星空再現装置には、肉眼による観察だけではなく双眼鏡や望遠鏡による眼視観察やカメラを用いた写真観察などの観察体験を「安価に」「高い品質で」「効率的に」提供するために、以下に掲げる複数の目標性能を備えなければいけない。しかしながら、以下に説明するように、従来の星空再現装置はその性能を十分有していない。本発明が解決しようとする課題は、従来技術がこれらの目標性能を達成できないという課題である。その課題を以下に具体的に説明する。
まずは星空再現装置に求められる12項目の目標性能について説明する。その後に従来の技術の課題を詳細に説明する。
>目標性能1.広いダイナミックレンジ
肉眼でも観察できる明るい天体から、望遠鏡やデジカメによる写真撮影でないと観察できない十分暗い天体まで再現されることが、重要である。
星空再現装置は、金星(−4.7等)から、写真撮影で観察可能な恒星(約20.3等)まで、最大で25等級の明るさの差、すなわち100億倍明るさが違う天体を再現しなければならない場合がある。暗い星のデータとして、アメリカ海軍天文台が発行する全天スターカタログUSNOB1.0に掲載されている、約20等星までの10億個の星のデータが利用できる。またアメリカ航空宇宙局が運営するハッブル宇宙望遠鏡が撮影した深宇宙の観測データには、さらに暗い星のデータが含まれる。これらの観測データを基に星空を再現するには、広いダイナミックレンジが必要になる。
>目標性能2.高精細な星像
望遠鏡で拡大した時でもシャープに輝く星として観察できるように、高精細で歪の無い星像が再現されることが、重要である。
人間の眼で星を観察した時に、点と認識されるためには、視直径が1分角以下である必要がある。そのため、例えば直径15メートルのドーム式のプラネタリウムの中央付近から肉眼の7倍の倍率を有する望遠鏡で壁面に再現される星を観察した場合に、点で観察されるためには、壁面に再現される星の直径は0.3mm以下にする必要がある。また星は、歪が無い形状で再現される必要がある。
>目標性能3.正確な星の色の再現
全ての星が正確な色で再現されることが重要である。
人間の眼の色の判別能力は、光が暗いと低い。そのため、肉眼で観察する場合は暗い星の色を再現する必要性は少ない。しかしながら、写真で撮影すると、暗い星でも色は明確に識別される。そのため、全ての星が、正確な色で再現される必要がある。
>目標性能4.低コスト
目標性能1〜目標性能3を達成するためのコストを低くすることが重要である。
例えば、目標性能1〜目標性能3を達成できる恒星投影器を製作するためには、明るい光源ランプや、光ファイバーなどを用いた精密な恒星原版、歪が少ない明るく高性能な投影レンズなどを用いる必要がある。また、暗い天体を観察するためには、集光力が大きな大口径の望遠鏡が必要になる。これらの恒星投影器や大口径の望遠鏡は高価である。
プラネタリウムでは、一人の解説員が多数の学習者に星空の体験を提供できる。しかし解説員が望遠鏡を用いて観察者に星空体験を提供する場合は、望遠鏡の操作や観察者への解説のために望遠鏡毎に指導員が必要になり人件費が多くなる。コストを低くするためには少ない解説員で多くの観察者に星空体験が提供できることが必要である。
>目標性能5.歪の無い星の位置関係
限りなく遠方に存在する実際の星を観察するのと同様に、望遠鏡で観察する星の天空上の位置に関わらず、星を歪の無い位置関係で観察できることが重要である。
投影式のプラネタリウムで再現される星は、有限の距離に再現されるので、観察者の位置によって星の位置関係に歪が生じる。ドーム中心で観察する観察者は、歪が無い星空を観察できる。しかしドーム中心には恒星投影機が存在するためそれは不可能である。そのため、観察用の座席は、できるだけドーム中心に近い位置に設置される。望遠鏡で観察する場合でも、星の天空上の位置に関わらず、観察される星の位置関係はできるだけ歪が少ないことが重要である。
>目標性能6.観察距離の確保
望遠鏡と観察対象との距離を大きく取れることが重要である。
市販されている天体望遠鏡は通常、無限遠の距離にある天体を想定して設計されている。したがって、天体望遠鏡と観察対象との距離が近いと、ピントが調整範囲で合わない弊害や、光学的な収差が増加する等の弊害が出る。場合によっては高い費用を掛けて特注の望遠鏡を準備する必要がある。
また多数の観客に効率良く観察体験を提供するためには複数の望遠鏡を設置する必要がある。複数の望遠鏡を設置すると、望遠鏡と観察対象との距離が有限であるので視差が生じて、星の位置関係に歪が生じる。視差の大きさは、望遠鏡と観察対象との距離が大きいほど少なくなる。こうした理由から、望遠鏡と観察対象との距離はできるだけ大きく取れることが必要である。
>目標性能7.導入体験の提供
観察する天体を望遠鏡の視野に導入する体験が提供できることが重要である。
星空再現装置を活用して星空に触れる体験には、望遠鏡を覗いて星空を観察するだけでなく、目的の天体を望遠鏡に導入する操作の体験も含まれる。例えば、実際の星空観察会でボランティアで活躍するスタッフを育成する為に、事前に望遠鏡による天体導入を習得したい場合などがこれにあたるが、こうした体験が提供できることが必要である。
>目標性能8.天空上の複数の天体の観察
天空上に存在する複数の天体を観察できることが重要である。
季節ごとに異なる星空を再現することでより多くの天体を観察できる。その際、天球上の位置がほぼ真反対に位置する天体、例えば、夏の銀河に位置する「いて座」と、冬の銀河に位置する「オリオン座」と、銀河北極に位置する「かみのけ座」と、銀河南極に位置する「ちょうこくしつ座」にそれぞれ存在する星雲・星団を、望遠鏡で見比べるような観察体験が提供できるのが望ましい。
>目標性能9.望遠鏡で観察する天体の天空上の位置の把握
望遠鏡で観察している天体の天空上の位置が確認できることが重要である。
頭上に輝く満天の星空の下で、興味ある天体を望遠鏡で自ら観察することは、インターネットなどで提供される天体の画像を見ることでは得られない、ワクワクする体験である。
しかしながら望遠鏡で天体を観察する場合、観察者は天体の位置を天空上で把握することが難しい。そのため、望遠鏡で観察している天体が、頭上に広がる星空のどの位置に存在するのかを、分かりやすく把握できることが必要になる。
>目標性能10.セッティングの効率化
明るさや大きさが異なる複数の天体を観察する場合でも、望遠鏡のセッティング変更をできるだけ少なくして、効率的に観察できることが重要である。
プラネタリウムの観客の数は、数十人に及ぶので、望遠鏡を覗く体験は効率的に提供されなければならない。
観察する天体が複数の場合、それぞれの天体の位置や明るさ、大きさに応じて、望遠鏡のセッティングを変更する必要がある。具体的には、天体が暗い場合はレンズが大きく集光能力が大きな望遠鏡を使用する必要があるし、天体の大きさに適した倍率になるように接眼レンズを変更する必要がある。
こうした望遠鏡のセッティングの変更は人手が必要になるし、時間が掛る。したがって、多人数の観客に効率的に観察体験を提供するために、望遠鏡のセッティングの効率化は必要である。
>目標性能11.観察者に応じた解説情報の提供
複数の観察者それぞれに適した解説情報が提供できることが重要である。
観察者の学齢や使用言語、過去の観察体験の有無、天体に対する興味や知識のレベルは多様である。そのため、観察する天体の解説情報を提供するにあたっては、観察者の違いに応じて最適な情報提供がなされることが必要である。
>目標性能12.星景写真の体験機会の提供
観察者が地上物の模型をドーム内に持ち込み、様々な星景写真の撮影を体験できることが重要である。
近年デジタル一眼カメラの性能が著しく向上し、一般の消費者が入手できる製品でも美しい星空の写真を撮影することが可能となっている。そうしたなか、星空と地上の景色を伴に撮影する「星景写真」が、星空に身近に接する機会として提案されている。そのため、山や木々や建物などの地上物の模型と星空を一緒に撮影する星景写真の体験を提供できることが必要である。
次に、これらの目標性能の実現に関して、従来技術の課題について詳細に説明する。なお、従来技術の名称は、すべて星空再現装置と称する。
特許文献1の星空再現装置は、従来の投影式プラネタリウムの改良提案であり、恒星原版の星の位置に光ファイバーの一端が固定され、他端が束ねられ、その端面に、液晶を通過したランプの光がレンズにより結像されるような構成になっている。液晶を制御することで、任意の星を暗くしたり消したり着色したりできる。しかしながら、現在の技術レベルでは、液晶の透過率のダイナミックレンジは、高々10,000程度であり、光ファイバーの太さや恒星原版の穴の直径の変化などを利用しても、100億倍のダイナミックレンジを達成することは困難であり、目標性能1には及ばない。
一方、特許文献2の星空再現装置では、特許文献1の課題を改善したもので、明るい星は通常の投影式プラネタリウムを用いて投影し、一定以上暗い星はプロジェクターで投影することで、幅広い明るさの星を再現可能になり、目標性能1の実現は可能である。
しかしながら、特許文献2などの星空再現装置では、肉眼による観察が前提であり、すなわち肉眼で「点」に見える1分角の視野角の恒星像を目標に設計がなされている。そのため、例えば目標性能2、すなわち7倍の望遠鏡で拡大して見ても「点」で見える約9秒角の視野角の高精細な恒星像を再現するためには新たな課題が生じる。
すなわち特許文献1及び特許文献2の星空再現装置では、光ファイバーや恒星原版に、より小さい穴を開ける必要があり、目標性能1が求める明るい星の再現と背反することとなる。
また、特許文献2の暗い星を投影するプロジェクターに関しては、現在の技術で高精細と言われる4Kプロジェクター(長辺方向で4096ピクセルの分解能がある)であっても、例えば半球の子午線を長辺方向でカバーするように投影すると、その1ピクセルは約2.6分角の大きさで投影される。これは肉眼で観察して点で見える大きさの2.6倍にあたり、解像度が不足する。仮に、複数の4Kプロジェクターを使用して全天を分割して再現して肉眼で「点」で見えるレベルの高精細な映像を投影するように構成した場合、1台150万円ほどの高価なプロジェクターが2〜4台必要になり高価な設備となる。こうしたコスト的な課題から、財政状況が厳しい地域を含めた全国の全てのプラネタリウムに導入できるほどには至っていない。
ましてや、目標性能2を達成するためにはさらに7倍の解像度の向上が必要であり、仮にその解像度を実現しようとすると、4Kプロジェクターが100台以上必要になり、極めてコストの高い装置となり、目標性能4に背反し、装置が広く普及するための足かせになる。
また特許文献1などの投影式プラネタリウムは、光源と恒星原版と投影レンズからなる投影ユニットが複数備わって、全天の星空を分割して投影しているが、この投影レンズには光学的な収差が有り、ドームに描写される星像には歪が発生する。また特許文献2の暗い星を投影するプロジェクターも、同様に投影レンズが必要になるため、ドームに描写される星像には歪が発生する。
この歪の程度は、星を明るく投影できるF値が小さい「明るい」レンズほど、また投影ユニットの数を削減して装置のコストを下げるために1つの投影ユニットで投影する星空の範囲を広げる「広角」なレンズほど顕著になり、目標性能2を達成するためには従来よりも高性能な投影レンズが必要となり、目標性能4に背反する。
またレンズの価格を抑えるためにより「暗い」レンズにすると目標性能1の達成に背反する。またより「狭角」のレンズにすると全天をカバーするための投影ユニットの数が多数必要になり装置が高価になって目標性能4に背反する。
このように、特許文献1や特許文献2の投影式プラネタリウムやプロジェクターなどを用いた星空再現装置は、目標性能1、目標性能2、目標性能4をともに高いレベルで達成することは困難であるという深刻な課題がある。
次に特許文献3から特許文献6のそれぞれの星空再現装置の課題を説明する。
これらの星空再現装置は、星像を直接ドーム壁面などに再現する方式を採用しているため、特許文献1や特許文献2の星空再現装置で必要な投影レンズなどの要素が不要であることと、ドーム状に製作した場合にドーム中心に投影機などの装置を設置する必要が無いなどの特徴がある。
このうち特許文献3の星空再現装置は、形成する穴の大きさで星の明るさを変化させるが、この方式は肉眼で観察する等級範囲の星を再現するには有効であるが、目標性能1を実現するために例えば100億倍の明るさ変化を実現しようとすると、最も明るい星と最も暗い星の直径比率を10万倍にする必要がある。 具体的には、目標性能2を達成するために、マイナス4.7等星の金星を直径0.3mmの穴で再現した場合、20.3等星の星は、直径0.003ミクロンにする必要があるが、これは光の波長の100分の1以下であり実現するのは極めて困難である。
また、特許文献4の星空再現装置では、蓄光塗料や蛍光塗料で星を印刷すれば、比較的安価に暗い星を再現できるが、蓄光塗料や蛍光塗料の発光輝度には限度があり、目標性能2を達成するために小さなサイズの恒星像とした上で充分明るい星を再現することが困難であることから、目標性能1と目標性能2を同時に実現することは困難である。また蛍光塗料を紫外線ランプで発光させる方式では、むやみに強い紫外線で発光させようとすると、紫外線ランプに含まれる可視光の影響が出て背景が明るくなり目標性能1の妨げとなるし、観察者の着衣などに含まれる蛍光物質が発光し観察の妨げとなるし、紫外線を直視すると眼に影響があるなどの課題もある。
また、特許文献5の星空再現装置では、任意の位置に星を再現するためにはLEDを天球に敷き詰める必要があり、目標性能2を達成するために例えば直径15メートルのドームで直径0.3mm以下のLEDを2mm間隔でドームに敷き詰めるためには、LEDが1億個以上必要であり、製造が極めて困難であるとともにコストが極めて高価になり目標性能4に背反するという課題がある。
また、特許文献6の星空再現装置では、目標性能1を達成するためには、暗い星を多数再現するために光ファイバーの配線が多数になり、その施工にコストがかかり目標性能4に背反するという課題がある。
そして、特に本発明が課題としているのは、従来の星空再現装置では、実施例の説明でも詳細に説明しているように、目標性能5、目標性能6、目標性能8、目標性能10、目標性能11を達成することが困難であるという課題である。
こうした課題を解決するために、本発明の請求項1の星空再現装置は、内面に星空を投影可能な半球面を有する天井部と、天井部の半球面の下端部に連結する略垂直の壁面を有する壁部と、壁部が設置される床部と、床部の中央付近であり天井部の半球面の中心付近に設置され天井部の半球面に星空を投影する星空投影手段と、床部に設置された複数の観客席と、観客席と壁面との間であって望ましくは壁面に近接した位置に設置され、星空の一部の詳細像を再現する部分星空再現手段と、観客席と壁面との間であって星空投影手段を中心に部分星空再現装置と対向した位置に設置され、部分星空再現手段で再現される星空の一部の詳細像を観察可能な天体望遠鏡と、からなる。
また、前記部分星空再現手段は、前記天井部の半球面の下端部よりも下に配置されていることを特徴としている。
また、前記部分星空再現手段と天体望遠鏡の対を複数対備えるとともに、少なくとも2つの対は、それぞれの天体望遠鏡の視野方向が互いに交差する位置に設置されていることを特徴としている。
また前記天体望遠鏡は、観察する天体の解説情報を観察者に提供する解説情報提供手段を有することを特徴としている。
また前記解説情報提供手段は、天体観察のための視野内に、天体観察のための解説情報を視認可能に提供する、視野内情報提供手段を有することを特徴としている。
また前記天体望遠鏡は、観察者の視度の違いよって合焦状態を調整可能な合焦状態変更手段を有することを特徴としている。
また観察者を識別する観察者識別情報を入力する観察者識別情報入力手段と、入力した観察者識別情報に基づき観察者固有の情報をサーバーから入力する観察者固有情報入力手段を有するとともに、観察者固有の情報に基づき、解説情報の提供内容または合焦状態を変更することを特徴としている。
また観察者の固有の情報をサーバーへ記録する、観察者固有情報設定手段を有する。
本発明は、次のような作用・効果を奏する。すなわち、本発明の星空再現装置は、内面に星空を投影可能な半球面を有する天井部と、天井部の半球面の下端部に連結する略垂直の壁面を有する壁部と、壁部が設置される床部と、床部の中央付近であり天井部の半球面の中心付近に設置され天井部の半球面に星空を投影する星空投影手段と、床部に設置された複数の観客席とを有するとともに、観客席と壁面との間であって望ましくは壁面に近接した位置に設置され、星空の一部の詳細像を再現する部分星空再現手段と、観客席と壁面との間であって星空投影手段を中心に部分星空再現装置と対向した位置に設置され、部分星空再現手段で再現される星空の一部の詳細像を観察可能な天体望遠鏡を備えるため、天体望遠鏡を用いて部分星空再現手段で再現される星空の一部の詳細像を観察する際に、歪の無い星の位置関係で天体観察が可能であり、目標性能5が達成できる。
また、天体望遠鏡と観察対象である部分星空再現手段で再現される星空の一部の詳細像との距離が、天井部の半球面に投影される天体を観察する場合よりも大きく取れるため、無限遠の距離にある天体を想定して設計されている市販の天体望遠鏡を使用する場合でも、ピントが調整範囲で合わない弊害や、光学的な収差が増加する等の弊害が少なく、高い費用を掛けて特注の望遠鏡を準備する必要がなく、目標性能6が達成できる。
また、天空上に存在する複数の天体を直接観察するのではなく、部分星空再現手段でそれぞれ再現し、それぞれ天体望遠鏡で観察可能であるため、天球上の位置がほぼ真反対に位置する天体、例えば、夏の銀河に位置する「いて座」と、冬の銀河に位置する「オリオン座」と、銀河北極に位置する「かみのけ座」と、銀河南極に位置する「ちょうこくしつ座」にそれぞれ存在する星雲・星団を望遠鏡で見比べるような観察体験を提供できるので、目標性能8が達成できる。
また、観察する複数の天体が大きさや明るさがことなるが複数の天体の場合でも、それぞれの部分星空再現装置に、天体望遠鏡の仕様に合わせた最適なサイズと明るさで天体の詳細像を再現することができるため、明るさや大きさが異なる複数の天体を複数の天体望遠鏡でそれぞれ観察する場合でも、それぞれの天体望遠鏡のセッティングを天体毎に行う必要が無く、効率的に観察できるので、目標性能10が達成できる。
また本発明の天体望遠鏡は、解説情報提供手段を有しているので、観察する天体の解説情報を観察者に提供できるという効果がある。また、視野内情報提供手段を有しているので、天体観察のための視野内に天体観察のための解説情報を視認可能に提供でき、解説と天体を同時に視認でき理解しやすいし、音声による解説でないため複数の天体望遠鏡でそれぞれことなる解説を提供する場合でも邪魔にならないという効果がある。またひとつの部分星空再現手段を複数の天体望遠鏡で観察するような場合でも、観察者毎に異なる解説情報を提供できるという効果がある。また、天体望遠鏡は、観察者の視度の違いよって合焦状態を調整可能な合焦状態変更手段を有するので、合焦操作が不要になり円滑な観察が行えるという効果がある。また、観察者を識別する観察者識別情報を入力する観察者識別情報入力手段と、入力した観察者識別情報に基づき観察者固有の情報をサーバーから入力する観察者固有情報入力手段を有するとともに、観察者固有の情報に基づき、解説情報の提供内容または合焦状態を変更するため、観察する天体の解説情報を提供するにあたって観察者の違い、例えば観察者の学齢や使用言語、過去の観察体験の有無、天体に対する興味や知識のレベルに応じて最適な情報提供やセッティングがなされるという効果がある。また観察者の固有の情報をサーバーへ記録する、観察者固有情報設定手段を有するので、観察者の天体観察体験の蓄積に基づいて、提供される解説情報やセッティングの情報が、より効果的なものにできるという効果がある。このように、目標性能11が達成される。
このように、本発明により、従来の星空再現装置では達成が困難であった目標性能が達成されるという効果がある。
また本明細書中に記載した第1の実施例の星空再現装置は、次のような作用・効果を奏する。
すなわち、一定の減光作用を有するシートに形成される透過孔は、背景から光で照射して観察すると、シートの減光を受ける透過孔以外の部分と減光を受けない透過孔をそれぞれ通過する透過光線の明るさの違いから、透過孔の部分が星状の透過光星として観察される。
この透過光星は、透過孔の直径等によって異なる等級の星を再現できるが、微細な穴を加工する限界からくる最少直径と、望遠鏡等で観察した際に点で見える限界から来る最大直径によって、穴の直径の変化だけで再現できる星の等級の幅には限度がある。
しかし本発明の第1の実施例の星空再現装置は、一定の減光作用を有するシートが合計N層(Nは2以上)貼りあわせられた積層シートであって、少なくとも1以上N以下の整数値のうち互いに異なる2つの整数値MならびにL(M>L)において、シートがL層積層された状態でそれらを光線が通過可能なL層透過孔が形成され、さらに加えてシートがM層まで貼り合わされた状態でL層透過孔とは異なる位置にM層貫通透過孔が貫通して形成されることにより、シートの一方向から入射する光線のうちL層透過孔を通過するL層通過光線とM層貫通透過孔を通過するM層通過光線が互いに異なる減光率で減光される。
そのため、L層透過孔と同一の直径のM層貫通透過孔であっても、L層通過光線はM層通過光線に比べて(M−L)層のシートの減光分暗く観察される。すなわち、L層透過孔とM層貫通透過孔において直径の違いにより再現できる星の明るさの変化に加えて、(M−L)層分のシートの減光による星の明るさ変化が加わる。
なお、L層まで積層されたシートに、さらに(M−L)層分のシートを積層する際には、シート自体が一定の減光性能を有するため、その貼りあわせ位置にずれがあってもシートを通過する光線に対する減光性能は一定で変化せず、L層通過光線に作用する減光率に影響を与えない。また同様に(M−L)層分のシートを積層する際に貼りあわせ位置にずれがあっても、M層貫通透過孔は(M−L)層分のシートが積層された後にM層のシートを貫通して形成されるので、M層通過光線はM層のシートを貫通して通過してシートの減光を受けることは無い。
このように、穴の直径の違いだけで再現していた従来の方式に加え、シートの減光による変化を加えることができるので、より幅広い等級の星を再現できるという効果がある。
またこの基本的な作用効果を、たとえば、2等級の減光作用を有するシートを5層積層した多層シート(N=5)において、Lの値を1〜4としてそれぞれ、直径0.5mmと直径0.3mmの透過孔の加工をM=L+1の状態で累積的に施すことで、貫通透過孔が貫通するシートの層数を1層〜5層、すなわち透過孔を通過する光に減光作用を及ぼすシートの層数を4層〜0層とすることができ、その結果、8等級、6等級、4等級、2等級、0等級の減光作用を付与することが可能になり、直径の違いによる1等級の変化に比べて幅広い等級の星を再現できるという効果がある。
その結果、天体望遠鏡などの観察に対応するためにあまり大きな直径の星像が採用できない場合で、かつ、加工の難易度からあまり小さな直径の穴を形成できない場合でも、積層数を大きくすることで、より幅広い等級範囲の星を再現できるという効果がある。
なお上記事例では、2等級の減光作用を有するシートを複数積層し、直径0.5mmと直径0.3mmの貫通透過孔をシートを積層しながら繰り返し形成することで、1等級刻みの明るさの星を再現しているが、シートの減光率や貫通透過孔の直径はこれに限らない。例えばシートの減光率を3等級とし、貫通透過孔を、直径0.5mm、直径0.3mm、直径0.18mmと、1等級刻みで3種類とすることで、同様に1等級刻みの明るさの星を再現できる。また同様に、シートの減光率を4等級とし、貫通透過孔を、直径0.5mm、直径0.3mm、直径0.18mm、直径0,11mmと1等級刻みで4種類とするとともに、積層シートを7層として、最も明るい星を再現する貫通透過孔を7層すべて貫通する直径0.5mmの貫通透過孔とし、最も暗い星を再現する貫通透過孔を1層のみ貫通する直径0.3mmの貫通透過孔とすることで、その等級差を、積層シートの6層x4等級+直径の差1等級=25等級とすることが可能となり、100億倍のダイナミックレンジが実現可能である。
また、貫通透過孔を加工する際には、できるだけ加工負荷が少ないのが工具の摩耗も少なくて望ましい。それに関して本発明では、より多くの数存在する暗い星は、より少ない層数、すなわち被加工物である積層シートの厚さが薄い状態で貫通透過孔を加工することになるので、工具の加工負荷が削減され、工具が長持ちしてコスト削減になるという優れた効果がある。
また積層シートをエアドームのドーム素材として使う場合、引っ張り強度が必要になるが。積層構造により一定の厚さが確保されるので引っ張り強度が維持できるという効果もある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、複数の発光素子と、発光素子を点灯制御する発光素子点灯制御手段と、前記積層シートの裏面側に敷設され、その一端に入射した発光素子からの光を導いて前記シートを貫通して観察者側に露出する端面に導光する複数の光ファイバーと、を備えており、観察者が前記透過光星と光ファイバーによって導かれた発光素子からの光による発光素子星とを同時に観察可能であり、かつ、発光素子星の平均輝度をA、透過光星の平均輝度をBとした場合に、A>Bであることを特徴としているので、光ファイバーによって超高輝度LEDなどの発光素子の光を積層シートの表面側に導き、透過光星とは独立した輝度で発光素子星を再現でき、透過光星だけで再現するよりもより幅広い等級範囲の星を再現できるという効果がある。
具体的には、まず2等級の減光率のシートを8層積層した積層シートの場合、1層目のシートに形成される直径0.18mmの貫通透過孔からなる透過光星と、8層のシートをすべて貫通する直径0.3mmの貫通透過孔からなる透過光星を観察すると、シートによる減光で14等級と、直径の違いによる1等級で、合計で15等級の違いが生じる。そして、積層シートを貫通して敷設される複数の光ファイバーの端面を照明する発光素子の輝度を1万倍、すなわち10等級の範囲で調整できるようにする。そして、最も暗い発光素子で照明される光ファイバーによる発光素子星を観察した時の明るさを、最も明るい透過光星の明るさと等しくするように積層シート背面の照明輝度を調整することで、積層シートの観察者側から観察する最も明るい発光素子星の明るさと、最も暗い透過光星の明るさを、25等級、すなわち100億倍の違いで再現することができる。こうすることで、積層シートの積層数を削減し、製作が容易になるという効果がある。
また1つあたりの星を再現するコストは透過光星よりも発光素子星は高価になるが、発光素子星で再現する星の平均輝度Aを透過光星で再現する星の平均輝度Bよりも大きくすることで、明るい星ほど個数が少ないという自然法則に従って、全体のコストが安価になるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、前記積層シートの観察者側の表面を紫外線で照らす、UVランプと、UVランプを点灯制御するUVランプ点灯制御手段とを備えるとともに、前記積層シートの観察者側の表面には、紫外線で発光する蛍光インクにより星像が印字された印刷面が配置され、観察者が、UVランプにより発光する蛍光インクによる印刷発光星と、前記透過光星を同時に観察可能であり、かつ、透過光星の平均輝度をB、印刷発光星の平均輝度をCとした場合に、B>Cであることを特徴としているので、UVランプにより発光する蛍光インクによる印刷発光星を透過光星とは独立した輝度で再現でき、透過光星だけで再現するよりもより幅広い等級範囲の星を再現できるという効果がある。
具体的には、まず2等級の減光率のシートを8層積層した積層シートの場合、1層目のシートに形成される直径0.18mmの貫通透過孔からなる透過光星と、8層のシートをすべて貫通する直径0.3mmの貫通透過孔からなる透過光星を観察すると、シートによる減光で14等級と、直径の違いによる1等級で、合計で15等級の違いが生じる。そして、最も明るい印刷発光星と最も暗い印刷発光星の輝度を1万倍、すなわち10等級の範囲で蛍光インクによる星像を印刷する。そして、最も明るい印刷発光星を観察した時の明るさを、最も暗い透過光星の明るさと等しくするように積層シート背面の照明輝度を調整することで、積層シートの観察者側から観察する最も明るい透過光星の明るさと、最も暗い印刷発光星の明るさを、25等級、すなわち100億倍の違いで再現することができる。こうすることで、積層シートの積層数を削減し、製作が容易になるという効果がある。
また第1の実施例は次のような構成が可能である。すなわち2等級の減光率のシートを5層積層した積層シートとして、1層目のシートに形成される直径0.18mmの貫通透過孔からなる透過光星と、5層のシートをすべて貫通する直径0.3mmの貫通透過孔からなる透過光星の等級差を9等級にする。そして、積層シートを貫通して複数の光ファイバーを敷設し、その端面を照明する発光素子の輝度を4000倍、すなわち9等級の範囲で調整できるようにする。そして、最も暗い発光素子で照明される光ファイバーによる発光素子星を観察した時の明るさを、最も明るい透過光星の明るさと等しくするように積層シート背面の照明輝度を調整する。そして、最も明るい印刷発光星と最も暗い印刷発光星の輝度を640倍、すなわち7等級の範囲で蛍光インクによる星像を印刷する。そして、最も明るい印刷発光星を観察した時の明るさを、最も暗い透過光星の明るさと等しくするようにUVランプにより積層シート内側を照明する紫外線の照明輝度を調整する。そうすることで、最も明るい発光素子星と最も暗い印刷発光星の等級差は25等級すなわち100億倍の明るさの違いの星を再現できる。その際、前述の構成に対して、透過光星で再現する星の明るさの範囲をさらに少なくすることができるので、積層シートの積層数を削減し、製作がさらに容易になるという効果がある。
また印刷発光星は印刷工程で製作できるため、シートに貫通孔を加工する透過光星にくらべて、星と星をよりせまい間隔で印刷することが可能である。また1つあたりの星を再現するコストは透過光星よりも安価である。こうした特徴から、印刷発光星で再現する星の平均輝度を透過光星で再現する星の平均輝度よりも小さくしてより暗い星を印刷発光星で担うようにすることは、星空解説装置に固有な次のような効果を奏する。すなわち、暗い星ほど個数が多く他の星と接近して存在する確率が高いという宇宙の自然法則に照らし合わせると、より多くの近接する星を再現でき、かつ、より多くの星を安価な印刷発光星で再現することができる。また平均輝度が低いのでUVランプの輝度をむやみに高くする必要がなく、真っ暗な部屋の中で観察者の衣服がUVランプで光ったりする弊害もない。また、印刷発光星で再現する星のなかでも、より多数存在するより暗い星の方を再現するための蛍光インクに、発光輝度の高い高価な蛍光インクを水で薄めて輝度を低くした低輝度の蛍光インクを使用できるので、全体のコストを安価にできるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、積層シートの表面に映像を投影可能なプロジェクターを備えているので、星空再現装置で再現される星空に関する解説情報を積層シートの表面に投影することで、観察者が観察する天体の近傍に、天体の解説情報を表示可能になり、天体の理解がより進むという効果がある。
また投影用ランプの輝度を暗くしたり、別途減光フィルターを用いる等で積層シートの表面に投影する映像の輝度を暗くすることで、透過光星や印刷発光星で再現される星よりも暗い星を映像で再現できるようになり、より幅広い明るさの星空を再現可能になるという効果がある。
また状況に応じて異なる映像、たとえば赤外線で観察した場合のガス雲や暗い恒星の様子と、X線で観察した場合のガス雲や暗い恒星の様子などを、選択的に再現することも可能になるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、表面に映像が表示可能なディスプレイと、ディスプレイの映像の光を反射するとともに積層シートからの光を透過することでディスプレイの映像と積層シートからの光を同一視可能にする反射透過板とを備えているので、星空再現装置で再現される星空に関する解説情報をディスプレイの表面に表示することで、観察者が星空再現装置で再現される星空とディスプレイの解説情報を望遠鏡の視野内に同時に視認することが可能になり、観察する天体の近傍に天体の解説情報を表示するなどが可能になり、天体の理解がより進むという効果がある。
またディスプレイの輝度を暗くすることで、観察者が視認するディスプレイ表面の星を、透過光星や印刷発光星で再現される星よりも暗くできるため、より幅広い明るさの星空を再現可能になるという効果がある。
また状況に応じて異なる映像、たとえば赤外線で観察した場合のガス雲や暗い恒星の様子と、X線で観察した場合のガス雲や暗い恒星の様子などを、選択的に再現することも可能になるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、表面に映像が表示可能な第2のディスプレイを備え、その第2のディスプレイは、前記積層シートを観察する観察者の視野の中でその表示が視認可能となる第1の位置と、前記積層シートを観察する観察者の視野からその表示が退避する第2の位置とに選択的に位置づけ可能であるので、前記積層シートに再現される星空を観察する視野を変更することなく、第2のディスプレイの映像を視認できるという効果がある。例えば、第2のディスプレイが第2の位置に位置づけされた状態では、積層シートで再現される星座全体を観察可能であり、その直後に第2のディスプレイを第1の位置に位置づけすることで、第2のディスプレイに表示された天体を観察できるという効果がある。これは特に、高精細ではあるがコストの関係で画面を大きくできない小型の高精細ディスプレイを使用して月や惑星などの映像を表示し、その表面模様などを観察する際に有効である。またその場合は次の構成要素も有すると特に有効である。すなわち観察する視野の一部を第2のディスプレイで再現し、その外側の視野領域の星空を、プロジェクターによる投影映像や、反射透過板を反射して視認されるディスプレイの映像で再現することが可能となる。例えば、木星の本体は第2のディスプレイで縞模様などまで高精細に表示し、第2のディスプレイでは表示領域からはみ出てしまう位置にあるガリレオ衛星などは、プロジェクターやディスプレイで表示するような応用が可能になるという優れた効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、積層シートの背面照射光を生成する透過光用発光素子を備えた略平面状の照明パネルと、照明パネルの輝度を変更可能な照明パネル点灯制御手段を備え、照明パネルが積層シートに近接して配置されることで、積層シートの一側面を異なる輝度で照明可能であるため、星空再現装置を設置する場所が積層シートの背面照射光となる適切な環境照明状態に無い場合でも、適切な照度で積層シートの一側面を照明することができるので、様々な環境の場所で装置を活用できるという効果がある。
また、積層シートの一側面の照明輝度を変更可能であるため、観察者が使用する望遠鏡の光学的な仕様を変更しなくても、照明輝度を高めることで観察される天体の限界等級を高めることが可能である。これはすなわち、より大きな集光力を持つ望遠鏡で観察することと同じ効果があり、高価で大型な大口径の望遠鏡を使用しなくても、安価な小口径の望遠鏡を使用したままで、暗い天体を詳細に観察できるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、積層シートを照明パネルに交換可能に装着する積層シート装着手段を備えるので、望遠鏡を用いて複数の天体を順次観察したい時に、積層シートを交換すれば良く、複数の積層シートそれぞれに照明パネルを備える必要が無くコストが削減できるという効果がある。また、積層シート装着手段に装着した積層シートで再現される星空を観察できるように、望遠鏡の向きやピント位置を設置した望遠鏡の設定を、複数の積層シート毎に変更する必要が無く、効率的な観察が行えるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、前記複数の発光素子と発光素子点灯制御手段がともに固定された基枠と、前記光ファイバーを備えた積層シートを基枠に着脱可能に装着する積層シート装着手段とを備え、積層シート装着手段は、積層シートの装着時に、所定の発光素子と光ファイバーについて発光素子の発光面に対向する位置に光ファイバーの入射面を位置づけするので、複数の積層シートを使用する場合に発光素子と発光素子点灯制御手段を積層シート毎に必要とせず、積層シートを安価に構成できるという効果がある。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、積層シートの背面照射光を生成する透過光用発光素子を備えた略平面状の照明パネルと、照明パネルの輝度を変更可能な照明パネル点灯制御手段を備え、照明パネルが積層シートに近接して配置されることで、積層シートの一側面を異なる輝度で照明可能であるとともに、前記発光素子点灯制御手段または前記照明パネル点灯制御手段は、観察者が観察する透過光星と前記発光素子星の明るさが所定のバランスになるように動作するため、例えば観察者が使用する望遠鏡の集光力を一時的に疑似的に拡大したいと思って透過光星の明るさを明るくした場合でも、透過光星と発光素子星の間で等級のバランスが崩れることが無くそれぞれの星が正しい明るさで再現されるという効果がある。そのため高価で大型な大口径の望遠鏡を使用しなくても、安価な小口径の望遠鏡を使用したままで、暗い天体を詳細に観察できるという優れた効果が得られる。
また第1の実施例の星空再現装置は、前述の効果に加え、次のような効果がある。
すなわち、積層シートの背面照射光を生成する透過光用発光素子を備えた略平面状の照明パネルと、照明パネルの輝度を変更可能な照明パネル点灯制御手段を備え、照明パネルが積層シートに近接して配置されることで、積層シートの一側面を異なる輝度で照明可能であるとともに、前記UVランプ点灯制御手段または前記照明パネル点灯制御手段は、観察者が観察する透過光星と前記印刷発光星の明るさが所定のバランスになるように動作するため、例えば観察者が使用する望遠鏡の集光力を一時的に疑似的に拡大したいと思って透過光星の明るさを明るくした場合でも、透過光星と印刷発光星の間で等級のバランスが崩れることが無くそれぞれの星が正しい明るさで再現されるという効果がある。そのため高価で大型な大口径の望遠鏡を使用しなくても、安価な小口径の望遠鏡を使用したままで、暗い天体を詳細に観察できるという優れた効果が得られる。
本発明の星空再現装置1を、利用シーンが異なる3つの実施形態として、それぞれ第1の実施例、第2の実施例、第3の実施例として実現した。
そのうち第1の実施例は、ライトボックス100に星空シート200を手動で装着して使用する形式の実施例である。また第1の実施例は、望遠鏡を所有する利用者が、星空再現装置1を日中の室内ないしは夜間の屋外で使用して、町内の子どもたちを対象とした疑似的な星空観察会で使用する事例である。また第1の実施例は、本発明が目指す12の目標性能のうち重要な目標性能である目標性能1〜目標性能4を達成する事例である。また第1の実施例は、星空再現装置1の星空シート200の製造方法の事例である。また第1の実施例は、本発明の星空再現装置1の製造方法を実施するためひ必要不可欠な素材の提供方法の事例である。
第2の実施例は、全国に存在する既存の投影式プラネタリウム施設のドーム4内に設置されて使用される事例であり、本出願の特許請求の範囲に記載した発明の実施例である。第2の実施例は、ドラム11に巻き取られて装填された複数の星空シート200がライトボックス100に自動的に装着されることにより、観客が望遠鏡やデジカメを活用して複数の星空を観察する観察プログラムが提供される事例である。第2の実施例では、観察者の過去の天体観察の体験や、本発明の星空再現装置による体験の履歴を記録・参照することで、本発明の効果をさらに高め、観察者に最適な星空観察体験を提供できる方法の事例である。
第2の実施例で観客に提供されるプログラム番組は、第1部から第5部に分かれる。
第1部では、全天の星座の位置関係や星の動きなどを肉眼で観察する星空観察体験が提供される。第2部では、特定の星座を双眼鏡を用いて詳しく観察する星座観察体験が提供される。第3部では、狭い星空領域に点在する星雲や星団などを天体望遠鏡を用いて詳細に観察する星雲星団観察体験が提供される。第3部では、天体望遠鏡を操作して観察する天体を望遠鏡の視野へ導入する体験が指導者に提供される。第4部では、肉眼では捉えられない暗い天体や肉眼では見えない波長の天体を天体望遠鏡に装着したデジタルカメラを用いて写真撮影する写真撮影体験が提供される。第5部では、月や惑星の観察体験が提供される。
第3の実施例は、プラネタリウム施設が存在しない地域の学校等へ出張して星空観察体験を提供するために使用される組み立て式のエアドームタイプの事例である。
本発明の第1の実施例を、図1〜図21を参照に説明する。なお後述する第2の実施例や第3の実施例を説明する他の図面を含め、同じ技術的思想の構成要素は同じ符号で示す。
箱形状のライトボックス100の開口部の端面には、磁石101が複数埋め込まれている。その開口部を覆うように透明板102がライトボックス100に固定されている。透明板102の周辺部を覆う枠形状の鉄製の装着枠103は、磁石101の吸着力によりライトボックス100に吸着される。また装着枠103の形状は、透明板102から出る光が外部に漏れないような形状となっている。
星空シート200は透明板102と装着枠103の間に配置され、磁石101による吸引力により透明板102と装着枠103により挟持される。利用者が装着枠103を外して他の星空シート200が交換できるように、磁石101による吸引力は適度な力に設定される。
ライトボックス100の下側板の内側には本体基板300が取り付けられている。本体基板300には、ワンチップCPU301、LED駆動IC302、電源IC303が備わり、外部電源106により電圧が加えられるとワンチップCPU301はリセットしてあらかじめ内部のROMに記録されたプログラムが動作する。ワンチップCPU301のマイクロプロセッサとしての動作については一般的であるので詳細な説明は省略する。またRAMに記録される変数の構成や、ROMに記録されたプログラムの動作は後ほど説明する。
ライトボックス100の透明板102と対向する内面には、図3に示すように縦8段x横8列にならんだ64個のバックライトLED105が取り付けられている。縦2段x横2列に並んだ4個のバックライトLED105からなる正方形領域のユニットは、図中a方向に4列、図中b方向に4段の合計16ユニット設けられている。この説明では64個のバックライトLED105は、ユニットのa方向の1〜4の数値とb方向の1〜4の数値とユニット内の連番1〜4の数値を用いて「LED123」のように表示する。
またバックライトLED105は、本体基板300と接続される。ワンチップCPU301は、LED駆動IC302によって各ユニットに含まれるバックライトLED105をPWM制御方式により輝度を変更可能に点灯駆動する。ワンチップCPU301は、16ユニットの明るさを別々のタイミングで増減させることで、自然の星の瞬きのように再現したり、一部のユニットのみを明るく点灯することでハイライト表示を行う。なお、本実施例ではバックライトLED105とLED駆動IC302によってバックライトを構成しているが、面状に発光する有機EL素子と有機EL駆動ICでバックライトを構成してもよい。その場合、有機EL素子が面状に発光するために、有機EL素子と透明版102との距離をほぼ密着できるくらい狭めることが可能となり、その結果ライトボックス100の厚さを薄くでき、観測に使用しない時は室内のインテリアとして壁に掛けて置くという利用にも向くという効果がある。
またライトボックス100上面から突出するランプアーム107の先端には、複数の紫外線LEDからなるUVランプ109が固定されている。UVランプ109は星空シート200の星の再現領域全体(U1)を広く照射する1個の広角UVランプ(UV1)と、星空シート200の16の領域(U11〜U44)をそれぞれ個別に照射する16個の狭角UVランプ(UV11〜UV44)で構成されている。星空シート200の16の領域(U11〜U44)は、縦4段x横4列の異なる領域、すなわち、図中a方向に4列、図中b方向に4段に分割され、a方向の1〜4、b方向の1〜4の数値を用いてU11〜U44と表記される。
ワンチップCPU301は、広角UVランプ(UV1)と狭角UVランプ(UV11〜UV44)をLED駆動IC302によってPWM制御によってそれぞれ点灯制御するので、星空シート200の表面全体および16の領域はそれぞれ所定の照度で紫外線が照射される。なお、バックライトLED105のユニットの領域と、狭角UVランプの各照射領域は、正面から見て同じ領域に設定されている。なおこれらの紫外線LEDは可視光線の漏えいをカットするための可視光カットフィルターを備えると、星空がむやみに明るくならずに望ましい。
またランプアーム107の先端には赤外線センサー108(IR)が固定されている。複数の入力キー(「0」〜「9」、「+」、「−」)を備える赤外線リモコン111から発せられる赤外線信号は、赤外線センサー108に受信されると、本体基板300のワンチップCPU301に入力され、操作したキーに対応した所定の動作が起動されるようになっている。
またランプアーム107の先端には、星空シート200全面をうっすらと照射することで都会の空の明るさを再現するための光害ランプ110(LED0)が固定されており、バックライトLED105と同様に、本体基板300に接続されてワンチップCPU301とLED駆動IC302によって点灯制御される。
またライトボックス100の側面には、輝度調整ボリューム304が取り付けられている。輝度調整ボリューム304は本体基板300に接続されてワンチップCPU301に備わるADコンバーターを介してその設定値がワンチップCPU301に入力される。
また周辺環境の明るさを測定する照度センサー307がライトボックス100の側面に固定されている。照度センサー307は本体基板300に接続されえワンチップCPU301に備わるADコンバーターを介してその測定値がワンチップCPU301に入力され、昼間での不要な動作を防止する等の動作に反映できるようになっている。
本体基板300の下面には、8個の白色チップLED305(LED1〜LED8)が取り付けられている。ワンチップCPU301は白色チップLED305を、LED駆動IC302によってそれぞれ独立にPWM制御して点灯制御する。白色チップLED305の発光面はライトボックス100下面に形成されたLED開口窓104から外側へ露出している。
また本体基板300の下面には4本のコンタクトプローブ306a〜306dが取り付けられている。コンタクトプローブ306aは+5V電源に接続される。コンタクトプローブ306bはグランドに接続される。コンタクトプローブ306cはワンチップCPU301のデータ通信用のSD信号に接続される。コンタクトプローブ306dはワンチップCPU301のデータ通信用のSA信号に接続される。コンタクトプローブの先端は白色チップLED305と同様にライトボックス下面に形成されたLED開口窓104から外側へ露出し、星空シート200が装着された際に、後述するコンタクト基板206のコンタクトパッド209a〜209dと接触して、ワンチップCPU301が、不揮発性メモリー208に記録された星空シート200に関係する情報を読み込む。
ここで白色チップLED305は発光素子に相当し、またワンチップCPU301とLED駆動IC302の構成ならびに後述するプログラムによって実現される機能は、発光素子点灯制御手段に相当する。
これらUVランプ109はUVランプに相当し、ワンチップCPU301とLED駆動IC302の構成ならびに後述するプログラムによって実現される機能は、UVランプ点灯制御手段に相当する。
またライトボックス100は照明パネルに相当し、特にバックライトLED105は透過光用発光素子に相当する。またワンチップCPU301とLED駆動IC302の構成ならびに後述するプログラムによってバックライトLED105の点灯制御を行う機能は、照明パネル点灯制御手段に相当する。
また、本体基板300と白色チップLED305を備えたライトボックス100と透明板102による構成は、基枠に相当する。また磁石101と装着枠103とライトボックス100に形成されたLED開口窓104による構成は、積層シート装着手段に相当する。
次に図5から図10を用いて星空シート200について説明する
本実施例の星空シート200は、図8に示すように冬の代表的な星座であるオリオン座の星空を再現する。図9に示すオリオン大星雲は天体望遠鏡で観察する特定の領域として、解説プログラムでも特に取り上げられる。
星空シート200はライトボックス100に着脱可能である。利用者は、再現する星空の領域が異なる複数の星空シート200の中から一つを選択して、ライトボックス100に装着して使用する。実施例ではオリオン座の星空シートについて説明するが、他の星座の星空シートでも同様である。
星空シート200は、透明板102に対向する方向を外側、その反対側の観察者側を内側とする。以降の実施例の説明でも同様である。
星空シート200の下部には、複数のプラスティック光ファイバー230(f1〜f8)の一端部が集まるファイバー集積部205が形成されている。ファイバー集積部205には、弾性を有するゴム性接着剤207を介してコンタクト基板206が固定されている。コンタクト基板206には、光ファイバー挿通孔212が複数形成されている。光ファイバー挿通孔212には、プラスティック光ファイバー230の端部が挿通固定される。
本実施例のオリオン座の星空シートでは、f1〜f6のプラスティック光ファイバーは、オリオン座を構成する0.18等星〜2.75等星の主要な恒星を再現するために使用される。このうちf3は途中の分岐部231で3本のプラスティック光ファイバーf3a〜f3cに分岐し、オリオン座のベルト付近にあるほぼ同等な明るさの3つ星を再現する。
f1〜f6のプラスティック光ファイバーは、ファイバー集積部205からそれぞれの星の位置まで星空シート200の外側面に敷設される。そしてそれぞれの星の位置で星空シート200に形成された貫通孔を挿通して星空シート200の内側へ出される。そしてその端面が内側へ露出するように貫通孔の外側の部分で透明接着剤によって固定される。
f7のプラスティック光ファイバーは、オリオン座の形状を示す星座線の表示のために使用される。またf8のプラスティック光ファイバーは天体望遠鏡で拡大して観察する特定領域を示す領域線の表示のために使用される。
プラスティック光ファイバー230はガラス製の光ファイバーと異なり、線状の導光部から一定の割合で光が漏れ出る。表面に傷をつけるような加工を施すことで、その漏れ出る割合を調整できる。恒星を再現するために使用するf1〜f6のプラスティック光ファイバーについては漏れ出る量をゼロとする。発光ラインとして使用するf7、f8のプラスティック光ファイバーについては漏れ出る量を増やして線状で光るようにする。
f7、f8のプラスティック光ファイバーは、星空シート200の内側を敷設された後、貫通孔を挿通して星空シート200の内側へ出されて、所定のルートで敷設された後、再び貫通孔を挿通して星空シート200の外側面へ戻る。こうした敷設を繰り返すことで、非連続な線分も再現できる。最後の端面は目立たないように星空シート200の外側へ戻しておく。
また、透明樹脂で作られた星フィルター210がコンタクト基板206の下面に固定されている。星フィルター210の表面の、光ファイバー挿通孔212の直下の位置には、各プラスティック光ファイバー230で再現する星や星座線等のラインの色に対応したフィルター印刷211が施されている。
星空シート200がライトボックス100に装着された際には、ファイバー集積部205は星空シート200の面に直角方向に折り曲がり白色チップLED305の発光面と装着枠103の間に保持される。コンタクト基板206の外周部はライトボックス100下面のLED開口窓104の壁面に嵌り、位置決めされる。
その結果、複数のプラスティック光ファイバー230のそれぞれの端面は、白色チップLED305の発光面と対向する位置にそれぞれ位置決めされる。また本体基板300のコンタクトプローブ306a〜306dの先端が、コンタクト基板206のコンタクトパッド209a〜209dとそれぞれ接触し、電気接点を構成する。
このような構成になっているため、星空シート200がライトボックス100に装着され、白色チップLED305が点灯すると、白色チップLED305の発光面から出た光は、星フィルター210のフィルター印刷211を通過して着色された後、光ファイバー挿通孔212に固定されたプラスティック光ファイバー230の端面に入射する。入射した光は光ファイバー230によって導光され、f1〜fについては星座の星の位置でプラスティック光ファイバー230の端面から射出されて点状の発光素子星として観察され、f7やf8については星空シート200の内側を敷設している部分で漏れ出る光により線状の発光ラインとして観察される。
星空シート200の積層シート220は図5の一部断面図に示すような積層構造を有し、内側から、第1紙層201、アルミ箔層202、第2紙層203、第3紙層204が、それぞれ不燃性の接着剤で接合されている。
第1紙層201、第2紙層203、第3紙層204は、それぞれ水酸化アルミニウムが混抄されることで自己消化性を有する約0.15mmの厚さの白色の不燃紙である。本実施例では、光の透過係数が約16%で、等級で示すと2等級の減光特性を有する。このうち少なくとも第1紙層201は、紫外線によって発光する蛍光性の物質を含まない紙が望ましい。また、アルミ箔層202は、光の透過率が0%で完全に光を遮断可能なように、厚さ9マイクロメートル程度の厚さを有するアルミ箔が望ましい。
この第1紙層201、アルミ箔層202、第2紙層203、第3紙層204は、シートに相当する。また第1の実施例は、N=4の場合に相当する。
積層シート220には図8に示すように、再現しようとする星空(実施例ではオリオン座)に含まれる星のうち3〜4等星(H1)の星から8〜9等星(H6)の星を再現するために、多数の穴が形成されている。これらの穴は、第1紙層201、アルミ箔層202、第2紙層203、第3紙層204のうち、いずれの層を貫通しているかによって、3種類の穴(群)に分類される。具体的には、3〜4等星の穴(H1)と4〜5等星の穴(H2)が第3群、5〜6等星の穴(H3)と6〜7等星の穴(H4)が第2群、7〜8等星の穴(H5)と8〜9等星の穴(H6)が第1群に属する。このうちH1、H3、H5はそれぞれ直径0.3mmの穴、H2、H4、H6はそれぞれ直径0.19mmの穴である。この穴の面積比は2.51倍であり、同一群に属する穴のうち、直径の違いにより1等級の差が発生する。
図10は、3つの群に属するH1、H3、H5の穴が、どのような構造を有するのかを示す積層シート220の断面図である。
第1群の穴212は、第1紙層201とアルミ箔層202を貫通している。第2群の穴213は、第1紙層201とアルミ箔層202と第2紙層203を貫通している。第3群の穴214は、第1紙層201とアルミ箔層202と第2紙層203と第3紙層204を貫通している。第2紙層203の表面には、第1群の穴212の軸線が通過する位置を中心に、第1群の穴212を覆うように所定の色の第1フィルター印字215が形成される。第1フィルター印字215は、第1群の穴212の軸線に沿って通過する光線に所定の色を付与する。
同様に、第3紙層204の表面で、第2群の穴213の軸線が通過する位置を中心に、第2群の穴213を覆うように所定の色の第2フィルター印字216が形成される。第2フィルター印字216は、第2群の穴213の軸線に沿って通過する光線に所定の色を付与する。
同様に、第3紙層204に開口した第3群の穴214を覆うようにフィルターシール217が貼り付けられている。フィルターシール217は、第3群の穴214の軸線に沿って通過する光線に所定の色を付与する。
次に、これらの穴の形成方法について説明する。
第1群の穴212は、第1紙層201とアルミ箔層202が接合された後に、図示しない穴あけ加工装置により、第1紙層201ないしはアルミ箔層202側から、所定の太さの加工針が挿入または貫通されることで形成される。
また、第2群の穴213は、第1群の穴212が加工され、第2紙層203がアルミ箔層202に接合された後に、穴あけ加工装置により、第1紙層201ないしは第2紙層203側から、所定の太さの加工針が挿入ないしは貫通されることで形成される。
また、第3群の穴214は、第2群の穴213が加工され、第3紙層204が第2紙層203に接合された後に、穴あけ加工装置により、第1紙層201ないしは第3紙層204側から、所定の太さの加工針が挿入ないしは貫通されることで形成される。
ここで、第1群の穴212、第2群の穴213、第3群の穴214それぞれの穴が、再現する星の色に基づいて複数の色に分類されるとともに、それぞれの穴群の加工時に、同じ色の穴がすべて形成された後に、第1紙層201から着色塗料を塗布することで、それぞれの穴群の穴のうち、同色の穴に同色の着色塗料が充填されるようにしてもよい。
また、第3群の穴214が加工された後に、光透過性を持ち、結露や酸素から表面を保護する保護機能を有した保護塗料を、第1紙層201の表面から塗布してもよい。この保護塗料は、一部が穴の中に進入して充填され、乾燥後に光を導く導光経路を形成し、各層の接着が不十分であった時に層が分離するのを防止したり、あけられた穴が時間とともに縮小するのを防止して星の明るさを一定に保つ効果などを奏する。
バックライトLED105から発せられた光は、第3紙層204の表面に達し、第1群の穴212の軸線、第2群の穴213の軸線、第3群の穴214の軸線に沿って進入し、連通する穴ないしは導光経路を通過して、第1紙層201に開口する穴から射出され、観察者の眼に届く。
この際、それぞれの穴を通過した光は、紙やフィルターなどの要素を通過する際に、減光・着色作用が働き、観察者の眼には、それぞれ明るさや色の異なる透過光星として視認される。
すなわちH1による透過光星を基準とした場合、H2は直径の差により+1等級、H3はH1と同じ直径であるが第3紙層204による減光で+2等級、H4は直径の差と第3紙層204による減光で合計+3等級、H5はH1と同じ直径であるが第2紙層203と第3紙層204による減光で+4等級、H6はH5に直径の差が加わり合計で+5等級の減光となる。
ここで、上記実施例の積層シート220は、N=4の場合を示す実施例であり、第1群の穴212は、同様にL=2(第1紙層201とアルミ箔層202の2層)の場合のL層透過孔に該当し、第2群の穴213は、M=3(第1紙層201とアルミ箔層202と第2紙層203の3層)の場合のM層貫通透過孔に該当する。また第1群の穴212の軸線に沿って通過する光はL層通過光線に該当し、第2群の穴213の軸線に沿って通過する光はM層通過光線に該当する。
なお本発明は、この実施例で採用したN,L,Mの値に限定されるものではない。例えばN=6とすることで、第5紙層まで使用し、第1群から第5群までの透過光星を構成し、より等級幅の広い星を再現することも可能である。
また、この実施例では、内側から第1紙層201、アルミ箔層202、第2紙層203、第3紙層204で構成されているが、これに限定されるものではない。
図54は積層シート220の第2の実施態様を示す断面図である。積層シート220は、内側から、アルミ箔層221、第1紙層222、第2紙層223、第3紙層224の構造を有する。アルミ箔層221はエッチング技術等を用いてあらかじめ微細な透過孔225が形成されると穴あけ工程を省略できて効率的である。またアルミ箔層221は、透明PETフィルムとアルミ箔のラミネート素材であっても良い。エッチングによってアルミ箔に透過孔が形成されれば、光は透過し、透過孔として作用する。
アルミ箔層221にエッチングで微細な透過孔225を形成させるには、複数の実施方法が可能である。第1の方法は、アルミ箔層221の表面に、アルミと化学反応してアルミを除去できるエッチング物質を含む液体をインクジェットプリンターで印刷し、印刷した部分のアルミを除去することで透過孔225とする方法である。また第2の方法は、アルミ箔層221の表面を、エッチング物質に反応しないレジスト物質を塗布してレジスト層を形成し、レジスト物質と化学反応してレジスト層の一部を除去できる物質を含む液体をインクジェットプリンターで印刷し、印刷した部分のレジスト層を除去し、アルミ箔層221をエッチング物質を含む液体に浸してレジスト層が除去された部分のアルミを除去することで、微細な透過孔225を形成する方法である。
エッチング技術でアルミ箔に透過孔225を形成する方式では、機械的に穴を開けるのではなく、エッチング工程で穴を形成できるので、微細な穴を多数形成するのに適している。この例は、積層シート220において、N=4の場合を示す実施例であり、穴225は、L=1(アルミ箔層221の1層)の場合のL層透過孔に該当し、穴226は、M=2(アルミ箔層221と第1紙層222の2層)の場合のM層貫通透過孔に該当する。また穴225の軸線に沿って通過する光はL層通過光線に該当し、穴226の軸線に沿って通過する光はM層通過光線に該当する。
図55は積層シート220の第3の実施態様を示す断面図である。積層シート220は、内側から、第1紙層229、アルミ箔層230、第2紙層231、第3紙層232で構成される。アルミ箔層230にはエッチング技術等を用いてあらかじめ微細な透過孔233が形成されていても良い。この場合、シートによる減光を最も多く受ける穴233を通過する光線は、内側まで貫通する他の透過孔234を通過する光線などと異なり、穴233を通過した後に第1紙層229により散光されるので、恒星状には観察されない散光状の星雲のような天体を再現する際に有効である。
なお本実施例の積層シート220は上記の実施態様を含め、シートに光が全く通過しないアルミ箔(202、221、230)によって星空の背景の暗い部分を再現している。しかし本発明はこれに限定されず、星空の背景の暗い部分を再現するためにアルミ箔以外の金属箔を採用しても良いし、光の透過率が充分高い黒色の印刷を表面に施したシートであっても良い。
図56は積層シートの第4の実施態様を示す断面図である。この実施態様は、光の透過率が5%程度と充分低い黒色の印刷を表面に施したシートを用いる場合の例である。積層シート220は、内側から、第1紙層235、第2紙層236、第3紙層237、第4紙層238で構成される。第1紙層235の内側表面には第1の遮光印刷235aが施され、第1紙層235の外側表面は第2の遮光印刷235bが施され、第2紙層236の内側表面には第3の遮光印刷236aが施され、第2紙層236の外側には第4の遮光印刷236bが施されている。積層シート220全体の透過率は、シートの素材の透過率(16%)に加え、4層の異なる印刷表示の印刷面が加わる。
図57は積層シート220の第4の実施態様における、室内光で観察した際の各要素の表示状態を示す図である。図58は積層シート220の第4の実施態様における、ライトボックス100の光による透過光によって観察した際の各要素の表示状態を示す図である。図59は、図57と図58の表示態様になるように設定した、第1の遮光印刷235a〜第4の遮光印刷236bにおける各要素の透過率と第1紙層235〜第5紙層238の透過率と、室内光で観察した際の各要素の反射率とライトボックス100の光による透過率を示す図である。なおここでは反射率と透過率は等しいとする。
第1の遮光印刷235aの印刷の反射率は、図59に示すように、室内光で観察した際に、銀河2355や散光星雲2356のような非恒星状の天体や星座線2351や星名2350のような説明情報や山2357やホテルの窓2358などの地上の風景などが図57に示すような態様で視認されるように定められている。
第2の遮光印刷235bや第3の遮光印刷236aや第4の遮光印刷236bの透過率は、図59に示すように、室内光を消して観察した際に、積層シート220の背面を照射する光線が第1紙層235〜第4紙層238の素材の透過率と減光と第1の遮光印刷235a〜第4の遮光印刷236bの印刷による透過率の積からなる合計の透過率が、図58に示すような態様で視認されるように定められている。
具体的には、室内光を消してバックライトで観察した際に、背景の空2352の部分の透過率を0.00000002程度と十分暗くなるように設定する。続いて、星名2350や星座線2351や輝星2353の部分は、背景の空2352と同様の透過率になるように設定する。これにより、透過光で観察した際に、これらの要素は背景の空2352に埋もれて視認されなくなる。
次に、銀河2355と散光星雲2356の部分の透過率は、背景の空2352の約6倍程度に設定し、わずかに光って視認されるように設定する。また、ホテルの窓2358は、銀河2355の約2倍の明るさで視認されるように設定する。また山2357の部分は、背景の空2352よりも暗く設定され、銀河2355や星空の背景2352を背景に、漆黒の山2357が存在する様子が再現される。
実施例では第1の遮光印刷235a〜第4の遮光印刷236bの透過率に関する調整を行う事例を示したが、色についても、第1の遮光印刷235aの反射光による着色と、積層シート全体の透過光による着色をそれぞれ調整するように各印刷の色を選択できることは言うまでもない。
また実施例では第1紙層235と第2紙層236の第1の遮光印刷235a〜第4の遮光印刷236bの透過率に関する調整を行う事例を示したが、第2紙層を使用せず、第1紙層の第1の遮光印刷235aで反射光による表示を行い、第2の遮光印刷235bを調整することで透過光による表示を行うようにしても良い。
また積層シート220の第4の実施態様において、第1群の穴は、第1紙層235と第2紙層236が接合された後に第1紙層235と第2紙層236を貫通するように形成される。また第2群の穴は、第1群の穴が形成された後に第3紙層237が接合された後に、第1紙層235と第2紙層236と第3紙層237を貫通して形成される。また第3群の穴は、第2群の穴が形成された後に第4紙層238が接合され、その後に第1紙層235と第2紙層236と第3紙層237と第4紙層238を貫通して形成される。
したがって積層シート220の第4の実施態様は、本発明の第1の実施例と同様に、透過光星により幅広い等級の星を再現できるという作用効果をそのまま有する。さらに透過光星とともに、非恒星状天体である銀河や散光星雲などの天体や山などの風景の様子を観察者が同時に観察できる。そのため、より本物に近い星空が再現できるという優れた効果がある。
このように積層シート220の第4の実施態様は、日中は室内の可視光線の反射光によって美しい星空の写真として鑑賞でき、夜間に室内が暗くなった際にはバックライトによる透過光による美しい星空を鑑賞できるようなすぐれた星空再現装置1を実現できる。また本発明の第1の実施例と同様に、発光素子星や後述する印刷発光星を備えるようにすれば、さらに幅広い等級の星を再現できることは言うまでもない。
図60は、積層シート220の第5の実施態様を示す図である。シートの積層数が多くなると、透過孔の深さが直径に比較して大きくなる。すると積層シート220の内側から観察する角度が変化すると、透過光星の輝度が変化する「指向性」の影響が大きくなるという課題がある。そこで、一定以上の層数を貫通する透過孔を貫通加工した後に、透過孔の長さに等しい光ファイバー239を挿入固定する。すると光ファイバー239の外側の端面に入射した光は光ファイバー239により内側の端面へ導かれるので、内側から観察する際に指向性が少なくなるという効果がある。
次に星空シート200の表面に印刷プロセスで形成される印刷発光星について説明する。
積層シート220には図8に示すように、再現しようとする星空(実施例ではオリオン座)に含まれる星のうち9〜10等星(U1)の星から14〜15等星(U6)の星を再現するために、第1紙層201の内側の表面に、紫外線により発光する蛍光インク218により微細な点が印刷されており、UVランプ109から発せられた紫外線を受けて光ることで印刷発光星として観察できるようになっている。
これによって、積層シート220の内側に位置する観察者は、白色チップLED305からの光により観察される発光素子星(f1〜f6)と、積層シート220の外側を照射するバックライトLED105からの光により観察される透過光星(H1〜H6)と、UVランプ109の紫外線により発光する印刷発光星(U1〜U6)とを、それぞれ観察できるようになっている。
なお実施例では積層シート220の第1紙層201の材質は白色の不燃紙による例を示したが、これに限定されるものではなく、不燃紙ではなくても良いし、黒色のシート素材を用いてもよいし、白色のシート素材の内側表面に黒色印刷を施しても良い。後述する積層シート220の第2の実施例のように印刷をアルミ箔層に施すようにしても良い。この際、蛍光インク218の印刷性能を高めるためにアルミ箔面にコロナ処理を行うのが望ましい。また同様に、アルミ箔に蛍光インク218で印刷を施した後に、透明の保護塗料を施すと、乾燥した後の蛍光インク218が剥離することを防止できる。
このようにすると、以下のような効果が生じる。すなわち、UVランプの光にはわずかながら可視光成分が含まれるため、照射される積層シートの表面が可視光によって照らされて、本来真っ暗であるはずの星以外の「空」の部分がわずかに光ってしまい、微細な星が見えなくなる。同様に、紫外線によって発光する成分があると紙自体が発光してしまい、微細な星が見えなくなる。しかし積層シート220の第1紙層201の表面が黒色であると可視光成分による「空」の部分の輝度上昇を減らすことができる。またUVランプ109の紫外線の反射光が少なくなり観察者の妨げにならない。また反射した紫外線によって観察者の着衣や付帯施設が不要に発光することを防止できる。印刷をアルミ箔に施した場合も、紫外線によって発光しないので、同様の効果が得られる。
また実施例では積層シート220の第1紙層201の内側の表面に印刷発光星を印刷したが、これに限定されるものではなく、例えば着脱可能な光透過性シートの表面に印刷発光星を印刷するとともに、印刷発光星の再現が必要な時に積層シート220の観察者側表面に装着ないしは恒久的に固定して使用するようにしてもよい。こうすることで、積層シート220の第1紙層201の表面に印刷発光星の印刷を行わなくて良いので、第1紙層201の表面に可視光線で視認できる星座絵等の印刷を施すことが容易となり、天体観察として使用しない日中の間に、星空再現装置をインテリアとして使用する際に有用である。
この蛍光インクは、インクジェットプリンターによって印刷される。インクジェットプリンターは現在既知の技術によるものであるため詳細の説明は省略するが、それぞれ異なるインクが充填可能な複数のインクカートリッジと、それぞれのインクカートリッジのインクを微小な液滴として吐出する複数の吐出ノズルを備えたインクヘッドと、シートの搬送機構と、シートの搬送方向に直交する方向にインクヘッドを搬送するインクヘッド搬送手段とを有し、シートを搬送するとともにインクヘッドを移動しながら所定のタイミングで複数の吐出ノズルの中から1以上の吐出ノズルからインクの液滴を吐出し、その吐出された液滴をシートに着弾させて印字を形成することで、シートの任意の位置に、任意のインクの組み合わせで印字が可能になっている。本実施例では最大21個のインクカートリッジとインクヘッドを備えたインクジェットプリンターを使用する。
続いて本実施例の第1の印刷発光星の印刷方式について説明する。
図13に示すように、再現する星の等級種類(9〜10等星(U1)、10〜11等星(U2)、11〜12等星(U3)、12〜13等星(U4)、13〜14等星(U5)、14〜15等星(U6)の6段階)と星の色(スペクトル型で、O型、B型、A型、F型、G型、K型、M型の7種類)に対応してそれぞれの蛍光インクと印刷サイズで印刷される。
すなわち、印刷発光星の印刷方式で使用する蛍光インクは、再現する星の等級を明るい方から2等級段階ずつに3種類、また星の色をそれぞれ7種類、合計で21種類の蛍光インクが使用される。また、印刷のサイズは、同一のインクで再現する星の明るさのうち、明るいものを0.3mmの直径で、暗いものを0.19mmの直径で印字することで、同一のインクで1等級ことなる2つの明るさの星を再現することができるようになっている。
従来技術では、紫外線を受けると光の3原色に対応した赤、緑、青でそれぞれ光る3種類の蛍光インクの組み合わせにより、輝度や色の異なる印字を行っている。一方、本発明に掛る星空再現装置においては、できる限り微小の点状の印字を形成することが必要であり、インクヘッドから吐出される最少液滴量での印字を採用したい。
しかしながら、星の色の微妙な違いを光の3原色の蛍光インクで再現するためには液滴量を微小な範囲で調整する必要があるが、最少液滴量においてそれを行うことは困難である。また、複数の色の蛍光インクの液滴を同一の場所に正確に着弾させないと、混合される前の原色の光が観察されて本来の星とは異なる表現になってしまうが、最少液滴量の複数のインクヘッドの液滴をずれなく着弾させることは技術的に困難である。このように、従来のインクジェットプリンターの技術を星空再現装置の星の再現に活用することは、さまざまな課題がある。
本発明では、再現する星の等級や色に対応して用意された複数の蛍光インクの中から、それぞれの星に対して1種類の蛍光インクで印字することが可能であるため、インクヘッドの最少液滴吐出量で印刷してもこうした課題が発生しないという効果がある。これは、通常の画像印刷と異なり、点状の印字が中心となる本発明に掛る星空再現装置においては特段の効果を奏すると言える。
次に第2の印刷発光星の印刷方式について説明する。
ここでは、印刷発光星が、それぞれ異なる輝度や色で光る複数種類の蛍光インクと、所定の波長の色を吸収することで透過光ないしは反射光に色変化や濃度変化を付与する複数の吸収インクを備えるインクジェットプリンターによって、蛍光インクと吸収インクの組み合わせで印字されるようになっている。
具体的には、図14に示すように、基準の「白色」として定めるF型の星の色で光る、輝度が異なる3種類の蛍光インクと、蛍光インクの光を吸収することでそれぞれ、O型、B型、A型、G型、K型、M型の星の色となるように色を付与する6種類の吸収インク、合計9種類のインクを備える。吸収インクは顔料タイプではなく、染料タイプのインクが望ましい。
そして図14に示すように、再現する星の等級と星の色に対応して、使用する蛍光インクと吸収インクと、それぞれの印字のサイズが選択されて印字される。
この方式では、従来の技術と同様に複数のインクヘッドから吐出される液滴により印字を形成するが、印刷発光星の光を与える蛍光インクは単一のインクであるため従来のような課題は発生しない。すなわち、蛍光インクの印字と吸収インクの印字が着弾位置のずれによって多少ずれたとしても、吸収インクの作用がアナログ的に減少するだけで、従来のような原色の光が観察されるような大きな弊害は発生しない。この課題を解決するために吸収インクによる印字サイズをやや大きめに設定すれば、吸収インクの作用は蛍光インクによる印字に対して一様に作用させることが可能である。この場合でも、吸収インクは光を発しないので、観察される星のサイズは蛍光インクにより形成される印字サイズで定まるので、第1の印刷発光星の印刷方式と同様に、単一インクによる最少液滴による微細な点状の星を再現できるという効果を維持できる。
さらに、第1の印刷発光星の印刷方式が21種類のインクカートリッジが使用できるインクジェットプリンターが必要であるのに対して、第2の印刷発光星の印刷方式は9種類で良く、必要になるインクの種類が削減できるという顕著な効果がある。
なお、第2の印刷発光星の印刷方式は、上記方式のほか、蛍光インクと吸収インクの組み合わせを、O型、B型、A型、F型、G型、K型、M型の星の色で発光する7種類の蛍光インクと、蛍光インクの光を広い波長域に渡って均一に減光するいわゆる減光フィルターの効果を与える2種類の濃度からなる吸収インクとしても良い。この場合でも、図13、図14に示す方式と同様な効果を奏することは言うまでもない。
また、第2の印刷発光星の印刷方法は、上記方式の他、蛍光インクを装着した第1のインクジェットプリンターと、吸収インクを装着した第2のインクジェットプリンターを使用して、同一のシートに対して印刷を行う方式でも良い。この場合、蛍光インクと吸収インクの着弾位置に多少ずれがあっても、吸収インクによる印字サイズをやや大きめに設定すれば問題がないことはすでに説明した通りである。
次に、本実施例の積層シート220、具体的には図10に示す構造を有する積層シート220を製作する方法について図63のフローチャートに基づき説明する。
まずS500において製作者は、再現する星に関して、それぞれの星の恒星基礎データ「StarInfo」、すなわち位置データ「StarPos」と明るさデータ「StarMag」と色データ「StarColor」を既存のスターカタログなどから取得し、S501へ進む。
ここで、恒星基礎データ「StarInfo」はスターカタログから取得する以外にも、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡などの観測結果の画像や天文マニアが撮影した天体写真データから画像処理によって恒星状の星像を抽出し、その位置「StarPos」とその画像内での相対的な明るさにその画像内でのベースの星の等級を加えて算出した星の明るさ「StarMag」と、色「StarColor」を抽出することで、恒星基礎データ「StarInfo」を取得するようにしてもよい。
この場合、抽出された恒星基礎データに基づき、画像処理の手法により元画像からその恒星像を差し引くことで、恒星状の天体として認識されない銀河の光芒や散光星雲などの非恒星状天体画像「NebraImage」を抽出することも可能である。この抽出方法は天文学の分野では通常に実施されている既存技術なので詳細は省略する。こうして得られた非恒星状天体画像「NebraImage」が得られた場合は、以下に示す積層シート220の製作方法に加え、非恒星状天体画像「NebraImage」が示す明るさと色で発光するように、第1紙層201の表面にUVインクで印刷する工程を追加してもよい。
また、積層シート220を図56に示す第4の実施態様の構造とするとともに、第1の遮光印刷235aと第2の遮光印刷235bと第3の遮光印刷236aと第4の遮光印刷236bに施す印刷に関して、非恒星状天体画像が示す明るさと色で透過光が観察されるように、背景からの光に減光率と着色を与えるような印刷を施すような工程としてもよい。
次にS501において製作者は、積層シート220の透過光星仕様情報「SheetInfo」を取得し、S502へ進む。ここで透過光星仕様情報「SheetInfo」は、積層するシートが貫通透過孔に及ぼす減光率に関連したシート等級情報「SheetMag」、シートに形成される貫通透過孔の穴径により定まる等級に関連した穴径等級情報「HallMag」、星の色に対応して使用されるフィルター印刷の色に関連したフィルター色情報「FilterColor」と、それぞれの色のフィルター印刷が透過光に及ぼす減光率に関連したフィルター等級情報「FilterMag」などからなる。具体的には次のような透過光星仕様情報となる。
すなわち、第2紙層と第3紙層のシート等級情報「SheetMag(第2紙層)」「SheetMag(第3紙層)」として同じ値で+2等級であり、穴の直径番号「DiaNo」に対する穴径等級情報「HallMag(DiaNo)」は、最も大きな穴の直径番号「DaNo=MaxDiaNo=0」である直径0.3mmの貫通透過孔について「HallMag(0)」が0等級と基準となり、次に小さい直径の穴である直径番号「DiaNo=1」である直径0.18mmの貫通透過孔に対しては「HallMag(1)」として+1等級である。また、最も小さい直径の穴で再現する場合の直径による減光等級である、最大穴減光等級「HallMagMax」が+2として指定される。同様にフィルター色情報とフィルター等級情報は、星の色をスペクトル型で表現した場合にそれぞれ「FilterColor(スペクトル型)」ならびに「FilterMag(スペクトル型)」であり、特に「FilterMag(スペクトル型)」に関しては、O型、B型、A型、F型、G型、K型、M型それぞれに対して、FilterMag(O型)=0.1等級、FilterMag(B型)=0.08等級、FilterMag(A型)=0.05等級、FilterMag(F型)=0等級、FilterMag(G型)=0.05等級、FilterMag(K型)=0.1等級、FilterMag(M型)=0.2等級である。
なおこの値はあくまで説明のための例示であり実際は、使用するフィルター印刷に応じた適切な値が設定されることは言うまでもない。
次にS502において製作者は、その積層シート220に形成される複数の穴群に対して、それぞれの貫通透過孔に対して減光作用を及ぼすシートによる減光率、すなわち貫通透過孔を加工した後に積層されるシートによる減光率の和「GunMag」を計算し、S503へ進む。
具体的には、実施例の場合、第1群の穴には第2紙層と第3紙層が減光作用を及ぼすので、「GunMag(第1群)=SheetMag(第2紙層)+SheetMag(第3紙層)=4等級」となり、同様に、第2群の穴には第3紙層が減光作用を及ぼすので、「GunMag(第2群)=SheetMag(第3紙層)=2等級」、第3群の穴には、シートによる減光作用はなく、シールによる着色による減光のみであり、これは「FilterMag」で考慮されるので、「GunMag(第3群)=0等級」となる。
次にS503において製作者は、透過光星最少等級「MagMin」に、その積層シート220の透過光星として再現する最も明るい星の恒星基礎データにおける明るさを指定し、S504へ進む。今回の実施例では、「MagMin=3等級」とする。
次にS504〜S510のステップにおいて製作者は、恒星基礎データ「StarInfo」と透過光星仕様情報「SheetInfo」に基づき、それぞれの星を透過光星として再現するために必要な、透過光星加工情報「WorkInfo」のうち、貫通透過孔が貫通するシートの積層情報「SheetStack」と貫通透過孔の穴径「HallDia」とフィルター印刷の色「FilterColor」を求める。貫通透過孔の加工位置は、「StarPos」から一意に求められるので説明は省略する。
具体的には、S504において製作者は、処理する星を1つ選択し、その星の色「StarColor」に基づいて、その色のフィルター印刷の色「FilterColor」とフィルター等級情報「FilterMag」を求め、S505へ進む。例えばその星の色が「K型」であった場合、フィルター印刷の色は「FilterColor(K型)」であり、フィルター等級情報は「FilterMag(K型)=0.1等級」として求められる。
次にS505において製作者は、その星の明るさからフィルター等級情報を引いて、その星の修正等級「StarMag2」に設定して、S506へ進む。
具体的には、選択した星の明るさが「StarMag=6等星」の場合、StarMag2=StarMag−FilterMag(K型)=6等級−0.1等級=5.9等級になる。
次にS506において製作者は、その星の修正等級「StarMag2」と透過光星最小等級「MagMin」の差、すなわち、「SheetDecMag=StarMag2−MagMin」を計算して、シート減光等級「SheetDecMag」に設定し、S507へ進む、具体的にこの星の例では、「SheetDecMag=5.9等級−3等級=2.9等級」となる。
次にS507において製作者は、「SheetDecMag」が評価され、負数になった場合、一番大きな直径の貫通透過孔の透過光星の明るさよりも明るい星を再現する必要になるので、その星は、透過光星で再現するのではなく発光素子星で再現すると判断し透過光星としての計算は終了し、次の星の処理に移るためにS504へ戻る。また「SheetDecMag」が、0以上の正数の場合は、S508へ移る。この星の例では、負数ではないのでS508に移る。
次にS508において製作者は、「SheetDecMag」と、シートの減光を最も受ける群における「GunMag」と最大穴減光等級「HallMagMax」の和、を比較し、大きい場合は透過光星として再現できる最も暗い星よりも暗い星となるので、その星は、透過光星として再現するのではなく印刷発光星で再現すると判断し透過光星としての計算は終了し、次の星の処理に移るためにS504へ戻る。小さい場合はS509へ移る。
この星の例では、「SheetDecMag=2.9等級」であり、シートの減光を最も受ける群における「GunMag=4等級」と最大穴減光等級「HallMagMax=2等級」の和の6等級よりも小さいので、S509へ移る。
次にS509において製作者は、その透過光星を再現するための群番号「Gun」を求め、S510へ進む。具体的には、シートの減光を最も受ける群から最も少ないシートの減光を受ける群に対して、その「GunMag」の値と、「SheetDecMag」を評価し、
SheetDecMag > GunMag(Gun)
となる群番号「Gun」を求める。群番号が定まれば、後ほど、貫通透過孔が貫通するシートの積層情報「SheetStack」が決定する。
この星の例では、
GunMag(第1群)=4等級 ≧ SheetDecMag=2.9等級 > GunMag(第2群)=2等級
であることから、「Gun=第2群」となる。
次にS510において製作者は、その星の「GunMag(Gun)」と「SheetDecMag」の差に相当する等級の減光を与える貫通透過孔の直径番号「DiaNo」を、穴径等級情報「HallMag」に基づき決定し、S511へ進む。
具体的には、最も小さい穴径の直径番号から、最も大きい穴径の直径番号(0)の順番で、「GunMag(Gun)」と「SheetDecMag」の差を評価し、
SheetDecMag−GunMag(Gun)≧ HallMag(DiaNo)
となる直径番号「DiaNo」を求める。
実施例では、「HallMag(0)=0等級」、「HallMag(1)=1等級」、最も小さい穴径(0.18mm)の直径番号は「1」であるため、例の星に関して前記評価を行った結果は、
SheetDecMag−GunMag(Gun)=2.9等級―2等級=0.9等級 であるで、 HallMag(1)=1等級 > 0.9等級 ≧ HallMag(0)=0等級 となり、「DiaNo=0」となる。
次にS511において製作者は、S509で求めた群番号「Gun」に関して、その群の貫通透過孔が貫通するシートの積層情報「SheetStack」とS510で求めた直径番号「DiaNo」の貫通透過孔の穴径「HallDia」を求め、S512へ進む。
具体的に、例の星では、「Gun=第2群」なので、「SheetStack=第1紙層・アルミ箔層」となり、「DiaNo=0」なので、「HallDia=0.3mm」となる。
次にS512において製作者は、全ての星について評価が終了したか判断し、終了していない場合はS504へ進み、終了していればS513に進む。
次にS513では製作者は、透過光星として再現されることとして評価された全ての星の「SheetStack」「HallDia」「FilterColor」のデータに基づいて、シート貼り合わせ積層加工、貫通透過孔の穴あけ加工、着色フィルターの印刷等の、積層シート220の製作工程を実施し、この製作方法を終了する。
具体的に実施例の積層シートを製作するために製作者は、第1紙層201とアルミ箔層202を貼り合わせて積層した後に、「SheetStack=第1紙層・アルミ箔層」として評価された全ての星に関して、第1紙層201の内側面の「StarPos」から導かれる位置に、「HallDia」で示される直径の貫通透過孔212を加工して、第1群の穴を形成する。
続いて製作者は、第2紙層の内側のそれぞれの星の「StarPos」から導かれる位置に「FilterColor」に基づいた着色印字215を印刷する。そして製作者は、それぞれの着色印字215がそれぞれの星の貫通透過孔212の位置に合致するように第2紙層203をアルミ箔層202に貼り合せて積層する。ないしは製作者は、第2紙層203をアルミ箔層202に貼り合せて積層した後に、第2紙層203の外側のそれぞれの星の「StarPos」から導かれる位置に「FilterColor」に基づいた着色印字を印刷する。後者の方法では、貼り合せ工程での位置ずれの影響が少ないという利点がある。
続いて製作者は、「SheetStack=第1紙層・アルミ箔層・第2紙層」として評価された第2群の全ての星に関して「StarPos」から導かれる位置に「HallDia」で示される直径の貫通透過孔213を加工して、第2群の穴を形成する。
続いて製作者は、第3紙層204の内側のそれぞれの星の「StarPos」から導かれる位置に「FilterColor」に基づいた着色印字216を印刷する。そして製作者は、それぞれの着色印字216がそれぞれの星の貫通透過孔213の位置に合致するように第3紙層204を第2紙層203に貼り合せて積層する。ないしは製作者は、第3紙層を第2紙層に貼り合せて積層した後に、第3紙層の外側のそれぞれの星の「StarPos」から導かれる位置に「FilterColor」に基づいた着色印字を印刷する。後者の方法では、貼り合せ工程での位置ずれの影響が少ないという利点がある。
続いて製作者は、「SheetStack=第1紙層・アルミ箔層・第2紙層・第3紙層」として評価された第3群の星に関して「StarPos」から導かれる位置に「HallDia」で示される直径の貫通透過孔214を加工して、第3群の穴を形成する。そして製作者は、貫通透過孔214を覆うように「FilterColor」に基づいた着色印字が施された着色シール217を貼付する。
本発明の星空再現装置1の積層シート220の製作方法は、上記のような方法であるため、製作者は、スターカタログや天体写真などから抽出された、再現すべき星空に含まれる様々な明るさや色の星に関する恒星基礎データと、積層シート220の透過光星仕様情報に基づいて、本発明の星空再現装置の構成の特徴である複数のシートによる多層構造を構成する適切なシートを適切な作業手順で積層し、適切な直径の貫通透過孔を加工し、星空再現装置を製作できるという効果がある。
この際、透過光星に色を付与する着色印字のインクによって透過光線が減光されるが、その減光効果を踏まえて正しい貫通透過孔とその直径を選択できるので、透過光星を正確な明るさと色で再現できるという効果がある。
また再現する星空に関する構成基礎データが同一であっても、星空再現装置の利用目的に応じて透過光星仕様情報を変更することで、その目的に合った星空再現装置を製作できるという効果がある。
なお上記説明の方法のすべてのステップを製作者が行っているが、その一部又は全体を、人間以外の装置等で置き換えても、同様な効果が生じることは言うまでもない。
上記説明では、本発明の星空再現装置の製作方法のうちS500〜S512の手順で、この星空再現装置の製作に必要な素材の作成に必要な情報を決定し、その情報を基に、S513においてシート貼り合わせ積層加工、貫通透過孔の穴あけ加工、着色フィルターの印刷等の加工を実施して積層シート220を完成させる手順を示した。このなかでS500〜S512の手順はこの星空再現装置の製作方法の特徴的な手順であるが、本発明の課題を達成するためにはこれに限定されることは無く、次に示すような様々な実施態様が有効である。
例えば、スターカタログや天体写真などから再現すべき星空に含まれる星の恒星基礎データを抽出して好みのサイズとレイアウトと再現する星の等級範囲を指定して画面に表示したり印刷したりする星図作成プログラムはすでに存在している。この星図作成プログラムに、S500〜S512の手順を実施するプログラムを組み込む。そして製作者が星図作成プログラムを利用してS500〜S512を実施して、生成されたデータに基づきプリンターでこの製作方法を実施する為に必要な素材のうち印刷工程が必要なシートを印刷する。そして製作者は印刷したシートを積層したり貫通透過孔を加工することでS513の手順を実施する。こうした手順を実施して星空再現装置の積層シート220を製作しても同様な効果が得られる。
また消費者である第1の製作者がS500〜S512の手順を実施する。そして第1の製作者は生成したデータと第1の製作者の情報と決済情報を付加した注文データを生成してインターネットの注文処理サーバーへ送信して発注する。そして第2の製作者がその注文データを取得し、S513を実施可能な設備を有した工場においてその注文データに含まれるデータに基づきS513の手順を実施して積層シート220を製作する。そして第2の製作者は、製作した積層シート220を第1の製作者へ送付するとともに決済情報に基づき製作費用を第1の製作者から決済する。こうした手順を実施して星空再現装置の積層シート220を製作しても同様な効果が得られる。
また次のような手順も有効である。すなわち、第2の製作者がS500〜S512を実施して得られた情報に基づいてS513の手順を実施するために必要な素材を製作する。そして第2の製作者は、製作した素材を、それぞれの貫通透過孔を加工するための穴あけ道具等と伴に製作キットとして第1の製作者に提供する。消費者としての第1の製作者は製作キットに含まれる素材を用いて、シートを積層したり、貫通透過孔を加工したりするなど、S513の残りの手順を実施する。こうした手順を実施して星空再現装置の積層シート220を製作しても同様な効果が得られる。さらにこの手順の場合、消費者である第1の製作者は手作り体験を楽しめるという効果もある。
ここで、「製作方法を実施する為に必要な素材」は、もっぱら本発明の星空再現装置の製作方法を実施する為に必要不可欠な素材を言う。具体的には、第1群の穴を開けるための穴あけ位置や穴径などの情報を指示する印刷が表面に施された第1紙層201や、アルミ箔層202や、第1群の穴に対応した着色印刷215が施された第2紙層203や、第2群の穴を開けるための穴あけ位置や穴径などの情報を指示する印刷が表面に施された第2群用穴あけ指示シートや、第2群の穴に対応した着色印刷216が施された第3紙層204や、第3群の穴を開けるための穴あけ位置や穴径などの情報を指示する印刷が表面に施された第3群用穴あけ指示シートなどの単体やその組み合わせなどである。
また、第2の製作者が、製作方法を実施する為に必要な素材のうち、第1紙層201とアルミ箔層202をあらかじめ積層したうえで第1群の穴を加工して半完成品としての穴あけ済積層シートを製作し、それを製作キットに含めて消費者である第1の製作者へ提供するようにしても良い。その場合、S513の手順のうち消費者である第1の製作者が行う穴あけ作業は、第1群以外の第2群や第3群の穴を加工するだけで良く、穴あけ作業の作業量を大きく削減できる効果がある。これにより、より広い消費者が第1の製作者としてこの製作方法を実施して星空再現装置を製作できるという効果がある。
また、第3の製作者があらかじめS500〜S512の手順を実施した上で、この製作方法を実施する為に必要な素材のうち印刷工程が必要なシートを確実に印刷できるような印刷データを作成し、その印刷データをWebサイト等で掲載する。そして製作イベント主催者である第2の製作者はその印刷データを取得し、自身で所有するプリンターでシートを印刷して第1の製作者へ提供する。そして第1の製作者は印刷されたシートを積層したり、貫通透過孔を加工したりするなど、S513の残りの手順を実施する。こうした手順を実施して星空再現装置の積層シート220を製作しても同様な効果が得られる。さらにこの手順の場合、消費者である第1の製作者は手作り体験を楽しめるという効果もある。また製作イベント主催者である第2の製作者は、消費者にこの製作方法を実施する体験を簡単に提供することができるという効果がある。
また図69に示すように、第2の製作者がS500〜S512を実施して得られた情報に基づいて製作したこの製作方法を実施する為に必要な素材2209を、星空再現装置の製作方法や星空再現装置により再現される星空に関する解説情報が掲載された説明ページ2211とともに書籍2210として製本しても良い。その場合、この製作方法を実施する為に必要な素材2209は、消費者である第1の製作者へ書籍2210として提供される。第1の製作者は購入後に書籍2210から素材2209を分離し、シートの貼り合わせ積層加工や貫通透過孔の穴あけ加工など、S513のうち残りの作業を実施でき、積層シート220の製造方法を簡単に実施できるという効果がある。さらにこの手順の場合、書籍に記載された星空に関する解説情報を参考にして星空再現装置を利用でき、学習効果が高まるという効果がある。
また、図75に示すように積層シート220を簡単な方法で観察するようにしても良い。具体的には、積層シート220に、インターネットの解説情報提供サーバー2200へアクセスするためのアクセス情報2201を掲載する。そして利用者が所持するパソコン2202や携帯情報端末2203を用いてアクセス情報2201に基づき解説情報情報提供サーバー2200から解説情報を取得する。そして解説情報を画面2204で表示する。そしてその画面2204の上に積層シート220を重ねて置いて画面2204の光で積層シート220の背面を照射して透過光星を観察する。こうすると簡単な操作で解説に基づいて積層シート220を観察できる。
この際、画面2204のそれぞれの場所の輝度を時間的に変化させて星の瞬きを再現する動画にすると効果的である。
この際、積層シート220の複数の場所に位置する表示要素、例えば1等星アルデバランの名称を示す星名表示2206の透過光の輝度を音声解説の内容に同期して変化させるように、その表示要素の位置に対応する画面2204の表示画像2207を変化させる。これにより必要に応じて表示要素の表示態様を変化させることが可能で、同一の積層シート220で再現される天体や解説表示がより多様にできるという効果がある。またこの際、画面2204に液晶画面のような画素毎の表示が制御可能な表示素子を用いれば、積層シート220の外面に画面を密着させることで積層シート220の表示要素の表示態様をきめ細かく制御できる。
また、画面2204の一部に解説表示のための解説表示領域2205を設定し、積層シート220の解説表示領域2205に対応した位置に解説表示領域2205を観察するための窓2208を形成し、解説表示領域2205に表示された解説情報を観察者が視認できるようにしてもよい。こうすると、天体の詳細画像やグラフや参考画像を必要に応じて表示したり、聴覚に障害のある観察者が字幕で音声解説情報が視認できるなどの効果がある。
なお星空再現装置1を日中に利用する場合は、積層シート220を覆うようなフードを用意して覗き穴から観察するようにすると、周囲の光が遮光されて透過光星を美しく観察できる。
次に、図12のシステム構成図、ワンチップCPUのRAMエリアのデータ構成図(図15)、同じくROMに記録されたプログラムのフローチャート(図19、図20、図21)に基づいて、ワンチップCPUの動作を説明する。まず、図19のメインルーチンの動作を説明する。
S1においてワンチップCPU301は、LED駆動IC302を介して点灯制御されるLED素子群、すなわちバックライトLED105(LED111〜LED444)、白色チップLED305(LED1〜LED8)、光害ランプ110(LED0)、広角UVランプ(UV1)、狭角UVランプ(UV11〜UV44)を全て消灯し、S2へ進む。
S2においてワンチップCPU301は、不揮発性メモリーに記録されている星空シート番号の読み込みを試み、正しいデータが読み込めればS3へ進み、読み込めなかった場合はS2を繰り返す。ここでは正しく装着されているのでS3へ進む。
S3においてワンチップCPU301は、RAMの変数、ModeNoとStepNoをともに1にセットしてS4へ進む。
S4においてワンチップCPU301は、不揮発性メモリーに記録されている星空関連情報の中から、ModeNoとStepNoに基づいて、その動作モードの指定のステップにおける、継続時間を示すTime、シーン番号を示すSceneNoと遷移条件を示すTrig、その動作モードに含まれるステップ数を示すMaxStepNoを読み込み、それぞれRAMに記録した後、S5へ進む。
S5においてワンチップCPU301は、StepNoに対応したシーン情報を読み込んだ後、S6へ進む。
S6においてワンチップCPU301は、後述する点灯制御用タイマ割り込みルーチンで制御されるLED素子群それぞれの輝度やシンチレーション量を示すデータをセットした後、S7へ進む。ここで情報がセットされると、ワンチップCPU301は、後述する点灯制御用タイマ割り込みルーチンのS201において、所定の輝度とシンチレーションの量でLED素子群をそれぞれ駆動する動作を並列して実行する。ここでは素子群は多数に及ぶので詳細なデータ構造の説明は省略する。
S7においてワンチップCPU301は、S4以降に経過した時間が、Timer以上経過したかどうか判断し、NoであればS7の動作を繰り返す。YesであればS8へ進む。
S8においてワンチップCPU301は、Trigが0(時間が経過したら次のステップに自動的に次に進む)か判断し、YesであればS15へ進み、NoであればS9へ進む。
S9においてワンチップCPU301は、Trigが1(時間が経過した後に赤外線リモコンのボタンで「0」が押されたら次に進む)か判断し、YesであればS13へ進み、NoであればS10へ進む。
S10においてワンチップCPU301は、後述するリモコン信号割り込み処理で検出・入力した赤外線リモコンの操作ボタン情報KeyNoを参照し、「0」〜「9」のボタンが押されていたか判断し、NoであればS10の動作を繰り返し、YesであればS11へ進む。
S11においてワンチップCPU301は、KeNoのボタンの数値をModeNoに設定し、S12へ進む。
S12においてワンチップCPU301は、StepNoを1に初期化して、S4へ戻る。
S13においてワンチップCPU301は、赤外線リモコンの操作ボタン情報KeyNoを参照して「0」が押されたか判断し、NoであればS13の動作を繰り返し、YesであればS14へ進む。
S14においてワンチップCPU301は、いったんKeyNoを「−」(操作なし)にセットし、S15に進む。
S15においてワンチップCPU301は、StepNoを+1して、S16へ進む。
S16においてワンチップCPU301は、StepNoがMaxStepNoを越えているか判断し、YesであればS3へ戻り、NoであればS4へ進む。
次に、図20のリモコン信号入力割り込みルーチンの動作を説明する。
赤外線リモコンの操作信号が入力されると、ワンチップCPU301はこの割り込みルーチンを実行する。
S101においてワンチップCPU301は、赤外線リモコンで操作されたボタン情報を読みだし、KeyNoに設定した後、割り込みルーチンを終了する。
ここで、赤外線を用いて赤外線リモコンの操作データを送信し、赤外線センサーで受信された信号に基づいてそのボタン情報を検出する技術は、一般的な技術であるので詳細の説明は省略する。
次に、図21の点灯制御用タイマ割り込みルーチンの動作を説明する。このルーチンは、ワンチップCPU301に備わるタイマによって発生するにタイマ割り込みルーチンである。
S201においてワンチップCPU301は、メインルーチンのS6において設定された、LED素子群それぞれの輝度やシンチレーション量を示すデータに基づいて、PWM制御(パルス幅制御)を行い、S202へ進む。なお、タイマ割り込みによって発生するタイマ割り込みルーチンにおいて、所定の設定値に基づき、LED素子をPWM制御する技術は、一般的な技術であるので、詳細は省略する。
S202においてワンチップCPU301は、ワンチップCPU301に接続されている輝度調整ボリュームの値を読み込み、基準値との比率Volumeを計算し、S203へ進む。
S203においてワンチップCPU301は、Volumeに基づき、光害ランプ(LED0)の輝度を除くLED素子群の輝度を変更する。この際、輝度調整ボリュームの操作に基づいて、LED素子群の輝度が全体的に所定の比率で変更される。その結果、バックライトLED(BL111〜BL444)で再現される透過光星の明るさと、UVランプ(UV0、UV11〜UV44)で再現される印刷発光星の明るさと、白色チップLED(LED1〜LED6)で再現される発光素子星の明るさのバランスは変化することなく、星空の再現に問題を生じない。
次に、実施例を利用者が使用する際の動作について、装着された星空シートの不揮発性メモリーに記録された星空シート関連情報(図16〜図18)に基づき説明する。
まず利用者は、暗くできる室内、ないしは夜間の屋外に星空再現装置を設置し、星空再現装置から10m離れた位置に天体望遠鏡を設置する。次に装着枠をライトボックスから取り外し、複数の星空シートのなかから選択した星空シートを透明板と装着枠の間に装着する。すると、コンタクト基板が所定の位置に設置され、コンタクトピンがコンタクトパッドに接触し電子的に接続される。
次に電源スイッチを入れて電源が印可されるとワンチップCPU301はリセットがかかり、メインルーチンがスタートし、最初は動作モードが「1」の場合、すなわち、星空観賞モードで動作がスタートする。
その後、前述したワンチップCPU301のプログラム動作にしたがって動作すると次のようになる。
すなわち、星空観賞モード(ModeNo=1)は、1つのステップからなるモードであり、SceneNo=2、すなわち、山間部の空を再現したシーンを、Timer=10、すなわち10秒間継続した後、赤外線リモコンのボタン操作で「1」〜「9」が押されるまでループするように動作する。
ここで、山間部の空を再現するシーンでは、図17に示すように、背景の空の明るさを決める光害ランプ(LED0)はかなり暗い10の輝度である。また明るい星である発光素子星の明るさを決める白色チップLED(LED1〜LED6)の輝度は、図18に示すオリオン座の星によって定まる基準値の輝度(最少8〜最大85)になる。この基準値は、その星空シートを観察する想定の距離、ここでは10mから観察した際に、実際の星と同じ等級で観察できるための輝度を表す値が設定されている。また、中間の明るさの星である透過光星の明るさを決めるバックライトLED(BL111〜BL444)の輝度は、同様に図18に示すオリオン座の星によって定まる基準値(=100)がすべてのバックライトLEDの値として設定され、また、シンチレーションの値は地上から観察した際に発生する標準的な瞬きを再現するための±30%の値が設定される。これはハイライト表示のない標準的な瞬きを再現することを示している。また暗い星である印刷発光星の明るさを決めるUVランプ(UV0、UV11〜UV44)の輝度は、広角UVランプ(UV0)が50に設定され、狭角UVランプ(UV11〜UV44)は非点灯の0になる。これは、ハイライト表示のないことを示す。また、発光ラインの明るさを決める白色チップLED(LED7、LED8)の輝度は非点灯の0になる。これは解説のための発光ラインを使用しないことを示す。
この結果、星空シートで再現される星は、自然豊かな山間部で、光害の無い暗い夜空に瞬く、美しい星空が再現されることが分かる。
次に、観察者が赤外線リモコンの「2」のボタンを押すと、ワンチップCPU301はすでに説明したプログラム動作にしたがって動作し、図16で示される「光害解説」という名称の動作を行う。この動作モードでは、利用者はインターネットの動画サイトなどの解説コンテンツを再生しながら鑑賞するのが望ましい。
この動作モードでは、操作者が赤外線リモコンの「0」のボタン操作を押すことで、4つのシーンのうち「都会の空」と「山間部の空」と「宇宙から見た星空」のシーンが進行していく。
ここで図17で示されるように、「都会の空」においては、光害ランプ(LED0)がかなり明るく(=100)、白色チップLED(LED1〜6)、バックライトLED(BL111〜BL444)、広角UVランプ(UV1)はそれぞれ「山間部の空」で採用されている基準値から2等級暗い。ここでは、光害のために明るくなってしまった夜空で、汚れた空気によって減光されて暗くなった星が再現される。また「宇宙から見た星空」は、大気が無い宇宙空間で観察する星空が再現される。すなわち、光害がゼロで漆黒の夜空が再現され、シンチレーションがゼロで星がまったく瞬かないことが特徴である。
その後、シーンは「山間部の空」に戻り、赤外線リモコンの「1」〜「9」が押されるまでその状態が維持される。
以上の動作モードのうち、「星空観賞」モードは寝室の壁面に設置して裸眼で星空を楽しむのに向いている。また「光害解説」モードは、星空全体の変化を裸眼で確認する環境学習に向いている。いずれも裸眼による観察の目的で使用される。
一方、観察者が赤外線リモコンの「3」のボタンを押すことで選択される「オリオン座解説」は、天体望遠鏡を用いた利用の際に有用な動作モードである。この動作モードでは、星空再現装置から10mほど離れた位置に設置された口径8センチ程度の天体望遠鏡とデジタルCCDカメラを用いて観察するのが望ましい。
「オリオン座解説」のモードは、図17に示すように、「都会の星」「山間部の星」「星座絵」の3つのシーンが1分毎に切り替わり「オリオン大星雲の位置」のシーンまで自動的に進む。これは、インターネットの動画サイトなどの解説コンテンツを再生しながら鑑賞することを想定している。
「星座絵」のシーンでは、発光ラインの一つであるオリオン座の星座線を再現するプラスティック光ファイバー(f7)が発光して、オリオン座の姿が再現される。その際、星座線を見やすくするために、発光素子星や透過光星、印刷発光星などの星々は、1等級ほど暗い。
「オリオン大星雲の位置」では、解説動画でオリオン大星雲の説明が提供され、観察者は説明にしたがってオリオン大星雲の位置を探す。この時、プラスティック光ファイバー(f8)が発光してオリオン座大星雲(M42)の位置を示す発光ラインが表示されるので、観察者はオリオン大星雲を容易に見つけられる。
従来の星空再現装置では、星座線や特定の天体の位置を表示するためには、投影装置で星座絵を投影したり、蓄光塗料を使って星座絵を描画したり、蛍光インクで描画した星座絵をUVランプで光らせる等していた。しかし投影装置は設備が必要であるという問題がある。蓄光塗料は発光のコントロールができないという問題がある。蛍光インクで描画すると印刷発光星といつも同時に表示されてしまうという問題がある。
しかし本発明の星空再現装置は、UVランプの動作とは無関係に輝度を調整可能な線状の発光ラインで天体の位置を表示できるので、解説に応じて星座絵などを簡単に適切に再現できるという効果がある。
この時、星々は「山間部の星」と同様に再現される。また印刷発光星で再現される最も暗い星(U6)が空の明るさに埋もれてしまわないように、光害ランプ(LED0)の輝度はゼロに設定され、地球上でもっとも暗い星空を再現する。そのためデジタルCCDカメラでオリオン大星雲を長時間撮影した場合でも、カブリが無い。
この時、観察者は双眼鏡や天体望遠鏡を用いて、オリオン大星雲を詳細に観察する。双眼鏡を用いると、観察者は淡いガス雲の光の広がりや暗い恒星を確認できる。オリオン大星雲の中心付近にあるトラペジウムに向かう暗黒の切れ込みも確認できる。次に観察者は口径8cmの天体望遠鏡を用いて観察する。すると淡いガス雲がより観察され、鳥が飛んでいるような形に見えてくる。またトラペジウムも詳細に確認できる。
実際の天体観察では、さらに大口径の30cmクラス以上の望遠鏡を使用すると、ガス雲の複雑な暗黒帯の切れ込みがよりはっきりとわかりすばらしい眺めが楽しめるが、こうした大口径の天体望遠鏡は高価であり、限られたスペースの中で使用するには大きすぎるという問題がある。また大口径の天体望遠鏡は焦点距離が長いので、近距離にある星空シートに対して焦点が合わないという問題も生じる。
次のシーンである「オリオン大星雲詳細」では、オリオン大星雲が存在する領域に含まれる発光素子星、透過光星、印刷発光星に関係するLED素子が、それぞれ基準の輝度から2等星明るくなるように設定される。
具体的には、オリオン座Lot星(2.75等星)を発光素子星として再現するプラスティック光ファイバ(f6)に対応したLED6と、オリオン大星雲が存在する星空領域の透過光星を再現するバックライトLED(BL331〜BL334)と、同じくオリオン大星雲が存在する星空領域の印刷発光星を再現する狭角UVライト(UV33)が、それぞれ基準の輝度から2等星明るくなるように設定される。
2等星明るくなると星の輝度は16倍明るくなる。これは、口径8cmの望遠鏡の集光力を16倍に拡大したことに等しい。したがって、口径で換算すると4倍にあたる口径32cmの大口径の天体望遠鏡を使って観察しているのと同様な観察体験が提供できる。この際、特定の領域に含まれる発光素子星、透過光星、印刷発光星の明るさのバランスは変化しないように動作するので、実際に大口径の天体望遠鏡で見たのと同様な星空が観察できる。
なお、ワンチップCPUのプログラムと、不揮発性メモリーに記録された星空シート関連情報に記録された情報によって実現されているこの機能は、発光素子点灯制御手段や透過光用発光素子点灯制御手段やUVランプ点灯制御手段に特徴的な機能に相当する。
本発明の星空再現装置の実施例は以上のような構成と作用を有するので、「発明の効果」で説明したような効果が生れる。以下の説明では「発明の効果」で説明した作用効果をより具体的に補足できる項目について説明する。
まず実施例の星空再現装置は、発光素子星により0.18等星から約3等星の明るい星が再現され、透過光星により3等星〜9等星までの中間の明るさの星が再現され、印刷発光星により9等星〜15等星までの暗い星が再現される。このうち透過光星は、機械的な穴あけ加工で形成されるが、安価な技術で加工できる最少直径は0.1mm程度が限度である。また星空再現装置を約10m離れた位置から天体望遠鏡等で10倍に拡大して観察した時に実際の星空を観察したのと同様に精細な星空が観察できるようにするために、人間の眼で「点」として判断される1分角以下とするためには、星の最大視直径は6秒角以下にする必要がある。これは星の直径を0.3mm以下にする必要がある。
こうしたことから実施例では、0.19mm〜0.3mmの穴にしている。これは等級差で1等級である。それぞれの穴で、上下0.5等級に含まれる星を再現する場合、2等級の等級幅の星を再現できるに過ぎない。しかしながら本発明の星空再現装置では、実施例に示すような積層シートの構造を有しているため、6等級の等級幅の星を再現できるという効果がある。
また本発明の星空再現装置では、「自然の星は等級が明るいほど数が少なく、暗いほど数が多い」という自然法則を活用して、それぞれ再現方法の原理が異なる発光素子星と印刷発光星の組み合わせを最適化しているため、単純に従来技術を組み合わせるだけの方式では達成できない効果が生れている。
すなわち、印刷発光星は、UVランプの輝度を高くすると、UVランプの光にわずかに含まれる可視光成分の強度が上がり、照射される積層シートの第1紙層の表面が可視光によって照らされ、本来真っ暗であるはずの星以外の「空」の部分がわずかに光り、微細な星が見えなくなる。そのため、むやみにUVランプの輝度を高くできない。これは特に紫外線発光タイプのLEDで顕著である。
一方、印刷される星の直径は、望遠鏡で拡大しても点で観察できるようにするため、むやみに面積を大きくできない。また蛍光インクの発光効率、すなわち単位面積当たりの輝度も上限がある。こうしたことから、印刷発光星で再現可能な星の明るさには上限があるという欠点がある。
その一方で、印刷発光星は、インクジェットプリンターによる印刷工程で形成できることから、透過光星や発光素子星に比べ、多数の星を比較的高速に安価に形成可能という利点がある。したがって、再現する星のうち、たくさん存在する暗い星の再現に印刷発光星の技術を適用することが効果的である。
また透過光星は、星ひとつひとつを加工針により加工する必要があるので、印刷発光星に比べて1個あたりの星の形成コストは大きい。しかし一方で、アルミ箔等の高い遮光性能を持つ遮光層によって星以外の「空」の部分の光は遮光されるので、バックライトLEDの輝度を高くしても、積層シートの第1紙層の表面に印刷されている印刷発光星の微細な発光を邪魔することはなく、高いコントラストの星空を再現できる。そのため、高い輝度を有するバックライトLEDを使用して積層シートの外側を高い照度で照射することで、印刷発光星に比べて単位面積あたりの輝度を高く設定できる。したがって、印刷発光星で再現する星の等級よりも明るい星の再現に透過光星の技術を適用することは効果的である。
また発光素子星は、プラスティック光ファイバーを積層シートに敷設する必要があるなど、印刷発光星や透過光星に比べると1個あたりの星の形成コストは大きい。しかし一方で、プラスティック光ファイバーの入射面は白色チップLEDの発光面に近接して配置され、光を高い効率で集光して、発光素子星として積層シートの内面に導くことができる。そのため、一定の距離離れた位置に分散して配置されるバックライトLEDの光が透過することで再現される透過光星に比べて、発光素子星は明るい星を再現できる。したがって、透過光星で再現する星の等級よりも明るい星の再現に発光素子星の技術を適用することは効果的である。また明るい星ほど数が少ないので、コスト上昇を抑えられるという効果がある。
このように、本発明の星空再現装置の実施例は、0.18等星の輝星から15等星までの幅広い明るさの星を、10m離れた位置の天体望遠鏡で10倍の倍率で観察しても点で見える0.3mm以下の大きさで、効果的に、かつ安価に再現できるという優れた効果を奏する。こうした設計思想を用いることで、本発明の目標性能1に掲げた25等級、100億倍のダイナミックレンジの実現も可能になる。
また、実施例はオリオン座を再現する星空シートについて詳細に説明したが、同様にして様々な星空領域の、さまざま縮尺の複数の星空シートを作成することが可能である。その場合でも、装着枠を外して簡単に交換できるので、バックライトや本体基板などは1台準備するだけで良く大変経済的である。
また、星空シートに関連した情報が不揮発性メモリーにあらかじめ記録されているので、星空シートを交換したのと同時にワンチップCPUがこれを入力し、星々を自動的に適切な輝度で点灯制御するように動作するという優れた効果がある。これは科学館等での学習施設として使用する際に、学習者が学びたい星空シートを選択して装置に装着するとともに、関連する解説動画コンテンツを再生しながら赤外線リモコンを使って動作モードを切り替えながら柔軟に学習が行えるという効果が期待できる。
また、本発明はこの実施例に限定されるものではなくさまざまな実施態様が可能である。
たとえば、本実施例の場合、星空シートに関連する情報は不揮発性メモリーに記録されているが、これに限定されず、装着された星空シートに適した星空シート関連情報がその他の記憶手段に記録されていてもよい。例えば、星空シートの表面に2次元バーコード等で星空シート関連情報が記録されており、それをスマートフォンなどの読み取り装置で読み取り、赤外線センサーへ赤外線で発信し、ワンチップCPUが赤外線センサーを介してそれを入力するようにしてもよい。
また、星空シート自体に星空シート関連情報の全てが記録されていなくても、別途インターネットサーバー上に記録されており、星空シートに記録された星空シートの識別IDをインターネットサーバーへ送信して星空シート関連情報の不足分を取得してワンチップCPUに伝達するようにしても良い。この際、インターネットサーバーから星空に関する解説情報を取得して、スマートフォンの画面で参考になる画像を表示しながら解説音声を再生して解説を聞くようにするとさらに学習効果が向上するという効果もある。この応用に関しては、第2の実施例で詳細に説明する。
続いて、本発明の第2の実施例を、図面を参照に説明する。第2の実施例では、標性能1〜目標性能4に加えて、目標性能5〜目標性能11も実現する。なお図中の符号は、前述する第1の実施例を説明する他の図面を含め、同じ技術的構成のものは同じ符号で表示する。
第2の実施例を説明する前に、特許文献1や特許文献2に示される従来技術の、目標性能5〜目標性能12に関する課題を説明する。以下の説明では、特に説明が無い限り、特許文献1や特許文献2に示される投影式プラネタリウムを従来技術と呼ぶ。
従来技術では、図34に示されるように、プラネタリウム施設のドーム4内に、恒星投影器5や、全天映像投影装置6や、観客がドーム4に投影された星空や解説映像を観察するために座る複数の観客席7が設置される。恒星投影器5は、恒星原版に形成される穴を通過するランプの光を恒星投影レンズによってドーム4に投影して星空を再現する。全天映像投影装置6は、高解像度のディスプレイに表示される星空や解説映像などを広角レンズによりドーム4の全面に投影する。特許文献2の従来技術では、恒星投影器5が一定以上明るい星をドーム4に投影し、全天映像投影装置6が一定以下の明るさの星をドーム4に投影する。
従来技術は、こうした構成になっているので、観客が、ドーム4のいずれかの場所に設置される望遠鏡8を用いてドーム4に投影された星空を観察すれば、天体の導入体験や(目標性能7)や、天空の地平線より上に再現される複数の天体の観察(目標性能8の一部)や、望遠鏡で観察している天体の天空上の位置の確認(目標性能9)が行える。
従来技術では、図34に示されるように、4台の望遠鏡8がドーム4内に設置される。しかしながら、従来技術には次に示す様々な問題が存在する。
第1に、ドーム4の表面に投影された星を歪の無い位置関係で観察するためには、ドーム4の表面の法線方向に望遠鏡8を設置するのが望ましいが、従来技術ではその法線方向には恒星投影器5や全天映像投影装置6が存在するので、その位置に望遠鏡を設置することは困難である。そのため、恒星投影器5や全天映像投影装置6から離れるものの、できるだけドーム4の中心に近い位置に望遠鏡を設置するのが望ましい。
しかしドーム4の中心に近い位置は、肉眼で観察する観客にとっても良好な位置であり、望遠鏡8を設置すると、そこに設置可能な観客席7が少なくなってしまうという問題も発生する。この問題には目をつむり、観客席7を一部撤去して望遠鏡8を設置したとしても、ドーム4の中心位置に望遠鏡8を設置できないために、天体(ST1)が投影される位置のドーム4の表面の法線と、望遠鏡8と天体を結ぶ線との成す角(θ1)が発生し、星の位置関係が歪んで観察されてしまうという問題が発生する。
また天体の位置によっては、例えば天体(ST2)を望遠鏡8で観察する場合、さらに成す角(θ2)が大きくなり、星の位置関係が歪んで観察されるという問題があるし、天体(ST1)と天体(ST2)のそれぞれの望遠鏡8との距離(L1、L2)が変化するため、天体の位置や観察する望遠鏡8の位置によって観察される天体の大きさも変化し、望遠鏡8の合焦位置も変化するという問題も発生する。
このように、従来技術では、目標性能5を達成できないことで様々な問題が発生するという課題がある。
また、天体(ST1、ST2)はドーム4の表面に投影されるので、望遠鏡8と天体(ST1、ST2)との距離(L1、L2)は、いずれもドームの半径(R)よりも著しく大きくすることはできないという、目標性能6を達成する上での課題がある。これは目標性能5をできるだけ達成しようとして望遠鏡8をドーム中心に近い位置に配置すると特に顕著である。
具体的には、日本国内に存在する既存のプラネタリウム施設のドーム直径は、多くは12m〜20mの大きさであり、例えば直径16mのドームでは、天体と望遠鏡8の距離は8mよりもさほど大きくすることはできない。
目標設定6が達成できないと、無限遠の天体の観察を前提に設計されている市販の天体望遠鏡を用いた時に、焦点位置が大きくずれて使えない、レンズの収差が悪化するなどの問題が発生する。特にこれは、暗い天体を観察する為にレンズの直径が200mmを越えるような集光力の大きな大口径の望遠鏡などで顕著である。このように、従来技術では、目標性能6を達成できないことに起因して様々な課題が発生する。
また、目標性能8に関しては、従来の技術では、地平線上に再現されている天体であれば望遠鏡を複数準備することで複数同時に観察することが可能である。しかしながら、天球上の位置が大きく離れている天体、例えば、夏の銀河に位置する「いて座」と、冬の銀河に位置する「オリオン座」と、銀河北極に位置する「かみのけ座」と、銀河南極に位置する「ちょうこくしつ座」にそれぞれ存在する複数の星雲・星団を同時にドームに投影することは不可能であるため、それぞれ望遠鏡で同時に観察することはできないという課題があった。
また、従来の技術では、ドーム4に再現される天体は、実際に天空で観察される大きさや明るさで再現されるので、複数の天体を観察する場合に様々な課題が発生する。具体的には視直径が大きく比較的明るい天体を観察する際には低倍率が得やすい焦点距離が小さい小口径の望遠鏡8を使用するのが望ましく、視直径が小さく暗い天体を観察する際には集光力が大きい大口径の望遠鏡8を使用するのが望ましいので、観察する天体に応じて使用する望遠鏡を頻繁に変更する必要がある。また同一の望遠鏡でも倍率を変えるために接眼鏡の交換などが必要になる。
このように、セッティング変更が頻繁に発生するため、多数の観客にサービスを効率的に提供する際の妨げとなる。特に暗い天体を観察する際には、大型の望遠鏡が必要になり、物理的にドーム内に設置することが困難であるし、市販の望遠鏡は無限遠の天体を前提に設計されているので、近距離に付きピントが合わないなどの課題がある。
このように、従来技術は望遠鏡8で観察すべき天体が実際に天空で観察される大きさや明るさで再現されることに起因して、様々な問題が発生し、目標性能10を達成することが困難という課題がある。
また、目標性能11に関して、従来より、実際の星空を観察する星空観察会においては、複数の観察者が望遠鏡で効率的に観察するために、同一の天体を複数の望遠鏡で観察することがしばし行われる。これはできるだけ多くの観察者に学習の機会を効率的に提供するために必要であり、本発明に係る星空再現装置でも同じである。そのため、天体の近傍に全天映像投影装置6などを用いて天体の名称や解説を投影すると、天体の理解が深まる。
しかし、従来技術では、同一の天体を複数の望遠鏡8で観察する場合、天体の近傍に投影する解説情報が同一の内容であると、それぞれの望遠鏡8を使用する観察者の学齢が異なったり、母国語とする言語が違ったり、過去の星を見る会などのイベント体験を通じて得た天文に対する知識に違いがあったりすると、全ての観察者に対して適切な解説を選択することが出来ない。限られた投影スペースのなかで、こうした多様な状況を包含した解説情報を全て表示することは視認性に欠け現実的では無く、複数の観察者それぞれに適した解説情報が提供できないという課題がある。また観察者が従来技術の星空再現装置を使って天体観察しても、その履歴が記録されることは無いので、それ以降に星空再現装置を使って類似の天体を観察する際にも、その経験が解説情報や指導員の解説に反映されないという課題があった。
また、目標性能12に関しては、従来の技術では、ドーム4の中心付近に設置した恒星投影器5や全天映像投影装置5でドーム4の表面に星や映像を投影するため、観察者が、地上物、例えば山や木々、建物、人物など、地上に存在する物の模型をドーム内に持ち込み、星空とともに様々な星景写真を撮影する体験を行おうとすると、恒星投影器5で投影される星像や全天映像投影装置6で投影される映像などが地上物の表面に投影されないような工夫が必要である。
従来の技術のうち、特許文献1の技術は、全天映像投影装置6などで雲や建物などの地上物をドーム4に投影するとともに、恒星投影器5から投影される星のうち、雲や地上物に投影される領域の星を消去することが可能なので、ドーム4表面に星空を投影されるも雲や地上物には星が投影されないような再現方法が可能である。
しかしながら、この技術は、雲や建物など、あらかじめ想定した雲や地上物に対応することはできても、利用者が持ち込む様々な地上物の、さまざまな配置に対して、柔軟に対応することは提案されていない。
さらに特許文献1の技術で地上物と星空の適切な投影状態が成立するのは、ドーム4に投影される星空と地上物などの映像に関してのみであり、ドーム4内に物体が配置された場合や複数の物体が異なる位置に配置されているような場合は、恒星投影器5の位置以外の場所から見た場合でこれを成立さえることは幾何学的に不可能である。したがって、従来技術では、観察者の多様な要望に基づく星景写真の撮影体験を提供することは困難であるという課題がある。
以上の説明から明らかなように、従来の技術には、本発明が目指す12の目標性能を達成するにあたって極めて多くの課題を有しており、天体望遠鏡等を用いた発展的な学習環境を適切に提供することが困難であった。
次に、こうした従来技術の課題を解決し、本発明が目指す12の目標性能のうち、目標性能1〜目標性能11を達成可能な星空再現装置として、第2の実施例について図面に基づいて説明する。
まず、プラネタリウム施設のドーム4内での星空再現装置1の配置について説明する。
図36、図37に示すように、プラネタリウム施設のドーム4内には、恒星原版に形成される穴を通過するランプの光を恒星投影レンズによってドーム4に投影することで星空を再現する恒星投影器5や、高解像度のディスプレイに表示される星空や解説映像などを広角レンズによりドーム4に投影する全天映像投影装置6や、観客がドーム4に投影された星空を鑑賞するための複数の観客席7が設置されている。
また、ドーム4に比べて狭い範囲の星空(部分星空領域)を再現するための2台の星空再現装置1が、4台の望遠鏡2と天体導入操作用のダミー望遠鏡3とともにプラネタリウム施設のドーム4内に設置されている。望遠鏡2は、ひとつの星空再現装置1を2台の望遠鏡2で観察できるように割り振られ、その視野方向が星空再現装置1に向くように固定設置される。
なお星空再現装置1の台数や望遠鏡2の台数はこれに限らず、例えばより多くの星空再現装置1に対して、より多くの望遠鏡2を使用しても良い。
ここで星空再現装置1と望遠鏡2の設置位置は、それぞれ、観客席7が設置されるスペースよりも外側で水平線41よりも下側に設置される。
なお、ドーム4内の星空再現装置1と望遠鏡2の個数と配置位置はこれに限らず、他の実施態様が可能である。図85は星空再現装置1と望遠鏡2の配置レイアウトの別の実施態様である。床面が円形のドームや四角形の部屋の外壁に近い位置に星空再現装置1と望遠鏡2を設置する。星空再現装置1と望遠鏡2は1対をなし、それぞれ対向する位置に配置される。星空再現装置1は、床から2mほど情報に設置されると、望遠鏡2や観察者83がその下に位置しても対向する望遠鏡2からの観察視野を妨げない。高い位置に星空再現装置1を設置することが困難な場合は、壁面にそって星空再現装置1と望遠鏡2を交互に設置することで、同様に望遠鏡2や観察者83が、隣に位置する星空再現装置1を観察する望遠鏡2からの観察視野を妨げない。
図85のような配置にすると、プラネタリウムに参加する多数の観察者83に星空観察体験を提供する際に、複数対の星空再現装置1と望遠鏡2を用いて観察体験を提供できるという効果がある。その際、望遠鏡2の間隔を広くとることが可能で、それぞれの望遠鏡2の近傍で観察機会を待つ観客が待機するスペースが確保されるという効果がある。
なおこの配置方法の工夫は、第1の実施例の星空再現装置1を使用する場合でも有効である。
また星空再現装置1は、近距離観察者82が双眼鏡9やデジカメ10を用いて星空再現装置1を観察するために必要な距離を確保できるように、できるだけドーム4の壁面に近い位置に設置される。
また望遠鏡2は、星空再現装置1とできるだけ距離を多く取れる位置、すなわち星空再現装置1とドーム4の中心を挟んで対向する方向で、望遠鏡観察者83が望遠鏡2を使用できるようなスペースが確保できる位置で、かつ、星空再現装置1を観察する際に恒星投影器5や全天映像装置6、観客席7に着席する観客81の頭部が光路上で邪魔しない位置に設置される。
次に図22、図23、図24、図25、図30、図31、図32、図33、図62により、第2の実施例の星空再現装置1の構造について説明する。星空再現装置1はテーブル下14に固定される脚1401によってドーム4の床に設置される。テーブル下14には、ライトボックス100と赤外線センサー108とUVランプ109が所定の位置に固定されている。また本体基板300と2次元バーコードセンサー17が固定されている。
また、ドラム軸1101により回動可能に支持されるとともに、タイミングベルト1103を介してドラム駆動モーター1104で回転駆動されるように構成された2本のドラム11がテーブル下13に設置されている。
この2台のドラム11には、星空シート200が固定される保持窓1201が複数形成された星空シート保持シート12が、両端がそれぞれドラム11に固定されるとともにドラム11の側面に巻きつけられ、2台のドラム11の回動により保持窓1201に固定された星空シート200をライトボックス100に対して所定の位置に位置づけ可能になっている。2次元バーコードセンサー17とドラム駆動モーター1104はワンチップCPU301に接続され、後述するプログラムの動作で作動するようになっている。
またテーブル上13が、2本の柱1301と2本のドラム軸1101によってテーブル下14の上方に固定される。また、プロジェクター1601とフィルター円盤1603とフィルター円盤駆動モーター1608からなるプロジェクターユニット16が、テーブル下14とテーブル上13にそれぞれ1ユニットずつ備わり、図32に示すように星空シート200の表面を上下(1601a、1601b)に分割してそれぞれに映像を投影可能な位置に固定されている。なお図31に示すように、フィルター円盤1603には、減光率がそれぞれ高・中・低である、高減光フィルター1605、中減光フィルター1606、低減光フィルター1607が固定されている。中減光フィルター1606は高減光フィルター1605よりも16倍減光率が低い。また、フィルター円盤1603にはフィルターが取りつかない窓1604も形成されている。
プロジェクター1601とフィルター円盤駆動モーター1608はワンチップCPU301に接続される。ワンチップCPU301は、後述するプログラムの動作でフィルター円盤駆動モーター1608を作動させる。フィルター円盤駆動モーター1608はフィルター円盤1603を回動し、プロジェクター1601の投影レンズ1602の前に位置づけられるフィルターを交換する。
なおフィルター円盤1603を使用する代わりに、プロジェクター1601の光源の輝度を変更可能にして、高減光フィルター1605を装着した時と同様に光源の輝度を低くするようにしても良い。
なお、プロジェクターユニット16の代わりに、図62に示すように、表面に映像が表示可能なディスプレイ1302をテーブル上13に固定し、ディスプレイ1302の映像の光を反射するとともに星空シート200からの光を透過することでディスプレイ1302の映像と星空シート200からの光を同一視可能にするハーフミラー1303を備えることで、星空再現装置で再現される星空に関する解説情報をディスプレイ1302の表面に表示し、観察者が星空再現装置で再現される星空とディスプレイ1302の解説情報を望遠鏡の視野内に同時に視認できるような構成にしても良い。ディスプレイ1302は、バックライト照明の輝度が、極低輝度、低輝度、中期度、高輝度と変更可能である。この構成は演説者に原稿などの散光情報を提供するプロンプターの構成と等しい。
これ以降の説明で、プロジェクター1601をディスプレイ1302に読み替えても効果は同様である。その場合、フィルター円盤1603で設定されるフィルターとバックライト照明の輝度の対応を、フィルターが取りつかない窓1604の時は高輝度、低減光フィルター1607の時は中期度、中減光フィルター1606の時は低輝度、高減光フィルターの時は極低輝度とする。また、図41から図48に示す画像は2台のプロジェクター1601の画像を上下に合成した画像であるが、プロジェクター1601をディスプレイ1302に読み替えた場合は、合成した画像をディスプレイ1302で表示される画像とみなせばよい。
なおこのディスプレイ1302とハーフミラー1303は、それぞれディスプレイと反射透過板に相当する。
また、高精細な画像を表示可能なディスプレイ1501とディスプレイ保持板1502と腕1503と回転軸1504とからなるディスプレイユニット15が回転軸1504を中心に回動可能にテーブル下14に取り付けられていて、ディスプレイユニット駆動モーター1505により、ライトボックス100の前に位置づけされた星空シート200の前面に位置付けされ望遠鏡2によって星空シート200を観察する観察者の視野の中でディスプレイ1501の表示が視認可能となる第1の位置と、テーブル下14に近接する位置に位置づけされ観察者の視野の中から退避する第2の位置に位置づけできるようになっている。
なおディスプレイ保持板1502の表面は、プロジェクター1601によって映像が投影可能なスクリーン状の投影面になっていて、中央付近に形成された窓の大きさは、投影面の裏面に取り付けられるディスプレイ1501の画像表示エリア以下の大きさになっており、ディスプレイユニット15が第1の位置に位置づけされた際に、2台のプロジェクター1601によって投影された映像と、ディスプレイ1501によって表示された映像によって、ディスプレイ保持板1502の全面に渡ってつなぎ目の無い映像が再現可能になっている。なおディスプレイ1501とディスプレイユニット駆動モーター1505はそれぞれワンチップCPU301に接続され、後述するプログラムの動作で作動するようになっている。
図24は、ドラム11に装着された星空シート保持シート12の複数の星空シート200が、ドラム11の回動に伴ってライトボックス100の前面に位置づけられた状態を星空再現装置1の正面から見た図であり、同様に図25は背面から見た図である。この時、星空シート200の外周部に固定された磁石250とライトボックス100の外周部に固定された磁石101と本体基板に固定された磁石350の吸引作用により、星空シート200はライトボックス100の透明板102と本体基板300に押し付けられるようになっている。またその時、2次元バーコードセンサーセンサー17が、星空シート200の最も外側の第3紙層204の表面に印刷された2次元バーコード240を撮像して、ワンチップCPU301のプログラムによってバーコードに記録された情報とバーコードの位置が読み取れるようになっている。この2次元バーコード240に記録される情報は星空シート200に固有の情報を含み、ワンチップCPU301で動作するプログラムが、その星空シート200に適した動作が行えるようになっている。また2次元バーコード240の検出位置に基づきドラム駆動モーター1104を駆動し、ドラム11の回転位置が適切な位置となるように制御される。
また図26〜図29に示すように、星空シート200ならびに本体基板300は、第1の実施例と類似の構成であるが、第1の実施例と異なる部分は以下の部分である。すなわち、第2の実施例の星空シート200は、下部の光ファイバー集積部205が存在しないこと、積層シート220の面の下部にコンタクト基板206が配置されていること、コンタクト基板に不揮発性メモリー208やコンタクトパッド209a〜209dが存在しないこと、星空シート200の外周部に磁石250が固定されていること、星空シート200の種類や識別するための2次元バーコードが第3紙層204の表面に印刷されていること、星座線や詳細領域を表示するために第1紙層201に敷設される光ファイバーf7と光ファイバーf8が無いことが第1の実施例と異なる。
またワンチップCPU301は、第1の実施例で説明した機能に加え以下の機能を有する。すなわち、ワンチップCPU301は、プロジェクター1601やディスプレイ1501に映像を出力させるための映像出力手段と、全天映像投影装置6で投影される映像にダミー望遠鏡3の視野方向や望遠鏡2の視野範囲を示す視野表示61を挿入するための視野表示映像出力手段と、インターネット等に接続された情報提供サーバーから情報を取得したり解説者が持つ携帯端末へ解説のための参考情報を送信したりするためのネットワーク通信手段と、観察者識別情報読み取り装置832が観察者83の所持するIDカード831から読み取った観察者識別情報を入力する観察者識別情報入力手段と、読み取り装置ドラム駆動モーター1104やディスプレイユニット駆動モーター1504やフィルター円盤駆動モーター1608と、望遠鏡2のドローチューブ駆動モーター23などのモーターをそれぞれ駆動するモーター駆動手段と、望遠鏡2の接眼レンズ検出センサー25やピント調整ボタン2302からの検出信号を入力する望遠鏡設定情報入力手段と、天体導入用ダミー望遠鏡3のH軸センサーやZ軸センサーからの検出データを入力する導入情報入力手段有する。
第2の実施例のワンチップCPU301は、これらの複数の手段をすべて備えた素子として説明するが、実際はこれに限らず、スティックPCやパソコンなど複数の素子で構成された複合的な電子制御手段であっても良い。
また、情報提供サーバーに情報を記録して取得するのではなく、パソコンのハードディスクなどにあらかじめ情報を記録してそれをアクセスする方法で取得しても良い。
その他に、モーター駆動機能コンタクト基板206と平行な位置で光ファイバーf1〜f7の端面が白色チップ305の発光面に位置づけられるようにライトボックス100から延長する支持板に固定されていること、磁石250を備えること、コンタクトプローブ306a〜306dが無いこと、などが異なる。それ以外の構造は同一であるので説明は省略する。
次に、第2の実施例の星空再現装置1で星空を再現するための画像データ等のコンテンツを説明する。なお本発明は以下に掲げる事例に限定されず、様々な星空コンテンツに対応できることは言うまでもない。
図38、図39、図40は、星空シート保持シート12に取り付けられた複数(実施例では3枚)の第1の星空シート200a〜第3の星空シート200cの発光素子星や透過光星や自発光星で再現される星空をそれぞれ示す図である。具体的に図38は第1の星空シート200aで再現されるオリオン座50の全体の星空を示す図である。オリオン座50には、三ツ星51や小三ツ星52などの星の並びが特徴的である。、また図39は第2の星空シート200bで再現されるオリオン大星雲全体の星空を示す図であり、オリオン大星雲に含まれるトラペジウム5204などが再現されている。また図40は第3の星空シート200cで再現されるオリオン大星雲の中心部の星空を示す図であり、トラペジウム5204が詳細に再現されている。
図41〜図46ならびに図51は、2台のプロジェクターユニット16によって投影される映像を合成した図である。それぞれの画像の上半分は、テーブル上13に固定されたプロジェクターユニット16で投影され、下半分はテーブル下14に固定されたプロジェクターユニット16で投影される。これらの映像は、ディスプレイユニット15が第1の位置に位置づけされた時にはディスプレイ保持板1502の表面に投影され、第1の位置に位置づけされた時には、星空シート200の表面に投影される。
図41はオリオン座のベルト付近にある三ツ星51あたりの星空を現す映像である。図42は図41の視野を下方向に移動した時にオリオン座の小三ツ星52の中の一番北側の星5201が見えてくる時の星空を現す映像である。図43は図42の視野をさらに下方向へ移動した時に、オリオン座の小三ツ星52を構成する星5201〜5203が見えてきた時の星空を現す映像である。特に小三ツ星52の真ん中にはオリオン大星雲があり散光星雲5203の淡い光芒が再現されている。また図41〜図43の映像の明るさは、プロジェクターユニット16にフィルターが装着されていない最も明るい表示状態の時に、観察者83が望遠鏡2を用いて観察すると、本物の星空を観察するのと同じ明るさで観察されるような明るさに調整されている。
また図44はオリオン大星雲を拡大した時の映像である。また図45はオリオン大星雲の中心付近をさらに拡大した時の星空を表す映像である。星空シート200cで再現される最も暗い天体よりもさらに暗い天体を含んでいる。また図46はオリオン大星雲の中心付近を電波望遠鏡で観察した際の電波強度の分布5205を表す映像である。
図44と図45で示される映像の輝度は、プロジェクターユニット16に高減光フィルター1605が装着されて最も暗い表示状態の時に、観察者83が望遠鏡2を用いて観察すると、最も明るい星が、星空再現シート200で再現される星空の最も暗い星と同じ明るさとなるように調整されている。
また、中減光フィルター1606は高減光フィルター1605よりも16倍減光率が低い。そのため装着されている表示状態の時には、観察者83が望遠鏡2に比べて16倍の集光力(レンズの口径で4倍)の望遠鏡を用いて観察した時に、本物の星空を観察するのと同じ明るさで表示される。
また低減光フィルター1607が装着されている表示状態の時には、観察者83が望遠鏡2と同じ光学性能の望遠鏡にデジタルカメラを装着して本物の星空を写真撮影した時に観察される写真を見るのと同じ明るさで表示されるように、フィルターの濃度が設定されている。
図47と図48は、ディスプレイユニット15が第1の位置に位置づけされた時にディスプレイ1501の投影面に表示される映像を示す図である。図47は月の全体の様子を表す映像である。図48は図47の月の欠け際のクレーター部分を拡大して表す映像であり、ディスプレイ1501に図49ないしは図51に示す月のクレーター部分の拡大映像が表示される時に、プロジェクターユニット16によってディスプレイ保持板1502の表面に投影される映像を示す図である。ここで、図48に示される映像は、中央のディスプレイ1501が位置する部分は黒くなっており、ディスプレイ1501で表示されているクレーターの映像とともに観察されると、図50に示すように、つなぎ目を感じずに連続した月面として観察されるように、クレーターの画像位置や輝度が調整されている。
なお、ディスプレイ1501やプロジェクター1601で表示される映像は、いわゆる静止画以外にも、動画であっても良い。例えば、図41から図43の映像は、後述するメインプログラムの説明でも言及するように、天体導入体験をする観客84が天体導入用ダミー望遠鏡3を操作することで変化する視野方向31のデータやその時点で再現されている星空に関連した情報からワンチップマイコン301がその視野方向31の所定の視野角の範囲の星空に含まれる星の位置や明るさを算出し、それに基づきプロジェクター1601で表示する映像を生成するようにしても良い。この一連の星空の再生技術は、現在の星空再生プログラム等では既知の技術なので詳細は省略する。
また例えば、図49や図50や図51のクレーターの拡大のように、表面の模様などを観察する体験で使用される映像などでは、静止画の画像に基づいて、大気のゆらぎを加えて本物を観察したような効果を加えた動画であっても良い。
具体的には、図52に示すように、S1において、あらかじめ恒星状の天体を望遠鏡で観察してビデオ等で撮影し、S2において時間軸に沿ったフレームの画像について、その星像の明るさと直径をそれぞれ測定し、S3において時間に伴う明るさの変化、直径の変化に関する近似式を求め、S4においてゆらぎ効果を付加する元画像を入力し、S5においてS3で取得したゆらぎ効果の近似式を用いて任意の時刻の静止画の任意の位置の画素に及ぼされる明るさと直径の変化を演算してゆらぎ効果を付加したゆらぎ画像を生成し、S6においてS5で得られた複数のゆらぎ画像を映像フレームにしたゆらぎ映像として生成する方法も採用できる。
この方式では、大気のゆらぎの影響のない宇宙で撮影した惑星の高精細な映像を基に、地球上で観察した場合の大気の揺らぎの影響の有無やその大きさなどを適宜変更して体験でき、本物の星空を観察している臨場感が得られるという効果がある。
次に、望遠鏡2について説明する。望遠鏡2は、図37に示すように、ドーム4内の位置に4台設置され、その観察方向は使用する星空再現装置1の方向にそれぞれ固定されているのが望ましい。実施例では、2台の望遠鏡2a、2bは星空再現装置1aを観察するように、2台の望遠鏡2c、2dは星空再現装置1bを観察するように固定されている。
また望遠鏡2は図53に示すように、土台29に固定された鏡筒21の先端に対物レンズ22が固定され、後部には、鏡筒に対して直線移動するように保持されたドローチューブ24が備わり、ドローチューブ24に固定されたラック2401が、ドローチューブ駆動モーター23の回転軸に固定された駆動ギア2301と噛み合い、ドローチューブ駆動モーター23の回転軸の回動によってドローチューブ24が前後に駆動されるようになっている。またドローチューブ24には接眼レンズ27が交換可能に取り付けられている。
こうした構成により、対物レンズ22によって結像する星空再現装置1で再現される星の光を、接眼レンズ27で拡大して観察できるようになっている。
また接眼レンズ27に装着されている接眼レンズの種類を検出する接眼レンズ検出センサー25が鏡筒に取り付けられている。また鏡筒21には、ピント調整のための操作を入力するピント調整ボタン2302が固定されていて、「+」方向と「−」方向の操作を入力できるようになっている。またデジタルカメラ28が図の位置に取り付けられている。また、つまみ2601の操作によって、対物レンズ22からの星の光を反射せずに接眼レンズ27に通過させる第1のフリップ位置と、対物レンズ22からの星の光を反射してデジタルカメラ28に導く第2のフリップ位置とに位置づけ可能なフリップミラー26が取り付けられている。ドローチューブ駆動モーター23と、接眼レンズ検出センサー25と、ピント調整ボタン2302は、それぞれケーブルを介して星空再現装置1のワンチップCPU301に接続されている。
図61は天体導入操作体験用のダミー望遠鏡3を示す図である。ダミー望遠鏡3は、図37に示すように、ドーム4内の恒星投影器5に近い位置に設置されている。メイン鏡筒34は高価なレンズが備わっていないダミーの鏡筒である。ガイドスコープ32はメイン鏡筒34に取り付けられる。メイン鏡筒34は、垂直なZ軸を中心とする水平回転と水平なH軸を中心とする垂直回転で任意の天空方向に向けられるように支持され、脚部33を介して地面に設置される。またZ時とH軸周りの回転位置はそれぞれZ軸センサーとH軸センサーで検出され、星空再現装置1のワンチップCPU301に接続される。ワンチップCPU301は、後述するプログラムにしたがって動作し、ダミー望遠鏡が向く方向の天体の座標を計算する。ダミー望遠鏡3は、高価な対物レンズを装備していない以外は、一般的な経緯台式の望遠鏡と同じ構成であるので、詳細の説明は省略する。
次に第2の実施例のワンチップCPU301の動作について、ワンチップCPUのRAMエリアのデータ構成図(図64)、同じくROMに記録されたプログラムのフローチャート(図65、図66)ならびに、ROMないしは図示しない外部の記録手段やインターネットサーバー等に記録された星空関連情報(図67、図68)にしたがって説明する。
図65は、第2の実施例のメインルーチンのフローチャートである。
S21においてワンチップCPU301は、LED駆動IC302を介して点灯制御されるLED素子群、すなわちバックライトLED105(LED111〜LED444)、白色チップLED305(LED1〜LED8)、光害ランプ110(LED0)、広角UVランプ(UV1)、狭角UVランプ(UV11〜UV44)を全て消灯し、S22へ進む。
S22においてワンチップCPU301は、ドラム11の回転位置を初期位置である第1の星空シート200aをライトボックス100の前に位置づけされる位置に初期化する。具体的にはワンチップCPU301は2次元バーコードセンサー17によって2次元バーコード240を読み込み、2次元バーコード240の位置すなわち星空シート200の装着位置と星空シート番号SheetNoを抽出し、抽出されない場合は抽出されるまでドラム11を初期位置方向へ僅かに回転し、抽出された場合は2次元バーコード240の位置と抽出された星空シート番号SheetNoにもとづき、ドラム11を初期位置にするようにドラム駆動モーター1104を駆動する。
S23においてワンチップCPU301は、RAMの変数のデフォルトの設定として、ModeNoを0にセットし、StepNoを1に設定し、Ageを小学校4年生に相当する10に設定し、Focousを0に設定し、Languageを日本語を示す“JP”に設定し、Experienceを“経験なし”にセットし、Placeをその地名を示す“プラネタリウムA”にセットして、S24へ進む。
S24においてワンチップCPU301は、ネットワーク通信手段を介してインターネットサーバーにアクセスして、サーバーに記録されている星空関連情報の中から、ModeNoとStepNoに基づいて、その動作モードの指定のステップにおける、継続時間を示すTime、シーン番号を示すSceneNoと遷移条件を示すTrig、その動作モードに含まれるステップ数を示すMaxStepNoを読み込み、それぞれRAMに記録した後、S25へ進む。
S25においてワンチップCPU301は、同様にネットワーク通信手段を介してインターネットサーバーにアクセスして、シーン番号がSceneNoであるシーン情報を読み込み、RAMの記憶領域に記録した後、S26へ進む。ここでシーン情報は例えば図68に示すような情報を含み、それを記憶する記録領域がRAMに設定されている。
S26においてワンチップCPU301は、シーン情報に含まれる星空シート番号SheetNoに対応して、第1の星空シート200a〜200cのいずれかをライトボックス100に位置づけるようにドラム駆動モーター1104を駆動する。具体的にはSheetNo=1の時は第1の星空シート200aを、SheetNo=2の時は第2の第2の星空シート200bを、SheetNo=3の時は第3の星空シート200cが位置づけられる。その後ワンチップCPU301は、シーン情報に含まれるLED素子群それぞれの輝度やシンチレーション量を示すデータをセットする。
すると、後述する点灯制御用タイマ割り込みの処理プログラムのS201において、ワンチップCPU301が所定の輝度とシンチレーションの量でLED素子群をそれぞれ駆動するようになる。なおここではLED素子群は多数に及ぶので詳細なデータ構造の説明は省略する。
またワンチップCPU301は、フィルター円盤1603がシーン情報に含まれるフィルター設定データFilterが示すフィルターになるように、モーター駆動手段を介してフィルター円盤駆動モーター1608を駆動する。またワンチップCPU301は、ディスプレイユニット15がシーン情報に含まれるディスプレイユニットの位置データDisplayPosが示す位置になるように、モーター駆動手段を介してディスプレイユニット駆動モーター1505を駆動する。
具体的にワンチップCPU301は、Filter=1の時は高減光率フィルター1605を、Filter=2の時は中減光率フィルター1606を、Filter=3の時は低減光率フィルター1607を、Filter=0の時はフィルターが取りつかない窓1604を位置づけるようにフィルター円盤駆動モーター1608を駆動する。
またワンチップCPU301は、DispPos=1の時は、ディスプレイユニット15は第1の位置(表示位置)に、DispPos=2の時は、ディスプレイユニット15は第2の位置(退避位置)にそれぞれ位置づけるようにディスプレイユニット駆動モーター1505を駆動する。
その後ワンチップCPU301は、S261へ進む。
S261においてワンチップCPU301は、観察者83が所有するIDカード831に含まれる観察者識別情報(MyID)を観察者識別情報読み取り装置832を介して読み取り、観察者識別情報入力手段から入力する。そしてワンチップCPU301は、MyIDに基づきインターネットに設置された観察者データベースからその観察者83に関連する観察者情報を取得する。観察者情報は、年齢MyAge、使用する言語MyLanguage、望遠鏡の合焦位置補正値MyFocous、過去の観察体験情報のリストMyExperience、ハンディキャップに関する情報MyHandyなどが含まれる。
ワンチップCPU301はそれぞれRAMの所定の記憶領域、すなわちMyAgeは年齢Ageへ、MyLanguageは言語Languageへ、MyFocousは合焦位置補正値Focousへ、MyExperienceが観察体験情報リストExperienceへ、MyHandyはハンディキャップHandyにセットし、S262へ進む。ここで、MyIDの読み込みに失敗した場合は、RAMの設定値は更新されない。
S262においてワンチップCPU301は、シーン情報に含まれる観察体験情報ExperienceNoの値がExperienceの中に含まれるか検査し、含まれる場合はその観察者は過去にその観察体験を経験しているので、観察体験経験済フラグExperienceMachを1にセットし、含まれない場合は0にリセットし、S263へ進む。
S263においてワンチップCPU301は、接眼レンズ検出センサー25で検出された接眼鏡の種類を読み込み、望遠鏡の対物レンズなどの情報とともに望遠鏡光学系情報ScopeInfoにセットし、S264へ進む。
S264においてワンチップCPU301は、ダミー望遠鏡3のZ軸センサーとH軸センサーの回転位置を入力し、ダミー望遠鏡3が向くドーム4の天空上の座標に関連した情報を計算して視野方向情報DumyPosにセットし、S265へ進む。
S265においてワンチップCPU301は、Place、SceneNo、Age、Language、ExperienceMach、Handy、ScopeInfo、DumyPosなどの設定値をパラメータとして、ディスプレイ1501に表示される画像やプロジェクター1601で表示される画像や全天映像投影装置6の映像に追加される視野表示61の画像や解説者が参照する解説参考情報をインターネットサーバーから読み取る。ワンチップCPU301は、画像をそれぞれの表示装置で表示し、解説参考情報を解説者のもつ携帯端末に送信して解説者が参照できるようにして、S266へ進む。ここで、各パラメータに対してインターネットサーバーからどのような画像や解説参考情報が取得されるべきかについては、以下の説明において説明する。
なおS265におけるワンチップCPU301の処理は、この方式に限定されず、Place、SceneNo、Age、Language、ExperienceMach、Handy,ScopeInfo、DumyPosなどの設定値に基づいてワンチップCPU301が適切な情報を取得するようにすれば他の方法で情報を取得しても良い。
S266においてワンチップCPU301は、Focousの値に基づき、モーター駆動手段を介してドローチューブ駆動モーター23を駆動して望遠鏡2の接眼レンズ27のピント位置を補正し、S27へ進む。なお、ワンチップCPU301は、メインルーチンと平行して、後述するピント合わせプログラムに基づいて動作するため、望遠鏡2の接眼レンズ27のピント位置はワンチップCPU301によって逐次補正され、その状態はRAMのFocousに逐次反映される。
S27においてワンチップCPU301は、S24以降に経過した時間がTimer以上経過したかどうか判断し、NoであればS27の動作を繰り返し、YesであればS28へ進む。
S28においてワンチップCPU301は、Trigが0(時間が経過したら次のステップに自動的に次に進む)か判断し、YesであればS32へ進み、NoであればS29へ進む。
S29においてワンチップCPU301は、後述するリモコン信号割り込み処理で検出・入力した赤外線リモコンの操作ボタン情報KeyNoを参照し、「0」のボタンが押されていたか判断し、YesであればS32へ進み、NoであればS30へ進む。
S30においてワンチップCPU301は、KeyNoを参照し、「1」〜「8」のボタンが押されていたか判断し、YesであればS35へ進み、NoであればS31へ進む。
S31においてワンチップCPU301は、KeyNoを参照し、観察者の交代を示す「9」のボタンが押されていたか判断し、YesであればS37へ進み、NoであればS26へ戻る。
S37においてワンチップCPU301は、観察者識別情報MyIDの値と観察体験情報ExperienceNoと合焦位置補正値Focousをインターネットサーバーに送信して、観察者データベースのMyIDで識別される観察者の情報を更新させた後、S38へ進む。具体的には、観察体験情報ExperienceNoを過去の観察体験履歴リストMyExpreienceに追加し、合焦位置補正値MyFocousを合焦位置補正値Focousで更新する。
S38においてワンチップCPU301は、観察者識別情報MyIDの値と場所Placeと現在の時刻をインターネットサーバーに送信し、場所Placeで示される場所毎に準備された観客データベースに、MyIDと時刻を要素にしたレコードを追加させるように動作した後、S26へ戻る。
S35においてワンチップCPU301は、KeNoのボタンの数値(1〜8)をModeNoに設定した後、S36に進む。
S36においてワンチップCPU301は、StepNoを1に初期化して、S24へ戻り、押されたボタンに基づいて新しいモードの動作をスタートする。
S32においてワンチップCPU301は、StepNoを+1して、S33へ進む。
S33においてワンチップCPU301は、StepNoがMaxStepNoを越えているか判断し、NoであればS24へ戻り、YesであればS34へ進む。
S34においてワンチップCPU301は、現在のModeNoが最大値であればModeNo=1とし、最大値でなければModeNoを+1した後、S24へ戻る。
次に、図66のフローチャートに基づき、メインルーチンと平行して動作する合焦位置補正動作について説明する。
S50においてワンチップCPU301は、KeyNoが「+」であるか判断し、Yesの場合は、S54へ進み、Noの場合はS51へ進む。
S51においてワンチップCPU301は、KeyNoが「−」であるか判断し、Yesの場合は、S55へ進み、Noの場合はS52へ進む。
S52においてワンチップCPU301は、望遠鏡2のピント調整ボタン2302の操作状態が「+」であるか判断し、YesであればS54へ進み、Noであれば、S53へ進む。
S53においてワンチップCPU301は、望遠鏡2のピント調整ボタン2302の操作状態が「−」であるか判断し、YesであればS55へ進み、Noであれば、S50へ戻る。
S54においてワンチップCPU301は、Focousを+1した後、S56へ進む。
S55においてワンチップCPU301は、Focousを−1された後、S56へ進む。
S56においてワンチップCPU301は、Focousの値が所定の値域であることを検証し、外れていた場合は値域に収まるように調整した後、そのFocousの合焦補正値に基づいてドローチューブ駆動モーター23を駆動してドローチューブ24を前後に駆動して所定の合焦位置に接眼レンズ27を位置づける。
なお第2の実施例では、ワンチップCPU301は、図20のリモコン信号入力割り込みルーチンならびに、図21の点灯制御用タイマ割り込みルーチンと同様な動作を行う。
次に第2の実施例の動作と作用効果について、プラネタリウム番組の流れに沿って説明する。なお、ワンチップCPU301による動作は既に詳細を説明したので、以下の説明では特徴的な動作についてのみフローチャートのステップ番号を示して説明する。
第2の実施例でのプラネタリウム番組は6部に分かれ、それぞれ異なる星空観察体験を効果的にかつ効率的に提供する。
まず第1部では、観客席7に着席する観客81に対して、従来の投影式プラネタリウムと同様に、全天の星座の位置関係や星の動きなどを肉眼で観察する星空観察体験が提供される。実施例では具体的に図36に示すように、冬の星座であるオリオン座50の位置や、月54の位置、その日周運動などを肉眼で観察する。
具体的には、まず解説者はプラネタリウムへ観客を入場させる前に、星空再現装置1を動作させる。するとワンチップCPU301のプログラムがスタートして、S23において初期状態の設定値が設定される。そ後、S24、S25の動作によって「ModeNo=0」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=0」の情報に基づくシーン情報がサーバー等から読み込まれる。
次にS26において、そのシーン情報に基づき第1の星空シート200aがライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群は消灯し、ディスプレイ1501は退避位置に位置づけられ、フィルター円盤1603は高減光フィルター1605がセットされる。
またS265において、インターネットサーバーからディスプレイ1501とプロジェクター1601に表示される画像として「真っ黒」の画像が、全天映像投影装置6に追加される映像は無い状態が取得される。その結果、星空再現装置1には何も表示されない待機状態となる。
また解説者参考情報に取得される情報は、観客データベースや以下の検索結果が表示される。すなわちインターネットサーバーは、観客データベースの中からこの場所Placeに現在の30分以内に訪れたすべての観客のMyIDを検出し、それぞれのMyIdに基づき観察者データベースから観察者情報を抽出し、それをまとめた情報をワンチップCPU301へ送信する。これにより、解説者の携帯情報端末に、現在の観客の情報が表示される。
続いてワンチップCPU301はS27でわずかな時間、時間待ちした後、「Trig=1」であるために、赤外線リモコン111の「0〜9」が操作されるまで、S26→S261→S262→S263→S264→S265→S266→S27→S28→S29→S30→S31→S26のループを繰り返す。
解説者は、プラネタリウムに入るすべての観客に対して、観客が所持するIDカード831に観察者識別情報読み取り装置832をかざす。すると上記のループのS261においてワンチップCPU301は観察者識別情報MyIDを検出する。その後解説者は赤外線リモコン111の「9」を押す。するとワンチップCPU301はS31でその操作を検出し、S37を行った後、S38においてインターネットサーバーの観客データベースにその観客のMyIDと時刻を追加されるように動作した後、再びS26へ戻る。
すると、ワンチップCPU301が次にS265の動作を行うと、解説者の携帯情報端末には、追加された観客に関する観察者情報が表示されるようになる。
すべての観客がプラネタリウムに入場すると、携帯情報端末には全ての観客の観察者情報が表示される。これによって、解説者は、観客の年齢層や日本語以外を母国語にする観客の有無、字幕を必要とする観客の有無、過去の観察体験の傾向などを把握したうえで、解説内容や指導内容を観客に合わせて最適化できるという効果があり、これにより目標性能11「観察者に応じた解説情報の提供」が実現される。
その際、星空再現装置1は非動作であるがドーム4の壁面近くに設置されているのと、望遠鏡2が恒星投影器5の近傍に設置されていないので、観客席7は従来と同様の場所に確保できる。そのため、観客81がドーム4に再現される天体を観察するにあたって、星空の位置の歪などの影響が最小限に維持できるという効果があり、これにより目標性能5「歪の無い星の位置関係」が実現される。なお、実施例では説明しないが、聴覚に障害を持つために音声による解説が聞こえない観客に対して、星空再現装置1のプロジェクター1601によって字幕を投影するように本発明を活用しても良い。
次に第2部では、星空再現装置1の近くに誘導された観客7に対して、星空再現装置1を用いてオリオン座の星空を再現し、肉眼や双眼鏡で観察する体験が提供される。
具体的には、解説者は、赤外線リモコン111の「1」を押す。するとワンチップCPU301はS30からS35へ進み、S35において「ModeNo=1」、S36において「StepNo=1」と設定した後、S24、S25と進み、「ModeNo=1」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=1」の情報に基づくシーン情報をサーバー等から読み込む。
次にS26において、そのシーン情報に基づき第1の星空シート200aがライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群が所定の輝度で点灯され、ディスプレイ1501は退避位置に位置づけられ、フィルター円盤1603は高減光フィルター1605がセットされる。
またS265において、ディスプレイ1501とプロジェクター1601とで表示される画像がともに「真っ黒」の画像となり、全天映像投影装置6に追加される映像は無い状態となる。その結果、第1の星空シート200aによる星空のみが再現される。また解説者の携帯情報端末に表示される情報は、第1部と同様に全ての観客の観察者情報が表示される。
続いてワンチップCPU301はS27でわずかな時間、時間待ちした後、「Trig=1」であるために、赤外線リモコン111の「0〜9」が操作されるまで、S26→S261→S262→S263→S264→S265→S266→S27→S28→S29→S30→S31→S26のループを繰り返す。その結果、図38に示すようなオリオン座50が再現される状態が維持される。
続いて解説者は、観客席7に着席する観客7のうち何名かをグループにして、星空再現装置1から少し離れた場所に誘導する。その後解説者は、誘導された観客82に、双眼鏡9を用いてその星空を観察したり、デジカメ10を用いて写真撮影を行う体験を提供する。この時、第1の実施例で説明したように、星空再現装置1は、目標性能1〜目標性能4を実現しているので、高精細な星空を観察できる体験が提供できるという効果がある。また、解説者は携帯情報端末の観察者情報を参照できるので、解説内容をグループに合わせて最適化できるという効果があり、これにより目標性能11「観察者に応じた解説情報の提供」が実現される。
続いて第3部では、ダミー望遠鏡3の近くに移動した観客84に、オリオン大星雲などの狭い星空領域に点在する星雲や星団などを視野内に導入する体験が提供される。観客83には、その様子を望遠鏡2を用いて観察する体験が提供される。
具体的には、まず解説者は、観客を望遠鏡2が設置されている場所へ誘導する。そして解説者は赤外線リモコン111の「2」を押す。するとワンチップCPU301はS30からS35へ進み、S35において「ModeNo=2」、S36において「StepNo=1」と設定した後、S24、S25と進み、「ModeNo=2」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=2」の情報に基づくシーン情報をサーバー等から読み込む。
続いてS26においてワンチップCPU301は、第1の星空シート200aを引き続きライトボックス100の前面に位置づける(新たに駆動しない)一方で、LED群を消灯し、第1の星空シート200aの発光素子星、透過光星、印刷発光星が再現されない状態にする。ワンチップCPU301は、ディスプレイ1501を退避位置である第2の位置に位置づけ、フィルター円盤1603をフィルターが取りつかない窓1604にセットする。
続いてS261においてワンチップCPU301は、望遠鏡2の接眼鏡27を覗く観察者83が所有するIDカード831に含まれる観察者識別情報(MyID)を読み込み、その観察者83固有の情報をサーバーから読み込む。
次にS263においてワンチップCPU301は、望遠鏡光学系情報ScopeInfoを読み込み、S264において視野方向情報DumyPosを計算する。
次にS265においてワンチップCPU301によって、ディスプレイ1501で表示される画像として「真っ黒」の画像が取得され、プロジェクター1601で表示される画像として、ダミー望遠鏡3が向く視野方向31で望遠鏡光学系情報ScopeInfoから導かれた視野範囲に観察される星空の星空導入画像が取得され、全天映像投影装置6に追加される映像としてドーム4の内面のダミー望遠鏡が向く視野方向31の位置に望遠鏡光学系情報ScopeInfoから導かれた視野範囲の丸いカーソル61を表示させるような視野表示画像が取得される。解説者の携帯情報端末に表示される情報は、第1部と同様に全ての観客の観察者情報が取得される。
ここで、フィルター円盤1603はフィルターが取りつかない窓1604にセットされているので、プロジェクター1601から投影される星空の導入画像の輝度は最も高い。そのため観察者83が観察する星空再現装置1で再現される星空の輝度は、実際の星空を観察するのと同様な輝度にすることが可能である。
ここで観客84が図36に示す視野方向31、すなわちオリオン座50の三ツ星51付近の星空の方向にダミー望遠鏡3を向けている場合、図41に示すような導入画像が取得される。また全天映像投影装置6に追加する映像によって、丸いカーソル61が図36に示すような位置に表示される。
次にS266においてワンチップCPU301によって、合焦補正値Focousの値に基づき望遠鏡2の合焦位置が更新され、観察者83の視度の違いが補正される。この結果、観察者83は適切なピントで星空を観察できる。このように、第2の実施例の星空再現装置は、視度が異なる複数の観客83が望遠鏡2を交代で使用する時にも、観客83に応じて自動的に合焦動作が行われるので、効率的な観察体験が提供できるという効果があり、目標性能10「セッティングの効率化」が実現される。
引き続きS27ではワンチップCPU301が僅かの時間のみ時間待ちをして直ちにS28に進み、Trig=1であるのでS29へ進む。ここで解説者はしばらく赤外線リモコン111を操作しないので、ワンチップCPU301は、S29→S30→S31→S26→S261→S262→S263→S264→S265→S266→S27→S28→S29とループを繰り返す。
ワンチップCPU301はこのループを短時間で繰り返すため、観客84がダミー望遠鏡3の向く視野方向31を変更すると、その視野方向31の変化に対応して星空の導入画像とカーソル61の位置が短時間で更新される。このため、観客83は、望遠鏡2で観察している星空領域をカーソル61によって天空上で確認しながら、接眼レンズ27を通じてその星空を観察できるという効果があり、目標性能9「望遠鏡で観察する天体の天空上の位置の把握」が実現できる。
具体的には、観客84がダミー望遠鏡3の視野方向31を図41に示すオリオン座の三ツ星51の方向から、図41の右下に移動させると、観客83が望遠鏡2で観察する視野には、図42に示すようにオリオン座の小三ツ星の最も北側の星5201が入ってくる。さらに観客84が視野方向31を右下に移動させていくと、観客83が望遠鏡2で観察する視野に図43に示すオリオン座の小三ツ星5201、5202とオリオン大星雲の恒星5204や散光星雲5203が入ってくる。
またS265においてワンチップCPU301がDumyPosとScopeInfoをサーバーへ送信して画像を取得する際に、サーバーが次のように動作すると望ましい。すなわち、サーバーがDumyPosとScopeInfoを入力して、望遠鏡2の視野内にオリオン大星雲5203の画像が含まれるか判断し、含まれる場合は、図43のようにオリオン大星雲の位置にオリオン大星雲の解説情報を表示するような画像をワンチップCPU301に送信するように動作すると望ましい。こうすると、観客83が観察する望遠鏡2の視野内に適切な解説情報が表示され、学習効果が高まるという効果がある。
ここで、ダミー望遠鏡3を操作する観客84は、ダミー望遠鏡3の向く視野方向31を確認しながらダミー望遠鏡を操作できるので、天体導入操作の体験学習を効果的に行えるという効果があり、目標性能7「導入体験の提供」が実現できる。
また望遠鏡2の台数が限られているので、多数の観客83は望遠鏡2を交代で観察する。観客83が交代した場合、ワンチップCPU301はS261において観客83が所持するIDカード831からMyIDを読み込み、それに基づいて観客83の観察者情報を読み取り、年齢Ageや言語Languageや合焦位置補正値Focousや観察体験情報Experienceやハンディキャップ情報Handyを更新する。その結果、観客83が英語を母国語とする場合、言語Languageが「英語」となり、S265において、図43に示した「オリオン大星雲」という解説文字が「ORION NEBURA」とされた画像が取得される。またハンディキャップ情報Handyが聴覚に障害のある者を示す「要字幕」という情報である場合は、解説者が音声で解説をする内容を文字で表示した解説音声の字幕が追加された画像が取得される。このように、観客83に最適な情報が取得されるので学習効果が高まるという効果があり、目標性能11「観察者に応じた解説情報の提供」が実現される。
なお、解説者は、観客83が交代した時に赤外線リモコン111の「9」のボタンを操作する。すると、S31においてワンチップCPU301の動作はS37に進み、ワンチップCPU301は、サーバーに記録された観客83の観察者情報のうち、MyExperienceやMyFocousを更新する。その結果、第4部以降に観客83が望遠鏡2で観察する際にも、ワンチップCPU301は更新された観察者情報に基づいて動作して本発明の効果が継続して提供される。
続いて第4部では、観客83に望遠鏡2を用いてオリオン大星雲を詳細に観察する体験が提供される。具体的には、まず解説者は、赤外線リモコン111の「3」を押す。するとワンチップCPU301はS30においてS35へ進み、S35において「ModeNo=3」、S36において「StepNo=1」と設定した後、S24、S25と処理が進み、「ModeNo=3」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=3」の情報に基づくシーン情報をサーバー等から読み込む。
続いてS26においてワンチップCPU301は、第2の星空シート200bをライトボックス100の前面に位置づけ、LED群を所定の輝度で点灯する。すると第2の星空シート200bの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって図39に示される星空が観察される状態になる。またワンチップCPU301は、ディスプレイ1501を退避位置である第2の位置に位置づけ、フィルター円盤1603を高減光フィルター1605にセットする。
次にS265においてワンチップCPU301によって、ディスプレイ1501で表示される画像として「真っ黒」の画像が取得され、プロジェクター1601で表示される画像として、オリオン大星雲の散光星雲5203や暗い恒星を示す画像が取得される。これにより第2の星空シート200bの表面には図44に示すような映像が投影され、観察者は、第2の星空シート200bの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって再現される図39の星空とともに観察できるようになる。またワンチップCPU301によって、全天映像投影装置6に追加される映像としてドーム4の内面のダミー望遠鏡が向く視野方向31の位置に、望遠鏡光学系情報ScopeInfoと星空再現装置の星空の拡大率DispMagから導かれた視野範囲の丸いカーソル61を表示させるような画像が取得される。またワンチップCPU301によって、解説者の携帯情報端末に表示される情報としてオリオン大星雲に関する解説情報が取得される。
ここでフィルター円盤1603は高減光フィルター1605にセットされているので、プロジェクター1601から投影されるオリオン大星雲の散光星雲5203のガス雲や暗い恒星の部分の輝度が低く抑えられる。その結果、望遠鏡2で観察すると輝度の高い部分はかろうじて肉眼で視認でき、暗い部分は写真撮影でないと観察できないという、実際のオリオン大星雲のガス雲や暗い恒星を観察するのと同様な観察体験が提供できる。
このように、第2の実施例の星空再現装置1は、プロジェクター1601と高減光フィルター1605の作用により、星空シート200で再現される最も暗い天体よりもさらに暗い天体を再現できるので、星空シート200の発光素子星と透過光星と印刷発光星で再現される星の輝度の幅(ダイナミックレンジ)をさらに拡大可能であるという効果があり、目標性能1「広いダイナミックレンジ」をさらに高いレベルで達成できる。
次に解説者は、赤外線リモコン111の「4」を押す。するとワンチップCPU301の動作はS35へ進み、S35において「ModeNo=4」、S36において「StepNo=1」と設定した後、S24、S25へと進み、「ModeNo=4」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=4」の情報に基づくシーン情報をサーバー等から読み込む。
続いてS26においてワンチップCPU301は、第2の星空シート200bを引き続きライトボックス100の前面に位置づけ、LED群を「SceenNo=3」の時に比べて発光素子星、透過光星、印刷発光星がそれぞれ16倍の輝度となるように駆動する。その結果、「ModeNo=3」の時に比べて約3等級暗い天体まで再現される。ワンチップCPU301は、ディスプレイ1501を退避位置である第2の位置に位置づけ、フィルター円盤1603を中減光フィルター1606にセットする。
次にS265においてワンチップCPU301は、ディスプレイ1501で表示される画像、プロジェクター1601で表示される画像、全天映像投影装置6に追加される映像を取得する。これらの画像は「SceenNo=3」の時と同じ画像が取得される。また解説者の携帯情報端末に表示される情報は、オリオン大星雲を4倍大きな口径の望遠鏡で観察した状態である旨を説明する解説情報が取得される。
ここで、中減光フィルター1606の減光率は高減光フィルター1605の16分の1であるので、プロジェクター1601から投影されるオリオン大星雲の散光星雲5203のガス雲や暗い恒星の部分の輝度は「SceenNo=3」に比べて16倍明るい。その結果、星空再現装置1で再現される星空は、「SceenNo=3」の時に比べると16倍明るく再現され、望遠鏡2に比べて4倍大きなレンズを備えた高性能な望遠鏡で観察するのと同じような観察体験が提供できる。そのため、大型で高価な大口径望遠鏡を購入する必要が無く購入コストを削減できるという効果があり、目標性能4「低コスト」を実現できる。また、限られたドーム4内に複数の望遠鏡を設置する必要が無いし、望遠鏡や接眼鏡などの観察装置のセッティングを変更する必要が無いなど、観察体験を効率的に提供できるという効果があり、目標性能10.セッティングの効率化」を実現できる。
続いて第5部では、観者83に対して、オリオン大星雲の中心部分にあるトラペジウム5204を望遠鏡2で詳細に観察する体験や、デジタルカメラ28を用いて写真撮影する写真撮影体験が提供される。
具体的には、まず解説者は、赤外線リモコン111の「5」を押す。すると動作はS30においてS35へ進み、S35において「ModeNo=5」、S36において「StepNo=1」と設定された後、S24、S25と処理が進み、「ModeNo=5」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=5」の情報に基づくシーン情報がサーバー等から読み込まれる。
続いてS26において、第3の星空シート200cがライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群は基準の輝度で点灯され、第3の星空シート200cの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって図40に示される星空が観察される状態になる。またディスプレイ1501は退避位置である第2の位置に位置づけられ、フィルター円盤1603は高減光フィルター1605にセットされる。
次にS265において、ディスプレイ1501で表示される画像として「真っ黒」の画像が取得され、プロジェクター1601で表示される画像として、オリオン大星雲の中心にあるトラペジウム5204周辺のガス雲や暗い恒星を示す画像が取得される。これにより第3の星空シート200cの表面には図45に示すような映像が投影され、観察者は、第3の星空シート200cの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって再現される図40の星空とともに観察できるようになる。
次に全天映像投影装置6に追加される映像としてドーム4の内面のダミー望遠鏡が向く視野方向31の位置に望遠鏡光学系情報ScopeInfoと星空再現装置の星空の拡大率DispMagから導かれた視野範囲の丸いカーソル61を表示させるような画像が取得される。解説者の携帯情報端末に表示される情報は、オリオン大星雲のトラペジウム5204に関する解説情報が取得される。
ここで第4部と同様に、フィルター円盤1603は高減光フィルター1605にセットされているので、プロジェクター1601から投影されるオリオン大星雲の中心にあるガス雲や暗い恒星の輝度は低く抑えられ、望遠鏡2で観察すると輝度の高い部分はかろうじて肉眼で視認できるが暗い部分は写真撮影でないと観察できない等、実際のオリオン大星雲のガス雲や暗い恒星を観察するのと同様な観察体験が提供できる。
ここで観客83は望遠鏡2のつまみ2601を操作してフリップミラー26を第2のフリップ位置に位置づける。すると、対物レンズ22からの星の光はフリップミラー26で反射してデジタルカメラ28に導かれる。そして観客83はデジタルカメラ28を用いてオリオン大星雲の中心部分の写真撮影を行う。
すると、肉眼では視認できないような暗い部分がデジタルカメラ28によって撮影され、実際のオリオン大星雲のガス雲や暗い恒星を観察するのと同様な観察体験が提供される。
このように、望遠鏡2の接眼レンズ27を交換することなく観察対象を拡大して観察できるので、接眼鏡を交換する等の観察装置のセッティングを変更する必要が無く、観察体験を効率的に提供できるという効果があり、目標性能10.セッティングの効率化」を実現できる。
次に解説者は、赤外線リモコン111の「0」を押す。すると動作はS28においてS32へ進み、S32において「StepNo=2」となる。S33では、まだ「StepNo>MaxStepNo」ではないのでS24、S25と処理は進む。そしてS25において「ModeNo=5」「StepNo=2」で示されるシーン番号「SceneNo=6」の情報に基づくシーン情報がサーバー等から読み込まれる。
続いてS26において、第3の星空シート200cが引き続きライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群は所定の輝度となるように駆動される。すると第3の星空シート200cの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって図40に示される星空が観察される状態になる。またディスプレイ1501は退避位置である第2の位置に位置づけられ、フィルター円盤1603は中減光フィルター1606にセットされる。
次にS265において、ディスプレイ1501で表示される画像として「真っ黒」の画像が取得され、プロジェクター1601で表示される画像として、オリオン大星雲の中心にあるトラペジウム5204の周辺を電波望遠鏡で観察した時の電波強度を示す画像が取得される。これにより第3の星空シート200cの表面には図46に示すような映像が投影され、観察者は、第3の星空シート200cの発光素子星、透過光星、印刷発光星によって再現される図40の星空とともにオリオン座中心部の電波強度を示す画像を観察する。
このように、同一の第3の星空シート200cによって再現される星空であっても、プロジェクター1601によって投影される画像を変更することが可能である。そのため、観察者は、実際の天体を光学望遠鏡で観察した時には体験できないような疑似的な観察を体験でき、星空の理解がより深まるという効果がある。
続いて第6部では、観客83に対して、月54を望遠鏡2を用いて観察する体験が提供される。
具体的には、まず解説者は、赤外線リモコン111の「6」を押す。すると動作はS30においてS35へ進み、S35において「ModeNo=6」、S36において「StepNo=1」と設定された後、S24、S25と処理が進み、「ModeNo=6」「StepNo=1」で示されるシーン番号「SceneNo=7」の情報に基づくシーン情報がサーバー等から読み込まれる。
続いてS26において、第1の星空シート200aがライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群は消灯される。またディスプレイ1501は退避位置である第2の位置に位置づけられ、フィルター円盤1603はフィルターが取りつかない窓1604にセットされる。
次にS265において、ディスプレイ1501で表示される画像として「真っ黒」の画像が取得され、プロジェクター1601で表示される画像として、月の全体画像を示す画像が取得される。これにより星空再現装置1には図47に示すような映像が投影される。
次に全天映像投影装置6に追加される映像としてドーム4の内面のダミー望遠鏡が向く視野方向31の位置に望遠鏡光学系情報ScopeInfoと星空再現装置の星空の拡大率DispMagから導かれた視野範囲の丸いカーソル61を表示させるような画像が取得される。解説者の携帯情報端末に表示される情報は、月に関する解説情報が取得される。
ここで、月は満ち欠けするが、プロジェクター1601から所望の月齢の月の画像を投影すれば柔軟に対応できるという効果がある。
次に解説者は、赤外線リモコン111の「0」を押す。すると動作はS28においてS32へ進み、S32において「StepNo=2」となる。S33では、まだ「StepNo>MaxStepNo」ではないのでS24、S25と処理は進む。そしてS25において「ModeNo=6」「StepNo=2」で示されるシーン番号「SceneNo=8」の情報に基づくシーン情報がサーバー等から読み込まれる。
続いてS26において、第1の星空シート200aがライトボックス100の前面に位置づけされ、LED群は消灯される。またディスプレイ1501は表示位置である第1の位置に位置づけられ、フィルター円盤1603はフィルターが取りつかない窓1604にセットされる。
次にS265において、ディスプレイ1501で表示される画像が取得される。この時サーバーは、望遠鏡光学系情報ScopeInfoに含まれる対物レンズや接眼鏡の情報によって観察する光学系の倍率を検出し、低倍率であれば図49に示すクレーターの画像をワンチプCPU301へ送信し、高倍率であればクレーターの位置を示す詳細な解説情報を視認できるので図51に示すように解説情報が表示されたクレーターの画像をワンチップCPU301へ送信する。またプロジェクター1601で表示される画像として、図48に示す月の欠け際のクレーターを示す画像が取得される。ここで、図48に示される映像は、中央のディスプレイ1501が位置する部分は黒くなっており、観察者がディスプレイ1501で表示されているクレーターの映像とともに観察すると、図50に示すように、つなぎ目を感じずに連続した月面として観察できる。
ここで、観察者が接眼レンズ27を交換して望遠鏡2の倍率を変更すると、S263においてワンチップCPU301はその変更を検出し、望遠鏡光学系情報ScopeInfoを変更する。その結果、S265で取得されるディスプレイ1501で表示される画像が、その倍率で観察する場合に適した画像が取得されるようになる。このため観察する光学系のセッティングに応じて自動的に最適な解説情報が提供されるという効果がある。
以上説明したように、第2の実施例では、第1部において全天の星空を肉眼で観察する時には、既存の投影式プラネタリウムを利用して全天の星空を再現し、第2部から第6部においては、双眼鏡や望遠鏡やデジカメ等で観察する星空の一部分を、星空再現装置1を利用して再現するため、星空観察プログラムの流れに沿った効果的な星空体験が提供できるという効果がある。
また、星空再現装置1は、複数の星空シート200を交換して使用できるので、星空再現装置1の目標性能8「天空上の複数の天体の観察」を実現できるという効果がある。例えば天球上の位置がほぼ真反対に位置する天体、例えば、夏の銀河に位置する「いて座」と、冬の銀河に位置する「オリオン座」と、銀河北極に位置する「かみのけ座」と、銀河南極に位置する「ちょうこくしつ座」にそれぞれ存在する星雲・星団を、望遠鏡で見比べるような観察体験も、簡単に提供できるという効果がある。
また、第2の実施例の星空再現装置1は第1の実施例で説明したのと同様に、目標性能1、目標性能2、目標性能3、目標性能4を実現するので、全天の星空を再現する恒星投影器5や全天映像投影装置6に、望遠鏡2での詳細な観察に対応できる程の高い目標性能を付与する必要が無く、部分的な星空を再現する星空再現装置1にのみ目標性能1、目標性能2、目標性能3を付与すれば良い。このため本発明の星空再現装置1を既存の投影式プラネタリウム施設とともに活用することで、本発明の達成すべき目標を高いレベルで実現できるという優れた効果がある。
また、第2の実施例では、上記の説明のような位置に星空再現装置1と望遠鏡2が設置されるので、ドーム4に投影された星空の位置関係ができるだけ歪なく観察するのに適した位置、すなわちドーム4の中心にある恒星投影器5に近い位置に設置されている観客席7の設置数をより多くできるという効果がある。また星空再現装置1が水平線41よりも下側に設置するので水平線近くの星空を観客席7から観察する際に邪魔にならないという効果がある。
またスペースが限られたドーム4の中に設置するにあたって、星空再現装置1と望遠鏡2との距離が大きく取れるので、無限遠の距離の天体を観察するように設計されている市販の天体望遠鏡を使用する際のピント位置のズレを従来の技術に比べて少なくすることが可能であるという効果がある。また同様に、星空再現装置1と望遠鏡2との距離をできるだけ大きく取れるので、1台の星空再現装置1を複数の望遠鏡2で観察する際に、望遠鏡2と星空再現装置1を結ぶ線が星空再現装置1の法線と成す角を少なくできるため、観察される星空の位置関係の歪が少ないという効果があり、これにより目標性能5「歪の無い星の位置関係」が実現される。
また既存の投影式プラネタリウムのドーム4は、図36と図37に示す水平タイプと図35に示す傾斜タイプがある。傾斜タイプのドーム4では、図35に示すように、傾斜ドームの傾斜上側方向のドーム壁面近傍に星空再現装置1を、傾斜ドームの傾斜下側方向のドーム壁面近傍に望遠鏡2をそれぞれ設置すると、水平タイプの場合の効果に加え、星空再現装置1を望遠鏡2で観察する際に仰角が発生する。そのため、観察者が星空を観察している感覚により近くなるという効果がある。
次に、本発明の星空再現装置1の第3の実施例、第4の実施例、第5の実施例として、それぞれプラネタリウム施設が存在しない地域の学校やコンサートホール等へ出張して星空観察体験を提供するために使用される、移動式の星空再現装置を説明する。これらの実施例では、複数の星空シート200を用いてより広範囲の星空を再現する構成となっており、移動中は複数の星空シート200をコンパクトにまとめて運搬できるので、出張して星空観察体験を提供するのに適している。
図70は第3の実施例の星空再現装置の斜視図であり、図71はその断面図である。図に示すように、半球面を短冊状の複数の平面で展開した複数の部分星空シート3001は連結されてドーム状の形状になる。ドームの一部には観察者の出入りのための入り口3019が設置される。
部分星空シート3001と地面の間から空気が漏れないように、地面と接する裾野部3002に錘3003が置かれる。送風機3004の送風パイプ3005が裾野部の一部を貫通して内部に開口し、送風機から外部の空気が一定の圧力で内部に送りこまれる。これによりドーム内の圧力がドーム外よりも高くなり、部分星空シート3001の内面は空気圧を受けてドーム状に広がり、全体として半球状のドーム構造が維持される。
ドーム内に設置されるUVランプ3006は、ドーム内面の部分星空シート3001の第1紙層の表面を紫外線により所定の照度で照射する。ドーム内には、天体望遠鏡3007と写真撮影用のデジカメ3008が設置される。
図72は、部分星空シート3001を示す図である。部分星空シート3001は、第1の実施例で示した星空シート200が縦方向に長い形状となったものであり、基本的な構造は以下の点を覗いて星空シート200と同一である。すなわち、部分星空シート3001の裾野部3002には、ワンチップCPUと接続コネクタと側面に発光面を有するサイドビュータイプの高輝度白色LEDが発光素子として複数備わる裾野電子基板3009が固定されている。また部分星空シート3001の光ファイバーは裾野電子基板3009の位置に集約されて発光素子の発光面に対向する位置に固定される。発光素子はワンチップCPUによって所定の明るさで発光制御される。
なお発光素子の発光面と光ファイバーの端面との間には星の色を与えるためのフィルターが固定されている。なお、裾野電子基板には電池3010が備わりワンチップCPUの動作に必要な電源が供給されている。
図73は、複数の部分星空シート3001の連結部分の断面図である。部分星空シート3001の接続部分にはファスナー等の連結分離が可能な連結手段3011が固定されている。連結手段3011は、2つの部分星空シート3001を連結する。この連結部分は星空再現のための積層シートとしての機能を有しないので、その部分の星空は欠損してしまう。そのため、有機EL発光素子のような面発光素子をテープ状に加工した接続部バックライトシート3012と連結部星空シート3013を積層した連結部星空再現シート3014が、部分星空シート3001の連結部の内側に取り付けられている。これにより、欠損する星空は連結部星空再現シート3014により補われ、つなぎ目が目立たない。
有機EL発光素子は、裾野電子基板3009にそなわる昇圧回路を介してワンチップCPUによって所定の輝度で発光駆動される。なお、接続部バックライトシート3012は、有機EL発光素子以外にも、LED素子の光を樹脂テープで散光させる方式でも良い。
このような構成の星空再現装置1は、日中の屋外や、小学校の体育館のような照明機能3015を有する建造物の中に設置される。照明機能3015によりドーム表面は一定の照度で照明される。裾野部3002は錘3003により床3016に密着され光の進入が無いので、ドーム内は完全に暗い環境となり、内部の観察者3017は、実際の星空を観察するのと同じように満天の星空を観察することができる。その際、部分星空シート3001の発光素子星や発光印刷星とともに透過光星が観察できるので、第1の実施例で示したように、目標性能1〜目標性能4を実現するとともに、ライトボックス100などの手段が不要でコストダウンとなり目標性能4にもつながるという効果がある。
ドームの外側の一部を高い輝度で照明可能な部分照明装置3020を備える。この部分照明装置3020を用いることで、特定のエリアの透過光星の輝度を高めることが可能である。
また第3の実施例1は、従来の星空再現装置のようにドーム中心に恒星投影器5が無いので、観察者はドーム中心から観察することが可能であり、目標性能5「歪の無い星の位置関係」が達成できる。
また、部分星空シート3001によって半球状のドームが構成されるため、観察者3017が、地上物、例えば山や木々、建物、人物など、地上に存在する物を模した模型3018をドーム内に持ち込み、星空とともに様々な星景写真を撮影することが可能である。その場合、ドーム中心に位置する観察者3017から見て模型3018の外側のドーム内面に星が直接再現されるので、従来技術のような課題は発生しない。その結果、観察者に星景写真の撮影体験を提供することが可能になり、目標性能12「星景写真の体験機会の提供」が達成できる。
次に、第3の実施例の星空再現装置1の組立・分解方法について説明する。
本実施例の星空再現装置1は、複数の部分星空シート3001が接合されて半球状のドーム構造が形成される。部分星空シート3001は多層構造を持つ積層シート220から構成されるので、ドーム状に組み立てるにあたっては、従来のエアドームとは異なる以下の技術的な課題がある。
すなわち、通常のエアドームは、素材に布やビニールシートのような柔軟な素材を採用しているため、半球面を短冊状の複数の平面で展開した部分素材を工場であらかじめ縫製加工して連結し、膨らませる前の格納状態の時に折りたたまれた状態で保管することが可能である。そして設置現場へ搬送した後に、現場で空気を入れて膨らますことでドーム構造を構成する。
一方、本実施例の星空再現装置は、多層構造を持つ積層シート220からなる複数の部分星空シート3001で構成されるので、エアドームに採用されるような布やビニールシートに比べると柔軟性に欠く。そのため事前に部分星空シート3001を連結した状態で格納すると、素材が複雑に折りたたまれて積層シート220の構造に不可逆的な変形が発生して星の再現に不具合が発生するという課題がある。
そのため本実施例の星空再現装置は、格納時には部分星空シート3001は分離された平面状態で保管され、設置場所に搬送した後は、組立時にそれぞれを連結しながらドーム構造を形成することが望ましい。
具体的には、図74に示すように、まずステップ1として、組み立て者は、複数の部分星空シート3001を設置地面3016に敷き、部分星空シート3001の自重によって変形しない程度の面積の範囲で、ドーム頂上部3018を連結手段3011によって連結する。次に、連結部を円周内に包含するようなドーム頂上部を中心とした一定の円周を押さえる錘3003を部分星空シート3001の上に配置する。この際、ドーム頂上部3018を内側から支持する支えを使用すると、頂上が落ち込まずに望ましい。
次にステップ2として、組み立て者は、送風機3004の送風パイプ3005を部分星空シート3001と地面3016との間に挿入し、連結された部分星空シート3001と地面3016とで形成される閉空間に空気を送り込む。すると、連結された部分星空シート3001は内側から圧力を受けて球面状に膨らむ。ここで連結された部分星空シート3001は錘3003によって地面3016に押し付けてられているため、連結された部分星空シート3001と地面3016とで形成される閉空間は一定の圧力で維持される。
次にステップ3として、組み立て者は、送風機3004の動作を維持した状態で、錘3003が置かれている部分星空シート3001を押さえる円環状の位置を、外側にずらしてその直径をわずかに拡大するとともに、連結手段3011を作用させ、連結される部分星空シート3001の連結を拡大する。すると、部分星空シート3001は内部の圧力でさらに膨らむ。
組み立て者は、ステップ3の作業を継続して、部分星空シート3001が裾野部3002まで連結されて図70に示すドーム構造として完成するまで繰り返す。なお分解時には、組み立て時の逆の手順で分解すれば良い。
第3の実施例は、上記のような方法で組立・分解されるので、平面状の部材である複数の部分星空シート3001を連結してドーム構造とする作業やドーム構造から複数の部分星空シート3001に分解する作業の際に、部分星空シート3001に不要な変形を与えることがないという効果がある。
図76は第4の実施例の星空再現装置の斜視図である。図77はその断面図である。図に示すように、組み立て式で遮光性の屋根が付いたテント3020が照明を有する室内に設置される。テント3020の直立支柱3021と天井梁3022にはシート磁石3023が固定されており、部分星空シート3024は磁石に吸引される性質を持つ押さえ板3025によって、テント3020の直立支柱3021と天井梁3022で形成される側面窓部に取り付けられる。テント3020の全ての側面に、同様に部分星空シート3024が取り付けられる。隣り合う部分星空シート3024の間には、直立支柱3021が存在する為に星が再現されない部分が生じるので、その部分を補うように連結部星空再現シート3014が設置されている。星空シート200と設置床面の間は接地部が床面に接し光が入らない。
次に、補助員が、押さえ板3025を取り外して部分星空シート3024をめくってテント3020の中に観客を入場させる。部分星空シート3024の外側は室内照明の光をバックライトとして照明されるので、テント3020の中の観客は、部分星空―シート3024で再現される透過光星を観察できる。部分星空ーシートが、光ファイバーによる発光素子星やテント3020の内部に設置されたUVランプで発光する印刷発光星を備わると、より幅広い等級の星空が再現されることは言うまでもない。
第4の実施例の星空再現装置は、上記の構成を有するので、目標性能1〜目標性能4を備えるとともに、プラネタリウム施設が存在しない地域の学校やコンサートホール等へ出張して星空観察体験を提供できるという効果がある。
なお、室内の照明の代わり、ないしは補助として、テント3020の外側にプロジェクター3025が設置されているとより好適である。その場合、プロジェクター3025は部分星空シート3024の外側面に映像を投影する。この映像を、第1の実施例で説明したバックライトLEDと同様に、部分星空シート3024の異なる場所を異なる照度で照明するようにすると、星の瞬きを再現したり、解説に応じて一部の照度を上げてハイライト表示したり、内部で観察する際に一時的に一部の星空領域を明るく再現する等の作用を付加でき、それに伴う効果が得られる。また、観察プログラムの前半の解説のための情報を、プロジェクター3025によって部分星空シート3024の外側に映すことも可能であり、スクリーンが不要であるという効果もある。
図78は第4の実施例の変形例を示す斜視図である。図79はその断面図である。図に示すように、第4の実施例のテント3020の天井部分の遮光性の屋根の代わりに、天井星空シート3026を備える。また第3の実施例と同様に送風機3004を備え、その送風パイプ3005がテント3020の内部に挿入され空気が送風される。これにより天井を構成する部分星空シート3024が重力により中央部が落ち込むのを防止する。
第4の実施例の変形例は、第4の実施例の効果に加え、天井にも星空が再現されるので、より臨場感ある星空が体験できるという効果がある。
図80は学校やコンサートホール等の舞台をそなえる施設で使用されるのに適した、第5の実施例の星空再現装置1の使用状況を示す一部断面斜視図である。図81は、その中央断面図である。
第5の実施例の大型星空シート3027は、舞台施設の緞帳(どんちょう)等の幕や照明装置等の舞台設備を吊り下げる吊下装置3028によって舞台前面の開口部を覆うように吊り下げられている。また、舞台の複数の照明装置3029が吊り下げ装置3028によって所定の位置に設置され、大型星空シート3027の外側を所定の照度で照明する。そして、観客は施設の客席に着席して大型星空シート3027の内側を観察する。また舞台に備わるプロジェクター3030は、解説のための情報や、大型星空シート3027では再現できない暗い天体を再現する映像を、大型星空シート3027の内側に投影する。プロジェクター3030で投影される映像は、望ましくは第2の実施例と同様に、フィルターによって輝度を調整できるようになっていると良い。
複数の照明装置3029は大型星空シート3027の外側面を照明するが、第1の実施例で説明したバックライトLEDと同様に、大型星空シート3027の異なる場所を異なる照度で照明するようにすると、星の瞬きを再現したり、解説に応じて一部の照度を上げてハイライト表示したり、内部で観察する際に一時的に一部の星空領域を明るく再現する等の作用を付加でき、それに伴う効果が得られる。また、観察プログラムの前半に講演会を実施する場合に、その資料をプロジェクター3030によって大型星空シート3027の内側に映すことが可能でありスクリーンが不要であり、講演会のプログラムから星空観察に移行する際にセッティングの変更が不要でスムースな星空体験が提供できるという効果がある。
図82〜図84は、第5の実施例の変形例を示す図である。図82はその断面図である。第5の実施例の星空再現装置の変形例は、舞台の吊下装置3028によって舞台情報の所定の位置に設置される循環回動支持装置3031と、それにより吊下支持される循環星空シート3032と、舞台の吊下装置に複数吊り下げられるワイヤー3033それぞれに複数取り付けられたバックライトLED3034から構成される。図83は、循環回動支持装置3031を舞台の天井から見た図である。図84は、循環回動支持装置3031の駆動ガイド3035とレール3036を示す一部断面詳細図である。
循環星空シート3032は、縦長の矩形の平面状の部分星空シート3001が、その長辺の部分に備わる連結手段3011によって互いに連結されている。実施例では、20枚の部分星空シート3001が連結され、その内側が円環の外側を向くように円環ベルト状に連結されている。
循環回動支持装置3031は、陸上トラックのようなオーバル形状のレール3036と、レール3036にそって移動する20個の駆動ガイド3035と20個の従属ガイド3037を備えている。レール3036は、舞台の吊下装置によって舞台の上方の所定の位置に設置される。レール3036は複数の部分レールを連結して構成するのが望ましい。
駆動ガイド3035は駆動車輪30351とガイドフレーム30352と駆動モーター30353とモーター駆動装置30354ならびに循環星空シート3032を吊り下げ支持する支持部30355を備え、循環星空シート3032を吊り下げながら、レール3036にそってモノレールのように移動可能なように構成されている。駆動車輪30351のレール3036との接地面は、適度な摩擦抵抗を有しており、複数の駆動ガイド3035の駆動速度の違いによって発生するレール3036と駆動車輪30361のずれを、駆動車輪30351とレール3036の接点がスリップすることで許容するようになっている。
モーター駆動装置30354は、電池と無線通信手段を備えたマイコンとモーター駆動素子を備えており、無線指示によって与えられた指令に基づき、モーターの駆動速度と駆動方向を制御する。これは既存の技術なので詳細は省略する。
従属ガイド3037は、駆動モーター30353とモーター駆動装置30354とマイコンとモーター駆動素子が備わっていないこと以外は、駆動ガイド3035と同じ構造であり、循環星空シート3032の移動にともなって従属的にレール3036に沿って移動し、循環星空シート3032がレール3036の形状に沿って吊り下げられるようになっている。なお、1枚の部分星空シート3001は、1個の駆動ガイド3035と1個の従属ガイド3037の2か所で吊り下げられる。
また、舞台の吊下装置に吊り下げられる複数のワイヤー3033は、図82に示すように、循環星空シート3032の円環形状の内部に吊り下げられている。それぞれのワイヤー3033に取り付けられた複数のバックライトLED3034は、それぞれ図示しないバックライトLED駆動装置によって点灯駆動される。
また、循環星空シート3032の観客席側の平面部分と舞台のプロセニウム(開口部)との間は、黒幕などで遮光され、バックライトLED3034からの光は、循環星空シート3032の表面や観客席へ漏れ出ないようになっている。
第5の実施例の変形例は、上記の構成になっているので、循環星空シート3032の観客席側の平面部分の外側(円環形状の内側)はバックライトLED3034により所定の照度で照明され、観客は、会場に設置された観客席に座った状態で双眼鏡を用いて部分星空シート3001に形成された透過光星を観察できる。そして部分星空シート3001は第1の実施例と同様に目標性能1〜目標性能4が実現できるので、双眼鏡などを持ちて星空を詳細に観察できる。また、駆動ガイド3035を適宜駆動すると、レール3036に沿って駆動ガイド3035と従属ガイド3037は移動し、循環星空シート30321は観客から見て左右方向に移動するので、複数の天体を観察したり、銀河を一周再現したりなど、多様な星空体験の機会を提供できるという効果がある。
また第5の実施例の変形例を実施するための舞台装置を備えた施設は、プラネタリウムなどの専門施設と異なり、小学校や公民館、コンサートホール等にたくさん存在する。そうした既存の設備を活用して、高品質な星空観察体験を提供できることは、本発明の星空再現装置の目的である天文教育普及の普及に大変有効である。