JP2020511266A - 結紮部材を備えた自己結紮ブラケット - Google Patents
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Abstract
歯列矯正用ブラケット(10)または頬面管のスロット(26)内にアーチワイヤ(700)を保持するように動作可能な結紮部材(400)であって、基部(402)と、基部から延在する第1の結紮フィンガー(410)と、基部から延在する第2の結紮フィンガー(412)と、第1の結紮フィンガーと第2の結紮フィンガーとの間の基部から延在するラッチ要素(404)とを含む結紮部材に関する。ラッチ要素は、基部から延在するネック部分(408)であって、最小断面領域を有するネック部分と、ネック部分から延在するヘッド部分(406)であって、突出部(416)を含むヘッド部分とを含む。結紮部材は、基部から突出部の中心線までを測定した長さL1と、最小断面領域の中心線から突出部の中心線までを測定した長さL2とを有し、L2はL1の40%以上である。【選択図】図6
Description
本出願は、自己結紮式歯列矯正用ブラケットに関し、より具体的には、結紮部材にラッチ要素を組み込んだ自己結紮式歯列矯正用ブラケットおよび頬面管に関する。
歯列矯正治療は、一般的には、患者の歯に機械的な力を加えて、不適切に配置された歯を正しい整列にするために使用される歯列矯正装置を含む。歯列矯正治療の一形式には、自己結紮式歯列矯正用ブラケットの使用が含まれる。この場合、単一のブラケットが結合材料または他の接着剤で個々の歯に接着される。ブラケットが歯の所定の位置に配置されると、各ブラケットに形成されたスロットにアーチワイヤが挿入される。この構成では、アーチワイヤを締め付けることによりブラケットに圧力がかかり、歯が所望の位置および向きに移動される。
いくつかの設計では、自己結紮ブラケットはラッチを有する結紮ドアまたは結紮スライドを含むことで、スロット内の所定の位置にアーチワイヤを保持することができる。結紮スライドは、ブラケットのアーチワイヤスロット内にアーチワイヤを挿入および保持することができるように、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能である。このような設計では、結紮スライドは、使用を容易にするために結紮スライドを開放位置または閉鎖位置のいずれかに保持する保持力を提供する。多くの場合、結紮スライドは通常、歯列矯正治療の過程で約6〜10回繰り返される(例えば、開放および閉鎖される)。従って、従来型結紮スライドは、一般的に短いライフサイクルで保持力を最適化するように設計されている。しかしながら、時折、特定の治療のサイクル数は、更なるアーチワイヤの調整、更なるアーチワイヤの変更、または補助治療機械により増加し得る。更に、場合によっては、患者が結紮スライドの操作方法を学び、ブラケットをいじる傾向があり、これにより、開放および閉鎖サイクルが追加されることによって、保持力が低下する場合がある。保持力を過度に低下させると、結紮スライドが不注意に開放し、ブラケットからアーチワイヤが外れる可能性が高くなり、歯に十分な機械的力が加えられないために治療効率が低下する結果になり得る。更に、保持力が低いと、結紮部材がブラケットまたは頬面管から完全に分解する結果にもなり得る。更に、アーチワイヤがスロットから外れると、施術者は何らかの問題に対処する必要があり、および/または必要に応じてブラケット/アーチワイヤを交換する必要があり、これが患者の全体的な治療時間を延長させ得る。
従って、本発明者は、多数の開放/閉鎖サイクルにわたって有効な保持力を維持するように改良された設計の歯列矯正用ブラケットの結紮部材の必要性を特定した。このような設計は、結紮部材を開放位置または閉鎖位置のいずれかに保持する保持力の劇的な低下を経験することなく、ラッチスライドが許容できる開放および閉鎖サイクルの数量を最大化するであろう。例えば、図1のグラフは、「所望の」保持力性能(曲線Dとして図示)と、「不所望な」保持力性能(曲線Uとして図示)との例を示している。グラフにおいて、不所望な性能では、最初の数サイクル内に保持力が大幅に低下しており、続いて、初期の保持力のうちの僅かな割合の力でプラトーになることを特徴としている。更なる態様および利点は、添付の図面を参照して、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
図面を参照して、このセクションでは、様々な歯列矯正用ブラケットの特定の実施形態、並びにそれらの詳細な構造および動作について説明する。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、または「いくつかの実施形態」とは、特定の記載された特徴、構造、または特性が歯列矯正用ブラケットの少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。従って、本明細書全体を通して様々な場所における「一実施形態では」、「ある実施形態では」、または「いくつかの実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すとは限らない。更に、説明される特徴、構造、および特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書の開示を考慮して、当業者は、1つ以上の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要素、材料等を用いて様々な実施形態を実施することができることを認識するであろう。
以下の説明では、歯列矯正用ブラケットの特定の構成要素を詳細に説明する。いくつかの例では、実施形態のより適切な態様を曖昧にすることを避けるために、公知の構造、材料、または動作は詳細には図示または説明されていないことを理解されたい。更に、実施形態が特定の歯列矯正用ブラケットの設計を例示および参照している場合があるが、他の実施形態は、記載された実施形態よりも追加のまたはより少ない構成要素を含んでもよい。
図2Aおよび図2Bは併せて、閉鎖位置と開放位置との間をブラケット本体12に対して移動することができる結紮ドア36を備えたブラケット本体12を含む従来型の自己結紮式歯列矯正用ブラケット10の例示的な実施形態を示す。基準枠を確立するために、以下の説明は(特に断りのない限り)、患者の上顎の歯の唇側面に取り付けられているブラケット10を指す。例えば、図2Aに示されたブラケット本体12を参照すると、ブラケット本体12が患者の上顎の歯の唇側面に取り付けられる場合、ブラケット本体12は、舌側14、唇側16、咬合側18、歯肉側20、近心端22、および遠心端24を有する。唇、舌、近心、遠位、咬合、および歯肉等の用語は、ブラケット10を説明するために使用されており、この基準枠に関連している。しかしながら、ブラケット10は口腔内の他の歯および他の向きで使用され得るため、開示された主題の実施形態は選択された基準枠および説明用語に限定されないことを理解されたい。例えば、ブラケット10はまた、下顎または上顎の前歯に配置されてもよく、これは開示された主題の範囲内である。当業者は、基準枠に変更があった場合、本明細書で使用される説明用語が直接適用されない場合があることを認識するであろう。開示された主題は、口腔内の位置および向きから独立していることが意図されており、また図示された実施形態を説明するために使用される相対的用語は、図面と併せて明確な説明を提供することを意図している。従って、唇、舌、近心、遠位、咬合、および歯肉等の相対的用語は、開示された主題を特定の位置または向きに限定するものではなく、代わりに、開示された主題の理解を支援するために提供されるものである。
特に図2Aを参照すると、ブラケット10は、ブラケット本体12の舌側14のベース構造34を介して歯に取り付け可能なブラケット本体12を含む。ベース構造34は、接着剤または他の結合材料を受け入れるための一連の溝または隆起部を含むことで、歯との強固な連結を提供し、外れを防止することができる。ブラケット本体12は、概して近心−遠心方向に、例えば近心端22から遠位端24まで、ブラケット本体12にわたって延在するアーチワイヤスロット26を更に含む。アーチワイヤスロット26は、概して平面状のベース面28と、ベース面28から唇側方向に上方に延在する、対向する側壁30、32とを含む。いくつかの実施形態では、側壁30、32はベース面28に対して垂直であり、ブラケット本体12の唇側16に沿って、並びに、近心端22および遠心端24に沿って、それぞれ形成された開放端を有する概して長方形のアーチワイヤスロット26を形成する。
ブラケット本体12は、アーチワイヤ(図示せず)をアーチワイヤスロット26内に保持するためにブラケット本体12の唇側16に配置されたスライドドア36等のスライド式結紮部材を更に含む。スライドドア36は、ネック部分40から延在するヘッド部分38と、ヘッド部分38の両側に配置された2つのブラケットイヤー46、48とを含む。前述のように、スライドドア36は、ブラケット本体12を開放してアーチワイヤをアーチワイヤスロット26に挿入し、かつブラケット本体12を閉鎖してアーチワイヤをアーチワイヤスロット26内の所定の位置に保持するようにするために歯肉−咬合方向に沿って移動することができる(図2B参照)。特に図2Bを参照すると、閉鎖位置では、アーチワイヤは、アーチワイヤスロット26内に下方に付勢され、ブラケット本体12および患者の歯に圧力を加えて、所望の歯の移動をもたらす。ブラケット10の例示的な実施形態の更なる詳細および構成は、特許文献1に更に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
特に図3Aおよび図3Bの断面図を参照すると、以下のセクションは、ブラケット10のためのスライドドア36の例示的な初期設置プロセスに関する詳細を提供する。図3Aを参照すると、スライドドア36のヘッド部分38は、スライドドア36の舌側14に沿って配置された突出部42を含む。スライドドア36をブラケット本体12に設置すると、突出部42はブラケット本体12に沿ってスライドし、ブラケット本体12上に形成された第1の停止部50上で撓み、第1の溝52に係合する。本質的に、ヘッド部分38およびネック部分40は、スライドドア36のばね要素として作用する。図3Bに示すように、スライドドア36が閉鎖位置に移動すると、突出部42は、第1の溝52に隣接する第2の停止部54上で撓み、アーチワイヤスロット26を越えて、第3の停止部56上で撓んで、ブラケット本体12の第2の溝44に係合する。この位置では、スライドドア36の本体は、アーチワイヤをアーチワイヤスロット26内に保持するようにアーチワイヤスロット26上を延在する。アーチワイヤの調整が必要な場合、スライドドア36は、スライドドア36は、第2の溝44から外されて、突出部42が第1の溝52に受け入れられるまで引き込まれてもよい。従って、スライドドア36の通常の動作時には、スライドドア36のヘッド部分38およびネック部分40は、通常、ドアの開放および閉鎖のそれぞれにて2回撓む。
図4〜図8を全体的に参照すると、以下の開示は、歯列矯正用ブラケットのための改善された結紮部材について説明しており、結紮部材は、結紮部材の開放および閉鎖サイクルの増加に対応し、かつ結紮部材の寿命と性能を改善するために改善された形状を有するラッチ要素を含む。更に、形状が改善されたことにより、前部における上歯および下歯の、犬歯から犬歯への回転制御が改善される。特に歯列矯正用ブラケットの結紮部材に関する更なる詳細については、以下で詳細に説明する。
図4は、一実施形態による結紮部材400の拡大図である。いくつかの実施形態では、アーチワイヤをアーチワイヤスロット26内に保持するために、前述したブラケット10のスライドドア36の代わりに結紮部材400を使用してもよい。従って、開示された主題のより適切な側面を不明瞭にすることを避けるために、以下の説明は、結紮部材400が図2Aおよび図2Bのブラケット10を含む、歯列矯正用ブラケットの様々な実施形態で使用可能であるという理解の下で、特に結紮部材400に関する特定の詳細および実施形態とともに進められている。
図4を参照すると、結紮部材400は、基部402と、基部402から歯肉方向に延在するラッチ要素404とを含む。ラッチ要素404は、ヘッド部分406およびネック部分408を含み、ネック部分408は基部402から延在している。ヘッド部分406は、ラッチ要素404の舌側14上に形成される突出部416を含む(図5B参照)。図3Aおよび図3Bに関して前述したのと同様の方法で、突出部416は、歯列矯正用ブラケット(ブラケット10等)と係合して、結紮部材400をブラケット本体(ブラケット本体12等)に固定するように設計および寸法決めされており、突出部416は、ブラケット本体に形成された1つ以上の停止部(停止部54、56等)上で撓んでおり、結紮部材400を開放位置または閉鎖位置に保持するための複数の溝(溝44、52等)のいずれかに収まる。
図4を再び参照すると、結紮部材400は、基部402から歯肉方向に延在しており、ラッチ要素404の対向側面上に配置された結紮フィンガー410、412を含むことで、各結紮フィンガー410、412がラッチ要素404からオフセットされており、かつラッチ要素404から横方向に離間されるようにする。ラッチ要素404は、結紮部材400がブラケット10上の閉鎖位置にあるとき、ラッチ要素404のヘッド部分406もネック部分408もアーチワイヤスロット26内のアーチワイヤと係合しない、または接触しないように、結紮フィンガー410、412から唇側方向にオフセットされている(即ち、ラッチ要素404は、結紮フィンガー410、412が配置されている水平面上に配置されている)(図6も参照)。従って、結紮フィンガー410、412は、ラッチ要素404に対して横方向および垂直方向の両方にオフセットされている。いくつかの実施形態では、結紮部材400は、結紮部材400の唇側16に沿って配置されるガイドおよび結紮フィンガー補強材414も含むことで、結紮フィンガー410、412に追加の強度を付与することができる。更に、ガイドおよび結紮フィンガー補強材414は、結紮部材400を開放および閉鎖するのに適切な手段を提供するガイドまたは他の特徴部418も組み込むこともできる。例えば、一実施形態では、歯科医または他の開業医は、歯科用ツールをガイド418に挿入して、結紮部材400の操作を容易化することができる。
一実施形態では、結紮部材400は、17−4焼結ステンレス鋼の金属射出成形プロセスを介して形成されてもよい。他の実施形態では、歯列矯正用ブラケットは、代わりに鋳造または機械加工されてもよい。いくつかの実施形態では、結紮部材400は、ブラケット本体12とは異なる製造プロセスを使用して作製することができ、および/またはブラケット本体12とは異なる材料から製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、結紮部材400は、ニッケルチタン等の超弾性材料、またはコバルトクロム等のばね材料で構成され得る。
図5Aおよび図5Bは併せて、様々な形状の結紮部材400の特性および特徴を示している。図5Aおよび図5Bを併せて参照すると、ラッチ要素404のネック部分408は、一般に、ヘッド部分406の幅よりも小さい幅を有する。いくつかの実施形態では、ネック部分408の幅は、結紮部材400の基部402に隣接する領域から、ヘッド部分406に隣接する領域まで変化するが、ネック部分408の幅は、ネック部分408の全体にわたってヘッド部分406の幅よりも小さいことが好ましい。いくつかの実施形態では、ネック部分408の幅は、基部402からネック部分408の略中点に向けて徐々に狭まり、次いで、略中点からヘッド部分406に向けて徐々に広がり得る。
例えば、図5Aを特に参照すると、長さL1は、ヘッド部分406の突出部416の中心線から基部402に隣接するネック部分408の底部までを測定した距離を定義し、長さL2は、ヘッド部分406上の突出部416の中心線から、ネック部分408が最小断面領域を有するラッチ要素404の略中点までを測定した距離を定義する。いくつかの実施形態では、L2はL1の約50%であるが、他の実施形態では、L2はL1の40%以上であってもよく、またはL1の40%〜60%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、長さL1(ラッチ要素404の撓み長さ)は、結紮部材400の全長の約40%〜60%であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、L1は0.020インチ以上である。しかしながら、他の長さも使用可能である。
いくつかの実施形態では、ラッチ要素404(または具体的にはネック部分408)の最小断面領域は、約1.0×10−4平方インチ〜1.6×10−4平方インチの範囲にある。いくつかの実施形態では、ラッチ要素402の最小断面領域の最小体積は、4.0×10−7〜6.4×10−7立方インチの範囲内であってもよい。しかしながら、本開示の実施形態は、ネック部408の最小断面領域内の最小体積をこの範囲に限定するものではなく、他の体積も使用可能である。
単なる例として、結紮部材400の一実施形態では、結紮部材400は、0.036インチの距離L1を有し、距離L2はL1の約51.4%であり、最小断面領域は1.42×10−4平方インチであり、最小体積は5.68×10−7立方インチである。しかしながら、当業者には理解されるように、他の値を使用することもできるが、L1を0.020インチ以上に、またL2をL1の40%以上に維持することが好ましい。
図6は、ブラケット本体600に取り付けられた結紮部材400の例示的な実施形態を示しており、これは、図2Aおよび図2Bを参照して前述したブラケット本体12と同一または類似の特徴を有し得る。従って、実施形態のより適切な態様を不明瞭にすることを避けるために、本明細書では、ブラケット本体600の特定の特徴に関する詳細をこれ以上説明しないものとする。図6を参照すると、結紮部材400は閉鎖位置で示されている。結紮部材400が閉鎖位置にある場合、結紮フィンガー410、412の一部はアーチワイヤスロット420上を延在してアーチワイヤを所定の位置に保持し、結紮フィンガー410、412の端部がブラケット本体600の表面に当接する。この構成では、結紮フィンガー410、412は、アーチワイヤに対する一定の下方への圧力を維持して、図7Bに関して更に説明されるように、患者の歯に必要な移動をもたらすことができる。前述したように、結紮フィンガー410、412は、弾性材料から製造されることが好ましく、ガイドおよび結紮フィンガー補強材414により結紮フィンガー410、412に弾性を追加してもよい。
いくつかの実施形態では、結紮部材400の下側および結紮部材400がスライドするブラケット本体600の上面にコーティング(図示せず)を塗布することで、静的摩擦係数が低減され、使用時のスライド運動を促進するのに役立つ。いくつかの実施形態では、静的摩擦係数は0.01まで低減され得る。通常、結紮部材400およびブラケット本体600の摩擦係数は、両方の構成要素にスチールが使用されており、かつ両方の表面が清潔で乾燥している状態でスライド運動が発生する場合に、平均約0.7(静的)および0.6(動的)になると予想される。いくつかの実施形態では、塗布されたコーティングにより、静的摩擦係数および動的摩擦係数の両方をこれらの平均値の少なくとも50%だけ低減することができる。従って、そのような実施形態では、コーティングは、静的摩擦係数を0.35以下に、また動的摩擦係数を0.3以下に低下させることができる。更に、コーティングの硬度は、結紮部材400およびコーティングが塗布されているブラケット本体600を構成する材料とほぼ等しいか、またはそれよりも大きくてもよい。
図7Aおよび図7Bを参照すると、以下の文章は、本明細書に開示されるスライドドア36(図7A)および結紮部材400(図7B)の接触力の分布を説明している。図7Aは、前部に配置された場合の従来型自己結紮ブラケットのスライドドア36に対するアーチワイヤの接触点を示す。図7Aを参照すると、スライドドア36は、アーチワイヤ700に接触し、その上に下向きの力を及ぼす平坦な平面状の底面を有する。アーチワイヤ700がアーチワイヤスロット26内にある場合、丸く、かつ僅かに湾曲している故、アーチワイヤ700およびスライドドア36は、図7Aに示すようにアーチワイヤ700の湾曲の高さに単一の接触点CP1を有する。更に、アーチワイヤ700の底部は、ブラケット本体12の近心および遠心端縁(CP2およびCP3)でアーチワイヤスロット26の底壁とも接触し、それによって、前部の歯に取り付けられると、アーチワイヤ700に合計で3つの接触点が付与される結果となる。
図7Bを参照すると、結紮フィンガー410、412の間に開放空間を有する結紮部材400の改良された設計は、アーチワイヤ700に対して2つの独立した接触点CP4およびCP5を、スライドドア36の単一の接触点ではなく、1つを結紮フィンガー410に、また他方を結紮フィンガー412に生成する。更に、アーチワイヤ700およびブラケット10の側壁は、アーチワイヤスロット26の壁の近心および遠心端縁(CP6およびCP7)でも合計4つの接触点にて接触する。更に、結紮フィンガー410、412の舌側14は、干渉を排除し、前歯のための結紮フィンガー410、412の近心および遠心端縁に対する回転制御を移動させるために角度を付けることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、結紮フィンガー410、412は平面状であってもよい(即ち、フィンガー410、412の舌側14に角度が付いていない)。この構成では、アーチワイヤ700上の接触点は、結紮フィンガー410、412の外側縁(例えば、図7Bに示されるCP4およびCP5の位置)から結紮フィンガー410、412の内側縁まで移動する。従って、改良された設計の一利点として、結紮フィンガー410、412間の間隔により、アーチワイヤ700の湾曲高さでの結紮部材400の単一の接触を排除することを可能にし、代わりに、設計に傾斜した舌側または平面状の舌側が含まれるか否かに応じて、結紮フィンガー410、412の外側縁または内側縁のいずれかでの接触を提供する点が挙げられる。
図8Aおよび図8Bは、それぞれ17−4ステンレス鋼を含む、スライドドア36のヘッド部分およびネック部分、並びに結紮部材400のラッチ要素404の応力分析をそれぞれ示している。応力分析結果に基づいて、スライドドア36は0.0022インチの撓みに対して約6ポンドの力を必要とする一方、ラッチ要素404は0.0022インチの撓みに対して1.7ポンドを必要とする。0.0022インチの撓みでのスライドドア36の最大応力は905,600PSIであり、これは158,000PSIの17−4ステンレス鋼材料の降伏強度の約8.5倍である。従って、スライドドア36には、ブラケット本体12に対してスライドドア36を開放および閉鎖する最初のサイクルだけで著しい変形が生じる。従って、スライドドア36の各サイクルは、開閉力を低下させ、スライドドア36を使用する都度、スライドドア36がブラケット本体12から外れる可能性が高くなる結果となり得る。
一方、ラッチ要素404の最大応力は、0.0022インチの撓みで、17−4ステンレス鋼に対して268,000PSIであり、これは17−4ステンレス鋼の降伏強度の僅か1.7倍である。従って、最大応力はスライドドア36よりもはるかに小さく、これにより、結紮部材400の各開閉サイクルでのラッチ要素404の変形が少なくなる結果となる。
図は結紮部材400の例示的な形状設計を示しているが、開示されている主題の原理から逸脱することなく他の構成が可能であり得ることを理解されたい。更に、上記の説明は多くの特異性を含むが、これらの詳細は開示された主題の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単にいくつかの実施形態の例示を提供するものとして解釈されるべきである。本明細書の一部に開示される主題は、その組み合わせが相互に排他的または動作不能でない限り、本明細書の他の部分の1つ以上の主題と組み合わせることができることを理解されたい。
上記で使用される用語および説明は、例示のみを目的として記載されており、限定を意味するものではない。開示されている主題の基礎となる原理から逸脱することなく、上述した実施形態の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者には明白であろう。
Claims (10)
- 歯列矯正用ブラケットまたは頬面管のスロット内にアーチワイヤを保持するように動作可能な結紮部材(400)であって、
基部(402)と、
前記基部から延在する第1の結紮フィンガー(410)と、
前記基部から延在する第2の結紮フィンガー(412)であって、前記第1の結紮フィンガーから間隔をあけてオフセットされている第2の結紮フィンガーと、
前記第1の結紮フィンガーと前記第2の結紮フィンガーとの間の基部から延在するラッチ要素(404)であって、
前記基部から延在するネック部分(408)であって、最小断面領域を有するネック部分と、
前記ネック部分から延在するヘッド部分(406)であって、突出部(416)を含むヘッド部分と、
を含むラッチ要素と、
を含み、前記結紮部材は、前記基部から前記突出部の中心線までを測定した長さL1と、前記最小断面領域の中心線から前記突出部の中心線までを測定した長さL2とを有し、L2がL1の40%以上である、結紮部材。 - L1が0.020インチ以上である、請求項1に記載の結紮部材。
- 前記ネック部分の最小断面領域は、1.0×10-4〜1.6×10-4平方インチの範囲の面積を有する、請求項1に記載の結紮部材。
- L1が前記結紮部材の全長の40%〜60%の間である、請求項1に記載の結紮部材。
- 前記最小断面領域の最小体積は、4.0×10-7〜6.4×10-7立方インチの範囲にある、請求項1に記載の結紮部材。
- 前記ラッチ要素は、前記第1の結紮フィンガーおよび前記第2の結紮フィンガーからオフセットされている、請求項1に記載の結紮部材。
- 前記結紮部材は、17−4ステンレス鋼、ニッケルチタン、またはコバルト−クロムを含む、請求項1に記載の結紮部材。
- 前記第1の結紮フィンガーおよび前記第2の結紮フィンガーの下側、並びに前記ラッチ要素に塗布されるコーティングを更に含む、請求項1に記載の結紮部材。
- 歯列矯正用ブラケット(10)であって、
歯に取り付け可能なブラケット本体(12)であって、その中に形成され、かつアーチワイヤを受容するように寸法決めされたスロット(26)を更に含むブラケット本体と、
前記ブラケット本体に取り付け可能であり、取り付けられると前記ブラケット本体のスロット内に前記アーチワイヤを保持するように動作可能な結紮部材(400)であって、
基部(402)と、
前記基部から、かつ前記スロット上を延在する第1の結紮フィンガー(410)と、
前記基部から、かつ前記スロット上を延在する第2の結紮フィンガー(412)であって、前記第1の結紮フィンガーから間隔を空けてオフセットされている第2の結紮フィンガーと、
前記第1の結紮フィンガーと前記第2の結紮フィンガーとの間の基部から、かつ前記スロット上を延在するラッチ要素(404)であって、
前記基部から延在するネック部分(408)であって、最小断面領域を有するネック部分と、
前記ネック部分から延在するヘッド部分(406)であって、突出部(416)を含むヘッド部分と、
を含むラッチ要素と、
を備える結紮部材と、
を含み、前記結紮部材は、前記基部から前記突出部の中心線までを測定した長さL1と、前記最小断面領域の中心線から前記突出部の中心線までを測定した長さL2とを有し、L2がL1の40%以上である、歯列矯正用ブラケット。 - 前記結紮部材は、その下側に塗布される第1のコーティングを含み、前記ブラケット本体は、その上面に塗布される第2のコーティングを含み、前記第1のコーティングおよび前記第2のコーティングが協働して、前記結紮部材と前記ブラケット本体との間の摩擦係数を低減することで、前記結紮部材のスライド運動を容易にする、請求項9に記載の歯列矯正用ブラケット。
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