以下、種々の実施形態を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
第1の実施形態に係る密閉型圧縮機は、冷凍サイクル中に設けられる。当該圧縮機は、密閉容器と、当該密閉容器内に収納された特定の冷媒を圧縮する圧縮機部と、前記密閉容器内に収納され、当該圧縮機部を駆動する電動機部と、前記密閉容器に内蔵した特定の冷凍機油とを備える。
冷媒は、20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む組成を有する混合冷媒であり、例えば、R448AまたはR449Aである。
冷凍機油は、前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油が選択される。ここで、二層分離とは冷媒と冷凍機油の単独層が完全に分離するのではなく、冷媒リッチ層と冷凍機油リッチ層とに分離することを意味する。ポリオールエステル系潤滑油は、例えば多価アルコールと分岐型脂肪酸との合成により生成される。
多価アルコールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールを含む。多価アルコールの中で、冷媒との相溶性および安定性の点からペンタエリスリトールが好ましい。
分岐型脂肪酸の例は、2−メチルヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸または3,5,5−トリメチルヘキサン酸を含み、単独もしくは2種以上の形態で用いることができる。分岐型脂肪酸は、2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とを用いることが好ましい。
冷凍機油は、酸化防止剤、酸捕捉剤などの添加剤を配合し得る。
酸化防止剤の例は、ジブチルクレゾールを含む。酸化防止剤は、冷凍機油に対して0.05〜1.0質量%の割合で配合することができる。酸化防止剤の量を0.05質量%未満にすると、その効果が乏しくなる。他方、酸化防止剤の量が1.0質量%を超えるとその効果が飽和し、経済的ではない。
酸捕捉剤の例は、エポキシ化合物(例えばグリシジルエステル型エポキシ化合物またはグリシジルエーテル型エポキシ化合物)を含む。酸捕捉剤は、冷凍機油に対して0.2〜1.5質量%の割合で配合することができる。酸捕捉剤の量を0.2質量%未満にすると、その効果が乏しくなる。他方、酸捕捉剤の量が1.5質量%を超えると、電気絶縁抵抗に悪影響を及ぼす虞がある。
以上説明した第1の実施形態によれば、20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む組成を有する混合冷媒である、例えば、前記R448A冷媒またはR449A冷媒の使用時、摺動部材に長期間に亘って安定した潤滑性を付与するとともに、良好な油戻り性を有する密閉型圧縮機を提供することができる。
前記組成のR448A冷媒またはR449A冷媒は蒸発温度が−42℃よりも低下すると、負圧になる。負圧になると、当該冷媒を用いた冷凍サイクル装置の蒸発器を含む低圧側配管にピンホールや亀裂等が生じると空気が取り込まれる不都合さを生じることから、前記冷媒を使用するときは、蒸発温度は−42℃以上、望ましくは−40℃以上に設定される。
また、冷凍サイクルに設けた圧縮機において、二層分離温度がー42℃より高い程、蒸発器から圧縮機の圧縮機部への油戻り性が悪化し、潤滑油量不足により給油性が低下する。
さらに、二層分離温度が―42℃より低いほど、冷凍機油への冷媒の相溶によって冷凍機油の動粘度が過度に低下して潤滑性が低下する。
このようなことから、第1の実施形態によればR448A冷媒またはR449A冷媒を用い、冷凍機油として前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油を使用することによって、蒸発器からの油戻り性の悪化を回避し、さらに前記冷媒が冷凍機油に過度に相溶することがなく、前記冷媒の溶け込みによる潤滑性の低下も抑制できる。
従って、冷媒としてオゾン層破壊指数(ODR)がゼロで、地球温暖化係数(GWP)が低減された前記組成のR448AまたはR449Aを用いても、信頼性の高い密閉型圧縮機を提供できる。
別の第1の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、前記第1の実施形態に係る圧縮機と、当該圧縮機に接続された放熱器である凝縮器と、当該凝縮器に接続された膨張装置と、当該膨張装置と前記圧縮機の間に接続された吸熱機である蒸発器とを備える。
次に、第1の実施形態に係る圧縮機を備える冷凍サイクル装置を図1および図2を参照してより具体的に説明する。
図1は、密閉型圧縮機1を備えた冷凍サイクル装置Rの冷凍サイクルを示す構成図である。
密閉型圧縮機(以下、単に「圧縮機」と呼ぶ)1については後述する。圧縮機1の上端部には冷媒管Pが接続され、この冷媒管Pには凝縮器2と、気液分離器3と、膨張弁(膨張装置)4と、蒸発器5およびアキュームレータ6がこの順に設けられている。冷媒管Pは、さらにアキュームレータ6から2本に分岐し圧縮機1の側部に接続され、これらで冷凍サイクル装置Rの冷凍サイクルが構成される。
冷凍サイクル装置Rには、インジェクション回路Kが設けられる。このインジェクション回路Kは、凝縮器2と膨張弁4との間に介設される気液分離器3で気液分離された液冷媒の一部をインジェクション管Paに分流し、インジェクション管Paに設けた開閉弁7と流体制御弁8を介して圧縮機1に後述するようにして導くためのものである。
前記圧縮機1は、密閉容器10を備え、密閉容器10内の上部側に電動機部11が収納され、下部側に圧縮機部12が収納され、これら電動機部11と圧縮機部12は回転軸13を介して連結されている。密閉容器10の内底部に冷凍機油Sが集溜されるとともに、残りの内部空間は圧縮機部12で圧縮された高圧のガス冷媒で満たされる。冷媒は、前述した組成のR448A冷媒またはR449A冷媒が使用される。また、冷凍機油は冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油が使用される。
密閉容器10の上面部には、孔部からなる吐出部1aが設けられ、凝縮器2に連通する冷媒管Pが接続される。密閉容器10の下部周壁には、2個の孔部からなる吸込み部1b,2bが設けられ、アキュームレータ6に連通する冷媒管Pが接続されている。
前記電動機部11は、回転軸13に嵌着固定される回転子(ロータ)15と、この回転子15の外周面と狭小の間隙を介して内周面が対向し、密閉容器10内周壁に嵌着固定される固定子(ステータ)16とから構成される。
回転軸13には、外周側に向けて張り出した二つの円柱状の偏心部a,bが形成されている。これら偏心部a,bは、回転軸13の軸方向に沿って所定寸法離間した位置に、回転軸13の回転方向に沿って180°変位した位置に設けられている。
圧縮機部12は、回転軸13の軸方向に沿って主軸受17と、内径孔を有する第1のシリンダ18と、中間仕切り板20と、内径孔を有する第2のシリンダ22と、副軸受23を備えている。主軸受17は取付け具により第1のシリンダ18に固定され、副軸受23は取付け具により第2のシリンダ22と中間仕切り板20を介して第1のシリンダ18に固定される。これら主軸受17と副軸受23は、回転軸13を回転可能に軸支している。
主軸受17には、この周囲を囲む中空のケースである第1のマフラケース25が取付けられ、内部にマフラ室が形成される。第1のマフラケース25には、マフラ室内と密閉容器10内の空間とを連通する複数の連通孔cが設けられている。これらの連通孔cは、密閉容器10内底部に集溜される冷凍機油Sの液面よりも上方に位置している。
副軸受23には、この周囲を囲む中空のケースである第2のマフラケース26が取付けられていて、内部にマフラ室が形成されている。副軸受23と、第2のシリンダ22および中間仕切り板20は、常に、確実に冷凍機油Sに浸漬されている。第1のシリンダ18と、第1のマフラケース25が圧縮条件等の影響で、冷凍機油Sから露出することがある。
第1のシリンダ18は、密閉容器10の内周壁に嵌着固定されている。第1のシリンダ18の内径孔は、上端側を主軸受17により閉止され、下端側を中間仕切り板20により閉止されて、第1のシリンダ室18Aが形成されている。
第2のシリンダ22は、中間仕切り板20を介して第1のシリンダ18に取付けられている。第2のシリンダ22の内径孔は、上端側を中間仕切り板20に閉止され、下端側を副軸受23に閉止されて、第2のシリンダ室22Aが形成されている。
第1・第2のシリンダ室18A,22Aには、回転軸13が挿通され、回転軸13に形成される一方の偏心部aが第1のシリンダ室18A内に位置し、回転軸13に形成される他方の偏心部bが第2のシリンダ室22A内に位置する。
一方の偏心部aにはローラ27が嵌合され、他方の偏心部bにもローラ28が嵌合されている。これらのローラ27,28は、回転軸13の回転にともない外周壁の一部を第1・第2のシリンダ室18A,22Aの内周壁に当接しながら転動する。
第1・第2のシリンダ室18A,22Aには、それぞれ往復動自在にブレード30,31が設けられており、ブレード30,31の先端部がスプリング等の弾性体dにより付勢されてローラ27,28の外周壁に当接されている。また、第1・第2のシリンダ室18A,22Aの内周壁一部にローラ27,28の外周壁一部が当接し、ローラ27,28の外周壁にブレード30,31の先端部が弾性的に当接することにより、第1・第2のシリンダ室18A,22A内はローラ27,28の転動にともなって容積が変動する二つの空間に仕切られている。
第1のシリンダ18には、低圧のガス冷媒を第1のシリンダ室18A内に吸込むための吸込み部1bが設けられている。第2のシリンダ22には、低圧のガス冷媒を第2のシリンダ室22A内に吸込むための吸込み部2bが設けられている。
主軸受17のフランジ部には、ローラ27の偏心運動によって開閉される第1の吐出弁機構33が設けられている。第1の吐出弁機構33が開放されることで、第1のシリンダ室18Aと主軸受17に取付けられる第1のマフラケース25内のマフラ室とが連通するようになっている。
副軸受23のフランジ部には、ローラ28の偏心運動によって開閉される第2の吐出弁機構34が設けられる。第2の吐出弁機構34が開放されることで、第2のシリンダ室22Aと副軸受23に取付けられる第2のマフラケース26内のマフラ室とが連通するようになっている。
主軸受17に取付けられる第1のマフラケース25内のマフラ室と、副軸受23に取付けられる第2のマフラケース26内のマフラ室とは、主軸受17のフランジ部と、第1のシリンダ18と、中間仕切り板20と、第2のシリンダ22と、副軸受23のフランジ部に設けられる吐出案内流路(図示しない)を介して互いに連通される。
一方、インジェクション回路Kを構成するインジェクション管Paは、密閉容器10の側部に設けられた孔部を貫通して密閉容器10内部に挿通され、中間仕切り板20に対向する。中間仕切り板20には、この側部(外周面)から中心部に向かって横孔35が設けられていて、インジェクション管Paの先端部は横孔35に挿入し密に嵌合される。
中間仕切り板20の中心部には、回転軸13の偏心部a,b相互間部分が挿通する挿通用孔20aが設けられていて、横孔35先端は挿通用孔20aまでは到達せず、その手前側で終わる。インジェクション管Paの先端は横孔35の先端までは到達せず、ある程度の間隙を有するように寸法設定される。
そして、インジェクション管Pa先端と横孔35先端との間の横孔35部分に、縦孔からなる第1のインジェクションポート36aと、第2のインジェクションポート36bが設けられる。これら横孔35と、第1のインジェクションポート36aと、第2のインジェクションポート36bとでインジェクション機構を構成している。
中間仕切り板20の中心部には回転軸13の一部が挿通する挿通用孔20aが設けられ、平面視でリング状をなす。さらに、周壁一部から挿通用孔20aの中心軸に向かって横孔35が設けられる。横孔35の直径は中間仕切り板20の板厚の範囲内に設定される。横孔35の先端からわずかに手前側の位置に、第1のインジェクションポート36aが中間仕切り板20上面と横孔35を連通して設けられる。そして、中間仕切り板20下面と横孔35を連通して第2のインジェクションポート36bが設けられる。
中間仕切り板20および挿通用孔20aの中心軸Oから第1のインジェクションポート36aの中心軸までの距離Laと、中間仕切り板20の挿通用孔20aの中心軸から第2のインジェクションポート36bの中心軸までの距離Lbは互いに同一(La=Lb)であり、横孔35とは垂直に交差する。すなわち、第1・第2のインジェクションポート36a,36bは、円周方向において互いに同一角度位置で、かつ互いの中心軸位置が合致する位置に設けられる。
そして、第1のインジェクションポート36aの直径と、第2のインジェクションポート36bの直径は、同一でもよいが、ここでは互いに異径である。ここでは、第1のインジェクションポート36aの直径は、第2のインジェクションポート36bの直径よりも大きく設定される。
このような構成において、電動機部11に通電すると回転軸13が回転し、圧縮機部12が駆動されることにより、ブレード30,31で仕切られた第1・第2のシリンダ室18A,22A内の一方の空間が負圧化されてガス冷媒が流入する。
180°の位相差で設けられたローラ27,28が回転軸13の回転にともなって転動し、第1・第2のシリンダ室18A,22A内に流入されたガス冷媒は、一方の空間の容積が徐々に小さくなることで圧縮される。
所定圧にまで圧縮されると、第1の吐出弁機構33が開放されて、第1のシリンダ室18Aから第1のマフラケース25のマフラ室に吐出される。さらに、180°の間隔を有して、第2の吐出弁機構34が開放されて、第2のシリンダ室22Aから第2のマフラケース26のマフラ室に吐出される。
その後、第2のマフラケース26内に吐出されたガス冷媒は、第2のシリンダ22と、中間仕切り板20と、第1のシリンダ18と、主軸受17に連続して設けられた吐出案内流路を介して第1のマフラケース25内のマフラ室に導かれる。そして、このマフラ室内に充満するガス冷媒とともに連通孔cから密閉容器10内の空間に導かれる。
圧縮機1の密閉容器10内に充満する高温高圧のガス冷媒(ミスト化した冷凍機油を含む)は、吐出部1aに接続する冷媒管Pに流通して凝縮器2に導かれる。ここで、ミスト化した冷凍機油を含む冷媒は凝縮液化して液冷媒と冷凍機油とが相溶した状態で気液分離器3に導かれ、さらに気液分離されて一旦、集溜される。その後、液冷媒は膨張弁4で減圧されて蒸発器5で蒸発する。この蒸発によって周囲空気が冷却され、冷凍サイクル装置Rとして冷凍(冷却)能力を発揮する。
蒸発器5を出た冷媒は、アキュームレータ6で気液分離され、圧縮機1の第1・第2の吸込み部1b,2bを経て、第1のシリンダ室18Aと第2のシリンダ室22Aに導かれて圧縮される。そして、上述のように再び圧縮されて、上述の系路を循環する。
一方、圧縮機1の運転に伴って、第1・第2のシリンダ室18A,22Aで圧縮され、密閉容器10に充満するガス冷媒温度が上昇し、冷媒管Pに吐出されることで冷媒管Pの温度が上昇する。
冷媒管Pに取付けられる温度センサ(図示しない)が所定温度以上を検知すると、制御手段(図示しない)へ検知信号を送る。制御手段はインジェクション回路Kの開閉弁7を開放する制御を行う。
凝縮器2で液化した冷媒(冷凍機油を含む)を集溜する気液分離器3は受液器の機能をなし、ここから液冷媒の一部がインジェクション管Paに導かれる。流体制御弁8は、温度センサの検知温度に応じて開度を調整する、流量調整弁としての機能を有する。
圧縮機1内のインジェクション管Paに導かれた液冷媒は、中間仕切り板20の横孔35の先端部から第1のインジェクションポート36aと、第2のインジェクションポート36bに分流される。
液冷媒は、第1のインジェクションポート36aから第1のシリンダ室18Aに導かれ、第1のシリンダ室18A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。さらに、液冷媒は第2のインジェクションポート36bから第2のシリンダ室22Aに導かれ、第2のシリンダ室22A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。
図2は、第1のシリンダ室18Aの平面図であり、この第1のシリンダ室18A内でローラ27は実線位置から一点鎖線位置を介して実線位置に、矢印方向である反時計回り方向に連続して偏心運動する。
第1のシリンダ室18Aにおいて、ローラ27(偏心部aの偏心方向)がブレード30の方向に一致する位置を基準位置(0°)とし、ローラ27が基準位置から反時計方向に6°回転した位置で、ローラ27の下端面から第1のインジェクションポート36aが開放され始め、第1のシリンダ室18A内に液冷媒が注入される。
ローラ27の偏心回転運動により、回転角度が増している間は、第1のインジェクションポート36aの開放が維持される。それ故、第1のインジェクションポート36aから第1のシリンダ室18A内に液冷媒の注入が継続され、第1のシリンダ室18Aで圧縮されるガス冷媒を冷却する。
ローラ27の回転角度位置が180°を越え、210°に至るころ、ローラ27の下端面が第1のインジェクションポート36aを閉塞し始める。それ故、第1のインジェクションポート36aから第1のシリンダ室18Aへの液冷媒の注入量が漸次、低減される。
ローラ27の回転角度位置(偏心部aの偏心方向)が212°に至ると、第1のインジェクションポート36aはローラ27の下端面によって完全に閉塞され、第1のシリンダ室18Aへの液冷媒の注入が停止する。
この状態は、ローラ27の回転角度位置が360°を越えて、6°に至るまで継続し、6°に至ると、再び上述のようにローラ27の下端面から第1のインジェクションポート36aが開放され、上述の作用を繰り返す。
第2のシリンダ室22Aにおいては、ローラ28の位置が、第1のシリンダ室18A内のローラ27とは180°相対する位置に設けられる箇所から、異なるタイミングで第2のインジェクションポート36bを開閉動作する。
また、第2のインジェクションポート36bの直径は、第1のインジェクションポート36aの直径より小さいため、第2のインジェクションポート36bが開くローラ28の回転角度範囲は、第1のインジェクションポート36aが開くローラ27の回転角度範囲(6°〜212°)よりも小さい。
上述したように、第1のインジェクションポート36aの直径と、第2のインジェクションポート36bの直径を、異径に設定する。
ここでは、中間仕切り板20の上部に第1のシリンダ室18Aを備えた第1のシリンダ18を設け、中間仕切り板20の下部に第2のシリンダ室22Aを備えた第2のシリンダ22を設けた。第2のシリンダ22は、密閉容器10内底部に集溜する冷凍機油S内に常時浸漬されるが、第1のシリンダ18は圧縮条件により冷凍機油Sの油面から露出することが多い。
そこで、第1のインジェクションポート36aの直径を、第2のインジェクションポート36bの直径よりも大きく設定する。第1・第2のシリンダ室18A,22Aへの液冷媒の注入量は、第1・第2のインジェクションポート36a,36bの直径に比例する。したがって、第1のシリンダ室18Aへの液冷媒の注入量が、第2のシリンダ室22Aへの液冷媒の注入量よりも大になる。
第2のシリンダ22は、密閉容器10の内底部に集溜される冷凍機油S中に常時浸漬状態となり冷却されているため、第2のシリンダ室22Aに注入される液冷媒の注入量が第1のシリンダ室18Aに注入される液冷媒の注入量よりも少なくても、過熱状態に陥ることはない。
これに対して第1のシリンダ18は、中間仕切り板20の上部にあり、通常は、この上部に取付けられる主軸受17のフランジ部まで冷凍機油Sが集溜されているが、圧縮条件によっては冷凍機油Sの液面が低下し、第1のシリンダ18が冷凍機油Sの油面から露出することが多い。
すなわち、第1のシリンダ室18Aと第2のシリンダ室22Aとで同じ圧縮作用をなしていても、第1のシリンダ室18Aの方が第2のシリンダ室22Aよりも温度上昇し易い。そこで、第1のインジェクションポート36aを介して第1のシリンダ室18Aへの液冷媒の注入量を多くすることによって、効率の良い冷却がなされ、圧縮性能の向上が図られる。
このように密閉型圧縮機1を備える冷凍装置の運転動作によって、冷媒としてのR448A,R449Aと、冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油からなる冷凍機油と使用することによって、ローラおよびブレードを備える摺動部材に長期間に亘って安定した潤滑性を付与できるとともに、良好な油戻り性を達成できる。
以下、第1の実施形態に係る密閉型圧縮機の評価を詳細に説明する。
(実施例1)
20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む組成を有するR448A冷媒を用意した。
また、多価アルコールであるペンタエリスリトールと分岐型脂肪酸である2−メチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸を用意し、これらを原料としてポリオールエステル油を合成した。
得られたポリオールエステル油の100℃における動粘度を日本工業規格(JIS) K2283に準拠して測定したところ、8.9mm2/sであった。また、同ポリオールエステル油の酸価をJIS C2101に準拠して測定したところ、0,01mgKOH/g以下であった。
得られたポリオールエステル油に酸化剤である2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを0.1質量%および酸捕捉剤であるグリシジルエステル型エポキシ化合物を0.5質量%添加して冷凍機油を調製した。なお、当該冷凍機油は摩耗防止剤として広く使用されているトリクレジルホスフェートを含有しない。得られた冷凍機油の25℃の体積抵抗率をJIS C2101に準拠して測定したところ、3×1012Ω・mであった。
さらに、冷凍機油のR448A冷媒との低温側二層分離温度をJIS K2211−2009の付属書Dに規定される「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して測定したところ、−42℃であった。なお、図3はR448A冷媒に対する冷凍機油の量を変えた時の二層分離温度曲線を示すグラフで、当該曲線より高温側がR448A冷媒と冷凍機油の相溶域、当該曲線より低温側がR448A冷媒と冷凍機油の二層分離域である。
得られたR448A冷媒と冷凍機油を3HPのインバータ冷凍機に収容し、サイクル内の冷凍機油の挙動を調べた。その結果、圧縮機油に貯油されている冷凍機油の著しい油面低下はなく、冷凍機油の油戻り性は良好であった。
また、1000時間の過負荷条件での耐久性試験において摺動部材(ローラおよびブレード)の異常摩耗がなく、良好であった。
(比較例1)
多価アルコールであるペンタエリスリトールと分岐型脂肪酸である2−メチルヘキサン酸および2−エチルヘキサン酸を用意し、これらを原料としてポリオールエステル油を合成した。
得られたポリオールエステル油の100℃における動粘度をJIS K2283に準拠して測定したところ、5.3mm2/sであった。
得られたポリオールエステル油に酸化剤である2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを0.1質量%および酸捕捉剤であるグリシジルエステル型エポキシ化合物を0.5質量%添加して冷凍機油を調製した。当該冷凍機油のR448A冷媒との低温側二層分離温度をJIS K2211−2009の付属書Dに規定される「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して測定したところ、−47℃を下回る値であった。
得られたR448A冷媒と冷凍機油を3HPのインバータ冷凍機に収容し、サイクル内の冷凍機油の挙動を調べた。その結果、圧縮機油に貯油されている冷凍機油の著しい油面低下はなく、冷凍機油の油戻り性は良好であった。
しかしながら、1000時間の過負荷条件での耐久性試験において摺動部材(ローラおよびブレード)の異常摩耗が生じ、長期にわたって安定した潤滑性が得られなかった。
なお、冷凍機油とR448A冷媒との低温側二層分離温度が−37℃より高温になる場合、これらの冷凍機油とR448A冷媒とを用い、蒸発温度が−42℃になる低温用冷凍装置では、経験上、油戻り性が悪化する傾向にある。
従って、このような実施例の結果から前記R448A冷媒と当該冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑からなる冷凍機油を用いることによって、摺動部材に長期間に亘って安定した潤滑性を付与するとともに、良好な油戻り性を有する高信頼性の密閉型圧縮機を実現できる。
なお、実施例1ではR448A冷媒を用いたが、R449A冷媒を用いても同様な効果を得ることができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る密閉型圧縮機は、第1の実施形態と同様に冷凍サイクル中に設けられ、密閉容器と、当該密閉容器内に収納された冷媒を圧縮する圧縮機部と、前記密閉容器内に収納され、当該圧縮機部を駆動する電動機部と、前記密閉容器に内蔵した冷凍機油とを備える。また、第1の実施形態と同様に、前記冷媒は20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含み、かつ冷凍機油は前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油を使用する。
密閉型圧縮機は、さらに前記冷凍サイクルの液冷媒を圧縮機部に導くインジェクション管を備え、かつ圧縮機部の運転条件を、ローラ27、28とブレード30、31との接触圧力と摺動速度の積であるローラとブレードの間のPV値が0.3×109〜1.5×109Pa・m/secになるように設定する。ここで、運転条件は密閉容器とシリンダ室との圧力差、吸込み圧力および吐出圧力、ローラの回転速度、並びのローラの外径のいずれかである。
前記インジェクション管は、前述した図1および図2で説明したように気液分離器3から凝縮器2で液化した冷媒(冷凍機油を含む)の一部を、インジェクション機構を構成する中間仕切り板20の横孔35に供給し、第1のインジェクションポート36aと、第2のインジェクションポート36bに分流する。液冷媒は、第1のインジェクションポート36aから第1のシリンダ室18Aに導かれ、第1のシリンダ室18A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。さらに、液冷媒は第2のインジェクションポート36bから第2のシリンダ室22Aに導かれ、第2のシリンダ室22A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。このように効率の良い冷却を行うことによって、圧縮性能の向上を図ることができる。
しかしながら、冷凍機油が供給され難いブレード先端部では、インジェクション冷却に伴って液冷媒が過多になり、当該液冷媒で希釈された冷凍機油の粘度が局所的に低下する。このため、圧縮機部のローラが潤滑不良により異常摩耗を生じる。
第2の実施形態によれば、圧縮機部の圧力条件をローラとブレードの間のPV値が0.3×109〜1.5×109Pa・m/secになるように設定することによって、圧縮機部のローラの異常摩耗を防止できるため、信頼性の高い密閉型圧縮機を実現できる。
ここで、PV値の上限は、ローラとブレードの材料使用上の限界から規定される。PV値とローラの外径面粗さの関係を示す図4を用いて、PV値の上限について具体的に説明する。
モリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、母材がステンレス鋼(例えば、SUS440C)から作られ、表面が窒化処理されたブレードとを用意した。ローラとブレードの摺動時における基準条件をPd/Ps=2.2MPa/0.3MPa(ここで、Pdは吐出圧力、Psは吸込み圧力を示す)、回転数80rpsとし、インジェクション冷却を行い、かつ圧力条件をPV値が前記範囲内の約1.32×109Pa・m/secになるように設定して2000時間、耐久試験を実行した。その結果、図4に示すようにローラの外径面粗さは、その異常摩耗が生じる2.5Rz((図4の横破断線で表される))に比べてはるかに低い約1.3Rzになり、ローラの異常摩耗を防止できることを確認した。
これに対し、同一条件下にてインジェクション冷却を行い、かつ圧力条件をPV値が前記範囲を外れる約1.52×109Pa・m/secになるように設定して2000時間、耐久試験を実行した。その結果、図4に示すように面粗さがローラの異常摩耗が生じる2.5Rzより高い約3.3Rzになり、ローラの異常摩耗を防止できない。
従って、ローラの異常摩耗を防止する観点からPV値の上限は、1.5×109Pa・m/secに規定される。
他方、PV値の下限(0.3×109Pa・m/sec)はローラの相対速度が不足して冷凍機油がローラとブレードの間に引き込まれず、潤滑不良によってローラとブレード間の相対運動が停止して局所的な摩耗を引き起こす限界から規定される。
図5は、冷凍サイクルの蒸発温度−40℃、凝縮温度50℃の運転時におけるローラの自転数とローラとブレードの間のPV値との関係を示す。PV値が0.3×109Pa・m/secを下回るとローラの自転数が、冷凍機油がローラとブレードの間に十分に供給される3rps未満となることがわかる。
従って、第2の実施形態に係る密閉型圧縮機によれば、良好な油戻り性を達成でき、かつローラおよびブレードを備える摺動部材に長期間に亘って安定した潤滑性を付与できることに加え、ローラの異常摩耗をより確実に防止できる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る密閉型圧縮機は、第1の実施形態と同様に冷凍サイクル中に設けられ、密閉容器と、当該密閉容器内に収納された冷媒を圧縮する圧縮機部と、前記密閉容器内に収納され、当該圧縮機部を駆動する電動機部と、前記密閉容器に内蔵した冷凍機油とを備える。また、第1の実施形態と同様に、前記冷媒は20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含み、かつ冷凍機油は前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油を使用する。
密閉型圧縮機において、圧縮機部はモリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、母材が金属材料からなり、表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.05〜0.2のブレードとを備え、さらに冷凍サイクルの液冷媒を圧縮機部に導くインジェクション管を備える。
ブレードの表面粗さRaを前記範囲に規定することにより、当該ブレードと摺動するローラの異常摩耗を防止できる。ブレードの表面粗さRaを0.05未満にすると、ローラの異常摩耗の防止効果が向上されず、超研磨仕上げが必要になってコストが高くなる虞がある。ブレードの表面粗さRaが0.2を超えると、ローラの異常摩耗を防止することが困難になる。
ブレードは、金属材料、例えばSKH51(高速度工具鋼)からなる母材の表面に、ローラの異常摩耗の防止効果が高いダイヤモンドライクカーボン(DLC)の被膜処理されていることが好ましい。
前記インジェクション管は、前述した図1および図2で説明したように気液分離器3から凝縮器2で液化した冷媒(冷凍機油を含む)の一部を、インジェクション機構を構成する中間仕切り板20の横孔35の先端部を通して第1のインジェクションポート36aと、第2のインジェクションポート36bに分流する。液冷媒は、第1のインジェクションポート36aから第1のシリンダ室18Aに導かれ、第1のシリンダ室18A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。さらに、液冷媒は第2のインジェクションポート36bから第2のシリンダ室22Aに導かれ、第2のシリンダ室22A内の圧縮途中のガス冷媒中に注入されて、ガス冷媒を冷却する。このように効率の良い冷却を行うことによって、圧縮性能の向上を図ることができる。
しかしながら、冷凍機油が供給され難いブレード先端部では、インジェクション冷却に伴って液冷媒が過多になり、当該液冷媒で希釈された冷凍機油の粘度が局所的に低下する。このため、圧縮機部のローラが潤滑不良により異常摩耗を生じる。
第3の実施形態によれば、ローラと摺動するブレードの表面粗さRaを0.05〜0.2にすることによって、圧縮機部のローラの異常摩耗を防止でき、信頼性の高い密閉型圧縮機を実現できる。
以下、第3の実施形態に係る密閉型圧縮機の圧縮機部に組込まれるローラの耐久試験を具体的に説明する。
(実施例11)
モリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、SKH51からなる母材の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)の被膜処理がなされ、表面粗さRaが0.1のブレードとを密閉型圧縮機の圧縮機部に組み込んだ。
(実施例12)
モリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、SUS440Cから作られ、表面が窒化処理され、表面粗さRaが0.2のブレードとを密閉型圧縮機の圧縮機部に組み込んだ。
(比較例11)
モリブデンニッケルクロム鋳鉄から作られるローラと、SUS440Cから作られ、表面が窒化処理され、表面粗さRaが0.4のブレードとを密閉型圧縮機の圧縮機部に組み込んだ。
実施例11,12および比較例11の密閉型圧縮機について、ローラとブレードの摺動時における基準条件をPd/Ps=2.2MPa/0.3MPa(ここで、Pdは吐出圧力、Psは吸込み圧力を示す)、回転数80rpsとし、インジェクション冷却を行う、耐久試験を2000時間実行した。その結果を図6に示す。
図6から明らかなように表面粗さRaが0.05〜0.2の範囲内のブレードを有する実施例11,12の密閉型圧縮機は、ローラの面粗さがその異常摩耗を生じる2.5Rz(図6の横破断線で表される)に比べて低い値になり、ローラの異常摩耗を防止できることわかる。特に、DLCからなり、表面粗さRaが0.1のブレードを有する実施例11の密閉型圧縮機は、ローラの面粗さが約0.6Rzになり、より一層ローラの異常摩耗を防止できることがわかる。
これに対し、表面粗さRaが0.2より大きいブレードを有する比較例11の密閉型圧縮機はローラの面粗さがその異常摩耗を生じる2.5Rzより大きい約3.7Rzになり、ローラの異常摩耗を防止できなかった。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]冷凍サイクル中に設けられ、密閉容器と、当該密閉容器内に収納され冷媒を圧縮する圧縮機部と当該圧縮機部を駆動する電動機部と冷凍機油とを備えた密閉型圧縮機であって、
前記冷媒は、20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含み、かつ
前記冷凍機油は、前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油を使用することを特徴とする密閉型圧縮機。
[2]前記圧縮機部は、シリンダ室を形成するシリンダと前記シリンダ室内で回動するローラと前記ローラの外周面に当接して往復動するブレードと前記シリンダ室内に液冷媒を導くインジェクション機構を備え、
前記ローラをモリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄より形成するとともに、前記ブレードを表面が窒化処理されたステンレス鋼で形成し、
前記圧縮機部のローラとブレードとの接触圧力と摺動速度の積であるローラとブレード間のPV値が0.3×109〜1.5×109Pa・m/secになるようにすることを特徴とする[1]の密閉型圧縮機。
[3]前記圧縮機部は、シリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダ室内で回動し、モリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、前記ローラの外周面に当接して往復動するとともに母材が金属材料からなり表面粗さRaが0.05〜0.2にされているブレードと、前記シリンダ室内に液冷媒を導くインジェクション機構を備えることを特徴とする[1]の密閉型圧縮機。
[4]前記ブレードは、表面にダイヤモンドライクカーボンの皮膜処理が施されていることを特徴とする[3]の密閉型圧縮機。
[5][1]〜[4]いずれかの密閉型圧縮機と、当該密閉型圧縮機に接続された放熱器と、当該放熱器に接続された膨張装置と、当該膨張装置と前記密閉型圧縮機の間に接続された吸熱器とを備え、冷媒として20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む冷媒が封入されていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
[6]蒸発温度がー42℃以上に設定されていることを特徴とする[5]の冷凍サイクル装置。
実施形態によると、冷凍サイクル中に設けられ、密閉容器と、当該密閉容器内に収納され冷媒を圧縮する圧縮機部と当該圧縮機部を駆動する電動機部と冷凍機油とを備えた密閉型圧縮機が提供される。前記冷媒は、20質量%以上のジフルオロメタン、20質量%以上のペンタフルオロエタン、20質量%以上の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび20質量%以上の1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含む。前記冷凍機油は、前記冷媒との低温側二層分離温度が−42℃±5℃になるポリオールエステル系潤滑油を使用する。前記圧縮機部は、シリンダ室を形成するシリンダと、前記シリンダ室内で回動し、モリブデン、ニッケル及びクロムを含む片状黒鉛鋳鉄から作られるローラと、前記ローラの外周面に当接して往復動するとともに母材が金属材料からなり表面粗さRaが0.05〜0.2にされているブレードと、前記シリンダ室内に液冷媒を導くインジェクション機構とを備える。