JP2020125939A - 蛍光プローブ及びそれを用いる細胞の観察方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】培養細胞の形状及び位置並びにそれらの経時変化を、簡便かつ明瞭に観察する方法を提供する。【解決手段】蛍光プローブは、蛍光色素団を有し、また細胞は染めずに、該細胞の培養容器のガラス表面は染めることができる化合物である。本発明の蛍光プローブは、培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、蛍光プローブ及びそれを用いて培養細胞を観察する方法に関する。
多くの細胞の生理的性質は、細胞の形状や運動と深く関わっているため、生物学、薬学、医学等の分野においては培養細胞の形状及びその経時変化や移動度を観察し評価することの重要性が高い。
従来の培養細胞の形状を観察する方法としては、位相差顕微鏡観察法、微分干渉顕微鏡観察法、細胞膜染色観察法などがある。光学顕微鏡観察において動物培養細胞は、一般に水に近い光透性であり無色透明に近いため人工的にコントラストをつけなければその形状を詳細に観察することは難しい。
位相差顕微鏡観察法は、細胞内を通過する光から生じる回折光の位相のずれを利用してコントラストを付けることにより細胞を可視化する観察方法である。操作が簡便でコントラストが強いがため、培養細胞の観察によく普及した汎用法である。しかし、本法では細胞の周囲にハロを伴うため細胞の境界や細かな突起など微細な構造を明瞭に観察することは難しい。
位相差顕微鏡観察法は、細胞内を通過する光から生じる回折光の位相のずれを利用してコントラストを付けることにより細胞を可視化する観察方法である。操作が簡便でコントラストが強いがため、培養細胞の観察によく普及した汎用法である。しかし、本法では細胞の周囲にハロを伴うため細胞の境界や細かな突起など微細な構造を明瞭に観察することは難しい。
微分干渉顕微鏡観察法は、細胞内及びその周辺の屈折率(光路差の違い)の違いを利用し、細胞を通過する光の光路差の違いで生じる干渉を利用してコントラストを付けることにより細胞を可視化する観察方法である。本法で観察した細胞は、一定の方向に陰影が付いて観察されるため、あたかも立体感のあるような像が得られる。しかし、細胞が近接しその突起が複雑に重なる場所では、細胞に覆われた場所かどうかを判断できない。
細胞膜染色観察法は、細胞膜を染色する色素を細胞に添加することで細胞を可視化し、これを顕微鏡等で観察する方法である。しかし、生きた培養細胞の細胞膜は、エンドサイトーシスや膜脂質代謝により恒常的に膜成分の交換が生じているため、細胞膜を染色した色素は細胞内に取り込まれるか細胞外へ排出され、色素は早い時間内に細胞膜から薄まってしまう。また、細胞膜の代謝は部位によって異なるため、必ずしも細胞膜を均質に一様に染色するとは限らない。従って、安定的に細胞の形状を詳細に観察することはできない。また、固定した細胞を本法で観察する方法があるが、固定した細胞では細胞膜の代謝が生じない代わりに固定によって細胞の形状が変形してしまうため、特に細部について細胞本来の形状を観察していると考えるのは難しい。
従来の培養細胞の運動や移動を観察する方法としては、Wound Healing Assay(WHA)、Cell Invasion Assay (CIV)、金コロイド
コート法、連続観察法などがある。
WHAは、培養皿上でコンフルエントに生育した培養細胞のシートをチップ等で直線状に傷つけて細胞を排した後に、又は培養皿上に障害物を設置して細胞集落の空白帯を作製した後に、培養を続けて、傷や空白帯の領域が細胞で埋まることを確認することによって、細胞運動性を評価する方法である(非特許文献1、2)。WHAでは、傷や空白帯の領域が細胞で埋まった正確な時間が不明であるため、単位時間当たりに細胞が移動した距離や面積を数値化できないため、運動性の有無の評価はできても定量性がほとんどない。また、測定に数時間から一晩といった長時間を要する。さらに、傷つけ操作により細胞にダメージが加わり細胞の移動度に影響し得る。また、障害物の設置により空白帯を作製する手法では、増殖中の細胞は障害物近辺では圧縮されるため、障害物を除いた際に細胞自身の能動的な移動ではなく、解放による押し出しによる位置の変動が生じてしまい、細胞移
動を正しく観察できないという懸念がある。
コート法、連続観察法などがある。
WHAは、培養皿上でコンフルエントに生育した培養細胞のシートをチップ等で直線状に傷つけて細胞を排した後に、又は培養皿上に障害物を設置して細胞集落の空白帯を作製した後に、培養を続けて、傷や空白帯の領域が細胞で埋まることを確認することによって、細胞運動性を評価する方法である(非特許文献1、2)。WHAでは、傷や空白帯の領域が細胞で埋まった正確な時間が不明であるため、単位時間当たりに細胞が移動した距離や面積を数値化できないため、運動性の有無の評価はできても定量性がほとんどない。また、測定に数時間から一晩といった長時間を要する。さらに、傷つけ操作により細胞にダメージが加わり細胞の移動度に影響し得る。また、障害物の設置により空白帯を作製する手法では、増殖中の細胞は障害物近辺では圧縮されるため、障害物を除いた際に細胞自身の能動的な移動ではなく、解放による押し出しによる位置の変動が生じてしまい、細胞移
動を正しく観察できないという懸念がある。
CIAは、細胞が自らの運動性で通過できる径の孔を複数有するメンブレンの上で細胞を生育させ、このメンブレンを通過する細胞を回収し細胞数を測定する方法である(非特許文献3)。この方法で評価されるのは細胞の浸潤性であって、細胞の移動性とは異なる現象である。そのため、細胞移動の距離や面積を定量的に測定できない。
金コロイドコート法は、金微粒子で一様にコートされた培養皿上で細胞性粘菌を生育させて、該細胞性粘菌が移動する際に金微粒子を吸着するために形成される運動の軌跡を解析する方法である(非特許文献4、5)。細胞が移動した軌跡において金コロイドが細胞に吸着されなくなるために、金コロイドがない筋が細胞の移動した軌跡として可視化され、細胞の移動距離を測定することできる。しかし、金コロイドの軌跡は連続しており、移動前の細胞の形状は記録されないため、細胞の形状の変化を定量的に測定することはできない。また、この方法は主に、運動性の高く、金コロイドを吸収する細胞性粘菌を対象に用いられる方法であり、哺乳動物由来などの培養細胞への適用はあまりない。また、この方法は、多数の細胞を同時に短時間に扱うのには適さない。
連続観察法は、細胞を生育させるインキュベータ内に位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡を設置し、顕微鏡上で常時細胞を生育させつつ細胞を主に機械のプログラムによって自動式で撮影し観察する方法である(非特許文献6)。この場合、汎用でない特殊な設備を必要とするため、費用が高額となるうえ、細胞培養条件下では顕微鏡が激しく劣化するという難点がある。また、自動式であるために、振動や温度変化または細胞の移動によって目的の細胞が顕微鏡視野からはずれてしまった場合や、低倍率と高倍率の切り替えが必要となった場合などに細胞を観察し続けるための適切な対応をその時点に行うことが困難である面もある。
S.L. Goodman, H.P. Vollmers, W. Birchmeler, Control of Cell Locomotion: Perturbation with an Antibody Directed against Specific Glycoproteins, Cell 41(1985) 1029-1038.
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R. Kato, et al., Parametric analysis of colony morphology of non-labelled live human pluripotent stem cells for cell quality control, Sci. Rep., 26(6) (2016) 34009.
本発明は、培養細胞の形状及び位置並びにそれらの経時変化を、簡便かつ明瞭に観察する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の蛍光色素誘導体を蛍光プローブとして用いて培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができることに想到した。そして、該染色の後に変形や移動した細胞の形状及び位置の観察像と、染色時の形状及び位置の観察像とを比較することにより細胞の運動を、定量的に測定できることに想到し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一の側面は、下記一般式(1)で表される化合物からなる、蛍光プローブである。
本発明の蛍光プローブは、細胞観察用試薬に含有させることができる。
本発明の別の側面は、細胞の観察方法である。
具体的な態様としては、ガラス面上で細胞を培養する工程、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び前記染色工程後に、蛍光顕微鏡で前記細胞を観察する工程を含む、細胞の観察方法である。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
具体的な態様としては、ガラス面上で細胞を培養する工程、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び前記染色工程後に、蛍光顕微鏡で前記細胞を観察する工程を含む、細胞の観察方法である。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
また、別の態様としては、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時にガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、T0時から任
意の時間が経過した後に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察する工程、及び得られた蛍光像及び微分干渉像を比較する工程を含む、細胞の観察方法である。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
この態様において好ましくは、T0時から任意の時間が経過したT1時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像と微分干渉像とで重ならない領域の面積を算出することを含む。
または、この態様において好ましくは、T0時から任意の時間が経過した後の1又は複数のTn時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像を基準として重ね合わせた1又は複数のTn時の微分干渉像を比較することにより、観察細胞の移動量を算出することを含む。
意の時間が経過した後に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察する工程、及び得られた蛍光像及び微分干渉像を比較する工程を含む、細胞の観察方法である。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
この態様において好ましくは、T0時から任意の時間が経過したT1時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像と微分干渉像とで重ならない領域の面積を算出することを含む。
または、この態様において好ましくは、T0時から任意の時間が経過した後の1又は複数のTn時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像を基準として重ね合わせた1又は複数のTn時の微分干渉像を比較することにより、観察細胞の移動量を算出することを含む。
また、別の態様としては、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時にガラス面を染色するが培養細胞は染色しない第一の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、T0時から任意の時間が経過した後のT1時に、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない第二の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び第一の蛍光プローブ及び第二の蛍光プローブで染色された領域、並びに/又は第一の蛍光プローブ又は第二の蛍光プローブのみで染色された領域の蛍光強度を測定する工程を含み、第一の蛍光プローブと第二の蛍光プローブとで蛍光波長が異なる、細胞の観察方法である。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
本態様における蛍光プローブとしては、本発明の蛍光プローブを好ましく用いることができる。
本発明の蛍光プローブにより、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しないことによって培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することが可能になる。このため位相差顕微鏡観察法による細胞周辺のハロや微分干渉顕微鏡観察法による陰影は生じないことにより、細胞の突起や波打ち構造など微細な形状を含めて観察が可能になる。また、細胞同士が複雑に重なりあう面においても細胞に覆われていない領域は明瞭に蛍光プローブに染色され、細胞に覆われている面は蛍光プローブに染色されないため、これらの領域の区別は明瞭に可能となる。
また、前記蛍光プローブを用いて培養細胞を観察する方法により、培養細胞の形状及び位置並びにそれらの経時変化を、簡便かつ明瞭に観察することが可能になる。さらに、前記経時変化を定量的に解析することも可能になる。一度、蛍光プローブで染色されたガラス面上の細胞の形状は、細胞が移動した後も24時間以上安定に観察され、細胞膜の代謝に影響されることはほとんどない。
また、前記蛍光プローブを用いて培養細胞を観察する方法により、培養細胞の形状及び位置並びにそれらの経時変化を、簡便かつ明瞭に観察することが可能になる。さらに、前記経時変化を定量的に解析することも可能になる。一度、蛍光プローブで染色されたガラス面上の細胞の形状は、細胞が移動した後も24時間以上安定に観察され、細胞膜の代謝に影響されることはほとんどない。
本発明の蛍光プローブは、蛍光色素団を有し、また細胞は染めずに、該細胞の培養容器のガラス表面は染めることができる化合物である。本明細書において、「染色」又は「染める」とは蛍光プローブ化合物が対象に結合又は浸透することをいい、「細胞を染めない」とは細胞膜に結合しないこと又は細胞内に入り込まないことをいう。
本発明の蛍光プローブは、培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができる(図1)。
本発明の蛍光プローブは、培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができる(図1)。
具体的には、本発明の蛍光プローブは、下記一般式(1)で表される化合物からなる。
一般式(1)中、Aは蛍光色素団を表す。
蛍光色素団Aは、蛍光発色する化合物団であれば特に限定されず、赤色、緑色、青色等の所望の蛍光波長に応じて採用すればよい。例えば以下に、蛍光色素団Aの蛍光色ごとの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
赤:ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミンB、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101
緑:NBD−F、フルオレセイン、オレゴングリーン、BODIPY FL C5
青:1−ピレン酪酸、DMEQ−Cl
蛍光色素団Aは、蛍光発色する化合物団であれば特に限定されず、赤色、緑色、青色等の所望の蛍光波長に応じて採用すればよい。例えば以下に、蛍光色素団Aの蛍光色ごとの具体例を以下に挙げるが、これらに限定されない。
赤:ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミンB、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101
緑:NBD−F、フルオレセイン、オレゴングリーン、BODIPY FL C5
青:1−ピレン酪酸、DMEQ−Cl
蛍光色素団Aは、カルボキシ基又はフッ化炭素基を1つ有する蛍光色素化合物の該カルボキシ基の水酸基以外の残基又は該フッ化炭素基のフッ素原子以外の残基であることが好ましい。この場合、一般式(1)中のBは、前記カルボキシ基の水酸基又は前記フッ化炭素のフッ素原子が結合していた炭素を介してAに結合する。
また、蛍光色素団Aは、陽に荷電していることが好ましく、例えばアンモニウムイオン
を有する化合物団であることが好ましい。これにより、蛍光プローブがガラス表面に結合しやすくなる。
また、蛍光色素団Aは、陽に荷電していることが好ましく、例えばアンモニウムイオン
を有する化合物団であることが好ましい。これにより、蛍光プローブがガラス表面に結合しやすくなる。
また、一般式(1)中、BはAに結合する、一般式(2)、(3)又は(4)で表される基を表す。
一般式(2)、(3)及び(4)中、Rは一般式(5)もしくは(6)で表される基又は炭化水素鎖を表し、nは0〜9の整数を表す。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。かかる炭化水素鎖が短すぎると、化合物が細胞内に入りやすくなり、長すぎると化合物の水溶性が低下して、蛍光プローブの操作性が悪くなる場合があるからである。
また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。かかる炭化水素鎖が短すぎると、化合物が細胞内に入りやすくなり、長すぎると化合物の水溶性が低下して、蛍光プローブの操作性が悪くなる場合があるからである。
また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
一般式(5)中、R’は一般式(5)自体で表される基又は炭化水素鎖を表し、mは0〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表す。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
R’が一般式(5)自体で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は複数の炭化水素鎖を樹状に分岐して有する構造になる。また、その場合の末端は、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖となる。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
R’が一般式(5)自体で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は複数の炭化水素鎖を樹状に分岐して有する構造になる。また、その場合の末端は、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖となる。
一般式(6)中、R”は一般式(6)自体で表される基又は炭化水素鎖を表し、mは0〜9の整数を表し、lは1〜9の整数を表す。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
R”が一般式(6)自体で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は複数の炭化水素鎖を樹状に分岐して有する構造になる。また、その場合の末端は、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖となる。
前記炭化水素鎖の炭素数は12〜22であり、好ましくは14〜18、より好ましくは15〜17である。また、前記炭化水素鎖は、分岐を有していてもよいが、好ましくは直鎖状である。また、前記炭化水素鎖は、飽和又は不飽和のいずれでもよいが、好ましくは飽和炭化水素鎖である。
R”が一般式(6)自体で表される基である場合、一般式(1)で表される化合物は複数の炭化水素鎖を樹状に分岐して有する構造になる。また、その場合の末端は、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖となる。
また、一般式(2)〜(6)中のアルキル鎖の任意の炭素原子に結合する水素原子は、コリン基、すなわち一般式(7)で表される基に置換されていてもよい。なお、一般式(7)中、pは0〜2の整数を表す。
前述のように、ガラス染色性の観点から、蛍光色素団Aは陽電荷を有していることが好ましいところ、カチオン基を有さない蛍光色素団をAとする場合に、コリン基を導入することで本発明の化合物を陽に荷電させることができる。コリン基を導入するのが好ましいAとしては、NBD−F、フルオレセイン、オレゴングリーン、BODIPY FL C5、1−ピレン酪酸、DMEQ−Cl等が挙げられるが、これらに限定されない。
前述のように、ガラス染色性の観点から、蛍光色素団Aは陽電荷を有していることが好ましいところ、カチオン基を有さない蛍光色素団をAとする場合に、コリン基を導入することで本発明の化合物を陽に荷電させることができる。コリン基を導入するのが好ましいAとしては、NBD−F、フルオレセイン、オレゴングリーン、BODIPY FL C5、1−ピレン酪酸、DMEQ−Cl等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の蛍光プローブに係る化合物は、蛍光色素団に、1本又は2以上の奇数または偶数本の炭化水素鎖の「脚」が、アミド結合又はエステル結合を介して結合した構造を有するものである。
従来の細胞膜等の染色に用いられてきた蛍光プローブとしては、RB18−オクタデシルローダミン等が知られており、これも本発明の化合物に類似する構造を有する(J. Cell Sci.(1977), 28, 167-177)。しかしながら、炭化水素鎖の長さが短い等、一般式(1
)で特定される構造以外の化合物では、後述の実施例で示されるように所望の染色が実現されない。
従来の細胞膜等の染色に用いられてきた蛍光プローブとしては、RB18−オクタデシルローダミン等が知られており、これも本発明の化合物に類似する構造を有する(J. Cell Sci.(1977), 28, 167-177)。しかしながら、炭化水素鎖の長さが短い等、一般式(1
)で特定される構造以外の化合物では、後述の実施例で示されるように所望の染色が実現されない。
本発明の蛍光プローブ化合物の具体例を以下の一般式(8)〜(33)に挙げるが、これらに限定されない。なお、一般式(8)〜(33)中、Rは炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
一般式(8)〜(12)で表される化合物では、2つの炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(13)〜(17)で表される化合物では、2つの炭化水素鎖がエステル結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(18)〜(22)で表される化合物では、1つの炭化水素鎖がエステル結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(23)で表される化合物は、3つ、すなわち奇数の炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(24)で表される化合物は、4つ、すなわち偶数の炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。なお、一般式(23)及び(24)で表される化合物中の蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。一般式(25)〜(33)で表される化合物は、蛍光色素団に近い位置にコリン基が付加している。
一般式(8)〜(12)で表される化合物では、2つの炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(13)〜(17)で表される化合物では、2つの炭化水素鎖がエステル結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(18)〜(22)で表される化合物では、1つの炭化水素鎖がエステル結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(23)で表される化合物は、3つ、すなわち奇数の炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。一般式(24)で表される化合物は、4つ、すなわち偶数の炭化水素鎖がアミド結合を介して蛍光色素団に結合している。なお、一般式(23)及び(24)で表される化合物中の蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。一般式(25)〜(33)で表される化合物は、蛍光色素団に近い位置にコリン基が付加している。
本発明の蛍光プローブに係る化合物は、一般的な合成方法により取得することができる。以下に具体的な合成スキーム例を挙げるが、これらに限定されない。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム1に示す。スキーム1において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(8)〜(12)で表される化合物を合成することができる。
スキーム1においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム1においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をエステル結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム2に示す。スキーム2において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(13)〜(17)で表される化合物を合成することができる。
スキーム2においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム2においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
1つの炭化水素鎖をエステル結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム
3に示す。スキーム3において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(18)〜(22)で表される化合物を合成することができる。
スキーム3においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
3に示す。スキーム3において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(18)〜(22)で表される化合物を合成することができる。
スキーム3においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
3以上の奇数の炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム4に示す。スキーム4において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(23)等で表される化合物を合成することができる。また、スキーム4においてさらにリジンの導入反応を繰り返すことにより、炭化水素鎖の本数を増やすことができる。
スキーム4においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム4においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
4以上の偶数の炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム5に示す。スキーム5において蛍光色素団は、ローダミンBに代えて、ローダミン110、テトラメチルローダミン、ローダミン116、ローダミン19、及びローダミン101であってもよい。この合成方法により、一般式(24)等で表される化合物を合成することができる。また、スキーム5においてさらにリジンの導入反応を繰り返すことにより、炭化水素鎖の本数を増やすことができる。
スキーム5においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム5においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させ、さらにコリン基を付加する合成例を、スキーム6に示す。この合成方法により、一般式(25)で表される化合物を合成することができる。
スキーム6においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム6においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させ、さらにコリン基を付加する合成例を、スキーム7に示す。スキーム7において蛍光色素団は、フルオレセインに代えて、オレゴングリーンであってもよい。スキームこの合成方法により、一般式(26)、(27)で表される化合物を合成することができる。
スキーム7においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム7においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させ、さらにコリン基を付加する合成例を、スキーム8に示す。スキーム8において蛍光色素団は、BODIPY F
L C5に代えて、1−ピレン酪酸、DMEQ−Clであってもよい。スキームこの合成
方法により、一般式(28)〜(30)で表される化合物を合成することができる。
スキーム8においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
L C5に代えて、1−ピレン酪酸、DMEQ−Clであってもよい。スキームこの合成
方法により、一般式(28)〜(30)で表される化合物を合成することができる。
スキーム8においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させ、さらにコリン基を付加する合成例を、スキーム9に示す。スキームこの合成方法により、一般式(31)で表される化合物を合成することができる。
スキーム9においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和
の炭化水素鎖を表す。
スキーム9においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和
の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させ、さらにコリン基を付加する合成例を、スキーム10に示す。スキーム10において蛍光色素団は、フルオレセインに代えて、オレゴングリーンであってもよい。スキームこの合成方法により、一般式(32)、(33)で表される化合物を合成することができる。
スキーム10においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム10においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
2つの炭化水素鎖をアミド結合を介して蛍光色素団に結合させる合成例を、スキーム11に示す。スキーム11は、スキーム1において蛍光色素団を、ローダミンBからローダミン19に代えたものと同じである。この合成方法により、一般式(34)で表される化合物を合成することができる。
スキーム11においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
スキーム11においてRは、炭素数12〜22の分岐を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素鎖を表す。
本発明の蛍光プローブは、培養細胞を観察するための試薬に好ましく含有させることができる。
かかる試薬は、本発明の蛍光プローブを、例えば0.00005〜0.001重量%含
有する溶液であってもよい。また、該溶液は、特に限定されないが、エタノール、ジメチルスルフォオキシド等の溶媒または界面活性剤溶液等を含有することが、本発明の蛍光プローブが通常脂溶性であることから均質な染色と再現性が高まり、好ましい。なお、該試薬として前記のような溶媒等に溶解していた本発明の蛍光プローブは、使用の際に細胞培養用培地に添加され該培地に溶解する。
本発明の蛍光プローブを含有する細胞観察用試薬は、培養細胞を染めず、培養細胞の周囲のガラス面を染色することができるため、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができる。したがって、本発明の細胞観察用試薬は、後述の本発明の観察方法に好適に利用できる。
観察対象としうる細胞の種類は、通常はガラス表面で接着培養される細胞であり、特に限定されないが神経細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、がん細胞等が挙げられる。
かかる試薬は、本発明の蛍光プローブを、例えば0.00005〜0.001重量%含
有する溶液であってもよい。また、該溶液は、特に限定されないが、エタノール、ジメチルスルフォオキシド等の溶媒または界面活性剤溶液等を含有することが、本発明の蛍光プローブが通常脂溶性であることから均質な染色と再現性が高まり、好ましい。なお、該試薬として前記のような溶媒等に溶解していた本発明の蛍光プローブは、使用の際に細胞培養用培地に添加され該培地に溶解する。
本発明の蛍光プローブを含有する細胞観察用試薬は、培養細胞を染めず、培養細胞の周囲のガラス面を染色することができるため、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録することができる。したがって、本発明の細胞観察用試薬は、後述の本発明の観察方法に好適に利用できる。
観察対象としうる細胞の種類は、通常はガラス表面で接着培養される細胞であり、特に限定されないが神経細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、がん細胞等が挙げられる。
<細胞の観察方法>
本発明の観察方法は、ガラス面上で細胞を培養する工程、本発明の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び前記染色工程後に、蛍光顕微鏡で前記細胞を観察する工程を含む。
本発明の観察方法は、培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録するものである。図1を参照して説明すると、任意のT0時に蛍光プローブを培養系に添加すると、細胞は染色されずガラス面が染色される。ガラス面上には、T0時の細胞の形状及び位置が蛍光染色によるネガティブ像として記録される。かかる染色像は、細胞の形状を明瞭に型どるものである。その後時間が経過して、T1時に細胞の形状や位置が変化しても、ガラス面上にはT0時の細胞の形状及び位置がネガティブ染色像として記録されたままとなる。本発明者らは、この細胞像の記録方法を、「Cell−Stamp法」と名付けた。
本発明の観察方法は、ガラス面上で細胞を培養する工程、本発明の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び前記染色工程後に、蛍光顕微鏡で前記細胞を観察する工程を含む。
本発明の観察方法は、培養細胞の周囲のガラス面を染色することにより、培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録するものである。図1を参照して説明すると、任意のT0時に蛍光プローブを培養系に添加すると、細胞は染色されずガラス面が染色される。ガラス面上には、T0時の細胞の形状及び位置が蛍光染色によるネガティブ像として記録される。かかる染色像は、細胞の形状を明瞭に型どるものである。その後時間が経過して、T1時に細胞の形状や位置が変化しても、ガラス面上にはT0時の細胞の形状及び位置がネガティブ染色像として記録されたままとなる。本発明者らは、この細胞像の記録方法を、「Cell−Stamp法」と名付けた。
「Cell−Stamp法」によれば、培養細胞の形状及び位置の経時変化を観察することもでき、かかる方法も本発明の方法の一態様である。すなわち、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時に本発明の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、T0時から任意の時間が経過した後に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察する工程、及び得られた蛍光像及び微分干渉像を比較する工程を含む、細胞の観察方法である。
図1を参照して説明すると、任意のT0時に蛍光プローブを培養系に添加すると、細胞は染色されずガラス面が染色され、T0時の細胞の形状及び位置が蛍光染色によるネガティブ像がガラス面上に記録される。その後時間が経過して、T1時に細胞の形状や位置が変化しても、ガラス面上にはT0時の細胞の形状及び位置がネガティブ染色像として記録されたままとなる。そのため、T1時に、蛍光顕微鏡によるT0時の細胞の形状及び位置の観察と、微分干渉顕微鏡によるT1時の細胞の形状及び位置の観察を行い、得られた蛍光像(T0時の像)と微分干渉像(T1時の像)とを比較することで、T0時からT1時に変化した細胞の形状及び位置を把握することができる。
本方法においては、T0時かとT1時の各細胞像を、同一の観察視野で同時点で撮影できるため、観察倍率や視野の調整やそのためのランドマークを要することなく、容易に両者を比較し重ね合わせることができる。
ここで、T1時は、T0時より後であれば特に限定されないが、例えばT0時から5分後〜24時間後程度が想定される。
本方法においては、T0時かとT1時の各細胞像を、同一の観察視野で同時点で撮影できるため、観察倍率や視野の調整やそのためのランドマークを要することなく、容易に両者を比較し重ね合わせることができる。
ここで、T1時は、T0時より後であれば特に限定されないが、例えばT0時から5分後〜24時間後程度が想定される。
本方法によれば、さらに培養細胞の形状及び位置の経時変化を定量化することもできる。かかる定量化は、前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像と微分干渉像とで重ならない領域の面積を算出することにより行うことができる。
図2を参照して説明すると、蛍光像(T0時の像)と微分干渉像(T1時の像)とを重ねて比較し、2つの像の細胞領域が重ならない領域を塗り分ける。例えば、T0時からT
1時で細胞が前進した領域を色1で、T0時からT1時で細胞が後退した領域を色2で塗り分ける。色1の領域及び色2の領域の各面積又は合計面積を、画像のピクセル数で数値化して算出する。例えば、前記合計面積は、細胞がT0時からT1時で変形・移動した総面積となる。
このような比較、重ね合わせ、ぬり分け等の解析は、市販の画像解析ソフト(Photoshop
、Image J等)で行うことができる。
図2を参照して説明すると、蛍光像(T0時の像)と微分干渉像(T1時の像)とを重ねて比較し、2つの像の細胞領域が重ならない領域を塗り分ける。例えば、T0時からT
1時で細胞が前進した領域を色1で、T0時からT1時で細胞が後退した領域を色2で塗り分ける。色1の領域及び色2の領域の各面積又は合計面積を、画像のピクセル数で数値化して算出する。例えば、前記合計面積は、細胞がT0時からT1時で変形・移動した総面積となる。
このような比較、重ね合わせ、ぬり分け等の解析は、市販の画像解析ソフト(Photoshop
、Image J等)で行うことができる。
また、「Cell−Stamp法」によって、前述したものとは別の工程によっても培養細胞の形状及び位置の経時変化を観察することができる。
例えば、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時に本発明の蛍光プローブで前記ガラス面の染色を行う。そして、T0時から任意の時間が経過した後の1又は複数のTn時、例えばT1時及びT2時に、それぞれ蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察し、各観察画像を取得する。各時点の蛍光像は、同じもの、すなわちT0時の細胞の形状及び位置がネガティブ染色像として記録されたものであるため、これを基準として観察視野を特定することができる。該基準に基づいて、T1時及びT2時の微分干渉像を比較することにより、T0時からT1時に変化した細胞の形状及び位置を把握することができ、さらに細胞の移動量を算出することもできる。このような比較、重ね合わせ、ぬり分け等の解析は、市販の画像解析ソフト(Photoshop、Image J等)で行うことができる。
ここで、Tn時は、T0時より後であれば特に限定されないが、例えばT0時から5分後〜24時間後程度が想定される。また、Tn時は、T1時、T2時、T3時、T4時・・・といくつの時点であってもよい。
例えば、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時に本発明の蛍光プローブで前記ガラス面の染色を行う。そして、T0時から任意の時間が経過した後の1又は複数のTn時、例えばT1時及びT2時に、それぞれ蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察し、各観察画像を取得する。各時点の蛍光像は、同じもの、すなわちT0時の細胞の形状及び位置がネガティブ染色像として記録されたものであるため、これを基準として観察視野を特定することができる。該基準に基づいて、T1時及びT2時の微分干渉像を比較することにより、T0時からT1時に変化した細胞の形状及び位置を把握することができ、さらに細胞の移動量を算出することもできる。このような比較、重ね合わせ、ぬり分け等の解析は、市販の画像解析ソフト(Photoshop、Image J等)で行うことができる。
ここで、Tn時は、T0時より後であれば特に限定されないが、例えばT0時から5分後〜24時間後程度が想定される。また、Tn時は、T1時、T2時、T3時、T4時・・・といくつの時点であってもよい。
その他に、複数種類の蛍光プローブを用いて、複数時点で蛍光染色を行ってガラス面上に細胞の形状及び位置をネガティブ染色像として記録する方法も、「Cell−Stamp法」に包含される。そのような複数種類の蛍光プローブは、蛍光波長の異なるものを用いることが好ましく、例えば赤色、緑色、青色等の蛍光色素団を有するものが挙げられ、特に限定されない。
これら「Cell−Stamp法」を利用する観察方法では、観察のためにインキュベータから培養皿を出し入れして、その度に観察視野がずれることによる問題が解消される。したがって、経時的な観察においても、細胞の位置や形状、及びその変化を正確に把握することが可能となる。
また、複数種類の蛍光プローブを用いて「Cell−Stamp法」を行うこともでき、これも本発明の方法の一態様である。すなわち、ガラス面上で細胞を培養する工程、T0時に本発明の第一の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、T0時から任意の時間が経過した後のT1時に、本発明の第二の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び第一の蛍光プローブ及び第二の蛍光プローブで染色された領域、並びに/又は第一の蛍光プローブ又は第二の蛍光プローブのみで染色された領域の蛍光強度を測定する工程を含み、第一の蛍光プローブと第二の蛍光プローブとで蛍光波長が異なる、細胞の観察方法である。
この場合、蛍光波長が異なる2種類の蛍光プローブを用いることで、T0時の細胞のネガティブ染色蛍光領域と、T1時の細胞のネガティブ染色蛍光領域が形成される。そして、一方の領域の蛍光プローブがドナーとなり、他方の領域の蛍光プローブがアクセプターとなって、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用して、時間差で染色した二色の重なり合う領域、又は重なり合わない単色の領域の蛍光強度を測定することにより、細胞がT0時からT1時で変形・移動した量を解析することができる。この場合、顕微鏡観察による画像の取得及びその解析による手法の他に、蛍光プレートリーダーを用いて所定の励起光照射と蛍光スペクトルの取得及びその解析による手法によっても、定量的解析が可能になる。
この場合、蛍光波長が異なる2種類の蛍光プローブを用いることで、T0時の細胞のネガティブ染色蛍光領域と、T1時の細胞のネガティブ染色蛍光領域が形成される。そして、一方の領域の蛍光プローブがドナーとなり、他方の領域の蛍光プローブがアクセプターとなって、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用して、時間差で染色した二色の重なり合う領域、又は重なり合わない単色の領域の蛍光強度を測定することにより、細胞がT0時からT1時で変形・移動した量を解析することができる。この場合、顕微鏡観察による画像の取得及びその解析による手法の他に、蛍光プレートリーダーを用いて所定の励起光照射と蛍光スペクトルの取得及びその解析による手法によっても、定量的解析が可能になる。
蛍光波長が異なる2種類の蛍光プローブを用いて、FRETを利用して「Cell−Stamp法」を行う態様について、図面を参照して以下に説明する。本説明では、蛍光波長が異なる2種類の蛍光プローブの例として、蛍光色素団としてローダミンB及びローダミン19をそれぞれ有する蛍光プローブについて記載する。
なお、本発明が、ここで説明に用いる蛍光プローブや励起波長に係る態様に限定されないことは言うまでもない。
なお、本発明が、ここで説明に用いる蛍光プローブや励起波長に係る態様に限定されないことは言うまでもない。
ローダミンBの最大励起(吸収)波長は553nm、最大蛍光波長は572nmであり、ローダミン19の最大励起(吸収)波長は525nm、最大蛍光波長は547nmである(Chem. Soc. Rev., 2009, 38, 2410-2433, ThermoFisher Scientific, SpectroViewer)。
例えばローダミン19を波長488nmの光で励起したとき、550nm近辺にピークがある蛍光スペクトルが測定される(図3)。
ローダミンBの励起波長領域とローダミン19の蛍光波長領域は重なり合っているため、各蛍光色素団を有する蛍光プローブが近接している状態で(約10nm以内)、例えばローダミン19が波長488nmの光で励起された場合に、FRETが両蛍光プローブ間で生じる(Journal of Biomedical Optics (2012), 17(1), 011002、Nature Biotechnology (2003), 21(11), 1387-1395)。このとき、ローダミン19の励起エネルギーがローダミンBへ転移されローダミンBが励起される。そのため、測定される蛍光スペクトルでは、550nm近辺の蛍光強度が減少し、580nm近辺の蛍光強度が増大する(図4)。
例えばローダミン19を波長488nmの光で励起したとき、550nm近辺にピークがある蛍光スペクトルが測定される(図3)。
ローダミンBの励起波長領域とローダミン19の蛍光波長領域は重なり合っているため、各蛍光色素団を有する蛍光プローブが近接している状態で(約10nm以内)、例えばローダミン19が波長488nmの光で励起された場合に、FRETが両蛍光プローブ間で生じる(Journal of Biomedical Optics (2012), 17(1), 011002、Nature Biotechnology (2003), 21(11), 1387-1395)。このとき、ローダミン19の励起エネルギーがローダミンBへ転移されローダミンBが励起される。そのため、測定される蛍光スペクトルでは、550nm近辺の蛍光強度が減少し、580nm近辺の蛍光強度が増大する(図4)。
ガラス面上において培養細胞を、蛍光プローブR19(17)2又はRB(17)2で染色した場合、ガラス面の細胞がいない部分が染色されて、各ネガティブ像が得られる(図5)。
なお、RB(17)2は一般式(34)においてn=15の化合物であり、R19(17)2は一般式(35)においてn=15の化合物である。
なお、RB(17)2は一般式(34)においてn=15の化合物であり、R19(17)2は一般式(35)においてn=15の化合物である。
ガラス面上において細胞を培養し、T0時からT1時の間に該細胞が運動(移動及び/又は形状変化)したときの様子を図6に示す。ただし、図6は概念図であり、複数の蛍光プローブの実際の染色層が分離しているか混在しているかを明示するものではない。
T0時に第一の蛍光プローブR19(17)2で、T0時から任意の時間が経過した後のT1時に第二の蛍光プローブRB(17)2で、順に染色した場合、各プローブで染色された/染色されなかった部分は、図6に示すとおり次の領域に分けられる。
領域A:T0時及びT1時に細胞がいなかった領域
領域B:T0時に細胞がいたが、T1時に細胞がいなかった領域
領域C:T0時及びT1時に細胞がいた領域
領域D:T0時に細胞がいなかったが、T1時に細胞がいた領域
T0時に第一の蛍光プローブR19(17)2で、T0時から任意の時間が経過した後のT1時に第二の蛍光プローブRB(17)2で、順に染色した場合、各プローブで染色された/染色されなかった部分は、図6に示すとおり次の領域に分けられる。
領域A:T0時及びT1時に細胞がいなかった領域
領域B:T0時に細胞がいたが、T1時に細胞がいなかった領域
領域C:T0時及びT1時に細胞がいた領域
領域D:T0時に細胞がいなかったが、T1時に細胞がいた領域
各領域に波長488nmの励起光を照射したとき、表1のように蛍光シグナルが観測される。すなわち;
領域A:FRETにより相対的に弱いR19(17)2の蛍光シグナルが観測される。
領域B:RB(17)2のCross Talk蛍光(RB(17)2の励起波長ス
ペクトルの裾が488nmにも広がっているために488nmでの励起で生じる蛍光シグナル)が観測される。
領域C:蛍光シグナルは観測されない。
領域D:R19(17)2の蛍光シグナルが観測される。
このように、各領域の蛍光測定により、細胞がT0時からT1時で変形・移動した量を解析することができる。
領域A:FRETにより相対的に弱いR19(17)2の蛍光シグナルが観測される。
領域B:RB(17)2のCross Talk蛍光(RB(17)2の励起波長ス
ペクトルの裾が488nmにも広がっているために488nmでの励起で生じる蛍光シグナル)が観測される。
領域C:蛍光シグナルは観測されない。
領域D:R19(17)2の蛍光シグナルが観測される。
このように、各領域の蛍光測定により、細胞がT0時からT1時で変形・移動した量を解析することができる。
本発明の方法において観察対象としうる細胞の種類は、通常はガラス表面で接着培養される細胞であり、特に限定されないが神経細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、がん細胞等が挙げられる。
本発明の方法において、細胞の培養はガラス面上で行われ、培養容器としては通常ガラス皿を用いる。該容器の細胞が接着する側のガラス面は、通常細胞培養に用いられるものが好ましく、疎水化処理などの表面処理がなされていないほうがよい。
本発明の方法において、培養系に蛍光プローブを添加してガラス面を染色する工程を行うときは、特に限定されないが、好ましくは室温、具体的には11〜37℃の温度条件下で行う。これは、10℃以下だと蛍光プローブが脂溶性であるために細胞内に入ってしまう場合があり、特に炭化水素鎖を2本以上有する蛍光プローブ化合物は注意が必要である。また、染色工程の時間、すなわち蛍光プローブをガラス面に添加して接触させる反応時間は、特に限定されず適宜調整し、例えば5秒間〜5分間程度行えばよい。
本発明の方法において、細胞の培養はガラス面上で行われ、培養容器としては通常ガラス皿を用いる。該容器の細胞が接着する側のガラス面は、通常細胞培養に用いられるものが好ましく、疎水化処理などの表面処理がなされていないほうがよい。
本発明の方法において、培養系に蛍光プローブを添加してガラス面を染色する工程を行うときは、特に限定されないが、好ましくは室温、具体的には11〜37℃の温度条件下で行う。これは、10℃以下だと蛍光プローブが脂溶性であるために細胞内に入ってしまう場合があり、特に炭化水素鎖を2本以上有する蛍光プローブ化合物は注意が必要である。また、染色工程の時間、すなわち蛍光プローブをガラス面に添加して接触させる反応時間は、特に限定されず適宜調整し、例えば5秒間〜5分間程度行えばよい。
以下、具体的な実験例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の態様にのみ限定されない。
以降の実施例1〜4及び比較例1〜3で用いた蛍光プローブ溶液(染色液)は、次のように調製した。
乾燥した蛍光プローブ(50nmol)にエタノールを10μL(ただし、RB(22)2の場合は20μL、RB(22)2の場合は30μL)添加し、攪拌しよく溶解させた。さらに10% Plironic F127溶液を50μL添加し、攪拌しよく溶解させた。この溶液にCOS1細胞の場合はDMEM培地を、HeLa
細胞の場合はMEM培地を9.94mL添加し、攪拌しよく溶解させ、染色用の蛍光プローブ溶液
とした。
最終濃度は、蛍光プローブが5.0nmol/mL、エタノールが0.1%(v/v)、Plironic F127が0.05%(w/v)である。
乾燥した蛍光プローブ(50nmol)にエタノールを10μL(ただし、RB(22)2の場合は20μL、RB(22)2の場合は30μL)添加し、攪拌しよく溶解させた。さらに10% Plironic F127溶液を50μL添加し、攪拌しよく溶解させた。この溶液にCOS1細胞の場合はDMEM培地を、HeLa
細胞の場合はMEM培地を9.94mL添加し、攪拌しよく溶解させ、染色用の蛍光プローブ溶液
とした。
最終濃度は、蛍光プローブが5.0nmol/mL、エタノールが0.1%(v/v)、Plironic F127が0.05%(w/v)である。
<実施例1>
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光プローブRB(18)2溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光
プローブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加し、3
7℃で1時間培養した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
なお、RB(18)2は一般式(8)に包含される化合物である。
結果を図7に示す。蛍光顕微鏡像で、ネガティブ蛍光染色された細胞の形状が詳細に観察できた。
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光プローブRB(18)2溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光
プローブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加し、3
7℃で1時間培養した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
なお、RB(18)2は一般式(8)に包含される化合物である。
結果を図7に示す。蛍光顕微鏡像で、ネガティブ蛍光染色された細胞の形状が詳細に観察できた。
<実施例2>
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光プローブRB(18)2溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光
プローブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加し、3
7℃で1時間培養した後、PBSで2回洗浄し、さらにトリプシン溶液(0.05質量%PBS溶液)を2.0mL添加した。37℃で5分間静置した後、トリプシン溶液を除去し、
PBSで2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光
顕微鏡で観察した。
結果を図8に示す。トリプシン処理により細胞が培養系から除去されたため、微分干渉像では、細胞が見えなかった。一方、蛍光顕微鏡像では、トリプシン処理後もネガティブ蛍光染色された細胞像が維持され、細胞形状が詳細に観察できた。
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光プローブRB(18)2溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光
プローブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加し、3
7℃で1時間培養した後、PBSで2回洗浄し、さらにトリプシン溶液(0.05質量%PBS溶液)を2.0mL添加した。37℃で5分間静置した後、トリプシン溶液を除去し、
PBSで2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を2.0mL添加した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光
顕微鏡で観察した。
結果を図8に示す。トリプシン処理により細胞が培養系から除去されたため、微分干渉像では、細胞が見えなかった。一方、蛍光顕微鏡像では、トリプシン処理後もネガティブ蛍光染色された細胞像が維持され、細胞形状が詳細に観察できた。
<比較例1>
蛍光プローブを、RB18−オクタデシルローダミン、RB0、RB3、RB8、RB2O、又はRB12Oに代えて、実施例1と同様に培養COS1細胞を染色し、観察した。
RB18−オクタデシルローダミンの結果を図9に示す。蛍光顕微鏡像において、蛍光シグナルがガラス面の他に細胞内にも存在し、細胞の輪郭が判別しにくい。また、RB0、RB3、RB8、RB2O、又はRB12Oを用いた場合も同様に、細胞内に蛍光プローブが入ったため、観察に適さなかった。
蛍光プローブを、RB18−オクタデシルローダミン、RB0、RB3、RB8、RB2O、又はRB12Oに代えて、実施例1と同様に培養COS1細胞を染色し、観察した。
RB18−オクタデシルローダミンの結果を図9に示す。蛍光顕微鏡像において、蛍光シグナルがガラス面の他に細胞内にも存在し、細胞の輪郭が判別しにくい。また、RB0、RB3、RB8、RB2O、又はRB12Oを用いた場合も同様に、細胞内に蛍光プローブが入ったため、観察に適さなかった。
<比較例2>
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光NBD−DPPE溶液を2.0mL添加した。室温で60秒間静置した後、蛍光プロー
ブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を添加し、37℃で1時間培養した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
結果を図10に示す。蛍光顕微鏡像において、ガラス面に蛍光シグナルが存在せず、ガラス面が蛍光プローブで染色されなかったことが分かる。
ガラス底培養皿にCOS1細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS DMEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温してお
いた蛍光NBD−DPPE溶液を2.0mL添加した。室温で60秒間静置した後、蛍光プロー
ブ溶液を除去し、DMEM培地で2回洗浄した。10%FCS DMEM培地を添加し、37℃で1時間培養した後、微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
結果を図10に示す。蛍光顕微鏡像において、ガラス面に蛍光シグナルが存在せず、ガラス面が蛍光プローブで染色されなかったことが分かる。
<比較例3>
蛍光プローブをRB(12)2に代えて、染色時のインキュベート時間を10秒に変えた他は、比較例2と同様に培養COS1細胞を染色して、観察した。
図11に結果を示す。蛍光顕微鏡像において、蛍光シグナルがガラス面の他に細胞内にも存在し、観察しにくい。
蛍光プローブをRB(12)2に代えて、染色時のインキュベート時間を10秒に変えた他は、比較例2と同様に培養COS1細胞を染色して、観察した。
図11に結果を示す。蛍光顕微鏡像において、蛍光シグナルがガラス面の他に細胞内にも存在し、観察しにくい。
<実施例3>
ガラス底培養皿にHeLa細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS MEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温しておいた蛍光プローブ溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を
除去し、MEM培地で2回洗浄した。10%FCS MEM培地を2.0mL添加し、37℃で0〜6時間
培養し、染色後0、1及び6時間後に微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
蛍光プローブとしては、下記一般式(34)で表される化合物9種(n数を表2に示す)を用いた。これらの化合物は2本のアルキル鎖の長さが異なるものであり、本実験により培養細胞の形状及び経時変化を観察するのに適する蛍光プローブを検討した。
ガラス底培養皿にHeLa細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS MEM培地で37℃で一晩(約12時間)培養した。培地を除去し、予め37℃に保温しておいた蛍光プローブ溶液を2.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を
除去し、MEM培地で2回洗浄した。10%FCS MEM培地を2.0mL添加し、37℃で0〜6時間
培養し、染色後0、1及び6時間後に微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
蛍光プローブとしては、下記一般式(34)で表される化合物9種(n数を表2に示す)を用いた。これらの化合物は2本のアルキル鎖の長さが異なるものであり、本実験により培養細胞の形状及び経時変化を観察するのに適する蛍光プローブを検討した。
図12〜20に結果を示す。なお、同時点の微分干渉像と蛍光像は同視野であり、異なる時点の各像は別視野である。
蛍光プローブRB(16)2、RB(17)2、RB(18)2による染色において、観察時間0〜6時間と
も細胞の形状がコントラストよく明瞭に観察された。また、これら蛍光プローブの細胞内の蛍光シグナルは、観察時間0〜1時間でわずかしか観察されず、観察時間6時間でも細胞の形状を観察するのに問題はなかった(図14〜16)。
蛍光プローブRB(14)2、RB(19)2による染色において、観察時間0〜1時間で細胞の形状がコントラストよく明瞭に観察された。しかし、観察時間6時間でその細胞内の蛍光シグナルが細胞の形状の観察に一部支障が出る程度の強さで観察された(図13、17)。
蛍光プローブRB(12)2による染色において、観察時間0〜6時間とも特定の細胞内器官
(ミトコンドリアと推定される)において強い蛍光シグナルが観察された。また、観察時間0〜1時間で細胞の形状も観察されたが、細胞周辺の蛍光シグナルは細胞内の蛍光シグナルより弱いものであった(図12)。
蛍光プローブRB(20)2、RB(22)2、RB(23)2による染色において、観察時間0〜1時間で
細胞の形状を示す蛍光シグナルのコントラストが不明瞭であった。観察時間6時間で細胞内の蛍光シグナルは細胞周辺の蛍光シグナルより著しく強く、蛍光シグナルで細胞の形状は観察されなかった。また、細胞周辺の蛍光シグナルの強度はバックグランドに近く、コントラストは不明瞭だった(図18〜20)。
蛍光プローブRB(12)2は細胞内によく取り込まれたが、これに対し蛍光プローブRB(16)2, RB(17)2、RB(18)2の細胞内への取り込みは相対的に少なかった。蛍光プローブRB(14)2
、RB(19)2の細胞内への取り込みは、これらの中間的なものであった。蛍光プローブRB(20)2, RB(22)2、RB(23)2による染色像では、蛍光シグナルがバックグランド程度に低かったが、これは長いアルキル鎖による高い疎水性のため水溶液への溶解性が低かったことが原因と推測される。
蛍光プローブRB(16)2、RB(17)2、RB(18)2による染色において、観察時間0〜6時間と
も細胞の形状がコントラストよく明瞭に観察された。また、これら蛍光プローブの細胞内の蛍光シグナルは、観察時間0〜1時間でわずかしか観察されず、観察時間6時間でも細胞の形状を観察するのに問題はなかった(図14〜16)。
蛍光プローブRB(14)2、RB(19)2による染色において、観察時間0〜1時間で細胞の形状がコントラストよく明瞭に観察された。しかし、観察時間6時間でその細胞内の蛍光シグナルが細胞の形状の観察に一部支障が出る程度の強さで観察された(図13、17)。
蛍光プローブRB(12)2による染色において、観察時間0〜6時間とも特定の細胞内器官
(ミトコンドリアと推定される)において強い蛍光シグナルが観察された。また、観察時間0〜1時間で細胞の形状も観察されたが、細胞周辺の蛍光シグナルは細胞内の蛍光シグナルより弱いものであった(図12)。
蛍光プローブRB(20)2、RB(22)2、RB(23)2による染色において、観察時間0〜1時間で
細胞の形状を示す蛍光シグナルのコントラストが不明瞭であった。観察時間6時間で細胞内の蛍光シグナルは細胞周辺の蛍光シグナルより著しく強く、蛍光シグナルで細胞の形状は観察されなかった。また、細胞周辺の蛍光シグナルの強度はバックグランドに近く、コントラストは不明瞭だった(図18〜20)。
蛍光プローブRB(12)2は細胞内によく取り込まれたが、これに対し蛍光プローブRB(16)2, RB(17)2、RB(18)2の細胞内への取り込みは相対的に少なかった。蛍光プローブRB(14)2
、RB(19)2の細胞内への取り込みは、これらの中間的なものであった。蛍光プローブRB(20)2, RB(22)2、RB(23)2による染色像では、蛍光シグナルがバックグランド程度に低かったが、これは長いアルキル鎖による高い疎水性のため水溶液への溶解性が低かったことが原因と推測される。
培養細胞の形状及び経時変化を観察するのには、細胞を染色したときに染色直後から一定時間までの間に細胞周辺の蛍光シグナルが細胞内の蛍光シグナルと比較して充分に明るくコントラストが明瞭となる蛍光プローブが好ましい。コントラストが明瞭でないと、細胞外及び細胞内の蛍光プローブからの蛍光シグナルは基本的に同じ波長であり波長フィルター等により区別し難くなり、詳細な細胞の形状を観察することが困難になるからである。例えば、蛍光プローブが細胞内に入って蛍光シグナルを発すると、細胞内の蛍光シグナルが細胞周辺のシグナル(細胞の形態を可視化するシグナル)より十分大きいと細胞の形状の観察が困難になる。また、細胞周辺の蛍光シグナルが小さすぎる(蛍光顕微鏡の検出限界に近い)場合もバックグランドシグナルとの区別が明瞭でなくなるため、明瞭な細胞の形状の観察が困難になる。
かかる視点に立つと、一般式(34)で表される化合物においては、nが14〜16のものが、培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適すると考えられる。また、nが12又は17のものは、0〜1時間程度の観察において、培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適すると考えられる。
一方、nが11以下のものは、その疎水的な性質の細胞内への取り込まれやすさのため培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適さないと考えられる。また、nが18以上のものは、その疎水的な性質のため培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適さないと考えられる。
ただし、本実施例の結果はあくまで一般式(34)で表される化合物の染色性に基づくものである。本発明に包含される他の蛍光プローブにおいては、末端のアルキル鎖長のみではなく、他の部分も含めた構造全体に基づく疎水性等の性質を考慮する必要がある。
一方、nが11以下のものは、その疎水的な性質の細胞内への取り込まれやすさのため培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適さないと考えられる。また、nが18以上のものは、その疎水的な性質のため培養細胞の形状及び経時変化を観察する蛍光プローブとして適さないと考えられる。
ただし、本実施例の結果はあくまで一般式(34)で表される化合物の染色性に基づくものである。本発明に包含される他の蛍光プローブにおいては、末端のアルキル鎖長のみではなく、他の部分も含めた構造全体に基づく疎水性等の性質を考慮する必要がある。
<実施例4>
ガラス底培養皿にHeLa細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS MEM培地で37℃で24時間培養した。培地を除去し、予め37℃に保温しておいた蛍光プローブRB(17)2溶液を1.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液
を除去し、MEM培地で2回洗浄した。10%FCS MEM培地を2.0mL添加し、37℃で0〜6時
間培養し、染色後0、3及び6時間後に微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
ガラス底培養皿にHeLa細胞を播種し(1×105cells/φ35mm皿)、10%FCS MEM培地で37℃で24時間培養した。培地を除去し、予め37℃に保温しておいた蛍光プローブRB(17)2溶液を1.0mL添加した。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液
を除去し、MEM培地で2回洗浄した。10%FCS MEM培地を2.0mL添加し、37℃で0〜6時
間培養し、染色後0、3及び6時間後に微分干渉顕微鏡及び蛍光顕微鏡で観察した。
図21に、各時点(染色0、3、6時間後)に撮影した画像を示す。なお、同時点の微分干渉像と蛍光像は同視野であり、異なる時点の各像は別視野である。また、経時で細胞が移動したため、同時点での微分干渉像と蛍光像とでは個々の細胞の位置及び形状が異なっている。
染色3時間後と6時間後の蛍光像を、観察視野のフレームに合わせて重ねると、画像中の蛍光染色された細胞の像が一致していないことがわかる(図22(A))。この不一致は各時点で観察視野がずれたことに起因する。蛍光像は経時で変わらないことから、各時点の蛍光像の同一細胞に合わせて重ねると、各時点の観察視野がわかる(図22(B))。これにより、観察時に培養皿の位置が数μm単位でずれたとしても、同一の観察対象を精度よく観察しその移動を把握することができる。
染色3時間後と6時間後の蛍光像を、観察視野のフレームに合わせて重ねると、画像中の蛍光染色された細胞の像が一致していないことがわかる(図22(A))。この不一致は各時点で観察視野がずれたことに起因する。蛍光像は経時で変わらないことから、各時点の蛍光像の同一細胞に合わせて重ねると、各時点の観察視野がわかる(図22(B))。これにより、観察時に培養皿の位置が数μm単位でずれたとしても、同一の観察対象を精度よく観察しその移動を把握することができる。
上記のように観察視野を調整し、染色後0、3及び6時間後の微分干渉像から同一観察視野で切り取って並べたものを図23に示す。これから、特定の細胞が、経時で変形及び移動したことが明瞭に認められた。図23に示す細胞の核の位置の経時変化量を解析したところ、染色後0時間から3時間後の間に43μm、染色後3時間から6時間後の間に47μmであった。
なお、上記画像の比較や重ね合わせ、移動量の算出等の処理は、Photoshop又はImage Jを用いてコンピュータ上で行った。
なお、上記画像の比較や重ね合わせ、移動量の算出等の処理は、Photoshop又はImage Jを用いてコンピュータ上で行った。
<実施例5>
下記一般式(35)で表される化合物3種をスキーム11にしたがい合成した。
これらのうちR19(17)2と、実施例3で用いたRB(17)2とを、実施例5における第一又は第二の蛍光プローブとして用いた。
下記一般式(35)で表される化合物3種をスキーム11にしたがい合成した。
これらのうちR19(17)2と、実施例3で用いたRB(17)2とを、実施例5における第一又は第二の蛍光プローブとして用いた。
蛍光プローブ溶液(染色液)は、次のように室温にて調製した。
乾燥した蛍光プローブ(50nmol)にエタノールを10μL添加し、攪拌しよく溶解させた
。さらに10% Plironic F127溶液を50μL添加し、攪拌しよく溶解させた。この溶液にDMEM培地9.94mLを2回に分けて添加し、攪拌しよく溶解させ、最終濃度5μMの蛍光プローブ溶液とした。
乾燥した蛍光プローブ(50nmol)にエタノールを10μL添加し、攪拌しよく溶解させた
。さらに10% Plironic F127溶液を50μL添加し、攪拌しよく溶解させた。この溶液にDMEM培地9.94mLを2回に分けて添加し、攪拌しよく溶解させ、最終濃度5μMの蛍光プローブ溶液とした。
ガラス底培養皿にHeLa細胞を播種し(5×104cells/φ35mm皿)、10%FBS/DMEM培地を1.5mL/dish添加して37℃、5%CO2下で一晩(約24時間)培養した。
培地を除去し、予め37℃に保温しておいた第一の蛍光プローブ溶液を1.0mL添加し、
軽く撹拌した(T0時)。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を除去し、DMEM培地2.0mLで2回洗浄した。DMEM培地を除去し、10%FBS/DMEM培地を1.5mL添加し、37℃、5%CO2下で6時間培養した。
培地を除去し、予め37℃に保温しておいた第二の蛍光プローブ溶液を1.0mL添加し、
軽く撹拌した(T1時)。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を除去し、DMEM培地2.0mLで2回洗浄した。DMEM培地を除去し、10%FBS/DMEM培地を1.5mL添加し、37℃、5%CO2下で1時間培養した。
トリプシン溶液(0.05質量%PBS溶液)を2.0mL添加し、37℃で5分間静置し
た後、トリプシン溶液を除去し、PBSで2回洗浄した。DMEM培地を1.5mL添加した後、
共焦点レーザー顕微鏡によりディッシュ上の蛍光を観察した。
蛍光測定は、表4に示す5つのチャンネルで行った。
培地を除去し、予め37℃に保温しておいた第一の蛍光プローブ溶液を1.0mL添加し、
軽く撹拌した(T0時)。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を除去し、DMEM培地2.0mLで2回洗浄した。DMEM培地を除去し、10%FBS/DMEM培地を1.5mL添加し、37℃、5%CO2下で6時間培養した。
培地を除去し、予め37℃に保温しておいた第二の蛍光プローブ溶液を1.0mL添加し、
軽く撹拌した(T1時)。室温で10秒間静置した後、蛍光プローブ溶液を除去し、DMEM培地2.0mLで2回洗浄した。DMEM培地を除去し、10%FBS/DMEM培地を1.5mL添加し、37℃、5%CO2下で1時間培養した。
トリプシン溶液(0.05質量%PBS溶液)を2.0mL添加し、37℃で5分間静置し
た後、トリプシン溶液を除去し、PBSで2回洗浄した。DMEM培地を1.5mL添加した後、
共焦点レーザー顕微鏡によりディッシュ上の蛍光を観察した。
蛍光測定は、表4に示す5つのチャンネルで行った。
第一の蛍光プローブ及び第二の蛍光プローブの有無及び種類を変えて、表5に示す5通りの試験を行った。
試験Aの結果を図24〜25に示す。
R19(17)2に由来する蛍光で細胞のネガティブ染色が確認できる。
R19(17)2に由来する蛍光で細胞のネガティブ染色が確認できる。
試験Bの結果を図26〜28に示す。
図26のCh.R19の画像、及び図27の波長534〜556nmの画像に見られる白いシグナル領域は、前述の領域D、すなわちT0時に細胞がいなかったが、細胞が進出してT1時に細胞がいた領域と考えられる。
図26のCh.R19の画像、及び図27の波長534〜556nmの画像に見られる白いシグナル領域は、前述の領域D、すなわちT0時に細胞がいなかったが、細胞が進出してT1時に細胞がいた領域と考えられる。
図28は、Ch.Lambdaの画像から取得した蛍光データに基づいて観察視野を画像解析ソフトを用いて解析し、各蛍光プローブにより染色された/染色されなかった領域を図示したものである。これにより、T0時からその6時間後のT1時までの細胞の運動(変形・移動)を推測することができる。
図28の左図において、縦縞の領域Dは細胞が6時間かけて運動し進出した領域に、横縞の領域Bは細胞が6時間かけて運動し退去した領域に、それぞれ相当する。そして、左図において黒色の領域Cと横縞の領域Bを合わせた領域、すなわち右図において点線で囲まれた領域は、T0時の細胞の位置を示す。また、左図において黒色の領域Cと縦縞の領域Dを合わせた領域、すなわち右図において灰色の領域は、T1時の細胞の位置を示す。これらから、Hela細胞が、右図における点線で囲まれた領域から灰色の領域へ運動したことが推測された。
図28の左図において、縦縞の領域Dは細胞が6時間かけて運動し進出した領域に、横縞の領域Bは細胞が6時間かけて運動し退去した領域に、それぞれ相当する。そして、左図において黒色の領域Cと横縞の領域Bを合わせた領域、すなわち右図において点線で囲まれた領域は、T0時の細胞の位置を示す。また、左図において黒色の領域Cと縦縞の領域Dを合わせた領域、すなわち右図において灰色の領域は、T1時の細胞の位置を示す。これらから、Hela細胞が、右図における点線で囲まれた領域から灰色の領域へ運動したことが推測された。
試験C結果を図29〜30に示す。
RB(17)2に由来する蛍光で細胞のネガティブ染色が確認できる。
なお、Ch.Lambdaの波長534〜556nmの画像において、RB(17)2のCross Talk蛍光シグナルが認められる(図30)。
RB(17)2に由来する蛍光で細胞のネガティブ染色が確認できる。
なお、Ch.Lambdaの波長534〜556nmの画像において、RB(17)2のCross Talk蛍光シグナルが認められる(図30)。
試験Dの結果を図31〜33に示す。
図31のCh.R19の画像、及び図32の波長534〜556nmの画像に見られる白いシグナル領域は、前述の領域B、すなわちT0時に細胞がいたが、細胞が退去してT1時に細胞がいなかった領域と考えられる。
図31のCh.R19の画像、及び図32の波長534〜556nmの画像に見られる白いシグナル領域は、前述の領域B、すなわちT0時に細胞がいたが、細胞が退去してT1時に細胞がいなかった領域と考えられる。
図33は、Ch.Lambdaの画像から取得した蛍光データに基づいて観察視野を画像解析ソフトを用いて解析し、各蛍光プローブにより染色された/染色されなかった領域を図示したものである。これにより、T0時からその6時間後のT1時までの細胞の運動(変形・移動)を推測することができる。
図33の左図において、縦縞の領域Bは細胞が6時間かけて運動し退去した領域に、横縞の領域Dは細胞が6時間かけて運動し進出した領域に、それぞれ相当する。そして、左図において黒色の領域Cと縦縞の領域Bを合わせた領域、すなわち右図において点線で囲まれた領域は、T0時の細胞の位置を示す。また、左図において黒色の領域Cと横縞の領域Dを合わせた領域、すなわち右図において灰色の領域は、T1時の細胞の位置を示す。これらから、Hela細胞が、右図における点線で囲まれた領域から灰色の領域へ運動したことが推測された。
図33の左図において、縦縞の領域Bは細胞が6時間かけて運動し退去した領域に、横縞の領域Dは細胞が6時間かけて運動し進出した領域に、それぞれ相当する。そして、左図において黒色の領域Cと縦縞の領域Bを合わせた領域、すなわち右図において点線で囲まれた領域は、T0時の細胞の位置を示す。また、左図において黒色の領域Cと横縞の領域Dを合わせた領域、すなわち右図において灰色の領域は、T1時の細胞の位置を示す。これらから、Hela細胞が、右図における点線で囲まれた領域から灰色の領域へ運動したことが推測された。
試験Eの結果を図34〜35に示す。
蛍光プローブによる染色を行っていないため(陰性対照)、視野はほぼ暗く自然背景光のみである。
蛍光プローブによる染色を行っていないため(陰性対照)、視野はほぼ暗く自然背景光のみである。
これらの結果から、蛍光波長が異なる二色の蛍光プローブを用いて細胞運動を定量的に測定できることが示された。
なお、R19(17)2の蛍光シグナルは、RB(17)2のCross Talk蛍
光シグナルが生じても邪魔されない程度に十分強く検出されたことから、本実施例で用いた二種の蛍光プローブにより染色する順序は、いずれを先にしてもよいと考えられる。したがって、これら二種の蛍光プローブの組み合わせを用いる場合は、任意の順序で染色を行い、例えば波長488nmの光で励起し、波長534〜556nmの蛍光を測定する、という方法を採ることができる。
なお、R19(17)2の蛍光シグナルは、RB(17)2のCross Talk蛍
光シグナルが生じても邪魔されない程度に十分強く検出されたことから、本実施例で用いた二種の蛍光プローブにより染色する順序は、いずれを先にしてもよいと考えられる。したがって、これら二種の蛍光プローブの組み合わせを用いる場合は、任意の順序で染色を行い、例えば波長488nmの光で励起し、波長534〜556nmの蛍光を測定する、という方法を採ることができる。
本発明により、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブが提供され、該蛍光プローブを用いて培養細胞の形状及び位置を簡便かつ明瞭にガラス面上に記録すること、さらに培養細胞の形状及び位置の経時変化を定量的に解析することが可能になる。かかる解析は、薬剤、核酸、生理活性物質等を適用した細胞の評価等に適用し得るため、産業上非常に有用である。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表される化合物からなる、蛍光プローブ。
- 請求項1に記載の蛍光プローブを含有する、細胞観察用試薬。
- ガラス面上で細胞を培養する工程、
ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び
前記染色工程後に、蛍光顕微鏡で前記細胞を観察する工程を含む、細胞の観察方法。 - 前記蛍光プローブが、請求項1に記載の蛍光プローブである、請求項3に記載の方法。
- ガラス面上で細胞を培養する工程、
T0時にガラス面を染色するが培養細胞は染色しない蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、
T0時から任意の時間が経過した後に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡で前記細胞を観察する工程、及び
得られた蛍光像及び微分干渉像を比較する工程を含む、細胞の観察方法。 - 前記蛍光プローブが、請求項1に記載の蛍光プローブである、請求項5に記載の方法。
- T0時から任意の時間が経過したT1時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、
前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像と微分干渉像とで重ならない領域の面積を算出することを含む、請求項5又は6に記載の方法。 - T0時から任意の時間が経過した後の1又は複数のTn時に蛍光顕微鏡及び微分干渉顕微鏡を取得し、
前記比較工程において、観察対象の細胞の蛍光像を基準として重ね合わせた1又は複数のTn時の微分干渉像を比較することにより、観察細胞の移動量を算出することを含む、請求項5又は6に記載の方法。 - ガラス面上で細胞を培養する工程、
T0時にガラス面を染色するが培養細胞は染色しない第一の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、
T0時から任意の時間が経過した後のT1時に、ガラス面を染色するが培養細胞は染色しない第二の蛍光プローブで前記ガラス面を染色する工程、及び
第一の蛍光プローブ及び第二の蛍光プローブで染色された領域、並びに/又は第一の蛍光プローブ又は第二の蛍光プローブのみで染色された領域の蛍光強度を測定する工程を含み、
第一の蛍光プローブと第二の蛍光プローブとで蛍光波長が異なる、細胞の観察方法。 - 前記蛍光プローブが、請求項1に記載の蛍光プローブである、請求項9に記載の方法。
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