JP2021012183A - ホスファチジン酸センサー - Google Patents

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【課題】細胞内で産生するホスファチジン酸を高精度で検出することができるホスファチジン酸可視化センサーを提供する。【解決手段】ホスファチジン酸センサーを、α-シヌクレインのN末端領域を含有するものとした。さらに、ホスファチジン酸センサーを、下記(1)〜(3)のいずれか1つの塩基配列をコードするアミノ酸配列を有するペプチドを含有するものとした。(1)配列番号1で表される塩基配列;(2)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列;(3)配列番号1で表される塩基配列で表される塩基配列の18個以内の塩基が、欠失、置換及び/又は不可された塩基配列。【選択図】図13

Description

本発明は、ホスファチジン酸センサーに関するものである。
ホスファチジン酸(PA)は生体膜中に存在する最も単純なリン脂質であり、量としては全細胞脂質のごく一部に過ぎないが、有糸分裂誘発、遊走、分化などの幅広い生物学的現象に関与している。PAはホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K), ラパマイシン標的タンパク質(mTOR), 非典型プロテインキナーゼC(aPKC)などの多くのシグナルタンパク質を制御することが多くの報告により明らかとなっている。その上、PA量は時空間的にそして厳密に制御されている。例えば、PAは神経芽細胞腫と褐色細胞腫の分化時に非常に増加し、シナプスリボンに富んでいる。他にも、PA量の変動はタンパク質輸送および食作用と相関することが明らかとなっている。
PAは複数の経路から生成され、シグナル伝達脂質としてのPAはジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)によるジアシルグリセロール(DG)のリン酸化、およびホスホリパーゼD(PLD)によるホスファチジルコリン(PC)の加水分解により生成される。DGKには10種のアイソザイム(α,β,γ,δ,η,κ,ε,ζ,ι,θ)が同定されており、ガン、てんかん、強迫性障害、双極性障害、心肥大、高血圧および2型糖尿病などの多種多様な疾患の発症に関与している。
PLDも2種(1,2)のアイソザイムが存在し、ガンやパーキンソン病やアルツハイマー病を含む神経変性疾患に関与することが明らかとなっている。さらに、細胞膜リン脂質デノボ合成経路の重要な中間体として働くPAは、リゾPA(LPA)アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)によって産生され、このLPAATは卵巣ガン、および子宮内膜ガンならびに急性白血病の治療標的でもある。
ホスファチジン酸センサーに関する文献として、非特許文献1がある。
"Comparative Characterization of Phosphatidic Acid Sensorsand Their Localization during Frustrated Phagocytosis" THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 292, NO. 10, pp. 4266‐4279, March 10, 2017
非特許文献1に記載のホスファチジン酸結合タンパク質・ドメインは、それ自身の細胞内膜局在性があり、ホスファチジン酸産生時以外でも細胞内の膜領域(形質体やゴルジ体等)に局在してしまう。すなわち、バックグラウンド活性が高すぎて、細胞刺激時またはホスファチジン酸産生酵素発現時に、細胞内膜で産生される細胞内ホスファチジン酸を正確に検出するのが困難であるという課題があった。
そこで、本発明では、細胞内で産生するホスファチジン酸を高精度で検出することができるホスファチジン酸可視化センサーを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一つの観点によれば、ホスファチジン酸センサーを、α-シヌクレインのN末端領域(α-Syn-N)を含有するものとした。
また、本発明の他の観点によれば、ホスファチジン酸センサーを、下記(1)〜(3)のいずれか1つの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するペプチドを含有するものとした。
(1)配列番号1で表される塩基配列;
(2)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列;
(3)配列番号1で表される塩基配列の18個以内の塩基が、欠失、置換及び/又は不可された塩基配列。
また、本発明の他の観点によれば、ホスファチジンセンサーを、下記(1)〜(3)のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドを含有するものとした。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の6個以内のアミノ酸が、欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列。
細胞内で産生するホスファチジン酸を検出することができるホスファチジン酸センサーを提供することができる。
α-Synとその領域欠損変異体の概略図である。 精製したSUMO-α-Synとその領域欠損変異体(2.5μM)を18:1/18:1-PAまたは18:1/18:1-PSリポソーム(PAまたはPS150μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質をクマシーブリリアントブルーにより染色したものを示す図である。 精製したSUMO-α-Syn-N(2.5μM)とコントロール(PCとcholのみ), 16:0/16:0-PA, 16:0/18:1-PA, 18:1/18:1-PA, 18:0/18:0-PAリポソーム(PA150μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質をクマシーブリリアントブルーにより染色したものを示す図である。 上清(S)および沈殿(P)画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、結合活性は全バンド強度に対する沈殿画分のバンド強度の百分率として表した図である。 精製したSUMO-α-Syn-N(0.1μM)と18:1/18:1-PAリポソーム(0-20μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質を銀染色により染色したものを示す図である。 沈殿画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、結合活性は全バンド強度(インプット)に対する沈殿画分のバンド強度の百分率として表した図である。 精製したSUMO-α-Syn-N(0.1μM)と18:1/18:1-PA, 18:1/18:1-PS, 18:1/18:1-PI(4,5)P2, 18:1/18:1-PE, d18:1/18:1-C1Pリポソーム(20μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質を銀染色により染色したものを示す図である。 沈殿画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性を100%とした図である。 等モル(100pmol)の様々な脂質をニトロセルロース膜上にスポットしたものを示す図である。 ブロットをImageJソフトウェアで定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性(スポット強度)を100%とした図である。 等モル(300pmol)の18:1/18:1-PA, 18:1-LPA, d18:1/18:1-C1Pをニトロセルロースメンブレン上にスポットしたものを示す図である。 ブロットをImageJソフトウェアで定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性(スポット強度)を100%とした図である。 EGFP, EGFP-DGKβ-WTまたはEGFP-DGKβ-KDをDsRed, DsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-DGKβ-WTまたはEGFP-DGKβ-KD,とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 EGFP-DGKβ-WTをDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に1μMの化合物Aと成長培地中で1時間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-DGKβ-WTとDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KDをDsRed, DsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 Myr-AcGFP-DGKζWTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KD,とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 EGFP, EGFP-DGKγ-WTまたはEGFP-DGKγ-KDをDsRedまたはDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に1μMのPMAまたはDMSOと成長培地中で30分間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-DGKγ-WTまたはEGFP-DGKγ-KDとDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 EGFP-PLDをDsRedまたはDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に750nMのFIPIと成長培地中で4時間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-PLD2とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 EGFPまたはEGFP-PIP5K1AをDsRed, DsRed-α-Syn-NまたはDsRed-PLCTM1-PHDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-PIP5K1AとDsRed-α-Syn-NまたはDsRed-PLCTM1-PHDの局在をImageJソフトウェアで定量した図である。 大腸菌にて発現させ、アフィニティクロマトグラフィーにより精製したGSTまたはSUMO融合α-Synとその領域欠損変異体をSDS-PAGE (15%)で分離した図である。 大腸菌にて発現させ、アフィニティクロマトグラフィーにより精製したGSTまたはSUMO融合α-Synとその領域欠損変異体をSDS-PAGE (15%)で分離した図である。 等モル(500pmol)の18:1/18:1-PA, 18:1/18:1-PC, 18:1/18:1-PE, 18:1/18:1-PG, 18:1/18:1-PS, 18:1/18:1-PI, 18:1/18:1-PI(4,5)P2をニトロセルロースメンブレン上にスポットし、精製したGST-α-Syn-N(20μM)とインキュベート後、脂質結合タンパク質を抗GST抗体にて検出した図である。 ブロットをImageJソフトウェアで定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性(スポット強度)を100%とした図である。 GFPまたはEGFP-DGKβをDsRed, DsRed-Spo20p-PABDまたはDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 Myr-AcGFP-DGKζをDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、Myr-AcGFP-DGKζのみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化した図である。 Myr-AcGFP-DGKζをDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、Myr-AcGFP-DGKζのみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化した図である。 Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KDをDsRed-Spo20pとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KDをDsRed-Spo20pとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化した図である。 EGFP-PLD2をDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、EGFP-PLD2のみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化した図である。 EGFP-PLD2をDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、EGFP-PLD2のみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化した図である。
本発明の一つの観点によれば、ホスファチジン酸(可視化)センサーを、α-シヌクレインのN末端領域を含有するものとした。
また、本発明の一つの観点によれば、ホスファチジン酸センサーを、下記(1)〜(3)のいずれか1つの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するペプチドを含有するものとした。
(1)配列番号1で表される塩基配列;
(2)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列;
(3)配列番号1で表される塩基配列の18個以内の塩基が、欠失、置換及び/又は不可された塩基配列。
また、本発明の他の観点によれば、ホスファチジンセンサーを、下記(1)〜(3)のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドを含有するものとした。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列;
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列;
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の6個以内のアミノ酸が、欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列。
1.序論
前述のとおり、細胞内PAの局在および動態の追跡はPAによって制御される生物学的現象を理解するために必須である。胞子形成特異的タンパク質(Spo20p)やcAMPホスホジエステラーゼ4A1(PDE4A1)といったタンパク質のPA結合ドメイン(PABD)がしばしばPAセンサーとして用いられているが、Spo20pは細胞膜に、PDE4A1はゴルジ体に細胞刺激非依存的に局在を示す。これらの細胞刺激非依存的な局在はPAセンサーとしての機能を妨害し、それらの適用を困難とさせる。したがって、あらゆる細胞刺激、細胞種に広く適用可能なPAセンサーは未だ開発されていない。
最近、発明者らの検討によりαシヌクレイン(α-Syn)が強く、そして選択的にPAに結合することが分かった。そこで発明者は、α-Synの有用なPAセンサーとしての可能性について探索を行った。in vitroにてα-SynのN末端領域(α-Syn-N)がPAに結合し、細胞内においてα-Syn-Nは膜局在性を示さないことが明らかとなった。なお、α-SynのN末端領域の配列は、配列番号1に示すものである。また、配列番号1に示す塩基配列によりコードされるアミノ酸配列は、配列番号2に示すものである。また、α-Syn-NはDGKやPLDなどのPA産生酵素とは活性依存的に共局在する一方で、PI(4,5)P2産生酵素であるPIP5Kとは共局在せず、α-Syn-Nが細胞内PAに選択的に結合することが示唆された。以上より、α-Syn-Nは細胞内にて信頼性が高く、幅広く適用可能なPAセンサーとして利用可能である。
2.結果
(1)α-Synとその領域欠損変異体のPA結合活性
まず初めに、His×6-SUMOタグ融合α-Synとそのドメイン欠損変異体(α-Syn-N, non-amyloid-b-component; α-Syn-NAC, C末端領域; α-Syn-C, NAC and C; α-Syn-NAC-C)のリポソーム共沈降法を、全長のα-Synが強く結合することが明らかとなっている18:1/18:1-PAを用いて行った。図2に示すように、α-Syn-Nが最も強く18:1/18:1-PAに結合し、一方でα-Syn-NAC, α-Syn-C, α-Syn-NAC-CはPA結合活性を示さなかった。また、α-Syn-NのPA結合活性は全長α-Synと同等であった。
次に、16:0/16:0-, 16:1/18:1-, 18:1/18:1-, 18:0/18:0-PAなどの様々なPA分子種を用いたα-Syn-Nのリポソーム沈降法を行ったところα-Syn-Nは全長α-Synと同様に18:1/18:1-PAに最も強く結合し、16:0/16:0-, 16:1/18:1-,とも結合した(図3、4)。
α-Syn-Nの18:1/18:1-PAに対する親和性を、様々な18:1/18:1-PA濃度でリポソーム沈降法を行う事で決定した。α-Syn-NのPA濃度依存的共沈降が観察され、解離定数(Kd)は6.6μMと求められた。これはSpo20p-PABD(2.2μM)や、PDE4A1-PABD(6.8μM)と同程度であった(図5、6)。
α-Syn-Nの酸性グリセロリン脂質に対する親和性を比較するため、18:1/18:1-PA, ホスファチジルセリン(PS), PI(4,5)P2を用いてリポソーム沈降法を行った。図6、7に示すようにα-Syn-Nは18:1/18:1-PAに最も強く結合した一方で、弱いシグナルのみがPI(4,5)P2では検出され、PSでは検出されなかった。
PA、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、セラミド-1-リン酸のような親水性の頭部が小さい円錐形脂質は、負の膜曲率を生じさせる。そこで、PEとC1Pを用いたリポソーム沈降法を行ったところ、α-Syn-NはほぼPEやC1Pと相互作用を示さなかった(図8)。よって、α-Syn-Nは膜曲率選択的ではなく、PA選択的であると考えられる。
さらにα-Syn-Nの脂質選択性について検証するため、トリアシルグリセロール(TG), DG, PA, PS, PE, PC, ホスファチジルグリセロール(PG), カルジオリピン(CL), PI, PI(4)P, PI(4, 5)P2, PI(3, 4, 5)P3, コレステロール(chol), スフィンゴミエリン (SM), スルファチド(SGC)らをスポットしたメンブレンを用いて脂質オーバーレイアッセイを行った。図9、10に示すように、α-Syn-NはPAに最も強く結合し、他の脂質に対しては非常に弱い結合能しか示さなかった。これらの実験は16:0/16:0-グリセロ脂質を用いて行ったが、18:1/18:1-PA, PC, PE, PG, PS, PI, PI(4, 5)P2,を用いても同様の結果が得られた(図27、28)。また、PAはLPA, C1Pと比較しても非常に強くα-Syn-Nと結合した(図11、12)。以上より、α-Syn-NはPAに選択的に結合する事が示された。
(2)COS-7細胞にてα-Syn-NはDGKβと細胞膜にて共局在する
次に、α-Syn-NがPA産生酵素であるDGKとPLDと細胞内にて共局在するか検証を行った。まず初めに我々はDsRed融合α-Syn-NがDsRedタグ単独と同様に、細胞質および核に広く分布することを確認し、これはα-Syn-Nが細胞膜やゴルジ体のような生体膜に局在化しないことを示している。
DGKβは基質であるDGが存在する細胞膜に局在する事が知られている。発明者は、EGFPタグ融合DGKβがCOS-7細胞において細胞膜に局在する事を確認し(図13)、そしてDsRed-α-Syn-NがEGFP-DGKβと共局在する事を明らかとした(図13、14)。一方で、不活性(KD)型変異EGFP-DGKβ-KDとはDsRed-α-Syn-Nは共局在しなかった。また、1型DGK(α,β,γ)阻害剤である化合物A(IC50:0.02μM)がDsRed-α-Syn-NとEGFP-DGKβの共局在を打ち消したことから、共局在化がPA依存的に生じ、α-Syn-NはDGKβタンパク質自体を認識しない事が示され、α-Syn-Nが細胞膜にてDGKβが産生するPAを認識できる事が示された。
同様の検証をSpo20p-PABDと、PDE4A1-PABDを用いて行ったところ、DsRed-Spo20p-PABDは細胞膜にてEGFP-DGKβと共局在したが、DsRed-Spo20p-PABDはEGFP-DGKβ非存在下においても細胞膜へと局在した。次に、報告されているようにDsRed-PDE4A1-PABDがゴルジ体へと局在する事を確認し、次にEGFP-DGKβと共発現させたものの、DsRed-PDE4A1-PABDはゴルジ体に留まりEGFP-DGKβとの共局在を示さなかった(図28)。
(3)COS-7細胞にてα-Syn-Nはミリストイル化DGKζと細胞膜およびゴルジ体にて共局在する
DGKζは細胞質および核に広く局在する事が報告されており、PAを産生するためにDGKζは基質が存在する生体膜へと移行する必要がある。膜局在化を促進する修飾としてミリストイル化が知られており、我々はDGKζの膜局在化を誘導するため、N末端ミリストイル化として機能するc-Srcのコンセンサス配列を有するAcGFP-DGKζのcDNA (Myr-AcGFP-DGKζ)を作成した。まず、Myr-AcGFP-DGKζが核周辺領域と細胞膜に共局在する事を確認した(図17、18)。Myr-AcGFP-DGKζはトランスゴルジマーカーであるTGN46やゴルジ体局在タンパク質であるDsRed-PDE4A1-PABDと局在が一致したことから、Myr-AcGFP-DGKζがゴルジ体へと局在している事が示された。DsRed-α-Syn-Nは細胞膜およびトランスゴルジにてMyr-AcGFP-DGKζと著しく共局在したが、不活性型変異体Myr-AcGFP-DGKζ-KDとは共局在しなかった(図17、18)ことから、共局在が、DGKζが産生したPA由来である事が示された。さらに、これらの結果は、DsRed-α-Syn-Nは細胞膜だけでなくゴルジ体においてもPAを標識できる事を示している。
Spo20p-PABDもゴルジ体においてMyr-AcGFP-DGKζとは共局在したが、Myr-AcGFP-DGKζ-KDとは共局在しなかった(図32、33)ことから、Spo20p-PABDもゴルジ体におけるPAを標識できる事が示された。しかしながら、Spo20p-PABDは細胞膜においてはMyr-AcGFP-DGKζ-KDと共局在を示したことから、Spo20p-PABDはCOS-7細胞内で細胞膜におけるPA量の変動を検出することが困難である。
(4)COS-7細胞にてα-Syn-Nはホルボールエステル刺激条件においてDGKγと共局在する
次に我々はDsRed-が短期間のみ生成されるPAを標識できるか検証を行った。DGKγはホルボールエステル(PMA)刺激により細胞質から基質が存在する細胞膜へと移行する事が知られている。そこで、EGFP-DGKγを発現させたCOS-7細胞をホルボールエステルで30分処理を行ったところEGFP-DGKγの細胞膜への移行が観測された(図19)。特にこの刺激時にDsRed-α-Syn-Nは細胞膜にてEGFP-DGKγと共局在し、一方でEGFP-DGKγ-KDとはPMA刺激時にも共局在しなかった(図19、20)。これらよりDGK活性が共局在に必須である事が示され、α-Syn-Nが短期間に生成されるPAを標識できる事が示された。
(5)COS-7細胞にてα-Syn-NはPLD2と共局在する
次に、DGK以外のPA産生酵素で検証を行うためPLD2を用いた。EGFP-PLD2は細胞膜およびゴルジ体への局在を示した(図21、34)。DsRed-α-Syn-NはEGFP-PLD2と共局在を示したが、DsRed単体はしなかった。さらに、PLD阻害剤であるFIPIにより共局在が減弱されたことから、共局在はPLD活性による事が示された。これらの結果は、α-Syn-Nが様々な膜環境において今回検証された全てのPA産生酵素により産生されたPAを標識できる事を示している。
(6)COS-7細胞にてα-Syn-NはPIP5K1Aと共局在しない
PI(4,5)P2のスポットやリポソームに対して、α-Syn-Nの弱いシグナルが検出されたため(図7から図12)、α-Syn-NがPI(4,5)P2産生酵素であるPIP5K1Aと共局在するかどうか検証を行ったところ、DsRed-α-Syn-NはEGFP-PIP5K1Aと共局在しなかった(図23、24)。また、PI(4,5)P2センサーとして確立されているDsRed-PLCTM1-pleckstrin homology domain(PHD)はPIP5K1Aと共局在することを確認した(図23、24)。これらの結果は、α-Syn-Nは細胞内にてPI(4,5)P2に結合せず、PA特異的である事を示している。
(7)考察
現在、信頼性と汎用性の高いPAセンサーは存在していない。Spo20p-PABDとPDE4A1-PABDはしばしば細胞内PAセンサーとして用いられているが、それらは細胞膜(Spo20p-PABD)やゴルジ体(PDE4A1-PABD)のように、細胞刺激誘発性PA産生に非依存的にそれら自身の局在を示す。発明者はα-Syn-Nが新規の信頼性があり、広く適用可能なPAセンサーであると明らかにした。特にDsRed-α-Syn-Nはその局在がDsRed単体と同様であるため、PA産生非依存的な非特異的細胞内局在を示さず、これは優れた脂質センサーとして必須の条件である。そして、この結果はα-Syn-NがPI(4,5)P2(図10)に加えて、in vitroで有意な結合を示さなかった(図7から図12)主要なリン脂質であるPC, PS, PEを細胞内で標識しない事を示している。さらに、α-Syn-Nは活性PA産生酵素であるDGKβ, Myr-DGKζ, PMA刺激DGKγ,PLD2が局在する生体膜(細胞膜、ゴルジ体)へと移行した一方で、それらの阻害剤存在下および不活性型変異体とは共局在しなかった(図13から図22)。これらの結果はα-Syn-Nはそこで生成されたPAを標識できた事を表している。さらに、α-Syn-Nは24時間以上のPA産生酵素による定常状態のPA産生に加え、PMAにより移行したDGKγが短時間(30分)に生成したPAも標識できた事が示された(図19、20)。
Spo20p-PABDとPDE4A1-PABDはそれぞれ細胞膜および核、ゴルジ体に局在する事が報告されており、本研究ではこれを再確認した(図29から図34)。α-Syn-NのPAに対する解離定数6.6μMはSpo20p-PABD(2.2μM)やPDE4A1-PABD(6.8μM)と同等であり、α-Syn-NはPAに対しSpo20p-PABDやPDE4A1-PABDと同等に高感度であった。しかし、細胞内における非特異的(PA産生酵素非依存的)局在の観点から、α-Syn-NはSpo20p-PABDとPDE4A1-PABDよりも優れている可能性がある。例えば、Spo20p-PABDはDGKβ非存在下においても細胞膜に強く局在するため、DGKβが細胞膜で産生するPAを標識できなかった。(図29)。さらに、PDE4A1-PABDはMyr-DGKzζ非存在下においてもゴルジ体に強く局在するため、Myr-DGKζがゴルジ体にて産生するPAを標識できなかった(図29から図31)。一方、α-Syn-Nは細胞膜やゴルジ体への局在能を示さない(図13から図16)ため様々な生体膜におけるPA産生を容易に標識する事ができ、これは大きな利点であると言える。
領域欠損変異体を用いた実験は、N末端のみがPAに強く結合し、NACやC末端は結合しない事を示した(図1、2)。全長α-Synを用いた以前の報告と同様に、α-Syn-Nは18:1/18:1-PAや16:0/18:1-PA, 16:0/16:0-PAを含む幅広いPA分子種に対し比較的広い選択性を示した(図3、4)。最近、我々はグルコース刺激条件下C2C12細胞にて、DGKδが14:0/16:0-, 14:0/16:1-, 16:0/16:0-, 16:0/16:1-, 16:0/18:0-, 16:0/18:1-PAを産生する事を明らかとした。また、16:0/16:0-と16:0/18:0-PAの産生がDGKα選択的阻害剤によって減弱されることを示した。さらに、DGKζは神経芽細胞腫分化の初期段階において16:0/16:0-PAを選択的に産生し、PLDはPCを加水分解し多量の16:0/18:1-, 18:1/18:1-PAを産生する。また、LPAATは主要リン脂質のde novo合成に関与しており幅広いPA分子種を生成する。したがって、PA分子種に対する比較的広い選択性により、α-Syn-Nは多くの細胞種における細胞刺激に応答するPAセンサーとして用いる事ができる。
一般的に、細胞内における酵素を標的とした化合物ライブラリーの阻害剤または活性化剤のスクリーニングは、in vitroよりも困難である。いくつかのDGKアイソザイムはガン、てんかん、強迫性障害、双極性障害、自己免疫、ガン免疫、心肥大、高血圧、および2型糖尿病の薬物標的となりうると考えられている。また、PLDはガンやパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患の薬物標的であり、LPAATも婦人性およびリンパ性悪性腫瘍における治療標的であると報告されている。PAセンサーとしてα-Syn-Nは、PA産生酵素の阻害剤および活性化剤のスクリーニングによる上記の疾患に対する薬物開発のための有用なツールとなりうると言える。実際、我々はCOS-7細胞において、DGKβ阻害剤である化合物AとPLD阻害剤であるFIPIの効果を検出することに成功している(図13から図16、図21、22)。
まとめると、発明者はα-Syn-Nが多種多様な生理学的現象に適用可能な信頼性ある有望な細胞内PAセンサーである事を明らかとした。PAセンサーの1種としてα-Syn-Nが追加されたが、PAに複数のセンサーを利用することは、PA標識の適用範囲と信頼性が向上するといえる。さらにα-Syn-Nは、多種多様な疾患の有望な薬物標的であるDGK, PLD,そしてLPAATなどのPA酸性酵素の阻害剤および活性化剤のスクリーニングツールとして有用である。
(8)図の説明
図1は、α-Synとその領域欠損変異体の概略図、図2は、精製したSUMO-α-Synとその領域欠損変異体(2.5μM)を18:1/18:1-PAまたは18:1/18:1-PSリポソーム(PAまたはPS150μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質をクマシーブリリアントブルーにより染色したものを示す図である。α-Synとその領域欠損変異体の位置を矢印で表した。上清(S)および沈殿(P)画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、結合活性は全バンド強度に対する沈殿画分のバンド強度の百分率として表した。値は4回の独立した実験の平均値±標準偏差, 18:1/18:1-PSリポソームに対し**P < 0.01。
図3は、精製したSUMO-α-Syn-N(2.5μM)とコントロール(PCとcholのみ), 16:0/16:0-PA, 16:0/18:1-PA, 18:1/18:1-PA, 18:0/18:0-PAリポソーム(PA150μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質をクマシーブリリアントブルーにより染色したものを示す図である。α-Syn-Nの位置を矢印で表した。
図4は、上清(S)および沈殿(P)画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、結合活性は全バンド強度に対する沈殿画分のバンド強度の百分率として表した図である。値は3回の独立した実験の平均値±標準偏差, 18:1/18:1-PAリポソームに対し、#P < 0.05, ##P < 0.01, ###P < 0.005, コントロールリポソームに対し*P < 0.05, ***P < 0.005。
図5は、精製したSUMO-α-Syn-N(0.1μM)と18:1/18:1-PAリポソーム(0-20μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質を銀染色により染色したものを示す図である。α-Syn-Nの位置を矢印で表した。
図6は、沈殿画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、結合活性は全バンド強度(インプット)に対する沈殿画分のバンド強度の百分率として表した図である。値は4回の独立した実験の平均値±標準偏差, KdはGraphPad Prism 8(Dissociation-One phase exponential decay)により求めた。
図7は、精製したSUMO-α-Syn-N(0.1μM)と18:1/18:1-PA, 18:1/18:1-PS, 18:1/18:1-PI(4,5)P2, 18:1/18:1-PE, d18:1/18:1-C1Pリポソーム(20μM)をインキュベート後、超遠心により分離、SDS-PAGE(15%)によって分離したタンパク質を銀染色により染色したものを示す図である。α-Syn-Nの位置を矢印で表した。
図8は、沈殿画分のタンパク質量をImageJソフトウェアでデンシトメトリーにより定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性を100%とした図である。値は3回の独立した実験の平均値±標準偏差, 18:1/18:1-PAリポソームに対し***P < 0.005。
図9は、等モル(100pmol)の様々な脂質をニトロセルロース膜上にスポットしたものを示す図である。グリセロ脂質のアシル鎖は16:0である(Echelon Biosciences)。
図11は、等モル(300pmol)の18:1/18:1-PA, 18:1-LPA, d18:1/18:1-C1Pをニトロセルロースメンブレン上にスポットしたものを示す図である。メンブレンを精製したGST-α-Syn-N(20μM)とインキュベート後、脂質結合タンパク質を抗GST抗体にて検出した。
図10、12は、ブロットをImageJソフトウェアで定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性(スポット強度)を100%とした図である。値は3回の独立した実験の平均値±標準偏差, PAに対し***P < 0.005。
図13から図16の画像は、EGFP, EGFP-DGKβ-WTまたはEGFP-DGKβ-KDをDsRed, DsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図14は、EGFP-DGKβ-WTまたはEGFP-DGKβ-KD, とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。図15は、EGFP-DGKβ-WTをDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に1μMの化合物Aと成長培地中で1時間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図16の下のグラフは、EGFP-DGKβ-WTとDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。
図17は、Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KDをDsRed, DsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図18は、Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KD,とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。
図19、図20は、EGFP, EGFP-DGKγ-WTまたはEGFP-DGKγ-KDをDsRedまたはDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に1μMのPMAまたはDMSOと成長培地中で30分間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。図20は、EGFP-DGKγ-WTまたはEGFP-DGKγ-KDとDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。
図21、22は、EGFP-PLDをDsRedまたはDsRed-α-Syn-NとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に750nMのFIPIと成長培地中で4時間インキュベートし、その後細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図22は、EGFP-PLD2とDsRed-α-Syn-Nの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。
図23は、EGFPまたはEGFP-PIP5K1AをDsRed, DsRed-α-Syn-NまたはDsRed-PLCTM1-PHDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図24は、EGFP-PIP5K1AとDsRed-α-Syn-NまたはDsRed-PLCδ1-PHDの局在をImageJソフトウェアで定量したものである。
図25、26は、大腸菌にて発現させ、アフィニティクロマトグラフィーにより精製したGSTまたはSUMO融合α-Synとその領域欠損変異体をSDS-PAGE(15%)で分離したものである。分離したタンパク質をクマシーブリリアントブルーにより染色し、イムノブロットにより決定したタンパク質の位置を矢印で表記した(図26)。予想分子量: GST alone, 28.4kDa; GST-α-Syn-N, 31.7kDa; SUMO alone, 12.2kDa, SUMO-α-Syn-N, 18.4 kDa; SUMO-α-Syn-NAC, 15.5kDa; SUMO-α-Syn-C, 17.3kDa; SUMO-α-Syn-(NAC-C), 20.5kDa; SUMO-α-Syn, 26.7kDa。
図27は、等モル(500pmol)の18:1/18:1-PA, 18:1/18:1-PC, 18:1/18:1-PE, 18:1/18:1-PG, 18:1/18:1-PS, 18:1/18:1-PI, 18:1/18:1-PI(4,5)P2をニトロセルロースメンブレン上にスポットし、精製したGST-α-Syn-N (20μM)とインキュベート後、脂質結合タンパク質を抗GST抗体にて検出したものである。
図28は、ブロットをImageJソフトウェアで定量し、α-Syn-NのPAに対する結合活性(スポット強度)を100%としたものである。値は3回の独立した実験の平均値±標準偏差, 18:1/18:1-PAに対し***P < 0.005。
図29は、EGFPまたはEGFP-DGKβをDsRed, DsRed-Spo20p-PABDまたはDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図30、31は、Myr-AcGFP-DGKζをDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、Myr-AcGFP-DGKζのみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図32、33は、Myr-AcGFP-DGKζ-WTまたはMyr-AcGFP-DGKζ-KDをDsRed-Spo20pとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後に細胞を固定し、画像化したものである。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
図34、35は、EGFP-PLD2をDsRed-PDE4A1-PABDとCOS-7細胞にて共発現させ、トランスフェクションの24時間後、EGFP-PLD2のみを発現させた細胞は抗TGN46抗体とAlexa Fluor 594-conjugated二次抗体を用いて免疫染色し、画像化した。3回の独立した実験の代表的なデータを示し、スケールバーは20μmである。
(9)実験手順
(a)SUMOとGSTタグ融合α-Synとその領域欠損変異体の発現と精製
His×6-SUMO融合コンストラクト作成のため、Nde1とXho1制限酵素サイトを融合したα-Syn(Met1‐Ala140), α-Syn-N(Met1‐Lys60), α-Syn-NAC(Glu61‐Val95), α-Syn-C(Lys96‐Ala140), and α-Syn-(NAC-C) (Glu61‐Ala140) cDNAをpET-14b-マウスα-SynベクターからPCRにより増幅し、pSUMOベクターに挿入した。このプラスミドで大腸菌 Rosetta-gami 2 (DE3)を形質転換した。菌体をLB培地にて OD600=0.6~0.8まで37℃で培養し、0.1 mM IPTGによりタンパク質発現を誘導し37℃で3時間培養した。遠心により回収した菌体を溶解バッファー (50 mM sodium phosphate, pH 8.0, containing 300 mM NaCl, 10 mM imidazole, 20 μg/mL aprotinin, 20 μg/mL leupeptin, and 20 μg/mL pepstatin)で溶解し、氷上で超音波破砕を行った。遠心後、His×6-SUMO融合タンパク質を精製するため、Ni-NTAアガロースを用いてNi-アフィニティクロマトグラフィーを行なった。カラムは洗浄バッファー(50 mM sodium phosphate, pH 8.0, 300 mM NaCl, and 10 and 50 mM imidazole)で洗浄し、300mM imidazole含有バッファーにて溶出させた。精製タンパク質はHEPESバッファー(25 mM HEPES, pH 7.4, 100 mM NaCl)に透析し、タンパク質濃度はbicinchoninic acid protein assay kit (Thermo Fisher Scientific)により決定した。
GST融合α-Syn-N作成のため、α-Syn-N(Met1‐Lys60)cDNAをpET-14b-マウスα-SynベクターからPCRにより増幅し、pGEX6P-1ベクターのBamH1とSal1制限酵素サイトに挿入し、このプラスミドで大腸菌 Rosetta 2 (DE3)を形質転換した。菌体をLB培地にてOD600=0.6~0.8まで37℃で培養し、0.1mM IPTGによりタンパク質発現を誘導し37℃で3時間培養し、遠心により回収した菌体を溶解バッファー(1.47mM KH2PO4, 8.09mM Na2HPO4, pH7.2, 2.67mM KCl, 137mM NaCl, 20μg/mL aprotinin, 20μg/mL leupeptin, and 20μg/mL pepstatin) で溶解し、氷上で超音波破砕を行なった。遠心後、GST融合タンパク質を精製するため、glutathione-Sepharose 4Bを用いてアフィニティクロマトグラフィーを行なった。カラムは溶解バッファーで洗浄し、溶出バッファー(50mM Tris-HCl, 150mM NaCl, and 10mM reduced glutathione)でタンパク質を溶出させた。脂質オーバーレイアッセイのため、精製タンパク質をHEPESバッファーに透析し、タンパク質濃度はbicinchoninic acid protein assay kit (Thermo Fisher Scientific) により決定した。
(b)リポソーム沈降法
コントロールリポソーム(Chol (50mol%) and 16:0/18:1-PC (50mol%))、PAリポソーム Chol (50 mol%), 16:0/18:1-PC (35 mol%) and each PA species (15 mol%)の組成でリポソームを作成した。乾燥脂質混合物をHEPESバッファーに懸濁し、1分間ボルテックス後に75℃で超音波破砕し、リポソーム形成を誘導した。タンパク質はリポソームと1時間インキュベートし、200.000g, 4℃で1時間遠心した。ペレットをHEPESバッファーに溶解後、SDS-PAGEにより分離しクマシーブリリアントブルーまたは銀染色にて検出した。定量はImageJソフトウェアを用いて行った。脂質は2重層を形成するため、実際の半分の濃度を考慮した。
(c)脂質オーバーレイアッセイ
脂質をニトロセルロースメンブレンにスポットし作成し、またMembrane Lipid Stripを用いた。メンブレンは1% skim milk in Tris-buffered saline, pH 7.4,で1時間、室温でブロッキングし、GSTタグ融合タンパク質(20 nM)を溶解した10 ml of 3% bovine serum albumin in Tris-buffered saline, pH 7.4で1時間、室温でインキュベート後、抗GST抗体peroxidase-conjugated goat anti-rabbit IgG antibodyによりタンパク質を検出した。定量はImageJソフトウェアを用いて行った。
(d)細胞培養
COS-7細胞は10% fetal bovine serum, 100 units/ml penicillin, and 100 μg/ml streptomycin含有Dulbecco’s modified Eagle’s mediumにて37℃, 5% CO2中で培養した。細胞は製造者のプロトコル通りにポリフェクトを用いて行なった。
(e)共焦点レーザー顕微鏡
COS-7細胞は以上の手順でトランスフェクションした。pEGFP-DGKβをトランスフェクションした細胞は、24時間後に1 μM化合物A / DMEMにて1時間インキュベートし、DGKβ活性を阻害した。pEGFP-PLD2をトランスフェクションした細胞は、750 nM FIPI / growth medium にて4時間インキュベートし、PLD2活性を阻害した。細胞は4%パラホルムアルデヒドで固定し、Vectashieldにてスライドガラスにマウントした。蛍光画像はOlympus FV1000-D (IX81) confocal laser scanning microscopeを用いて観察し、GFPは488 nm、DsRedは543 nmにて励起させた。画像取得にはFV-10 ASWソフトウェアを用いた。
(10)統計解析
データは平均値±標準偏差で表し、GraphPad Prism 8ソフトウェアにより、Student’s t-testまたはone-way ANOVA followed by Tukey’s post hoc testにより解析した。
本発明は、細胞内におけるホスファチジン酸センサーとして利用可能である。

Claims (3)

  1. α-シヌクレインのN末端領域を含有するホスファチジン酸センサー。
  2. 下記(1)〜(3)のいずれか1つの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するペプチドを含有するホスファチジン酸センサー:
    (1)配列番号1で表される塩基配列;
    (2)配列番号1で表される塩基配列と90%以上の相同性を有する塩基配列;
    (3)配列番号1で表される塩基配列の18個以内の塩基が、欠失、置換及び/又は付加された塩基配列。
  3. 下記(1)〜(3)のいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドを含有するホスファチジン酸センサー:
    (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列;
    (2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列;
    (3)配列番号2で表されるアミノ酸配列の6個以内のアミノ酸が、欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列。
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