JP2020508053A - 操作されたポリペプチド - Google Patents

操作されたポリペプチド Download PDF

Info

Publication number
JP2020508053A
JP2020508053A JP2019545353A JP2019545353A JP2020508053A JP 2020508053 A JP2020508053 A JP 2020508053A JP 2019545353 A JP2019545353 A JP 2019545353A JP 2019545353 A JP2019545353 A JP 2019545353A JP 2020508053 A JP2020508053 A JP 2020508053A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sequence
polypeptide
tfr
seq
identity
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019545353A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020508053A5 (ja
Inventor
シャオチェン チェン
シャオチェン チェン
ミハリス カリオリス
ミハリス カリオリス
ロバート シー. ウェルズ
ロバート シー. ウェルズ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denali Therapeutics Inc
Original Assignee
Denali Therapeutics Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Denali Therapeutics Inc filed Critical Denali Therapeutics Inc
Publication of JP2020508053A publication Critical patent/JP2020508053A/ja
Publication of JP2020508053A5 publication Critical patent/JP2020508053A5/ja
Priority to JP2023016182A priority Critical patent/JP2023058568A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/705Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
    • C07K14/70582CD71
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K19/00Hybrid peptides, i.e. peptides covalently bound to nucleic acids, or non-covalently bound protein-protein complexes
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2500/00Screening for compounds of potential therapeutic value
    • G01N2500/10Screening for compounds of potential therapeutic value involving cells

Abstract

本明細書では、血液脳関門(BBB)受容体に結合するポリペプチド、かかるポリペプチドを作製する方法、及び、例えばBBBを通過する輸送のためにかかるポリペプチドを使用して組成物をBBB受容体発現細胞にターゲティングする方法が提供される。本明細書では、単量体のTfRアピカルドメインまたは完全長のTfR配列に対して環状に並べ替えられたTfRアピカルドメインの1つ以上の部分を含むトランスフェリン受容体(TfR)コンストラクトも提供される。【選択図】なし

Description

背景
血液脳関門(BBB)は、末梢から脳内への大部分の巨大分子の通過を遮断し、それによりこれらの巨大分子の治療用途を制限する。血液脳関門の内皮を含む内皮で発現する受容体は、受容体に結合するリガンドの血液脳関門を通過する送達を媒介することができる。
概要
一態様において、本開示は、単量体のTfRアピカルドメインを含む単離された組換えトランスフェリン受容体(TfR)コンストラクトであって、TfRのプロテアーゼ様ドメインまたは螺旋ドメインを含まないコンストラクトを提供する。一実施形態では、コンストラクトは、保存されたエピトープまたは抗原を提示し、かつ/または天然のヒトTfRのアピカルドメインのおよその3次元構造を保持するか、もしくは約2未満の平均二乗偏差(RMSD)を有する。一実施形態では、3次元構造は、X線結晶解析によって測定される。一実施形態では、コンストラクトは、ヒトTfRアピカルドメインを含む。一実施形態では、本明細書に記載されるTfRアピカルドメインコンストラクトと天然の完全長TfRのアピカルドメインとの間のRMSDは、約4未満、約3未満、または約2未満であり、約1〜約2の範囲の間である。一実施形態では、SEQ ID NO:109、110、301、468、及び469のうちのいずれか1つ(例えば、109、110、及び301)の配列を有するTfRアピカルドメインコンストラクトのいずれか1つと、天然の完全長TfRのアピカルドメインとの間のRMSDは、約1.2である。
別の態様において、本開示は、TfRコンストラクトであって、(a)TfRアピカルドメインの第1の部分の配列を含む第1のポリペプチドと、(b)任意選択的なリンカーと、(c)TfRアピカルドメインの第2の部分の配列を含む第2のポリペプチドと、を含み、完全長のTfR配列に対して、TfRアピカルドメインの第1の部分の配列がTfRアピカルドメインの第2の部分の配列のC末端側であり、第1のポリペプチド、任意選択的なリンカー、及び第2のポリペプチドが、直列に融合されている、TfRコンストラクトを特色とする。
いくつかの実施形態では、第2の部分の最後のアミノ酸は第1の部分の最初のアミノ酸と融合される。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドの最初のアミノ酸は第1のポリペプチドの最後のアミノ酸と融合される。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、完全長TfRアピカルドメインのC末端フラグメントを含み、第2のポリペプチドは、完全長TfRアピカルドメインのN末端フラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、TfRアピカルドメインの第1の部分は、25〜55個のアミノ酸(例えば、30〜55個、35〜55個、40〜55個、45〜55個、50〜55個、25〜50個、25〜45個、25〜40個、25〜35個、または25〜30個のアミノ酸)を含む。いくつかの実施形態では、TfRアピカルドメインの第2の部分は、75〜120個のアミノ酸(例えば、80〜120個、85〜120個、90〜120個、95〜120個、100〜120個、105〜110個、115〜120個、75〜115個、75〜110個、75〜105個、75〜100個、75〜95個、75〜90個、75〜85個、または75〜80個のアミノ酸)を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、
Figure 2020508053
の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:427の配列に対して最大7個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、
Figure 2020508053
の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは、SEQ ID NO:428の配列に対して最大16個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、または16個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む。
いくつかの実施形態では、TfRアピカルドメインは、SEQ ID NO:107または108の配列を含む。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトは、アレナウイルス(例えば、マチュポウイルス)に結合する。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトは、(a)SEQ ID NO:427の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む第1のポリペプチドと、(b)任意選択的なリンカーと、(c)SEQ ID NO:428の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む第2のポリペプチドと、を含む。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトは、(a)SEQ ID NO:427の配列に対して最大7個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個または7個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む第1のポリペプチドと、(b)任意選択的なリンカーと、(c)SEQ ID NO:428の配列に対して最大16個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、または16個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む第2のポリペプチドと、を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドはC末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大5個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドはC末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大5個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドはN末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大5個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドはN末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大5個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。
特定の実施形態では、第1のポリペプチドは、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大10個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む。特定の実施形態では、第2のポリペプチドは、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)または最大20個のアミノ酸の変化(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のアミノ酸の挿入、欠失及び/または置換)を有する配列を含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドは第2のポリペプチドと直列に直接融合される。特定の実施形態では、TfRコンストラクトは、SEQ ID NO:449の配列を有する第1のポリペプチドと、SEQ ID NO:450の配列を有する第2のポリペプチドとを含み、第1のポリペプチドのC末端は第2のポリペプチドのN末端に融合される。特定の実施形態では、TfRコンストラクトは、
Figure 2020508053
の配列を有する第1のポリペプチドと、
Figure 2020508053
の配列を有する第2のポリペプチドとを含み、第1のポリペプチドのC末端は第2のポリペプチドのN末端に融合される。
いくつかの実施形態では、リンカーは、1〜10個のアミノ酸(例えば、1〜8個、1〜6個、1〜4個、または1個もしくは2個のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸)を含むか、またはこれからなる。特定の実施形態では、リンカーは、G、GG、GGG、またはGGGG(SEQ ID NO:453)である。特定の実施形態では、リンカーは、タンパク質ループドメインを含む。特定の実施形態では、タンパク質ループドメインのN末端とC末端との距離は5Å未満である。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトは精製ペプチドを更に含む。例えば、精製ペプチドはTfRコンストラクトのN末端またはC末端に融合することができる。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトは切断ペプチドを更に含む。例えば、切断ペプチドはTfRコンストラクトのN末端またはC末端に融合することができる。
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるTfRコンストラクトをコードするヌクレオチド配列を含む単離ポリヌクレオチドを特色とする。別の態様では、本開示は、上記に記載のポリヌクレオチドを含むベクターも特色とする。更なる態様では、本開示は、上記に記載のポリヌクレオチドまたは上記に記載のベクターを含む宿主細胞も特色とする。
別の態様では、本開示は、TfRのアピカルドメインに結合する物質を特定する方法を特色とする。本方法は、(a)本明細書に記載されるTfRコンストラクトを物質と接触させる工程と、(b)前記物質がTfRコンストラクトに結合するかどうかを決定する工程と、を含む。
いくつかの実施形態では、物質は、ポリペプチドまたはタンパク質である。いくつかの実施形態では、物質は、改変Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチド二量体である。更なる他の実施形態では、物質は抗体である。
いくつかの実施形態では、前記決定する工程(b)は、ELISAまたは表面プラズモン共鳴により行われる。
更に別の態様では、本開示は、組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを作製する方法であって、直列に融合された第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとを含む遺伝子を発現させることを含み、第1のポリヌクレオチドが完全長のTfRアピカルドメインのC末端フラグメントをコードし、第2のポリヌクレオチドが完全長のTfRアピカルドメインのN末端フラグメントをコードする、方法を特色とする。
いくつかの実施形態では、発現されると、ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸がドメインのC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結されるように、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとが直列に融合される。
いくつかの実施形態では、遺伝子が、任意選択的なタンパク質リンカーをコードする任意選択的なリンカーポリヌクレオチドを更に含み、発現されると、ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸がリンカーの最後のアミノ酸と一次配列で連結され、リンカーの最初のアミノ酸がドメインのC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結される。
いくつかの実施形態では、発現されると、発現されたタンパク質が環状構造の形となるように、遺伝子は、直列な第1のポリヌクレオチド、任意選択的なリンカーポリヌクレオチド、及び第2のポリヌクレオチドをコードする。いくつかの実施形態では、本方法は、発現されたタンパク質を精製して単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを得ることを更に含む。
本開示の一態様は、上記の方法に従って作製された、単離された組換えヒトTfRアピカルドメインコンストラクトも含む。
別の態様は、SEQ ID NO:109、110、301、468、及び469(例えば、109、110、及び301)のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを含む。
別の態様は、SEQ ID NO:109、110、301、468、及び469(例えば、109、110、及び301)のうちのいずれか1つと少なくとも約90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む、単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを含む。
別の態様において、本明細書では、血液脳関門(BBB)を通過して能動的に輸送されることが可能なポリペプチドであって、(a)改変Fcポリペプチド、またはそのフラグメントと、(b)BBB受容体に特異的に結合する改変Fcポリペプチドまたはフラグメント内の第1の部位と、(c)新生児Fc受容体(FcRN)に結合する第2の部位と、を含むポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、第2の部位は、天然のFcRn結合部位である。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、改変Fcポリペプチド内にある。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、血清中半減期を延ばす、天然Fc配列に対するアミノ酸の変化を含む。特定の実施形態では、アミノ酸の変化は、25位のTyr、27位のThr、及び29位のGluの置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。あるいは、他の実施形態では、アミノ酸の変化は、201位のLeu、及び207位のSerの置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。あるいは、更なる実施形態では、アミノ酸の変化は、207位のSerまたはAlaの置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはそのフラグメントは、天然のFcポリペプチドのアミノ酸配列(例えば少なくとも50個の連続したアミノ酸)に対応した少なくとも50個のアミノ酸(例えば、少なくとも60個、75個、90個、または95個のアミノ酸)を含む。特定の実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントは、天然のFcポリペプチドのアミノ酸配列に対応した少なくとも100個のアミノ酸(例えば、少なくとも125個、140個、150個、160個、175個、または180個のアミノ酸)を含む。
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメント内の第1の部位は、Fcポリペプチドのβシート内に少なくとも1個の改変されたアミノ酸を有する。特定の実施形態では、βシートはCH2ドメイン内にある。特定の実施形態では、βシートはCH3ドメイン内にある。いくつかの実施形態では、第1の部位は、少なくとも1個の溶媒露出アミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、第1の部位は、少なくとも2個の溶媒露出アミノ酸の置換を含み、ループ領域またはβシート内の2個の溶媒露出残基は、同じループ領域または同じβシート内にない。
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメント配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH2ドメイン配列に由来するものであってよい改変CH2ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、CH2ドメインの改変は、(a)残基47、49、56、58、59、60、61、62、及び63、(b)残基39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72、(c)残基41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73、ならびに(d)残基45、47、49、95、97、99、102、103、及び104からなる群から選択されるアミノ酸の組の中の少なくとも2個のアミノ酸の置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメント配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH3ドメイン配列に由来するものであってよい改変CH3ドメイン配列を含む。いくつかの実施形態では、CH3ドメインに対する改変は、(a)残基157、159、160、161、162、163、186、189、及び194、ならびに(b)残基118、119、120、122、210、211、212、及び213からなる群から選択されるアミノ酸の組の中の少なくとも2個のアミノ酸の置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。
いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントは、対応する野生型Fcポリペプチドまたはフラグメントと比較して少なくとも75%のアミノ酸配列の同一性を有する。更なる実施形態では、同一性は、少なくとも80%、90%、92%、または95%である。
改変Fcポリペプチドまたはフラグメントは、エフェクター機能を有してもよく、または代替的な実施形態では、エフェクター機能を有さない。特定の実施形態では、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントは、エフェクター機能を低下させる改変を含む。いくつかの実施形態では、エフェクター機能を低下させる改変は、7位のLeu、及び8位のLeuの置換を含み、各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。いくつかの実施形態では、エフェクター機能を低下させる改変は、102位のProの置換を更に含み、残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。
更なる態様において、本明細書では、上記のパラグラフに記載されるポリペプチドまたはフラグメントを含む二量体タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、二量体タンパク質は、第1及び第2のポリペプチド鎖を含むヘテロ二量体であり、第1のポリペプチド鎖はBBB受容体に特異的に結合する第1の部位を含む。特定の実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、BBB受容体に特異的に結合する部位を含まない。いくつかの実施形態では、二量体タンパク質は、第1及び第2のポリペプチド鎖を含むホモ二量体であり、第1及び第2のポリペプチド鎖は、BBB受容体に特異的に結合する部位をそれぞれ含む。
いくつかの実施形態では、BBB受容体は、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF−R)、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質2(LRP2)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、GLUT1、バシギン、ジフテリア毒素受容体、ヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB−EGF)の膜結合前駆体、メラノトランスフェリン、及びバソプレシン受容体からなる群から選択される。特定の実施形態では、BBB受容体はTfRである。尚も他の実施形態では、BBB受容体はIGF−Rである。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、受容体の内因性リガンドと結合について競合することなくBBB受容体に特異的に結合する。特定の実施形態では、BBB受容体はトランスフェリン受容体であり、内因性リガンドがトランスフェリンである。
いくつかの実施形態では、上記のパラグラフに記載されるポリペプチドは、生物学的活性を有するポリペプチドを更に含む。特定の実施形態では、生物学的活性を有するポリペプチドは、治療活性を有するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するポリペプチドの脳内への取り込みは、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが存在しない場合の生物学的活性を有するポリペプチドの取り込みと比較して少なくとも10倍大きい。いくつかの実施形態では、生物学的活性を有するポリペプチドの脳内への取り込みは、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが存在しない場合の生物学的活性を有するポリペプチドの取り込みと比較して少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、またはそれ以上である。
更なる態様において、本明細書では、BBBを通過して能動的に輸送されることが可能なタンパク質であって、(a)抗原に結合することが可能な抗体可変領域配列、またはその抗原結合フラグメントと、(b)改変Fcポリペプチドを含むポリペプチド、またはそのフラグメントと、を含み、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、BBB受容体に特異的に結合する第1の結合部位と、新生児Fc受容体(FcRn)に結合する第2の結合部位とを有する、タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、抗体可変領域配列は、Fabドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fabドメインは、タウタンパク質(例えば、ヒトタウタンパク質)またはそのフラグメントに結合する。タウタンパク質は、リン酸化タウタンパク質、非リン酸化タウタンパク質、タウタンパク質のスプライスアイソフォーム、N末端が切断されたタウタンパク質、C末端が切断されたタウタンパク質、及び/またはそれらのフラグメントであってよい。いくつかの実施形態では、Fabドメインは、β−セクレターゼ1(BACE1)タンパク質(例えば、ヒトBACE1タンパク質)またはそのフラグメントに結合する。BACE1タンパク質は、BACE1タンパク質またはそのフラグメントのスプライスアイソフォームであってもよい。いくつかの実施形態では、Fabドメインは、骨髄細胞上に発現するトリガー受容体2(TREM2)タンパク質(例えば、ヒトTREM2タンパク質)またはそのフラグメントに結合する。他の実施形態では、Fabドメインは、α−シヌクレインタンパク質(例えば、ヒトα−シヌクレインタンパク質)またはそのフラグメントに結合する。α−シヌクレインタンパク質は、モノマー性α−シヌクレイン、オリゴマー性α−シヌクレイン、α−シヌクレインフィブリル、可溶性α−シヌクレイン、及び/またはこれらのフラグメントであってよい。いくつかの実施形態では、抗体可変領域配列は、2個の抗体可変領域重鎖と2個の抗体可変領域軽鎖、またはそれらのそれぞれのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、可変領域は、タウタンパク質(例えば、ヒトタウタンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、リン酸化タウタンパク質、非リン酸化タウタンパク質、タウタンパク質のスプライスアイソフォーム、N末端が切断されたタウタンパク質、及び/またはC末端が切断されたタウタンパク質、またはそれらのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、β−セクレターゼ1(BACE1)タンパク質(例えば、ヒトBACE1タンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、BACE1タンパク質の1つ以上のスプライスアイソフォームまたはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、ヒトの骨髄細胞上に発現するトリガー受容体2(TREM2)タンパク質、またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、ヒトα−シヌクレインタンパク質またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、モノマー性ヒトα−シヌクレイン、オリゴマー性ヒトα−シヌクレイン、ヒトα−シヌクレインフィブリル、及び/または可溶性ヒトα−シヌクレイン、またはこれらのフラグメントに結合することができる。
いくつかの実施形態では、タンパク質は、BBB受容体に結合する1個の改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含む。他の実施形態では、タンパク質は、BBB受容体に結合する2個の改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、脳内へのタンパク質の取り込みは、(a)改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含むポリペプチドがない場合の同じタンパク質、または(b)BBB受容体との結合をもたらす改変を有さないFcポリペプチドまたはFcポリペプチドフラグメントを含むポリペプチドがある場合の同じタンパク質と比較して、少なくとも10倍大きい。
更なる態様において、本明細書では、(a)上記のパラグラフに記載されるポリペプチドと、(b)治療または診断物質とを含む結合体であって、血液脳関門を通過して輸送されることが可能な結合体が提供される。いくつかの実施形態では、治療または診断物質の脳への取り込みは、ポリペプチドの非存在下での治療または診断物質の取り込みに対して少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍増加する。
図1A〜1Dは、4つのCH2A2クローンのファージELISAの結果を示す。CH2A2 Fc変異体をファージの表面に発現させ、プレートにコーティングした抗c−Myc抗体9E10(発現対照)、陰性対照、ヒトトランスフェリン受容体(TfR)、及びカニクイザル(cyno)TfRに対する結合について試験した。x軸は、ファージ濃度の尺度であるファージ溶液のOD268を示す。(図1A)クローンCH2A2.5のELISAの結果を示す。(図1B)クローンCH2A2.1のELISAの結果を示す。(図1C)クローンCH2A2.4のELISAの結果を示す。(図1D)クローンCH2A2.16のELISAの結果を示す。 図2A及び2Bは、ヒトTfRに結合したCH2A2クローンのファージELISAの結果を示す。ファージをおおよそ結合EC50でTfRをコーティングしたELISAプレートに加え、可溶性ホロTfまたは可溶性TfRを異なる濃度で加えた。データは、CH2A2クローンが、プレートにコーティングされたTfRに対する結合について可溶性TfRと競合したが、ホロTfとは競合しなかったことを示す。(図2A)可溶性ホロTfを加えた実験の結果を示す。(図2B)可溶性TfRを加えた実験の結果を示す。 図3A〜3Dは、ホロTfの存在下または非存在下でのTfRに対するCH2Cクローンの結合を示す。(図3A)TfRをELISAプレートにコーティングし、ファージ上に提示されたクローンCH2C.23を大過剰量のホロTf(5μM)の存在下または非存在下で加えたファージELISAの結果を示す。(図3B)ヒトまたはカニクイザルのTfRをコーティングしたELISAプレートに対するFc−Fab融合体フォーマットのCH2Cクローンの結合を示す。(図3C)ヒトTfR、カニクイザルTfR、ホロTf、抗Myc、またはストレプトアビジンをELISAプレートにコーティングし、ファージに提示されたクローンCH2C.17及びCH2C.22を異なる希釈度で、ホロTfの存在下または非存在下で加えたファージELISAの結果を示す。これらのデータは、これらのクローンがTfRに対する結合についてホロTfと競合しなかったことを示す。(図3D)5μMのホロTfの存在下、ホロTf単独の結合についてバックグラウンドを引いた、抗ストレプトアビジンセンサーにコーティングしたTfR−ビオチンに対するクローンCH2C.7の結合についてOctet(登録商標)(すなわち、バイオレイヤー干渉法)による動態トレースを示し、Tfとの結合について競合は示さなかった。 図4A及び4Bは、ホロTfの存在下または非存在下でのTfRに対するCH3Bクローンの結合を示す。(図4A)ヒトTfR、カニクイザルTfR、ホロTf、抗Myc、またはストレプトアビジンをELISAプレートにコーティングし、ファージに提示されたクローンCH3B.11及びCH3B.12を異なる希釈度で、ホロTfの存在下または非存在下で加えたファージELISAの結果を示す。これらのデータは、これらのクローンがTfRに対する結合についてホロTfと競合しなかったことを示す。(図4B)ヒトまたはカニクイザルのTfRをコーティングしたELISAプレートに対するCH3Bクローンの結合を示す。CH3Bクローン配列を含むFc領域をFabフラグメントに融合し、二量体フォーマットでアッセイした。 CH3Bクローンの成熟についてNNKパッチライブラリーを示す。リボンはCH3ドメインの骨格を示し、暗い表面は元のCH3Bレジスターを表し、明るい表面のパッチは拡張されたレパートリーを表す。 3回の分取ラウンド後の結合集団の濃縮を示す、酵母でのCH3Cクローンの選択のFACSプロットを示す。分取ラウンド1及び2では、ビオチン化TfRを、酵母とインキュベートする前にストレプトアビジン−Alexa Fluor(登録商標)647に予めロードした。分取ラウンド3では、ビオチン化TfRを最初に酵母とインキュベートし、二次検出用にストレプトアビジン−Alexa Fluor(登録商標)647を加えた。すべての分取ラウンドで、酵母ディスプレイコンストラクト上のC末端Mycタグに対するニワトリ抗c−Myc抗体(Thermo Fisherより入手)を使用して発現を監視した。 図7A〜7Cは、ホロTfの存在下または非存在下でのTfRに対するCH3Cクローンの結合を示す。クローンは、Fc−Fab融合体フォーマットでアッセイした。TfRに結合する可変領域を有する標準的抗体であるAb204をこのアッセイの陽性対照として用いた。(図7A)ELISAプレートにコーティングしたヒトTfRに対するCH3C変異体の結合を示す。(図7B)5μMのホロTfの存在下でELISAプレートにコーティングしたヒトTfRに対するCH3C変異体の結合を示す。(図7C)ELISAプレートにコーティングしたカニクイザルTfRに対するCH3C変異体の結合を示す。 ヒトTfRを内因性に発現する293F細胞に対するCH3Cクローンの結合を示す。細胞を96ウェルV底プレート中に分配し、Fc−Fab融合結合タンパク質としてフォーマット化した異なる濃度のCH3Cクローンを加えた。4℃で1時間のインキュベーション後、各プレートを遠心し、洗浄してから、ヤギ抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)647二次抗体と、4℃で30分間インキュベートした。細胞を更に洗浄した後、各プレートをFACSCanto(商標)IIフローサイトメーターで読み取り、APC(647nm)チャンネルの蛍光中央値をFlowJo(登録商標)ソフトウェアを使用して求めた。 図9A及び9Bは、ヒトTfRを内因性に発現するHEK293細胞内へのCH3C.3の内在化を示す。1μM濃度のCH3C.3または対照を37℃及び8%CO濃度で30分間加えた後、細胞を洗浄し、透過処理し、抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)488二次抗体で染色した。更なる洗浄後、細胞を蛍光顕微鏡法でイメージングし、斑点の数を定量した。(図9A)顕微鏡法のデータを示す。(図9B)ウェル当たりの斑点の数のグラフを示す。 CH3Cソフトライブラリーの選択スキームを示す。初期ライブラリーをMACSによりヒト(H)またはカニクイザル(C)TfRに対して分取した。次いで得られた酵母プールを分割し、それぞれを最初のFAS分取ラウンドと同様にヒトまたはカニクイザルTfRに対して分取した。得られた各プールを別の分取ラウンド用に再び分割した。最後に、HHH及びCCCプールを別に維持し、両方の標的種がみられた他のプールを最終的にプールした。 図11A及び11Bは、ヒト及びカニクイザルTfRに対する最初のソフトランダム化ライブラリーから特定されたCH3Cクローンの結合を示す。陽性対照は高親和性の抗TfR抗体であるAb204、及び低親和性の抗TfR抗体であるAb084とした。(図11A)ヒトTfRに対する結合を示す。(図11B)カニクイザルTfRに対する結合を示す。 図12A及び12Bは、ホロTfの存在下または非存在下でヒトTfRに対する最初のソフトランダム化ライブラリーから特定されたCH3Cクローンの結合を示す。クローンは、Fc−Fab融合体フォーマットとした。高親和性の抗TfR抗体であるAb204をこのアッセイの陽性対照として用いた。(図12A)ELISAプレートにコーティングしたヒトTfRに対するCH3C変異体の結合を示す。(図12B)5μMのホロTfの存在下でELISAプレートにコーティングしたヒトTfRに対するCH3C変異体の結合を示す。 293F細胞に対する最初のソフトランダム化ライブラリーから特定されたCH3Cクローンの結合を示す。細胞を96ウェルV底プレート中に分配し、Fc−Fab融合タンパク質としてフォーマット化した異なる濃度のCH3Cクローンを加えた。4℃で1時間のインキュベーション後、各プレートを遠心し、洗浄してから、ヤギ抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)647二次抗体と、4℃で30分間インキュベートした。細胞を更に洗浄した後、各プレートをFACSCanto(商標)IIフローサイトメーターで読み取り、APC(647nm)チャンネルの蛍光中央値をFlowJo(登録商標)ソフトウェアを使用して求めた。 図14A〜14Cは、CHO−K1細胞に対する最初のソフトランダム化ライブラリーから特定されたCH3Cクローンの結合を示す。細胞を96ウェルV底プレート中に分配し、Fc−Fab融合体としてフォーマット化した異なる濃度のCH3Cクローンを加えた。4℃で1時間のインキュベーション後、各プレートを遠心し、洗浄してから、ヤギ抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)647二次抗体と、4℃で30分間インキュベートした。細胞を更に洗浄した後、各プレートをFACSCanto(商標)IIフローサイトメーターで読み取り、APC(647nm)チャンネルの蛍光中央値をFlowJo(登録商標)ソフトウェアを使用して求めた。(図14A)ヒトTfRを過剰発現したCHO−K1細胞を示す。(図14B)カニクイザルTfRを過剰発現したCHO−K1細胞を示す。(図14C)ヒトTfRを発現しないCHO−K1親細胞を示す。 図15A及び15Bは、TfRのアピカルドメインを示す。(図15A)ヒトTfRタンパク質のアピカルドメインの位置を示す。挿入図は、ヒトTfRとカニクイザルTfR間で異なる7個の残基の拡大図を示す。(図15B)ヒトTfR(SEQ ID NO:107)とカニクイザルTfR(SEQ ID NO:108)間で異なる7個の残基を含む配列アラインメントを示す。コンセンサス配列はSEQ ID NO:422である。 図16A〜16Eは、ファージ上に提示されたアピカルドメインに対するCH3Cクローンの結合を示す。(図16A)異なるTfRアピカルドメイン変異体のMyc発現を示し、各変異体の発現レベルが同様かつ正規化されていたことを示す。(図16B)野生型及び変異体ヒトTfRアピカルドメインに対するCH3C.18の結合を示し、R208G変異体に対する低い結合を示す。(図16C)野生型及び変異体ヒトTfRアピカルドメインに対するCH3C.35の結合を示し、R208G変異体に対する低い結合を示す。(図16D)野生型のヒト及びカニクイザルTfRアピカルドメイン、ならびにG208R変異体カニクイザルアピカルドメインに対するCH3C.18の結合を示し、変異体に対する結合の回復を示す。(図16E)野生型のヒト及びカニクイザルTfRアピカルドメイン、ならびにG208R変異体カニクイザルアピカルドメインに対するCH3C.35の結合を示し、変異体に対する結合の回復を示す。 図17A〜17Dは、変異した位置を野生型残基に戻すことによるCH3C変異体のパラトープマッピングを示す。(図17A)復帰変異体についてヒトTfRに対するELISA結合によるCH3C.35のパラトープマッピングを示す。(図17B)復帰変異体についてカニクイザルTfRに対するELISA結合によるCH3C.35のパラトープマッピングを示す。(図17C)復帰変異体についてヒトTfRに対するELISA結合によるCH3C.18のパラトープマッピングを示す。(図17D)復帰変異体についてカニクイザルTfRに対するELISA結合によるCH3C.18のパラトープマッピングを示す。 図18A〜18Dは、CH3Cのコンセンサス変異ライブラリーの設計を示す。(図18A)CH3C.35様配列に基づくコンセンサスライブラリーを示す。(図18B)CH3C.18様配列に基づくコンセンサスライブラリーを示す。(図18C)CH3C.18及びCH3C.35に基づくギャップライブラリーを示す。(図18D)CH3C.18に基づいた芳香族ライブラリーを示す。 図19A〜19Eは、ヒトまたはカニクイザルTfRに対するコンセンサス変異ライブラリーからのCH3C変異体の結合ELISAを示す。新たな変異体(すなわち、CH3C.3.2−1、CH3C.3.2−5、及びCH3C.3.2−19)がカニクイザル及びヒトTfRに対して同様の結合EC50値を有していたのに対して、親クローンCH3C.18及びCH3C.35はカニクイザルTfRに対してヒトTfRに有意に高いEC50値を有していた。(図19A)CH3C.3.2−1のデータを示す。(図19B)CH3C.3.2−19のデータを示す。(図19C)CH3C.3.2−5のデータを示す。(図19D)CH3C.18のデータを示す。(図19E)CH3C.35のデータを示す。 ヒト(HEK293)及びサル(LLC−MK2)細胞におけるコンセンサス成熟ライブラリーからのCH3C変異体の内在化を示す。ヒト及びカニクイザルTfRに対して同様の親和性を有するクローンCH3C.3.2−5及びCH3C3.2−19は、ヒトTfRによりよく結合したクローンCH3C.35と比較して、サル細胞への有意に高い取り込みを示した。抗BACE1抗体であるAb107を陰性対照として使用した。(BACE1はHEK293細胞でもMK2細胞でも発現されない)。抗TfR抗体であるAb204を陽性対照として使用した。 CH3構造上に示されたNNKウォーク残基のマップを示す(出典PDB 4W4O)。黒色の表面は、元のCH3Cレジスターを示し、灰色の表面はNNKウォーク構造に組み込まれた44個の残基を示し、リボンは野生型の骨格を示す。 NNKウォークライブラリーの3回の分取ラウンド後の濃縮された酵母集団を示す。酵母を抗c−Mycで染色し、発現(x軸)、及びTfRアピカルドメイン(200nMのカニクイザルまたは200nMのヒト)への結合(y軸)について監視した。ここに示したデータは、両方のTfRアピカルドメインのオーソログへの高い結合性を明らかに示している。 図23A及び23Bは、CH3C.35.21変異体のFACSデータを示す。酵母を抗c−Mycで染色し、発現(x軸)、及びヒトTfRアピカルドメイン(200nM)への結合(y軸)について監視した。図23Aは、クローンCH3C.35.21のFACSデータを示す。図23Bは、クローンCH3C.35.21の11個の位置を野生型に復帰変異させるか(FACSプロットの上列)、または20種類すべてのアミノ酸のNNKライブラリーとして発現させた(FACSプロットの下列、分取を行う前)変異体のFACSデータを示す。 図24A〜24Dは、ヒト及びカニクイザルTfRに結合する二価及び一価のCH3CポリペプチドのELISAによる比較を示す。(図24A)ヒトTfRに結合する二価のCH3Cポリペプチドを示す。(図24B)カニクイザルTfRに結合する二価のCH3Cポリペプチドを示す。(図24C)ヒトTfRに結合する一価のCH3Cポリペプチドを示す。(図24D)カニクイザルTfRに結合する一価のCH3Cポリペプチドを示す。 図25A〜25Eは、一価のCH3Cポリペプチドの細胞結合を示す。(図25A)293細胞を示す。(図25B)図25Aに示される293細胞に対する結合の拡大図を示す。(図25C)ヒトTfRを安定的にトランスフェクトしたCHO−K1細胞を示す。(図25D)図25Cに示されるヒトTfRを安定的にトランスフェクトしたCHO−K1細胞に対する結合の拡大図を示す。(図25E)カニクイザルTfRを安定的にトランスフェクトしたCHO−K1細胞を示す。 HEK293細胞内の一価及び二価CH3Cポリペプチドの内在化を示す。 図27A〜27Hは、CH3Cポリペプチドの結合速度論を示す。(図27A)ヒトTfRに対するCH3C.35.N163の結合のデータを示す。(図27B)ヒトTfRに対するCHC3.35の結合のデータを示す。(図27C)ヒトTfRに結合するCHC3.35.N163の一価の結合のデータを示す。(図27D)ヒトTfRに対するCHC3.35の一価の結合のデータを示す。(図27E)カニクイザルTfRに対するCH3C.35.N163の結合のデータを示す。(図27F)カニクイザルTfRに対するCHC3.35の結合のデータを示す。(図27G)カニクイザルTfRに結合するCHC3.35.N163の一価の結合のデータを示す。(図27H)カニクイザルTfRに対するCHC3.35の一価の結合のデータを示す。 図28A〜28Fは、CH3Cポリペプチドの結合速度論を示す。(図28A)ヒトTfRに対するCH3C.3.2−1の結合のデータを示す。(図28B)ヒトTfRに対するCH3C.3.2−5の結合のデータを示す。(図28C)ヒトTfRに対するCH3C.3.2−19の結合のデータを示す。(図28D)カニクイザルTfRに対するCH3C.3.2−1の結合のデータを示す。(図28E)カニクイザルTfRに対するCH3C.3.2−5の結合のデータを示す。(図28F)カニクイザルTfRに対するCH3C.3.2−19の結合のデータを示す。 図29A〜29Eは、ヒトTfR細胞外ドメインの存在下(下のトレース)または非存在下(上のトレース)でのpH5.5におけるFcRnに対するポリペプチド−Fab融合体の結合を示す。図29Aは、クローンCH3C.35のデータを示す。図29Bは、クローンCH3C.35.19のデータを示す。図29Cは、クローンCH3C.35.20のデータを示す。図29Dは、クローンCH3C.35.21のデータを示す。図29Eは、クローンCH3C.35.24のデータを示す。 野生型マウスにおけるCH3Cポリペプチドの薬物動態学(PK)分析を示す。すべてのポリペプチド−Fab融合体は、より速いクリアランスを示したCH3C.3.2−5を除き、野生型Fc−Fab融合体(すなわち、抗RSV抗体であるAb122、及び抗BACE1抗体であるAb153)と同等のクリアランスを示した。 マウスの脳組織における脳の薬物動態学/薬力学(PK/PD)データを示す。キメラhuTfRヘテロ接合体マウス(n=4/群)に42mg/kgのAb153または一価CH3C.35.N163(「CH3C.35.N163_一価」として示される)のいずれかを静脈内投与し、野生型マウス(n=3)に50mg/kgの対照ヒトIgG1(「huIgG1」として示される)を静脈内投与した。棒グラフは平均±SDを表す。 図32A及び32Bは、50mg/kgのポリペプチドによる処理の24時間後にhTfRアピカル+/+マウスにみられるIgGの濃度を示す。(図32A)血漿中のIgGの濃度を示す。(図32B)脳組織中のIgGの濃度を示す。 図33A及び33Bは、アミロイドβタンパク質50(Aβ40)の低下により測定される、24時間後のhTfRアピカル+/+マウスに投与されたポリペプチドの標的結合を示す。(図33A)血漿中のAβ40濃度を示す。(図33B)脳組織中のAβ40濃度を示す。 CH3C.3.18FcとTfRアピカルドメイン(AD)の複合体のサイズ分画のSDS−PAGEゲルを示す。レーン1:分子量マーカーレーン2:サイズ排除クロマトグラフィー後の低減されたCH3C.18Fc−AD複合体。 図35A及び35Bは、本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。図35Aは、クローンCH3C.18とトランスフェリン受容体のアピカルドメインとの結合界面を示す。図35Bは、図35Aに示される結合面の拡大図を示す。 図36A及び36Bは、CH3C.18とTfRアピカルドメインとの相互作用を示す。(図36A)TfRアピカルドメイン及びCH3C.18Fcの構造アーキテクチャ(上)、ならびにTfRアピカルドメイン及びCH3C.18Fcの結合表面(5Å以内)(下)を示す。共複合体構造を解像度3.6Åで解像した。この構造では、CH3C.18に結合したTfRアピカルドメインのエピトープをみることができる。詳細には、アピカルドメインのN末端領域がCH3C Fc結合に関与しており、構造はCH3C.18Fc及びTfRアピカルドメインの突然変異誘発データと符合している。また、CH3C.18ライブラリーの側鎖はいずれもTfRと接触している(5Å以内)。CH3C.18ライブラリーの残基:L157、H159、V160、W161、A162、V163、P186、T189、及びW194。非ライブラリー残基:F196及びS156。(図36B)CH3C.18FcとTfRアピカルドメインとの主要な相互作用を示す。CH3C.18Fc上のW161とアピカルドメイン上のR208とのカチオン−π相互作用が中心的な結合相互作用である。CH3C.18のW388またはアピカルドメインのR208の変異は、CH3C.18Fcとアピカルドメインとの結合を妨げる。これと一致して、ヒトからカニクイザルへのF208G変異は、カニクイザルの低い親和性を説明する。更に、ヒトアピカルドメインで保存されていない残基(N292及びE294(カニクイザルのK292及びD294))が近くにある。したがって、CH3C.18FcのQ192を変異させることでヒト結合に対してカニクイザルの結合性を選択的に高めることができる。 図37A及び37Bは、本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。図37Aは、クローンCH3C.18の残基(A鎖)とトランスフェリン受容体のアピカルドメインの残基(D鎖)との間の水素結合及び非結合接触を示す。図37Bは、本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。クローンCH3C.18の残基(B鎖)とトランスフェリン受容体のアピカルドメインの残基(C鎖)との間の水素結合及び非結合接触を示す。 ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアミノ酸配列(SEQ ID NO:423〜426)のアラインメントを示す。 図39A〜39Cは、本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。(図39A)TfRアピカルドメイン及びCH3C.35Fcの構造アーキテクチャ(上)、ならびにTfRアピカルドメイン及びCH3C.35Fcの結合表面(5Å以内)(下)を示す。共複合体構造を解像度3.4Åで解像した。この構造では、CH3C.35に結合したTfRアピカルドメインのエピトープをみることができる。CH3C.35ライブラリーの側鎖はいずれもTfRと接触している(5Å以内)。CH3C.35ライブラリーの残基:Y157、T159、E160、W161、S162、T186、E189、及びW194。非ライブラリー残基:F196、S156、Q192。(図39B及び39C)図39Aに示されるクローンCH3C.35とトランスフェリン受容体のアピカルドメインとの結合相互作用の拡大図を示す。 図40Aは、CH3C.35FcとTfR−ADとの複合体と、CH3C.18FcとTfR−ADとの複合体との重ね合わせ構造を示す。図40Bは、図40Aの重ね合わせ構造の拡大図を示す。 本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。クローンCH3C.35の残基(A鎖)とトランスフェリン受容体のアピカルドメインの残基(D鎖)との間の水素結合及び非結合接触を示す。 本発明のポリペプチドとトランスフェリン受容体との結合を示す。クローンCH3C.35の残基(B鎖)とトランスフェリン受容体のアピカルドメインの残基(C鎖)との間の水素結合及び非結合接触を示す。 図42A及び42Bは、カニクイザルにおけるAb153のFabドメインに融合したCH3C変異体を含むFc−Fab融合ポリペプチドの血漿PK及びAβ40低下を示す。(図42A)Ab210及びCH3C.35.9:Ab153が、対照IgG(Ab122)及びAb153と比較してTfR介在性のクリアランスによって、より速いクリアランスを示したことを示す。(図42B)いずれもBACE1に結合してこれを阻害するAb153、Ab210、及びCH3C.35.9:Ab153が、血漿中で有意なAβ40の低下を示したことを示す。 図43A及び43Bは、カニクイザルにおけるAb153のFabドメインに融合したCH3C変異体を含むFc−Fab融合ポリペプチドによる脳脊髄液(CSF)のAβ及びsAPPβ/sAPPαの有意な低下を示す。(図43A)Ab210及びCH3C.35.9:Ab153を投与した動物は、Ab153及び対照IgG(Ab122)と比較してCSF中のAβ40の約70%の低下を示したことを示す。(図43B)Ab210及びCH3C.35.9:Ab153を投与した動物は、Ab153及び対照IgG(Ab122)と比較してsAPPβ/sAPPα比の約75%の低下を示したことを示す。n=4/群。折れ線グラフは平均±SEMを表す。 図44A及び44Bは、抗BACE1_Ab153、CH3C35.21:Ab153、CH3C35.20:Ab153、またはCH3C35:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+ノックイン(KI)マウスの血漿(図44A)及び脳ライセート(図44B)中のhuIgG1濃度を示す(平均±SEM、n=5/群)。図44Cは、抗BACE1_Ab153、CH3C35.21:Ab153、CH3C35.20:Ab153、またはCH3C35:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+KIマウスの脳ライセート中の内因性マウスAβの濃度を示す(平均±SEM、n=5/群)。図44Dは、抗BACE1_Ab153、CH3C35.21:Ab153、CH3C35.20:Ab153、またはCH3C35:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+KIマウスの脳ライセート中のアクチンに対して正規化した脳TfRタンパク質のウェスタンブロットによる定量化を示す(平均±SEM、n=5/群)。 図45A及び45Bは、抗BACE1_Ab153、CH3C.35.23:Ab153、またはCH3C.35.23.3:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+KIマウスの血漿(図45A)及び脳ライセート(図45B)中のhuIgG1濃度を示す(平均±SEM、n=5/群)。図45Cは、抗BACE1_Ab153、CH3C.35.23:Ab153、またはCH3C.35.23.3:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+KIマウスの脳ライセート中の内因性マウスAβの濃度を示す(平均±SEM、n=5/群)。図45Dは、抗BACE1_Ab153、CH3C.35.23:Ab153、またはCH3C.35.23.3:Ab153ポリペプチド融合体の単回の50mg/kgの全身注射後のhTfRアピカル+/+KIマウスの脳ライセート中のアクチンに対して正規化した脳TfRタンパク質のウェスタンブロットによる定量化を示す(平均±SEM、n=4/群)。 図46A〜46Dは、示されるタンパク質の単回の30mg/kg用量の投与後のカニクイザルにおける28日間のPKPD実験を示す。図46A及び46Bは、血清中の血清huIgG1及び血漿中の血漿Aβ濃度を示し、経時的な投与化合物の末梢曝露及び血漿Aβ濃度に対する結果的な影響を示す。図46C及び46Dは、投与後のカニクイザルのCSF中のAβ及びsAPPβ/sAPPαを示す(平均±SEM、n=4〜5/群)。 図47A〜47Cは、示される各タンパク質の単回の30mg/kg用量の投与後のカニクイザルにおける末梢血中の、投与前濃度に対する血中網状赤血球(図47A)、絶対血清鉄濃度(図47B)、及び絶対赤血球数(図47C)を示す(平均±SEM、n=4〜5/群)。 図48A及び48Bは、14日間にわたる単回の10mg/kg静脈内注射後のhFcRnノックインマウスにおける、示される各タンパク質の末梢PK分析(血漿huIgG1濃度(図48A)及びクリアランス値(図48B))を示す(平均±SEM、n=3/群)。
詳細な説明
I.序論
本発明では、血液脳関門(BBB)を通過して能動的に輸送され得るポリペプチドについて開示する。一態様では、本発明は、Fc領域内の特定のアミノ酸の組を改変することで血液脳関門受容体に結合することが可能なFcポリペプチドを作製することができるという発見に一部基づいたものである。本明細書に開示されるFcポリペプチドは、新生児Fc受容体(FcRn)に更に結合する。脳への送達が効果的である障害及び疾患を治療するためにこれらのポリペプチドを用いて治療剤(例えば、治療用ポリペプチド、抗体可変領域、及び小分子)を輸送することができる。本明細書では、単量体のTfRアピカルドメインまたは完全長のTfR配列に対して環状に並べ替えられたTfRアピカルドメインの1つ以上の部分を含むトランスフェリン受容体(TfR)コンストラクトについても記載する。TfRコンストラクトは、任意選択的なリンカーによって互いに直列に融合されたTfRアピカルドメインの2つの異なる部分で構成することができる。本明細書に記載されるTfRコンストラクトは、アレナウイルス(例えば、マチュポウイルス)に結合することができる。
いくつかの実施形態では、CH3またはCH2ドメインポリペプチドを置換することでBBB受容体、例えばトランスフェリン受容体に結合するポリペプチドを生成することができる。したがって、一態様では、本明細書において、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合に、アミノ酸の組(i)157、159、160、161、162、163、186、189、及び194、または(ii)118、119、120、122、210、211、212、及び213に複数の置換を有するBBB結合ポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、本発明のBBB結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合に、アミノ酸の組(iii)47、49、56、58、59、60、61、62、及び63、(iv)39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72、(v)41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73、または(vi)45、47、49、95、97、99、102、103、及び104に複数の置換を有する。ある組のアミノ酸位置の4個〜すべてのいずれかを置換することができる。本開示の目的では、置換はSEQ ID NO:1を基準として決められる。したがって、あるアミノ酸は、そのアミノ酸が天然に存在するFcポリペプチド内のその位置に存在する場合であっても、SEQ ID NO:1の対応する位置のアミノ酸と異なる場合には置換とみなされる。
本明細書ではまた、組(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、または(vi)の複数の位置に置換を有する変異体ポリペプチドを生成することによるBBB受容体結合ポリペプチドを生成する方法も提供される。かかる変異体は、本明細書に述べられるようにBBB受容体結合について分析し、結合性を高めるために更に変異させることができる。
更なる態様では、本明細書において、組成物をBBB受容体発現細胞にターゲティングする(例えば、組成物をその細胞に送達する、または組成物を血液脳関門のような内皮を通過して送達する)、治療方法及びBBB受容体結合ポリペプチドを使用する方法が提供される。
II.定義
本明細書で使用される単数形「a」、「an」、及び「the」には、内容によってそうでない旨が明確に示されない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「ポリペプチド」と言った場合、2つ以上のそのような分子を含み得る、といった具合である。
本明細書で使用するところの「約」及び「およそ」なる用語は、数値または範囲において特定される量を修飾して用いられる場合、その数値、及び例えば±20%、±10%、または±5%といった、当業者には周知のその値からの妥当な偏差が、記載される値の想定される意味の範囲内にあることを示す。
本発明との関連で使用するところの「トランスフェリン受容体」または「TfR」とは、トランスフェリン受容体タンパク質1のことを指す。ヒトトランスフェリン受容体1のポリペプチド配列は、SEQ ID NO:235に記載されている。他の種由来のトランスフェリン受容体タンパク質1の配列も知られている(例えば、チンパンジー(アクセッション番号XP_003310238.1)、アカゲザル(NP_001244232.1)、イヌ(NP_001003111.1)、ウシ(NP_001193506.1)、マウス(NP_035768.1)、ラット(NP_073203.1)、及びニワトリ(NP_990587.1))。「トランスフェリン受容体」なる用語には、トランスフェリン受容体タンパク質1の染色体座の遺伝子によってコードされる例示的な参照配列(例えばヒト配列)の対立遺伝子変異体も包含される。完全長のトランスフェリン受容体タンパク質は、短いN末端細胞内領域、膜貫通領域、及び大きな細胞外ドメインを含んでいる。細胞外ドメインは、プロテアーゼ様ドメイン、螺旋状ドメイン、及びアピカルドメインの3つのドメインによって特徴付けられる。ヒトトランスフェリン受容体1のアピカルドメイン配列はSEQ ID NO:107に記載されている。
本明細書で使用するところの「Fcポリペプチド」なる用語は、構造ドメインとしてIgフォールドを特徴とする、天然に存在する免疫グロブリンの重鎖ポリペプチドのC末端領域ことを指す。Fcポリペプチドは、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域配列を含み、ヒンジ領域の少なくとも一部を含むことができる。一般的に、Fcポリペプチドは、少なくともCH2ドメイン及び/またはCH3ドメインを含む定常領域配列を含み、ヒンジ領域の少なくとも一部を含むことができるが、可変領域は含まない。
「改変Fcポリペプチド」とは、野生型の免疫グロブリン重鎖Fcポリペプチド配列と比較して少なくとも1つの変異、例えば置換、欠失、または挿入を有するが、天然のFcポリペプチドの全体のIgフォールドまたは構造を保持しているFcポリペプチドのことを指す。
「FcRn」なる用語は、新生児Fc受容体のことを指す。FcポリペプチドのFcRnとの結合によって、Fcポリペプチドのクリアランスは低下し、血清中半減期が長くなる。ヒトFcRnタンパク質は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIタンパク質に似た約50kDaのサイズのタンパク質と、約15kDaのサイズのβ2マイクログロブリンとからなるヘテロ二量体である。
本明細書で使用するところの「FcRn結合部位」とは、FcRnに結合するFcポリペプチドの領域のことを指す。ヒトIgGでは、FcRn結合部位は、EU番号付けスキームを用いて番号付けした場合に、L251、M252、I253、S254、R255、T256、M428、H433、N434、H435、及びY436を含む。これらの位置は、SEQ ID NO:1の24〜29位、201位、及び206〜209位に相当する。
本明細書で使用するところの「天然FcRn結合部位」とは、FcRnと結合し、FcRnに結合する天然に存在するFcポリペプチドの領域と同じアミノ酸配列を有するFcポリペプチドの領域のことを指す。
本明細書で使用するところの「CH3ドメイン」及び「CH2ドメイン」なる用語は、免疫グロブリンの定常領域ドメインポリペプチドのことを指す。IgG抗体との関連において、CH3ドメインポリペプチドとは、EU番号付けスキームに従って番号付けした場合に約341位〜約447位のアミノ酸のセグメントのことを指し、CH2ドメインポリペプチドとは、EU番号付けスキームに従って番号付けした場合に約231位〜約340位のアミノ酸のセグメントのことを指す。CH2及びCH3ドメインポリペプチドは、IMGT(ImMunoGeneTics)番号付けスキームによって番号付けすることもでき、その場合、IMGT Scientific chart numbering(IMGTウェブサイト)に従えば、CH2ドメインの番号付けは1〜110であり、CH3ドメインの番号付けは1〜107である。CH2及びCH3ドメインは、免疫グロブリンのFc領域の一部である。IgG抗体との関連において、Fc領域とは、EU番号付けスキームに従って番号付けした場合に、約231位〜約447位までのアミノ酸のセグメントのことを指す。本明細書で使用するところの「Fc領域」なる用語は、抗体のヒンジ領域の少なくとも一部も含み得る。例示的なヒンジ領域配列は、SEQ ID NO:234に記載されている。
「可変領域」なる用語は、生殖細胞系列の可変(V)遺伝子、多様性(D)遺伝子、または連結(J)遺伝子から誘導され(定常(Cμ及びCδ)遺伝子セグメントからは誘導されない)、抗体に抗原と結合するためのその特異性を与える抗体重鎖または軽鎖内のドメインのことを指す。一般的に抗体可変領域は、3個の超可変「相補性決定領域」を間に挟んだ4個の保存された「フレームワーク」領域で構成されている。
本明細書で使用するところの「リンカー」なる用語は、2個の要素、例えばTfRコンストラクト内の2個のポリペプチド間のペプチド連結要素またはタンパク質連結要素のことを指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、1〜10個のアミノ酸(例えば、1〜8個、1〜6個、1〜4個、または1個もしくは2個のアミノ酸、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸)を含むことができる。他の実施形態では、リンカーは、タンパク質ループドメインであってよく、タンパク質ループドメインのN末端とC末端との間の距離は5Å未満である(例えば、4Å、3Å、2Å、または1Å未満の距離)。いくつかの実施形態では、タンパク質ループドメインは、800個以下のアミノ酸(例えば、800個、780個、760個、740個、720個、700個、680個、660個、640個、620個、600個、580個、560個、540個、520個、500個、480個、460個、440個、420個、400個、380個、360個、340個、320個、300個、280個、260個、240個、220個、200個、180個、160個、140個、120個、または100個のアミノ酸)を有する球状タンパク質であってよい。
本明細書で使用するところの「精製ペプチド」なる用語は、ポリペプチドの精製、単離、または同定に使用することができる任意の長さのペプチドのことを指す。精製ペプチドは、ポリペプチドの精製及び/または例えば細胞ライセート混合物からのポリペプチドの単離に用いるためにそのポリペプチドに融合することができる。いくつかの実施形態では、精製ペプチドは、精製ペプチドに対して特異的親和性を有する別の部分と結合する。いくつかの実施形態では、精製ペプチドに特異的に結合するかかる部分は、マトリクス、樹脂、またはアガロースビーズなどの固体支持体に結合される。TfRコンストラクトを精製するために使用することができる精製ペプチドの例は、本明細書に更に詳細に述べる。
本明細書で使用するところの「切断ペプチド」なる用語は、特異的なプロテアーゼにより認識及び切断(すなわちペプチド主鎖の加水分解により)されるアミノ酸配列のことを指す。プロテアーゼの特異性は、プロテアーゼによる切断配列の認識によるところが大きい。
本明細書で使用するところの「直列」とは、1つのポリペプチドのアミノ酸が、単一のポリペプチド内で別のポリペプチドのアミノ酸の後に配置されるようなポリペプチド同士の配列のことを指す。例えば、TfRコンストラクトは、直列に融合された第1のポリペプチド、任意選択的なリンカー、及び第2のポリペプチドを含むことができる(すなわち、第1のポリペプチドのC末端が任意選択的なリンカーのN末端に融合され、任意選択的なリンカーのC末端が第2のポリペプチドのN末端に融合されている)。
CH3及びCH2ドメインに関して「野生型」、「天然」、及び「天然に存在する」なる用語は、本明細書では、天然に存在する配列を有するドメインのことを指して用いられる。
本発明との関連において、突然変異体ポリペプチドまたは突然変異体ポリヌクレオチドに関して「突然変異体」なる用語は、「変異体」と互換的に用いられる。所定の野生型CH3またはCH2ドメイン参照配列に関して、変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体を含むことができる。「天然に存在しない」CH3またはCH2ドメインとは、自然界で細胞内に存在せず、天然CH3ドメインまたはCH2ドメインのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの遺伝子改変(例えば、遺伝子操作技術または突然変異導入法を用いた)によって生成される変異体または突然変異体ドメインのことを指す。「変異体」は、野生型に対して少なくとも1つのアミノ酸変異を有するあらゆるドメインを含む。突然変異は、置換、挿入、及び欠失を含み得る。
「アミノ酸」なる用語は、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体のことを指す。
天然に存在するアミノ酸とは、遺伝子コードによってコードされるもの、及び、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンなどの後で修飾されたアミノ酸である。「アミノ酸類似体」とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合したα炭素)を有する化合物(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなど)のことを指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。「アミノ酸模倣体」とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物のことを指す。
天然に存在するα−アミノ酸としては、これらに限定されるものではないが、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、アルギニン(Arg)、リシン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asn)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。天然に存在するα−アミノ酸の立体異性体としては、これらに限定されるものではないが、D−アラニン(D−Ala)、D−システイン(D−Cys)、D−アスパラギン酸(D−Asp)、D−グルタミン酸(D−Glu)、D−フェニルアラニン(D−Phe)、D−ヒスチジン(D−His)、D−イソロイシン(D−Ile)、D−アルギニン(D−Arg)、D−リシン(D−Lys)、D−ロイシン(D−Leu)、D−メチオニン(D−Met)、D−アスパラギン(D−Asn)、D−プロリン(D−Pro)、D−グルタミン(D−Gln)、D−セリン(D−Ser)、D−スレオニン(D−Thr)、D−バリン(D−Val)、D−トリプトファン(D−Trp)、D−チロシン(D−Tyr)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
本明細書では、アミノ酸は、それらの一般的に知られる3文字記号によるか、またはIUPAC−IUB生化学命名法委員会により推奨される1文字記号で呼称される。
「ポリペプチド」及び「ペプチド」なる用語は、本明細書では一本鎖のアミノ酸残基のポリマーを呼称するうえで互換的に使用される。かかる用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学模倣体であるようなアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸ポリマーは、全体がL−アミノ酸であってもよく、全体がD−アミノ酸であってもよく、またはL−アミノ酸とD−アミノ酸との混合物であってもよい。
本明細書で使用するところの「タンパク質」とは、ポリペプチド、または一本鎖ポリペプチドの二量体(すなわち2個)もしくは多量体(すなわち3個以上)のことを指す。タンパク質の一本鎖ポリペプチド同士は、例えばジスルフィド結合のような共有結合、または非共有結合性相互作用によって結合することができる。
「保存的置換」、「保存的変異」、または「保存的に改変された変異体」なる用語は、あるアミノ酸の、類似の特性を有するものとして分類され得る別のアミノ酸による置換を生じる変化のことを指す。このようにして定義される保存的アミノ酸のグループのカテゴリーの例としては、Glu(グルタミン酸またはE)、Asp(アスパラギン酸またはD)、Asn(アスパラギンまたはN)、Gln(グルタミンまたはQ)、Lys(リシンまたはK)、Arg(アルギニンまたはR)、及びHis(ヒスチジンまたはH)を含む「荷電/極性基」;Phe(フェニルアラニンまたはF)、Tyr(チロシンまたはY)、Trp(トリプトファンまたはW)、及び(ヒスチジンまたはH)を含む「芳香族基」;ならびに、Gly(グリシンまたはG)、Ala(アラニンまたはA)、Val(バリンまたはV)、Leu(ロイシンまたはL)、Ile(イソロイシンまたはI)、Met(メチオニンまたはM)、Ser(セリンまたはS)、Thr(スレオニンまたはT)、及びCys(システインまたはC)を含む「脂肪族基」を挙げることができる。各グループ内にサブグループを特定することもできる。例えば、荷電または極性アミノ酸のグループは、Lys、Arg及びHisを含む「正に荷電したサブグループ」、Glu及びAspを含む「負に荷電したサブグループ」、ならびにAsn及びGlnを含む「極性サブグループ」を含むサブグループに更に分割することができる。別の例では、芳香族または環状基を、Pro、His及びTrpを含む「窒素環サブグループ」、ならびにPhe及びTyrを含む「フェニルサブグループ」を含むサブグループに更に分割することができる。更に別の例では、脂肪族基を、例えば、Val、Leu、Gly、及びAlaを含む「脂肪族非極性サブグループ」、ならびにMet、Ser、Thr、及びCysを含む「脂肪族弱極性サブグループ」などのサブグループに更に分割することができる。保存的変異のカテゴリーの例としては、上記のサブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、これらに限定されるものではないが、正電荷を維持できるようにLysをArgに、またはその逆;負電荷を維持できるようにGluをAspに、またはその逆;遊離−OHを維持できるようにSerをThrに、またはその逆;遊離−NH2を維持できるようにGlnをAsnに、またはその逆が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば活性部位において疎水性アミノ酸を天然に存在する疎水性アミノ酸に置換することで疎水性が保たれる。
2個以上のポリペプチド配列との関連で「同一」または「同一性」なる用語は、配列比較アルゴリズムを用いて、またはマニュアルアラインメント及び目視による検査により測定した場合に比較ウインドウ、または指定された領域にわたって最大の一致となるように比較及びアラインした場合に特定の領域にわたって同じであるか、または例えば、少なくとも60%同一性、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%もしくはそれ以上一致しているアミノ酸残基の特定の割合(%)を有する2個以上の配列またはサブ配列のことを指す。
ポリペプチドの配列比較では、一般的に1つのアミノ酸配列が、候補配列を比較する参照配列の役割を果たす。例えば、視覚的アラインメントまたは既知のアルゴリズムを用いた公開されているソフトウェアを使用するなど、当業者に利用可能な様々な方法を用いてアラインメントを行って最大のアラインメントを得ることができる。かかるプログラムとしては、BLASTプログラム、ALIGN、ALIGN−2(Genentech,South San Francisco,Calif.)、またはMegalign(DNASTAR)が挙げられる。最大のアラインメントを得るためにアラインメントで用いられるパラメータは、当業者によって決めることができる。本出願の目的におけるポリペプチド配列の配列比較では、デフォルトのパラメータを用いて2個のタンパク質配列をアラインするためのBLASTPアルゴリズムの標準タンパク質BLASTを用いる。
あるポリペプチド配列中の所定のアミノ酸残基を特定することとの関連で使用される場合、「〜に対応する」、「〜を基準として決められる」、または「〜を基準として番号付けされる」なる用語は、所定のアミノ酸配列を特定の参照配列と最大限アラインして比較した場合にその参照配列の残基の位置を指す。したがって、例えば、あるポリペプチド中のアミノ酸残基は、その残基が、SEQ ID NO:1と最適にアラインされた場合にSEQ ID NO:1中のそのアミノ酸とアラインする際にSEQ ID NO:1のアミノ酸114〜220の領域中のアミノ酸に「対応する」。参照配列とアラインされるポリペプチドは、参照配列と同じ長さである必要はない。
本明細書で使用するところの「結合親和性」とは、2個の分子間、例えばポリペプチドの1個の結合部位とポリペプチドが結合する標的、例えばトランスフェリン受容体との間の非共有結合相互作用の強さのことを指す。したがって、例えば、この用語は、特に示されるかまたは文脈から明らかでない限り、ポリペプチドとその標的との間の1:1の相互作用のことを指す場合がある。結合親和性は、解離速度定数(k、時間−1)を結合速度定数(k、時間−1−1)で割ったもののことを指す平衡解離定数(K)を測定することにより定量化することができる。Kは、例えば、Biacore(商標)システムなどの表面プラズモン共鳴(SPR)法;KinExA(登録商標)などのカイネティック排除アッセイ;及びバイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBio(登録商標)Octet(登録商標)プラットフォームを使用)を使用して、複合体形成及び解離の速度論を測定することによって求めることができる。本明細書で使用するところの「結合親和性」には、ポリペプチドとその標的と間の1:1の相互作用を反映したもののように正式な結合親和性だけでなく、強い結合を反映し得るKが計算された見かけ上の親和性も含まれる。
本明細書に記載される改変CH3及び/または改変CH2ドメインを含むポリペプチドについて言う場合、標的、例えばトランスフェリン受容体に「特異的に結合する」または「選択的に結合する」なる語句は、ポリペプチドが、構造的に異なる標的、例えばトランスフェリン受容体ファミリーではない標的と結合するよりも強いアフィニティー、強いアビディティー、及び/またはより長い時間で標的と結合する結合反応のことを指す。典型的な実施形態では、ポリペプチドは、同じ親和性アッセイ条件下でアッセイした場合に無関係の標的と比較してトランスフェリン受容体に対して少なくとも5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、25倍、50倍、または100倍、またはそれよりも高い親和性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH3及び/または改変CH2ドメインポリペプチドは、種間で保存された、例えば非ヒト霊長類とヒト種との間で保存されたトランスフェリン受容体上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドはヒトトランスフェリン受容体だけに結合することができる。
本明細書で互換的に使用される「対象」、「個人」、及び「患者」なる用語は、これらに限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、及びモルモット)、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、及び他の哺乳動物種を含む哺乳動物のことを指す。一実施形態では、患者はヒトである。
「治療」、「治療する」、及びこれに類する用語は、本明細書では、所望の薬理学的及び/または生理学的作用を得ることを一般的に意味して用いられる。「治療する」または「治療」は、軽減、寛解、患者の生存率の改善、生存期間もしくは生存率の増大、症状の消失または傷害、疾患、もしくは状態を患者にとってより耐容できるものとすること、変性もしくは低下の速度の遅延、または患者の物理的もしくは精神的な健康の改善などのあらゆる客観的もしくは主観的なパラメータを含む、傷害、疾患、または状態の治療もしくは改善における奏功のあらゆる兆候のことを指す場合がある。症状の治療または改善は、客観的または主観的なパラメータに基づいたものであってよい。治療の効果は、治療を受けていない個人または個人の集団と、または治療前もしくは治療期間の異なる時点において同じ患者と比較することができる。
「薬学的に許容される賦形剤」とは、これらに限定されないが、バッファー、担体、または防腐剤などの、ヒトまたは動物における使用に生物学的または薬理学的に適合した非活性医薬成分のことを指す。
本明細書で使用するところの薬剤の「治療量」または「治療有効量」とは、対象の疾患の症状を治療、緩和、軽減、またはその重症度を低減する薬剤の量である。薬剤の「治療量」または「治療有効量」は、患者の生存率を改善し、生存期間もしくは生存率を増大させ、症状を消失させ、傷害、疾患、もしくは状態をより耐容できるものとし、変性もしくは低下の速度を遅くし、または患者の物理的もしくは精神的な健康を改善することができる。
「投与する」なる用語は、薬剤、化合物、または組成物を生物学的作用が望ましい部位に送達する方法のことを指す。これらの方法としては、これらに限定されるものではないが、局所投与、非経口投与、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、結腸投与、直腸投与、または腹腔内投与が挙げられる。一実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドは静脈内投与される。
III.BBBを通過して輸送され得る改変ポリペプチド
一態様において、本明細書では、血液脳関門(BBB)受容体に結合し、BBBを通過して輸送されることが可能な改変ポリペプチドが提供される。BBB受容体はBBBの内皮、ならびに他の種類の細胞及び組織で発現する。BBB受容体への改変ポリペプチドの結合は、ポリペプチドの内在化を開始させ、BBBを通過して輸送することができる。かかる受容体としては、これらに限定されるものではないが、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF−R)、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質2(LRP2)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、GLUT1、バシギン、ジフテリア毒素受容体、ヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB−EGF)の膜結合前駆体、メラノトランスフェリン、及びバソプレシン受容体が挙げられる。いくつかの実施形態では、BBB受容体はTfRまたはIGF−Rである。
改変Fcポリペプチド
特定の実施形態では、BBBを通過して輸送されることが可能な本明細書で提供されるポリペプチドは、BBB受容体結合部位を有するように改変された(例えば、天然Fcポリペプチドに対して1個以上のアミノ酸置換により)Fcポリペプチドを含む。特定の実施形態では、置換は、溶媒露出アミノ酸の置換である。溶媒露出アミノ酸とは、ポリペプチドがインビボで機能する水性の生理学的液体環境と接触可能なポリペプチドの表面または表面に近いアミノ酸のことを指す。通常、溶媒露出残基では、側鎖の50%よりも大きな部分が溶媒と接触するが、場合によっては側鎖の50%未満、例えば25%〜49%が露出している。溶媒露出アミノ酸としては、βシート、αヘリックス、及び/またはループ内に存在するものが挙げられる。
本発明に基づいて改変される溶媒露出アミノ酸は、典型的には、規定の3次元領域内で連続表面を構成することができるアミノ酸の組(本明細書ではレジスターとも称する)の中に存在するものである。溶媒露出アミノ酸は、例えば抗HIV IgG B12(pdb:1HZH)のようなIgGのモデルに基づいて特定することができる。各位置の残基の溶媒接触表面積(Å)は、European Bioinformatics Institute(EMBL−EBI)より提供されるプログラムPDBePISAを用いて計算することができる。この値を、それぞれの対応するアミノ酸について最大可能接触表面積に対して正規化することで各残基について「露出率(%)」を得ることができる。次に、高度に溶媒露出した残基を、IgGの構造に戻ってマッピングし、表面領域パッチを与える組に視覚的にグループ分けすることができる(例えば、残基約5〜15個、残基6〜12個、残基7〜12個、または残基8〜10個の組)。いくつかの実施形態では、かかる表面領域パッチは、合計で溶媒露出表面の600〜1500Åとなる。代替的な実施形態では、パッチの表面積は、合計で750〜1000Åとなり得る。場合により、表面領域パッチが連続的、または半連続的となるように露出率が50%未満である側鎖を有するアミノ酸残基が含まれてもよい。
免疫グロブリン内の例えばβシート、ループ、及びヘリックスのような二次構造は、ポリペプチド主鎖の二次構造を可視化するPyMolまたはSwissPDB Viewerといったソフトウェアを使用して結晶構造から決定することができる。例えば、FcgammaRI(PDB ID番号4W4O)に結合させたFcポリペプチドの結晶構造の分析を用いて、どのアミノ酸が異なる構造的領域に当てはまるかを決定し、どのアミノ酸側鎖が溶媒露出し得るかを決定する助けとすることができる。表面領域パッチに対応する位置のアミノ酸残基の例示的な組としては、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合に以下の6つの組、すなわち、(i)157、159、160、161、162、163、186、189、及び194;(ii)118、119、120、122、210、211、212、及び213;(iii)47、49、56、58、59、60、61、62、及び63;(iv)39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72;(v)41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73;ならびに(vi)45、47、49、95、97、99、102、103、及び104が挙げられる。かかるパッチに対する改変、及びBBB受容体結合ポリペプチドを作製するために改変(例えば置換)することができるアミノ酸の更なる例を本明細書で詳細に述べる。
本発明に基づいて改変することができるFcポリペプチドのアミノ酸残基、例えば溶媒露出表面残基は、本明細書ではSEQ ID NO:1を基準として番号付けされる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcポリペプチドなどの任意のFcポリペプチドが、SEQ ID NO:1の記載される位置の残基に対応する1つ以上の残基の組(例えば、溶媒露出残基)に改変(例えばアミノ酸置換)を有することができる。SEQ ID NO:1のヒトIgG1のアミノ酸配列とヒトIgG2、IgG3、及びIgG4とのアラインメントを図38に示す。SEQ ID NO:1の任意の特定の位置に対応するIgG2、IgG3、及びIgG4の配列のそれぞれの位置は容易に決定することができる。
BBB受容体と結合し、BBBを通過して輸送されることが可能な本発明の改変ポリペプチドは、天然Fc領域配列またはそのフラグメント、例えば少なくともアミノ酸50個、または少なくともアミノ酸100個、またはそれ以上の長さのフラグメントと少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、天然Fcのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1のFc領域の配列、すなわちSEQ ID NO:1のアミノ酸4〜220である。いくつかの実施形態では、改変ポリペプチドは、SEQ ID NO:1のアミノ酸4〜220、またはそのフラグメント、例えば少なくともアミノ酸50個、または少なくともアミノ酸100個、またはそれ以上の長さのフラグメントと少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。
いくつかの実施形態では、本発明の改変Fcポリペプチドは、天然Fc領域のアミノ酸配列に対応した少なくとも50個のアミノ酸、または少なくとも60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個以上、または少なくとも100個、またはそれよりも多いアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、SEQ ID NO:1のような天然Fc領域のアミノ酸配列に対応した少なくとも25個の連続したアミノ酸、または少なくとも30個、35個、40個、または45個の連続したアミノ酸、または50個の連続したアミノ酸、または少なくとも60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、または95個以上の連続したアミノ酸、または100個以上の連続したアミノ酸を含む。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、典型的には2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の置換を含み、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1のそれぞれの位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、47、49、56、58、59、60、61、62、及び63を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、典型的には2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含み、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1のそれぞれの位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、及び典型的には2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の置換を含み、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1のそれぞれの位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、45、47、49、95、97、99、102、103、及び104を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、典型的には2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含み、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1のそれぞれの位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、118、119、120、122、210、211、212、及び213を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、典型的には2個、3個、4個、5個、6個、または7個の置換を含み、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1の各位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、157、159、160、161、162、163、186、189、及び194を含むアミノ酸位置の組において少なくとも1個の置換、典型的には2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含み、ただし、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められ、置換(複数可)はSEQ ID NO:1のそれぞれの位置に存在するアミノ酸残基に対するものである。
FcRn結合部位
BBBを通過して輸送されることが可能な本発明のポリペプチドは、FcRn結合部位を更に含む。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、改変Fcポリペプチドまたはそのフラグメント内にある。
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然のFcRn結合部位を含む。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、天然のFcRn結合部位のアミノ酸配列に対するアミノ酸の変化を含まない。いくつかの実施形態では、天然のFcRn結合部位は、IgG結合部位、例えばヒトIgG結合部位である。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、FcRnとの結合を変化させる改変を含む。
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、例えば置換などの変異を有する1つ以上のアミノ酸残基を有し、かかる変異(複数可)は血清中半減期を長くするか、または血清中半減期を大きく低下させない(すなわち、同じ条件下でアッセイした場合に変異位置に野生型残基を有する対応するBBB受容体結合タンパク質と比較して血清中半減期を25%以下低下させる)。いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、24〜29位、201位、及び206〜209位で置換された1つ以上のアミノ酸残基を有し、各位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる。
いくつかの実施形態では、FcRn結合部位は、改変ポリペプチドの血清中半減期を延ばす、天然ヒトIgG配列に対する1つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、変異、例えば置換を、SEQ ID NO:1を基準として決めた場合の17〜30位、52〜57位、80〜90位、156〜163位、及び201〜208位のうちの1つ以上に導入する(これらの位置は、EU番号付けを用いた場合の244〜257位、279〜284位、307〜317位、383〜390位、及び428〜435位に相当する)。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:1を基準として決めた場合の24位、25位、27位、28位、29位、80位、81位、82位、84位、85位、87位、158位、159位、160位、162位、201位、206位、207位、または209位に1つ以上の変異を導入する(これらの位置は、EU番号付けを用いた場合の251位、252位、254位、255位、256位、307位、308位、309位、311位、312位、314位、385位、386位、387位、389位、428位、433位、434位、または436位に相当する)。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:1を基準として決めた場合の25位、27位、及び29位のうちの1つ、2つ、または3つに変異を導入する(これらの位置は、EU番号付けを用いた場合の252位、254位、及び256位に相当する)。いくつかの実施形態では、変異は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29Eである。いくつかの実施形態では、本発明の改変Fcポリペプチドは、M25Y、S27T、及びT29Eを更に含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、EU番号付けに従った場合のT307、E380、及びN434位の1つ、2つ、または3つすべてに置換を含む(これらの位置は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT80、E153、及びN207に相当する)。いくつかの実施形態では、変異は、T307Q及びN434A(SEQ ID NO:1のT80Q及びN207A)である。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、変異T307A、E380A、及びN434A(SEQ ID NO:1のT80A、E153A、及びN207A)を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、T250位及びM428位に置換を含む(これらの位置は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT23及びM201に相当する)。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、変異T250Q及び/M428L(SEQ ID NO:1のT23Q及びM201L)を含む。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、M428位及びN434位に置換を含む(これらの位置は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM201及びN207に相当する)。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、置換M428L及びN434Sを含む(これらの位置は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM201L及びN207Sに相当する)。いくつかの実施形態では、改変Fcポリペプチドは、N434SまたはN434Aの置換を含む(これらの置換は、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のN207SまたはN207Aに相当する)。
IV.トランスフェリン受容体結合ポリペプチド
このセクションでは、血液脳関門(BBB)受容体に結合し、トランスフェリン受容体を例示的なBBB受容体として用いてBBBを通過して輸送されることが可能な、本発明に基づく改変Fcポリペプチドの作製について述べる。
CH3トランスフェリン受容体結合ポリペプチド
いくつかの実施形態では、改変されるドメインはIgGのCH3ドメインのようなヒトIgのCH3ドメインである。CH3ドメインは、いずれのIgGのサブタイプ、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から得られるものであってもよい。IgG抗体との関連において、CH3ドメインとは、EU番号付けスキームに従って番号付けした場合に、約341位〜約447位までのアミノ酸のセグメントのことを指す。トランスフェリン受容体結合のための対応するアミノ酸位置の組を特定する目的でのCH3ドメイン内の位置は、特に指定されない限り、SEQ ID NO:3を基準として決められるか、またはSEQ ID NO:1のアミノ酸114〜220を基準として決められる。置換もまた、SEQ ID NO:1を基準として決められ、すなわち、あるアミノ酸は、SEQ ID NO:1の対応する位置のアミノ酸に対して置換であるとみなされる。SEQ ID NO:1は、部分的なヒンジ領域の配列であるPCPをアミノ酸1〜3として含んでいる。SEQ ID NO:1を基準としたCH3ドメイン内の位置の番号付けは、これらの最初の3個のアミノ酸を含む。
上記に述べたように、本発明に基づいて改変することができるCH3ドメインの残基の組は、本明細書ではSEQ ID NO:1を基準として番号付けされる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH3ドメインなどの任意のCH3ドメインが、SEQ ID NO:1の記載される位置の残基に対応する1つ以上の残基の組に改変(例えばアミノ酸置換)を有することができる。SEQ ID NO:1のヒトIgG1のアミノ酸配列とヒトIgG2、IgG3、及びIgG4とのアラインメントを図38に示す。SEQ ID NO:1の任意の特定の位置に対応するIgG2、IgG3、及びIgG4の配列のそれぞれの位置は容易に決めることができる。
当業者には、例えばIgM、IgA、IgE、IgDなどの他の免疫グロブリンアイソタイプのCH2及びCH3ドメインを、これらのドメイン内で上記に述べた組(i)〜(vi)に対応するアミノ酸を特定することにより同様に改変することができる点は理解される。改変は、例えば、非ヒト霊長類、サル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、ニワトリなどの他の種に由来する免疫グロブリンからの対応するドメインに行うこともできる。
一実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH3ドメインポリペプチドは、トランスフェリン受容体のアピカルドメインと、完全長のヒトトランスフェリン受容体配列(SEQ ID NO:235)の208位を含むエピトープにおいて結合するが、この位置は、SEQ ID NO:107に記載されるヒトトランスフェリン受容体のアピカルドメイン配列の11位に対応している。SEQ ID NO:107は、ヒトトランスフェリン受容体1のユニプロテイン(uniprotein)配列P02786(SEQ ID NO:235)のアミノ酸198〜378に対応している。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、トランスフェリン受容体のアピカルドメインと、完全長のヒトトランスフェリン受容体配列(SEQ ID NO:235)の158、188、199、207、208、209、210、211、212、213、214、215、及び/または294位を含むエピトープにおいて結合する。改変CH3ドメインポリペプチドは、受容体に対するトランスフェリンの結合をブロックまたは他の形で阻害することなくトランスフェリン受容体に結合し得る。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、実質的に阻害されない。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、約50%未満(例えば、約45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満)阻害される。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、約20%未満(例えば、約19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満)阻害される。このような結合特異性を示す例示的なCH3ドメインポリペプチドとしては、SEQ ID NO:1のアミノ酸114〜220を基準として決めた場合に157、159、160、161、162、163、186、189、及び194位にアミノ酸置換を有するポリペプチドが挙げられる。
CH3のトランスフェリン受容体と結合する組(i):157、159、160、161、162、163、186、189、及び194
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH3ドメインポリペプチドは、157位、159位、160位、161位、162位、163位、186位、189位、及び194位(組i)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表6に示す。いくつかの実施形態では、161及び/または194位のアミノ酸は芳香族アミノ酸(例えば、Trp、Phe、またはTyr)である。いくつかの実施形態では、161位のアミノ酸はTrpである。いくつかの実施形態では、161位のアミノ酸はGlyである。いくつかの実施形態では、194位の芳香族アミノ酸はTrpまたはPheである。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH3ドメインポリペプチドは、以下のようなSEQ ID NO:1に対する置換を有する少なくとも1つの位置を含む。すなわち、157位にLeu、Tyr、Met、またはVal;159位にLeu、Thr、His、またはPro;160位にVal、Pro、または酸性アミノ酸;161位に芳香族アミノ酸、例えばTrpまたはGly(例えばTrp);162位にVal、Ser、またはAla;186位に酸性アミノ酸、Ala、Ser、Leu、Thr、またはPro;189位にThrまたは酸性アミノ酸;または194位にTrp、Tyr、His、またはPhe。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含み得る。したがって、例えば、Ileが157位、159位、及び/または186位に存在してよい。いくつかの実施形態では、160、186、及び189位のうちの1つ、2つ、またはそれぞれにおける酸性アミノ酸はGluである。他の実施形態では、160、186、及び189位のうちの1つ、2つ、またはそれぞれにおける酸性アミノ酸はAspである。いくつかの実施形態では、157、159、160、161、162、186、189、及び194位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つすべてがこのパラグラフで指定されるアミノ酸置換を有する。
いくつかの実施形態では、組(i)に改変を有するCH3ドメインポリペプチドは、163位に天然のAsnを含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、163位にGly、His、Gln、Leu、Lys、Val、Phe、Ser、Ala、またはAspを含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、153、164、165、及び188を含む位置に1個、2個、3個、または4個の置換を更に含む。いくつかの実施形態では、153位にTrp、Tyr、Leu、またはGlnが存在してよい。いくつかの実施形態では、164位にSer、Thr、Gln、またはPheが存在してよい。いくつかの実施形態では、165位にGln、Phe、またはHisが存在してよい。いくつかの実施形態では、188位にGlnが存在してよい。
特定の実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは以下のうちから選択される2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の位置を含む。すなわち、153位にTrp、Leu、またはGlu;157位にTyrまたはPhe;159位にThr;160位にGlu;161位にTrp;162位にSer、Ala、Val、またはAsn;163位にSerまたはAsn;186位にThrまたはSer;188位にGluまたはSer;189位にGlu;及び/または194位にPhe。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは以下、すなわち、153位にTrp、Leu、またはGlu;157位にTyrまたはPhe;159位にThr;160位にGlu;161位にTrp;162位にSer、Ala、Val、またはAsn;163位にSerまたはAsn;186位にThrまたはSer;188位にGluまたはSer;189位にGlu;及び/または194位にPheの11個の位置のすべてを含む。
特定の実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、157位にLeuまたはMetを、159位にLeu、His、またはProを、160位にValを、161位にTrpを、162位にValまたはAlaを、186位にProを、189位にThrを、及び/または194位にTrpを含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、164位にSer、Thr、Gln、またはPheを更に含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、153位にTrp、Tyr、Leu、またはGlnを、及び/または165位にGln、Phe、またはHisを更に含む。いくつかの実施形態では、153位にTrpが存在し、及び/または165位にGlnが存在する。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、153位にTrpを有さない。
他の実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、157位にTyrを、159位にThrを、160位にGluまたはValを、161位にTrpを、162位にSerを、186位にSerまたはThrを、189位にGluを、及び/または194位にPheを含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、163位に天然のAsnを含む。特定の実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、153位にTrp、Tyr、Leu、またはGlnを、及び/または188位にGluを更に含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、153位にTrpを、及び/または188位にGluを更に含む。
更なる実施形態では、改変CH3ドメインは以下、すなわち、187位がLys、Arg、Gly、またはPro、197位がSer、Thr、Glu、またはLys、及び199位がSer、Trp、またはGly、から選択される1つ、2つ、または3つの位置を更に含む。
いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインは、以下の置換のうちの1つ以上を含む。すなわち、153位にTyr、159位にThr、161位にTrp、162位にVal、186位にSerまたはThr、188位にGlu、及び/または194位にPhe。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸114〜220と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸157〜163及び/または186〜194を含む。いくつかの実施形態では、かかる改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸153〜163及び/または186〜194を含む。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸153〜163及び/または186〜199を含む。
いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が157位、159位、160位、161位、162位、163位、186位、189位、及び194位の組を含まないことを条件として、SEQ ID NO:1のアミノ酸114〜220と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のいずれか1つに記載されるアミノ酸157〜163及び/またはアミノ酸186〜194を含む。
いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つの153、157、159、160、161、162、163、164、165、186、187、188、189、194、197、及び199位に対応する位置のうちの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個が欠失も置換もされていないという条件で、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つと少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。
いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有し、また、以下の位置、すなわち、153位にTrp、Tyr、Leu、Gln、またはGlu;157位にLeu、Tyr、Met、またはVal;159位にLeu、Thr、His、またはPro;160位にVal、Pro、または酸性アミノ酸;161位に芳香族アミノ酸、例えばTrp;162位にVal、Ser、またはAla;163位にSerまたはAsn;164位にSer、Thr、Gln、またはPhe;165位にGln、Phe、またはHis;186位に酸性アミノ酸、Ala、Ser、Leu、Thr、またはPro;187位にLys、Arg、GlyまたはPro;188位にGluまたはSer;189位にThrまたは酸性アミノ酸;194位にTrp、Tyr、HisまたはPhe;197位にSer、Thr、GluまたはLys;及び、199位にSer、Trp、またはGlyのうちの少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:116〜130のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:116〜130のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:116〜130のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:131〜139のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:131〜130のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:131〜139のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個または4個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:303〜339のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:303〜339のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:303〜339のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:136、138、及び340〜345のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:136、138、及び340〜345のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:136、138、及び340〜345のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個または4個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸157〜194、アミノ酸153〜194、またはアミノ酸153〜199を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸157〜194と、または、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つのアミノ酸153〜194と、またはアミノ酸153〜199と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:4〜29及び236〜299のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
CH3のトランスフェリン受容体と結合する組(ii):118、119、120、122、210、211、212、及び213
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH3ドメインポリペプチドは、118位、119位、120位、122位、210位、211位、212位、及び213位(組ii)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、または8個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表5に示す。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、210位にGlyを、211位にPheを、及び/または213位にAspを含む。いくつかの実施形態では、213位にGluが存在してよい。特定の実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、以下の位置に少なくとも1つの置換を含む。すなわち、118位にPheまたはIle、119位にAsp、Glu、Gly、Ala、またはLys、120位にTyr、Met、Leu、Ile、またはAsp、122位にThrまたはAla、210位にGly、211位にPhe、212位にHis、Tyr、Ser、またはPhe、または213位にAsp。いくつかの実施形態では、118、119、120、122、210、211、212、及び213位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つすべてがこのパラグラフで指定される置換を有する。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含むことができる。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つのアミノ酸114〜220と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つのアミノ酸118〜122及び/またはアミノ酸210〜213を含む。
いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が118位、119位、120位、122位、210位、211位、212位、及び213位の組を含まないことを条件として、SEQ ID NO:1のアミノ酸114〜220と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸118〜122及び/またはアミノ酸210〜213を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:140〜153のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:140〜153のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:154〜157のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:154〜157のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されているか、または2個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つのアミノ酸118〜213を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つのアミノ酸118〜213と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つ、またはSEQ ID NO:30〜46のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
CH2トランスフェリン受容体結合ポリペプチド
いくつかの実施形態では、改変されるドメインはIgGのCH2ドメインのようなヒトIgのCH2ドメインである。CH2ドメインは、いずれのIgGのサブタイプ、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から得られるものであってもよい。IgG抗体との関連において、CH2ドメインとは、EU番号付けスキームに従って番号付けした場合に、約231位〜約340位までのアミノ酸のセグメントのことを指す。トランスフェリン受容体結合のための対応するアミノ酸位置の組を特定する目的でのCH2ドメイン内の位置は、SEQ ID NO:2を基準として決められるか、またはSEQ ID NO:1のアミノ酸4〜113を基準として決められる。置換もまた、SEQ ID NO:1を基準として決められ、すなわち、あるアミノ酸は、SEQ ID NO:1の対応する位置のアミノ酸に対して置換であるとみなされる。SEQ ID NO:1は、部分的なヒンジ領域の配列であるPCPをアミノ酸1〜3として含んでいる。これら3個の残基はFc領域の一部ではないが、SEQ ID NO:1を基準としたCH2ドメイン内の位置の番号付けは、これらの最初の3個のアミノ酸を含む。
上記に述べたように、本発明に基づいて改変することができるCH2ドメインの残基の組は、本明細書ではSEQ ID NO:1を基準として番号付けされる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH2ドメインなどの任意のCH2ドメインが、SEQ ID NO:1の記載される位置の残基に対応する1つ以上の残基の組に改変(例えばアミノ酸置換)を有することができる。SEQ ID NO:1のヒトIgG1のアミノ酸配列とヒトIgG2、IgG3、及びIgG4とのアラインメントを図38に示す。SEQ ID NO:1の任意の特定の位置に対応するIgG2、IgG3、及びIgG4の配列のそれぞれの位置は容易に決めることができる。
一実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH2ドメインポリペプチドは、トランスフェリン受容体のアピカルドメイン内のエピトープに結合する。ヒトトランスフェリン受容体のアピカルドメインの配列は、SEQ ID NO:107に記載されており、これはヒトトランスフェリン受容体1のユニプロテイン(uniprotein)配列P02786のアミノ酸198〜378に対応している。改変CH2ドメインポリペプチドは、受容体に対するトランスフェリンの結合をブロックまたは他の形で阻害することなくトランスフェリン受容体に結合し得る。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、実質的に阻害されない。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、約50%未満(例えば、約45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%未満)阻害される。いくつかの実施形態では、トランスフェリンのTfRに対する結合は、約20%未満(例えば、約19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%未満)阻害される。
CH2のトランスフェリン受容体と結合する組(iii):47、49、56、58、59、60、61、62、及び63
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH2ドメインポリペプチドは、47位、49位、56位、58位、59位、60位、61位、62位、及び63位(組iii)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表1に示す。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、60位にGluを、及び/または61位にTrpを含む。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、以下の位置の少なくとも1つの置換、すなわち、47位にGlu、Gly、Gln、Ser、Ala、Asn、Tyr、またはTrp、49位にIle、Val、Asp、Glu、Thr、Ala、またはTyr、56位にAsp、Pro、Met、Leu、Ala、Asn、またはPhe、58位にArg、Ser、Ala、またはGly、59位にTyr、Trp、Arg、またはVal、60位にGlu、61位にTrpまたはTyr、62位にGln、Tyr、His、Ile、Phe、Val、またはAsp、または、63位にLeu、Trp、Arg、Asn、Tyr、またはValを含む。いくつかの実施形態では、47位、49位、56位、58位、59位、60位、61位、62位、及び63位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つすべてがこのパラグラフで指定される置換を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含むことができる。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、47位にGlu、Gly、Gln、Ser、Ala、Asn、またはTyr、49位にIle、Val、Asp、Glu、Thr、Ala、またはTyr、56位にAsp、Pro、Met、Leu、Ala、またはAsn、58位にArg、Ser、またはAla、59位にTyr、Trp、Arg、またはVal、60位にGlu、61位にTrp、62位にGln、Tyr、His、Ile、Phe、またはVal、及び/または63位にLeu、Trp、Arg、Asn、またはTyrを含む。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、58位にArgを、59位にTyrまたはTrpを、60位にGluを、61位にTrpを、及び/または63位にAspまたはTrpを含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つのアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つのアミノ酸47〜49及び/またはアミノ酸56〜63を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の改変CH2ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が47位、49位、56位、58位、59位、60位、61位、62位、及び63位の組を含まないことを条件として、SEQ ID NO:1のアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸47〜49及び/またはアミノ酸56〜63を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:158〜171のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:158〜171のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:172〜186のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:172〜186のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されているか、または2個のアミノ酸が置換されている。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:172〜186のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個または4個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つのアミノ酸47〜63を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜63のうちのいずれか1つのアミノ酸47〜63と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つ、またはSEQ ID NO:47〜62のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
CH2のトランスフェリン受容体と結合する組(iv):39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH2ドメインポリペプチドは、39位、40位、41位、42位、43位、44位、68位、70位、71位、及び72位(組iv)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、8個、9個、または10個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表2に示す。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、43位にProを、68位にGluを、及び/または70位にTyrを含む。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、以下の位置の少なくとも1つの置換、すなわち、39位のPro、Phe、Ala、Met、またはAsp、40位のGln、Pro、Arg、Lys、Ala、Ile、Leu、Glu、Asp、またはTyr、41位のThr、Ser、Gly、Met、Val、Phe、Trp、またはLeu、42位のPro、Val、Ala、Thr、またはAsp、43位のPro、Val、またはPhe、44位のTrp、Gln、Thr、またはGlu、68位のGlu、Val、Thr、Leu、またはTrp、70位のTyr、His、Val、またはAsp、71位のThr、His、Gln、Arg、Asn、またはVal、または72位のTyr、Asn、Asp、Ser、またはProを含む。いくつかの実施形態では、39位、40位、41位、42位、43位、44位、68位、70位、71位、及び72位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個すべてがこのパラグラフで指定される置換を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含むことができる。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、39位にPro、Phe、またはAla、40位にGln、Pro、Arg、Lys、Ala、またはIle、41位にThr、Ser、Gly、Met、Val、Phe、またはTrp、42位にPro、Val、またはAla、43位にPro、44位にTrpまたはGln、68位にGlu、70位にTyr、71位にThr、His、またはGln、及び/または72位にTyr、Asn、Asp、またはSerを含む。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、39位にMet、40位にLeuまたはGlu、41位にTrp、42位にPro、43位にVal、44位にThr、68位にValまたはThr、70位にHis、71位にHis、Arg、またはAsn、及び/または72位にProを含む。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、39位にAsp、40位にAsp、41位にLeu、42位にThr、43位にPhe、44位にGln、68位にValまたはLeu、70位にVal、71位にThr、及び/または72位にProを含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つのアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つのアミノ酸39〜44及び/またはアミノ酸68〜72を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の改変CH2ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が39位、40位、41位、42位、43位、44位、68位、70位、71位、及び72位の組を含まないことを条件として、SEQ ID NO:1のアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸39〜44及び/またはアミノ酸68〜72を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:187〜204のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:187〜204のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:187〜204のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:205〜215のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:205〜215のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されているか、または2個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つのアミノ酸39〜72を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つのアミノ酸39〜72と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つ、またはSEQ ID NO:63〜85のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
CH2のトランスフェリン受容体と結合する組(v):41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH2ドメインポリペプチドは、41位、42位、43位、44位、45位、65位、66位、67位、69位、及び73位(組v)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、8個、9個、または10個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表3に示す。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、以下の位置の少なくとも1つの置換、すなわち、41位のValまたはAsp、42位のPro、Met、またはAsp、43位のProまたはTrp、44位のArg、Trp、Glu、またはThr、45位のMet、Tyr、またはTrp、65位のLeuまたはTrp、66位のThr、Val、Ile、またはLys、67位のSer、Lys、Ala、またはLeu、69位のHis、Leu、またはPro、または、73位のValまたはTrpを含む。いくつかの実施形態では、41位、42位、43位、44位、45位、65位、66位、67位、69位、及び73位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個すべてがこのパラグラフで指定される置換を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含むことができる。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、41位にVal、42位にPro、43位にPro、44位にArgまたはTrp、45位にMet、65位にLeu、66位にThr、67位にSer、69位にHis、及び/または73位にValを含む。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、41位にAsp、42位にMetまたはAsp、43位にTrp、44位にGluまたはThr、45位にTyrまたはTrp、65位にTrp、66位にVal、Ile、またはLys、67位にLys、Ala、またはLeu、69位にLeuまたはPro、及び/または73位にTrpを含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つのアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つのアミノ酸41〜45及び/またはアミノ酸65〜73を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の改変CH2ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が41位、42位、43位、44位、45位、65位、66位、67位、69位、及び73位の組を含まないものとして、SEQ ID NO:1のアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸41〜45及び/またはアミノ酸65〜73を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:216〜220のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:216〜220のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:221〜224のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:221〜224のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されているか、または2個のアミノ酸が置換されている。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:221〜224のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個または4個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つのアミノ酸41〜73を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つのアミノ酸41〜73と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する配列を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つ、またはSEQ ID NO:86〜90のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
CH2の、トランスフェリン受容体と結合する組(vi):45、47、49、95、97、99、102、103、及び104
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変CH2ドメインポリペプチドは、45位、47位、49位、95位、97位、99位、102位、103位、及び104位(組vi)を含むアミノ酸位置の組に少なくとも3個または少なくとも4個、一般的には5個、6個、7個、8個、または9個の置換を含む。これらの位置に導入することができる例示的な置換を表4に示す。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、103位にTrpを含む。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、以下の位置に少なくとも1つの置換、すなわち、45位にTrp、Val、Ile、またはAla;47位にTrpまたはGly;49位にTyr、Arg、またはGlu;95位にSer、Arg、またはGln;97位にVal、Ser、またはPhe;99位にIle、Ser、またはTrp;102位にTrp、Thr、Ser、Arg、またはAsp;103位にTrp;及び、104位にSer、Lys、Arg、またはValを含む。いくつかの実施形態では、45、47、49、95、97、99、102、103、及び104位のうちの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つすべてがこのパラグラフで指定される置換を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、上記の組の中の位置の1つ以上において特定のアミノ酸の保存的置換、例えば、同じ電荷に基づくグループ分け、疎水性に基づくグループ分け、側鎖の環構造に基づくグループ分け(例えば、芳香族アミノ酸)、またはサイズに基づくグループ分け、及び/または極性かまたは非極性かによるグループ分けの中のアミノ酸を含むことができる。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、以下、すなわち、45位がTrp、Val、Ile、またはAla、47位がTrpまたはGly、49位がTyr、Arg、またはGlu、95位がSer、Arg、またはGln、97位がVal、Ser、またはPhe、99位がIle、Ser、またはTrp、102位がTrp、Thr、Ser、Arg、またはAsp、103位がTrp、及び、104位がSer、Lys、Arg、またはVal、から選択される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの位置を含む。
いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、45位にValまたはIle、47位にGly、49位にArg、95位にArg、97位にSer、99位にSer、102位にThr、Ser、またはArg、103位にTrp、及び/または104位にLysまたはArgを含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体に特異的に結合する改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つのアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、かかる改変CH3ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つのアミノ酸45〜49及び/またはアミノ酸95〜104を含む。
いくつかの実施形態では、本発明の改変CH2ドメインポリペプチドは、パーセント同一性が45位、47位、49位、95位、97位、99位、102位、103位、及び104位の組を含まないことを条件として、SEQ ID NO:1のアミノ酸4〜113と少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメインポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つに記載されるアミノ酸45〜49及び/またはアミノ酸95〜104を含む。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:225〜228のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:225〜228のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個または2個のアミノ酸が置換されている。
いくつかの実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:229〜233のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:229〜223のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の1個のアミノ酸が置換されているか、または2個のアミノ酸が置換されている。他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:229〜233のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むが、配列中の3個、4個または5個のアミノ酸が置換されている。
更なる実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つのアミノ酸45〜104を含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つのアミノ酸45〜104と少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する配列を有することができる。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まない、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つを含む。更なる実施形態では、ポリペプチドは、アミノ末端の最初の3個のアミノ酸「PCP」を含まずに決められた、SEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つ、またはSEQ ID NO:91〜95のうちのいずれか1つと少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。
V.改変CH3またはCH2ドメインポリペプチドを含むFc領域内の更なる変異
BBB受容体を結合してBBBを通過する輸送を開始するように改変された、本明細書で提供されるFcポリペプチドは、例えば、血清安定性を高めるため、エフェクター機能を調節するため、グリコシル化に影響を及ぼすため、ヒトにおける免疫原性を低下させるため、及び/または、Fcポリペプチドのノブ・アンド・ホール型のヘテロ二量化を可能とするためなど、更なる変異を含んでもよい。
いくつかの実施形態では、本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、対応する野生型Fcポリペプチド(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFcポリペプチド)と少なくとも約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性を有する。
本発明に基づく改変Fcポリペプチドは、例えば、グリコシル化に影響を及ぼすため、血清半減期を長くするため、またはCH3ドメインについては、改変CH3ドメインを構成するポリペプチドのノブ・アンド・ホール型のヘテロ二量化を可能とするためなど、指定されたアミノ酸の組の外側に導入される他の変異を有してもよい。一般的に、この方法では、第1のポリペプチドの界面に突起(「ノブ」)を、第2のポリペプチドの界面に対応した穴(「ホール」)を導入することで、突起が穴の中に位置してヘテロ二量体の形成を促し、ホモ二量体の形成を妨げることができることを伴う。突起は、第1のポリペプチドの界面の小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に置換することによって形成される。突起と同じ、または同様の大きさの相補的な穴が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンまたはスレオニン)に置換することによって第2のポリペプチドの界面に形成される。このような更なる変異は、トランスフェリン受容体に対する改変CH3またはCH2ドメインの結合に負の影響を及ぼさないポリペプチド内の位置に導入される。
二量体化のためのノブ・アンド・ホール型のアプローチの例示的な一実施形態では、二量体化しようとする第1のFcポリペプチドサブユニットの、SEQ ID NO:1の139位に対応する位置が、天然のスレオニンの代わりにトリプトファンを有し、二量体の第2のFcポリペプチドサブユニットが、SEQ ID NO:1の180位に対応する位置に天然のチロシンの代わりにバリンを有する。Fcポリペプチドの第2のサブユニットは、SEQ ID NO:1の139位に対応する位置の天然のスレオニンがセリンに置換され、SEQ ID NO:1の141位に対応する位置の天然のロイシンがアラニンに置換される置換を更に含んでもよい。
本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、ヘテロ二量体化のための他の改変(例えば、自然に帯電しているCH3−CH3界面内の接触残基の静電的操作、または疎水性パッチ改変など)を有するように操作することもできる。
いくつかの実施形態では、血清半減期を延ばすための改変を導入することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、SEQ ID NO:1の25位に対応する位置にTyrを、SEQ ID NO:1の27位に対応する位置にThrを、SEQ ID NO:1の29位に対応する位置にGluを含むCH2ドメインを含む。あるいは、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合にM201L及びN207Sの置換を含んでもよい。あるいは、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合にN207SまたはN207Aの置換を含んでもよい。
Fcのエフェクター機能
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、エフェクター機能を有する(すなわち、これらのFc領域は、エフェクター機能を媒介するエフェクター細胞で発現されたFc受容体に結合する際に特定の生物学的機能を誘導する能力を有する)。エフェクター細胞としては、これらに限定されるものではないが、単核球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、好酸球、マスト細胞、血小板、B細胞、大顆粒リンパ球、ランゲルハンス細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び細胞傷害性T細胞が挙げられる。
抗体エフェクター機能の例としては、これらに限定されるものではないが、C1q結合及び補体依存性細胞傷害活性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞障害活性(ADCC)、抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)、細胞表面受容体のダウンレギュレーション(例えば、B細胞受容体)、及びB細胞活性化が挙げられる。エフェクター機能は抗体クラスによって異なり得る。例えば、天然のヒトIgG1及びIgG3抗体は、免疫系細胞上に存在する適当なFc受容体に結合する際にADCC及びCDC活性を誘発することができ、天然のヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4は、免疫細胞上に存在する適当なFc受容体に結合する際にADCP機能を誘発することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、エフェクター機能を低下させる更なる改変を有することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、本発明の改変CH2またはCH3ドメインを含む改変Fc領域は、エフェクター機能を高める更なる改変を含むことができる。
エフェクター機能を調節する例示的なFcポリペプチド変異としては、これらに限定されるものではないが、CH2ドメイン内の置換、例えば、SEQ ID NO:1の7及び8位に対応する位置における置換が挙げられる。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメイン内の置換は、SEQ ID NO:1の7及び8位のAlaを含む。いくつかの実施形態では、改変CH2ドメイン内の置換は、SEQ ID NO:1の7及び8位のAla、ならびに102位のGlyを含む。
エフェクター機能を調節する更なるFcポリペプチド変異としては、これらに限定されるものではないが、238、265、269、270、297、327及び329位における1つ以上の置換を含む(EU番号付けスキームでは、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合に11、38、42、43、70、100、及び102位に相当する)。例示的な置換(EU番号付けスキームで番号付けした場合)には以下のものが含まれる。すなわち、329位は、プロリンがグリシンもしくはアルギニンまたはFcのプロリン329とFcγRIIIのトリプトファン残基Trp87及びTrp110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面を壊すだけの充分な大きさを有するアミノ酸残基に置換された変異を有することができる。更なる例示的な置換としては、S228P、E233P、L235E、N297A、N297D、及びP331Sが挙げられる。複数の置換が存在してもよく、例えば、ヒトIgG1のFc領域のL234A及びL235A、ヒトIgG1のFc領域のL234A、L235A、及びP329G、ヒトIgG4のFc領域のS228P及びL235E、ヒトIgG1のFc領域のL234A及びG237A、ヒトIgG1のFc領域のL234A、L235A、及びG237A、ヒトIgG2のFc領域のV234A及びG237A、ヒトIgG4のFc領域のL235A、G237A、及びE318A、ならびにヒトIgG4のFc領域のS228P及びL236Eが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の改変Fcポリペプチドは、ADCCを調節する1つ以上のアミノ酸置換(例えば、EU番号付けスキームに従って、Fc領域の298、333、及び/または334位の置換)を有することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドは、ADCCを増大または減少させる1つ以上のアミノ酸置換を有してもよく、またはC1q結合及び/またはCDCを変化させる変異を有してもよい。
更なる変異を含む例示的なFcポリペプチド
本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、CH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、及び/または血清安定性を高める変異(例えば、(i)SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E、または(ii)SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合の、M201Lを伴うかまたは伴わないN207S)を含む更なる変異を含むことができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ノブ変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ノブ変異、及びエフェクター機能を調節する変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ノブ変異、及び血清安定性を高める変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ホール変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ホール変異、及びエフェクター機能を調節する変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ホール変異、及び血清安定性を高める変異を有するように改変することができる。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.20.1、CH3C.35.23.2、CH3C.35.23.3、CH3C.35.23.4、CH3C.35.21.17.2、及びCH3C.35.23のうちのいずれか1つ)は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、SEQ ID NO:4〜95及び236〜299のうちのいずれか1つの配列を有する改変Fcポリペプチドは、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するように改変することができる。
クローンCH3C.35.20.1
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:349の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:349の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:350または351の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:350または351の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:352の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:352の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:353または354の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:353または354の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:355の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:355の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:356または357の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:356または357の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:358の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:358の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.20.1は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:359または360の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.20.1は、SEQ ID NO:359または360の配列を有する。
クローンCH3C.35.23.2
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:361の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:361の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:362または363の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:362または363の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:364の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:364の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:365または366の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:365または366の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:367の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:367の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:368または369の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:368または369の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:370の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:370の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:371または372の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.2は、SEQ ID NO:371または372の配列を有する。
クローンCH3C.35.23.3
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:373の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:373の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:374または375の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:374または375の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:376の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:376の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:377または378の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:377または378の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:379の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:379の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:380または381の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:380または381の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:382の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:382の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.3は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:383または384の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.3は、SEQ ID NO:383または384の配列を有する。
クローンCH3C.35.23.4
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:385の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:385の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:386または387の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:386または387の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:388の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:388の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A) )、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:389または390の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:389または390の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:391の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:391の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:392または393の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:392または393の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:394の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:394の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23.4は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A) )、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:395または396の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23.4は、SEQ ID NO:395または396の配列を有する。
クローンCH3C.35.21.17.2
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:397の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:397の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:398または399の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:398または399の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:400の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:400の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A) )、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:401または402の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:401または402の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:403の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:403の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:404または405の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:404または405の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:406の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:406の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.21.17.2は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A) )、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:407または408の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.21.17.2は、SEQ ID NO:407または408の配列を有する。
クローンCH3C.35.23
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、及びSEQ ID NO:409の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:409の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:410または411の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:410または411の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:412の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:412の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ノブ変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139W)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:413または414の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ノブ変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:413または414の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、ならびにSEQ ID NO:415の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:415の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、ならびにSEQ ID NO:416または417の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及びエフェクター機能を調節する変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:416または417の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:418の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:418の配列を有する。
いくつかの実施形態では、クローンCH3C.35.23は、ホール変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のT139S、L141A、及びY180V)、エフェクター機能を調節する変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のL7A、L8A、及び/またはP102G(例えば、L7A及びL8A))、血清安定性を高める変異(例えば、SEQ ID NO:1を基準として番号付けした場合のM25Y、S27T、及びT29E)、ならびにSEQ ID NO:419または420の配列と少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有することができる。いくつかの実施形態では、ホール変異、エフェクター機能を調節する変異、及び血清安定性を高める変異を有するクローンCH3C.35.23は、SEQ ID NO:419または420の配列を有する。
VI.BBB受容体結合タンパク質のフォーマット
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチド及びFcRn結合部位を含む本発明の改変BBB受容体結合ポリペプチドは、タンパク質二量体のサブユニットである。いくつかの実施形態では、二量体はヘテロ二量体である。いくつかの実施形態では、二量体はホモ二量体である。いくつかの実施形態では、二量体は、BBB受容体に結合する1個のFcポリペプチドを含む(すなわちBBB受容体との結合について一価である)。いくつかの実施形態では、二量体は、BBB受容体に結合する第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは二価のホモ二量体タンパク質を与えるように同じ改変Fcポリペプチドを含むものでもよく、または本発明の第2の改変Fcポリペプチドが第2のBBB受容体結合部位を与えてもよい。
本発明のBBB受容体結合ポリペプチド及びポリペプチドを含む二量体または多量体タンパク質は、例えば、ポリペプチドのフォーマットに基づいた、広範囲の結合親和性を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドを含むポリペプチドは、1pM〜10μmの範囲にわたるBBB受容体に対する親和性を有する。いくつかの実施形態では、親和性は一価のフォーマットで測定することができる。他の実施形態では、親和性は、例えば、改変Fcポリペプチドを含むタンパク質二量体として、二価のフォーマットで測定することができる。
BBB受容体に対する結合を分析するために結合親和性、結合速度論、及び交差反応性を分析するための方法は当該技術分野では周知のものである。これらの方法としては、これらに限定されるものではないが、固相結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ)、免疫沈降法、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore(商標)(GE Healthcare,Piscataway,NJ))、速度論的排除アッセイ(kinetic exclusion assay)(例えば、KinExA(登録商標))、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet(登録商標)(ForteBio,Inc.,Menlo Park,CA))、及びウェスタンブロット分析が挙げられる。いくつかの実施形態では、結合親和性及び/または交差反応性を調べるためにELISAが用いられる。ELISAアッセイを行うための方法は当該技術分野では周知のものであり、下記実施例のセクションでも述べる。いくつかの実施形態では、結合親和性、結合速度論、及び/または交差反応性を調べるために表面プラズモン共鳴(SPR)が用いられる。いくつかの実施形態では、結合親和性、結合速度論、及び/または交差反応性を調べるために速度論的排除アッセイが用いられる。いくつかの実施形態では、結合親和性、結合速度論、及び/または交差反応性を調べるためにバイオレイヤー干渉法が用いられる。BBB受容体結合ポリペプチドのFcRn結合もこれらのタイプのアッセイを用いて評価することができる。FcRn結合は、通常は酸性条件下、例えばpH約5〜約6でアッセイされる。
VII.BBB受容体結合タンパク質結合体
いくつかの実施形態では、BBBの受容体に結合してBBBを通過する輸送を開始する改変ポリペプチドは、本明細書に記載される改変Fcポリペプチドを含み、部分的または完全なヒンジ領域を更に含む。ヒンジ領域は、いずれの免疫グロブリンサブクラスまたはアイソタイプからのものであってもよい。例示的な免疫グロブリンのヒンジの1つとして、IgG1のヒンジ領域(例えば、ヒトIgG1のヒンジのアミノ酸配列EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:234))などのIgGヒンジ領域がある。更なる実施形態では、ヒンジまたは部分的なヒンジ領域を含むことができるポリペプチドを、別の部分、例えば免疫グロブリンの可変領域と更に連結することにより、BBB受容体結合ポリペプチド−可変領域融合ポリペプチドが作製される。可変領域は、対象となる任意の抗原、例えば治療用の神経学的標的、または診断用の神経学的標的と結合することができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)は、リンカーを介して可変領域と連結される。上記のパラグラフに示したように、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば改変Fcポリペプチド)は、ヒンジ領域によって可変領域と連結することができる。いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)は、ペプチドリンカーによって可変領域と連結することができる。ペプチドリンカーは、可変領域とBBB受容体結合ポリペプチドとの互いに対する回転を可能とするように構成することができ、及び/またはプロテアーゼによる消化に対して耐性を有するものである。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば、Gly、Asn、Ser、Thr、Alaなどのアミノ酸を含む柔軟なリンカーであってよい。かかるリンカーは、周知のパラメータを用いて設計することができる。例えば、リンカーは、Gly−Serリピートのような繰り返し配列を有することができる。
可変領域は、任意の抗体フォーマット、例えばFabまたはsvFvのフォーマットとすることができる。いくつかの実施形態では、抗体可変領域配列は、2個の抗体可変領域重鎖と2個の抗体可変領域軽鎖、またはそれらのそれぞれのフラグメントを含む。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)と連結された可変領域は、タウタンパク質(例えば、ヒトタウタンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、リン酸化タウタンパク質、非リン酸化タウタンパク質、タウタンパク質のスプライスアイソフォーム、N末端が切断されたタウタンパク質、C末端が切断されたタウタンパク質、及び/またはそれらのフラグメントに結合することができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)と連結された可変領域は、β−セクレターゼ1(BACE1)タンパク質(例えば、ヒトBACE1タンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、BACE1タンパク質の1つ以上のスプライスアイソフォームまたはそのフラグメントに結合することができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)と連結された可変領域は、骨髄細胞上に発現するトリガー受容体2(TREM2)タンパク質(例えば、ヒトTREM2タンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)と連結された可変領域は、α−シヌクレインタンパク質(例えば、ヒトα−シヌクレインタンパク質)またはそのフラグメントに結合することができる。いくつかの実施形態では、可変領域は、モノマー性α−シヌクレイン、オリゴマー性α−シヌクレイン、α−シヌクレインフィブリル、可溶性α−シヌクレイン、及び/またはこれらのフラグメントに結合することができる。
BBB受容体結合ポリペプチド(例えば、改変Fcポリペプチド)は、対象となる抗原を標的化する免疫グロブリン可変領域以外のポリペプチドと連結することもできる。いくつかの実施形態では、かかるポリペプチドは、例えば上記に述べた柔軟なリンカーのようなペプチドリンカーを用いてBBB受容体結合ポリペプチドと連結される。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、BBB受容体結合ポリペプチドを発現している細胞を標的化するうえで望ましい、例えば治療ポリペプチドなどのポリペプチドと連結することができる。いくつかの実施形態では、BBB受容体ポリペプチドは、BBBを通過して輸送するための生物学的活性を有するポリペプチド、例えば、可溶性タンパク質、例えば、受容体の細胞外ドメインもしくは成長因子、サイトカイン、または酵素と連結される。
尚も他の実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、タンパク質の精製に有用なペプチドまたはタンパク質、例えば、ポリヒスチジン、エピトープタグ、例えばFLAG、c−Myc、ヘマグルチニンタグなど、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、protein A、protein G、またはマルトース結合タンパク質(MBP)と連結することができる。場合により、BBB結合ポリペプチドと融合されたペプチドまたはタンパク質は、第Xa因子またはトロンビンの切断部位のようなプロテアーゼ切断部位を含むことができる。特定の実施形態では、連結は中枢神経系に存在する酵素によって切断可能なものである。
ポリペプチド以外の物質をBBB受容体結合ポリペプチドと連結することもできる。かかる物質としては、細胞毒性剤、造影剤、DNAもしくはRNA分子、または化合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、物質は、治療用または造影用の化合物である。いくつかの実施形態では、物質は小分子、例えば、1000Da未満、750Da未満、または500Da未満である。
物質は、ポリペプチドまたは非ポリペプチドのいずれであっても、BBB受容体結合ポリペプチドのN末端またはC末端領域に連結するか、または、物質がBBB受容体結合ポリペプチドのBBB受容体及びFcRn受容体に対する結合を妨げない限り、ポリペプチドの任意の領域に結合させることができる。
異なる実施形態において、周知の化学架橋試薬及びプロトコールを用いて結合体を作製することができる。例えば、当業者には周知の、ポリペプチドを対象となる薬剤と架橋するうえで有用な多くの化学架橋剤が存在する。例えば、架橋剤は、分子を段階的に連結するために使用することができるヘテロ二官能性架橋剤である。ヘテロ二官能性架橋剤は、タンパク質を結合するためのより特異的な連結方法の設計を可能とし、それにより、ホモタンパク質ポリマーのような不要な副反応の発生を低減するものである。広範な種類のヘテロ二官能性架橋剤が当該技術分野で周知であり、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体であるN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルポキシレート(SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−a−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスクシンイミジル 6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート]ヘキサノエート(LC−SPDP)が挙げられる。N−ヒドロキシスクシンイミド部分を有するこれらの架橋剤は、より高い水溶性を一般的に有するN−ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体として得ることができる。更に、連結鎖内にジスルフィド架橋を有するこれらの架橋剤は、代わりにアルキル誘導体として合成することもでき、これによりインビボでのリンカー切断の量を低減させることができる。ヘテロ二官能性架橋剤以外にも、ホモ二官能性及び光反応性架橋剤を含む、他の多くの架橋剤が存在する。スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、ビスマレイミドヘキサン(BMH)、及びピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩(DMP)は、有用なホモ二官能性架橋剤の例であり、ビス−[B−(4−アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド(BASED)、及びN−スクシンイミジル−6(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)ヘキサノエート(SANPAH)は、有用な光反応性架橋剤の例である。
対象となる薬剤は、細胞毒性剤など、または化学的部分を含む治療剤であってよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、ペプチドまたは小分子治療剤もしくは造影剤であってよい。
VIII.BBB受容体に結合するようにFcポリペプチドを操作する方法
操作方法の概略
更なる態様では、BBB受容体に対する結合特異性を有するようにFcポリペプチドを操作する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドの改変は、溶媒露出アミノ酸残基の組、例えば、本明細書で述べたような組(i)及び/または組(ii)の様々なアミノ酸を置換することを含む。
いくつかの実施形態では、本方法は、Fcポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、溶媒露出表面アミノ酸の組の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはすべての位置にアミノ酸の変化を有するように改変することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、Fcポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、アミノ酸の2つ以上の組の所望の数の位置にアミノ酸の変化を有するように改変することを含む。所望の位置に導入されるアミノ酸を、ランダム化または部分ランダム化によって生成することによってある組の様々な位置にアミノ酸置換を有するFcポリペプチドのライブラリーを作製することができる。いくつかの実施形態では、Fcポリペプチドは、完全なヒンジ領域の一部、または全体を含むことができる。
変異Fcポリペプチドを含むポリペプチドは、任意の数の系を用いて発現させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドは、ディスプレイ系、例えば、ウイルスディスプレイ系、例えば酵母ディスプレイ系などの細胞表面ディスプレイ系、mRNAディスプレイ系、またはポリソームディスプレイ系で発現させることができる。他の例示的な実施形態では、変異体ポリペプチドは宿主細胞から分泌される可溶性ポリペプチドとして発現される。周知の方法を用いてライブラリーをスクリーニングして対象となるBBB受容体に結合するポリペプチドを特定し、更にその特性分析を行って結合の反応速度論を調べることができる。その後、更なる変異を、最初のアミノ酸の組の各位置、または組の外側の他の位置、例えばパラトープの近くの溶媒露出アミノ酸のいずれかにおいて、選択されたクローンに導入することができる。
操作方法の例示的な実施形態
野生型Fcポリペプチド、またはそのフラグメント、例えばCH2またはCH3ドメインを有するDNA鋳型配列を作製することができる。いくつかの実施形態では、変異を導入した鋳型配列は、抗体可変領域を更にコードする。いくつかの実施形態では、鋳型配列は、所望の位置に変異を導入し、抗体可変領域なしで発現されるFCポリペプチドをコードする。
発現系は、対象となるBBB受容体との結合について変異ポリペプチドをスクリーニングするうえで使用することができる任意の系であってよい。いくつかの実施形態では、鋳型配列は、ファージミドベクター内で作製される。特定の実施形態では、鋳型配列は、ファージのpIIIコートタンパク質に遺伝子操作によって融合される。
いくつかの実施形態では、変異導入したFcポリペプチドは酵母ディスプレイベクター内で作製される。例えば、鋳型配列は、酵母細胞壁タンパク質Aga2p、例えばAga2pのN末端またはC末端に融合させることができる。酵母株は、Aga2pコートタンパク質の誘導性発現を行うことができるものでよく、例えば、酵母株はEBY100であってよい。
いくつかの実施形態では、エラープローンPCRのようなランダム突然変異誘発法を用いて所望のアミノ酸位置に変異を導入する。
突然変異誘発を行った後、変異導入した核酸を、対象となるディスプレイ系に導入して発現させ、対象となるBBB受容体との結合についてスクリーニングする。任意の数のスクリーニング法を用いることができる。典型的な実施形態では、発現したタンパク質をELISAを用いてスクリーニングする。
対象となるBBB受容体に結合する選択されたFcポリペプチドに更なるラウンドの変異を行って、所望のアミノ酸の組、または特定の組について指定された位置の外側の位置に更なる変異を導入することができる。いくつかの実施形態では、「NNK」ランダム化を用いて更なる変異を導入する。NNKランダム化では、Nが「A、C、G、またはT」を、Kが「GまたはT」を指す、縮重NNKトリコドンを含むプライマーを用いる。例えば、NNKランダム化では、特定のアミノ酸の所定の混合物(例えば、70%野生型)を得るために特定の比率でトリヌクレオチドを混合するか、または特定のアミノ酸について、または特定のアミノ酸に対する偏りがないようにトリヌクレオチドを混合する。ランダム化の領域に対応するFc領域のフラグメントのPCR増幅を行ってから、例えばファージミドベクターのようなベクターにライゲートするためのエンドプライマーを用いてアセンブルすることによりライブラリーを作製する。あるいは、Kunkel突然変異誘発法または他の突然変異誘発法を用いて更なる変異を導入することにより所望の位置に多様性を導入することもできる。
変異導入したFcポリペプチドの結合特性を様々なアッセイを用いて評価することができ、例えば、結合親和性及び/または交差反応性を、ELISA、表面プラズモン共鳴、結合平衡除外アッセイ、または干渉法アッセイによって調べることができる。
所望の結合特性を有する改変されたBBB受容体結合ポリペプチドが特定されたならば、ポリペプチドをBBBを通過する輸送、及び/または別の薬物動態学的パラメータについて更にスクリーニングする。輸送についてスクリーニングする方法は、動物モデルを用いて脳内へのBBB受容体ポリペプチドの取り込みを評価することを含む。取り込みは、例えば、BBB受容体結合タンパク質に結合させた生物学的活性を有するタンパク質または他の物質のタンパク質濃度もしくは活性を測定するなど、様々なアッセイによって評価することができる。タンパク質濃度は、BBB受容体結合ポリペプチドに特異的に結合する抗体、またはBBB受容体結合ポリペプチドに対して特異的な試薬に結合する二次試薬としての抗体を用いたイムノアッセイによって便宜よく測定することができる。いくつかの実施形態では、血液脳関門を通過する輸送は、脳に取り込まれるBBB受容体結合ポリペプチドに連結された物質の量を測定することによって評価される。上記に詳しく述べたように、かかる物質は、抗原に結合する免疫グロブリンの可変領域、酵素、または他のポリペプチド剤などのポリペプチドであってよい。BBB受容体結合ポリペプチドの血清中半減期のような更なるパラメータも動物モデルで評価することができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドの輸送は、BBB受容体結合ポリペプチドに連結された物質の脳内での生物学的活性を測定することにより評価することができる。例えば、BBB受容体結合ポリペプチドに連結された酵素の活性を、脳または脳の領域における酵素活性について直接アッセイすることにより評価することができる。あるいは、酵素の活性は、BBB受容体結合ポリペプチドによる輸送後に残留する脳内のその酵素の基質の濃度を測定することによって評価することもできる。いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドに連結された抗体治療薬の活性を、治療抗体が結合する標的抗原の濃度または活性を測定することによって評価することができる。本発明の改変Fcポリペプチドによって媒介されるBBB受容体との結合は、BBB受容体結合ポリペプチドに連結された生物学的活性物質の取り込みを、改変Fcポリペプチドの非存在下での物質の取り込みと比較して、通常は少なくとも5倍、しばしば少なくとも10倍、または少なくとも20倍、またはそれ以上増大させる。
IX. TfRコンストラクト
本開示は、単量体のTfRアピカルドメインを含む単離された組換えトランスフェリン受容体(TfR)コンストラクトであって、TfRのプロテアーゼ様ドメインまたは螺旋ドメインを含まないコンストラクトも特色とする。一実施形態では、コンストラクトは、保存されたエピトープまたは抗原を提示し、かつ/または天然のヒトTfRのアピカルドメインのおよその3次元構造を保持するか、もしくは約2未満のRMSDを有する。一実施形態では、3次元構造は、X線結晶解析によって測定される。一実施形態では、コンストラクトは、ヒトTfRアピカルドメインを含む。
更に、本開示は、完全長のTfR配列に対して環状に並べ替えられたTfRアピカルドメインの1つ以上の部分を含むTfRコンストラクトも特色とする。TfRコンストラクトは、任意選択的なリンカーによって互いに直列に融合されたTfRアピカルドメインの2つの異なる部分で構成することができる。TfRコンストラクトは、(a)TfRアピカルドメインの第1の部分の配列を含む第1のポリペプチドと、(b)任意選択的なリンカーと、(c)TfRアピカルドメインの第2の部分の配列を含む第2のポリペプチドと、を含むことができ、完全長のTfR配列に対して、TfRアピカルドメインの第1の部分の配列は、TfRアピカルドメインの第2の部分の配列のC末端側であり、第1のポリペプチド、任意選択的なリンカー、及び第2のポリペプチドが、直列に融合されている(すなわち、第1のポリペプチドのC末端が任意選択的なリンカーのN末端に融合され、任意選択的なリンカーのC末端が第2のポリペプチドのN末端に融合されている)。特定の実施形態では、TfRコンストラクトはリンカーを含まない。したがって、TfRコンストラクト内の第1のポリペプチドは第2のポリペプチドと直接融合され得る。本明細書に記載されるTfRコンストラクトは、アレナウイルス(例えば、マチュポウイルス)に結合することができる。
TfRコンストラクトは、
Figure 2020508053
の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む第1のポリペプチドと、任意選択的なリンカーと、
Figure 2020508053
の配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む第2のポリペプチドと、を含んでよく、第1のポリペプチド、任意選択的なリンカー、及び第2のポリペプチドは直列に融合されている。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドはC末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。非限定的な例として、第1のポリペプチドのC末端のフラグメントは、配列
Figure 2020508053
を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドはN末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。非限定的な例として、第1のポリペプチドのN末端のフラグメントは、配列
Figure 2020508053
を有する。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドはC末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。非限定的な例として、第2のポリペプチドのC末端のフラグメントは、配列
Figure 2020508053
を有する。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドはN末端において、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む。非限定的な例として、第2のポリペプチドのN末端のフラグメントは、配列
Figure 2020508053
を有する。
いくつかの実施形態では、TfRコンストラクトの第1のポリペプチドは、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、配列
Figure 2020508053
に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性)を有する配列を含む。特定の実施形態では、TfRコンストラクトは、SEQ ID NO:449の配列を有する第1のポリペプチドと、SEQ ID NO:450の配列を有する第2のポリペプチドとを含み、第1のポリペプチドのC末端は第2のポリペプチドのN末端に融合される。特定の実施形態では、TfRコンストラクトは、
Figure 2020508053
の配列を有する第1のポリペプチドと、
Figure 2020508053
の配列を有する第2のポリペプチドとを含み、第1のポリペプチドのC末端は第2のポリペプチドのN末端に融合される。
特定の実施形態では、本明細書に記載されるTfRコンストラクトは、天然のフォールディングなどの改善された3次元構造、及び天然状態におけるのと同様の保存されたエピトープまたは抗原を提示するといった特性を有する。例えば、3次元空間において、TfRコンストラクトは、完全なトランスフェリン受容体の部分が複合体化する際の天然の折り畳み状態にあるトランスフェリン受容体のアピカルドメインをよく模倣した形で折り畳まれる。
別の例では、本明細書に記載されるTfRコンストラクトの構造的特徴は、TfRコンストラクトが、ファージ、酵母、及び/または真核細胞を含む他の細胞タイプなどの様々な細胞上に天然の3次元フォールディング状態で提示されることを可能とする。本明細書に記載されるTfRコンストラクトが適正な天然のフォールディング状態で提示されることで、例えば、本明細書に記載されるような方法で、様々な疾患または障害を治療するために治療分子を投与する際にみられる自然の条件下においてインビボでトランスフェリン受容体のアピカルドメインに結合する高親和性タンパク質、抗体、または他の結合分子をTfRコンストラクトを使用して同定する場合のスクリーニングの結果の改善につながる。例えば、トランスフェリン受容体のタンパク質全体が発現されて細胞表面上に提示される場合、タンパク質は二量体として提示され、これがアビディティー効果をもたらすことにより、TfRアピカルドメインに対して低いアフィニティーを有する結合タンパク質の特定につながる。本明細書に記載されるTfRコンストラクトの構造的特徴は、アピカルドメインが細胞表面上に単量体として発現して提示されることを可能とすることで、結合分子とアピカルドメインとの間の単量体相互作用の研究及び特定を可能とし、より親和性の高い分子の同定を可能とするものである。
製造方法
本開示の別の態様は、単量体のTfRアピカルドメインを含む単離された組換えトランスフェリン受容体(TfR)コンストラクトであって、TfRのプロテアーゼ様ドメインまたは螺旋ドメインを含まないコンストラクトに関する。一実施形態では、コンストラクトは、保存されたエピトープまたは抗原を提示し、かつ/または天然のヒトTfRのアピカルドメイン(例えば、SEQ ID NO:107)のおよその3次元構造を保持するか、もしくは約2未満のRMSDを有する。別の実施形態では、3次元構造は、X線結晶解析によって測定される。3次元構造を決定するために用いられる方法の1つにX線結晶解析がある。結晶は、例えば20%(v/v)エチレングリコールのような極性溶媒を添加した結晶化母液を用いて液体窒素中に直接浸漬することによるフラッシュ冷却を用いて調製することができる。X線強度データは、高速検出器(Rayonix300)を使用してAPS(advanced photon source)(Advanced Photon Source,Argonne National LaboratoryのSER−CATビーム線)で収集することができる。収集されたデータは、HKL−2000(HKL Research,Inc.)プログラムを用いてインデックス付けし、積分し、スケーリングすることができる。複合体の結晶構造は、TfRアピカルドメイン単量体を初期探索モデルとして用いてPHASERによる分子置換により決定することができる。次いで、このモデルを、REFMACを用いて剛体精密化に続いて制限精密化を行って精密化することができる。結晶学的計算はすべて、CCP4プログラムのスイートを用いて行うことができる(Winn et al.,Acta.Cryst.D67:235−242(2011))。電子密度への複合体のモデル構築は、グラフィックプログラムCOOT を使用して行うことができる(Emsley et al.,Acta.Cryst.D66:486−501(2010))。
別の実施形態では、本明細書に記載されるTfRアピカルドメインコンストラクトと、対応する天然の完全長TfRとの間のエピトープ、抗原、またはおよその3次元構造の保存の程度を決定する。1つの例では、本明細書に記載されるヒトTfRアピカルドメインコンストラクトを天然の完全長ヒトTfRと比較する。かかる決定方法は、本明細書に記載されるTfRアピカルドメインコンストラクト(SEQ ID NO:109、110、301、468、及び469のいずれか(例えば、109、110、及び301))と、天然の完全長TfR(例えば、PDBコード:3KASのようなヒトTfR)内のアピカルドメインの結晶構造をアラインすることによって行うことができる。次いで、2つの構造間の平均二乗偏差(RMSD)を例えばMOE v2016.0802(Chemical Computing Group)を使用するなど、当該技術分野では周知の方法で決定することができる。
一実施形態では、本明細書に記載されるTfRアピカルドメインコンストラクトと天然の完全長TfRのアピカルドメインとの間のRMSDは、約4未満、約3未満、または約2未満であり、約1〜約2の範囲の間である。
一実施形態では、本明細書に記載されるTfRアピカルドメインコンストラクトと天然の完全長TfRのアピカルドメインとの間のRMSDは、約1〜約1.5の範囲の間である。
一実施形態では、SEQ ID NO:109、110、301、468、及び469のうちのいずれか1つ(例えば、109、110、及び301)の配列を有するTfRアピカルドメインコンストラクトのいずれか1つと、天然の完全長TfRのアピカルドメインとの間のRMSDは、約1〜約1.5の範囲の間である。1つの例では、RMSDは、約1.2である。
別の態様は、組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを作製、精製、及び単離する方法に関する。本方法は、直列に融合された第1のポリヌクレオチド、任意選択的なリンカーポリヌクレオチド、及び第2のポリヌクレオチドを含むTfRアピカルドメイン遺伝子を発現させることを含み、第1のポリヌクレオチドはドメインのC末端フラグメントをコードし、任意選択的なリンカーポリヌクレオチドは任意選択的なタンパク質リンカーをコードし、第2のポリヌクレオチドはドメインのN末端フラグメントをコードしている。一実施形態では、発現されると、ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸がC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結されるように、各ポリヌクレオチドは直列に融合される。別の実施形態では、発現されると、ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸がリンカーの最後のアミノ酸と一次配列で連結され、リンカーの最初のアミノ酸がC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結されるように、TfRアピカルドメイン遺伝子は任意選択的なリンカーを含む。別の実施形態では、発現されると、発現されたタンパク質が環状構造の形となるように、遺伝子は、直列な配列の第1のポリヌクレオチド、任意選択的なリンカーポリヌクレオチド、及び第2のポリヌクレオチドを含む。本方法は、発現されたタンパク質を精製して単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを得ることを更に含む。
1つの例では、タンパク質が発現されると、完全長TfRタンパク質及びその二量体化した形態にみられるようなドメインの保存されたおよその3次元構造及びフォールディングを示すように、TfRコンストラクト内の第2のポリペプチドのN末端フラグメントの最初のアミノ酸と、TfRコンストラクト内の第1のポリペプチドのC末端フラグメントの最後のアミノ酸とが、TfRのアピカルドメイン内、またはその近くに選択される。1つの例では、各アミノ酸は、3次元空間における互いに対するそれらの近接度に基づいて選択されるが、かかる近接度は、完全長トランスフェリン受容体の既知の結晶構造から(例えば、PDBコード1SUV(分解能7.5Å);Cheng,Y.,et al,Cell 116:565−576(2004)または、2.4Åのより高い分解能では、PDMコード3KAS;Abraham,J.,et al.,Nat.Struct.Mol.Biol.17:438−444(2010)、これらの文献をいずれもそれらの全容をあらゆる目的で参照により本明細書に援用する)、または、受容体のコンピュータモデルから、または、当業者には周知には周知の方法によって得ることができる。
別の実施形態では、各アミノ酸は、アピカルドメインと受容体タンパク質の残りの部分との間の逆平行のβ鎖から選択される。別の例では、アミノ酸は、β鎖同士をつなぐ2個のポリペプチド領域、すなわちループから選択される。別の例では、アミノ酸は、β鎖同士をつなぐ2個のポリペプチド領域から選択され、ポリペプチド領域は、配列VSNを含むC末端領域と、配列KDSAQNS(SEQ ID NO:471)を含むN末端領域とを含む。1つの例では、TfRコンストラクト内の第2のポリペプチドのN末端領域について選択されるアミノ酸は、D(配列DSAQN(SEQ ID NO:472)のもの)であり、このアミノ酸がTfRコンストラクト内の第1のポリペプチドのC末端領域の最後のアミノ酸であるN(配列LTVSN(SEQ ID NO:473)のもの)と連結される。別の実施形態では、アミノ酸は、実施例2で更に述べられるようにして選択することで、それぞれ、ヒト及びカニクイザルのSEQ ID NO:109及び110のアピカルドメインタンパク質を与える。
したがって、別の実施形態では、組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを作製、精製、及び単離する方法は、(i)N末端フラグメント及びC末端フラグメント、ならびに並べ替えするためのTfRのアピカルドメイン内またはその近くのそれらの各アミノ酸を特定することと、(ii)N末端及びC末端フラグメント、ならびに各アミノ酸をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子発現ベクターを設計することであって、発現されると、ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸がC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で融合されるように、ポリヌクレオチド同士が融合されている、前記設計することと、(iii)アピカルドメインコンストラクトを発現させることと、を更に含む。
他の実施形態では、本明細書に記載されるTfRコンストラクトは、結合分子とTfRアピカルドメインとの間の相互作用の、例えばX線結晶解析及び核磁気共鳴分光法を用いた詳細な研究を可能とする(完全長TfR複合体が比較的大きな分子量を有するのに対してTfRアピカルドメインコンストラクトはこれらの研究に充分な比較的低い分子量を有するために本明細書に記載されるコンストラクトでは可能となる)。
リンカー
TfRコンストラクト内の2個のポリペプチド間のリンカーは、1〜10個のアミノ酸(例えば、1〜8個、1〜6個、1〜4個、または1個もしくは2個のアミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸)を含むことができる。適当なリンカーとしては、例えば、グリシン及びセリンのような柔軟なアミノ酸残基を含むリンカーが挙げられる。リンカーの例としては、これらに限定されるものではないが、
Figure 2020508053
が挙げられる。
他の実施形態では、TfRコンストラクト内の2個のポリペプチド間のリンカーは、タンパク質ループドメインであってよく、タンパク質ループドメインのN末端とC末端との間の距離は5Å未満である(例えば、4Å、3Å、2Å、または1Å未満の距離)。いくつかの実施形態では、タンパク質ループドメインは球状タンパク質であってよい。いくつかの実施形態では、タンパク質ループドメインは800個以下のアミノ酸を有することができる(例えば、800個、780個、760個、740個、720個、700個、680個、660個、640個、620個、600個、580個、560個、540個、520個、500個、480個、460個、440個、420個、400個、380個、360個、340個、320個、300個、280個、260個、240個、220個、200個、180個、160個、140個、120個、または100個のアミノ酸)。いくつかの実施形態では、タンパク質ループドメインは、800個以下のアミノ酸(例えば、800個、780個、760個、740個、720個、700個、680個、660個、640個、620個、600個、580個、560個、540個、520個、500個、480個、460個、440個、420個、400個、380個、360個、340個、320個、300個、280個、260個、240個、220個、200個、180個、160個、140個、120個、または100個のアミノ酸)を有する球状タンパク質であってよい。タンパク質ループドメインは、5Å未満(例えば、4Å、3Å、2Å、または1Å未満の距離)の構造のN末端及びC末端を有する二次構造または三次構造を有することができる。いくつかの実施形態では、第1のポリペプチドのC末端がタンパク質ループドメインのN末端に融合され、第2のポリペプチドのN末端がタンパク質ループドメインのC末端に融合されるようにしてTfRコンストラクトの第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間にタンパク質ループドメインが挿入される場合、タンパク質ループドメインのN末端とC末端とが近接していることによって第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとが互いに接近し、これにより、第1のポリペプチドのアミノ酸が第2のポリペプチドのアミノ酸と例えば水素結合を介して相互作用することができ、TfRコンストラクトが例えばβシートのような二次構造を形成することができる。
シグナルペプチド
TfRコンストラクトは、例えば、細胞(例えば、哺乳動物細胞などの真核細胞)内で発現される場合にコンストラクトの分泌を生じさせるシグナルペプチドなどのシグナルペプチドを更に含むことができる。当該技術分野では周知のいずれのシグナルペプチド(例えば、
Figure 2020508053
)も本明細書に記載されるTfRコンストラクトと組み合わせて使用することができる。シグナルペプチドは、適宜、コンストラクトのN末端またはC末端に結合させることができる。
精製ペプチド
TfRコンストラクトは、例えば全細胞ライセート混合物からのTfRコンストラクトの精製及び単離を促進する1つ以上の精製ペプチドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、精製ペプチドは、精製ペプチドに対して特異的親和性を有する別の部分と結合する。いくつかの実施形態では、精製ペプチドに特異的に結合するかかる部分は、マトリクス、樹脂、またはアガロースビーズなどの固体支持体に結合される。TfRコンストラクトと融合することができる精製ペプチドの例としては、これらに限定されるものではないが、ヒスチジンペプチド、Aviタグ、FLAGペプチド、mycペプチド、及びヘマグルチニン(HA)ペプチドが挙げられる。ヒスチジンペプチド(HHHHHH(SEQ ID NO:459)またはHHHHHHHHHH(SEQ ID NO:460))は、マイクロモル濃度の親和性でニッケル官能化アガロース親和性カラムに結合する。Aviタグ(GLNDIFEAQKIEWHE(SEQ ID NO:461))は、酵素BirAによりビオチン化することができる。次いでビオチン化したAviタグはストレプトアビジンに結合し、精製を行うことができる。いくつかの実施形態では、FLAGペプチドは、配列DYKDDDDK (SEQ ID NO:462)を有する。いくつかの実施形態では、mycペプチドは、配列EQKLISEEDL(SEQ ID NO:463)を有する。いくつかの実施形態では、HAペプチドは、配列YPYDVPDYA (SEQ ID NO:464)を有する。
切断ペプチド
切断ペプチドとは、特定のプロテアーゼにより認識されて切断され得るアミノ酸配列のことを指す。例えば、切断ペプチドを精製ペプチドとTfRコンストラクトの残りの部分との間に配置することにより、TfRコンストラクトが発現及び精製された後、切断ペプチドを切断して精製ペプチドを除去することができる。プロテアーゼが切断ペプチドに近接すると、プロテアーゼは切断ペプチドを認識して切断(すなわちペプチド主鎖の加水分解により)する。プロテアーゼ及び切断ペプチドのペアの例としては、これらに限定されるものではないが、ユビキチン様特異的プロテアーゼ1(Ulp1)及びその切断配列であるSmt3
Figure 2020508053
、タバコエッチウイルス核封入体A(TEV)プロテアーゼ及びその切断配列であるENLYFQS(SEQ ID NO:466)、ならびにC型肝炎ウイルスの非構造タンパク質3プロテアーゼドメイン(NS3 HCV)及びその切断配列であるDEMEECSQ(SEQ ID NO:467)が挙げられる。
X.核酸、ベクター、及び宿主細胞
本明細書に記載される改変BBB受容体結合ポリペプチド及びTfRコンストラクトは、通常は組換え法を用いて調製される。したがって、いくつかの態様において、本発明は、本明細書に記載される改変FcポリペプチドまたはTfRコンストラクトのいずれかを含むポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列を含む単離核酸、及び該ポリペプチドをコードする核酸を複製し、及び/または該ポリペプチドまたはTfRコンストラクトを発現させるために使用される核酸が導入された宿主細胞を提供するものである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えばヒト細胞である。
別の態様では、本明細書に記載されるポリペプチドまたはTfRコンストラクトをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってよい。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAである。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはcDNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは核酸コンストラクト内に含まれる。いくつかの実施形態では、コンストラクトは複製可能なベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ファージミド、酵母染色体ベクター、及び非エピソーム性の哺乳動物ベクターから選択される。
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、発現コンストラクト内の1つ以上の調節ヌクレオチド配列と機能的に連結される。一連の実施形態では、核酸発現コンストラクトは、表面発現ライブラリーとしての使用に適合される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、酵母での表面発現に適合される。いくつかの実施形態では、ライブラリーは、ファージでの表面発現に適合される。別の一連の実施形態では、核酸発現コンストラクトは、ミリグラムまたはグラム量でのポリペプチドまたはTfRコンストラクトの単離を可能とする系でのポリペプチドまたはTfRコンストラクトの発現に適合される。いくつかの実施形態では、系は哺乳動物細胞発現系である。いくつかの実施形態では、系は酵母細胞発現系である。
組換えポリペプチドを製造するための発現ビヒクルとしては、プラスミド及び他のベクターが挙げられる。例えば、適当なベクターとしては以下の種類のプラスミド、すなわち、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、及び、大腸菌などの原核生物で発現させるためのpUC由来プラスミドが挙げられる。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2−dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko−neo、及びpHyg由来ベクターは、真核生物のトランスフェクションに適した哺乳動物用発現ベクターの例である。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV−1)などのウイルスの誘導体、またはエプスタイン・バール・ウイルス(pHEBo、pREP由来、及びp205)を真核生物におけるポリペプチドの一過性発現に使用することもできる。いくつかの実施形態では、バキュロウイルス発現系の使用により組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合もある。そのようなバキュロウイルス発現系としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393、及びpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、及びpBlueBac由来ベクターが挙げられる。更なる発現系としては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び他のウイルス発現系が挙げられる。
ベクターは、任意の適当な宿主細胞に形質転換することができる。いくつかの実施形態では、例えば細菌または酵母細胞のような宿主細胞を表面発現ライブラリーとしての使用に適合させることができる。一部の細胞では、ベクターは宿主細胞内で発現されて比較的大量のポリペプチドまたはTfRコンストラクトを発現する。そのような宿主細胞としては、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び原核細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、NS0細胞、Y0細胞、HEK293細胞、COS細胞、Vero細胞、またはHela細胞などの哺乳動物細胞である。
トランスフェリン受容体結合ポリペプチドまたはTfRコンストラクトをコードした発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞を、ポリペプチドまたはTfRコンストラクトの発現を生じさせるような適当な条件下で培養することができる。ポリペプチドまたはTfRコンストラクトは、細胞の混合物及びポリペプチドまたはTfRコンストラクトを含有する培地から分泌させ、単離することができる。あるいは、ポリペプチドまたはTfRコンストラクトを細胞質中、または膜画分中に保持し、細胞を回収、溶解して、所望の方法によってポリペプチドまたはTfRコンストラクトを単離してもよい。
XI.治療方法
本発明に基づくBBB受容体結合ポリペプチドは、多くの適応症で治療的に使用することができる。いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、BBB受容体を発現する標的細胞型に治療剤を送達するために使用される。典型的な実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、治療成分を、脳によって取り込まれるように例えば血液脳関門のような内皮を通過して輸送するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、本発明のBBB受容体結合ポリペプチドは、例えば、治療剤と結合させて治療剤を送達することで治療剤を脳または中枢神経系(CNS)の疾患のような神経疾患を治療するために使用することができる。例示的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病、原発性年齢関連タウオパチー、または進行性核上性麻痺が挙げられる。いくつかの実施形態では、疾患は、タウオパチー、プリオン病(例えば、ウシ海綿状脳症、スクレイピー、クロイツフェルトヤコブ病、クールー病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、慢性消耗病、及び致死性家族性不眠症など)、球麻痺、運動ニューロン病、または神経系ヘテロ変性疾患(カナバン病、ハンチントン病、神経セロイドリポフスチノーシス、アレキサンダー病、トゥレット症候群、メンケス縮れ毛症候群、コケイン症候群、ハレルフォルデン・スパッツ症候群、ラフォラ疾患、レット症候群、肝レンズ核変性症、レッシュナイハン症候群、フリードライヒ運動失調症、脊髄性筋萎縮症、及びウンフェルリヒト・ルントボルク症候群など)であり得る。特定の実施形態では、疾患はCNSの原発がんである。いくつかの実施形態では、疾患は脳に転移した転移性がんである。いくつかの実施形態では、疾患は脳卒中または多発性硬化症である。いくつかの実施形態では、患者は無症状の場合もあるが、脳またはCNSの疾患に関連したマーカーを有する。いくつかの実施形態では、神経疾患を治療するための薬剤の製造における本発明のBBB受容体結合ポリペプチドの使用が提供される。
いくつかの実施形態では、本方法は、対象に1つ以上の更なる治療剤を投与することを更に含む。例えば、脳または中枢神経系の疾患を治療するためのいくつかの実施形態では、本方法は、対象に神経保護剤、例えば、抗コリン作動薬、ドーパミン作動薬、グルタミン酸作動薬、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬、カンナビノイド、カスパーゼ阻害剤、メラトニン、抗炎症剤、ホルモン(例えば、エストロゲンまたはプロゲステロン)、またはビタミンを投与することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、対象に神経疾患の認知または行動症状の治療に使用するための薬剤(例えば、抗うつ剤、ドーパミンアゴニスト、または抗精神病薬)を投与することを含む。
本発明のBBB受容体結合ポリペプチドは、治療有効量または用量で対象に投与される。例示的な用量としては、約0.01mg/kg〜約500mg/kg、または約0.1mg/kg〜約200mg/kg、または約1mg/kg〜約100mg/kg、または約10mg/kg〜約50mg/kgの日用量の範囲を用いることができる。しかしながら、用量は、選択される投与経路、組成物の配合、患者の応答、状態の重症度、対象の体重、及び処方する医師の判断をはじめとするいくつかの因子によって異なり得る。用量は、個々の患者の必要に応じて時間と共に増量または減量させることができる。いくつかの実施形態では、患者に初期に低用量を投与し、その後、患者にとって耐容できる有効用量に増量する。有効量の決定は充分に当業者の能力の範囲内である。
異なる実施形態において、本発明のBBB受容体結合ポリペプチドは非経口投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは静脈内投与される。静脈内投与は、注入により、例えば約10〜30分間にわたって、または少なくとも1時間、2時間、もしくは3時間にわたって行うことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、静脈内ボーラスとして投与される。注入とボーラス投与との組み合わせを用いることもできる。
いくつかの非経口の実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、腹腔内、皮下、皮内、または筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは皮内または筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、例えば硬膜外投与などにより髄腔内に投与されるか、または脳室内に投与される。
他の実施形態では、トランスフェリン受容体結合ポリペプチドは、経口投与、肺内投与、鼻腔内投与、眼内投与、または局所投与することができる。肺内投与は、例えば、吸入器またはネブライザーを使用して、エアゾール化剤と配合して用いることもできる。
VIII.医薬組成物及びキット
別の態様では、本発明に基づくBBB受容体結合ポリペプチドを含む医薬組成物及びキットが提供される。
医薬組成物
本発明で使用するための製剤を調製するためのガイダンスは、当業者には周知の医薬品及び製剤用の任意の数のハンドブックにみることができる。
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載されるトランスフェリン受容体結合ポリペプチドを含み、更に、1種類以上の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を含む。薬学的に許容される担体には、生理学的適合性を有し、好ましくは活性剤の活性を妨げない、または他の形で阻害しないあらゆる溶媒、分散媒、またはコーティングが含まれる。様々な薬学的に許容される賦形剤が周知である。
いくつかの実施形態では、担体は、静脈内、髄腔内、脳室内、筋肉内、経口、腹腔内、経皮、局所、または皮下投与に適したものである。薬学的に許容される担体は、例えば組成物を安定させるかまたはポリペプチドの吸収を増大もしくは減少させる作用を有する1つ以上の生理学的に許容される化合物を含むことができる。生理学的に許容される化合物としては、例えば、グルコース、スクロース、またはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオンなどの酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質、活性剤のクリアランスもしくは加水分解を低減する組成物、または賦形剤もしくは他の安定化剤及び/またはバッファーを挙げることができる。他の薬学的に許容される担体及びそれらの製剤も当該技術分野で利用可能である。
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスにより、当業者には周知の方法で製造することができる。以下の方法及び賦形剤はあくまで例示的なものであり、いかなる意味でも限定的なものではない。
経口投与を行うには、BBB受容体結合ポリペプチドは、当該技術分野では周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって製剤化することができる。かかる担体は、化合物を、治療される患者によって経口摂取される、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、エマルション、親油性及び親水性懸濁液、液剤、ゲル、シロップ剤、スラリー剤、及び懸濁液などとして製剤化することを可能とする。経口用の医薬製剤は、ポリペプチドを、固体賦形剤と混合し、得られた混合物を場合に応じて粉砕し、必要に応じて適当な助剤を加えた後、顆粒の混合物を処理して錠剤または糖衣コアを得ることによって得ることができる。適当な賦形剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖類などの充填剤;例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドンなどのセルロース調製物が挙げられる。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸、もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を加えることができる。
上記に開示したように、本明細書に記載されるBBB受容体結合ポリペプチドは、注射により、例えばボーラス注射または連続注入により非経口投与されるように製剤化することができる。注射用には、ポリペプチドを植物油または他の同様の油類、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸またはプロピレングリコールのエステルなどの水性または非水性溶媒中に、必要に応じて、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、及び防腐剤などの従来の添加剤と共に、溶解、懸濁、または乳化することによってポリペプチドを製剤として配合することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理学的食塩水バッファーのような生理学的適合性を有するバッファー中に配合することができる。注射用の製剤は、単位剤形、例えば、防腐剤が添加されたアンプル中、または複数用量容器中で与えることができる。組成物は、油性または水性溶媒中の懸濁液、溶液、またはエマルションの形態などを取ることができ、懸濁化剤、安定化剤、及び/または分散剤などの配合剤を含むことができる。
いくつかの実施形態では、BBB受容体結合ポリペプチドは、例えば、活性剤を含んだ固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス中で、持続放出、制御放出、長期放出、タイミングを計った放出、または遅延放出製剤として送達用に調製される。持続放出材料の様々な種類が確立されており、当業者に周知である。長期放出製剤としては、フィルムコーティングされた錠剤、多粒子またはペレットシステム、親水性または親油性材料を用いたマトリクス技術、及び細孔形成賦形剤を含んだワックスベースの錠剤が挙げられる。持続放出送達システムは、それらの設計に応じて、時間単位または日単位で、例えば、4、6、8、10、12、16、20、24時間またはそれ以上の時間にわたって化合物を放出することができる。通常、持続放出製剤は、天然に存在する、または合成ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンのようなポリマー性ビニルピロリドン;カルボキシビニル親水性ポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのような疎水性及び/または親水性ヒドロコロイド;ならびにカルボキシポリメチレンを使用して調製することができる。
一般的に、インビボ投与に使用される医薬組成物は無菌である。滅菌処理は、例えば、熱滅菌、蒸気滅菌、滅菌濾過、または放射線照射などの当該技術分野では周知の方法によって行うことができる。
本発明の医薬組成物の用量及び所望の薬剤濃度は、想定される特定の用途に応じて異なり得る。適当な用量及び投与経路の決定は、充分に当業者の技能の範囲内にある。適当な用量については、上記のセクションVIIでも述べられている。
キット
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるBBB受容体結合ポリペプチドを含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、脳または中枢神経系(CNS)の疾患などの神経疾患の予防または治療に使用される。
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の更なる治療剤を更に含む。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるBBB受容体結合ポリペプチドを含み、更に、神経疾患の治療に使用するための1つ以上の更なる治療剤を含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法を実施するための説明(すなわち、プロトコール)を含む使用説明書を更に含む(例えば、血液脳関門を通過して組成物を投与するためにキットを使用するための指示)。使用説明書は通常は文書または印刷物を含むが、これらに限定されない。かかる使用説明書を格納し、これをエンドユーザーに伝達することが可能な任意の媒体が本明細書では考慮される。かかる媒体としては、これらに限定されるものではないが、電子的記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、及び光学媒体(例えばCD−ROM)などが挙げられる。かかる媒体は、そのような使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含んでもよい。
XIII.実施例
本発明を、特定の実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例はあくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本発明をいかなる形でも限定しようとするものではない。当業者には、実質的に同じ結果を生じるように変更または改変することができる様々な重要でないパラメータが容易に認識されよう。用いられる数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確実とするべく努力に努めてはいるが、ある程度の実験的誤差及び偏差は存在し得る。本発明の実施では、特に断らない限りは、当該技術分野の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いている。かかる技術は文献に充分な説明がなされている。更に、当業者には、特定のライブラリーに適用される操作の方法は、本明細書に記載される他のライブラリーにも適用できることが明らかなはずである。
BBB受容体結合ポリペプチドの作製を、TfRを例として用いて説明する。本明細書で説明する方法は、代替的なBBB受容体を標的として用いて実施することもできる。
実施例1 TfR標的の作製
トランスフェリン受容体(TfR)細胞外ドメイン(ECD)をコードするDNA(ヒト(SEQ ID NO:235)またはカニクイザル(SEQ ID NO:300)TfRの残基121〜760)を、C末端の切断可能なHis及びAviタグを有する哺乳動物発現ベクターにクローニングした。このプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、発現させた。細胞外ドメインをNi−NTAクロマトグラフィーを用いて回収した上清から精製した後、サイズ排除クロマトグラフィーにより凝集タンパク質を除去した。収率は培養物1L当たり約5mgであった。タンパク質を10mM KPO(pH6.7)、100mM KCl、100mM NaCl、及び20%グリセロール中で保存し、−20℃で凍結した。
並べ替えた(permutated)TfRアピカルドメインをコードするDNA(SEQ ID NO:301)(ヒトまたはカニクイザルTfRの残基326〜379及び194〜296)を、精製を行うためのN末端のHisタグ及びインビボでのビオチン化のためのAviタグを有するpET28ベクターにクローニングした。このプラスミドを、BirA発現ベクターと共にBL21(DE3)細胞に同時形質転換した。細胞を対数期までLB培地中、37℃で増殖させた後、1mMイソプロピル1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)で誘導してから、18℃で一晩培養した。細胞を溶解し、可溶性画分をNi−NTAカラムにかけてアフィニティー精製した後、サイズ排除クロマトグラフィーを行って凝集タンパク質を除去した。収率は培養物1L当たり約10mgであった。タンパク質を50mM HEPES(pH7.5)、150mM NaCl、及び1mM DTT中で保存し、−20℃で凍結した。
精製したTfRのECDをEZ−link sulfo−NHS−LC−Biotinキット(Thermo Scientificより入手)を用いてビオチン化した。5倍モル過剰のビオチンを反応に使用した。過剰のビオチンをPBSに対して重点的に透析することによって除去した。
Aviタグを有するTfRのECD及びアピカルドメインを、BirA−500(Avidity,LLCより販売されるBirAビオチン−タンパク質リガーゼ標準反応キット)を使用してビオチン化した。反応後、標識したタンパク質をサイズ排除クロマトグラフィーによって更に精製して過剰のBirA酵素を除去した。最終的な材料を10mM KPO(pH6.7)、100mM KCl、100mM NaCl、及び20%グリセロール中で保存し、−20℃で凍結した。
実施例2 操作されたトランスフェリン受容体結合ポリペプチドの設計及び特性分析
本実施例は、本明細書のポリペプチドの設計、作製、及び特性分析について述べる。本実施例の目的、及びクローン配列において同じであるアミノ酸同士を比較する目的で、「保存的」変異とは、特定されたクローンのすべてに生じるものとみなされる(保存的アミノ酸置換ではない)のに対し、「半保存的」変異とは、クローンの50%超において生じるものである。
特に断らない限り、このセクションにおけるアミノ酸残基の位置は、アミノ末端にヒンジ領域からの3つの残基PCPを有するヒトIgG1野生型Fc領域であるSEQ ID NO:1に基づいて番号付けされる。
ポリペプチドFc領域ドメインライブラリーの設計
改変を行うための特定の溶媒露出表面パッチを選択し、選択されたパッチのアミノ酸組成をランダム化によって変化させた表面提示ライブラリーを構築し、次に標準的な発現提示技術を用いて表面に提示された配列変異体を所望の機能性についてスクリーニングすることにより、新たな分子認識手段をポリペプチドFc領域に組み込んだ。本明細書で使用するところの「ランダム化」なる用語には、部分ランダム化及び所定のヌクレオチドまたはアミノ酸混合比での配列変化が含まれる。ランダム化を行うために選択される一般的な表面露出パッチは、約600〜1500Åの面積を有し、アミノ酸約7〜15個で構成されるものとした。
クローンレジスター
以下の各レジスターは、本明細書に記載される方法に従って設計及び作製した。本明細書で使用するところの「レジスター」なる用語は、変化させることが可能な(例えば、レジスター内の列記された位置におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/または欠失を生じるペプチドコーディング遺伝子配列への変異の導入により)連続表面を形成する一連の表面露出アミノ酸残基のことを指す。
CH2レジスターA2 − 組(iii)
CH2A2レジスター(表1)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置47、49、56、58、59、60、61、62、及び63を含むものであった。CH2A2レジスターは、βシートに沿った表面、隣接した捻れ、及びこれに続くループを形成するように設計した。CH2A2レジスターは、FcγR及びFcRn結合部位から効果的に取り除かれる。
CH2レジスターC − 組(iv)
CH2Cレジスター(表2)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72を含むものであった。CH2Cレジスターは、ヒンジの近くの一連のループに沿った、CH2領域のFcγR結合部位に近接した溶媒露出残基を用いている。
CH2レジスターD − 組(v)
CH2Dレジスター(表3)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置41、42、43、44、45、65、66、66、69、及び73を含むものであった。CH2Dレジスターは、CH2Cレジスターと似ており、CH2領域の上部の一連のループに沿った、FcγR結合部位に近接した溶媒露出残基を用いている。CH2CとCH2Dレジスターは主に、1個のループを共有しており、結合に用いられる第2のループが異なっている。
CH2レジスターE3 − 組(vi)
CH2E3レジスター(表4)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置45、47、49、95、97、99、102、103、及び104を含むものであった。CH2E3レジスターの各位置はやはりFcγR結合部位の近くにあるが、ループ残基の一部に加えてFcγR結合部位の近くのループに隣接したβシート上の溶媒露出残基も用いている。
CH3レジスターB − 組(ii)
このCH3Bレジスター(表5)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置118、119、120、122、210、211、212、及び213を含むものであった。CH3Bレジスターは、2個の平行なβシート上の溶媒露出残基、及びCH3領域のC末端の近くのいくつかのそれほど構造化されていない残基で大部分が構成されている。CH3Bレジスターは、FcγR及びFcRn結合部位から離れている。
CH3レジスターC − 組(i)
CH3Cレジスター(表6)は、SEQ ID NO:1に記載されるヒトIgG1のFc領域のアミノ酸配列を基準として番号付けした場合にアミノ酸位置157、159、160、161、162、163、186、189、及び194を含むものであった。CH3Cレジスターの各位置は、いずれもFcγR及びFcRn結合部位から離れている2個のループの溶媒露出残基を含むことにより、連続表面を形成している。
ファージディスプレイライブラリーの作製
野生型ヒトFc配列(SEQ ID NO:1)をコードする鋳型DNAを合成し、ファージミドベクターに組み込んだ。ファージミドベクターは、ompAまたはpelBリーダー配列、c−Myc及び6xHisエピトープタグに融合されたFcインサート、ならびにアンバー終止コドンに続くM13コートタンパク質pIIIを含むものであった。
ランダム化を行うための対応する位置に「NNK」三重コドンを含むプライマーを作製した(ただし、Nは任意のDNA塩基(すなわち、A、C、GまたはT)であり、KはGまたはTである)。あるいは、「ソフト」ランダム化用のプライマーを用い、70%が野生型塩基に一致し、10%ずつが他の3つの塩基に一致した塩基のミックスをそれぞれのランダム化位置に使用した。ランダム化の各領域に相当するFc領域のフラグメントのPCR増幅を行ってから、SfiI制限部位を含んだエンドプライマーを用いてアセンブルした後、SfiIで消化してファージミドベクターにライゲートすることにより、ライブラリーを作製した。あるいは、Kunkel法による突然変異誘発を行うためのプライマーを使用した。Kunkel突然変異誘発を行う方法は、当業者には周知であろう。Kunkel産物のライゲート産物をTG1株のエレクトロコンピテントな大腸菌細胞(Lucigen(登録商標)より入手したもの)に形質転換した。回復後の大腸菌細胞にM13K07ヘルパーファージを感染させ、一晩増殖させた後、ライブラリーファージを5%PEG/NaClで沈殿させ、15%グリセロールを含むPBS溶液に再懸濁し、使用時まで凍結した。一般的なライブラリーサイズは、形質転換体約10〜約1011個の範囲であった。pIII融合FcとpIIIに結合されていない可溶性Fcとの対合によってファージ上にFc二量体を提示させた(後者はpIIIの手前のアンバー終止コドンのために生成される)。
酵母ディスプレイライブラリーの作製
野生型ヒトFc配列をコードする鋳型DNAを合成し、酵母ディスプレイベクターに組み込んだ。CH2及びCH3ライブラリーについて、FcポリペプチドをAga2p細胞壁タンパク質上に提示させた。いずれのベクターも、Kex2切断配列を有するプレプロリーダーペプチド、及びFcの末端に融合されたc−Mycエピトープタグを含んでいた。
フラグメントの増幅をそのベクターについて相同末端を有するプライマーを用いて行った点以外は、ファージライブラリーについて述べたのと同様の方法を用いて酵母ディスプレイライブラリーをアセンブルした。新たに調製したエレクトロコンピテントな酵母(すなわちEBY100株)に直線化したベクター及びアセンブルしたライブラリーインサートを電気穿孔法により導入した。電気穿孔法は当業者には周知のものであろう。選択的SD−CAA培地中での回復後、酵母をコンフルエンスにまで増殖させ、2回分割した後、SG−CAA培地に移すことによってタンパク質発現を誘導した。一般的なライブラリーサイズは、形質転換体約10〜約10個の範囲であった。Fcの二量体が、隣接して提示されたFc単量体の対合によって形成された。
ファージ選択の一般的方法
ファージ法は、Phage Display:A Laboratory Manual(Barbas,2001)より採用した。更なるプロトコールの詳細は、この参照文献より入手することができる。
プレート分取法
ヒトTfR標的をMaxiSorp(登録商標)マイクロタイタープレート(通常、1〜10μg/mLのPBS溶液を200μL)に4℃で一晩コーティングした。特に断らない限り、すべての結合は室温で行った。ファージライブラリーを各ウェルに加え、一晩インキュベートして結合を行った。マイクロタイターウェルを0.05%のTween(登録商標)20(PBST)を含むPBSでよく洗い、各ウェルを酸(通常、500mM KCl、または100mM グリシン、pH2.7を含む50mM HCl)と30分間インキュベートとすることにより結合したファージを溶出した。溶出されたファージを1M Tris(pH8)で中和し、TG1細胞及びM13/KO7ヘルパーファージを用いて増幅し、50μg/mLのカルベニシリン及び50μg/mLのカナマイシンを含んだ2YT培地中、37℃で一晩増殖させた。標的の入ったウェルから溶出されたファージの力価を、標的の入っていないウェルから回収されたファージの力価と比較して濃縮度を評価した。次に結合の際のインキュベーション時間を短縮し、洗浄時間及び洗浄の回数を増やすことによって選択のストリンジェンシーを高めた。
ビーズ分取法
ヒトTfRの標的を、NHS−PEG4−ビオチン(Pierce(商標)より入手したもの)を用いて遊離アミンを介してビオチン化した。ビオチン化反応には、3〜5倍モル過剰のビオチン試薬をPBS中で用いた。反応をTrisで停止した後、PBS中に重点的に透析した。ビオチン化された標的をストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ(すなわち、Thermo Fisherより入手したM280ストレプトアビジンビーズ)上に固定した。ファージディスプレイライブラリーを、標的をコーティングしたビーズと室温で1時間インキュベートした。この後、結合しなかったファージを除去し、ビーズをPBSTで洗浄した。結合したファージを、500mM KCl(または0.1Mグリシン、pH2.7)を含む50mM HClと30分間インキュベートすることにより溶出した後、プレート分取について上記に述べたように中和して、増殖させた。
3〜5ラウンドのパニングを行った後、ファージ上で、または大腸菌のペリプラズム中に可溶性のFcを発現させることにより単一のクローンをスクリーニングした。かかる発現法は、当業者には周知のものであろう。個々のファージ上清またはペリプラズム抽出物を、標的または陰性対照をコーティングし、ブロッキングしたELISAプレートに曝露した後、ペリプラズム抽出物についてはHRP結合ヤギ抗Fc(Jackson Immunoresearchより入手したもの)を用いて、またはファージについては抗M13(GE Healthcare)を用いて検出し、次いでTMB試薬(Thermo Fisherより入手したもの)で発色させた。OD450値がバックグラウンドの約5倍よりも大きいウェルを陽性クローンとみなしてシークエンシングし、その後、一部のクローンを可溶性Fcフラグメントとして発現させるか、またはFabフラグメントと融合させた。
酵母選択の一般的方法
ビーズ分取(磁気細胞分離(MACS))法
Ackerman,et al.2009 Biotechnol.Prog.25(3),774に記載されるのと同様にしてMACS及びFACS選択を行った。ストレプトアビジン磁気ビーズ(例えば、ThermoFisherより販売されるM−280ストレプトアビジンビーズ)を、ビオチン化標的で標識し、酵母とインキュベートした(通常5〜10xのライブラリー多様性)。結合しなかった酵母を除去し、ビーズを洗浄し、結合した酵母を選択培地中で増殖させ、後の選択のラウンド用に誘導した。
蛍光活性化細胞分取(FACS)法
酵母を抗c−Myc抗体で標識して発現及びビオチン化標的(分取ラウンドに応じて濃度が変化する)を監視した。一部の実験では、標的をストレプトアビジン−Alexa Fluor(登録商標)647と予め混合して相互作用のアビディティーを高めた。他の実験では、結合後のビオチン化標的を検出し、ストレプトアビジン−Alexa Fluor(登録商標)647で洗浄した。結合を有するシングレットの酵母をFACS Aria III細胞分取装置を使用して分取した。分取した酵母を選択培地中で増殖させた後、後の選択ラウンド用に誘導した。
濃縮された酵母集団が得られた後、酵母をSD−CAAアガープレートに播種し、シングルコロニーを増殖させ、発現を誘導した後、上記に述べたようにして標識して標的に結合する傾向を決定した。次いで、陽性のシングルクローンを標的の結合についてシークエンシングした後、一部のクローンを可溶性のFcフラグメントとして発現させるか、またはFabフラグメントと融合させた。
スクリーニングの一般的方法
ELISAによるスクリーニング
クローンをパニングの結果産物から選択し、96ウェルディープウェルプレートの個々のウェル中で増殖させた。各クローンに、自己誘導培地(EMD Milliporeより入手したもの)を用いてペリプラズムでの発現を誘導するか、またはファージ上における個々のFc変異体のファージディスプレイのためにヘルパーファージを感染させた。培地を一晩増殖させ、遠心して大腸菌をペレット化した。ファージELISAでは、ファージを含む上清を直接使用した。ペリプラズムでの発現では、ペレットを20%スクロースに再懸濁した後、水で4:1に希釈し、4℃で1時間振盪した。プレートを遠心して固形物をペレット化し、上清をELISAに使用した。
ELISAプレートに標的をコーティングし(通常、0.5mg/mlで一晩)、次いで1%BSAでブロッキングした後、ファージまたはペリプラズム抽出物を加えた。1時間のインキュベーションを行い、非結合タンパク質を洗い流した後、HRP結合二次抗体(すなわち、可溶性Fcまたはファージに提示されたFcに対してそれぞれ抗Fcまたは抗M13)を加え、30分間インキュベートした。各プレートを再び洗浄した後、TMB試薬で発色させ、2Nの硫酸でクエンチした。プレートリーダー(BioTek(登録商標))を用いて450nmの吸光度を定量し、適用可能な場合にはPrismソフトウェアを使用して結合曲線をプロットした。試験したクローンの吸光度シグナルを陰性対照(Fcを欠いているファージまたはペリプラズム抽出物)と比較した。一部のアッセイでは、可溶性のホロトランスフェリンまたは他の競合物を結合ステップの間に、通常は大幅なモル過剰量(10倍過剰超)で加える。
フローサイトメトリーによるスクリーニング
Fc変異体ポリペプチド(ファージ上で、ペリプラズム抽出物中で、またはFabフラグメントとの可溶性の融合体として発現させたもの)を、96ウェルV底プレート中で細胞に加え(PBS+1%BSA(PBSA)中、ウェル当たり約100,000細胞)、4℃で1時間インキュベートした。この後、各プレートを遠心し、培地を除去してから細胞をPBSAで1回洗浄した。二次抗体(典型的には、ヤギ抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)647(Thermo Fisherより入手したもの))を含むPBSA中に細胞を再懸濁した。30分後、プレートを遠心し、培地を除去し、細胞をPBSAで1〜2回洗浄した後、プレートをフローサイトメーター(すなわち、FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター)で読み取った。FlowJoソフトウェアを使用して各条件について蛍光の中央値を計算し、結合曲線をPrismソフトウェアを用いてプロットした。
CH2A2クローンの作製及び特性分析
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH2A2ライブラリーによる選択
CH2A2に対するファージ及び酵母ライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングし、分取した。上記の「ELISAによるスクリーニング」と題したセクションで述べたように、ELISAアッセイにおいて4ラウンドのファージパニング後に、ヒト及び/またはカニクイザル(cyno)TfRに結合するクローンが特定された。代表的なクローンの配列は、15個の固有の配列を含むグループ1(すなわち、SEQ ID NO:47〜61)、及び1個の固有の配列(すなわち、SEQ ID NO:62)を含むグループ2の2つのグループに分類された。グループ1の配列は、60〜61位に保存されたGlu−Trpモチーフを有していた。他のいずれの位置にもコンセンサスはみられなかったが、58位にはArgが高頻度でみられ、59位にはTrpまたはTyrが高頻度でみられた。
CH2A2クローンの特性分析
個々のCH2A2変異体をファージの表面に発現させ、ELISAによりヒトTfR、カニクイザルTfR、または無関連の対照に対する結合についてアッセイした。Fcの発現を、C末端のc−Mycエピトープタグに結合する抗Myc抗体9E10に対してELISAにより確認した。図1(A)〜(D)に示される4つの代表的クローンについてのデータは、これらのクローンはいずれもよく発現され、ヒトTfRに結合したのに対して、いずれも無関連の対照には結合しなかったことを示した。グループ1の3つのクローンはカニクイザルTfRにも結合したが、グループ2の1つのクローン(すなわち、クローン2A2.16)はヒトTfRに特異的であった。
第2のアッセイでは、ファージの濃度を一定に保ち(すなわち、おおよそEC50)、異なる濃度の可溶性競合物質(ホロトランスフェリンまたはヒトTfR)を加えた。図2(A)及び(B)は、結合が、5μMまでの濃度のホロトランスフェリンの添加によって大きく影響されなかったことを示している。これに対して、可溶性のヒトTfRは、表面に吸着したヒトTfRに対する結合について競合し、特異的な相互作用を示した。
CH2A2変異体は、抗BACE1可変領域配列を含む発現ベクターにクローニングすることにより、抗BACE1 FabフラグメントとのFc融合体として発現される。293またはCHO細胞で発現させた後、得られたCH2A2−Fab融合体をProtein A及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製してから、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;すなわち、Biacore(商標)装置を使用する)、バイオレイヤー干渉法(すなわち、Octet(登録商標)REDシステムを使用)、細胞結合(例えば、フローサイトメトリー)、及び本明細書に記載される他の方法を用いて結合についてアッセイした。更に、得られたポリペプチド−Fab融合体を、熱融解、凍結融解、及び熱加速変性によって安定性について特性分析を行った。
CH2A2クローンの更なる操作
ヒト及びカニクイザルTfRに対する初期ヒットの結合親和性を高めるために2つの二次ライブラリーを構築した。第1のライブラリーは、グループ1のクローンに基づいて作製した。60及び61位の保存されたEWモチーフを不変に保ち、58位の半保存的Rをソフトランダム化を用いて変異させた。その他のライブラリー位置(すなわち、47位、49位、56位、59位、62位、及び63位)は飽和突然変異導入によって変異させた。第2のライブラリーは、グループ2のクローンに基づいて構築した。このライブラリーは、最初のCH2A2ライブラリー位置のソフトランダム化により作製したが、クローン2A2.16(SEQ ID NO:62)を鋳型として用いた(野生型Fc(SEQ ID NO:1)の代わりに)。どちらのライブラリーも、上記に述べた方法を用いてファージ及び酵母ディスプレイについて構築した。
次に上記に述べた方法を用いてライブラリーをスクリーニングし、ELISAによってヒトTfRに結合したいくつかのクローンを特定した(表1)。
CH2Cクローンの作製及び特性評価
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH2Cライブラリーによる選択
CH2Cに対するファージ及び酵母ライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングし、分取した。上記の「ELISAによるスクリーニング」と題したセクションで述べたように、ELISAアッセイにおいて4ラウンドのファージパニング(すなわち、グループ1及び4のクローン)後に、ヒト及び/またはカニクイザル(cyno)TfRに結合するクローンが特定され、上記の「酵母選択の一般的方法」と題したセクションで述べたような酵母結合アッセイにより、4回または5回の酵母分取ラウンド(すなわち、グループ2及び3のクローン)後に更なるクローンが特定された。代表的なクローンの配列は、16個の固有の配列を含むグループ1(すなわちSEQ ID NO:63〜78)、4個の固有の配列を含むグループ2(すなわちSEQ ID NO:79〜82)、2個の固有の配列を含むグループ3(すなわちSEQ ID NO:83〜84)、1個の固有の配列を含むグループ4(すなわちSEQ ID NO:85)の4つのグループに分類された。グループ1の配列は、39位に半保存的Proを、42位に半保存的Proを、43位に保存的Proを、44位に半保存的Trpを、68位に半保存的Gluを、70位に保存的Tyrを有し、他のライブラリー位置では特定の傾向がほとんどなかった。グループ2の配列は、39位に保存的Metを、40位に半保存的Lを、42位に保存的Proを、43位に保存的Valを、44位に半保存的Proを、68位に半保存的Thrを、70位に保存的Hisを、72位に保存的Proを有していた。2個のグループ3の配列同士は、位置68においてのみ異なり、この位置にはValまたはLeuが存在していた。グループ4は、SEQ ID NO:85に示される配列を有する1種類のクローン(すなわちCH2C.23)からなるものであった。
CH2Cクローンの特性分析
CH2C変異体は、抗BACE1ベンチマーク可変領域配列を含む発現ベクターにクローニングすることにより、FabフラグメントとのFc融合体として発現させた。293またはCHO細胞で発現させた後、得られたポリペプチド−Fab融合体をProtein A及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製してから、ヒトまたはカニクイザルTfRに対する結合についてアッセイした。図3(A)に示されるように、グループ4のクローンCH2C.23はホロトランスフェリンと競合した。配列グループ1に属するクローンが、図3(B)にヒト及びカニクイザルTfRに対する結合滴定で示されている。他の配列グループからの代表的なクローンを、ホロTfの存在下または非存在下での結合についてファージ上で試験し(図3(C)を参照)、クローンCH2C.7を、バイオレイヤー干渉法によりホロトランスフェリンの存在下でヒトTfRに対する結合について試験した(すなわち、Octet(登録商標)REDシステムを使用。図3(D)を参照)。ほとんどのクローンはカニクイザルTfRにある程度の交差反応性を示し、クローンCH2C.23を除いて、試験したクローンはホロTfと競合しなかった。
CH2Cクローンの更なる操作
更なるライブラリーの設計及びスクリーニングについてCH2A2に関して上記に述べたのと同様の更なる操作方法を用いて、CH2Cクローンの親和性を高める。
CH3Bクローンの作製及び特性分析
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH3Bライブラリーによる選択
CH3Bに対するファージ及び酵母ライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングし、分取した。上記の「ELISAによるスクリーニング」と題したセクションで述べたように、ELISAアッセイにおいて4ラウンドのファージパニング後に、ヒト及び/またはカニクイザルTfRに結合するクローンが特定され、上記の「酵母選択の一般的方法」と題したセクションで述べたような酵母結合アッセイにより、4回または5回の酵母分取ラウンド後に更なるクローンが特定された。ファージ及び酵素の両方から特定された17種類のクローン(すなわちSEQ ID NO:30〜46)のすべては、関連した配列を有していた。すなわち、配列は、118位に半保存的Pheを、119位に半保存的な負に帯電したAspまたはGluを、122位に半保存的Thrを、210位に保存的Gを、211位に保存的Pheを、212位に半保存的Hisを、213位に保存的Aspを有していた。いくつかのクローンが、T123I変異を有していたが、この位置はライブラリーの設計で意図的に変異させておらず、組換えまたはPCRのエラーによって導入されたものと考えられる。
CH3Bクローンの特性分析
2種類の代表的なクローンCH3B.11(SEQ ID NO:40)及びCH3B.12(SEQ ID NO:41)をファージの表面に発現させ、ホロTfの存在下または非存在下でヒト及びカニクイザルTfRに対する結合について試験した。いずれのクローンも、ホロTfの添加によって影響されなかった(図4(A))。更に、CH3B変異体を、抗BACE1可変領域配列を含む発現ベクターにクローニングすることにより、Fabフラグメントとの融合体として発現させた。293またはCHO細胞で発現させた後、得られたポリペプチド−Fab融合体をProtein A及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製してから、ヒトまたはカニクイザルTfRに対する結合についてアッセイした(図4(B))。いずれも両方のオーソログに対して特異的な結合を示した。
CH3Bクローンの更なる操作
更なるライブラリーの設計及びスクリーニングについてCH2A2に関して上記に述べたものと同様の更なる操作方法を用いて、CH3Bクローンの親和性を高めることを行った。詳細には、パラトープの近くのいくつかの4〜7個の一連の残基パッチを、図5に示されるような更なる多様化を行うために選択した(暗い表面は元のライブラリーのレジスターを表し、明るいパッチは新たに変異を導入した位置を表す)。クローンCH3B.12(SEQ ID NO:41)を開始点として使用した。飽和(すなわちNNK)変異導入について選択した残基は以下の通りである。
CH3Bパッチ1(SEQ ID NO:101):アミノ酸位置127、128、129、131、132、133、及び134;
CH3Bパッチ2(SEQ ID NO:102):アミノ酸位置121、206、207、及び209;
CH3Bパッチ3(SEQ ID NO:103):アミノ酸位置125、214、217、218、219、及び220;
CH3Bパッチ4(SEQ ID NO:104):アミノ酸位置115、117、143、174、及び176;ならびに
CH3Bパッチ5(SEQ ID NO:105):アミノ酸位置155、157、158、193、194、及び195。
各ライブラリーはPCR突然変異誘発を用いて作製し、上記の「ファージディスプレイライブラリーの作製」及び「酵母ディスプレイライブラリーの作製」と題したセクションで述べたようにして酵母及びファージに組み込んだ。上記に述べた方法を用いてライブラリーをスクリーニングし、ELISAによってヒトTfRに結合したいくつかのクローンを特定した(表5)。
CH2Dクローンの作製及び特性評価
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH2Dライブラリーによる選択
CH2Dに対するファージライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングした。上記の「ELISAによるスクリーニング」と題したセクションで述べたように、ELISAアッセイにおいてヒト及び/またはカニクイザルTfRに結合するクローンが特定された。5種類の固有のクローンが特定され、それぞれ2個及び3個の配列からなる2つの配列群に分類された(表3)。配列グループ1(すなわち、クローンCH2D.1(SEQ ID NO:86)及びCH2D.2(SEQ ID NO:87))は、40〜45位に保存的VPPXM(SEQ ID NO:111)モチーフを、64〜67位にSLTS(SEQ ID NO:112)モチーフを、73位にVを有していた。40位における変異は設計に含まれておらず、恐らくPCRエラーまたは組換えによるものと思われる。配列グループ2(すなわち、クローンCH2D.3(SEQ ID NO:88)、CH2D.4(SEQ ID NO:89)、及びCH2D.5(SEQ ID NO:90))は、41位に保存的Dを、42位に半保存的Dを、43位に保存的Wを、44位に半保存的Eを、45位に保存的芳香族(WまたはY)を、64〜65位に保存的PWモチーフを、73位に保存的Wを有していた。
CH2Dクローンの特性分析及び更なる操作
更に、CH2D変異体を、抗BACE1可変領域配列を含む発現ベクターにクローニングすることにより、Fabフラグメントとの融合体として発現させた。293またはCHO細胞で発現させた後、得られたポリペプチド−Fab融合体をProtein A及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製してから、本明細書で上記に述べた方法を用いてホロTfの存在下または非存在下でカニクイザル及びヒトTfRに対する結合についてアッセイした。
CH2E3クローンの作製及び特性分析
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH2E3ライブラリーによる選択
CH2E3に対するファージライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングした。上記の「ELISAによるスクリーニング」と題したセクションで述べたように、ELISAアッセイにおいてヒト及び/またはカニクイザルTfRに結合するクローンが特定された。5個の配列から3つの配列グループが特定されたが、これらのグループのうちの2つはそれぞれ1個の固有の配列のみで構成されるものであった(表4)。配列グループ2は、3個の固有の配列(すなわち、クローンCH2E3.2(SEQ ID NO:92)、CH2E3.3(SEQ ID NO:93)、及びCH2E3.4(SEQ ID NO:94))を有し、45位に半保存的Valを、47位に保存的Glyを、49位に保存的Argを、95位に保存的Argを、97及び99位に保存的Serを、103位に保存的Trpを、104位にArgまたはLysを有していた。
CH2E3クローンの特性分析及び更なる操作
CH2E3変異体を、抗BACE1ベンチマーク可変領域配列を含む発現ベクターにクローニングすることにより、Fabフラグメントとの融合体として発現させた。293またはCHO細胞で発現させた後、得られたポリペプチド−Fab融合体をProtein A及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製してから、本明細書で上記に述べた結合の方法を用いてホロTfの存在下または非存在下でカニクイザル及びヒトTfRに対する結合についてアッセイした。
CH3Cクローンの作製及び特性分析
トランスフェリン受容体(TfR)に対するCH3Cライブラリーによる選択
CH3Cに対する酵母ライブラリーを上記に述べたようにしてTfRに対してパニングし、分取した。最初の3回の分取ラウンドの集団濃縮FACSプロットを図6に示す。更なる2ラウンドの分取後、1種類のクローンをシークエンシングし、4個の固有の配列(すなわち、クローンCH3C.1(SEQ ID NO:4)、CH3C.2(SEQ ID NO:5)、CH3C.3(SEQ ID NO:6)、及びCH3C.4(SEQ ID NO:7))を特定した。これらの配列は、161位に保存的Trpを有し、いずれも194位に芳香族残基(すなわち、Trp、Tyr、またはHis)を有していた。他の位置では高い多様性がみられた。
第1世代CH3Cクローンの特性分析
CH3Cライブラリーから選択した4種類のクローンを、CHOまたは293細胞でFabフラグメントとのFc融合体として発現させ、Protein A及びサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した後、ELISAによりホロTfの存在下または非存在下でカニクイザル及びヒトTfRに対する結合についてスクリーニングした。図7に示されるように、各クローンはいずれもヒトTfRに結合し、結合は過剰量(5μM)のホロTfの添加によって影響されなかった。しかしながら、各クローンはカニクイザルTfRにはそれほど結合しなかった。各クローンをヒトTfRを内因性に発現する293F細胞に対する結合についても試験した。図8は、各クローンは293F細胞に結合したものの、全体的な結合は高親和性の陽性対照と比較して大幅に弱かったことを示している。
次に、クローンCH3C.3がTfR発現細胞内に内在化するかについて試験を行った。接着性HEK293細胞を96ウェルで約80%コンフルエンスにまで増殖させ、培地を除去し、以下の各試料を1μMの濃度で加えた。すなわち、CH3C.3抗TfRベンチマーク陽性対照抗体(Ab204)、抗BACE1ベンチマーク陰性対照抗体(Ab107)、及びヒトIgGアイソタイプ対照(Jackson Immunoresearchより入手したもの)。細胞を37℃及び8%CO濃度で30分間インキュベートした後、洗浄し、0.1%Triton(商標)X−100で透過処理し、抗ヒトIgG−Alexa Fluor(登録商標)488二次抗体で染色した。更なる洗浄後、細胞をハイコンテント蛍光顕微鏡(すなわちOpera Phenix(商標)システム)下でイメージングし、図9に示されるように細胞当たりの斑点の数を定量した。1μMでは、クローンCH3C.3は、抗TfR陽性対照と同様の内在化の傾向を示したが、陰性対照は内在化を示さなかった。
CH3Cクローンの二次操作
ヒトTfRに対する初期のCH3Cのヒットの親和性を改善し、カニクイザルTfRに対する結合を導入する試みとして更なるライブラリーを作製した。ソフトランダム化のアプローチを用い、DNAオリゴを作製して最初の4つのヒットのそれぞれに基づいてソフト突然変異誘発を導入した。レジスターの第1の部分(WESXGXXXXXYK;SEQ ID NO:113)とレジスターの第2の部分(TVXKXXWQQGXV;SEQ ID NO:114)を別々のフラグメントにより構築することにより、ソフトランダム化された各レジスターをPCR増幅でシャッフルした(例えば、クローンCH3C.1からのレジスターの第1の部分が、クローンCH3C.1、CH3C.2、CH3C.3、及びCH3C.4からのレジスターの第2の部分と混合される、といった具合)。各フラグメントをすべて混合してから、表面発現及び選択を行うために酵母に導入した。
選択スキームを図10に示す。1ラウンドのMACSと3ラウンドのFACSの後、個々のクローンをシークエンシングした(クローンCH3C.17(SEQ ID NO:8)、CH3C.18(SEQ ID NO:9)、CH3C.21(SEQ ID NO:10)、CH3C.25(SEQ ID NO:11)、CH3C.34(SEQ ID NO:12)、CH3C.35(SEQ ID NO:13)、CH3C.44(SEQ ID NO:14)、及びCH3C.51(SEQ ID NO:15))。選択されたクローンは2つの大きな配列グループに分類された。グループ1のクローン(すなわち、クローンCH3C.18、CH3C.21、CH3C.25、及びCH3C.34)は、157位に半保存的Leuを、159位にLeuまたはHisを、160及び162位にそれぞれ保存的及び半保存的Valを、186、189、及び194位にそれぞれ半保存的P−T−Wモチーフを有していた。グループ2のクローンは、157位に保存的Tyrを、159〜163位にモチーフTXWSX(SEQ ID NO:470)を、186、189、及び194位にそれぞれ保存的モチーフS/T−E−Fを有していた。クローンCH3C.18及びCH3.35を、それぞれの配列グループの代表的な構成員として更なる実験で使用した。クローンCH3C.51は、そのレジスターの第1の部分はグループ1から、そのレジスターの第2の部分はグループ2からのものを有する点が着目された。
ソフト突然変異誘発ライブラリーからのCH3Cクローンの結合特性分析
ソフト突然変異誘発ライブラリーからの各クローンをFc−Fab融合ポリペプチドとして再フォーマット化し、上記に述べたようにして発現させ、精製した。図12に示されるように、これらの変異体は、最初のライブラリーセレクションからの最も上のクローン(CH3C.3)と比較してヒトTfRに対する改善されたELISA結合を有し、また、ホロTfと競合もしなかった。下記表7に示されるEC50値は、ホロTfの存在または非存在によって実験の誤差の範囲を超えて大きく影響されなかった。
(表7)ホロTfの存在下または非存在下でのTfRに対するCH3C変異体のELISA結合のEC50値(nM)
Figure 2020508053
注目すべき点として、クローンCH3C.35は、高親和性の抗TfR対照抗体Ab204と概ね同程度にヒトTfRに結合した。図13に示されるように、ソフトランダム化ライブラリーから選択された各クローンは、293F細胞に対しても改善された細胞結合を有していた。同様な細胞結合アッセイにおいて、これらのクローンを、その表面に高いレベルのヒトまたはカニクイザルTfRを安定的に発現するCHO−K1細胞に対する結合について試験した。ソフトランダム化ライブラリーから選択された各クローンは、カニクイザルTfR(図14(B))と同程度に、ヒトTfRを発現する細胞に結合した(図14(A))が、親CHO−K1細胞には結合しなかった(図14(C))。その大きさ及び結合EC50値は、ヒトTfRと比較してカニクイザルTfRでは大幅に低かった。データを下記表8に要約する。
(表8)細胞に結合するCH3CクローンのEC50及び最大MFI(蛍光強度中央値)値
Figure 2020508053
エピトープマッピング
操作されたCH3C Fc領域がTfRのアピカルドメインに結合するかを調べるため、TfRアピカルドメイン(ヒト及びカニクイザルについてそれぞれSEQ ID NO:107及び108)をファージの表面で発現させた。アピカルドメインを適正にフォールディングして提示するには、ループの1つを短縮する必要があり、配列を環状に並び替える必要がある(ファージ上で発現された配列は、ヒト及びカニクイザルでそれぞれSEQ ID NO:109及び110として特定される)。クローンCH3C.18及びCH3C.35をELISAプレートにコーティングし、上記に述べたファージELISAプロトコールに従った。要約すると、1%PBSAによる洗浄及びブロッキング後、ファージディスプレイの各希釈液を加え、室温で1時間インキュベートした。次いで各プレートを洗浄し、抗M13−HRPを加え、更なる洗浄後、各プレートをTMB基質で発色させ、2NのHSOでクエンチした。このアッセイではCH3C.18及びCH3C.35の両方ともアピカルドメインに結合した。
カニクイザルTfRに対する結合はヒトTfRに対する結合よりも大幅に弱いことが知られているため、カニクイザルとヒトのアピカルドメインのアミノ酸の相違の1つ以上が、結合の差の要因となっている可能性が高いと仮説を立てた。したがって、ヒトの残基を対応するカニクイザル残基に置き換えた6つの一連の点突然変異をヒトTfRのアピカルドメインに導入した。これらの変異体をファージ上に提示させ、ファージ濃度をOD268により正規化し、CH3C.18及びCH3C.35に対する結合をファージELISA滴定により試験した(図16(B)及び(C))。抗Myc抗体9E10への捕捉は、すべての変異体の提示レベルが同様であったことを示した(図16(A))。ヒトTfR変異に対する結合によって、R208G変異の強い影響が明らかに示され、この残基がエピトープの重要部分であり、カニクイザル残基によってこの位置で負の影響が及ぼされることが示唆された。ファージに提示させたカニクイザルアピカルドメインにG208R変異を導入したところ、この変異がカニクイザルアピカルドメインに対する結合を著しく改善することが示された(図16(D)及び(E))。これらの結果は、各CH3CクローンがTfRのアピカルドメインに結合したこと、及び208位が結合に重要であるのに対して247、292、364、370、及び372位は重要度が大幅に低かったことを示すものである。
パラトープマッピング
Fcドメイン内のどの残基がTfRへの結合に最も重要であるかを理解するため、各変異体のTfR結合レジスター内の1個の位置を野生型に復帰変異させた変異体CH3C.18及びCH3C.35の一連のクローンを作製した。得られた変異体を組換えによりCH3C Fc−Fab融合体として発現させ、ヒトまたはカニクイザルTfRに対する結合について試験した(図17)。CH3C.35では、161及び194位は結合に絶対的に重要であり、これらのいずれかの野生型への復帰変異はヒトTfRに対する結合を完全に消失させた。驚くべきことに、163位を野生型に復帰変異させることで、カニクイザルTfRへの結合が顕著に上昇したのに対して、ヒトへの結合に影響はほとんどなかった。これに対して、残基163の野生型への復帰変異はCH3C.18ではほとんど影響がなかったが、この変異体では189及び194位の復帰変異がヒトTfRへの結合を完全に消失させた。どちらの変異体においても、他の単一の復帰変異はヒトTfRへの結合に若干の(負の)影響を示したのに対して、多くの場合でカニクイザルTfRに対する結合は消失した。
カニクイザルTfRに対する結合を改善するための更なる操作
カニクイザルTfRに対するCH3C変異体の親和性を更に高めるために更なるライブラリーを調製した。これらのライブラリーは、理論上の多様性に関しておよそ10種類よりも少ないクローンとなるように設計されており、酵母表面ディスプレイを用いて多様性空間全体を網羅することが可能なものであった。これらのライブラリーの設計を図18に示す。4つのライブラリーの設計を用い、すべてのライブラリーはNNKまたは他の縮重コドン位置で縮重オリゴを使用して作製し、上記に述べたようにしてオーバーラップPCRにより増幅した。
第1のライブラリーは、CH3C.35様配列のコンセンサスに基づいたものとした(図18(A))。この場合、157〜161位をYGTEW(SEQ ID NO:115)として一定に保つ一方で、162、163、186、189、及び194位を飽和突然変異誘発を用いて変異させた。
第2のライブラリーは、CH3C.18様配列のコンセンサスに基づいたものとした(図18(B))。この場合、157位をLeu及びMetに限定し、159位をLeu及びHisに限定し、160位をValとして一定に保ち、161位をTrp及びGlyに限定し、162位をVal及びAlaに限定し、163位を完全にランダム化し、164位をレジスターに追加して完全にランダム化し、186位をソフトランダム化し、189位を完全にランダム化し、194位を芳香族アミノ酸及びLeuに限定した。
第3のライブラリーでは、新たなランダム化された位置をライブラリーに追加した(図18(C))。CH3C.18及びCH3C.35をそれぞれ出発レジスターとする2つのバージョンを作製し、次いで、E153、E155、Y164、S188、及びQ192の更なる位置を飽和突然変異誘発によりランダム化した。
第4のライブラリーは、CH3C.18の特定の位置を一定に保ったが、コンセンサスライブラリーよりも低いバイアスで他の位置を変異させた(図18(D))。160、161、及び186位を固定し、157、159、162、163、及び189位を飽和突然変異誘発によりランダム化し、194位は変異させたが芳香族残基及びLeuに限定した。
上記に述べたようにして、各ライブラリーを酵母でカニクイザルTfRに対して4〜5ラウンド選択し、単一のクローンをシークエンシングしてポリペプチド−Fab融合体に変換した。カニクイザルTfRへの結合における最大の濃縮が第2のライブラリー(すなわちCH3.18親の誘導体)から観察されたが、ヒトTfRへの結合に若干の低下もみられた。
CH3C成熟クローンの結合の特性分析
上記に述べたようにして、精製したCH3C Fc−Fab融合変異体と、プレートにコーティングしたヒトまたはカニクイザルTfRとの結合ELISAを行った。CH3C.18成熟ライブラリーからの変異体であるCH3C3.2−1、CH3C.3.2−5、及びCH3C.3.2−19がヒト及びカニクイザルTfRとおおよそ等しいEC50値で結合したのに対して、親クローンのCH3C.18及びCH3C.35は、カニクイザルTfRに対してヒトTfRに、10倍よりも高い結合を示した(図19)。
次に、新規なポリペプチドがヒト及びサルの細胞内に内在化するかについて試験を行った。「第1世代CH3Cクローンの特性分析」と題したセクションで上記に述べたプロトコールを用いて、ヒトHEK293細胞及びアカゲザルLLC−MK2細胞における内在化を試験した。図20に示されるように、ヒト及びカニクイザルTfRに対して同様に結合した変異体であるCH3C.3.2−5及びCH3C.3.2−19は、CH3C.35と比較して顕著に改善された内在化をLLC−MK2において示した。
CH3Cクローンの更なる操作
更なる親和性成熟クローンであるCH3C.18及びCH3C.35に対する更なる操作において、骨格(すなわちレジスター以外の)位置に更なる変異を加えて、直接的相互作用、第2水和殻相互作用、または構造的安定化を介して結合を向上させた。これは、「NNKウォーク」または「NNKパッチ」ライブラリーの作製、及びこれらのライブラリーからの選択を行うことによって実現された。NNKウォークライブラリーでは、パラトープの近傍の残基に1つずつNNK変異を導入した。FcgRIに結合したFc(PDB ID:4W4O)の構造をみることにより、図21に示されるように、元のライブラリーレジスターの近くの44個の残基が調査の候補として特定された。詳細には、以下の残基、すなわち、K21、R28、Q115、R117、E118、Q120、T132、K133、N134、Q135、S137、K143、E153、E155、S156、G158、Y164、K165、T166、D172、S173、D174、S176、K182、L183、T184、V185、K187、S188、Q191、Q192、G193、V195、F196、S197、S199、Q211、S213、S215、L216、S217、P218、G219、及びK220をNNK突然変異誘発の標的とした。Kunkel突然変異誘発を用いてこれらの44種類のシングルポイントNNKライブラリーを作製し、他の酵母ライブラリーについて上記に述べたように各産物をプールして電気穿孔法により酵母に導入した。
これらのミニライブラリー(それぞれ1個の位置を変異させ、20種類の変異体を生じる)の組み合わせによって小さいライブラリーが作製され、このライブラリーを、酵母表面ディスプレイを用いてより高い親和性の結合を生じる位置について選択した。TfRアピカルドメインタンパク質を用い、上記に述べたようにして選択を行った(図22)。3ラウンドの分取の後、濃縮された酵母ライブラリーからのクローンをシークエンシングしたところ、特定の点突然変異がアピカルドメインタンパク質に対する結合を顕著に改善させるいくつかの「ホットスポット」位置が特定された。CH3C.35では、これらの変異として、E153(Trp、Tyr、Leu、またはGlnに変異させた)及びS188(Gluに変異させた)が含まれた。CH3C.35の単一変異体及び複合変異体の配列は、SEQ ID NO:21〜23、236〜241、及び297〜299に記載される。CH3C.18では、これらの変異には、E153(Trp、Tyr、またはLeuに変異させた)及びK165(Gln、Phe、またはHisに変異させた)が含まれた。CH3C.18の単一変異体の配列は、SEQ ID NO:242〜247に記載される。
「NNKパッチ」アプローチは、CH3Bライブラリーについて上記に述べたものと似ているが、各パッチはCH3Cレジスターに直接隣接している。クローンCH3C.35を出発点として使用して以下のライブラリーを作製した。すなわち、
CH3Cパッチ1:アミノ酸位置:K21、R28、Y164、K165、及びT166。
CH3Cパッチ2:アミノ酸位置:Q115、R117、E118、Q120、及びK143。
CH3Cパッチ3:アミノ酸位置:T132、K133、N134、Q135、及びS137。
CH3Cパッチ4:アミノ酸位置:E153、E155、S156、及びG158。
CH3Cパッチ5:アミノ酸位置:D172、S173、D174、S176、及びK182。
CH3Cパッチ6:アミノ酸位置:L183、T184、V185、K187、及びS188。
CH3Cパッチ7:アミノ酸位置:Q191、Q192、G193、V195、及びF196。
CH3Cパッチ8:アミノ酸位置:S197、S199、Q211、S213、及びS215;ならびに
CH3Cパッチ9:アミノ酸位置:L216、S217、P218、G219、及びK220。
TfRアピカルドメインタンパク質を用い、上記に述べたようにして選択を行った。しかしながら、結合が向上したクローンは特定されなかった。
CH3C.35の親和性を改善するための更なる成熟ライブラリー
NNKウォークライブラリーから変異の組み合わせを特定する一方でこれらの周辺にいくつかの更なる位置を追加するための更なるライブラリーを、上記の酵母ライブラリーについて述べたようにして作製した。このライブラリーでは、YxTEWSS及びTxxExxxxFモチーフを一定に保ち、以下の6つの位置、すなわちE153、K165、K187、S188、S197、及びS199を完全にランダム化した。位置E153及びS188は、これらの位置がNNKウォークライブラリーにおいて「ホットスポット」であったことから含めた。位置K165、S197、及びS199は、これらの位置が結合領域の位置を決定し得るコアの部分を構成することから含め、K187は、188位に隣接していることから選択した。
このライブラリーを、上記に述べたようにして、カニクイザルTfRのアピカルドメインのみによって分取した。5ラウンドの後に濃縮されたプールをシークエンシングし、特定された固有のクローンのCH3領域の配列はSEQ ID NO:248〜265に記載される。
CH3C.35.21の元のレジスター内の許容される多様性及びホットスポットの調査
次のライブラリーは、主要な結合パラトープ内の許容される多様性の全体像を調べるために設計した。用いたアプローチは、NNKウォークライブラリーと同様のものであった。元のレジスター位置(157、159、160、161、162、163、186、189、及び194)のそれぞれ、ならびに2個のホットスポット(153及び188)をNNKコドンで個々にランダム化することにより、酵母上で一連の単一位置飽和突然変異誘発ライブラリーを作製した。更に、それぞれの位置を個々に野生型残基に復帰変異させ、これらの個々のクローンを酵母上に提示させた。図23は、野生型復帰変異及び単一位置のNNKライブラリーと比較した親クローンCH3C.35.21の結合を示す。153、162、163、及び188位は、野生型残基に復帰変異させた際にTfRに対する相当の結合を維持した唯一の位置であった点が着目された(186位の野生型への復帰変異で若干の残留はあるものの大幅に消失した結合が認められた)。
単一位置のNNKライブラリーを、ヒトTfRアピカルドメインに対して3ラウンドで分取して、結合したもののうち、上位の約5%を回収し、次いで少なくとも16種類のクローンを各ライブラリーからシークエンシングした。これらの結果は、CH3C.35クローンと関連して、各位置でどのアミノ酸がヒトTfRに対する結合を大きく低下させることなく許容され得るかを示している。以下に要約を示す。
位置153:Trp、Leu、またはGlu;
位置157:TyrまたはPhe;
位置159:Thrのみ;
位置160:Gluのみ;
位置161:Trpのみ;
位置162:Ser、Ala、またはVal(野生型のAsn残基は若干の結合を維持するようにみえたが、その後のライブラリー分取ではそのようにみえなかった点が着目された);
位置163:SerまたはAsn;
位置186:ThrまたはSer;
位置188:GluまたはSer;
位置189:Gluのみ;及び
位置194:Pheのみ
上記の残基は、1個の変化として、または組み合わせでクローンCH3C.35内に置換された場合にTfRアピカルドメインに対する結合を維持するパラトープの多様性を表す。これらの位置に変異を有するクローンが表9に示されており、これらのクローンのCH3ドメインの配列はSEQ ID NO:237〜241、264、及び266〜296に記載される。
一価のポリペプチドFab融合体
一価のTfR結合ポリペプチド−Fab融合体の作製
Fcドメインは自然でホモ二量体を形成するが、一方のFc単位がT139Wのノブ変異(EU番号付けスキームを用いた場合に366位に相当)を有し、他方のFc単位がT139S、L141A、及びY180Vのホール変異(EU番号付けスキームを用いた場合にそれぞれ366、368、及び407位に相当)を有する「ノブ・イン・ホール」として知られる一連の非対称的変異によって2個のFcフラグメントの選択的ヘテロ二量体化を生じ得る。いくつかの実施形態では、本発明の改変CH3ドメインは、139位にTrpを含む。いくつかの実施形態では、本発明の改変CH3ドメインは、139位にSerを、141位にAlaを、180位にValを含む。ヘテロ二量体のTfR結合ポリペプチドを、2種類のプラスミド(すなわち、ノブFcとホールFc)の一過性の同時トランスフェクションにより293またはCHO細胞で発現させる一方で、ポリペプチド−Fab融合体を3種類のプラスミド(すなわち、ノブ−Fc−Fab重鎖、ホール−Fc−Fab−重鎖、及び一般的な軽鎖)の一過性の同時トランスフェクションにより発現させた。分泌されたヘテロ二量体ポリペプチドまたはポリペプチド−Fab融合体の精製を、ホモ二量体におけるのと同じようにして行った(すなわち、Protein Aを使用した2カラム精製に続いてサイズ排除クロマトグラフィーを行い、その後、必要に応じて濃縮及びバッファー交換を行う)。質量分析または疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて形成されたホモ二量体(例えば、ノブ−ノブ、またはホール−ホールで対合したFc)に対するヘテロ二量体の量を決定した。典型的な調製物では、ポリペプチドの95%超、しばしば98%超がヘテロ二量体であった。明確さのため、この方法で作製されたすべての一価TfR結合物(Fcホモ二量体)を、ZZがポリペプチドの名前であるものとし、「.一価」が一価のTfR結合を示すものとして「ZZ.一価」と命名した。特に断らない限り、ヘテロ二量体ポリペプチド及びポリペプチド−Fab融合体において、TfR結合を与える変異には「ノブ」変異が含まれたのに対して、TfRに結合しないFc領域は「ホール」領域とともに用いた。ある場合では、これらのコンストラクトには、L7A/L8A、M25Y/S27T/T29E、N207S、または改変されたFcγRもしくはFcRn結合に対してそれぞれN207S/M201Lなど、Fcの特性を変化させる更なる変異も含まれていた。
CH3C.モノFcポリペプチドの結合の特性分析
一価のCH3Cポリペプチドの結合を、上記に述べた方法の改法を用いてELISAで測定した。ストレプトアビジンをPBS中、1μg/mLで一晩、96ウェルELISAプレートにコーティングした。洗浄後、プレートをPBS中、1%BSAでブロッキングした後、ビオチン化したヒトまたはカニクイザルTfRを1μg/mLで加え、30分間インキュベートした。更に洗浄した後、ポリペプチドを各プレートに連続希釈で加え、1時間インキュベートした。各プレートを洗浄し、二次抗体(すなわち、抗κ−HRP、1:5000)を30分間加え、プレートを再び洗浄した。各プレートをTMB基質で発色させ、2N HSOでクエンチした後、BioTek(登録商標)プレートリーダーで450nmの吸光度を読み取った。結果を図24に示すが、これはスタンダード(すなわち、二価のTfR結合)と一価のTfR結合ポリペプチドとを直接比較したものである。Ab204は、高親和性の抗TfR対照抗体である。
ヒトTfRを内因性に発現する293F細胞、及びヒトTfRまたはカニクイザルTfRを安定的にトランスフェクトしたCHO−K1細胞に対する結合について更に試験を行った(図25)。
一般的に、一価のポリペプチドでは二価のポリペプチドと比較してヒトTfRに対して大幅に低下した結合が観察され、一価のポリペプチドではカニクイザルに対する結合は弱すぎてこれらのアッセイで検出されなかった。
次に、CH3Cポリペプチドの一価のバージョンが、ヒトTfRを発現するHEK293細胞内に内在化するかどうかについて試験した。内在化アッセイについて上記に述べた方法を用いた。二価と一価のポリペプチドを比較した図26に示されるように、一価のペプチドも内在化することができたが、全体的なシグナルは、恐らくは結合アフィニティー/アビディティーの喪失のために対応する二価のバージョンよりも弱かった。
バイオレイヤー干渉法によって測定したCH3Cポリペプチドの結合速度論
結合速度論を、抗BACE1 Fabに融合されたいくつかの一価及び二価CH3Cポリペプチド変異体について測定し、バイオレイヤー干渉法を用いてそれらの二価の相当物と比較した(すなわち、Octet(登録商標)REDシステムを用いた)。TfRをストレプトアビジンセンサー上に捕捉し、次いでCH3Cポリペプチドを結合させて洗い流した。センサーグラムを1:1の結合モデルにフィッティングしたところ、二価ポリペプチドのK(app)値は、TfR二量体に対する強い結合を示した。結果を、表10ならびに図27及び28に示す。
(表10)Octet(登録商標)REDを用いたCH3Cポリペプチドの速度論
Figure 2020508053
不検出=低すぎる結合シグナルのために測定されず。
一価のフォーマットに変換されたポリペプチドは、アビディティーの喪失により、有意に弱いK(app)値を有した。ELISAによって上記でヒト及びカニクイザルTfRに対して同様の結合を有することが示されたクローンCH3C.3.2−1、CH3C.3.2−5、及びCH3C.3.2−19は、ヒトTfRとカニクイザルTfR間で極めて近いK(app)値も有していた。これらのポリペプチドの一価の形態を試験することを試みたが、このアッセイにおける結合は弱すぎて速度論パラメータは計算できなかった。
実施例3 Biacore(商標)を用いた更なるCH3C変異体の結合の特性分析
組換えTfRのアピカルドメインのクローン変異体の親和性をBiacore(商標)T200装置を使用して表面プラズモン共鳴により測定した。Biacore(商標)シリーズS CM5のセンサーチップを抗ヒトFabとともに固定化した(GE Healthcareより販売されるヒトFab捕捉キット)。5μg/mLのポリペプチド−Fab融合体を各フローセル上に1分間捕捉させ、ヒトまたはカニクイザルアピカルドメインの連続3倍希釈液を流速30μL/分で室温で注入した。各試料を45秒間の結合及び3分間の解離により分析した。それぞれの注入後、10mMグリシン−HCl(pH2.1)を用いてチップを再生した。結合応答を、無関連のIgGを同様の密度で捕捉させたフローセルからのRUを引くことによって補正した。Biacore(商標)T200 Evaluation Software v3.1.を用いて平衡状態の応答を濃度に対してフィッティングすることによって、安定状態の親和性を得た。
組換えTfR細胞外ドメイン(ECD)のクローン変異体の親和性を求めるため、Biacore(商標)シリーズS CM5センサーチップをストレプトアビジンとともに固定化した。ビオチン化したヒトまたはカニクイザルTfRのECDを各フローセル上に1分間捕捉させ、各クローン変異体の連続3倍希釈液を流速30μL/分で室温で注入した。各試料を45秒間の結合及び3分間の解離により分析した。結合応答を、同様の密度でTfR ECDを有さないフローセルからのRUを引くことによって補正した。Biacore(商標)T200 Evaluation Software v3.1.を用いて平衡状態の応答を濃度に対してフィッティングすることによって、安定状態の親和性を得た。
結合親和性を表11に要約する。親和性は安定状態のフィッティングにより得た。
(表11)更なるCH3C変異体の結合親和性
Figure 2020508053
実施例4 FcRnに対するCH3C変異体の結合特性
ForteBio(登録商標)ストレプトアビジンバイオセンサーを用いたForteBio(登録商標)Octet(登録商標)RED384装置を使用してFcRn結合アッセイを行った。ビオチン化した組換えBACE1をカイネティックバッファー(ForteBio(登録商標)より入手したもの)中で10μg/mLの濃度に希釈し、個々のバイオセンサー上に1分間捕捉させた。次にベースラインをカイネティックバッファー中で1分間、確立した。10μg/mLのポリペプチド−Fab融合体(抗BACE1 Fabアームを含むもの)を、1μMのヒトTfRのECDの存在下または非存在下でセンサーチップに結合させた。固定化したポリペプチド−Fab融合体に対する組換えヒトFcRn(pH5.5)の結合を、3分間の結合及び3分間の分離を行って分析した。
これらの実験から得られたセンサーグラム(図29)は、各ポリペプチド−Fab融合体変異体が酸性pH(pH5.5)でFcRnと結合すること、及びTfRとの結合がFcRnとの結合を顕著に阻害しなかったことを示している。
実施例5 CH3C変異体の薬物動態学的/薬力学的特性分析
本実施例では、マウスの血漿及び脳組織中での本発明のCH3C変異体ポリペプチドの薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)特性分析について述べる。
野生型マウス血漿中でのCH3Cの薬物動態学
ポリペプチド−Fab融合体はヒトTfRにのみ結合し、マウスTfRには結合しないことから、TfR介在性クリアランスを有さないモデルにおけるインビボ安定性を示すために野生型マウスでいくつかのCH3C変異体の薬物動態学(PK)を試験した。実験計画を下記表12に示す。6〜8週齢のC57Bl6マウスに静脈内投与し、表12に示される時点において顎下瀉血により生存中瀉血が行われた。血液をEDTA血漿チューブに採取し、14,000rpmで5分間遠心した後、血漿を後の分析用に単離した。
(表12)PK実験計画
Figure 2020508053
Ab122は、マウスで正常なPKを有する抗RSV対照として使用した。Ab153は、マウスで正常なPKを有する抗BACE1対照として使用した。この実験では、Ab153のFabアームを各改変Fcポリペプチドに融合した。
マウス血漿中のポリペプチド濃度を、ジェネリックのヒトIgGアッセイ(MSD(登録商標)ヒトIgGキット#K150JLD−4)を製造者の指示に従って使用して定量した。要約すると、予めコーティングしたプレートをMSD(登録商標)Blocker Aで30分間ブロッキングした。血漿試料を、Hamilton(登録商標)NIMBUSリキッドハンドリング装置を使用して1:2500で希釈し、ブロッキングしたプレートに2重で加えた。投与溶液も同じプレート上で分析して適正な用量を確認した。標準曲線として0.78〜200ng/mLのIgGを、4パラメータロジスティック回帰を用いてフィッティングした。図30及び表13は、これらのデータの分析結果を示す。大幅に速いクリアランス及び短い半減期を有していたCH3C.3.2−5を除き、CH3Cポリペプチド変異体のすべてが、標準Ab122と同等のクリアランス及び半減期の値を有していた。興味深い点として、この変異体はCH3C.3.2−19(N163D)の点変異体であり、後者は正常なPKプロファイルを有していた。
(表13)CH3Cポリペプチド−Fab融合体のPKパラメータ
Figure 2020508053
野生型マウスにおける更なるPK実験
下記表14の実験計画に従って野生型マウスで第2のPK実験を行った(すべてのポリペプチド−Fab融合体はAb153 Fabと融合させたもの)。
(表14)
Figure 2020508053
マウス及び試料を上記の実験で述べたようにして処理した。データを表15に示す。
(表15)CH3C.35ポリペプチド−Fab融合体のクリアランス値
Figure 2020508053
クリアランス値から明らかなように、これらのポリペプチド−Fab融合体は、標準対照抗体と比較して野生型マウスで同様のクリアランスを示した。
野生型マウスの脳組織における一価CH3C.35.N163のPK/PDの評価
マウスTfrc遺伝子内でヒトTfrcアピカルドメインを発現するトランスジェニックマウスを、CRISPR/Cas9技術を用いて作製した。得られたキメラTfRを内因性プロモーターの制御下でインビボで発現させた。
キメラhuTfRアピカルヘテロ接合体マウス(n=4/群)に42mg/kgのAb153または一価CH3C.35.N163のいずれかを静脈内投与し、野生型マウス(n=3)に50mg/kgの対照ヒトIgG1を静脈内投与した。Ab153は、マウスで正常なPKを有する対照として使用した。すべてのマウスを投与24時間後にPBSで灌流した。灌流に先立ち、血液をEDTA血漿チューブ中に心穿刺により採取し、14,000rpmで5分間遠心した。次いで、後のPK及びPD分析用に血漿を単離した。灌流後の脳を摘出し、脳半球を分離して組織重量の10倍のPBS中、1%NP−40(PK用)または5M GuHCl(PD用)中でホモジナイズした。
図31は、脳のPK実験の結果を示す。取り込みは、一価CH3C.35.N163のグループで、Ab153及び対照ヒトIgG1グループよりも大きかった。
hTfRアピカル+/+マウスにおけるポリペプチド−Fab融合体の脳及び血漿中のPKPD:CH3C.35.21及びCH3C.35.N153
表16の実験計画に示されるようにして、ホモ接合体hTfRアピカル+/+マウスに50mg/kgの抗BACE1抗体Ab153、抗TfR/BACE1二重特異性抗体Ab116、Ab153のFabと融合したCH3C.35.21.一価、またはAb153のFabと融合したCH3C.35.N153.一価のいずれかを静脈内注射した。この実験では、すべてのFcはエフェクター機能を除去するためのLALAPG変異を有していた。
(表16)シングルポイントの脳及び血漿PKPD実験の実験計画
Figure 2020508053
24時間後、血液を心穿刺により採取し、マウスをPBSで灌流した。脳組織を組織重量の10倍のPBS中、1%NP−40を含む溶解バッファー中でホモジナイズした。凝固を防止するために血液をEDTAチューブ中に採取し、14,000rpmで7分間遠心して血漿を単離した。マウス血漿及び脳ライセート中のポリペプチド濃度を、ジェネリックのヒトIgGアッセイ(MSDヒトIgGキット#K150JLD)を製造者の指示に従って使用して定量した。要約すると、予めコーティングしたプレートをMSD Blocker Aで30分間ブロッキングした。血漿試料を、Hamilton Nimbusリキッドハンドリング装置を使用して1:10,000で希釈し、ブロッキングしたプレートに2重で加えた。脳試料を1%NP40溶解バッファー中でホモジナイズし、ライセートをPK分析用に1:10に希釈した。投与溶液も同じプレート上で分析して適正な用量を確認した。標準曲線として0.78〜200ng/mLのIgGを、4パラメータロジスティック回帰を用いてフィッティングした。
24時間後のTfR結合ポリペプチドの血漿濃度は、抗BACE1の濃度よりも低かったが、これは、末梢で発現したhTfRアピカルとの結合を介したこの抗体のクリアランスによるものと考えられる(図32(A))。脳では、抗BACE1と比較して抗TfR/BACE1の濃度に有意な増加が認められた(図32(B))。最大の増加はCH3C.35.21.一価で観察されたが、脳での取り込みは、CH3C35.N153.二価でも抗BACEと比較して有意に改善した。操作されたTfR結合ポリペプチドのこのような顕著な蓄積は、BBBにおけるTfR介在性トランスサイトーシスによるものであり、したがって、TfRとの結合性をFc領域に遺伝子操作によって組み込むことの有用性を証明するものである。
アミロイド前駆体タンパク質APPの切断のBACE1阻害を、血漿及び脳における抗体活性の薬力学的指示値として用いた。脳組織を組織重量の10倍の5Mグアニジン−HCl中でホモジナイズし、次いでPBS中、0.25%カゼインバッファー中で1:10に希釈した。サンドイッチELISAを用いて血漿及び脳ライセート中のマウスAβ40濃度を測定した。384ウェルMaxiSorpプレートに、Aβ40ペプチドのC末端に特異的なポリクローナル捕捉抗体(Millipore#ABN240)を一晩コーティングした。カゼインで希釈したグアニジン脳ライセートをELISAプレート上で更に1:2に希釈し、検出抗体としてビオチン化M3.2を同時に加えた。血漿を1:5の希釈度で分析した。各試料を4℃で一晩インキュベートした後、ストレプトアビジン−HRP、次いでTMB基質を加えた。標準曲線として0.78〜50pg/mLのmsAβ40を、4パラメータロジスティック回帰を用いてフィッティングした。
すべてのポリペプチドで抗BACE1 Fabアームが存在することにより、血漿中のアミロイドベータタンパク質(Aβ)は、非処理の野生型マウスと比較してすべてのポリペプチドで同様の程度で低下した(図33(A))。抗BACE1と比較して、TfR結合ポリペプチドによる処置は、hTfRアピカル+/+マウスにおけるAβの大きな低下を生じ、脳におけるBACE1と標的の結合が得られたことを示した(図33(B))。脳における標的結合のレベルは、操作したポリペプチド融合体と抗TfR/BACE1二重特異性抗体とで同様であった。
hTfRアピカル+/+マウスにおけるポリペプチド−Fab融合体の脳及び血漿中のPKPD:CH3C.35.21、CH3C.35.20、CH3C.35、CH3C.35.23、CH3C.35.23.3
PK及び脳での取り込みに対するTfR結合親和性の影響を評価するため、Biacoreによって測定されるアピカルヒトTfRに対する結合親和性の異なる抗BACE1 Ab153及びTfR結合ポリペプチド融合体(CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、CH3C.35:Ab153融合体)を作製した。ヒトTfRに対するCH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、CH3C.35:Ab153融合体の結合親和性はそれぞれ、100nM、170nM、及び620nMである。hTfRアピカル+/+マウスノックインマウスに、50mg/kgのAb153または各ポリペプチド−Fab融合体を全身投与し、血漿PK及び脳PKPDを投与の1、3、及び7日後に評価した。脳及び血漿PKPD分析を上記のセクションで述べたようにして行った。末梢組織でのTfRの発現により、CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、及びCH3C.35:Ab153融合体は、Ab153単独と比較して血漿中のより速やかなクリアランスを示したが、これは、標的介在性のクリアランスと一致し、インビボでのTfR結合を示すものである(図44(A))。印象的な点として、CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、及びCH3C.35:Ab153融合体の脳内濃度は、Ab153と比較して有意に増大し、同じ時点におけるAb153がわずかに約3nMであったのと比較して投与後1日目に30nMよりも高い最大脳内濃度が得られた(図44(B))。CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、及びCH3C.35:Ab153融合体の脳曝露の増大は、Ab153を投与したマウスにおけるAβ濃度と比較して、マウスの脳で約55〜60%低い内因性のマウスAβ濃度を生じた(図44(C))。CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、及びCH3C.35:Ab153融合体の濃度が脳で高い状態に保たれた一方で、このようなより低い脳のAβ濃度は維持され、7日目までに曝露が低減された際にAb153で処置したマウスと同様の濃度に戻った。経時的な脳曝露の低下は、CH3C.35.21:Ab153、CH3C.35.20:Ab153、及びCH3C.35:Ab153融合体の末梢曝露の低下と相関しており、インビボでの明確なPK/PDの関係を示した(図44(A)と44(C)とを比較)。更に、全体の脳のTfR濃度は、この単回の高用量の投与後にAb153処理マウスとポリペプチド−Fab融合体処理マウスとで同等であり、脳におけるTfR発現に対して、ポリペプチド−Fab融合体の脳曝露の増加が有意な影響を及ぼさないことを示している(図44(D))。
TfR結合ポリペプチド−Fab融合体のより広い親和性範囲でのPKと脳での取り込みとの関係を更に評価するため、hTfRとの結合についてより広い親和性範囲を有する更なる融合体を作製した。ヒトTfRに対するCH3C.35.23:Ab153及びCH3C.35.23.3:Ab153融合体の結合親和性は、それぞれ420nM及び1440nMである。hTfRアピカル+/+ノックインマウスに上記に述べたように投与を行った。血漿のPK及び脳のPKPDを投与の1、4、7、及び10日後に評価した。ポリペプチド−Fab融合体の末梢でのPKはhTfR親和性に依存しており、より親和性の高いCH3C.35.23:Ab153融合体は、大幅に低い親和性を有するCH3C.35.23.3:Ab153融合体と比較してより速やかなクリアランスを示した(図45(A))。CH3C.35.23:Ab153及びCH3C.35.23.3:Ab153融合体はいずれも、Ab153単独と比較して有意に高い脳曝露を有し、CH3C.35.23:Ab153は投与後1日目に脳内で約36nMに達した(図45(B))。血漿中濃度が同様であったにもかかわらず、CH3C.35.23.3:Ab153融合体のこの最大の脳での取り込みは、CH3.35.23:Ab153融合体の脳での取り込みよりも低く、これは恐らくは後者の融合体のhTfRに対する親和性が約3.5倍低いことによるものと考えられる。興味深い点として、親和性のより低い融合体が10日目までにより持続した末梢曝露を与えたことから、その脳曝露も親和性のより高いCH3C.35.23:Ab153融合体よりも高かった。このことは、親和性のより低いTfR結合ポリペプチド−Fab融合体では脳Cmaxはより低いがPKは経時的により持続するというトレードオフを示している。Aβ40の有意に低い濃度が、抗BACE1単独と比較して抗BACE1ポリペプチド融合体を投与したマウスの脳で観察された(図45(C))。このAβ40低下の持続時間は、脳におけるhuIgG1曝露の経時的なレベルと一致していた(図45(B))。印象的な点として、CH3C.35:Ab153融合体を投与したマウスは、単回投与の7〜10日後まで持続的な脳のAβ40の低下を示した。全体的な脳のTfR濃度は、CH3C.35:Ab153融合体に対してAb153を投与したマウス間で投与後1日目に同等であった(図45(D))。これらのデータは共に、TfR結合ポリペプチド融合体が抗BACE1の脳曝露を増大させることにより単回投与後に脳のAβ40を有意に低下させ得ることを示すものである。
実施例6 CH3C.18Fc及びトランスフェリン受容体アピカルドメインの結晶化
本実施例では、CH3C.18とトランスフェリン受容体のアピカルドメイン(TfR−AD)との間の結合界面の結晶化及び分析について述べる。
発現
ヒトトランスフェリン受容体のアピカルドメイン(TfR−AD)及び操作されたヒトFc(CH3C.18 Fc)を、Expi293細胞内で、2.5x10細胞/mLの初期細胞密度で発現させた(それぞれSEQ ID NO:301及び302)。必要に応じて、200mL以上の体積中で発現を行った。グリコシル化阻害剤であるキフネンシンをトランスフェクションの20時間後に25μMの最終濃度で加えた。発現培養物を、細胞生存率が顕著に低下するトランスフェクションの3〜4日後に回収した。
精製
発現させたTfR−AD及びCH3C.18 Fcを、それぞれProtein A及びNi−NTA樹脂を用いて精製した後、Superdex200 26/60ゲル濾過カラムでサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。以下のバッファーを使用した。
Protein A洗浄バッファー:20mM Hepes pH7.4、100mM NaCl;
Protein A溶出バッファー:30mMグリシン、pH2.5(溶出液を1M Tris、pH9.0の入ったチューブに回収して溶出液を直ちに中和した);
Ni−NTA洗浄バッファー:30mM TrispH、10mMイミダゾール、及び200mM NaCl;
Ni−NTA溶出バッファー:30mM Tris pH8.0、200mM NaCl、及び250mMイミダゾール;ならびに
サイズ排除バッファー(SEC):30mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、及び3%グリセロール。
複合体の形成及び精製
精製したTfR−AD及びCH3C.18 Fcを過剰量のアピカルドメインと混合し、室温で1時間インキュベートし、上記に述べたSECバッファーを使用してSuperdex200 26/60ゲル濾過カラムでサイズ排除クロマトグラフィーを用いて複合体を精製した。サイジングによって、一方が複合体(保持容量=180ml)に対応し、他方が過剰のアピカルドメイン(保持容量=240ml)に対応した、2つの主要なピークが予想通り得られた。ピーク画分をクマシー染色したSDS−PAGEゲルによって分析した(図34)。
結晶化
シッティングドロップ蒸気拡散法により、15℃及び室温(RT)で、8.5mg/mlのタンパク質濃度で複合体の初期結晶化スクリーニングを行った。25%PEG3350、0.1M Tris pH8.5、及び0.2M MgClを含む条件で細い針状の結晶のシャワーが観察された。これらの結晶を、20%PEG3350を用いた以外は同じ条件で種結晶として用いてマウントできるサイズの単一の細い針結晶を生成させた。
X線データの収集
20%(v/v)エチレングリコールを添加した結晶化母液を用いて液体窒素中に直接浸漬することによって結晶をフラッシュ冷却した。Rayonix300高速検出器を用い、Advanced Photon Source(APS)のSER−CATのビームラインでX線強度のデータを収集した。結晶は3.6Åに回折し、2個の複合体分子が非対称単位中にある六角形の空間群P6に属した(表17)。データをHKL2000プログラムを使用してインデックス付けし、積分して、スケーリングした。2個の結晶から収集したデータをマージして3.6Åのデータを生成した。
(表17)CH3C.18 Fc−TfR−AD複合体構造の結晶データ
Figure 2020508053
1Rマージ =Σj(|Ih-<I>h|)/ΣIh、式中、<Ih>は、対称等価(symmetry equivalent)上の平均強度。
2R因子 =Σ|F観測値-F計算値|/Σ|F観測値|
構造決定及び精密化
複合体の結晶構造を、CH3C.18 Fcの二量体及びTfR−ADの単量体を初期探索モデルとして用いてPHASERによる分子置換により決定した。このモデルを、REFMACを用いて剛体精密化に続いて制限精密化を行って精密化した。結晶学的計算はすべて、CCP4プログラムスイートを用いて実行した(www.ccp4.ac.uk/)。グラフィックプログラムCOOTを使用して複合体の電子密度へのモデル構築を行った。複合体分子の電子密度は、特にCH3C.18 Fc−TfR−ADの界面において良好であった(2Fo−Fcマップを1.2シグマレベルに合わせた)。モデル構築及び精密化を繰り返し行った後、データの低い分解能及び無秩序化したCH2ドメインのため、高いR及びfreeRが認められた(R/freeR=0.30/0.39)。他の利用可能なFc構造に見られたCH2の無秩序は、CH2とCH3ドメインとの間の柔軟なエルボー角によるものであった。
結合界面の相互作用
CH3C.18 FcとTfR−ADとの結合界面が図35(A)及び図35(B)ならびに図36(A)及び36(B)に示されている。図37(A)及び図37(B)に示されるように、
CH3C.18のTrp154と、TfR−ADのArg208;
CH3C.18のGlu155と、TfR−ADのArg208;
CH3C.18のSer156と、TfR−ADのArg208及びLeu212;
CH3C.18のLeu157と、TfR−ADのSer199及びAsn215;
CH3C.18のHis159と、TfR−ADのLys188、Ser199、及びArg208;
CH3C.18のVal160と、TfR−ADのGly207及びArg208;
CH3C.18のTrp161と、TfR−ADのArg208、Val210、及びLeu212;
CH3C.18のAla162と、TfR−ADのArg208;
CH3C.18のVal163と、TfR−ADのLeu209;
CH3C.18のSer188と、TfR−ADのTyr211;
CH3C.18のThr189と、TfR−ADのTyr211及びLeu212;
CH3C.18のGln192と、TfR−ADのLys158及びGlu294;
CH3C.18のTrp194と、TfR−ADのLeu212、Val213、Glu214、及びAsn215;ならびに
CH3C.18のPhe196と、TfR−ADのArg208
の間で相互作用が認められた。
更に、実施例2の「パラトープマッピング」と題したセクションで述べ、また、図37(A)及び図37(B)に示されるように、CH3Cレジスターの外側のいくつかの位置もTfRに対する結合に関与している。
並べ替えを行ったTfRアピカルドメインコンストラクトと天然の完全長TfRとの間でのエピトープ及び3次元構造の保存レベルの決定
並べ替えを行ったTfRアピカルドメイン(SEQ ID NO:301)に結合したCH3C.18 Fcポリペプチドの3.6ÅのX線結晶構造を上記に述べたようにして解析した。並べ替えを行ったTfRアピカルドメインと代表的な完全長TfR構造(PDBコード:3KAS)のアピカルドメインとの構造アラインメントによって、保存されたフォールド(並べ替えを行ったアミノ酸の外側)が明らかとなった。2つの構造間の平均二乗偏差(RMSD)は1.24Åであった。TfRの残基194〜297及び326〜379を、並べ替えを行った構造中の対応する残基とアラインしてRMSDを計算した。構造アラインメント及びRMSDの計算は、MOE v2016.0802(Chemical Computing Group)で行った。1.24Åの低いRMSDは保存されたアピカルドメインの3次元構造を反映しており、並べ替えを行った構造が天然のフォールドを維持し、結合のための保存されたエピトープまたは抗原を提示することができたことを示す。
実施例7 CH3C.35 Fc及びトランスフェリン受容体アピカルドメインの結晶化
本実施例では、CH3C.35とトランスフェリン受容体のアピカルドメイン(TfR−AD)との間の結合界面の結晶化及び分析について述べる。
発現
ヒトトランスフェリン受容体のアピカルドメイン(TfR−AD)及び操作されたヒトFc(CH3C.35 Fc)を、CHO細胞内で、2.5x10細胞/mLの初期細胞密度で発現させた(それぞれSEQ ID NO:301及び421)。必要に応じて、500mL以上の体積中で発現を行った。発現培養物を、細胞生存率が顕著に低下するトランスフェクションの3〜4日後に回収した。
精製
発現させたTfR−AD及びCH3C.35 Fcを、それぞれProtein A(Genscript)及びNi−NTA(Sigma)樹脂を用いて精製した後、Superdex200 26/60ゲル濾過カラムでサイズ排除クロマトグラフィーにかけた。以下のバッファーを使用した。
Protein A溶出バッファー:30mMグリシン、pH2.5(溶出液を1M Tris、pH9.0の入ったチューブに回収して溶出液を直ちに中和した);
Ni−NTA溶出バッファー:30mM Tris pH8.0、200mM NaCl、及び250mMイミダゾール;ならびに
サイズ排除バッファー(SEC):30mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、50mM KCl、3%グリセロール、及び0.01%アジ化ナトリウム。
複合体の形成及び精製
精製したTfR−AD及びCH3C.35 Fcを過剰量のアピカルドメインと混合し、室温で1時間インキュベートし、上記に述べたSECバッファーを使用してSuperdex200 26/60ゲル濾過カラムでサイズ排除クロマトグラフィーを用いて複合体を精製した。
結晶化
シッティングドロップ蒸気拡散法により、4℃、15℃、及び室温(RT)で、複合体の初期結晶化スクリーニングを行った。25%PEG3350、0.1M Bis−Tris pH6.5、及び0.2M LiSOを含む条件で細い針状の結晶のシャワーが観察された。これらの結晶を、20%PEG3350を用いた以外は同じ条件で種結晶として用いて単一の細い針結晶を生成させ、シーディングを連続して4回繰り返してマウントできるサイズの結晶を生成させた。
X線データの収集
20%(v/v)エチレングリコールを添加した結晶化母液を用いて液体窒素中に直接浸漬することによって結晶をフラッシュ冷却した。PILATUS検出器を用い、Diamond Light Source(DLS)のIO4ビームラインでX線強度のデータを収集した。5ミクロンのサイズのマイクロフォーカスビームをデータ収集に使用した。結晶は3.38Åに回折し、2個の複合体分子が非対称単位中にある六角形の空間群P6に属した(表18)。CCP4スイートプログラム(Xia2−XDS及びXSCALE)を使用してデータをインデックス付けし、積分して、スケーリングした。
(表18)CH3C.35 Fc−TfR−AD複合体構造の結晶データ
Figure 2020508053
1Rマージ =Σj(|Ih-<I>h|)/ΣIh、式中、<Ih>は、対称等価(symmetry equivalent)上の平均強度。
2R因子 =Σ|F観測値-F計算値|/Σ|F観測値|
構造決定及び精密化
複合体の結晶構造を、CH3C.35Fc−AD TfR複合体を探索モデルとして用いてPHASERによる分子置換により決定した。このモデルを、REFMACを用いて剛体精密化に続いて制限精密化を行って精密化した。結晶学的計算はすべて、CCP4プログラムスイートを用いて実行した。グラフィックプログラムCOOTを使用して複合体の電子密度へのモデル構築を行った。複合体分子の電子密度は、特にCH3C.35 Fc−TfR−ADの界面において良好であった。
結合界面の相互作用
CH3C.35 FcとTfR−ADとの結合界面が図39(A)〜39(C)に示されている。図39(A)は、3.4ÅにおけるCH3C.35 FcとTfR−ADとの複合体を示す。図39(B)は、CH3C.35 Fc内の残基W161がTfR−AD内の残基L209、L212、及びY211によって安定化されていることを示す。図39(C)は、CH3C.35 Fc内の残基E160とTfR−AD内の残基R208間の中心的結合相互作用としての塩橋を示す。この相互作用は、改変FcポリペプチドのヒトTfRに対する結合親和性(208位のArg)とカニクイザルTfRに対する結合親和性(208位のGly)との差を一部説明し得る。図40(A)は、CH3C.35 FcとTfR−ADとの複合体と、CH3C.18 FcとTfR−ADとの複合体(実施例6で述べたもの)とを重ね合わせた構造を示し、CH3C.18とCH3C.35との間で大きなFc骨格のコンフォメーション変化がみられないことを示している。図40(B)は、図40(A)の重ね合わせ構造の拡大図を示す。CH3C.35 Fc/TfR−AD複合体のTfR−AD内の残基206〜212は、CH3C.18 Fc/TfR−AD複合体のTfR−AD内の残基とは異なるコンフォメーションを取っていた。TfR−AD内の残基R208は、CH3C.18 Fc/TfR−AD複合体の表面内に埋もれているようにみえるが、CH3C.35 Fc/TfR−AD複合体では溶媒に露出しているようにみえる。更に、CH3C.35 Fc/TfR−AD複合体のTfR−ADの残基L209は、180°回転されて表面に結合しているようにみえるが、CH3C.18 Fc/TfR−AD複合体では表面から離れているようにみえる。
図41A及び図41Bに示されるように、
CH3C.35のThr159と、TfR−ADのGly207、Arg208、Lys188、及びLeu209;
CH3C.35のGlu160と、TfR−ADのArg208及びLeu209;
CH3C.35のSer162と、TfR−ADのArg208及びLeu209;
CH3C.35のSer156と、TfR−ADのLeu209;
CH3C.35のTrp161と、TfR−ADのLeu209、Tyr211、及びLeu212;
CH3C.35のGlu189と、TfR−ADのTyr211及びLeu212;
CH3C.35のPhe194と、TfR−ADのLeu212、Asn215、及びVal213;
CH3C.35のTyr157と、TfR−ADのLeu212、Asn215、及びSer199;
CH3C.35のGln192と、TfR−ADのVal213及びLys158;ならびに
CH3C.35のPhe196と、TfR−ADのVal213及びLeu212
との間で相互作用が認められた。
更に、実施例2の「パラトープマッピング」と題したセクションで述べ、また、図41(A)及び図41(B)に示されるように、CH3Cレジスターの外側のいくつかの位置もTfRに対する結合に関与している。
実施例8 カニクイザルにおけるCH3C変異体を含むFc−Fab融合ポリペプチドの薬物動態学的/薬力学的実験
本実施例では、カニクイザルにおける本発明のCH3C変異体ポリペプチドを含むFc−Fab融合体の薬物動態学的/薬力学的実験(PK/PD)特性分析について述べる。
実験計画
Ab122(対照IgGとしての抗RSV抗体)、Ab153(抗BACE1抗体)、Ab210(抗TfR/BACE1二重特異性抗体)、または、Ab153のFabドメインに融合させたCH3C変異体ポリペプチドを含むFc−Fab融合ポリペプチドの単一の30mg/kg用量を、2〜4歳の雄のカニクイザルに静脈内投与して血漿中PK、血漿中PD(Aβ40)、及び脳脊髄液(CSF)中PD(Aβ40)を29日間にわたって評価した(n=4/群)。ベースラインを確立するため、投与前のCSF及び血液試料を投与7日前に各動物から採取した。投与後、CSFをIT−Lカテーテルにより、投与の12、24、48、72、及び96時間後に、また、実験日の8、11、15、18、22、25、及び29日目にPD分析用に採取した。血液試料を、血漿及び血清中PK用に投与の0.25、1、6、12、24、72時間後、また、実験日の8、11、15、18、22、25、及び29日目に採取した。
表19は、実験計画のアウトラインを示したものである。「CH3C.35.21.16:Ab153」は、Ab153のFabドメインに融合させたクローンCH3C.35.21.16を含む一価のFc−Fab融合ポリペプチドである。「CH3C.35.21:Ab153」は、Ab153のFabドメインに融合させたクローンCH3C.35.21を含む一価のFc−Fab融合ポリペプチドである。「CH3C.35.9:Ab153」は、Ab153のFabドメインに融合させたクローンCH3C.35.21を含む二価のFc−Fab融合ポリペプチドである。「CH3C.35.8:Ab153」は、Ab153のFabドメインに融合させたクローンCH3C.35.20を含む二価のFc−Fab融合ポリペプチドである。「LALAPG」は、抗体またはFc−Fab融合ポリペプチドが、Fc配列中に変異L7A、L8A、及びP102Gを有していることを示す(SEQ ID NO:1を基準として番号付けしたとき)。「LALAPG.YTE」は、Fc−Fab融合ポリペプチドが、Fc配列中に変異L7A、L8A、P102G、M25Y、S27T、及びT29Eを有していることを示す(SEQ ID NO:1を基準として番号付けしたとき)。
(表19)
Figure 2020508053
方法
ヒトIgGのPKアッセイ
カニクイザル血清中の抗体またはFc−Fab融合ポリペプチドの濃度を、ヒトIgG特異的サンドイッチELISAを用いて定量した。384ウェルMaxiSorpプレートに、ヒトIgGのFcに特異的な抗体を一晩コーティングした。血清試料を1:100、1:1,000、1:10,000、及び1:100,000に希釈し、ブロッキングしたプレートに加えた。検出抗体は、ポリクローナル抗ヒトIgGサル吸収抗体とした。各抗体またはFc−Fab融合ポリペプチドに対して個々に標準曲線を作成し(48〜200000pg/mLのIgG)、アッセイの血清中の定量下限(LLOQ)は20ng/mLである。
PDアッセイ
カニクイザルCSF中の可溶性のAPPα/β濃度を、MesoScale Discovery(MSD)multiplexキット(MSD#K15120E)を使用して測定した。2種類の異なる抗体がsAPPαまたはsAPPβのいずれかを特異的に捕捉し、次に、両方の被検物質を、SULFOタグで標識した抗APPマウスモノクローナル抗体で検出した。カニクイザルのAβ40濃度を、MSD ultra−sensitiveキット(MSD#K151FTE)を使用して測定した。このアッセイではhuAβ特異的6E10抗体を捕捉分子として使用し、ペプチドのC末端に対して特異的な抗Aβ40抗体を検出分子として用いた。いずれのアッセイも製造者の指示に従って行った。要約すると、予めコーティングしたプレートをMSD Blocker Aで1時間ブロッキングした。CSF試料を1:5に希釈し、ブロッキングしたプレートに二重で加えた後、4℃で一晩インキュベートした。次に、それぞれの検出抗体を加え、各プレートをSector S600装置で読み取った。標準曲線として0.92〜3750pg/mLのhuAβ40及び0.1〜100ng/mLのsAPPα/βの両方を、4パラメータロジスティック回帰を用いてフィッティングした。このアッセイでは、Aβ40のLLOQは73pg/mLであり、sAPPα/βでは0.5ng/mLであった。
結果
投与後最初の7日間からの中間の血漿PKは、Ab210及びCH3C.35.9:Ab153で、それらの末梢におけるTfRに対する結合のため、予想された標的介在性クリアランスを示した(図42(A))。Ab153及びAb210抗体の両方、ならびにCH3C.35.9:Ab153は、対照IgGと比較して血漿中Aβ40の顕著で持続的な低下をもたらし(図42(B))、これら3種類の分子のすべてが同程度にインビボのBACE1活性を阻害する能力を有することが確認された。CSF中では、Ab210及びCH3C.35.9:Ab153の両方が、対照IgGと比較してCSF中のAβ40及びsAPPβ/sAPPα比を、それぞれ約70%及び約75%にまで低下させる能力を有した(図43(A)及び43(B))。TfRに結合しない抗BACE1抗体であるAb153は、対照IgGと比較してCSF中のAβ40及びsAPPβ/sAPPα比に与えた影響は最小であった。これらの結果は、CH3C変異体ポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.9)によるTfRへの結合が、抗BACE1抗体のFabドメインに融合させたCH3C変異体ポリペプチドを含むFc−Fab融合体(例えば、CH3C.35.9:Ab153)のCNS中への浸透量を高めることによってCSF中のAβ40及びsAPPβ/sAPPαの生成を阻害することを示すものである。
血清中PK、血漿中Aβ、及びCSF中Aβ濃度を、単回投与後4週間にわたって更に評価した。マウスで観察された結果と同様、TfRに結合するFc−Fab融合体(CH3C.35.21.16:Ab153 LALAPG、CH3C.35.21.16:Ab153 LALAPGYTE、及びCH3C.35.21:Ab153 LALAPGYTE)の末梢血清PKは、末梢組織のTfRに対する結合により、Ab122及びAb153と比較してより速やかなクリアランスを示した(図46(A))。Ab153及びCH3C:Ab153融合体はいずれも、対照IgG Ab122と比較して血漿中Aβ濃度を約50%よりも大きく低下させた(図46(B))。最大のAβは、Ab153とCH3C:Ab153融合体とで同様であり、Fcの改変が、インビボでAPPの切断を阻害する抗BACE1 Fabの能力に影響しなかったことを示している(図46(B))。血漿中Aβの持続時間は、Ab153及びCH3C:Ab153の曝露と経時的に相関していた。CSF中では、3種類のFc−Fab融合体のすべてが、対照IgG Ab122と比較してAβ40及びsAPPβ/sAPPα比を約70%にまで有意に低下させる能力を有したのに対して、Ab153を投与した動物では有意な低下は認められなかった(図46(C)及び46(D))。これらの結果は、CH3C変異体ポリペプチド(例えば、クローンCH3C.35.21.16及びCH3C.35.21)によるTfRへの結合が、抗BACE1抗体のFabドメインに融合させたCH3C変異体ポリペプチドを含むFc−Fab融合体(例えば、CH3C.35.21.16:Ab153及びCH3C.35.21:Ab153)のCNS中への浸透量を高めることによってCSF中のAβ40及びsAPPβ/sAPPαの生成を阻害することを示すものである。
未成熟赤血球ではTfRが高レベルに発現していることから、末梢血の臨床病理学的な性質を実験期間の全体を通じて評価することによって網状赤血球数、血清鉄、及び赤血球数を評価した。血清鉄値の評価では、色素源としてTPTZ[2,4,6−トリ−(2−ピリジル)−5−トリアジン]を使用する方法の変法を用いた。酸性培地中、トランスフェリンに結合した鉄を遊離第二鉄イオンとアポトランスフェリンとに解離させた。塩酸とアスコルビン酸ナトリウムで第二鉄イオンを第一鉄状態に還元した。次いで、第一鉄イオンをTPTZと反応させて青色の複合体を形成させ、これを600/800nmで重クロム酸塩を用いて測定した。吸光度の増加は、トランスフェリンに結合した鉄の存在量に正比例していた。これを、Beckman/Olympus AU640e chemistry analyzerで行った。絶対網状赤血球数及びRBCの形態をSiemens Advia120自動血液検査システムにより分析した。Fc−Fab融合体は、それらの投与前の値と比較して網状赤血球数に影響を及ぼさなかった(図47(A))。更に、血清鉄及び赤血球数も影響はみられなかった(図47(B)及び47(C))。これらのデータは共に、改変TfR結合Fcポリペプチド−Fab融合体が、非ヒト霊長類において抗体の脳曝露を安全かつ効果的に増大させることで安定した薬力学的応答(すなわち、CSF中のAβの低下)を生じることを示すものである。
実施例9 M201L及びN207S変異を有するCH3C.35の薬物動態学的分析
本実施例では、変異M201L及びN207SがCH3C.35と両立することについて述べる。
血清安定性を高める変異である、SEQ ID NO:1を基準として番号付けしたM201L及びN207S(EU番号付けによればM428L/N434S、「LS」変異とも呼ばれる)が、TfR結合Fc改変と両立するかどうかを評価するために、ヒトFcRnノックインマウスにAb153_LALAPG、Ab153_LALA.LS、CH3C.35.21:Ab153_LALA.LS、またはAb153_LALAPG.YTEを10mg/kgで投与した。14日間にわたる血漿中PKの評価は、血清安定性変異を有さないAb153_LALAPGと比較してAb153_LALA.LS、CH3C.35.21:Ab153_LALA.LS、及びAb153_LALAPG.YTEにおいて同様の約2倍の改善を示した(図48(A)及び48(B))。このことは、TfR結合を生じるこれらの更なるFcの変異が、インビボでhuIgG1の半減期を改善するLS変異の性質に影響しないことを示している。
実施例10 TfRコンストラクトの操作
本実施例では、配列449の配列を有する第1のポリペプチドと、SEQ ID NO:450の配列を有する第2のポリペプチドとを含むTfRコンストラクトの発現及び精製について述べる。
TfRコンストラクトをコードするDNAフラグメントとしてHis10−Smt3−Avi−TfRを合成し、pET28ベクターに挿入した。SEQ ID NO:468の配列は、ヒトTfR配列(SEQ ID NO:449の配列を有する第1のポリペプチドとSEQ ID NO:450の配列を有する第2のポリペプチド)を有するHis10−Smt3−Avi−TfRをコードする。SEQ ID NO:469の配列は、カニクイザルTfR配列(SEQ ID NO:451の配列を有する第1のポリペプチドとSEQ ID NO:452の配列を有する第2のポリペプチド)を有するHis10−Smt3−Avi−TfRをコードする。TfRコンストラクトと大腸菌のビオチンリガーゼBirAを同時発現させるため、プラスミドpACYC−BirAを、pET28−His10−Smt3−Avi−PreScission−TfRとともに大腸菌BL21(DE3)(Novagen)に形質転換した。培養物をカナマイシン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(35μg/ml)を含有するLB培地中に37℃で接種し、対数増殖期に維持した。培養物のA600が0.6〜0.8に達した時点で、培養物を氷上で30分間冷却し、IPTGを最終濃度1.0mMにまで加え、培養物を常時振盪しながら18℃で16時間インキュベートした。細胞を遠心分離により回収し、−80℃で保存した。
その後のすべての操作は4℃で行った。6LのLB培地からの細胞ペレットを200mLのバッファーA(50mM Tris−HCl、pH7.5、500mM NaCl、10%グリセロール)に懸濁し、ベンゾナーゼ(Sigma)を1:20000の希釈度で加えた。懸濁液を少なくとも1時間にわたって静かに混合した。ライセートをマイクロフルイダイザーにかけ、Sorvall SS34ローター内で14,000rpmで45分間、遠心分離を行って不溶性物質を除去した。可溶性のサイトゾル画分を、バッファーAで平衡化した5mlのHisTrap(GE Healthcare)にロードした。カラムを、バッファーAに加えた25mMイミダゾール及び50mMイミダゾールで、それぞれ少なくとも20カラム体積(CV)及び3CV洗浄した。結合したTfRコンストラクトをバッファーAに加えた100〜500mMイミダゾール勾配で8CV溶出した。TfRコンストラクトを含むピーク画分をプールし、2つの部分に分けた。プールした画分の半分はTfRコンストラクトを更に精製するために使用し、残りの半分はHis10−Smt3タグを切断してAvi−TfRを精製するために使用した。
タグを切断するため、Smt3特異的プロテアーゼUlp1(Sumo fusion:プロテアーゼ)を100:1のモル比で加え、4℃で一晩、インキュベートしてバッファーC(50mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、1mM DTT)に対して透析した。このタンパク質混合物を濾過(0.22μm)し、バッファーCで平衡化した5mLのHisTrap(GE Healthcare)上に再びロードした。切断されたHis10−Smt3タグ及びUlp1プロテアーゼは、バッファーCで平衡化した5mlのHisTrap(GE Healthcare)上にロードすることによって除去し、切断されたAvi−TfRを含むフロースルーを回収して濃縮した。His10−Smt3を融合し、タグを切断したヒトTfRのそれぞれをHiLoad Superdex200 26/60及びSuperdex75 16/60(GE Healthcare)にそれぞれかけた。両方のカラムを平衡化し、バッファーCを流した。調製物の純度をSDS−PAGE分析により監視し、Instant Blue染色(Expedeon)で染色した。タンパク質の濃度を、各標的タンパク質の配列により決定された吸光係数を用いてUV測定値によって決定した。標的タンパク質のインビボでのビオチン化を、ストレプトアビジン−HRP(Sigma)でプローブしたウェスタンブロットにより確認した。
XIV.例示的な実施形態
本明細書で開示される主題に従って提供される例示的な実施形態には、これらに限定されるものではないが、請求項及び以下の各実施形態が含まれる。
1.血液脳関門(BBB)を通過して能動的に輸送されることが可能なポリペプチドであって、
(a)改変Fcポリペプチド、またはそのフラグメントと、
(b)BBB受容体に特異的に結合する前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメント内の第1の部位と、
(c)新生児Fc受容体(FcRn)に結合する第2の部位と
を含む、前記ポリペプチド。
2.前記第2の部位が天然のFcRn結合部位である、実施形態1に記載のポリペプチド。
3.前記FcRn結合部位が、血清中半減期を延ばす、天然Fc配列に対するアミノ酸の変化を含む、実施形態1に記載のポリペプチド。
4.前記アミノ酸の変化が、25位のTyr、27位のThr、及び29位のGluの置換を含み、前記各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態3に記載のポリペプチド。
5.前記アミノ酸の変化が、201位のLeu、及び207位のSerの置換を含み、前記各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態3に記載のポリペプチド。
6.前記アミノ酸の変化が、207位のSerまたはAlaの置換を含み、前記各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態3に記載のポリペプチド。
7.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、天然のFcポリペプチドのアミノ酸配列に対応した少なくとも50個のアミノ酸を含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載のポリペプチド。
8.前記少なくとも50個のアミノ酸が連続している、実施形態7に記載のポリペプチド。
9.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、天然のFcポリペプチドのアミノ酸配列に対応した少なくとも100個のアミノ酸を含む、実施形態7に記載のポリペプチド。
10.前記第1の部位が、前記Fcポリペプチドのβシート内に少なくとも1個の改変されたアミノ酸を含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載のポリペプチド。
11.前記βシートがCH2ドメイン内にある、実施形態10に記載のポリペプチド。
12.前記βシートがCH3ドメイン内にある、実施形態10に記載のポリペプチド。
13.前記第1の部位が、少なくとも1個の溶媒露出アミノ酸の置換を含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載のポリペプチド。
14.前記第1の部位が、ループ領域またはβシート内の少なくとも2個の溶媒露出アミノ酸の置換を含み、前記2個の溶媒露出残基は、同じループ領域または同じβシート内にない、実施形態13に記載のポリペプチド。
15.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメント配列が、改変CH2ドメイン配列を含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載のポリペプチド。
16.前記改変CH2ドメイン配列が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH2ドメイン配列に由来するものである、実施形態15に記載のポリペプチド。
17.前記CH2ドメインに対する改変が、
(a)残基47、49、56、58、59、60、61、62、及び63、
(b)残基39、40、41、42、43、44、68、70、71、及び72、
(c)残基41、42、43、44、45、65、66、67、69、及び73、ならびに、
(d)残基45、47、49、95、97、99、102、103、及び104
からなる群から選択されるアミノ酸の組の中の少なくとも2個のアミノ酸の置換を含み、前記残基の位置がSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態15または16に記載のポリペプチド。
18.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメント配列が、改変CH3ドメイン配列を含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載のポリペプチド。
19.前記改変CH3ドメイン配列が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のCH3ドメイン配列に由来するものである、実施形態18に記載のポリペプチド。
20.前記CH3ドメインに対する改変が、
(a)残基157、159、160、161、162、163、186、189、及び194、ならびに
(b)残基118、119、120、122、210、211、212、及び213
からなる群から選択されるアミノ酸の組の中の少なくとも2個のアミノ酸の置換を含み、前記残基の位置がSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態18または19に記載のポリペプチド。
21.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、前記対応する野生型Fcポリペプチドまたはフラグメントと比較して少なくとも75%のアミノ酸配列の同一性を有する、実施形態1〜20のいずれか1つに記載のポリペプチド。
22.前記同一性が、少なくとも80%、90%、92%、または95%である、実施形態21に記載のポリペプチド。
23.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、エフェクター機能を有する、実施形態1〜22のいずれか1つに記載のポリペプチド。
24.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、エフェクター機能を有さない、実施形態1〜22のいずれか1つに記載のポリペプチド。
25.前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、エフェクター機能を低下させる改変を含む、実施形態24に記載のポリペプチド。
26.前記改変が、7位のLeu及び8位のLeuの置換を含み、前記各残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態25に記載のポリペプチド。
27.前記改変が、102位のProの置換を更に含み、前記残基の位置はSEQ ID NO:1を基準として決められる、実施形態26に記載のポリペプチド。
28.実施形態1〜27のいずれか1つに記載のポリペプチドまたはフラグメントを含む二量体タンパク質。
29.第1及び第2のポリペプチド鎖を含むヘテロ二量体であり、前記第1のポリペプチド鎖がBBB受容体に特異的に結合する第1の部位を含む、実施形態28に記載の二量体タンパク質。
30.前記第2のポリペプチド鎖が、BBB受容体に特異的に結合する部位を含まない、実施形態29に記載の二量体タンパク質。
31.第1及び第2のポリペプチド鎖を含むホモ二量体であり、前記第1及び第2のポリペプチド鎖が、BBB受容体に特異的に結合する部位をそれぞれ含む、実施形態28に記載の二量体タンパク質。
32.前記BBB受容体が、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF−R)、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質2(LRP2)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、GLUT1、バシギン、ジフテリア毒素受容体、ヘパリン結合性上皮成長因子様成長因子(HB−EGF)の膜結合前駆体、メラノトランスフェリン、及びバソプレシン受容体からなる群から選択される、実施形態1〜27のいずれか1つに記載のポリペプチド。
33.前記BBB受容体がTfRである、実施形態32に記載のポリペプチド。
34.前記BBB受容体がIGF−Rである、実施形態32に記載のポリペプチド。
35.前記受容体の内因性リガンドと結合について競合することなく前記BBB受容体に特異的に結合する、実施形態1〜27及び32〜34のいずれか1つに記載のポリペプチド。
36.前記BBB受容体がトランスフェリン受容体であり、前記内因性リガンドがトランスフェリンである、実施形態35に記載のポリペプチド。
37.生物学的活性を有するポリペプチドを更に含む、実施形態1〜27及び32〜36のいずれか1つに記載のポリペプチド。
38.前記生物学的活性を有するポリペプチドが、治療活性を有するポリペプチドである、実施形態37に記載のポリペプチド。
39.前記生物学的活性を有するポリペプチドの脳内への取り込みが、改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが存在しない場合の前記生物学的活性を有するポリペプチドの取り込みと比較して少なくとも10倍大きい、実施形態37または38に記載のポリペプチド。
40.BBBを通過して能動的に輸送されることが可能なタンパク質であって、
(a)抗原に結合することが可能な抗体可変領域配列、またはその抗原結合フラグメントと、
(b)改変Fcポリペプチドを含むポリペプチド、またはそのフラグメントと
を含み、前記改変Fcポリペプチドまたはフラグメントが、BBB受容体に特異的に結合する第1の結合部位と、新生児Fc受容体(FcRn)に結合する第2の結合部位とを有する、前記タンパク質。
41.前記抗体可変領域配列がFabドメインを含む、実施形態40に記載のタンパク質。
42.前記抗体可変領域配列が、2個の抗体可変領域重鎖と2個の抗体可変領域軽鎖、またはそれらのそれぞれのフラグメントを含む、実施形態40または41に記載のタンパク質。
43.前記BBB受容体に結合する1個の改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含む、実施形態40〜42のいずれか1つに記載のタンパク質。
44.前記BBB受容体に結合する2個の改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含む、実施形態40〜42のいずれか1つに記載のタンパク質。
45.前記脳内へのタンパク質の取り込みが、(a)改変Fcポリペプチドまたはフラグメントを含むポリペプチドがない場合の同じタンパク質、または(b)BBB受容体との結合をもたらす改変を有さないFcポリペプチドまたはFcポリペプチドフラグメントを含むポリペプチドがある場合の同じタンパク質と比較して、少なくとも10倍大きい、実施形態40〜44のいずれか1つに記載のタンパク質。
46.(a)実施形態1〜27及び32〜39のいずれか1つに記載のポリペプチドと、(b)治療または診断物質とを含む結合体であって、前記血液脳関門を通過して輸送されることが可能である、前記結合体。
47.前記治療または診断物質の脳への取り込みが、前記ポリペプチドの非存在下での前記治療または診断物質の取り込みに対して少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、または50倍増加する、実施形態46に記載の結合体。
不一致がある場合、表(例えば、表9)に記載される各クローンのアミノ酸置換が、配列表に記載される配列中にみられるアミノ酸に優先してそのクローンのレジスター位置におけるアミノ酸置換を決定する。
本明細書に述べられる実施例及び実施形態はあくまで例示的な目的のものに過ぎず、これらを考慮することで様々な改変または変更が当業者に示唆され、かかる改変及び変更は本出願の趣旨及び範囲、ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるものである点は理解されよう。本明細書に引用される配列アクセッション番号の配列をここに参照によって援用する。
(表1)CH2A2レジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表2)CH2Cレジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表3)CH2Dレジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表4)CH2E3レジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表5)CH3Bレジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表6)CH3Cレジスターの位置及び変異
Figure 2020508053
(表9)CH3C.35.21のレジスター内の許容される多様性の探索及びホットスポットの位置
Figure 2020508053
非公式な配列表
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053
Figure 2020508053

Claims (47)

  1. 単量体のトランスフェリン受容体(TfR)アピカルドメインを含む単離された組換えTfRコンストラクトであって、前記TfRのプロテアーゼ様ドメインまたは螺旋ドメインを含まない、前記TfRコンストラクト。
  2. 保存されたエピトープまたは抗原を提示し、かつ/または天然のヒトTfRのアピカルドメインのおよその3次元構造を保持するか、もしくは約2未満の平均二乗偏差(RMSD)を有する、請求項1に記載のTfRコンストラクト。
  3. 前記3次元構造がX線結晶解析により測定される、請求項1または2に記載のTfRコンストラクト。
  4. (a)TfRアピカルドメインの第1の部分の配列を含む第1のポリペプチドと、
    (b)任意選択的なリンカーと、
    (c)前記TfRアピカルドメインの第2の部分の配列を含む第2のポリペプチドと
    を含み、
    完全長のTfR配列に対して、前記TfRアピカルドメインの前記第1の部分の配列が前記TfRアピカルドメインの前記第2の部分の配列のC末端側であり、
    前記第1のポリペプチド、前記任意選択的なリンカー、及び前記第2のポリペプチドが直列に融合されている、
    TfRコンストラクト。
  5. 前記第2の部分の最後のアミノ酸が前記第1の部分の最初のアミノ酸と融合されている、請求項4に記載のTfRコンストラクト。
  6. 前記第1のポリペプチドが、完全長TfRアピカルドメインのC末端フラグメントを含み、前記第2のポリペプチドが、前記完全長TfRアピカルドメインのN末端フラグメントを含む、請求項4または5に記載のTfRコンストラクト。
  7. 前記第1のポリペプチドが、
    Figure 2020508053
    の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  8. 前記第1のポリペプチドが、SEQ ID NO:427の配列に対して最大7個のアミノ酸の変化を有する配列を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  9. 前記第2のポリペプチドが、
    Figure 2020508053
    の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項4〜8のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  10. 前記第2のポリペプチドが、SEQ ID NO:428の配列に対して最大16個のアミノ酸の変化を有する配列を含む、請求項4〜8のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  11. 前記TfRアピカルドメインが、SEQ ID NO:107または108の配列を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  12. アレナウイルスに結合する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  13. (a)SEQ ID NO:427の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む前記第1のポリペプチドと、
    (b)前記任意選択的なリンカーと、
    (c)SEQ ID NO:428の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む前記第2のポリペプチドと
    を含む、請求項4〜12のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  14. (a)SEQ ID NO:427の配列に対して最大7個のアミノ酸の変化を有する配列を含む前記第1のポリペプチドと、
    (b)前記任意選択的なリンカーと、
    (c)SEQ ID NO:428の配列に対して最大16個のアミノ酸の変化を有する配列を含む前記第2のポリペプチドと
    を含む、請求項4〜12のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  15. 前記第1のポリペプチドがC末端において、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性もしくは最大5個のアミノ酸の変化を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む、請求項4〜14のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  16. 前記第2のポリペプチドがC末端において、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性もしくは最大5個のアミノ酸の変化を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む、請求項4〜15のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  17. 前記第1のポリペプチドがN末端において、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性もしくは最大5個のアミノ酸の変化を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む、請求項4〜16のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  18. 前記第2のポリペプチドがN末端において、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性もしくは最大5個のアミノ酸の変化を有する配列、またはそのフラグメントを更に含む、請求項4〜17のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  19. 前記第1のポリペプチドが、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性または最大10個のアミノ酸の変化を有する配列を含む、請求項4〜18のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  20. 前記第2のポリペプチドが、配列
    Figure 2020508053
    に対して少なくとも90%の配列同一性または最大20個のアミノ酸の変化を有する配列を含む、請求項4〜19のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  21. 前記第1のポリペプチドが前記第2のポリペプチドと直列に直接融合されている、請求項4〜20のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  22. SEQ ID NO:449の配列を有する前記第1のポリペプチドと、SEQ ID NO:450の配列を有する前記第2のポリペプチドとを含み、前記第1のポリペプチドのC末端が前記第2のポリペプチドのN末端に融合されている、請求項4〜21のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  23. Figure 2020508053
    の配列を有する前記第1のポリペプチドと、
    Figure 2020508053
    の配列を有する前記第2のポリペプチドと
    を含み、前記第1のポリペプチドのC末端が前記第2のポリペプチドのN末端に融合されている、請求項4〜21のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  24. 前記リンカーがアミノ酸1〜10個の長さである、請求項4〜20、22、及び23のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  25. 前記リンカーが、G、GG、GGG、またはGGGG(SEQ ID NO:453)である、請求項24に記載のTfRコンストラクト。
  26. 前記リンカーがタンパク質のループドメインを含む、請求項4〜20、22、及び23のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  27. 前記タンパク質のループドメインのN末端とC末端との間の距離が5Å未満である、請求項26に記載のTfRコンストラクト。
  28. 精製ペプチドを更に含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  29. 前記精製ペプチドが、前記TfRコンストラクトのN末端またはC末端に融合されている、請求項28に記載のTfRコンストラクト。
  30. 切断ペプチドを更に含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載のTfRコンストラクト。
  31. 前記切断ペプチドが、前記TfRコンストラクトのN末端またはC末端に融合されている、請求項30に記載のTfRコンストラクト。
  32. 請求項1〜31のいずれか1項に記載のTfRコンストラクトをコードするヌクレオチド配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
  33. 請求項32に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  34. 請求項32に記載のポリヌクレオチドまたは請求項33に記載のベクターを含む宿主細胞。
  35. TfRのアピカルドメインに結合する物質を同定する方法であって、
    (a)請求項1〜31のいずれか1項に記載のTfRコンストラクトを前記物質と接触させる工程と、
    (b)前記物質が前記TfRコンストラクトに結合するかどうかを決定する工程と
    を含む、前記方法。
  36. 前記物質が、ポリペプチドまたはタンパク質である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記物質が、改変Fcポリペプチドまたは改変Fcポリペプチド二量体である、請求項35または36に記載の方法。
  38. 前記物質が抗体である、請求項35または36に記載の方法。
  39. 前記決定する工程(b)が、ELISAまたは表面プラズモン共鳴によって行われる、請求項35〜38のいずれか1項に記載の方法。
  40. 組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを作製する方法であって、直列に融合された第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとを含む遺伝子を発現させることを含み、前記第1のポリヌクレオチドが完全長のTfRアピカルドメインのC末端フラグメントをコードし、前記第2のポリヌクレオチドが前記完全長のTfRアピカルドメインのN末端フラグメントをコードする、前記方法。
  41. 発現されると、前記ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸が前記ドメインのC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結されるように、前記第1のポリヌクレオチドと前記第2のポリヌクレオチドとが直列に融合される、請求項40に記載の方法。
  42. 前記遺伝子が、任意選択的なタンパク質リンカーをコードする任意選択的なリンカーポリヌクレオチドを更に含み、発現されると、前記ドメインのN末端フラグメントの最初のアミノ酸が前記リンカーの最後のアミノ酸と一次配列で連結され、前記リンカーの最初のアミノ酸が前記ドメインのC末端フラグメントの最後のアミノ酸と一次配列で連結される、請求項40または41に記載の方法。
  43. 発現されると、発現されたタンパク質が環状構造の形となるように、前記遺伝子が、直列な前記第1のポリヌクレオチド、前記任意選択的なリンカーポリヌクレオチド、及び前記第2のポリヌクレオチドをコードする、請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
  44. 前記発現されたタンパク質を精製して前記単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクトを得ることを更に含む、請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
  45. 請求項40〜44のいずれか1項に記載の方法に従って作製された、単離された組換えヒトTfRアピカルドメインコンストラクト。
  46. SEQ ID NO:109、110、及び301のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクト。
  47. SEQ ID NO:109、110、及び301のうちのいずれか1つと少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、単離された組換えTfRアピカルドメインコンストラクト。
JP2019545353A 2017-02-17 2018-02-15 操作されたポリペプチド Pending JP2020508053A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2023016182A JP2023058568A (ja) 2017-02-17 2023-02-06 操作されたポリペプチド

Applications Claiming Priority (11)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201762460692P 2017-02-17 2017-02-17
US62/460,692 2017-02-17
US201762543658P 2017-08-10 2017-08-10
US201762543819P 2017-08-10 2017-08-10
US62/543,658 2017-08-10
US62/543,819 2017-08-10
US201762583426P 2017-11-08 2017-11-08
US201762583314P 2017-11-08 2017-11-08
US62/583,426 2017-11-08
US62/583,314 2017-11-08
PCT/US2018/018445 WO2018152375A2 (en) 2017-02-17 2018-02-15 Engineered polypeptides

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023016182A Division JP2023058568A (ja) 2017-02-17 2023-02-06 操作されたポリペプチド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020508053A true JP2020508053A (ja) 2020-03-19
JP2020508053A5 JP2020508053A5 (ja) 2021-03-11

Family

ID=61628465

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019545353A Pending JP2020508053A (ja) 2017-02-17 2018-02-15 操作されたポリペプチド
JP2023016182A Pending JP2023058568A (ja) 2017-02-17 2023-02-06 操作されたポリペプチド

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023016182A Pending JP2023058568A (ja) 2017-02-17 2023-02-06 操作されたポリペプチド

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP3583119A2 (ja)
JP (2) JP2020508053A (ja)
CN (1) CN110506054A (ja)
CA (1) CA3053381A1 (ja)
WO (1) WO2018152375A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020510418A (ja) * 2017-02-17 2020-04-09 デナリ セラピューティクス インコーポレイテッドDenali Therapeutics Inc. トランスフェリン受容体トランスジェニックモデル

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10143187B2 (en) 2017-02-17 2018-12-04 Denali Therapeutics Inc. Transferrin receptor transgenic models
WO2019070577A1 (en) 2017-10-02 2019-04-11 Denali Therapeutics Inc. FUSION PROTEINS COMPRISING SUBSTITUTE ENZYM THERAPY ENZYMES
AU2022340568A1 (en) 2021-09-01 2024-03-28 Biogen Ma Inc. Anti-transferrin receptor antibodies and uses thereof

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5188804B2 (ja) * 2004-08-03 2013-04-24 トランステック ファーマ,インコーポレイティド Rage融合タンパク質及びその使用方法
CA2638907A1 (en) * 2006-02-09 2007-08-23 Transtech Pharma, Inc. Rage fusion proteins and methods of use
CA2967830A1 (en) * 2014-11-14 2016-05-19 Ossianix, Inc. Tfr selective binding compounds and related methods
EP3221362B1 (en) * 2014-11-19 2019-07-24 F.Hoffmann-La Roche Ag Anti-transferrin receptor antibodies and methods of use
EP3221361B1 (en) * 2014-11-19 2021-04-21 Genentech, Inc. Anti-transferrin receptor / anti-bace1 multispecific antibodies and methods of use

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
J. BIOL. CHEM., vol. 291, no. 6, JPN6022002871, 2016, pages 2829 - 2836, ISSN: 0005036317 *
J. VIROL., vol. 86, no. 7, JPN7022000332, 2012, pages 4024 - 4028, ISSN: 0005036316 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020510418A (ja) * 2017-02-17 2020-04-09 デナリ セラピューティクス インコーポレイテッドDenali Therapeutics Inc. トランスフェリン受容体トランスジェニックモデル

Also Published As

Publication number Publication date
CN110506054A (zh) 2019-11-26
CA3053381A1 (en) 2018-08-23
WO2018152375A2 (en) 2018-08-23
JP2023058568A (ja) 2023-04-25
EP3583119A2 (en) 2019-12-25
WO2018152375A3 (en) 2018-09-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11732023B2 (en) Engineered polypeptides
US11912778B2 (en) Methods of engineering transferrin receptor binding polypeptides
JP7280241B2 (ja) 操作されたトランスフェリン受容体結合ポリペプチド
JP2023058568A (ja) 操作されたポリペプチド
WO2023114510A2 (en) Polypeptide engineering, libraries, and engineered cd98 heavy chain and transferrin receptor binding polypeptides

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20191122

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20210122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210129

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210129

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220126

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220418

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220701

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20221031

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230206

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20230206

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20230213

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20230215

A912 Re-examination (zenchi) completed and case transferred to appeal board

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A912

Effective date: 20230414

C211 Notice of termination of reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C211

Effective date: 20230419

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20231030