本開示は、電気化学インピーダンス分光法(EIS:electrochemical impedance spectroscopy)を実施するための電気的アーキテクチャに関し、さらに詳細には、EIS回路、電気車両のためのバッテリー管理システム、1つまたは複数の電気化学電池に対してEISを実施するためのシステムおよび方法に関する。
電気化学インピーダンス分光法(EIS)は、全般に、DC〜数kHzの範囲の周波数におけるバッテリーのインピーダンスを測定することに関連する。リアルタイム・システムにおける適用に関して何らかの開発がなされてきたが、EISは通常、卓上機器を用いたオフラインでの特性評価のために使用されてきた。既存のオンラインEISパワー・アーキテクチャは、全般に、2つのカテゴリー、すなわち、散逸的および非散逸的に分類される。
散逸的方法では、フィードバック制御を用いて線形領域で動作するMOSFETなどの電流レギュレータが使用され、摂動エネルギーはレギュレータ自体に散逸される。要求される摂動電流が高い場合、散逸的方法は、システム内で生成される熱の量のために、実際的ではなくなる。
非散逸的方法では、摂動電流はエネルギーを熱に変換する意図なく誘導される。1つの事例では、一連のDC−DCコンバータは、各コンバータの入力および出力が隣接セルに取り付けられ、この接続方式がストリング全体に広がっている状態で、1ストリングのバッテリーセルに接続される。摂動電流は、各DC−DCコンバータにより誘導され、1つのセルから隣接セルに流れ、その流れは双方向性であり得る。要求される摂動電流が高い場合、非散逸的方法は、散逸的方法と比較して、加熱問題がより少ない。一方、熱管理の手段および構成要素の寸法は全般に、依然として増加することが要求されるため、体積の増大化につながる。他の問題は磁気飽和に関する問題である。この問題のために、DC−DCコンバータはオンライン使用のためには実際的でないほど大型化されてしまう。
意味のある電圧読み取り値は通常、大きい摂動電流を要求する。そのため、既存のオンラインEISパワー・アーキテクチャには上記の欠陥が生じることとなる。EISに対して要求される電流の大きさは、バッテリーインピーダンスおよび電圧測定能力の関数であり、バッテリーインピーダンスは温度の影響を大きく受ける。EISシステムに対してパワー・アーキテクチャに何が要求されるかを強調するための一例として、公称ESRがおよそ1mΩであるものとした測定された44Ahリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物パウチ型電池について考えてみる。10mVピークトゥピーク摂動応答から意味のある電圧読み取り値を得ることを期待するならば、要求される摂動電流は10Aピークトゥピークである。4つの係る電池が並列に接続されて1つの直列ユニットが形成される例示的なEV用途では、要求される摂動電流は40Aピークトゥピークとなるであろう。
したがって、EISを可能にするための追加的、代替的、および/または改善された電気的アーキテクチャが依然として大いに望まれる。
1つまたは複数の電気化学電池のインピーダンスを測定するための電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路であって、電気エネルギー貯蔵装置、電気エネルギー貯蔵装置と1つまたは複数の電気化学電池との間に接続された第1電流レギュレータ、および、第2電流レギュレータを含む、EIS回路が提供される。この構成を用いることにより、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータに流れ込むパワーは分離される。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータは1つまたは複数の電気化学電池に対して直列に接続され、電気エネルギー貯蔵装置は第1電流レギュレータと1つまたは複数の電気化学電池との直列接続点に対して並列に接続され、第2電流レギュレータは、電気エネルギー貯蔵装置に対して、および、第1電流レギュレータと1つまたは複数の電気化学電池との直列接続点に対して、並列に接続される。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータは電気エネルギー貯蔵装置に対して直列に接続され、第1電流レギュレータと電気エネルギー貯蔵装置との直列接続点は1つまたは複数の電気化学電池に対して並列に接続され、第2電流レギュレータは、第1電流レギュレータと電気エネルギー貯蔵装置との直列接続点に対して、および、1つまたは複数の電気化学電池に対して、並列に接続される。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータはおよび第2電流レギュレータは非散逸的電流レギュレータである。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータは散逸的電流レギュレータである。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータは散逸的電流レギュレータであり、第2電流レギュレータは非散逸的電流レギュレータである。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータは非散逸的電流レギュレータであり、第2電流レギュレータは散逸的電流レギュレータである。
EIS回路の一態様では、非散逸的電流レギュレータは、負荷に接続された出力を有するスイッチモードパワーコンバータである。
EIS回路の一態様では、スイッチモードパワーコンバータは、二重アクティブブリッジ、フライバック、または非反転バックブーストを含む、任意の孤立的または非孤立的トポロジーを有する。
EIS回路の一態様では、スイッチモードパワーコンバータは双方向パワーフローをサポートする。
EIS回路の一態様では、スイッチモードパワーコンバータの出力に接続された負荷は他の電気化学電池である。
EIS回路の一態様では、スイッチモードパワーコンバータの出力に接続された負荷は、1つまたは複数の並列接続された追加的なEIS回路である。
EIS回路の一態様では、散逸的電流レギュレータは、電流フィードバック制御ループを有するMOSFETを含む。
EIS回路の一態様では、散逸的電流レギュレータは、制御スイッチに対して直列の抵抗を含む。
EIS回路の一態様では、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの一方または両方は複数の電流レギュレータを含む。
EIS回路の一態様では、電気エネルギー貯蔵装置はキャパシタおよびインダクタのうちの少なくとも一方を含む。
EIS回路の一態様では、電気エネルギー貯蔵装置は複数の電気エネルギー貯蔵装置を含む。
EIS回路の一態様では、電気エネルギー貯蔵装置は制御スイッチに対して直列に接続される。
EIS回路の一態様では、回路は、1つまたは複数の電気化学電池に接続するための1つまたは複数のスイッチをさらに含む。
1つまたは複数の電気化学電池を有する電気車両のためのバッテリー管理システム(BMS)も提供される。BMSは1つまたは複数の電気化学電池に接続された上記の態様のEIS回路を含み、BMSは、1つまたは複数の電気化学電池に関するオンライン電気化学インピーダンス分光法を実施するよう構成される。
BMSの一態様では、電気エネルギー貯蔵装置、第1電流レギュレータ、および第2電流レギュレータの少なくとも1つはBMSの本来の構成要素である。
一態様では、BMSは、電気車両の動作中に1つまたは複数の電気化学電池のリアルタイムインピーダンス測定を実施するよう構成され、ここで測定されたインピーダンスは、電気化学電池の充電状態、温度、および経年変化を含む1つまたは複数の動作状態を決定するために使用される。
1つまたは複数の電気化学電池に対して電気化学インピーダンス分光法(EIS)を実施するためのシステムであって、1つまたは複数の電気化学電池に連結された上記の態様のうちのいずれかに係るEIS回路と、EIS回路において所望のEIS摂動電流を誘導するために第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータを通してそれぞれの電流基準信号を生成するよう構成された電流生成モジュールと、1つまたは複数の電気化学電池の電圧を測定するよう構成された電圧測定器具と、測定された電圧および誘導されたEIS摂動電流に基づいて1つまたは複数の電気化学電池のインピーダンスを判定するよう構成されたインピーダンス判定ユニットと、を含む、システムも提供される。
このシステムは、所望のEIS摂動電流を誘導するためにそれぞれの電流基準信号を生成するよう電流生成モジュールを制御するよう構成された制御ユニットをさらに含む。
このシステムは、判定されたインピーダンスに基づいて電気化学電池の充電状態、温度、および経年変化を含む1つまたは複数の動作状態を判定するよう構成された評価ユニットをさらに含む。
上記の諸態様のあるEIS回路を使用することにより1つまたは複数の電気化学電池に対して電気化学インピーダンス分光法(EIS)を実施するための方法であって、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの各電流レギュレータに対する電流基準信号であって、それぞれの電流基準信号は、正弦波摂動電流を含む所望の摂動電流をEIS回路において誘導するために生成される、電流基準信号を生成することと、所望のEIS摂動電流をEIS回路において誘導するために第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの各電流レギュレータを通してそれぞれの電流基準信号を誘導することと、1つまたは複数の電気化学電池の電圧を測定することと、測定された電圧および誘導されたEIS摂動電流に基づいて1つまたは複数の電気化学電池のインピーダンスを判定することと、を含む方法がさらに提供される。
上記の方法において、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの各電流レギュレータに対する電流基準信号は、それぞれ生成され得る。
この方法は、判定されたインピーダンスに基づいて電気化学電池の充電状態、温度、および経年変化を含む1つまたは複数の動作状態を判定することをさらに含む。
この方法の一態様では、この方法は、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータを通してそれぞれの電流基準信号を誘導する前に電気エネルギー貯蔵装置から電気エネルギーを放出することをさらに含む。
この方法の一態様では、正弦波摂動電流は0〜10kHzの周波数範囲を有する。
本開示に関するさらなる特徴および利点が、以下に添付する図面と併せて読むことにより、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
添付の図面の全体を通して同様の特徴が同様の参照番号により指定されることに注意すべきである。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路を示す図である。
図3Aの実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路の例示的なシステム図である。
図4において示されたシステムの理想的な定常状態動作波形を示す図である。
図4において示されたシステムの例示的なオシロスコープキャプチャを示す図である。
反復されるEIS測定に対する図4において示されたシステムの例示的なオシロスコープキャプチャを示す図である。
図4において示された1つのインピーダンス測定サイクル上でのTcase(Qlinearのケース温度)の例示的なオシロスコープキャプチャを示す図である。
図4において示されたシステムの6回のインピーダンス測定サイクル上でのTcase(Qlinearのケース温度)の例示的なオシロスコープキャプチャを示す図である。
いくつかの実施形態に係る図4において示されたシステムにおいて使用されるスイッチモードパワーコンバータの実装を示す図である。
電気化学インピーダンス分光法を実施するための方法を示す図である。
本開示は電気化学インピーダンス分光法(EIS)のための電気的アーキテクチャを提供する。さらに詳細には、EIS回路、電気車両のためのバッテリー管理システム、および、1つまたは複数の電気化学電池に対してEISを実施するためのシステムおよび方法が提供される。EIS回路は、それぞれの電流レギュレータに流れ込むパワーを分離させる構成で1つまたは複数の電気化学電池に接続された、少なくとも2つの電流レギュレータおよび電気エネルギー貯蔵装置を含む。電流レギュレータは、散逸的または非散逸的電流レギュレータであり得る。電気エネルギー貯蔵装置が存在するため、各レギュレータは、所望のEIS摂動電流を誘導しつつ、同時に低パワーレベルで動作することが可能である。低パワーでの動作は、散逸的または非散逸的電流レギュレータのみの場合と比較して、同一の電流に対して、より低い体積およびコストを可能にする。さらに、電気エネルギー貯蔵装置は、最少量の熱が回路において生じる一方で所望のEIS摂動電流が得られるよう、電流レギュレータに流れ込むパワーが独立的に変化されることを可能する。それにより、回路が占有するサイズが最小となり、コストが最小となることが可能となる。
したがって散逸的方法または散逸的電流レギュレータがEIS回路において使用される場合にはシステムにおいて生成される熱の量が抑制され得、非散逸的方法または非散逸的電流レギュレータがEIS回路において使用される場合には熱管理の手段および構成要素のサイズが低減され得る。さらに、電流レギュレータのサイズおよびコストも低減され得る。EIS回路は、散逸的方法および非散逸的方法のうちの一方または両方を組み込み得る。
EIS回路は、時間的に変動する電気化学電池等価回路モデルパラメータ値の正確な判定を提供するために具体化され得る。正弦波摂動電流は、電気化学電池において、いくつかの場合では直流オフセットが存在する状態で、誘導され、インピーダンスは、既知の電流および測定された電圧のフェーザに基づいて計算され得る。曲線あてはめが、回路パラメータ値を推定するために使用され得、モデルの作成が広範囲の動作状態に対して可能である。
本明細書で開示のEIS回路は、オンラインEISを可能とするための電気車両(EV)のバッテリー管理システム(BMS)の一部として具体化されることを含むがこれらに限定されない、いくつかの実際的な用途を有し得る。コスト削減を図る一方でEVの現実世界における運転範囲を拡大するために、安全性および製品寿命を維持しつつバッテリーセル技術を限界まで押し進めることは重要である。充電状態(SOC)、パワー能力、および容量などのバッテリーパラメータに対する推定の確度を向上させることは、今日のBMSにおいて一般に課せられる従来の限界を排除するにあたって重要な点である。セルバランシングのためにまたは補助負荷を供給するためにDC−DCコンバータが内蔵されたEV用BMSでは、本明細書で開示のEISアーキテクチャは、わずかなコスト増のみで組み込まれることが可能である。同様に、他の固有/本来のlBMS構成要素は、特定のシステム構成に応じて、本明細書で記載のEIS回路の1構成要素として使用され得る。EISの実施から計算されるインピーダンスは、SOC、温度、経年変化などのEVバッテリーの広範囲の動作状態を判定するために使用され得る。
本開示は、オンラインまたはインサイチュでのEISを可能にするためにEVバッテリー管理システムに組み込むことに関する参照を提供し得る一方で、本明細書で開示のEIS回路およびEISを実施するための方法は、必ずしもEVバッテリー管理システムへの組み込みに限定されず、すべてのEIS測定のために使用が可能であることに注意すべきである。
本開示に係るシステムおよび方法では、1つまたは複数の電気化学電池に対して電気インピーダンス分光法を実施するためにEIS回路が使用される。
様々な実施形態について、図1〜図11を参照し、単なる例示としてのみ、ここで説明する。
図1Aおよび図1Bでは、本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路が示されている。
図1Aおよび図1Bにおいて示されるEIS回路100aおよびEIS回路100bは、第1電流レギュレータCR1および第2電流レギュレータCR2と、電気エネルギー貯蔵装置ESと、を含み、第1電流レギュレータCR1、第2電流レギュレータCR2、および電気エネルギー貯蔵装置ESの全部は1つまたは複数の電気化学電池ECに接続/結合されている。電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2と電気エネルギー貯蔵装置ESとは、それぞれの電流レギュレータに流れ込むパワーが互いから分離されるよう、構成される。第1電流レギュレータCR1は、電気エネルギー貯蔵装置ESと、1つまたは複数の電気化学電池ECとの間に接続される。
電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2と電気エネルギー貯蔵装置ESとは、1つまたは複数のスイッチのマトリクス(図示せず)を通して、1つまたは複数の電気化学電池ECと接続/連結され得る。したがって同一のEIS回路構成要素が、複数の異なるECに対してEIS測定を実施することが可能である。このことは、例えば電気車両バッテリーシステムにおいて複数のECに対してEIS測定を実施するにあたり必要なEIS回路の個数を減少させることを支援し得る。いくつかの態様では、EIS回路は3つ以上の電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2を含み得る。例えば、第1電流レギュレータCR1および第2電流レギュレータCR2の各電流レギュレータは1つまたは複数の電流レギュレータ(図示せず)を含み得る。電気エネルギー貯蔵装置は複数の電気エネルギー貯蔵装置を含み得る。EIS回路は、過電圧状態に対する安全性を提供するために、電気エネルギー貯蔵装置ESに対して直列に提供された単一のスイッチ(図示せず)も含み得る。
EIS回路100aでは、第1電流レギュレータCR1はECに対して直列に接続され、ESおよび第2電流レギュレータCR2はそれぞれCR1およびECに対して並列に接続される。この構成では、第1電流レギュレータCR1および第2電流レギュレータCR2を通って流れる電流は、電気エネルギー貯蔵装置ESの存在により分離されている。したがって、それぞれ電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2に流れ込むパワーは分離されている。
EIS回路100bでは、CR1はESに対して直列に接続され、ECおよびCR2はそれぞれCR1およびESに対して並列に接続されている。この構成では、第1電流レギュレータCR1および第2電流レギュレータCR2の電圧は、電気エネルギー貯蔵装置ESの存在により分離されている。したがって、それぞれ電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2に流れ込むパワーは分離されている。
エネルギー貯蔵装置の容量は通常、テスト下において電気化学電池の0.1%以下であり、エネルギー貯蔵装置の存在は、所望のEIS摂動電流が誘導される一方で各レギュレータがより低いパワーレベルで同時に動作することを可能にする。これらの電流レギュレータのうちの各電流レギュレータは、所望の摂動電流が達成されるとともに、回路内で発生する熱の量が最少化されるよう、独立的に制御されることが可能である。低パワーでの動作は、散逸的または非散逸的電流レギュレータのみの場合と比較して、同一の電流に対して、より低い体積およびコストを可能にする。セルバランシングのためにまたは補助負荷を供給するためにDC−DCコンバータが内蔵されたEV用BMSでは、このアーキテクチャは、わずかなコスト増のみで組み込まれることが可能である。同様に、他の固有/本来のBMS構成要素は、特定のシステム構成に応じて、本明細書で記載のEIS回路の1構成要素として使用され得る。
図2A〜図2Dおよび図3A〜図3Dでは、図1Aおよび図1Bにおいて示される第1電流レギュレータCR1および第2電流レギュレータCR2として非散逸的(ND:non−dissipative)および/または散逸的(D)電流レギュレータを使用するEIS回路100aおよびEIS回路100bのいくつかの可能な構成が示されている。EC、D、ES、およびNDに対するいくつかの実現形態および構成要素が存在し、EISに対する広範囲の用途が存在する。これらの用途は、本開示の範囲から逸脱することなく、当業者により容易に理解されるであろう。この可能性の幅広さは、この段落における残りの部分において代替的な実現形態のいくつかの事例を通して強調される。例えば、NDは、双方向電流動作/パワーフロー、電気的絶縁、調節帯域幅能力、その他などの特徴をサポートする多数の回路トポロジーがそのために存在するスイッチモードパワーコンバータとして具体化されることが可能である。NDは例えば、二重アクティブブリッジ、フライバック、非反転バックブースト、その他などの任意の孤立的または非孤立的なトポロジーを有し得る。Dは、線形負ゲート電圧フィードバックループまたはいくつかの最小電流フィルタリングを有するPWMスイッチングのいずれかによりそのドレイン電流が制御されるMOSFETとして具体化されることが可能である。代替的に、Dは、電気車両において受動的セルバランシングのために存在するものなどの半導体タイプまたは導体タイプを含むスイッチに対して直列である抵抗として具体化されることが可能である。ECに対して、リチウムイオンバッテリー関してのみ、必要な特性周波数範囲が0〜10kHzの範囲で変動し得る電池化学、サイズ、およびパラメータ推定アルゴリズムが存在する。最終的に、キャパシタおよびインダクタの両方がエネルギー貯蔵のために使用されることが可能である。構成要素の代替的選択は、体積、コスト、熱管理、および複雑度を含むシステム制約条件に依存し得る。構成要素の各組み合わせは、パワー分割および協調方法体系の異なる組み合わせをもたらし得る。しかし代替的構成要素の選択は本開示の範囲から逸脱しない。
図2A〜図2Dでは、本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路が示されている。回路200a〜200dでは、非散逸的または散逸的電流レギュレータが回路100a〜100bにおける電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2に代わって使用される様子が示されている。特に図2Aにおいて示されるEIS回路200aはEIS回路100aに対応する。なお、これらの電流レギュレータの両方は非散逸的電流レギュレータNDである。図2Bにおいて示されるEIS回路200bはEIS回路100bに対応する。なお、これらの電流レギュレータの両方は非散逸的電流レギュレータNDである。図2Cにおいて示されるEIS回路200cはEIS回路100aに対応する。なお、これらの電流レギュレータの両方は散逸的電流レギュレータDである。図2Dにおいて示されるEIS回路200dはEIS回路100bに対応する。なお、これらの電流レギュレータの両方は散逸的電流レギュレータDである。
図3A〜図3Dでは、本開示の実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路が示されている。回路300a〜300dでは、非散逸的および散逸的電流レギュレータの組み合わせが回路100a〜100bにおける電流レギュレータCR1および電流レギュレータCR2に代わって使用される様子が示されている。特に、図3Aにおいて示されるEIS回路300aはEIS回路100aに対応する。なお、これら電流レギュレータのうちの第1は散逸的Dであり、第2の電流レギュレータは非散逸的NDである。図3Bにおいて示されるEIS回路300bはEIS回路100bに対応する。なお、これらの電流レギュレータのうちの第1は散逸的Dであり、第2の電流レギュレータは非散逸的NDである。図3Cにおいて示されるEIS回路300cはEIS回路100aに対応する。なお、これらの電流レギュレータのうちの第1は非散逸的NDであり、第2の電流レギュレータは散逸的Dである。図3Dにおいて示されるEIS回路300dはEIS回路100bに対応する。なお、これらの電流レギュレータのうちの第1は非散逸的NDであり、第2の電流レギュレータは散逸的Dである。
いくつかの態様ではNDの出力は負荷(図示せず)に接続され得る。NDに接続された負荷は他のEC(例えば負荷ECと呼ばれる)であり得る。電気車両に対する特定の実現形態では、負荷ECは車両における任意の他のEC(例えば主要エネルギー貯蔵システムにおける他のECまたは車両における他の箇所に配置された他のEC)であり得る。他の実現形態では、ND電流レギュレータに接続された負荷は上述の1つまたは複数の並列接続されたEIS回路であり得、これらEIS回路のすべては、並列接続の地点において正味DCパワーが達成されるよう、一緒に制御され得る。
図3Aにおいて示される例示的な実施形態では、動作原理は次の通りである。すなわち、レギュレータDにおける電流は、ECに対するその直列配置のために、EIS摂動電流に等しい。散逸的電流レギュレータDにおける電流は所望により、特定の電流が達成されるよう、パルス幅変調モードにおいて制御され得る。EIS電流は、直流オフセットがつねに単一方向性となるよう、直流オフセットを有することが要求される。直流オフセットは、ESとしてのキャパシタの制限される電圧により制約される。そのため、ND(例えばスイッチモードパワーコンバータである)によるECより高い電圧の印加を不可能にし、したがってECのみを放電するようDを制限する。この場合、電流の方向はECから離間する方向であるが、異なる調整方法を用いた場合にはECに向かう方向にもなり得る。DがEIS電流を調節するため、ES(キャパシタである)は電荷を貯蔵し、その電圧は正弦波リプルとともに線形に増加する。ES電圧はDにおいて散逸されるパワーを低減させるため測定時に何らかのDC値を維持し得る。その間、NDは事前決定された電流を引き込む。それにより、ES電圧は制限値より低い値に保たれる。事前決定された電流は、ES上のリプル電圧を減少させるため正弦波であり得る。NDが双方向性である場合、ES上の正弦波リプル電圧はさらに減少され得る。Dにおいて損失されるパワーは、EC電圧、ES電圧、およびEIS電流の関数である。NDにより伝達されるパワーは、システム要件に基づいて選択され得る。ESのエネルギー貯蔵容量は、いくつかの要因(EIS摂動電流、所望の測定周波数、最小測定時間、およびNDの所望の動作電流)を考慮して設計されなければならない。
図4では、図3Aの実施形態に係る電気化学インピーダンス分光法(EIS)回路の例示的なシステム図が示されている。特に、システム図400は、EV用途をターゲットとするBMSシステム内で具体化され得る。システム400はEISモジュール410およびBMSモジュール420を含む。
図1〜図3を参照して説明された回路構成要素を参照すると、電気化学電池ECは4つの並列な電圧Vcellを有する44Ah、1mΩ公称ESRリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物バッテリーセルからなる。散逸的電流レギュレータDは、「レギュレータ」と標示されたボックス内のQlinearおよび他の構成要素からなる、線形フィードバック電流調節D2PAK・MOSFETである。この回路は増幅された電流検知電圧をVrefに合致させるよう設計され、三角形は電圧増幅器を表し、抵抗は電流検知抵抗であり、台形はアナログ信号マルチプレクサである。BMSでは、Qlinearは通常、電池電荷均衡化のために使用され、そのパワー伝達能力は変更されていない。電気エネルギー貯蔵装置ESは50Fの静電容量および制御スイッチQpreを有するウルトラキャパシタCucである。制御スイッチQpreはCucにおける電圧を制限するために使用され、EIS機能の適切な調整を可能にする。非散逸的電流レギュレータNDはBMSモジュール内に配置された孤立的DC−DCコンバータであり、係るDC−DCコンバータは通常、電池電荷均衡化のために使用され、そのパワー伝達能力は変更されていない。コンバータは、入力インダクタ電流から発するフィードバックを用いてマイクロコントローラ(MCU)により制御されるデューティサイクルである孤立的Cukトポロジーを使用する。この場合におけるND負荷は、EV補助システムバッテリーと同じであり得る12Vバッテリーである。「器具」と標示されたブロックは電圧測定器具およびインピーダンス測定に要求される電流基準信号生成を含み、低コストかつ高度に統合化された解決策として具体化されるべきである。外部調整器がEIS動作においてシステムを管理するために使用されてもよい。
図5では、インピーダンス測定の際の図4において示されるシステムの理想的な定常状態動作波形が示されている。図5ではVcellは線502により示され、Vucは線504により示され、Iconverterは線506により示され、Icellは線508により示され、Iucは線510により示される。EIS測定の際のピーク電流IEIS,peakは線512により示される。
図4および図5を参照すると、動作の順序は以下の通りである。すなわち、システム開始時、Qpreは起動され、Qlinearは、線505により提供される所望の測定開始電圧Vuc,startまでCucを充電するためにVref,preに従うよう制御される。システムが、以前のサイクルの終了後に測定を再開する場合、Cucは代わりに、測定の際に電荷が挿入されることを相殺するために、Vuc,startに向かっての放電を要求し得る。このことは、測定の間、線503により示されるウルトラキャパシタの最大電圧Vuc,maxより下に留まるために、要求される。Tpreの際に行われる初期電圧事前調節の後、システムは、Qpreを起動し、VrefをVref,preからVref,EISに変化させ、定電流でDC−DCコンバータを動作させることにより、インピーダンス測定を開始する。測定位相はTmeasureの間、実行される。この実現形態において、動的に変化するDC−DCコンバータ電流に代わって定常的なDC−DCコンバータ電流が選択されたことは、EIS周波数(1/TEIS)リプル電流が補助バッテリーに流れ込むことを解消するためになされたものである。電圧事前調整および測定サイクルは、EIS周波数範囲がカバーされるまで反復され、実施するにあたりTcycleの合計時間を使用する。この実施形態では、周波数範囲は0.5〜2000Hzである。
図6では、図4において示されるシステムの例示的なオシロスコープキャプチャ600が示されている。図6ではVucは線604により示され、Iconverterは線606により示され、Icellは線608により示され、Iucは線610により示される。
図7には、反復されるEIS測定の際における図4において示されるシステムの例示的なオシロスコープキャプチャ700が示されている。図7では、Vucは線704により示され、Iconverterは線706により示され、Icellは線708により示され、Iucは線710により示される。
図8には、図4において示されるシステムの1つのインピーダンス測定サイクルにおけるQlinearのケース温度であるTcaseの例示的なオシロスコープキャプチャ800が示されている(線820)。システムは30AのピークIcell(線808)および9秒のTmeasureで動作する。摂氏60度のピーク温度は、図4において示されるシステムがQlinearにおいて発生する熱を低下させることにおいて成功したことを示す。なぜなら、Cuc、Qlinearにより寄与されるDC電圧が存在しない場合には熱発生の量が2倍以上となり、そのケース温度が最高作動温度を超過するであろうことが見込まれるためである。
図9には、図4において示されるシステムの6つのインピーダンス測定サイクルにおけるQlinearのケース温度であるTcaseの例示的なオシロスコープキャプチャ900が示されている(線920)。システムは30AのピークIcell(線908)および9秒のTmeasureで動作する。摂氏70度の定常状態ピーク温度は、図4において示されるシステムがQlinearにおいて発生する熱を低下させることにおいて成功したことを示す。なぜなら、Cuc、Qlinearにより寄与されるDC電圧が存在しない場合には熱発生の量が2倍以上となり、そのケース温度が最高作動温度を超過するであろうことが見込まれるためである。
図10には、いくつかの実施形態に係る図4において示されるシステムにおいて使用されるスイッチモードパワーコンバータの実現形態が示されている。図10において示される特定的な実現形態では、コンバータは、その入力側電流がデジタル制御される孤立的なCukトポロジーを有する。
図11には電気化学インピーダンス分光法(EIS)を実施するための方法1100が示されている。方法1100は本明細書で記載のEIS回路を使用して実施され得る。この方法は、1つまたは複数の電気化学電池に対してEISを実施するよう設計されたシステムによっても具体化され得る。このシステムは、本明細書で記載のEIS回路と、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータを通してそれぞれの電流基準信号を生成するよう構成された電流生成モジュールと、電気化学電池の電圧を測定するよう構成された電圧測定器具と、測定された電圧に基づいて電気化学電池のインピーダンスを判定するよう構成されたインピーダンス判定ユニットと、を含み得る。このシステムは、電流生成モジュールを制御するよう構成された制御ユニット、および/または、判定されたインピーダンスに基づいて電気化学電池の1つまたは複数の動作状態を判定するよう構成された評価ユニットをさらに含み得る。これらのシステム構成要素は1つまたは複数のハードウェア部品を使用して具体化され得る。例えば図4では、「器具」と表示されたブロックは電圧測定器具およびインピーダンス測定のために要求される電流基準信号生成を含む。このシステムの電流生成モジュールおよび電圧測定器具は器具モジュールの一部として統合され得る。インピーダンス判定ユニット、制御ユニット、および評価ユニットは1つまたは複数の処理装置として提供され得る。インピーダンスを決定し、電流基準信号を制御し、動作状態を判定するための命令が処理装置(単数または複数)と連結されたメモリに格納され得る。方法1100は、システム/EISアーキテクチャを制御するためにプロセッサなどの計算装置により実行され得る非一時的メモリ上に格納されたコンピュータ可読命令として格納され得る。この方法をオンラインで実行することにより、インピーダンスがリアルタイムで測定され得る。
方法1100は、第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの各電流レギュレータに対して電流基準信号を生成することを含む(1120)。電流基準信号は、EIS回路において所望の摂動電流が誘導されるよう、個別的に制御/生成可能である。電流基準信号は、所望の摂動電流を電気化学電池において誘導するために第1電流レギュレータおよび第2電流レギュレータの各電流レギュレータを通して誘導される(1130)。1つまたは複数の電気化学電池の電圧が測定される(1140)。測定された電圧および誘導されたEIS摂動電流に基づいて、電気化学電池のインピーダンスが判定され得る(1150)。さらに、例えば充電状態、温度、経年変化などの電気化学電池の動作状態が判定され得る。方法1100では、電流基準信号の生成および/または誘導の前に、電気エネルギーは電気エネルギー貯蔵装置から放出され得る(1110)。
図1〜図11において示されたシステムおよび構成要素が図面には示されていない構成要素を含み得ることは、当業者により理解されるであろう。図示の簡潔性および明瞭性のために、これらの図面における要素は必ずしも縮尺が一定ではなく、概略図として示され、図示の要素構成に限定されるものではない。多数の変化および改変が請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく作られ得ることは、当業者には明らかであろう。