JP2021017057A - 画像形成ブランケット及び画像形成ブランケットの作製方法 - Google Patents

Abstract

【課題】可変データリソグラフィのための画像形成ブランケット。【解決手段】画像形成ブランケット１００は、基材１０２を含む。発泡体層１０３が基材１０２上に配設される。エラストマー層１０４が発泡体層１０３上に配設され、エラストマー層１０４はシリコーンエラストマーを含む。エラストマー層１０４は、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する。【選択図】図２

Description

本開示は、概して、マーキングシステム及び印刷システムに関し、より具体的には、そのようなシステムの画像形成ブランケットに関する。

典型的なリソグラフィ印刷技術及びオフセット印刷技術は、恒久的にパターン化されたプレートを使用し、したがって、雑誌、新聞などの同じ画像の多数の部数を印刷するとき（すなわち、長尺の印刷部数）にのみ有用である。しかしながら、これらは、印刷シリンダ及び／又は画像形成プレートを外して置き換えずに、次から次へと新しいパターンを作成及び印刷することを可能にしない（すなわち、この技術は、例えば、デジタル印刷システムの場合のように、画像が版から版へと変わる真の高速可変データ印刷に適合することができない）。更に、恒久的にパターン化された画像形成プレート又はシリンダのコストは、部数にわたって償却される。したがって、印刷された１部数当たりのコストは、デジタル印刷システムからの印刷とは対照的に、同じ画像のより長い尺の印刷部数よりも、同じ画像のより短い尺の印刷部数の方がより高い。

その結果、湿し液層で最初は一様にコーティングされている、パターン化されていない再画像形成可能な表面又は画像形成ブランケットを含む画像形成部材を使用する、可変データリソグラフィと称されるリソグラフィ技術が開発された。湿し液の領域が、集束された線源（例えば、レーザー光源）に曝露されることによって除去されて、ポケットが形成される。これにより、湿し液中の一時的パターンが、パターン化されていない画像形成ブランケットの上に形成される。その上に塗布されたインクは、湿し液の除去によって形成されたポケット内に保持される。次に、インク表面を印刷基材と接触させ、インクを湿し液層のポケットから印刷基材へと移動させる。次に、湿し液を除去して、新たな湿し液の均一層を画像形成ブランケットに塗布し、このプロセスを繰り返すことができる。

画像形成ブランケットは、多くの場合、例えば、カーカスとして知られる基材などのシームレスな加工されたゴム基材を用いる。一例として、米国特許出願公開第２０１７／０３４１４５２号は、画像形成ブランケットで使用するための無硫黄カーカスを用いる。しかしながら、ＮＢＲ（ニトリルブタジエンゴム）をベースとするリソ／フレキソ産業で使用される既存のカーカスを含む、他の種類のカーカスが利用可能である。これらのＮＢＲゴムカーカスは、架橋剤として使用される硫黄を有する。

画像形成ブランケットは、低表面エネルギーコーティング、例えば、フルオロシリコーン及びカーボンブラックなどの赤外線吸収充填剤を含む分散体を含む。この分散体は、典型的には、カーカス上に湿潤膜として塗布され、次に、約１６０℃で約４時間の高温で硬化させて、最終的な画像形成ブランケットを得る。Ｔｒｅｌｌｅｂｏｒｇ ＡＢ（Ｔｒｅｌｌｅｂｏｒｇ、Ｓｗｅｄｅｎ）が製造するような、カーカスは、典型的には、補強布地層、圧縮性発泡体層、及び上部ゴム層を含有する。このように加工されたカーカスは、熱伝導率が低い場合がある。その結果、特に高ソリッド領域の複数の像印刷を繰り返すことにより、画像形成領域内で画像形成ブランケットが加熱される可能性がある。例えば、繰り返し印刷中にドラムを複数回回転させると、画像形成ブランケット表面にレーザー画像形成された領域の温度が非画像形成領域よりもはるかに高くなる場合がある。画像形成領域内のブランケット表面の温度が高いと、その高温領域における湿し液の蒸着が異常に少なくなるおそれがある。高温領域における低レベルの湿し液は、更に潜像、焼き付き、及び／又は熱ブルーミングなど、印刷物の外観像品質の欠陥につながる場合がある。

画像形成ブランケットの温度が有害な量増大しないような改善された熱伝導率を有する画像形成ブランケットが、当該技術分野において必要とされている。硫黄を含まない画像形成ブランケットも当該技術分野において必要とされている。

フルオロシリコーンなどのフルオロポリマーがコーティングされ、硬化される、画像形成ブランケットのカーカスに使用されるゴム基材は、多くの場合、ニトリルブタジエンゴム（ＮＢＲ）に基づく。フルオロシリコーン及びカーボンブラックの分散体は、このようなカーカス上の湿潤膜として塗布され、次に、高温で硬化されて、最終的な画像形成ブランケットが得られる。しかしながら、本発明者らは、硫黄架橋剤が、フルオロシリコーン硬化とは不適合なＮＢＲを製造するために使用されることを認識した。これは、フルオロシリコーン硬化中に白金触媒が使用され、少ない（十億分の一）レベルの硫黄がこれらの触媒を毒する可能性があるからである。「Ｐｌａｔｉｎｕｍ Ｃａｔａｌｙｓｔｓ Ｕｓｅｄ ｉｎ ｔｈｅ Ｓｉｌｉｃｏｎｅｓ Ｉｎｄｕｓｔｒｙ」，Ｌｅｗｉｓ ｅｔ．ａｌ．，Ｐｌａｔｉｎｕｍ Ｍｅｔａｌｓ Ｒｅｖ．，１９９７，４１，（２），６６−７５を参照されたい。上記を考慮して、本発明者らは、無硫黄エラストマー（例えば、フルオロシリコーンエラストマー）に基づいてカーカスを設計した。このような新規なカーカスは、例えば、フルオロシリコーン硬化化学物質と適合性があるだけでなく、コーティング溶媒に対して耐性であり、長期間にわたって１６０℃の温度などの過酷な硬化条件に耐えることができる。したがって、無硫黄カーカスを含む本ブランケット構成は、フルオロシリコーンなどのフルオロポリマーを含む望ましい表層と共に使用することができる。一実施形態では、カーカスは、ＸＰＳ（Ｘ線光電子分光法）によって決定するとき、例えば、０．２重量％〜０重量％（例えば、約０．１重量％〜０重量％、約０．０２重量％〜０重量％、又は約０．００１重量％〜０重量％）などの０．２重量％未満などの微量より多い硫黄を含有しない。一実施形態では、カーカスは、硫黄を完全に含まない。

本開示の一実施形態は、可変データリソグラフィのための画像形成ブランケットに関する。画像形成ブランケットは、基材を含む。発泡体層が基材上に配設される。エラストマー層が発泡体層上に配設され、エラストマー層はシリコーンエラストマーを含む。エラストマー層は、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する。

特定の実施形態では、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、エラストマー層の総重量に基づいて、例えば、約１重量％〜約１０重量％又は約２重量％〜約５重量％などの、約１重量％〜約１５重量％の範囲の量でエラストマー層中に存在し、また、特定の実施形態では、シリコーンエラストマーは、エラストマー層の総重量に基づいて、例えば、約９０重量％〜約９９重量％又は約９５重量％〜約９８重量％などの、約８５重量％〜約９９重量％の範囲の量でエラストマー層中に存在する。

特定の実施形態では、エラストマー層は、白金などの少なくとも１つの触媒を更に含み、特定の実施形態では、シリコーンエラストマーは、室温加硫シリコーンゴムである。

特定の実施形態では、基材上に配設されたエラストマー層は、シリコーンエラストマー、少なくとも１つの熱伝導性充填剤、及び触媒からなる。

本明細書に開示される画像形成ブランケットの特定の実施形態では、基材は、金属、ポリイミドなどのプラスチック、及び織布からなる群から選択される少なくとも１つの材料を含む。一実施形態では、基材は、剛性スリーブなどの剛性である。一実施形態では、基材は、金属、プラスチック、又はその両方を含む剛性スリーブである。一実施形態では、基材及び画像形成ブランケットは、布地層を含まない。

本明細書に開示される更なる実施形態では、画像形成ブランケットは、フルオロシリコーンと、カーボンブラックなどの少なくとも１つの赤外線吸収充填剤とを含むトップコートを含む。

本開示の様々な実施形態では、エラストマー層は、約６０ショアＡ〜約８０ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する。特定の実施形態では、画像形成ブランケットの温度は、印刷中の画像形成ブランケットの約２０、約３０、約４０又は約５０回転後に、約５℃を超えて（例えば、約３℃を超えて）上昇しない。特定の実施形態では、画像形成ブランケットの温度は、印刷中の画像形成ブランケットの約２０、約３０、約４０又は約５０回転後に、約２８℃未満（例えば、約２７℃未満、２６℃未満、又は約２５℃未満など）である。

本開示の一実施形態は、可変データリソグラフィのための画像形成ブランケットを作製する方法に関する。方法は、発泡体層が上に配設された基材を提供することを含む。シリコーンエラストマーを含むエラストマー層を発泡体層に塗布する。エラストマー層が硬化される。エラストマー層は、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する。

開示の更に別の実施形態は、可変データリソグラフィシステムに関する。システムは、画像形成ブランケットを含む画像形成部材を備える。画像形成ブランケットは、基材を含む。発泡体層が基材上に配設される。エラストマー層が発泡体層上に配設される。エラストマー層は、シリコーンエラストマーを含む。画像形成ブランケットは、フルオロシリコーン及び少なくとも１つの赤外線吸収充填剤を含むトップコートを更に含む。可変データリソグラフィシステムは、画像形成ブランケットに湿し水の層を塗布するように構成された湿し水サブシステムと、潜像を生成するように湿し水層の一部を選択的に除去するように構成されたパターニングサブシステムと、画像形成ブランケット上にインクを塗布して、それによりインク画像を生成するように構成されたインカーサブシステムと、インク画像を媒体基材に転写するように構成された画像転写機構と、を更に備える。

本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を示し、説明と共に本教示の原理を説明する役割を果たす。

本明細書に開示される様々な実施形態による可変データリソグラフィシステムの概略図である。 本明細書に開示される様々な実施形態による、多層画像形成ブランケットの概略側面図である。 本明細書に開示される様々な追加の実施形態による、多層画像形成ブランケットの概略側面図である。 フルオロシリコーン化合物及び化合物を形成するための反応の実施例を示す。 本開示による、及び本開示の実施例、優れた印刷ＩＱを示すシリコーンベースのカーカスからの印刷を示す。

図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺を維持するのではなく、実施形態の理解を容易にするために示されていることに留意されたい。

ここで、本開示の実施形態を詳細に参照する。以下の説明は、単なる例示である。

以下の説明では、その一部をなし、本教示を実践することができる特定の例示的な実施形態を実例として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本教示を実施することを可能にするために十分に詳細に説明されており、他の実施形態を利用することができ、本教示の範囲から逸脱することなく変更を行うことができることを理解されたい。したがって、以下の記述は、単なる例示に過ぎない。

本明細書の開示の実施形態は、この点に関して限定されるものではないが、本明細書で使用するとき、用語「複数の（ｐｌｕｒａｌｉｔｙ）」及び「複数の（ａ ｐｌｕｒａｌｉｔｙ）」は、例えば、「複数の（ｍｕｌｔｉｐｌｅ）」又は「２つ以上の（ｔｗｏ ｏｒ ｍｏｒｅ）」を含み得る。用語「複数の（ｐｌｕｒａｌｉｔｙ）」又は「複数の（ａ ｐｌｕｒａｌｉｔｙ）」は、２つ以上の構成要素、装置、要素、ユニット、パラメーターなどを説明するために、本明細書全体をとおして使用され得る。例えば、「複数の抵抗器」は、２つ以上の抵抗器を含み得る。

本明細書で使用される、用語「ポリオルガノシロキサン」は、「シロキサン」、「シリコーン」、「シリコーンオイル」、及び「シリコーンゴム」と互換可能に使用される。ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子及び酸素原子から形成される骨格鎖を有するシロキサン、並びに炭素原子及び水素原子を含有する側鎖を有するシロキサンを指すことが当業者には理解される。本明細書で使用される場合、用語「シリコーン」は、フッ素原子を含有するシロキサンを除外すると理解されるべきであり、用語「フルオロシリコーン」は、フッ素原子を含有するシロキサン類を被覆するために使用される。他の原子、例えば、架橋結合中にシロキサン鎖を一緒に結合するために使用されるアミン基の窒素原子がシリコーンに存在してもよい。

本明細書で使用される用語「フルオロシリコーン」は、ケイ素原子及び酸素原子から形成される骨格を有するポリオルガノシロキサン、並びに炭素原子、水素原子、及びフッ素原子を含有する側鎖を指す。少なくとも１つのフッ素原子が、側鎖中に存在する。側鎖は、直鎖、分枝鎖、環状、又は芳香族であり得る。フルオロシリコーンはまた、付加架橋を可能にするアミノ基などの官能基を含有してもよい。架橋が完了すると、そのような基は、フルオロシリコーン全体の骨格の一部となる。ポリオルガノシロキサンの側鎖はまた、アルキル又はアリールであってもよい。フルオロシリコーンは市販されており、例えば、ＮｕＳｉｌ（登録商標）製のＣＦｌ−３５１０、又はＷａｃｋｅｒ製のＳＬＭ（ｎ−２７）が市販されている。

用語「媒体基材」、「印刷基材」、及び「印刷媒体」は、一般に、プレカット又はウェブフィードされるかどうかにかかわらず、通常、物理的に可撓性のある紙のシート、ポリマー、Ｍｙｌａｒ（登録商標）材、プラスチック、又は他の好適な物理的印刷媒体基材、シート、ウェブなどを指す。

本明細書で使用される用語「印刷装置」又は「印刷システム」は、デジタル複写機若しくはプリンタ、スキャナ、画像印刷機、電子写真装置、静電写真装置、デジタル生産プレス、文書処理システム、画像再生機、製本機械、ファクシミリ機、複合機、又は一般的に、印刷プロセスなどを実行するのに有用な装置を指し、いくつかのマーキングエンジン、供給機構、走査アセンブリ、並びに給紙装置、フィニッシャなどの他の印刷媒体処理ユニットを指す。「印刷システム」は、シート、ウェブ、基材などを取り扱うことができる。印刷システムは、任意の表面上などにマークを置くことができ、入力シート上のマークを読み取る任意の機械、又はそのような機械の任意の組み合わせである。

本明細書で使用される場合、用語「インクベースのデジタル印刷」は、「可変データリソグラフィ印刷」及び「デジタルオフセット印刷」と互換可能に使用され、像形成プロセスにおいて基材上に像をその後レンダリングする度に変更可能な像を基材上に生成するための可変像データのリソグラフィ印刷を指す。本明細書で使用される場合、「インクベースのデジタル印刷」は、像が像ごとに異なり得るデジタル像データに基づいている場合のリソグラフィインクを使用したインク像のオフセット印刷を含む。本明細書で使用される場合、インクベースのデジタル印刷は、リソグラフィインクのための「デジタルアーキテクチャ」（ＤＡＬＩ）又は可変データリソグラフィ印刷システム又はデジタルオフセット印刷システムを使用してもよく、このシステムは、リソグラフィインクを使用して、ある像から次の像へと変化し得るデジタル像データに基づいて構成される。本明細書で使用される場合、ＤＡＬＩを使用するインクベースのデジタル印刷システムは、ＤＡＬＩプリンタと呼ばれることがある。本明細書で使用される場合、ＤＡＬＩプリンタの画像形成部材は、ＤＡＬＩ印刷版及びＤＡＬＩ画像形成ブランケットとして互換可能に呼ばれ得る。

以下に定義される全ての物理的特性は、特に指定のない限り、２０℃〜２５℃で測定される。用語「室温」は、特に指定がない限り、約２５℃など、約２０℃〜約２５℃の範囲の温度を指す。

本明細書で言及される例の多くは、印刷用にインクパターン化される、均一に粒状化されテクスチャ加工されたブランケット表面を有する画像形成ブランケット（例えば、印刷スリーブ、ベルト、ドラム上で使用される画像形成ブランケットなどを含む）に関する。可変データリソグラフィ印刷の更なる実施例は、２０１２年５月３日公開（’２１２公報）の米国特許出願公開第２０１２／０１０３２１２（Ａ１）号に開示されており、また、米国特許出願第１３／０９５，７１４号に基づいており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願において直接引用されたテキストは、参照により本明細書に組み込まれる任意の主題においてなされた任意の競合する記述に優先する。

図１は、例示的な可変データリソグラフィ印刷システム１０を描写する。図１に示される例示的なシステム１０の概要をここに提供する。図１の例示的なシステム１０に示される個々の構成要素及び／又はサブシステムに関する更なる詳細は、’２１２公報に見出すことができる。図１に示されるように、例示的なシステム１０は、転写ニップ１４において、インク画像をターゲット受像媒体基材（ｔａｒｇｅｔ ｉｍａｇｅ ｒｅｃｅｉｖｉｎｇ ｍｅｄｉａ ｓｕｂｓｔｒａｔｅ）１６に適用するために使用される画像形成部材１２を含んでもよい。転写ニップ１４は、画像転写機構３０の一部として押圧ローラー１８によって生成され、画像形成部材１２の方向に圧力をかける。

画像形成部材１２は、例えば円筒状コア、又は円筒状コア上の１つ以上の構造層であってもよい構造取付層の上に形成された再画像形成可能な表面層（画像形成ブランケット層又はカーカス）を含んでもよい。一般に均一な厚さを有する、湿し流体又は湿し水の層で、再画像形成可能な表面を均一に濡らすために、湿しローラー又は湿しユニットとみなすことができる一連のローラーを一般的に備える湿し水サブシステム２０が、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面に提供されてもよい。湿し流体又は湿し水が再画像形成可能な表面上に計量されると、湿し流体又は湿し水の層の厚さは、再画像形成可能な表面上への湿し流体又は湿し水の計量を制御するためのフィードバックを提供するセンサ２２を使用して測定することができる。

光学パターニングサブシステム２４は、例えばレーザーエネルギーを使用して湿し水層を像様パターニングすることによって、均一な湿し水層に潜像を選択的に形成するために使用され得る。再画像形成可能な表面に近接する光パターン化サブシステム２４から放出される赤外線又はレーザーエネルギーの大部分を理想的に吸収する材料から、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面を形成するという点で有利である。このような材料の表面を形成することは、有利には、湿し水を加熱する際に浪費されるエネルギーを実質的に最小化し、高い空間分解能を維持するために、同時に熱の横方向の広がりを最小化するのを助けることができる。簡潔に述べると、光学パターニングサブシステム２４からの光学パターニングエネルギーの適用は、潜像を生成する方法で、湿し水の均一層の部分の選択的な蒸発をもたらす。

次に、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面上に潜像を有する湿し水のパターン化層を、インカーサブシステム２６に提示又は導入する。インカーサブシステム２６は、湿し水のパターン化層及び画像形成部材１２の再画像形成可能な表面上に均一なインク層を塗布するために使用可能である。実施形態では、インカーサブシステム２６は、アニロックスローラーを使用して、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面と接触している１つ以上のインク形成ローラー上にインクを計量することができる。他の実施形態では、インカーサブシステム２６は、再画像形成可能な表面にインクの正確な供給速度を提供するための一連の計量ローラーなどの他の従来の要素を含んでもよい。インカーサブシステム２６からのインクは、インク像を形成するために、上に湿し水を含まない再画像形成可能な表面の領域に被着し得、一方で、湿し水層が残っている再画像形成可能な表面の領域に付着したインクは、再画像形成可能な表面の領域に被着しない。

再画像形成可能な表面上に存在するインクの凝集性及び粘度は、レオロジー制御サブシステム２８のいくつかの方法の使用を含む多数の機構によって改質され得る。実施形態では、レオロジー制御サブシステム２８は、再画像形成可能な表面上にインクの部分的架橋コアを形成して、例えば、再画像形成可能な表面へのインクの接着強度に対するインク凝集力を増加させてもよい。実施形態では、特定の硬化機構が使用されてもよい。これらの硬化機構としては、例えば、光学若しくは光硬化、熱硬化、乾燥、又は様々な形態の化学硬化を挙げることができる。冷却は、複数の物理的、機械的、又は化学的冷却機構を介して、転写されたインクのレオロジーを改質するためにも使用され得る。

基材マーキングは、転写サブシステム３０を使用して、インクが画像形成部材１２の再画像形成可能な表面から媒体基材１６に転写される際に生じる。レオロジー制御システム２８によって改質されたインクの付着性及び／又は凝集力を用いると、改質されたインクの付着性及び／又は凝集力によって、インクが転写ニップ１４において画像形成部材１２の再画像形成可能な表面から分離する際に、インクは媒体基材１６に実質的に完全に優先的に付着しながら転写する。とりわけ、転写ニップ１４における温度及び圧力条件を慎重に制御することにより、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面から媒体基材１６へのインクの転写効率（例えば、９５％）を超えることができる。いくつかの湿し水はまた、基材１６も濡らす可能性があるが、そのような転写された湿し水の体積は、一般に、基材１６によって急速に蒸発するか、ないしは別の方法で吸収されるために最小限になるであろう。

最後に、画像転写のための上記のサイクルを繰り返すために画像形成部材１２の再画像形成可能な表面を準備し、調整することを意図した方法で、再画像形成可能な表面からの非転写残留インク及び／又は残りの湿し水を含む残留製品を除去するために、洗浄システム３２が提供される。エアナイフを使用して、残留湿し水を除去してもよい。ただし、ある程度のインク残留物が残っている可能性があることが予想される。このような残りのインク残留物の除去は、洗浄サブシステム３２によって達成されてもよい。洗浄サブシステム３２は、例えば、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面と物理的に接触している、粘着性又は粘着性部材などの少なくとも第１の洗浄部材を含んでもよく、ここで粘着性又は粘着性部材は、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面の湿し水から残留インク及び残りの少量の界面活性剤化合物を除去する。次に、ねばねば又はべとべとする部材は、ねばねば又はべとべとする部材から残留インクが転写され得るスムーズなローラーと接触させられてもよく、インクは、その後、例えばドクターブレードによってスムーズなローラーから剥離される。任意の他の好適な洗浄システムを使用することができる。

使用される洗浄システムの種類にかかわらず、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面からの残留インク及び湿し水の洗浄は、提案されるシステムにおける残留画像のリスクが印刷されるのを防止又は低減することができる。洗浄されると、画像形成部材１２の再画像形成可能な表面は、湿し水の新鮮な層が画像形成部材１２の再画像形成可能な表面に供給され、プロセスが繰り返される湿し水サブシステム２０に再び提示される。

図２は、例えば、画像形成部材１２の一部として、画像形成部材と共に使用するための画像形成ブランケット１００の概略側面図を示す。図３は、図２の画像形成ブランケット１００の一部の拡大図を示す。画像形成部材１２は、例えば、印刷スリーブの一部として画像形成ブランケット１００が挿入される印刷シリンダ又はドラムの形態であり得る。印刷スリーブ及び印刷シリンダ又はドラムは、当該技術分野において一般的に周知である。

画像形成ブランケット１００は、基材１０２を含む。発泡体層１０３は、基材１０２上に配設される。エラストマー層１０４は、発泡体層１０３上に配設される。一実施形態では、エラストマー層１０４、発泡体層１０３及び基材１０２は、後で上にトップコート１０６が形成され得るシームレスなカーカスを形成することができる。一実施形態では、トップコート１０６は、エラストマー及び白金触媒を含む。任意選択のプライマー層１０８は、エラストマー層１０４とトップコート１０６との間に配設することができる。一実施形態では、トップコート１０６は最上面層である。代替的な実施形態では、トップコート層１０６は形成されず、エラストマー層１０４、発泡体層１０３及び基材１０２は共に、エラストマー層１０４が最上面層であるカーカスを形成する。カーカスは、続いて、トップコート層１０６などの追加の層を堆積させるために基材として使用されてもよいが、カーカスは、トップコート層１０６無しで販売され供給されてもよい。

本明細書で使用するとき、用語「上に（ｏｎ）」は、「直接上に」及び「間接的に上に」の両方を含むように広く定義される。したがって、例えば、語句「トップコート１０６がエラストマー層１０４上に配設されている」は、トップコート１０６がエラストマー層１０４上に直接配設されている場合、並びに、トップコート１０６とエラストマー層１０４との間に形成されたプライマー層１０８などの介在層を含むために、十分に広い。用語「直接上に」は、「直接物理的に接触している」ことを意味すると定義される。加えて、本出願における「上に（ｏｎ）」の各例は、直接物理的接触の両方が発生しないか、又は生じない実施形態を包含し得ることが企図される。更に、本明細書における用語「上に（ｏｎ）」の全ての例は、請求項を狭める目的のためなど、直接的な物理的接触が生じる意味を伝達することが望ましい場合に、「直接上に」に置き換えられ得ることが企図される。

基材１０２は、当該技術分野において周知のように、ロール（例えば、スリーブなど）、ベルト、又はロールに取り付けられたプレートの形態であり得る。図２は、スリーブの形態の基材１０２を示す。基材１０２は、例えば、ポリイミドなどのポリマー、シリコーン又はニ軸配傾ポリエチレンテレフタレート（例えば、Ｍｙｌａｒ（登録商標））、金属（ニッケル、アルミニウム、又はアルミニウム合金など）、織布、石英、プラスチック複合体、又はこれらの組み合わせなどの、任意の好的な材料で作製することができる。一実施形態では、基材は剛性スリーブなどの剛性である。一実施形態では、基材は、金属、プラスチック、又はその両方を含む剛性スリーブである。基材は、任意選択的に、剛性スリーブ上の１つ以上の追加層（例えば、１つ以上のポリマー、織布、又は他の層）などの複数の層を含むことができる。一実施形態では、基材及び得られる画像形成部材は、織布などの布地層を含まない。

任意の好適な基材厚さを選択することができる。一実施形態では、基材１０２の厚さは、例えば、約１００マイクロメートル〜約３０００マイクロメートル、又は約１００マイクロメートル〜約１５００マイクロメートルなど、約１０マイクロメートル〜約１０ｍｍの範囲であってもよい。

図２及び図３を参照すると、画像形成ブランケット１００のインク付けローラーとの改善された適合性を提供するために発泡体層１０３が用いられる。発泡体層に用いられる材料は、所望の適合性、並びに耐久性、熱伝導性、及び画像形成ブランケットへの付着を提供する任意の好適な発泡体であり得、それ以外は、画像形成ブランケット機能と調和する。一例として、発泡体層１０３は、クローズドセルシリコーン発泡体などのシリコーン発泡体を含む。シリコーン発泡体の量は、熱伝導性又は硬度又は適合性などの所望の特性を提供するのに十分な任意の所望の量でエラストマー層１０４内に存在することができる。例えば、発泡体層１０３は、本明細書に記載の任意のシリコーン発泡体などの発泡体材料の約８５％〜約１００％又は約９０％〜約９９％、又は約９５％〜約９８％を含むことができる。発泡体層１０３は、任意選択的に、シリコーン発泡体内に分散された熱伝導性充填剤を含んでもよい。本明細書に開示される熱伝導性充填剤のいずれも、発泡体層１０３に用いることができる。特定の実施形態では、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、発泡体層組成物の総重量の約１重量％〜約１５重量％（例えば、約１重量％〜１０重量％又は約２重量％〜約５重量％）の範囲の量で存在してもよい。シリコーン発泡体層は、約１０〜約５０ショアＡのショアＡデュロメータ硬度を有することができる。

トップコート１０６は、フルオロシリコーンエラストマーなどのエラストマーを含む。一実施形態では、フルオロシリコーンエラストマーは、白金触媒を使用して硬化される。硬化後、白金触媒は、トップコート１０６の一部として残る。好適なフルオロシリコーンエラストマーの例は、以下により詳細に記載される。

トップコート１０６は、任意選択的に、赤外線吸収材料を更に含む。赤外線吸収充填剤は、スペクトルの赤外部分（約７５０ｎｍ〜約１０００ｎｍの波長を有する）からエネルギーを吸収することができる。これは、湿し水の蒸発を効率的に助けることができる。特定の実施形態では、少なくとも１つの赤外線吸収充填剤は、カーボンブラックや、酸化鉄、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛、又は炭素繊維などの金属酸化物から選択されてもよい。少なくとも１つの赤外線吸収充填剤は、約２ナノメートル〜約１０マイクロメートルの平均粒径を有し得る。一実施形態では、ＩＲ吸収性充填剤は、約２０ｎｍ〜約５μｍの平均粒径を有し得る。特定の実施形態では、少なくとも１つの赤外線吸収充填剤は、トップコート組成物の総重量に基づいて例えば約７重量％〜約１７重量％又は約１０重量％〜約１５重量％などの、約５重量％〜約２０重量％の範囲の量で存在してもよい。

いくつかの実施形態では、ＩＲ吸収性充填剤はカーボンブラックである。一実施形態では、ＩＲ吸収性充填剤は、Ｅｍｐｅｒｏｒ １６００（Ｃａｂｏｔから入手可能）などの低硫黄カーボンブラックである。一実施形態では、カーボンブラックの硫黄含有量は、０．３％以下である。一実施形態では、カーボンブラックの硫黄含有量は、０．１５％以下である。

一実施形態では、トップコート１０６は、フルオロシリコーン及び少なくとも１つの赤外線吸収充填剤に加えて、例えば追加の充填剤などの追加成分を含んでもよい。特定の実施形態では、追加の充填剤はシリカであってもよい。シリカは、トップコートの引張強度を増加させ、耐摩耗性を高めるのに役立ち得る。シリカは、トップコート１０６の総重量に基づいて、例えば、約１重量％〜約５重量％、約５重量％〜約３０重量％、又は約１０重量％〜約２５重量％などの、約１重量％〜約３０重量％の範囲の量で存在してもよい。エラストマー層、トップコート、及び他の層の成分の重量パーセントは、別途記載のない限り、任意の硬化前に特定の層を作製するために使用される堆積組成物の総乾燥重量に基づく。シリカは、例えば、約５０ｎｍ〜約０．１μｍ又は約２０ｎｍなどの、約１０ｎｍ〜約０．２μｍの範囲で平均粒径を有し得る。

トップコートは、印刷システム全体の要件に応じて、例えば、約０．５μｍ〜約４ｍｍの範囲の厚さを有し得る。一実施形態では、トップコート１０６は、約１０マイクロメートル（μｍ）〜約１ミリメートル（ｍｍ）の厚さを有してもよい。他の実施形態では、画像形成部材トップコートは、約２０μｍ〜約２００μｍ、又は約５０μｍ〜約２００μｍの厚さを有する。一実施形態では、トップコートの厚さは、約４０μｍ〜約６０μｍである。別の実施形態では、トップコートの厚さは、約８０μｍ〜約１５０μｍである。

一実施形態では、トップコート１０６は、５ダイン／ｃｍ以下の極性成分を有する２２ダイン／ｃｍ以下の表面エネルギーを有してもよい。他の実施形態では、トップコートは、２１ダイン／ｃｍ以下の表面エネルギーを有し、極性成分が２ダイン／ｃｍ以下、又は表面エネルギーが１９ダイン／ｃｍ以下であり、極性成分が１ダイン／ｃｍ以下である。

一実施形態では、図２及び図３の両方に示されているような、トップコート１０６は、第１の部分及び第２の部分から製造されたフルオロシリコーン材料を含む。第１の部分（パートＡ）は、フルオロシリコーン、ＩＲ吸収性充填剤、シリカ、及び溶媒を含んでもよい。第２のパート（パートＢ）は、ビニル基を有する白金触媒、ヒドロシラン基を有する架橋剤、溶媒及び阻害剤を含んでもよい。パートＢにおけるビニル基のヒドロシラン基に対するモル比は、例えば、約１：１である。

パートＡのフルオロシリコーンは、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー（例えば、Ｗａｃｋｅｒ ５０３３０、ＳＭＬ（ｎ＝２７））を含んでもよく、以下の式１に示される。

式中、ｎは、１０〜１００、又は１５〜９０、又は１８〜８０の範囲であり得る。

実施形態では、パートＡのＩＲ吸収性充填剤は、本明細書に記載のＩＲ吸収性充填剤のいずれかであってもよい。実施形態では、ＩＲ吸収性充填剤はカーボンブラックである。一実施形態では、ＩＲ吸収充填剤は、本明細書に記載されるものなどの低硫黄カーボンブラックである。

実施形態では、パートＡはシリカを含む。実施例として、本明細書に記載の任意のシリカ粒子を、本明細書に記載の任意の量で用いることができる。

実施形態において、パートＡの溶媒は、酢酸ブチル、トリフルオロトルエン、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、及びこれらの混合物であってもよい。材料（例えば、エラストマー層１０４及び／又はプライマー１０８）と適合するものなどの任意の他の好適な溶媒、並びにトップコート１０６を作製するためのプロセス手順及び化学物質は、これらの溶媒に加えて、又はこれらの溶媒の代わりに用いられ得る。

パートＢは、ビニル基を有する白金触媒を含んでもよい。白金（Ｐｔ）触媒の例を以下の式２に示す。

式２に示すように、白金触媒は、ビニル基を有する。

パートＢは、架橋剤（例えば、ヒドロシラン基を有するトリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー）を含む。いくつかの実施形態では、トップコート組成物は、フルオロシリコーン架橋剤を含む。一実施形態では、架橋剤は、ＮｕＳｉｌ ＣｏｒｐｏｒａｔｉｏｎからのＸＬ−１５０架橋剤である。一実施形態では、架橋剤は、ＷａｃｋｅｒからのＳＬＭ５０３３６架橋剤である。例えば、一実施形態では、トップコート組成物は、トップコート組成物の総重量に基づいて、１０重量パーセント〜２８重量パーセントの架橋剤を含む。別の実施形態では、トップコートは、１２重量パーセント〜２０重量パーセントの架橋剤を含む。更に別の実施形態では、トップコートは、トップコート組成物の総重量に基づいて約１５重量パーセントの架橋剤を含む。

ヒドロシラン基を有する架橋剤を、以下の式３に示す。

式３に示すように、架橋剤はヒドロシラン基を有する。式３中、ｎは１０〜１００、又はｎは１５〜９０、ｎは１８〜８０であり、ｍは１〜５０、又はｍは２〜４５、又はｍは３〜４０である。パートＡ中のビニル基とパートＢの架橋剤中のヒドロシラン基とのモル比は、０．７：１．０〜約１．３：１．０、若しくは０．８：１．０〜約１．２：１．０のモル比であるか、又はモル比は約０．９：１．０〜約１．１：１．０である。

阻害剤（例えば、ｐｔ８８）を溶液中で使用して、フローコーティングのために、パートＡとパートＢとの混合溶液のポットライフを増加させることができる。

実施形態において、パートＢの溶媒は、酢酸ブチル、トリフルオロトルエン、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、酢酸ヘキシル、及びこれらの混合物であってもよい。材料（例えば、エラストマー層１０４）と適合するものなどの任意の他の好適な溶媒、並びにトップコート１０６を作製するためのプロセス手順及び化学物質は、これらの溶媒に加えて、又はこれらの溶媒の代わりに用いられ得る。

トップコート１０６（図２又は図３）は、任意の好適な技術を使用して、カーカスのエラストマー層１０４上にコーティングされてもよい。例えば、一実施形態では、本方法は、フローコーティング、リボンコーティング又はディップコーティングによってフルオロシリコーントップコート組成物を堆積させることと、トップコートを高温で硬化させることと、を含む。

実施形態では、白金触媒をパートＡに添加し、続いて軽く揺する。次に、パートＢを、Ｐｔ触媒を含有するパートＡ溶液に添加し、続いてボールミル粉砕を５分間行う。固体含有量の合計は、例えば酢酸ブチルなどの追加量で希釈することによって制御することができる。分散体を濾過してステンレス鋼ビーズを除去し、続いて濾過分散体を脱気することができる。次に、分散体をカーカス及びプライマー層の上にコーティングしてもよい。分散体はまた、成形されてもよい。硬化は、トップコート１０６を硬化させるための本明細書に記載される温度範囲及び時間のいずれかなど、所望の時間にわたって高温で実施されてもよい。フルオロシリコーン化合物の一例及び化合物を形成するための例示的な反応を図４に示す。

任意選択のプライマー層１０８は、層間の接着性を改善する任意の好適な材料を含み得る。プライマー材料の一例は、シロキサンである。一実施形態では、プライマー層１０８は、オクタメチルトリシロキサン（例えば、Ｈｅｎｋｅｌから市販されているＳ１１ ＮＣ）を含む。別の実施例では、プライマー材料は、Ｗａｃｋｅｒ Ｇ７９０プライマーなどのビニル末端アルコキシシランを含む。加えて、当業者に容易に理解されるように、接着性を更に向上させるために、インラインコロナ処理を基材１０２及び／又はプライマー層１０８に適用することができる。このようなインラインコロナ処理は、画像形成ブランケット層の表面エネルギー及び密着性を強化することができる。プライマー層の厚さは、例えば、約０．１ミクロン〜約１５マイクロメートル、又は約０．１マイクロメートル〜約１０マイクロメートルなどの、約０．０１マイクロメートル〜約２０マイクロメートルの範囲であり得る。

エラストマー層１０４は、シリコーンエラストマーを含む。シリコーンエラストマーは、任意の既知のシリコーンエラストマーであってもよい。例えば、特定の実施形態では、シリコーンエラストマーは、室温加硫（ＲＴＶ）シリコーンゴム、高温加硫（ＨＴＶ）シリコーンゴム、及び低温加硫（ＬＴＶ）シリコーンゴムなどのシリコーンゴムであってもよい。このようなゴムは既知であり、例えば、ＲＴ６２２シリコーン（Ｗａｃｋｅｒ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉｏｎから入手可能）、シラスティック（登録商標）７３５黒色ＲＴＶ及びシラスティック（登録商標）７３２ＲＴＶ（どちらもＤｏｗ Ｃｏｒｎｉｎｇから入手可能）、１０６ＲＴＶシリコーンゴム及び９０ＲＴＶシリコーンゴム（どちらも、Ｇｅｎｅｒａｌ Ｅｌｅｃｔｒｉｃから入手可能）、及びＪＣＲ６１１５Ｃｌｅａｒ ＨＴＶ及びＳＥ４７０５Ｕ ＨＴＶシリコーンゴム（どちらも、Ｄｏｗ Ｃｏｒｎｉｎｇ Ｔｏｒａｙ Ｓｉｌｉｃｏｎｅｓから入手可能）などの市販品であり、容易に入手可能である。特定の実施形態では、シリコーンエラストマーはＲＴＶシリコーンゴムである。シリコーンエラストマーは、熱伝導性又は硬度などの所望の特性を提供するのに十分な任意の所望の量でエラストマー層１０４に存在してもよい。例えば、特定の実施形態では、シリコーンエラストマーは、例えば、約９０％〜約９９％又は約９５％〜約９８％などの、約８５％〜約１００％の範囲の量でエラストマー層中に存在する。

エラストマー層は、任意選択的に、少なくとも１つの熱伝導性充填剤を含むことができる。実施形態において、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び酸化亜鉛などの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素カーボンブラック、カーボンナノチューブグラフェン、及びこれらの混合物（「これらの混合物」という概念は、本出願全体に記載されている「少なくとも１つの」という語句によって包含される）から選択され得る。特定の実施形態では、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、酸化アルミニウム及び窒化ホウ素から選択される。特定の実施形態では、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、酸化鉄及び酸化アルミニウムから選択される。

充填剤は、熱伝導性を向上させるのに十分な量で含まれてもよく、基材上にコーティングされると、熱伝導率が向上した画像形成ブランケットを提供することができる。特定の実施形態では、少なくとも１つの熱伝導性充填剤は、シリコーンエラストマー組成物の総重量の、例えば約１重量％〜約１０重量％、又は約２重量％〜約５重量％などの、約１重量％〜約１５重量％の範囲の量で組成物中に存在してもよい。

本明細書で更に開示されるのは、画像形成ブランケットの作製方法である。特定の実施形態では、方法は、本明細書に開示されるシリコーンエラストマーを基材上にコーティングして、画像形成ブランケットを形成することを含む。基材は、上述の基材１０２などの、本明細書に開示される任意の基材であり得る。本明細書に開示されるシリコーンエラストマーは、フローコーティング、ディップコーティング、又はリボンフローコーティングなどの当該技術分野において既知の任意の方法によって基材上にコーティングされ得る。コーティング後、シリコーンエラストマーは、基材上で硬化され得る。実施形態では、組成物は、約２０℃〜約２５０℃、例えば、約１００℃〜約２００℃の範囲の温度で硬化される。一実施形態では、組成物は、室温、例えば約２０℃〜約２５℃で硬化される。特定の実施形態では、本明細書に開示されるシリコーンエラストマーは、白金触媒、スズ触媒、過酸化物触媒若しくは開始剤、又は列挙された触媒及び／若しくは開始剤のいずれかのうちの２つ以上の任意の組み合わせなどの、少なくとも１つの触媒及び／又は開始剤の添加によって硬化され得る。

本明細書に開示されるシリコーンエラストマーは、可変データリソグラフィ印刷用途などの所望の用途に適切な任意の厚さで基材上にコーティングされてもよい。特定の実施形態では、基材上のエラストマー層の厚さは、例えば、約０．２５ｍｍ〜約１．０ｍｍ、約０．５ｍｍ〜約０．７５ｍｍなどの、約０．１ｍｍ〜約１．５ｍｍの範囲であってもよく、又は特定の実施形態では、約０．５ｍｍの厚さであってもよい。

本明細書に開示されるように、本明細書に開示されるシリコーンエラストマーでコーティングされた画像形成ブランケットは、向上した熱伝導率を示し得る。この向上した熱伝導率は、画像形成ブランケットが所望の硬度を維持しても見受けられる。例えば、特定の実施形態では、本明細書に開示されるエラストマー層１０４のショアＡ硬度は、例えば、約６０ショアＡ〜約９０ショアＡ、又は約６０ショアＡ〜約８０ショアＡなどの、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲であり得る。シリコーンエラストマー組成物の硬度は、ショアＡデュロメータのダイアルでなどの当該技術分野において既知の任意の手段によって測定することができる。

特定の例示的な実施形態では、本明細書に開示されるエラストマー層でコーティングされたエラストマー層又は画像形成ブランケットの熱伝導率は、例えば約０．５Ｗ／ｍ^２〜約５Ｗ／ｍ^２、又は約０．６Ｗ／ｍ^２〜約１．６Ｗ／ｍ^２などの、約０．５Ｗ／ｍ^２〜約１０Ｗ／ｍ^２の範囲であってもよい。熱伝導率は、当該技術分野において既知の任意の手段によって測定することができる。例えば、特定の実施形態では、熱伝導率は、フラッシュ法を使用して測定することができ、サンプルは、短い光パルスによって加熱され得、結果として得られる温度上昇は、赤外線検出器を使用して測定され得る。特定の実施形態では、熱伝導率は、例えば、Ｎｅｔｚｓｃｈ Ｇｒｏｕｐ製のＬＦＡ ４４７ ＮａｎｏＦｌａｓｈ（登録商標）を使用して測定することができる。

実施形態では、上述のように、エラストマー層でコーティングされた本明細書に開示される画像形成ブランケットは、トップコート、例えばフルオロシリコーンを含む分散体、及び任意選択的に少なくとも１つの赤外線吸収充填剤及び／又はトップコート１０６などの追加の充填剤を含む分散体を更に含んでもよい。

特定の実施形態では、トップコート組成物は、本明細書に開示されるエラストマー層１０４でコーティングされた画像形成ブランケットに塗布され、次に硬化されてもよい。硬化は、例えば約１６０℃などの、約１３５℃〜約１６５℃の範囲の高温で実施されてもよい。この高温は室温に対比している。硬化は、約１時間〜約４時間、又は約２時間〜約４時間などの、約１５分〜約５時間の時間にわたって生じ得る。特定の実施形態では、硬化は、約１６０℃で約４時間行われ得る。トップコート組成物は、白金触媒などの触媒、又はトップコートの堆積に使用するための本明細書に開示される他の触媒のいずれかなどの触媒を更に含んでもよい。

本明細書に開示される特定の実施形態では、エラストマー層を含む画像形成ブランケットは、布地層と、圧縮性発泡体層及びゴム層の一方又は両方を含む画像形成ブランケットなどの従来の画像形成ブランケットと比較して、改善された熱伝導率を有することができ、圧縮性発泡体及びゴム層は熱伝導性充填剤を含まない。特定の実施形態では、本明細書に開示される画像形成ブランケットは、印刷時、少なくとも約２０回転後、少なくとも約３０回転後、少なくとも約４０回転後、又は少なくとも約５０回転後などの、少なくとも約１０回転後の印刷時に、画像形成ブランケットが、例えば、約２８℃未満、約２７℃未満、約２６℃未満、又は約２５℃未満（例えば約２４℃〜約２５℃）などの、約２９℃未満の温度を有する点で改善された熱伝導率を示すことができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される画像形成ブランケットは、例えば、少なくとも約２０回転後、少なくとも約３０回転後、少なくとも約４０回転後、又は少なくとも約５０回転後などの、少なくとも約１０回転後の印刷時に画像形成ブランケットが、その開始時（すなわち、０回転）の温度から、例えば、約８℃未満、約７℃未満、約６℃未満、約５℃未満、約４℃未満、約３℃未満、又は約３℃などの、約９℃未満の温度に温度を上昇させる点で改善された熱伝導率を示すことができる。

更に、本明細書では、可変データリソグラフィ印刷のためのプロセスが開示される。特定の実施形態では、プロセスは、本明細書に開示されるようなエラストマー層を含む画像形成部材に湿し水を塗布することと、非画像領域及び画像領域を形成して潜像を形成するために湿し水を画像形成部材表面上の選択的位置から蒸発させることと、インク組成物を画像領域に塗布することによって潜像を現像することと、現像された潜像を転写先基材に転写することと、を含む。画像形成ブランケットは、本明細書に記載の画像形成ブランケットのいずれかであってもよい。

本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメーターは近似値であるが、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含される任意の及び全ての小範囲を包含すると理解されるべきである。

１つ以上の実装形態に関して本教示は例示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、改変及び／又は修正を例示の実施例に対して行うことができる。加えて、本教示の特定の特徴がいくつかの実装のうちの１つにのみ関して開示されていることがあり得るが、そのような特徴は、任意の所与の機能又は特定の機能のために所望されかつ有利であり得るものとして、他の実装の１つ以上の他の特徴と組み合わされてもよい。更に、用語「含む（ｉｎｃｌｕｄｉｎｇ）」、「含む（ｉｎｃｌｕｄｅｓ）」、「有する（ｈａｖｉｎｇ）」、「有する（ｈａｓ）」、「有する（ｗｉｔｈ）」、又はこれらの変形が発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、用語「含む（ｃｏｍｐｒｉｓｉｎｇ）」と同様の手法での包含であることが意図される。更に、本明細書における考察及び「特許請求の範囲」内の「約」という用語は、変更が例示された実装形態へのプロセス又は構造の非適合性をもたらさない限り、列挙された値が幾分変更されてもよいことを示す。最後に、「例示的な」は、その記載が理想的であることを暗示するのではなく、一実施例として使用されることを示す。

様々な上記に開示したもの並びに他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又はアプリケーションに組み合わされてもよいことが理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、若しくは改善が、以後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の「特許請求の範囲」によって包含されることを意図している。

以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示的なものに過ぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。特に指示がない限り、分率及び百分率は重量である。

シリコーンエラストマー及びシリコーン発泡体を含む試験カーカスを作製した。まず、ニッケル金属スリーブ上にクローズドセルシリコーン発泡体層を配設することにより、カーカスを構築した。発泡体層の厚さは３００マイクロメートルであり、ショアＡ硬度は２５であった。次に、熱伝導性充填剤を室温のポリジメチルシロキサン系加硫ＲＴＶシリコーン配合物に分散させ、得られた分散体を、発泡体層で既存のニッケルスリーブ上にコーティングし、約１００℃〜約２００℃の範囲で白金触媒を使用して１〜４時間硬化させて、カーカスを得た。スリーブ上で硬化した熱伝導性充填剤を有するシリコーンエラストマー層の厚さは５００マイクロメートルであり、約０．７８Ｗ／ｍ^２の熱伝導率を有するショアＡ硬度が８０ショアＡであることが測定された。ショア硬度は、Ｉｎｓｔｒｏｎ（登録商標）製のショアダイアルデューロメーターを使用して測定した。

フルオロシリコーン／カーボンブラックのトップコートを、上記の実施例１に記載のシームレスシリコーン／シリコーン発泡体試験カーカスに逆リングコーティングによって塗布した。トップコートを堆積させる前に、Ｇ７９０プライマー層をカーカス上に堆積させた。トップコートを１６０℃で４時間硬化させた。トップコートが完全に硬化した。トップコートは、ビニル末端アルコキシシランであるＷａｃｋｅｒ製のＧ７９０プライマーを有するシリコーンとの良好な接着を有した。シリコーン片は、溶媒系分散液との接触又は高温硬化後に膨潤又は変形しなかった。この示されたシリコーンは、トップコート硬化温度に好適であり、耐溶剤性である。ブランケットを試験固定具上で印刷試験した。図５に示されるように、印刷ＩＱは、ペタパッチ、低いバックグラウンド、良好なハーフトーン、及び良好な画像鮮鋭度を提供した。

Claims (20)

1. 可変データリソグラフィのための画像形成ブランケットであって、
   基材と、
   前記基材上に配設された発泡体層と、
   前記発泡体層上に配設されたエラストマー層であって、シリコーンエラストマーを含む、エラストマー層と、を含み、
   前記エラストマー層が、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する、画像形成ブランケット。
2. 前記発泡体層及び前記エラストマー層から選択される少なくとも１つの層が、少なくとも１つの熱伝導性充填剤を更に含む、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
3. 前記少なくとも１つの熱伝導性充填剤が、前記エラストマー層の総重量に基づいて、約１重量％〜約１５重量％の範囲の量で前記エラストマー層中に存在する、請求項２に記載の画像形成ブランケット。
4. 前記発泡体層が、約１０〜約５０ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
5. 前記基材が、金属、プラスチック、及び織布からなる群から選択される少なくとも１つの材料を含む、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
6. 前記基材が、布地層を含まない、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
7. フルオロシリコーン及び少なくとも１つの赤外線吸収充填剤を含むトップコートを更に含む、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
8. 前記少なくとも１つの赤外線吸収充填剤が、カーボンブラックである、請求項７に記載の画像形成ブランケット。
9. 前記エラストマー層が、約０．５Ｗ／ｍ^２〜約１０Ｗ／ｍ^２の範囲の熱伝導率を有する、請求項７に記載の画像形成ブランケット。
10. 前記基材と前記トップコートとの間に配設されたプライマー層を更に含む、請求項７に記載の画像形成ブランケット。
11. 前記エラストマー層が、約６０ショアＡ〜約９０ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
12. 前記エラストマー層が、少なくとも１つの触媒を更に含む、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
13. 前記少なくとも１つの触媒が、白金触媒である、請求項１１に記載の画像形成ブランケット。
14. 前記シリコーンエラストマーが、室温加硫シリコーンゴムである、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
15. 前記シリコーンエラストマーが、微量より多い硫黄を含まない、請求項１に記載の画像形成ブランケット。
16. 可変データリソグラフィのための画像形成ブランケットを作製する方法であって、
    発泡体層が上に配設された基材を提供することと、
    シリコーンエラストマーを含むエラストマー層を前記発泡体層に塗布することと、
    前記エラストマー層を硬化させることと、を含み、
    前記エラストマー層が、約５０ショアＡ〜約１００ショアＡの範囲のショアＡ硬度を有する、方法。
17. 前記エラストマー層を硬化させることが、室温で生じる、請求項１６に記載の方法。
18. 前記画像形成ブランケットが、約０．５Ｗ／ｍ^２〜約１０Ｗ／ｍ^２の範囲の熱伝導率を有する、請求項１６に記載の方法。
19. フルオロシリコーン及び少なくとも１つの赤外線吸収充填剤を含むトップコートを前記画像形成ブランケットに塗布することと、
    前記トップコートを硬化させることと、を更に含む、請求項１６に記載の方法。
20. 可変データリソグラフィシステムであって、
    画像形成ブランケットを含む画像形成部材であって、前記画像形成ブランケットが、
    基材と、
    前記基材上に配設された発泡体層と、
    前記発泡体層上に配設されたエラストマー層であって、シリコーンエラストマーを含む、エラストマー層と、
    フルオロシリコーン及び少なくとも１つの赤外線吸収充填剤を含むトップコートと、を含む、画像形成部材と、
    前記画像形成ブランケットに湿し水の層を塗布するように構成された湿し水サブシステムと、
    潜像を生成するように前記湿し水層の一部を選択的に除去するように構成されたパターニングサブシステムと、
    前記画像形成ブランケット上にインクを塗布して、それによりインク画像を生成するように構成された、インカーサブシステムと、
    前記インク画像を媒体基材に転写するように構成された画像転写機構と、を備える、可変データリソグラフィシステム。