JP2020535163A - 血小板溶解物画分を調製するための方法、血小板溶解物画分、及び中枢神経系の障害を処置するためのその使用 - Google Patents

血小板溶解物画分を調製するための方法、血小板溶解物画分、及び中枢神経系の障害を処置するためのその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、血小板溶解物画分を調製するための方法であって、1)血小板溶解物を用意する工程、2)前記血小板溶解物から、成分が100kDaの最大分子量を示す画分を回収する工程を含む、方法、具体的な血小板溶解物画分、及び薬物としてのその使用に関する。

Description

本発明は、血小板溶解物画分を得るための方法、血小板溶解物画分それ自体、並びに中枢神経系の障害、例えば神経変性、神経炎症性、神経発達性、及び/又は神経血管障害(すなわち脳卒中)、更には外傷性脳損傷又は低酸素症等の脳傷害の結果を処置するためのその使用に関する。
神経保護、神経修復、及び神経発生をもたらして神経変性障害、例えばパーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及びアルツハイマー病(AD)を処置する有効な「疾患修飾戦略」を開発することは、これらの障害が患者及び介護者に課す大きな社会的及び経済的影響を考慮すると、緊急に必要とされている。
神経修復及び神経発生をもたらしてニューロンの喪失及びその後の中枢神経系の傷害、例えば出産若しくは心停止後の重度の低酸素症、又は重度の外傷性脳損傷を補償する有効な処置を開発することもまた、バリデートされている処置が欠如していることを考慮すると、大いに待たれている。
ニューロンのシグナル伝達経路の活性化因子及び調節因子としてのニューロトロフィンが神経障害の論理的な治療戦略となる、という実質的な証拠がある。単一の組換え神経栄養増殖因子の適用は、細胞モデルと動物モデルの両方において、ニューロンの保護及び修復に関する有望な結果をもたらしている。
血小板由来増殖因子CC(PDGF-CC)は、ニューロン損傷のいくつかの動物モデルにおいて強力な神経保護因子であると判明したのに対し、PDGF-BB及び脳由来神経栄養因子(BDNF)は、脳室内(ICV)経路を介して投与すると、神経発生を刺激した。加えて、局所脳卒中の光血栓モデルにおいてBDNFを全身投与したところ、神経発生を誘導し、感覚運動機能を改善することができた。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)は、パーキンソン症候群の動物モデルにおいて、ドーパミン作動性ニューロンの発達及び生存、並びに神経保護を促進させることができ、片側パーキンソン病ラットにおいて、グリア由来神経栄養因子(GDNF)の栄養効果を高めた1
前臨床研究では、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)及び血管内皮細胞増殖因子β(VEGF-β)による神経保護、並びにGDNFによる神経保護及び神経修復の促進が示された。残念なことに、高用量の単一の増殖因子のICV投与を伴う全ての無作為化臨床研究では、実質的で明確な臨床効果を一切得ることができていない。現在、そのような複雑で多面的な神経変性病態において単一のニューロトロフィンを投与することは、有意義な治療成績を得るには不十分である。
したがって、より有力で、使用するのが安全で、作り出すのが容易であり得る新規手法を開発する必要があるが、これは特に、規制当局の承認を求め、それによって再生医療の他の分野から生じるより実用的な戦略を正当化することが概念上困難である。
濃厚血小板は、WHO必須医薬品モデルリストに収載されている十分に確立した治療製品であり、典型的には、血小板減少症に起因する出血障害の予防及び処置に使用される。止血における役割の他に、血小板は創傷治癒及び組織修復における重大な生理機能を発揮する2
血小板及び血小板溶解物が評価される、再生医療3及び細胞療法4の適用の範囲は拡大している。組織治癒における血小板の治療利益は、多元的であり、α顆粒に主に貯蔵され相乗的に作用する無数の生理活性メディエーターに起因する。これらの生理活性メディエーターとしては、神経栄養増殖因子、例えばPDGF(-AA、-AB、及び-BBアイソフォーム)、BDNF、VEGF、TGF-β、bFGF、又は上皮増殖因子(EGF)が挙げられる。近年、脳卒中の動物モデルにおける血小板溶解物の頭蓋内送達が、内在性神経幹細胞(eNSC)の増殖、並びに脳室下帯及び病変周囲の皮質における血管新生を刺激して、機能的帰結の改善及び損傷の減少をもたらし、神経保護効果を示唆することが示された5
更に、血小板溶解物は、完全には特徴決定されていない分子及び化合物の巨大なプールを含有するが、炎症の強力な誘導因子及び神経突起伸長の阻害因子として神経性障害の原因となる役割を果たすタンパク質である、血漿由来フィブリノーゲンを含有することが公知である。このことが、ヒトにおける中枢神経系の障害、例えばパーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症の分野における血小板溶解物又は血小板溶解物由来製剤の適用が未だ報告されていない理由であり得る。
したがって、特に中枢神経系の障害を処置するのに有用であり、未だ同定されていない特性を示す新規な血小板溶解物由来製剤を発見することができたことは、本出願人らの功績である。詳細には、本出願人は、強い神経保護効果を示す異なる血小板溶解物画分を得ることに成功した。
第1の態様では、本発明は、血小板溶解物画分を調製するための方法であって、
1)血小板溶解物を用意する工程、
2)前記血小板溶解物から、成分が100kDaの最大分子量を示す血小板溶解物画分を回収する工程
を含む、方法に関する。
本発明によれば、方法の第1の工程は、血小板溶解物を用意する工程で構成される。この血小板溶解物は、血小板ペレット溶解物(PPL)又はプールされたヒト血小板溶解物(pHPL)であり得る。好ましくは、血小板溶解物はプールされたヒト血小板溶解物(pHPL)である。
PPLとpHPLの両方は、濃厚血小板(PC)から周知の方法に従って調製することができ、これにより増殖因子及び他の活性分子の放出を誘導する。
第1の実施形態では、工程1)で用意される血小板溶解物は血小板ペレット溶解物(PPL)である。PPLは当技術分野で記載されているように調製することができる6。PPLは、例えば以下のように調製することができる:
i)濃厚血小板(PC)を用意する工程、
ii)前記濃厚血小板を遠心分離して、血小板ペレット及び第1の上清を得る工程、
iii)上清を除去し、ペレットを生理的緩衝液に懸濁する工程、
iv)前記懸濁したペレットを凍結-融解する工程、
v)工程iv)で得た懸濁液を遠心分離して、血小板ペレット溶解物及び第2の上清を得る工程。
工程i)で用意される濃厚血小板は、自己又は同種異系血小板供給源、特に全血から、好適な標準的な採取方法又はアフェレーシス手順によって得てもよく、血漿、又は血漿と血小板保存液との組合せ、又は血小板保存液単独に懸濁してもよい7。更に、濃厚血小板は白血球を減少させてもよい。
工程iii)で使用される好適な生理的緩衝液は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、HEPES緩衝液、トリス-HCl緩衝液、又は酢酸ナトリウム緩衝液、又は生理食塩水である。
血小板ペレット溶解物(PPL)は、新鮮PPL(PPLF)であっても期限切れPPL(PPLE)であってもよいが、好ましくはPPLFである。新鮮PPLという用語は、採取の5日以内に処理された濃厚血小板から調製した血小板ペレット溶解物を指す(非期限切れ)。期限切れPPLという用語は、5日間の保管を過ぎて処理された濃厚血小板から調製した血小板ペレット溶解物を指す。
第2の実施形態によれば、工程1)で用意される血小板溶解物はプールされたヒト血小板溶解物(pHPL)である。例えば、pHPLは、以下:
a)濃厚血小板を用意する工程、
b)工程a)の各濃厚血小板を別個に溶解する工程、及び
c)工程b)の結果として得た溶解物を混合してプールされたヒト血小板溶解物を得る工程
を含む方法によって調製することができる。
工程a)で用意される濃厚血小板は、異なるドナーに由来していてもよいし、同種異系血小板供給源から好適な標準的な採取方法によって得てもよい。詳細には、濃厚血小板は、バフィーコート又は多血小板血漿(PRP)技法を使用して全血から得てもよいし、アフェレーシス技法によって採取してもよい。好ましくは、濃厚血小板は、バフィーコート又はPRP技法を使用して全血から作製される8
「PRP法」では、抗凝固全血をバリデートされた条件下で弱遠心して、赤血球(RBC)を血小板と血漿との混合物、いわゆるPRPを含有する上半分から分ける。次いで、血小板をバリデートされた加速及び減速曲線を用いる強遠心によって濃縮する。濃厚血小板バッグを室温で静置し、次いで濃厚血小板を血漿に再懸濁する。「バフィーコート」法では、抗凝固全血を、バリデートされた加速及び減速曲線を用いて強遠心して、上層の「無細胞」血漿、バフィーコート(BC)と称される中層、及び赤血球(RBC)下層に分離する。BC層をサテライトバッグに移す。少量の血漿をBC層に戻し、穏やかに混合した後でバリデートされた加速及び減速曲線を用いる低速回転(light spinning)遠心分離に再度供する。PRP上清は、次いで血小板ストレージ(platelet storage)に入れ、22+/-2℃で保管してもよい。
アフェレーシス法では、濃厚血小板は、献血において使用される、血小板を分離し血液の他の部分をドナーに戻す体外医療機器を介して得ることができる。
「PRP法」において濃厚血小板を懸濁するために使用される血漿、「バフィーコート」法においてBC層に戻される血漿、又はアフェレーシスによって血小板と共に採取される血漿は、血小板保存液(PAS)、又は血漿とPASとの混合物、好ましくは血漿とPASとの混合物に置換してもよい。血漿とPASとの前記混合物は、約30質量%から40質量%までの血漿及び約70質量%から60質量%までのPASを含有し得る。
工程a)で用意される濃厚血小板は、白血球除去処理に供されてもよい。この処理は、白血球の枯渇をもたらし、白血球減少フィルターでのろ過によって、又はアフェレーシスによる血小板採取中に達成することができる。
工程a)で用意される濃厚血小板は、溶解前にウイルス/病原体不活性化処理の工程に供されてもよい。濃厚血小板に適用されるウイルス/病原体不活性化処理は、Intercept(登録商標)血液システム(Cerus Corporation社製)、Mirasol(登録商標)PRTシステム(Terumo BCT社製)、又はTHERAFLEX-UV(Macopharma社製)から選択され得る。これらの手段は当業者に周知であり、光不活性化剤の添加の有無にかかわらず、核酸の変化を標的とする。
濃厚血小板はまた、白血球除去処理及びウイルス/病原体不活性化処理に供されてもよい。好ましくは、白血球除去処理は、ウイルス/病原体不活性化処理の前に実施される。
各濃厚血小板を別個に溶解する工程b)は、当技術分野で公知の任意の方法によって達成することができる。例えば、血小板溶解は、1回若しくは複数回の凍結/融解サイクル、トロンビン若しくはCaCl2の添加によって誘導される血小板活性化、超音波処理、又は溶媒/界面活性剤(S/D)処理によって達成することができる。好ましくは、溶解の工程b)は、1回又は複数回の凍結/融解サイクル、より好ましくは少なくとも3回のサイクルによって達成される。溶解が前述の方法の1つによって達成される場合、遠心分離及びろ過工程もまた、細胞片を除去するために実施することができる。
次いで、工程c)は、溶解物を混合して、pHPLとも称されるプールされたヒト血小板溶解物を得る工程で構成される。したがって、HPLのプールは、異なるドナーからの少なくとも2種の血小板溶解物に由来する溶解した濃厚血小板を混合することによって得られる。好ましくは、HPLのプールは、異なるドナーから採取した、少なくとも5種、少なくとも10種、少なくとも20種、少なくとも30種、少なくとも40種、少なくとも50種、少なくとも100種、少なくとも140種、少なくとも180種、少なくとも200種、より詳細には、少なくとも240種の異なる血小板溶解物を混合することによって得られる。
本発明の方法に好適なプールされたヒト血小板溶解物(pHPL)は、血液施設又は商業的供給業者からの任意のプールされたヒト血小板溶解物であってもよい。例えば、プールされたヒト血小板溶解物は、Macopharma社(Tourcoing、France、MultiPL'30(登録商標)ヒト血小板溶解物)、Cook-Regentec社(Indianapolis、USA、Stemulate(登録商標)ヒト血小板溶解物)、Stemcell Technologies社(Grenoble、France、ヒト血小板溶解物)、又は更にはSigma-Aldrich社(PLTMax(登録商標)ヒト血小板溶解物)から得てもよい。
この第2の実施形態によれば、pHPLは、凝固カスケードの活性化を誘導する処理に供されてもよい。例えば、pHPLは、撹拌下でガラスビーズ(GB)及びCaCl2と、又はCaCl2のみを使用して、混合してもよい。この処理により凝塊形成物が生じ、凝塊形成物は遠心分離後に除去され、したがって結果として得られるpHPLはフィブリノーゲンを含まない。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、この処理が本発明に従って得た血小板溶解物画分のより低い毒性及び改善した神経保護効果に寄与すると考えている。
方法の第2の工程は、成分が100kDaの最大分子量を示す血小板溶解物画分を回収する工程で構成される。したがって、回収された熱処理血小板溶解物画分は、100kDa超の分子量を有する成分を含有し得ない。
本発明の意義において、成分がXkDaの最大分子量を示す血小板溶解物画分は、「血小板溶解物XkDa画分」又は「XkDa画分」、例えば「血小板溶解物100kDa画分」又は「100kDa画分」と称される。
詳細には、回収工程は、成分が100kDa、90kDa、80kDa、70kDa、60kDa、50kDa、40kDa、30kDa、20kDa、10kDa、5kDa、3kDa、又は1kDaの最大分子量を示す血小板溶解物画分を得るために実施される。換言すると、血小板溶解物画分は、100kDa超、90kDa超、80kDa超、70kDa超、60kDa超、50kDa超、40kDa超、30kDa超、20kDa超、10kDa超、5kDa超、3kDa超、又は1kDa超の分子量を有する成分を含有し得ない。
この第2の工程によれば、そのように得た画分は、好ましくは、血小板溶解物50kDa画分、血小板溶解物30kDa画分、血小板溶解物20kDa画分、血小板溶解物10kDa画分、及び血小板溶解物3kDa画分、より好ましくは、血小板溶解物10kDa画分、及び血小板溶解物3kDa画分、より一層好ましくは、血小板溶解物3kDa画分である。
驚くべきことに、また予期せぬことに、本発明者らは、血小板溶解物を回収工程に供して成分を除去したにもかかわらず、本発明による血小板溶解物画分が強い神経保護活性を示すことを見出した。実際、そのように得た画分は、その分子量に応じた一部の成分の除去が神経保護効果の喪失をもたらすと予期されていたが、依然として前記効果を発揮する。更に驚くべきことに、神経保護活性は、高分子量を有する成分の欠如が神経保護活性に有害となると考えられていた最小画分で得られる。
したがって、本発明は、中枢神経系障害の代替的処置を提供する大きな進歩である。
回収工程は、液体に含有される成分の、その分子量に応じた分離及び/又は濃縮をもたらす当技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。
一実施形態では、回収工程は、血小板溶解物の遠心分離によって得た上清を分画して、いわゆる血小板溶解物100kDa画分を回収する工程で構成されてもよい。この実施形態では、分画は限外ろ過によって実施してもよい。この限外ろ過方法においては、100kDaのカットオフを有する垂直膜を有する遠心フィルターが使用されてもよい。したがって、遠心フィルターに第3の工程後に得た上清を満たし、遠心分離に供する。アングルローター、回転速度、及び回転時間は、当業者が決定することができる。更に、当業者は、使用されるカットオフを調節して、所望の血小板溶解物画分を本発明に従って得ることができる。
本発明の血小板溶解物画分は、減少したタンパク質含量を有する。「減少したタンパク質含量」という表現は、前記画分が1.5μg/μL未満のタンパク質、好ましくは1.0μg/μL未満、より好ましくは0.70μg/μL未満のタンパク質を含有することを意味する。タンパク質含量は、当技術分野で公知の任意の方法、例えばローリータンパク質アッセイ又はELISAによって決定することができる。
具体的には、血小板溶解物3kDa画分は、約0.05μg/μLから約0.30μg/μL、詳細には約0.05μg/μLから約0.30μg/μLのタンパク質含量、より詳細には約0.05μg/μLから約0.1μg/μLのタンパク質含量を提示し得る。更に、血小板溶解物3kDa画分は、好ましくは、フィブリノーゲンを含まず、増殖因子を含まない。
本発明の方法は、熱処理血小板溶解物画分を後の使用のために-80℃で保管する追加の工程を含んでもよい。
好適な一実施形態では、本発明の方法はまた、回収工程の前に、血小板溶解物を約50℃から約70℃の温度で15分から45分の間熱処理する工程、及び前記熱処理血小板溶解物を遠心分離し、上清を保存する工程を含んでもよい。
熱処理工程は、好ましくは、タンパク質の生物活性を維持するために古典的に使用される安定剤を添加せずに実施される。そのような安定剤は、例えば、スクロース、ソルビトール、マンニトール、又はアルギニン若しくはリジン等のアミノ酸である。
熱処理工程は一部のタンパク質の沈殿を誘導し、一部のタンパク質はそのために遠心分離工程後に除去されると考えられている。タンパク質の減少した含量は、一部の用途、例えば鼻腔内投与を介した中枢神経系の障害の処置により有利であり得る。
熱処理工程は、約50℃から約70℃の温度、好ましくは約50℃から約60℃の温度、より好ましくは約54℃から58℃の温度で実施され得る。熱処理工程は、例えば56℃で実施される。
熱処理工程の時間は、15から45分、好ましくは20から40分、より好ましくは25から35分であり得る。例えば、熱処理工程は30分間実施される。
遠心分離は、有利には、約2℃から6℃の温度で実行され得る。この遠心分離工程の時間は少なくとも10分であり、速度は約8000×gから約12000×g、好ましくは約9000×gから約11000×g、より好ましくは10000×g程度であり得る。上清は収集され、方法の回収工程のために使用される。
この実施形態によれば、結果として得られる回収工程後の血小板溶解物画分は熱処理血小板溶解物画分である。
驚くべきことに、また予期せぬことに、血小板溶解物を熱処理工程及び回収工程に供したにもかかわらず、この実施形態による熱処理血小板溶解物画分が神経保護の点で強い効果を示すことが見出された。
更に、in vitroアッセイでは、熱処理の工程の有無にかかわらず、本発明の方法に従って調製した画分が、ドーパミン作動性細胞を神経毒によって誘導される死から保護することが示されている。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、画分の改善した神経保護活性は、そのタンパク質含量、例えばフィブリノーゲン含量が減少した結果であり、100kDa以下、詳細には50kDa、30kDa、20kDa、10kDa、又は3kDa以下の分子量を有する化合物の濃縮の結果であると考えている。in vitroで得た結果は、変異型の銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスである、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の周知のモデルに関するin vivoアッセイで確認されている。
詳細には、回収工程、及び任意選択で熱処理が、フィブリノーゲン及びタンパク質分解酵素(例えばトロンビン、又はトロンビン様若しくはトロンビン生成凝固因子)の減少又は枯渇を結果としてもたらす、詳細には、熱処理工程が、潜在的に毒性な熱不安定性タンパク質を沈殿及び/又は不活性化させ、好都合には、結果として得られる画分における、及び成分の分子量のバランスを修正する回収におけるタンパク質と増殖因子とのバランスを修正し、神経保護効果を増強するとも考えられている。したがって、結果として得られる血小板溶解物画分は、脳にとって有毒なフィブリン形成という生物学的リスクを回避することができる。
それゆえ、本発明に従って得られた血小板溶解物画分は、血漿中に懸濁した標準的なヒト血小板溶解物よりも実質的に高い安全域を提供し、生物療法における、とりわけ脳投与を介した使用により好適であり、より効率的である。
上述したように、本発明の方法によって得た血小板溶解物画分は、改善した神経保護活性を提供する。
第2の態様では、本発明は血小板溶解物画分に関する。血小板溶解物画分は上記の方法に従って得ることができる。したがって、本発明による血小板溶解物画分は、具体的には、成分が100kDaの最大分子量を示す血小板画分である。
詳細には、本発明による血小板溶解物画分は、血小板溶解物50kDa画分、血小板溶解物30kDa画分、血小板溶解物20kDa画分、血小板溶解物10kDa画分、又は血小板溶解物3kDa画分である。より好ましくは、本発明による画分は、血小板溶解物10kDa画分又は血小板溶解物3kDa画分、より一層好ましくは熱処理血小板溶解物3kDa画分である。
本発明の血小板溶解物画分はタンパク質の減少した含量を有する。「減少した含量」という表現は、前記画分が1.5μg/μL未満のタンパク質、好ましくは1.0μg/μL未満、より好ましくは0.70μg/μL未満のタンパク質を含有することを意味する。
具体的には、血小板溶解物3kDa画分は、約0.05μg/μLから約0.30μg/μL、詳細には約0.05μg/μLから約0.30μg/μLのタンパク質含量、より詳細には約0.05μg/μLから約0.1μg/μLのタンパク質含量を提示し得る。更に、熱処理血小板溶解物3kDa画分は、好ましくは、フィブリノーゲンを含まない。
血小板溶解物画分は、本明細書上記の方法によって得ることができる。
本発明による血小板溶解物画分は強い神経保護活性を呈し、中枢神経系の障害を処置することに特に有利である。より詳細には、最小血小板溶解物画分、すなわち血小板溶解物10kDa画分及び血小板溶解物3kDa画分は、より容易に鼻腔を通過して脳に達し、神経保護効果を発揮することができる。
第3の態様では、本発明は、生物学的薬物又は「生物療法」としての使用のための、本発明による血小板溶解物画分に関する。
実際、血小板溶解物画分は、その改善した神経保護活性及びより高い安全性のために、中枢神経系の障害の処置及び/又は防止に使用することができる。
換言すると、本発明はまた、中枢神経系の障害を処置及び/又は防止する方法であって、治療有効量の本発明の血小板溶解物画分の、それを必要とする患者への投与を含む、方法にも関する。好ましくは、患者は温血動物、より好ましくはヒトである。
本発明の意義の範囲内における中枢神経系の障害としては、これらに限定されないが、神経変性障害、神経血管障害、神経炎症性障害、自閉症及び統合失調症等の神経発達性障害、脳傷害、例えば出産若しくは心停止後の重度の低酸素症、又は重度の頭蓋外傷/外傷性脳損傷、すなわち心身障害を引き起こす著しいニューロンの喪失を結果として生じる重度の傷害が挙げられる。
好適な実施形態では、中枢神経系の障害は神経変性障害である。本発明の意義の範囲内における神経変性障害としては、これらに限定されないが、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳卒中、加齢黄斑変性症(AMD)、網膜の変性疾患、及び認知症が挙げられ、認知症としては、これらに限定されないが、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、前頭側頭型認知症、意味性認知症、及びレビー小体型認知症が挙げられる。好ましくは、神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症から、より好ましくはパーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症から選択される。
別の実施形態では、中枢神経系の障害は、中枢神経系の脳傷害、例えば出産若しくは心停止後の重度の低酸素症、又は重度の頭蓋外傷、すなわち心身障害を引き起こす著しいニューロンの喪失を結果として生じる重度の傷害である。血小板溶解物画分を用いた傷害後早期の処置は、生理的な神経修復及び神経発生能力を高め得る。
血小板溶解物画分は、天然若しくは合成のナノ粒子9若しくはマイクロ粒子に封入されている、又は少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、添加剤、及び/若しくはアジュバントを更に含む医薬溶液に含まれているものとして投与してもよい。医薬溶液は、錯体、分子、ペプチド、塩、ベクター、又は任意の他の化合物を更に含むことができ、神経障害を改善させることができる、又は神経障害の処置に有益であり得る。
投与経路及び投与計画は、当然のことながら、病気の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に依存する。本発明の血小板溶解物画分は、任意の患者、とりわけ哺乳動物等の温血動物、好ましくはヒトの処置のために使用することができる。
有利には、本発明による血小板溶解物画分は中枢神経系における投与に好適である。具体的には、前記血小板溶解物画分は、鼻腔内投与(例えば、鼻腔に近い黒質、線条体、及び嗅球の病態であるパーキンソン病)、又は髄腔内投与(例えば、脊髄の病態である筋萎縮性側索硬化症の場合)、又は好ましくは血小板溶解物画分が第3脳室に投与され得るように室間孔に近接した脳室内(ICV)投与に適合している。
最小血小板溶解物画分は、依然として神経保護活性を示す場合、鼻腔内投与に特に有効である。実際、最小血小板溶解物画分は、その低分子量成分のために、本発明の目的に有利である鼻腔を介して容易に脳へ達し、中枢神経系の障害を処置することができる。更に、安全性の点で、より小さい成分を含有する血小板溶解物を用いて神経保護効果の恩恵を受けることは、患者により有利である。
中枢神経系への投与は、当技術分野で公知の方法によって達成することができる。例えば、投与は、薬物送達システム、例えばプログラム可能な薬剤ポンプで実行することができる。
本発明の血小板溶解物画分の投与はまた、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、若しくは眼内投与、又は器官の灌流若しくは注入(すなわち、脳組織の一部分の直接注入)等の当業者に公知の任意の他の方法によっても実施することができる。
投与のために使用される曝露投薬量は、様々なパラメーターの関数として、特に使用される投与様式、関連する病態、又は所望の処置時間の関数として調節することができる。
定義
下記の定義及び説明は、本明細書と特許請求の範囲の両方を含む本願全体にわたって使用される用語に関するものである。
「神経保護活性」又は「神経保護」は、神経毒に冒されていない神経細胞と比較した、神経毒に冒された神経細胞のニューロン構造及び/又は機能の保存を意味する。神経保護は、ニューロンの喪失を停止させる又は少なくとも遅らせることによって疾患進行及び二次損傷を防止する又は遅らせることを目的とする。例えば、神経保護は、パーキンソン病に冒されていない患者と比較した、パーキンソン病に冒された患者の線条体及び/又は黒質緻密部におけるニューロンの数の保存を指す。
「神経修復」は、既存の変化を補償すること、並びに損なわれた神経活性の構造的及び機能的修復を刺激することを意味する。
「患者」という用語は、医療を待っている若しくは受けている、又は医療措置の対象である若しくは対象となり得る温血動物、より好ましくはヒトを指す。
「ヒト」という用語は、任意の発達段階(すなわち、新生児、乳幼児、児童、青年、成人)の男女の対象を指す。一実施形態では、ヒトは青年又は成人、好ましくは成人である。
「処置する」、「処置すること」、及び「処置」という用語は、本明細書で使用する場合、状態若しくは疾患及び/又はそれに付随する症状を緩和又は抑制することを含むことが意図されている。
「防止する」、「防止すること」、及び「防止」という用語は、本明細書で使用する場合、状態若しくは疾患及び/又はそれに付随する症状の発症を遅延させる又は妨げる、患者が状態又は疾患に罹患することを防ぐ、或いは状態又は疾患に罹患する患者のリスクを低減する方法を指す。
「治療有効量」(又はより簡単に「有効量」)という用語は、本明細書で使用する場合、本発明の血小板溶解物画分が投与される個体において所望の治療又は予防効果を達成するのに十分な、本発明の血小板溶解物画分の量を意味する。
「投与」という用語又はその変化形(例えば「投与すること」)は、本発明の血小板溶解物画分を、単独で又は薬学的に許容される溶液の部分として、状態、症状、又は障害を処置又は防止すべき患者に提供することを意味する。
本発明は、以下の実施例及び図面を参照することでより良く理解されるだろう。これらの実施例は、本発明の具体的な実施形態を代表するものとして意図されており、保護の範囲を限定するものとして意図されていない。
血小板溶解物及び血小板溶解物画分を用いた処理の時間経過を示す図である。血小板溶解物(対照)及び画分は、エラスチンの1時間前(A)、又はエラスチンの1時間、3時間、6時間、及び8時間後(B)に添加した。 50kDa、H-50kDa、30kDa、H-30kDa、10kDa、H-10kDa、3kDa、及びH-3kDa画分のサイトメトリーによって測定した神経保護効果を示すグラフである。生存率をヨウ化プロピジウムアッセイによって測定し、対照(非処理細胞)+/-SEMに対して正規化した(50kDa、30kDa、10kDaではn=1、3kDaではn=2)。 レサズリンによって測定した50kDa、H-50kDa、30kDa、H-30kDa、10kDa、及びH-10kDa画分の神経保護効果を示すグラフである。エラスチン(E)の1時間前に処理した。生存率を測定し、対照(非処理細胞)に対して正規化した(n=1)。 レサズリンによって測定した3kDa及びH-3kDa画分の関与経路及び神経保護効果を示すグラフである。エラスチン(E)の1時間前に処理した。iAkt:Akt阻害剤、E:エラスチン。生存率を測定し、対照(非処理細胞)+/-SEMに対して正規化した(n=4)。 レサズリンによって測定した3kDa及びH-3kDa画分の神経保護効果を示すグラフである。LUHMES細胞をエラスチン(E)の1時間、3時間、6時間、又は8時間後に処理した。 サイトメトリーアッセイによって測定したH-3kDa画分の神経保護効果を示すグラフである。エラスチン(E)の1時間前に処理した。生存率を測定し、対照(非処理細胞)+/-SEMに対して正規化した(pHPL、H-pHPL、H-pHPL-GBではn=4、H-3kDaではn=2)。 ビヒクル及びH-PPL希釈調製物によって処置した雄マウスの体重推移を示すグラフである。雄WT:雄野生型、雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-PPL希釈調製物によって処置した雌マウスの体重推移を示すグラフである。雌WT:雌野生型、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-PPL希釈調製物によって処置した雄及び雌マウスの生存曲線を示すグラフである。雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週3回処置した雄マウスの体重推移を示すグラフである。雄WT:雄野生型、雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週3回処置した雌マウスの体重推移を示すグラフである。雌WT:雌野生型、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週3回処置した雄及び雌マウスの生存曲線を示すグラフである。雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週6回処置した雄マウスの体重推移を示すグラフである。雄WT:雄野生型、雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週6回処置した雌マウスの体重推移を示すグラフである。雌WT:雌野生型、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)、Veh:ビヒクル。 ビヒクル及びH-3kDa調製物によって週6回処置した雄及び雌マウスの生存曲線を示すグラフである。雄Tg:雄FVB-Tg(Sod1*G86R)、雌Tg:雌FVB-Tg(Sod1*G86R)。
以下の略記を本明細書全体、図面、特許請求の範囲にわたって使用する。
10kDa画分:血小板溶解物10kDa画分
30kDa画分:血小板溶解物30kDa画分
3kDa画分:血小板溶解物3kDa画分
50kDa画分:血小板溶解物50kDa画分
H-10kDa画分:熱処理血小板溶解物10kDa画分
H-30kDa画分:熱処理血小板溶解物30kDa画分
H-3kDa画分:熱処理血小板溶解物3kDa画分
H-50kDa画分:熱処理血小板溶解物50kDa画分
H-pHPL:熱処理されたプールされたヒト血小板溶解物
H-pHPL-GB:ガラスビーズ(GB)と混合され、熱処理に供されたプールされたヒト血小板溶解物
HPL:ヒト血小板溶解物
H-PPL:熱処理血小板ペレット溶解物
ICV:脳室内
PAS:血小板保存液
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
PC:濃厚血小板
pHPL:プールされたヒト血小板溶解物
PL:血小板溶解物
PPL:血小板ペレット溶解物
PPLE:期限切れPCからの血小板ペレット溶解物
PPLF:非期限切れPCからの血小板ペレット溶解物
PRP:多血小板血漿
RBC:赤血球
(実施例1)
血小板ペレット溶解物(PPL)を血小板溶解物出発物質として用いた実験
材料及び方法
1.血小板ペレット溶解物及び血小板溶解物画分の調製
血小板溶解物を、濃厚血小板(Etablissement Francais du Sang、Lille、France)から得た。4600×gで20分間、室温での遠心分離後、血小板ペレットを2回洗浄し、初期容量の1/10のPBSに再懸濁した。次いで、血小板ペレットを3回凍結(窒素)及び融解(37℃)し、4600×gで20分間、室温で遠心分離した。
「血小板ペレット溶解物」(PPL)と称する上清を回収し、等分し、-80℃で保管した。
PPLの一部を56℃で30分間熱処理し、次いで10000×gで15分間、4℃で遠心分離し、「熱処理血小板ペレット溶解物」(H-PPL)と称する上清を等分し、-80℃で保管した。
血小板溶解物画分を、異なるカットオフのAmicon Ultra-0.5限外ろ過チューブ(Amicon Ultra-0.5遠心ろ過装置、Millipore社)を使用する分画工程を実施することによってPPL及びH-PPLから得た。
簡潔に述べると、500μLのPPL又はH-PPLを、回収用チューブに挿入したろ過装置に添加し、14000×gで30分間、4℃、固定アングルローター40°で遠心分離する。使用したカットオフに応じて、ろ液、又はカットオフ未満のより小さい部分である血小板溶解物画分を、PPLから得た場合は50kDa画分、30kDa画分、10kDa画分、及び3kDa画分と称し、H-PPLから得た場合はH-50kDa画分、H-30kDa画分、H-10kDa画分、及びH-3kDa画分と称する。
次いで、異なる血小板溶解物画分を等分し、後の実験のために-80℃で保管した。
2. LUHMES細胞の維持及び分化
LUHMES細胞をScholz博士の研究室(University of Konstanz、Germany)から得て、記載の通り10に培養した。
簡潔に述べると、未分化LUHMES細胞を、水中の50μg/mLポリ-L-オルニチン及び1μg/mLフィブロネクチン(Sigma-Aldrich社、St. Louis、MO、USA)を用いて37℃で3時間プレコートしたNunclon(商標)(Nunc社、Roskilde、Denmark)プラスチック製細胞培養フラスコ及びマルチウェルプレートを使用して増加させた。コーティング溶液の除去後、培養フラスコを滅菌蒸留水で洗浄し、風乾した。
細胞を、95%空気、5% CO2の湿潤雰囲気中37℃で増殖した。増殖培地は、1×N-2サプリメント(Invitrogen社、Karlsruhe、Germany)、2mM L-グルタミン(Gibco社、Rockville、MD、USA)、及び40ng/mL組換えbFGF(R&D Systems社)を含有する改良型ダルベッコ改変イーグル培地(改良型DMEM)/F12であった。およそ80%の集密に達したとき、細胞を0.025%トリプシン溶液(Gibco社、Rockville、MD、USA)を用いて解離し、3×106個/フラスコで継代した。
神経細胞に分化を誘導するために、2×106個のLUHMESをT75フラスコに播種し、増殖培地で48時間、次いで、1×N-2サプリメント、2mM L-グルタミン(Gibco社)、1mMジブチリルcAMP(Sigma-Aldrich社)、1μg/mLテトラサイクリン(Sigma-Aldrich社)及び2ng/mL組換えヒトGDNF(R&D Systems社)を含有する改良型DMEM/F12で増殖した。分化条件での培養の2日後、LUHMESを、6日目の更なる実験のために24ウェルプレートに培養した。
3. LUHMES細胞の処理
全ての血小板溶解物調製物を5% v/vで使用し、1.25μMのエラスチンによって誘導される細胞死に対して試験した。簡潔に述べると、LUHMESを前述したように使用し、異なる血小板溶解物画分を、エラスチン(E)を用いた処理の1時間前、又はエラスチンの1、3、6、及び8時間後に培地に添加した(図1)。
4.生存率試験
異なる血小板溶解物画分の神経保護能力を定量化するために、LUHMES細胞の生存率を、24ウェルにおけるサイトメトリーアッセイによって、ヨウ化プロピジウムの取込みを使用することにより評価し(図2)、対照又は異なる血小板溶解物と比較した。実験のために使用されるサイトメーターは、488nmのレーザーを備えるCyAn(商標)モデル(Beckman Coulter社)である。
生存率を、7日間の分化後の50kDa、H-50kDa、30kDa、H-30kDa、10kDa、及びH-10kDa画分を用いた処理の24時間後に96ウェルにおいて実施したレサズリンアッセイによっても測定した。アッセイはトリプシン処理をしていない細胞培養物に関して実施する(図3)。
血小板溶解物H-3kDa画分をレサズリンアッセイによって別個に評価し、血小板ペレット溶解物から作製した最小画分がAktシグナル伝達経路を誘発するかどうかを更に決定した(図4)。したがって、Akt阻害剤を用いる実験を実施し、阻害剤MK-2206を、血小板溶解物画分への曝露の1時間前に、培地に5μM添加した。
血小板溶解物H-3kDa画分を用いた処理は、エラスチンへの曝露の1時間前、並びにエラスチンへの曝露の1時間、3時間、6時間、及び8時間後に実施した。
5.タンパク質投薬量
タンパク質濃度を、異なる試料においてローリータンパク質アッセイによって測定した。各試料について、測定を2回繰り返して行い、濃度をμg/μLで表す。
6.統計分析
結果は平均±平均の標準誤差(SEM)として表す。統計分析は、データの正規分布を確かめた後、一元配置分散分析を使用して実施した。非正規分布の場合は、ウィルコクソン及びクラスカル・ウォリスのノンパラメトリック検定を実施した。0.05未満のp値を統計的に有意と見なした。
結果
1.タンパク質投薬量
2.ドーパミン作動性ニューロンに関する保護能力
- サイトメトリーアッセイ
図2に示すように、エラスチンを用いて処理したLUHMES細胞の生存率はおよそ30%まで低下する。したがって、エラスチンは対照細胞を死滅させるが、これはLUHMES細胞を血小板溶解物画分のいずれかによって同時に処理した場合には観察されなかった。
実際、血小板溶解物画分のいずれも、LUHMES細胞に対して毒性効果を有していなかった。したがって、血小板溶解物画分は、LUHMES細胞をエラスチンによって誘導される死から保護し、強い神経保護効果を示す。
- レサズリンアッセイ
サイトメトリーアッセイによって得た結果をレサズリンによって確認した。
図3及び図4に示すように、エラスチンはLUHMES細胞を効率的に死滅させるが、エラスチンへの曝露の1時間前の、本発明による血小板溶解物画分を用いた処理は、LUHMES細胞を死から保護する。したがって、血小板溶解物画分は、エラスチンの毒性効果を防止することができ、著しい神経保護効果を示す。
更に、図4はまた、血小板溶解物H-3kDa画分がAktシグナル伝達経路に関与することも示す。
神経保護効果を、血小板溶解物H-3kDa画分をエラスチンへの曝露後に添加した場合にも試験したところ、結果は、エラスチンへの曝露の1時間から8時間後の血小板溶解物H-3kDa画分を用いた処理が依然としてLUHMES細胞を死から保護することを示した(図5)。
3.結論
血小板ペレット溶解物を出発物質として用いて調製した本発明による血小板溶解物画分は、神経毒によって誘導される死から細胞を保護することができ、有効な神経保護効果を示す。この結果は2つの異なるアッセイでバリデートされた。
(実施例2)
プールされたヒト血小板溶解物(pHPL)を血小板溶解物出発物質として用いた実験
1.プールされたヒト血小板溶解物(pHPL)及び血小板溶解物画分の調製
プールされたヒト血小板溶解物(pHPL)は、Macopharma社(Tourcoing、France)から、名称MultiPL'30(登録商標)ヒト血小板溶解物、型番BC0190020のものを得る。
pHPLの一部分を56℃で30分間の熱処理に供し、遠心分離(15分、10000×g、4℃)によって精製して、いわゆるHT-pHPLを得た。
pHPLの別の部分を、0.5g/mLのガラスビーズ(2mmの直径のBEAD-002-1kg、Labbox社製)及びCaCl2(23mMの最終濃度、C4901無水塩化カルシウム粉末、Sigma-Aldrich社製)と撹拌下で1時間混合した。これにより凝塊形成物が生じ、凝塊形成物は遠心分離(6000×g、30分、22℃)後に除去した。上清を56℃で30分間加熱し、遠心分離(10000×g、15分、4℃)した後で、アリコートを作製し、後の使用のために-80℃で保管した。そのように得たこの血小板溶解物をH-pHPL-GBと称する。
熱処理血小板溶解物3kDa画分を、異なるカットオフのAmicon Ultra-0.5限外ろ過チューブ(Amicon Ultra-0.5遠心ろ過装置、Millipore社)を使用して、H-pHPL-GBから得た。
簡潔に述べると、500μLのH-pHPL-GBを、回収用チューブに挿入したろ過装置に添加し、14000×gで30分間、4℃、固定アングルローター40°で遠心分離する。使用したカットオフに応じて、ろ液、又はカットオフ未満のより小さい部分である熱処理血小板溶解物画分を、熱処理血小板溶解物から得たため、H-3kDaと称する。
次いで、血小板溶解物画分を等分し、後の実験のために-80℃で保管した。
2. LUHMES細胞の維持及び分化
LUHMES細胞を実施例1に記載の通りに得て、調製した。
3. LUHMES細胞の処理
H-3kDa画分を5% v/vで使用し、エラスチンによって誘導される細胞死に対して試験した。簡潔に述べると、LUHMESを前述したように使用し、H-3kDa画分を、エラスチン(E)を用いた処理の1時間前に培地に添加した。
4.生存率試験
熱処理血小板溶解物3kDa画分の神経保護能力を定量化するために、LUHMES細胞の生存率を、24ウェルにおけるサイトメトリーアッセイによって、ヨウ化プロピジウムの取込みを使用することにより評価し、対照又は異なる血小板溶解物と比較した。実験のために使用されるサイトメーターは、488nmのレーザーを備えるCyAn(商標)モデル(Beckman Coulter社)である。
5.タンパク質投薬量
タンパク質濃度を、異なる試料においてローリータンパク質アッセイによって測定した。各試料について、測定を2回繰り返して行い、濃度をμg/μLで表す。
6.結果
- タンパク質投薬量
- ドーパミン作動性ニューロンに関する保護能力
図6に示すように、エラスチンを用いて処理したLUHMES細胞の生存率はおよそ50%まで低下する。したがって、エラスチンは対照細胞を有効に死滅させるが、これはLUHMES細胞をH-3kDa画分によって同時に処理した場合には観察されなかった。
それゆえ、H-3kDa画分は、LUHMES細胞をフェロトーシスによる死から保護し、強い神経保護効果を示す。
この実施例は、本発明による熱処理血小板溶解物3kDa画分の可能性を示す。更に、この画分は、血漿中に懸濁した標準的なヒト血小板溶解物よりも実質的に高い安全域を提供するプールされたヒト血小板溶解物から得た。したがって、このH-3kDa画分は、生物療法における、とりわけ脳投与を介した使用により好適であり、より効率的である。
(実施例3)
in vivo試験
全ての実験は、「実験動物飼養の原則」(NIH刊行物86-23、1985年改訂)並びに現行のフランス及び欧州連合における動物実験に関する法律上及び規制上の枠組み(欧州共同体理事会指令86/609)に従って実行した。
登録したマウスはJAX laboratoriesのFVB-Tg(Sod1*G86R)M1Jwg/Jマウスであった。動物を恒温室(22±2℃)において12/12時間の明/暗サイクルで群飼した(ケージ1つ当たり10匹)。食事及び水は自由に摂取させた。受領後、ハンドリングを行わない7日間の馴化期間を設けた。繁殖をSOPF施設で実現し、遺伝子型決定を(尾部生検の)qPCRによって実施する。動物をイヤリングで識別する。
1.実験のプロトコル
マウスをハンドリングし、60日齢で体重を測定して、67日齢から死亡するまで週2回評価した(すなわち、体重及び神経スコア)。
a.神経スコア
- 歩行(0=問題なし、1=一方の後肢に異変、2=両方の後肢に異変)
- 尾懸垂試験(0=問題なし、1=一方の後肢が収縮、2=両方の後肢が収縮)
- 麻痺(0=なし、1=あり)
- 脊柱後弯(0=なし、1=あり)
最大スコア=6(瀕死スコア)
b.処置
75日から死亡するまで、ビヒクルと比較した異なる血小板溶解物調製物を週3回(調製物1及び調製物2)及び週6回(調製物2のみ)、SOD1m-FVB及びWT-FVB雄及び雌に投与する。SOD1m-FVBマウスは、変異型の銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスである。投与した調製物の用量は、鼻腔内(i.n.)に20μLであった。
c.試験した血小板溶解物
2種の血小板溶解物調製物を試験し、以下に記載する。
調製物1:実施例1の第1節に記載の通りのH-PPLで、PBS中50%に希釈したH-PPL(希釈H-PPL)。
調製物2:実施例1の第1節に記載の通りのH-PPLから調製した熱処理血小板溶解物3kDa画分(H-3kDa画分)。
d.実験群
8つの群を以下のように構成した:
雄WT-FVB+ビヒクル
雄WT-FVB+調製物(H-PPL、希釈H-PPL、又はH-3kDa画分)
雄SOD1m-FVB+ビヒクル
雄SOD1m-FVB+調製物(H-PPL、希釈H-PPL、又はH-3kDa画分)
雌WT-FVB+ビヒクル
雌WT-FVB+調製物(H-PPL、希釈H-PPL、又はH-3kDa画分)
雌SOD1m-FVB+ビヒクル
雌SOD1m-FVB+調製物(H-PPL、希釈H-PPL、又はH-3kDa画分)
2.結果
a.調製物1:希釈H-PPL
- 体重
図7A及び図7Bに示すように、希釈H-PPLを用いた処置は、WT雄及び雌において効果を有しなかった。
体重低下に関して、Tg雄では差は観察されなかった。にもかかわらず、Tg雌では、希釈H-PPL処置は、ビヒクル群とほぼ10日の差で最大95日目まで体重を開始レベルに維持し、また死亡前体重を10日遅延させる(102日目〜112日目)。
- 生存曲線
体重と同様に、希釈H-PPLを用いて処置したTg雌は、105日目から116日目まで(11日)延長した生存期間を有した。この差は、Tg雄マウスのビヒクル群と処置群との間では観察されなかった(図8)。
b.調製物2:H-3kDa画分
週3回投与
- 体重
図9Aに示すように、WTマウスでは、H-3kDa画分は雄の体重において効果を有しなかった。雄と対照的に、雌では、処置の開始直後(81日目)及び処置の期間全体にわたってわずかな減少が観察される。
Tg雄とTg雌の両方において、体重喪失開始の改善は観察されない(ビヒクルを用いたTgマウスと比較して)が、H-3kDa画分は、雌マウスでは21日(105日目から126日目まで)、雄マウスでは7日(112日目から119日目まで)の、死亡前体重の重要な遅延を誘発した(図9B)。
- 生存曲線
図10に示すように、また死亡後体重で観察された遅延と同様に、H-3kDa画分を用いた処置は、Tg雌では最大21日(109日目から130日目)、Tg雄では最大7日(116日目から123日目)生存期間を延長した。
週6回投与
- 体重
図11A及び図11Bに示すように、WTマウスでは、H-3kDa画分は雄及び雌の体重において効果を有しなかった。
Tg雄とTg雌の両方において、体重喪失開始の改善は観察されない(ビヒクルを用いたTgマウスと比較して)が、H-3kDa画分は、雄マウスでは11日(119日目から130日目まで)の、死亡前体重の遅延を誘発した。この効果はTg雌では観察されない。
- 生存曲線
図12に示すように、また死亡後体重で観察された遅延と同様に、H-3kDa画分を用いた処置は、Tg雌では最大21日(109日目から130日目)、Tg雄では最大7日(116日目から123日目)生存期間を延長した。
3.結論
希釈H-PPL及びH-3kDa処置による刺激作用は観察されなかった。
異なる調製物を用いて得た生存曲線に関して、効果は動物の性別に依存するということを観察することができる。
しかし、このin vivo試験の主な結論は、H-3kDaが、古典的な性別-用量関連効果と共に、優れた安全性プロファイルと卓越した有効性とを有するということである。実際、H-3kDaを用いた処置は、Tg雄マウスでは生存期間を7日延長し、Tg雌マウスでは約21日の増加(対照と比較して90%の改善)、Tg雄マウスでは約10日の増加(対照と比較して48%の改善)を実現した。これらの結果は、本発明による熱処理血小板溶解物3kDa画分の、神経保護能力を誘導する可能性を示す。
(参考文献)

Claims (18)

  1. 血小板溶解物画分を調製するための方法であって、
    1)血小板溶解物を用意する工程、
    2)前記血小板溶解物から、成分が100kDaの最大分子量を示す画分を限外ろ過によって回収する工程
    を含む、方法。
  2. 工程1)で用意される血小板溶解物が、血小板ペレット溶解物又はプールされたヒト血小板溶解物である、請求項1に記載の方法。
  3. 回収工程が、限外ろ過によって実行される分画である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 以下:
    - 血小板溶解物を約50℃から約70℃の温度で15分から45分の間熱処理する工程、
    - 前記熱処理血小板溶解物を遠心分離し、上清を回収工程のために保存する工程
    が、工程1)の後且つ工程2)の前に実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 含有される成分が、20kDaの最大分子量を示すことを特徴とする血小板溶解物画分。
  6. 含有される成分が、10kDa又は3kDaの最大分子量、好ましくは3kDaの最大分子量を示すことを特徴とする、請求項5に記載の血小板溶解物画分。
  7. 1.5μg/μL未満、好ましくは1.0μg/μL未満、より好ましくは0.70μg/μL未満のタンパク質含量を有する、請求項5又は6に記載の血小板溶解物画分。
  8. タンパク質含量が、約0.05μg/μLから約0.30μg/μL、より詳細には約0.05μg/μLから約0.1μg/μLである、請求項7に記載の血小板溶解物画分。
  9. 前記画分が、フィブリノーゲンを含まない、請求項8に記載の血小板溶解物画分。
  10. 薬物としての使用のための、請求項5から9のいずれか一項に記載の、又は請求項1から4のいずれか一項に記載の方法に従って調製される血小板溶解物画分。
  11. 中枢神経系の障害の処置における、請求項10に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  12. 中枢神経系の障害が、神経変性障害、神経血管障害、神経炎症性障害、神経発達性障害、及び脳傷害から選択される、請求項11に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  13. 中枢神経系の障害が、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳卒中、加齢黄斑変性症(AMD)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、前頭側頭型認知症、意味性認知症、及びレビー小体型認知症から選択される、好ましくはパーキンソン病及び筋萎縮性側索硬化症から選択される神経変性障害である、請求項12に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  14. 神経変性障害が、パーキンソン病から選択される、請求項13に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  15. 障害が、低酸素症又は外傷性脳損傷から選択される脳傷害である、請求項14に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  16. 鼻腔内、髄腔内、眼内、又は脳室内経路によって投与される、請求項10から15のいずれか一項に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  17. 脳室内経路によって、好ましくは室間孔に近接して、より好ましくは第3脳室に投与される、請求項16に記載の使用のための血小板溶解物画分。
  18. ポンプで投与されるように適合している、請求項17に記載の使用のための血小板溶解物画分。
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