JP2020518716A - 新規な生分解性金属合金の特性およびパラメータ - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2017年4月12日に出願された「PROPERTIES AND PARAMETERS OF NOVEL BIODEGRADABLE METALLIC ALLOYS」と題する米国仮特許出願第62/484,560号と、2017年4月12日に出願された「UNIQUE CHARACTERISTICS AND PROPERTIES OF NOVEL BIODEGRADABLE METALLIC ALLOYS」と題する米国仮特許出願第62/484,564号とに対し、米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張し、これらの出願は、参照によって本明細書の一部となる。
本発明は、米国科学財団(NSF)によって与えられた#EEC−0812348に基づく政府支援を受けてなされたものである。米国政府は本発明に確たる権利を有する。
Mg‐Zn‐Zr合金は、特定の鋼材およびアルミニウム材に取って代わる耐食性で軽量の構造用途に適している。その耐食性および有利な機械的特性は、生分解性金属用途に不可欠な特徴である。低量の不純物および所望の微細構造を持つ高品質のMg合金を得るために、最適な処理条件は必要である。低量の不純物および微細構造は腐食および機械的特性に直接相関する。イオン(Fe)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)などの不純物は、腐食を開始し孔食を引き起こすための核形成部位として働き、孔食は生分解性Mg合金の不均一な分解を導く。微細構造はまた、Mg合金の機械的特性にも寄与する。溶融温度、静置時間、熱処理技術、および純インゴットの不純物レベルなどの処理条件は、不純物および微細構造に関してMg合金の品質を本質的に制御する。したがって、処理条件は不純物レベルおよび微細構造に影響し、例えば制御し、細胞適合性および生体適合性と相まって許容できる耐食性、機械的特性を達成する観点から、Mg合金の評価の統合性を調整することができる。
[従来の溶融および鋳造]
高純度の純Mg(US Magnesium、99.97%)、Zn(Alfa aesar、99.99%)、およびZirmax(Mg‐33Zr母合金、Mg Elektron、商用グレード)を使用して、最終合金インゴットの不純物レベルを最小化するように、Mg‐4重量%Zn‐0.5重量%Zr(ZK40)合金を製造した。純Mg、Zn、およびZirmaxを計量し、電気抵抗炉を用いて保護雰囲気下で、700℃でステンレス鋼るつぼ内で溶融した。ステンレス鋼ロッドを用いて溶融金属を撹拌し、30分間静置させ、500℃に予熱した軟鋼鋳型で鋳造した。合金の溶融および鋳造後に、溶融および鋳造プロセスの結果生じたボイドおよび不純物が維持される確率を最小化するため、鋳造したインゴットの頂部、底部、および側部から1cmを相応に取り除き、インゴットの残片を使用した。
溶質をZK40合金の微細構造のαMgマトリクス中に可溶化する溶体化処理を主に調査した。Mg‐Zn二元状態図に基づいて、Mg7Zn3の共晶組成は固化中に325℃でαMgおよびMgZn金属間化合物に変態する。Mg7Zn3組成物は325℃より低い温度で共晶変態し、αMg(Zn,Zr)固溶体と、粒界に沿って核を形成する第二相析出物として存在することのできるMgZn金属間化合物とを形成することが知られている。これらの第二相析出物は、腐食の観点からはガルバニック腐食の一因となり、望ましくないが、機械的強度の向上には役立つ。しかしながら、加速的腐食は機械的強度の利点を上回り、したがって望ましくない。T4処理は、325℃より高い温度で行われる熱処理を含むので、上述の通り望ましくない第二相析出物、および大きい粒子が機械的強度の低下の一因になり得ることから同じく望ましくない結晶粒成長を引き起こし得る。したがって、ZK40合金は相応して300℃で1時間熱処理し、続いてシリコン油中で急冷してこれらの望ましくない二次相の析出を抑制した。
10〜80°の2θの範囲で45kVおよび40mAで動作するCuKα(λ=1.54056Å)放射線を用いるPhilips X’Pert Proシステムを利用して、X線回折(XRD)を実施し、相の形成を確認した。合金試料をエポキシ樹脂にマウントし、9、3、1μmダイヤモンドスラリ、および0.5μmコロイド状シリカスラリを用いて研磨し、鏡面仕上げ面を得た。研磨した表面を後方散乱走査電子顕微鏡(SEM)で撮像し、微細構造および析出物を観察した。SEMと共にエネルギ分散分光分析(EDS)プローブを使用して、抽出物の元素含有量および粒子マトリクスを分析する。最終的に、研磨した表面をエッチングし、光学顕微鏡を用いて観察し、微細構造の光学画像を得た。
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES,iCAP duo 6500 Thermo Fisher,Waltham,MA)を用いてZK40合金中の不純物を分析し、アズキャストインゴットの実際の化学組成を確認した。溶融プロセスは、鋳造インゴットの最終組成を蒸発および酸化のため変化させ得る。また、Fe、Ni、およびCuの存在は、前に述べた通り、Mg合金の腐食速度を上昇させ得る。したがって、Mg、Zn、Zr、Fe、Ni、およびCuを標準として利用して、ZK40のICP‐OES測定を実行した。後方散乱SEM微細構造分析で観察された粒界に沿った析出物の含有量を、SEMに取り付けられたEDSプローブを用いて評価し、望まない不純物が存在するかどうかを確認する。
様々な熱処理状態後のZK40合金の粒度は、t検定を用いて分析される。ICP分析から得た不純物レベルの含有量はANOVA分析のために保存し、腐食速度がバッチ間で非常に異なることが観察された場合、腐食速度を異なるバッチ間の従属変数とした。これらの統計的分析は社会科学のための統計パッケージ(SPSS)17.0(IBM)を用いて実施した。相応して結果の有意性をp<0.05で判定した。
アズキャストインゴットの微細構造では、第二相の析出が制限された単相形のMg、αMgが予想される。相応して、Fe、Ni、およびCuの不純物レベルが低い(20ppm未満)ことも予想される。機械的強度を維持するために、粒子成長もまた100μmより低い粒度範囲になるように制限される。したがって、不純物レベルを最適化し、所望の微細構造を達成するために、溶融温度、保護ガス、熱処理温度および期間を調査した。処理条件もまた耐食性、機械的特性、および生体適合性と相関させ、さらに生分解性Mg‐Zn基合金の開発中に最適化した。
Mg(US Magnesium Inc. 99.97%)、Znショット(Alfa−Aesar 99.99%)の純元素インゴットを、電気抵抗炉(Wenesco Inc.)内の軟鋼るつぼの中で溶融した。典型的な溶融物サイズは200gであった。マグネシウムの燃焼および損失を防止するために、溶融物を(0.5%SF6+残部Ar)保護ガス雰囲気で覆った。所望の溶融温度(700℃)に達すると、Zirmax(登録商標)(Mg‐33.3重量%Zr)母合金(Magnesium Elektron Ltd.)を用いて同量のジルコニウムを追加した。ジルコニウム添加後の液状溶融物を、1分および5分の間隔を置いた後、10秒間攪拌し、ジルコニウム粒子を溶融物中に均等に溶解かつ分散させた。さらに、溶融物を700℃で30分間維持し、次いで500℃に予熱した軟鋼鋳型(直径44.5mm×82.5mm)に注湯した。
得られたアズキャストインゴットを、ArおよびSF6の保護雰囲気下で、ゲッタとしてマグネシウム粉末で被覆された管状炉内で、300℃で1時間溶体化処理し(T4)、次いで水中で急冷した。
X線回折を用いて合金を相形成について特性決定した。したがって、10〜80°の2θの範囲で45kVおよび40mAで動作するCuKα(λ=1.54056Å)放射線を使用するPhilips XPERT PROシステムを用いて、X線回折(XRD)を実施した。
光学顕微鏡(Axiovert 40MAT,Carl Zeiss,Jena,Germany)を用いて、アズキャストおよび溶体化処理された(T4)ZK40合金の微細構造を観察した。正方形の試料をエポキシ(EpoxiCure, Buehler)内にマウントし、半自動研磨システム(Tegramin−20,Struers,Ballerup,Denmark)を使用して9、3、および1μmダイヤモンドスラリに続いて0.5μmのコロイド状シリカを用いて機械的に研磨し、鏡面仕上げを得た。研磨後、試料は、5mLの酢酸、6gのピクリン酸、10mLの水、および100mLのエタノールの溶液中で化学的にエッチングし、イソプロパノールを用いてすぐに洗浄して粒界を明瞭に露呈させた。粒度はASTM E112リニアインターセプト法に従って算出し、ASTM結晶粒数Gを平均粒度に変換した。合金をさらに特性化し、ナノコンピュータ断層撮影を用いてボイド/不純物/酸化物スケールの有無を観察した。相応して、タングステンフィラメントを装備したPhoenix Nanotom−m 180kV/15W X線ナノCT(登録商標)システムを用いて、ナノコンピュータ断層撮影(ナノCT)画像を撮影した。アズキャストMg−4%Zn−0.5%Zr合金から直径1.5mm×高さ3mmの円板状サンプルを切り出し、〜300nmの最小ボクセル解像度でnanoCT画像を撮影して微細構造の細部をより明瞭に示した。
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES, iCAP duo 6500 Thermo Fisher,Waltham,MA)によって決定された合金の名目組成を、表1.1に記載する。
電気化学ワークステーション(CHI604A,CH Instruments,Inc.,Austin,TX)により、1mV/秒の走査速度および開路電位(OP)の上下500mV内の電位窓で、動電位分極(PDP)試験を実施した。正方形のサンプル(表面積〜1cm2)を、銀エポキシを用いて銅線に接続し、エポキシ樹脂にマウントした。マウントされたサンプルを320、600、および1200グリットのSiC研磨紙を用いて機械的に研磨し、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、空気乾燥させた。電気化学腐食試験に三電極セルセットアップを使用し、プラチナを対電極、Ag/AgClを基準電極、エポキシにマウントされたサンプルを作用電極とした。試験は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが添加されたダルベッコ変法イーグル培地(4.5g/Lのグルコース、L−グルタミン、およびピルビン酸ナトリウムを含むDMEM、Cellgro,Manassas,VA)中で、pH7.2±0.2で、37.4℃に維持された温度で実施された。各測定の前に、電圧の安定性をもたらすために、サンプルを開路電位で15分間DMEMに浸漬した。生成されたターフェルプロットのカソードおよびアノード分岐を線形外挿して、腐食電位Ecorrおよび腐食電流密度icorrを計算した。これらの三つのサンプル測定の平均および標準偏差を報告し、一元配置ANOVAを使用して、0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。試験測定後の腐食サンプルは、次に周囲温度で200g/Lのクロム酸および10g/LのAgNO3溶液に10分間浸漬することによって洗浄して、腐食生成物を除去し、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて腐食面を特性決定した。
[相分析]
図1.1は、純(pure)Mg、Mg−4%Zn−0.5%Zr(ZK40)のアズキャスト(as-cast)サンプルおよび溶体化処理されたサンプルのX線回折(XRD)パターンを示す。純Mgの場合、全てのピークは、六方稠密(hcp)結晶構造を持つ単相αMgマトリクスにインデックスされた。興味深いことに、Mg‐4%Zn‐0.5%Zrの場合、アズキャストサンプルおよび溶体化処理されたサンプルの両方とも、αMgのピークだけが見られた。このように明瞭に示されたXRDパターンは、最終微細構造に観察されるべきαMg(Zn、Zr)固溶体単相が固化中に形成されたことを示す。しかし、観察された最高回折ピーク強度はピラミッド面に対応しており、それはαMg(Zn、Zr)固溶体単相の配向が溶融および固化中に純αMgマトリクスと比較して変化したことを示唆し、核形成部位として働く溶融物を含む、るつぼ内の合金元素または偏析元素いずれかの影響で、好適な面内で固化元素の優先配列が生じたことを示唆している。
アズキャストおよび溶体化処理されたMg‐4重量%Zn‐0.5重量%ZrまたはZK40合金の光学およびSEMによる微細構造分析は、微細構造全体において平均粒度がそれぞれ50±10μmおよび87±10μmの一様な等軸粒子の形成を示唆している。アズキャストZK40合金の後方散乱モードで実施されたSEMおよびEDS分析の実施は、粒界に沿ってMg7Zn3の金属間相が存在することを明瞭に示し、それは300℃で1時間の溶体化処理中に共晶変態を受け、結果的にαMg(Zn、Zr)主要相およびMgZn二次相が形成され、耐食性の向上に寄与する。
[インビトロ特性決定法を用いたMg‐Zn基合金の生分解性システムとしての潜在的能力の確認]
[理論的根拠]
耐食性、機械的特性、および細胞適合性は、整形外科用途に対する生分解性Mg合金の安全性および機能を証明するために包括的に評価することを要求される三つの主要な判定基準である。生分解性Mg合金のインビトロ評価は、生理的環境を模倣し、異なるMg合金のインビボ分解の傾向を再現することを重視するように計画される。純MgならびにAZ31およびWE43のような様々な市販のMg合金は、インビボおよびインビトロ実験の初期段階で適切な耐食性、機械的特性、および生体適合性を示すことが報告されてきた。したがって、純MgおよびAZ31は、ZK40合金のインビトロ特性を評価するための良好な陰性対照であり、その結果によりZK40合金を理解するためにインビボでの実験が必要であることを決定することができる。ZK40のインビトロでの耐食性、機械的特性、および細胞毒性を理解することにより、整形外科用途向けのMg‐Zn基合金の開発における有用な方向性がもたらされる。
[腐食測定]
生分解性Mg合金の腐食測定は、質量損失浸漬、水素発生、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、および動電位分極(PDP)など様々な方法を用いて達成することができる。この実験では、質量損失浸漬および動電位分極(PDP)を実施して、様々な時点における腐食特性を評価した。質量損失浸漬はまた、Mg合金の分解傾向が、インビボ皮下埋込みモデルでの観察と比較して、類似していることを示した。試料は、5%CO2の加湿雰囲気中で37.4℃で釣り糸を使用して細胞培養培地に浸漬した。表面積に対する培地体積の比は、ASTMG31‐72標準に従って20ml/cm2に維持した。サンプルを1週間、2週間、および3週間の浸漬後に取り出し、蒸留水に洗浄し、室温で乾燥した。さらに、サンプルの腐食生成物層をクロム酸とAgNO3の溶液混合物で洗浄した。浸漬後の重量差を記録し、ASTMG31‐72に従って分解速度(単位はmm/年)を得た。
PDPを実施して、Mg合金の露出金属表面の電気化学的安定性を測定した。電気化学的腐食試験のために三電極セルセットアップを使用し、プラチナを対電極、Ag/AgClを基準電極、エポキシマウントサンプルを作用電極として使用した。37.4℃に維持されたpH7.2±0.2の同一の培養培地で試験を実施した。各測定の前に、電圧安定性をもたらすために、サンプルを開路電位(OCP)で15分間培地に浸漬した。生成されたターフェルプロットのカソードおよびアノード分岐を線形外挿して、腐食電位Ecorrおよび腐食電流密度icorrを算出した。
引張試験および圧縮試験を、引張試験のASTM‐E8‐04および圧縮試験のASTM‐E9‐09のASTM標準方法に従って室温で実施した。引張試験の場合、ゲージ長12.7mmおよびゲージ断面3×3mmの標準ドッグボーン試料を1.3mm/分のクロスヘッド速度を使用して機械加工し、破損するまで引っ張った。圧縮試験用の試料は直径10mmおよび長さ20mmの寸法に相当した。試料をインゴットの長軸から適切に機械加工し、2mm/分の率で破損するまで荷重を加えた。引張および圧縮応力ひずみ曲線を利用して、各合金試料の降伏強度(YS)、極限引張強度(UTS)、引張中のヤング率(E)、総伸び率(%)、圧縮降伏強度、および総圧縮率(%)を求めた。
マウスの骨芽細胞様細胞株MC3T3を、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%p/sを含むダルベッコ変法イーグル培地(αMEM)中で5%CO2の加湿雰囲気中で37.4℃で培養した。細胞を試料表面に播種し、72時間培養した。その後、市販のキットで生死判別アッセイを実施し、蛍光顕微鏡を使用して、細胞の生存率/細胞毒性を決定した。蛍光撮像後に、試料上の細胞を2.5%グルタルアルデヒドで固定し、エタノールで脱水した。固定した細胞をパラジウムスパッタリング後に走査電子顕微鏡で撮像した。MTT(3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐yl)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウム臭化物)アッセイを使用して、培養培地に試料を72時間浸漬した後、分解性生成物の細胞毒性を評価した。24時間培養したMC3T3細胞に1×、2×、4×、および10×の希釈度の抽出物培地を加え、72時間後にMTTアッセイを実施する。
グラフィック統計および要約統計を含む一元配置ANOVAを使用して、分解速度、機械的特性、および細胞毒性結果を評価した。陰性対照(細胞培養プラスチック)によってMTT細胞毒性試験を正規化し、異なる合金群の間で細胞毒性レベルを比較した。したがって、ImageJソフトウェアを使用して生死判別アッセイ画像の細胞数を調べ、分析の正当性をさらに高めた。
純MgおよびアズドローンAZ31と比較して、ZK40合金は、分解速度に関して、純MgおよびAZ31に匹敵する特性を示すことが予想される。純MgおよびAZ31は優れた耐食性を有することが報告されており、アズキャストおよび熱処理したZK40合金は同様に機能することが予想される。機械的特性に関して、ZK40合金は純Mgより良好に機能することが予想される。しかし、延伸手法はかなり高レベルの粒子微細化をもたらすため、ZK40合金が市販のアズドローンAZ31の機械的特性に匹敵するとは予想されない。他方、ZK40合金の細胞毒性結果は、AZ31より優れ、かつMTTおよび生死判別アッセイの両方に続いて純Mgと同程度に良好であると予想される。
[引張試験および圧縮試験]
引張試験は、AZ31および純MgのみならずアズキャストおよびT4処理したZK40合金の両方に対し、引張試験のASTM‐E8‐04のASTM標準方法に従って室温で、50kNロードセルを備えたMTS11フレームおよびLX500レーザ伸縮計(MTS Systems Corporation,Eden Prairie,MN,USA)を使用して、OrthoKinetic(登録商標)試験技術によって実施した。ゲージ長12.7mmおよびゲージ断面3×3mmの標準ドッグボーン試料を機械加工し、引張試験に使用した。サンプルを1.3mm/分のクロスヘッド速度で破損するまで適切に引っ張った。引張応力ひずみ曲線を利用して、各合金試料の降伏強度(YS)、極限引張強度(UTS)、引張中のヤング率(E)、および総伸び率(%)を決定した。三つのサンプルの測定値の平均を報告した。
浸漬腐食測定をASTM G31‐72に準拠して実施した。純Mg、アズキャストZK40、およびT4処理したZK40の試料を10×10×1mmの寸法で作製し、SiC研磨紙を用いて1200グリットまで研磨した。浸漬試験の前に各試料の表面積および重量を慎重に記録した。試料は超音波浴を用いてアセトン中で完全に洗浄し、次いで両面を30分間UV滅菌する。滅菌後に、試料を、5%CO2の加湿雰囲気中で37.4℃で釣り糸を使用してDMEM+10%FBS+100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンに浸漬した。DMEM+10%FBS培地の表面積に対する体積の比は、ASTMG31‐72標準に従って20ml/cm2であった。試料は1週間、2週間、および3週間の浸漬後に取り出し、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥した。さらに、試料を、200g/Lのクロム酸および10g/LのAgNO3溶液で10分間洗浄して、腐食生成物を取り除いた。浸漬前後の重量差を記録し、ASTMG31‐72に従って分解速度(単位はmm/年)を得た。したがって、次式によって腐食速度が求められる。
腐食速度=(K×W)/(A×T×D)...式(1)
式中、時間変換係数K=8.76×104であり、Wは浸漬前後の重量差(g)であり、Aは溶液に曝露されるサンプルの面積(cm2)であり、Tは曝露時間(h)であり、Dは材料の密度(gcm−3)である。浸漬試験中の溶液のpH値も記録した。三つのサンプル測定の平均および標準偏差を報告し、一元配置ANOVAを使用して、各時点に対し0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
純Mg、アズキャストZK40、およびT4処理ZK40の試料は10×10×1mmの寸法になるように切り出し、SiC研磨紙で1200グリットまで研磨し、イソプロパノール中で超音波洗浄し、抽出物の調製前に紫外線放射により30分間滅菌した。試料は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを添加した変法イーグル培地アルファ(αMEM)で5%CO2の加湿雰囲気中で37℃で72時間インキュベートした。抽出培地に対する試料の重量比は、EN ISO標準10993:12に従って0.2g/mLに維持した。この抽出比を100%抽出物として指定し、より低濃度の抽出物は、100%の抽出物をそれぞれ50%、25%、および10%の抽出物溶液に希釈することによって調製した。次いで抽出物は、細胞に加える前に、0.2μmのシリンジフィルタを用いて滅菌濾過した。
マウスの骨芽細胞様細胞株MC3T3を、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(αMEM)で、37.4℃、5%CO2の加湿雰囲気で培養した。細胞を試料表面上に4×104細胞/mLの細胞密度で播種し、各ウェルは2mLの培地を含み、試料を完全に覆った。72時間のインキュベーション後に、市販のLIVE/DEAD判別生存率/細胞毒性キット(Invitrogen Inc.,Karlsruhe,Germany)を使用し、生細胞および死細胞を蛍光顕微鏡下で495nmの励起波長でそれぞれ緑色(エチジウムホモダイマ‐1)および赤色(カルセインAM)に発光するように染色して、生死判別アッセイを実施した。蛍光撮像後に、試料上の細胞を2.5%グルタルアルデヒドで15分間固定し、その後、希釈係数ごとに試料を70、80、90、95、および100%の希釈エタノール中に15分間浸漬することによって脱水した。固定した細胞を含む試料を空気乾燥し、SEMによって撮像した。
純Mg、アズドローンAZ31、およびアズキャストZK40サンプルの急性宿主反応を調べるために、インビボマウス皮下試験を実施した。マウス埋込みをシンシナティ大学でその動物実験委員会(IACUC)の承認を得て、Dr.Zhonghyun Dongと連携して実施した。この試験のために、直径5mmおよび厚さ1.4mmの円板をアズキャストZK40、純Mg、およびAZ31合金試料から切り出した。次いで、円板状のサンプルをアセトン中で超音波洗浄し、空気乾燥し、さらにUV放射線によって滅菌した。健康なヌードマウスを管理された条件下で飼育し、標準的飼料および水で維持した。マウスをイソフルランで麻酔し、皮下領域に円板を埋め込むために小さい皮膚切開を行った。外科用ステープルを使用して切開を閉じた。40日後および70日後に、CO2ガスチャンバを用いて動物を屠殺し、円板状サンプルを取り出し、続いて頸椎脱臼を行った。円板状インプラントを周囲の組織ごと回収し、組織から慎重に分離し、洗浄し、空気乾燥し、計量した。周囲の皮下組織を採取し、10%PBSホルマリン液を使用して固定し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリン‐エオシン(H&E)染色のために切片化(4μm/切片)した。
[Mg‐Zn‐Zr合金の機械的特性]
表2.1は、自然骨との直接比較と共に本研究のために調査された純Mgのみならずアズキャストおよび溶体化処理されたMg‐4%Zn‐0.5%Zr(ZK40)合金の両方、および市販のアズドローンAZ31の機械的特性をまとめたものである。純Mgと比較して、亜鉛および少量のジルコニウムの添加は引張強度の値に劇的な効果を有する。アズキャストMg‐4%Zn‐0.5%Zrの降伏強度および極限引張強度(UTS)はそれぞれ96MPaおよび176MPaであった。しかし、溶体化処理されたMg‐4%Zn‐0.5%Zr合金の降伏強度およびUTSの値は、おそらく平均粒度の増大のため、アズキャスト合金と比較してわずかに低下した。平均粒度が増大すると、物理冶金学の文献で周知の通り、降伏強度は必ず低下する。アズドローンAZ31は、ここで調査した全ての合金の中で最も高い55MPaの降伏強度および202MPaのUTSを示した。純マグネシウムの弾性係数は低く、〜5GPaであったが、Mg‐4%Zn‐0.5%Zr合金は優れた弾性係数(〜64GPa)を示し、合金が引張試験下で高い強度を有することを示唆した。同様に、アズドローンAZ31もまた高いスチフネス値を示した。純マグネシウムを除き、ここで試験した全ての合金が自然骨と比較して高い弾性係数値を有することは注目すべきである。純マグネシウムおよびアズドローンAZ31サンプルの破断までの総伸び率(%)はそれぞれ7%および12%であった。
純Mg、アズドローンAZ31、アズキャストおよび溶体化処理されたZK40合金の平均重量損失を図2.2に示す。純MgおよびAZ31の平均腐食速度は、DMEM+10%FBSへの7日間の静的浸漬後に、それぞれ0.69±0.13および0.66±0.05mm/年であることが決定された。腐食速度は、14日間および21日間の浸漬試験中にさらに低下した。それは文献に報告された数値と一致する。平均重量損失速度の低下はおそらく、腐食をさらに遅らせる表面上のパッシベーション層の形成のためであった。しかし、アズキャストおよび溶体化処理されたZK40サンプルの場合、逆の傾向が観察された。腐食速度は、DMEM+10%FBSへの7日間、14日間、および21日間の静的浸漬の順序で増大した。7日間の浸漬後のアズキャストおよびT4処理したZK40合金の平均重量損失は、それぞれ0.39±0.05mm/年および0.53±0.12mm/年であった。アズキャストZK40サンプルの場合、腐食速度は14日間および21日間の浸漬中にそれぞれ1.07±0.26mm/年および1.53±0.25mm/年に劇的に増大した。
[生死判別アッセイを使用する直接MC3T3細胞適合性]
純Mg、AZ31、アズキャストおよび溶体化処理されたZK40サンプルの細胞生存率を、抽出物の3日間の細胞培養時間により調査した。図2.4は、直接αMEM+10%FBS中で3日間培養し、次いでカルセインAMおよびEthD‐1で染色した骨芽細胞MC3T3‐E1を示す。生細胞は細胞内エステラーゼ活性によりカルセインAMを緑色蛍光カルセインに変換する一方、EthD‐1は損傷した膜を持つ細胞に侵入し、そこで核酸と結合して明るい赤色蛍光を発する。アズキャストサンプルと同様に溶体化処理されたZK40サンプルも、AZ31および純マグネシウムと比較して、細胞密度がより高くかつ均等に分布していることが明瞭であるので、改善された細胞生存率を示す。対照群と調査サンプル群との間で生細胞(緑色)の形状に有意な差はなかった。各群にほんのわずかなアポトーシス細胞(核の赤色蛍光)が観察された。
図2.6は、MC3T3‐E1細胞および3日抽出物のMTTアッセイを使用して実施した間接細胞毒性試験の結果を示す。3日間の培養期間の場合、細胞生存率は陰性対照と比較して、非希釈抽出物(100%)濃度ではほとんど無きに等しかった。しかし、腐食培地の抽出物を50%、25%、および10%に希釈し、新鮮な培地を細胞に加えると、細胞生存率は増加した。細胞生存率レベルは、アズキャストおよび純マグネシウムレベルの場合、50%の希釈レベルで〜80%と記録され、ZK40合金の良好な細胞適合性が示唆された。細胞適合性レベルは25%の抽出物希釈でさらに改善した。アズキャストおよび溶体化処理されたZK40ならびに純Mgの三つのサンプルは全て、陰性対照に対して、50%および25%の抽出物希釈で75%を超える細胞生存率を示した。上記の研究結果は、抽出物濃度が高いと本質的に細胞毒性が高く、放出されるイオン濃度のため浸透圧衝撃を招くという、文献に報告されている最近の研究結果とよく一致しており、10倍の抽出物希釈は様々なマグネシウム合金間の細胞毒性レベルを決定するのにより適しており、おそらく充分であることを示唆している。細胞毒性試験のISOプロトコルもまた75%以上の細胞生存率を非細胞毒性の指標としており、したがってここでの結果は、調査したZK40合金材料の生体適合性を示唆している。
図2.7は、40日および70日後にアズキャストZK40、純Mg、およびAZ31の周囲のマウス皮下組織で採取されたインプラントの局所部位の組織学的画像を示す。40日後にアズキャストZK40の埋込みの周囲に、ある可視量のガスポケットが観察され、動物を屠殺し、合金試料を取り出した後、純MgおよびAZ31と比較して、アズキャストZK40の有意な質量損失を測定した。H&E組織学的検査結果に軽度の炎症反応が観察された(図2.7参照)。線維芽細胞の豊富な集団がMg合金サンプルの周囲に観察された。アズキャストZK40の分解は、純MgおよびアズドローンAZ31より次第に目立つようなることが観察された(図2.8参照)。しかし、試料に明瞭な急性炎症反応は無かったが、より詳細で正確かつ説得力のある説明を提供するためには、分解分析と共に長期反応の分析が必要である。これらの研究は近い将来に計画される。
本試験では、アズキャストおよび溶体化処理されたZK40合金を、整形外科および頭蓋顔面に適用可能な潜在的生分解性合金として調査した。ZK40合金は、純MgおよびアズドローンAZ31に匹敵する腐食速度を有する。しかし、静的浸漬技術による長期腐食は、アズキャストおよび溶体化処理されたZK40合金の腐食傾向が実際には、純MgおよびAZ31と逆であることを示している。純MgおよびAZ31の平均重量損失速度は、7日間の浸漬後に安定化し、14日間および21日間の静的浸漬後に徐々に低下するが、アズキャストZK40合金の平均重量損失速度は、おそらく腐食面で同時に起きる保護層の形成および溶解のため、平均重量損失速度の増加を示すことが観察された。マウス骨芽MC3T3細胞を使用する直接生死判別アッセイおよび間接MTTアッセイによるインビトロ分析は、純MgおよびAZ31と比較して良好な細胞生存率を示す。マウス皮下モデルにおけるアズキャストZK40サンプルの直接移植もまた急性炎症反応を示さず、かつ40日後および70日後に移植部位に沿って健康な線維芽細胞の形成が示され、ZK40合金を潜在的生分解性インプラントとして使用できることが示唆される。さらに、押出/圧延、および昇温での等チャネル角プレスは、アズキャストインゴットに存在するボイド、固化収縮等を除去することが可能であり、機械的強度および腐食特性を改善することが報告されている。したがって、熱間押出または熱間圧延について、Mg‐Zn‐Zr合金を潜在的生分解性インプラント材料として使用するための潜在的工程として調査した。
[Mg‐Zn‐Zr合金の分解特性、機械的特性、および生物学的特性に対するSrおよびCeの添加の影響]
[理論的根拠]
各合金カテゴリについて上述したように、ここで考察する新たな種類の系は、SrおよびCeを含有する合金である。前に述べた通り、SrおよびCeは両方とも骨に自然に存在しており、骨のhMSC分化に関してそれらの生物学的影響が報告されてきた。他方、Srは粒子微細化効果を有することが知られ、CeはMg合金により強力な金属腐食保護層をもたらすことが知られており、したがって結果的に得られる合金の品質および予想される性能を著しく向上する。Mg合金の分解中のSrおよびCeの放出は、かくして骨組織の再生をさらに増強する潜在的可能性を有する。したがって、少量であるが目立つ量のSrおよびCeが合金元素としてベースMg‐Zn基合金に添加され、これらの元素の影響が調査されてきた。こうしてSrおよびCeの添加量を0.25重量%および1重量%に決定し、添加量と主要な三つの特性との相関のみならず骨形成能についても体系的に調査する。
上記の実施例1で記載したのと同じ実験セットアップを使用して、Mg‐Zn‐Sr‐ZrおよびMg‐Zn‐Ce‐Zr(Sr、Ce=1、0.25)合金を溶融し、鋳造した。したがって、Mg‐SrおよびMg‐Ce母合金を使用して、溶融中にSrおよびCeを添加した。SEMを用いた微細構造および不純物の分析後に、熱処理条件を最適化した。処理後にパラメータを決定し、生分解性Mg合金に必要な基本的特性を理解するために、実施例2の実験計画に従ってインビトロでの腐食特性、機械的特性、および生物学的特性の測定を実行した。
Mg‐Zn‐Sr‐ZrおよびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金に実施される繰り返し実験のために、明確な目的1(Specific Aim 1)および明確な目的2(Specific Aim 2)の同じ統計分析を使用した。したがって、ALPおよび石灰化の調査に対し、群および時間の独立変数を持つ二方向ANOVAを使用した。SrまたはCeの添加が骨形成能に効果を有するかどうかを立証するために、p<0.5で設定した有意水準を設定した。
上で概説したように、ZK40合金へのCeおよびSrの添加は耐食性を低下させるとは予想されないが、これらの合金元素は少量でも、粒界に沿ってまたは親Mgマトリクス相の内部に小さい析出物を形成する可能性が高い。機械的特性は相応して変化するが、引張強度については依然としてZK40合金の80%を維持すると予想される。Mg‐Zn‐Sr‐ZrおよびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金は、ALP活性および石灰化がかなり向上すると予測される一方、合金の細胞毒性についてはZK40との有意差は無いであろう。
[合金の設計および合成]
Si検出器を備えCu Kα(λ=1.54056Å)放射線源を用いるPhilips XPERT PROシステムを使用して、X線回折(XRD)位相分析を実施した。X線発生装置は45kVおよび40mAで10〜80°の2θ範囲で動作した。X’Pert HighScore Plusバージョン3.5ソフトウェアを使用し、ICSDデータベースと比較してXRDパターンを同定した。
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES,iCAP duo 6500,Thermo Scientific)を使用して、合金組成物に対する元素分析を実施した。ZK40、ZJ40/41およびZY40/41合金試料を1%硝酸中で溶解した。次いで、公知の標準を使用して、Mg、Zn、Zr、Ce、Sr、Fe、Mn、Ni、Al、およびCuの濃度について溶液を分析した。
熱処理(T6)および押出ししたZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金の微細構造は、エポキシ樹脂(EpoxiCure,Buehler)にマウントし、半自動研磨システム(Vector,Buehler)を用いて、9μm、3μmおよび1μmのダイヤモンドスラリにより、次いで0.5μmのコロイド状シリカにより機械的に研磨して鏡面仕上げを達成した。次いで試料を、5mLの酢酸、6gのピクリン酸、10mLの水、および100mLのエタノールの溶液中で化学的にエッチングし、その直後にイソプロパノールを使用して洗浄して表面をきれいにした。熱処理(T6)および押出ししたZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金の微細構造は、光学顕微鏡(Nikon,Japan)を使用して観察した。また、ZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金試料の研磨されエッチングされた微細構造を、粒界内の二次析出物を同定するために、エネルギ分散分光計(INCA,Oxford Instruments)を備えた走査電子顕微鏡(JSM 6610LV,JEOL,Japan)も使用して分析した。コンピュータ断層撮影(Phoenix Nanotom‐m 180kV/15W X線ナノCT(登録商標)System,GE)画像も最小ボクセル解像度〜80μmで取り込み、アズキャスト焼鈍インゴット内に内包物、ボイド、および二次析出物が無いか分析した。
熱処理(T6)および押出ししたZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金の浸漬腐食特性をASTM G31‐72に準拠して評価した。熱処理(T6)および押出ししたZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金は、直径5mmおよび厚さ1.5mmの円板状に調製した。これらの円板はSiC研磨紙を用いて1200グリットまで研磨した。浸漬試験の前に各試料の表面積および重量を測定した。試料は次いで超音波洗浄器を用いてアセトン中で洗浄し、両面をUVにより30分間滅菌した。滅菌後、試料を37.4℃のハンクス液(HBSS)中に1週間、3週間、および5週間浸漬した。HBSS培地は体積対表面積比を20ml/cm2に維持した。浸漬した試料はその後、各時点でHBSS培地から取り出し、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥した。さらに、各試料の分解生成物を200g/Lのクロム酸および10g/LのAgNO3溶液で10分間洗浄し、3章および4章に記載した手順と同様に質量損失を評価した。浸漬前後の質量の差を記録し、ASTMG31‐72に従って質量損失、密度、および表面積を用いて分解速度を算出した。三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差を報告し、Tukeyのpost‐hocテストによる一元配置ANOVAを使用して、各時点について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
ASTM‐E8‐04mに従って引張試験を実施した。ZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金を、ゲージ長が13.5mm、幅が3mm、厚さ3mmの標準ドッグボーン形状に機械加工した。5kNのロードセルを用いたInstronマシンを使用して、室温で1.3mm/分のクロスヘッド速度で一軸引張試験を実施した。各試料に対して得られた応力‐歪み曲線から、降伏強度(YS)、極限引張強度(UTS)、ヤング率(E)、および伸び率(%)を得た。ヤング率は曲線の初期直線部分からも決定した。これら三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差は、この後に続く結果の節で報告する。三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差を報告し、Tukeyのpost‐hocテストによる一元配置ANOVAを使用して、各時点について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
押出ししたZK40、ZJ40/41、およびZY40/41合金の細胞適合性を調査するために、マウスの骨芽細胞様細胞株MC3T3(ATCC,Rockville,MD)を、合金試料を培養培地に浸漬し、それらを72時間インキュベートすることによって調製した抽出物培地を用いて培養した。10%のFBSおよび100Uml−1のペニシリン‐ストレプトマイシンを含む変法イーグル培地アルファ(αMEM)を細胞培養培地として使用した。合金試料を直径10mmおよび厚さ5mmの円板状に機械加工し、SiC研磨紙を用いて1200グリットまで研磨した。試料の重量に対する培養培地の体積の比は、EN ISO10993:12に準拠して1mL:0.2gに維持された。抽出物培地を0.2μmの膜を用いて濾過し、このオリジナル抽出物を100%抽出物とみなす。100%抽出物中のMg、Zn、Zr、Sr、およびCeの化学的濃度は、前に3章および4章に記載した手順と同様に、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES)を使用して測定した。100%抽出物はさらに希釈して50%、25%、および10%の抽出物溶液にした。MC3T3細胞を96ウェルプレートに6000細胞/ウェルの細胞密度で播種し、24時間インキュベートした。MC3T3細胞を100%、50%、25%、および10%の抽出物培地でさらにインキュベートした。72時間のインキュベーション後、Vybrant MTT細胞増殖キット(Invitrogen Corporation,Karlsruhe,Germany)を使用して細胞生存率を評価した。MTTアッセイの前に、Mgイオンと3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐yl)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)との間の干渉を防止するために、抽出物培地を新鮮な培養培地に交換した。次いで、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で1.2mMのMTTを110μLずつ各ウェルに加え、4時間インキュベートした。次いでドデシル硫酸ナトリウム‐塩酸溶液を加え、12時間インキュベートして、ホルマザン結晶を可溶化した。次いで、前に述べた手順と同様に、Synergy 2マイクロプレートリーダー(BioTek Instruments,Winooski,VT)を使用して、570nmの波長でホルマザン染料の吸光度を測定した。三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差を報告し、一元配置ANOVAを使用して、抽出物培地の各希釈係数について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
ヒト間葉系幹細胞(Lonza,Allendale NJ)を使用して、hMSCの骨形成分化に対するMg、Sr、およびCeイオンの効果を評価した。三番目の継体細胞は、Mg、Ce、およびSrイオンを含む成長培地および分化培地の両方で培養した。20%のFBSおよび100Uml−1mpペニシリン−ストレプトマイシンを含む変法イーグル培地アルファ(αMEM)を成長培地として使用した。100nMのデキサメタゾン、50μmのアスコルビン酸、および10mMのβグリセロリン酸塩をさらに成長培地に添加し、骨形成培地を生成した。加えて、表3.2に示すように、10mMのMgSO4、0.1/1mMのSrCl2、または0.1/1mMのCeCl3を分化培地に添加した。hMSCを6000細胞/cm2の細胞密度で播種し、成長培地で7日間培養した。これに続いて、成長培地をサンプル培地に交換し、さらに7日間および14日間培養して、アルカリホスファターゼ活性および骨形成遺伝子発現を調査した。三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差を報告し、Tukeyのpost‐hocテストによる一元配置ANOVAを使用して、各時点について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
アルカリホスファターゼ(ALP)活性は、酵素アッセイを使用し、ホスファターゼ基質としてのpニトロフェニルリン酸塩(pNPP)の変換を測定して評価した。hMSC細胞はPBSで洗浄し、溶解緩衝液(CelLytic M,Sigma Aldrich)を使用して溶解し、ALPを含有する細胞溶解物を調製した。pNPP基質溶液を細胞溶解物に添加して、酵素反応を評価した。30分間のインキュベーション後、次いで0.3NのNaOH溶液を添加して、酵素反応を停止させ、405nmで吸光度を測定した。pNPP基質溶液を0.02NのNaOH溶液で希釈することによって、異なる濃度のpNPP標準溶液を調製した。吸光度を標準曲線と比較することによってALP活性を決定し、総二重鎖DNAによって正規化した。
[位相および元素分析]
図3.1は、押出し後のベース合金Mg‐Zn‐Zr(ZK40)、Mg‐Zn‐Sr‐Zr、およびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金のX線回折(XRD)パターンを示す。パターンは純Mgのhcp結晶構造を持つ単相αMgマトリクスと同定された。Mg‐Zn‐Zr、Mg‐Zn‐Sr‐Zr、およびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金は、Mg、Zn、Ce、Sr、またはZrと組み合わされた明瞭な金属間相が存在しないことを示した。XRDパターンは、種々の合金系の全てにαMg固溶体単相が形成され、検出可能な量の金属間化合物は観察されないことを明確に示した。しかし、純Mgとは異なり、Mg‐Zn‐Zr、Mg‐Zn‐Sr‐Zr、およびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金の最高ピーク強度がピラミッド面に観察された。この観察は、αMg固溶体単相の配向が合金の合成および処理中に変化したことを示唆する。
Mg‐Zn‐Zr合金の耐食性に対するCeおよびSrをマイクロ合金元素として追加することの影響は、HBSSでの7日間および35日間の浸漬腐食測定を使用することによって調査した。図3.3では、Mg合金の質量損失は、4章で前述の通り、ミリメートル/年(mmpy)単位の浸漬腐食速度に変換された。Mg‐Zn‐Sr‐Zr合金は、Mg‐Zn‐Zrと比較して腐食速度に有意な差を示さない。他方、Mg‐Zn‐1Ce‐Zrは、35日間の浸漬後に腐食速度についてかなりの増加を示すが、Mg‐Zn‐0.25Ce‐Zrは依然として他のMg合金に匹敵する耐食性を維持した。5.3.1節においてBSE画像で観察し考察したように、Mg‐Zn‐1Ce‐Zrの場合、より多くの二次相含有量は結果的に、粒界に沿ったMg‐Zn‐Ce混合物から開始する破局的腐食を招く。全体として、0.25重量%および1重量%のSrの追加は、0.25重量%のCeの追加と同様に、市販のAZ31と比較して耐食性を著しく劣化させることはなかった。
引張試験を使用して種々の合金の機械的特性を決定し、その結果を表3.4に示す。Mg‐Zn‐Zr合金(ZK40)は45.8GPaの弾性係数、286.6MPaの降伏強度(YS)、および327.2MPaの極限引張強度(UTS)、および9.3%の伸び率を示した。0.25重量%および1重量%のSrをMg‐Zn‐Zrに追加しても、結果はUTSがわずかに増加して317.3MPaおよび320.9MPaになっただけである。弾性係数、YS、および伸び率に有意な差は無かった。他方、0.25重量%および1重量%のCeをMg‐Zn‐Zrに追加した場合、UTSは有意な増加を示し、それぞれ335.2MPaおよび341MPaになった。Mg‐Zn−1Ce‐Zrの場合、9.3%から7.6%への伸び率の有意の低下も観察された。
Mg基合金の分解生成物を含有する抽出物培地で細胞を1日間および3日間培養した後、MTTアッセイを用いてMC3T3の細胞生存率を評価した。陰性対照としての成長培地と比較して、MTTアッセイの結果を図3.4に示すようにプロットした。Mg‐Zn‐Zr、Mg‐Zn‐Sr‐Zr、およびMg‐Zn‐Ce‐Zr合金の100%抽出物培地は予想通り、市販のAZ31Bまたは純Mgとは対照的に、1日間の培養後でもすぐに10%未満の細胞生存率を示した(図3.4a)。しかし、これらの合金の細胞生存率は、50%の抽出物培地で〜50%まで回復し、25%および10%の抽出物培地では〜90%まで増加した。図3.4bは、MC3T3を抽出物培地で3日間培養後した後のMTTアッセイに対し、同様の細胞生存率パターンを示した。4章で考察したように、総金属塩濃度の浸透圧衝撃によって誘発される細胞壊死を引き起こす静的培養の性質上、10%の抽出物培地は生分解性Mg合金の細胞毒性を決定するのに適していることが示唆される。ISO 10993:5プロトコルは、75%以上の細胞生存率の達成は一般的に非細胞毒性とみなされると規定している。したがって、10%の抽出物培地の細胞生存率は、これらの合金が実際にsMC3T3細胞株との細胞適合性を持つことを示唆している。
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を成長培地で7日間培養した。合金元素を含む骨形成分化培地でhMSCを7日間および14日間培養した後、ALP発現レベルを測定した(図3.5)。全ての塩濃度で成長培地と比較して、より高いALPレベルが観察されたが、合金元素塩を加えた分化培地群では、ALPの発現に有意な改善は無かった。CeCl3を含む分化培地では7日後により低いレベルのALP活性が観察されたが、ALPレベルは14日後には分化培地と比較して回復した。MgおよびSrイオンを加えることによって、ALPの発現に他の有意な差が生じることは無かった。
アルカリホスファターゼ(ALPL)およびオステオポンチン(OPN)遺伝子発現を図3.6に示す。GAPDHハウスキーピング遺伝子の発現を減算し、かつ成長培地群の平均を減算することによって、ALPLおよびOPNの倍率変化が得られた。ALPLの発現はDM‐Mg‐1Sr群の有意な増加を示すものであった。OPNの場合、Mg、0.1/1mMのSr、および0.1mMのCeを添加した培地は、発現レベルの有意な増加を示したが、Ceを添加した培地は有意な改善を示さなかった。
[耐食性および機械的特性に対するSrおよびCeの効果]
SrおよびCeをMg基合金、特にMg‐Zn‐Zr系に加えることによる効果を調査した。加えて、耐食性、機械的特性、細胞適合性について調査し、生分解性Mg‐Zn‐Zr合金にSrおよびCeを徐々に加えることを取り込んだ場合の骨形成反応について調査した。Mg‐Zn‐Zrは、構造用途のために開発され使用された市販のMg合金系である。それは適切な耐食性、機械的特性、および細胞適合性を有する。Mg‐Zn(Mg7Zn3)二次相析出物は粒界領域で形成することが観察される。これらの析出物はガルバニック腐食を受けやすく、孔食のイニシエータとして働く。したがって、SrおよびCeは、これらの析出物の組成を変えるマイクロ合金元素として選択されてきた。ストロンチウム(Sr)はMg合金の粒度を微細化し、Ceは、酸化セリウムを形成するための結合エネルギおよび結合強度ならびに親和性が高いため、安定酸化物を形成することができ、したがって、Mg‐Zn‐Zr合金を腐食から保護するように働く。加えて、SrおよびCeは、ヒト間葉系幹細胞の増殖および骨形成分化に対し肯定的な効果を有することが報告されている。
生体材料の毒性は、インビボ実験を開始する前にしばしばインビトロ実験を用いて調査される。これに関連して、ISO 10993プロトコルは、MTTアッセイを用いて示される細胞生存率に基づいてポリマー製および金属製の生体材料をスクリーニングするために開発され、使用されてきた。Fischerらは最初に、MTTアッセイの後に行ったMg合金材料による直接細胞培養について、活発に腐食するMgイオンにより生じるホルマザン塩変換がアッセイ結果と干渉するように働いたため、結果が偽陽性になり得ることを報告した。動物に埋め込まれたMg合金が有意な組織損傷を示さないのに、細胞に浸透圧衝撃を引き起こすMgイオンのオスモル濃度の問題が知られている。したがって、本研究では、10%抽出物培地による細胞生存率を示し、Mg合金の毒性を格付けするためのより優れた許容可能な標識として役立つ、間接MTTアッセイ結果に研究の焦点を合わせた。静的浸漬試験中にMgによって示されたインビトロでの分解および細胞適合性が実際には、生分解性Mg合金のインビボ移植反応を表していないことは、広く受け入れられてきた。他方、Mg合金はインビボ移植中に分解速度が大きく低下し、したがって最小限の炎症反応を示す傾向がある。
SrおよびCeをマイクロ合金元素として生分解性Mg‐Zn‐Zr合金に添加する効果は、腐食および機械的特性のみならず、石灰化に寄与しかつ骨形成能を示すこれらの合金元素の生物学的影響の観点からも調査された。これらのマイクロ合金元素を使用して、第二相析出物が形成されることが観察された。Zrの存在下でも同様に相応してMg‐Zn‐Sr/Ce三元相析出物を形成するため、二元Mg‐Zn相系におけるSrおよびCeの固溶度のおかげで、析出物は無事に形成されたようである。残念ながら、追加の合金元素を導入したことで、粒界に沿ってより多くの析出物の形成が誘発されたようである。したがって、耐食性の有意な改善は、予想されたが、観察されなかった。他方、SrおよびCeを追加した場合のMg‐Zn‐SrおよびMg‐Zn‐Ce析出物の形成を示す後方散乱SEM分析によって確認された、大量の析出物の形成のため、機械的特性は改善された。Mg‐Zn‐Zrの細胞適合性は、SrまたはCeの追加によって影響されないことが明らかになった。しかし、Znは、培養培地に溶解した塩化物塩の形の異なる合金元素によりMC3T3細胞を培養した後、細胞生存率に低い耐性を示した。したがって、Mg‐Zn‐(Sr/Ce)‐Zr合金のZn含有量は一定であるため、MTTアッセイで同様の細胞生存率が得られた。ALP活性およびALPL遺伝子発現は有意な改善を示さなかったが、OPN遺伝子はMg、Sr、およびCe塩を添加した骨形成培地でhMSCを培養した後、いくらか改善を示し、合金元素が合金系の石灰化能力に対し潜在的悪影響を持たないことを表した。しかし、ZnおよびZrに加えてSrおよびCeをも含むこれらの合金系の真の骨形成能を確認するには、インビボ試験が必要であろう。
[Mg‐Zn‐Sr‐Zr合金の髄内ピンを使用したラット大腿骨骨折修復]
[理論的根拠]
生分解性Mg‐Zn合金は、様々な整形外科用途に望まれる適切な分解特性、機械的特性、および生体適合性特性を示すことが期待される。生分解性Mg‐Znインプラント装置が経験する荷重に応じて、分解速度が異なり、したがって埋め込まれた装置の破損が突然の炎症反応を誘発する可能性があることはよく知られている。機械的応力がMg‐Zn基合金の生分解性および石灰化反応に及ぼす影響を示すために、ラット大腿骨骨折モデルを選択し、耐荷重条件下でMg‐Zn合金の生体適合性および石灰化能を調査する。Mg‐Zn合金は潜在的に髄内ロッドとして使用することが可能であるが、合金は髄内領域に埋め込まれて、癒着不良部を支持かつ固定し、骨折した大腿骨の治癒をもたらし、再結合させる。それに対応して、Mg‐Zn合金およびその分解生成物の生体適合性が、血液検査のみならず肝臓および腎臓の組織学的検査をも使用して評価される。骨の治癒および局所的毒性は、骨の組織学的検査および筋肉の元素分析を用いて評価される。
上述したラット大腿骨骨折モデルにおける合金の有効性を実証するために、インビトロでの耐食性および機械的特性に基づいてMg‐Zn合金の単一組成を慎重に選択した。同時に、Ti合金を対照群として使用し、骨の固定に現在使用されている最先端の臨床生体材料で観察される毒性レベルを模倣した。したがって、髄内ピンは同じ寸法に対応して機械加工した。各ピンは、骨切り術後に、各Sprague‐Dawleyラットの右大腿骨の髄内領域に挿入した。MgピンおよびTiピンの生体適合性を評価するために、インプラント装置を埋め込んだ動物を全て、2週間、8週間、および14週間後に屠殺した。
全血サンプルを全血球数パネルについて適切に分析した。血清サンプルを分析して、代謝および化学プロファイルの包括的全体像を得た。化学プロファイルを使用して、血中のリンおよびマグネシウムのレベルを本質的に評価した。
オリジナルのインプラントおよび採取した骨に対して、マイクロCT撮像も実施した。それに応じて、体積損失から分解速度を算出した。最後に、CT画像に基づいて、骨治癒応答を決定し、評価した。
また、それに応じて、肝臓および腎臓の組織を、中性緩衝ホルマリンを使用して固定し、パラフィンに包埋し、ミクロトームを使用して切片化した。ヘマトキシリンおよびエオシン染色を実施して、組織の損傷または異常な反応が無いか検査した。次いで採取した大腿骨をその後非脱灰骨として処理し、プラスチックに包埋した。包埋した組織は相応して切片化され、ゴールドナーのマッソントリクロームおよびトルイジンブルーを含む様々な染色法にさらされた。
二方向ANOVA統計分析を使用して、独立変数の時間および群に関して、分解速度および血液検査の平均比較を決定した。SrまたはCeの添加が実際、骨形成能に対し効果を有することを立証するために、有意水準をp<0.5に設定した。主観的肯定的な結果のみを正当化するために、組織学的検査の結果についても相応に慎重に検討した。
14週間後、Mgピンの50%超の体積が分解後に残ると予想される。また骨折部位にカルス形成も起こり、固定の安定性の維持を助けることが予想される。血液検査結果および組織学的検査結果から、群および時点の間に有意な差は予想されない。化学パネル分析の分析後にMgのレベル上昇がおそらく予想され得る。しかし、レベルは正常範囲内に維持されることが予想される。
電気抵抗炉(Wenesco Inc.)を用いてMg‐4Zn‐0.1Sr‐0.5Zr(Mg‐Zn)合金を合成した。純Mg(US Magnesium Inc. 99.97%)、Znショット(Alfa‐Aesar 99.99%)、Mg‐30Sr母合金を軟鋼るつぼ内で溶融した。総金属量は250gであった。溶融マグネシウム合金を酸素から保護するために、0.5%SF6+残部Arの保護ガス雰囲気を用いて溶融プロセスを実施した。Mg、Zn、およびSrの溶融混合物を、700℃で均質化し、Zirmax(登録商標)(Mg‐33.3重量%Zr)母合金(Magnesium Elektron Ltd.)を用いてジルコニウム成分を添加した。1分後および5分後に、液状溶融物は、ジルコニウム粒子を均等に溶解かつ分散させるために10秒間攪拌することによって、さらに均質化した。溶融物を700℃で30分間維持し、次いで溶融液を500℃に予熱した軟鋼鋳型(直径44.5mm×82.5mm)に注湯した。
動物実験はピッツバーグ大学の実験動物委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルに従って実施した。行われた外科処理の概要を図4.1に示す。本章に関係する群、時点、および動物の数は表4.1に示す。体重約250gのSprague‐Dawleyラットを30匹使用した。Ti合金(Ti alloy)の埋込み用に15匹のラットを無作為に選択し、残りのラットにはMg合金ピンを埋め込んだ。各インプラント材料について、10匹のラットはピン(pin)を2週間および14週間埋め込み、5匹はカフ(cuff)を14週間埋め込んだ。埋め込む各ピンについて、各ラットの右大腿骨に側方から接近し、ダイヤモンドホイールブレード付きドレメルドリルを使用して大腿骨の真ん中に骨切り術を実施した。TiまたはMg合金のピンを髄内領域内に挿置して、骨折した大腿骨の安定した再結合を達成した。骨折治癒および毒性分析のために、埋込みから2週間後または14週間後にTi群およびMg群の両方から5匹を屠殺した。各カフインプラントについて、TiまたはMg‐Zn合金のカフは、14週間後に毒性分析のために、骨折していない大腿骨の周りに埋め込んだ。
7日後に全動物のX線画像を取得し、インプラント位置および骨折した大腿骨のアラインメントを観察した。埋込み前のMg‐Zn合金ピンを、マイクロコンピュータ断層撮影(microCT)(VivaCT40;Scanco Medical,Switzerland)を使用してスキャンした。採取した大腿骨もまた、プラスチックに包埋した後、マイクロCTを使用してスキャンした。マイクロCT画像の分析はMimics(Materialise,Belgium)を使用して実施し、Mg合金ピンの分解速度を算出し、骨折治癒を評価した。5つのサンプルの測定値の平均および標準偏差を報告し、t検定を使用して、様々な時点のMg‐Znピン群について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
手術前と2週間目および14週間目の安楽死後に血液サンプルを取得した。K2‐EDTAで採取されたサンプルは、血液学的分析のためにマーチフィールドラボ(Cleveland,OH)に送られた。赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、および白血球数は、Sysmex XT2000i自動血液分析装置(Sysmex Corporation,Japan)を用いて分析された。生化学分析のために、血液サンプルは30分間室温に維持して凝固させ、2,000rpmで10分間遠心分離した。上澄みの血清サンプルはOlympus AU化学分析装置(Olympus Corporation,Japan)を使用して分析した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総タンパク質、アルブミン、総および直接ビリルビン、コレステロール、グルコース、尿素、クレアチニン、リン、塩化物、カリウム、ナトリウム、およびマグネシウムを適切に測定した。三つのサンプルの測定値の平均を報告し、各パラメータの基準範囲と比較した。
採取した肝臓および腎臓の組織を70℃のオーブンで一晩乾燥させた。乾燥した組織サンプルを次いで、乳鉢と乳棒を用いて粉砕した。粉砕した組織0.5gを濃硝酸5mLに溶解し、それを130℃で14時間加熱し続け、30%過酸化水素1mLを添加した。次いでサンプル溶液を10倍に希釈し、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES,iCAP duo6500 Thermo Fisher,Waltham,MA)を分析対象の様々な元素の標準溶液と共に使用して測定した。三つのサンプルの測定値の平均および標準偏差が報告され、一元配置ANOVAを使用して、全ての他の群について0.05未満のp値で有意な平均差を決定した。
採取した肝臓および腎臓の組織を、10%中性緩衝ホルマリンで48時間固定した。固定した組織は小片に切り出し、70%〜100%のエチルアルコールシリーズで脱水し、キシレン代替品を使用して洗浄し、パラフィンに包埋した。次いでパラフィン組織ブロックは回転ミクロトームを使用して切片化した。組織切片は温水浴で適切に皺を取り除き、ガラススライドに移した。乾燥後、組織スライドは、ヘマトキシリンおよびエオシン(染料)で染色し、マウント溶液を使用してマウントした後、光学顕微鏡を使用して撮像した。
非脱灰埋込みを使用して、インプラントを含む採取した大腿骨の組織学的検査分析を実施した。採取した大腿骨を70%エチルアルコールで72時間固定した。固定した大腿骨を次いで、70%の希釈から連続して100%まで希釈したエチルアルコールで脱水した。大腿骨をキシレンで洗浄し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(OsteoBed,Life Technology)に包埋した。タングステンカーバイドブレード付き回転ミクロトームを使用して、包埋した大腿骨から7〜10μmの組織切片を得た。切片を、切片作製中の破壊を防止するためにテープに接着した。切片はゴールドナーのマッソントリクロームおよびアルカリホスファターゼ染色を受けた。染色した切片を、グリセロール溶液を使用してガラススライド上にマウントし、光学顕微鏡下で観察した。
[マグネシウム‐亜鉛‐ジルコニウム‐ストロンチウム(Mg‐Zn‐Zr‐Sr)合金ピンのインビトロ分解]
図4.2は、骨切り手術から1週間後のTiピンおよびMg‐Znピンを埋め込まれたラットの代表的なX線画像を示す。画像を使用して、骨折した大腿骨の固定の質に基づいて各動物を安楽死させる時点を決定した。X線画像では、図4.2bおよび図4.2cに示すように、Mg‐Znインプラントの周囲に目に見える幾らかの水素ガスの発生が観察された。TiピンおよびMg‐Znピンの両方を埋め込まれたラットは、正常な運動および歩行挙動を示した。
表4.2は、TiおよびMg‐Znのピン/カフを2週間および14週間埋め込んだ場合の骨切り手術前後のラットの血液検査結果をまとめたものである。赤血球、ヘモグロビン、および血小板数は、異なるインプラントおよび異なる期間の群の間で有意な差を示さなかった。Tiピンの埋込みから2週間後の白血球数は、Mg‐Zn群と比較して著しく高かった。しかし、それは依然として基準範囲内にとどまった。
肝臓または腎臓のICP分析を実施して、Mg‐Zn合金ピンおよびカフの埋込み後の組織におけるあらゆる形態のMg蓄積を、Ti対照と比較して調べた。図4.5aでは、Mg‐Znインプラントを含む実験群から採取した腎臓で決定されたMg濃度は、未手術群の腎臓の濃度と比較したときに、Mgの蓄積を示さなかった。図4.5bは、未手術対照(non-operated control)の肝臓組織で観察されたMg濃度が、乾燥組織1グラム当たり521μgの範囲内であることを示す。埋込み時間に関係無く、ピンを埋め込んだMg‐Zn合金群は、肝臓サンプルのMg濃度に対照レベルとの有意な差を示さなかった。観察は血液検査結果と一致しており、上述したラット大腿骨モデルにおけるMg‐Zn合金ピンおよびカフの埋込みが全身毒性を示さないことを示唆した。
TiピンおよびMg‐Znピンの埋込みによる組織形態の組織学的違いを可視化するために、肝臓および腎臓の組織切片のヘマトキシリンおよびエオシン染色を実施した。図4.6に示す埋込みの2週間後および14週間後のTi群およびMg‐Zn群両方の肝臓切片は、核および中心静脈がはっきりと見える肝細胞の正常な分布を示した。腎臓の組織学的検査では、14週間の埋込み後にTi対照とMg‐Zn群との間に、糸球体の形態、ボーマン嚢腔、毛細管、および曲尿細管の目に見える違いは、観察されなかった。全ての実験群の肝臓および腎臓の組織の組織学的形態は、未手術対照と同様の形態を示し、データは示されないが、群間または異なる時点間で違いは観察されなかった。ICPおよび血液検査の結果に加えて、H&E染色は、生分解性Mg‐Znピンの埋込み後の分解による重要な腎臓および肝臓器官の損傷は確認されなかった。H&E染色はMgの蓄積を決定するために使用することはできないが、組織学的検査が正常で機能的な組織を示すということは、蓄積に関連する損傷が腎臓および肝臓組織に存在しない可能性が高く、または時間の経過と共に、体内で一般的に行われる正常な排泄プロセスに従ってMgが確実に除去されることが可能であることを示唆するのに役立つ。しかしながら、埋め込まれた合金ピンに存在するMg、Zn、Zr、およびSrの決定的な蓄積を確認するためには、より高度な技術が必要になるであろう。
プラスチック包埋後のラット大腿骨切片のゴールドナーのマッソントリクローム染色は、図4.7に示すように、典型的な骨折治癒反応を明らかにした。埋込みの2週間後、TiピンおよびMg‐Zn合金ピンを含む大腿骨は、骨折の周囲に軟骨内の骨発生および線維組織の形成を示した。埋込みの2週間後のMg‐Zn合金ピンを含む大腿骨の骨組織の切片は、Mg‐Znピンの分解によるガスポケットを示した。しかしながら、埋込みの14週間後に、TiピンおよびMg‐Zn合金ピンを備えた大腿骨は両方とも、骨再形成および膜内骨形成を示した。さらに、Mg‐Znピンを含む大腿骨のガスポケットは線維組織で満たされた。いずれにしても、TiまたはMg‐Zn群のどちらも、埋込みの14週間後に骨修復は完了しなかった。
生分解性Mg合金は、生分解性ポリマーおよび恒久的な生体不活性金属装置と比較して、骨折の修復と骨固定において同等またはさらに改善された利点を提供する潜在的可能性について、かなりの注目を集めてきた。Mgは、ヒトの自然骨に合った機械的特性によって特徴付けられる。したがって、酸性の副産物をもたらす傾向があり、さらに容認できる骨足場システムとして機能するために望ましい骨形成能が欠如している生分解性ポリマーと比較して、合金は、自然骨とさらによく一致する機械的特性を示しながら、生体適合性がさらに高い分解生成物により時宜にかなった望ましい腐食速度を示すように設計される。生分解性Mg合金の急速な腐食は、水素ガスの発生および未熟な機械的破損を引き起こす可能性があり、機械的強度を維持しながら腐食速度を制御するために、改善された合金設計および他の表面工学戦略が必要になることは当然である。したがって、Mg合金のインビボでの分解および毒性試験は、埋込型装置の候補生体材料としてずっと望ましいバイオセイフティおよび有効性を実証する可能性がある。整形外科用装置は、しばしば耐荷重状態で使用され、よく知られた応力腐食メカニズムを介して応力が加えられたとき、金属はしばしばより急速に腐食する傾向がある。これは一般的なフィクスチャであり、かつ、応力に誘発される腐食、摩耗、および破片形成も見せる永久的な金属装置で、往々にしてこれまで多く観察された問題の様相である。
Mg‐Zn合金は、対照としてのTi合金と比較して、ラット大腿骨骨折モデルを使用して、耐荷重条件下で大腿骨ピンとして検査された。Mg‐Zn合金ピンの加速的な分解は、応力腐食のため発生した。したがって、初期に水素ガスポケットが観察されており、一部のピンは埋込み2週間の早期段階でそれらの機械的安定性を失う傾向がある。しかし、骨組織学的分析の後、正常な骨治癒が示された。Mg‐Zn合金インプラント装置の周辺の局所組織にも、線維性被膜の形成または有害な免疫反応は観察されなかった。さらに、Mg‐Znインプラントの分解は血液パネル検査を用いて評価した血液学的または生化学的マーカーに有意な変化を生じなかった。特定の合金元素についての組織の元素分析の後、肝臓および腎臓のマグネシウム濃度もまたこれらの器官にMgの蓄積が無いことを実証した。肝臓および腎臓の組織学的検査もまた、Mg‐Zn合金インプラントによる器官の損傷が無いことを示した。全体的に、結果は、Mg‐Zn合金が耐荷重条件下で有利な生体適合性を実証することを示唆している。
Mg‐Zn‐Zr合金は最初、整形外科用途向けの生分解性金属として使用する潜在的可能性を調べるために研究された。アズキャストおよび溶体化処理されたMg‐Zn‐Zrは両方とも、電気抵抗炉で溶融し、軟鋼鋳型で鋳造し、箱型炉で熱処理の後処理を行うことによって合成された。アズキャストおよび溶体化処理したMg‐Zn‐ZrのX線回折パターンは、金属間化合物の明確なピークの無いαMg相を示した。しかし、後方散乱電子顕微鏡法は粒界に沿ったMg/Zn金属間析出物を明らかにした。Mg‐Zn‐Zrの溶体化処理は、これらの析出物の相変態を引き起こしてMg‐Zn析出物とαMg材料との間のガルバニック腐食を低減させるために行われた。Mg‐Zn析出物は、合金の名目組成により近いMg‐Zn‐Zr相混合物に無事に変態した。しかし、動電位分極測定では、腐食電位または電流密度の有意な改善は見られなかった。
[新規なMg‐Y‐Ca‐Zr基合金の合成と、材料特性化の実施と合金元素の添加および後処理処置後の微細構造の変化の評価]
Mg合金の加速的腐食は、インプラント周囲の水素ガスポケットの蓄積のためだけでなく、分解中および組織の治癒過程中の不充分な機械的性能およびインプラント安定性のためもあり、生体材料としてのその採用が制限されてきた。純Mgの耐食性を向上し、機械的特性を高めるために、この目的のための理論的根拠として概説したように、適切な合金元素Y、Ca、Zr、およびZnの添加が導入された。
[Mg‐Y‐Ca‐Zr基合金の冶金処理]
Mg(US Magnesium Inc.,Salt Lake City,UT、99.97%)、Ca(Alfa‐Aesar,Ward Hill,MA、99.5%)、およびZn(Alfa‐Aesar、99.99%)の元素インゴットを名目組成に従って計量し、電気抵抗炉(Wenesco Inc.,Chicago,IL)を用いて軟鋼るつぼ内で溶融し、純元素の酸化を回避するために超高純度(UHP)Arをパージし真空を引いた誘導炉(MTI Corporation,Richmond,CA)を用いて、黒鉛るつぼ内で溶融して調製した純MgおよびY(Alfa‐Aesar、99.99%)から溶融させたMg‐30Y重量%母合金を添加した。母合金および純元素は徹底的に洗浄して残留物および酸化物スケールを除去し、Ar+0.5%SF6カバーガスの保護下でWenesco電気抵抗炉を用いて軟鋼るつぼ内で溶融した。溶融注湯温度は750℃であり、この温度に達した後、Zirmax(Mg‐33.3%Zr)母合金(Magnesium Elektron Ltd.,Manchester,UK)を使用して、同量のジルコニウムを加えた。Mg‐Zr母合金を加えた後、溶融物を1分および5分の間隔で10秒間攪拌して、ジルコニウム粒子を溶融物中に均等に溶解かつ分散させた。溶融物をさらに30分間維持し、500℃に予熱した直径44.5mm×長さ82.5mmの円筒状軟鋼鋳型に注湯した。Zr粒子をZirmax母合金から放出させるための保持および攪拌時間は、溶融物中のZrのより高い固溶度および最適な粒子微細化を達成するために不可欠であった。アズキャストサンプルを溶体化処理したサンプルと比較するために、525℃で6時間の(T4)の熱処理が、連続UHPアルゴン流下で被覆された管状炉の内部で合金インゴットに対し実施され、室温の水中で急冷された。
相形成を決定するために、Si検出器(X’celerator)を有しており、CuKα(λ=1.54056Å)放射線を使用するPhilips X’Pert PRO 回折計を用いて、X線回折(XRD)を行った。X線発生装置は10〜80°の2θの範囲で45kVおよび40mAで動作した。ピーク同定はX’Pert High Score Plusソフトウェアを使用して行われた。
Mg合金のサンプルはエポキシにマウントし、アルミナスラリーと共に1200グリットのSiC研磨紙により0.05μmまで機械的に研磨し(Tegramin‐20,Struers,Ballerup,Denmark)、5mLの酢酸、6gのピクリン酸、10mLの水、および100mLのエタノールの溶液中で化学的にエッチングした。微細構造は光学顕微鏡(Axiovert 40 MAT,Carl Zeiss,Jena,Germany)および走査型電子顕微鏡(SEM,JEOL JSM‐6610,JEOL Ltd.,Tokyo,Japan)を使用して観察し、エネルギ分散X線(EDX、EDAX Genesis,Mahwah,NJ)で元素分析を行った。ASTM E112に準拠して、各計算に最大70グレインまでを考慮してエイブラムズ三円法に従って平均粒度を測定した。
[アズキャストおよび溶体化処理されたMg‐Y‐0.6Ca‐0.4Zr基合金の材料特性]
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP‐OES)による測定(表5.3)は、合金元素が、おそらく再溶融プロセスのため、それらの計量された名目組成から幾らか減少することを示した。Zrの減少は、主として液状溶融物中の大きいジルコニウム粒子およびクラスタが沈降するためであり、溶融時により多くのZrを加え、含有量を予備研究における0.4重量%(WX11およびWX41合金)から1.0重量%(KX11、WK11、WK41、およびWZ42合金)に増やすことによって対抗した。実質的なガルバニック腐食を回避するために必要に応じて、低い不純物レベルが観察された。
修正されたMg‐Y‐Ca‐Zr合金系は1.0重量%のZrを含有した。Yを含まない合金(Mg‐1Zr‐0.6Ca)およびZnを含む合金(Mg‐4Y‐2Zn‐1Zr‐0.6Ca)をも合成し、Mg‐Y‐Zr‐Ca合金に対して材料特性およびインビトロ特性を比較した。これらの合金は10の押出比(初期断面積÷最終断面積)で表5.2に示す温度で押し出され、さらなる分析を受けた。
合金元素はマグネシウム合金の微細構造および機械的特性に強い影響を及ぼす。Yの含有量が高ければ粒子が粗くなると報告されており、それはWX11とWX41合金を比較したときに、図5.2にわずかに観察された。表5.3に示す通り、測定されたZrの含有量もまたWX41合金で低減したが、それは、WX11と比較してより高い粒度に寄与した可能性もある。〜75%のY重量%を持つYリッチ金属間粒子は、Mg‐Y二元合金で観察されたように、Mg‐Y‐Zr‐Ca合金で観察されたが、T4溶体化処理の実現は粒界からの第二相析出物の溶解および粒子の粗大化を引き起こした。
[マグネシウム‐イットリウム‐カルシウム‐ジルコニウムの腐食挙動と機械的特性に対するイットリウムおよび亜鉛の添加と後処理の効果の特徴決定]
本研究のMg‐Y‐Ca‐Zr基合金を深く理解するために不可欠なことは、腐食挙動の機能特性および機械的特性による微細構造と組成との間の関係を引き出すことであった。整形外科用生体材料の場合、装置の有効性を決定する上で両方の特性が不可欠である。
[Mg‐Y‐Ca‐Zr基合金の腐食試験]
動電位分極技術を使用して、WX11およびWX41アズキャストおよびT4処理合金の腐食を試験した。サンプルは銀エポキシを用いて銅線に接続し、エポキシ樹脂内に包埋した。寸法が10mm×10mm×1mmのマウントしたサンプルを機械的に研磨し、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、空気乾燥した。動電位腐食調査は、電気化学ワークステーション(CH‐604A,CH Instruments,Inc.,Austin、TX)を用いて、1mV/秒の走査速度および開路電位より500mV上または下の電位窓で実施した。三電極セルを使用し、プラチナを対電極、Ag/AgClを基準電極、サンプルを作用電極とした。試験は、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンが添加されたダルベッコ変法イーグル培地(4.5g/lグルコース、L‐グルタミン、およびピルビン酸ナトリウムを含むDMEM、Cellgro,Manassas,VA)中で、pH7.2±0.2で、37.4℃に維持された温度で実施された。各測定の前に、安定性をもたらすためにサンプルを腐食培地に浸漬した。生成されたターフェルプロットのカソードおよびアノード部分を線形的に当てはめて、腐食電位Ecorrおよび腐食電流密度icorrの算出を可能にした。
C=(K×W)/(A×T×D)
式中、Cは腐食速度(mm年−1、mmpy)であり、定数Kは8.76x104であり、Wは質量損失(g)であり、Aは溶液に曝露されたサンプル面積(cm2)であり、Tは曝露時間(時間)であり、Dは材料の密度(g・cm−3)である。
微細構造のために研磨しエッチングしたサンプルに100gの荷重を10秒間加え、光学顕微鏡法を使用して、四角錐ダイヤモンド圧子により形成された圧痕を測定することによって、ビッカース微小硬度を測定した。ビッカースピラミッドナンバー(HV)をF/Aによって決定した。ここでFはダイヤモンド圧子に加えられる力(重量キログラム単位)であり、Aは結果的に生じた圧痕の表面積(平方ミリメートル単位)である。Aは次式によって決定された。
A=d2/{2sin(136°/2)}
ここで、dは、圧子によって残された対角線の平均長さ(ミリメートル単位)である。そうするとHVナンバーは次式によって算出される。
HV=F/A={2sin(136°/2)F}/d2
ここでFはkgf単位である。
機械的検査のために、サンプルは、引張試験のためのASTM‐E8‐04および圧縮試験のためのASTM‐E9‐09に準拠する寸法のMg合金インゴットおよび押出ロッドの長軸に沿って機械加工した。3×3mmのゲージ面積および12mmの長さを持つ引張棒サンプルを引張サンプル用に機械加工した。直径10mm×長さ20mmの圧縮筒状サンプルを機械加工した。アズキャストおよびT4溶体化処理合金WX11およびWX41の圧縮および引張試験は、OrthoKinetic Testing Technologies,LLC(Southport,NC)によって、室温で、レーザ伸縮計付きのMTS11−50kN電子機械荷重フレーム(MTS,Eden Prairie,MN)を使用して実施された。静的アキシャルクリップオン伸縮計付きInstron 5566機械的検査システム(Instron,Norwood,MA)を使用して、押出合金KX11、WK11、WK41、およびWZ42に対する引張試験が実施された。引張試験は室温で、1.3mm/分のクロスヘッド速度で行われたが、圧縮試験は2mm/分の速度で行われた。応力‐歪み曲線から工学的降伏強度、極限強度、ヤング率(E)、伸び率を得た。合金の極限強度は応力‐歪み曲線から最大引張応力として決定された。降伏強度は引張試験中の降伏点における応力として決定された。
統計分析はSPSS Statistics 17.0(SPSS Inc.,Chicago,IL)を使用して行われた。群のサイズが均一であればTukeyのテスト、群のサイズが不均一であればガブリエルのペアワイズテストを用いて、post‐hocテストによる一元配置ANOVAを使用して、群間の差を分析した。P<0.05は平均間の統計的有意差として受け入れられたものであり、図に示されている。図内の誤差バーは標準偏差を表す。
[YおよびZnを添加した結果としてのMg‐Y‐Ca‐Zr基合金の腐食挙動]
アズキャスト純MgおよびアズドローンAZ31と比較したアズキャストおよびT4Mg‐Y‐Ca‐Zr合金(WX11およびWX41)の腐食速度は、浸漬後の質量損失のみならず、動電位分極測定にも基づいて算出したものであり、腐食電位および浸漬溶液に放出されたMgイオンの濃度と共に図6.1に示されている。WX41合金の腐食電位(図6.1b)は、WX11合金ならびに対照材料の純MgおよびAZ31それぞれより高かった。アズキャストWX11およびWX41合金に対して525℃で行われたT4溶体化処理合金もまた、それらに対応するアズキャスト合金と比較して、より高い腐食電位および破壊電圧を示した。WX41合金の動電位腐食速度はWX11合金より低く、かつ市販のAZ31のそれと同様であった。溶体化処理はWX11合金の動電位腐食速度を増大させたが、WX41には影響しなかった。
図6.8に示す微小硬度結果は、合金元素の添加による純Mgを超える顕著な増加値を実証した。さらに、Y含有合金にZnを添加することにより、微小硬度の顕著な増加が観察された。30と比較して10の押出比で押し出されたWZ42合金の微小硬度には、変化が観察されなかった。
アズキャストおよび熱処理合金の圧縮および引張機械特性を図6.9に示す。アズキャストWX11およびWX41合金の極限圧縮歪み(図6.9a)は、アズキャスト純MgおよびアズドローンAZ31のそれより著しく大きかった。アズキャスト実験合金の極限圧縮強度(図6.9a)もまたアズキャスト純Mgより大きかったが、引抜きプロセスによってもたらされる著しい加工硬化および粒子微細化のため、AZ31は試験した他の全ての材料より著しく大きい極限圧縮強度を示した。アズキャスト合金に525℃で加えられたT4溶体化処理は、圧縮強度および歪みの著しい低下をもたらしたが、Yの含有量の増加による圧縮降伏強度(図6.9b)の増加が観察された。アズキャストWX41は、アズキャストWX11よりかなり高い極限引張強度(図6.9c)を実証した。圧縮試験結果と同様に、525℃でアズキャストMg‐Y‐Ca‐Zr合金に加えられるT4溶体化の適用は、アズキャスト合金と比較して極限引張強度および引張降伏強度の低下をもたらしたが、熱処理後に引張応力に対する有意な効果は観察されなかった。AZ31は他の試験材料よりずっと高い引張強度および歪みを示した。Mg‐Y‐Ca‐Zr合金の引張特性は、大幅に改善されるか、あるいは純Mgのそれに匹敵するようになることが観察された。試験した合金のヤング率(図6.9d)の値は、AZ31(42GPa)の測定値と同様に、34〜60GPaの間で変化し、群内で高い分散が観察された。
この明確な目的において、三つの主要な変更、すなわち1)合金組成(Yの量およびZnの添加を増やす)、2)押出対非押出、および3)アズキャスト対T4溶体化処理について、腐食挙動および機械的特性に対するそれらの効果を調査した。
[前骨芽細胞およびヒト間葉系幹細胞の細胞生存率および増殖に対するイットリウムおよび亜鉛の添加、後処理、および合金元素塩の効果を評価し、さらに骨芽細胞分化マーカーの発現およびマウス皮下組織における生体適合性を評価する。]
[序論]
Mg合金の分解は金属カチオン、酸化物、水酸化物、リン酸塩、および炭酸塩を生じさせる一方、局所pHの変化および水素ガスの発生も引き起こし、動物に埋め込まれるとガスポケットの形成をまねく。閾値濃度未満では、これらの分解生成物は人体に許容可能とみなされ、患者の生命の損失につながる壊滅的な結果をもたらすことはない。局所細胞および組織に対する分解生成物の影響、およびそれらが身体により除去される能力は、水溶液中のそれらの固溶度に大きく依存する。Mg合金分解の最も一般的で、これまで最も安定な副産物は、8.9×10−12の適度な固溶度(Ksp)を有するMg(OH)2であり、水酸化物が塩に変換することによって形成される次の生成物は、対照的に極めて高い水溶性のMgCl2である。Mg合金の潜在的毒性を完全に理解するために、他の合金元素およびそれらの塩の毒性についても考慮しなければならない。重要なことは、Mg合金の分解生成物の毒性およびそれに対する細胞反応を理解することだけでなく、インプラントの表面と局所細胞との間の直接的な相互作用を考慮し、細胞がMgインプラント表面に付着して増殖することを確実にすることも、極めて重要である。
[細胞培養および維持]
MC3T3前骨芽細胞株およびヒト間葉系幹細胞(hMSC)を使用して、研究対象の合金の細胞適合性を試験した。これら二つの細胞株を使用して、骨芽細胞前駆細胞であるhMSC、およびさらに分化した間葉系細胞である前骨芽細胞の両方に対する合金の効果を、完全な骨芽細胞の成熟前に試験した。それらの培養条件を以下に記載する。
マウス前骨芽細胞株(MC3T3‐E1,American Type Culture Collection,Rockville,MD)は、変法イーグル培地アルファ(αMEM,Life Technologies,Carlsbad,CA)、10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンから成る成長培地で37℃で、5%CO2を含む相対湿度95%の環境で培養した。全ての実験で四代継代後の細胞を50,000細胞・mL−1の播種密度で使用した。骨形成分化の研究では、100nMのデキサメタゾン、50μmのアスコルビン酸、および10mMのβ‐グリセロリン酸エステルを添加した、分化誘導培地としても知られるMC3T3‐E1成長培地を使用した。
正常なヒト骨髄(Lonza,Allendale,NJ)から得たhMSCは、20%FBS、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを加えたαMEMの成長培地で37℃で、5%のCO2を含む相対湿度95%の環境で培養した。三代継代後の細胞を使用した。骨形成分化の研究では、成長培地には、分化誘導培地として100nMのデキサメタゾン、50μmのアスコルビン酸、および10mMのβ‐グリセロリン酸エステルを添加した。
MC3T3‐E1細胞は直接、Mg合金上で、すなわちアズキャストおよび押出純マグネシウム、ならびに押出AZ31上で培養した。厚さ1mmのサンプルを1200グリットまで研磨し、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、空気乾燥し、1時間UV滅菌した。合金サンプルは細胞培養培地中で10分間インキュベートし、その後、細胞を4×104細胞/mLの密度でサンプル上に播種した。LIVE/DEAD生死判別/細胞毒性試験キット(Invitrogen Corporation,Karlsruhe,Germany)を使用し、製造者のプロトコルに従って、1日目および3日目の細胞生存率を評価した。このキットは、生細胞と死細胞を二つの異なる波長の蛍光顕微鏡で区別することによって、細胞生存率を決定する。簡単に述べると、MC3T3‐E1細胞を付着させたMg‐Y‐Ca‐ZrサンプルをPBSで洗浄し、PBS中に2μmol/Lのエチジウムホモダイマ−1および4μmol/LのカルセインAMにより室温で30分染色した。LIVE/DEAD溶液中で室温で30分間インキュベートした後、蛍光顕微鏡を使用して生細胞および死細胞の画像を取得した。
合金上に播種し72時間培養したMC3T3細胞を4%のパラホルムアルデヒドで固定し、0.1%のTween20溶液で透過処理した。Fアクチン染色はテトラメチルローダミンイソチオシアネート結合ファロイジンを用いて実施し核染色はDAPIを用いて実施した。蛍光画像は蛍光顕微鏡で可視化した。蛍光撮像後に、サンプルは、勾配エタノール/PBS混合液(30%、50%、70%、90%、95%、100%)で各々約10分間脱水し、乾燥した。細胞を付着させたサンプル表面を次いでSEMにより観察し、EDXを使用して表面の元素組成を測定した。
Mg合金サンプル、すなわちアズキャストおよび押出純マグネシウム、ならびに押出AZ31は、1200グリットまで研磨し、イソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、空気乾燥し、紫外線放射により1時間滅菌した。試料は、MC3T3成長培地、hMSC成長培地または分化培地中で37℃で、5%のCO2を含む加湿雰囲気で72時間インキュベートした。アズキャストおよびT4処理されたWX11およびWX41の場合、サンプル重量対抽出培地の比率は、EN ISO標準10933:12に従って0.2g/mLであったが、押出KX11、WK11、WK41、およびWZ42を含む研究の場合、使用した比率は、さらなる希釈をもたらすために、〜0.8cm2/mlの培地とした。この開始抽出比は100%抽出物と指定され、より広範囲の濃度を調べるために、100%抽出物を50%、25%、および10%、または25%、10%、1%、および0.1%の濃度に希釈することによって、より低濃度の抽出物が調製された。抽出物は、以下のMTT、CyQUANT、アルカリホスファターゼアッセイで細胞に添加する前に、0.2μmシリンジフィルタを通して滅菌濾過した。
MC3T3細胞を、96ウェル細胞培養プレートの各ウェルの6×103細胞/200μlの培地に播種し、24時間インキュベートした。抽出物を含まない培養培地は陰性対照として働き、10%DMSO培養培地は陽性対照として働く。24時間のインキュベーション後に、培地を様々な濃度の200μlの抽出培地と交換し、1日および3日間インキュベートした。腐食抽出物の細胞毒性は、MTTアッセイを使用して試験した。培地および抽出物は、抽出物中のマグネシウムがテトラゾリウム塩と干渉するのを防止するために、新鮮な細胞培養培地と交換した。MTTアッセイは、VybrantMTT細胞増殖キット(Invitrogen Corp.)に従って、最初に、リン酸緩衝液(PBS)中に溶解した10μlの12mM3‐(4,5‐ジメチルチアゾール‐2‐yl)‐2,5‐ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)を各ウェルに加えることによって実施した。サンプルをMTTにより4時間インキュベートし、その後、100μlのホルマザン可溶化SDS‐HCl溶液を各ウェルに加え、最長12時間インキュベートした。サンプルの吸光度を、Synergy2マルチモードマイクロプレートリーダー(BioTek Instruments,Winooski,VT)を使用して570nmの波長で測定した。平均陽性対照を減算したサンプルの吸光度を、平均陰性対照から減算した平均陽性対照の吸光度で割って、対照と比較した細胞のパーセント生存率を決定した。新鮮な培地で培養された細胞は100%細胞生存率を構成した。
MC3T3およびhMSC細胞を、96ウェル細胞培養プレートで各ウェルにて6×103細胞/200μl培地に播種し、24時間インキュベートした。抽出物を含まない培養培地は陰性対照として働き、10%DMSO培養培地は陽性対照として働いた。24時間のインキュベーション後に、培地を様々な濃度の200μlの抽出培地に交換し、1日、3日および5日間インキュベートした。腐食抽出物からの細胞増殖に対する影響をCyQUANTアッセイを用いて試験した。CyQUANT色素結合溶液は、高度に規制されかつ細胞数に密接に比例する細胞DNAに結合する。培地を除去し、細胞をダルベッコリン酸緩衝整理食塩水(DPBS)ですすいだ。DPBSを除去した後、50μLのCyQUANT染料結合溶液を各ウェルに加え、次いでカバーをかけ、37℃で30分間インキュベートし、485nmで励起し、530nmで発光検出するマイクロプレートリーダーを使用して、各サンプルウェルの蛍光強度を測定した。サンプルの蛍光強度を平均陰性対照(新鮮な培地で培養した細胞)の強度で割って、対照と比較した細胞のパーセント生存率を決定した。新鮮な培地で培養された細胞は、100%正常な増殖を構成する。測定後に、〜494nmの励起波長を持ち〜517nmで発光する蛍光顕微鏡を使用して、細胞の撮像も行った。
アルカリホスファターゼは、有機リン酸塩基質を加水分解して石灰化促進剤である遊離無機リン酸塩を放出し、鉱物形成の阻害剤である細胞外ピロリン酸の濃度を低減することによって、石灰化プロセスに重要な役割を果たす。ALP活性を、リン酸pニトロフェノール(pNPP)技術を使用して定量化した。成長培地で収集した異なる抽出物培地でhMSCを3日間、7日間、および14日間培養した後、細胞をDPBSですすぎ、細胞溶解物を使用して20分間溶解させた(Sigma―Aldrich)。ALP活性は、製造者のプロトコルに従ってpNppを基質として使用して測定した。基質溶液を細胞溶解上澄みと共に37℃で1時間、光に曝さずにインキュベートし、その後、0.5MのNaOHを加えることによって反応を停止させた。生成されたpNppをマイクロプレートリーダーを使用して410nmで測定し、Quant‐iT DNAアッセイ(Thermo Fisher)を使用して測定された総DNA含有量に対して正規化した。ALP活性を成長培地および分化培地で培養したhMSCと比較した。
骨形成培地での培養後、NucleoSpin RNA IIキット(Macherey Nagel,Bethlehem,Pa)を使用して、製造者のプロトコルに従って、RNA抽出を実施した。マイクロプレートリーダーを使用して260nmおよび280nmで吸光度を測定することによって、RNAの濃度および純度を決定した。次いで、ImProm II Promega逆転写キット(Promega,Madison,WI)を使用して、製造者のプロトコルに従って逆転写を実行した。qRT−PCR実験(表6.2)では、ヒトグリセルアルデヒド3‐リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ラント関連転写因子2(RUNX2)、アルカリホスファターゼ(ALP)、およびオステオカルシン(OCN)のプライマーを使用した。RUNX2は、間葉系細胞を未成熟骨芽細胞に誘導するために必要な最初の転写因子であり、そこでその発現は増加する。ALPは、骨芽細胞分化のマトリクス成熟段階で最大限に発現する重要な酵素であり、鉱物沈着部位に高濃度のリン酸塩を提供する。OCNは、骨芽細胞によって合成される骨特異的タンパク質であり、骨形成の成熟を示し、骨の石灰化およびカルシウムイオンの恒常性を暗示する。
マウス皮下試験のための全ての実験手順は、シンシナティ大学の動物実験委員会(IACUC)によって承認された。健康なヌードマウスを管理された条件下で飼育し、標準的なペレット飼料および水で維持した。イソフルランを使用し、ノーズコーンを通してマウスに麻酔をかけた。皮膚切開を行って、マウスの背中に皮下ポケットを形成した。寸法が直径5mm×厚さ1.4mmの純Mg、AZ31、ならびにWX11およびWX41アズキャスト合金をポケット内に挿入し、外科用ステープルによって切開を閉じた。7日、40日、および70日後に、マウスをCO2チャンバで屠殺し、続いて頸椎脱臼を行った。Mg/Mg合金インプラントを周囲の組織と共に回収し、組織から慎重に分離し、洗浄し、空気乾燥し、最終質量を測定して、腐食による質量の変化を決定し、0章に示した質量損失方程式に従って腐食速度を算出した。インプラントの周囲の組織はPBS中10%ホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、ヘマトキシリン‐エオシン(H&E)染色のために切片化した(4μm/切片)。70日間の外植サンプルも、腐食生成物を除去する前後にSEMを使用して撮像し、EDXを使用して分析した。
[Mg‐Y‐Ca‐Zr基合金の表面の細胞生存率および付着性]
図7.1は、直接WX11およびWX41合金上で1日および3日間培養し、次いでカルセインAM(生細胞で緑色の蛍光)およびエチジウムホモダイマ‐1(死細胞で赤色蛍光)で染色した前骨芽細胞のMC3T3‐E1細胞を示す。1日および3日間の培養後、WX11およびWX41のアズキャストおよびT4熱処理合金(図7.1a〜d、h〜k)は両方とも、純Mg(図7.1eおよびl)およびAZ31(図7.1fおよびm)と比較して、同等の生細胞密度を示した。生細胞に比べて比較的少数のアポトーシス細胞が各材料で観察され、一般的に良好な細胞生存率を示した。組織培養プラスチックは、Mg系材料と比較してより高い細胞生存率を示した。異なる群の間で細胞形態に有意な差は観察されなかった。1日の場合と比較して、3日間の培養後も、Mg‐Y‐Ca‐Zr合金の間の細胞密度は依然として高く、細胞が腐食環境に長時間直接曝露されることによって大きく影響されないことを示した。
図7は、MC3T3‐E1細胞およびMTTアッセイを使用して実施したWX11サンプルの間接細胞毒性結果を示す。両方の培養期間で、細胞生存率は予想通り100%の抽出物濃度で最も大きく低下し、抽出物の割合が減少するにつれて上昇した。抽出物による1日の培養後(図7.a)、細胞生存率の低下は観察されず、25%および10%の抽出物濃度では細胞毒性は観察されなかった。3日間の培養後(図7.b)、25%および10%の抽出物濃度で、細胞生存率は70%超まで低下した。これは、高濃度の抽出物が細胞毒性であり、浸透圧衝撃を引き起こすことを示す知見と一致しており、10倍の抽出物希釈がアズキャストマグネシウム材料の許容可能な細胞適合性応答のための指標として使用されることを示唆している。WX11アズキャストもまた、抽出物培地で1日および3日後にWX11T4、WX41アズキャスト、WX41T4、および純Mgと比較して、50%の抽出物濃度でかなり高い細胞生存率を示した。しかし、抽出物で1日培養した後、WX11およびWX41のアズキャストおよびT4処理合金は、25%の抽出物濃度で純Mgと比較して、かなり高い細胞生存率を示したが、それらの間の違いは3日間の培養後には観察することができなかった。
MC3T3細胞の増殖はCyQUANTアッセイを用いて評価された。それはピコグリーン蛍光色素を利用してdsDNAに結合し、増殖の相対的なレベルを示す。押出合金抽出物によりMC3T3細胞を3日間培養した後(図7.7)、増殖は再び100%の抽出物濃度で最も大きく減少し、抽出物の割合が低下するにつれて増加した。100%の抽出物濃度では、WZ42は他の群と比較してかなり高い増殖をもたらした。全ての合金が他の全ての濃度で同様の増殖を示した。しかし、市販の押出AZ31から収集した抽出物は、1%および0.1%に希釈された場合、他の群と比較して低い増殖をもたらした。一方、10:1の比率で押し出された内製のAZ31は、市販のAZ31よりはるかに高い増殖を示し、他のMg合金とは同様の増殖であった。DNA結合染料を組み込んだ細胞を示す蛍光画像は図7.8に示されており、合金抽出物に曝露された細胞の安定した増殖を確認し、抽出物濃度が低下するにつれて、細胞密度は一般的に高くなる。
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、成長培地で収集されたMg合金の分解生成物に曝され、それらのALP活性は、抽出物での3日、7日、および14日間の培養後に、新鮮な成長培地および分化培地で培養した細胞と適切に比較された(図7.11)。全体的に、抽出物の濃度が低ければ、ALP活性が高くなることが観察され、hMSCの最も高いALP活性は、10%の抽出物培地に曝されたときに発生した。10%および25%などの低い濃度のMg合金抽出物に曝された細胞のALP活性は、3日後に通常の成長培地で培養された細胞のそれと同様であったが、全ての群は予想通り、分化培地で培養された細胞より低いALP活性を示した。3日後に、合金抽出物間でALP活性の差は観察されなかった。Mg合金WZ42では、7日目に市販のAZ31および純Mgと比較して、50%、25%、および10%の抽出物濃度でより高いALP活性が観察された。14日間の培養後に、合金抽出物群と成長培地対照との間にALP活性の有意差は観察されなかった。
Mg(50mM、20mM、10mM、および1mMの濃度)ならびにY、Ca、Zr、Zn、およびAl(1mM、0.1mM、0.01mM、および0.001mMの濃度)の成長培地中で塩化物塩と共に培養されたhMSCは、1日、3日、および5日間の培養後にCyQUANTアッセイを用いて増殖について評価され、通常の成長培地に対して正規化された。1日の培養後(図7.13a)、Ca、Y、Zr、およびAlの存在下での増殖は一般的に、全ての濃度で金属塩の存在によって影響されなかった。MgおよびZnの場合、試験した高い濃度では(Mgは50mM、Znは1mM)どちらも、hMSCの増殖の低下を示したが、これはさらに希釈することで回復した。培養の3日目に(図7.13b)、再び高濃度のMgおよびZnは細胞数を減らしたが、高い濃度のY、Zr、およびAlでは細胞数の増加が観察された。これらの傾向は5日間の培養後も維持された。染色した細胞は撮像され、図7.14に示されており、定量化された細胞数の変化が図7.13で確認される。
Mg合金に存在する元素の金属塩に曝されたhMSCのALP活性は、14日間の培養後に、新鮮な成長培地および分化培地で培養された細胞に匹敵した(図7.15)。成長培地と比較して、塩すなわち20mMおよび10mMのMg、0.01mMのCa、および1mMのZnが溶解している希釈液では、細胞のALP活性は成長培地より高く、分化培地で培養されたhMSCの場合と同程度となった。高濃度のAl(1mMおよび0.1mM)はALPの細胞発現を低減した。
ヌードマウスの皮下組織におけるMg‐Y‐Ca‐Zrアズキャスト合金、純Mg、およびAZ31の埋込の局所部位のH&E染色を図7.16a〜lに示す。周囲組織に対する埋め込まれた合金の最小限の毒性が観察されたが、インプラントの周囲の領域は、正常な組織修復を受けているように見えた。炎症細胞の有意な蓄積は観察されなかったが、ピンク色に染色されたコラーゲン線維および反応性線維芽細胞から構成される一層の組織が7日後に見られた。この時点で、アズキャストWX11およびWX41合金ペレットに隣接する組織における比較的高密度の線維芽細胞は、それらの存在が埋込部位の正常な治癒反応を阻害しなかったことを示唆している。埋込の40日後および70日後に、高密度の慢性炎症細胞が存在することなく、密なコラーゲン性結合組織がMgインプラントの位置の周囲に見られた。正常な脂肪細胞が真皮を過ぎてかすかに認められた。
本研究で使用した合金元素は全て、文献に基づいて、かつ毎日の許容量および毒性を示した表6.1にも示されるように、生体適合性があることが示された。Yは長寿研究で非毒性であり、非肝毒性であることが示されており、吸収性金属ステントおよび外反母趾手術におけるシェブロン骨切り術用の固定ネジとして臨床的に充分耐えられる合金に組み込まれてきた。Yはまた、有機マトリクス形成につながるイベントを介して、骨の骨芽細胞活性領域に対する高い親和性をも有し、それぞれ1×10−9〜1×10−4Mおよび1×10−7Mの濃度で骨芽細胞の増殖および分化を促進する可能性があり、それは変性ビトロネクチンおよびコラーゲンの立体構造および生物活性に関係がある可能性がある。Caはよく知られており、骨の不可欠な成分であるが、骨に取り込むためにはMgが必要である。Zrイオンは細胞毒性が低く、ジルコニウムコーティングはインビボで金属インプラントの骨結合を改善することを実証してきた。上述したMg‐Y‐Ca‐Zr合金によるインビトロ細胞適合性、増殖、および分化に対する影響は、1)マウス前骨芽細胞およびヒト間葉系幹細胞を材料の分解生成物を含む培地に曝し、2)細胞を合金に直接播種し、かつ生死判別アッセイを介して生死細胞密度を観察し、3)様々な濃度の合金元素塩を含む培地を細胞に加えることによって決定された。
[ラット大腿骨骨切りモデルでマグネシウム‐イットリウム‐亜鉛‐カルシウム‐ジルコニウム合金のインビボ腐食、骨形成、および宿主反応を評価]
[序論]
マグネシウム基合金は、この千年紀になってそれが生物医学研究に再導入されて以来ずっと、整形外科用途向けの医療製品の分野で最も注目を集めてきた。小動物(例えばマウス、ラット、モルモット、およびウサギ)、大型動物(例えばヒツジおよびヤギ)、およびヒトによる多くの研究は全体的に、マグネシウム合金が骨内または骨の周囲に埋め込まれた場合にその良好な生体適合性を示してきた。これは、Mgの高い強度対重量比およびその分解能と相まって、永久金属ハードウェアに対して行われるような二次的除去手術の必要性を低減し、MgおよびMg合金を、現在の最新技術の不活性金属および生分解性ポリマーの整形外科用装置の大勢的優位性に挑戦する最前線に立つ魅力的な選択肢にする。実証されてきたマグネシウムの他の重要な特性は、Mg合金に隣接してまたはその近辺で増強される骨形成、Ca‐P鉱物の高度な堆積、およびMgの分解生成物層と新しい骨との間の直接接触を含む。
[Mg‐Y‐Zn‐Ca‐Zrインプラントの調製]
Mg‐4.0%Y‐2.0%Zn‐1.0%Zr‐0.6%Ca(重量%)の名目組成で、WZ42合金を溶融し、鋳造した。鋳造後に、400℃の溶体化処理を20時間適用し、インゴットを、合金の延性を高めかつ二次相を均質化するために、室温水で急冷した。450℃に加熱しながら30の押出比で押し出すことができるように、インゴットの直径が37.8mmになるまで旋盤を使用して機械加工した。直径〜6.9mmの押出WZ42ロッドおよび直径5mmのTi6Al4Vロッドの対照材料(Goodfellow Corporation,Coraopolis,PA)を、寸法が長さ15mm×直径1.66mmのピンおよび長さ20mm、直径0.68mmのワイヤになるまで旋盤を使用して機械加工した。機械加工されたピンおよびワイヤカフの略図および写真を図8.20に示す。インプラントをアセトンおよびイソプロパノールの洗浄液中で超音波洗浄し、ガンマ線(2×106cGy、23.5Gy/分、セシウム137線源、Mark I 68、JL Shepherd and Associates,San Fernando,CA)によって滅菌する前に乾燥させた。
全ての動物実験は、ピッツバーグ大学の実験動物委員会(IACUC)によって承認された。手術前に、鎮静の開始のために、体重約250〜300gの雌のSprague‐Dawleyラットに、鎮静の開始のために濃度2〜5%、および維持のために0.25〜4%のイソフルランの吸入によって麻酔をかけた。各ラットは右後肢のみで手術を受けた。外科的処置の写真を図8.21に示す。最初に、右後肢の毛を剃り、消毒し、図8.21aに示す位置で右大腿骨に約2cmの切開を施した。側方アプローチを介して右大腿の皮膚および中骨幹領域を露出させた。完全な大腿骨骨切り術はハンドヘルドドリルを使用して行われた(図8.21(b))。WZ42またはTi6Al4Vの固定ピンを最初に骨折した大腿骨の遠位端部の髄内空間に挿入し(図8.21c)、次いで大腿近位部の髄内空間に挿入し(図8.21d)、図8.21eに示すように骨折を接合した。ワイヤカフの場合、右大腿は切開せず、骨幹の中間部にワイヤを巻き付け、大腿骨の骨幹軸に沿って平行移動または移動を回避するように骨に押し付けた(図8.21g)。サンプルを埋め込んだ後、VICRYL(J315)で筋膜および筋肉を閉じ、非吸収性モノフィラメントポリアミド縫合糸を用いて皮膚を閉じた。
インプラントの位置および骨折の安定性を調べるために、手術後1週間でラットのX線撮像を実施した。
血液サンプルを、動物から手術前に麻酔下で、テールスニップによって、かつ終末的に(埋込の2、8、および14週間後)に心穿刺および吸引によって採取した。血球数を決定するために、血液はK2‐EDTAチューブに採取され、分析は、Marshfield Labs(Cleveland,OH)によって、Sysmex XT000i Automated Hematology Analyzer(Sysmex Corporation,Kobe,Japan)を用いて実施された。血清サンプルは、採取した血液を2000rpmで10分間4℃で遠心分離することによって得た。血清生化学検査は、Marshfield Labsによって、Olympus AU化学分析装置(Olympus Corporation,Tokyo,Japan)を使用して実施された。
プラスチック包埋したラット大腿骨を使用して、高解像度マイクロコンピュータ断層撮影(μCT)スキャンを行った。サンプルは、埋込前および手術後2、8、および14週間の回収直後に、連続回転μCTにより、10.5μmのボクセルサイズでスキャンした。再構築したデータセットを使用して3Dボリュームを生成し、密度に基づくグレー値のヒストグラムを使用することによって、周囲の分解生成物および骨から残留金属ロッドを区別した。金属ピンの密度閾値を使用して、残留マグネシウム合金の堆積を周囲の物質から分離し、埋込前のピンの堆積と比較して、次の式を用いてインビボ腐食速度を推算した。
C=(K×V)/(A×T)
式中、Cは腐食速度(mm・年−1、mmpy)であり、定数Kは8.76×104であり、Vは堆積損失(cm3)であり、Aは露出した初期サンプル面積(cm2)であり、Tは露出時間(時)である。
肝臓および腎臓の試料を、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、脱水し、パラフィンに湿潤させ、包埋した。次いでそれをヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色により検査して、WZ42合金の分解が重要な内蔵器官に何らかの病理学的変化をもたらすか否かを評価した。
肝臓および腎臓組織を、元素の濃度測定ができるようにICP‐OESを使用して消化させた。最初に、組織を70℃で24時間乾燥させ、次いで均質化して計量した。次にサンプルを20ml硝酸/g組織に70℃で6時間浸漬し、続いて4mlの過酸化水素/g組織を1時間、4mlの硫酸/g組織を1時間加えることによって消化させた。次いでサンプルをMilli‐Qシステム(18MΩ・cm脱イオン水、Milli‐Q Academic,Millipore,Billerica,MA)で精製した水で50倍に希釈し、0.45μmシリンジフィルタで濾過し、ICP‐OES(Thermo Fisher)によってMg濃度を分析した。
[Mg‐Y‐Zn‐Ca‐Zr合金ピンを使用する大腿骨欠損の固定]
大腿骨の中央部に完全な骨切り術の固定を提供するために、尖った端部を持つピンをWZ42合金およびTi6Al4V合金から作製し、断片化した大腿骨の二つの半部分の髄内キャビティに挿入した。加えて、WZ42およびTi6Al4Vのワイヤを自然大腿骨の中央部の周りに巻き付けて、骨に挿入した生体材料の組織反応を、骨の外表面における組織反応と比較した。ピンは手術中に全ての大腿骨内に無事に挿入され、with一部の事例では(図8.22c、赤い矢印)ピンの直径と髄内キャビティの直径との間にわずかな不一致が見られ、小さい間隙が生じるにも拘わらず、図8.22aおよびbの7日目のX線画像に見られるように、断片は接合される。ワイヤカフによっては埋込中にスナップ止めされるものもあったが、図8.22dおよびeに示すように、全てが大腿骨の周りに固定状態に維持された。
総血球数を下の表8.4に列挙するが、これは概ね血球数の乱れを示さず、パラメータは基準範囲内か、手術前のレベルに近い状態を維持した。WZ42のカフ、ならびにWZ42およびTi6Al4Vのピンでは、14週で低血小板数から基準範囲または未手術レベルとの小さい差が観察される一方、WZ42およびTi6Al4Vのピン両方で2週目に術後白血球数の上昇が見られた。
8週および14週で屠殺されたSprague‐Dawleyラットから外植された肝臓および腎臓は、病理切片に加工し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。光学顕微鏡画像(腎臓は図8.24、肝臓は図8.25)は、肝臓および腎臓の細胞組織が炎症細胞による形態学的変化または浸潤を受けなかったことを明らかにした。明らかな異常の徴候は、器官切片のいずれにおいても観察されなかった。
大腿骨‐インプラント複合体から得たマイクロCTスライスの例を図8.26に示す。
2週、8週、および14週後に大腿骨外植物を回収し、WZ42ピンおよびカフへの局所組織反応を評価し、骨折の治癒を観察した。ピンを含む大腿骨からの骨の切片はゴールドナーのトリクロームを使用して染色した。それを図8.28に示す。
この明確な目的のために、生体適合性および全身毒性、分解挙動、ならびに局所組織反応および治癒の観点から、WZ42マグネシウム合金の効果を調査した。この動物モデル、すなわち髄内ピンによって安定化した閉鎖大腿骨骨折は、骨および軟骨マトリクス成分ならびに成長因子の遺伝子の発現、サイトカインの生成、細胞増殖、ならびにアポトーシスを研究している様々なグループによって、永久金属による骨治癒および石灰化について金属を比較するために、特徴付けられてきた。これらの場合にラットの完全骨切りを固定するためにステンレス鋼およびNi‐Ti合金が使用されるにも拘わらず、腐食に有利に働く大きい動的応力の顕現を表すそのような攻撃的モデルは、マグネシウム合金では試験されたことが無かった。実際、完全耐荷重のモデルは今日まで、マグネシウムから製造された骨折固定装置に適用されたことが無かった。この攻撃的モデルでMgの安全性を確認し、Mgピンにかかる高い応力の結果としての分解挙動を分析することも意図した。
特性を向上させるために、様々な合金設計パラメータを改良した。この改良は、0〜4.0重量%の多様な量のイットリウムを追加すること、Znを追加すること、溶体化処理を適用すること、および多様な押出比での熱間押出を用いて合金を熱間加工することを含む。本明細書で提示するこの研究は医療装置用の新規の合金材料の開発を表し、これには、動物研究で試験した整形外科用インプラント向けの材料を審査することを最終的な目的として、合金材料成分を選択しし、様々な試験のために、分解可能金属に採用されたFDA、ISO、およびASTM規格に基づいて所望の性質を分析することが包含される。本明細書で記述および説明したこの一貫した工程は、他の分解可能金属に適用されて、吸収性の整形外科用装置を試験する材料の基礎として役立つことができる。
Claims (15)
- 組成物の総重量に基づいて、
約4.0重量パーセントのイットリウムと、
約0.5〜0.6重量パーセントのカルシウムと、
約0.6〜1.0重量パーセントのジルコニウムと、
約2.0重量パーセントの亜鉛と、
不純物を含む残部のマグネシウムと、
から構成される生分解性金属合金。 - カルシウムは約0.6重量パーセントを占めており、ジルコニウムは約1.0重量パーセントを占めている、請求項1に記載の金属合金。
- ジルコニウムは約0.6重量パーセントを占めている、請求項1に記載の金属合金。
- 組成物の総重量に基づいて、
約4.0〜4.5重量パーセントの亜鉛と、
約0.3〜0.5重量パーセントのジルコニウムと、
不純物を含む残部のマグネシウムと、
から構成される生分解性金属合金。 - 亜鉛は約4.0重量パーセントを占めており、ジルコニウムは約0.5重量パーセントを占めている、請求項4に記載の金属合金。
- 亜鉛は約4.4重量パーセントを占めており、ジルコニウムは約0.3〜0.4重量パーセントを占めている、請求項4に記載の金属合金。
- ストロンチウムおよびセリウムから成る群から選択された元素をさらに含む、請求項4に記載の金属合金。
- 前記元素は、金属合金の約0.25〜1.0重量パーセントを占める、請求項7に記載の金属合金。
- 前記元素は約0.25重量パーセントを占める、請求項8に記載の金属合金。
- 前記元素は約1.0重量パーセントを占める、請求項8に記載の金属合金。
- 不純物は、鉄、ニッケル、および銅の一つ以上を含む、請求項1に記載の金属合金。
- 不純物は20ppm以下を占める、請求項1に記載の金属合金。
- 前記合金は固溶体単相である、請求項1に記載の金属合金。
- 生分解性金属合金を調製する方法であって、
組成物の総重量に基づいて、約4.0重量パーセントのイットリウムと、約0.5〜0.6重量パーセントのカルシウムと、約0.6〜1.0重量パーセントのジルコニウムと、約2.0重量パーセントの亜鉛と、不純物を含む残部のマグネシウムとを溶融させる工程と、
溶融混合物を得る工程と、
生分解性金属合金を得るために前記溶融混合物を鋳造する工程と、
を含む方法。 - 鋳造する工程の後に、合金が約250℃〜350℃の温度の熱処理を受ける、請求項14に記載の方法。
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