JP2021015050A - オゾン検知用ナノ複合材料及びそれを用いたオゾン検知方法 - Google Patents

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昌儀 安藤
Masanori Ando
昌儀 安藤
茂里 康
Yasushi Shigeri
康 茂里
野田 和俊
Kazutoshi Noda
和俊 野田
秀信 愛澤
Hidenobu Aizawa
秀信 愛澤
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Abstract

【課題】 防爆性及び安全性が高く、構造が比較的簡単で安価に製造可能な小型オゾン検知装置に使用できるオゾン検知用ナノ複合材料及びそれを用いたオゾン検知方法の提供を課題とする。【解決手段】 化合物半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子の複合材料からなるオゾン検知用材料であって、前記化合物半導体ナノ粒子は、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体ナノ粒子であり、前記貴金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、オゾン検知材料を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、オゾン検知材料及びそれを用いたオゾン検知方法に関する。
空気等の気体中に含まれる微量のオゾン(O3)を検知し、その濃度を測定する技術は、産業上、環境上の問題に関連して重要である。最近、空気等の気体中に含まれるオゾンの検知材料とそれを用いた検知方法の開発への要望が高まっている。なぜなら、オゾンは、自己分解すれば有害物質を残さないクリーンな酸化剤として、水、空気等の殺菌剤又は脱臭剤の他、半導体製造産業におけるクリーニング剤としても、最近利用が拡大しているが、自己分解する前のオゾン自体は、微量でも人体に有害であるからである。
しかしながら、病院、宿泊施設、自動車内、一般家庭等で使用されるような小型のオゾン発生装置には、従来、多くの場合、オゾンを検知し濃度を測定する装置が付属していなかった。その理由は、従来のオゾン検知装置が大型で高価であるためである。無人環境で室内を薫蒸処理するための高濃度オゾン発生装置のみならず、有人環境で使用可能とされる低濃度オゾン発生装置であっても、狭い室内で運転すると、日本における作業環境基準濃度0.1ppmを容易に超過し、人体に悪影響を及ぼし得ることが問題視されている(非特許文献1)。そのため、小型で安価に製造可能なオゾン検知装置が要望されている。
従来、空気等の気体中に含まれる微量のオゾンを検知するための材料及びオゾン検知方法としては、例えば、(1)オゾン固有の紫外波長域での光吸収(波長200〜300nm域に強い吸収があり、気体状態での吸収ピーク波長は253.7nm)を利用して検知する方法、(2)インジゴ色素等の可視光吸収が、色素とオゾンとの反応によって不可逆的に変化(褪色)することを利用して検知する方法(ガラス管中にインジゴ色素等を充填し、色変化によるガス検知管として用いられる)、(3)ヨウ化カリウム水溶液にオゾンガスを吸収させ、遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウムによって還元滴定する方法(ヨウ素法)、(4)オレフィン類とオゾンとが反応する際に起こる化学発光を利用して検知する方法、(5)加熱状態での酸化インジウム等の酸化物半導体の電気伝導度が、オゾンの存在下で可逆的に変化することを利用して検知する方法(半導体式ガスセンサ)等が知られている。
「家庭用オゾン発生器の安全性」、平成21年8月27日、独立行政法人国民生活センター、URL:http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20090827_1.pdf
しかし、上記の従来方法においては、以下のような問題がある。すなわち、(1)の方法では、微量のオゾンによる非常に微小な光吸収変化を検出する必要があるため、長い光路長のガスセル、自動吸引ポンプ、高価な高精度光検出器及び光源を要し、装置が大型で高価なものになる。(2)の方法では、オゾンによる色素の光吸収変化が不可逆であるので、1回限りのオゾン検知にしか利用できず、連続的な又は繰り返しのオゾン検知には利用できない。(3)の方法では、1回毎に被検ガスを溶液に吹き込み、不可逆的な化学反応をさせて分析するので、連続的な又は繰り返しのオゾン検知ができない。(4)の方法では、化学発光を生じさせるために、例えば被検ガスとエチレンガスとを、流量を制御しつつ混合する装置、吸引ポンプ等を要するので装置は大型で高価なものとなる。また、この方法は化学発光を生じさせるための操作が測定の度毎に必要であるので、連続的な又は繰り返しのオゾン検知には利用できず間歇的な検知のみ可能である。(5)の方法では、オゾン検知用材料である酸化インジウム等を常時300℃程度の高温に加熱しておく必要があるため、作動に要する消費エネルギーが大きく、また、通常は金属メッシュ等による簡易防爆が施されているものの、センサ使用環境によっては、オゾン以外の可燃性ガス又は爆発性ガスが高温のセンサ素子に接触する可能性があることを考慮すれば、防爆性及び安全性については不利である。
ところで、化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)は、蛍光体としての歴史はまだ比較的浅く、粒径の揃った化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)の合成技術、表面欠陥を減少させて蛍光強度を高めるための表面化学修飾技術が発達した1980年代後半から注目されるようになった。量子ドットは、励起光の波長について選択自由度が高く、励起光と蛍光の波長を離すことができる。金属イオン分散セラミックスと比較すると、励起光の吸収と蛍光の発光のサイクルを大幅に速くすることができるので、励起光強度を高めた時に蛍光強度が飽和しにくく高輝度化に有利である。有機色素よりも耐光性が格段に高く劣化や褪色を起こしにくい。このような種々の利点があるため、量子ドットは新規高輝度蛍光体として、蛍光色素、電子材料等の幅広い応用が期待され、研究開発が進められている。
しかしながら、量子ドットの蛍光強度等が表面状態によって変わるという特性をガスセンサに応用する試みはほとんど未開拓の分野であり、関係する基礎研究の報告もこれまで少数であった。特に、ほとんどの場合、ガスセンサは空気中で使用するので、被検ガス含有空気中と被検ガス不含有空気中とで量子ドットの蛍光を測定及び比較することが、実用的なガスセンサ特性を調べる上で必要であるが、そのような実用的な条件で量子ドットの蛍光のオゾンガス応答性を報告した例は、本発明者らが報告した論文M. Ando, T. Kamimura, K. Uegaki, V. Biju, Y. Shigeri, Sensing of ozone based on its quenching effect on the photoluminescence of CdSe-based core-shell quantum dots, Microchim. Acta, Vol. 183, pp. 3019-3024 (2016); doi: 10.1007/s00604-016-1938-9.、及び、M. Ando, V. Biju, Y. Shigeri, Development of technologies for sensing ozone in ambient air, Anal. Sci., Vol. 34, pp. 263-271 (2018); doi: 10.2116/analsci.34.263.、及び、本発明者らによる特許出願(特開2017−145153号公報)以外は皆無である。
このため、防爆性及び安全性が高く、構造が比較的簡単で安価に製造可能な小型オゾン検知装置のためのオゾン検知材料とオゾン検知方法が要望されている。検知したオゾン濃度の表示が概略的な濃度域の表示であっても、例えば、多数のセンサを各小型オゾン発生装置に取り付けて、空気中のオゾン濃度が安全域、要注意域及び危険域のいずれにあるかを表示させる使用方法、多数のセンサをパイプラインの各所に設置しておきオゾンの漏洩を迅速に検知する使用方法等が考えられる。これらの用途には、繰り返し測定又は連続測定が可能なオゾン検知材料及びオゾン検知方法が必要である。
このため、防爆性及び安全性が高く、構造が比較的簡単で安価に製造可能な小型オゾン検知装置に使用できるオゾン検知材料及びオゾン検知方法が必要である。
本発明は、上記のような課題を解決しようとするものであり、防爆性及び安全性が高く、構造が比較的簡単で安価に製造可能な小型オゾン検知装置に使用できるオゾン検知材料及びオゾン検知方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明者らは、本発明の基礎となった発明(安藤昌儀、茂里康、上垣浩一、上村拓也、オゾン検知材料及びそれを用いたオゾン検知方法、特開2017−145153において、特定の化合物半導体ナノ粒子が、オゾン存在下では蛍光強度が低下することを見出した(M. Ando, T. Kamimura, K. Uegaki, V. Biju, Y. Shigeri, Sensing of ozone based on its quenching effect on the photoluminescence of CdSe-based core-shell quantum dots, Microchim. Acta, Vol. 183, pp. 3019-3024 (2016); doi: 10.1007/s00604-016-1938-9.、及び、M. Ando, V. Biju, Y. Shigeri, Development of technologies for sensing ozone in ambient air, Anal. Sci., Vol. 34, pp. 263-271 (2018); doi: 10.2116/analsci.34.263.)。このうち、特定の化合物半導体ナノ粒子は、可逆的に蛍光強度を変化させることができるため、繰り返し測定及び連続測定も可能であることも見出した。このことを利用し、当該化合物半導体ナノ粒子をオゾン検知材料として繰り返し又は連続的に使用することができる。
本発明は、上記の知見に基づき、さらなる感度向上を目指して研究を重ね、完成させたものである。具体的には、化合物半導体ナノ粒子に金(Au)又は白金(Pt)のような貴金属ナノ粒子を複合薄膜化することにより、化合物半導体ナノ粒子単独の薄膜に比べてオゾン感度(オゾン接触時の蛍光強度変化率)及び/又はオゾン応答速度(オゾン接触時の蛍光強度減少速度)及び/又は空気中からオゾンを除去した後の蛍光強度回復速度(雰囲気を、オゾン含有空気からオゾン不含有空気に切り替えた後の蛍光強度回復速度)が顕著に向上することを見出した。即ち、本発明は以下の構成を包含する。
[1]化合物半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子からなるオゾン検知材料であって、前記化合物半導体ナノ粒子は、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体ナノ粒子であり、前記貴金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、オゾン検知材料。
[2]前記II族元素がカドミウム及び/又は亜鉛であり、前記VI1族元素がセレン、テルル及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載のオゾン検知材料。
[3]前記半導体ナノ粒子が、CdSe又はCdSeTeである、[1]又は[2]に記載のオゾン検知材料。
[4]前記化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径が1〜30nmである、[1]-[3]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[5]前記化合物半導体ナノ粒子が、コアシェル型構造を有する化合物半導体ナノ粒子であり、前記コアがII族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体からなり、前記シェルが、前記コアとは化学組成が異なる、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体からなる、[1]-[4]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[6]前記コア及びシェルにおける前記II族元素がカドミウム及び/又は亜鉛であり、前記コア及びシェルにおける前記VI族元素がセレン、テルル及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載のオゾン検知材料。
[7]前記コアを構成するII-VI族半導体がCdSe又はCdSeTeであり、前記シェルを構成するII-VI族半導体がZnS又はCdZnSである、[5]又は[6]に記載のオゾン検知材料。
[8]前記コアの平均粒子径が1〜30nmであり、前記シェルの平均厚さが、前記コアの平均粒子径の0.5倍以下である、[5]-[7]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[9]前記貴金属ナノ粒子の平均粒子径が1〜30nmであり、半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子の体積比が1:2〜100:1の範囲にある、[5]-[7]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[10]前記化合物半導体ナノ粒子が、界面活性剤で被覆されている、[1]-[9]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[11]前記化合物半導体ナノ粒子が、ポリマー又はガラスでコートされていない、[1]-[10]のいずれかに記載のオゾン検知材料。
[12]透明基板上、半透明基板上、導波路上、又は光ファイバー表面上に、[1]-[11]のいずれかに記載のオゾン検知材料が分散固定されている、オゾンセンサ。
[13][1]-[11]のいずれかに記載のオゾン検知材料又は[12]に記載のオゾンセンサの蛍光強度を測定する、オゾン検知方法。
[14][1]-[11]のいずれかに記載のオゾン検知材料又は[12]に記載のオゾンセンサの蛍光強度を測定する、オゾン濃度測定方法。
本発明のオゾン検知材料は、特定の化合物半導体ナノ粒子と特定の貴金属ナノ粒子の複合薄膜を使用しており、薄膜中での化合物半導体と貴金属は微量であるため、安価で、且つ、小型のオゾン検知装置を製造することが可能である。
上記のオゾンの検知は、室温において行うこともでき、電圧印加も不要であるため、可燃性ガス又は爆発性ガスと接触した場合であっても、防爆性及び安全性を高くすることができる。
また、本発明のオゾン検知材料は、特定の化合物半導体ナノ粒子と特定の貴金属ナノ粒子の複合薄膜を使用しており、光学的なオゾン測定手法に用いた際、オゾンに対する高い感度、及び/または、オゾンに対する高い応答速度、及び/または、オゾン非存在下での高い回復速度を有する。
比較例及び実施例1〜3の量子ドット薄膜、及び、量子ドット・貴金属ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の表面の原子間力顕微鏡(AFM)像を示す。a:貴金属ナノ粒子と複合していない量子ドット薄膜(比較例)、b:量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(実施例1)、c:量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(実施例2)、d:量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(実施例3)。 合成空気(オゾン非含有)中及びオゾン含有合成空気中における、比較例の量子ドット薄膜(オゾンセンサ)の蛍光スペクトルを示す(a:合成空気中、b:0.5ppmオゾン含有合成空気中、c:10ppmオゾン含有合成空気中、d:100ppmオゾン含有合成空気中、e:200ppmオゾン含有合成空気中)。25℃、1気圧。 合成空気(オゾン非含有)中及び0.5ppmオゾン含有合成空気中における、比較例及び実施例1〜3の量子ドット薄膜、及び、量子ドット・貴金属ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の、蛍光ピーク波長における可逆な蛍光強度変化の時間応答性を示す。a:貴金属ナノ粒子と複合していない量子ドット薄膜(比較例)、b:量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(実施例1)、c:量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(実施例2)、d:量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(実施例3)、A:合成空気中、B:0.5ppmオゾン含有合成空気中。25℃、1気圧。 合成空気(オゾン非含有)中及びオゾン含有合成空気中における、実施例1の量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光スペクトルを示す(a:合成空気中、b:0.5ppmオゾン含有合成空気中、c:10ppmオゾン含有合成空気中、d:100ppmオゾン含有合成空気中、e:200ppmオゾン含有空気中)。25℃、1気圧。 合成空気(オゾン非含有)中及びオゾン含有合成空気中における、実施例2の量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光スペクトルを示す(a:合成空気中、b:0.5ppmオゾン含有合成空気中、c:10ppmオゾン含有合成空気中、d:100ppmオゾン含有合成空気中、e:200ppmオゾン含有空気中)。25℃、1気圧。 合成空気(オゾン非含有)中及びオゾン含有合成空気中における、実施例3の量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光スペクトルを示す(a:合成空気中、b:0.5ppmオゾン含有合成空気中、c:10ppmオゾン含有合成空気中、d:100ppmオゾン含有合成空気中、e:200ppmオゾン含有空気中)。25℃、1気圧。 比較例及び実施例1〜3の量子ドット薄膜、及び、量子ドット・貴金属ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度のオゾン濃度依存性を示す。a:貴金属ナノ粒子と複合していない量子ドット薄膜(比較例)、b:量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(実施例1)、c:量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(実施例2)、d:量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(実施例3)。25℃、1気圧。 比較例及び実施例1〜3の量子ドット薄膜、及び、量子ドット・貴金属ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度のオゾン濃度依存性についてのStern-Volmerプロットを示す。a:貴金属ナノ粒子と複合していない量子ドット薄膜(比較例)、b:量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(実施例1)、c:量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(実施例2)、d:量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(実施例3)。25℃、1気圧。 本発明のオゾンセンサの一実施の形態における断面の模式図を示す。具体的には、化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)および貴金属ナノ粒子複合薄膜(オゾン検知材料)を基板上に堆積して作製したオゾンセンサの断面を示す模式図である。
1.オゾン検知材料
本発明のオゾン検知材料は、化合物半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子からなるオゾン検知材料であって、前記化合物半導体ナノ粒子は、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体ナノ粒子であり、前記貴金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)は、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体ナノ粒子である。II族元素としては、周期表12族元素が挙げられ、例えば、カドミウム、亜鉛等が挙げられる。本発明において使用するII-VI族化合物半導体ナノ粒子には、これらのうち、単独のII族元素を含み得るし、複数のII族元素を含み得る。また、VI族元素としては、周期表16族元素が挙げられ、例えば、セレン、テルル、硫黄等が挙げられる。本発明において使用するII-VI族化合物半導体ナノ粒子には、これらのうち、単独のVI族元素を含み得るし、複数のVI族元素を含み得る。このようなII-VI族化合物半導体ナノ粒子を構成するII-VI族化合物半導体としては、オゾンとの反応性(感度)をより向上させ、可逆応答に必要な安定性をより両立させる観点から、例えば、CdSe、CdSeTe等が挙げられる。
本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる貴金属ナノ粒子は、オゾン検知用材料の他の構成要素である化合物半導体ナノ粒子が示す光学的なオゾン感度を増幅させる効果、すなわち、オゾンに感応して示す蛍光強度変化を増幅させる効果、及び/又は光学的なオゾン応答速度を増幅させる効果、すなわち、オゾンに接触した際に蛍光強度が変化する速度を増幅させる効果、及び/又はオゾン非存在下での光学的な回復速度を増幅させる効果、すなわち、オゾン含有雰囲気からオゾン非含有雰囲気に変えた際に蛍光強度が変化しオゾン接触前の強度に回復する速度を増幅させる効果を発現する。このような貴金属ナノ粒子としては、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属ナノ粒子であり、単数種類の貴金属ナノ粒子、複数種類の貴金属ナノ粒子の混合物、又は複数種類の貴金属の合金のナノ粒子を例示することができる。これらの貴金属ナノ粒子は、オゾンの吸着及び又は脱離を促進する効果、オゾンの分解反応を促進する触媒効果、プラズモン吸収をもち、貴金属ナノ粒子の近傍での電場がそれ以外の場所での電場よりも強くなる局所電場効果等をもつ。これらの効果により、貴金属ナノ粒子近傍のII-VI族化合物半導体ナノ粒子へのオゾンの吸着量の増大、オゾン非存在下でII-VI族化合物半導体ナノ粒子表面のオゾン量が減少する速度の増大が生じ、その結果、II-VI族化合物半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子の複合材料では、貴金属ナノ粒子を複合しないII-VI族化合物半導体ナノ粒子と比較して高いオゾン感度、大きなオゾン応答速度、オゾン非存在下での大きな蛍光強度回復速度が得られると考えられる。このようなオゾン感度・応答速度・回復速度を増幅させる効果をもつ貴金属ナノ粒子としては、特に、金ナノ粒子、白金ナノ粒子が好ましい。金ナノ粒子や金を含むナノ粒子は、近傍に存在する化合物半導体ナノ粒子のオゾン感度を向上させる効果、及び、オゾン応答速度及び/またはオゾン応答後の空気中での回復速度を向上させる効果が大きい。白金ナノ粒子や白金を含むナノ粒子は、近傍に存在する化合物半導体ナノ粒子のオゾン感度を向上させる効果が大きい。パラジウムナノ粒子やパラジウムを含むナノ粒子は、近傍に存在する化合物半導体ナノ粒子のオゾン応答速度及び/またはオゾン応答後の空気中での回復速度を向上させる効果が大きい。これに対して、銀(Ag)ナノ粒子は、近傍に存在する化合物半導体ナノ粒子の蛍光強度を、銀ナノ粒子と複合しない場合に比べて弱める効果があるため、オゾンセンサ出力のS/N比が低下し、オゾンセンサ特性向上にはあまり有利でない。
本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属ナノ粒子は、粒径1〜30nmが好ましく、粒径3〜20nmがより好ましい。これは、オゾンガスセンサ特性向上に寄与する貴金属ナノ粒子のガス吸脱着作用は、粒径が小さいほど比表面積が大きくなるので高まるが、粒径が1nmよりも小さいと、粒径減少に伴う貴金属ナノ粒子の不安定化が顕著になり、ガスセンサ材料としての繰り返し測定・連続測定・長期使用に適さなくなるからである。また、オゾンガスセンサ特性向上に寄与する貴金属ナノ粒子のプラズモン効果・局所電場効果を発現させるためにも、貴金属ナノ粒子は、粒径1〜30nmが好ましく、粒径3〜20nmがより好ましい。
本発明のオゾン検知用材料において、半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子の体積比は1:2〜100:1が好ましく、10:1〜50:1がより好ましい。これは、貴金属ナノ粒子が、そのガス吸脱着作用・オゾン分解触媒作用等の表面化学機能、及び/またはプラズモン効果・局所電場効果によって、オゾン検知用材料中の半導体ナノ粒子に対してオゾン検知特性向上効果を及ぼすためには、貴金属ナノ粒子と半導体ナノ粒子は約10nm以下の距離に近接していることが好ましいので、貴金属ナノ粒子は半導体ナノ粒子に対して一定以上の体積比で存在している必要があるが、一方で、貴金属ナノ粒子の半導体ナノ粒子に対する存在比が大き過ぎても、オゾン検知特性向上効果は飽和してしまうからである。上記のように、本発明のオゾン検知用材料においては、半導体ナノ粒子に対する貴金属ナノ粒子の好ましい体積比は比較的小さいので、本発明のオゾン検知用材料を用いてコスト面でも利点の多いオゾンセンサを構成可能である。
また、本発明のオゾン検知用材料は好ましい実施の形態において、貴金属ナノ粒子が半導体ナノ粒子に対して10nm以下の粒子間距離で存在する。
本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子がコアシェル型構造を有するII-VI族化合物半導体ナノ粒子である場合、前記コア及びシェルの双方が、II族元素とVI族元素からなることが好ましい。この場合、コア及びシェルを構成するII族元素としては、周期表12族元素が挙げられ、例えば、カドミウム、亜鉛等が挙げられる。コア及びシェルには、これらのうち、単独のVI族元素を含み得るし、複数のVI族元素を含み得る。ただし、コアからの電子の染み出しをより抑制してオゾン非存在下での蛍光強度をより向上させ、オゾンをより高感度に検出する観点からは、シェルを構成するII-VI族化合物半導体は、コアを構成するII-VI族化合物半導体よりもエネルギーギャップ(Eg)が大きい材料であることが好ましい。このようなII-VI族化合物半導体ナノ粒子を構成するII-VI族半導体としては、オゾンとの反応性(感度)をより向上させ、可逆応答に必要な安定性をより両立させる観点から、例えば、コアとしてはCdSe、CdSeTe等が挙げられ、シェルとしてはZnS、CdZnS等が挙げられる。このようなコアシェル型化合物半導体ナノ粒子としては、より高感度にオゾンを検出できる(オゾン存在下で蛍光強度が低下しやすい)とともに、より可逆応答しやすい(オゾン存在下とした後にオゾン非存在下とするとほぼ元の蛍光強度まで戻る)観点から、例えば、CdSe/CdZnSナノ粒子、CdSe/ZnSナノ粒子、CdSeTe/ZnSナノ粒子等が挙げられ、低濃度オゾンに対する感度及び高濃度オゾンに対する感度の双方のバランスに優れる観点から、CdSe/CdZnSナノ粒子、CdSe/ZnSナノ粒子等が好ましい。なお、上記表記において、「A/B」との記載は、Aがコア、Bがシェルであることを意味する。
なお、CdSe系ナノ粒子(CdSe/CdZnSナノ粒子、CdSe/ZnSナノ粒子、CdSeTe/ZnSナノ粒子等)は、CdSeコア又はCdSeTeコアのみでは電子の染み出しが大きいので、オゾン非存在下でも蛍光強度を高くしにくいものの、CdSe又はCdSeTeよりもエネルギーギャップ(Eg)が大きいZnSシェル又はCdZnSシェルを付けてCdSeコア又はCdSeTeシェルからの電子の染み出しを抑制すると、オゾン非存在下での蛍光強度をより著しく向上させることができる。一方、CdTe系ナノ粒子は、コアのみであっても、上記CdSe系ナノ粒子と比較して電子の染み出しが少ないので、シェルを付けなくても、オゾン非存在下での蛍光強度をより大きくすることができる。つまり、CdSe系ナノ粒子は、CdTe系ナノ粒子と比較して表面修飾又は表面状態によって電子の染み出しの程度が大きく変化すると考えられる。このため、CdSe系ナノ粒子のほうが、オゾンが存在することによる蛍光強度の低下に結びつきやすい。
このような本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、公知又は市販品を用いることができ、公知の方法で合成することもできる。
本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、大きすぎるとオゾン非存在下においても可視波長域の蛍光を発光しにくいものの、結晶サイズ(平均粒子径)を小さくすると半導体結晶中での電子の運動自由度が制限され、電子の取り得るエネルギー準位が離散的になると同時に、半導体の価電子帯と伝導帯の間のエネルギーギャップ(Eg)が広がることで、可視波長域でも蛍光しやすくなる。これにより、オゾンとの反応性(感度)をより向上させ、可逆応答に必要な安定性をより両立させる観点から、化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径は1〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましく、3〜15nmがさらに好ましい。さらに好ましいサイズ(粒径)範囲のなかで、例えば、平均粒子径が4〜15nmの化合物半導体ナノ粒子は、広いガス濃度範囲(例えば0〜500ppm)に適したオゾン検知材料とすることができ、また、例えば、平均粒子径が3〜4nmの化合物半導体ナノ粒子は、低濃度域(例えば0〜10ppm)に適したオゾン検知材料とすることができる(低濃度域のほうが、より可逆応答を示しやすい)。なお、化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、化合物半導体ナノ粒子の分散液をTEM専用のグリッド上に塗布し、溶媒を蒸発除去した後、真空中でTEM観察し化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径を測定する。
なお、本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子がコアシェル型化合物半導体ナノ粒子である場合、コアの平均粒子径は上記範囲であることが好ましい。つまり、オゾンとの反応性(感度)をより向上させ、可逆応答に必要な安定性をより両立させる観点から、1〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましく、3〜15nmがさらに好ましい。さらに好ましいサイズ(粒径)範囲のなかで、例えば、平均粒子径が4〜15nmのコアを採用した化合物半導体ナノ粒子は、広いガス濃度範囲(例えば0〜500ppm)に適したオゾン検知材料とすることができ、また、例えば、平均粒子径が3〜4nmのコアを採用した化合物半導体ナノ粒子は、低濃度域(例えば0〜10ppm)に適したオゾン検知材料とすることができる。なお、コアシェル型化合物半導体ナノ粒子のコアの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、コアシェル型化合物半導体ナノ粒子のコアの分散液をTEM専用のグリッド上に塗布し、溶媒を蒸発除去した後、真空中でTEM観察し化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径を測定する。また、コアシェル型化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径は、コアにシェルを付けて完成したコアシェル型化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径を同様に透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。
また、本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子がコアシェル型化合物半導体ナノ粒子である場合、シェルの平均厚さは、オゾンとの反応性(感度)をより向上させ、可逆応答に必要な安定性をより両立させる観点から、コアの平均粒子径の0.5倍以下が好ましく、0.05〜0.2倍がより好ましい。具体的には、シェルの厚さは、0.1〜3nmが好ましく、0.2〜1.5nmがより好ましく、なお、シェルの平均厚さは、シェルを付ける前のコアのみからなる化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径と、シェルを付けた後のコアシェル型化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径との差からシェルの厚さを見積もる。なお、市販品のコアシェル型化合物半導体ナノ粒子は、シェルの厚さは、コアの平均粒子径の10%程度であることが多い。
本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、オゾン存在下では蛍光強度が低下し、オゾン非存在下では蛍光強度が向上する。このため、本発明においてオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、オゾン非存在下では蛍光強度が経時的に減少しにくい材料が好ましい。化合物半導体ナノ粒子が凝集すると、化合物半導体ナノ粒子間に不完全な化学結合ができ、その部分が表面欠陥となって蛍光強度が低下しやすいため、化合物半導体ナノ粒子同士の凝集を防ぐことが好ましい。このため、本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子の表面を界面活性剤(親水基及び疎水基を有する有機分子)で被覆されていることが好ましい。化合物半導体ナノ粒子の表面が界面活性剤で被覆することにより、化合物半導体ナノ粒子同士の凝集をより抑制するとともに、水中又は有機溶媒中で化合物半導体ナノ粒子をより均一に分散することができる。
このような界面活性剤としては、例えば、トリオクチルホスフィンオキシド、オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、チオグリコール酸等が挙げられる。
このような化合物半導体ナノ粒子を界面活性剤で被覆する方法は、常法にしたがって行うことができ、また、公知又は市販品の界面活性剤で被覆された化合物半導体ナノ粒子を用いることもできる。
なお、本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子が、ポリマー(ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸等)又はガラスでコートされている場合には、オゾン存在下であっても蛍光強度が低下しにくいため、本発明のオゾン検知用材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、ポリマー又はガラスでコートされていないことが好ましい。
上記のような本発明のオゾン検知材料の構成要素として用いる化合物半導体ナノ粒子は、オゾン非存在下では、紫外線、可視光等を照射すると強い蛍光を発するため、本発明のオゾンセンサを構成するためには微量の化合物半導体ナノ粒子を用いるだけで十分である。また、化合物半導体ナノ粒子は、化学的安定性、耐光性等に優れるという利点を有しており、通常は水、有機溶媒等に均一分散した状態で合成されるので、取り扱いが容易であり、後述のように、透明基板等の上に塗布して溶媒を蒸発除去させるという簡便な方法で固体薄膜状のオゾンセンサ素子を作製することができる。このように、オゾンセンサ素子製造に必要な原料がごく少量であり、素子作製には高価又は大型の装置が不要であることから、本発明のオゾン検知材料は、安価且つ簡便にオゾンセンサを提供することができる。
なお、本発明のオゾン検知材料が、オゾンに感応して、蛍光強度の低下を示す機構は必ずしも明らかではないが、次のような機構が考えられる。
化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)はサイズが小さいため、表面に位置する原子の割合が多く、比表面積が大きい。量子ドットは、表面の欠陥が少ないと蛍光強度が強く、表面の欠陥が多いと蛍光強度が弱くなる。これは、励起光である紫外線を吸収して量子ドット中に生成した励起状態の電子が、量子ドット表面の欠陥に捕捉されなければ基底状態に戻る時に蛍光を発するが、量子ドット表面の欠陥に捕捉されるとエネルギーを失い蛍光を発しないからである。
一方、化合物半導体ナノ粒子(量子ドット)はサイズが小さく表面エネルギーが大きいので凝集しやすい。凝集すると、量子ドット間に不完全な化学結合ができ、その部分が表面欠陥となるので、蛍光強度が著しく低下する。
オゾン含有気体中においては、酸化力の強いオゾンが量子ドットに強く吸着し、量子ドット表面が酸化的な状態となり量子ドットからの電子の染み出しが顕著になり、蛍光強度が弱まると考えられる。この傾向は、元々電子の染み出しがしやすいCdSe系ナノ粒子において、コアシェル型構造を採用することによって電子の染み出しを抑制したりしている場合により顕著である。また、この挙動は、オゾン濃度が高いほどより顕著である。このため、オゾン濃度が高ければ高いほど、本発明のオゾン検知材料の蛍光強度は低下する。
一方、雰囲気をオゾン不含有気体に戻すと、量子ドットに吸着していたオゾンは脱離するので、量子ドット表面の欠陥が不活性化しやすく、量子ドット表面の酸化状態は元に戻り、量子ドットからの電子の染み出しは減少するので、蛍光強度が元に戻る。
なお、本発明のオゾン検知材料は、基板上などに固定ができ、オゾンセンサとしての機能を発揮できる限りにおいて形状は限定されず、例えば、個体粉末や分散媒に分散させて分散液としてもよい。
2. オゾンセンサ及びオゾン検知方法
本発明のオゾンセンサは、実施の形態として、透明基板上、半透明基板上、導波路上、又は光ファイバー表面上に、上記本発明のオゾン検知材料が分散固定することができる。
このような本発明のオゾンセンサは、例えば、上記本発明のオゾン検知材料が分散している分散液を、透明基板上、半透明基板上、導波路上、又は光ファイバー表面上塗布した後、分散媒を蒸発除去又は乾燥することで、透明基板上、半透明基板上、導波路上、又は光ファイバー表面上に本発明のオゾン検知材料の薄膜を作製することで、得ることができる。
透明基板及び半透明基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、セラミックス基板(サファイア、ジルコニア等)、アクリル樹脂基板、ポリカーボネート基板等が挙げられる。これら透明基板及び半透明基板としては、平滑基板及び多孔質基板(多孔質ガラス基板等)のいずれも採用できる。
導波路としては、例えば、石英ガラス、シリコン、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂等からなる、平板状、シート状、フィルム状等の導波路が挙げられる。
光ファイバーとしては、例えば、石英、ガラス、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリレート等からなる光ファイバーが挙げられる。
上記分散液中の本発明のオゾン検知材料の濃度は、特に制限はなく、例えば、10-8〜10-4mol/Lが好ましく、10-7〜10-5mol/Lがより好ましい。
また、上記分散液を構成する分散媒は、特に制限はなく、水、各種有機溶媒(トルエン、ヘキサン、デカン、ジクロロメタン、クロロホルム等)が挙げられる。
分散固定の方法は特に限定はなく、上記分散液を上記基板上にスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、キャスト法等で塗布した後に分散媒を蒸発除去する方法等が挙げられる。このようにして得られる本発明のオゾン検知材料の薄膜の厚さは、より高感度にオゾンを検出しやすい観点から、3nm〜100μmが好ましく、50nm〜50μmがより好ましい。なお、本発明のオゾン検知材料の薄膜の厚さは、触針式段差計を用いて測定することができる。オゾン検知材料が多孔質基板(多孔質ガラス基板等)である場合には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、又は原子間力顕微鏡(AFM)観察により測定する。
オゾンガスセンサは、基板等の上に固定されたオゾン検知材料全体の空隙が多く、また、比表面積が大きいことが好ましい。空隙が多く、また、比表面積が大きいことでオゾンガスがオゾン検知材料内部まで入り込み、オゾンガスを検知する感度が向上する。
本発明のオゾン検知方法は、本発明のオゾン検知材料又は上記のように作製した本発明のオゾンセンサの蛍光強度を測定することを備える。
例えば、本発明のオゾン検知材料又は上記のように作製した本発明のオゾンセンサについて、オゾン含有空気中での蛍光強度と、オゾン非含有空気中での蛍光強度を測定し、それぞれの蛍光強度を比較することにより、オゾンが存在することでどの程度蛍光強度が低下するかを理解できる。このため、本発明のオゾン検知材料又は本発明のオゾンセンサの蛍光強度が高ければオゾン濃度が低く、本発明のオゾン検知材料又は本発明のオゾンセンサの蛍光強度が低ければオゾン濃度が高いと判断することができる。なお、蛍光強度が低下する度合いは、雰囲気中のオゾン濃度に依存するため、本発明のオゾン検知材料又は本発明のオゾンセンサの蛍光強度から、オゾン濃度を見積もることが可能である。
本発明のオゾン検知材料及びオゾンセンサは、オゾン含有空気に暴露すると、暴露前と比較して蛍光強度が低下するが、オゾン非含有空気に再度暴露することで、オゾン含有空気に暴露する前とほぼ同様の蛍光強度まで可逆的に回復する。このため、本発明のオゾン検知材料及びオゾンセンサは、繰り返し使用又は連続使用してもほとんど劣化することなく、新品同様にオゾンを検知することが可能である。
なお、本発明のオゾン検知材料又はオゾンセンサと接触させる気体としては、特に限定されず、オゾンが種々の濃度で混和又は存在でき、オゾンと反応しない気体が好ましい。例えば、空気、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)等、及びこれらの混合物が挙げられ、空気が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[比較例]
以下の量子ドットを使用した。CdSe/ZnS量子ドット(CdSeコア及びZnSシェルを含有)。Invitrogen社製のQ21721MP、平均粒子径:約11nm、界面活性剤(トリオクチルホスフィン及びトリオクチルホスフィンオキシド)で表面を被覆。
ガラス基板(顕微鏡用カバーガラス;サイズ:18×18×0.12〜0.17mm)上に、CdSe/ZnS量子ドットのデカン分散液(蛍光色:赤色、蛍光ピーク波長:655nm、濃度:10-6mol/L)を塗布し、その後、ポータブルアスピレーター((株)アルバックMDA-015)中でデカンを蒸発除去及び乾燥して、ガラス基板上にCdSe/ZnS量子ドットを固定した。
この量子ドット薄膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。得られたAFM像(図1a)より、量子ドット薄膜は、大小の量子ドット凝集体と凝集していない量子ドットが混在し、比較的大きな空隙が存在することが示された。
この量子ドット薄膜をガス流通光学セル(光学用石英製)に格納し、セルの外部から、励起光として波長365nmの紫外光(UV光)を照射し、量子ドット薄膜から蛍光を発光させた。波長365nmの紫外光源(UV光源)は、スポットUV照射装置(ウシオ電機(株)製のスポットキュアSP-7)に、波長365nm用のバンドパスフィルター(朝日分光(株)製のMX0365)を組み合わせて使用した。量子ドット薄膜が発する蛍光は、セルの前面に配置した光ファイバーで受光し、分光器に導き、蛍光スペクトルと蛍光強度とを連続的に測定した。分光器は、フォトダイオードアレイ内蔵マルチチャンネル分光器(大塚電子(株)製のMCPD-7000)を用い、波長をスキャンせずに全波長同時測定を行った。具体的には、以下の要領で測定を行った。
上記量子ドット薄膜を格納したガス流通光学セルに、まず合成空気(窒素約78%及び酸素約22%含有)を導入し、量子ドット薄膜の蛍光スペクトルを測定した。次に、濃度制御機能付オゾン発生器(エコデザイン(株)製のED-OG-L-AIST)を用いて発生させた、0.5〜200ppmの各濃度のオゾンを含有する合成空気をセルに導入し、量子ドット薄膜の蛍光スペクトルを測定した。なお、この実験は25℃、1気圧で実施した。
蛍光スペクトルの蛍光ピーク波長はオゾンの有無によらず一定(652nm)であったが、蛍光強度はオゾン存在下では減少し、蛍光強度減少量及び蛍光強度減少率はオゾン濃度の増大につれて増大した(表1、図2、図3a、図7a、図8a)。
Figure 2021015050
濃度200ppmまでのオゾンを含有する空気下で蛍光強度を測定した後に、雰囲気をオゾン含有空気から再度、合成空気(オゾン非含有)に切り替えたところ、いずれの濃度のオゾンに暴露した後でも、オゾン非含有空気中において、蛍光強度はオゾン接触前の値に回復した。このように、比較例の量子ドット薄膜(オゾンセンサ)は、オゾンによって可逆な蛍光強度変化を示した。0.5ppmオゾンに12分間接触後、比較例の量子ドット薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度はオゾン接触前よりも9%低下した。
比較例の量子ドット薄膜(オゾンセンサ)は、0.5ppmのオゾンに感応して蛍光強度の低下を示した後、雰囲気をオゾン含有空気からオゾン不含有空気に切り替えると、蛍光強度が徐々に回復した(図3a)。蛍光強度は、図7aに示すオゾン濃度依存性を示し、オゾン濃度が200ppmまで感度の飽和を示さなかったことから、広い濃度範囲のオゾン検知に有用であることがわかった。また、蛍光強度のオゾン濃度依存性についてのStern-Volmerプロット(図8a)において、直線的な部分と直線から外れた部分の両方が見られることから、オゾンによる量子ドットの蛍光消光は、動的消光と静的消光の両方が寄与していると推測された。
[実施例1]
複合薄膜の構成要素として、以下の量子ドットを使用した。CdSe/ZnS量子ドット(CdSeコア及びZnSシェルを含有)。Invitrogen社製のQ21721MP、平均粒子径:約11nm、界面活性剤(トリオクチルホスフィン及びトリオクチルホスフィンオキシド)で表面を被覆。
直流スパッタリング装置((株)エイコー イオンコーターIB・3)に金(Au)ターゲットを装着し、10秒間スパッタコートすることにより、金ナノ粒子を、ガラス基板(顕微鏡用カバーガラス;サイズ:18×18×0.12〜0.17mm)上に堆積させた。次に、この金ナノ粒子上に、CdSe/ZnS量子ドットのデカン分散液(蛍光色:赤色、蛍光ピーク波長:655nm、濃度:10-6mol/L)を塗布し、その後、ポータブルアスピレーター((株)アルバックMDA-015)中でデカンを蒸発除去及び乾燥して、ガラス基板上にCdSe/ZnS量子ドットと金ナノ粒子とからなるオゾン検知材料を固定した。
この量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。得られたAFM像(図1b)より、量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜は、大きな凝集体が少なく、表面は平坦であるがスポンジ状であり小さな空隙が多いことが示された。比較例の、貴金属ナノ粒子と複合しない量子ドット薄膜よりも小さな細孔が多数存在している。このような多孔質構造により、ガスと膜物質とが相互作用する際に膜物質の電子状態が大きく変化し、複合薄膜の大きな蛍光強度減少(後述)に寄与したと考えられる。また、AFM像より、この複合薄膜中における量子ドットと金ナノ粒子の体積比は約20:1〜10:1と見積もられた。
この量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜をガス流通光学セル(光学用石英製)に格納し、セルの外部から、励起光として波長365nmの紫外光(UV光)を照射し、量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜から蛍光を発光させた。波長365nmの紫外光源(UV光源)は、スポットUV照射装置(ウシオ電機(株)製のスポットキュアSP-7)に、波長365nm用のバンドパスフィルター(朝日分光(株)製のMX0365)を組み合わせて使用した。量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜が発する蛍光は、セルの前面に配置した光ファイバーで受光し、分光器に導き、蛍光スペクトルと蛍光強度とを連続的に測定した。分光器は、フォトダイオードアレイ内蔵マルチチャンネル分光器(大塚電子(株)製のMCPD-7000)を用い、波長をスキャンせずに全波長同時測定を行った。具体的には、以下の要領で測定を行った。
上記量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜を格納したガス流通光学セルに、まず合成空気(窒素約78%及び酸素約22%含有)を導入し、量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。次に、濃度制御機能付オゾン発生器(エコデザイン(株)製のED-OG-L-AIST)を用いて発生させた、0.5〜200ppmの各濃度のオゾンを含有する合成空気をセルに導入し、量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。なお、この実験は25℃、1気圧で実施した。
蛍光スペクトルの蛍光ピーク波長はオゾンの有無によらず一定(657nm)であったが、蛍光強度はオゾン存在下では減少し、蛍光強度減少量及び蛍光強度減少率はオゾン濃度の増大につれて増大した(表2、図3b、図4、図7b、図8b)。
Figure 2021015050
濃度200ppmまでのオゾンを含有する空気下で蛍光強度を測定した後に、雰囲気をオゾン含有空気から再度、合成空気(オゾン非含有)に切り替えたところ、いずれの濃度のオゾンに暴露した後でも、オゾン非含有空気中において、蛍光強度はオゾン接触前の値に回復した。このように、実施例1の量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)は、オゾンによって可逆な蛍光強度変化を示した。0.5ppmオゾンに12分間接触後、実施例1の量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度はオゾン接触前よりも11%低下した。このオゾンによる蛍光強度低下率(オゾン感度)は、比較例に示した、貴金属ナノ粒子と複合しない量子ドット薄膜が示した、0.5ppmオゾンに12分間接触後の蛍光強度低下率(オゾン感度)9%に比べて27%高い値であり、金ナノ粒子複合化による、量子ドット薄膜のオゾン感度向上が実証された。
実施例1の量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)は、0.5ppmのオゾンに感応して蛍光強度の低下を示した後、雰囲気をオゾン含有空気からオゾン不含有空気に切り替えると、蛍光強度が回復したが、その蛍光強度回復速度は、金ナノ粒子を複合化しない量子ドット薄膜よりも顕著に大きかった(図3b)。このように、金ナノ粒子複合化による、量子ドット薄膜の蛍光強度回復速度向上が実証された。蛍光強度は、図7bに示すオゾン濃度依存性を示し、オゾン濃度が200ppmまで感度の飽和を示さなかったことから、広い濃度範囲のオゾン検知に有用であることがわかった。また、蛍光強度のオゾン濃度依存性についてのStern-Volmerプロット(図8b)において、直線的な部分と直線から外れた部分の両方が見られることから、オゾンによる量子ドットの蛍光消光は、動的消光と静的消光の両方が寄与していると推測された。
金ナノ粒子は可視波長域付近にプラズモン吸収を示し、金ナノ粒子の近傍では局所的な電場が強くなる局所電場効果が生じるので、入射紫外光の強度は金ナノ粒子近傍で強くなる。そのため、同じ強度の紫外光を励起光として照射した場合にも、金ナノ粒子と複合化しない量子ドットに比べて、金ナノ粒子と複合化した量子ドットでは、上記局所電場効果によって蛍光が増強される。このことは、蛍光強度変化を出力信号として用いる、本発明の蛍光強度変化利用型光学式ガスセンサにおけるS/N比向上を通じて実質的な感度向上と検出限界改善に繋がる。実施例1の量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜で実測されたオゾン感度(オゾン接触時の蛍光強度低下率)が、比較例の金ナノ粒子を複合しない量子ドット薄膜で実測されたオゾン感度(オゾン接触時の蛍光強度低下率)と比較して顕著に(27%)高かったことは、金ナノ粒子のプラズモン効果及び/又は金ナノ粒子のオゾン吸脱着促進効果及び/又は量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜が微細な細孔を多数有するガスセンシングに適した構造をもつことの結果であると考えられる。
[実施例2]
複合薄膜の構成要素として、以下の量子ドットを使用した。CdSe/ZnS量子ドット(CdSeコア及びZnSシェルを含有)。Invitrogen社製のQ21721MP、平均粒子径:約11nm、界面活性剤(トリオクチルホスフィン及びトリオクチルホスフィンオキシド)で表面を被覆。
直流スパッタリング装置((株)エイコー イオンコーターIB・3)に白金(Pt)ターゲットを装着し、10秒間スパッタコートすることにより、白金ナノ粒子を、ガラス基板(顕微鏡用カバーガラス;サイズ:18×18×0.12〜0.17mm)上に堆積させた。次に、この白金ナノ粒子上に、CdSe/ZnS量子ドットのデカン分散液(蛍光色:赤色、蛍光ピーク波長:655nm、濃度:10-6mol/L)を塗布し、その後、ポータブルアスピレーター((株)アルバックMDA-015)中でデカンを蒸発除去及び乾燥して、ガラス基板上にCdSe/ZnS量子ドットと白金ナノ粒子とからなるオゾン検知材料を固定した。
この量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。得られたAFM像(図1c)より、量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜は、薄膜を構成する凝集体が比較的小さく、表面は平坦であるが小さな空隙が多い(多数の細孔が存在する)。このような多孔質構造により、ガスと膜物質とが相互作用する際に膜物質の電子状態が大きく変化し、量子ドットの大きな蛍光強度減少(後述)に寄与したと考えられる。また、AFM像より、この複合薄膜中における量子ドットと白金ナノ粒子の体積比は20:1〜10:1の範囲にあると見積もられた。
この量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜をガス流通光学セル(光学用石英製)に格納し、セルの外部から、励起光として波長365nmの紫外光(UV光)を照射し、量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜から蛍光を発光させた。波長365nmの紫外光源(UV光源)は、スポットUV照射装置(ウシオ電機(株)製のスポットキュアSP-7)に、波長365nm用のバンドパスフィルター(朝日分光(株)製のMX0365)を組み合わせて使用した。量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜が発する蛍光は、セルの前面に配置した光ファイバーで受光し、分光器に導き、蛍光スペクトルと蛍光強度とを連続的に測定した。分光器は、フォトダイオードアレイ内蔵マルチチャンネル分光器(大塚電子(株)製のMCPD-7000)を用い、波長をスキャンせずに全波長同時測定を行った。具体的には、以下の要領で測定を行った。
上記量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜を格納したガス流通光学セルに、まず合成空気(窒素約78%及び酸素約22%含有)を導入し、量子ドット・金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。次に、濃度制御機能付オゾン発生器(エコデザイン(株)製のED-OG-L-AIST)を用いて発生させた、0.5〜200ppmの各濃度のオゾンを含有する合成空気をセルに導入し、量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。なお、この実験は25℃、1気圧で実施した。
蛍光スペクトルの蛍光ピーク波長はオゾンの有無によらず一定(656nm)であったが、蛍光強度はオゾン存在下では減少し、蛍光強度減少量及び蛍光強度減少率はオゾン濃度の増大につれて増大した(表3、図3c、図5、図7c、図8c)。
Figure 2021015050
濃度200ppmまでのオゾンを含有する空気下で蛍光強度を測定した後に、雰囲気をオゾン含有空気から再度、合成空気(オゾン非含有)に切り替えたところ、いずれの濃度のオゾンに暴露した後でも、オゾン非含有空気中において、蛍光強度はオゾン接触前の値に回復した。このように、実施例2の量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)は、オゾンによって可逆な蛍光強度変化を示した。0.5ppmオゾンに12分間接触後、実施例2の量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度はオゾン接触前よりも13%低下した。このオゾンによる蛍光強度低下率(オゾン感度)は、比較例に示した、貴金属ナノ粒子と複合しない量子ドット薄膜が示した、0.5ppmオゾンに12分間接触後の蛍光強度低下率(オゾン感度)9%に比べて43%高い値であり、白金ナノ粒子複合化による、量子ドット薄膜のオゾン感度向上が実証された。蛍光強度は、図7cに示すオゾン濃度依存性を示し、オゾン濃度が200ppmまで感度の飽和を示さなかったことから、広い濃度範囲のオゾン検知に有用であることがわかった。また、蛍光強度のオゾン濃度依存性についてのStern-Volmerプロット(図8c)において、直線的な部分と直線から外れた部分の両方が見られることから、オゾンによる量子ドットの蛍光消光は、動的消光と静的消光の両方が寄与していると推測された。
白金ナノ粒子は紫外波長域付近にプラズモン吸収を示し、白金ナノ粒子の近傍では局所的な電場が強くなる局所電場効果が生じるので、入射紫外光の強度は白金ナノ粒子近傍で強くなる。そのため、同じ強度の紫外光を励起光として照射した場合にも、白金ナノ粒子と複合化しない量子ドットに比べて、白金ナノ粒子と複合化した量子ドットでは、上記局所電場効果によって蛍光が増強される。一方、白金ナノ粒子はオゾン分子の吸脱着促進作用をもつため、白金ナノ粒子と複合化しない量子ドットに比べて、白金ナノ粒子と複合化した量子ドットでは、本発明の蛍光強度変化利用型光学式ガスセンサにおけるオゾン感度向上に繋がる。実施例2の量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜で実測されたオゾン感度(オゾン接触時の蛍光強度低下率)が、比較例の白金ナノ粒子を複合しない量子ドット薄膜で実測されたオゾン感度(オゾン接触時の蛍光強度低下率)と比較して顕著に(43%)高かったことは、白金ナノ粒子のプラズモン効果及び/又は金ナノ粒子のオゾン吸脱着促進効果及び/又は量子ドット・白金ナノ粒子複合薄膜が微細な細孔を多数有するガスセンシングに適した構造をもつことの結果であると考えられる。
[実施例3]
複合薄膜の構成要素として、以下の量子ドットを使用した。CdSe/ZnS量子ドット(CdSeコア及びZnSシェルを含有)。Invitrogen社製のQ21721MP、平均粒子径:約11nm、界面活性剤(トリオクチルホスフィン及びトリオクチルホスフィンオキシド)で表面を被覆。
直流スパッタリング装置((株)エイコー イオンコーターIB・3)に白金(Pt)パラジウム(Pd)合金(合金中の白金とパラジウムの重量比は85:15)のターゲットを装着し、10秒間スパッタコートすることにより、白金パラジウム合金ナノ粒子を、ガラス基板(顕微鏡用カバーガラス;サイズ:18x18x0.12〜0.17mm)上に堆積させた。次に、この白金パラジウム合金ナノ粒子上に、CdSe/ZnS量子ドットのデカン分散液(蛍光色:赤色、蛍光ピーク波長:655nm、濃度:10-6mol/L)を塗布し、その後、ポータブルアスピレーター((株)アルバックMDA-015)中でデカンを蒸発除去及び乾燥して、ガラス基板上にCdSe/ZnS量子ドットと白金パラジウム合金ナノ粒子とからなるオゾン検知材料を固定した。
この量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜の表面微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。得られたAFM像(図1d)より、量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜は、多孔質構造であるが、複合薄膜を構成する凝集体は比較的大きい。このような微細構造の特徴と、パラジウムがオゾン分解触媒活性を有することが相乗的に作用した結果、オゾンガスと膜物質が相互作用する際の膜物質の電子状態変化が比較的小さく、量子ドットの蛍光強度減少が抑制された(後述)と考えられる。また、AFM像より、この複合薄膜中における量子ドットと白金パラジウム合金ナノ粒子の体積比は20:1〜10:1の範囲にあると見積もられた。
この量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜をガス流通光学セル(光学用石英製)に格納し、セルの外部から、励起光として波長365nmの紫外光(UV光)を照射し、量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜から蛍光を発光させた。波長365nmの紫外光源(UV光源)は、スポットUV照射装置(ウシオ電機(株)製のスポットキュアSP-7)に、波長365nm用のバンドパスフィルター(朝日分光(株)製のMX0365)を組み合わせて使用した。量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜が発する蛍光は、セルの前面に配置した光ファイバーで受光し、分光器に導き、蛍光スペクトルと蛍光強度とを連続的に測定した。分光器は、フォトダイオードアレイ内蔵マルチチャンネル分光器(大塚電子(株)製のMCPD-7000)を用い、波長をスキャンせずに全波長同時測定を行った。具体的には、以下の要領で測定を行った。
上記量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜を格納したガス流通光学セルに、まず合成空気(窒素約78%及び酸素約22%含有)を導入し、量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。次に、濃度制御機能付オゾン発生器(エコデザイン(株)製のED-OG-L-AIST)を用いて発生させた、0.5〜200ppmの各濃度のオゾンを含有する合成空気をセルに導入し、量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜の蛍光スペクトルを測定した。なお、この実験は25℃、1気圧で実施した。
蛍光スペクトルの蛍光ピーク波長はオゾンの有無によらず一定(659nm)であったが、蛍光強度はオゾン存在下では減少し、蛍光強度減少量及び蛍光強度減少率はオゾン濃度の増大につれて増大した(表4、図3d、図6、図7d、図8d)。
Figure 2021015050
濃度200ppmまでのオゾンを含有する空気下で蛍光強度を測定した後に、雰囲気をオゾン含有空気から再度、合成空気(オゾン非含有)に切り替えたところ、いずれの濃度のオゾンに暴露した後でも、オゾン非含有空気中において、蛍光強度はオゾン接触前の値に回復した。このように、実施例3の量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)は、オゾンによって可逆な蛍光強度変化を示した。0.5ppmオゾンに12分間接触後、実施例3の量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)の蛍光強度はオゾン接触前よりも6%低下した。このオゾンによる蛍光強度低下率(オゾン感度)は、比較例に示した、貴金属ナノ粒子と複合しない量子ドット薄膜が示した、0.5ppmオゾンに12分間接触後の蛍光強度低下率(オゾン感度)9%に比べて32%低い値であり、オゾン感度向上効果は認められなかった。これは、合金ナノ粒子中のパラジウムがオゾン分解触媒活性をもつため、複合薄膜表面に一旦吸着したオゾンが速やかに分解され、複合薄膜表面でのオゾン濃度が減少したことが原因と考えられる。しかし、下記のように、白金パラジウム合金ナノ粒子を複合したことで、オゾン暴露後にオゾン非含有空気中での蛍光強度回復速度が向上した。
実施例3の量子ドット・白金パラジウム合金ナノ粒子複合薄膜(オゾンセンサ)は、0.5ppmのオゾンに感応して蛍光強度の低下を示した後、雰囲気をオゾン含有空気からオゾン不含有空気に切り替えると、蛍光強度が回復したが、その蛍光強度回復速度は、白金パラジウム合金ナノ粒子を複合化しない量子ドット薄膜よりも顕著に大きかった(図3)。これは、白金パラジウム合金ナノ粒子中のパラジウムがオゾン分解触媒活性をもつため、複合薄膜表面に一旦吸着したオゾンが速やかに分解されたことが原因と考えられる。このように、白金パラジウム合金ナノ粒子複合化による、量子ドット薄膜の蛍光強度回復速度向上が実証された。蛍光強度は、図7dに示すオゾン濃度依存性を示し、オゾン濃度が200ppmまで感度の飽和を示さなかったことから、広い濃度範囲のオゾン検知に有用であることがわかった。また、蛍光強度のオゾン濃度依存性についてのStern-Volmerプロット(図8d)において、直線的な部分と直線から外れた部分の両方が見られることから、オゾンによる量子ドットの蛍光消光は、動的消光と静的消光の両方が寄与していると推測された。
また図9に、実施例1〜3で製造した本発明に係るオゾンセンサの一実施の形態における構造の概略図を示す。

Claims (14)

  1. 化合物半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子からなるオゾン検知材料であって、前記化合物半導体ナノ粒子は、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体ナノ粒子であり、前記貴金属ナノ粒子は、金、白金、パラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、オゾン検知材料。
  2. 前記II族元素がカドミウム及び/又は亜鉛であり、前記VI1族元素がセレン、テルル及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のオゾン検知材料。
  3. 前記半導体ナノ粒子が、CdSe又はCdSeTeである、請求項1又は2に記載のオゾン検知材料。
  4. 前記化合物半導体ナノ粒子の平均粒子径が1〜30nmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  5. 前記化合物半導体ナノ粒子が、コアシェル型構造を有する化合物半導体ナノ粒子であり、前記コアがII族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体からなり、前記シェルが、前記コアとは化学組成が異なり、II族元素とVI族元素とからなるII-VI族半導体からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  6. 前記コア及びシェルにおける前記II族元素がカドミウム及び/又は亜鉛であり、前記コア及びシェルにおける前記VI族元素がセレン、テルル及び硫黄からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載のオゾン検知材料。
  7. 前記コアを構成するII-VI族半導体がCdSe又はCdSeTeであり、前記シェルを構成するII-VI族半導体がZnS又はCdZnSである、請求項5又は6に記載のオゾン検知材料。
  8. 前記コアの平均粒子径が1〜30nmであり、前記シェルの平均厚さが、前記コアの平均粒子径の0.5倍以下である、請求項5〜7のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  9. 前記貴金属ナノ粒子の平均粒子径が1〜30nmであり、半導体ナノ粒子と貴金属ナノ粒子の体積比が1:2〜100:1の範囲にある、請求項5〜7のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  10. 前記化合物半導体ナノ粒子が、界面活性剤で被覆されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  11. 前記化合物半導体ナノ粒子が、ポリマー又はガラスでコートされていない、請求項1〜10のいずれか一項に記載のオゾン検知材料。
  12. 透明基板上、半透明基板上、導波路上、又は光ファイバー表面上に、請求項1〜11のいずれか一項に記載のオゾン検知材料が分散固定されている、オゾンセンサ。
  13. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のオゾン検知材料又は請求項12に記載のオゾンセンサの蛍光強度を測定する、オゾン検知方法。
  14. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のオゾン検知材料又は請求項12に記載のオゾンセンサの蛍光強度を測定する、オゾン濃度測定方法。
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