測可能な予測基準データ123」を生成できるとの効果を奏する。
予測部140は、例えば、特徴量取得部130により取得された特徴量データ122(n)に対応する特徴点Pfe(n)の位置が、正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否かによって、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かを予測する。
前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10は、「特徴点Pfe(n)の位置が、正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否か」によって、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かを予測する。
したがって、予測装置としてのPLC10は、「特徴点Pfe(n)の位置が、正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否か」というシンプルな判定基準を用いて、超音波接合部分Ujp(n)の接合強度が十分か否かを高精度に予測することができるとの効果を奏する。
ここで、生成部180は、ユーザ操作を受け付けて、特徴量空間Prsにおける正常カテゴリ部分空間Ssnを設定してもよい。例えば、生成部180は、検査装置30による引っ張り試験によって「接合強度が十分である」と判定された超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfe’_正常の、特徴量空間Prsにおける位置を、表示装置等に表示して、ユーザに示してもよい。以下の説明において、「接合強度が十分である」と判定された超音波接合部分Ujpは、「高強度接合部分Ujp_h」とも称する。特に、生成部180は、各々が「接合強度が十分である」と判定された複数の超音波接合部分Ujpに対応する、つまり、複数の高強度接合部分Ujp_hに対応する、複数の特徴点Pfe’_正常の各々の、特徴量空間Prsにおける位置を、ユーザに示してもよい。
同様に、生成部180は、検査装置30による引っ張り試験によって「接合強度が十分でない」と判定された超音波接合部分Ujpに対応する特徴点Pfe’_異常の、特徴量空間Prsにおける位置を、表示装置等に表示して、ユーザに示してもよい。以下の説明において、「接合強度が十分でない」と判定された超音波接合部分Ujpは、「低強度接合部分Ujp_l」とも称する。特に、生成部180は、各々が「接合強度が十分でない」と判定された複数の超音波接合部分Ujpに対応する、つまり、複数の低強度接合部分Ujp_lに対応する、複数の特徴点Pfe’_異常の各々の、特徴量空間Prsにおける位置を、ユーザに示してもよい。
言い換えれば、生成部180は、複数の高強度接合部分Ujp_hに対応する複数の特徴点Pfe’_正常の集合(高強度特徴量群)と複数の低強度接合部分Ujp_lに対応する複数の特徴点Pfe’_異常の集合(低強度特徴量群)との各々の、特徴量空間Prsにおける位置を、ユーザに示してもよい。
前述の通り、「特徴点Pfe’_正常、および、特徴点Pfe’_異常」は、図5から図15において説明した「特徴点Pfe_正常、および、特徴点Pfe_異常」とは、必ずしも一致しない。同様に、「高強度特徴量群および低強度特徴量群」も、図5から図15において説明した「正常特徴点群および異常特徴点群」とは、必ずしも一致しない。
ユーザは、生成部180が表示する、「高強度接合部分Ujp_hに対応する特徴点Pfe’_正常の、特徴量空間Prsにおける位置」から、特に、「複数の高強度接合部分Ujp_hに対応する複数の特徴点Pfe’_正常の各々の、特徴量空間Prsにおける位置」から、正常カテゴリ部分空間Ssnを設定してもよい。
また、ユーザは、生成部180が表示する、「高強度接合部分Ujp_hに対応する特徴点Pfe’_正常の位置」と、「低強度接合部分Ujp_lに対応する特徴点Pfe’_異常の位置」とから、超平面Hypを設定してもよい。超平面Hypは、特徴量空間Prsを、正常カテゴリ部分空間Ssnとそれ以外の空間(具体的には、異常カテゴリ部分空間Ssa)とに分割する平面である。特に、ユーザは、生成部180が表示する、「複数の特徴点Pfe’_正常の各々の位置」と、「複数の特徴点Pfe’_異常の各々の位置」とから、超平面Hypを設定してもよい。
すなわち、ユーザは、生成部180が表示する高強度特徴量群および低強度特徴量群の各々の特徴量空間Prsにおける位置から、正常カテゴリ部分空間Ssnを設定してもよく、また、超平面Hypを設定してもよい。
生成部180は、ユーザによって設定された「正常カテゴリ部分空間Ssnおよび超平面Hypの少なくとも一方」を利用した、予測基準データ123を生成してもよい。すなわち、生成部180は、ユーザ操作に応じて、「正常カテゴリ部分空間Ssnおよび超平面Hypの少なくとも一方」が設定された特徴量空間Prsを、予測基準データ123として生成してもよい。
当然、生成部180は、「特徴点Pfe’_正常の、特徴量空間Prsにおける位置」から、特に、「複数の特徴点Pfe’_正常の各々の、特徴量空間Prsにおける位置」から、正常カテゴリ部分空間Ssnを自ら設定してもよい。また、生成部180は、「特徴点Pfe’_正常の位置」と、「特徴点Pfe’_異常の位置」とから、特に、高強度特徴量群と低強度特徴量群との各々の位置から、超平面Hypを自ら設定してもよい。
すなわち、特徴量空間Prsにおける、特徴点Pfe’_正常および特徴点Pfe’_異常の各々の位置によって、特に、高強度特徴量群と低強度特徴量群との各々の位置によって、特徴量空間Prsに超平面Hypが設定される。超平面Hypにより分割された特徴量空間Prsにおいて、「正常」と判定された複数の超音波接合部分Ujpに対応する複数の特徴点Pfe’_正常が存在する空間が、正常カテゴリ部分空間Ssnとなる。また、超平面Hypにより分割された特徴量空間Prsにおいて、「異常」と判定された複数の超音波接合部分Ujpに対応する複数の特徴点Pfe’_異常が存在する空間が、異常カテゴリ部分空間Ssaとなる。特徴量空間Prsに超平面Hypを設定するのは、ユーザであってもよく、生成部180であってもよい。
生成部180は、超平面Hypによって正常カテゴリ部分空間Ssnと異常カテゴリ部分空間Ssaとに分割された特徴量空間Prsを、予測基準データ123として生成する。予測部140は、予測基準データ123としての「超平面Hypによって正常カテゴリ部分空間Ssnと異常カテゴリ部分空間Ssaとに分割された特徴量空間Prs」を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。具体的には、予測部140は、特徴量取得部130により取得された特徴量データ122に対応する特徴点Pfeの位置が、正常カテゴリ部分空間Ssn内にあるか否かによって、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
§3.動作例
以下に、PLC10が実行する処理(言い換えれば、PLC10が実行する制御方法)について、その詳細を説明していく。PLC10が実行する処理(制御方法)についての理解を容易にするため、PLC10が実行する処理の概要を整理しておけば、以下の通りである。
データ生成装置としてのPLC10が実行する制御方法は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するための予測基準データ123を生成するデータ生成装置の制御方法である。データ生成装置としてのPLC10が実行する制御方法は、図4のS130に相当する特徴量取得ステップと、S150に相当する強度取得ステップと、S180に相当する生成ステップと、含んでいる。
特徴量取得ステップにおいて、(A)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Freについての統計的特徴量、(B)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippについての統計的特徴量、および、(C)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出されるインピーダンスImpについての統計的特徴量の3つの特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量が取得される。
強度取得ステップにおいて、振動子Traが発生させた超音波振動により超音波接合された、集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果が取得される。
生成ステップにおいて、予測基準データ123が生成される。予測基準データ123において、特徴量取得ステップにて取得された前記少なくとも2つの特徴量と、強度取得ステップにて取得された前記判定結果と、は対応付けられている。すなわち、特徴量取得ステップにて取得された「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpのうちの少なくとも2つの特徴量」と、強度取得ステップにて取得された前記判定結果とは、予測基準データ123において対応付けられている。特に、前記少なくとも2つの特徴量の各々を次元とする空間(特徴量空間Prs)における、特徴量取得ステップにて取得された前記少なくとも2つの特徴量により座標が決定される特徴点Pfeの位置と、前記判定結果とが、予測基準データ123において対応付けられている。
前記の構成によれば、データ生成装置としてのPLC10が実行する制御方法は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量と、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果と、が対応付けられた、予測基準データ123を生成する。
前述の通り、超音波接合部分Ujpの接合強度には、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」が強く影響する。また、「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」は、技術的にも費用的にも、容易に計測可能かつ取得可能である。
したがって、データ生成装置としてのPLC10が実行する制御方法は、超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測可能な予測基準データ123を生成することができるとの効果を奏する。
予測装置としてのPLC10が実行する制御方法は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する予測装置の制御方法である。予測装置としてのPLC10が実行する制御方法は、図4のS230に相当する特徴量取得ステップと、S240に相当する予測ステップとを含んでいる。
特徴量取得ステップにおいて、(A)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traが発生させた超音波振動の周波数Freについての統計的特徴量、(B)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippについての統計的特徴量、および、(C)集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する間に振動子Traに印加された電流Ippと電圧Vppとを用いて算出されるインピーダンスImpについての統計的特徴量の3つの特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量が取得される。
予測ステップにおいて、特徴量空間Prsにおける特徴点Pfeの位置により、「超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否か」が予測される。特徴量空間Prsとは、特徴量取得ステップにて取得される「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量」の各々を次元とする空間である。特徴点Pfeとは、特徴量取得ステップにて取得された「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpという3つの特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量」により、特徴量空間Prsにおける座標が決定される点である。
前記の構成によれば、予測装置としてのPLC10が実行する制御方法は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する。
したがって、予測装置としてのPLC10が実行する制御方法は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測することができるとの効果を奏する。
(データ生成処理の一例−機械学習による学習済モデルの生成)
図4は、PLC10が実行する処理の概要を示す図である。図4の(A)に例示する「第1処理部190による、データ生成処理」と、図4の(B)に例示する「第2処理部150による、予測処理」とは、同時並行的に実行されてもよい。
図4の(A)は、第1処理部190が実行するデータ生成処理(予測基準データ123の生成処理)の一例を示すフロー図であり、特に、第1処理部190が、機械学習による学習済モデル(予測モデル)として予測基準データ123を生成する例を示している。
接合装置20による電極接合処理(つまり、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する処理)が実行されると(S110)、データ生成装置としてのPLC10は、以下の処理を実行する。すなわち、時系列データ取得部110は、接合装置20から、接合装置20による電極接合処理の実行中に計測された周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データを取得する(S120、時系列データ取得ステップ)。時系列データ取得部110は、フレームごとの(つまり、超音波接合部分Ujpごとの)「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ」を、フレームごとの時系列データ121として、記憶部120に格納する。
特徴量取得部130は、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ121」から、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量」を算出する。特徴量取得部130は、算出した、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量」を特徴量データ122として、記憶部120に格納する(記録する)(S130、特徴量取得ステップ)。
具体的には、特徴量取得部130は、フレームごとの「時系列データ121_Fre、121_Ipp、および、121_Imp」から、フレームごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」を算出する。特徴量取得部130は、算出した、フレームごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」を、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」として、記憶部120に格納する。
PLC10は、接合装置20による、1ロット分の電極接合処理の実行が終了しているかを確認する(S140)。1ロット分の電極接合処理の実行が終了してないと(S140でNo)、1ロット分の電極接合処理の実行が終了するまで、S110からS130までの処理が繰り返される。つまり、1ロット分の超音波接合部分Ujpの各々について、周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量データ122が、記憶部120に格納される。
接合装置20による、1ロット分の電極接合処理の実行が終了すると(S140でYes)、検査結果取得部160は、S150の強度取得ステップを実行する。すなわち、先ず、検査結果取得部160は、検査装置30によってロット毎の抜き取り検査として実施された引っ張り試験の結果を取得する。言い換えれば、検査結果取得部160は、接合装置20から、「対応する特徴量データ122が記憶部120に格納されている、1ロット分の超音波接合部分Ujp」に対して、抜き取り検査として実施された「接合強度が十分であるか否か」の判定結果を取得する。検査結果取得部160は、取得した「ロットごとに抜き取られた、超音波接合部分Ujpの接合強度の判定結果」を、記憶部120に、検査結果データ124として格納する。
対応付け部170は、記憶部120を参照して、ロットごとの検査結果データ124を取得し、ロットごとに実施された引っ張り試験の結果が正常であるか否かを、つまり、接合強度が十分であるか否かの判定結果を確認する(S150、強度取得ステップ)。例えば、対応付け部170は、ロットごとの、「抜き取られた超音波接合部分Ujpの総数」に対する「接合強度が十分であると判定された超音波接合部分Ujp」の割合に基づいて、ロットごとに、「正常」または「異常」を判定する。
対応付け部170は、或るロットを「正常」と判定すると(S150でYes)、その或るロットの全ての超音波接合部分Ujpに対応する、全ての特徴量データ122(特徴量群)に、正常ラベルを付与し、つまり、「正常」との判定結果を付与する(S160、対応付けステップ)。対応付け部170は、或るロットを「異常」と判定すると(S150でNo)、その或るロットの全ての超音波接合部分Ujpに対応する、全ての特徴量データ122(特徴量群)に、異常ラベルを付与し、つまり、「異常」との判定結果を付与する(S170、対応付けステップ)。対応付け部170は、フレームごとに(つまり、超音波接合部分Ujpごとに)、特徴量データ122と、判定結果(つまり、「正常」または「異常」)とを対応付けた対応付けデータ125を記憶部120に格納する。
生成部180は、対応付けデータ125を教師データとして、機械学習を行い、学習済モデル(予測モデル)として、予測基準データ123を生成する(S180、生成ステップ)。生成部180により学習済モデルとして生成された予測基準データ123は、例えば、特徴量データ122を入力として、「正常(超音波接合部分Ujpの接合強度が十分である)」または「異常(十分でない)」と判定される確率を示すスコアを出力する。つまり、予測基準データ123は、特徴量データ122を入力とし、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの指標となるスコアを出力とする、学習済モデルである。
(予測処理の一例−機械学習により生成された学習済モデルを用いた予測)
図4の(B)は、第2処理部150が実行する予測処理の一例を示すフロー図であり、特に、第2処理部150が、機械学習による学習済モデルとして生成された予測基準データ123を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する例を示している。
接合装置20による電極接合処理(つまり、集電箔群210と電極端子300とを超音波接合する処理)が実行されると(S210)、予測装置としてのPLC10は、以下の処理を実行する。すなわち、時系列データ取得部110は、接合装置20から、接合装置20による電極接合処理の実行中に計測された周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データを取得する(S220、時系列データ取得ステップ)。時系列データ取得部110は、フレームごとの(つまり、超音波接合部分Ujpごとの)「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ」を、フレームごとの時系列データ121として、記憶部120に格納する。
特徴量取得部130は、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の時系列データ121」から、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量」を算出する。特徴量取得部130は、算出した、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの各々の特徴量」を特徴量データ122として、記憶部120に格納する(記録する)(S230、特徴量取得ステップ)。
具体的には、特徴量取得部130は、フレームごとの「時系列データ121_Fre、121_Ipp、および、121_Imp」から、フレームごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」を算出する。特徴量取得部130は、算出した、フレームごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」を、フレームごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」として、記憶部120に格納する。
予測部140は、フレームごとの(つまり、超音波接合部分Ujpごとの)「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」と、予測基準データ123とによって、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。具体的には、予測部140は、超音波接合部分Ujpごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」と、予測基準データ123とから、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分であるか否かを予測する(S240、予測ステップ)。
例えば、予測部140は、生成部180による機械学習によって学習済モデルとして生成された予測基準データ123に、超音波接合部分Ujpごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」を入力する。予測部140は、超音波接合部分Ujpごとの「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」が入力された予測基準データ123が出力するスコアを、所定の閾値と比較して、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。
また、予測部140は、超音波接合部分Ujpごとの「Fre_median、Ipp_median、および、Imp_median」と、予測基準データ123とから、接合強度の低下が発生する予兆を検出する。具体的には、予測部140は、「接合強度が十分でない」と判定した超音波接合部分Ujpが発生すると、「超音波接合部分Ujpの接合強度の低下が発生する予兆を検出した」とする。
予測部140は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分でないと予測すると(S240でYes)、警告を出力する(S250)。また、対応付け部170は、予測部140により「接合強度が十分でない」と予測された超音波接合部分Ujpに対応する「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImpの特徴量データ122」に、異常ラベルを付与する(S260)。
§4.変形例
これまで、PLC10が、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するための予測基準データ123を生成するデータ生成装置と、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する予測装置とを1台で兼ねる例を説明してきた。しかしながら、データ生成装置と予測装置とを1台の装置で実現することは必須ではない。
(データ生成装置を兼ねない、予測装置)
図17は、データ生成装置を兼ねない、予測装置として実現したPLC11等の要部構成を示すブロック図である。PLC11は、PLC10から、予測基準データ123を生成する一連の処理(第1処理)を実行する第1処理部190を除いた構成である。具体的には、PLC11は、PLC10から、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、記憶部120の検査結果データ124、対応付けデータ125を除いた構成である。PLC11は、その他の点ではPLC10と同様であり、PLC10の第2処理部150が実行する「予測処理および検知処理に係る一連の処理」を実行する。
すなわち、PLC11は、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測する予測装置であり、特徴量取得部130と、予測部140とを備えている。前記の構成によれば、PLC11は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうち、少なくとも2つの特徴量を用いて、超音波接合部分Ujpの接合強度を予測する。したがって、PLC11は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測することができるとの効果を奏する。
PLC11が実行する「予測処理および検知処理に係る一連の処理」は、PLC10の第2処理部150が実行する「予測処理および検知処理に係る一連の処理」と同様なので、詳細は略記する。
(予測装置を兼ねない、データ生成装置)
図18は、予測装置を兼ねない、データ生成装置として実現したPLC12等の要部構成を示すブロック図である。PLC12は、PLC10から、予測処理および検知処理に係る一連の処理(第2処理)を実行する第2処理部150を除いた構成であり、具体的には、予測部140を除いた構成である。PLC12は、その他の点ではPLC10と同様であり、PLC10の第1処理部190が実行する「予測基準データ123を生成するデータ生成処理に係る一連の処理」を実行する。
すなわち、PLC12は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かを予測するための予測基準データ123を生成するデータ生成装置である。PLC12は、特徴量取得部130と、検査結果取得部160(強度取得部)と、生成部180と、を備えている。前記の構成によれば、PLC12は、周波数Freについての統計的特徴量、電流Ippについての統計的特徴量、および、インピーダンスImpについての統計的特徴量のうちの少なくとも2つの特徴量と、超音波接合部分Ujpの接合強度が十分か否かの判定結果と、が対応付けられた、予測基準データ123を生成する。したがって、PLC12は、リチウムイオン二次電池における集電箔群210と電極端子300との超音波接合部分Ujpの接合強度を、簡易かつ高精度に予測可能な予測基準データ123を生成することができるとの効果を奏する。
PLC12が実行する「予測基準データ123を生成するデータ生成処理に係る一連の処理」は、PLC10の第1処理部190が実行する「予測基準データ123を生成するデータ生成処理に係る一連の処理」と同様なので、詳細は略記する。
(PLCではない装置による実現)
これまで、予測装置およびデータ生成装置の少なくとも一方を、PLC10、11、12として実現する例について説明してきた。しかしながら、本発明の一側面に係る予測装置および本発明の一側面に係るデータ生成装置の少なくとも一方を、PLCとして実現することは必須ではない。本発明の一側面に係る予測装置は、超音波接合部分Ujpが形成される際の「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」のうちの少なくとも2つを用いて、形成された超音波接合部分Ujpの接合強度を予測できればよい。本発明の一側面に係るデータ生成装置は、超音波接合部分Ujpが形成された際の「周波数Fre、電流Ipp、および、インピーダンスImp」のうちの少なくとも2つと、形成された超音波接合部分Ujpの接合強度に係る判定結果とが対応付けられた、予測基準データ123を生成できればよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
PLC10、11、および12の各々の機能ブロック(具体的には、時系列データ取得部110、特徴量取得部130、予測部140、第2処理部150、検査結果取得部160、対応付け部170、生成部180、および、第1処理部190)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(CenTral Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、PLC10、11、および12の各々は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等を備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。